大学院部会(第111回) 議事録

1.日時

令和5年8月22日(火曜日)15時00分~17時00分

2.場所

WEB会議

3.議題

  1. 人文科学・社会科学系の大学院教育改革について
  2. その他

4.出席者

委員

(部会長) 湊長博部会長
(副部会長) 村田治副部会長
(臨時委員) 加納敏行、神成文彦、小長谷有紀、小西範幸、佐久間淳一、迫田雷蔵、須賀晃一、高橋真木子、永井由佳里、濱中淳子、堀切川一男、宮浦千里、横山広美、和田隆志の各委員

 

文部科学省

(事務局)池田高等教育局長、伊藤文部科学戦略官、小幡高等教育企画課長、柿澤高等教育企画課高等教育政策室長他

5.議事録

【湊部会長】  それでは、所定の時刻になりました。第111回の大学院部会を開催したいと思います。皆様、御多忙のところ御出席いただき、誠にありがとうございます。
 本日は、川端委員、菅裕明委員、塚本委員から、御欠席の連絡を頂いておりますけれども、定足数である過半数は超えておりますので、会としては成立いたしております。
 それでは、まず会議の開始に当たりまして、事務局からオンライン等についての注意事項を少しお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

【金井大学院振興専門官】  高等教育政策室、大学院担当の専門官をしております金井でございます。会議に先立って、何点か御連絡させていただきます。
 まず、ウェブ会議を円滑に行う観点から、御発言の際は「挙手」ボタンを押していただき、部会長から指名されましたら、名前をおっしゃってから御発言をお願いいたします。御発言の際は、通常よりも少し張っていただければと思います。また、御発言以外はマイクをミュートにしていただくようお願いいたします。
 資料については、議事次第に記載のとおりでございます。今回、参考資料として、大学院関連のデータ等をまとめている参考資料集をお出ししていますので、適宜御参照ください。本来であれば、前回、第12期の初回会議でお示しするべきでしたが、事務局の作業の都合でこのタイミングとなりました。この資料につきましては、文科省のホームページに掲載しつつ、今後、関連資料を追加していく予定でございます。本日は、本日時点版として御覧いただければと思います。
 事務局からは以上でございます。

【湊部会長】  ありがとうございます。
 それでは早速、議事に入りたいと思います。
 本日も前回に引き続いて、人社系の大学院改革の上で非常に参考になるような大学あるいは民間の方々の事例をヒアリングさせていただきたいと考えておりまして、本日は、青山学院大学様、それから株式会社メルカリ様、株式会社アイデアファンド様に御発表いただいて、議論させていただきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
 最初にお話しいただきますのは青山学院大学様で、本日は副学長の稲積宏誠様と、研究推進部長の内山吉嗣様に、オンラインで御出席いただいております。前回の部会で、企業で社員の博士号取得を支援する取組についていろいろお話を伺いましたけれども、まず大学の取組として、青山学院大学では博士課程学生を院生助手という形で雇用するという取組を進められていると伺っております。今日はそのお話をぜひ伺いたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、青山学院大学の稲積副学長、よろしくお願いいたします。

【青山学院大学 稲積副学長】  稲積です。よろしくお願いいたします。
 それでは、始めさせていただきます。今、御紹介いただきました院生助手という制度に関してということで発表させていただきます。
 これは3日前か4日前、ネットニュースで、「『文系学生は門前払い』就活に苦しむ院生の嘆き 研究時間減少、企業の理解の少なさ等の問題も」ということで、東洋経済ONLIINEで出ていましたので、まさにこれは重要なテーマだなということを再認識して、今日、発表させていただきたいと思っています。
 まず背景を幾つか述べさせていただきます。博士課程におけるキャリアパスというものをどう捉えるかということなのですが、お示ししましたのは理系のキャリアパスということになります。学部、修士、博士、それから通常の民間企業への就職、それから学校関係、研究機関というところですが、学部はほぼ民間に行きますし、修士からは研究機関と民間、通常の就職もあるという現状かなと思っております。
 これが人文社会系ということになりますと、ここのパスが非常に薄くて、どうしても学部で卒業して就職するか、残ったとするならば、修士、博士で学校関係を中心として就職を考えるかというところに、ある程度、限定されてしまうというのが現状でしょう。
 一方、専門職になりますと、民間企業からのUターンというようなところを含めて、社会人学生というところがあるので、少しモデルが違ってくるかなというところです。ある意味で、リカレント教育ということを考えるならば、この民間企業からの出入りというところをどういう形で工夫するかということになります。大学院で吸収するという方法もありますし、履修証明プログラムなどの取組というものも考えられます。これは今、専門職と規定しましたけれども、ここが通常の修士課程であったとしても、このモデルは成り立つだろうと思います。ここに、活路を見いだすというようなところも、可能性としてあるかもしれないと思います。
 キャリアパスと支援体制との関係について表してみました。学費減免に関しては、本学でも、修士、それから博士の学費を数年前に減額するという取組がありますし、他大学でも同様の取組があるでしょう。それから、奨学金に関しては給付型のものをどう活用させるかというところがありますし、学内の制度としては、ティーチングアシスタント、リサーチアシスタントというところをどう展開するか。それから、特に博士課程に関しては、民間、それから公的なものも含めた研究助成であるとか、いわゆる学振のDC/PDというものが通常あるでしょう。これが現状のキャリアパスと支援体制の関係だろうと思われます。
 少し本学の状況を述べさせていただきますと、これは人文社会系で、いくつかの大学と本学の比較をしておるものです。修士課程在学生の中で博士課程にどれぐらい進学するかというと、本学だと20%をちょっと切るというのが、修士から博士への移行の数字です。
 今度は学部から修士ということになると、人文社会系はどうしても、修士のところが10%を切るような実態というところです。
 一方、理工系になりますと、これは修士から博士ですが、理工系は意外に、修士から博士への進学というのは少ないのです。それは、修士で非常に多くの学生が、民間の企業であるとか研究機関に就職するというところがありますので、意外と博士に残るのは少ないというところが、ここで分かるかなと思います。ただ、理工の場合には、いわゆる論文博士の数が非常に多いので、民間の企業や研究機関で学位を取るというのは非常にポピュラーな話だというところは、ちょっと違うというところでしょうか。
 修士になりますと、これが大きく違いまして、この赤のラインが50%ラインなのですが、私学の中でも50%を超える大学が多くみられるようになりました。国立はもう数年前に50%を超えるというのが通常です。本学は残念ながら三十数%というところで、実は本学としては、修士への進学、博士への進学をどのようにのばしていくか、いずれも大きな課題だったというところが背景としてはあるということです。
 「院生助手発足に向けて」ということですが、今、先ほどお示ししました支援体制の中で、院生助手は博士課程からのキャリアパスに当たるというところです。すなわち博士課程から学校関係への就職ということを想定したときに、どういう支援ができるかろいうことです。これは後でも述べますけれども、ここにフォーカスを当てているということは、相対的に言うと、理系よりも人文社会系のほうが恩恵を受ける率が高いということになろうかと思います。
 制度導入の経緯を時系列的に追いました。我々の執行部が2019年12月スタートですので、我々の執行部の前の代の後半に、博士進学者へのサポート制度というものを検討しようというところで、学長からの提案となりました。ただし、最終的には、ここが結構重要なのですが、大学規則ではなくて法人規則としての手続ということにしました。これは後でも触れますけれども、院生助手というのは、いわゆる就業規則上でサポートされている制度ですので、規則としては、大学の規則ではなく法人規則でカバーされることになります。その結果、非常にテクニカルなところですが、大学の中での教授会の審議というところを、少し、途中からスキップしているところがあります。これは、法人の規則として結論を早く進めることによって導入を早めたというところが、テクニカルな要素としてはあったかなと認識しています。したがいまして、大学で規則制定のプロセスを経るのではなく、法人会議で制定して、それを大学に降ろしたというやり方を取っています。これは、ある意味ではスピーディーな運用が実現できたということになります。
 主張ポイントとしては、博士課程進学者へのサポート体制というところで、特に人文社会系も含めた、全学的な博士課程の学生を増やしましょうというところです。それから一応、制度実現への説得材料としてでは、これは就業規則上認められた専任教員の枠組みになりますので、全体としてST比率の改善によって経常費補助金が増えるというようなところも併せて強調しました。
 現状では、下の欄に記載されている数値が、設定された定員です。定員が約40名程度なのですが、充足率そのものは半分を少し切るようなところが現状という数字です。ただ、いわゆる社会系よりも人文系のところがこれを有効に活用しているという実態があって、これは面白い結果かなと思います。
 文系に着目した理由は何でしょうかというところなのですが、研究助成に関しては、やはり理系のほうが手厚いのです。院生助手は研究を進めるということよりも教歴としての要素のほうが大きいといえます。そこで、いわゆる教員への志望率ということでいうと人文系のほうが大きいということになりますと、先ほどの博士課程から学校関係へというところのステップとしては、人文社会系のところのニーズのほうが高いということです。それから、修士から博士への進学率も、理系よりも人文社会系のほうが高かったというところがありますので、ここは人文社会系のほうが恩恵を被る率が非常に高かったというところになったと言えます。
 次に、博士課程の学生支援のほかの制度との異なる点ということなのですが、いわゆるリサーチアシスタントとか、TA、ティーチングアシスタントというのは、時間給で対価を支払うような、いわゆるアルバイト型の支援体制ということになります。院生助手は、繰り返しになりますが、身分としては専任教員の身分になりますので、これは就業規則に基づく常勤教員としての雇用関係があるというところで、たとえば履歴に書くときの基本的な条件というのは異なるということになります。したがって、キャリアパスを意識した制度と言うことができるわけです。
 全体の構図の中で院生助手の位置づけと、いわゆるDCとかPDとかというふうなものとの関係性というのが少し議論になりました。当初、これを提案するときに、DC/PDとの兼職はできるのかということについての質問がありましたが、ここは独立した関係になります。あくまでも、院生助手はすでに専任教員という位置づけになります。ただし、 1年任期で3年までというところですので、あくまでも一つのステップというところになろうかと思います。
 それから予算規模なのですが、うちのリアルな数字ですけれども、1名当たり16万円掛ける12か月。これは決して高い金額ではないですけれども、これは多分、文科の経常費補助金を考えたときの教員の年収の最低条件をクリアしているという数字をここに設定しているはずです。金額については考えどころかと思いますけれども、予算規模は、したがって、さほど大きいものではないということになります。
 それから、繰り返しになりますけれども、先ほどお話ししました、「助手に関する就業規則」と「院生助手の職務、資格、契約期間、待遇等に関する規則」と、この合わせ技の規則、これらが法人規則になっておりますので、これでカバーされているということになります。
 この制度の位置づけとして、ちょっとここを指摘しましたけれども、教育経験ということが大きいのですが、現場では奨学金とどこが違うのだろうというところが、いまだに認識の曖昧さというのは少し残ってしまうというところがございます。
 これは文科の担当の方からも質問があったのですが、院生助手に採用後、特別な研修があるのでしょうかというところですが、これは一応、専任教員としての研修に準ずるものを受けてもらっております。研究倫理に関するものであるとか、FDに関するものであるとかというところは、専任教員と同様の扱いです。ただし、基本的には指導教員による研究指導体制というのは継続されているといった位置づけになっているというふうに御理解ください。
 運用したときにどういう問題があったかというところを、簡単に説明します。先ほどお話ししたように、何を業務とするかというところに関しては、なかなか分野ごとに定着したところがないというところが実態としてはあります。授業を実際に手伝うというようなケースもありますけれども、いや、別にそれほど負担を負わせる必要はないのだと。彼らはやはり博士論文を書くというところが使命なのでというようなところで、奨学金に近いような運用をしているところもあるというところで、この辺りをどういうふうに整理するかというところは、重要なところかなとは思っています。
 制度運用上の課題ですけれども、やはり就職先というのが一番のところでしょうか。ただ、キャリアパスの中で教育キャリアをここで積んでいるという実績を持たせるというところはあろうかと思います。院生助手から助手、それから非常勤講師を経て専任教員の道を開いているというふうなところは、展開としてはあろうかと思っています。
 もう時間がないのですが、指導教員はどのような評価をしているかというところについて、やはり収入が安定したことで、きちんと落ち着いた研究ができているところがあろうかと思います。それから、いわゆるファカルティーメンバーとしての意識というふうなものが少し醸成されたというコメントも得ています。教育経験を積む機会というのは、いわゆるTAの経験はあるのですけれども、専任教員の位置づけとして学生に向かうというふうなところで、意識が少し変わってきたよというふうな報告も受けていますので、教育キャリアとしては非常に有効だったかなというところがあるかなと思います。
 同様ですけれども、安定したというふうなところ、それから専任教員としてというところ、それから学生目線と教員目線というところでもって視野が広がったという報告も受けているというところもあります。
 要望を少しまとめました。これはもう、どこでも言われているところなので言わずもがなというところがあるのですけれども、やはり、人文社会系については、特に社会的な認知度というものがまだまだついてきていないので、それをいかに増やしていくかというところがあります。
 それから、個人的にも思うところがあるのですけれども、約20年前に、いわゆる育英会の奨学金の返還免除の規定が変わりました。今のJASSOの規定で、返還免除がなくなって、いわゆる研究職・教育職へ就くというところのインセンティブが、もうこの20年間、失われているというところがあります。ぜひそこは復活を検討してもらいたいなと考えているところです。
 あとは、今、文科省でも人材バンクとかキャリア支援体制の取組を始められているかなと思っているのですけれども、そこは特に人文社会系のところに有効なのではないかなという印象を持っています。
 あと、本学では、次世代研究者挑戦的研究プログラム(SPRING)というものの採択を受けております。したがって、今、博士課程に関しては、DC/PD、それから院生助手、それからSPRINGにおける次世代研究者挑戦的研究プログラムというところで、何とか支援を手厚くというふうな取組をしているのですけれども、実はそこの母体となっている修士の進学率をどう上げるかということも、併せて課題となっているところでございます。
 駆け足になってしまいましたけれども、私からの発表は以上とさせていただきます。どうもありがとうございました。

