大学院部会(第112回) 議事録

1.日時

令和5年10月26日(木曜日)13時00分~15時00分

2.場所

WEB会議

3.議題

  1. 人文科学・社会科学系の学部学生における大学院進学の意向調査の結果について
  2. 人文科学・社会科学系における大学院教育の振興方策について
  3. その他

4.出席者

委員

(部会長) 湊長博部会長
(副部会長) 村田治副部会長
(臨時委員) 加納敏行、川端和重、神成文彦、小長谷有紀、小西範幸、佐久間淳一、迫田雷蔵、須賀晃一、高橋真木子、塚本恵、永井由佳里、堀切川一男、宮浦千里、横山広美、和田隆志の各委員

 

文部科学省

(事務局)池田高等教育局長、伊藤文部科学戦略官、小幡高等教育企画課長、髙見高等教育企画課高等教育政策室長他

5.議事録

【湊部会長】  それでは、所定の時刻になりましたので、第112回の大学院部会を開催したいと思います。御多忙の中、皆様、お集まりいただき誠にありがとうございます。
 本日は、濱中委員、菅委員から御欠席の御連絡を頂いております。定足数には十分達しておりますので、開催したいと思います。
 まず、事務局に少し人事異動がございましたので、御挨拶をお願いできますでしょうか。
 
【髙見高等教育政策室長】  この9月に高等教育政策室長を拝命いたしました髙見と申します。よろしくお願いいたします。
 
【菅野技術参与】  この10月から技術参与としてこちらの方でお世話になっています東京大学の菅野です。よろしくお願いします。
 
【湊部会長】  よろしくお願いいたします。
 それでは、会議に先立って事務局から連絡事項をお願いいたします。
 
【金井大学院振興専門官】  高等教育政策室大学院振興専門官の金井でございます。
 会議に先立って、何点か御連絡をさせていただきます。ウェブ会議を円滑に行う観点から、御発言の際は、「挙手」ボタンを押していただき、部会長から指名されましたら、お名前をおっしゃってから御発言をお願いいたします。御発言の際は、通常よりも少し声を張っていただければと思います。また、発言時以外はマイクをミュートにしていただくようお願いします。
 資料につきましては、議事次第に記載のとおりでございます。
 事務局からは以上でございます。
 
【湊部会長】    ありがとうございます。
 それでは、早速議題に入ります。今日は議事を2つ用意しておりますけれども、最初の議題は、「人文科学・社会科学系の学部学生における大学院進学の意向調査の結果について」ということでございます。これにつきましては、前回の大学院部会で、学部4年生へのアンケート結果を分析中であるということを御報告申し上げましたけれども、おおむねこちらで想定している結果の取りまとめができましたので、今日はまずそのことから説明をさせていただきたいと思います。
 髙見室長、お願いできますか。
 
【髙見高等教育政策室長】  それでは、お手元の資料1の「人文科学・社会科学系の学部学生における大学院進学の意向調査」の資料を御覧ください。合わせて画面投影させていただきます。
 まず1枚めくっていただきますと、1ページ目に調査概要を記載しております。なお、これから説明するページ数につきましては、資料右下に記載したページ数に沿って説明をさせていただきます。
 本調査ですけれども、人文科学・社会科学系の学部4年次の学生の大学院進学に対する意向につきまして、理・工・農学系の学生との比較も含めて分析し、今後の方向性の検討に活用することを目的とするものでございます。本調査におきましては、人文科学・社会科学系の大学院を設置している国公私立の289大学と、これらの大学から無作為抽出した100大学のうち、理・工・農学系の学部・学科を持つ27大学の学生を対象としておりまして、本年5月末から7月末にかけて、インターネットを通じたアンケート調査により回答を得たものとなっております。
 2ページ目を御覧いただければと存じます。回答数ですけれども、人文・社会科学系で約1万3,000名、理・工・農学系で約3,000名からの回答を頂いております。以降、既に資料につきましては、委員の先生方に事前にお送りしておりますので、ポイントを絞って説明したいと思います。
 7ページ目を御覧ください。こちらは、現時点での大学院進学に関する考えということでのアンケート結果でございますが、左のグラフを御覧いただきますと、理・工・農系の学生の約60%が進学を希望している一方で、人文・社会科学系の学生は15%にとどまっていることが分かります。また、今は進学しないが、いずれ大学院で学びたいと回答した学生は、人文・社会科学系では10%程度となっております。なお、以降のデータも同様ですけれども、右のグラフにもあるとおり、人文科学、社会科学系でのそれぞれの結果も併せて随時御確認いただければと存じます。
 続いて、8ページを御覧ください。8ページの上のグラフでございますけれども、大学院への進学を希望していると回答した学生へのアンケートでは、人文・社会科学系では、約4割の学生が学部3年で大学院への進学を希望するようになったと回答した一方で、理・工・農系では、約4割の学生が大学入学より前に進学を希望したと回答しております。
 また、下のマル1-2のグラフでございますけれども、こちらにもあるとおり、人文・社会科学系の学生の約4割が自身が所属する大学以外の大学院への進学を希望しておりまして、理・工・農系の学生と大きな違いが見られます。
 続いて、11ページを御覧ください。大学院への進学を希望していると回答した学生にその理由を聞いたところ、良い仕事や良い収入を期待できるからという点につきまして、当てはまる、やや当てはまると回答した学生は、理・工・農系が約85%であるのに対しまして、人文・社会科学系は、とても当てはまる、やや当てはまるとを併せた回答が50%となっております。
 特に、次の12ページにおきまして、人文科学系と社会科学系の結果を分けて示しておりますけれども、良い仕事や良い収入が期待できるからと回答した学生は、人文科学系は特に低く、約36%にとどまっているといったことも分かるかと思います。
 続きまして、17ページを御覧ください。大学院への進学をするか迷っていると回答した学生への質問ということになっておりますけれども、大学院への進学を躊躇する理由、又は難点としまして、大学院に進学すると卒業後の就職が心配だからという、この上から3つ目の部分でございますが、これを回答した学生が、理・工・農系が約41%であるのに対しまして、人文・社会科学系の学生では約64%となっております。
 続いて、23ページを御覧ください。23ページは、大学院へ進学するつもりはない、又は検討していないと回答した学生のうち、人文科学・社会科学系の約54%の学生が、大学院への進学をそもそも考えたことがないと回答しておりまして、理・工・農系の学生と大きく異なった結果となっております。
 続きまして、26ページを御覧ください。大学院や大学院での教育研究に関するイメージにつきまして、上から2つ目の部分でございますが、研究者や大学教員志望の人が行くところと回答した人文・社会科系の学生は約68%、理・工・農系の約36%と比較して高くなっています。また、大学院に進学すると、社会で幅広く役立つ能力やスキルが身につくと回答した学生は、人文・社会科学系が52%と、理・工・農系の約73%と比較して低く出ております。さらに、大学院卒は、学部卒より就職に有利だといった回答につきましても、人文・社会科学系は約43%であり、理・工・農系は約85%あるのに対して低くなっております。
 28ページを御覧ください。どのような取組があれば大学院進学者が増加すると思うかという点については、経済的な支援、雇用条件の向上と回答した学生が、人文・社会科学系、理・工・農系、共に8割を超えていることが分かります。
 以上、今回の調査結果について概略を申し上げましたが、この中では、まず1点目としまして、そもそも大学院への関心がない学生が多いといった大学院への進学の意識、2点目としましては、社会で幅広く役立つ能力とかスキルを身につける学生の割合が理・工・農系に比べて低いなどといった、大学院教育そのもののイメージ、更に3点目としまして、就職や収入に有利になると考える学生が理・工・農系に比べて少ないといった、卒業後のキャリアパスの課題が明らかになったところでございます。
 本日、後半の議題であります審議まとめの素案におきましては、これらの調査結果で明らかになった課題も踏まえまして、併せて御審議いただければと存じます。
 学部学生への意向調査結果について、私からの説明は以上となります。御審議のほど、よろしくお願いします。
 
【湊部会長】 ありがとうございます。少し駆け足でお願いしましたけれども、今回のデータについては、また改めてゆっくりお目通しいただければ有り難いと思います。人文・社会科学系の学生と理工系の学生の大学院に進学するということについての考え方、あるいは思いにはかなり異なる点があるということが、幾つかの資料から見えてきていると思います。
 それでは、ただいまの御説明を踏まえ、この意向調査の結果につきまして、皆様の御意見や御感想をお聞かせいただければ有り難いと思います。いかがでしょうか。
 それでは、まず、村田委員からお願いできますか。
 
【村田委員】  御説明をどうもありがとうございました。また、非常に大人数のアンケートを実施していただきまして、実態がよく分かったのではないかと本当に思っております。
 最後に御説明されたところです。29ページあるいは28ページのところですが、人文科学系・社会科学系、あるいは自然科学系、共にどういったことをすれば大学院に進学する人が増えますかという質問に対して、恐らく重要なのは、上から2つ目、大学院卒業者の雇用条件が向上する、これが一番大きな条件ではないかなと思っております。といいますのも、結局ニーズがなければ経済的な支援をしても意味がないわけで、まずニーズがあって、そのニーズに対して経済的な支援ということができるわけですから、賃金や昇進スピードなど、大学院卒業者の雇用条件を向上させていくということは、産官学が一体になってやっていくことが重要なのではないかということを改めて思いましたので、一言コメントをさせていただきました。ありがとうございました。
 
【湊部会長】  ありがとうございます。今御指摘のところは、これは人文・社会科学系、理工系、どちらがということではなくて、両方ともにもう少し雇用等にかかる客観的条件が良くなれば大学院進学を希望する学生がかなりいる、ニーズは十分に存在する、ということを示していると私も思います。ありがとうございます。
 それでは、川端委員からお願いできますか。
 
