大学院部会(第110回) 議事録

1.日時

令和5年6月5日(月曜日)15時00分~17時00分

2.場所

WEB会議

3.議題

  1. 部会長の選任等について
  2. 大学院部会の運営について
  3. 第12期大学院部会の審議の方向性について
  4. 大学と企業が連携した博士号取得支援の取組について
  5. その他

4.出席者

委員

(部会長) 湊長博部会長
(副部会長) 村田治副部会長
(臨時委員) 加納敏行、川端敏行、神成文彦、小長谷有紀、小西範幸、佐久間淳一、迫田雷蔵、須賀晃一、高橋真木子、塚本恵、永井由佳里、堀切川一男、宮浦千里、横山広美、和田隆志の各委員

 

文部科学省

(事務局)池田高等教育局長、伊藤文部科学戦略官、小幡高等教育企画課長、柿澤高等教育企画課高等教育政策室長他

5.議事録

・議題1に関し、中央教育審議会令に基づき,委員の互選により湊委員が部会長に選任された。
・副部会長については,湊部会長から村田委員が指名された。
・議題2に関し、事務局から大学院部会の会議の公開等について説明があり,資料2の原案のとおり大学院部会運営規則が決定された。
 
【湊部会長】  それでは,第12期最初の大学院部会の開催に当たりまして,部会長を仰せつかりました湊から,一言,簡単に御挨拶をさせていただきます。
 前期,第11期の大学院部会では,主として人文・社会科学系の大学院の現状,それから,その将来的な在り方について,随分,資料も交えて議論をさせていただきました。一応,中間報告という形まで辿り着きましたけれども,さらに幾つか議論も残っております。本12期では,引き続き議論を深めて,できれば最終的な報告までまいりたいと思っております。併せて,前回も少し議論を始めたところですけれども,主に大学院における社会人のリカレント教育について,これはいろいろな議論もございますが,具体的にどういう形で大学院として対応可能か,どのように対応するのが適切かということも,できれば議論を深めて,ある程度の合意を得たいと思っております。幸い,大半の委員に前期からお付き合いいただいておりますので,今期も集中的な議論ができればありがたいと思っております。よろしく御指導をいただければと思います。
 私からは,以上です。
 続きまして,文部科学省から,御挨拶をいただければと思います。

【池田高等教育局長】  高等教育局長の池田でございます。第12期の大学院部会の開催に当たりまして,事務局を代表いたしまして,一言,御挨拶を申し上げたいと思います。
 湊部会長,村田副部会長をはじめ,委員の皆様方には,今期の大学院部会の委員をお引き受けいただき,また,本日,お忙しい中,御出席をいただきまして,誠にありがとうございます。
 大学院部会は,大学院制度と大学院における教育研究の在り方について専門的な調査審議を行うこととされておりまして,先ほど部会長からもお話がありましたように,この前の11期におきましては,人文科学・社会科学系における大学院教育改革や,大学院設置基準の改正,あるいはリカレント教育など,多岐にわたる事柄について御審議をいただきました。今期12期の大学分科会のほうでは,今後の高等教育全体の適正な規模を視野に入れた,地域における質の高い高等教育へのアクセスの確保の在り方や,国公私の設置者別の役割分担の在り方など,大局的な観点から御議論をいただく予定でございます。
 他方,社会の課題が複雑化・困難化している中で,大学院,特に博士課程に対する期待は非常に大きくなっておりまして,それゆえに社会からの注文も多くなっていると感じております。今期の大学院部会におかれましては,こうした状況も踏まえ,更には大学分科会での議論も視野に入れながら,人文科学・社会科学系の大学院教育についてさらに議論を深めていただきますとともに,デジタル化や少子化といった社会の大きな変革も踏まえ,我が国全体の大学院教育の今後の在り方について御議論を深めていただければと考えております。どうか,忌憚のない御意見をお願いいたします。
 よろしくお願いいたします。

【湊部会長】  どうもありがとうございました。
 それでは,早速,議題に入りたいと思います。議題(3)でございます。第12期大学院部会の審議の方向性について,まずは,事務局から,簡単な御説明をお願いいたします。

【柿澤高等教育政策室長】  ありがとうございます。文部科学省高等教育政策室長の柿澤でございます。資料3-1から3-3を御覧いただければと思います。
 まず,資料3-1,こちらは11期の最後でもお示しした内容と同じでございますけれども,第12期で御審議いただく事項の例といたしまして,4点入れております。1点目,人文科学・社会科学系の大学院の改革方向性について。2点目としまして,今後の大学院教育の改革振興策について。3点目としまして,大学院におけるリカレント教育について。4点目としましては,制度改正事項といたしまして,基幹教員の導入及び大学院における質保証システムの改善・充実。また,入学前既修得単位を勘案した在籍期間の短縮について。どちらも12期の審議事項の例として入れさせていただいております。
 また,資料3-2でございますけれども,こちらは,人文・社会科学系学部学生における大学院進学の意向調査ということで,2月に開催いたしました大学院部会のほうでアンケート項目の素案をお示ししたところでございます。その際にいただいた御意見なども踏まえてアンケート項目も精査したものでございますけれども,5月30日から6月30日ということで,1か月間,ウェブアンケートを実施中でございます。資料3-2の調査対象を御覧いただければと思います。人文科学・社会科学系の大学院(専攻)を設置している243大学における,人文科学・社会科学系の学部・学科に属する4年生以上の学生,推定27万人の学生を対象に実施するというものでございます。また,前回,小長谷先生からの御意見といたしまして,これは理系とも比較をできるといいよねというお話もございましたので,資料3-3でございますけれども,こちらの対象となる243大学から抽出した100大学のうち,理学,工学,農学系の学部・学科を持つ27大学,こちらの理学,工学,農学系の学部・学科に所属する4年次以上の学生も対象にすることにいたしまして,人文・社会科学系と理学・工学・農学系の学生の結果も比較できるようにしてございます。また,前回,アンケートの回収率の御意見もいただきましたけれども,この点につきましては,今,できる限り回収率を高めたいということで,学生に対して周知をする周知用のメール文章ですとか,そういったひな形も文部科学省のほうからお示しして,各大学に協力をお願いしているという状況でございます。
 資料につきましては,以上でございます。

【湊部会長】  ありがとうございました。
 今,お話しいただいたとおりです。ここで示されました四つの事項,とりわけ,人文・社会科学系大学院の改革,それから,大学院におけるリカレント教育について,本期も議論を尽くしてまいりたいと思っております。
 それから,今,お話がありましたように,前期の最後のほうでお約束をしましたが、人文・社会科学系の学部学生が大学院へ進学するときの意向調査アンケートを実際に行いたいと考えています。アンケート項目やそのやり方についていろいろ準備をしてまいりまして,おおむねの方針が決まったところでございます。特に,前回御指摘があったように,人文・社会科学系と自然科学系で随分違う局面が見えてきたと思うんですね。ですから,学部学生の大学におけるプロセスの中で、この両者を少し比較してアンケートを取ったほうが,もう少しお互いの際立った様相が明確になるのではないかということもございまして,今お示し申し上げましたように,この両方を少しパラレルでやりたいと考えております。委員の先生方にはぜひ,このプロセスでも御協力をいただきたいと思っております。
 これが今期における大体の審議の方向性ということになります。今日は,早速ですが,議題(4)として,大学と企業が連携した博士号取得支援の取組について,少し具体的に例示させていただきたいと思います。本日は,大阪大学と島津製作所が,非常に前向きで先進的な,ある種のリカレント教育といいますか,取組を行っていらっしゃるということで,ヒアリングを行わせていただきたいと思います。今日は,まず,両者からお話をいただいた上で,委員の皆様から御質問等々の質疑をいただければありがたいと思っております。
 それでは,議題(4)の内容でございますが,本日は,株式会社島津製作所代表取締役社長の山本靖則様,それから,株式会社島津製作所上席理事で大阪大学・島津分析イノベーション協働研究所の所長もお勤めの飯田順子様,同じく人事部長の志賀正信様,大阪大学理事・副学長の田中敏宏先生に,お忙しいところを御出席いただいております。
 大阪大学と島津製作所は,2021年から島津製作所の技術者・研究者の博士号取得を支援するプロジェクトを既に行われていましたけれども,今般,その取組を更に発展させて,大阪大学大学院の修士課程を修了した学生を島津製作所で採用し,その社員が博士後期課程に社員の身分を持って派遣されて大阪大学で共同研究を行うという,非常に新しいプロジェクトを開始されています。この取組は,大学院の課題と日本でずっと言われてきた博士離れといったものの問題解決の一つの方向性を示す可能性もあるということで,私どもも注目しております。今日は,この新しい仕組みの現状や課題,今後の展望等について,おのおの,大学及び企業という観点からお話を伺えればありがたいと思っております。
 それでは,まずは,島津製作所の山本様と飯田様に少し御説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

