大学院部会(第109回) 議事録

1.日時

令和5年2月6日(月曜日)15時00分~16時30分

2.場所

WEB会議

3.議題

  1. 専門職大学院設置基準の一部改正について
  2. 大学院部会第 11 期中における大学院関係施策の動向等について
  3. その他

4.出席者

委員

(部会長) 湊長博部会長
(副部会長) 村田治副部会長
(臨時委員) 加納敏行、川端敏行、小長谷有紀、小西範幸、佐久間淳一、迫田雷蔵、須賀晃一、菅裕明、高橋真木子、塚本恵、堀切川一男、宮浦千里の各委員

 

文部科学省

(事務局)池田高等教育局長、伊藤文部科学戦略官、小幡高等教育企画課長、柿澤高等教育企画課高等教育政策室長、小畑教育人材政策課教員養成企画室長他

5.議事録

【湊部会長】それでは,所定の時刻になりました。第109回の大学院部会を開催したいと思います。
御多忙の中,本日は皆様御出席いただき,誠にありがとうございます。本日は神成委員,田中委員,長谷川委員,波多野委員,濱中委員は御欠席と伺っておりますが,他の先生方には基本オンラインで御出席をいただいております。
それでは,まず本部会を担当する文部科学省の体制に少し変更があったということでございますので,事務局から御説明をお願いいたします。

【笹原大学院振興専門官】はい,事務局でございます。昨年の高等教育局の組織再編に伴いまして,大学院部会の事務局担当が,大学振興課大学改革推進室から高等教育企画課高等教育政策室に変更となりましたので,御報告申し上げます。
また,2月1日付で,高等教育企画課長に小幡が着任しております。

【小幡高等教育企画課長】小幡でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【湊部会長】はい。よろしくお願いいたします。
それでは,例によって,まず事務局から会議開始に当たって御連絡をよろしくお願いいたします。

【笹原大学院振興専門官】ありがとうございます。本日ウェブ会議でございます。ウェブ会議を円滑に行う観点から,御発言の際は挙手ボタンを押していただき,部会長から指名されましたら,お名前をおっしゃってから御発言いただきますようお願いいたします。また,発言時以外はマイクをミュートにしていただくようお願いします。
資料につきましては,議事次第に記載のとおり,事前にメールでお送りしてございますので,画面投映はいたしません。お手元の資料を御覧くださいますよう,お願いいたします。
システムの状況によっては,不都合もあるかと存じますが,御協力のほど,何とぞよろしくお願い申し上げます。
以上でございます。

【湊部会長】ありがとうございます。本日は,今3時ですけれども,一応1時間半程度の会議を予定しておりますので,御協力をお願いいたします。
それでは,早速議事に入りたいと思います。
議題の(1)は,専門職大学院設置基準の一部改正についてということであります。これにつきましては,文部科学省総合教育政策局教育人材政策課教員養成企画室の小畑室長より御説明をお願いいたします。

【小畑教員養成企画室長】文部科学省総合教育政策局教育人材政策課教員養成企画室長の小畑と申します。議題(1)専門職大学院設置基準の一部改正について,資料1に基づいて御説明をさせていただきます。
まず,1ページ目を御覧いただければと思います。
改正の内容に入る前に,経緯についての御説明でございます。資料1ページ目の右側,提言等というところを御覧いただければと思います。教員養成の分野に関しましては,こちら3点書いてございますけれども,今回,改正の契機となりましたのが1つ目の内容になっており,後ほど御紹介させていただきますけれども,2つ目,3つ目にございますように,これまでも教員養成・研修機能の高度化といった観点から,学部教育と大学院教育との円滑な連携,接続といったものが,これまでも言われてきたというところでございまして,このたび一番上にございますように,中教審で新たに答申が出されたということをきっかけとして,今回改正の御提案をさせていただくというものでございます。
まずはこの中教審答申の概要について,資料3ページ目のほうで御説明をさせていただきたいと思います。
一番上にございますように,令和3年1月の中教審答申,いわゆる令和答申と言われているものでございますけれども,これからの学校教育の在り方に関する総合的な答申といったものが取りまとめられたわけでございますが,この令和答申において,これからの学校教育を担う教師の養成・採用・研修等の在り方については,なお引き続きの検討課題であるとされたことから,改めて文部科学大臣より,中央教育審議会に対して,令和の日本型学校教育を担う教師の養成・採用・研修等の在り方について諮問をし,中教審におきまして,御議論,御審議をいただいたというところでございます。
途中,免許更新制の発展的解消と教師の研修の高度化といった内容を,ここにあります制度改正を含む審議まとめにつきましても取りまとめていただいた後,その後も審議を重ねまして,教師の養成・採用・免許・研修といったところ,総合的な答申ということで,昨年12月にお取りまとめをいただいたところでございます。
その概要につきましては,資料の4ページにございますけれども,御覧いただいておりますように,教師に求められる資質能力といったところから,最後,教師を支える環境整備というところまで,幅広に総合的に答申をいただいたというところでございます。今回の制度改正に関連いたしますのが,4番のところ,赤枠で囲ってございますけれども,教員養成大学・学部,教職大学院の在り方といったものについても,この答申の中で触れられておりまして,学部と教職大学院との連携・接続の強化・実質化を図るべきであるといったことが,この答申の中で示されたというものでございます。
以降の資料には答申の抜粋と,中教審において示された工程表などもお示ししてございますけれども,恐縮ですが,資料戻っていただきまして,1ページ目でございます。先ほど御覧いただいた中教審答申の中で,資料右上の2,提言等のところの一番上でございますけれども,学部と教職大学院の有機的な連携・接続の強化・実質化を推進する観点から,教職大学院への進学を希望する者を対象とするコース等の設定を促進するとともに,学部学生が教職大学院の授業科目を先取り履修した場合に,当該先取り履修した単位数等も勘案して,教職大学院入学後の在学年限を短縮できるよう,制度改正を検討することが必要であると,このようなことが答申の中に盛り込まれてございます。なお,設置基準等の改正につきましては,大学分科会,大学院部会の専権事項ということになってございますので,この答申を踏まえて,今回改めて御審議いただいているというところでございます。
現行制度,それから制度改正の概要につきましては,資料2ページ目のほうを御覧いただければと思います。
資料2ページ目のほうに現行制度,それから改正後の概要について示してございます。資料左側,御覧いただいております現行のところでございますけれども,教職大学院に入学する前にも,いわゆる科目等履修の形で,教職大学院の授業科目を履修し,単位を修得するということは,現行制度上でも可能になってございます。この左側の現行の右側の流れになるんですけれども,例えば現職教員や,社会人の方が教職大学院に入学する前に単位を積み重ねて教職大学院に入学したという場合には,当然その修得した単位数は教職大学院修了に必要な単位数に,2分の1を超えない範囲で認定することができるという形になっておりまして,また,社会人等の大学院入学資格を有している者については,さらにその在学年限につきましても,単位数等を考慮して短縮をすることが可能となっているところでございます。
一方で,左側の流れでございますけれども,いわゆるストレートマスター学生といいますか,学部学生が教職大学院の授業を先取り履修した場合には,先ほど御説明いたしました修了に必要な単位数に認定することは可能となっておりますが,在学年限を短縮するということについては,現行制度においてできないという取扱いになってございます。これに対して,今回改正後というところでございますけれども,社会人と同じように,意欲と能力のある学部学生が教職大学院の授業科目を先取り履修した場合に,修了に必要な単位数に認定することのみならず,その単位数等を考慮して,在学年限を短縮するということを制度上可能にしようということでございます。これによりまして,意欲と能力のある学生の学修ニーズに応えるとともに,学部教育と教職大学院の教育とを,カリキュラムベースでも有機的につなげていくといったような効果も期待されるというところでございます。
資料1ページ目に戻っていただきまして,今申し上げましたのが左側の現状・課題というところでございますけれども,3つ目の菱型にございますように,今般の制度改正において参考にさせていただきましたのが,高校生が大学の授業を先取り履修した場合に,その修業年限を通算することができるという制度改正が令和3年10月に行われてございまして,こういった制度改正を参考にさせていただいているということと,その下にございます参考でございますが,既に幾つかの大学,それから大学院,教職大学院のほうで,こうした一貫したコースを設定しているといった取組も進んできているというところでございますので,こういった取組をさらに後押しするような制度改正になるのではないかというふうに考えているというところでございます。
私からの説明は以上でございます。