【川端委員】  ありがとうございます。1点だけ質問です。今答えていただかなくても良いのですけれども、アンケートで回答が5%程度なので、多分返してきた大学の個性であったり、返さなかった大学がもし入ったりしたら、このアンケートはもっと極端に、先ほど少し言われた大学院に関して関心がないという、多分サイレントメジャーはもっと関心がない、アンケートにすら答える気がないという、そういうような話になっているのかなという。そこから考えても私的に少し思うのは、人文社会系自体が、その学部の4年生辺りだと1クラスに1人か2人しか大学院に行こうという人間がない状態だと、もう話題にもならないし、日々の暮らしの中でそういうものが身近なものでもない。理系の場合は、大学によっては6割とか7割がもう大学院に行くのを決めていますから、当然そういう話は出てきた上で、行かない、行くという話になる。そこがやはり物すごい違いとして、だから何が言いたいかというと、1つ目は、これの答えている大学の個性というのは、是非後ででもどこかでお話を教えていただければと。それからもう1点は、関心がないということ以上に、そういう人が周りにいないという、そういう環境が作っているので、彼らの意思が、その強い意志で関心がないと言っているわけではなくて、そういうものがないから関心の対象にもなっていないという、そんなような気がしましたという、そういうコメントでした。
 
【湊部会長】  ありがとうございます。これは母集団の問題で、1つは、このようなアンケートというのは、なかなか高い回答率を得られないというのは、今までいろいろなことで分かってきているのですが、今回、割合では今御指摘のとおりでありますけれども、絶対数から見ると、人社系では1万3,000人もの学生が回答してくれています。それから、理工系でも3,000人弱ですね。そういう意味では、母集団としてはかなりの数が集まったのかなとは思っています。
 それから、所属大学の特性というのはなかなか難しいですけれども、2ページにありますように、人社系の場合は、割合はともあれ答えてくれた回答数から見ると私立大学が多いです。1万人の学生は私立の学生で、2,500名が国立大学の学生です。それに対して、理工系・農学系の学生は、国立大学の方が多くて1,500名、私立大学が1,100名ということです。ですから、確かに機関別で言えば人社系の場合は、かなり私学が多いということは事実としてあるのだろうと思います。
 今の御指摘の点について、さらに、回答してくれた学生たちが多い集団はどういうタイプの大学で、どういう特性があるのかということは、もし可能であれば少し追跡をしてみたいと思います。ありがとうございます。
 それでは、次に小長谷委員、お願いできますか。
 
【小長谷委員】  ありがとうございます。それより先に、室長がその回答をしようとしていらっしゃったのですが、その後でも私は良いです。
 
【湊部会長】  髙見室長、何かコメントがありますか。
 
【髙見高等教育政策室長】  先ほど湊部会長がおっしゃっていただいたとおりだと思っておりますけれども、これはいろいろな大学に調査をかける中で、相当回答率にはばらつきがあるというのが実態でございまして、1桁台の回答率のところから、比較的30%近く回答している大学、若しくは40%ぐらいの大学とか、かなり多岐にわたっております。一方で、このサイレントメジャーの問題については、これは非常に難しい問題で、かなり調査の限界の部分ではあるのかなとも思っておりまして、今後またこういったことを考えていくときには、そういった視点にも留意しながら調査をしていかなければいけないと改めて考えております。
 補足ですが、以上です。
 
【湊部会長】  ありがとうございます。それでは、小長谷委員、お願いします。
 
【小長谷委員】   ありがとうございます。問題があるとしても非常に貴重な調査をしていただいたと思います。ですので、私はいかにしてここから光を見いだすかという方向で見させていただきました。
 それで、光を見いだしたまず第1点は、大学院への進学を希望するようになった時期の問題です。理工系がもう入る前から考えていたのに対して、人社系は大学4年になってからという。それは遅いのではなくて、正に大学における教育効果が出ているということだから、大学で学んでいらっしゃるのだと、そういうふうに見て良いのではないかと私は思いました。
 第2点は、しかも他大学の、その大学ではなくてよその大学院へ行くということですから、インブリーディングではないです。自分の学びたいテーマはここだとか、先生はここだというふうに、あるいはもっと世俗的に将来の就職を考えたらここだとかなのかもしれないですけれど、いずれにせよ、ずるずるっと進学するのではなくて、何らかの学びがあってこその転身ですから、移動するという選択もまた教育効果だと見て良いと思うのです。だから、人社系で大学院へ進学をお勧めするなら、いつ、どのように、誰に話しかけるかというのがこのアンケートで出てきて、高校生に言わなくても大学に入ってから言えば良いのだと理解しました。
 あともう一つ、今日は御紹介はなかったけれども、アンケートの中に、教員に魅力がないからという項目は選ばれていないのです。だから、先生に対する不信感から大学院に行かないのではないということで、それも安心材料の1つで、先生方が自信を持って言ってくださったら良いのだと、私はそういうふうに光を読み取りました。
 以上です。
 
【湊部会長】  ありがとうございます。今の御指摘のデータも、私も随分注目したところでありまして、人社系の学生の方が大学に入ってから、2年、3年、特に3年生になってから大学院進学を希望するようになったという人が、明らかに理工系より多いですね。しかもそういう学生たちの半分弱、4割程度が他大学の大学院を考えている。これが何を意味しているのか、どういうことなのかということは、もう少し見てみる必要があります。先ほど言いましたように、人社系の場合は私学の学生たちが多く、それは例えば大学の規模のようなことなのか、つまり、大学の学部へ入って新たなモチベーションが勉学の過程で出てきて、更に大学院まで進みたいと思ったときに、大学院へのアクセスがどの程度そういう学生たちに開かれているかというようなことによるのか等、ここはもう少し詳しく検討する余地があるのかなという気はしております。小長谷委員の御指摘のとおり、私も、ここはどちらかといえば非常に元気づけられるデータだと思います。先ほどニーズがあるかどうかということが挙げられましたけれども、学部の勉学の過程でそういうニーズが確かに、人社系では特に、一定の割合で確実に生まれてきているというのは、非常に元気づけられるようなデータかなと個人的には思っております。
 それでは、次は加納委員ですか、お願いします。
 
【加納委員】  ありがとうございます。28ページの部分、村田委員のコメントにかなり近いのですけれども、実は、これを見ると、2つ目の賃金や昇進スピードだけではなくて、その2つ後の企業や他の大学院とのつながり、それからその次、社会全体で大学院卒業者の採用が増える、2つ飛ばして、大学院教員としての安定した職が確保しやすくなる、その2つ先の、大学院での経験を通じて、民間企業等で幅広く活躍できるスキルが身につくというふうに、これはほとんどがキャリアパスに関するメッセージだと思います。そういう意味で人文社会系、理・工・農はかなり解決できていると思うのですけれども、人文社会系の大学院への進学の促進に対して、大きな要素というところにキャリアパスというものが関与しているのではないかなと。逆にこれを、いろいろなアンケートがあったのですけれども、これを逆に裏返すと、こういったところの課題、問題から進学をギブアップする、あるいは躊躇するという、そういうケースができているのではないかなと捉えました。
 以上です。
 
【湊部会長】  ありがとうございます。これも非常に重要な御指摘であると思います。経済的支援ももちろんここにありますけれども、しかし、それが非常にドミナントというよりは、それ以外にも実は今御指摘にあったような卒業後のキャリアパスにかかるいろいろなことがもう少し学生側に分かりやすくなれば、大学院のキャリアパスを選ぶ用意があるというようなことだと推察しております。ありがとうございます。
 では、佐久間委員、お願いいたします。
 
【佐久間委員】 よろしくお願いします。私も進学を決めた時期が3年生という点については注目したいと思っているのですけれども、ただ、全体から見れば、結局、進学を希望している人は少ない、そもそも進学を考えていない人が多いということも一方ではあります。この学部3年生という時期も、最近はだんだん就活の時期が早くなってきていて、まだ3年生なのに就職か進学か決めなければいけない。その決めなければいけないというプレッシャーの中で、進学を希望する人もこれだけいるということは少し力づけられるところではありますけれども、ただ、学部3年生というのは、まだ専門的なことを学び始めた段階なわけですから、そういう段階でこのような選択を迫るのはそもそもどうなのか、というところはあるかなと思っております。コメントです。よろしくお願いします。
 
【湊部会長】  ありがとうございます。そうですね、ここは、何度も申しますが、これが何を反映しているのか、単一ではないと思いますが、可能ならばもう少し深掘りすべきところかもしれないです。ありがとうございます。
 それでは、迫田委員、お願いできますか。
 
【迫田委員】  迫田です。先ほどの3年生のところというのも気になったのですけれども、私、16ページのところで非常に気になったのが、純粋にその能力を高めたいとか、研究したいテーマがあるというところに対しては高い評価、多くの方がそうだと答えておられるのですけれども、一方で、想定していた大学教員とか研究者になるためというところは意外に低いのと、3つ目のところで、その就職活動がうまくいかない・学生でいたいからというところが高いということを考え合わせると、キャリア意識があまり明確でないのではないかなと推測できるなと感じました。若干どうして良いかよく分からないので、3年生ぐらいになって大学院でも行こうかみたいなところがあるのかなという点が、非常に心配な点として感じたので指摘をしておきます。
 以上です。
 
【湊部会長】  ありがとうございます。確かにそういう理解もできるのかもしれません。これは本当にもう少し知りたいところですね。大学教員や研究者になるということを意識的に希望する学生は、このデータで見る限り人文・社会、どちらもそんなに多くはないわけですよね。一方で、これまでのいろいろなデータでも、人文社会系のキャリアパスとして、どうしてもこの大学教員や研究者のような非常に限定的なところしかレパートリーに入ってこないという社会的な状況もあり、学生としては、もう少し社会、企業等々も含めて社会全般との関係性を希望するというデータも出ている。そういったことを全部ファクターとして積み重ねていくと、今我々がここで議論をしている主要な目的である、人社系にとってどのようなキャリアパスが社会全体として準備できるのか、特に明確なモチベーションのある学生に対して準備できるのか、という全体像が浮かび上がってくるような気もいたします。ありがとうございます。
 ほかにございますか、和田委員、手が挙がっておりますが。
 
【和田委員】  ありがとうございます。よろしくお願いします。大変充実したすばらしいアンケートを御説明いただきまして、ありがとうございます。入り口、それから中身といいますか大学院の課程、そしてキャリアパスを含めた出口、それぞれに対しての今後の対策などが浮かび上がってくるのではないかと思いました。
 その中で、こういった大学院を選ぶ際に、これだけ例えばデジタル化とかデジタル人材という言葉が言われている。そうすると、人文社会系の学生が、例えば理系の方に行きたいとか、そういった動きというのはこの中からどれだけあるのか、あるいはそのまま人文系から人文系の方に行くのか、こういったところというのは読み取れるのでしょうか。
 また、これだけいろいろな大学でも文理融合という言葉が1つキーワードになっていると思います。文理融合の学生たちはここに入っているのか、もし入っていればどういう動きだったのか、こういったところがもし分かりましたらお教えいただけませんでしょうか。
 