【株式会社島津製作所 山本代表取締役社長】  どうもありがとうございます。島津製作所の社長の山本でございます。本日は,弊社の博士人材に関する取組に関しましてお話しさせていただく機会を頂戴しましたこと,心より御礼申し上げます。
 さて,弊社は,1875年(明治8年)の創業で,いわゆる明治のスタートアップ企業と言えるかと思います。当時から産学連携に取り組んでまいりまして,オーペンイノベーションというのは弊社のDNAではないかと考えている次第でございます。社是といたしまして「科学技術で社会に貢献する」ことを長年掲げておりますが,その実現にはイノベーションが不可欠でございます。イノベーションは,社員一人一人の多様な専門性と価値観を組み合わせることから生まれるものだと考えておりまして,それによって社会課題の解決に結びつけることができるのだと思っております。
 弊社の強みは社員が持つ多様な技術力と卓越した専門性にございますが,この技術力や専門性は常に最新・最先端にアップデートすることが必要です。大阪大学と取り組んでおります現在のREACHプロジェクトは,博士号取得を目指す社員を学生として派遣し,社会実装を視野に入れた研究を進めながら,最先端の新たな専門性を獲得してもらうことを目的として進めてまいりました。今般,新しい企画を加えさせていただくことになりました。弊社グループがグローバルに競争力を持ち続けるための源泉は人材でございまして,社会課題解決に向けて,多様なパートナーと協働してイノベーションを起こすことのできる人材の育成が重要で、特に,ビジネスリーダー人財と高度専門人財を育成したいと考えております。今回の大阪大学との取組は,ビジネスリーダー人財育成の観点からは,自ら考え,挑戦し,やり切る経験を積むチャレンジの機会として,また,高度専門人財育成の観点からは,異なる文化,環境で先端的な研究に従事して専門性を磨く機会として,大変貴重な場になるものと確信しております。
 なお,弊社はこれまでも博士号取得を希望する社員に対しましては,個別に大学へ留学派遣したり,共同研究を行う中で博士号取得を推奨したりということで,継続的に育成に取り組んできております。博士号取得時には報奨金を出す制度もございまして,また,役員が参加する定例会合の場で博士号取得を報告してもらうといったようなことも行ってきております。過去には,その場での発表がきっかけとなりまして社内のほかの部署にスカウトされたといったような例もございます。
 また,博士人材の取組ということで,文部科学省が推進されておりますジョブ型の研究インターンシップに関しましても,一言触れさせていただきます。弊社は,令和3年8月に,ジョブ型研究インターンシップ推進協議会が発足した当初から,参加させていただいております。初年度には,博士後期課程2年生の学生1名を約2か月間受け入れさせていただきました。残念ながら昨年度は当社から提示しましたジョブディスクリプションに対応する応募がなかったのですけれども,今年度は6月からの事業開始に向けて5件の提示を行っておりまして,学生の応募を待っているところです。そのようなインターンシップの過程で博士の採用に結びつくケースも出てくるとありがたいなあと思っております。
 弊社グループの海外拠点には,博士号を持つ社員がたくさん活躍しております。私も赴任経験のある欧州では,お客様にもたくさんの博士がおられました。日本も同様に,企業内の博士が大学やほかの企業の博士と協働して研究開発とイノベーションを引っ張って,社会課題を解決していくという社会を実現できたらいいなというふうに思っております。
 それでは,本題のREACHプロジェクトに関しまして,弊社の飯田のほうから詳しく説明させていただきたいと思います。

【株式会社島津製作所 飯田上席理事】  ありがとうございます。それでは,画面を共有させていただきます。
 産学共創と高度人財育成を目指すREACHプロジェクトについて,島津製作所の飯田から御説明させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
 このREACHプロジェクトのREACHですが,ここに書いております,REcurrent & RE-skillingのRE,Academia and IndustryのA、 CollaborationのC,for Highr EducationのHから取っております。
 島津製作所は,明治8年(1875年)の創業で,分析計測機器を主幹事業とし,医療機器,産業機器など,開発,製造,販売いたしております。ここに示しますように,極めて多様な分野のお客様にソリューションを提供しております。140年以上にわたり事業を継続できている要因の一つとして,産業の進歩・発展に対応し,貢献するための技術開発力の確保がございます。そのため,創業以来,大学,研究機関,企業との共同研究を積極的に進めてまいりました。
 大阪大学・島津分析イノベーション協働研究所も,そのような取組の一つです。協働研究所と申しますのは,大阪大学にある企業の研究所という位置付けです。島津製作所の場合,最先端の分析技術の研究と開発を通しまして,医療,製薬,食品などで幸せな健康長寿の実現に貢献することを目指しております。
 REACHプロジェクトの前身のREACHラボプロジェクトは,大阪大学・島津分析イノベーション協働研究所を大阪大学・島津の組織連携の場としてフルに活用し,2021年4月からスタートいたしました。これを発展させ,2023年4月から,REACHプロジェクトとして進めております。
 ここから,REACHプロジェクトの核(コア)でありますREACHラボプロジェクトについて,まず御説明させていただきます。REACHラボプロジェクトでは,学位取得に意欲があり,新しいことに挑戦したい島津の優秀な社員を社内公募で選び,博士課程に派遣し,グロ-バル人財への成長を大阪大学・島津で支援いたします。従来からの共同研究を通した製品・アプリケーションの開発に加え,島津製作所が事業を伸ばしたい分野の大阪大学の卓越研究者の研究室に博士課程の学生として社員を派遣します。協働研究所も研究の場として使いながら,派遣された研究室の御指導を受け,共同研究に取り組みます。博士号取得後,復社し,共同研究の成果を社会実装するリーダーとなり,世界で活躍できる人財への育成を目指します。この写真は,2021年の第1期生で,薬学研究科に派遣したメンバーで、人材開発室長とのキックオフの写真になります。会社としてこの取組を全面的に支援しており,こちらは2022年4月に社長に就任しました山本が,その6月に大阪大学にて,REACHラボプロジェクト1期生,2期生や,協働研究所関係メンバーとの交流の様子です。
 REACHラボプロジェクトの実施状況を示しております。現在,7名の社員を派遣しています。核酸医薬や遺伝子治療薬など,バイオ医薬品の創薬や品質管理に関わる者や,情報科学,AIなど,いずれも当社に重要なテーマで共同研究を進めています。
 REACHラボプロジェクトのコンセプトをポンチ絵で示したものになります。島津製作所の場合,新卒の技術者は,約94%が修士卒,約6%が博士卒です。入社後,先輩,上司について仕事を一通り経験し,次に,自分で仕事を回した頃,今後のキャリアをいろいろ考える人が多いように思います。そのようなときの選択肢の一つとして,REACHラボプロジェクトを準備しました。島津の強みを生かし,社会に貢献でき,事業として強化したいテーマと指導教授を,協働研究所を中心に大学・島津が一緒に選び,このテーマで社内公募をいたします。派遣決定後,指導教授,協働研究所,会社の上司がサポートしながら,本人が課題を設定し,解決策の案を考えるところからスタートします。REACHラボプロジェクトでは,協働研究所に派遣するとともに,博士課程の学生として研究室に所属し,研究にフルタイムで取り組むことで,高度な専門性に加え,指導教員や研究室メンバー,学会などで人脈を構築し,自分で課題を見つけ解決するトランスファラブルなスキルを獲得した高度人財になってもらい,グローバル化する解なき社会で次世代を担うリーダーとなり,世界で活躍してもらうことを目指します。
 REACHラボプロジェクトを絵で示しますと,島津製作所の社員が大阪大学にある島津製作所の研究所である協働研究所に派遣され,指導教授の博士後期課程にも所属し,共同研究に取り組みます。
 今年から新たに加えた取組を絵にいたしました。REACHラボプロジェクトで社員を派遣している研究室の優秀な学生が修士修了時点で島津製作所に就職し,REACHラボプロジェクトと同様に島津製作所の経費負担で博士後期課程において島津製作所社員として共同研究に取り組み,博士号取得を目指すものです。REACHラボプロジェクトで社員を派遣する研究室にて島津の社員と一緒に研究に取り組み,島津に就職を希望し,入社後,新人研修を受け,島津の社員として今までと同じ研究室の博士後期課程で共同研究を担うケースや,島津から派遣された社員の取組を見ていて島津に入社し,社員として博士後期課程で共同研究を進めるケースなどを想定しております。
 本年度4月に大阪大学との包括的な連携協定を締結し,協働研究所における研究の高度化と成果の活用を目指すとともに,高度人財の育成の新たな形を進めます。すなわち,REACHラボプロジェクトの取組に,ここに示す二つを加えます。前のスライドで御説明申し上げました社員派遣先の研究室の修士卒の学生を島津製作所の社員として採用,博士後期課程に派遣し,共同研究とその成果の社会実装の加速を図ります。社会実装を進め実用化するためには,ますます文理融合や人文・社会系科学の力も重要になっています。今回,包括的な連携協定締結ということで,従来の理系対象から,文理融合分野,人文・社会系科学への拡大を目指します。これを反映し,プロジェクトの名称も,REACHラボプロジェクトの「ラボ」を取りまして,REACHプロジェクトとして進めております。
 REACHプロジェクトをほかの大学,ほかの企業に展開するにはどうしたらいいかと,聞いていただくことがございます。博士人材の育成と活用に関し様々な取組がされており,よい流れを加速するために事例を共有し,更によいアイデアをつくるとともに,企業,大学,社会の認識を変えていく仕組みが有用と考えております。例えば,法人を顕彰する認定制度の創設というのはいかがでしょうか。健康経営優良法人のリカレント・リスキリング版のイメージです。産業界で活躍する博士人材を含め,リスキリング・リカレント教育で人材を高度化し,労働生産性を上げ,イノベーションを目指し社会実装する取組は,企業の将来性の指標としても適切ですし,投資家に見えるようにすることでさらに社会が大きく動くことを期待しております。
 短期的に取組のアクセルを踏むために,産業界の学び直し人材の教育への動機づけを高める仕組みとして,産業界で活躍する高度人財教育と成果の社会実装を目指す事例に対する大学指導教員への研究助成金も,御検討いただく価値があるように考えております。企業への後押しとして,マッチングファンド方式を含めたインセンティブも,検討いただく価値があるのではないかと思っております。私たち島津製作所といたしましても,産学共創と高度人財の育成・活用をさらに進め,社是である「科学技術で社会に貢献する」に一層努めたいと考えております。
 御清聴,ありがとうございました。
 