【湊部会長】  どうもありがとうございました。私は初めてお聞きした試みで感心いたしました。それでは、この御発表について、委員の皆様から御質問、御意見等ございましたら伺いたいと思います。いかがでしょうか。
 それでは、まず堀切川委員からどうぞ。

【堀切川委員】  東北大学の堀切川です。非常に面白い取組を御紹介いただいてありがとうございました。院生助手という新しい制度が、大学院の、特に博士後期課程の充実につながることが期待できて、すばらしいなと感じたところです。
 非常に簡単な質問をさせてください。1つは、院生助手というものの採用の決定権は大学にあるのか、あるいは法人にあるのかについて、大学にあるのかというのは教授会にあるのかというような趣旨ですが、そこを教えていただきたいというのが1点です。
 それから2点目ですが、院生助手を務めながら、博士号の学位を取得後は助教への道も開かれているのかどうかについて、教えていただければと思います。
 よろしくお願いします。

【青山学院大学 稲積副学長】  ありがとうございました。
 1点目ですけれども、僕が誤解を与えるような説明をしてしまったかもしれないのですが、規則が法人規則だというところでしたけれども、少なくとも任用に関しては、大学のそれぞれの研究科の教授会権限でもって提案され、手続的には人事ですので、その上の会議体まで行きますけれども、権限は大学にあるというところです。これが1点目です。
 それから2点目ですけれども、院生助手は上限3年で、ほぼほぼ研究科の状況を見ていると、多くの学生に経験させようというところで、あまり固定された運用をしていません。博士論文を書いた後に、枠として空きがあれば、その研究科における助手あるいは助教へのポストというものを妨げるものではないということになろうかと思います。ポストが埋まってしまっていると、そのポストが空くのを待つというようなことにならざるを得ませんけれども、妨げるものではないと。
 以上ですが、よろしいでしょうか。

【堀切川委員】  どうもありがとうございました。

【湊部会長】  ありがとうございます。それでは次、村田委員、どうぞ。

【村田委員】  ありがとうございます。
 今、御質問があった堀切川委員と同じような質問だったのですが、私からはまず1点、法人の制度としてされたというときに、研究科委員会といいましょうか、教授会といいましょうか、そちらの議論を飛ばしたのか、あるいは、そちらの議論をある程度、反映させたのかということをお聞きできればと思います。選考に当たっては、今、堀切川委員の御質問にお答えいただいたので分かりました。
 それからもう一点なのですが、基本的には、自大学の博士課程の院生を、教職経験をつけるという意味で、自大学で雇っていく形になろうかと思うのですが、運用の課題2のところに、院生助手、助手、それから非常勤講師とあるのですが、そこの順番が分からなくて、普通、院生助手が、ある意味、非常勤講師と同じような位置付けだと思うのですが、それを通じて他大学の非常勤講師、あるいは青山学院大学様の助教とかになっていくと思います。この辺りのキャリアパスがどうなっているのかも少し教えていただければと思います。よろしくお願いいたします。

【青山学院大学 稲積副学長】  ありがとうございました。
 1点目に関しては、これも僕の説明が誤解を与えてしまったのかもしれないのですが、最初の段階で、院生助手というのは何をしなければいけないのか、どういうふうに選考するのかなどというところだけが前面に出ると、多分そこで、それぞれの研究科ごとにいろいろな意見が出て、規則制定が結構、面倒くさかったかなと思います。
 まず雇用上の問題として、院生助手は助手の枠組みの中の専任教員として雇うことができるんだよ、そこに関しての任用の基準はこうだよという、大枠のところを法人規則で決めて、あとの細かな運用は大学側に任されています。したがって、何をさせるかとか何とかという細かなところの議論は大学で、決まってからやれるような形になっていると御理解いただければと思います。したがって、これはマイナス面であったかもしれないのですけれども、研究科ごとに若干の認識の違いがあるままスタートしているというようなところが、正直言ってあります。
 それから、今のスライドのところだと思うのですが、これは、なかなかまだ実施してから二年、三年というところなのですけれども、院生助手をやります、それから本学の助手のポストがあったら本学の助手のポストに行きます、それから非常勤講師をしながら、他大のポストというものを狙っていきますというふうなのを、1つのキャリアパスと捉えているのだろうと僕は感じています。院生助手をやっていると、ここの助手のパスがなくても、非常勤講師へも移行しやすいと。一応、教歴はありますねというふうなところがあるので、他大学の非常勤講師にアプライするときも、ただ単に博士課程から直接というよりも、やりやすいというような話も聞いています。という辺りの説明でよろしかったでしょうか。

【村田委員】  ありがとうございます。

【湊部会長】  ありがとうございます。それでは須賀委員、どうぞ。

【須賀委員】  ありがとうございます。
 今のお話と少し関連するかと思いますが、院生助手と助手の関係で、まず1つは任期に関してですが、院生助手を3年やって、その後、助手を3年やるとか、そういったことは可能なのでしょうか。これが1点目。
 それから、院生助手の場合に、他大学の非常勤をやれるかどうか。院生助手は博士論文を書くことが仕事なのだという位置付けであれば、恐らく制約がかかってきて、仮に非常勤のポストがあったとしてもやってはいけないとか、何かそんな規定があるのかどうかというのが2点目です。
 それから3点目として、法人会議までで決定されるということで、教員に新しい助手の前の資格をつけたと。でも、院生だから、教員と院生という二重の籍を持っているということですよね。それで、多くの大学で、多分、助手で博士号を持っていない人などというものと、それから博士号を取ってから助教に変わるとか、そういう、仕組み上、何か、いろんなものがあろうかと思うのですけれども、先ほどの御説明をお伺いしていて、いま一つキャリアパスが見えなかったので、博士号取得とキャリアパスの関係を少し教えていただければと思います。
 以上、3点です。よろしくお願いします。

【青山学院大学 稲積副学長】  ありがとうございます。
 院生助手から助手へというときの制約なのですが、院生助手は3年と規定されています。それから、助手に関しては上限を10年という規定で、それぞれの研究科ごとに年限を選択することができるということです。本学は、継続して行っている場合には累積になりますので、3年は10年より短いので、少なくとも院生助手から通常の助手・助教というところに障害にはなっていきませんが、トータルの年限というのを就業年限というふうに使われるという運用だったと思います。
 それから兼職のことですけれども、兼職に関しては原則認められないというところですが、あまりよくないかもしれないのですけど、例外で、それが受け入れられているかどうかというところは、個別事例を見てみないと分かりませんが、原則は認めないというところで運用されていると思います。
 それからキャリアパスの問題としてですが、実は私が助手をやっていたときは、学籍を持ちながら通常の助手をやった年限があります。それを認めている大学と認めていない大学が確かあったと思います。本学は、確か認めていなかったのだと思います。したがって、本学の博士課程に在籍しながら助手というふうなものはなかったと思います。そこと明確に切り分けるということになっているかと思います。それから、助手で雇用されて、途中から助教にという例は、非常に多くの事例が存在しています。それも累積の年限、助手の年限と助教の年限を合わせて何年以内というような形での運用になっているということになります。
 今の、この説明でよろしいでしょうか。

【須賀委員】  どうもありがとうございました。
 先ほどの10年ということは、TA・RAは、通常の教員といいますか、そのような資格ではないということですね。

【青山学院大学 稲積副学長】  TA・RAは、ないです。

【須賀委員】  それで、10年という数字がよく分かりました。どうもありがとうございました。

【湊部会長】  ありがとうございます。それでは次に、佐久間委員、どうぞ。

【佐久間委員】  よろしくお願いします。大変興味深いお話をありがとうございました。
 私が学生だった頃、平成の初めの頃ですけれども、その頃は、20代後半の若い助手が身近にいて、非常に心強く思ったことを覚えておりますし、また教員を目指すに当たって教育経験は当然必要なので、非常にいい制度だと思うのですが、お話の中にありました、教育経験の具体的な中身というのをもうちょっと教えていただないでしょうか。部局によって違うのかもしれませんが、授業を担当されている先生の補助的な立場なのか、そうだとするとTAとはどう違うのかとか、その辺のことを少し教えていただければと思います。よろしくお願いします。
【青山学院大学 稲積副学長】  多分、運用上は非常に曖昧な面が残っていると思っています。助手に関しては、授業そのものを行うということができなくて、補佐というふうに限定されていますので、では、それはTAと何が違うのかということになろうかと思うのですけれども、多分、非常に細かな、微妙な点かと思うのですけれども、例えばレポート採点とか、直接成績に関わるようなというふうなところへのコミットの仕方は、TAとは明らかに違っているだろうと思います。学生の指導、非常に分かりやすいのは、演習系の授業であれば、非常に分かりやすい補佐の仕方になるかと思うのですけれども、少なくとも学生の個人情報に関わる部分であるとか、成績の根幹に関わるところを、その担当の教員の補佐の役割として担うという面でいきますと、同じ教育上の補佐でも、TAとはちょっと違ったレベルの関わり方をしているだろうと思います。それから、実際には部分的な代行に近いようなことはやっている可能性はあると思います。少なくとも教員がいて、少し説明をするというふうな形のところを任せる、ゲストスピーカー的な関わり方をしているだろうなと思います。

【佐久間委員】  ありがとうございました。

【湊部会長】  それでは、最後に、宮浦委員、どうぞ。

【宮浦委員】  ありがとうございました。
 質問が2点あるのですけれども、1点目は、助手に採用される前提が、教育関係への就職等を前提としている学生に限られるのか、あるいは、企業も含めて幅広く、進学未定といいますか、国際機関なども含めて、いろいろなところの就職を考えている状態の学生でも助手に採用されるのかという点が、ぜひお聞きしたいところで、なぜかといいますと、文系の学生さんが、多くが教育関係、大学に残るのを前提としますと、ポストも限られていますし、やはり非常勤講師では食べていけないという話題も多々ありますので、そういう幅広い出口を見せて、助手に手当を頂ける、奨学金と何が違うのかというのもあるのですけれども、やはり安定的な収入が16万円ですか、あるというのは非常に大きいと思うので、出口を広くするための方策としてもお考えなのかというのが1点目です。
 2点目は、博士課程後期課程に進学するには、修士課程、博士前期を経ていくわけですけれども、人文・社会科学系は、大半が学部で就職して、修士課程、博士前期にそもそも進学する学生さんが非常に少ないと思うのです。その時点で、もう修士、博士前期に行く時点で、ほぼ皆さん、教育関係以外は考えていない可能性もあると思うのですけれども、そこをもっと太くするのであれば、出口も太くしていく必要があると思うんです。
 その辺り、2点お伺いできればと思います。よろしくお願いいたします。

