大学院部会(第95回) 議事録

1.日時

令和元年9月19日(木曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省東館3階3F1特別会議室

3.議題

  1. 大学院におけるリカレント教育の充実に向けて
  2. 令和2年度予算概算要求等について
  3. その他

4.出席者

委員

(部会長)  有信睦弘部会長
(副部会長) 村田治副部会長
(臨時委員) 大島まり、加納敏行、川端和重、小西範幸、佐久間淳一、迫田雷蔵、髙橋修一郎、高橋真木子、田中明彦、沼上幹、濱中淳子、福留東土、三島良直の各委員

文部科学省

(事務局)山脇文部科学審議官、田口サイバーセキュリティ・政策立案総括審議官、伯井高等教育局長、白間高等教育局私学部長、平野大臣官房審議官(総合教育政策局担当)、玉上大臣官房審議官(高等教育局及び高大接続担当)、森大臣官房審議官(高等教育局及び科学技術政策連携担当)、永山文部科学戦略官、牛尾高等教育企画課長、西田大学振興課長 他

5.議事録

【有信部会長】
 おはようございます。定刻になりましたので,第95回の大学院部会を開催させていただきます。
 御多忙中にもかかわらず,御出席いただきまして,ありがとうございます。
 本日は,池尾委員,神成委員,小長谷委員,菅委員,塚本委員,波多野委員,堀切川委員,湊委員,宮浦委員が御欠席と伺っております。
 それでは,まず,事務局から配付資料の確認をお願いします。

【平野大学改革推進室長】
 失礼いたします。配付資料につきましては,議事次第に記載のとおりでございます。机上資料の方は,タブレットに入っております。抜けているものがある場合には,事務局までお知らせ願います。

【有信部会長】
 ということで,よろしくお願いします。
 それでは,早速,議事に入りたいと思いますが,本日は,大学院におけるリカレント教育をテーマとして,筑波大学の清水副学長・理事,リクルート進学総研の乾主任研究員より御発表いただいた後に,事務局から資料説明の上で,議論を頂きたいというふうに思います。
 それでは,まず,筑波大学の清水副学長・理事から,「筑波大学における社会人教育」と題して,筑波大学における社会人向け教育の取組について,御発表いただきたいと思います。
 それじゃあ,清水副学長,よろしくお願いします。