【湊部会長】  ありがとうございます。非常に大事なポイントだと思いますが、そこまで意識して調査されたかどうか、髙見室長、何かこれについてコメントはありますか。
 
【髙見高等教育政策室長】  まず、文理融合が入っているか否かということについてですけれども、そちらについては、基本的には対象となっていないということですので、そういった意味では、今後の課題として考える必要があるのかなと考えております。
 それから、分野の話ですけれども、これは9ページを御覧いただければと思いますけれども、進学を希望する大学院の分野というのは、現在在籍する学部・学科の分野と同じかという聞き方になっておりますので、必ずしもこの文系から理工系ですとか、また、理工系から文系とかというのをまたいだ形での質問事項になっておりませんので、例えば、人文から社会科学とか、そういったものも含まれておりますけれども、その中では、こちらの上の方を見ていただきますと、全く同じ・ほとんど同じと回答している学生が人文社会系ですと約66%、理・工・農系ですと約87%ということで、逆に全く異なると回答している学生がこの緑の部分でございますが、人文社会系で9.8%、また理・工・農系で2.1%にとどまっているといった結果になっているところでございます。
 
【和田委員】  ありがとうございます。
 
【湊部会長】   どうでしょうかね、同じ分野でないというのがどの程度のことを意味するのか、これだけではうまく意図が伝わっているかどうか分かりかねますが、理・工・農というのは、ある意味スペシャリティーが非常に限定的なので、分野を変える学生はほとんどいないようですが、人社系では、同じ人社系の中でも系統が違うというか、例えば人文から社会、社会から人文というような範囲に収まっているのか。急に人社系から理・工・農へというのは難しいのでしょうけれども、もう少し複合系の領域まで含んでいるのか。ここはもう少し深掘りした調査をさせていただきたいと思います。御指摘の点は非常に大事な点だと思います。ありがとうございます。
 
【和田委員】  ありがとうございます。よろしくお願いいたします。
 
【髙見高等教育政策室長】  先生、すみません、1点補足させてください。よろしいでしょうか。
 
【湊部会長】  どうぞ。
 
【髙見高等教育政策室長】  先ほど冒頭に答えたその学部・分野でございますけれども、3ページのグラフを御覧いただければと思いますが、先ほど、学際的なところというのは基本的に除かれていると申し上げましたが、このグラフで見ると、例えば人文社会系でその他という分野がございまして、その中の上記以外というのが人文社会系だと472人、理・工・農系でも74人と入っておりますので、詳細にはまだ十分分析はできておりませんけれども、この中に先生がおっしゃるような学生というのが一部入っている可能性というのは、あり得るのではないかと思っています。若干訂正させていただきます。失礼しました。
 
【湊部会長】  分かりました。ここはもう少し調べましょう。
 
【髙見高等教育政策室長】  はい。
 
【湊部会長】  それでは、須賀委員、お願いできますか。
 
【須賀委員】  御説明をどうもありがとうございました。いろいろなものが見えてきたような気がしておりますが、先ほど説明していただいたところで重要だと私自身が思っておりますのは、次の点です。大学院に進学する理由が、自分の能力を高めることだということが非常に多いというのは、安心できることだと思います。その一方で、我々が議論してきたように、人社系の場合、大学院に行く理由は、ほとんどが大学教員になることなのだと、あるいは研究者になることだと考えていた。あれは、恐らく博士課程まで入れてで、ここで大学院の進学というのが、修士も含めて捉えているので、だから低いのかなというのが1つ。その辺りを実際にもう少し調べてみていただきたいなという気がしております。
 それから、大学院に進学して良い収入を得るということが目的ではないのだという点。ということは、大学院で学ぶことが就職に有利であるとか、その先にどんなものが待っているかということについてはあまり意識していない。では、能力を高めた後に何がしたいのだろうというのがいま一つ分からなくて、そういったことがどういうデータから読み解けるのかなというのが1つ不安なところです。つまり、技能を高めてくれた人たちがキャリアパスの面では非常に不安を持っていながらも、なおかつ進学しているということで、まだまだ捨てたものではないなと思う一方で、我々がそういう自分の能力を高めたいという学生に対してどういうサポートをしていかなければいけないのか、その辺りで問題が非常に大きいのかなという気がしております。いろいろなサポートの話は出てまいりましたけれども、こういう能力と直結した形で、彼らが何を考えているのかというのをもう少し知りたいと思いました。
 以上です。
 
【湊部会長】  ありがとうございます。大事な点だと思います。これだけのデータからどれだけの情報を掘り起こせるか、もう少し検討をさせていただきたいと思います。ありがとうございます。
 それでは、宮浦委員、お願いできますか。
 
【宮浦委員】  ありがとうございます。先ほど議論になっておりました、回答者が人社系は私立大学の学生が多くて、理・工・農は国公立が多いということでしたので、大学院で他大学に移る学生が人社系で多い理由は、学費である可能性が一部あるなと感じました。5年間の学費負担というのは、私立大学の場合は極めて大きいですので、そこで比較的何とかなりそうな国公立の大学院を目指すという、もちろん分野は重要なのですけれども、学生の身近な問題として、回答者が人社系は私立が多いのであれば、外に出て学費を抑えたいと、国立で学修をされたいと感じるのは、十分考えられると思います。
 逆に、理・工・農の方は、国公立の学生、大学の回答者が多いようであれば、自学、自分の大学を志向してそのまま進学するという、学費の面は、まずそれで十分に考えられると思いますし、あとは、理・工・農の場合は、修士から博士などで、分野を変えたいという学生もいるとは思うのですけれども、実験系などでは、ある程度卒論から修士で、更に深掘りしたいがために博士後期に進学するという傾向が強いと思いますので、理・工・農、国立の回答者が多い、自学志向ということで、学費の問題が裏に隠れているなと感じたところであります。
 もう一つ、先ほど話題になっておりました、大学院生が就職活動をして、いま一つ自分の納得のいく就職活動の結果が得られなかった場合に、取りあえず学生をして、就職浪人的に大学院に入って勉強を続けておいて、1年後といいますか、実質半年後にもう一度希望の就職にチャレンジするというのも確かに考えられるなと感じたところで、人社系ですと学位を取るのが長引くのが問題だと思っていたのですけれども、3年で取れない。意外と1年か2年で早い段階でやめている可能性もあるのかなと思って、その辺りは注視すべきかなと思いました。
 以上です。
 
 
【湊部会長】  ありがとうございます。確かに議論すればするほど、先ほどのデータの解釈にはいろいろな要素が含まれてくるのかなという気がします。それでは、続けたいと思います。
 堀切川委員、お願いします。
 
【堀切川委員】  堀切川です。膨大なアンケート調査をしていただいて、有り難うございます。よく見るといろいろ面白い点がたくさんあると思います。人社系の学生の皆さんは、結構正直に答えたというのが私の印象です。目先の就職の有利になるからという答えが少ないというのはそのとおりで、その上で、でも大学院に行きたい人は一定比率いるということは、本来の大学院の意味からすれば、それで良いのではないかなというのが率直な感想です。
 ただ、学部の学生の段階で、人社系の学生が大学院を終わった後幅広いキャリアパスがあり得るということを知らされていないのではないかなという気がしました。そのため、大学院に行かなくても良いという人が多いのかなと感じました。大学院を出た人社系の人が大学教員以外でも数多く活躍している人がおられるので、そういう人たちの活躍の情報を学部学生の段階で伝えるというのは、効果的であると今回のアンケートから私なりに考えたところです。
 あとは、8ページ目ですか、人社系の学生が、大学院に希望する先が自分の大学以外が多い、特に社会科学の人たちは5割以上が他大学を希望しているという理由が、私にはつかめませんでした。ひょっとして研究テーマが人文系、社会系とも広いので、なかなか自分のやりたいことに合うところが自大学に見つからないという意味なのか、この後は言いづらいのですが、自分の大学の先生方は大した人がいないので、こんなところでは行きたくないというのが本音なのか、私は、後者であったら非常にゆゆしき事態だなと感じました。  大学院教育にふさわしくない先生方がたくさんいる大学があるのではないかと、やや心配になったというのが率直な感想であります。
 以上です。
 
【湊部会長】  ありがとうございます。ここは先ほど私も少し触れましたけれども、日本の理工系と人社系のデータが非常に明確に分かれるところで、逆に言えば日本の理・工・農系の学生の85%以上がそのまま自大学の大学院へ進むというのは、欧米で考えればかなり驚く数字だろうと思います。まず、この数字が日本特有の数字であるというのが1つ。それに比べて人社系の4割超の学生が他大学を希望しているというのは、今、堀切川委員の御指摘のとおりで、その要因が何なのか。例えば、自分の大学が、極端な話、非常に規模が小さくて選択肢が非常に限定的になっているのか。あるいは、私学と国立との間の、先ほど御指摘があったような経済的な授業料等々の差を反映しているのか。その辺りのところは非常に重要で、人社系の学生たちの一部は、他大学大学院を希望するぐらいに意欲はあるのだと言えるかもしれません。自分がフィットするところがあれば是非大学院に行きたいという学生が、母集団のN=13,000ですから、ほぼ1,000人以上の学生がそういうふうに思っているわけです。これは非常に注目すべき数字で、できればもう少しこれらの背景にあることをうまく抽出できれば、もっとデータの意味が出るのかなと思っております。ありがとうございます。非常に大事な御指摘だと思いました。
 それでは、永井委員、お願いいたします。
 