【湊部会長】  どうもありがとうございました。
 それでは,時間の都合もありますので,引き続いて,大阪大学の田中先生より大学側の御説明をいただきたいと思います。

【大阪大学 田中理事・副学長】  大阪大学の統括理事・副学長をしております,田中と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 ただいま島津製作所様と私どもが連携して進めております,REACHプロジェクトの背景をもう少し詳しく説明させていただこうと思います。資料の共有をさせていただきます。
 先ほど島津製作所様のほうから御説明ありました,その背景を説明させていただきます。提示しております図面は私ども大阪大学の教育基盤全体を模式図で表したものでございまして,図の見方は,中央の下から右斜め上に向かって,学士,修士,博士と,ずっと順を追って年代が続いていく。さらに,リカレント教育もたくさんの部局で行っております。一方,中央の下から左上に向かっては,総合大学としての多様な教育を進めていることを示しておりまして,専門教育,教養教育,国際性涵養教育,さらに,ブレンデッド教育と言います,いわゆるオンラインを併用したもの,それから,英語コース。青い太枠は大学の中を表していますが,さらに左上のところに,私ども実は産学連携活動をかなり強く進めておりまして,それを教育のほうにも広げていこうと企業・大学相互メリット型のリカレント・リスキリング教育ということも進めております。今回のREACHプロジェクトはこの一環でございます。
 大阪大学の産学連携のバックグラウンドを少しお話し申し上げます。2000年以前からいろいろな組織連携を進めておりましたが,実は2006年に,共同研究講座という,左下にございますような制度をつくりました。これは,右上に記載のように,企業の関係者がキャンパスに常駐するという制度でございまして,当時は単独の共同研究にかなり特化したもので,特に講座というのは理系の研究室を想定していまして,教授,准教授,助教,その3名1組の方を企業から派遣していただいて常駐しているというものでございます。この制度,当初,2006年のときは三つの会社から始まったのですが,徐々に規模が拡大してまいりまして,特に企業様のほうからもう少し大きな組織での派遣ということも御要望がありましたし,また,特定の単位・テーマだけじゃなしに広く包括的にいろんな企業研究も拡大していきたいということで,2011年に,この共同研究講座は残したままで,さらに協働研究所という制度を設けました。こちらも企業側の方がキャンパスに常駐します。この場合には,基礎から応用まで,また,いろいろと社会実装できるようなテーマまで扱います。また,一旦包括提携を結んでおきますと,企業様のほうで特任教授の方が学内を回られて新たなテーマを見つけた場合には,そこへどんどん拡大していくというものです。また,企業様によりましては30名ぐらいキャンパスに派遣されますので,右上のテクノアライアンス棟というのを建設しまして,今,3棟ございますけど,ワンフロア使っていただく場合もございます。
 今の制度は2011年から始まりましたけど,2020年頃に,更に次のステップへ教育・人材育成のところへ拡大しようと。そこで,2020年4月から工学研究科でインターンシップ・オン・キャンパスという,工学研究科には九つの専攻科がございますけど,全てに産学官共創コースというのをつくって,本学の学生が先ほどの協働研究所あるいは共同研究講座で産学連携のテーマについて学び,学位も取れるシステムにしました。先ほどの共同研究講座、協働研究所はインダストリー・オン・キャンパスという制度なのですが,インターンシップ・オン・キャンパスというのを始めました。
 このインターンシップ・オン・キャンパスでございますけど,図の下に書いてございますように,大学に居ながら企業の協働研究所等の活動に参加します。そうしますと,右下に,ちょっと文字が小さくて恐縮ですが,例えば,午前中はその学生が所属します研究室で基礎研究を行って,午後は協働研究所のほうに移って,キャンパスの中に居ながらにしてインターンシップが可能になります。そうしますと,長期間のインターンシップが可能になりますので,非常に企業様とのマッチングもよくなって,場合によっては,3か月,半年,博士課程でも1年の長期のインターンシップも可能になるということでございます。また,教育体制も,大学の教員からの学術的視点での研究指導に加えまして,産業界からは事業化の視点を含めたような研究指導も受けることができまして,上のメリット①で書いてございますように,研究指導体制の多様化というのが進んでまいりました。そこで,2021年になりまして,島津製作所様のほうから,既に島津製作所様のほうは協働研究所をお持ちだったのですが,REACHラボプロジェクトを始めていただくことになりまして,この場合には島津製作所様の研究者の方が博士課程の学生として派遣されるという形で,今まで我々もリカレント・リスキリングはいろんなことでやっていたのですけど,更に新しい形態でのリスキリング教育も進みまして,リスキリングそのものも多様化が進んだと思っております。
 さらに,2023年,今年になりまして,REACHラボプロジェクトは,インターンシップ・オン・キャンパスのさらなる展開として,REACHプロジェクトという形で進んでまいりました。こちらのほうは,もう既に御紹介がございましたように,島津製作所様の研究者の方が,我々の博士課程の学生として,ある研究室のほうに所属します。さらに,私どもの修士課程を終えた学生が島津製作所に就職して,そのまま,協働研究所が学内にございますので,そちらのほうの博士課程の学生として参加する。そうすると,同じ研究室の中に企業から来られた研究者の方と本学の修士課程を修了した学生が博士課程の学生として一緒に同居することになります。目標はお互いに同じで,その研究室あるいは研究分野の博士号を取るということが目標ですけど,一人ずつテーマは違いますが,ほぼ,その研究室が関係するところの内容の目標に沿った研究活動をする。当然,修士課程から上がってきた学生のほうが年は若いのですけれども,これはリカレントあるいはリスキリング教育を兼ねていますので,島津様からは,分析機器の会社でいらっしゃいますが,例えば,先ほどの薬学関係とか,あるいはAI関係についてはリスキリングとして,それまでそういうような素養をお持ちでなかった方が来られますから,逆に本学の修士課程を出た直後の学生のほうがむしろそこは詳しい場合もあります。ただ,年数をたどって同じ学位を取ろうというときには全てかなりのレベルのところまで達して,そうしますと,企業の方のほうが年上なんですけども,本学の学生からも学ぶところもあるというようにして,実は,日本の大学といいますのは,今,いろいろダイバーシティのことを言われていまして,ジェンダーとか国籍のダイバーシティは言われますが,年齢は,18歳から,学部ですと22,修士で24,博士課程で27~28ぐらいで,かなり年齢層が偏っているのですけど,30代,40代の企業様の方が来られて,研究室の中でもそういうような世代あるいは年齢層の多様化というのが進むという意味で,また新たなダイバーシティが進んできたと思っております。これがメリット③。
 それから,メリット④のところに,先ほど御紹介ありましたように,博士課程の学生なのですが,実際には社員としてそのまま協働研究所の中に残っていますので,経済支援を受けられます。私どももいろんな経済支援を行っておりますけど,社員になっていただきますと,そこに,福利厚生の経費といいますか,支援も加わりますので,通常のいろいろな経済支援の中でも,かなり厚遇といいますか,いい待遇のもので,そういう経済支援のダイバーシティもかなり進む。さらに,博士課程進学の問題として,一つは経済支援,もう一つはキャリアパスが不安定な問題がありますけど,この場合は,博士課程に入学の時点で,出口といいますか,企業に就職するという新たなキャリアパスは安定していますので,落ち着いて研究活動も進めることができるという,キャリアパスの多様化も進めることができるという,新たな取組になっております。
 今後の取組としまして人文・社会科学系の展開を考えていまして,単に事業化といいますと,経済的な,あるいは経営的といいますか,そういうものに思われがちなのですけど,AIとか,生命系の話になってまいりますと倫理の問題が非常に重要になっています。ELSI(倫理的・法的・社会的課題)に関して大阪大学は2020年4月にELSIセンターというのを立ち上げておりまして,こちらのほうがかなり文系・理系融合の,特に文系のこういうような背景を持った先生方がおられて,そちらとの連携を通じて人文・社会科学系への展開。それから,今度は人材育成という観点から,そもそも今回のような新たな展開がどんどん進んでいきますと,人材育成の在り方そのものが,非常に新規性がありますので,これ自体が学問的なテーマにもなり得るということで,そちらのほうを取り扱っていただける研究科との共同研究も今後進めていこうとしています。また,協働研究所は,先ほど申しました2006年時点では3社ですが,今は120社常駐していまして,今後は少しずつ,サイエンス,エンジニアリングに関わらない,直接関係のないような企業様も参画していただきつつありますので,そちらのほうに展開していけたらいいかなと思っております。本学は共創という立場でいろんな活動をしておりますが,こういうような取組に御賛同いただける企業様がいらっしゃいましたら,積極的に拡大していきたいと思っております。
 ここまでは島津製作所様との取組なのですが,私ども,リカレント・リスキリング教育には大分前から力を入れておりまして,ここにナノサイエンスデザイン教育研究センターとございますけど,これは,2002年からその基盤をつくって,実は社会人教育をしています。毎週,月曜日から金曜日まで夕方に夜間講座を開いていて,それから,土曜や夏休みを利用して,実習あるいは集中講義をしております。既に昨年度時点で20期生が出まして,今年,2023年から21期生が入ってまいります。これは,企業の方がそこに参画されまして,修了してから博士課程に進まれる方もいらっしゃいます。2022年から,リカレント教育・リスキリングの教育の重要性はかなり,国のほうからもそういう声をいただいていますので,このセンターを改組しまして,エマージングサイエンスデザインR3センター,R3というのは,アールキューブと読みます。立方形なのですが,リカレント,リスキリング,リトレーニングのR3で,こういうセンターをつくって,今後はここを中心にして,リカレント教育・リスキリング教育を大学院レベルでもどんどん進めていこうとしております。
 以上でございます。どうも,御清聴,ありがとうございました。