【柿澤高等教育政策室長】ただいまの点につきまして,高等教育局高等高等教育企画課教育政策室長の柿澤でございますが,少し補足をさせていただきます。
総合教育政策局のほうから,今回の改正につきまして説明をさせていただいた次第でございますけれども,この大学院部会におきましては,今,これは教職大学院に関する制度改正の議論ということでございますが,教職大学院以外の専門職大学院,あるいはその大学院教育全般についてどう考えるのかということにつきましては,先生方御承知のとおり,現状では,この単位認定は入学資格の有無を問わずに,科目等履修等の単位で認められるわけでございますけれども,在学期間の短縮については,入学資格がある状態で得た単位については,この在学期間の短縮ができる。ただし,入学資格がない者,学部の間に大学院の単位を修得したという場合には,この在学期間の短縮はできないという形でございますので,これについて教職大学院以外についてどのように考えるのかということについては,今後,この大学院部会のほうで,改めて今後の課題として御審議をいただきたいと思ってございます。
以上でございます。

【湊部会長】ただいまの御説明のとおりでございますが,この2つの件を含めまして,委員の先生方から,もし御意見があれば挙手でお知らせいただければと思いますけれども,いかがでしょうか。特に御意見はよろしいでしょうか。
それでは,小西委員から手が挙がっております。よろしくお願いします。

【小西委員】小西でございます。今,先ほど最後に御説明がありましたように,他の専門職大学院においてもこの制度をということでしたが,例えば私の知っている範囲で言いますと,会計大学院の場合も,4年生で専門職の授業を取りたい,実際に取っているという意欲的な学生が多うございますので,ぜひ適用していただければと思います。
以上です。

【湊部会長】ありがとうございます。今御指摘のように,他の専門職大学院に対する検討が,次期部会の課題のひとつであろうということで承りましたけれども,ほかに何か,この件に関連して御意見ございますでしょうか。よろしゅうございますか。ありがとうございます。
以上をもって,教職大学院の件については皆様御了解をいただきました。他の専門職大学院については,できれば前向きに,少しこの議論を進めさせていただくということにしたいと思います。ありがとうございます。
それでは,議題の(2)に移りたいと思います。大学院部会第11期中における大学院関係施策の動向等について,でございます。これは,これまでの本部会の活動等々を含めまして,まずは事務局,柿澤高等教育政策室長より御説明をいただいてから,少し議論をしたいと思います。
柿澤室長,よろしくお願いします。

【柿澤高等教育政策室長】ありがとうございます。高等教育政策室,柿澤でございます。資料2-1から2-3に基づきまして,御説明申し上げます。
この資料2-1の大学院部会第11期中における大学院関連施策の動向等についてというものを御覧いただければと思います。資料2-1の参考資料が資料2-2という形になってございます。
まず,資料2-1,1ページ目でございます。人文科学・社会科学系の大学院の在り方についてということでございますが,こちら第11期中での進捗でございますけれども,本部会におきまして,この人文科学・社会科学系の大学院の在り方というテーマにつきましては,本部会で7回審議を行っていただき,令和4年8月3日に「人文科学・社会科学系における大学院教育改革の方向性 中間取りまとめ」を取りまとめていただいたところでございます。
また,これに関連しまして,予算関係ということでは,この資料2-2にございますけれども,資料2-2の1枚目になります。人文・社会科学系ネットワーク型大学院構築事業ということで,こちら新規予算で2億円を令和5年度予算において計上しているところでございます。
今後,12期に向けてということでは,最終取りまとめに向けて,人文・社会科学系の学部学生に対する進路に係る意向調査,また,人文科学・社会科学系大学院の好事例のヒアリング,産業界等からのヒアリングを実施してまいりたいというふうに考えてございます。資料2-3については,後ほど多少補足をさせていただきます。
次に,大学院におけるリカレント教育についてでございます。こちら第11期中の進捗状況といたしましては,リカレント教育の促進に向けて,大学院が実施する履修証明プログラムについて,当該大学院が大学院教育に相当する水準を有すると認める場合,当該履修証明プログラム全体に対する単位授与を可能とする等の大学院設置基準の改正を行ったところでございます。また,本部会におきまして,以下の課題設定の下で議論を行っていただいたところでございます。1つ目の課題は,大学院におけるリカレント・リスキリングを通じて身につけるべき知識・スキルについて,産業界等のニーズが具体化されておらず,短期・中期的な教育プログラムの学修成果が社会で活用される見通しが不透明であるといった課題。また,丸2といたしまして,2つ目の課題としまして,2ページ目になりますけれども,大学院の教育課程・研究活動を通じて身につけるべき「新たな価値を探求し提案する力」が適切に見える化・評価されておらず,より高度な汎用性・転用性を持つ人材の価値が十分に認知・活用されていない。こういったテーマで御議論いただいたところでございます。
こうした議論も踏まえまして,予算関係というところでは,先ほどの資料2-2の2ページでございますけれども,令和4年度第2次補正予算案におきまして,成長分野における即戦力人材輩出に向けたリカレント教育推進事業,17億円を計上しているところでございます。この支援メニューのうち,大学院を対象とした2つのメニューも創設をしているところでございます。1つは,各分野のエキスパート人材に向けたプログラムの開発・実施ということで,大学院レベルの知見を活用した課題解決を通じ,各分野のハイレベル人材を育成し,イノベーション等につなげるため,短期間(半年程度)のリカレントプログラムを開発・実施を支援するもの。また,2つ目といたしましては,リカレント教育モデルの構築による大学院教育改革支援ということで,こちらも民間企業等との組織連携の下,大学院のリカレント教育に係る組織内改革や,養成する人材像やスキルセットを明確化したオーダーメード型のリカレント教育学位プログラムの構築に向けた支援を実施するというものでございます。今後に向けましては,同事業の実施状況等もフォローアップしつつ,引き続きその在り方について検討を行っていただきたいと考えてございます。
また,3点目,資料2-1の2ページ目に戻りますけれども,大学設置基準改正に伴う大学院設置基準改正等についてでございます。こちら質保証システム部会の審議まとめを踏まえた大学院設置基準の改正を,昨年行ったところでございます。これにつきましては,今後に向けた課題としまして,この部会の中でも基幹教員の考え方というところについて御意見をいただいているところでございますので,次期,第12期において,基幹教員の考え方について整理を行いたいというふうに考えている次第でございます。
次に,資料3ページ目を御覧いただければと思います。
卓越大学院プログラムの状況についてということでございます。平成30年度からこちらの事業を開始しまして,令和2年度までに30プログラムを採択しております。事業開始4年目に中間評価,補助期間最終年度の7年目に事後評価を実施することとしておりまして,昨年度から順次中間評価が実施されております。卓越大学院プログラム委員会が令和3年度に実施した中間評価では,多くのプログラムが順調に進捗していると評価されているところでございます。今後に向けましては,事業成果の検証を行うとともに,今後の大学院教育プログラム支援方策の在り方についても,第12期の大学院部会において御議論いただきたいと考えてございます。
その他,3ページ目の下の丸でございますが,その他大学院関連の主な施策の動向ということで,ここでは2点紹介をしております。1つは博士後期課程学生の処遇向上と研究環境確保の大学フェローシップ創設事業,もう一つはジョブ型研究インターシップというものでございます。こちらの資料2-2としまして,それぞれ参考資料として,事業の概要を添付しておりますので,またお時間あるときに御覧いただければと思います。
また,4ページになります。資料2-1の4ページでございます。こちらも主な施策の動向ということで,参考までに御紹介をさせていただきますけれども,大学院段階における授業料後払い制度というものでございます。経済財政運営と改革の基本方針2022において,在学中は授業料を徴収せず,卒業後の所得に応じて納付を可能とする新たな制度を大学院段階において創設することとされ,教育未来創造会議第一次提言工程表において,当該制度を令和6年度に実施することとされました。これを受けて,大学院段階の学生支援のための新たな制度に関する検討会議を設置いたしました。当該検討会議において,修士課程(博士前期課程を含む)ということで,また,その専門職学位課程の希望する学生を対象とすることや,卒業後の所得に応じて納付する額などの制度設計について議論がなされ,令和4年,昨年12月に制度設計の方向性が取りまとめられたところでございます。こちらにつきましては,資料2-2の13ページから15ページということで,最後の3ページに,この,昨年お示しされました制度設計の方向性が入っているところでございます。
最後に配付資料,資料2-3を御覧いただければと思います。
こちら人文科学・社会科学系の学部学生における大学院進学の意向調査のアンケート項目の素案でございます。こちら大学院部会のほうでこの実施をするということで,事務局のほうで準備をしてきたものでございます。本日このアンケート項目そのものについて,個別具体に御議論いただくというものではございませんけれども,先生方,この会議後でも結構でございますので,このアンケート項目についてお気づきの点などがございましたら,ぜひ御意見をお寄せいただければと思ってございます。
この調査基本情報というところにございますけれども,調査期間としましては,今年の春,4月,5月あたりにこの調査を実施したいと思っております。調査対象としましては,国公私立大学のうち,人文科学・社会科学系の学部に在籍する4年次以上の学生,約30万人を対象に実施を,ウェブアンケートという形で実施をしたいというふうに考えてございます。
アンケート項目の中では,学生自身に関する質問といたしまして,国公私立,あるいは地域に関する質問,また,2ページへ行きまして,在籍する学部・学科の分野といったもの,こういったものについて回答していただくと。また,2ページ目の下の(7)のところですけれども,在籍する大学での研究室やゼミへの所属経験といったものも質問に入れてございます。また,そうした研究室やゼミでの経験についての満足度なども回答していただくと。
また,3ページ目のところになりますけれども,授業料等免除,あるいは奨学金の受給状況といったところ,また,現在の就職活動に関する状況なども,質問項目に入れてございます。
こうした学生の属性等に関することも聞いた上で,4ページ目のところから,大学院進学に関する質問ということで,現時点での,これは大学4年生の4月,あるいは5月頃ということになりますけれども,大学院進学に関する状況や考えを選択してくださいという形で,「進学を希望している」「進学するか迷っている」「今は進学しないが,いずれ大学院で学びたい,学ぶつもりである」「進学するつもりはない,検討していない」といった形で回答していただくとともに,そうした進学希望をしている方,そうでない方ということで,ここの(13)の回答を踏まえて,さらに質問が続いていくというような形になります。進学を希望している場合,希望するようになったのはどの時期かといった話ですとか,その進学する先の選考についてはどうかといったこと,また,(17)でいえば,大学院進学への希望をしている方に対しては,進学したいと思える理由,魅力は何かということ,こうした質問を,そのほか進学を迷っている方ということになりますと,(18)では進学したいと思える理由,一方で迷っているという形でございますので,(19)のほうでは,大学院に進学したくないと思える理由,難点,こういったことについても質問しているということでございます。こういった形で,この進学希望に,大学院の進学に関する意向に応じて,さらに質問していくということ。
また,こちら資料2-3の8ページのところになりますけれども,(24),この中では大学院のイメージ,大学院進学の条件に関する質問ということで,(24)では,ここに列挙するそれぞれの事項について,「そう思う」「どちらかと言えばそう思う」「どちらかと言えばそう思わない」「そう思わない」といった形で,大学院のイメージに関する質問を聞くというところ,また(25)では,どのような取組があれば大学院進学者が増加するかと,増加すると思いますかといった質問も入れているところでございます。
また,最終ページ,9ページでございますけれども,賃金プレミアムの研究成果も,こちら調査の中で紹介をいたしまして,これを知っていたかどうかですとか,そういった情報を知って大学院進学への意欲や関心が高まるかといったことも,質問として盛り込んでいるというところでございます。
私からの説明は以上でございます。