【永井委員】  ありがとうございます。資料を頂いてから何度も見直して、非常に意義のある調査だと考えております。
 私のところで少し気になりましたというか、注目しましたのは、7ページにございます現時点での大学院進学に関する考えで、今は進学しないが、いずれ大学院で学びたいという、例えば社会人学生などを考えているという人文・社会の方々が一定数、1割以上おられるということで、これは、制度次第では非常に重要なポテンシャルではないかと思いました。
 一方で、大学院進学が、単に個々の方々の学歴を上げることにしかならないようではもったいない話で、産業や社会で活躍していくということを考えますと、人文社会系は、行政や自治体で仕事を持たれる方や教育職に就かれる方もおられますので、社会的なそのロールモデルが明確化されれば、この辺の意欲というものをどうつなげていくかというのは、大学院側の受皿の見せ方があるかと思いました。
 一方で、通常の就職であるならば、4年制を卒業した後で十分活躍していることの根拠にもなっておりますので、高度職業人材であるとか、日本の社会的課題を解決する何かのロールとのひもづけで、人文・社会の大学院の意味はこういうことがあり、こういう期待がかかっているのだよということを明記してあげることも必要かなと思いました。一般には、単に学歴の問題と解決されてしまうと、非常に大きな誤解を招いてしまいますので、日本は非常に基礎的な教育で十分社会で活躍するだけの力がついている、その上での大学院の役割ということがあると思います。
 あと1点だけですが、このデータでよく見えなくて、私が興味を持ちましたのは、人文系の学生さんというのは、かなり留学経験のある方も一定数おられると聞いていますし、短期留学や語学力を含め非常に高いポテンシャルを持っておられる。その留学とこのデータの関係性を考えると、仮に海外大学院への留学を考えているなどというような資料があったら、またいろいろな議論になるかなと思っております。
 以上です。
 
【湊部会長】  ありがとうございます。これも大変大事なポイントだと思います。データが取れるかどうか、少し調査をしたいと思いますが、今の御指摘で、これまで人文・社会とまとめて一緒にしてきましたけれども、ここには人文と社会を分けたデータもあって、傾向的には似ていますが、幾つかの面で違いが、程度の差こそあれ、結構あるのですね。例えば、社会系の方が、私の想像に反して、人文系に比べて大学院に進学するつもりはないという学生が多い、あるいは進学希望者が少ないというのが強く出ているような気もいたしますので、この辺りについてももう少し後で議論をさせていただければ有り難いと思います。
 大分予定の時間を過ぎていますが、追加的にもし何かあればお受けしますが、よろしいでしょうか。
 それでは、議題(2)に絡んで、またこの点が出てくる可能性もありますので、議題(2)へ進ませていただきたいと思います。議題(2)は、いよいよこの「人文科学・社会科学系における大学院教育の振興方策について」、私どものこの審議のまとめをそろそろ考えるためのたたき台といいますか、素案を準備させていただいております。
 それでは、まず事務局の方から、その素案について概要を説明いただいて、その後少し議論をさせていただきたいと思います。
 では、髙見室長、よろしくお願いします。
 
【髙見高等教育政策室長】  改めまして、資料2-1を御覧ください。先ほどお話もあったとおりですけれども、昨年8月に大学院部会では中間まとめを取りまとめていただきましたけれども、本資料というのは、その後の審議を踏まえつつ、審議まとめの素案として提示するものでございます。
 まず、この1ページ目の目次を御覧いただければと存じますが、大きく5つの章に分けております。1章で「はじめに」としまして、今回の検討の背景等について紹介した上で、2章で「人文科学・社会科学系大学院の現状」について、3章では「今後の人文科学・社会科学系の大学院の在り方」として、改革の背景、方向性を示し、4章では「具体的方策」を記載した上で、第5章に「大学院教育改革に向けた今後の取組」という形でお示しをしているところでございます。
 2ページ目及び3ページ目を御覧いただければと存じます。まず2ページ目でございますが、第2章の「人文科学・社会科学系の大学院の現状」としまして、進学率ですとか学位取得者数といったデータに加えまして、先ほど御議論いただきました学部学生の意識調査についても、大学院進学の意識、大学院への期待・教育研究のイメージ、キャリアパスや将来のイメージの3点に区分した上で記載をしているところでございます。
 4ページ目を御覧いただけばと存じますけれども、大学院入学後の状況及びキャリアパスの実態について、特に主立ったデータをお示ししております。
 6ページ、7ページを御覧ください。駆け足で恐縮ございますが、「今後の人文科学・社会科学系の大学院の在り方」について、改革の背景と方向性を整理しております。その中で、特にこの6ページの下から2つ目の丸、「また」以降のところでございますけれども、価値発見・価値創造的な視座を提供する人文科学・社会科学分野への高い期待について述べた上で、その下の丸でございますけれども、新たな技術が進展する中、これらの技術がもたらす倫理的・法制度的・社会的な課題への対応等における人文科学・社会科学の知見の重要性について強調してお示しをしております。
 次に、7ページ、2ポツの改革の方向性というところでございますけれども、この1つ目の丸のところ、「我が国が」以降でございますけれども、社会の要請も踏まえつつ高い付加価値を生み出す人材の育成・活躍に向けて、大学院への進学者の増加を目指す必要がある旨、記載をしております。
 その上でということでございますけれども、改革の方向性の3つ目の丸、「そのためには」以降の文章でございますけれども、まずマル1としまして、社会的評価や認知の不足に関する課題を改善する取組を進め、キャリアパスを開拓・拡充していくこと。また、マル2として、大学院教育そのものの課題への改革を進め、学生はもとより産業界等にとっても魅力的な教育研究環境をつくっていくことを示しております。
 更にその次の丸でございますけれども、この掲げたマル1とマル2の課題というのは、それぞれが相互に密接に関連しており、同時に対応を進め、全体としての解決を目指していくことが必要である旨、明記をしております。
 次に、8ページ目を御覧ください。8ページ目の下の方から、「具体的方策」でございますけれども、この中で先ほど申し上げた社会的評価の向上と認知の拡大という出口の取組と、それから、後ろに出てきますけれども、教育研究指導の強化という大学院教育そのものの取組とを大きく2つに区分してこの具体的方策を整理しております。
 まず、(1)の育成する人材像の明確化としましては、大学、産業界それぞれが取り組むべき視点を明記しております。また、次の9ページに移っていただきますと、(2)の部分でございますけれども、大学間・企業等とのネットワーク型教育の推進としまして、スケールメリットを生かしたチーム型教育への転換ですとか、また、産業界との連携・協働による求める人材ニーズの把握・分析、これに基づいた教育改善等について記載をしております。更に(3)国際的な大学間連携の推進としましては、海外の大学院との連携の必要性についても強調して記載しているところでございます。次、10ページを御覧いただけばと存じます。(4)のリカレント教育の推進では、社会人の多様なニーズも踏まえた学習環境の整備とともに、企業等との連携、リカレント教育を行うためのインセンティブの提示等について記載をしております。また、次の11ページになりますけれども、(5)公的機関等における活躍促進としまして、公的機関等での活躍のロールモデルの充実に加えまして、URAですとか事務系職員としてのキャリアパスの充実についても必要性を提示しております。
 次に、2ポツとしまして、幅広いキャリアパスを念頭に置いた教育研究指導の強化に向けてとしまして、(1)として、教育課程・研究指導の質保証について示した上で、次の12ページになりますけれども、(2)では指導教員の意識改革について、共通理解が必要な事項を列挙するとともに、定期的・組織的なマネジメントを通じた改善の重要性についても記載をしております。また、次の13ページになりますけれども、(3)の円滑な学位授与の促進としまして、人文科学・社会科学分野の博士後期課程修了者の標準修業年限の超過割合が高いという課題について、円滑な学位授与を進める観点から、研究者としての「運転免許」との共通理解が求められる旨を明記しているところでございます。さらに、少し下の方になりますけれども、(4)人材の多様性と流動性の確保としまして、アカデミック・インブリーディングを抑制し、多様な人材が切磋琢磨する環境を整備することが必要である旨を記載しております。14ページ、15ページに移りますが、まず14ページ、(5)の学部と大学院の連携・円滑な接続におきましては、例えば1つ目の丸の最後のポツにございますように、ゼミを合同で実施するなど、大学院や大学院生を学部生が知る機会、これをしっかり設けていくことなど、円滑な接続を進めるための取組について具体的な方策を提示しているところでございます。
 さらに、次の15ページでございますけれども、3ポツ、情報公表の促進ということにおきましては、学位を取得するための平均年数ですとか、標準修業年限期間が満了した時点での修了者、在学者、退学者の数と割合、また、修了者の進路の全体状況等の情報の公表の必要性について示すとともに、16ページに記載のとおり、学校教育法施行規則、これは省令でございますけれども、文部科学省令においてこれらの事項について位置づけることについても示しているところでございます。
 なお、これらの具体的方策に関連しまして、先ほどの学部学生の意識調査結果についても脚注を中心に幾つか盛り込んでおりますので、併せて御確認いただければと存じます。
 最後に、第5章「大学院教育の改革に向けた今後の取組」としまして、今後のさらなる課題として、ほかの分野も含めた大学院全体の在り方について見直しを進めていくことの必要性について提示して、例えば、例示でございますけれども、大学院と社会との接続、これは就活の問題等もあると思います。それからリカレント教育、大学院における基幹教員や質保証システムの在り方等について、引き続き審議を進めていくことが必要であることを示しております。
 私からの説明は以上です。御審議のほど、よろしくお願いします。
 
【湊部会長】  ありがとうございます。まだまだ素案の段階であります。委員の先生方は、おおむね1度はお目通しいただいていると理解しておりますけれども、まず今日はこの素案について、特に構成、それから、個別の文言は別としても、内容等につきまして、御感想、御意見等を頂いた上で、この素案を基に更に詰めた報告書の作成にかかりたいと思っております。それでは、御自由に御発言いただければと思います。
 まずは、川端委員からお願いします。
 
【川端委員】  ありがとうございます。ついつい極端な話をし始めるので、何ですけれども、すみません。まず、この素案なのですけれども、ほかでも少しお話ししましたけれども、理系的考え方の下にこの人社系の大学院の活躍というのを考えているから、ついついこういうふうになっていくという。というのは、極端に言うと、民間企業とどうにか考えましょうよとかね、何かそうなっているのだけれども、実は、人文社会系の大学院の一番活躍するのは社会であって、そういう方が自治体であったり、国際機関であったり、いろいろな話の理系と違う世界観がきっとあるはずで、そこの部分をもっと強く発言していただけると、彼らの育成の仕方も、もっともっとグローバル化をやるべきだとか、何かそのような話も出てきて良いような、理系に比べてという、そんなような気がしていますというのが全体を通しての意見です。
 すみません、最初にお話しした、アンケートに関して5%程度の回答だったという話で、個性はという話を差し上げたのですけれども、私が言いたかったのは、この中で人文系でも約20%近くが大学院に進学しようとしている。一般的な統計で言えば4%とか3%しか大学院進学をしないのに、20%が大学院に行こうと思う母集団なのですよ、これ。その中の更に30から40%は大学の教員以外の民間だとかいろいろなところで活躍したいと思っている人たちというので、僕はかなり面白い母集団だと思っていて、この母集団を深掘りすると、もっと活躍するような姿の彼らのメンタリティーが深掘りできるのではないかなと思って、最初にその個性は何なのかというお話をさせていただいたということです。
 以上、コメントでした。
 