【清水筑波大学副学長】
 おはようございます。筑波大学教育担当副学長・理事の清水諭です。よろしくお願いします。
 では,お手元の資料を御覧いただきながら,発表させていただきます。本日は,博士課程早期修了プログラムと社会人大学院,特に,修士課程,博士前期課程の状況について御説明するということで,承っております。
 1枚目のスライドに建学の理念を挙げているところがございますが,筑波大学,1973年に創設いたしまして,一番下にありますように,「変動する現代社会に不断に対応しつつ,国際性豊かにして,かつ,多様性と柔軟性とを持った新しい教育・研究の機能及び運営の組織を開発する。」と,常に開発の先端に立って改革していくということを使命として受け止めているところです。
 次の2枚目のスライド,2ページ目,上の方のスライドを御覧ください。夜間の大学院の設置について,1989年,我が国初の社会人のための夜間大学院というのがそこに赤字でございますけれども,茗荷谷駅前,東京キャンパスにて,夜間大学院,社会人のための大学院を1989年に開校いたしました。その後,大きな流れといたしましては,連携大学院方式というものを1992年に開始。これは,筑波研究学園都市の中の研究機関の研究者を教員として迎え入れて,研究機関との組織間連携による形式で大学院を形成し,学生をその研究所などに行かせて研究を進める。それから,来年,2020年4月には,大学院課程全面改組ということで,学位プログラム制に全面移行いたします。8研究科85専攻を3学術院6研究群に改組再編,56学位プログラムに集約し,全面的に学位プログラム制へ移行するということになっております。
 筑波大学における社会人教育プログラムということで,博士課程早期修了プログラム,そして,東京キャンパスとつくばキャンパスで社会人大学院を開校しているわけですけれども,社会人特別選抜,昼夜開講制,長期履修制度を導入しながら,そのほか,エクステンションプログラムがあります。これは,プログラムに沿って有料の形で一般の方々を招き入れて,本学の教員が教育していくということになります。
 本日の発表については,博士課程早期修了プログラム,社会人大学院ということでございますけれども,6枚目のスライドを御覧ください。早期修了プログラムというところでは,一定の学術的蓄積などがある社会人を入れて,最短1年で博士号(課程博士)を授与するということです。博士後期課程に在籍し,研究指導を受けながら,社会人としての研究業績をベースに論文を執筆していくということになります。したがって,入学前にある程度研究を積み重ねている方がこの中へ入ってきて,そして,課程博士で博士号を取得していくということです。その中で達成度評価システムということが非常に重要でありまして,入学のときの研究計画,中間評価,学位の予備審査,最終試験というような形になりますけれども,それぞれの能力と,評価をしながら,適切に進めていくということになります。これは学位の質の保証というところにつながることになります。
 そして,特徴というところですけれども,博士取得のための基準とプロセスをあらかじめ提示しつつ,その目的とともに進めていく。社内業務での研究業績,特に,様々な社会的なニーズをベースにしながら,いろいろな状況の中で社内業務をされているところの上で,テーマを見付けて,博士号を取得していく。そして,達成度評価プロセスによって,ポイントを絞って学修していくということになります。そういう中で指導教員となる先生方と連絡をしつつ,履修条件がそろった時点で入学していくということになります。昼間の開講を基本とする専攻もございますので,遠隔の会議システムを利用しながら進めていくということもありますので,在職,遠隔でも履修をしていくということになります。
 8枚目のスライドを御覧ください。そういう中で,課程博士と論文博士というのが左右にございますけれども,早期修了プログラムというところでは,大学院(課程博士)に入学,最短1年間在籍しながら,論文を執筆していく。課程博士ですので,博士号(甲)の取得ということになります。
 現状としては,9枚目のスライドでございますけれども,2007年度から2018年度について,研究科については,数理物質科学,システム情報工学,生命環境科学,ビジネス科学という中でそれぞれ数がございますが,修了者は93.5%です。371名のうち,347名。うち1年での修了者数というのが292となっておりますけれども,84.2%が1年間での修了者数ということになっております。この数,あるいは1年間での修了者数の割合というのは,私たちが評価するということはおかしいかもしれませんけれども,ある程度業績を持った方が入って,1年間でこれだけの数・割合が修了していくというところでございます。
 10枚目のスライドを御覧ください。それぞれの研究科の中で専攻としてこういった形で細かく分けた中で,早期修了プログラムを実践しているところでございます。それぞれ,各分野,細かい状況がありますけれども,11枚目に履修者の主な勤務先を書いてございますが,非常に様々,民間の企業,民間研究所,省庁,地方自治体,研究機構,そして,大学の教員の中でも1年間で学位を取得していくということが見られます。
 博士号取得の流れということになりますけれども,ここで一定水準以上の研究業績と書いてございますが,大学院の入試を受ける前に指導教員と連絡をとりつつ,どういった業績あるいは研究計画があるかというところを踏まえながら,大学院の入試(社会人特別選抜)を受けるということになります。専攻によって,試験については,筆記試験,面接とございますけれども,この試験に合格した方の中でプログラムの履修審査をした上で入学していく。そして,早期履修のプログラム,最短1年のものについて,この履修審査合格者が1年間で履修をしていくということになります。
 大学院の受験資格というところになりますが,常勤,非常勤を問わず,1年以上の社会的経験を有する者(見込みを含む),修士の学位を有する者,そして,個別審査で本学大学院において修士の学位と同等以上の学力があると認められた者が入試合格後にプログラム履修審査を受けて,その合格者にプログラムを適用していくということになります。
 14枚目のスライドを御覧ください。達成度の評価システムということは非常に重要でございまして,以下,七つの項目がそこにございます。入学時履修審査の提出書類というのが15枚目にありますけれども,履修希望者の履歴,専門分野などの概要,業績リスト(既発表の査読付学術論文など),それから,7項目の達成度に関する自己評価について,決められた様式がございますので,ここで自己評価をしていただく。そして,博士論文の構想を付けて提出していただくということになります。
 次の16枚目のところですけれども,履修概要と達成度評価の基本モデルというところになりますが,入学時の審査,2月下旬において,どのような専門分野の基礎知識がこれまでの中で身に付いているか。それから,右側のところですが,現実問題の知識や問題設定解決能力というものについて,まずは自己評価していただき,あるいは面接の際に教員の面接者と話をする中で,どのような達成度になっているか評価をする。そして,入学いたしまして,大体7月あるいは9月というところでしょうか,中間審査ということになります。4か月以内で審査をするということになりますけれども,ここでは,春学期(4,5,6月)の間にいろいろと講義を受けてきた中で,どのぐらいの広い視野が身に付いたか。あるいは,講義をする中で,ディスカッションをしたり,あるいは英語でのいろいろな論文を読んで議論をしたり,そういうような中でコミュニケーション能力と国際的通用性というものを幅広く見ていくということになります。この7月頃の中間審査でおおまかに,研究について,テーマと方法を決める。これは,学問の中ではどういう位置付けになるかということが見られていくわけです。
 その後,次の18枚目のスライドになりますけれども,修了に必要な履修項目の例ということになりますが,4月から7月までの時点で,特別研究(指導教員の直接指導,研究室ゼミ等),特別演習(主として,中間・予備審査時のプレゼンテーションに向けた様々な演習),そして,各研究科・専攻で開設する講義科目,これは大学学士課程を終えて直ぐに入学した学生たちとともに授業を受けるわけですけれども,ここで10単位から20単位を取っていくということになります。4か月ぐらいの間で10単位ぐらいとるとなるとなかなか大変ですけれども,ここで,遠隔講義システム,e-learningの整備,それから,講義としても土曜日開講や集中講義ですね。そして,何より指導教員とメール等によって,自分の研究,その点についてしっかりと方向性を持ちながら積み上げていくことをしていくということになります。
 20枚目のスライドを御覧ください。その後,夏休みを挟んで,また秋学期(10~11月)も授業に参加していくわけですけれども,博士論文に向かっての予備審査ということで審査員が付いて,ここで先行研究等を踏まえつつ,関連分野の基礎知識プラス学術的な成果・研究能力というものが見られていくということになります。この予備審査が非常に重要になります。ここでいろいろと出た指摘事項について,ブラッシュアップをしていくということになります。2月には,課程博士としての学識,学術的成果及び研究能力について評価される最終試験及び発表会ということになります。こういった形で,1年間,達成度評価システムがあり,それに見合った入学時の審査,中間審査,予備審査,そして発表会及び最終試験というようなステージ制の下で博士号の学位取得になります。
 22枚目のスライドでございますけれども,1年間で博士号が取得できない場合にはもちろん延長するということになりますし,それから,業務多忙ということも出てまいります。御家族のいろいろな状況等も出てきますので,休学しながら取得をしていくということになります。こういったシステムが2007年から運用されてきて,先ほど言いましたような数,2007年度から2018年度においては371名の履修者,修了者347名のうち,1年間での修了者が292名というような形になっているところでございます。
 続いて,社会人大学院の方に進めさせていただきます。25枚目のスライドですけれども,1989年4月からということで,これは夜間開講ですけれども,カウンセリング専攻(現生涯発達専攻),経営関係,法学関係というところで修士をスタートさせて,後に博士後期を開設するという形になっています。こういった中で,2005年から専門職学位課程の専攻をビジネス科学研究科に設置しております。法科大学院(法曹専攻),そして,国際対応のビジネススクール,これは英語で履修ということになりますが,国際経営プロフェッショナル専攻,MBAが取得できる,国際MBA専攻ということになります。そのほか,健康システム・マネジメント専攻を立ち上げて,東京キャンパスにおいて進めているところです。
