大学院部会(第93回) 議事録

1.日時

令和元年6月5日(水曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省旧庁舎6階 第2講堂

3.議題

  1. 大学院部会の今後の議論の方向性について
  2. 第3次大学院教育振興施策要綱のフォローアップについて
  3. 科学技術・学術政策研究所の調査結果等について(科学技術の状況に係る総合的意識調査(NISTEP定点調査2018)及び博士人材データベース(JGRAD)の取組について)
  4. 今後の就活の在り方について
  5. その他

4.出席者

委員

(部会長)  有信睦弘部会長
(副部会長) 村田治副部会長
(臨時委員) 池尾恭一、大島まり、加納敏行、川端和重、神成文彦、小長谷有紀、佐久間淳一、迫田雷蔵、菅裕明、髙橋修一郎、高橋真木子、田中明彦、濱中淳子、堀切川一男、三島良直、湊長博、宮浦千里の各委員

文部科学省

(事務局)生川大臣官房長、伯井高等教育局長、平野大臣官房審議官(総合教育政策局担当)、玉上大臣官房審議官(高等教育局及び高大接続担当)、森大臣官房審議官(高等教育局及び科学技術政策連携担当)、増子大臣官房審議官(研究振興局及び高等教育政策連携担当)、浅田文部科学戦略官、岩本文部科学戦略官、角田科学技術・学術総括官、蝦名高等教育企画課長 他

5.議事録

【有信部会長】
 おはようございます。それでは,所定の時刻になりましたので,第93回の大学院部会を開催させていただきます。
 なお,塚本委員,沼上委員,波多野委員,福留委員が本日欠席と伺っております。
 それでは,事務局から配付資料の説明をお願いします。

【平野大学改革推進室長】
 失礼いたします。机上の議事次第のとおりでございます。資料1-1から資料4-2,参考資料1,2及び机上資料が8種類ございます。机上資料はタブレットに入っております。抜けている資料があります場合には,事務局までお声掛けをお願いいたします。

【有信部会長】
 それでは,そのようにお願いします。
 本日の御議論いただく流れですが,まず第1に議題(1)として大学院部会の今後の議論の方向性について,前回御議論いただいた内容を振り返って,また前回御意見を伺えなかった委員から御意見を伺って議論を進めたいと思います。それから議題(2)として第3次大学院教育振興施策要綱のフォローアップについて,要旨を説明した上で委員の皆様方から御意見を伺いたいと思っています。その後,科学技術・学術政策研究所から最近の調査結果等について,また日本経済団体連合会から,採用と大学教育の未来に関する産学協議会における中間取りまとめ等について御説明いただいて,議論していただく予定にしております。
 それでは,議事に入りたいと思いますが,議題(1)として大学院部会の今後の議論の方向性ということで進めたいと思います。まずは前回の主な御意見について,事務局から説明をお願いします。

【平野大学改革推進室長】
 失礼いたします。
 資料1-1というものが前回お配りした資料でございますけれども,第10期大学院部会で議論いただく事項の例ということでございます。前回はこれを踏まえまして御議論いただいたわけでございます。資料1-2をごらんください。こちらは資料1-1の柱立てに沿って前回頂いた御意見を事務局の方で整理させていただいたものでございます。要点について御説明申し上げます。

 1番目の【大学院における各課程で共通に育成すべき能力の明確化】という点でございます。
 一つ目の丸,社会がどのような人材を大学院から欲しているかということについて対話が必要ではないか。
 二つ目,同様でございますが,企業側と大学側でのすり合わせ,議論ができていないのではないか。
 三つ目,特に理工系,理系については産業界がどのような人材,修士レベルでいいのか,それとも俯瞰力のある博士課程修了者を欲しいのか,このような分布というものもしっかりと把握していく必要があるのではないかということでございます。

 2番目,【全国の大学院が有する人材,知,高度な情報インフラ等や,これまでの大学院改革に係るこれまでの施策の成果等を有効活用するための方策】でございます。
 そのうちの一つ目の丸でございます。やはりこれまでの取組の成果というものもそうなんでございますけれども,諸外国の博士修了者の能力と処遇についてデータをとって示すということで,博士進学者を増やさないと日本は世界と戦っていけないということをデータをもって示すということが重要であるということ。
 二つ目は,単に問題点を挙げるということのみならず,個別に頑張っているようなプラスの事例というものをしっかり集めて,強みを示していくべきであるということ。
 1ページ目の一番下の丸,博士離れ対策の実質化という観点から,リーディング,卓越などの成果の展開をどのように進めるかということを具体的に考えていく必要があるということでございます。

 2ページをごらんください。【学位授与の在り方について】でございます。
 学位授与の在り方については,修士課程2年間というものをどのようにデザインしていくのか,また修士卒の人間に対するリカレントというものをどのように考えていくのか,このようなことについて議論すべきであるという御意見でございました。
 【経済的支援の在り方について】も引き続き重要な論点とされております。

 【博士課程修了者の処遇の改善について】でございます。
 一つ目の丸でございます。採用後の成長率や収益率が学部よりも修士の方が高いと,一方で企業側ではそのことが自覚されていない,どこにその原因があるのかということを明らかにする必要があるのではないかと。
 二つ目は,外資系のネット大手の企業では経済学の博士を採用しているというような話もある中で,どのような部門のどのような職種で活躍しているのか,このようなことについて調べると企業の変化が見えてくるのではないか。
 処遇の改善の三つ目でございます。そもそも大学院で学ぶということ自体が何なのかということが一般的には企業に知られていないのではないかと。大学院教育がどのようなことをやっているかということを企業に普及させていく方策も重要ではないかということでございます。
 2ページ目の一番下の丸でございます。博士というものをどこに輩出していくのかという際には,我が国社会だけではなく,グローバル社会というものをその売り先として考えていくべきであると。その観点から海外の博士人材採用企業等の採用基準や方法について調査して,各大学で共有していくということが重要ではないかという御指摘がございました。

 3ページでございます。リカレントの部分の再掲ですので飛ばさせていただいて,【人文・社会科学系大学院の在り方について】でございます。
 一つ目の丸,人社系の観点からも博士前期課程というものをどのように位置付けていくのかということが非常に重要なので,審議まとめの内容をしっかり取り組むべきであるということ。
 二つ目,人社系については,例えば学部の飛び級,早期卒業などかと思いますけれども,それらを利用したような5年制というものを活性化するような方策が考えられるのではないか。実務家教員やインターンシップ等のことが高度な専門職を社会に送り込むという観点では重要ではないかということ。
 三つ目,自然科学系は博士にどのように進学させるか,社会科学系は修士にどのように進学させるかという別の課題があるので,分けて考える必要があるのではないかと。特に社会科学系はマッチングの観点が重要であるということ,研究者養成だけでは大学院の学生は増えないという御指摘がありました。

 3ページ目の下の括弧,【大学院全体の課程の在り方について】でございます。
 一つ目,実務家教員については,大学に移籍する場合には研究発信能力をしっかり高めるということ,また実務家の仕事と教育職を頻繁に入れ替えるような仕組みというのが求められてくるのではないか。
 二つ目,大学院の経営という観点から,本当に全ての大学院が今のまま維持していくことができるのだろうかということ。
 三つ目,大学院というと研究を頭に置いている先生が多いということでありますが,中央教育審議会で議論しているような教育のシステムを変えなければいけないという議論がなかなか理系の先生には理解されにくいという現状の御指摘がございました。
 下から二つ目の丸でございます。学部の学生が,大学院に進学して「知のプロフェッショナル」になるために努力するかどうかと。いきなり大学院で目覚めるということではなくて,学部からの連続性というものをしっかり考えていくことが重要ではないかということでございます。
 一番下でございます。大学側,産業界でしっかり情報を共有していく必要があると。その観点から審議まとめに記載の各課程ごとに求められるような取組,いろいろと産業界との連携などのことが触れられておりますけれども,重要ではないかということでございます。

 最後のページでございます。
 二つ目の丸でございます。米国の例でございます。専門の設定が広い,コースワークが体系化されている,汎用的な能力というものを専門の教育を深める中で身に付けていると。大学院としてはその専門教育,専門の中で能力を,汎用的なものも含めてしっかり身に付けていくという視点が重要ではないかという御指摘でございます。
 下から三つ目の丸でございます。日本の博士離れというのは危機であると。アカデミアがもっと優秀な博士後期課程進学者のリクルートをあらゆる手段を講じてやるべきであると。この10期でもこのテーマはど真ん中に据える必要があると。これは会議終了後にメールで頂いた意見でございます。

 最後,【その他】ということでございます。
 大学院のカリキュラムというのがよくなってきているけれども,修士学生の就活の時期が問題ではないかと。例えば学位審査を修士2年の12月までに終わらせて,1~3月で就活を行うようにすべきではないか,このような御意見がありました。
 最後でございます。研究成果も大切であるが,教育に一生懸命取り組んでいる教員が正当に評価されるということが必要であると,このような御意見を前回,頂いたところでございます。

【有信部会長】
 どうもありがとうございました。重要な点を種々指摘されていますので,今後の議論の中で方向付けをしていければと思っています。
 それでは,前回欠席された加納委員,小長谷委員,小西委員,髙橋修一郎委員,高橋真木子委員,湊委員,宮浦委員,それから,前回時間がなくて無理やり発言をやめてもらったんですけれども川端委員,各委員にそれぞれ御意見を伺いたいと思います。申し訳ありませんが,1人3分以内程度でお願いできればと思っています。どなたからでも結構ですので,どうぞ。
 では,加納委員,どうぞ。

【加納委員】
 座ったままで失礼いたします。NECの加納でございます。よろしくお願いいたします。
 私も企業としての採用に長年携わらせていただいてきたわけでございますけれども,やはり大学院卒学生への期待というのは非常に高いものであると痛感しております。ただ漠然と知識が広い,能力があるということだけではなくて,私どもは二つの学生に対する期待といったものを持っております。一つは,コンピュータに例えると申し訳ないんですけれども例えますと,オペレーティングシステムとハードウェア,つまりどれだけのドライバを持っていて,どれだけのツールを使いこなせるか,どれだけのインターフェースを持っているかというところがまず一つあると思います。これは大学の教育として非常に重要なことでして,ただこれがこの上に載せるアプリケーション,つまり大学教育においては,前回神成先生からの御発言にもありましたように研究というものを通していろいろなものを教育していっているというのが現状だと思います。ただ問題は,博士課程を卒業してこられた方の中にも,アプリケーションはしっかりと研究されているんだけれども,実はオペレーティングシステムが全然できていないなというような学生さんも非常に多い状況です。この二つの能力のバランスというのを大学院教育の中でどのようにとっていくかというところが,私の一番今考えている課題ではないかと考えております。
 以上です。よろしくお願いいたします。

【有信部会長】
 ありがとうございました。専門用語がどれぐらい理解されたか分かりませんが,あとハードウェアの出来,不出来もどうなんだろうなということもありますよね。どうもありがとうございます。
 ほかに。では,小長谷委員。

【小長谷委員】
 ありがとうございます。
 大学院に気持ちよく若者が進んでいただくために一番大事なのは卒業後のビジョンを示すことだということは,皆さんよく分かっていらっしゃって,それには三つの方法があると思います。一つはキャリアパスを示すこと。しかしこれは可能性を示すものにすぎません。そういう人もいるわね,みたいな感じになってしまいます。それから二つ目はロールモデルを示すとしょっちゅう書いてあることです。けれども,それも自分にチャンスがあるかどうかが見えません。そこで,第3の方法として量的に示すことというのも,必要ではないでしょうか。研究者になる道と企業に進める道と,それからそうでなく,もっと自分で企業を起こす可能性とか,そういう全体像が量的にわかる示し方も若者には必要なのではないかなと思います。
 以上です。

【有信部会長】
 ありがとうございました。特に最後の量的な部分は,産業界を含めて,あるいは特に人文社会系に関してすごく重要だと思います。ありがとうございます。

【小長谷委員】
 ありがとうございます。企業文化との接合ということがすごく重要視されていますが,文化という質的な対話だけじゃなくて,質的な対話を超えてどれぐらい採りますというような方向性もあった方がいいと思います。