【湊部会長】どうもありがとうございました。ただいま要領よく御説明いただきましたように,第11期中の大学院部会では,とりわけ人文科学・社会科学系の大学院の在り方ということについて,随分精力的に議論をさせていただきました。それらは一応中間取りまとめという形でまとめさせていただいたところであり,あまり大きな規模ではありませんが文部科学省から,その方針に従って令和5年度に一応予算化もしていただいたということでございます。
この議論の中では,最後の方では総合知のことも議論し始めましたけれども,なかなか難しくて,これはまだ次の課題かなという気も,私としてはしております。
それから一部,大学院におけるリカレント教育についても少し議論をしたところでございますけれども,これにつきましても,ここの課題,丸1,丸2ということで今御紹介いただきましたが,最近社会的に非常に関心が高いとはいえ,一方でアカデミア側の考えと,他方で,企業をはじめとする産業界や社会のニーズといいますか,そのすり合わせが,必ずしもまだお互いに十分な合意にまで至っていないのかなという懸念も少しあります。具体的に,その質保証等々をどのようにしていくか,どういうものが今リカレントとして求められているのか,最近はリカレントとリスキリングという言葉がしばしば入り交じって使われることもございますけれども,そのあたりをどう考えていくかということについては,まだ少し課題を残しているのかなということを感じております。
ただ一方で,補正予算等でも既に先行的にかなり予算が充てられている部分もございます。これについては,さらにこの部会でも議論を深めて,何とか社会的なコンセンサスが得られれば,お互いにもう少し効果的な仕組みづくりができるのではないかというふうに考えております。
この11期ですけれども,一応今年度は,これが最後の部会ということになります。ですので,これまでの私たちの議論の経過を踏まえ,今後さらに,この大学院部会として積み残したことを含めて,どういう議論が特に必要であるのかということ,今日はこの後1時間ほど時間がありますので,ぜひ自由に皆さんに御議論をいただきたいと思います。せっかくの機会ですので,今日は全ての委員の先生方に一言ずつ,今申し上げた内容を含め,お話をいただければありがたいと思っております。
これは挙手となると,私の方の整理がつきませんので,こちらから指名をさせていただきます。どういう論点でも結構ですので,今後の大学院部会に期待する,あるいは必要とされるといったことについて,お話をいただければ非常にありがたいですし,参考になるものと思っておりますので,ぜひよろしくお願いいたします。
まず,それでは加納敏行委員から,一言お願いできますか。

【加納委員】加納でございます。ありがとうございます。私がやはり一番気になるのは,2つ目の課題になっていました,大学院におけるリカレント教育というところでございます。私,たまたま卓越大学院プログラムの評価審査委員のほうをやらせていただいておりまして,その大学を見ましても,やはり魅力のあるプログラムに対しては,多くの社会人学生が参加しているという実績がございます。まさにその課題,丸1にあるように,「大学院におけるリカレント・スキリングを通じて身に着けるべき知識・スキルについて,産業界等のニーズが具体化されておらず」というところが,まさにそうなんですけれども,やはり大学側からも魅力のあるプログラムをつくる,これは決して社会人に対して魅力あるということだけではなくて,学生にとっても非常に,将来の社会人に向けて,また,卓越大学院におきましては,知のプロフェッショナルという活躍に向けて,非常に魅力のあるプログラムになることは間違いないということだと思っております。そういう意味で,大学側のプログラムの,いわゆるこのリカレント教育に向けたプログラムのデザインといったものを今後より高めていく,このための仕組みとして,例えば今,卓越大学院プログラムで進めているような成功事例を,もう少し水平展開するということも必要なのではないかというふうに感じました。
卓越大学院プログラム,多くのパンフレットですとか,冊子なども発行されておりますし,こういった中で,それぞれの大学が独自の取組をされているという実績もございます。多くの社会人学生も参加しておりますので,こういった事例を1つのモデルケースとして,多くの大学の先生方,あるいは大学の,いわゆるマネジメントレイヤーのほうに展開をするという仕組みをつくっていただくことで,恐らくこのリカレント教育をさらに推し進めるための起爆というか,トリガーになるのではないかなというふうに感じました。
私のほうからは以上でございます。