 26枚目のスライドを御覧ください。生涯学習社会の到来に先駆けて,能力再開発を志す社会人を対象としたレベルの高い大学院教育を実施することを目的に,東京キャンパスにおいて全国で最初の夜間大学院を設置しました。修士が1989年(平成元年),博士が1996年(平成8年)ということになります。いずれの専攻・学位プログラムも,社会人が属する企業や組織が抱える課題,こういった社会的なニーズをアカデミックのレベルの中に入れつつ専門的に研究して,働きながら修士や博士の学位の取得を目指しています。
 特色としては,夜間及び土曜日に限定された時間,夜間は午後6時以降ということになりますが,そこで大体2時限やる。終わって,茗荷谷駅周辺でそれぞれ専攻ごとに集まったりして,引き続き語り合うという時間が持てて,そこでいろいろな情報を交換するという時間にもなっています。土曜日ももちろん,朝から開講ということになります。そういった夜間と土曜日などを使いながら,修士や博士の学位取得を可能にする。そして,複数の教員によって,グループで指導するということになります。先ほど早期履修のところでもありましたけれども,研究計画段階,中間評価段階,予備審査,本審査というようなステージ制で,それぞれ目的を持たせながら,自分がどこまで進んでいっているのかということを基に,論文執筆の進捗管理,そして,コースワークを重視した集中的な科目の履修等,テーラーメードという言葉は古いかもしれませんが,履修計画を自ら立ててカリキュラムをこなしていくということになります。
 こういった中で,28枚目のスライドになりますけれども,非常に有職社会人率が高うございまして,ビジネス科学研究科では98.5%。自分の会社から茗荷谷まで来て,授業を受けてまた会社に戻るという方もおられるようです。全国平均49.9%を踏まえると,かなり高くなっていると思います。そして,少人数制による密度の高い教育により,実務プラス研究能力ということで,ここは,社会人で様々経験されている方の課題を大学の教員が受け止めながら,理論的な裏付けをしつつ論文を執筆していくというところになります。博士の後期課程を持った社会人大学院として茗荷谷のキャンパスがあるということで,単に実務経験から論文を仕上げるというだけでなくて,アカデミズムの状況というものをしっかり理解しつつ,先行研究を読み,そして指導教員とサブの指導教員とディスカッションしながら積み上げていくというところが非常に好評を博していると思います。倍率も非常に高うございまして,後ほど倍率も出てきますけれども,3倍あるいは7倍という数の中で一定の競争力を維持しているところです。ビジネススクール,大学等の教員等を100名超えて輩出しているということもあります。東京キャンパスの特徴としては,経営学,法学,心理学,生涯発達,スポーツ・健康領域という形で,人間が生きていく上で必要な根本的な課題について,立地条件がよろしいということもあると思いますけれども,こういった専攻を開講しているということが高い倍率にも結び付いているのではないかと考えています。
 29枚目のスライドでございますけれども,入学定員,学位名のところは,経営と法学について,前期,後期。そして,後期の方は企業科学専攻の中にシステムズ・マネジメントコースと企業法コース,これは合わせて23名ということになります。そして,専門職学位のプログラム。人間総合科学研究科の方では,修士課程としてスポーツ健康システム・マネジメント専攻,その後期としてスポーツウエルネス学位プログラムという形で,独立していますけれども,2020年4月からは前期・後期という形になっています。それから,生涯発達専攻として,カウンセリングコースとリハビリテーションコース。そして,その後期についても,ここの表にありますような形で進めてきているところです。
 30枚目のスライドについては,本日は赤字で記されているところについて説明しようというところです。
 31枚目のところですが,入試実施状況,先ほども言いましたけれども,2~7倍の志願倍率。そして,ビジネス科学研究科経営システム科学専攻は3~4倍,生涯発達専攻のカウンセリングコースは5~7倍という,非常に高倍率で推移しています。平均年齢としては30代半ばから40代後半,男女比についてはおおむね1対1から2対1と,女性の比率も学士課程に比べますとかなり高い比率になっているところです。出身学部等,勤務先状況等というところについては,後ほどまた図をお示ししたいと思います。
 32枚目のスライドになりますけれども,経営システム科学専攻のところです。国際経営プロフェッショナル,国際MBAのところについては,ビジネス遂行上の課題を発見し,その本質の分析・理解,そして,最新の理論や手法によって,プラクティスとリサーチ能力というものを身に付けていただくということになります。八つの柱でプログラムを構成しているということで,戦略・組織,マーケティング,会計,ファイナンス,オペレーションズ・マネジメント,統計,知識・情報技術,システム・ソフトウエア開発と,かなり広い分野を横断的に研究しつつ,そして,研究については,各人が集中した分野について研究をしていくということになります。研究の体制としては,先ほど申しましたように,非常に段階別に論文を作っていく中で,カスタマイズされた教育,少人数の教育,そして,短期間,ここにございますように,1コマ75分の授業10コマを1日に2コマ分やって5週間で単位取得をしていくような形で,集中的な講義を受講できるということになります。指導体制についても,複数の教員グループ,そして,ステージ制として,先ほど言いましたように,概要発表(研究計画),中間発表,最終審査というような形で,目標を決めながら,2年間,修士論文の完成を目指していくということになります。
 それから,生涯発達専攻のカウンセリングコースについては,心理療法に限定しない形で,心理社会的諸問題とかなり広い状況の中で,医療機関等での心理臨床に加えて,企業の人事労務管理や人材育成,学校教育相談や軽度発達障害児への支援,警察や矯正機関での非行相談や矯正教育,高齢者の諸問題への支援といったような,多様な領域でのカウンセリング活動をここで研究し,教育の対象としているという点が,特徴的ではないかと思います。そして,リカレント教育の観点から,現場場面での問題解決や社会システムへの提言につながるような教育・研究を重視し,社会における実践に直接関わりながら,研究を立案し,その知見を応用・還元することのできる研究能力を備えた研究者,高度な専門的職業人の育成・再教育を行っています。こういった形で現場の課題に沿った研究をし,それを持ち帰って現場で還元できるような教育・研究をしていくということになります。領域としても,カウンセリングの歴史から始まって,理論的なところもありますけれども,発達過程・発達段階における社会的な諸問題について認識した上で行っていくと。研究方法についても,講義のほか,事例報告,課題討論,ロールプレーを含む面接実習といったような体験学習も踏まえていくということになります。そして,研究指導の方も,1年次の3回の構想発表会,2年次の構想発表会,中間評価,最終発表会というような形で,複数の教員の指導の下で進めていくということになります。
 34枚目のスライドになりますけれども,両専攻・コースにおける入学者データということになりますが,左側がMBAになります。非常に,多様な年齢構成,多様なバックグラウンド,多様な業界・職種の社会人学生が集まって学んでいます。そして,右側が生涯発達専攻のカウンセリングコースになりますが,これは,勤務先の状況としては国際MBAよりも種別としては減りますが,やはり多様なバックグラウンドを持った方々が集まって,2年間,コースワーク,授業,そして,ディスカッションをしていくということで,確かに,論文の執筆ということが目標になりますけれども,いろいろな年齢構成やバックグラウンドを持った方々が集いますので,その後長期間,関係を結びながら,転職等々の相談相手にもなるという状況にあります。特に,前期課程はこういった形で社会的なつながりは非常に多うございますけれども,後期,PhDまで取得することになりますと,非常に国際ステージでの活動につながる,あるいは国際的な様々な活動の中でPhDを持っていることによる有意差が認められるというふうに,修了生たちは言っています。
 スポーツウエルネス学位プログラム,これは3年制の博士後期課程になりますが,国際的なスポーツ界の中でも,PhDを取得した専門の方々が社会に出て,日本のスポーツ界での状況をアピールすることができるということでございます。
 最後,37ページのところですけれども,社会人教育・リカレント教育を推進するに当たっての課題認識ということになりますが,社会人としての経験を踏まえた研究のテーマ・考え方で大学へ入ってくるわけですけれども,大学教員の方が伝統的なアカデミズムの中でそれを捉えて研究指導するというところでは,多分不十分でありましょう。教員の知識・経験を踏まえつつ,そういった実務を研究した研究者というところも必要ですし,それから,学生が多様なバックグラウンドの中で経験してきたことを捉えつつ,アカデミズムとつなげていくということが非常に重要だと思います。そういった点で,論文の形式,あるいは論文の評価ということも,研究の学位だけではなくて,筑波大学としては社会とつながった専門学位というものを設けていますけれども,課題研究レポートというような形で修士の論文と,学生自らがある程度タスクを持って,課題を持って進めていくプロジェクトを基にした課題研究レポートを評価するような形の専攻もございます。
 そういった中で,38枚目のスライドですが,2020年度,4月から学位プログラム制に全面移行ということで,文科省に申請して,設置報告書を明日提出するというところになっています。一つの専攻を非常に大きくした形で,8研究科85専攻であった大学院課程を3学術院6研究群にします。この研究群が専攻相当になりますので,この専攻の中で1人の教員が五つまで学位プログラムに関わることができるということになります。ですので,この大きな研究群の中のプログラムに教員がある程度柔軟性を持って関わることができる。学生の方は,アドミッション・ポリシー,カルキュラム・ポリシー,ディプロマ・ポリシーを明確に示された中で,このプログラムに行けばこういった人材養成目的の下で勉強できるという自覚を持って,コンピテンス,身に付ける能力がはっきり明示された中で学修し,自分の目指す学位が取れるということになります。したがって,教学マネジメント室(仮称)とありますが,質保証のシステムが非常に重要になるというところですし,本学はもともと教員の組織と教育の組織は別立てできているところですが,大学院においても2020年4月から,教・教分離の中で教員がこういった3学術院6研究群に派遣されて教育をしていくということになります。こういった学位プログラム制をベースにしながら,社会人教育の方も充実させていこうというところでございます。
 以上,発表を終わらせていただきます。