【有信部会長】
 ありがとうございました。
 ほかに。どうぞ,髙橋修一郎委員。

【髙橋(修)委員】
  よろしくお願いします。リバネスの髙橋と申します。
 私自身,リバネスという会社を大学院修士2年のときに,ポスドク問題もちょっと念頭にあってキャリアを開こうと思って立ち上げた会社を今経営していまして,70人ほどいるんですけれども,うち半分が博士,残り半分が修士なんです。博士も新卒博士をどんどん雇っているというので,新卒博士でも社会で生きていけるぞというのを証明してやろうと思って闘っているんですけれども,こういう立場なので博士の採用を決断する現場をよくやっているんですが,そのときにすごく感じることがあります。面談では必ず,自分のやりたいことは何ですかというのを聞くんです。仕事をこれをやってくださいというよりは,何をやりたいんですかと。それに答えられることが研究者,博士としてのすごく大事な力だと思っているんですけれども,結構そのときに自分の考えを言えない学生が多いなと感じています。要は自分が研究室でやっているテーマとか背景とか,教授のテーマを話せる人間は多いのですが,ただ,一方で自分がこれだというパッションを話せる人間がちょっと少ないなというのを感じています。そういう力を養うためには,博士のテーマを立ち上げるときというのがすごく大事なのかなと思っています。研究室のプロジェクトの中で,じゃあ,ここをやってという与え方よりも,自分は何をやりたいんだというテーマをしっかり掘り出すみたいなプロセスが一つ大事なんじゃないかなというのを感じています。
 あともう一つ思ったことは,今回これを読ませていただいて,いつでも感じているんですけれども,産業界への就職というと,アカデミアの皆さん大体の方は大手企業で,リクナビとかああいうのに乗るルートを想像されるんですけれども,実は日本って中小企業がほとんどなんです。特に博士のようなエッジの効いた人材というものが力を発揮する現場としてはそういう場所もあると,ベンチャーを含めてあると思っているので,産業界というのも,理系,文系を分けるのと同じ感じかもしれないですけれども,いろいろな面があるぞという発想でいかないと,産業界に関する議論自体がぼやっとしてしまうと。特に今の博士の学生とかも産業界というのが大手ということが基本に入っちゃっているので,すごい大手志向が強かったりして,そういうところのミスマッチ,考え方のミスマッチみたいなものをちょっと広げるというのも大学院教育の中で達成できたらいいのかなと思っています。
 以上です。

【有信部会長】
 ありがとうございました。特にほとんどの学生が実は中小企業に就職するにもかかわらず,大体企業というと大企業の話が多い。それの御指摘はもうそのとおりだと思います。それから,やっぱり育成にも問題がまだまだありそうですね。だから自分の指導教員のやっていることだとか,自分の研究については詳しいんだけれども,自分が何をやりたいんだというのはきちんとまだ確立していないと。どうもありがとうございました。
 ほかに。それでは湊委員。

【湊委員】
 京大の湊でございます。
 前回欠席で申し訳ありませんでしたが,資料を見させていただきました。かなりこれはファンダメンタルな話になりますけれども,日本の大学院重点化政策というのは,正確に何年前か覚えていませんが,僕がまだ若い現役の教授のときに話が出てきて,これが一律に,少なくとも国立大学については大学院化する,重点化するというもので,基本的にこれら大学院の教員の主務は大学院教育とし,学部教育は全て兼務であるとするということになった。多分外形的には今もそうじゃないかと思うんですけれども。

【有信部会長】
 重点化大学。

【湊委員】
 ええ,重点化大学。その際の大学院を重点化するということが,非常に綿密にプランニングされたかというと,私の経験でいえばそういうことはほとんどなかった。とにかく大学院を増やしましょうと,大学院生を増やさないといけないということで,現存の学部の講座をそのまま大学院講座にします,特に何も変わらないんだけれどもとにかくこれから大学院ですということで,要するに名前だけみんな変わったわけです。それまで大体2文字で済んだ講座名が8文字ぐらいの長い講座名になって,それが何となしにずっときた。その過程で大学院というのはどうあるべきかという議論がどんどん進んできたかというと,必ずしも特に大学院前期課程,後期課程というところの在り方についての合意形成が行われさらに少しずつ手直しをしながらやってきたという感じには,私には見えない。全てが後付けでいろいろ議論されてきたという歴史がまずあると思うんです。
 その上で考えると,この大学院重点化ということが影響したかどうかは別としても,やはり学部教育というものの,この資料にも書いてありますけれども,大学院教育との連結性というのがよく分からなくなっている。きちんと学部教育はどこまで責任を持ち,大学院前期課程,それから後期課程では何を目指すか,というコンセプトが必ずしも明示化されてこなかった,後でいろいろ議論はあったんだろうと思いますけれども,そこが日本の場合はぼやっとしてしまっているように思われます。
 だからその弊害は,これは私の個人的な感覚になりますけれども,学部教育へもかなり及んできていて,よく分からない学部教育,4年間あるんだけれども,本当に学部教育でどこまできっちりとやるかが見えていない。例えばスタンフォードは学部教育のミッションは明解で,これは健全なシチズン,知的な市民を作るということです。そういう明確な明示化がやられてこなかった。その結果,修士課程もよく分からない,博士課程のための準備期間であったり(文字どおり前期課程),あるいは学部教育だけではちょっと足りないからあと2年ぐらい足しましょう,みたいな曖昧な形が今でも引きずっているんではないかと。ここは少し,重点化からもう20年ぐらいたったんでしょうから,大学院が日本で重点化された以降の日本の大学院の在り方というものについて,一度おのおのの学位課程の自立性ということも含めて,もう一度議論されるべきではないか。この資料を見ても,ほとんどのセクションで企業との関係しか出てこないんですね。学部教育は,企業はどうだからどういうふうにあるべきだとか,修士や博士課程は企業との関係でどうあるべきだとか,大半の学生が日本ではいずれ企業へ行くというのは事実だとしても,企業との関係性の中でしか学部教育,大学院前期・後期課程が議論されないというのは,私は少し問題なのではないかと思います。それは,こういう社会状況ですから企業との関係は重要ですが,社会は企業だけではないわけで,いろいろな社会全体との関連性がどうあるべきかという論点がもう少しあってもいいのではないかという気がします。
 あと細かいことは,幾つか私もこの前メモを出しましたけれども,大きなところではそういうことを,今期を始めるに当たって感想を持ちました。

【有信部会長】
 ありがとうございます。今の話はかなり本質的な話で,大学院重点化をやるという話と,それからその中で各課程の役割というか,大学院の役割が不明確だと,そういう中で教育が十分行われていないというような問題意識で,17年答申のときにそれぞれ各課程の到達点というか,目標とすべきことというのは整理したんですけれども,これはおっしゃるように教育・研究を誰が設計するのかということで,例えば文部科学省が教育・研究の全体を設計して,これを大学にやりなさいというわけにはいかないわけですよね。一方で,大学の教員サイドはそれほど企業の組織体系のように権限,責任の体系がきちんとしているわけではない。そうすると,各大学の中で教員が自主的に自分たちで考えてその設計をやらなきゃいけないんだけれども,それも何となく重点化が押し付けられたという感覚があったものだからうまくいっていない。この辺を今後どういうふうにやっていくかというのは相当難しい問題だけれども,多分それをきちんとやっていかないといけないということですよね。ありがとうございます。
 ほかに。どうぞ,宮浦委員。

【宮浦委員】
 大学院教育,少なくとも理系にとりましては,修士はもう当たり前で,むしろ産業界もメジャーなポピュレーションとして修士を求めていらっしゃると思いますし,学生もそう思っている。それはかなり固定化されたところで,じゃあ,博士後期課程,ドクターはどうでしょうかというところで,ポピュレーションは数としてはかなり少ないわけです。少ないんですけれども,それを質高く持っていくにはどうしたらいいかという,かなり言われてきたことではあるんですけれども,出口のキャリアパスの多様化も重要なんですが,流動化じゃないかと思っています。
 例えば博士取得後にアカデミアに入るか,公的な研究所に行くか,あるいは産業界で活躍するという複数の選択肢の中で一旦1個を選ぶと,何かその後10年,20年,30年,そのパターンでいくというようなイメージが固定化されていて,セクター間に人が動かないということがもう20年ぐらい言われて,なかなか動かないんですけれども,そこでやはり学生もそれが分かっていて,一旦企業に入ってから公的な研究所に移るのは難しいなとか,逆もそうだなということで,その流動化を図ることが,実務家教員とはちょっとまた別な形で,研究型教員でも流動化できるところがいかに設定できるか,それが企業の研究所と大学でなくてもいいと思うんですが,開発あるいは営業その他いろいろなセクションで活躍されている方を大学にお迎えしたり,その逆であったりということを見せることが学生にとってもキャリアパスが多様だという,流動的だということを認識して博士後期に行こうというモチベーションにつながると思います。恐らく全国の修士で進学したい学生が迷っていると思うんです。特に優秀な学生は迷っている。迷ったあげくにやめておくとか,迷ったあげくに一大決心して進学するとか,そういう将来の選択肢の流動性が必要だと思います。
 もう一点は,各大学の特色ある大学院,あるいはこれまでのGCOEやリーディングや卓越などの様々なプログラムでやってきた実績を見える化して,それを大学生あるいは修士に,学内だけでなく日本全体で見える化できると,ちょっとこの書面の中にも入っていたと思うんですけれども,それが学生にとっては非常にメリットになるんじゃないかと思っております。
 本学の件で恐縮なんですけれども,博士後期学生対象のリクナビ博士を作りたいと考えておりまして,それができたら全国で使いたいと考えております。やはりそういうものができて見える化しないと,なかなか各大学のテリトリーの範囲内で卒業生に見せるといっても,全国で見えるわけでもないという。リーディングの卒業生の情報が一括で見えるわけでもないという,そういう問題点,改善すべきことはあるかなと思っております。
 以上です。

【有信部会長】
 後半は割と具体的な話で,流動化の話はもうおっしゃるように延々と重要だということは言われて続けていて,学術審議会の人材委員会でも延々とその議論は多分されてきたと思うんですがうまくいっていないと。この辺を,私たちとして大学院部会の立場で具体的に何かできるかということですよね。ありがとうございました。
 では,川端委員,どうぞ。

【川端委員】
 前回言えなかったので,今回ちょっとだけ。
 三つあります。一つ目は社会がどのような人材を大学院から欲しているかとか,企業がどういうふうに大学院に対して要望を持っているかという議論はもう10年前からやっていて,結局結果が何も上がっていないというのが今の状況なんです。それはどうしてかと,それはもう原因はいっぱいあると思います。その中で私が思っているのは,企業というものが一つの意見ではないという,大手もあれば中小もある,そういう人たち全体が一体何をというと,1個ではないのが答えなんだろうと。だからそこのどこと話し合っても答えは出ないだろう。そうするとどうなるかというと,各大学が個性的な人材を育成することだと思うんです,いろいろなところと会話しながら。だから一律でない多様なものを作っていくというのが大学に求められているところなのかなと。それを考えるスタートになるのがNISTEPさんだとかこういうところが出している国を超えた統計であったり,情報であったりという,そういうものかなと思っています。
 それから二つ目は,キャリアパスに関しては,現在情報系もそうですけれども海外からのリクルートが強烈に起こっています。人材の取り合いっこが起こっています。これは情報に限らない部分にきっと波及していくと思います。一方で,日本の中では転職に対して後ろめたさがなくなりつつあります。そういう意味では海外に短期間でもいいから就職しようかという人間がいっぱい出てくるような気がします。そういう意味ではキャリアパスに関しては国内企業だとか,グローバル企業かもしれませんけれども,そこをターゲットと同様に海外企業に出す,そのためには一体どんな情報があったらいいかとか,どんな能力があったらいいかとかという情報を丁寧各大学に流して,そういうものの窓口的なものをどこかに,ナショナルセンターみたいなものができてくれば,それはそれでもいいかなと思っています。
 3点目,これで最後なんですが,博士離れというのは日本のアカデミアに魅力がないということの裏返しになっていると思います。何と比較してかというと,実は修士課程のリクルートで企業に負けているという,要するに企業というものが大学にリクルートで来るときに,就活するというときに,じゃあ,修士課程はみんな企業にどうしても就職したいと思っているかというと,実はそうではなくて,みんなが就活するから私もやりますという状態の中でどれにしようかなという,いわばそのプロセスの中でこの企業がいいなと思い始めるという,こういうような意思決定の流れを持っている,その話題の中にアカデミアが入っていないという。そういう意味ではその就活のゾーンの中にアカデミアが一緒に入って,企業に比べて,あの会社に比べてもうちの大学だとかいろいろな大学のコースが魅力的なんだというような展開の仕方をする必要があるんじゃないかと思っているというのが,この博士後期進学者への意思決定に対するリクルートのやり方,これは一つのやり方で全部片付くものじゃないので,各大学でこういう観点でも考えをやっていけばいいんじゃないかなと思っています。
 以上です。

【有信部会長】
 個性化,多様化と流動性を高めるという話で,これも今話を伺いながら思い出したんですけれども,例えばEUの中ではもう既に前世紀から,ボローニャ・プロセスの中で,大きな目的は学生の流動化あるいは高級な知的労働者の流動化で,それを促進するためにECTSだとか,あとエラスムスだとかエラスムス・ムンドゥスだとか様々な施策をとってきているわけです。我々として,そういう観点で今やっている施策をもう少し考えるというのはあるかもしれないですね。これも議論だと思います。
 ほかに。では,小西委員,どうぞ。