【青山学院大学 稲積副学長】  ありがとうございました。
 1点目ですが、出口を限定した運用はしていないと思います。ただ、先ほどキャリアパスの中で、例えばDCとかPDとかという、ほかの支援との比較の中で、教員志望であったらやっぱり院生助手だよねというふうな形の選択の仕方というものはやっているかなとは思いますけれども、教員志望でなければ院生助手には採用しないとか、そういう運用はしていないということになります。
 2点目は、なかなか難しい問題で、どういうふうに広げていくかというところは、本学単独でどういった取組をというのはなかなか難しいと考えていますので、要は人文社会系の大学院でどんなことを学んで、学生たちがどういうスキルを持っていて、どういうふうに差別化できるのかというふうなところをどうアピールしていくかということに関しては、本学の教員も大きなテーマだなと認識しているというところまでしか言えないかなというところでございます。2点目に関しては非常に難しい問題かなと思います。ありがとうございます。

【宮浦委員】  ありがとうございました。全国的な問題ではあるのですけれども、そこを、例えば情報系の知識を修士の2年間で強化して企業に行ってもらうとか、少し考え方を変えたほうがいいのかなと個人的には思っております。

【青山学院大学 稲積副学長】  ありがとうございます。

【湊部会長】  どうもありがとうございました。
 時間もあまりありませんので、一言お話させていただきます。只今、随分興味深いお話を伺いましたでしたけれども、米国で学生を教育の場面で一番上手く活用している大学の一つは、UCバークレーと言われています。UCバークレーは、TAといっても、たしか4段階ぐらいだったと思いますが、ランクがあって、本当に補助的なことをやるクラスから、最高ランクまでいくと、ほとんど専任教員が横にいれば学生が講義をしても良い、というようなところまでやっているのですね。それで、おのおののクラスで証明書を出して、ステップをクリアしたら次のステップへと進む。それで、当然ながら、給与・報酬は上へ行けば行くほど、どんどん高くなっているのです。今回のお話では院生助手というように分化されていましたけれども、そういうところに通ずるものがあるのかなと思ってお聞きしていました。いずれにしても、非常に新しくて参考になるシステムだと思います。
 青学学院大学の稲積副学長、御報告をありがとうございました。

【青山学院大学 稲積副学長】  ありがとうございました。

【湊部会長】  それでは、2番目の御報告に参りたいと思います。
 2つ目は、株式会社mercari R4Dからの御発表で、今日はマネージャーの多湖真琴様に御参加いただいております。このプロジェクトの中には人社系のプロジェクトもあって、人社系の人材も大いに活躍されていると伺っております。それから、併せて社員の博士課程進学への取組もなさっているとお聞きしていますので、ぜひ今日はこの御発表を伺って、後で議論をさせていただきたいと思います。
 それでは多湖様、よろしいでしょうか。よろしくお願いします。

【株式会社メルカリ mercari R4D 多湖Director】  よろしくお願いいたします。
 では、mercari R4Dから御説明させていただければと思います。私はR4Dの多湖と申します。よろしくお願いいたします。
 まず簡単に、私たちmercari R4Dの御説明をさせてください。私たちmercari R4Dは、2017年12月に設立した、いわゆるメルカリにおけるR&D組織になります。何で4Dかといいますと、リサーチだけではなくて、4つのD、Design、Development、Deployment、DisruptionというDが込められていて、時には既存の価値観や概念を破壊していきながらも、新しい技術の社会実装までをスピーディーに目指していきたいという思いが、この名前には込められています。
 体制図として、所長として、東大の現職の教授である川原先生に兼務いただいております。R4Dの体制として、リサーチャーやリサーチエンジニアが所属するR&Dセクションと、大学でいうところのURAのようなメンバーが所属していて、研究の企画とかパートナー開拓、アウトリーチ、あとはルールメーキングみたいなことをする本部組織の2チームがあります。
 私たちのミッションは、「まだ見ぬ価値を切り拓く」というものになっております。それを詳細に説明しているのがステートメントになります。このミッションステートメントにおいて、R4Dが既存の価値交換のシステムや社会の価値観をも科学技術の力でアップデートしていくことを目指しているということを明文化しています。特に産業界やアカデミア、国といった枠を超えてコミュニティーをつなぐことの重要性は、R4D設立時当初から一貫して持ってきた思いになります。
 R4Dの特徴として3つ挙げられます。まず、ターゲット、アプローチのところです。事業会社におけるR&D組織というのは、一般的には新規製品の開発とか既存プロダクトの改良のような、既存ビジネスと地続きの研究をすることが多いと思うのですけれども、R4Dはそうでないところもスコープとしています。メルカリという会社自体が、あらゆる価値が循環して、あらゆる人の可能性が発揮できるような社会の実現を目指しているのですが、そのような社会の実現につながるような研究であれば、既存ビジネスにダイレクトに貢献しなくても許容しているというチームになります。研究のアプローチとして、インターナルで抱え込むだけではなくて、課題解決の段階から、研究領域やコミュニティーの枠を超えて協働しながら、成果が論文やプロダクトに閉じず、その先にある社会課題の解決まで射程に見据えるといった、Co-innovationと私たちは呼んでいるのですけど、そういうアプローチで研究を推進していて、割と萌芽的なテーマにも積極的に取り組んでいます。
 2つ目の特徴として、研究領域のバラエティーというものが挙げられます。メルカリ自体はIT系の企業なのですけれども、それに限らず幅広い研究領域、ここに例を挙げているのですが、行っています。企業の研究所としてユニークな点としては、自然科学系だけではなくて、ELSIとかコミュニケーションといった人社系の研究も、人社系の博士号をお持ちの方を中に招いて行っています。コミュニケーションの研究とかは、例えばメルカリのアプリ上におけるお客さま同士のコミュニケーションとか、お客さまと事務局のコミュニケーションを研究して、よりよいアプリ開発に役立てるみたいなことをしています。
 3つ目の特徴が、倫理性・社会性というものになります。これもIT系の企業研究所では珍しいと思うのですけれども、全研究について研究開発倫理審査委員会にて倫理審査を実施しています。ここはELSI研究の一環として、より高度で効率的な倫理審査というのはどういうものかというのを研究しながら進めています。何で企業なのにそんなに、しかもIT系で倫理審査をやっているの?というところなのですけれども、メルカリが、C to Cプラットフォーマーという、社会の公器を自負している会社である以上、お客さまと特に距離が近いところでビジネスをさせていただいておりますので、そこに所属する研究開発組織としても、やはり高い倫理性・社会性が求められるだろうということで、設立の早い段階から倫理審査委員会というものを設けて活動してきました。
 R4Dのこれまでの取組についてもちょっとだけ御紹介させていただきます。先ほどのようなCo-innovationが生まれやすい社会の実現に向けて、幾つかやってまいりました。
 1つ目はコミュニティーへの貢献として、メルカリアプリデータの提供、学術研究機関限定ではあるのですけれども、実際のメルカリ上の出品データを研究利用できるように無償公開しております。これによって、その所属を問わず、社会課題の解決に向けた研究ができるような仕掛けになればいいなと思っています。今後もこういうアプリデータのユーザーみたいな、ネットワークを拡大させる交流の場にうまく使えないかなということを模索しています。
 2つ目が、人への投資周りですね。ここは大きく3つあります。それぞれ、イノベーションエコシステム活性化のための、産学の行き来をより柔軟にする仕掛けになればという思いを持って設立しました。
 1つ目が、社会人博士支援制度になります。これは詳細には後述するのですけれども、研究分野不問として、人社系の分野でも積極的に支援しますよというものを昨年の1月に設立いたしました。
 2つ目が、リサーチャーの柔軟な雇用形態というものになります。メルカリという会社自体が、YOUR CHOICEという、ニューノーマル・ワークスタイルという、かなり柔軟な雇用を実現する仕組みがあります。これは、コアタイムがない完全なフルフレックス制度、要は1日8時間掛ける営業日日数分、なので大体160時間以上働いていれば、いつ働いても構わないというようなワークスタイルを許容しているし、フルリモートなので、日本であればどこに住んでも構わない、都内に限定していないという働き方を許容する制度の上に乗っかっているのですけれども、その上でリサーチャーは、かなり自由に柔軟な雇用形態で働いています。フルタイムの勤務とか時短勤務というのは、どこにでもあるところだと思うのですけれども、特徴的なところとして、大学との兼職、クロスアポイントメントのような制度を持っています。先ほどの川原の例もそうなのですけれども、大学で籍を持ちながら、かつメルカリの社員として働いているというようなメンバーが、R4D内には何名かいます。大学で働いている先生たち、大学の研究者たちというのは、企業で研究してみたいという思いはあれど、やっぱり大学の籍、ポストを手放すというのは、ちょっと抵抗があったり怖かったりすると思うのですけれども、こういう、大学の籍を持ちながら企業でも働ける雇用形態を実現することで、リサーチャーのより柔軟なキャリアパスを支援できるのではないかと考えています。
 3つ目が人材交流制度です。こちらは2つあって、今年の8月から大阪大学のELSIセンターとの人事交流を始めています。なので、ELSIの人社系のリサーチャーを、出向という形でメルカリ側に受け入れて、一緒に活動しています。将来的には、メルカリのリサーチャーもELSIセンターに送り込んで、交換留学のようなことができないかということを検討している制度になります。2つ目が、学振PDの受入れ、雇用制度導入機関への登録というのも行いました。
 実際の研究事例についても、3つほど御紹介させていただきます。1つ目が、領域横断の包括連携として、東京大学に社会連携講座「価値交換工学」というものを設置しています。これは、東大のRIISE内で研究領域を横断して連携して、メルカリ社内の課題発掘フェーズから協働を行うことで、世界中の人々がフェアでスムーズな価値交換を行うことが可能な社会の実現を目指しているものです。こちらも自然科学系だけではなくて経済学部とも連携しておりますし、また先ほどのコミュニケーションみたいな研究も、このRIISEの「価値交換工学」の中でも行っています。
 2つ目が、産学連携コンソーシアム、QITFです。こちらはR4Dのリサーチャー、永山を代表としたもので、量子インターネットの実現を目指していくために、複数レイヤーの研究者が集まって研究を行っているという、量子インターネット研究推進団体になります。
 3つ目が、大阪大学ELSIセンターとの共同研究のものになります。まだ見ぬ社会課題の発掘を目指して、共同で行っています。ここで行っているのは、先ほどの研究倫理審査の高度化もそうなのですけれども、それだけではなくて、研究とかエマージングテックが社会実装された後に起こり得る、現時点ではまだ顕在化されていない社会課題というのはどういうものがあるのだろうというものを探りながら、研究段階から、早い段階で先回りして向き合っていく。それによって、社会実装に際して、社会から誤解とか過度な期待なく受け入れられることを目指すために行っているというようなものになります。
 次に、社会人博士支援制度の詳細について少し触れていきたいと思います。これは、メルカリ社員向けの制度にはなるのですけれども、研究活動・学び直しを支援するために、昨年の1月末に制度を導入したものです。R4D自体が、先ほど御説明したとおり、結構、研究分野がバラエティーに富んでいるので、当然のように研究領域不問。人社系でも積極支援しますよというスタンスで、今回、制度をスタートしましたが、分野不問、人社系も支援というところが割とユニークだったみたいで、旧ツイッター等々で好意的な反応を頂いていて、私たち自身も、ああ、そこが刺さるんだと、驚いたところでした。
 支援内容としては、学費の負担とか、研究時間を確保するために時短的な制度が適用されることや、あとは社会人博士の人たちなので、そこまで研究にまだ慣れていないというところで、R4Dが研究サポートをするみたいなところを支援内容としています。
 このような社会人博士支援を私たちメルカリがしていくモチベーションとして、Ph.D.を取り巻く日本の現状が、御説明するまでもないとは思うのですけれども、このようなところで人材流動が硬直化したりして、イノベーションが起こりにくい社会構造につながっていくおそれがあるのではないかというところを危惧しておりました。
 私たちの思いとしては、Ph.D.ホルダーの活躍の場を増やしていって、イノベーションエコシステムを活性化させていきたいと思っています。先ほど説明した3つほどの人材支援制度も、そういう思いが根本にあって設立しているものになります。特に、この制度を通じて、民間企業におけるPh.D.ホルダーの可能性を探っていって発信していきたいと思っています。研究以外の場でも、Ph.D.ホルダーは活躍できるはずだという仮説を私たちは持っていて、それを実際に検証していきたい。それを発信していくことで、追随していただける企業を増やして、日本全体の風潮を変えることの一助になればと思って進めています。
 社会貢献的な文脈だけでなく、もちろん企業としても価値があると考えて、この制度の採用に踏み切っております。つまり、企業の競争力を高めるための、人への必要な投資であると考えています。
 その価値として、1つ目には研究テーマの発掘。研究テーマの設定というのは、やっぱりR&Dの取組の中で最も難しいところの一つだと思うのですけれども、プロダクト側のメンバーを社会人博士として支援することで、R4Dでは想定し得なかったような、より事業に密に関係するような研究テーマの発掘につながるのではないかという期待が1つあります。
 2つ目には、シンプルにネットワーク拡大です。本制度の利用者を介して、大学とか研究室とか、新たなネットワーク構築につながるという期待。
 3つ目はシンプルに人材育成。メルカリグループのミッション達成に貢献し、経済発展と社会課題の解決につながるような高度人材の育成を、この制度を通じて行っていきたいと思っています。
 実際の、今、支援中のメンバーがこちらの4名になります。昨年の1月から3サイクルあって、今、3期生まで支援しているところです。分野も結構バラエティーに富んでいて、AI系やセキュリティー、あとは人社系として、文化人類学の博士課程に進んでいるメンバーもいます。
 駆け足でしたが、私からは以上になります。ありがとうございました。