【湊部会長】  どうも,田中先生,ありがとうございました。
 それでは,質疑に入りたいと思います。
 まずは,できれば田中先生への,御質問,御意見等ございましたら,集中して頂戴出来ればありがたいと思います。いかがでしょうか。挙手ボタンでお願いいたします。
 それでは,まず,小長谷委員からお願いできますか。

【小長谷委員】  すばらしい試みの御紹介,ありがとうございました。こういういい事例を全国のたくさんの大学に広げていくということを考えていく前に,事実として教えていただきたいのは,現在,幾つの企業とされているのかという点です。先ほど途中で120社とおっしゃったのですけれど,それはまた違うレベルでの企業ではないかと思いますので,島津様並みにいろいろ連携が充実しているのはどれぐらいで,そうでない場合はどの程度のことをなさっているのがどれぐらいでというような,数とそれぞれの質みたいなことを教えていただければありがたく存じます。1対1の関係ではなさそうなので,そこを教えてください。

【田中理事・副学長】  質問,ありがとうございます。先ほど120と申しましたのは,実際に本学に常駐している,いわゆる研究主体の講座・研究所でございまして,それから,資料の4ページの工学研究科で開催しております産学官共創コースは,今,20社ぐらいの企業様が直接関わっていただいています。実際には120社ありますので,この産学官共創コースに賛同いただければ,今後,学内のところは幾らでも増えていきますけど,現在のところは20社ぐらいが工学研究科の中で学生を受け入れて御指導いただいています。最後のREACHプロジェクトのレベルまで参りますと,今のところは島津様が今回初めての私どもの取組ですので,ここは1社です。ただ,ここは私どももぜひ,大学院の学生の経済支援,キャリアパス支援をしたいので,広げていきたいというふうに思っております。その120社のところが一つの候補としてあり得るかなというふうには考えております。
 以上でございます。

【湊部会長】  ありがとうございます。
 それでは,村田委員,どうぞ。

【村田委員】  お聞きしていて,資料も見ていたのですが,1点だけ,よく分からない点がございます。私の誤解だと思うのですが,島津製作所様と大阪大学さんと,修士の段階で出て,そのまま就職をして,博士課程の間は島津製作所の社員としてというような言葉が入っているのですが,島津製作所に修士を出た学生がそのまま就職してしまうという意味なのか,それとも,一時的に就職している形を取っている,実はインターンシップだけれども,就職している形を取っているという意味なのか,あるいは大阪大学から島津製作所様に正社員として採った人をもう一度派遣し直しているという意味なのか,この辺りが私の中ではまだ整理できていないのです。多分,いずれにしても非常に面白い仕組みなのだろうなと思うのですが,そこを少し教えていただければと思います。

【田中理事・副学長】  最後におっしゃられましたように,正式には,修士課程を終えて島津製作所に就職をします。正社員として雇用していただいて,ただ,そこから派遣されるのですけど,協働研究所そのものの物理的な実体がキャンパスの中にあって,そこに就職する学生はその研究所の中で修士課程も過ごしているものですから,そのまま残ったままで,実態としては変わらないのですが,資格が学生から島津製作所様のほうの社員になります。これは単に奨学金だけじゃなくて,先ほども少し申しましたけど,福利厚生といいますか,社員としての扱いをしていただけることになるので,別の奨学金をもらっている人よりさらに充実した内容になるので,我々の奨学金の支援というのにかなり傾斜をつけたいものですから,そういう意味として位置付けております。ですから,正社員でございます。
 以上です。

【村田委員】  先ほどの説明で,今,先生がおっしゃった説明のところは,基本的に,修士を出た後,島津製作所様に就職して正社員になるのですね。

【田中理事・副学長】  そうです。

【村田委員】  その正社員が博士課程に派遣されてきているということですから,言わば学費を島津製作所さんが出している形で,奨学金云々ではなくて,島津製作所に正社員として来た学生がそのまま,大学院の研究者としてというか,大学院の学生の身分としてまた派遣されているという理解でよろしいのでしょうか。