【小西委員】
 青山学院大学の小西でございます。所属している研究科の管理運営だけで十分楽しませていただいているのですが,現在,会計大学院協会の理事長も拝命しておりまして,そのやりがいが二倍,三倍になっている小西でございます。
 今回の大学院部会で議論していただきたいことが四点あります。そのお願いをしたいと思います。その前に,前提条件を一つお話しさせていただきたいと思います。私も大学の教員になって早32年目になります。国立大学も私立大学も,そして地方の大学もいろいろ経験して参りました。一つずっと実感し続けていることがあります。それは,大学というのは,高校までと違って,学生のインプットの状態のままで評価されている面が非常に強くて,アウトプットで評価されていない傾向にあるんじゃないかということです。当然に,アウトプットは企業の採用によって評価されていると言うこともできます。例えば,地頭が良いという言葉なんかに,この意味合いがあるのかなと思っています。私も32年間,大学に勤めて参りましたので,反省点を十分に踏まえまして,やはり社会や企業とのコミュニケーションをこれまで以上に図って,どういう仕上がり具合の学生が求められているのかということを明らかにしていかなければならないと考えます。そうした場合に,例えば,私は専門職大学院に籍を置いていますので,関連する職業団体,会計の場合ですと公認会計士協会とか税理士会連合会との対話をしていかなければなりません。それが一つの大学と職業団体が対話するということは非常に難しくて,その意味で,会計大学院協会通して,そのニーズを吸い上げるということは非常に有意義なのかなと思っております。
 四つのお願いがある中で,一つ目は,専門職博士学位の新設を議論していただきたいということです。二つ目は,既にこれまでにも議論されてきておりますが,リカレント教育の充実化です。三つ目も,これまでに議論に挙がっております,実務家教員の養成プログラムの確立と,四つ目は,認証評価機関の国際化について検討していただきたいということでございます。これら四つのお願いは,それぞれに関係があると思っております。
 例えば,実務家教員の養成プログラムの確立の方策の一つとして,専門職の博士学位があると思っています。実務家の方はケースを話している時に,体験談を話している場合は多く,体験談は事例研究ではありませんので,やはりそういう術を知らないのだと思うのです。それを是非に学んでいただきたいという意味においても,専門職の博士学位の新設を議論していただきたいと思います。
 それと,国際的な会議に日本の代表として,会計士をはじめとする実務家の方が出席する機会が非常に多くなっております。そのときに向こうの方は博士の学位を持っておりますので,やはり我々日本の代表者も博士の学位を持って参加していただきたいということになります。
 次に,リカレント教育の充実化なのですが,専門職大学院では専門職の維持に必要な継続的専門研修を,いかに大学院教育の中で取り込んでいくかということが,一つの課題としてあります。会計大学院の修了生は公認会計士試験の合格後に,学部卒業生と同様に,原則,3年間,実務補習所に通わないと会計士の資格を取得することができません。この意味で,実務補習所の3年間と会計大学院との関わり具合を考えていかなければならないと実感しおります。
 そして最後ですが,認証評価機関の国際化について,EUでは,認証評価機関を一つにしようという動きが既に進んでいるはずなのですが,EUと米国での認証評価がどうなっているのかを調査して欲しいのです。MBAでは,海外の認証評価を取る大学院が増えていっていると思うのですが,これを更に進めていかないと,海外から日本の大学院が認めてもらえる機会を失うおそれがあるのではないかと危惧しています。
 以上です。

【有信部会長】
 ありがとうございました。専門職大学院の博士課程の問題は,専門職の検討のところでも出ていましたし,これも重要な問題だと思います。
 最後の問題は,これも本当に難しい問題なんですけれども非常に重要だと思っています。エンジニアリングでは国際的に共通な教育認定をやろうというのはできてきつつあるんですが,MBAはAACSBとか,いわゆるデファクト的な形で国際的な認定が進んでいる。ヨーロッパはEU域内で共通の標準的な教育プログラムの認定をやろうとしている。これがみんな共通に一つにまとまるかというと,これがなかなかまとまりにくいという問題もあって,この辺を含めて当面専門職に関しては海外の認証機関というか認定機関,これは言葉が難しいんですけれども,認定機関による認定についても国内の認証評価と同等と認める道は一応開かれてはいるんです。ただ,これは文部科学大臣がその団体そのものを承認しなければいけないとことはありますけれども,この辺を含めてどういうふうに考えていくかということですね。間違っていないですね,今の話は。そう言ってくれればいいと。

【池尾委員】
 前回も発言したのですが,発言してもよろしいですか。

【有信部会長】
 はい。

【池尾委員】
 今の点ですけれども,まず海外の認証評価,AACSBとEFMDは,私が慶應のビジネススクールにおりましたとき,どちらも取っているのですけれども,これらが努力目標として非常に重要であることは間違いないと思うのですが,日本の認証評価に代替し得るものなのかという点はちょっと検討していただく必要があると思います。やはり目的が違いますので。それらを目指して日本のビジネススクールが頑張るというのは,僕は絶対必要だと思いますけれども,ただこれが全てだということにはちょっとならないような気がいたします。
 それから,今小西先生がおっしゃったことと関連したことをお話しさせていただきたいと思うのですけれども,実務家の教員の方に発信能力を高めていただくというのは非常に必要で,前回もそんな発言をさせていただいたのですが,逆にリカレントをやろうと思ったら,アカデミアの教師も実務情報を知らないと話にならないわけです。そこで重要なのが,若干手前みそなのですけれども,教育用のケースメソッドというのが非常に重要で,これはアメリカの場合にはハーバードが非常に有名ですけれども,日本では慶應が随分一生懸命やっています。このケースを作るためにはアカデミアの教師が企業の中に入り込んでじっくり議論し,そしてさらに実務では何が起こっているかというだけではなくて,それを使って実務家をいかに教育するか,そういう議論をかなりやるわけで,そのプロセスで実務家の方とアカデミアの人間が問題意識を共有することができるんではないか。それを是非積極的にやっていただきたいんですけれども,これは結構お金が掛かるんです。過去を見ますと,我々は一生懸命民間のお金でやっているんですけれども,例えば経済産業省のプロジェクトで幾つかケースを作ったり,国土交通省のお金でもって幾つかケースを作ったり,もちろん文部科学省のお金でも幾つかケースを作ったりと,何か五月雨式に国のお金が降ってくるみたいな話があって,これも何かもうちょっとシステマチックにやっていただけるとよろしいんではないかと思っています。
 それから,これもついでですが,先ほど国際的な流動性みたいな話がありましたけれども,これについては,是非日本の大学と海外の大学との間のダブルディグリー制度というものをもうちょっと積極化するようなことも御検討いただけたらと思います。
 以上です。

【有信部会長】
 ありがとうございました。
 あと,田中委員,堀切川さんはこの前しゃべったよね。

【堀切川委員】
 時間があったら。

【有信部会長】
 ちょっと待ってください。その前に高橋さん,いいですか。別に後でしゃべるというならそれでもいいんですけれども。

【高橋(真)委員】
 では1点だけ。

【有信部会長】
 はい。
【高橋(真)委員】
 ありがとうございます。前回は失礼いたしました。
 社会人を対象にしたMBAの中で産学連携等を,私の10年ぐらい培った研究開発のプロジェクトマネジメントの観点から教えております。そういう意味では,以前の自分の実務を今はアカデミア側の人間として教えております。前期の委員会にも出させていただいたんですけれども,率直な一言を申し上げると,書かれていることは非常に正しくて,どれもやるべきことなので,次はどういうフェーズで何をどうやるかというプライオリティーの話と,どの対象に対してやるか,という選択の話なんだと思っています。そういう意味では,前回私が申し上げたかったことというのは,まさに今回は大学院の機能の多様化なんだろうなと思っており,今日の会の中で皆様がおっしゃったことというのは,もうほぼ私も同じ意見を持っております。
 1点,その中で若干違和感があるところが次の議論に進むかと思うので申し上げたいんですけれども,小西委員が4点ほどということでお話しいただきましたが,実務家教員というのはこれから非常に重要になると思うんですが――言葉を選ばず申し上げると,やっぱり役割分担が必要なんだと思います。今回のこの実務家教員がドクターを取るようにとか,アカデミアのふりをするというのは役割分担の本質がずれているような感触で,本質的に大切なのは,得意な分野で教育に貢献するということだと思っています。
 何かと申しますと,やはり今の実務家教員の多くの方が日本の製造業のR&Dだったり,ビジネスを背負っていらっしゃった方が,以前の経験を体験談として教えても,古いモデルで合致しなかったり,それが唯一絶対の正解ではなく事例であるとそれ以上のメッセージは無い。更に言うと,学生は,敏感に感知して,振り向かないです。さっき転職が視野に入ってきたとおっしゃった方もいらっしゃったと思うんですが,普通にキャリアパスの中に入っており,一回社会人になった後にマスターやドクターに来ることを前提に,1回目の大学院に行くという学生も私の周りには非常に多いです。
そういうことを考えますと,現有する日本にいる人材で,当面中期的に,例えばここ10年で我々の大学院の教育にどう活躍いただくのかということと,10年後以降ぐらいでジェネレーションの変化にどう対応していくのかは分けて考える必要がある。その2つのギャップが大きすぎると,仕事の場がなくつらい思いをするので,それが段階的に行くような道筋を少し考えられればいいと思っております。
 そういう意味で,最初に厳しい言葉をあえて選んだんですけれども,実務家教員の養成プログラムが必要だということは全くアグリーなんですが,では,実務家からアカデミアにポジションを移した方に対して,従来からいらっしゃるピュアサイエンスのいわゆるサイエンティストのような作法を教えたところで,簡単に言いますとその後どのくらい賞味期限があるのかということをちゃんと考えた方がいいと思います。
 
 もう1点,大学のプログラムとして教員チームを作れたとして,それをちゃんと転がしていく事務方の役割は重要です。ピュアサイエンスをきちんとやって経営学を修めたドクターの教員と,旬なトピックを話せる実務家の教員とうまく掛け合わせて,そしてプログラムを提供するというところは,どちらかの人ができることではなく,大学のプログラムを設計する人たちです。その設計する人たちが,もちろん教員の中にいればベストですけれども,もしいないとき,若しくはそういう視野が全体で持てなかった場合に,教育プログラムという観点でそれを支援する教務の機能はプログラムの成否にかかる本質だと思っております。

【有信部会長】
 実務家教員に関して言うと,ほとんどがいわゆる一流の大企業と言われるところで成功を収めてきた人たちが実務家教員として選ばれるケースが多い。これは実際には学生が就職していく先とは基本的に必ずしも一致していないので,そこでの経験が直接的に役に立つかというと,それは極めて問題で,ケースバイケースで役に立つ場合もあるかもしれないという程度。だから,要は自分の経験あるいは知識,あるいは実際に成功した理由等々がどこまで抽象化できて,普遍化できるかということなんですね。そういう意味で,やっぱり実務家教員がただ単に成功体験をひっ提げて大学に来て教えるといっても何の役にも立たないというのは,そのとおりかもしれません。そこの部分でワンクッションというか,教育が必要だというので,小西委員は,そういうところで逆に言うと専門職大学院の博士課程が生かせないかというような御意見だったかと思うんです。
 堀切川委員,さっき止めちゃいましたけれども,どうぞ。

【堀切川委員】
 どうも済みません。一つだけ考えていることがあって,それを申し上げてみたいと思っております。どこの大学院でも時間と金を掛けずにやろうとしたらすぐできる,学生側から見ると,これが意外と効果的かなと思っていることがありまして,それを申し上げたいと思います。
 大学院の教育への卒業生,修了生,OBの活用という視点が私はすごい大事だと思っていまして,現実に修士,ドクターも含めてですが,学生がちゃんと話を聞くのは先輩がリクルートを問うて遊びにやってくると,その話だけはよく聞く,夜中までよく聞きます。そういう意味では,卒業生,修了生はいろいろなキャリアパスを歩んでいるので,例えば研究室単位ではなくて,やっぱり組織単位で大学院修了後5年とか,あるいは10年,15年,修士を終わって,あるいはドクターを終わって,留学生も含めていろいろな社会で活躍している人に正式な形で大学院の後輩にしゃべってくれということをやると,学生は多分動員を掛けなくても必ず来る。「ドクターへ行ってよかったよ」というOBの一言があると,悩んでいる修士が「ああ,そうか」と思って,だまされてころっといく場合もあるかなと思うんですけれども,大人過ぎる人の話よりは,近未来の先輩の言葉というのを非常によく聞くので,そういうOBの活用というのを考えられてみたらどうかなと,実は思っています。
 そのためには卒業生,修了生のOBの活躍度のリスト作りも必要になるんですけれども,特に我々のところは女子学生が増えているんですがまだまだ比率が低くて,女子のOBが来ると,もう女子学生がわんさかやってきます。それで「どうですか?」というようなことを聞くので,女子とか留学生とか,男子もそうなんですが,社会人でドクターを取った人に「よかったよ」と言ってもらうのも相当効果的なので,そういうことを積極的にやるというのを検討してみるのも一つかなと思っております。
 最後に,実はこれの最後の狙いは,OBの活躍度リストができますと大学の方がヘッドハンティングに使えるということで,キャリアパスでいいやつだけ採るときにそういう活躍のデータがあった方がいいというので,これを言うと産業界に嫌われそうということでありますが,是非OBの活用という視点を議論していただければありがたいと思います。
 以上です。