【湊部会長】  それでは、横山委員から御発言いただけますか。

【横山委員】  すばらしいお話をどうもありがとうございます。大変うきうきするような話で、先駆的な御活動をされている様子がよく分かりました。
 私は東京大学のELSIの関係の研究者なのですけれども、阪大との交流は非常に納得がいくものでした。その上で、阪大との人事交流も今後進めていかれるということでしたが、一番の関心は、皆様のほうで、そうした人社系の研究者を雇おうという機運がこの活動によって高まってきているのかというところを、感触を伺えたら幸いです。
 2点目は、私も東大情報学環で、社会人学生の大学院の博士課程を何人か持っているのですけれども、通常、人文社会科学では年限が理系より大幅にかかります。5年、6年は当たり前ですし、社会人の方だとさらに長いケースもあります。そういう長い期間の博士課程のサポートというのを可能だと思っていらっしゃるか。ぜひ、そうだとうれしいのですが、その辺りの感触を、2点お伺いできればと思います。よろしくお願いします。

【株式会社メルカリ mercari R4D 多湖Director】  ありがとうございます。
 1つ目、人社系の研究者を雇う機運が高まっているかというところなのですけれども、この制度だけではなくて、ELSIセンターの先生方と共同研究をしていくに当たり、R4Dだけではなくて、社内のほかのメンバーと先生方とのミーティングというのを結構設定していて、そこで、人社系の研究って、こんな面白いことができるんだというのが、社内のメンバーに伝わっておりまして、なので、人社系かどうかということを問わずに、本当に優秀な研究者であれば一緒に仕事をしていこうという機運は、社内にはあると思っています。特にメルカリの場合、何年か前に有識者会議というものを開いていて、マーケットプレイスにおける在り方というのはどうあるべきかを議論する場に、倫理学の先生や経済学の先生方などがいらっしゃって、人社系の先生方とお仕事をさせていただく機会がもともと多い会社ですので、そもそも人社系の研究者って大事だよねという思いは社内にあるんじゃないかなと思っています。
 2点目の、支援の年限なんですけど、一応、原則は3年までとはしているのですけれども、その人の研究の内容や成果がメルカリにとってどういう価値、もちろん特許とか具体的な話ではなくて、それが実現することによってミッションに対してどういう寄与があるのかというところを見ていて、それで貢献度が高いものであれば、延長するということも制度の中では可能にしています。

【横山委員】  ありがとうございます。1点目なのですけれども、ほかの企業さんと話しているときに、やはり倫理学者を雇ったほうがいいのかというようなことをよく聞かれるようになりましたので、皆様が先駆例になるのかなというふうに拝見していた次第です。
 お話もとてもよかったと思います。ありがとうございました。

【株式会社メルカリ mercari R4D 多湖Director】  ありがとうございます。

【湊部会長】  どうもありがとうございました。それでは加納委員、どうぞ。

【加納委員】  非常に興味のあるお話を頂きまして、ありがとうございます。非常に先駆的な取組かなと思いました。
 そこで、少しR4Dの取組についてお聞きしたいのですけれども、このR4Dに提案する方というのは、基本的には社員の方が提案するという形なのでしょうか。

【株式会社メルカリ mercari R4D 多湖Director】  すみません。提案というのは、研究提案という。

【加納委員】  研究提案、そうですね。

【株式会社メルカリ mercari R4D 多湖Director】  基本的にはR4Dのメンバーが研究提案をして、それをR4Dの中で、メルカリとしてやる価値があるかというのを審査して、Go/No-Goを決めます。その研究提案自体は、R4Dに限らずメルカリ社員であれば誰でもできるようにはなってはいます。

【加納委員】  大体、採択される倍率というのはどれぐらいになっているのですか。

【株式会社メルカリ mercari R4D 多湖Director】  実際の審査の場に行くまでにマネージャーがチェックしたり、それこそ所長の川原が密に見てあげたりして、教育もかなりしているので、提案までたどり着けば、大体採択されることが多いです。

【加納委員】  ありがとうございました。

【湊部会長】  ありがとうございます。それでは永井委員、どうぞ。

【永井委員】  ありがとうございます。
 大変面白い取組であり、日本の社会変革に率先して取り組んでおられる会社だなと思ってびっくりしたぐらいだったのですけれども、お尋ねしたい点が2つございます。
 Ph.D.ホルダーということの社会的な意義をすごく重視されているということなのですが、そもそもの、何かPh.D.を持っていらっしゃる方に対するジョブディスクリプションみたいなものを、メルカリでは想定されていると考えてよろしいのでしょうか。
 それから、2点目です。大学との組織的な連携というのを随分進めておられるなと思ったのですけれども、クロスアポイントとは通常、大学側の教員がメルカリ側でもお仕事をさせていただくような形かと思うのですが、どのくらいの比率、何%ぐらいのエフォートを企業側にオファーされているのか。それから、組織間の協定のようなものを結ばれているのかについて伺わせていただきたいと思います。
 以上です。

【株式会社メルカリ mercari R4D 多湖Director】  ありがとうございます。
 1点目の、Ph.D.を持っている人に対するJDを想定しているかというところでいくと、まずR4Dのリサーチャーに関しては、基本的にはPh.D.を持っている、あるいはそれ相当の研究能力を持っていることというような条件がJDに含まれています。それ以外の職種に関しては、そもそも学歴をあまり重視していない。別に持っていてもいいし、持っていなくてもいい。ただ本当に、スキルや、メルカリのカルチャーへのマッチ、過去のパフォーマンスなどを見て採用しているので、研究職以外においてPh.D.が課せられているということはないです。
 2点目、クロアポの件ですけれども、この比率は人によって様々なのですけど、大体多くても30%分ぐらいをメルカリのためのエフォートに割いていただいているというところになります。組織間の協定を結んでいるかというと、これもケース・バイ・ケースでして、阪大との人材交流に関しては組織間の協定を結んでいますけれども、そうでない人たちというのは、組織間というよりは、その人をクロアポするための契約をしているようなものになっています。

【永井委員】  ありがとうございます。こちらでお答えを聞いていて、研究力というものを、学位取得者であるからというよりも、研究ポテンシャルとして見ておられるのだなということがはっきり分かりました。そのために、会社がデータを使わせてくれるということは、会社組織全体が合意した形になっていると思うのですが、ちょっと追加の質問で恐縮なのですが、会社が保有しているデータを研究に使うことに関しては、データを採取される側の社会的なほうは、説明というのをきちんとされている状況なのでしょうか。

【株式会社メルカリ mercari R4D 多湖Director】  もちろん、プライバシーポリシーで同意が取れている範囲内でのみの提供をするようになります。

【永井委員】  その場合、個々の研究の結果のようなものを、メルカリを通して社会にも公開や還元するということを行われているのか。そこだけ教えてください。

【株式会社メルカリ mercari R4D 多湖Director】  基本的にデータ提供というのは学術研究機関向けにしているので、学術機関側で論文などの形で公開することにはなると思うのですけど、もちろん、事前にそれは、個人情報、出してはいけないものが含まれていないかなどもチェックした上で、私たちのほうでも確認した上で公開していただきつつも、mercari R4Dとしても、このデータはプロジェクトにおいてこういう成果が出ているというものは判定させていただいています。

【永井委員】  分かりました。どうもありがとうございました。

【湊部会長】  ありがとうございます。それでは、続いて迫田委員、どうぞ。

【迫田委員】  ありがとうございます。貴重なお話をありがとうございました。
 今の質問とかぶっているところもあるのですけれども、採用規模についてお伺いしたいと思います。何人ぐらい毎年採られていて、その中にドクターの方が何人ぐらいいらっしゃるのか教えてください。4人というのが、どれぐらいの規模感なのかまずお伺いしたい。
 それから、もう一つ、クロスアポイントメントについて確認させてください。機関として協定しているのは阪大だけということなのですけど、それ以外の場合の報酬だとか時間だとかの取決めは何もなくていいのかなという点が、非常に気になったんですけど、そこは問題ないというジャッジメントをされているということでしょうか。

【株式会社メルカリ mercari R4D 多湖Director】  ありがとうございます。
 まず採用規模に関しては、公開していないのであれなのですけれども、基本的に新卒採用よりも、メルカリという会社が中途採用の多い会社なので、ちょっと年間何人という数字は把握していないのですけれども、一応、メルカリ全メンバーとして、今、2,000人ぐらい所属しているというところになります。内、Ph.D.の割合というのも公開はしていないのですけれども、少なくともR4Dメンバー(リサーチャー)は大体持っているというぐらいしか、こちらでは把握できている情報がなくて申し訳ないです。

【迫田委員】  そこの部署は、何人ぐらいの規模の組織なのですか。

【株式会社メルカリ mercari R4D 多湖Director】  20名弱です。

【迫田委員】  なるほど。分かりました。

【株式会社メルカリ mercari R4D 多湖Director】  クロアポの先ほどの件なのですけれども、もしかしたら私の回答が間違って伝わっているかもしれないのですけれど、クロアポをする際に、もちろん相手の大学と契約はしています。ただ、包括的に組織間で何人やりますよということをしているわけではなくて、あくまでその先生に来てもらうために、大学と企業とですり合わせてやっているというところになります。