【有信部会長】
 どうもありがとうございました。質疑は,後でまとめて行うということにさせていただきたいと思います。
 それでは,引き続き,リクルート進学総研の乾主任研究員から,「大学院が社会人学習者から選ばれる教育機関となるために」と題した御発表を頂きたいと思います。
 じゃあ,乾さん,よろしくお願いします。

【乾リクルート進学研究主任研究員】
 初めまして、乾と申します。本日はよろしくお願いいたします。
 映写資料を基にお話しさせていただこうと思います。資料の方は,お手元に同じものがございますけれども,映写の方を見ていただければなと思います。きょう発表するのは,主に3点ございまして,まず,社会人学習の全体的な状況,次に,今,社会人大学院で学んでいらっしゃる方々がどのように学んでいるか。3点目として,このタイトルと同じ,これから先,更に社会人から大学院が選ばれるために何が必要かという,3点の順番でお話ししていきたいと思います。15分ということで,かなり早口になってしまうかもしれませんが,御容赦いただければと存じます。
 また,お手元情報誌(「スタディサプリ社会人大学院」)をお配りしております。こちらは,この8月に全国の書店で発売したもので,純粋に社会人大学院のみを対象とした情報誌でございます。社会人の方々を対象に、大学院で学習をしていただこうという提案を行い,書店の店頭で「なるほど,こういうものもあるのか」というふうに気付いていただこうという目的で作成しています。私は,こういう社会人学習に関する専門誌をこれまで20年弱にわたり作ってまいりました。大学院ではなく,資格課程やヨガのお教室まで,さまざまなところを含め,数えあげてみたらトータルで3,000人か4,000人ぐらいの社会人学習者の方々の事例を取り上げてきています。大学院に行かれた方だけでも1,000人は超えております。本日は研究発表というよりも,実際にこの本の中にも100人以上の事例がございますけれども,そういった事例,また,これは書店の店頭で販売されているものでございます。商売人として,この紙媒体が苦しい状況にあるなかでいかに部数を上げるかというところで,これまでどぶ板たたいて奮闘してまいりましたので,そうした実際上の経験を基にお話ししていきたいと思います。
 まず,スライド3ページ,社会人はどれぐらい学んでいるのだろうというところで,統計データがございます。内閣府「生涯学習に対する世論調査」は,58.4%という数字ですね。最近,弊社の関連会社のワークス研究所の方でやったものでは,33.1%。もう一つ,これは私の方で調査を担当したものなんですが, これは年齢によって差があるのですが,9.3~24.3%。実際はかなり,社会人の学び実施率は,統計によって,開きがあるのですね。どういうことなのかと。ちなみに,9.3~24.3%と幅がございますのは,これは見えにくいのでお手元の資料の4ページ目と5ページ目を見ていただきたいのですけれども,これは5歳刻みの年齢帯になっています。赤とオレンジを合計したものが,去年1年間で何らかの学びを実施した人という形です。例えば男性でありましたら,20%から,どんどん年齢を追うごとに低くなっていって,55歳を超えると,10人に1人,10%を切ってしまう。「今どきの若い者は」というふうに偉そうにお話しされている年齢の高い方々はほぼ学んでいないという,残念な結果になっています。女性の方は,傾向としては同じなのですが,男性よりも学習の実施率は高いという結果になっています。
 何が起こっているのかというのは,結局,定義がそれぞれ違っているだけでございます。学習が示す範囲といってもいろいろございまして,何も認識せず学習をしている,業務経験の中で何かインプットをしているみたいなところも学びといえば学びですし,自らの意思でお金を出して,200万円投入して大学院に進学するというところまで,結局,学びというのが何を定義しているかによって,答えが全然変わってくるぞというのが,こちらでございます。例えば,内閣府の調査でいくと,職場で何となくOJTを受けるとか,自宅でインターネットを使って調べものをする,今で言ったら電車の中で何だっけといってスマホで調べたら,それが学習実施にカウントされちゃうんですね。そういうふうに自分で思ったことがあるという人が58.4%だということになります。ワークス研究所の方の調査でいくと,これは仕事上のということで限定されています。仕事上,何らかの学び行動を実施したかどうかということで33.1%というふうになっているのですけれども,職場の人に何か聞くというところで「イエス」と答えたら,ここになってくると。当然ながら,社会人大学院に通うというところと,こういった学び行動,直接は結び付いていません。社会人大学院に通うというのは,飽くまで自分の意思で何らかの学び事・習い事商材を購入する中の,最大の買い物の一つになっているというところですね。
 この状況の中でもう一つあるのは,社会人学習を実施しない理由というのを聞いているのですけれども,これはお手元の8ページ目のところにあるグラフなのですが,何で学び事を実施しないのですかと。大体,費用と時間と仕事の疲れだというところが三大理由,いろんな統計で多分そうなってきています。ただ,面白いのは,こちらの調査でいくと,複数回答で聞いていて,どれが一番というのも併せて聞いてみたんですね。そうすると,お金,費用面というのが,何といっても断トツの第1位でございました。こちらのグラフの下側のグラフ,オレンジの濃い色の方が,単数回答で聞いてみたものです。複数回答ではすごくたくさんの人があげていた,「勉強時間がなく続けられなさそう」「残業などで欠席しなければならないことが多い」という条件面のことは単数回答にするとどーっと下がっていって,代わりに出てくるのが,「仕事で疲れていてやる気が起きない」「やってみたい習い事・学び事が見当たらない」「習い事・学び事には関心がない」という,そもそも学びに対して喚起されていない,そういう項目が挙がってきています。これは,決して大学院に関わったことじゃなくて,全ての学び行動をしないというものに対してということになります。
 さらに,様々な研究もございますが,カウンセリングの現場などで出会ったケースからお話いたしますと,主に三つ,学習実施しない理由というのがございます。まずは,何よりも一つ,これまで学んで成功した経験がないというところですね。次に,学習時間,授業に出ている時間,この時間は耐える時間ということになっちゃっている。小中高大,初職,最初の職場の研修,そこを終えたところで,学びというのは意味のあるものとして捉えられていない,面白いと思えない,そういった観点ですね。三点目,もう一つ大きいのは,ロールモデルと出会う場がない。身の回りに学んでいらっしゃる方が多い方と,そうじゃない方というのは,非常にはっきり分かれてしまいます。実際,大学院に通われていた,ここに取り上げられていた方々にお話を聞くと,身の回りにどなたかいらっしゃるんですね,学習実施した方というのが。大学院に進まれた方はじめ,そういった方々と比べて,学習をされていない方々というのは,身の回りに社会人学習を継続している方が誰もいらっしゃらない。どういうことになるかというと,職場の中で自分だけ学んでいる場合,自分が大学院に行っているなんていうことを職場で口に出した日には,本当に異分子になってしまう。なので,職場でも全然お話しされていないケースというのが多くございます。我々,そういう方々のことを「隠れキリシタン」なんていう呼び方をしているのですが,でも,これは本当に切実な課題で,職場でオープンにできないということは,職場の中で,この人はこういう研究をしているんだよなというお話のインプットが非常に減ってしまうということになってしまうのですね。これは,アウトプット,カミングアウトという言い方も何ですが,自分は勉強しているんだよとカミングアウトしている人間にはどんどん,「乾さん,これをやっているよね」「この間,こういう先生とお会いしたよ」みたいな,そういう話題が来るものですけれども,そういった体験が非常に少なくなってしまう。
 こういった環境の中で誰をターゲットに設定するのかというところが,社会人の中でリカレント教育を進めていく中では一番大切なことなのかなというふうに思っています。11ページ目の例のように,大学院で学んでいる方々は,これまでずっと学び続けている方々です。ただし,その学びの内容というのは多岐にわたります。最初の学びは,アロマであったりとか,英会話であったりとかした方々が,気付くと大学院まで進んでいらっしゃる。学んで成功したという経験を持っていくと,これをやったら何か自分のためになりそうだなというイメージが付きますので,そこが一番の,成功体験が次の成功体験を呼んでいるという状況ですね。
 ただし,社会人大学院の場合,大きな課題がございます。意識してから学習開始までの行程が非常に長いんですね。何かといいますと,最初に自分のキャリア上の課題とかを見付けた上で,さあ何かしようと思った後に,大学院でのロールモデルに出会って学習を開始するまでというところというのは,何度も壁がございます。最初に,書店で本を買うというところとか,そういうところから始まって,実際に学ぶとこういうことが身に付くんだなと納得できるところ,なかなかそこまでたどり着かない。一方で,例えば,短期的なプログラムの中で,先ほど清水先生の発表の中に勉強した後の居酒屋の出会いみたいのがございましたけれども,そういった過程の中で,大学院に進んでみたらこういうことができるのだという具体的なメリットを認識できれば,進むことができる。これは通常の資格取得の学習とは大きく違っていまして,資格の過程,例えば簿記2級を取りたいといったところというのは,その過程が非常に短いんですね。簿記2級を取ったらどうなれるというところが具体的にイメージできれば,すぐ学習開始に向かうことができる。通信講座をポチッと押して,家に資料が送られてきて勉強開始というのは,意識してから翌日とか1週間後には勉強を開始している。大学院は,それとは大きな違いがございます。
 あと,もう一つ大きくありますのは,取材をしてきた中で,大学院のメリット,実際に大学院に通って何がよかったかというところを聞いていくと,自分の経験を体系化することができた,体系的な知の中で位置付けることができたというところが,一番大きくあげられます。それ以外に挙げられてくるものも,例えば,仲間とのネットワークであったりとか,家族を巻き込んで,修士取るんだ,博士取るんだというプロジェクトを完遂するまでのプロジェクトマネジメント能力であったりとか,そういった,学位であったりとか,資格であったりとかいう目に見える部分よりも,コンピテンシーに関わる部分,そういったところの評価というのは,実際に通った方々に伺っていくと,強く表現しておられます。
 もう一つ面白いのは,先ほど来お話のありました,実務の中でやったことを学びの場に持ち込むというところです。働きながら学んでいる方々というのは,学習の場でやったことを実務の中に持ち込む。ここでは当然,あつれきとか,葛藤とか,起こります。勉強でかぶれてきやがってみたいな,MBAにかぶれてきやがってみたいな反応が起こる。そこで,そのあつれきを解消することこそが大きな学びになるという,そういう往復活動ですね。実践の場と学習の場を往復する活動というところが,実際に学習していらっしゃる方々が大きなメリットというふうに話されているところでございます。
 こういった往復活動,これは大学院だけではないのですけれども,必ずしも,講義を受けるとか,個人的な指導を受けるだけではございません。何らかの集団的なリフレクションの場というのが用意されている場合,発動するような学びの場でございます。
 さて,社会人大学院での学びみたいなところを享受している方々,決して多くはございません。何で学びましたかというところで,これは飽くまで母数は学習を実施している方々です。学習を実施する方々は,決して多数派ではありません。全体の10%から20%と,お話ししていたところでございます。その中で大学・大学院を使った人って何%ですかというと,3%です。つまり,ひどい言い方をしてしまうと,大学院ってほとんど選ばれてないんです,社会人の学習者から。
 一方で,言い方を変えれば,これはどれだけ大きな白地マーケットがあるかということになります。適当に目の子算で計算していても,社会人学習者,1,000万から1,500万人。もっと多いかもしれません。その中で,大学院を何らかの形で,単科や科目等履修も含めて,利用されている方々の数,10万人いきません。ということは,1,500万人としたら,1,490万人は白地のマーケットということになります。ほかで学習を実施している方を大学院に引き込むだけで,大学院で学び始める人を増やすことができる,そういう,非常に有効なターゲットということができます。さらに,そこでの競争相手というのは,日本の国内で,海外もありますけれども,何らかの教育プログラムを提供している方々という,かなり狭い競争相手ですね。こんなブルーオーシャンなマーケット,ほかにどこがあるのだろうというぐらい,非常に大学院にとっては将来性のあるマーケットだと思います。
 ただし,今のままでは,それは実現できません。今は私の方での把握ですので,何かしら改めてバックボーンを用意できればと思いますが,資料21ページ目,大学院がなぜ学習者の学びの意欲を喚起できていないか。まず,提供価値がずれているというところがございます。今の社会人が求めているものは,あくまで現時点の話ですけれども,学位ではありません。学位じゃなくて,実際に自分が興味のあるテーマをいかに有効に実践的に学べるのかというところが大切です。学位は後から付いてくるもののような認識ですね。ということは,ほぼほぼ全ての正規課程が学習者にとってはオーバースペックということになります。言葉は悪いですけれども,現時点では学位が雇用環境で直接的に有効なわけではございませんので。もう一つは,まだまだ,自分の経験と学習行程をつなぎ合わせる,リフレクションの場があるプログラムが少ない。さらに,それが外に発信されていないというところがございます。これは,社会人学習者にとっては,ほかの教育機会とつながっていないという意味もございますし,先ほどお話しした,ロールモデルと出会う機会が少ない。こういう理由で,大学院で学習をしようという興味が喚起されていないのです。
 さらに,いざ学習しようとしたとき,意識をしたところで,次の壁が立ちはだかります。これは,お金の壁であったり,期間のバリエーションが非常に少ない。あるいは,開講期日が合わない。そして,立地が非常に限定されている。学校によってはサテライトキャンパスを一つ作っているよというところもあると思うのですけれども,民間の教育機関,例えば東京であれば,銀座にあり,新宿にあり,渋谷にあり,池袋にあり,そういった,7拠点,8拠点あるところが競争相手になる。じゃあ,そことどう戦っていくのかということです。
 それでは何をすればいいのかというところなのですが,私が今感じている課題の解決案というところで,大きく二つあります。まずは資料23頁,社会人が学びたくなるプログラムを提供拡大しようというところと,もう一つは資料25頁,支える体制作りをしてほしいなというところでございます。まず,プログラムの方ですけれども,社会人にとって非常に分かりにくい状態になっているのが,結局,この研究科って何ができるようになるのか。課程ごとに,その研究科でできることというのが非常に分かりにくいものが多い。分かりやすいものが少ない。研究科で意思統一がなされていないのですね。例えば,中での議論,そのお話を伺ってみると,長期視点と短期視点が非常に混在しているところもございます。2040年を考えていたときには,先ほどの学位の話でいくと,学位の位置付けって全然変わっていくと思いますが,学位がメリットにならない現時点のプログラム作りを検討しているのであれば,長期視点を混在させず,今必要なプログラムに焦点を置いて考えたい。
 資料23頁Bは,小規模で機動的な学習機会というのを増やしていただきたいということですね。先ほどお話ししたように,それは学びのコミュニティへと引き込む機会になります。資料24頁Cは,リフレクションとか,アウトプットの機会がちゃんとあるプログラムを増やしていかねばならない。4点目(D),学習支援を拡充すること。これは,振り返りをして,次の学び,次の学びへつなげていく。社会人の学びというのは,単発で終わるものではありません。学び直しというと言葉的には単発で終わって次の就業機会へというところをイメージされがちですけれども,今実際に学習されていらっしゃる方は,ずっと学び続けていらっしゃいます。そういうところで,次の学びをサポートする,個人をサポートするアドバイザーが必要であろうと。
 25頁,体制の面,一つは,今,社会人学習を担当されている部門というのは,本当に先生方の手弁当で成り立っている研究科も非常に多くございます。それこそコピーをとるところに不自由されているとかっていうことも,よくお伺いします。そこに対して人的・資金的なサポートを拡充していただきたい。25頁B,私が実際に取材対象者を探すために伺ってきたときに,修了生の方のネットワークが非常に不十分な研究科が多いなというふうに,感じます。5年後,10年後どうなるのかというロールモデルとなる修了生の方々と,しっかりとネットワークを作っていただきたい。その方々が一番よく,実際の社会的ニーズを御存じでいらっしゃいます。さらに,ほかの学習機関との連携。これは民間の学習機関も含めてですけれども,そこで学んでいらっしゃる方が次は社会人大学に学びに来られます。演劇の世界でいくと,コンサートだったり,劇場だったりに行くと,ほかの演劇のパンフレットがいっぱい入っていますよね。そういったことが学びの場ではほとんどない。最後は,学習者に対する金銭的支援の拡充ですけれども,今,例えば専門実践給付金制度では7割ございます。ただし,次,すぐ学び続ける際の資金援助って,ほぼないですよね。実際に,学習者の方々,特に社会人大学院の生徒の方々の場合で言うと,常に学び続けておられます。途中で資金切れを起こしてしまいます。そこに対する支援の拡充,何らかの形での支援の拡充が絶対に必要だというふうに思っております。
 すみません,非常に早口になってしまって,しかも時間をオーバーしてしまいましたけれども,私の発表,こちらで終わらせていただきたいと思います。御清聴,ありがとうございました。