【有信部会長】
 ありがとうございました。
 また予想どおり時間がちょっと押してきて事務局から注意を受けましたが,それだけ皆さんの思いが強いということで,今後の議論がますます楽しみになってきます。
 それでは,とりあえず議題(2)に移りたいと思います。議題(2)は第3次大学院教育振興施策要綱のフォローアップについてということで,事務局から説明をお願いします。

【平野大学改革推進室長】
 失礼いたします。
 大学院教育振興施策要綱とは何ぞやということにつきましては,資料1-1の3ページから4ページにかけて記載がございます。こちらの方は前回御説明した内容ですので詳しく御説明申し上げませんが,御参照いただければと思います。

 その上で,本日の資料でございます。資料2-1というものにつきましては,資料2-4として配付しています振興施策要綱のフォローアップというものを事務方で行ったものでございます。資料2-2というものについては,本年1月の審議まとめというものを踏まえて,国において対応が必要な事項,次期振興施策要綱決定までに何を行うのかということを工程表にしたものでございます。資料2-3というものについては,今後のスケジュールということになります。前回の議論,本日の議論というものを踏まえまして,どのようなことを今後進めていくのかということになるわけでございます。

 資料2-3でございますけれども,今日が6月5日でございます。フォローアップを御審議いただいた上で,次回は7月30日ということでございますが,振興施策要綱を次にどういう方向で2021年度に,作っていくということになるわけでございます。その95回以降で議論して,来年の夏,夏というか年央には中間まとめを出して,大学院部会の任期の終了と同時に振興施策要綱というものをまとめていく,これを第6期の科学技術基本計画に合わせて作っていくと,こういうスケジュール感でございます。

 それでは,資料2-1の方で手短に御説明させていただきます。
 構造について御説明いたします。資料の表の左半分が第3次の施策要綱の内容でございます。施策要綱の記載内容というものについては,平成27年の審議まとめの本文というものを抜粋する形で作られてございます。その進捗データが真ん中にありまして,右側は先だって御議論いただいて取りまとめていただいたオレンジ色の「あるべき姿」(審議まとめ)について関係する記載があるものを抜き出してございます。進捗の評価というものについては,丸は進捗が見られるもの,三角は一定進捗が見られるもの,バツは余り進捗が見られないもの,このような形で事務方の方で分類しております。この丸,バツ,三角自体に意味があるというよりは,皆さんが御議論いただいく中で参考にしていただければという趣旨のものでございます。それぞれの項目に対応した工程表の番号というものを付けておりますので,これも適宜御参照いただければと思います。

 資料2-1の御説明でございます。
 まず1ページ目でございます。1の(1)ということで,体系的な大学院教育の推進でございます。記載内容といたしましては,各大学院で体系的な教育を組織的に展開するために,三つのポリシーを一体的に策定することが求められるということでございます。進捗といたしましては,平成25年に比べましても,平成27年の最新のデータではほぼ100%に近い水準まで三つのポリシーの策定自体が進んでいると。ただ一方で,右側の記載内容にもありますけれども,まだ内容が抽象的で形式的な記述にとどまるとか,相互の関連性が意識されていないということは学部同様,大学院についても妥当するのではないかということでございます。
 今後の取組ということで,右側の審議まとめの記載内容でございますが,前回御説明したとおり三つの方針の策定と公表を法令上義務付けるということでございます。また,このタイミングで合わせて各大学に再点検というものを行っていただくということなどを通じまして,三つのポリシーを中心とした教学マネジメントの確立,内部質保証の確立ということにつなげていくということを考えているものでございます。とりあえずそのところまで進んでいるという意味で,一旦丸ということで整理しております。

 2ページ目をごらんください。2ページ目の内容につきましては,これも体系的な教育の関係の続きでございますけれども,狭い分野の研究に陥りがちだった大学院教育というものを,既存の研究科・専攻の枠を超えて一貫した教育課程に変えていくというところでございます。
 進捗データでございます。リーディング大学院,御案内のとおり6,000名在籍,1,200名修了,就職率は97%ということでかなり進んでいるわけでございますが,どのように波及していくのかが課題であるということでございます。
 卓越大学院プログラムは初年度に15プログラムが採択され,取組が始まっているところでございます。
 このような事業物についてはしっかりとその成果を普及していくということが必要であるということ,新しい事例の創出必要であるということが右側の審議まとめの記載内容でございます。
 ここは波及を除いて一定進捗があるということで三角でございますが,左側の進捗データの下の部分でございます。体系的な教育の主な取組,コースワークの実施状況ということで言いますと,コースワークの実施状況というもの,主専攻以外の科目の体系的な履修,複数専攻制の実施率というものについては上昇しているところもあるわけです。極めて少ない幅というところもあるわけでありますが,多くの大学院が取り組んでいると言える状況ではないということ,特に人社系の実施率が低いのではないかということは,前の期でも御説明したとおりでございます。
 一方で,専攻研究科横断の共通コア科目の設置とか,研究室ローテーションの実施という部分については低下してしまっているといったような状況というのがございます。このようなところも踏まえまして,今後の取組ということは先ほどのプログラムの成果の普及ということに加えまして,ダブルメジャーやメジャー・マイナーのようなもの,また今度制度改正されますところの研究科の組織の枠を超えた学位プログラムの活用,このようなところを進めていくということでございます。

 3ページ目をごらんください。3ページ目は組織的な教育・研究指導体制の確立ということでございます。まず1個目,大学院教育レベルのFDの機会の充実を図るということになってございます。大学におけるFDの実施状況というものは一般的にはまだ横ばいということでございます。これは今回フォローアップしていて気付いたところなのでありますけれども,実は大学院教育レベルのFDの機会の充実と書かれているんですが,大学院教育レベルのFDの機会がどれぐらい今行われているかというデータを我々は持っておりません。ですので,ここについては今後の調査でしっかりと補充させていただいて,その上で判断する必要があるということだと思います。大学院教育レベルのFDは,研究指導とか大学院レベルの高度な水準の講義に着目した教育能力の向上,このようなことを指すものかと思います。
 次が教員の教育業績の能力を適切に評価することも重要であるということでございます。進捗データのところ,国立大学法人は現在人事給与マネジメント改革を進めているところでございます。この部分については年俸制の給与,月額制の給与,昇給等へ業績を反映するというところが増えていっているわけでございます。ここには詳しくは書いておりませんが,各大学において教育上の能力というものも評価項目に入れるという取組が行われつつあるところでございます。これについては数年前に比べれば格段に進捗が見られるという状況かと思っております。

 4ページ目をごらんください。4ページ目は研究倫理教育の実施と博士論文の指導・審査体制の改善でございます。進捗データは前の期でも御説明した内容でございます。複数の教員による指導体制の構築,論文発表会の公表,盗用検索ソフトの実施率というのは上昇しているけれども,まだ盗用検索ソフトなどは半数以下であるということ。また,異なる専攻の教員を加えた論文指導体制とか,学位審査に係る委員名の公表の実施率は低下してしまっているといったような状況でございます。
 また,倫理教育の方につきましては,数年前にかなりいろいろなことがありまして取組が進んだ結果,今でも一般財団法人公正研究推進協会などで取組を継続していただいているところでございます。
 「2040年を見据えたあるべき姿」(審議まとめ)においては,研究指導体制,学位審査について引き続きしっかりと組織的に国際的に通用するような学位の質保証に取り組むという呼び掛けがされているところでございます。倫理教育以外の部分についてはまだまだ課題があると思っておりますし,倫理教育もまだまだフォローアップをしっかりしていく必要があると思ってございます。

 次,5ページの(4)でございます。将来大学教員になる者を対象とした教育能力養成システムの構築でございます。この点については前期でもかなり記載があったところでございます。大学院生を対象としたプレFDの実施率は下がっているという現状があるわけでございます。一方で,博士課程を修了した学生というものは大学教員になる可能性があるし,大学教員にすぐならないにしても,将来実務家教員としてまた大学院に帰ってくるということもあるということから,プレFDの重要性というものは前期で議論していただきまして,博士後期課程については大学がプレFDの実施や情報提供に努めることを法的に位置付けるべきであるという整理をしていただいております。
 前回の省令改正の内容で説明しているところでございますが,これについてはしっかりと数値が伸びていくかどうか,内実が伴っているかどうかをしっかりとフォローアップを進めていく必要があるわけでございます。

 6ページをごらんください。6ページにつきましては産学官民の連携と社会人学び直しの促進ということでございます。学生を多様なキャリアパスに導く大学院教育のために,産学官民の連携による教育プログラムの開発・実施に取り組むことが期待されるということで書かれてございます。先ほど御説明したようにリーディング,卓越大学院,このようなものは進んできている。リーディングについては具体的な数字も挙げておりますが,これは伸びているけれども,やはり先ほど申し上げたように波及というものをどのように進めていくのかということが課題になってくるわけでございます。
 また,理工系を中心とした産業界との対話,アントレプレナーの育成,このようなものも事業として進められているものがあるわけでございます。
 「あるべき姿」(審議まとめ)の方でございますが,大学と企業との意見交換の契機というものにしっかりとつなげていけるような情報発信をするということ。今日この後,お話があるところのようないろいろな意見交換の枠組みというものをしっかり活用していくということが必要でございます。また,博士課程修了者のキャリア構築に係る組織的な支援を進めるということについても累次指摘されている,ここは大学の取組がかなり期待されるところでございます。
 ここについては,事業としては進捗があるわけでございますけれども,しっかりこれを全国にどのように波及していくのかということが課題でございます。
 6ページの下でございます。社会人の学び直しでございます。職業実践力育成プログラム(BP)というものの認定制度が平成27年に創設されまして,厚生労働省の給付金とも連動する形で運用されております。今大学院の正規課程,242課程が認定されていて,これは平成30年4月時点の105課程から大きく伸びているといったような状況にあります。認定件数は増えているわけでございますけれども,リカレント教育,社会人の学び直し,このようなところについてはかなり突っ込んだ議論というのを今後ともしていく必要があるという認識でございます。

 7ページは専門職大学院のことでございます。専門職大学院,先ほど委員の御発言の中でもいろいろと御指摘があったわけでございます。制度の見直しを含めて充実のための取組を進めるべきであると。進捗の部分は先ほどのお話とも関わってまいりますが,いわゆる連携の仕組みというものでありますとか,経営系の大学院については協力者会議を設置して検討するであるとか,法科大学院は現在法案が審議中であると,このような状況なわけでございますが,コアカリキュラムの策定状況などの統一的な把握であるとか,先ほど御指摘のあった博士後期課程における高度専門職業人の養成について検討を進めていく必要があるであるとか,また海外の評価団体の評価実績,認証効果などを見極めながら,これをどのように国内にも展開していくのか,このようなことについて検討を進めていく必要があるわけでございます。
 進捗の評価は丸となっておりますが,またここはいろいろな御意見があるところではないかと思います。

 続きまして,8ページでございます。大学院修了者のキャリアパスの確保でございます。大学院修了者の多様なキャリアパスや安定的なポストの確保に資する取組をどのように進めていくのかということでございます。リーディング,卓越大学院というところについては多様なキャリアパスの確保という部分にある程度成功している事例というのが出てきているわけでございます。また,卓越大学院,リーディングについてもJGRADなどを活用しながら,長期的に修了生の状況を把握していくという枠組みを作りつつあるわけでございます。
 一方で,進捗データの三つ目の四角でございますが,大学教員以外の就職という部分については平成25年の50%程度から55%程度に伸びてきているというところでございますが,更なる多様化が必要ではないかということ。
 先ほど堀切川委員の意見にも少しあったところでございますが,そもそも大学院生の一番下の四角でございますが,就職状況というのを継続して把握しているであるとか,このような部分というのはようやく半数近くまでは上がってきているということではあるわけでありますけれども,修了生の就職状況や活躍状況を踏まえて組織再編やカリキュラムの見直しに取り組んでいるというのがまだ2割にとどまっているということで,ここは修了生の状況等を踏まえた教学マネジメントの確立という観点からは大きな課題があるんだろうと思ってございます。
 右側の方,工程表とも関わってくるわけでありますけれども,国として諸外国の博士課程修了者の活躍状況であるとか,様々な情報というものを収集して発信していく,事例の把握というものを進めていく必要があるということでございます。