【湊部会長】ありがとうございます。リカレント教育について,お互いに待っていても仕方がないので,アカデミアの方からもプロアクティブに,プログラムの提案をいろいろやっていくべきということですね。その上で,卓越大学院というのは,ある種のモデルとして非常に有意義なのではないかという御提案であったと思います。ありがとうございます。
それではお二人目,川端和重委員,お願いできますでしょうか。

【川端委員】ありがとうございます。じゃあ私のほうからも2,3点,今,加納委員言われたみたいに,卓越大学院というのはある意味トップをと言いながら,つくってきてはいるんですけれども,やっぱりそれの水平展開,今文科省の方にもちょっとお話ししているんですが,卓越大学院,かなりフォローアップをいっぱいやっていまして,委員の方々も含めて,中間もそうですし,その後の動きもそうですし,もうかなりやっていまして,そうすると委員の人間のほうに,非常にノウハウがいっぱいたまっているという状態がありまして,卓越大学院やられているところだけではなくって,その委員の方々に物すごいノウハウがたまっていまして,そういうものをぜひうまく使った横展開というのも,ぜひ御検討いただければというようなことを少し考えています。
あともう1点は,やはり一番ハードルが高いし,絶対やらなきゃならないのは,やっぱり人文科学・社会科学系の展開というのは,これは今あの場でもお話ししましたけれども,やはり産業イノベーターはいろいろな意味で育っているんですが,社会イノベーターがどうしても今の日本全体を見たときに,つくっていかなきゃならないと。その核になるのが,やっぱり人文科学・社会科学系の方々の動きじゃないかなというふうなことを思っています。そういう意味からも,人文科学・社会科学系に関する展開というのは,当然産業界も理解していかなきゃならないし,同時に,やっぱり教育の仕方自体が今までどおりでいいのかというところも含めて,私自体がもともと理系の基礎系にいた人間なので,基礎系がやっぱり,かなり意識が変わっていったという時代がありますから,同様のことがやはり人文科学・社会科学系の中で起こっていくということを,ぜひこの委員会を通じて発信して,そういうようなモデル事業をつくって動いていけばなというふうに,そんなようなことで発信させていただければと思っております。
以上です。ありがとうございます。

【湊部会長】ありがとうございます。御指摘の点,非常にごもっともで,「人文科学・社会科学系における大学院教育改革の方向性 中間とりまとめ」も,中間取りまとめということで,必ずしも最終版ではまだないということも含めまして,これからさらに議論が必要だという御指摘であると思います。ありがとうございました。
それでは次に,小長谷有紀委員からお願いできますでしょうか。

【小長谷委員】小長谷です。ありがとうございます。私自身は博士後期課程を指導してきた経験にもとづいているのですけれども,やはり高い山をつくるためには裾野が広くなくてはいけないので,たくさんの人が入ってきてくださるということは一番大事だと思います。そういうために,このアンケートも貴重ですから,さらに活かすうえで,理系との比較もあるとよいなと思いました。
大きな議論として,取りまとめに書かれていますけれども,もう少し深くしていただきたいのは,学位を取得してもポストがありません。これをすごく増やせというのは無理だと思うんですけれども,チームで研究するんだという発想で,正規のポストとは少し幅の広い,アカデミアと関係するようなポストが増えることを望んでいます。
もう一つは,社会,企業の中で学位を取得した人が働くことです。大学院を選択した時点で,もう企業への就職をやめてしまっている可能性があるので,シーズもニーズとともに開いていくということをもっとしていってもらいたいなと思います。実際に私の専門の人類学では,学位取得後にコンサルタント業務を人類学の手法でやっていらっしゃる方々が海外には多いので,そういう例も日本に浸透していったらいいなと思います。
長くなりましたが,以上です。

【湊部会長】ありがとうございます。確かに人文科学系は特にそうなんですけれども,学位取得後のキャリアパスの問題があって,一般的な自然科学系のように,企業へ進むか,大学へ残るかのような,もはや二者択一ではない時代になっているのではないかと。そのキャリアパスの多様化というのが,社会との関係上,非常に大きな課題になってきていて,私は学位人材のニーズは充分あると思うんです。特に人文科学・社会科学系の若いジェネレーションの方々は,そういう意味では,学位人材としてアクティブな役割を社会の中で果たそうと随分活発になって来ている,これは今御指摘のあったスタートアップなども含めて。

【小長谷委員】そうですね。付け加えるなら,社会の役に立ちたいと思っている人が,我々の世代よりずっと高いです。趣味でやるというより,やはりそれは趣味で始まっても,社会の役に立ちたいと思う意識の高い方が多いので,そういうところはつないであげたいですよね。ちょっとアンケートも,だからそういう点ではそういう問いが全然ないから,もうちょっと未来志向の問いというのがあってもいいかもしれないです。

【湊部会長】ありがとうございます。実は私も非常に,そこが大事だと思います。アンケートについてもあまり外形的なことだけではなくて,このような観点に踏み込んだ形で,また事務方とも考えさせていただきたいと思います。
今御指摘の点,若い人たちのモチベーションが高いというのは希望なんだろうと思うんです。社会とのインターラクションをもっとしたいと。それを上手に人文科学・社会科学系でくみ上げていくような仕組みをつくり上げていくというのは,非常に大事なんだろうと思います。ぜひまたそういう観点で,次期も議論をしていただければありがたいと思います。ありがとうございます。
それでは,もう大体皆さんルールも分かってこられたと思うんですけれども,あいうえお順ということで,それでは小西委員,お願いします。

【小西委員】順番を待っておりました。人文科学・社会科学系の中間取りまとめの22ページのところに,修士課程と博士課程の方向性の改革の方向性の記載箇所に,博士課程修了者のキャリアパスを拡大することは容易ではないというような記載がございます。専門職の有資格者が博士課程修了者の場合,キャリアパスは比較的あります。より高度な専門職という認識が一般にあるからだと思います。そこで,専門職の修士課程の修了者の博士課程進学を推進してきました。そこでの課題が1つ大きくありまして,それは,専門職修士と博士課程の連携の在り方です。なぜなら,専門職の修士課程は単位取得型が主であって,研究論文の指導を十分受けていない学生が多うございます。博士課程に入っても,博士論文の書き方も含めて,研究論文執筆に非常に苦労しています。以前にも申し上げたのですが,専門職の博士課程,これをぜひ検討してほしいと思っています。もちろん,一般の博士課程と専門職の博士課程,この内容の違いをきちんと検討する必要はあると思うのですが,最初に申しましたように,専門職の博士課程修了者のキャリアパスがありますので,ぜひ専門職の博士課程をそろそろ御検討いただければと願っております。
以上です。

【湊部会長】ありがとうございます。非常に大事な御指摘をいただきました。専門職の博士課程をもう少しきちんと考えていくべきではないかと。先ほどからのキャリアパスについても十分関係のあることなので,それを,要はどのように実際の学生のメンタリティーにつなげていくかということなんだろうと思います。これも恐らく次の部会の重要な課題のひとつになるのではないかと思っております。ありがとうございます。
それでは次,佐久間淳一委員,お願いできますでしょうか。