【田中理事・副学長】  そうです。給料をもらってという形ですので,正社員です。それ以外の学生と比較するために奨学金という表現をしました。

【村田委員】  だから,正社員なのですね。

【田中理事・副学長】  そうです。

【村田委員】  それですっきりしました。その説明が分からなかったものですから。

【田中理事・副学長】  私の説明が悪くて,申し訳ございません。

【湊部会長】  ありがとうございます。それでは,佐久間委員,手が挙がっていますかね。

【佐久間委員】  どうも,すばらしいお話を,ありがとうございました。お話の中で,これから展開していかれるということだったのでこれからのことなのだと思いますけど,これを人社系に拡大していくときに,なかなかこれまでのモデルそのままというわけにはいかないかもしれないので,そこら辺で何か,こういう方向で考えているみたいなことがもしあれば,少し御教示いただけないでしょうか。

【田中理事・副学長】  実は,既に人文・社会科学系で,今,人材派遣会社というのが世の中でかなりあると思いますけども,そちらと協働研究所を持っておりまして,そちらは,派遣社員のレベルといいますか,そういうものの指標というのが今は一般化されてないので,そういうものを一つの研究対象、あるいは,ビジネスとしてはそういうものを明確にすることによって,派遣社員の格付といいますか,レベルを明確にしたいと。そちらは完全に,いわゆる人材派遣会社でいらっしゃいますので,文系といいますか,人文・社会科学系の企業様でいらっしゃいまして,少しずつそういうところへこの協働研究所のシステムそのものも広がりつつある,その一例でございます。

【佐久間委員】  そうすると,それも、人材派遣会社の方を受け入れて学生と一緒にやるということですね。

【田中理事・副学長】  そうですね。

【佐久間委員】  ありがとうございました。

【湊部会長】  それでは,川端委員,よろしいですか。

【川端委員】  ありがとうございます。非常にためになる話で,少しお聞きしたいのは島津製作所様のほうの話なのですけれども,この学生はどのタイミングから正社員になるのか。結局,修士課程の入学のときにはそういうことは考えてなくて,それがドクターに行くぞとなった,どこかのタイミングで就活のフェーズに入って正社員化するという,このラインなのかなあとか思うことが1点と,もう1点は,島津製作所様のほうで先ほど,大学院卒の中の95%ぐらいは修士で,5%はドクターだという話をされていて,ほかの企業さんでも,中の正社員にドクターを取らせたいといって大学に出されるというのはいろんな企業さんでやられていて,そこで違っているのは,修士からドクターに移るような非常に若いところを正社員化されてというところが肝かなあとか思っていて,そうだとすると,95%の中の5%がこのゾーンの人と思うと,毎年,1人とか2人とかというのが持続可能な数字なのかという,その規模感だけお聞きしたくて質問をさせていただきました。

【田中理事・副学長】  前半のところを先に私から。協働研究所が物理的なものとしてございまして,修士課程の学生もそこに参加しています。そこで修士課程のテーマとして面白ければ,その2年間がいわゆる就職活動のマッチングというか,学生がどの時点で決めるかは分かりませんけれども,その2年間の間のどこかで,これは面白いな,学術だけじゃなしに,事業展開という,こういうルートもあるのだということを思った時点で決まるかな。そこはいろんなパターンがあると思います。
 ここからは少し,島津様のほうから御説明させていただきます。

【湊部会長】  それでは,山本様か,飯田様か,お願いできますでしょうか。

【山本代表取締役社長】  最初の御質問に関しては,修士から博士に上がっていただくときに島津のほうに入っていただいてというのが基本なのですけども,場合によっては,ドクターを1年やられた後に,2年目から会社に入ってという場合でも受け入れさせていただこうと思っていますので,始めるのは、ドクター1年に入られるところからと、特別,決めているわけではございません。
 先ほどありました94%と6%ですが,新入社員で入っていただく社員の割合は,94%が修士卒で,6%がドクター卒という形になっているというのが先ほどの数字でございまして,私どもの会社は,その後,修士で入った人たちをドクターコースに会社から派遣してドクターを取っていただくということをやっていまして,現在,社内にいるドクターの中の3分の1くらいは会社に入ってからドクターを取っていただいた方ということになっています。今回のREACHの場合でいきますと,会社に入ってからドクターを取っていただくという形の人たちということになりますので,特別,人数を1人にするとか2人するとか決めているわけではなく,会社として,幾らでもと良いというわけではないのですけども,可能な限り採用させていただこうというふうに思っています。まずは,今年度,初年度は1人が島津の社員としてドクターに入っていただくということで計画しております。

【川端委員】  ありがとうございました。

【湊部会長】  次は,迫田委員,いかがでしょうか。

【迫田委員】  すばらしいお話が聞けて,大変勉強になりました。ありがとうございました。非常にいい取組みであり,我々もまねしたいと思っています。この仕組みがいいのは,財政的な制約から支援がなかなか行き届かない問題を企業の力を使って解決を図ることだと思います。
 ここは文科省の方に伺いたいのですけども,修士課程のジョブ型インターンシップについてずっと経団連の中でも議論になっていたのですが,当面修士駄目だということで博士のみということで進んできたのですけども,今日説明があった仕組みがいいのだとすれば,修士段階でのインターンシップが実質上ワークすると思います。こういう形まではありなのでしょうか。それとも,ここはちょっとグレーなのでしょうか。文科省の方にお伺いしたいと思います。

【湊部会長】  事務局から,どなたか,レスポンスいただけますか。

【柿澤高等教育政策室長】  ジョブ型のインターンシップにつきましては,今,先行的・試行的取組として,実施方針,ガイドラインも定めて実証しているところでございますので,まさに,こうした企業の取組,大学の取組,あるいは大学院部会での議論等も踏まえた今後のありようというところは,また議論の対象になろうかと思っております。

【迫田委員】  今のところ,修士のこのやり方であれば,可能は可能ということで考えてよろしいのでしょうか。

【柿澤高等教育政策室長】  今,個別に担当がいるわけではないのですけれども,現在のジョブ型研究インターンシップの定義に対する類型という言い方で言いますと,当面の間は博士課程学生を対象とするということで,修士課程学生の取扱いについては,今,引き続き検討というところが最新のジョブ型研究インターンシップの実施方針の状況ではございます。

【迫田委員】  もしもこの形がいいのであれば,やりたい企業はたくさんあるような気がしておりまして,恐らく経団連で一緒に議論をしていたような会社は,やりたいと言うのではないかと思います。もしこれが進むのであれば,ぜひやっていただけたらと思いました。

【柿澤高等教育政策室長】  承知いたしました。ジョブ型研究インターンシップの状況につきましては,事務局のほうでも整理をして,次回,説明をさせていただきますので,よろしくお願いいたします。

【湊部会長】  そうですね。これはまた改めて議論いたしましょう。
 それでは,神成委員,よろしいですか。

【神成委員】  大変斬新な方法で,明らかに一つの解になるのではないかなというふうに思うのですが,重箱の隅をつっついたような指摘で申し訳ないのですけども,一般にリカレント教育は全てそうかもしれませんが,大学の支援を企業がした場合,それが人材の流動性の重しになったりしないのかなと危惧します。つまり,企業のお金で博士を取らせてもらったら,例えば30代半ばでどこかに動くというようなことができなくなるとか,そういう縛りの方向に行ってしまわないのかと,多分,そういうのが問題で昔もひもつきの博士課程とかの奨学金はいかんよというような時代があったのではないかなと記憶しています。そういう個人を制約するというところはどのくらいまで,契約というか,本人と企業の間で決めて実施なさっているのでしょうか。島津さんにお聞きしたいのですけど,よろしくお願いします。

【山本代表取締役社長】  御質問,ありがとうございます。おっしゃるように気になるところではあるかと思うのですけども,現在,何年間か島津で勤めないといけないといったようなルールを設ける予定はありませんで,もしも,ドクターを取れた後,島津のほうに来ていただいて,ちょっと合わないなあというふうに思われるような不幸なことがあった場合は,御本人の思惑のほうで動いていただくということにしています。人材の流動化というところをどこかで止めてしまうと,ほかの社員も含めて大きな影響がございますので,今はどの企業もそういうことはできなくなっているのではないかと思います。

【神成委員】  優秀な修士の学生さんが博士に行ってみたら,博士の研究がすごくうまくいって業績も上がって,アカデミアに残りたいというふうに希望した場合はどうされる予定ですか。