 9ページでございます。ここは続き物でございます。リサーチ・アドミニストレーター,また第9期の人材委員会でも御議論いただいたということでございます。ここは御紹介にとどめさせていただきます。

 10ページをごらんください。10ページにつきましては,大学院修了者の活躍状況の可視化と把握でございます。先ほど申し上げたようにまだまだ活躍状況というのを具体的に国も大学も把握できていないという状況にあるわけでございます。リーディング大学院については,以前お配りいたしましたけれども,民間などの就職者も含めて活躍状況について分かりやすく示せるように,日本学術振興会にパンフレットなどを作っていただいたというところがあるわけでございます。
 博士人材追跡調査というものについては,順次行われているところでございます。またJGRADという部分についても登録者は伸びてきているわけでございますけれども,キャリアパスに関する意識調査などを実施して,またそれをフィードバックしていく,このようなところが課題ということでございます。

 続きまして,11ページでございます。ここについては,大学院においてアジア各国をはじめとする世界から優秀な人材を引き付けるために国際化を進めていくべきであるということでございます。いわゆる政府の奨学金また官民の共同で行われている「トビタテ!留学JAPAN」,このような実績というものについては示しているとおりでございます。政府における派遣者というものは平成28年から直近で減少しているわけでございますが,民間企業などを通じた派遣者は増加しているという状況になっているということ。優秀な留学生の受入れ促進という観点からしますと,留学生の数そのものについては増加しているというところでございます。
 ここの部分については最後,前回の期を締めるときに御意見を頂いたところですが,まだまだ留学生の受入れとか国際化というところがちょっと議論が足りなかったのではないかといった御指摘を頂いております。今後しっかりと留学生の受入れの在り方等について引き続き検討を続けていく必要があるということが「あるべき姿」(審議まとめ)に挙げられているところでございます。

 12ページでございます。12ページは教育の質を向上させるための規模の確保,機能別分化でございます。大学院教育全体の質的向上のために学生数をしっかり確保する,社会的需要,学術的需要に応じて柔軟に組織の在り方を見直していく,このようなことをうたっているわけでございます。
 進捗データというところでございます。国立大学の大学院の専攻の設置・廃止の状況を見ますと,平成25年に比べて廃止数,新設数とも大幅に伸びているという状況があります。これは国立大学で教育・研究組織の見直しというものが進んでいるということがうかがわれるデータでございます。一方で,入学定員の充足率というものについては全体的に減少傾向であるということが前期でも御説明した内容でございます。
 今回,三つのポリシーというものを再点検していく過程において,しっかりと人材養成目的に応じてどのような教育・研究組織の在り方が最適なのかどうかということについては,見直しを促していくということにしているわけでございます。
 また,各大学がニーズというものを踏まえて,また卒業生の進路というものも踏まえて自らの責任において定員の設定を見直すということも「あるべき姿」(審議まとめ)には盛り込んでいただいてございます。三つのポリシーの法令上の位置付けというものと併せてここをしっかりと後押ししてまいります。

 13ページから14ページにかけてが,いわゆる経済的支援の状況でございます。進捗データということの前に,第五期科学技術基本計画においては2割程度が生活費相当の支援を受けられるようにするということでございますが,今現状で言いますと,ちょっとここの中に直接書いていないようでございますけれども,大体1割程度しか受給していないというデータがあるわけでございます。個別に見てまいりますと,日本学術振興会のDCという部分については採用支援者数が今減少しているという状況。授業料減免については,国立は額が増加している,公立は修士が減少している,私学におかれましては大学院全体での予算に対する実績額というのは減少しているという状況にあるわけでございます。
 特別研究員制度については,前期の審議まとめにおいては進学の意思決定のタイミングを踏まえた制度設計とすることなどの御提言を頂いているところでございます。

 続きまして,14ページでございます。学生支援機構の奨学金による給付型支援というものにつきましては,大体貸与終了者のおおむね100分の30以下,優秀な学生という観点からここについては業績優秀免除するということになっております。これについては平成25年度30.46%,平成29年度30.08%と,おおむねルールに沿った枠で運用されているものでございます。
 TA・RAということにつきましては,修士(TA)の人数が減少しているということ,一方でTAの割合とRAの人数,割合は増加しているという状況。博士課程はTA・RAの人数,割合ともに減少しているということでございます。人数の方はもちろん在籍者数に連動する部分はあるかと思いますけれども,割合の方も減少しているということでございます。
 審議まとめの方では,国費だけに頼らない経済的支援の充実の方策,大学の事例収集と周知,このようなものを進めていくとともに,ファイナンシャル・プランというものをしっかり位置付けて,現行制度の最大限の活用を図っていくということについては,前回省令改正の説明の際にさせていただいたものでございます。
 進捗の評価というところにつきましては,制度的なものがしっかり行われているところがあるというところにおいて三角でございますが,これについては2割という目標の達成に向けて,相当力を入れていろいろなことをやっていかなければいけないという厳しい状況でございます。

 15ページは卓越大学院をしっかり作っていこうということで,これについてはかなり密な検討を協力者会議で行っていただきながら制度を作ったところでございまして,1年目には15大学,今現在も2年目を公募中という現状でございます。
 工程表の説明までは時間の関係上,行きませんでしたけれども,この状況というものも踏まえまして,また前回の審議まとめも踏まえまして,資料2-2のとおりに各項目を国としては様々な取組を進めていくことにしているところでございます。
 時間が掛かりまして大変恐縮でございます。ありがとうございました。

【有信部会長】
 ありがとうございました。
 それでは,今の説明に関して御意見,質問等がありましたらお願いします。量的に振興の状況をチェックするとこうだという説明だったわけですけれども,特に三つの方針については引き続き検討しなければいけないというのは,いわば今後質的な問題を含めて考えていくというところが幾つか残っているような気もします。
 どうぞ。

【田中委員】
 質問なんですけれども,こうやって元の第3次の要綱があって,それからこの間決めた2040年を見据えたというのがあって,それで大体それに照らし合わせて丸とか三角というデータを出していただいたんですが,それをベースに私どもが審議しろということだと思うんですけれども,これは公表というか周知,今こんな段階になっていますよというのはどうやって周知するか,あるいはこの会議が公開しているから,そこに出しているからそれで終わりだということなのか,どういう方針ですか。

【平野大学改革推進室長】
 済みません,ちょっと言葉足らずでありましたけれども,今回これを御審議いただくのは次の施策要綱を作る上でどこが進んでいて,どこが進んでいないのかということをしっかり踏まえる必要があるという,まずはそこでございます。その一方で,今お話しいただきましたように「あるべき姿」(審議まとめ)というものを見ていただくと大体対応しているということから,進捗状況自体は前回の審議まとめにもある程度盛り込まれているわけでございます。私どもとしては,これはもちろんこの会議は公開されておりますし,この会議の資料というものは既にホームページに載っているという状況でありますけれども,今後振興施策要綱の議論をする中で,また,「あるべき姿」(審議まとめ)の普及というものをしていく中で,しっかりこういったエビデンスというものも示しながら情報提供に努めていくという使い方でございます。

【田中委員】
 では,その上でお願いしたいことなんですけれども,丸で進んでいるところはいいんですが,三角になっちゃっているところ,バツだというようなところについては,こういうことになっていますよということはよく分かるようにしていただいたらいいと思います。人文社会系の大学院の充足率が低いとか,いろいろなところに問題があると思うんですが,これは前の期のときに最後の方で私が申し上げたことと関係するんですけれども,だめなところをこんなだめなものがあるぞと示すというのも気が滅入ってくるので,どちらかというと,実際バツという状況の中でもこんなにいいことをやっているところもあるよというような事例を少しピックアップして,いろいろなところで見せていただくというのがいいんじゃないかと思うんです。
 今日の議論を伺っていてそう思ったんですけれども,国がこういうことで大学院教育をこうしろと言うのは大事といえば大事なんだけれども,大学というのはそれぞれが競争しているわけで,ある部分はそれぞれの大学で独自に自分のところで一生懸命やりなさいよというのが多分国の役割だと思うんです。そうすると,国が示せるのはせいぜいのところは,おまえのところはだめだというよりは,こんないいことをやっているところがあるんだから,あなたのところも工夫して追い付いたらという感じの情報提供をいろいろやっていただけるといいんじゃないかなと思っています。

【有信部会長】
 何か意見はありますか。
【平野大学改革推進室長】
 おっしゃるとおりでありまして,このバツの中においても既に,例えば,これは特定の事例を挙げるわけではありませんが,プレFDなんかには3.数%の大学が取り組んでいただいている,こういったところの先進的な取組というものを各大学が知って,そういうところというものを一つのターゲットに置いて改革を進めていただく,こういう情報の流通という部分はまさに国の役割かと思いますので,こういう進んでいないところで光る取組をやっているところという部分は重点的に掘り起こしを行いたいと思います。ありがとうございました。

【有信部会長】
 では,どうぞ。

【川端委員】
 今の話にも関係しているんですけれども,丸とかバツと,最後は集約していくとそういう表現になって,例えば12ページで,今言われたように文系の充足率は下がっているという話,その主な記載内容では大学は自らの責任によって定員の設定を見直すことと,こうやったら「こうしなさい」になっているんですよ。実は,この心は何かというと,大学院教育全体の質の向上を図るんだというのが話であって,これは一直線ではなくて,そこには心はいっぱいあって,一方で去年から共通指標だ,何だかんだといって大学はある部分,国立大学は特に震え上がっているんですよ,こういう数字が出るたびに。一体どこにこれが現れて,次にどこにこれが顔を出して何が起こるんだろうって,そういうような心はないにしても,それぐらいみんな敏感になっているんです。
 だから,そういう意味でこういう数字と施策というのをつなげてそのまま表に出すことよりは,そこの心の部分を丁寧にということで,先ほど言われたように心の部分を丁寧に表現していただくように発表していただけるとありがたいと。

【有信部会長】
 今,手が挙がっていましたか。どうぞ。

【佐久間委員】
 それぞれの大学が取り組んでいるよい取組について紹介していただくのは私も大事だと思うんですけれども,例えばこの資料2-1の2ページのところ,狭い分野の研究に陥りがちだった大学院教育を,既存の研究科・専攻の枠を超えて一貫した教育課程に変えていくというところは,残念ながら三角ないしバツということになっているわけです。これは前期にここで議論した審議まとめですので,ここに書いてあることはもちろん取り組んでいかなければならないことだと思うんですけれども,ただ,なかなかこれは難しいところがあって,要するに大学院の場合,当然学部より専門性が高いので,その専門性と汎用的な能力というのをどう折り合いをつけるかというのはすごく難しいところだと思います。それを博士前期課程,後期課程とそれぞれの枠の中でやろうとすると,ちょっとパンクしちゃうんじゃないかなというようなところがあるわけで,だからこそリーディングプログラムなんかは5年一貫ということでやっているわけです。今回の資料でもリーディングプログラムの取組の成果を広げていくということがうたわれているわけで,それは政策としてはそれでいいと思うんですが,ただ現実問題としては,多くの大学の大学院は前期課程と後期課程が分かれているわけじゃないですか。そうすると,じゃあ,どうしたらいいのかということになるわけです。
 これは先ほど1番目の議題で御指摘があったように,結局のところ,前期課程って何なのかとか,後期課程というのは何なのかということが置き去りにされてきた部分もあるわけで,リーディングプログラムの成果を大学が知って,それを自分のところに応用していくという,そういう大学の取組も大事なんですけれども,そもそもの大学院の課程の在り方というものを示す必要があるのではないでしょうか。それをやるところは,じゃあ,どこかというと,やっぱりこの大学院部会だと思いますので,そこは是非議論していただきたいと思います。今でも一貫制の大学院はあるわけですが,そういう方向にシフトしていくべきなのか,いろいろ難しい問題はあると思いますけれども,そういった議論が必要なんじゃないかと思います。ですから,そういうよい例を紹介していただくとともに,根本的なところの議論も避けては通れないんじゃないかと思いますが,いかがでしょうか。