【佐久間委員】よろしくお願いします。資料2-1にありましたが,リカレント教育ももちろん非常に重要で,大学としては,経営的な観点からも考えなければいけないことですけれども,取りあえず私としては,人文科学・社会科学系について少し申し上げたいと思います。
今もありましたように,当然博士課程修了者のキャリアパスということが非常に重要なんですけれども,その前に,修士課程というか,前期課程に来てもらわないとどうしようもないわけで,いかに大学院に来てもらうかも同じくらい大事だと思います。そこら辺は大学の努力が足りないと言われてしまえばそれまでなんですが,今の就職の在り方が,もう学部3年生になったら就活が始まって,内々定が早々に出て,大学院の入学試験はその後ですので,そこら辺やはり非常に厳しいところがあるわけです。そんな中で何とか修士に進んでもらうためには,何か方策を考えないといけないと思うんですけれども,その中で,先ほど今日の最初の議題がありましたが,あれは専門職大学院ですけれども,別に専門職大学院だけじゃなくて,一般の人文科学・社会科学系の大学院でも同じようなことができないものでしょうか。前に理系も昔は修士に行かなくて,社会の情勢が変わって,修士に進むようになったという話がありましたが,人文科学・社会科学系ももしかするとそうなるのかもしれません。ただ,ちょっと今の社会の状況を考えると,すぐにそうなるとも思えないので,やはり制度的に考えなきゃいけないところがあると思うんです。そのときに,一般の人文科学・社会科学系の大学院でも,先ほどの先取り履修のようなことが考えられないのか。それによって,学部と前期課程合わせた修学期間が短縮できるような形を考えてもよいのではないか,ということを申し上げたいと思います。
また,博士後期課程に関しては昨今非常に経済的な支援が充実したわけですけれども,修士課程のほうは,ちょっと今,逆に穴になっている部分があって,また地方では,理系は,少し重点的に援助しましょうみたいな話があるわけですので,社会のニーズからすると仕方ないのかもしれませんが,そうなってくると,ますます人文科学・社会科学系には来てくれないということになってしまいます。ですので,修士課程,博士前期課程の経済的な支援ということも,今後考えていく必要があるのではないかなと思っているところでございます。
大体以上です。どうぞよろしくお願いします。

【湊部会長】ありがとうございます。修士課程も,先ほど小長谷委員も仰ったように,やはり裾野が広くないと,その先の博士課程が充実してこないと思います。ありがとうございます。御指摘は了解いたしました。
それでは,次に迫田委員からお願いできますでしょうか。

【迫田委員】ありがとうございます。まず,人文科学・社会科学系の話ですけれども,前10期のときにはまだ具体的な話にならなかったのが,今回具体的な話ができて,よかったなと思います。ただ課題としては,やっぱり規模感,ある程度目標を決めて増やしていく必要があると思います。10%増とか,そんな規模で考えていくと,全然進まないのではないかなという危機感を持っております。そのためには増やしていくための具体案を勧めないと,現実的になってこないと思います。理系のほうでは既に経験があるわけなので,この辺を参考しながらやっていけばいいかと思います。
例えばですけれども,官公庁はもうマスターしか採りませんということだって,やれない話じゃないと思いますし,リーディング大学院の経験も生かしていくべきです。リーディング大学院が何であれほど企業から人気があったかというと,やはりアカデミアを目指すのではなくて,社会に飛び出すことを前提にカリキュラムをつくって,そこに産業界もコミットしてやっていたからです。やはりその分民間へ出ていく割合が,高くなったと思います。そういう経験があるわけなので,人文科学・社会科学系でも同様の取り組みをやっていくということが大事なのではないかなと思います。
それからリカレントに関して1点だけ申し上げますと,今コロナ禍でリモートが進んできた中で,社会人から見ると相当受けやすくなってきた環境がございます。今コロナ禍が収まりつつある中で,やっぱり対面に戻す方向に動いている点を心配しています。社会に門戸を開いていくというのであれば,リモートで履修も可能なカリキュラムというものを,もう少し前面に出してやってもよいのではないかなと思います。これは気づいた大学からやればいいと思いますので,ぜひ進めていっていただければと思います。
以上です。

【湊部会長】ありがとうございました。確かにリモート教育も今大きな選択肢になってきています。それから目標設定というのも確かに,リアリティーが出てきて良いように思うんですけれども,以前からよく言われているように,官公庁などは母集団としても大きいし,そういう点でも数値目標などが少し具体的な課題として出てきても,さらにリアリティーがあって良いのではないかという気もします。ありがとうございました。
それでは,須賀晃一委員からお願いできますでしょうか。

【須賀委員】私は人文科学・社会科学系について,お話したいと思います。最初この委員会に出させていただくようになったときには,人文科学・社会科学系の大学院を修了し,学位を取っても仕事がないので,これは縮小していくしかないんだという基本的な考え方を持っておりました。ここでいろいろなお話をお伺いしながら,世界にはまだ目に見えていないニーズがあるんじゃないか,それを一体どういう形で掘り起こしていくのが大切なのかというふうに,少し考え方を変えてまいりました。やっぱり学位を取ってアカデミアに残るということになると,人文科学・社会科学系の場合,ポストが徐々に,減ってきていることが問題であることは,佐久間委員からも途中何度か指摘されて,私も実感としてそういうふうに思っておりました。確かに,アカデミアだけを前提として,しかも古いタイプの,あるいは科目の担当者ということだと減っているんだと思います。しかし,少し見方を変えれば,広い意味での人文科学・社会科学系ということだとそんなに減っていないだろうし,さらに新しいものと連携をしていけば増えていくという感じもあるということで,ニーズに合わせて変化していけば,そこにはかなりの需要があるんじゃないかというのが1つ考えているところです。
したがいまして,ポストが不足するのは,今までのまま学問の体系を変えずに,それに合わせた教員を採ろうとするからであって,その場合ポストは変わらない,あるいは不足するけれども,そうでないやり方に変えていけばポストというのはまだあるんだと思います。例えば卓越大学院プログラムとか,あるいはリーディング大学院のほうでも話が出ましたけれども,そういうところではかなり人文科学・社会科学系も理系と一緒になっていろいろなことをやっている。そういうところでは必ずそういうニーズが生まれているわけです。そういうニーズを生み出していくということが必要だし,それがどういうニーズになっているかというと,理系の方々が必ず言う言葉が社会実装なんです。社会実装と言われても,それが一体何を表しているのかというと,実はあまりよく分からなかった。自分たちの技術が社会に何か使われる,そのためには多分自分たちだけじゃ駄目なので,人文科学・社会科学系の知識が必要なんだろう,これぐらいだと思うんです。実はそれはもう少し,再度内容を議論していかなきゃいけないことで,先ほど川端委員が社会イノベーターという言葉を使われたんですが,社会のイノベーションということになると,実はいろいろなところにいろいろな形で人文科学・社会科学系の知識が必要になってきている。例えば今の環境問題ですけれども,理工系のイノベーションだけでは話が終わるわけじゃなくて,それを受け入れることができるような社会が必要だし,それを推進していくような人間の意識の改革が必要だということになる。これはもう,まさに今まで我々がやらなきゃいけなかった部分で,人文科学・社会科学系もほとんど手をつけていなかったようなところということになるんだろうと思うんです。そうして,社会のニーズに合わせ,自分たちがやってきた学問をどう変えていくかというような議論をしていけば,実はいろいろなポストが出てきて,社会の中にもそういったものはあるんだという認識になる。そして学位を持っている人こそ,そういうものにふさわしいんだというふうに意識が,産業界の意識が変わるとか,社会の意識が変わるように,具体的な働きかけができれば,両方ともに変わっていって,ポストの不足とかということを言わないで済むようになるのかなと,そのようなことを最近考えるようになりました。
具体的に何ができるか分かりませんけれども,ここでやられてきた議論の延長には,そういったものがあるのではなかろうかという気がしております。例えば,理工系だけのジョブ型インターンシップではなくて,人文科学・社会科学系のドクターにとって役に立つような場が実際にはあるんじゃなかろうかと。そういうふうなことは産業界の方々もおっしゃっているんですが,具体的な中身が見えないままになっているところでございます。これまで単にリベラルアーツって言って終わってしまうと,いや,それは経済学なんですか,社会学なんですか,何ですかという議論が全くないままになる。むしろそういった学位を持った方々をジョブ型インターンシップでこういう仕事をしてもらったら,こんなことができたとか,自分たちで考えなかったけれどもこんな解決策が見つかったとかという,そういう経験を企業の方々に持ってもらうことが重要かなと思います。最後に一言申し上げたいのは,ジョブ型インターンシップのようなものを人文科学・社会科学系でも入れていただけないだろうかということでございます。
以上です。