【湊部会長】  ありがとうございます。今の御意見は、私も全く同感でありまして、特にキャリアパスのところは、現実として非常に今は限定的に、特にアカデミア中心になっている。学生たちも、何となしにそれしかないから、というようなイメージでそちらに集約されているような気もするのですけれども、もっと広い人社系ならではのキャリアパスの在り方というのは、これは単に産業界云々ということでは、もちろんそれもあるのでしょうけれども、それだけでは済まないところを開拓していく必要があるのだろうと思うのです。ここに書かれている幾つかの文章では、では誰が、どこにそういうことを働きかけていくかということについて、しばしば主語がないのです。誰に対して言っているのか、誰がやるのか、ということがよく分からない文章が多いですね。そこはもう少しわかりやすい形に、手を入れていただければ私も非常に有り難いと思います。
 
【川端委員】  すみません、今の話で、是非自治体であったり、それから霞が関の国家公務員であったり、そういうところにこの文系大学院、ドクターも入れての話ですけれども、そのプロセスの中に大学がまず採用すべき集合体ではないかという、そこは、そこの意味でURAだとかUA(University Administration)だとかというものが出てきているとストーリーづけると、ロールモデルを大学がまず作るのですみたいな、そんな話もあって良いような気がしました。すみません、コメントでした。
 
【湊部会長】  ありがとうございます。そういうかなり具体的なイメージを提示していかないと、また一般論で終わってしまうのではないかという懸念もありますので、川端委員のおっしゃるとおりだと私も思います。いろいろまたその辺りについての具体的なケーススタディーのようなものを含めた例示があれば、現場で受け入れる方ももっと分かりやすいかなという気がします。ありがとうございます。
 それでは、小西委員、お願いできますでしょうか。
 
【小西委員】  どうぞよろしくお願いいたします。IVの具体的方策を拝読させていただきました。ここに書かれていることは、これまでも何度も取り上げられていることだと思いますが、特に1の社会的評価ということに関しましては、私、現在、専門職大学院に所属しているので、これを念頭に置きながらずっとやってきたということなのですが、この1と2の中で一番特徴的だったのが、2の(2)の指導教員の意識改革、これが私は人社系と自然科学系で大きく違うのではないかなとこれまでの経験上、思っております。その2の最後のポツのところに、指導教員の意識や能力の問題は、大学院組織としての責任問題であると書いて、全くそのとおりなのですが、これまで、私は社会科系ですが、人文とか理系の先生といろいろ話すと、研究分野によって教員の意識が物すごく違うんだなということを感じておりますので、できればこの教員の意識調査、今どういうふうに教員が思っているのかということもアンケートをしてみれば面白いのではないかなというような感想を持っている次第です。
 以上です。
 
【湊部会長】 ありがとうございます。御指摘の点はそのとおりだと思います。おっしゃるとおり、実はアカデミア側にも問題がありまして、自然科学系に比べてあまり標準化されていないと言いますか、随分多様であるというのがこれまでの議論でも出てきたかと思います。常に多様なシステムを、これはよかれあしかれですけれども、人文系の場合は取っているというようなところがあって、恐らく横の連携が、あまり取れていないことが背景にあるのかもしれないと思います。御指摘の点は、特に人社系の大学院においては非常に重要な点だと思いますので、もう少し検討をさせていただきたいと思います。ありがとうございます。
 では、迫田委員、お願いします。
 
【迫田委員】  ありがとうございます。具体的なこれからの改革の方向として、情報公表の促進と項目を立てていただいたのは、大変心強いなと思いました。環境にしても、今の人的支援経営にしても、開示するということが単なるその数字を表に出すとかそういうことにとどまらなくて、今、我々も取り組んでいますけれども、変革につながってくると思いますので、まずは数字を出して見える化するというところからスタートをすると。これは本当に大事だと思いますので、是非これを強調していただければと思います。
 それから、意見なのですけれども、8ページのところにジョブ型研究インターンシップのことを書いていただいておりまして、これは大変うれしいのですが、こういうので、特に産業界との結びつきという点では、学生も産業界を知ると、産業界も学生を知るということで非常に重要だと思うのですが、一方で、これ、書きぶりとしては、博士課程のみの対象に見えるのですが、そういう書き方で良いのかというのが少し気になっているところでして、その下の丸のところでは、まず人文社会系はその修士のところ、こちらを改革していかなければいけないという方向性を書いていただきながら、一番そこの出口の問題として大きなジョブ型インターンシップのところは博士課程だけというのは、何となく成功しないのではないかなと。今の時点では少し遠いのかもしれないのですけれども、方向性としては、ジョブ型のインターシップを修士にもやっていくということで出口のところをうまくつなげるということができるのではないかと思いますので、そこについては御意見を伺いたいと思います。
 以上です。
 
【湊部会長】  ありがとうございます。御指摘の点は了解いたしました。ここはもう少し詰めて書きぶりを考えたいと思います。ありがとうございます。
 それでは、高橋委員、お願いいたします。
 
【高橋委員】 ありがとうございます。この取りまとめに至るこれまでの私たちの議論は、もう少しエッジが効いたり、シャープだったり、厳しかったりしたのではないかという問題意識の下に、4つほど少し具体的に申し上げたいと思います。
 まず1つ目、多分該当箇所はページ3の(3)辺り、キャリアパスだと思うのですが、見ていただかなくても大丈夫なのですけれども、先ほどのアンケートのところにもいろいろな御議論があったと思いますが、大きくまずバックグラウンドが人社と理工と違うよねというところの、この取りまとめに関する重要な前提で欠けているのではないかと思う情報は、理工系においてはマスターに行った後企業で、それが人社系においては学部卒で企業というのが現在のメジャーな路線であると。それに対して今回はということなのではないかと思います。この前提を抜いてしまうと、なかなか、すごくふわっとしたところになってしまうのではないかと思うので、これは是非前段の方に文言として入れていただければと思います。
 よりきついことを申し上げますと、2点目ですが、7ページ目なのですけれども、「そのためには」ということで、人社系における大学院教育の良さが理解されていないというふうな記載がまず冒頭にありますが、我々はこれまで、理解されていないだけではなくて、そもそものコンテンツ自体の課題もかなり議論したのはないかと思うので、マル2の課題自体というふうに書いてあるのが、それが全然リストがなくて、実際何を我々は課題として認識して、だから今後こうなのだよねというような、文書構造としては、ここはひとつ踏み込んで課題をリストするべきではないかというのが2点目です。
 3点目、これはポジティブな話ですが、10ページ目にリカレント教育の話がございます。今後ますます非常に重要になるものだと思っていて、その意味では、文言の小さな修正ですが、今、学部卒の人たちが今後もう一回入り直すと書いてありますが、広く、先ほど御議論にあった理工系の大学院卒の方が、あるいはもう一回人社系の大学院に入るというような、そのことを是非ポジティブに明示した方が良いのではないか、これが3点目です。
 4点目、最後に、先ほど冒頭に川端委員の文系と違う世界観もというところは、もう全くそのとおりで大賛成です。それで言うと、具体的には11ページ目の(5)に、今後のキャリアパスとして公的セクターでの活躍があり得るねということで、URAも含めて書いていただいていますが、私、この大学院部会に入れていただいたときに申し上げたことの一つに、日本で非常に国際的に弱いのが、きちんとしたポジションを社会の中で持っている国際的なNGOとかが非常に弱くて、国連も含めて、2つ以上の言語とともに基本修士卒でないと職員になれないというのがグローバルスタンダードだと思います。そういう意味では、理工系の人がぽんと入るのもありですが、インターナショナルにおいては、人社系のマスター卒の方たちこそが新しい器として社会を変えていく、この部分をより積極的に書いていただくことが良いのではないかと思います。
 以上4点、よろしくお願いします。
 
【湊部会長】  ありがとうございます。おっしゃるとおりで、随分エッジの効いた議論をしてきたつもりなのだけれども、文章にするとどうも単調な感じになっていますね。
 
【高橋委員】  可能な範囲でよろしくお願いします。
 
【湊部会長】  それを言われると私も面目ありません。ここではあくまでも人社系の大学院について、現在の問題点を明示的に示しながらどういう方策を取るかということについて、もう少し思い切った書きぶりと内容になるよう、これらの議論を踏まえた上で、あるいはこのアンケートを踏まえた上で、もう少し熟議させていただきたいと思います。
 
【高橋委員】  ありがとうございます。
 
【湊部会長】  よろしくお願いいたします。
 それでは、塚本委員、お願いします。
 
【塚本委員】  どうもありがとうございます。2点だけお話しさせていただきます。
 先ほど迫田委員からもお話がございましたが、情報公表のところで、施行規則改正も含め、実効性のある記載を入れるのは、具体的なアクションが伴って良いと思います。民間の側にももしもアクションを求めるのであれば、現在人的資本の開示については、3点、具体的には、女性管理職比率、男女間賃金格差、男性育児休業の取得率となっていますが、加えてリカレントに対する企業の取り組み、大学院に行っている人の数などを入れるなどもありえるのではないかと思います。人文社会系の方で、社会に出た後で大学院に行きたいとした学生も多々おられましたので、会社の人的資本関係で開示している情報を見て、この会社に行こう!と考える参考になるかもしれないと考えます。逆に会社側にとっても、優秀な人材を惹きつけるための社員への投資の一つとしてアピールできるかと思います。
 それから2点目が、今後の議論をするべき5のところですが、どの国からどれくらい留学生を招聘するかなどの議論もあっても良いかと思います。今は一定の国に47.1%くらい依存していますが、アフリカやインド、中南米など、グローバルサウスに広げていって、留学生と日本との関係を含め、更に企業や機関との関係を深めていく必要があるのではないかと考えます。もちろんどこか別の部会でなさっていればこちらでする必要はありませんが、経済安保的な関係も含めてバランスよくどこかで考えた方が良いのではないかと思いました。
 以上です。
 