【有信部会長】
 それぞれの課程に関しては,以前の17年答申のときも大分議論はされていたと思っています。ただおっしゃるように相変わらず,議論はして方向付けはしたものの,いまだに各大学の中で明確になっていない部分があるんだろうと思っています。特にいわゆる修士課程と,それから博士課程前期という言い方との差は一体どうなんだという話と,修士課程の役割というのは一体何なんだというのが,一応17年答申には書き込まれていますけれども,まだまだ明確に定義されたわけではないというか,恐らく全体の大学の人たちの頭の中のイメージがまだ明確になっていないんだと思うんです。
 それは当然で,モデルにしているのがアメリカのプロフェッショナルスクールとグラジュエートスクールというような分け方の流れと,日本の大学院制度とをどういうふうに折り合わせていくのかというようなことも十分には議論がされていない。つまりどっち側のモデルに持っていくのか,ボローニャ・プロセスでは明確にバチェラー,マスター,ドクターというスリーサイクルが一応定義されていて,これはアメリカのプロフェッショナルスクールとグラジュエートスクールという話,流れとは若干観点が違うんです。ヨーロッパの場合はスリーサイクルとはいいながら,いわゆる職位と学位との関連性が極めて強いので,プロフェッショナルスクールという区分けをしなくても,大学教育の中で特にディプロマサプリメントのようなところで様々ある程度補われていて,一方で専門的職業の入口のところでの試験がきちんとしているといういろいろな取り組み方がある中で,私たちはこれをどういうふうにきちんと整理していくかという議論が,今の佐久間委員の御指摘のように明確にはなっていないというところもあります。これも大問題だけれども,多分少しすっきりさせていかないといけないという気はしています。
 ほかに御意見はありますか。どうぞ。

【菅委員】
 遅れて来て申し訳ございませんでした。
 13ページですけれども,今日というのはお答えしていただく必要はないんですが,ちょっとびっくりしたんですが,日本学術振興会の特別研究員の採用支援者が減少しているということは,今我々が目指している2割を経済的サポートしようということと逆行しているというのはクリアじゃないかなと思うんですけれども,これは応募者数が減っていることに対応してこうなっているのか,また実際に日本学術振興会の特別研究員の採用を減少させているのかというのは,またいつか御説明いただけると,今できますか。できればちょっと一言頂けると。

【有信部会長】
 どうぞ。
【楠目人材政策推進室長】
 今,細かい資料が手元になくて恐縮でございますけれども,採用の率についてはおおむね2割となるよう維持されているところでございます。大学院については博士課程の入学者全体が減ってきている中で,社会人の割合が増えてきているということもあって,若干微減の傾向にあるというような状況でございます。

【菅委員】
 ということは,応募者数が減っているということに反映されているという理解でいいということですね。ということは,本質的に学生が減っているのは仕方ないことなんですけれども,右の方に書いてくださっていますが,結局日本の大学院とアメリカあるいはヨーロッパの大学院は何が違うかというと,ほとんどの向こうの,海外の学生というのは学位を取った後に就職活動が来る,つまり学位を持っているということが就職活動の一つのチケットになっているというのがもう一般的なんですけれども,日本は学位を取る前に就職が決まってしまうという唯一の国かなと思っているんですが,その部分を何らか変えない限りは,大学院の改革を一生懸命やってもだめだなという意見を最近私は持っていて,そこを少し,もちろん大学のスタンスもそうだし,それから学生たちもそれを理解していただかないといけないかなと思いますけれども,学位なくして就職はないというぐらいの強い大学院にしていかないといけないのかなという気はしております。

【有信部会長】
 この前からの御主張で。
 何かありますか。

【楠目人材政策推進室長】
 済みません,若干正確な数字で申し上げますと,平成29年から30年にかけては支援者数は若干増えておりますけれども,その前の27,28,29年の3年間にかけては若干微減しているところでございまして,支援者は大体横ばいのような傾向にあるところでございます。

【有信部会長】
 ほかに御意見。どうぞ,小西委員。

【小西委員】
 7ページのところの専門職大学院のところなんですが,些細なことかもしれませんが,平野室長も進捗の評価が○で御意見があるかも分かりませんがという前置きがあったように思います。○にしてしまうと,何かもう十分だというような感じがしますので,まだまだいろいろやっていかなければならない課題がありますので,できましたら△から○ぐらいのところにしていただければということでございます。

【有信部会長】
 どうぞ。

【平野大学改革推進室長】
 済みません。ここの部分の担当課としっかり相談して,位置付けは検討させていただきます。

【有信部会長】
 ありがとうございます。よろしくお願いします。
 ほかに。じゃあ,神成委員,加納委員の順番で。

【神成委員】
 基礎的なことを質問させていただきたいんですが,私はこの部会に入っているのでこういう要綱があるというのは委員になってからは分かっているんですが,あるいはネットでたぐっていけば普通の教員でも見ることができると思うんですが。しかし,私の所属するところが私立大学だからなのかもしれませんが,私も大学全体の大学院委員会みたいなところで全体の教育に対する議論というのは随分長いこと関わってきているにも関わらず,文部科学省からこういう要綱で大学院とか大学の変革が求められているという紹介さえもほとんど聞いたことがないというのが現状です。文部科学省からこういう要綱が大学に対してどういうメッセージとともに送られていて,何をタスクとして要求し,どのくらいのことをやりなさいというように伝わっているのかが根本的に私には疑問です。もしかしたらうちの大学だけがけしからんのかもしれませんが,そういうメッセージが大学内の上から全然下りてこないので,末端の教員にとっては,例えば分野を超えた教育を大学院の中に盛り込まなくてはいけないんだよというようなことを文部科学省が答申として推奨しているんだということに全く気付いていないという現状があると思うんです。恐らくこの委員会の先生方は国立大学の先生が多く,なおかつ統括部門の先生なので,そういう文科省答申は常によく分かっていらっしゃるというのが普通なのかもしれませんが,実際においてはそういう末端の教員にこういった文部科学省のメッセージがきちんと流れるような仕組みには,到底なっていないんではないかなと思うんですが,私の大学だけの特別な現状でしょうか。

【平野大学改革推進室長】
 大変厳しい御指摘でございます。私どももいわゆる各大学の,例えば学長が集まる会議とか,関係者が集まる会議で周知を行うとか,また各大学宛てにこのようなものをお送りさせていただくとか,いろいろと行っているところでございますけれども,やはりそれをどのように学内の教員にあまねくというところ,個々人の教員にアプローチするということは,現実問題はなかなか難しいところがございます。
 そのような意味においては,やり方自体も考えていく必要があるかもしれませんけれども,まずは各大学のマネジメント層という部分にしっかり御理解していただいて,これを学内での教育・研究活動の改善というものの材料にしていただくというメッセージと併せて発信していくことで,学内で多分これを聞いた,おしまいじゃなくて,これを材料に自分たちは何ができるのかということを考えていただけるきっかけとするような周知活動というものを意識して行っていく必要があるということを,改めて今のお話を聞いて思ったところでございます。

【有信部会長】
 ありがとうございました。もちろん大学の中でも,たまたま私が関係しているような大学でも,例えば部局長会議というんですか,学部長,研究科長,研究所長を集めた会議で一応説明して,それを各部局の教授会でまた説明するという段取りにはなっているんだけれども,その説明した内容がどれだけ正確に教授会で話されているか,それがどれだけ正確に伝わっているかというのはいつも問題になっています。だから,何重にもあるコミュニケーションギャップをどこかで超えていかないといけないんですけれども,今言ったように文部科学省も努力するし,大学サイドもそれなりに努力しなきゃいけない。途中にいろいろな判断が入る余地がありますし,一気通貫に文部科学省の指示に全部従えという形にはできないという部分もあって,いろいろ問題はあるかと思いますが,是非よろしくお願いします。
 では,加納委員,どうぞ。

【加納委員】
 一番最初の1ページ目,多分それ以降も同じだと思うんですけれども,このような数字で示してKPIというのをよく企業ではやるんですが,予算管理のようなやり方なんですが,実はちょっと気になったのは,例えばこの三つのポリシーを策定し,かつ公表するということについては,基本的にここが100%にならないので,丸ではないはずかなと思いました。もう一つは,主な記載内容の中で抽象的で形式的な記述にとどまるものというような,こういう問題提起がなされているわけですけれども,少なくともポリシーの策定,公表が100%であった上で,これが基本的にはベースメントにあるわけで,実際にはこの記載内容の中に書かれているような課題も存在していると思っておりまして,この表がきちんと次の施策につながるようなメッセージを発出しているはずなので,それをきちんと表現するということが必要かなと。なので,私はここを,100%になって記載内容にまだ課題があるとしたら三角になるわけで,多分達成目標は幾つなのかはまだはっきりしていないんですけれども,達成目標を明確にした上で,それに対して達成すれば丸の候補になって,まだ中身的に問題があるようであればそれを三角にするというようなぐらいに厳しい評価を,これは別に各大学は個性があっていいと思うので,それぞれの書き方だとか,その内容だとか,これについてはいろいろ各大学の色を出すべきだとは思うんですけれども,全体でマネジする上で見ると,やはり明確に達成しているかどうか,ベースメントと,それからアドバンテージというこの二つを分けて評価すべきかなと感じました。
 以上です。
【有信部会長】
 いや,それはそのとおりだと思います。それから,数字が達成されれば達成と見ていいものと,そうでないもの,今おっしゃったように三つのポリシーに関していえば,川端委員が最初におっしゃったように各大学がもっととんがった個性を出すということになると,みんな同じようなポリシーを作って100%といっても全く意味がないわけです。だから,そういう意味で次のステップというのはそのとおりだと思います。ありがとうございます。
 どうぞ。

【宮浦委員】
 今の議論に関連してなんですけれども,進捗の評価が丸,三角,バツが非常に分かりにくいかなと思うんですが,今見ましたらバツが1個しかないんです。それから丸は3個しかなくて,その3個のうちの1個は三角にしてほしいという御意見も出たので,丸は2個しかない,バツは1個で,その他全てが三角という現状で,丸,バツ,三角で何か現状を把握できるのかなというのが若干,丸,バツ,三角でほぼ全部三角なんですけれども,次につなげるかというのが,評価方法として次につながりやすいかどうかちょっとよく分からないなというのが今印象とあります。まだ5・4・3・2・1の方が,5はもうできたからほっておくとか,バツに近い三角は2とか,三角でも2と4はかなり違うと思いますし,恐らく全部三角に近い評価をして次に使いやすいかどうかはちょっとどうかなという,若干疑問に思いました。

【有信部会長】
 いや,この理解はいわゆる文部科学省の自己評価の理解なので,私たちはこれを参考にしながらその中身を見て,それで次の振興施策に,少なくとも丸になっていても,例えば質的にはまだまだ不十分だというのもある。例えばさっきの三つの方針にしても,一応みんな作っていますよと,だから丸となっていた。でも実際は本来これからやろうとしているところから考えると丸ではない。丸ではないというか,つまり次のアドバンテージのステップに進まないといけないという観点で是非見ていただければと思います。丸だからもうこれでいいとか,三角でバツに近いからもっと頑張らなきゃいけないとかそういうことではなくて,ということだと思います。
 ほかに。どうぞ。

【髙橋(修)委員】
 髙橋です。一つ思っていることがあって,先ほどよいケースを現場の先生まで届けるとか,あるいは要綱がなかなか私立大学の中ではみんな聞いていないよ,見ていないよという話なんかがあったと思うんですけれども,私が常々思っているのは,例えばリーディングプログラムとかは44の大学が既に完了しているわけですけれども,これって教育・研究という分けでいうと,二者択一でいうと教育側の取組になるのかもしれないんですが,44の大学で6,000人近くの学生が受講したという壮大な社会実験という見方もできて,研究的な要素もすごいあると思うんです。だから,何が起きたかというのを横串で解析していくことで,もしかしたら失敗した事例の中で同じようなことを別の大学が卓越で踏んじゃっているかもしれないとか,一歩一歩学問的にでも前へ進んだみたいな,そういう横串というのが刺さって分かったこと,分からないこと,課題みたいなものが見えてくると,それって多分皆さんはうなずける話だと思うんです。イメージがどうも定まらないような論点になっちゃうというのは,きっとそういう科学的なナレッジの広げ方みたいなものというのは大切なのかなと思いました。

【有信部会長】
 ある程度は一応できて,公表もしてあるんですけれども,多分それの普及のさせ方,そういう問題だと思いますので,それも工夫するということだと思います。
 済みません,例によってだんだん時間が押してきてしまいまして,もしよければ次の移らせていただきたいと思います。今日の御意見等についてはもう一度事務局で引き取っていただいて,今後の検討に向けて整理していただくということにしたいと思います。

 議題(3)として科学技術・学術政策研究所の調査結果について,坪井科学技術・学術政策研究所長から説明していただきます。よろしくお願いします。

【坪井科学技術・学術政策研究所長】
 科学技術・学術政策研究所の坪井です。
 それでは,まず資料3-1の科学技術の状況に係る総合的意識調査(NISTEP定点調査2018)を御説明したいと思います。