【有信部会長】
 どうも,乾さん,ありがとうございました。この講演についても,後でまとめて,質疑を含めて議論させていただければと思います。
 それでは,事務局から,資料の説明,よろしくお願いします。

【平野大学改革推進室長】
 失礼いたします。事務局の方で用意した資料について,御説明をさせていただきます。きょう,資料3-1から幾つか,3-4ぐらいまで用意をさせていただいてございます。
 資料3-1というのは,前期の大学院部会でまとめていただいて,きょうもお手元にございますオレンジの審議まとめにおける,リカレント教育に係る記載の抜粋でございます。こういうことを言うのも変な話なのですが,前期の大学院部会,月1回のペースでかなり多岐にわたる議論をしておりまして,リカレント教育についても議論はしたわけでございますけれども,回数としては多分,1回とかだったと思います。その中でかなり大急ぎでやったということもあって,ここに書いてあるものについては非常に大事なことを書いてあるわけでございますけれども,今期開始するときに,更にリカレントは議論することが必要だということで,きょう,この議論の場につながっているということを,まず御説明させていただきたいと思います。
 その上で,資料3-1の内容でございます。1ページ目は現状のデータでございますので飛ばさせていただいて,今後求められる取組というところが,2ページ目の下から,3ページ目,4ページ目でございます。項目だけかいつまんで単語的に説明させていただきますけれども,実践的な教育プログラムの展開,多忙な社会人の時間的・空間的な障壁を低下させる,標準修業年限にとらわれない長期・短期の履修,科目等履修生制度の積極的な活用,取得した単位というものを学位取得の際に適切に評価できること,単位数に応じた授業料の設定や4学期制,特定セメスターにおいて集中的に学修を行うなど,めり張りのある学修を可能とすること,社会人の大学院学生が求める学生間のネットワークの構築に意を用いること,この内容は2ページでございます。ここは主に,大学院の側でどういうことが求められるのかということでございます。
 3ページに向かっていただきまして,3ページの上の方から,教育プログラムの展開を図る際には,所属する社会人大学院生の意見や派遣元企業の意見というものを踏まえることが極めて重要であること。また,積極的な広報というものを行うこと。特に,修士課程における教育課程というものをリカレントという観点から,学内の資源配分というものをシフトしていくことが必要ではないか。
 3段落目に入りまして,リカレント教育を実施する上で,これは大学のミッションとして明確に位置付け,全学的な体制整備を行う。場合によっては,労働契約の内容の見直しなどを図ることも考えられるし,人事評価においても適切に評価される。ここはちょっと説明いたしますと,リカレント教育というのは何となく,学部から直接進学した者の指導というところとはちょっと違うものだという受け止められ方がされているという側面もあるのではないかという指摘があったことを反映しているわけでございます。
 4段落目,夜間・土日の授業科目の開設,高度なメディアの活用・通信教育課程の設置の促進。このようなことに加えて,教員の勤務形態の柔軟化というものも考えていかなければいけない。いわゆる平日の9時~5時ということでは対応できないということでございます。
 3ページの下の部分というのは,BPといったようなもの,履修証明プログラムといったようなものをしっかり活用して,また,厚生労働大臣の指定を活用することで,先ほどお話があったような給付金というものを使えるようにしていくということが必要だろうと。
 4ページ,最後でございますけれども,内容というものを考えていくに当たっては,各大学が関係する職能団体と連携していくこと,また,職能団体の訓練教育との役割分担というものをしっかり図っていくことが,特に専門職大学院の世界で必要であったというような御指摘を頂いて,こうなっているということでございます。
 資料3-1を御覧いただいて,内容については前の大学院部会で整理をしていただいたものでございますけれども,これから御説明する内容というのは,今回はむしろ短期というよりは中長期的に,国の方の仕組みとか制度という部分も含めて何か考える余地があるのかといったような観点から,少し説明をさせていただきたいと思ってございます。
 資料3-2でございます。3-2は,前回お配りした資料の改良版ということになってございます。改良というのは,制度改正が実際に施行されたということで記述が増えたとかいうことがあるわけですが,前回とかぶりますので,内容を細かく御説明申し上げません。ただ,ポイントを申し上げると,入学前の修得単位の認定であるとか,修業年限の短縮という部分について,こうやって並べてみると,大学院のいわゆる専門職ではない修士課程という部分については,例えば入学前の既修得単位の認定とか単位互換という範囲が,学部は124分の60,専門職大学院は2分の1ということになっているにもかかわらず,修士は30分の10というような状況になっている。また,修業年限の短縮という部分についても,学部,専門職大学院については入学前の修得単位というものを活用して入る場合には修業年限を短縮することができるという仕組みがあるわけでありますが,一方で大学院の修士はそのようなものがありませんので,こつこつ集めていても,もう一回入ったら,原則としては2年間行かなければいけない。もちろん,優秀であれば1年で修了するとか,また,あらかじめ,社会人とか,そういう者であれば,夏とか冬とかを使って1年というようなものはあるわけでありますが,通常のパターンではそのようなものはないというのが,前回の説明の要点でございます。
 資料3-3は,これは飽くまで一つの議論のきっかけとして,まとめさせていただいた資料でございます。時間の関係もあるので個別に御説明はしないわけでありますけれども,一番左側は,社会人,大学院,企業として,おおむねこのようなところが理想的な環境だろうと。一方で,現状,課題というものがあって,今後求められる取組というものを,前の審議まとめというものも踏まえて,作成しているものでございます。この中の項目の中で,審議まとめに含まれてないような項目を中心に御説明をさせていただきます。
 現状,課題の部分で申し上げますと,時間がないということ。社会人でございますので,そもそも時間がない,また,授業組立ての融通が利かないといった問題,こういった問題については審議まとめでも方法としては一定触れられているわけでありますが,きょうの乾様の御発表でありましたけれども,短期で学べるような教育プログラムが少ないであるとか,また,科目等履修生制度や他大学院の学修成果というものを持ってきて正科の課程につなげていくという部分にまだ課題があるのではないかということでございます。この部分については,求められる取組の例ということで,黒字の部分というのはこれまでも行われていて,更に充実が期待されるという部分でございますけれども,点線の中でございますが,国の方としてというところに特化いたしますと,一つは,入学前に修得した単位の認定とか単位互換の基準・方法というものについて,改めて大学院の御理解を頂く必要があるのではないかということでございます。きょうの資料の中に,参考資料ということで「単位互換制度の運用に係る基本的な考え方」というものをお配りしております。これはいわゆる学部を念頭に作られたものでございますけれども,単位互換の仕組みについては過度に抑制的に運用されている側面があるのではないかと,このような指摘もあったわけであります。このページを見ていただきますと,例えば,8ページ目,ページが付番されておりませんけれども,色が付いている部分なんかを御覧いただきますと,必修科目については1対1で対応している必要があるだろうと。選択科目については,選択科目群のプールとプールである程度の同等性がある場合は認めてもいいのではないか。自由科目というものについては,卒業単位に含まれるものはプールとプールの関係である程度の同等性がある場合には可能であり,卒業単位に認定しない場合というのは,1対1の対応関係がなくても認定できる。こういったような考え方というのを示しているわけでございます。大学院についても,もちろん自大学の教育課程というものとの整合性であるとか,若しくはその中身の水準という部分を判断するというのは前提でありますけれども,そうしたことを前提とした上でも,ある程度,こういうルールというものについては考えていくと。そして,大学院の方にもお知らせをして,改めて運用のやり方というものを工夫していただくというところは必要かもしれないということで,書かせていただいてございます。
 二つ目の赤ポツでございます。ここは,先ほど申し上げた,修士課程に係る入学前の修得単位について,修得単位数に応じた修業年限の短縮,また,他大学院等における修得単位の修了要件単位への互換の上限というのを柔軟化していくことが必要ではないかということでございます。先ほどの参考資料の4ページを御覧いただきますと,単位互換とか,このあたりの拡大の歴史というものがあるわけでございます。大学院設置基準が平成5年に改正されまして,他大学における入学前の既修得単位は10単位を上限として認定可能ということになっております。実は,平成5年の段階では学部の方についても30単位が上限であるということであったわけでありますが,平成11年に学部の方は入学前既修得単位と単位互換を合わせて60単位まで拡大されているというところで,ここで大学院は併せて措置がされていない状況になっているというのが現状でございます。ここについては,本日,大きな形で方向性について御議論いただいて,特に御異論がないようであれば,次回以降,しっかりと制度化に向けた検討を進めていきたいというふうに思っております。
 三つ目が,緑色の部分でございます。これは,前回,少し御意見を頂いた部分だと思っておりますけれども,履修証明プログラム等での単位授与の検討というのが必要ではないかということでございます。これ,緑色にさせていただいているのは,前回,私どもの課の職員が説明で触れていたかもしれませんけれども,学部の方については,大学以外の学修というもの,大学のそういった正科の学修以外の学修というものを認めて単位授与するという仕組みがあって,例えば,大学の学部で申し上げますと,TOEICとかTOEFL,こういったものを認めて単位を授与する,このような仕組みもあるわけであります。一方で大学院というのは,他の大学院の単位を持ってくるということはあるわけですが,大学院以外の学修というものに大学院の単位を授与するという仕組みそのものが今はない状態になっております。これは,私が想定いたしますに,大学院の教育というのはいわゆる深奥を究めるものであるというところがありますので,外でやった学修を大学院相当だという形で簡単に認められるものじゃないのであろうと。学部は,それよりはもうちょっと幅が広いのだろうと。そういう観点で恐らく制度設計がされているものだと思います。ただ一方で,前回来御指摘いただいている,履修証明プログラムについて大学院の単位を授与するといったことというものも必要ではないか。これは検討する価値があるテーマだというふうに思っておりますが,ここについては,先ほど申し上げた根本の議論と関わってくる部分がありますので,少し時間を掛けて検討していく必要があるのではないかと思っております。
 次の部分,課題でございます。時間が掛かっておりますので手短に御説明しますが,費用が高いというところでございます。大学院という部分の1個目のポツでございますけれども,費用に見合う教育プログラムを提供するという観点は大学院としては必要な部分があるのだろうということに加えまして,単位別授業料の問題,BPの活用,教育訓練給付金制度を普及する,こういったことがあるわけであります。また,点線の中でありますが,授業料に係る制度という部分について国の側で少し考えていく部分があるかということは,中長期的な課題というふうにさせていただいてございます。授業料については,御案内のとおり,私学について国が特に制度を設けているわけではありませんけれども,国立大学については制度というものを設けておりますので,そういった部分と本当に対応するかどうかということは,検討していく必要があるのだろうというふうに思っております。これは,この場だけで決定できるものではありませんが,国立大学の運営にも関わる問題でありますので,中長期的にしっかり検討する必要があるのではないか。
 また,内容が実践的ではない,業務に生かせない,ここは先ほどの資料で説明したような,産業界や学生の意見といったものを踏まえたプログラム,また,実務家教員の採用などが必要だということでありますが,国の方としても,今,予算事業でいわゆる実務家教員の育成のプログラムであるとか,また,後で説明させていただくリカレント教育に関する予算であるとか,こういったものをしっかり活用しながら好事例を創出し,また,それを周知徹底していくということが必要ではないかということでございます。
 2枚目の方については,緑色,赤色については,先ほど1枚目で説明したものと同じでございますけれども,職場での理解が得られない,ロールモデルがない,大学院でどのようなプログラムがあるか分からない,このような課題は先ほどのプレゼンテーションでも挙げていただいたわけでございます。特に,先ほどのプレゼンテーションでも話がありました,求められる取組の例,三つ目でございますが,修了生の追跡調査というものを含めて,どのような学修成果が上がったのかといったような,今,学部の方では,学修成果の可視化という議論,教学マネジメントの観点で議論がされておりますけれども,大学院についても,このような部分というのはしっかりと行っていく必要があるのではないかということでございます。また,抽象的に書いてございますが,一般から理解の得られる学修量の確保ということでございます。職場を離れて大学院に行く,これは,パートタイムで行かれるケースもあれば,フルタイムで行かれるケースもあるわけでございますけれども,大学院に修士の学位を1年で取りにいく,2年で取りにいく,いろんなパターンがあるわけでございます。そのような中で,大学院の学事歴というものは一般的に35週の中で,前期15週,後期15週,こういったパターンが多いわけでありまして,1年間52週というものをしっかりどのような形で使っていくのかというところも含めて,しっかり理解が得られないとなかなか派遣というところにはつながっていかないのではないかというのが,中で議論したときに少し出てまいりましたので,書かせていただいているところでございます。
 また,教員の負担増加・確保,実務家教員も含めた実践的な内容を教育できる教員がいない,実務家教員の教育能力の向上,このようなところも取組の例を挙げさせていただいてございます。実務家教員の教育能力の向上については,先ほど申し上げた国としての予算事業なども用意して,今,取組を進めているわけでありますが,1ポツ目,FD・SDの強化という部分はしっかり進めていく必要があるのだろうと。現在,中教審の大学分科会に教学マネジメント特別委員会というものが設けられておりまして,そこでFD・SDについても議論をしております。実務家の方につきましては,一回お話をするというところについては,非常に学生が興味を持つような,すばらしいお話をしていただけると。一方で,これを体系化して15回ないし30回の講義というものにしていくというところには少し段差があるということが,よく指摘されているわけでございます。そのような観点から,教学マネジメント特別委員会の現在の議論では,実務家の先生というものを大学が採用された段階で,大学教員として必要な事項,いわゆるシラバスの書き方から,成績評価から,また,大学というコミュニティに属する上で必要な知識というものをしっかりとFDということを行う必要があるのではないかと,このような指摘が挙がっているわけでございます。大学院のリカレント教育という観点からも重要な視点であると思いますので,御紹介をさせていただきました。
 資料3-3,全部御説明いたしませんでしたけれども,そのようなことも含めて,主に国の仕組みとしては,少し短期的に,また,中長期的に考えていくものを御紹介させていただきました。
 資料3-4は,データ集でございます。
 私の説明は,以上でございます。ありがとうございました。