【迫田委員】  個別の契約を結んでやっていらっしゃるということですね。

【株式会社メルカリ mercari R4D 多湖Director】  そうです。

【迫田委員】  分かりました。ありがとうございました。

【湊部会長】  ありがとうございます。それでは次に神成委員、お願いいたします。

【神成委員】  大変興味深いお話でして、文系博士が産業界で活用できるポテンシャルを非常にうまく活用されているなと思いました。、私は個人的にmercari R4Dの研究員の方を存じ上げているのですが、ある意味、非常にラジカルで元気のいい、ちょっと特別な方という印象が強いのですが、ただ、そういう人材が、明らかにこれからいろんな部署で、御社だけでなくいろんな会社で活用していく必要があるということは、何となくみんな分かっているのでありますけれども、そういう人材を大学・大学院で育ててくださいという発信は、残念ながら企業からは聞こえてこないのが現状です。大学で教育をしている人間は、どちらかというとアカデミア思考の人材育成教育になってしまうので、今後、メルカリさんが中心になって、人材育成において、大学と実業界で求められている人材とのミスマッチを埋めるような声高の提案を、いろんなところでしていただけたらと思います。あるいはすでにしていらっしゃるのか、その辺のところについて、いかがお考えでしょうか。

【株式会社メルカリ mercari R4D 多湖Director】  まず社会人博士支援制度を設立した背景としましても、今は、新卒でないと就職できないという時代では、ちょっとずつなくなってきているのかなと思っていて、即戦力として中途採用する企業が増えてきている中、そうすると、では、どこでどうやって教育するんだとなったときに、やっぱり大学の博士課程、大学というのはそもそも教育機関ですし、そこの博士課程できちんと課題解決能力とか問題の本質を見極める力などを教育していただけることで、産業界でも役に立つというか、活躍できる人材が育つのではないかという仮説を持って、この制度をやっているというところはあるのかなとは思っています。ちょっと回答になっているかどうか。

【神成委員】  ありがとうございます。社会人博士が大学に戻ってこられると、その需要も教育する大学側はよく分かるので、そこはちゃんと機能するかなと思っておりますので、期待しております。ありがとうございました。

【株式会社メルカリ mercari R4D 多湖Director】  ありがとうございます。

【湊部会長】  どうもありがとうございました。この部会でも大きな課題のひとつとしては、学位人材、とりわけ人社系の学位人材の卒後のキャリアを取り上げてきました。日本社会はまだ必ずしも、そのような学位人材を有効に活かしきれていないという社会的な未成熟さのようなものがあって、それをどうしていくべきかについて、議論してきたわけです。今まではどちらかというと、企業がなかなか採用してくれないのではないかという問題提起にとどまっていたようなところもあるのですけど、今お聞きしたお話のように、非常に積極的にそういう取組をされている企業があるというのは非常に心強い限りで、できればこのような動きをもっと発信していただいて、とりわけ大学の側にこういう情報がうまく伝わり浸透するようになってくれば、もう少し日本社会も全体として、学位人材を有効に活かすことが出来るという社会的な成熟さのようなものも期待できるのではないかという気もいたしました。非常に参考になるお話を、ありがとうございました。

【湊部会長】  村田委員、どうぞ。

【村田委員】  非常に刺激的な御発表をありがとうございました。私から1点だけお聞きしたいのですが、まさにイノベーションを起こすためには博士人材が必要だというのを、私自身も本当にそう思っています。経済学者なものですから、R&Dがやはりイノベーションの一番の基本で、それにはやっぱり修士・博士を出ていないと駄目だと考えているのですが、まさに企業でありながら、逆に、企業でありながらという言い方は変なのですが、逆に、まさにこういった人材育成が大事で、特に博士を育てないといけないという、何が根底に、こういう発想に至ったのかというのを教えていただければありがたいです。なかなか企業のほうで、こういう発想になかなかなっていただかないというのが、これまでの私の経験なものですから、その発想の根源に何があったのか、ちょっと教えていただければありがたいなと思います。よろしくお願いいたします。

【株式会社メルカリ mercari R4D 多湖Director】  ありがとうございます。もともとは、メルカリの中に部活のような制度があって、興味関心が似通ったメンバーが集まって、活動費は会社から出て支給されるものがあるのですけど、その部活の中で、博士人材を支援するような仕組みをメルカリの中でつくってほしいという、ボトムアップ的に最初のニーズがあったというのが発端になります。
 メルカリの多分、特徴の一つとして、この制度を設立したのは人事系ではなくR&D組織というところも、もしかしたらかなりユニークで、うまくいった理由なのかなと思うのですけど、この制度はR4Dにとってはとてもメリットがある制度で、先ほど言ったとおり、社会人博士の方というのは、研究テーマに選ぶのは、やっぱり御自身の業務に関することが多いのですよね。そうすると、本当にメルカリにとって必要な研究というのはこういうことなのだというのを、私たちも知見として得られますし、先ほど申し上げたとおり、ネットワークの拡大にもなるというところで、R&D組織からすると、すごく自然なことだったのかなと個人的には思っています。

【村田委員】  ありがとうございました。よく分かりました。人材育成ではなくてR&Dから発想があったということですね。ありがとうございました。

【湊部会長】  どうもありがとうございました。今の最後のご指摘は、私は一番、すとんと落ちました。R&Dからこういう動きが出てきたというのは、きっとそうなんだろうなという気がしてお聞きしておりました。
 どうも、本当に今日はありがとうございました。参考になりました。

【株式会社メルカリ mercari R4D 多湖Director】  ありがとうございました。

【湊部会長】  それでは最後に、株式会社アイデアファンド、代表取締役社長の大川内直子様に御参加いただいておりますので、お話を伺いたいと思います。アイデアファンドでは、文化人類学の手法を使って、企業へのコンサルティングや調査を行っておられるということですけれども、このプロセスで、人社系の学問がどのように有用であるか、或いは応用性があるのか、また、大学院教育についてどういうことをお考えかということについても、お話を頂ければありがたいと思っております。
 それでは大川内様、お願いできますでしょうか。