【山本代表取締役社長】  昔からそういう人はたくさんおりまして,うちの社員で大学に行って教授になっている人たちもたくさんおります。今までどおりということで考えております。

【神成委員】  分かりました。ありがとうございました。

【湊部会長】  それでは,須賀晃一委員,よろしいですか。

【須賀委員】  ありがとうございます。非常に興味深い取組で,協働研究所というところに企業の研究者が常駐している。そこはまた企業のインターンシップの機能も果たしてくれるということで,これまでとは全く違った形のインターンシップの在り方というのもあるのだろうというふうに思いました。
 一つ気になったのは,これだけのことをやろうとすると,先ほど,3棟建てていらっしゃるということで,予算規模は一体どうなっているのだろうか,それから,実際にこれを運用していく間に運営費は一体どういうふうな形で賄われているのだろうかというのが,率直に気になったところでございます。これが1点。
 もう1点は,先ほどの島津製作所さんのお話で,修士を終えて正社員になって,それがそのまま学生として残るというときに,一旦,修士を辞めて卒業するわけですね。そうすると,大学のほうからすれば,修士の学生をどういう形でドクターに入学させるか,入学資格をどのような形で与えるかということは,当然,問題になるのだろうと思います。そうすると通常のドクターとは違った形のものになるのかという気がしています。先ほど,これはリカレント教育の一環であるというふうな言い方もちょっとされたかと思うのですけど,普通ですと,ドクターに入ってくるときに,リカレントとして受け入れるとか,あるいは完全に企業から離れて受け入れるとか,そういう別の形をとらざるを得ないのだろうと思うのですが,企業に籍を置きながら正規の学生になるという二重籍でやっていけるということにどういうふうな方法を使っていらっしゃるのでしょうか。その辺の裏話を聞かせていただけると,実際に動く制度を我々でもつくれるのかなと思います。その辺りが知りたくて,2点,質問をさせていただきました。よろしくお願いいたします。

【田中理事・副学長】  田中でございます。先ほどのテクノアライアンス棟というのは3棟ございまして,実際にはこれでは場所がとてもとても足らなくて,それぞれの関係する部局でそれぞれのところの共通の部屋とか,あるいは関係する教授がいらっしゃる先生方の研究室の一部をお借りするとか,そういう形でいろいろなパターンがございまして,実際には,共同研究講座,協働研究所というのは,最低額は決まっているのですけど,そういったような契約のお金を頂いて,かつ,いわゆる産学連携費といいますか,あるいは間接経費とか,そういうもので,共創機構という全体を取り仕切るところはそこの経費で事務職員は相当数いますが,そこの経費でいろいろなお世話もさせていただいているというので,運営をどんどん進めているところでございます。
 それから,入学に関しては,島津製作所様は,協働研究所そのものは工学研究科の中にあるのですけど,今回のREACHラボプロジェクトは,実際の派遣先は薬学研究科です。医薬品のところです。そちらのほうは薬学研究科の博士課程の入試を経て入っていると思います。工学研究科は,先ほどちょっと御紹介しましたように産学官共創コースというのを全ての専攻が持っていますので,そこを通して入る,あるいは一般のルートで社会人ドクターとして入試を通るということも,質的にレベルは全部一緒にして,博士課程の合格はここのレベルだよということさえ満たせておけば,そこは自由になっていまして,部局によっては社会人ドクターコースを持っている場合もあるし,それがなくて一般の博士課程で社会人も受け入れる場合もあれば,工学研究科のように産学官共創コースを持っている場合もありますし,受入先の部局によってパターンが異なりますので,一概にこうであるということはありません。通常の社会人ドクターといいますか,そういうもので入ってきて受け入れているというのが現状でございます。
 以上です。

【須賀委員】  分かりました。

【湊部会長】  それでは,小西委員,よろしいですかね。

【小西委員】  小西です。大変興味深い取組を御紹介いただきまして,ありがとうございます。島津製作所様にちょっとお尋ねしたいのですが,今,私はデジタル人材の専門職の育成をリカレント教育でやる用意をしています。その場合,それぞれの各組織では相当高度化された社内研修を行っていて,それとのすみ分けが非常に難しいなあと感じています。島津製作所さんの統合報告書の2022年度版を読ませていただきました。その中で,REACHラボプロジェクトを開始しましたということが書かれており,「博士号を目指す社員を学生として派遣し,社会実装を視野に研究することで新たな専門性を取得し,アカデミックな研究についても事業機会を拡大することを目指します。」と書いています。その下に相当充実した研修体系が説明されているのですが,2023年度版の統合報告書を見ればよいじゃないかと,もうすぐ公表されるので,それを見れば説明されていると思うのですが,この相当充実した研修体系と今回の取組のすみ分けというのはどうなされているのかということをお聞きしたかったのですけれども,いかがでしょうか。

【山本代表取締役社長】  REACHラボプロジェクトのほうは,博士人材を教育して専門性の高い高度専門職を育成していこうという,教育の一環としての位置付けです。いろんな教育体系を持っているのですけども,その教育体系の中には,デジタル人材の育成だとか,会社の中でのマネジメント教育であるとか,幾つかの教育体系を持っているのですが,そちらと高度専門人財といったところの教育体系というのは,並列といいますか,受講してもらう人たちが違うというふうに考えていただいたらよろしいのではないかと思います。

【小西委員】  受講生を区別しているというか,並列だけども別に行うという理解でよろしいですか。

【山本代表取締役社長】  そうですね。私どもの会社は,研究開発がメインの会社で,製品開発をしていくというのが非常に重要な仕事になるのですけども,そちらを進めていこうと思いますと,技術的にであったり,物事の考え方であったりといったことで,博士の人材はとても重要なのですね。こういう人たちを高度専門人財と位置付けておりまして,REACHプロジェクトはそちらの教育に関わってくると御理解いただいたらと思います。

【小西委員】  どうもありがとうございました。

【湊部会長】  それでは,宮浦委員,よろしいですか。

【宮浦委員】  ありがとうございます。島津製作所様への質問になると思うのですけれども,2点あります。1点は,まず,博士後期課程の学生なのですけれども,これはいわゆる社会人ドクターとして,これまでも今も非常に数多くの社会人学生のドクターが,いろいろな企業様から大学にドクターを取りにいらっしゃっている。そういう中で,じゃあリカレントとの違いは何かという部分に着目すると,社会人学生で来られている方は,その研究室の研究テーマは結構ピンポイントで,これをやりたいということで共同研究ベースの上に成り立っている場合も結構多いと思うのですね。それではリカレントになるのかなという疑問もあって,例えば,薬学系のバックグラウンドの社員の方が情報工学の博士後期課程に入ってゼロからやるとか,そういう形を目指していらっしゃるのか,あるいは研究内容にひもづけするような形が中心なのか,社内で選抜される場合も,むしろ他の分野から新しい分野に行ってほしいのか,近い分野でより深めることをやってもらいたいのか,会社の方針と個人の希望という辺りが若干気になったので。それはドクターの社会人学生についてです。
 2点目の質問は,博士前期課程,修士学生についてです。これは,ジョブ型インターンシップ博士後期という話が先ほどもあったのですが,修士でやるとすると,修士の学生が卒業後,島津の正社員になって,そのまま研究室に残るというお話,非常に学生にとっては魅力的だと思うのですけれども,非常に例外的に1人2人であればマッチングのようにして決まるのか,あるいは広く学生にアナウンスしていくのであれば,いわゆる就職活動をした上で決まるのでしょうか。修士の学生がいわゆるM1で就職活動をしていくプロセスの中に入れるのでしょうか,全く別口でしょうかというのが,2点目の質問です。よろしくお願いします。

【飯田上席理事】  ありがとうございます。飯田のほうから,回答させていただきます。
 まず,一つ目の,テーマといいますか,全く違うものをやるのか,それとも延長でやるのかという御質問に対してなんですけれども,今回,個人内多様性といいますか,こういう取組を介しまして,今まで全くやったことのないテーマ・技術・分野にチャレンジしてもらうということを基本にしております。ということで,本人が大学・大学院でやってきたこと,それから,会社に入ってやってきたこととは軸を変えたテーマを持ってもらうのを基本にしております。あと,社内公募のお話をさせていただいたのですけれども,会社としまして,この分野の事業,グローバルに会社の事業を伸ばしていく,そしてまた,ここは私たちの技術なりで社会に貢献できるという分野がございますので,そこで,かつ新しい分野のところに対してこういうテーマでチャレンジする人を求めますと,社内公募でテーマを与えて,そこに手を挙げた人の中から今言ったみたいな個人内多様性を重視した選抜を行っていくという形にしております。
 あと,二つ目は修士の学生の方のタイミングでしたでしょうか。