【湊部会長】ありがとうございます。須賀委員からの御指摘のとおりで,これまでこの部会で議論してきた人文科学・社会科学系の大学院の話と,いわゆるリカレント教育というようなところが,多分かなり大事なところで,この先の課題としてはつながっていると思います。たまたま最近,大きな企業のトップの方々とお話しする機会があって,リカレント教育と聞いてどういうことを想定されますかと伺いますと,あまりリスキリングのことは仰らないんですが,やはり社会科学系が大事だと仰ることが多いのです。どんなふうにかというと,なかなかお答えはクリアにはいただけないんですけれども,そういうコンセンサスは確かにあって,それで先ほどの話に戻れば,大学側がそういう方向性で,いろいろなプログラムをプロポーズできるというようなことがあれば,もう少しリアルな接点ができてきて進んでいくんではないかと。リスキリングも当然大事なんでしょうけれども,そういう意味での広いリカレント教育という観点で,人文科学・社会科学系で,今何となく社会が求めているが必ずしも明瞭には合意されてないことの内実が少しずつ明らかにされれば,そのポテンシャルは非常に大きいのではないかという気がいたします。ぜひこれは引き続き,次期の部会のテーマとしてやらせていただければありがたいと思います。ありがとうございました。
それでは菅裕明委員,お願いできますでしょうか。

【菅委員】ありがとうございます。ちょっと遅れて申し訳ございませんでした。学位審査中でしたので,ちょっと時間が延びました。
せっかく,もう最後の機会ですので,少し皆さんと違う視点から提言させていただきたいと思います。今私はベンチャーを,スタートアップ企業をつくって上場させてということをやってきた人間でありまして,そのときにパートナーになった社長の人は,完全な文科系です。文系です。ですが,彼と手を組んで企業を成長させてきたという実体験を持っています。で,今現在,また次に別の会社をやっているんですけれども,お付き合いする人たちの大半は文科系の人です。理系ではありません。ここで非常に重要なのは,理系の人も,やはり文科系の人たちと対話ができる能力をつけなくちゃいけない。そして理系の人たちも,ごめんなさい,文科系の人たちも,人文科学・社会科学系の人たちも,理系の人たちと対等に話せるだけの能力をつけないといけない。つまり知識をある程度は持たないといけないということになると思います。ですので,そこによって初めて,魅力的なキャリアパスが見えていくんだろうなと思います。
おそらく人文科学・社会科学系の方々の,今の若い学生たちは,そういったイノベーションに関わることに関して非常に積極的であり,興味があると思います。ですので,やはりここで,もし人文科学・社会科学系の博士の大学院,または大学院生そのものを増やしていこうというのであれば,やはり理系との垣根をできるだけ下げること,そして理系も,人文科学・社会科学系の人たちとの垣根をできるだけ下げること,これはただ単に卓越大学院等でお金がつくから無理やり合わせましょうというのではなくて,本当に自ら思って,どうやってイノベーションをつくって社会に変革をしていくかとか,社会にインパクトを与えるかということを一緒に考える場を持つためには,やっぱり垣根を低くしないといけないと思います。
アメリカの大学に行きますと,かなりその垣根が低くなっているという感じが毎回いたします。したがって,日本も,日本の大学も,人文科学・社会科学系と理系という感じで分けるのではなくて,もう少し垣根を低くして,学部のときからの垣根の低さをさらに大学院の上でも,高度化した上で垣根を下げていくようなカリキュラムをつくる,そして誰よりも大学の教員がそういった意識を持つことが重要であろうと思います。
私はCSTIの非常勤勤務をしていますが,CSTIでは本当に多く議論がされている中に,やはり人文科学・社会科学系の人たちが活躍して総合知をもたらしてくれて,社会的なインパクトを与えるプログラムをプロジェクト,そして結果的に経済的効果を出してくれるのが望まれているという議論をしばしばしておりますので,ぜひとも皆さんのお力をお借りできればと思います。どうもありがとうございました。

【湊部会長】ありがとうございます。非常に大事な御指摘をいただきました。端的に言えば,理系にしろ文系にしろ,もう少し勉強しないといけない,レパートリーを広げないといけない。だからみんなが自分の専門のところだけをやっていれば事は済むということではなくて,手っ取り早く言うと,今の学生さんも含めてもっと勉強を広く,時間をかけてしないといけない。そのためにはやはりメンターとなる人たちが,あまりバイアスがかかっていてはよくない。そうですね,日本人全体,もう少し勉強が足りないんでしょうかという気も,何となくしないでもありません。菅委員,どうもありがとうございました。
それでは,次は高橋真木子委員,お願いできますでしょうか。

【高橋委員】ありがとうございます。この部会の議論を通じた感想を1点と,アンケートのところについてちょっと具体的なお話,計2点です。
まず,部会全体への感想なんですけれども,この部会が扱う議論の範囲についてです。文科省の科学技術政策系だとか,学術研究系の審議会の議論との対比で見ると,あちらは論文や研究費とか,比較的定量的な指標に基づく現状把握とか共通認識が議論の土台にあるという印象がありました。一方でこの大学院部会に関して言うと,特に昨今時間をかけた人文科学・社会科学系の議論は,我々委員の中でも言葉遣いが違っていたり,現状把握がかなり違った観点だったと思い,そこのある種の認識合わせに時間を割く必要があったなと強く感じていました。それはそもそも実態が多様であるということと,あともう一つ,やっぱり就活だとか,社会変化による影響が短期で影響を受けやすいということがきっとあると思うんですけれども,なので産業界の御所属の委員の方たちのコメントはとても貴重だったと思うんですが,そこを今後はますます気をつけて,留意した上で議論を進める必要があると思っています。やっぱり卓越とかは非常に分かりやすく,何というんですか,スターの事業だとは思うんですけれども,日本全体のマクロで見るとかなりの少数派だということ忘れちゃいけないなと,これが感想です。
2点目,アンケートについてです。先ほどの,マクロで見る等のデータがなかったという部分でいうと,今回のアンケートとっても重要だと思います。国立教育政策研究所だとか,恐らく別途そういうところで大規模調査をやっているのかもしれないんですけれども,今後の我々の議論のために今回のアンケートをどう生かすかという観点から,少し具体的に申し上げたいと思うんですが,やはりこの人文科学・社会科学系の議論の中で,経済系と社会系とは,人文科学・社会科学系といっても全然,修学も違うし,就職率も違うし,業界も違うしというところが,あんまり我々データはなかったと思います。今回,例えばそこで資料2-3に案を今日出していただいたのはとてもよかったと思うんですが,分野の区分が,いわゆる科研費とかの学術区分と多分違っていて,法学とか,政治学とか,商学,経済なんていうのは,恐らく就職率とかも悪くなかったり,その辺りのこの審議会で出てきた,仮説まではいかなくてもリサーチクエスチョンのようなものに,何とか対応するような形での設計というのをしたほうがいいのではないかというのが,まず大きく1点です。
それから大学院といっても,修士と博士,全然違うよねと,これまた大問題でした。なので,そこも多分区分した調査をすると,恐らく今の状況をとらまえられるものになると思います。ぜひそこは集計やアンケートのプロを介して,この議論のためのというふうに設計をしていただければと思います。大変勉強になりました。ありがとうございました。
以上です。

【湊部会長】ありがとうございます。高橋委員にはアンケート等々では,いろいろな御指摘もいただいてまいりました。目的を明確に定めたピンポイントのアンケートデータを集約して,それを対策につなげていくというようなことで,私ども非常に勉強になりました。また,この最後のアンケートも,できればもう少し新しい形でやりたい,確かにあまりこういう視点のものはないんですね,事務局にもそれなりのマンパワーが,ある程度要りますが,これは次の議論のスタートとしては非常に重要なデータになるのではないかと思っておりますので,またよろしく御指導いただきたいと思います。ありがとうございました。
それでは,次に塚本委員,お願いできますでしょうか。