【株式会社アイデアファンド 大川内代表取締役】  かしこまりました。
 それでは、御案内いただきました株式会社アイデアファンドの大川内直子が、本日、「文化人類学の手法を用いたビジネスの展開について」と題して発表させていただきます。よろしくお願いいたします。
 我々は、今、湊先生から御紹介いただいたとおり、文化人類学に根差して、それをビジネスの世界に応用してみるということに取り組んでいるリサーチの会社になります。文化人類学というと、長く本当に大学の中でだけ実践されてきた学問だったのですけれども、これを、大学の外に飛び出して、理論も方法論も応用してみるということを、2018年からやっております。我々が調査するのは、人類学は人類を研究する学問なので人間でして、クライアントの顧客、クライアントのサービスを使っているユーザー、あるいはクライアント自身の従業員について調査をしていくということをやっています。
 我々がどういうメンバーで成り立っているかといいますと、東京大学の文化人類学教室のメンバーを中心に発足しまして、今も東大のメンバーが過半数でやっています。ですけれども、最近は早稲田とか慶応みたいなところでしたり、さっきから何回か出ている阪大の人類学の先生とも仲良くさせていただいていて、研究協力のようなことをしていたりとか、一部、筑波大学と一緒に研究プロジェクトをやっていたりとか、幾つかの大学と関わらせていただきながら組織を運営しております。
 人材の活躍の仕方にはいろいろ幅がありまして、就職してくださる方もいらっしゃれば、大学のキャリアと並行するような形で、博士課程が人類学だとすごく長くなるのですけれども、一時的に、お金を稼ぎたいようなタイミングで、プロジェクト単位で、3か月とか5か月、半年、1年みたいな、プロジェクトごとに入っていただいて、プロジェクトが終わったら、また大学中心の生活に戻られるような方もいらっしゃいます。あとは、インターンシップのような形で学生を受け入れるということもしております。
 我々は本当に文化人類学のスペシフィックなお話しかできないのですけれども、目指すところとしては大きく掲げていまして、アカデミアの世界とビジネスの世界を架橋したいなというところ、それによって、アカデミアの世界で研究していたときには得られなかったような、もうちょっと実践的な新しい知見を獲得して、さらにそれをアカデミアの世界にもう一回還流していくということを目指しております。
 ちょっと釈迦に説法ではありますけれども、文化人類学という学問はそもそも何かという話をちらっとさせていただくと、法学だったら法律を研究するとか、経済学だったら経済を研究するというふうになっているわけですけれども、文化人類学は何を研究するのかというのは非常に分かりづらくて、研究対象によっては規定されないと言われています。もともとは、ここの写真に出しているように、19世紀の後半から20世紀にかけて西洋を中心に制度化されていった学問ですので、典型的には西洋の研究者が、それ以外のいわゆる「未開」とされた地域に1人でフィールドワークをしに行って、長期間、一緒に暮らすことによって、その暮らしを通じて彼らの言語、宗教、文化、経済などを、包括的に文脈の中で理解していくというような学問になります。
 ですけれども、近年では、西洋の研究者がそれ以外へという図式は完全に壊れていまして、研究対象は日本やアメリカのような先進国であることはよくありますし、あるいは研究する場所も、村やコミュニティーのような場所から、大学のラボを研究対象にしたりとか、私自身も大学のラボであったり、バイオ系のベンチャーを研究対象にしていたのですけれども、先端的な組織や企業内の調査をやる人類学者も増えてきております。
 なので、本当に何をどこで研究するかというのは様々でして、では文化人類学はどう規定されるかというと、主に方法論によって規定されているかなと思います。このように、彼はマリノフスキーというポーランドの人類学者ですけれども、研究対象の中に分け入っていって観察をさせていただく、参与観察といいますが、そういういわゆるフィールドワークを通じて、自分の全身を使って調査を泥くさくしていくというのが、ある意味、通底しているところになります。なので我々も、ここまで全く違う社会に行くということはあまりないのですけれども、自分たちの体を使って調査するということを日々やっております。
 なので、文化人類学というとフィールドワーク、そしてフィールドワークを基に民族史、エスノグラフィーを書いて、分析、研究していくというのが、アカデミアにおいてはメインの手法でありますが、我々もこのフィールドワークエスノグラフィーを非常に大切にしていまして、調査のメインのところに置いています。
 ですけれども、アカデミアの手法をそのまま適用することはなかなかできませんで、アカデミアだと本当に、博士課程では1年から2年ぐらい滞在して調査していくわけですけれども、では、企業に調査しますよと言って、今から2年間、調査対象の地域に行ってきますというわけにはいかないので、そこをぎゅっと短くする。その代わりに、下に書いておりますインデプスインタビュー、構造化されていない一対一のインタビューですけれども、これを使いながら、ぎゅっと調査期間を短縮して、企業の要請に応えていくというようなことをやっております。
 このように、アカデミアの手法や考え方を結構そのまま応用できるなという部分と、このままだとちょっと企業では受け入れにくいなという部分がありますので、そこを、手法の開発と言うと少々大げさですけれども、工夫しながら適用しているというのが日々の調査業務になっております。
 もともと我々がやっている文化人類学をビジネスに応用するというのは、ビジネス人類学、ビジネスアンソロポロジーと呼ばれますけれども、ここに連なる系譜というのは意外と長くて、有名なホーソン実験にも人類学者が関わっておりましたが、意外とここ100年ぐらい、民間の企業で人類学者が活躍するということは、ちらほら、行われ続けてきました。ですが、すごく今の流れに連なっている大きな流れでいうと、80年代以降に、アメリカを中心に、ビジネス人類学がすごく大きく動いたというか、大きくなる時期がありました。
 これは有名な事例でいうと、パロアルトにあるゼロックスのPARCという研究所があるのですけれども、そこに人類学者が雇われて、ゼロックスのコピー機が使われる様子をフィールドワークした。観察した。そのことによって、いろいろ発見があって、例えば皆さん、コピー機のコピーボタンを想像していただくと、緑色の大きい「コピー開始」みたいなボタンがあるのを想像されるかと思うのですけれども、その緑の大きいボタンというのも、その当時、人類学者として現場に入っていたルーシー・サッチマンが、コピーボタンをしょっちゅう押すのに、コピーボタンが当時はほかのボタンと同じような見た目でしたと。そうすると、事務員の人たちは、普通に仕事はできているのだけれども、観察していくと、何か、もたついているねと。仕事の生産性を上げるためには、実はこのボタンさえ分かりやすくしておけば、あとのボタンは、ごちゃっとしていてもいいのではないかというような気づきを得まして、それを実装した結果、非常に使いやすくなり、デファクトスタンダードになったというような逸話があるのですけれども、そのように人類学者がビジネスの現場に入っていくという効用が認められ始めたというのがこの時代になります。
 ただ、残念ながら日本では、その時代はなかなか訪れませんで、企業で人類学を実践するという人が非常に少ない状況が、近年まで続いておりました。ですけれども、我々、まだ小さい会社ですけれども、先駆的に取り組んでみようということで、2018年以降、やってみようということを続けております。
 私たちの考えや設立の背景みたいなところを簡単に御説明させていただくと、企業にとってなかなか今、難しい時代が来ているよねというのが、まず前提としてあります。例えばT型フォードが開発されたようなときというのは、みんなが移動に困っています。移動するなら、馬車、馬で移動するという時代だったとすれば、速く快適に移動できるものを作れば売れるよねというふうに分かって、自動車を造るために何をすればいいかというと、例えば工場を建てるための土地を買って、設備投資をして、モノを作って売り出せばいいんだという、明確な資本の投資先というのがあったような時代から、今はむしろ、モノ余りの時代になってしまっていて、何を作ればいいか、何に投資をすればいいかというのが分からなくなっているような、右のほうですね、時代になっているよねというのが、我々が考えていることとしてあって、企業自身が何に取り組めばいいのか分からなくなっている、迷っているようなときに、資本はあるけれども、どういうアイデアに投資すればいいのかというところが分からなくなっている。資本とモノ、投資先との距離をつなぐアイデアがすごく大きくなっている。アイデアの領域が大きくなっているなと思っています。
 ただ、このアイデアをつくるのがすごく企業にとっては難しいというところで、それは何故かというところを、もうちょっとかみ砕くと、今の製品開発というのは、昔と比べて、定量的なスペックでモノが売れる・売れないというところが分からなくなってきているといえます。例えば新幹線は速いですねとか、持ち運べるようなウォークマンを作りましたとか、デジカメが30グラム軽くなりましたみたいなところで新商品を出せば売れたような時代ではないと。それよりも、iPhoneをお使いの方がいらっしゃるかなと思うのですけれども、別にスペックがどうというよりも、使ってみて何となくうれしいとか、楽しい、ちょっと幸せになるというように、定量化できない心理的な作用によって、モノが売れる・売れないとか、サービスが選択されるということが決まってきているかなと。それが、モノ余りの結果、訪れている状況かなと思うのですけど、では企業の研究開発をやっている人は、ちょっとうれしいものを作れと言われるとすごく困るわけです。ちょっと軽いものを作れと言われたら工夫のしようはあると思うのですけれども、ちょっとうれしくなるものを作るというときに、何をやっていいか分からないというふうに陥ってしまっている。そういうときに、我々が人類学の観点から、人はどういう行動をしたときにどういう気持ちになるのかを、例えば調査してみるというような形で貢献できればと思っています。
 人類学では、人の「言っていること」と「やっていること」は違うというのが大前提になっているので、我々は人にお話は聞かせていただくのですけれども、ある意味、それを100%信用するわけではないと。何をやっているかというと、フィールドワークで、例えばお宅に直接訪問させていただきます。私も今週行きますけれども、家に行かせてもらって、何をやっているか、じっと見るということをやると。そうすると、さっき言っていたのとは違うことをやっているじゃんということが分かってくるのです。そことの差異が、実はその人の核心に迫る重要な差異だったりするわけで、そこから、従来の構造化されたインタビューやアンケートでは分からない新たな気づき、彼らが潜在的に求めているのは何かということを探っていくというのが、日々やっていることになります。
 ちょっとこれは時間が足りないと思うので一旦割愛するのですが、我々が主に調査しているのは、人々は、自分は知っていると思っているのだけど、実は知らないということがあると私たちは思っていて、そこの部分を掘り下げていくことによって、企業が今本当に求めている、どういう事業をやればいいのか、どういう商品を作ればいいのかというところの手がかりを探っていくということをやっております。
 がらっと話が変わるのですけれども、なので我々はすごく人類学に根差した会社なので、人社分野全体を語るのはちょっとおこがましいかなというのはありつつ、ビジネス応用可能性はどうかということを語らせていただくと、結論から言うと、可能性はすごくあると思っています。今、VUCAの時代と言われますけれども、何が起こるか分からない時代、変化の速い時代、曖昧な時代というときに、人文・社会科学で鍛えられた、「とらえどころのないものを捉える力」が求められているのではないかなと、日々、これは業務をしていてすごく実感するところです。固定された課題というものがあって、それにどう解決すればいいのか、アンサーすればいいのかというところが求められる以前の問題で、そもそもうちの会社で取り組むべき課題って何?というのが、多くの企業が恐らく抱えているところで、もう課題探しが課題みたいになっているのです。私たちも課題探しのお手伝いをすることが非常に多いです。
 こういうときに、何を問うべきかから問うというところが、人社分野の研究者であれば、日々やっていて、問題のスポットをどう切るか、リサーチクエスチョンをどうすべきかというところは取り組んでいるところかなと思いまして、特定のスキル、この分析ができるみたいなところよりも、複雑な現実をどう洞察するか、そしてどのように未来を見通すかという思考力が、企業においても求められ始めているのかなと感じています。なので、人文・社会学分野の大学院で、高い思考力・洞察力が必ず培われるという教育コースになっているのかというところは微妙に疑問がありますけれども、高い思考力・洞察力が培われるのであれば、それを十分生かせる状況は拡大しているのかなと思っています。
 ただしというところを下に書いておりますが、分野による違いは、濃淡があるかなと思っておりまして、私どもが取り組んでいる人類学では、フィールドワークという方法論が分かりやすく設定されているので、フィールドワークを、例えばこの工場で調査してみると、こういうことがきっと分かりますよとか、こういうやり方になりますよというのがイメージしやすいのかなと思うのですけれども、一方、ほかの分野ではどうでしょうかというところは、ちょっとビジネスに関わる方がどのくらい想像できるか、イメージできるかというところは、すごく分野による違いがあるところかなと思っております。
 あとは、人類学はよかったねという話でもなくて、人類学といっても様々でして、文化人類学の下位分野に、いろいろ、医療人類学だったり開発人類学だったりというのはあるのですけれども、我々はよく医療人類学の方の知見を借りますが、医療人類学は、特に最近はコロナもありましたし、興味を持っている企業様も多いところになるのですけど、では宗教人類学の人がどうかというと、そこまで企業からの引き合いは、医療人類学ほどは今のところ多くないよねというふうに、一口に人類学といっても、やはり専門的な知識を求められることが多いので、人類学の人なら誰でもいいやというプロジェクトは意外と少なくて、できればこのプロジェクトであれば開発人類学に近い人に入ってほしいなというふうに、我々自身も思うことが多いです。
 こういうふうに、分野による違いはあるものの、思考力・洞察力という意味では、非常に今、ニーズが高まっている時代なのかなというのは、お伝えしたいことの一点になります。
 次ですけれども、我々自身が今後どうしていきたいかというお話をさせていただくと、2点ございまして、1点目は、文化人類学の応用というところはぶらさずに、それを通じて自分たちらしい形で社会に貢献していきたいなと思っています。
 背景と課題意識としましては、多くの文系の大学院生、特に修士を出た人は、何を勉強していたかというところにかかわらず、新卒一括採用の枠組みによって採用されていくことが多いわけです。そうすると、学部を出た人と変わらない条件や配属でお仕事を真っさらな状態でしていくわけですけれども、せっかく学んだことを生かせないフラストレーションみたいのが個人的にもありまして、そういうところから、文化人類学を学んだ人間としてできる仕事、できる経済活動というのは何かというのを考えて、文化人類学の専門家としてのインパクト創出というところを目指していきたいなというのは、引き続き思っております。1つは、文化人類学をまずビジネスに応用してみるというところと、実際に応用する上での課題があれば、新しく方法論を開発するというのは、日々の業務の中で行っています。
 この方法論の開発の事例をお伝えしますと、普通は体でフィールドに飛び込むということをやるわけですけれども、今、データの全盛期ということもあり、企業の方から、このデータを人類学者が見るとどういう面白い発見があるのだろうみたいな相談を持ちかけられることもあるのです。そうすると、いろいろなユーザーのデータを、例えば購買データと、テレビの視聴履歴や、CMの視聴履歴や、スマホの利用ログみたいなものを組み合わせて、あたかも自分がその人の家に行って観察しているように、もうデータ上でフィールドワークを仮想的に行うというようなことを、例えばデータのフィールドワークと名づけて新しく開発して実践しているというようなことをやっています。
 それだけではなくて、せっかくちょっと変わったことをやっているのでと言っては何ですけれども、得られた知見を社会に発信したいなという気持ちもありまして、クライアントがいてやることなので、全部発表するわけにはいかないのですけれども、発表していい部分については社会に還元するというような取組もやっております。
 もう一つ、2点目、右のほうですけれども、これは個人的な研究生活の苦しかった部分のようなところをすごく反映していることなのですけれども、調査研究と生活や生業といったこととのヘルシーな両立を実現したいなという思いが非常に強くございます。背景としては、大学に残って研究を続けるということと、経済的な成功がバーターになってしまっているなという気持ちがあるのと、逆に、では大学を離れて働くぞとなると、調査研究から身を引くことと、文系の方にとってはほぼ同義になっているのが現状かなと思っておりまして、それはすごくもったいない部分、経済損失もあるなと感じております。なので、文化人類学の調査研究と、生きていく生業とを両立させる新しい場として、我々の会社を機能させられたらいいなと考えております。
 1つは、我々の業務自体が、直接、文化人類学の実践というところに近いので、文化人類学を学んできた人がスムーズに業務に入れる。彼らの専門の知識やスキルを生かせるというところがあります。2点目は、大学で研究は引き続きしたいのだという人も、お金を稼ぎたいタイミングではうちで働けるというふうに、柔軟な働き方を提供できたらよいなと思っていまして、研究も、人並みに生きていくことも、どちらも諦めないヘルシーな両立というものを、ぜひ実現したいなと思っております。
 最後ですけれども、ぜひ皆様に実現してほしいこととして2点挙げておりまして、1点目は、「開かれたアカデミアの実現」と書いております。人社系の人材は価値があるのだ、ビジネスの場でも活躍できるのだというふうに、ビジネス側にアピールしていく、ビジネス側に門戸を開いてもらうという必要はすごくあると思うのですけれども、一方で、アカデミアは十分開かれているのでしょうかというのは疑問としてありまして、個々の大学院によっても違うと思うのですけれども、アカデミアとビジネスの人材の循環が、日本では不活発なのではないかなというのは、個人的に感じているところです。アカデミアの知見をビジネスで生かせるという実感は、すごく私自身は持っているのですけれども、逆にビジネスにおける生きた実践や最新の動向をアカデミアに還流させることも、非常にアカデミアにとって価値があるのではないかと思っておりまして、開かれたアカデミアの実現こそが、実は大学院を修了した方が社会で活躍するための王道なのではないかなと思っております。
 最後、2点目ですけれども、あと1分ほどお時間を頂くと、「役に立たなそう」ということが役に立つ時代だと今は思うのです。なので、大学院教育を考えていくに当たって、「役に立つ」に重きを置き過ぎないバランス感覚というのが、難しいと思うのですけれども、重要だと思っていまして、やはり短期的な視点で役に立つような教育ばかりに重きを置いていては、当然、学問が育たないというところはありますけれども、実は人社分野が社会で果たし得る役割自体も先細っていくのではないかなと思っておりまして、変化の速い現代社会では、「役に立たなそう」と思った研究が将来的に役に立つということもあれば、逆のこともあるわけなので、計画主義や迎合主義になり過ぎずに、おおらかに学問を育てるような役割も、大学には引き続き担ってほしいなというのが、個人的な願いになります。
 すみません。ちょっと長くなったかもしれないのですけれども、私の発表は以上となります。ありがとうございました。

【湊部会長】  どうもありがとうございました。非常に面白いお話でした。
 それでは少し時間を取って、御質問、御意見等がございましたら伺いたいと思います。いかがでしょうか。
 まずは濱中委員、どうぞ。