【宮浦委員】  いわゆる就職活動はした上で就職するのでしょうか。あるいは,別口で1人2人決まって正社員にして研究室に送るという,そういう別枠でしょうか。

【飯田上席理事】  失礼いたしました。ありがとうございます。まずは,REACHプロジェクトで,こういうテーマで強化していきたい,人材を増やしていきたいというテーマで派遣しているところで選んでいく形になっておりますので,ある程度,対象のところは決まっているのですが,その上で,御本人の希望と,会社でもその人に来てほしいというような判断するというのはありますので,1年目の今年の段階では会社の通常の採用のルートも通ってもらったという形になっております。

【山本代表取締役社長】  少し追加をさせていただきますと,もともとREACHプロジェクトに島津の社員を派遣して共同研究をさせていただいている,その研究室におられる修士の方が対象でして,その修士の方の中で,島津で働いてもいいなあと思った,要するに,一緒に研究している社員を見て,島津で働いてもいいなあと思っていただいた方に手を挙げていただいて,一応,会社としましてはちょっとした面接等々をやらせていただいて決めさせていただくというのが実態でございます。

【宮浦委員】  ありがとうございます。

【湊部会長】  それでは,横山委員,手が挙がっていますか。

【横山委員】  ありがとうございます。すばらしいお話,大変刺激を受けております。大阪大学の田中先生と島津製作所様,両方にお伺いしたいと思います。私,理系出身の人文・社会科学の研究者でございまして,先ほど田中先生がおっしゃった,ELSIという分野の研究をしております。要するに科学と社会の問題点となるようなことを取り扱うような分野なのですが,これから人社系が企業の皆様と深く関わっていくに当たって,そうした人材が企業に入っていくことを非常に期待しているところでございます。
 その上でお伺いしたいのですが,こうした分野というのは,科学技術の発展そのものの在り方であるとか,そこの界面で出てくる,例えば今だったら生成AIのあるべき姿などは非常にクリティカルに批判的な議論を求められます。博士論文などにしていくに当たっては,当然,そういった非常に批判的な観点からの指導というのは大学側ではやっていくと思うのですが,企業の中にもきっと役に立つような言説が多くあると思います。理系の学生さんと違って,そうした言説を受け止める器の広さというものをどうしても求めてしまいがちなところがあるのですけれども,そうした人材について,田中先生のほう,島津様のほうで,こういう受入れ方があるのではないか,応援の仕方があるのではないかというアイデアが既におありになりましたら,ぜひお伺いできたらと思った次第でございます。よろしくお願いします。

【田中理事・副学長】  ありがとうございます。私ども,先ほど先生がおっしゃったように,生成AIといいますか,ChatGPTであるとか,そういう問題は出てきていますし,もう一つは生命関係のところでも倫理の問題が,こういうのは普通にビジネスだけではなくて,そういうものが今度は非常に大きなリスクなってくる場合もあると思います。今後,会社,企業様のほうでも,特に研究開発部を持っていらっしゃるところは,そういうことにかなりたけた人が常駐すべきで,そういう人が経営層の中にでもいて,そういうものの次のステップを判断するときには,自社の中でそういう方を持って,外に依頼してからでは多分遅いと思うのですね。将来,そういう方になっていただくような方にぜひそういう素養を身につけていただいて,例えば,先ほどのAIであるとか,あるいは生命系のところでしたら,学位論文の1章の中ではそういうところも検討して,これだけの素養があるということで学位を我々も出していきたいと思っています。学位論文になり得るとなると,アカデミアだけだったら,先ほど先生がおっしゃったように批判的な議論となりますけど,ビジネスへの展開とか,実際に具体的な事業ということをテーマにした場合に,そういうところに新たな味つけといいますか,将来,その方が企業に戻られて,こういう分野の重要性を企業様のほうからも訴えていただくと,我々のELSIセンターの活動もかなり社会実装できていくかなと思っていますので,我々の大学側の戦略としてもそういうことをしていきたいなというふうに考えている次第でございます。

【横山委員】  ありがとうございます。大変心強いです。
 島津様のほうは,そうした連帯を活用したいというような,将来的な展望というのはございますか。

【山本代表取締役社長】  正直,今,私どもの会社が強化しようと思っている分野というのは,ヘルスケアの分野とカーボンニュートラルといった形の分野になるのですけども,特にヘルスケアの分野に関係すると,これは人そのものにいろいろ関わってくるようなことが多くて,例えば,データ一つの扱い方にしても,いろんなことを注意しなければきゃいけません。それから,事業展開しようと思ったときに,人がどう感じるかといったようなことは,成功するか,しないか,大きなファクターとして影響してきます。もう少し別の視点でいくと,今,装置の開発というのは,科学技術ベースの技術レベルをとにかく上げていったらよかったという時代から少し変わってきていまして,人の感性に訴えることができる装置開発といったようなものも必要になってきていると感じておりまして,そういう意味で,従来の理系という概念から,理想的なのは,先生のように理系から人文科学のほうにと,両方やっていらっしゃる方は理想形だと思うのですけども,そういう視点で社会を見ることができて,なおかつ製品を見ることができる,そういう人たちというのがこれから大いに活躍していくのだというふうに思っております。その方向に向けての教育もやっていきたいと思っております。

【横山委員】  大変心強いお言葉です。ありがとうございました。

【湊部会長】  時間も迫っております。今,手が挙がっているお二方について,まず,加納委員から,お願いできますか。

【加納委員】  加納でございます。非常にインプレッシブなお話をお聞きしまして,感銘を受けております。一つだけ,島津製作所様に質問をさせてください。
 今,マスターの卒業生を御採用されて社員として大学に派遣されるというお話だったのですけども,島津製作所様でのマスター卒業後の業務経験というのはどれぐらいの時間を経ておられるのでしょうか。それとも,マスターを卒業して,企業での業務経験なしに,そのままドクターに進学されるようなシステムになっているのでしょうか。その辺りだけ,教えていただければと思います。

【山本代表取締役社長】  会社に入ってからの就業年数というルールはございません。入ってすぐにドクターを取りに行く社員もおりますし,10年,20年たってから,ドクターを取りたいといって取りにいく社員もございます。随分昔から,社員をドクターに派遣してとか,あるいは共同研究をさせていただいた中からドクターを取らせていただいてというようなことをやらせていただいていまして,年齢がどうのこうのとか,経験年数がどうのこうのというのは,基本的にはないというふうに考えております。

【加納委員】  ありがとうございました。

【湊部会長】  それでは,小長谷委員,どうぞ。

【小長谷委員】  ありがとうございます。島津様にお尋ねします。先ほど私が大学側にお尋ねしたとき,大学から企業にとっては1対1ではなくて1対多を望まれているわけですけれども,企業から見た場合は,総合大学との関係は一つでよくて,1対多は要らないのでしょうか,阪大にした決め手は何だったのかを教えてください。

【山本代表取締役社長】  まず,1対1というふうには思っておりませんで,1対多のほうが望ましいと思っております。現在も,私も人事部のほうに,いろんな意味で共同研究をさせていただいている先生のところから学生をいただくことはできないかとか,いろんなことを話しているわけですけども,特に昨今は学生さん自身がどんどん減っていくということもありまして,今は阪大さんとやらせていただいているのですが,阪大さんとはもっと拡大していきたいと思っておりますし,ほかの大学さんとも,もし可能であれば,そういうチャンスをいただけるのであれば,やらせていただきたいなと思っております。

【小長谷委員】  ありがとうございます。

【湊部会長】  ありがとうございます。随分,お話をいただきまして,質問も出尽くしたかなという感もあります。いずれにしましても,今日は,島津製作所の山本社長,大阪大学の田中先生には非常にお忙しいところ、お時間を取ってくださり,大変参考になるお話をいただきました。
 どうも,今日はありがとうございました。