【有信部会長】
 ありがとうございました。
 これから議論に移りたいと思いますが,今の事務局の説明とか,乾さんのお話とかを考えると,そもそも大学院って一体何だろうというところから考えなきゃいけない,こういうところまで来ちゃっているかなという気もするのですが,まず,御質問,御意見ありましたら,どなたからでも結構ですので,よろしく。
 それじゃあ,田中委員,高橋委員,その順でよろしく。

【田中委員】
 今,部会長がおっしゃったことと関係するのですけど,リカレント教育というふうに言っているのですが,そうなるとマーケットの規模がどのぐらいなのかというのを少し想定してもらう必要があるのかなあという感じがします。さっき,勉強したいという人は10%ぐらいだというお話を伺ったわけですけれども,ただ,それに加えて,その中で学位を取りたいなんて思っている人はほとんどいないのだというお話でした。そうすると日本全体で,年間,リカレント教育で大学院が期待されているのは何人ぐらいいるのか。その何人ぐらいも,どの分野で何人ぐらいいるのかというのを文科省の方でも少し推計でもしていただけると,大学としてそこに投資するのかという話になるかなあというふうに思います。
 それで,乾さんに質問です。さきほど,学位を取ることにほとんど関心を持ってないという話がありましたが,その背景には,日本というのは世界のほかの国と比べて学位プレミアムが著しく低い,学位を取っても給料は上がらないという話がある。ただ,これを,ビジネスの方の,とりわけ偉い人に聞くと,いや,そんなことはないという。日本の企業も今や学位を重視しているのだというふうにおっしゃる場合が結構多い。乾さんが会われた人で,会社から,おまえ,修士取ったほうがいいよとか,博士取ったほうがいいよとかというふうに慫慂された例というのはあるのでしょうか。

【乾リクルート進学研究主任研究員】
 ある,ないかで言うと,非常に多くございます。経営者御自身が大学院に行かれた場合,例えば,先日,著書を発行された岡山のアパレル系の会社の社長さんがいらっしゃいますけれども,その方の場合でいくと,御自分が岡山から京都まで経営管理の大学院に通われて,さすがにそれは有効だなあというふうに有効性を感じて,社員の方々とかマネジャー層の方には必ず受けるように案内をしている,こういうケースというのは非常に多いのですね。中規模,スタートアップの企業で言うと,非常にたくさんございます。ただ,群としてどれだけ出会えるかというところでいくと,そこは余り多くはない。なので,どれぐらいの規模を想定してお話をするかによって,そこは大きく変わってくるなというところでございます。例えば,実際,こういう場面で取材対象者を選んでいただいて,その中でということでいくと,そういう方々には余り出会いません。なぜかというと,御自分の中で意識をして学び始めた方々の方が基本的には今は多数派になっているからというのが実態ですね。例えば,こちらでいくと,100人いらっしゃったら,会社からそのように指示されて,あるいは勧められてという方々は,公共政策系のところで自治体の職員の方々とか,あるいは教職大学院で先生方とか,そういったケースが中心で,大体,100人の中の10人程度と,そういうような割合です。これも分野によってかなり変わってくるかなあと。こんな答えでよろしいでしょうか。
 あともう一つは,先ほどのマーケットの規模のところというのは,私どももこういう商売をしていく上ではかなり,そこは先があるのか,経営側にいかにこの事業を有望に見せるかということで何度か調べていったのですけれども,問題の定義次第,大学院というのはどこの方々までをターゲットにするのかという定義次第でマーケットの規模感が大きく変わります。全ての学習というところでいくと,公開講座系のものも含めて,今ある大学院のリソースを全て享受してもらえるカスタマーは全てターゲットだというふうに考えていくと,マーケット規模というのは本当に1,000万人単位になっていきますから。ただ,学位プログラムのみを対象にするということでいくと,現時点では非常に少ない,数万人レベルですね。何を大学院がリカレントとして提供していくことを理想とするかによって,マーケットの規模感というのは本当に大きく変わってくるかなあと。どちらの議論が先かというと,そちら側の議論があってのことかなというふうに,現場からは感じます。我々の方で言うと,商売として大きく見せるためには,1,000万ですというふうに言っております。大学院で学ぶ日本人が1,000万人になるためにというところが,商売人としてのお答えでございます。言い過ぎかもしれませんが。

【有信部会長】
 現状,毎年,修士課程に進学する学生数が8万人弱ですね。7万数千人。博士課程が1万4,000人ぐらいで,そのうちの4割程度が社会人ということになっているので,規模感1,000万からすると,1,000万のポテンシャルがあるとすると十分やれると。
 それはちょっと冗談ですが,じゃあ,高橋委員,どうぞ。

【高橋(真)委員】
 ありがとうございます。僣越ながら田中先生とほぼ同じ問題意識だったのでもう少し伺いたいと思います。主に乾様に,です。
 多分,年代ごとに大学に対する距離感は全然違うと思います。現在の50歳代だと2割ぐらいだと思いますけれども,20代だと多くの人が大学に行っている。大学に再度通うことについて,年代毎の感触の相違をもしお持ちであれば教えていただきたいというのが1点目。
 同じように,清水先生のお話にもあったのですけれども,勤務をしながら大学院に来る方たちの業界構造というのを見ると,清水先生の1年で修了なさった方たちの所属機関というのは我々には土地勘のある業界なので,むしろ,大くくりに乾様的な観点からして,業界ごとに大学院の教育若しくは研究に対する期待値というのは結構違うんじゃないかと思うのですが,そこら辺を見ていらっしゃったら,教えていただきたい。特に,IoTとか,サイバーとかっていうのは,今,世の中ですごく重要なのに,大学では,科目としてはあっても,専攻レベルでり打ち出せてないというところは多分ギャップがあると思うので,そこら辺について教えてください。

【有信部会長】
 それじゃあ,最初に乾さんからお願いします。

【乾リクルート進学研究主任研究員】
 まず,1点目,年齢別のところですが,何が一番参考になるかというところで,これも商売上の実感値ですけれども,大学院の本の読者層が恐らく今おっしゃったところに一番近いのかなあと。中心になるのは30代です。こちらの大学院の検討というところでいくと,30代と40代を合わせて大体6割から7割で,その後が20代と50代というところで占められております。こちらについて言うと,若年層の方々で言うと,若年層というか,30代ぐらいの方々で言うと,この先,あと20年,30年働いていく中で,特に海外との接点を持つ方々であれば,ほぼ確実に商売相手の方々が修士以上の方々ですので,そういったところの問題意識で学位も含めて取りにいっているというところがございます。
 2点目,IoTも含めてのところですけれども,こちらでいくと,周知徹底というのはされていない状況なのですが,ただ,実際に学びに行かれている方々でいくと,そういう探し方をしてはいないなあというのが実感でございまして,例えば,データサイエンスの分野での何らかのセミナーやフォーラムに参加した中で,どこで学べるのかというのをたどっていくような方々。あるいは,それこそ先生方の名前で検索をかけたりとか,ツイッターやフェイスブックをフォローして,そこからどこで学べるのかというところを発見されている方々とか,特に,データサイエンスという言葉一つであったりとか,AIも含めてですけれども,言葉によって意味されているものというのがかなり広範囲にわたり,業界によって同じ言葉に対する捉え方が違ってくるような内容については,今みたいな,地をはうようなリサーチをされていらっしゃるなあというふうに感じております。本当に実感値ベースのお答えで恐縮ですけれども,これでお答えになりますでしょうか。

【有信部会長】
 じゃあ,清水先生。

【清水筑波大学副学長】
 業界ということプラス国際性であることとか,あと,業界の中でも例えばスポーツ・健康なんていうところは筑波にしかないということがあるわけですね。しかも,その中で国際的な知見を得たいという目的・背景を持って来る。あるいは,国際的なMBAをそこで学び,そして取りたいという方は,やはり学位に興味を持っていることもあるわけですね。そういう意味で,ただ単に経営であるとか,ただ単にスポーツであるとかということよりも,そこでどういう学びをしたいかというのを含めて選んできているように思います。それから,生涯発達専攻などでは,カウンセリングコースにしても,リハビリテーションコースにしても,今,非常に多く需要があるというふうに考えられますので,今後もこういった生涯発達のところは魅力のある分野ではないかなというふうに考えています。
 IoTの方ですけれども,つくばのキャンパスの方にシステム情報の専攻があって,そこでいろいろな授業を受けられることにはなりますが,先ほどお話ししましたように,もう少し,何をどういうふうにやっているかというのを広報するということは非常に重要だと思います。先ほどの御質問にもありましたように,早期履修で年間50名いるわけですけれども,その半数は紹介なんですね。紹介のうちのまた半数は,企業で,こういうのがあるから,君,受けにいってごらんというような形になっています。だから,そういう中で考えていくと,広報しつつ,紹介だけではなくて,ホームページ等で,この学位プログラムに入れば,何をどういうふうに学べて,どういう資格が取れて,どういう能力が身に付くのかというのをもう少し明確にする必要があります。早期履修であれば,こういうようなネットワークに入れますよというところを明確にすることは非常に重要だと思います。特に,PhDなんか取った後,国際的な場で活躍できる人材として期待されるということで,会社に戻れば,それなりに能力の高いことが認められて,いいポジションに就くとか,君は国際的な舞台に出ていくようにしなさいと言われるとか,即応性はないかもしれませんが,長期間いろいろ考えていくうちに,インセンティブが発生したり,会社の中で好きな仕事ができるようになったりということはあるというふうに考えております。