【湊部会長】  ありがとうございます。御指摘、承りました。
 それでは、神成委員、手が挙がっていますか。
 
【神成委員】  ありがとうございます。昨年の議論のときにも意見を申し上げたのでありますけれども、冒頭の課題意識のところで、あまり逼迫した危機感というのが見えてこないまま、ふわっとした形で議論に入ってきてしまっているように思います。取り沙汰されているのはOECDにおける統計データで、他先進国に比べて進学率が少ないですよというその数字が冒頭の課題意識のところにぼんと出てくるわけです。しかし、日本における人材育成は、学部を出てからオン・ザ・ジョブ・トレーニングで力を持っている産業界が育ててきたという日本独特の人材育成の歴史があるわけであります。しかし近年は、各企業の体力が落ちてきているので、政府、自治体、企業、NGO、いろいろな団体において、新事業展開とか社会課題解決のためには、組織内で育成していたのでは人材が足りない。該当する分野の即戦力人材、すなわち、モノよりも人に対しての学問を修めてきたような人材が少ないので困っているのですよという課題意識が冒頭にないので、何のために文部科学省中央教育審議会がこの進学率を上げるために頑張っているのかというところが一般の人にはなかなか読み込めないのではないかなと思います。
 それで、読んでいきますと、「改革の方向性」というところの冒頭にそれらしいことが書いてあります。我が国が持続的な成長・発展を実現し、国際的な競争力を高めていくためには、人文科学・社会科学分野の高度人材の活躍の機会を増やしていくことが不可欠であるということが、そこのところに初めて出てくるのでありますが、そういう結論に至るための、産業界であるとか、自治体であるとか、NGO等の人たちからこういう意見がたくさん出ていて日本全体が本当に困っているのだという具体的な実態がそこになく、我々だけがこういう問題意識を持っているかのような書き方になっているのが、非常に説得力に足りないのではないかなと思っております。
 去年も「誰が困っているの?」という疑問を呈しましたけれども、結局、大学の先生が研究者不足で困っているのか、進学しようと思っても進学できないたくさんの学生が困っているのか、産業界が困っているのか、いずれにおいても明確に困っている人が見えないというのが私は問題点かなと思っております。
 以上です。
 
【湊部会長】  非常に大事な御指摘だと思います。ありがとうございます。おっしゃるとおりだと思いますね。大体こういうものを作ると、統計的数字が出て、数字がほかのOECDより低いから大変だ、というような話で終わってしまうのですけれども、あまり説得力がないですね。御指摘、承りました。そもそもの問題意識のところから現状に即して問題点をまずきちんと整理する、ここは単にパーセントの問題ではないのだということから解き起こすようにさせていただきたいと思います。ありがとうございます。非常に参考になりました。
 それでは、永井委員、お願いします。
 
【永井委員】  ありがとうございます。先ほどの人文社会系、人文系・社会系のそれぞれのロールモデルと大学院教育というのを明確化するということで、川端委員のおっしゃっていたような話に加えまして、自治体等に加えまして、やはりその大学の中でも人文社会系の活躍の場というものがあるので、そうしたことも明記していくと、この中教審から出す中では意義があるのではないかと。ユニバーシティーというのは、最近はもうチームサイエンス、組織力として見られていますので、日本のそうした大学の中での新たなキャリアパスを自ら見せるということも大事かなと思っております。
 私は、この中で一番気になりましたのは、13ページ等にございます人材の多様性と流動性の確保のところで、項目からすると11ページの幅広いキャリアパスを念頭に置いた教育研究指導の強化に向けてのところなのですが、中身が、アカデミアにもともとあった問題が結構入り込んできていて、研究室内部からの人材の登用などというところと、実際にはこうした高度教育、職業人材の育成とか、リカレントやリスキル人材に対する十分な質保証ができるのかという話とが少し交ざっているような印象を受けます。
 例えば、人文系の大学院のこれからのニーズに応えていくためには、ここで人材の多様性や流動性の確保をしなければいけないというのは、大学院の仕組み、システムが改革されていくこととも直結しているのではないかなと思っていまして、それが、その人文系の教員がなかなかアカデミックポストに就けないよみたいな話が混在している印象を受けました。
 強調したいのは、その人文系の高度人材とキャリアパス、それを育てるための大学の質保証のやり方としてきちんとした役割分担、身近なところからシステムをきちっと作り上げていきますよというような方法のガイドではないかと思っておりますので、そうした議論を加えていただいた上で整理していただけると良いかと思います。
 あと少しだけですが、それに伴って情報公開の促進というのが、公開はするけれども、それがどう使われるのかというのがあまり明確でないような気がしていまして、退学者の数の割合とかを明示することは様々な大学でも出しておりますけれども、それをどういうふうな意味合いで読み取ってもらいたいのかのところは、明確化するべきではないかなと思いました。
 以上です。
 
【湊部会長】  ありがとうございます。そうですね、了解です。
 それでは、須賀委員、お願いできますか。
 
【須賀委員】  どうもありがとうございます。私からは、2点ほどお話ししたいと思います。
 まず、教育システムのところ、大学の教員が大学院生をどう育てていくかというところです。とりわけ博士の場合には5年でということになっているのですが、人社系の場合、多くの研究科で本音を聞くと、5年でこれだけのもの(博士号にふさわしいもの)が書けるはずがないと最初からおっしゃる先生がかなりの数いらっしゃるということで、契約違反から出発しているようなところがありますので、意識改革は極めて重要だということだろうと思います。
 その場合に、どういうときにそれが意識できるかというと、新しいコースを作っていかないと社会の問題に対応できないんだというようなときです。そうなりますと、学生を集めなければいけないので、そのときになって初めて指導の形態から5年間で何を教えるかというようなところがきちんと議論されるようになる。しかし、これまでにある既存の多くの研究科や専攻では、なかなかそういうチャンスがないので、そういう意識改革をどう進めていけば良いのかという点をもう少し真面目に考えなければいけないだろうなということが1つでございます。
 それからもう一つは、出口のところで、先ほど来いろいろな形の出口があるのだとおっしゃっていただいておりますが、確かに、私の経験でも以前いた大学では、大学院の修士を出て公務員になる、県庁に勤めるとかというような方向が示されており、そういうような経済職へ行ったり、行政職へいったりということで明確になっていて、そういうところで役に立つような修士論文を書いていくという目標がはっきりしていたのですが、意外とその大学院生がアカデミアへの就職を考えだしたときに、なかなかそのキャリアパスの方がぐっと狭まってしまって、広い世界が開かれているのだというところは、なかなか認識できないようになってしまっていると。そこ辺りをどういうふうに今後また考えていくかということですが、先ほど1つおっしゃっていただいたことの中で、大学の中には、そういう学位を取得した人、あるいは大学院を修了した人たちが働ける場がどんどん出てきていると。URAがそうでしたが、我々の大学ではUEA、ユニバーシティー・エデュケーション・アドミニストレーターと呼ぶようなものも作って、これから人材を積極的に大学院の卒業生を採用していくことを考えております。大学自体が今までの教員と職員というカテゴリーで仕事ができないようになっているので、そこにかなりの専門人材としての能力と同時に事務的な能力を要求するような、そういったものも必要になってきている。そうすると、仕事の方から逆に、先ほどのコースワークは一体どのようなものでなければいけないのかを考えられようになり、これまでと違ってくるだろうなということで、キャリアパスをどう位置づけるかによって、それぞれの教育の内容を変えていくというような、そういうルートがある程度必要なのではなかろうかと思っております。
 それから、その出口の方で、修士と博士の違いはというところで、まだ、産業界の方々とお話をすると、修士だと採れるけれども、博士はちょっとというような感じにどうしてもなってきてしまいます。修士の場合、では修士だけ特別枠があるのかというと、全くそんなことはなくて学部生と同じ給与表だと聞きます。では博士はどうかというと、博士も同様に同じ給与表だということで、最初から大学院生を採るときに、そういう大学院生を採るという意識は、企業の方にはないというのが今の状況かなと思っております。
 ですから、キャリアパスを考えるに当たって、企業の中でどういう仕事が、あるいはどういうジョブが大学院生にふさわしいのかということを大学と一緒に考えていただくというようなルートも必要ではないかということです。出口については、相当にいろいろ考えることはありそうだということが分かってまいりましたので、そういったことも少し含めていただけると有り難いと思っております。
 私からは以上です。
 
【湊部会長】  ありがとうございます。幾つかの具体的なキャリアパスのことが出ましたけれども、それは嫌でも実際に大学院研究科で教える学位プログラムやカリキュラムの内容に影響してくるのだろうと私も思います。そこが断絶していると、大学院教育でいろいろ実践しても、あとは各方面で頑張ってくださいということになってしまいますが、多分それでは済まないのではないかということもあって、そこは指導する側がどういうプログラムを作るかにかかっており、時間等のコストを考えた上でも非常に重要ではないかという気もいたします。ありがとうございます。今後十分まだ書き入れるところがあるようですね。ありがとうございます。
 それでは、横山委員、お願いします。
 
【横山委員】  ありがとうございます。私は今年度からですが、皆様の様々な議論を学ばせていただきまして、大変良いまとめだなと拝見しています。その上で、2点ほど付け加えていただくとよろしいかなと思った点を申し上げます。
 1つ目なのですが、年限がかかる1つの理由は、例えば博論などを出すときにファーストの論文を2本要求すると。私、理系から文系に来た人間ですけれども、私の周りは比較的社会科学に近い領域でして、理系と同じようにファースト論文を数本用意させて学位を取らせるという形になっております。
 そうしたときに、人社系の先生たちというのは、時間が最も大事、時間がなければ論文指導もできないし、そもそも自分も論文が書けないというところに大きなストレスを感じているわけなのですが、昨今、投稿費がどんどん高くなっているんですよね。ジャーナル、円安の影響もあって、1本我々が出すのに30万円とか普通にかかってくるわけです。しかも査読期間がめちゃめちゃ長いのです。多分理系よりも相当長い単位で査読がかかります。なので、年単位で計画を考えていかなければいけないということで、理系と全然そういうところは違うわけなのです。
 だけれど、私が常日頃問題だなと思うのは、一緒に仕事をしているドイツの若手とか、中国の若い人とか、物すごい論文生成のスピード感が全然違うのですよね。もう年に4本、5本当たり前に若い人が書いていくのです。でも日本のペースというのは物すごく遅くて、その1つの理由は、先生が論文を執筆できる、あるいは論文執筆をする余裕がないのですよね。ということで、私が非常に感じるのは、若い人が文系で研究をたくさんして良い知見を得ていくのだというときに、先生の方も研究力とその予算ですね。文系は予算が要らないのだと言うのが常識だったかもしれないけれども、そうではなくて、世界で戦っていくために予算が必要なのです。ただ、大きな予算でなくていいのです。基盤の(B)ぐらいあればやっていけるので、500万円ぐらいのお金を文系の先生たちが広く使えるように、そして時間です。時間がなければ研究指導もできませんので、文系の先生たちは、比較的教養教育をやる先生たちという認識で、研究ではなくて教育をやる先生たちでしょうという、そういう認識が大学全体で強いと思うのです。そこら辺の大学の意識を変えていく必要もあるかなと思います。具体的には、教員の研究力、あるいはその時間と予算の確保も含めて、少し文章の中に入れていただけると大変助かるかなと思った次第です。
 もう一つは、学生たちの奨学金です。理系に比べてかなり幅が狭いと感じています。企業から頂いている学生もおりますけれども、例えば、昨今のGXみたいな非常に大きな予算で文系の学生がカバーできているかというと、そういうわけではございません。その辺りの奨学金の話も是非入れていただけると大変助かるのかなと思った次第です。
 以上です。ありがとうございます。
 