【塚本委員】ありがとうございます。貴重な議論に参加させていただきまして,ありがとうございました。2点だけお話しさせていただきます。
人文科学・社会科学系の今後に向けてのところに,人文科学・社会科学系大学院の好事例ヒアリング,産業界等のヒアリングがあります。ここにぜひ海外の事例も入れていただきたいなと思います。いつも例として,経営者の学位の比較として,アメリカは7割が大学院卒で,日本は2割ぐらいというのが出てきますが,すこし大まかすぎるように思います。たとえば,先ほどコンサルタントの話がありましたけれども,リスクコンサルについては,例えばロシア語と東欧文化で博士を持っている人がチームに入っているイギリスの会社の分析を聞くと,全く質が違うというか,次元が違う深い分析が入っています。そういう事例を複数集めて、日本の企業にもお示しすることによって,人文社会科学系の博士がどういった効果を企業にもたらすかのご理解が深まるのではないかと思います。
2点目は,先ほどから話が出ているアンケートの件です。せっかくですので,将来何になりたいかというキャリアゴールなどの質問もいれてはどうかと思います。例えば企業でも,一般企業,コンサル,シンクタンクみたいに少しかみ砕いて聞いてみる,公務員も地方公務員,国家公務員,国際公務員とか,大学も,研究とか専門職など,簡単に選択肢を出すと,何になりたいと考えている人がどこまで学位が必要と思っているかというのが分かるように思います。そうすると,きめ細かくどのような対策をとるのがよいか検討をしやうくなるのではないかと思いました。どうもありがとうございます。

【湊部会長】どうもありがとうございます。御指摘のように海外の事例も,多分向こうではソーシャルサイエンスとナチュラルサイエンスのように,あまり分けて対比的な議論がないような気もするんですけれども,ぜひそういう実際の例があれば非常に参考になると思います。ありがとうございました。
それでは堀切川委員,お願いできますでしょうか。

【堀切川委員】堀切川です。どうもありがとうございます。私もリカレント教育に関するところを中心にコメント致します。
昨年度のたしか末に,今日御説明もありましたが,履修証明プログラムの単位授与の領域を広げるという形で,大学院の設置基準の改正が行われたわけですけれども,これは非常に大きな成果で,リカレント教育を受ける側も,実施する大学院側もモチベーション上がると思います。それから社会的な評価も,こういう履修証明プログラムにより上がりますので,これでリカレント教育を推進していく環境が整ったという意味で,昨年度の実績ではありますが,私はこれを高く評価したいと思っています。
その上でですが,どうもリカレント教育というと,対象が産業界に偏ってしまうように社会では受け止められ,さらに言えば,産業界でも大企業中心になってしまう傾向があります。大企業のニーズとなると,経営者側のニーズに偏ってしまい,会社が費用を出して派遣する意味のある限定的な内容の教育メニューになってしまいます。実際には,大企業,中小企業,個人事業主さん,いろいろな立場の人が,教育メニューの内容によっては自分のお金を払ってでも受けたいという人が結構おられるので,その辺までのニーズを把握するということが大切だと思っています。
それから産業界だけではなくて,官公庁や地方自治体ですとか,公共性の強いいろいろな自治体の外郭機関のようなところの人たちのニーズというのも把握することが効果的だと思います。自治体等では,芸術文化施設,例えば美術館とか,博物館とか,図書館,あるいは音楽ホールとか,そういったものを今後どうしていくかというようなことが議論されているんですが,まさにここの部分については,人文科学・社会科学系の大学院がリカレント教育で効果的な教育メニューを設定してもらえれば,受講したい,あるいは受講させたい自治体等がたくさんあるんではないかと思っています。私のいる地域でも,こういう芸術文化施設,今後どうしていくかということが議論になりますが,新しい視点からの御意見がなかなか出てこなくて,画期的な案がでてこないことがあります。人文科学・社会科学系は,このような公共性の強い仕事に携われている人たちへのリカレント教育というのが大きな出番になるなというふうに期待しているところであります。
あと,資料2で,予算関係のところで,成長分野における即戦力人材輩出に向けたリカレント教育推進事業というのを2次補正で計上したという,うれしい報告をいただいたんですけれども,こういう成長分野における即戦力人材輩出というのはもちろん大事だとは思うんですが,もうちょっと中長期的に見れば,もっと大事なのは新分野開拓を実践できる人材輩出,それこそが私は大学院の仕事だと思っているので,その部分も意識した事業展開というのも考えてもらえるとありがたいなと思っているところです。
次にアンケートのお話ですが,ちらっと今,順番回るまで資料を拝見させていただきましたけれども,27項目について5分から10分で回答できるとの内容が記載されていますが,これは実際には難しいのではないかと思います。非常に大切なアンケートなので,多くの学生にしっかり答えてもらいたいわけですが,答えやすくする工夫が必要かなというのが,1つ目のコメントです。2つ目のコメントは,30万人を対象にした人文科学・社会科学系の学部,大学院の学生の回答率を上げるためには,普通に各大学に学生へのアンケート依頼を出したのでは難しいと思います。この場合,各大学が部局に依頼し,部局が学科・専攻に依頼し,学科・専攻が所属する学生に周知させると,答えたい人はどうぞというふうに学生は受け止めてしまい,回収率は極めて低くなると思います。ぜひ大学に厳しく依頼していただいて,ほとんどの人文科学・社会科学系の学部の学生,あるいは大学院の学生にしっかり答えさせてほしい,目標何%以上の回答率で努力してほしいという言葉をつけたほうが,良いと思います。これは非常に大事なアンケートなので,30万人のうち,10万人以上の回答は欲しいなと思っています。回答率,回答人数が多くなってくると,学生全体の本音の回答が出てくると思います。アンケートのやり方の工夫もお考えいただければありがたいと思っております。
最後のコメントです。大学院は,社会に役立つ夢を実現できる人材を育成する組織だと,私はかねてからと思っております。もうその1点に対して,大学院教育がさらによくなることを本大学院部会でどんどん決めていけばいいと思いますので,次年度以降も期待しているところでございます。
以上です。

【湊部会長】ありがとうございます。何点か,非常に大事なところを御指摘いただきました。特にアンケートについては,先ほどからも出ているように,やはり数が大事で,あまり少ないとバイアスがかかってしまい,よく分からなくなるということはあります。仰るとおりでございますので,今日は,池田局長もいらっしゃるので,しっかりご指示いただいて,数を担保していただくということをお願いしたいと思います。ありがとうございました。
それでは宮浦委員,お願いできますでしょうか。