【有信部会長】
 ありがとうございました。
 じゃあ,濱中委員,どうぞ。

【濱中委員】
 ありがとうございます。私もマーケットという視点からの質問で,主に乾様にお伺いしたいのですが,頂いた資料の20ページ目,学ぶ手段としての「大学院が3%」という数値についてです。この数値を用いて「まだまだマーケットが広く存在している」というお話で,私自身,だいたいこの手の調査で示されるこうした数値を「小さいな」と思ってみていました。ただ考えてみると,大学院にリカレントで行くという発想を持つ人というのは,基本的に大学を出た人だと思うのです。制度的には高卒でも認められれば大学院に進学することはできるのですけれども,それでも,そういう発想を持つのは基本的に大卒だと思います。そして先ほど,30代,40代の方が主なターゲットという話も出ていましたが,30代,40代の人たちの大学進学率というのは,男子か女子かによって大きく違いますが,3割前後という表現もできるかと思います。女子だともっと低いです。そう考えると,大卒が3割のなかで3%の人が,大学院での学びを選んでいるということになり,この数字の意味を捉え直す必要があるのではないかなと。例えば,「個人やサークルによる勉強会・読書会・講習会」というのが12%,要は全体の1割がこうした学びをしているということになりますが,だとすれば母数が3割にもかかわらず3%という数値が出ているというのは,社会人大学院への注目度も捨てたものではないのではないか。こうした見方についてどう思われるか,教えていただきたいのが,まず1点目です。
 もう1点ございまして,先ほど文科の資料にもありました「ロールモデル」についてです。先日,リクルートワークス研究所の大久保さんと石原さんが書かれた『女性が活躍する会社』という本があったと思うのですが,そこで,女性活躍のためには「ロールモデル」ではなく,そして「メンター」でもなく,「スポンサー」が大事だと書かれていたと記憶しています。「君だったらできる」「やってごらん」と後押ししてくれる人の存在が大事だということです。先ほど筑波の清水副学長先生も,職場の紹介とか,君だったらこれをやった方がいいんじゃないかとか,そういうお話がございましたけれども,まだケースが少ない活躍や学びを発展させるためには,「ロールモデル」に注目してもあまり効果はなく,結局は企業のそれなりの役職の人たちに大学院を理解してもらい,そこで学んでごらんよと部下に言ってもらわないと事態は進展しないような気がします。この考え方が果たしてどれぐらい現場から見て妥当なのか,その感触を教えていただきたいのですが。

【有信部会長】
 それじゃあ,よろしく。

【乾リクルート進学研究主任研究員】
 まず,1点目,3%をどう捉えるか。3%の答え,こちらは大学と大学院両方です。高卒の方々,大卒の方々,合わせての数字ですので,先ほどのお話でいくと,恐らくそういう意味では決して高くないと思います。あともう一つは,学位課程のみを対象にしているわけではございません。こちらは大学・大学院の公開講座まで含まれての数字ですので,そういう意味で言うと,自分の関心があるテーマのある方々,例えば,50代,60代の方々が公開講座に来るケースなど,高卒あるいは中卒の方々が例えば大学が提供されている『万葉集』の講座に来られるケースも含まれての3%です。今の中でいくと,大学・大学院,先ほどのお答えと関連性あるのですけれども,何を提供価値とするか。学位を提供価値にするのであれば3%は非常に大きな数字かもしれませんが,提供価値は学位に限らないので,そういう意味ではまだまだ,ほかの教育機関から奪い取るチャンスは大きいんじゃなかろうかと思います。
 2点目,ロールモデルと「偉い人」の話ですけれども,これは結局,鶏と卵だなあというふうに思います。ロールモデルと言うと,大学院では,ちょっと女性管理職とは違う状況がございまして,身近にいないのです。社会人大学院に通っている方々というのは,偏在をしている。大学院進学者の存在するコミュニティ,存在しないコミュニティが,パキッと分かれます。フェイスブックの友人関係の中で,大学院進学者のいる方々と,ゼロの方々がいます。例えば,フェイスブックだったからいるかもしれないけれども,LINEのグループにはいないよとか,そういうケースも出てきます。
 もちろん偉い人に理解していただかないといけないのは必須です。正直,50代,60代の偉い方々というのは,外で学習するということに余り価値を見いだしていない方も,特に現場のマネジャー層に多々いらっしゃるので,そこがいわばガンになっているというところはあると思います。その方々に学びの楽しみを理解していただく,をだまくらかしでもそれができないかというところが,私の問題意識でございます。
 すみません,言葉が悪くなってしまいました。

【有信部会長】
 どうもありがとうございました。
 要するに,何をやるかという話と,いかに進めるかという話と,両方の観点があって,コンテンツの部分について言うと,いろいろ問題がある。それぞれの大学の個性・特徴によるものですけれども,いかにやるべきかという点については,今,事務局からの資料等々にもありましたし,国は何ができるか,国はどういうサポートができるかというのも,恐らくそこの部分が大半になると思いますので,質問も議論も含めて,そろそろその辺の意見も是非含めていただければと思います。
 じゃあ,村田委員,大島委員,川端さん,迫田さん,その順番で,よろしくお願いします。

【村田副部会長】
 ありがとうございました。まず初めに,田中委員が先ほどおっしゃいました,賃金のプレミアムがないということですが,よく皆さんおっしゃるのですが,それは恐らく,新卒のときや初職に入るときに,大学院卒と学部卒は初任給が同じであるという,この事実に基づいてそういう誤解が生じていると思うのです。ここは大学院部会で,この議論は極めて重要ですので,事実に基づいて議論をということで,少しだけお話しします。
 前にも一度お話ししたと思うのですが,2007年に就業構造基本統計調査の中で,それまでは大学・大学院卒というデータしかなかったものが,大学卒,大学院卒と,賃金のデータが分かれました。そのデータを使って,2010年から経済学の分野で,特に教育経済学の分野で,大学院の賃金プレミアムの測定が,実証分析が大体10本ぐらい出ていると思うのですが,実は私も後輩と論文を書いています。その中で,平均で大体30%ぐらいの賃金プレミアムが大学院卒にはある。我われの研究で言うと,大体25.9%。しかも,職種のよって,かなり違います。これは冗談で言いますが,大学院プレミアムがほとんどない職種は公務員でございます。文科省の役人さんには全く賃金プレミアムがありません。なぜかといえば,それは完全に年功序列賃金で決まっているからなんですね。平均的に見ると,大体27~28から30%,多いところで40%と出ていますので,まず,そこの認識はちゃんと我々持っておかないと間違った議論になっちゃいますから,それだけは認識しておきたいなというふうに思います。
 もう1点は,この大学院部会が今年始まったときに,大学院の定員管理についても少し議論をということがあったかと思います。これまでは学部の定員がいろいろ議論されてきましたけれども,大学院の定員に関しては全く議論をされてこなかった。しかしながら,きょう資料3-3のところで幾つかの検討課題が出てきておりまして,例えば,いわゆる短期のコースをどうするのだ,あるいは履修単位ごとの授業料を取るというような話が出てきた場合に,学部の学生ではこういうことはあり得ないわけですけれども,大学院の学生では,学位までは要らないわけですから,極めて短いコースで大学院の学びをしたいというときに,その在学生をどう扱っていくのか。あるいは,1年のコースを作るとかいうとき,どう扱っていくのかという,学生定員をどうするかという議論が今後必ず出てくると思いますので,その辺もきっちりと,今後,課題として挙げていかないと,トータルで考えていかないといけないのかなと,そんな気がしておりますので,発言させていただきました。
 以上です。

【有信部会長】
 ありがとうございました。
 じゃあ,大島委員,どうぞ。

【大島委員】
 ありがとうございます。有信部会長がおっしゃられていたように,誰を対象にするのかというのと,何をするのかということで,学位を取るためのリカレント教育なのか,学びをするためのリカレント教育なのかというのを,議論を分けた方がいいのかなあというふうに思いました。
 前者の学位に関してなんですけれども,これは,今まで出てきたように,業種によって多分違うと思うんですね。例えば,工学系の製造業ですと比較的,会社が大学院の方に社会人ドクターとしてとかで勧めるというケースがあるのですね。なので,後で結構ですけど,清水先生に,例えば受講されていた方で,そういう会社からのサポートがあったのかとか,そういうのもちょっと教えていただけたらなあというふうに思っています。なので,業種によって,どういう形で学位に対してサポートしたりとか,先ほどのコミュニティとしてバックアップしたりというのは大切だと思うので,多分,それも業種によってすごく違うと思うのですね。なので,それを整理することによって,バックアップが会社からないところをどうしたらいいかというのを考えていく必要があるのかなあというふうに思っています。
 あと,後者の教育プログラムとして学びのリカレント教育をどうするかというのは,乾さんの資料の11ページに,継続的に学び続けてきた人ということで,スパイラル状に行っているという人がいると思うのですけれども,多分,二極分解するということで,こういう方々を対象にして学びを更に促進して,そういう学びとして非常に主体性がある方が学位の方に行くという,そういう道を付けていくって,すごく大事だと思うのですね。そのときに,学費の話が出ていたと思うんですね。一方で,今,世界的に,アメリカとか,イギリスも含めてヨーロッパとか,大学院及び高等教育の学費というのはどんどん上がっているのですね。なので,例えば,MITとかは,すごいお金を払ってエグゼクティブプログラムとして会社とかへ派遣していたりするというのが一方であるんですね。なので,学費というものがどこまでネックになっているかというのは,一方で非常に高いお金を払ってそういうプログラムに行くという人もいれば,ここでおっしゃっているのは,もうちょっと手軽に行けるというようなことを考えていらっしゃるのかなあと思っているのですね。そのときのいわゆる学費というのは大体どれぐらいを想定しているのかなということですね。
 ちょっと私ごとで非常に恐縮なんですけれども,私,アメリカに留学していたときに,例えばサマープログラムで,1単位で単位が取れたりとかするんですね。なので,大学で今後,文科省の方の御説明で,そういうところを柔軟に対応できて,あと,単位の互換もできるようになるということになっていたのですけれども,自分の大学もそうなのですが,自分の大学以外で行けるとかいうふうに,それを夏の間に取ったりという,フルメニュー,フルコースじゃなくて,アラカルトというのもあってもいいのかなあというふうに思ったんですね。例えば,私がポスドクでスタンフォードに行ったときにも,ユニバーシティ・カリフォルニア・エクステンションというのがあるので,例えば,そこのエクステンションでプレゼンテーションスキルを学ぶとか,コミュニケーションスキルをアップするとか,そういうメニューというのもあって,コースもあって,それを例えば夕方とるとかいうこともできたのですね。なので,もう少し大学側でもそういうふうな工夫をすることによって門戸を開けるんじゃないかなあということで,中長期的にそういうことも検討していただけるということなので,そういうフレキシビリティーとして,学位プログラムだけではない,学びとしてのリカレント教育というのも少し考えてもいいんじゃないかなあというふうに思いました。
 以上です。