 まず2ページですけれども,当研究所では科学技術指標として取りまとめるような定量的分析のほかに,産学官の一線級の研究者や有識者への継続的な意識調査を通じて,科学技術の状況変化を定性的に把握するということを行っております。論文等の調査ですとタイムラグがあるわけですけれども,この意識調査はタイムリーな結果が得られるという点にメリットがあるります。科学技術基本計画の5年間,毎年1回,同じ方々に同じ質問のアンケート調査を継続的に実施することで最新の状況変化を把握するということで,今回は当初から数えると13回目ですけれども,第5期の基本計画中では3回目のいわゆる中間地点の調査に当たります。六つの質問パートで,全体で63問があります。
 3ページですけれども,ここは回答者グループの詳細です。質問の相手先はまず大学・公的研究機関グループの約2,100名,この中には学長クラスの方140名や,部局長から推薦された現場の研究者の方々1,600名,ここは特に理学,工学,農学,保健の分野の研究者ということになります。また産業界を中心としたイノベーション俯瞰グループの約700名の合計2,800名の方々で,それぞれの回答者グループに対して関連する質問をする形でやっております。
 4ページですが,毎年の同じ質問項目に加えて,毎年変更する深掘調査というものを行っておりまして,今年度は研究室・研究グループにおける研究教育活動の状況などについても深掘調査を実施しております。
 調査の時期は昨年9月から12月,回答率は91.1%。またこの個別の質問の回答には自由記述や評価の変更理由等の自由な記述も頂いておりまして,これらは9,400件,59万字という非常に大きな量を頂いて,これはウェブ上で公開しているものです。
 5ページは大学改革と機能強化の状況についての個別の質問になります。ここに掲げるような質問を行っております。ここで青色の白抜きの逆三角形が2016年,青色の逆三角形が今年,2018年の評価を示しておりますけれども,大学の経営の状況については学長,機関長等においては相対的に指数が高く,赤字で示した大学全体の,主に現場研究者の回答とはややギャップがあるところもございます。
 6ページですけれども,ここは自己変革を進めるための研究資金の配分など,ここでも学長や機関長と現場研究者の認識のギャップが見てとれるところがあるのではないかと思います。
 7ページから11ページにかけては,より詳細に十分度を上げた理由とか下げた理由の個別な理由もまとめております。また属性別の意見の違いもまとめているところです。
 特に11ページですけれども,ここは大学における学長・執行部のリーダーシップの状況の質問を一例として載せておりますが,評価を上げた理由としてはトップダウンの改革・戦略の遂行,進行とか,理事と直接話す機会が増えて努力していることが分かったという意見の一方,評価を下げた理由の方にはリーダーシップを発揮されているけれども,その方向性が構成員には理解できず,多くの批判が出ているというような意見もあります。このような改革に対する学長と執行部,現場研究者の意見,意識の違いといったものが,先ほどの回答傾向の違いとしても表れているという面はあろうかと思います。
 12ページは若手人材の育成に関係するものです。
 また13ページについては,やはりこの質問について評価を下げた理由などを見ますと,将来のキャリアパス,経済的な理由,民間企業の就職状況の好転,教員が疲弊し,学生に夢を与えていないというような指摘も見られたところです。
 飛んでいただきまして16ページですけれども,ここは大学や公的研究機関全体の研究環境の状況をまとめております。基盤的経費,研究時間,研究支援人材に対する危機感が継続していて,評価も2年前より低下しているというところがございます。
 また、17ページからは深掘調査です。過去のNISTEP定点調査において基盤的経費の減少が研究を通じて学生の教育指導にも影響を及ぼしているとの指摘が見られたので,この質問を今年行っております。17ページは大学等の研究室や研究グループの人員構成ですけれども,NISTEP定点調査の回答者は部局長から推薦された一線級の方々が多いので,平均的な印象よりは多いかもしれません。国公私立でバランスの違いはありますけれども,やっぱり学生が多くを占めている,特に国立大学では修士課程の学生が学生の中でも一番多くなっているところも見てとれます。
 18ページですけれども,こちらは基盤的経費の減少や研究活動の低下が教育・指導に与える影響について質問した結果です。一番左を見ますと,現状の基盤的経費のみでは学生が学位論文を書くための研究の実施が困難であるという認識が国立大学において顕著です。また一番右でも,大学等の研究室・研究グループの研究活動の低下は,学生の教育・指導にも影響を与えるという認識で,こちらも国立大学においてその度合いが顕著というところが見てとれます。
 19ページですが,ここでは学生の就職活動が研究活動に与える影響に注目しております。修士課程の学生の就職活動が研究室・研究グループの研究活動に影響を与えるという認識が大きい傾向が見てとれます。この問題に対しては,実は科学技術・学術審議会や,総合政策特別部会や,学術分科会にこの調査を報告した際にも,この問題の重要性の指摘の御発言がありました。
 また,自由記述はお手元のタブレットの方に載せております。様々な観点からの約700件ぐらいの自由記述が載っております。タブレット資料,机上資料3です。このような多様な意見が出ているということでございます。
 また,先ほどの元の資料の20ページですけれども,こちらは大学の研究活動の基盤的経費を充実されるために進めるべき取組として,企業との組織的な連携,寄附金,資産運用,出資事業,外部から獲得する資金の間接経費に賛成するという共通認識が産学官から示されています。ただ,この問いは運営費交付金以外という条件の質問だったので,自由記述の方を見ると,やはり運営費交付金の充実を求める意見が多数出ていたということでございます。
 21ページは改めてポイントを取りまとめております。
 22ページの方ですけれども,ここもまとめになりますが,この実際の状況判断はこのような意識調査だけではなく,定量的なデータも含めた総合的な分析や議論が必要であると思います。ただ,非常に切実な意見や,次々と繰り出される施策や事業に振り回されているという様子が見てとられますが,研究や教育に携わっている方は現場の研究者の方々ですので,各種施策の取組の成果を現場の研究者が感じ取り,教育や研究に集中できる環境の構築が急務と考えた次第でございます。

 あとは関連の資料でございます。
 続きまして,もう一つの方の資料3-2でございます。こちらは博士人材データベース(JGRAD)の取組についてです。
 2ページを開いていただきますと,当研究所では博士人材に関するこのような調査やデータベースの事業を進めてきています。3ページにありますようにこの事業に関しては第5期科学技術基本計画や,先ほどの第3次大学院教育振興施策要綱にも掲げられているところです。
 4ページですが,ここでは今年1月にまとめた「審議まとめ」にもこの記述をしていただいていますが,当研究所ではより多くの大学の参加を促すための呼び掛けを行うとともに,参加大学の協力を得る観点から,昨年当研究所でアンケート機能を用いて実施した意識調査の情報の提供,それから,実は参加大学においてもこのアンケート機能の利用が行えるようにするための手順もこの5月に決めて,その周知を行ったという状況です。
 5ページはこのJGRADの仕組みや収録されている情報,また6ページは参加大学,今現在47大学まで増えてきておりまして,全研究科での参加も28大学となっているところです。
 7ページは登録者の入学年度別とか修了年度別の分布のデータになりますけれども,大体入学年度別では2割程度,修了生ではまだ2割に達していないというような把握,登録の状況ということになります。
 8ページは登録者に対するインセンティブで,このような情報提供をしているということでの取組です。
 飛びまして10ページが昨年実施したアンケート機能を用いてやった結果ということになります。昨年の秋に実施しまして,大体登録者は1万6,000人ぐらいだったんですけれども,回答を頂いたのは修了生が647名,在籍生が1,920名ということです。
 あとは順次回答を載せておりますけれども,11ページでは,修了者の方は在籍中の異分野研究者との交流が役に立っているという回答が多かったこととか,在籍中にもっと経験しておきたかったのは語学力向上カリキュラムという回答が多かったというようなもの。また在籍者は,異分野研究者との交流が役に立つだろうというような認識の回答がありました。
 幾つか回答がありますけれども,飛びまして15ページのところですが,在籍者に対するアンケートで,希望する就職先ということで,全体としては大学への就職希望者が多いんですけれども,リーディングプログラムの対象者の在籍者はむしろ民間企業への就職希望の方が上回っているというような結果もありました。
 16ページでは在籍者にとってキャリアに対して気になる事項を聞いているものですけれども,大学就職希望者はアカデミアのポストが少ない,アカデミアのポストは不安定という回答が多く出ています。もう一点,昨年6月に閣議決定された統合イノベーション戦略では,博士号取得者が活躍できる環境の整備に向けて,産業界に理工系博士号取得者の採用目標数の拡大というのも掲げられているわけですけれども,このアンケートの中で民間就職希望者が気になる事項は,やはり博士採用に積極的な企業が少ないというようなことでした。
 このアンケートの結果は参考資料2にも記載しているとおりです。
 最後,18ページになりますけれども,JGRADより前から始めている,初回は全修了生に対して行う博士人材追跡調査として,2012年の修了生,2015年の修了生についてもまた新たな調査を今年度実施する予定にしているということです。
 時間的に恐縮ですが最後,参考資料1でお配りしている参考データ集というものもあります。このような数値的なデータもあるわけですけれども,特にこの資料でいいますと9ページのところの人口100万人当たりの学位取得者数のデータなどは,こちらのこの間の審議の取りまとめの概要版でも使っていただいたグラフかと思います。また,10ページでは5月の総合科学技術・イノベーション会議で内閣府が使った資料ですけれども,アメリカにおける外国人大学生の状況,これは科学・工学分野ですけれども,日本は減少しているということと,中国やインドは日本の約80倍の学生がいるというようなデータも見てとれるところがございます。
 20ページからは先週の5月30日に発表したばかりの「民間企業の研究活動に関する調査報告2018」というものですけれども,研究開発者の新卒採用を行った企業が多くなっているということとか,他組織との連携先としては国内の大学等が回答割合のトップだったという状況も見てとれます。
 今後とも当研究所は,いわゆるEBPMに基づく政策形成のためのエビデンス整備に貢献していきたいと考えておりますので,新しい定量的なデータなどがまとまりましたら,今後とも引き続き公表していきたいと思っております。
 以上でございます。

【有信部会長】
 どうも何か急いで説明させちゃったみたいで申し訳ありませんでした。ありがとうございました。質疑は後ほどということにさせていただきたいと思います。

 次に議題(4)ということで,「今後の就活の在り方」として日本経済団体連合会で4月に発表された取りまとめ等について,迫田委員と経団連の長谷川SDGs本部長より説明していただきたいと思います。よろしくお願いします。

【長谷川経団連SDGs本部長】
 経団連で教育と大学改革を担当しております長谷川と申します。本日は貴重な機会を頂きましてありがとうございます。
 資料4-1に基づきまして,この間の産学協議会がまとめました中間取りまとめと共同提言の内容を簡単に御説明させていただきます。

 1枚おめくりいただきましてページ1ですが,採用と大学教育の未来に関する産学協議会は昨年10月に経団連が,経団連として採用指針をもう策定しないということを公表した際に認識された問題意識が,設立の背景にあります。そのときの問題意識は,単に採用スケジュールが前倒しになるとか,後ろ倒しになるといったことではなくて,基本的に経済界がどのような人材を求めていて,大学教育に何を期待しているのか,またそうした人材の採用の在り方はどういうものがいいのか,若しくは学生にどのようなキャリア観を持ってほしいのかと,そういったより大きな大学教育のそもそもの内容の話と,逆に企業側にもいろいろ課題があって,企業側が求める人材を具体的に明らかにしてこなかったのではないかと,そういった問題意識があって,協議会を立ち上げたというものでございます。
 座長は経団連側が中西会長,大学側は,就職問題懇談会の座長ということで埼玉大学の山口学長にお願いしております。1月31日に第1回協議会を開催して,いろいろ問題意識を話し合ったんですが,産学協議会トップレベルですとなかなか議論が進まないということがございましたので,協議会の下に三つの分科会,Society5.0人材育成分科会,今後の採用とインターンシップのあり方に関する分科会,地域活性化人材育成分科会を立ち上げまして,こちらの分科会の方でこの4月の中間取りまとめをするまでに各3回ずつ,計9回の会合を開きまして,意見交換をいたしました。経団連のトップと大学のトップが直接意見交換する枠組みというのはこれが初めてということで,非常に活発に議論していただきました。