【濱中委員】  濱中でございます。
 私もかつて東大の文化人類学で授業を担当していたこともございまして、また周りの中で文化人類学、フィールドワークをやっている友人もいますので、とても興味深くお話をうかがっていました。先ほど年表のようなもののスライドがありましたけれども、日本でも川喜田二郎先生などは、1970年代、80年代から、政策や現場のほうに入り、いろんなご提案をされていたとうかがっています。フィールドワークが現場に役に立つからこそのことと理解しています。また、文系大学院教育が現状を打破するキーになるのは方法論だということは、私もずっと言っているところでございまして、そのとおりだと思いながらご報告を聞いておりました。
 教えていただきたいのは、「時間」についてです。アカデミアの世界において分析にかけられる時間と、ビジネスの世界で分析にかけられる時間は大きく異なっています。アカデミアでは数年の分析にかけることを前提にしたトレーニングを行っておりまして、お聞きしたいのは、そういった分析トレーニングを受けることの意味についてです。ビジネス分野で働く際にどれほど役立つものなのでしょうか。
 もう一つ、アカデミアの世界にいますと、二、三か月単位で出すインプリケーションは「浅い」のではないか、という疑問を持つところがございます。インデプスインタビューでフォローされているというお話でしたが、浅い・深いでいうと、どのようなことがいえるのか。仮に浅いインプリケーションであっても、短いスパンでどんどん発信していくことこそがやっぱり今求められていると考えていらっしゃるのか。以上、2点教えていただきたいと思いました。よろしくお願いいたします。
 
【株式会社アイデアファンド 大川内代表取締役】  ありがとうございます。
 1点目からですけれども、時間の流れはすごく違いまして、私も今、東大の文化人類学教室、駒場にあるところに遊びに行くと、ゆったり流れているなとなりまして、全然違うなとなります。ですけれども、今、Ph.D.を取った方とか博士課程在学中の方に、よくプロジェクトに入っていただくのですが、意外と通用しましたということを皆さんおっしゃって、やはり手法は一緒で、期間が短いところは、ちょっと焦って分析はしましたけどとおっしゃることが多いんです。なので、どういうふうにお話を聞くかとか、どうフィールドに入るかというところは、多分そんなに違和感なく、皆さんやっていらっしゃるのかなと思います。
 期限があって、いつまでに分析しないといけないというのがあるのは、大変といえば大変なのですけれども、アカデミアにいたとしても、今年中に博論を書かなきゃというのがあるのと、そんなに変わらないのかなと思っていて、ただし、そういう、1か月後までに分析を終わらないといけないという中でやっていく大変さはあるんですかね。皆さん、ここまで短いのはアカデミアとは違いますよね、タイムラインだけが違うというようなことをおっしゃるので、御指摘の、時間の流れの違いというのはすごくあるなとは思いつつ、やっていることはそんなに違わず、かつフィールドの期間もそんなに、アカデミアほど長くないので、分析の量がすごく多いものを短期間で詰め込まれるというわけでもないので、すごく無理やり詰め込んでいるという感覚ではないかなと思います。
 2点目なのですけれども、おっしゃるように、丸2年調査するということはまずないので、分析のインプリケーションが浅いのかもしれないとは思うのですけれども、毎回、調査に入る前にリサーチデザインをするのですが、そこで掲げるものは、例えば半年間のプロジェクトなら半年間でハンドリングできるテーマを掲げて、それより重いテーマであれば、また半年間、別で調査しましょうというふうに設定しているので、ビジネスの場合にも、十分、丁寧に説明をすれば、浅くならないようなリサーチクエスチョンというのはこのくらいなのだろうという設定というのは、十分できるのかなと思います。ただ、そこの、リテラシーの違いのようなところで、交渉に時間がかかるということはあるのですけれども、適切に調査範囲を設定すれば、十分深い洞察というのができるのかなと思っております。

【濱中委員】  ありがとうございました。とてもクリアになりました。

【株式会社アイデアファンド 大川内代表取締役】  ありがとうございます。

【湊部会長】  ありがとうございます。それでは村田委員、どうぞ。

【村田委員】  ありがとうございました。非常に刺激的なお話で、興味深く聞かせていただきました。
 今、濱中委員からも御質問がありましたことと関連するのですが、今日のお話の中で、「課題探し」が課題とありました。それで、実はアカデミアの世界というのは問題意識がすごく重要視されて、何が課題かを探すところから始まるわけで、恐らく今の産業界や企業あるいは社会も、まさに何が課題かを探していかないといけないという意味では、ある意味、学問をやる中での方法論あるいは問いかけの仕方みたいなものが、非常に有効になってくるのだろうなと思うのです。私は経済学が専門なのですが、経済学の手法はやっぱりいろんな形で使えると思うのですが、同時に今日、文化人類学の手法が非常に豊かに使えるのだという、面白く、本当に興味を持たせていただきました。今日は非常に文化人類学とビジネス人類学の話を中心にされたのですが、質問として、では、こういったメソドロジーで、具体的に企業の課題の解決をした具体例がもしあれば、差し替えない範囲で、お教えいただきたいなと思っております。よろしくお願いいたします。

【株式会社アイデアファンド 大川内代表取締役】  ありがとうございます。
 では、例えば我々が某家電メーカーさんと一緒にやったプロジェクトで、家電のメーカーさんのほうで、家電が壊れたら修理をしないといけないということで、そのクライアントには修理部門というのがありまして、壊れましたよという、コールセンターに電話が来ると、訪問したり、物を送ってもらったりして、修理できるかどうかを判定して、できるものは修理して戻す、できないものは、残念ながら、もう古いので修理できませんなどということを言って戻すみたいなことをやっている部門なのですけれども、ぜひ顧客体験というものを考えたときに、修理というものを通じて、お客さんとより深く関係を築きたいであったり、修理という経験がどういうふうに、物が直ってうれしいなどという喜びをユーザーの方に与えているのかを調査しようということで、調査を致しました。
 そうすると、クライアントが想定していたのは、壊れたものが直ってうれしいとか、丁寧に修理してもらえてよかった、また使いたいと思うみたいなことを想定していたわけですけれども、調査してみると、そういう経験は一部あったのですけれども、逆に、壊れた時点で不信感が募ると。日本のメーカーはすごくいいものを作っていますので、壊れたら不良品だったのではないかと思って、ちょっとマイナスな気分になって、ネガティブなところからコールセンターに電話が来る。そもそも壊れて、何で壊れたの?これって初期不良なんじゃないの?という疑念が生まれるし、幸いにして修理されて戻ってきたとしても、新製品を買ったときのような、新機能のわくわく感とか未来感みたいなものがないというところで、実はクライアントが想定していた、修理という、壊れたものを直して、皆をハッピーにするものという経験の実態を探るという調査が、いかに修理がネガティブなところから始まっていくのか。その顧客体験というのが想定していたものと全然違ったねということが、まず分かります。
 そうであれば、この修理というサービスをどういうふうに、もう一度考え直していくべきなのかという議論に、その後、つながっていったのですけれども、このように、もともとクライアントが想定している、こういう調査というものの枠を飛び越えて、例えば、修理で直ってよかったねというところの具体例を知りたいというオーダーに対して、そもそも直ってよかったという以前に、その前の段階で、お客さんがどういう嫌な気持ちになっているかとか、どういう不安を抱いているかというところから捉えないといけないんだよという、フレームをリフレームするみたいなことが、調査を通じて例えば明らかになるというのは、従来の手法ではあまりないのかなと思いますので、座標を変えるというか、調査はもちろんして、それに対するアンサーは出すんですけど、そもそもその枠組みではないことが分かってきたときに、考えていた修理サービスをさらによくするというところから、修理サービス自体の在りようとか、ユーザーの心を捉え直した上で、修理サービスというもの自体の在り方を考え直すという、ちょっと問題の枠組みが広がったのですけれども、そういうふうに広げた上で、一緒に、ではどういうサービスにするということを考えられたというのは、やってよかったかなと思った事例になります。

【村田委員】  ありがとうございました。
 それはまさに7ページに書いているインサイトの領域と理解すればいいわけですね。

【株式会社アイデアファンド 大川内代表取締役】  そうですね。ありがとうございます。

【村田委員】  ありがとうございました。

【湊部会長】  この議論は面白いので、次々と話が進んでしまいますが、時間の都合もあり、あとは今手が挙がっている3名の委員までということにしたいと思います。まず、では小西委員からお願いします。

【小西委員】  共鳴・共感しながら拝聴しておりました。どうもありがとうございます。
 スライド8に書いているところが特に心に留まったのですが、今の時代、企業経営の在り方が大きく変化している時代においては、ここに書かれていますように、「特定のスキルよりも、複雑な現実を洞察し未来を見通すための思考力が求められ」ると。まさに、こうだと思うのです。
 私もここ数年、社外取締役をやる経験を持たせていただいて、そうしますと、専門知識の提供は当然のこととして、それに加えて、研究で培った、複合的というか、体系的な思考力、そして洞察力が、ビジネスに対する助言にこんなに役立つんだと、手前みそかも分からないのですけれども、そういう実感を持っています。
 そこで、1つ質問なのですが、私が、ある研究所を持っている企業と、長年、関わっているのですが、もう数十年前からその研究所では、アカデミアとの交流を積極的に行っています。そうすると、博士号を取ってしまうと、その組織に還元する前に、大学を中心としたアカデミアの世界に転出していってしまうと。せっかく育てたのに、結局、転出して残念だという話を結構聞いています。この辺のところをどのように考えているのか。転職やむなしと考えているのか。もし何かあればお教えください。

【株式会社アイデアファンド 大川内代表取締役】  ありがとうございます。ほかの企業でも聞く話というか、お金を出して留学させたのに、戻ってきたら出ていっちゃったみたいな話でもあるかなと思うのですけれども、これは、そうですよね、あるなと思っているのですけれども、前のメルカリさんのお話でも、大学の籍を離れるのは怖いというお話があったと思うのですけれども、やっぱりアカデミアのポストがあるのであれば、そちらをまず取っておくということをしないと、なかなかアカデミアのポストは、いつも絶対量的にも不足していて、一回出てしまうと戻れないというような不可逆性もあると思うので、それもあって、そちらに行けるのであれば、まず行っておくという方がいらっしゃるのかなと思いまして、それはもう今のポストの需要・供給を考えると、致し方ないところなのかなと思うのですけれども、できれば大学と企業との間での人材のヘルシーな循環、企業で活躍した後に、もっと大学で研究したいと思ったら研究できるし、大学の教員の方も定期的に企業に、一部ないし100%移動して、その実力を発揮できる人というような、人材の循環というのがもっと活発に行われるようになれば、一回、例えば大学に完全に移った方がまた戻ってこられて、そこで先鋭化された研究の結果をさらにフィードバックしてくれるということがあるのかなと思うので、やっぱりここの循環がなくなっている、固定化されているというところが大きいのかなと個人的には思っております。
 すみません。お答えになっているか分かりませんが。

【小西委員】  はい、私もそう思います。ありがとうございます。

【株式会社アイデアファンド 大川内代表取締役】  ありがとうございます。

【湊部会長】  それでは、時間も迫っていますので端的に、まず堀切川委員からお願いできますか。

【堀切川委員】  東北大学の堀切川です。ふだん聞けない文化人類学のお話を聞いて、すごく楽しかったです。

【株式会社アイデアファンド 大川内代表取締役】  ありがとうございます。

【堀切川委員】  それで、私がすごく共感したのは、スライドの10枚目で、開かれたアカデミアの実現というお話をお聞きしたのですけれど、実はこれは人文社会系だけではなくて、理科系、理工系も含めて、もっとアカデミアは開かれなくてはいけないと考えておりますので、ドンピシャでした。今はかなりよくなってはきていますが、従来の考えでいくと、アカデミアはどちらかというと社会と隔絶して、大学村と学会村の中だけで、内向き・保守型人間が多い感じがするのですけれど、外の社会につながって、外向き・冒険型人間を増やしていかないと、アカデミアの存在価値を社会にアピールできないなと考えておりましたので、大賛成です。
 ついでですが、この10枚目のスライドの2つ目に、「役に立たなそう」が役に立つ時代というお話があったかと思うのですけど、私はこれも大賛成なのですが、実は企業もたくさんの種類があって、社会もいろんな人種が構成されていますが、学者というか専門家の人達にはが、どうせ私のやっていることは役に立たない、と思ってしまっている人が多いですが、実は外部の人たちが、うちの会社に「役に立つ」いい考え方、知識があるんだねというのが分かると、そこでアカデミアと社会はつながれると思います。役に立たないと自分で決めている大学の人に、実社会に役に立つという経験をしてもらうお仕事を、アイデアファンドさんにしていただければいいなと思います。文化人類学の人がこういう考え方は得意ですよというのが社会に伝わると、企業さんの方から相性がいいところはどんどん引き合いが来るようになるのではないかなと思いますので、ぜひ頑張ってくださいというエールを送って、私の意見としたいと思います。ありがとうございました。