【湊部会長】  ありがとうございます。指導教員の側で否応なく抱えている問題点も確かにあるということも認識していただかないといけないということだろうと思います。ありがとうございます。
 では、佐久間委員、お願いでできますか。
 
【佐久間委員】  よろしくお願いします。先ほども御指摘がありましたが、結局何のために今改革をするのかということが一方であるし、他方、人社系の大学院はこのままでは駄目でしょうというのもあるわけなのですが、その両方が大事だということはこのまとめに書いてあるわけですよね。
 その一方で、当然人社系も博士後期課程に行く人を増やさなければいけないし、キャリアパスも開拓しなければいけないし、他方、標準修業年限内で論文を書けるようにもしなければいけないというように、特に後期課程には多くの課題があります。それが全部同時に解決できれば一番良いのでしょうけれども、なかなか実際には難しいので、この今回のまとめは、基本的に、後期課程の方は、まずはきちんと限られた時間で論文を書けるようにしましょうと、そういう体制を作りましょうということがメインになっていると思うのですよね。ただそうなると、何のために改革するのかという部分とどう整合させるのかというのが少し難しくなってくるのかもしれません。とはいえ、指導の在り方を改善していくことももちろん重要です。
 標準修業年限内に論文を書かせるといったときに、いろいろやり方はあると思うのですけれども、例えば、指導をきちんとするということはもちろんそのとおりですが、そもそも入学させるときに、その能力を十分見極められていないのではないかという指摘もあるので、そこはしっかりとした選抜をやっていかないといけないですよね。ただ、そうなると、場合によっては、入学者を絞らなければいけないということも出てくるかもしれません。そうすると今度は充足率が下がってしまう。一方では、充足率のことは常に言われ続けているので、選抜をきちんとやることで充足率が下がってしまっても良いのですかという話も出てきます。そもそも充足率に関しては、収容定員で言うと、人社系は滞留しているから理系よりむしろ数字が良いのだみたいな変な話もあるわけですよ。そのあたりのことは、今回のまとめでは、8ページの「具体的方策」の直前のところ、「自らの責任において、教育研究や組織の在り方を考えていくべきである」という箇所に多分反映されているのだと思いますが、メッセージの出し方を間違えると何か変な話になりそうな気もしますので、人社系大学院の改革にとって何が一番大事なのか、そこがはっきりするような形で示していくことが必要なのではないかと思いました。
 あと、これはもう既に出ているのですけれども、このまとめの中で、11ページの辺りの一番上のところ、公的機関等における活躍促進というのはあるのですけれども、確かに言われてみると、少しあっさりし過ぎている感じがするので、そこはもう少し何か膨らませていただけると良いのではないかと思いました。
 あと1点、人社系の先生の間でも結構意識が違うという話が先ほどちらっと出てきましたけれども、それに関連して一言だけ申し上げると、課程博士論文というのは、専攻分野について自立した研究者としての研究活動等を行う上で必要な高度の研究能力を身に付けた者に対して授与するものなので、そんな大したものではないという言い方はよくないかもしれませんが、研究者としての「運転免許」として博士号を与えるのだということがこのまとめにも書いてあります。実際、博士号の意味については、人社系の先生も多分そう思っていると思うのですが、ただ、何が違うかというと、この「自立した」研究者という部分の解釈が実は結構、人社系の中でも人によって違っているのではないか。人社系の先生の中には、自立した研究者に育てなければいけないからこそ博士論文を書き上げるのに長い年月がかかるのだ、みたいなことを言う人もいるので、それこそ教員の意識調査をするというようなことがあっても良いのかなと思いました。ということで、よろしくお願いします。
 
【湊部会長】   ありがとうございます。この議論が何度も出てきたのは、教員側の意識改革といいますかね、なかなか難しいです。ありがとうございます。
 それでは、堀切川委員、お願いします。
 
【堀切川委員】   堀切川です。2点申し上げたいと思います。
 1つは、10ページ目に、リカレント教育の推進というのが(4)として上がっていますが、個人的には、人文社会系の分野は、リカレント教育に非常に向いているはずの分野なので、是非ここは強調して強く書かれても良いのではないかなという気が致します。大学院のこれからの存在意義が、少子高齢化の中でいけば、大学院こそが最高の高等教育の場を社会に開放する場だと考えております。人文社会系の分野の先生方の活躍の場は、リカレント教育に大いにあると思いますので、そこを強調して書かれても良いのかなと感じました。
 2点目ですが、12ページ目の指導教員の意識改革というところですが、たしか以前この部会で紹介されたように、人文社会系の先生方は、大学院の学生に対する教育に費やす時間も短く指導内容も非常に浅いというか、軽いということで、これは非常に大きな改革課題だと思いますので、指導教員の意識改革のところは、極めてエッジを効かせて記述した方が良いと思います。
 ただ、実際には、長年そういう形でやってきておられる組織なので、先生方個人の意識改革を強要してもなかなか進まないと思いますので、研究科とか専攻単位、組織単位で大学院の指導体制の抜本的改革を行う必要がある、ということを、これは項目を1つ設けて、そこを書き込んでいただければ有り難いなと思うところです。
 ちなみに、より突っ込んで書くなら、それができない先生は大学院の教員としては資格がないと大学は判断して人を入れ替えるぐらいの改革をしなければならない、ということを書かないと根本的に変わらないかなという気がいたします。人文系より社会科学の方に問題がいっぱい残っているのかなというのがアンケート結果から見えてきたのが、私にとって今回非常に衝撃的でした。そういう点からも、指導体制の抜本的見直しについて、専攻とか研究科が意識改革をしないと、大学院の教育改革は前に進まないと私は理解いたしました。
 以上です。
 
【湊部会長】  ありがとうございます。非常にこれも参考になる御意見で、リカレントの部分は私も御指摘のとおりだと思います。一方で最近は、リスキリングのような言葉も出てきて、これは技術的な話で、リカレントというものとも少しニュアンスが違うのだろうと思うのですが。人社系の方は、むしろリカレントという意味合いがフィットするような気が私もいたします。
 それから、教員のところも、教員個人一人ひとりにみんな頑張ってくださいと言っても、なかなかこの世界は動かないのは御指摘のとおりで、専攻なり研究科なり組織としてきちんとそういう方針を打ち出すということでたがをはめるようなことをしていかないと難しいのかなという点は、私も全くそのように感じております。ありがとうございます。
 それでは、村田委員、お願いします。
 
【村田委員】  ありがとうございます。皆さん、いろいろと、何となくぼやけているとか、エッジが効いていないとか、おっしゃっていることはよく分かるのですが、整理をさせていただきますと、もともとこの人社系の大学院の部会ができたのは、それまで大学院の理系を中心に考えてきた問題と、それから人社系、もちろん人文系と社会科学系は違いますが、根本的にそこが違うので、人文社会系を分けて考えていきましょうというところから始まったと思うのです。
 そのときに、これも何人かおっしゃっていますが、恐らく出口のところをはっきりさせないといけないと思うのです。大学院の出口をどうするかということが一番大きな問題で、そこが修士で研究者になる、人社系というのは、今でも非常に大学院生が日本は少ないのですが、研究者を育てるのだという意識が非常に強くございます。理系の場合は、国立は7割から8割、私学でも5割ぐらいは大学院、修士に行きますから、もちろん修士を出てから就職と。人社系の場合は、学部を出てから就職で、大学院に行くと研究者だとか少し特殊な職業に就くという意識があって、そこの出口のところなのですが、先ほどどなたかが誰が困っているのですかという話のときに、恐らく今、本当は困っているのだけれども、困っていることが分かっていないというのは産業界だと思うのです。今日の資料にもありましたように、大学院を出ている経営者のパーセンテージが圧倒的に少なくて、イノベーションが起こっていない。あるいは中間層、トップ層とトップの研究者、研究室レベルの話と、それを実装化する間をつなげる人がいない。恐らくこれは、大学院を出ていないと駄目だと思うのです。それは先ほど横山委員がおっしゃったような話だと思うのです。そういう意味では、出口のところをきっちりと書いていくということが恐らく一番重要なことなのだろう。そのことを企業側がまだ分かっていないということがありますから、逆に書けない。書けないといいましょうか、文部科学省としてもなかなかそこまで企業側が分かっていないとは書けないわけで、何となくこうもやっとした書き方になる。
 一方で、先ほど堀切川委員がおっしゃったように、大学側の意識改革がすごく重要で、人社系の教員は研究者を育てると思っているわけなのです。ですから、人社系の標準年限で卒業できない学生が多いのは、何とかしてマスター論文を良いのを書かせて、ドクターに行かせて、研究者の道へつなげてやりたいという親心から、もう1年頑張れとこうなるわけです。いや、そうでなくて、社会に出る、研究者ではなくて社会に出る道、それはNPOでも良いし、あるいは企業でも良いと思うのですが、そういうキャリアパスをはっきりとさせていく、ここが正にエッジだと思うのです。
 人社系にとってその部分が一番重要なところで、そこを強調しておかないとぼやっとした形になってしまいます。我々教員側の意識改革というのは、自分たちと同じような研究者ではなくて、社会に、そのまま大学院を出ても、修士を出ても社会に直結させて行かせるという意識改革が必要なのだと思います。しかしそこで、これまでよくやられていますように、ダブルスタンダードであっては駄目で、きちんと修士論文なり博士論文を書かせる。そのことが俯瞰力だとか、分析力だとか、ある意味大学院レベルの汎用的コンピテンシーがつくわけですから、そこをきっちりと我々が意識改革をしていく。それは堀切川委員がおっしゃったように、個人では駄目で、正にここに文部科学省の方からはっきりと大学側に意識改革を促すような仕組みを作っていただくということが重要なのではないかと今は思ってございます。
 私からは以上でございます。
 