【宮浦委員】宮浦です。ありがとうございました。まず,人文科学・社会科学系の総合知の重要性というのは声高く言われて,多くの方が重要性は,極めて重要だと認識しているわけですけれども,なかなか人文科学・社会科学系の大学院の問題が解決できないという中で,先ほど資料を拝見していたら,ここはちょっと重要じゃないかと思ったのが,やはり博士後期課程はもちろん,3年でも全然終わらないという,一生取れるかどうか分からないという,そういう背景があるわけですが,修士課程,マスターのもう2割以上が2年では終わらないというのが,意外とこう,何というんでしょう,学生の目線からいうと,出口が企業だとすると,2割以上は2年で終わらないと,就職活動難しいですよね。卒業できるかどうか分からないと。一方で理系の場合は,普通にきっちりやっていればほぼ修了はできるわけです。マスターの場合は。ドクターですと,まあ論文が出ないとか,いろいろなハードルはあるんですけれども,少なくとも理系のマスターは,きっちりやっていれば出られることが100%近いというか,9割方出られるわけですが,2割以上が出られないとなると,企業のほうから見ても,本当に来るのかどうか分からないという認識,学生にとっても出られるかどうか分からないというような根底に流れるものがあっていて,そこをまず改善しないと,博士後期課程の議論にならないんじゃないかというのが,印象的に考えたところです。
また,同じ人文科学・社会科学系でも,同じ学問でずっとこういくのではなくて,例えば,いろいろな専攻をまたいでマスターに行くとか,あるいはデータサイエンスのマスターに行くとか,少しこう幅広な,少なくともマスターの場合は,修士課程の場合は少し横道にそれるような専攻を選択して,人間の幅を広げるというのが,本人のためにも非常にいいんじゃないかなと思います。で,そのように横道にそれても,やはりきっちり修士課程は2年で出してほしいというのが思ったところです。
もう一つは,リカレントはむしろ理系よりも,人文科学・社会科学系のほうがやりやすいんじゃないかなというのが考えているところです。例えばオンラインがこれだけいって,やっぱり理系ですとある程度試験管振らないと,という分野もあると思うんですけれども,それに比べて,リカレントは人文科学・社会科学系はやりやすい。理系分野を卒業した人間が,人文科学・社会科学系のリカレントで,仮にドクターを持っている理系の人間も人文科学・社会科学系のマスターを取るとか,そういう認識でいくと幅広の人間がつくれると。各大学,理系の学生と文系の学生を交ぜて,何というのか,幅の広い大学院生にしようと頑張っているんですけれども,でも片や教えている理系の教員はあくまでも理系で,教えている人文科学・社会科学系の教員はあくまでも人文科学・社会科学系の教員で,自分のテリトリーは絶対ほかに行く気は全くないと思うんです。そこが非常に問題で,教員こそ,理系の教員と人文科学・社会科学系の教員を交ぜて学問をするとか,教育システムを議論するとか,そういう教員のほうを交ぜるというのが必要じゃないかと思っています。それをやらないと,いつまでたっても教える側が理系のマインドと文系のマインドから離れられないので,それを何となく刷り込まれている学生は,やはりいろいろな人文科学・社会科学系の勉強をプログラムしてやっていても,理系の学生は自分は理系の,例えば工学系,理学系の人間だと思って出ていっちゃうんです。そこを教員側を交ぜる,で,教員評価を入れて,交ぜたことが教員自身が評価されるようなシステムを組まないと,例えば理系の教員が,そんな交ぜて,そんな暇じゃないと思うわけです。論文書く時間が奪われるとか,文系の先生は書籍を書く時間が奪われて,そんな暇じゃないからそんなことできないという,そういうマインドなりがちですので,そういう交ぜた活動をすることがポジティブに教員の評価につながる,昇進に必須アイテムになるというような,そういうシステムを組まないと誰もやらないと思いますので,そういうシステムを組みつつ,教員側,教える側を交ぜるというのが重要じゃないかなと感じました。
以上です。ありがとうございます。

【湊部会長】ありがとうございます。確かに随分議論にもなりましたけれども,研究者側のメンタリティーの問題,それからシステムの問題,ポリシーの問題をある程度標準化していかないとなかなか難しい面があるんではないかということだと思います。ありがとうございます。
それでは,最後に副部会長,村田委員,お待たせしました。

【村田副部会長】ありがとうございます。ほとんどもう皆さんおっしゃったんじゃないかと思いますが,私から最後に,この資料2-1について申し上げたいと思います。11期における大学院の関連施策の動向等について,これを非常にうまくまとめていただいていると思うんです。特に,1ページに丸が2つあります。1つは大学院,人文科学・社会科学系の大学院の在り方,ここでこのアンケートのことも含めて,恐らくこの11期でずっと議論してきたのは,人文科学・社会科学系の大学院のアカデミアではなくて,いかに高度人材の育成につなげるかという在り方そのものだったのではないのかなと思います。どうしても先生方アカデミアで,研究者を育てるというところがあって,そうではなくて,修士で,企業に行く人材をどう育てられるのかということだと思うんです。そこはやはり意識,教員の意識がどう変わるか。逆に人文科学・社会科学系,特に社会科学系で,社会人といいましょうか,修士を出て企業,いわゆる産業界に,社会に出すんだというような考え方が,恐らく先生方にはないと思うので,その意識をどう考えるかということが1つ重要な話だと思うんです。
それから,もう一つはリカレントについてなんですけれども,このリカレントについても,実は,いわゆる専門職大学院とアカデミックな大学院とで,かなり違ってくると思うんです。専門職大学院はより直接的,即戦力になるような形になると思いますから,そこも少し切り分けて考えていく必要があろうと思います。いずれにしろ,いわゆる高度人材を育成するにしろ,リカレント教育にしろ,企業とのマッチングをより具体的にどうしていくかということが一番重要なんだろうなと思います。ちょっと言い過ぎかもしれませんが,恐らく大学院で人文科学・社会科学系の先生方で,企業とのマッチングって今まではそんなに考えていらっしゃらない。研究の分野は考えていらっしゃるんですが,自分の院生をというところはなかなかこれまでないと思うので,基本的には。やっぱり意識改革とマッチングをどうするかということが非常に重要なことかなと思います。
私からは以上です。

【湊部会長】ありがとうございました。非常に包括的におまとめいただきましたが,まさにそのとおりで,この11期の部会でもかなり議論させていただきました。結論がもちろん出ているわけではありませんが,いろいろな問題点が比較的クリアになって,あとはどのような形をつくっていくかということについては,少なくとも全員のコンセンサスが得られてきているのではないかと私も思っております。
今日は時間がどうなるかと少し冷や冷やしていたんですが,奇跡的にちょうど5分程残っています。折角池田局長にも御参加いただいていますので,池田局長からも一言御挨拶いただければと思います。

【池田高等教育局長】ありがとうございます。高等教育局長の池田でございます。私も9月に着任して,実は今日部会に参加させていただくのが初めてなんですけれども,今期,11期の大学院部会,湊部会長や村田副部会長はじめ,委員の皆様には大変お世話になり,ありがとうございました。
今日いろいろお話が出たように,この11期では人文科学・社会科学系の大学院教育を中心に,中間取りまとめをまとめていただいたり,大学院設置基準の改正や,大学院でのリカレント教育を中心に,いろいろな御議論をいただいてきておりまして,改めて御礼申し上げます。
一方で,コロナ禍や国際情勢などを踏まえて,予測困難な時代と言われる中で,今日まさに御議論いただいたように,特定の分野の専門知だけでなくて,文系・理系を超えた総合的な知が求められますし,その中で大学院の果たす役割,大変大きいものがあると思っております。実は政府でも,今博士人材を活躍してもらうということで,採用や,それから処遇もいろいろ,官より始めようということで,取組を始めつつございます。今日キャリアパスやリカレントの話の中で,企業はもちろん,官公庁での活躍という御意見もいろいろ出ておりましたけれども,そうした中で,大学院を出た博士号を持った人材,修士号を持った人材がどう活躍していくかというのは,今日出た御意見をさらに次の12期でもより深掘りをしていただいて,私どももそれを踏まえた改革を打ち出していきたいと考えておりますので,引き続きよろしくお願いできればと思っております。
今回2年の11期の部会運営に当たりましては,委員の皆様積極的に御参加いただいて,大変密度の濃い議論ができたと思っておりますので,大変ありがとうございました。引き続きよろしくお願いいたします。

【湊部会長】池田局長,どうもありがとうございました。
本当にちょうど時間でございます。第11期の期間,この大学院部会では,必ずしも既定の決まった路線に従って進めるということではない自由な形で運営させていただいたつもりですが,様々な現場の皆様の非常に真摯な,あるいはリアルな意見がたくさん出まして,池田局長も御指摘のとおり,密度の高い議論がなされたものと思っております。大変ありがたいことだと思っております。まだ全てが合意に至ったわけではありませんけれども,ぜひここで話題になった重要な課題というものをてこに,さらに今後の大学院の在り方についての議論を,この部会で進めていただけるようであれば,私どもの役割も十分果たせたのではないかと思っております。本当に委員の皆様方,2年間にわたり御協力,御意見をいただき,心からお礼を申し上げたいと思います。
それでは,ちょうど時間でございます。本日はこれで終わりたいと思います。皆さん,本当にありがとうございました。

―― 了 ――

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