【田中理事・副学長】  ありがとうございました。

【湊部会長】  それでは,少し時間が押しておりますので,先に進めたいと思います。あと15分程度なのですが,今ほどのお話は随分参考になったと思います。これからこの部会でも,リカレント教育の議論を進めます。今日のお話は企業と大学が1対1でがっつり組んで,企業に身を置く,あるいは大学に身を置くということを維持しながら研究を行うというタイプの,かなりハードな路線だろうと思います。ただ,これからいろいろなリカレント教育の話題が出てくると思いますが,企業側というよりは,企業にいる社員の方々,いろいろ世代の方々のニーズは,私が聞いている限り,実に多様です。一定の企業に在籍しながらやりたいというような,今のお話に匹敵するケースもあれば,全然違うもの,むしろ欧米型で,いろんなところでもっと自分の新しいキャリアを開きたいのだというケースもむしろ多いかもしれない。いろいろパターンがさまざま出てきます。大学がどういうケースに対してどういう対応が可能かということも含めて,少し幅広の議論を進めさせていただきたいと思っています。リカレント教育といっても、多くの人材をこれから対象としていくことになり,1大学が数人やれば良いということには多分ならないのだろうと思うのですね。スケールも,かなりマス・スケールのものになってくるだろうと,想像されます。そうなったら,受入れ方のフレキシビリティーというものも模索していかないといけない。企業とがっつり組んで,企業での身分を持ったまま引き受けますという形で全て成り立つかどうかも分からないし,逆に,求めるほうも本当にその形態だけなのかどうかも,よく検討する必要がある。必ずしも,ある型に納めるということは,我々はしたくないと思います。よくニーズを拾い上げた上で,なるべく幅広に,一旦社会に出たいろいろ世代の人たちの再教育,とりわけ大学院レベルの再教育,あるいはリスキリングといったことに対応できるようなベースをこれから2年かけて議論させていただければよろしいのかなと思っています。いずれにしても今日は,その一つのパターンとして非常に参考になるものであったと,私も思いました。
 本当は,今日は今期第1回目なので委員の皆さんから一言ずつお言葉をもらおうと思っていたのですが,それをお願いするとあと15分で終わる自信がないので,できれば,新しく委員就任をお願いして御承諾いただいた3名の委員の方々に一言ずつ,今後の抱負,御自分のお考えというようなものをお話しいただいて,それ以外の再任の方々は皆さんおのおのよく御存じだと思うので,次回以降,また折を見て,お一人お一人の所感,お考え等々をお伺いする機会を設けられればと思います。今日は,少し時間が押しておりますので,そのような方針ですすめさせていただきたいと思います。
 それでは,私のほうから指名させていただきます。まず,永井委員から,一言,もし所感等あれば,お伺いできますでしょうか。

【永井委員】  ありがとうございます。北陸先端科学技術大学院大学の永井と申します。今日は,お時間,ありがとうございます。
 社会人ということで言いますと,私どもは大学院大学ということもあって,数年後にはほぼ半数が社会人の学生になるのではないか。海外の留学生と社会人と学部から上がってきた学生というのが3分の1ずつぐらいの割合が理想的だと思っているのですけれども,だんだんその比率は動いてきている。ただ,学位に関する考え方などはあくまでも学部から上がってきた学生を中心に計画しているものでありますから,その計画したものをいかにうまく運用しながらニーズに応えていくかというような話をずっと検討しているところです。先ほどの大阪大学の例でも,実際に学生がどういうふうな考えを持っているのか,あるいは指導している先生がどういうふうに考えておられるのかなども,今後,追跡してお聞きしたいなと,モニタリングさせていただきたいなと思った次第です。
 皆様,どうぞよろしくお願いいたします。

【湊部会長】  ありがとうございます。もう既に社会学生等も3分の1いらっしゃるということで,この部会でも御経験をいろいろお聞かせいただければありがたいと思います。
 それでは,次に,横山委員,お願いできますか。

【横山委員】  恐れ入ります。お久しぶりの先生と,初めましての皆様,どうぞよろしくお願いいたします。東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構に所属しております。私は素粒子実験で博士号を取っておりまして,その後,人社系に移ってきたというような経緯がございまして,理系出身の人社と言ってよろしいのかどうか,そのような立場になります。
 一番の懸念は,特に私の周辺の科学技術社会論とか科学社会学と呼ばれる分野における国際化のことです。ほかの分野は十分承知してなくて大変恐縮なのですが,理系から見ると人文社会科学の国際化は幾分緩やかな感じを受けることがございます。そのような点で議論に貢献できたらと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

【湊部会長】  ありがとうございます。横山委員は,少し古い言葉ですが,文理融合を絵に描いたような方で,今おっしゃった,特に人文・社会科学系の国際化というのは非常に大きい問題だと,我々も思っております。人文・社会科学系の大学院の在り方,今後の展望のところで,国際化も含めて,いろいろ御経験されたことをお伝えいただければありがたいと思います。今後ともよろしくお願いいたします。
 それでは,最後に,和田委員,お願いできますでしょうか。

【和田委員】  ありがとうございます。今回から参加させていただくことになりました,金沢大学の和田と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 と言いながら,初回でありながら,少し遅刻をしてしまいまして,申し訳ありませんでした。
 大変すばらしい産学連携の取組のお話を伺いまして,大変参考になりました。こういった取組はとても重要だというふうに思います。こういった中でも,学生からのアンケートを取るという話もございました。大学あるいは学生からのアンケートに加えまして,その学生たちから見た企業,あるいは企業を含めて,今後,学生が活躍する場である様々なところ,そういったところの情報とか,どういう人材が求められているのか,可能であれば,そういった情報もありますと,こういった議論が非常にかみ合って進んでいくのではないかという印象を持ちました。また,そういった視点もあればうれしいなというふうに思います。特に,こういった人文・社会系,あるいはいろんな形で大学院の強化を図る場合に,私も,ベースラインとしてELSIという,基本的な倫理であったり,法的なものであったり,こういったところの整備がとても重要だというふうに感じています。そういったところも先生方と一緒に取り組んでまいりたいなというふうに思います。
 それから,国際性,私もとても大事だと思っています。これだけ,ジョイントディグリー,ダブルディグリー,あるいはCOIL,様々な方向性が示されています。こういった議論の中にも国際性ということが今後盛り込まれていくのだろうというふうに,私も思っています。引き続き,どうぞよろしくお願いいたします。

【湊部会長】  よろしくお願いします。
 というわけで,実はあと残り5分なのですが,もし,今日御発言のタイミングがなくて,どうしても一言言っておきたいという委員がいらっしゃいましたら,お一人,お二人は可能ですが,よろしいですか。
 ありがとうございます。今日はテクニカルな不手際があって申し訳ありませんでしたが,本日の議題は以上となっております。
 再度に,少し事務局のほうから連絡事項がございますので,金井専門官から,お願いできますか。

【金井大学院進行専門官】本日は、運営に不手際がありまして、大変申し訳ございませんでした。
 本日の議事内容を含めて,何かお気づきの点ですとか,言い足りなかった点とか,もしございましたら,事務局まで御連絡をいただければと思っております。よろしくお願いいたします。
 次回の大学院部会につきましては,8月22日の15時からの開催を予定しております。詳細は追って御連絡いたします。
 以上となります。

【湊部会長】  ありがとうございました。
 次回は8月ということで,少し間が空きますけれども,できればアンケートもできるだけ早めに進めていきたいと思います。前回も御指摘がありましたが,数が少ないと苦労した割には意味がないということになりかねないということもあります。学部学生に大学院について聞くというタイプのアンケートは,実はあまりやったことがないようなのですね。特にそれを今回は,文系と理系の両方で実施しようということで,どういう結果が出てくるか非常に楽しみにしています。何とか10%以上の回収率を目指して統計的に意味のある数字を出したいと思っておりますので,これにつきましても,皆さん,アンケート内容等,御意見等がございましたら,お知らせいただければありがたく存じます。人文・社会科学系の大学院に関する議論は,ここできちんとやっておかないと持ち越せないので,できるだけ今期の大学院部会で多くの皆さんに納得していただけるようなまとめを出していきたいと思っております。今期2年間,皆さん,お忙しいところを恐縮ですが,よろしく御協力をお願いできればと思います。
 私のほうからは,以上です。事務局はよろしいですか。

【金井大学院振興専門官】  ありがとうございます。

【湊部会長】  それでは,以上で終わりたいと思います。どうもありがとうございました。
 
―― 了 ――

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