【有信部会長】
 今の話の中で一つ,これから先,問題になるかもしれないのは,知識の価値をどう測るかという話で,例えば,授業料が高額だったり,エグゼクティブプログラムで高額の授業料を取ったりという話が一方である中で,リカレント教育をより活発にしなきゃいけないというところで経済的なサポートをやるといったときに,ある意味で知識そのものの価値をどういうふうに考えていくのかということは,少し頭に入れておいた方がいいかもしれないですね。
 それでは,清水先生,何か,今のことに関して。

【清水筑波大学副学長】
 アンケートは,職種で明確な傾向を示すのはなかなか難しいのですが,給与面というところでは反映されているところがある。それから,学位取得に対して一時金が出たという企業も,中にはあります。そういう面では,給与であるとか,インセンティブを出しているところがあるということは確かであります。それから,役割として責任ある仕事ができるようなる。君,やりなさいと。それから,国際的な場でいろいろな発表をするときに自信が持てるであるとか,国際的な関係を持つ上でPh.Dを持つということが非常に有効になるので,会社からそういう職のところへ起用されるようになる,海外への留学を勧められるというような,博士の学位を取った後,役職の部分で有利な点が出てくる。それから,何より個人の中で,自分がこういうような学位を取得したことによって,いろいろなところのプレゼンであるとか,外へ出ていったときに,自信を持っていろいろできるようになったり,新しいことにチャレンジするような気持ちを持つことができたりというような,そういうようなアンケートの結果というのはございます。職種毎の違いなどについては,申し訳ございませんが,なかなか難しいと思います。

【有信部会長】
 ありがとうございました。
 それでは,とりあえずこの件に関しては,迫田委員,川端委員で打ち止めということで,迫田委員,どうぞ。

【迫田委員】
 ありがとうございます。まず,全ての企業がというわけではないですけど,例えば,研究者がドクターを取るとか,あるいは経営者の候補者をMBAに送るとか,そういうのは当然,企業はやっていきたいと思っているし,それは会社負担で進めていると思います。また,インセンティブなんかも考えていると思います。先ほどの議論でもございましたように,多くの場合それは,新しい,高い立場の仕事ができるという形で報われていくという形になっていると思うので,そこは信用していただいていいんじゃないかなというふうに思います。
 あと,もう一つ考えなきゃいけないのは,そうじゃない,自ら自発的に学びたいというところ,ここをどうやって強化していくのかということで,こちらに関しては,先ほどから単位の問題がございましたし,メディアを使ったというところもありますけれども,この辺ももうちょっと進めていった方がいいのではないかなあと。海外の大学はオンラインで取れるようなところも大分出てきていますので,そちらに比べると,今,後れてきているのかなあという実感がございます。
 あともう一つは,宣伝というか,PRの方法のところで,例えば,MBAに限った話でありますけど,海外の主要な大学は,学長さんとか,ディーンとか来るたびに,私のところへも来るんですね。主要な,有名な,トップ10,トップ20の大学は。ほかの大学は余り来られたことがないので,日本の場合は,そこは少しPR不足ではないだろうかというふうに感じております。
 あと,もう一つ大きいのは,EMBAみたいなものをそこでしっかり稼いでというか,そういうことをいろんな海外の大学は多分やられているので,日本でもやられているところはあると思いますが,そこの強化と,それによって何が得られるのかということを経営層がしっかり認識すれば,送り出すというところのインセンティブになるし,あと,海外の大学と比べて,アルムナイというか,そちらの組織化のところが非常に海外の有名MBAは熱心で,しょっちゅうそれをやって,それが一つのコミュニティになって,新しい事業を生み出すだとか,そういうことにつながっていて,いい循環ができているのではないかなあというふうに思うのですね。そういうところも研究しながら,届くアピールの仕方を研究すべきじゃないかなあというふうに感じました。
 以上です。

【有信部会長】
 確かに,日本の大学の学長とか学部長がやって来るということはなかったですね。だから,海外の大学の学長とか学部長とは親しくなるのだけど,日本の大学の学長や学部長とは余り親しくならないかな? これは直接関係ありませんが,だけど,リカレントをやっていくという意味で,もう少し大学サイドとして何かやることも考えなきゃいけないということだろうと思います。
 じゃあ,川端委員,どうぞ。

【川端委員】
 かなり言われているので,短く。単語としてリカレントという単語がおかしいのかなあとずっと思っていて,要するに,前提として,例えばドクターの話をすると,理系だったら社会人も半分ぐらい入ってきて,問題なのは日本人が進学しないことが問題。文系のドクターだったら,大半が社会人と留学生で占められていて,日本の学生はどうするんだと,こういう話になっているところなので,基本的にこれのリクルートの仕方も全然違っている世界。マスターの話になってくると,今度は,先ほど言っていただいたように,定員関係はどうするんだ。がんがん社会人を入れたら,日本人の学生の定員をどういうふうにさばいていくのかと,こういう話になってきて,じゃあ大学はどういうふうにこれをやっていくべきなのかと,こういう話になる。その下の一般人になると,公開講座も,今,私はちょっとやっているのですけど,老人だとか,そういう人たちが大半を占めていて,病気はどうやったら治るんだみたいな話がかなりの部分にニーズがあってと,そういう世界をやっていくという話で,ここで言えば,ある部分では大学院を,マスターだとかをどうするかというところがターゲットになっていくのかなという,整理の仕方としてはそうかなと。
 もう1個,リカレントの話をすると必ず,マスターになって,MBAになって,社会人になって,じゃあ夜間コースを開けるんだと,こういう話になっていくのが一般的な話になってくると,清水先生に是非お聞きしたいのは,夜間を開くとなったら,どれぐらいの教員だとか,そういうマンパワーが必要になるかというのを,具体的にやられているので,昼やっているところに夜間を開くとなると,どれぐらいの人数の人間を用意しなきゃならないかというのを少し教えていただけるとありがたいと思います。

【有信部会長】
 現実的な問題ですけど。

【清水筑波大学副学長】
 30枚目のスライドのところに課程と専攻が書いてございますが,例えば国際経営プロフェッショナルなんかは,専門職課程(学位)で,設置基準により審査,ここは,教員は必ず12名確保せよというふうに言われているところなんですね。あと,一つの専攻を作るには,例えば8名以上,教授は3名以上というような決まりがございます。そういう中で,ある程度は教員をオーバーラップさせながらはできますけれども,専攻として10ないし15人の教員が必要になってくると。しかも,夜6時から9時までやっているとなると,昼夜でそれを連続してなんていうのはなかなかできないわけですよね,今,そんなのは労働基準法で大変なことになりますから。だから,夜だったら夜,主にやる先生がきっちりいていただいて社会人の夜間に対応する教員として採用しているということは,ある部分あります。それから,つくばのキャンパスの方にいて,学士から,マスター,ドクターをしっかり教えて,なおかつ土曜日にやるということもございます。そのあたりは専攻によって違いますけれども,夜間大学院,しかも社会人の対応になると,論文を指導するというのは物すごく大変ですね。ある程度の期間書くことから離れた学生に指導するというのは,メールなんかでの指導,修士論文なんかでも,1行1行,大変な作業になるわけです。これをやりながら進めていくことで,同窓会組織なんかは非常に親密になります。
 ちなみに,ビジネス科学研究科において,全専攻の入学定員数(149名)に対して,教員は82という数です。収容定員ですと2ないし3倍いますけれども,ビジネス科学研究科の中では82人の教員で,社会人の大学院夜間に対応してもらっているというのが現状でございます。

【有信部会長】
 要するに,様々なニーズだとかデマンドに応える体制も結構大変なので。
 すみません,まだまだ議論を進めたいところもあるのですが,時間の関係でこの議論はここまでにしたいと思いますが,事務局の方では,今までの発言の中で幾つか重要な問題を御指摘されましたので,資料3-3のところに取り組むべき内容について整理がされていますけれども,これを更にブラッシュアップして,その後,具体的に国としてできるような方策についての議論に続けていければというふうに思いますので,よろしくお願いします。
 それでは,次の議題で,時間も余り無くなってしまいましたが,令和2年度の予算概算要求等について,事務局から説明をお願いします。

【中田大学院振興専門官】
 時間も無くなってきておりますので,資料の紹介という形で,御報告させていただければと思います。
 まず,資料4-1は,高等教育局主要事項ということで,来年の概算要求の主要事項をまとめたものでございます。
 それから,資料4-2の方は,大学院関係の事業ということで,1枚目が卓越大学院プログラム,2枚目が,新規事業でございますけれども,人文・社会科学系大学院リカレント機能高度化プログラムということで,新規で3億円程度要求しているということです。済みません,戻りまして,卓越大学院プログラムの方ですけれども,来年度は3年目の新規採択分があるということで,増額の要求を打って,145億円という形になっております。
 それから,もう1点,報告でございます。資料4-3を御覧ください。こちらの方は,8月9日に今年度の卓越大学院プログラムの新規採択分が決定しましたので,御紹介しているものでございます。44件の申請がございまして,9大学11件の採択という形になっております。
 以上でございます。

【有信部会長】
 どうもありがとうございました。これに関しては,特に何か聞きたいことがあれば。
 いいですかね。それでは,本日の議題はこれで全て終了ということですが,事務局から何か。

【平野大学改革推進室長】
 本日は,本当に活発な御議論を頂きまして,ありがとうございました。今日の議論の中でいろいろ論点が出たものを1個1個進めてまいりたいと思いますが,追加で御意見等ございましたら,事務局の方までメールでお寄せいただければ大変助かるなと思ってございます。よろしくお願いします。
 次回の開催につきましては,11月26日14時を今のところは予定してございます。詳細はまた,追って御連絡をさせていただきます。資料の郵送を希望する先生は,付箋に「郵送希望」と書いていただければ,勤務先の方に送らせていただきます。
 ありがとうございました。

【有信部会長】
 奇跡的に,予定の時間で終わることができました。皆さん,御協力,どうもありがとうございました。
 それでは,本日の会は,これで閉会とします。ありがとうございました。

 

── 了 ──

 

※第96回大学院部会は11月26日に開催予定でしたが、延期となりました。
 詳細につきましては、後日改めてお知らせいたします。

 

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