【株式会社アイデアファンド 大川内代表取締役】  ありがとうございます。大変ありがたいです。引き続き頑張ります。

【湊部会長】  ありがとうございます。次、宮浦委員、お願いできますか。

【宮浦委員】  ありがとうございます。
 お時間がないと思いますので、短めに。質問は、文化人類学とビジネスの親和性という非常に面白いお話を伺ったのですけれども、逆に言うと、Ph.D.は必要ですかというのが質問です。文化人類学の手法を研究して、それを様々なビジネスに生かしていくという方向でいけば、大学でPh.D.を取る必要が必ずしもないのではないか。逆に、理系の工学系あるいは医療系の人間で修士を出た人間が、文化人類学を勉強する。少なくともPh.D.は取らなくても、ビジネスとして非常に幅が広がるのではないかとか。大学の人間としては、Ph.D.を取らせなくてはいけないわけですけれども、Ph.D.が必要ですかというのが、逆に産業界側の御意見を伺いたいと思います。

【株式会社アイデアファンド 大川内代表取締役】  ありがとうございます。
 文化人類学に限ったお話になるのですけど、文化人類学は結構、大学によって、修士課程でフィールドワークをやるかどうかというのが、結構方針が異なるんです。東大も今、ここ数年ですごく変わっていますけれども、例えば東大は修士課程の間は、どちらかというと理論中心にやって、博士課程になってから、いざフィールドへというような色が強いのですけれども、ほかの大学、特に私立の大学では、早めにフィールドに、修士の頃から出てというところもあって、修士まで取った人が、どのくらいの調査経験があるかというのは、非常に大学によって異なるのです。そうすると、我々としては、アカデミアでの調査経験がしっかりある方というのは、そのまま、うちの会社の調査でも生かせるなと思っておりますので、そういう意味では、調査を実際に経験して、あと調査でいろんなことが分かってくるのを、ちゃんと理論化する、分析するという経験をしたことがある方にぜひ来ていただきたいなと思っております。それが修士までである程度できるのか、博士まで行っていないと調査経験が十分ないのかというのは、大学によって異なるという回答になってしまうのですけれども、ぜひ調査をしっかりやって、分析を、ある領域でやったことがあるという方に、活躍していただける環境なので、来ていただきたいなと思っております。

【宮浦委員】  ありがとうございます。逆に理系のPh.D.を持っている方が、文化人類学をやったら面白いのじゃないかなという発想でお伺いしました。

【株式会社アイデアファンド 大川内代表取締役】  ありがとうございます。それも、一緒に調査に入ることはあります。データサイエンティストの方と一緒にプロジェクトをやることとかもあるので、いろんな方と融合できる領域なのかなと思っております。

【湊部会長】  どうもありがとうございました。
 実は最後に総合討論ができればと思っていましたが、時間が足りませんので、これぐらいにしたいと思います。
 今日は、3つの御発表を頂きました。おのおの違う観点から、非常に面白い問題提起も頂きました。ぜひ今後、この部会の、とりわけ人社系の大学院の在り方等々についての討論に、いろいろ参考にして、研究の材料にさせていただきたいと思います。今日は、3つのグループの皆様、誠にありがとうございました。御礼を申し上げます。
 それでは、議題2に移りたいと思います。前回の院部会で、ジョブ型研究インターンシップについて委員から御質問がございました。それについて、事務局から簡単に御説明をさせていただきたいと思います。では事務局より、簡単にお願いします。

【吉田学生支援課長】  8月8日付で学生支援課長を拝命しました吉田と申します。よろしくお願いいたします。
 それでは、資料2に基づきまして、ジョブ型研究インターンシップについて簡潔に御説明を申し上げたいと思います。
 まず、1ページ目でございます。こちらに背景と目的をまとめております。令和2年に総合科学技術・イノベーション会議で策定されました「研究力強化・若手研究者支援総合パッケージ」におきまして、研究力強化の鍵は、競争力のある研究者が活躍することである一方、若手をはじめとして研究者を取り巻く状況は厳しいという課題認識の下に、社会に求められる研究者を生み出す好循環を実現するための様々な目標が掲げられまして、その中の一つとして、博士人材の多様なキャリアパスの構築ということが掲げられたところでございます。また、産業協議会からも、産学連携の大学院教育の一環といたしまして、研究インターンシップが提言されたことなどが背景にございます。
 目的といたしましては、優秀な大学院生が安心して博士課程への進学を選択できるような環境づくり、また今後拡大が見込まれるジョブ型採用を見据えまして、産業界と大学が連携して大学院教育を行い、国際競争に耐え得る研究力に裏打ちされた実践力を養成することなどがございます。
 続きまして、2ページでございます。ジョブ型研究インターンシップの要件についてまとめております。まず博士課程学生を対象としていること。それから、長期、具体的には2か月以上でございますが、かつ有給で実施すること。大学側がこのインターンシップを正規の教育課程として位置づけること。企業側はジョブディスクリプションという、業務内容や業務遂行に必要な能力等を提示した上で募集を行っていただくこと。また、終了後には学生に対して、面談を通じて評価をフィードバックするとともに、評価書も発行する。こういった要件を定めておりまして、産業界と大学が連携して実施する形を取っております。
 下のほうに推進体制をまとめております。ジョブ型研究インターンシップ推進委員会という会議体を、経団連と共同で設置しております。そこで、進め方など、大きな方針をまとめていただいて、進めているところでございます。実施体制といたしましては、本インターンシップを推進する大学・企業からなる推進協議会という集合体を組織いたしまして、そこに参画する企業より、ジョブディスクリプションなどを提示していただくというような形でございます。
 3ページ目が、推進委員会の構成でございます。座長は、科学技術振興機構の橋本理事長にお務めいただいているところでございます。
 4ページ目が、昨年度の実績になっております。資料の下のほうを御覧いただければと思いますが、会員企業50社、それから会員大学64大学に、今、登録していただいておりまして、学生につきましては483名の方がシステムに登録していただき、会員企業50社の中から23社の企業より、64件のジョブディスクリプションを掲示していただきました。これに対しまして、上のほうにございますように、58人の学生から応募がございまして、18件のマッチングが成立しているところでございます。
 5ページ目が、昨年度の登録学生の研究分野の割合でございます。当初から情報や工学系がやはり中心だろうということでございますので、情報科学や情報工学、生物学、有機化学あたりの分野の学生が上位を占めております。
 6ページ目が、ジョブディスクリプションの研究分野を、事務局のほうで推定しているものでございます。こちらも、情報科学、情報工学、人間情報学、機械力学などが上位を占めているような状況でございます。
 7ページ目が、実際に研究インターンシップを行ったマッチング事例から捉えられる方向性といったものをまとめたところでございます。まず1つ目に、やはり博士学生の専門性を活かすようなインターンシップが1つ目でございます。具体的には、ここでは人工知能技術の研究を扱うジョブに対しまして、情報科学や情報工学を専門とする学生がマッチングした事例でございます。2つ目に、博士学生がもう専門分野にとらわれないインターンシップ、ここではジョブとして、「接触熱抵抗の調査研究」というものに対しまして、宇宙物理学を専門とする学生がマッチングした事例がございます。こちらは、専門分野は一致していないのですけれども、学生の持つスキルが、募集する業務を満たしていたというような形でマッチングが成功した事例です。3つ目が、研究活動により培われた課題設定や解決力などを活かすインターンシップでございます。ここは具体的には、「エビデンスによる分析に基づく科学技術イノベーション政策の戦略立案」に対するジョブに対しまして、応用物理工学の学生がマッチングした事例でございます。ここは具体的な専門知識ということではなくて、こうした研究活動を通じまして、学生が身につけた能力を政策立案に生かすというような形でマッチングができた事例になっております。
 このように、専門能力を生かすもの、専門分野に限らないフィールドで研究するものなどございますので、企業や大学に対しまして、柔軟に捉えて参加していただくように、これまでもお話を進めているところでございます。今後も御理解を深めていただけるように努めていきたいと考えております。
 残りの資料は参考資料ということでございますので、説明は割愛させていただきます。
 最後に前回の部会で、ジョブ型研究インターンシップの、修士の学生に対する対象の拡大について御質問を頂いたと承知しております。推進委員会におきましても、やはり産業界からは、修士に対象を拡大していくのではないかという御要望があることは承知しております。その一方で、やはり我が国の産業競争力を向上させていくために、この博士課程の優秀な人材をきちっと企業側にも増やしていくというような背景でつくられたものということもございます。そういった共通認識を踏まえた上で、まずは博士課程におきまして、理想的なインターンシップの在り方というものをつくっていき、それを踏まえて修士にも拡大していくことが現実的であること。将来的に、修士課程の学生にも門戸を広げていくことを議論するためにも、まずは現行の博士課程の取組について成功例をきちんと積み上げていくといったような御意見を頂いているところでございます。今後、この状況も見据えながら、推進委員会で御議論をしていただきたいと考えているところでございます。
 以上でございます。

【湊部会長】  ありがとうございます。
 ただいまの説明でよろしいでしょうか、
 それでは、最後に少し事務局から連絡事項がございますので、柿澤室長、お願い致します。

【柿澤高等教育政策室長】  高等教育政策室長の柿澤でございます。本日も活発な御議論を頂き、誠にありがとうございます。
 1点、進捗の報告でございます。前回、学部4年生の大学院進学に対する意識調査を実施している旨を報告いたしました。先生方にも調査項目を御覧いただいたものでございます。委員の先生方の一部には、御所属の大学における周知等にも御協力を頂きまして、誠にありがとうございました。
 最終的に、人文科学・社会科学系では、学部4年生約1万3,000人、またその比較のための、理学・工学・農学系が2,800人の学生さんから回答を頂いたという状況でございます。今こちらを分析中でございますので、詳細については次回の大学院部会で御報告させていただきたいと考えております。

【金井大学院振興専門官】  続きまして、事務連絡でございます。本日の議事内容を含めて、何かお気づきの点がございましたら、事務局まで御連絡くださればと思います。
 次回につきましては、10月26日の開催を予定しております。詳細は、追って御連絡いたします。
 また、本日の会議の議事録につきましては、事務局にて案を作成し、委員の皆様にお諮りした上で、文部科学省のホームページにて公表いたします。
 以上でございます。

【湊部会長】  ありがとうございます。終了予定時刻より少し時間が延びしまい、恐縮でございました。
 今事務局からお話のように、先般より実施の学部アンケートは、お陰をもちまして人社系で1万3、000人という十分な数が、集まりました。これについては、少し時間をかけて調査して、今後の最終まとめの指針とさせていただきたいと思います。このデータからどういう情報を出されてくるかということを、今度はゆっくり調べたいので、またその節には委員の先生からもいろんな御示唆・御意見を頂きたいと思っております。
 次回は2か月後の開催となりますけれども、今日のお話もそういう意味では非常に参考になりました。それから、このアンケート・データからどのようなことが読み取れるか等々も踏まえて、何とか今年度中に、人社系における教育改革の方向性についての最終まとめを整える方向で進めたいと思っております。今後とも、委員の先生方の御協力をぜひよろしくお願いしたいと思います。
 それでは、今日の部会はこれで終了させていただきます。ありがとうございました。
 
―― 了 ――

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