【湊部会長】  ありがとうございます。これまでの議論については、今村田委員におまとめいただいたとおりだと思います。村田委員、1つお聞きしたいのですが、大学院卒で企業に入社した人のメリットや生涯給与等々のデータをお持ちだと思うのですが、大学院で人社系に限定したようなデータというのはあるのですか。
 
【村田委員】  あります。文部科学省が持っていらっしゃるのですが、安井健悟先生のデータで、人文科学系・社会科学系・自然科学系に分けてきちんと出ています。
 
【湊部会長】  それは人社系の大学院としても出ているのですね。
 
【村田委員】  出ています。そういう意味では、大学院の賃金プレミアムは明確にプラスとして計測されています。企業側もまだ分かってないのですね。データが2007年以降しか取れないものですから、恐らくここは企業側もようやく今気づきだした、大企業は気づきだしていると思うのですが、そこかなと思っています。
 
【湊部会長】  なるほど、分かりました。ありがとうございます。
 それでは、川端委員、お願いします。
 
【川端委員】  すみません、簡単に、2ラウンド目なので。1点少し整理した方が良いのは、リカレントという単語が、ついつい理系型で考えているリカレントと、今、人文社会系の中で、これは大学によるとは思うのですけれども、私が知っているようなところだと、文系の大学院の大半は留学生と社会人。こうなっていると、ほとんどの人間はそういうスタイルの人物と、それから、先ほどアンケートをされたストレートマスターと言われている人間、これでは全然リカレントというイメージも、それからキャリアパスというイメージも違っていて、そこはどこかで整理して話していただいた方が良いかなという気がしました。
 では、どう表現するのというのは今すぐ思いつかないのですけれども、少なくとも理系的に考えてしまうと、卒業してすぐ就職して、それが一体どんなキャリアパスでというこんなような話なのですけれども、今の状態だと、一旦就職した人間がもう一回大学院に入ってマスターを取るというのが、私の周りでいろいろな事務の方々の中にも起こっているし、いろいろなものが起こっている。そういう人たちも含めてキャリアパスだとかそういうものはどう考えるか。
 理系で言えば、本当はそれをやりたいはずなのだけれども、理系はなかなかそれができないから一括就職みたいな話になってしまっている。そうではなくて、アメリカみたいに一旦やっているのだけれども、1回就職して、また大学院へ行って何とかして、また就職してという、こういうようなステップアップをしていく姿というのも日本の中であって良いのだけれども、人文社会系の方は、それをもう実践されているような部分もあるのかなという、そんなことはないか。村田委員のくくりで言うと、それは理想論ですかね。
 すみません、少し極端なことを言いましたけれども、リカレントだと、使い方を理系っぽく使っていると少し誤解が出るかなと思ったのでコメントしました。
 以上です。
 
【村田委員】  湊部会長、一言発言させていただいたてよろしいでしょうか。
 
【湊部会長】  どうぞ。
 
【村田委員】  リカレント、先ほど湊部会長からリスキリングという言葉があったのですが、リカレントというのは、基本的に還流教育だとか言われまして、職場を離れる、教育界に学び直して職場を離れるというのが根本にあります。そういう意味では、理系、文系は関係ないのです。
 今回、ここも実は皆さんがもやっとしているとおっしゃっているところなのだろうなと思いますのは、恐らく今回大学院教育はどうあるべきかというときは、いかに大学院にストレートマスターを含めてきちんと行かせて、大学院の人文社会系の修士まで出た学生をどうつくっていくかというのが基本にあると思うのですが、それとは別に、リカレント教育として社会人をどう受け入れていくかということがあると思うのです。これは、特に専門職大学院なんかは、正にこの部分である意味大きな役割を果たしているとは思うのですが、同時に、今、企業側がリスキリングと言っているのですが、実は、リスキリングというのはリカレントと違っていまして、転職を前提としていません。企業側が主体として雇用者を教育していく。学びの主体がリカレントは個人主体なのです。リスキリングは企業が主体なのです。日本で、そのリカレントが定着しなかった一番の大きな理由は、雇用の流動性だと思っておりますし、それから、先ほど理系の問題で言いますと、大学の教員が文系・理系を含めて、企業と、あるいは社会と行き来していない。あるときまでは大学の先生だけれども、あるところからは企業の役員になったり、NPOのトップになったりなんていうことが日本の社会にはありませんので、そこの流動性の問題に引っかかっている、そんなふうに私は見ております。コメントをさせていただきました。
 
【湊部会長】  ありがとうございます。私も多分そうだろうと思っていましたが、よく理解いたしました。ありがとうございます。
 それでは、もう少し時間がありますかね。加納委員、お願いします。
 
【加納委員】  手短にお話しさせていただきます。ページで言うと8ページ、4番目の「具体的方策」の最初の1番の(1)の育成する人材像の明確化といったところがございます。実はこの中に、2つ目の丸で、「一方、産業界においても」と書いてあるのです。これ、タイトルからすると、育成する人材像の明確化というのは、どちらかというと大学側のミッションとして書かれているのですけれども、この産業界というのは、世の中に今は360万社以上の企業があって、先ほど川端委員が自治体とおっしゃったのですけれども、実は受け入れるキャパシティーというのは、はるかに産業界の方が大きいという中で、この部分はきちっと外出しにして、1つのテーマとして、産業界の課題として、例えばこれは(2)になるのでしょうけれども、そういう形で抜き出して、民間企業というか、産業界における役割なりコントリビューションといったところの重要性といったものもここでうたっていくべきではないかなと思いました。
 以上です。
 
【湊部会長】  ありがとうございます。そうですね、ここはもっと強調した方が良いのでしょうね。ありがとうございます。十分議論をしていただいて、そろそろ残り時間も少ないのですが、ここはもう各委員の先生にお願いをするしかないのですけれども、先ほど高橋委員等々からも御意見がありましたように、せっかくエッジの効いた議論を延々と進めてきたのに、メリハリのない審議まとめでは不十分ですので、ここは事務局の方から皆様にファイルを送りますので、エディティングバージョンで御自由に、ここはもうちょっとこうしたほうがいいとか、ここはもう少し書き込むべきなどの作業をお願いできないでしょうか。それらをなるべく組み込んだ形でまとめて、全体としてもう少し論点が明瞭なものにしたいと思います。
 こちらで文書を校正していても、結局やればやるほど山も谷もなくなって、論点がぼやけてきてしまうのですね。申し訳ありませんが、事務局の方もその方針でよろしいですね。ではファイルを送らせていただきますので、委員の皆様には御自由に書き込んでください。御意見すべてを踏襲できるかどうかは分かり兼ねますが、人社系の大学院にしぼってこういう答申を出すのは恐らく初めてなので、いろいろな分野の方に、大学はもちろんですけれども、社会全般に対して発信するということをきちんとやりたいと思います。是非お時間を取って御協力いただければ、格段に良いものができると思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
 それでは、ほぼ終了予定時間になりました。今後の予定については、今のところ11月30日と12月21日、2日を一応確保していただいております。ある程度進めば1回でも良いかなと思っていたのですが、今申し上げたような御意見伺を皆様にお願いし、それを二、三週間ぐらいでもし頂ければ、ざっとまとめた上でもう一度議論をした方が良いのか、そろそろ最終版の策定に入った方が良いのか、確定したいと思います。今のところは一応予備を含めてこの2回を取っております。
 私からの本日の議題に関するものは以上でございます。
 
【髙見高等教育政策室長】  宮浦委員が先ほどから手を挙げていらっしゃいます。
 
【湊部会長】 宮浦委員、お願いします。
 
【宮浦委員】  すみません、時間がないところを失礼いたしました。
 今正に言っていただいた、みんなで加筆修正するというのが大賛成で、思い切って入れてから議論をした方が良いかなと思いましたのと、あと、是非産業界出身の委員の方、産業界に今いらっしゃる委員の方がいらっしゃるので、人社系の博士がなぜ欲しいのか、いやそれほど欲しくないとか、あるいは、その社会的ニーズが大学の人間はよく分からない、しかも理系の人間はよく分からないのです。よく分からない、必要なのだろうかと思いながらこの議論に参加していたような状況ですので、そういうところを産業界の委員の目から、これからはグローバルも含めてこうだな、博士の文系がいないと日本は立ち行かなくなるみたいな、そういうことを書いていただけると大変ありがたいので、すみません、勝手なことを申し上げました。
 以上です。
 
【湊部会長】  了解です。迫田委員、ぜひよろしくお願いいたします。
 それでは、時間が迫ってまいりました。事務局から最後に連絡はございますか。
 
【金井大学院振興専門官】  本日は活発な御議論を頂きまして、誠にありがとうございました。本日の議事内容を含めて、またメールでファイルをお送りしますので、皆様の御意見をファイルにつけて送っていただければと考えております。それを取りまとめて次回の会議の準備を進めてまいりたいと思います。
 次回につきましては、11月30日の開催を予定しております。詳細は追ってまた御連絡いたします。本日の会議の議事録につきましては、事務局にて案を作成しまして、委員の皆様にお諮りをした上で、文部科学省のホームページに公表をいたします。
 文部科学省からの連絡事項は以上でございます。
 
【湊部会長】  ありがとうございます。おおむね時間でございます。今日は本当に活発な御議論を頂きまして、ありがとうございます。せっかくの議論でございます、何とか皆様の意見を集約できるようにしたいと思いますので、先ほどお願いした件については、是非ともよろしく御協力をお願いいたします。
 それでは、これで今日の部会は終わりたいと思います。どうも皆様、御苦労さまでした。ありがとうございます。
 
 
―― 了 ――
 

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