 産学協議会のメンバーにつきましては2ページ目,それから各分科会の委員名簿につきましては3ページ,4ページ,5ページに記載があるとおりでございます

 この4月の中間取りまとめでまず共有された認識でございますが,7ページ目,8ページ目のところですけれども,まずどういう人材を求めて,大学教育に何を期待しているのかということについてはSociety5.0人材育成分科会で集中的に議論いたしました。リテラシーとして数理的推論,データ分析能力,理論的文章表現力,外国語コミュニケーション力などがあった上で,理論的思考力と規範的判断力,課題発見・解決力,そして未来の社会を構想・設計する力,こういった能力を主として,学部教育を中心に育成してほしいこと。さらに,これらの能力はリベラルアーツ教育を通じても育成されるということでございます。その上に,更に高度専門職に必要な知識と能力が必要ということで,これについては学部だけではなく,大学院教育も関わってくるだろうということでございました。

 8ページ目でございますが,共通認識としては,Society5.0時代に求められる能力の育成は,大学だけではなくて,やはり初等中等教育から始める必要があるということ。それから,現行の採用日程に基づく実質3年間の大学教育では不十分であること。これは学部生のことを念頭に置いておりますが,現在の採用スケジュールですと大体,大学3年の4月から就職活動が始まってしまうと大学教育に身が入らないということで3年間になってしまっていて,それでは不十分であると。更に言えば大学院教育まで受ける必要があるということで認識を共有いたしました。
 また,現在既に社会人になっている人たちのリカレント教育も急務ということで認識を共有しました。具体的課題としては,実践的なPBL型の教育実施における大学と企業のマッチングの必要性,大学側には大学院教育において得られる具体的な専門性や能力を明示してほしいということが企業側からは指摘されましたし,逆に企業側に対しては,修士,博士課程に進学するインセンティブですとか,学習意欲の向上につながる柔軟な採用・人事評価制度への転換が求められるという意見が多数出ました。
 引き続きまして,採用とインターンシップに関しましては,こちらの分科会の経団連側座長をお願いいたしました迫田様から御説明いただきたいと思います。

【迫田委員】
 最初の分科会の方はある程度方向感が出たなという感じはしているんですけれども,私があずかった「今後の採用とインターンシップのあり方に関する分科会」はまだまだ同床異夢のところもたくさんございまして,引き続き議論が必要だと認識しております。
 まず一つは企業の中でも,先ほど大企業と中小企業は違うというお話がございましたけれども,大企業の中でもまだまだ随分温度差があって,デジタルディスラプションの影響とグローバル化の影響度合いによって大企業の中でも相当大きな差があります。それから大学の中でも国立,公立,私立でも大分お考えに違いがあり,また東京にあるところと地方にあるところで大分温度差がありますので,まだまだ議論が必要だと思っておりますが,今までの新卒一括採用だけではだめだということに関しては,ほぼ皆さんの意見は一致しており,ジョブ型を念頭に置いた多様な形の採用ということを考えなきゃいけないということは同じ思いであります。
 あと学修経験時間の確保,これが大事だということに関しても産学では違いはありませんで,しっかり勉強してもらいたいということを企業側も考えております。ただ,これを具体的な採用のやり方にどう生かすかというところについては,非常にまだまだ議論が必要だと思っております。先ほど大企業と中小企業ということがありましたけれども,今はやはり大企業志向というのが相当強いものがあって,就社意識,就職というよりは就社意識が非常に強い中で,まず大企業の方での就職活動が一段落しないと中小企業の方は進んでいかないとかいう問題も出てくるものですから,この辺の落としどころは非常に難しいなと思っています。
 それから,議論する中で随分出てきたんですけれども,留学の問題も,例えば企業側は相当大学院生に留学してほしいと思っているんですが,それがインターンシップの関係で事実上できなくなっているんじゃないかという御批判があったりとか,そういうところもいろいろな誤解がある。就職にこれが有利という情報だけが独り歩きして,企業側が本当は何を求めているかということもしっかり伝わっていないなというのが議論を始めたところの実感であります。この辺を埋める中で,例えば企業側からは卒業要件の厳格化,三つのポリシーと基本的に同じ話なんですけれどもそれをしっかりやってほしいという話だとか,もっとインターンシップの時期を考えてほしいだとか,こういうことがどんどんテーマとして出てきておりますので,今後は二つのタスクフォースを組んで,採用と,インターンシップの在り方について引き続き議論していくという段取りになっております。

【長谷川経団連SDGs本部長】  今後につきましてなんですが,14ページ以降なんですけれども,今,迫田分科会長様からも御説明があったとおり,今回はあくまで中間取りまとめということで,課題整理と共通認識を幾つかスタート地点で持ったということでございます。今後,各分科会の下に更にタスクフォースを二つずつぐらい設けまして,実務レベルでより具体的なアクションにつながる検討を進めていく予定にしております。

【有信部会長】
 どうもありがとうございました。
 座長の不手際で時間がもう12時になってしまいましたが,多少お許しいただいて,今の坪井所長の説明と,それから長谷川さん,迫田さんの説明に関して,両方併せて質疑の時間としたいと思います。御意見等がありましたら,どうぞよろしくお願いします。
 経団連の通年採用化という言葉が,実はかなり大学サイドでは誤解されていると思われるところもあって,通年というと年じゅう採用活動をやっているので,そうすると,今まで何月以降という縛りがあったのが,それがなくなってしまうという誤解になっていて,企業サイドで通年採用という場合は,実際には卒業した人たちを対象として通年採用をやるという意識で,この辺は議論の中ではもう誤解はなくなっているんですか。

【迫田委員】
 通年の定義については卒業した後という定義だよねということでは合意しております。ただ,それがマスコミへ流れたときに随分いろいろな取り上げられ方をしたので,そういう意味でいうとそこもまだ合意というわけではなくて,その議論の途中だということなんですが,その辺もまだまだ非常にあおられているところがあるので,誤解を生んでいるところだなと思います。

【有信部会長】
 どうぞ。

【高橋(真)委員】
 御説明ありがとうございます。
 コメントなんですけれども,14ページのところで社会人リカレント教育のリカレントというキーワードなんですが,たしかOECDのそもそもの定義では,1970年代でしたでしょうか,非常に幅広で多様性のある,一度卒業した後の大学とのコミュニケーションという意味で取り扱われていたと思います。片仮名ですと少しそれが矮小化されるようなイメージがあるので,今後のセクター間の人材の流動性をエンカレッジするような意味も含めて是非御議論いただければと思います。
 以上です。

【有信部会長】
 ありがとうございました。
 では,川端委員,どうぞ。

【川端委員】
 ありがとうございます。
 1点だけ,こういう議論をされたときに学部の話と,それから大学院の話,それから文系の話と理系の話,ここがまぜこぜになって大体議論されて訳が分からなくなっていくという世界があるので,是非ドメインごとに話を整理していただけるとありがたい。

【迫田委員】
 議論の中では,確かに大学と大学院,ちょっとここは分けて考えなきゃいけないよねという議論にもう既になっていますので,そこは大丈夫だと思います。

【長谷川経団連SDGs本部長】
 追加させていただきますと,文系と理系を分けるというのは,もちろん事情が大分違うというのもあるんですが,逆に今度は文理融合教育を進めてほしいという面もございますので,それは両にらみで議論しております。

【有信部会長】
 では,まずそちら。

【濱中委員】
 ありがとうございます。
 この科学技術の状況に係る総合的意識調査なんですけれども,
 資料3-1の13ページで読み上げてくださった,「教員が疲弊し,学生に夢を与えていない」,「それを見て学生は博士課程に進学しない」というのが,大学院問題の全てを語っているようにも思うわけです。私の周りの40代の教員たちも,「働き方改革」と「持続可能」という言葉を別世界のものと感じながら働いているという状況です。
 つまり,大学教員に多大な仕事が降ってくるのが現状で,そうした中,先ほどの資料2-1に戻りますと,検討課題としてあげられているのは,「制度の確立」と「質の向上のための施策」というものが中心になっている。ここで「量」の問題を加えることはできないものなのでしょうか。やはり充実した教育を可能にする教員,事務スタッフの拡充という「量」の問題というのは,どうしてもどこかで話しをしておかなければいけないことのように思います。先ほどの高橋真木子委員がおっしゃっていた,「実力ある教務が教育を支えている」という指摘はとても大切なことです。ほかの分科会で話をされていることなのかもしれませんが,教員は教育と研究にどれだけ集中できているのか。
関連して,私は適正な研究室規模というものはあると考えています。ここで再度調査結果を取り上げますと,17ページで国立大学と公立大学と私立大学で博士と修士と学部の比率がこんなにも違うということは強調されてしかるべきであるように思いました。そして学部規模が目立って大きい私立大学において研究室を動かすということがいかに大変かという点も共有すべきでしょう。研究室運営を助けてくれる博士やポストドクターがいないのです。先ほども別の委員の方から「文部科学省がこういった改革を今進めているというような情報が教員の側に届いていない」というような御発言もありました。有信部会長もおっしゃっていますように,コミュニケーションや伝達方式というところも多分にあるでしょう。ただ,教員たちが改革案を確認する余裕がないというのも一つの背景なのかもしれません。教員の時間,と量の問題というのを,難しいとは思うんですけれど,検討課題としても入れていただければと思いました。

【有信部会長】
 今のお話は文部科学省に対する要望ですね。
 では,宮浦委員,どうぞ。

【宮浦委員】
 ありがとうございます。
 産業界との産学協議会,非常にすばらしいと思うんですけれども,是非給与体系についても議論していただきたいと思います。なかなか一くくりでは議論できないと思うんですが,学部,修士,博士,プラス2年,プラス3年の年齢給だけなんでしょうかと。それがある限りはやっぱり学生も計算しますし,付加価値が高く教育したものが給与に反映されないケースがまだまだ多いのと,あとデータサイエンスの人材については取り合いになっているので初任給からある程度大幅に変えるという話題も結構出ておりますけれども,そういう特例的な側面がありますので,是非給与体系についても御議論いただければと思います。

【有信部会長】
 それはそういうことだと思いますし,今の日本の雇用環境は基本的には市場原理が働かない格好で雇用していて,みんな共通,横並びという形になっていますから。
 それから,これは追加ですが,大学院部会の前の審議まとめのところの資料の中にたしかあったと思いますけれども,全体的でいうと生涯給与は,アメリカほどではありませんが,学部卒,修士卒,博士卒でだんだん高学歴になるほど生涯収入は増えるというデータもあったように思います。初任給のところはまだどうかというところは分かりませんが。
 よろしいでしょうか。じゃあ,菅さん,どうぞ。

【菅委員】
 産学協議会は本当にすばらしい会をしていただき,ありがとうございました。期待しております,どういう成果がここから出てくるかと。
 一つだけ,文理融合について,リベラルアーツとしての学部の文理融合というのは十分あって,そういう教育をされるべきだと思うんです。ただ,大学院に行ったときに果たして本当に文理融合というのをやるのかというと,海外の例を見ても,アメリカの例を見てもほとんどの場合,例えばサイエンスをやった理系の人が最終的に修了した後にもう一度ビジネススクールに行くと。大体文理というのは本来分かれていて,その人間が文理融合していくというパターンだと思うので,なかなか大学院,今の大学に大学院で文理融合した教育をしろというのはかなりしんどいかなという気はするので,その辺も少し議論していただけると助かると思います。

【有信部会長】
 経団連のここの趣旨は,ある意味で従来の設置認可制度で明確に学問領域を分けているのを,もう少し文理融合の教育ができるような形で見直すというところが一つのポイントで,無理やり文理融合のプログラムを作れと言っているわけではない。今菅委員がおっしゃったように,もう一段踏み込んでそういう議論もしていただければと思いますけれども。
 ほかに。申し訳ありませんが,ほかにないようでしたら,どうぞ。

【大島委員】
 お願いになります。中間取りまとめの共同提言ということで非常にありがたく思っています。
 1点,産学連携のProject-Based Learning型の教育促進ということで,このような産学連携でProject-Basedで行うということは非常に良いと思っていますし,このような取り組みを取り上げていただくのは非常に良いことだと思っています。
 その際に二つあって,一つは大学と企業のニーズということをマッチングするのは大事だと思いますが,各企業に対しての個別対応になる傾向にあります。したがって,教育ではこれらを体系化していくことが非常に大事なので,先ほど就職のことに関係していますが,大企業や中小企業,あと物作り系の製造業や情報系でやはり異なりますので,そういう中で体系化していくということを是非視野に入れていただきたいということが1点目です。
 あと2点目は,今このPBL型の教育の現状は,比較的インターンシップと兼ね合わせて就職が目的になっているところがあります。そこの切り分けをきちんとしていただきたいということが2点目です。お願いで恐縮ですが,是非御検討のほど,よろしくお願いいたします。

【有信部会長】
 ほかに御意見がないようでしたら,誠に申し訳ありません。時間を超過してしまいましたが,本日の部会の議論はここまでにさせていただければと思います。本日はどうもありがとうございました。これで閉会にします。

【平野大学改革推進室長】
 次回は7月30日でございますので,よろしくお願いします。

── 了 ──

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