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昭和62年から平成13年まで大学審議会で様々な議論がなされてきた。学士課程を議論する上で基本となるのは学校教育法第68条の2である。これは平成3年に追加した条文で、それまで称号であった学士を学位に位置付けたものである。学位の分野は文部科学省告示に規定されているが、これは学士も修士も博士も同じ分野しか定められておらず、十分な規定とは言えないのではないか。
国立大学が法人化されたことによって、国立と私立の関係がどうなるのかが明確になっていない。学校教育法施行令には公私立大学の設置について規定されているが、国立大学に関しては何も規定されていない。今後、国立大学が学部などを新設する場合、どのようにするのか、公私立大学との関係という観点から考えていく必要がある。
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我が国の学部段階での教育の位置づけを考える上では、そもそも学部は本当に4年制であるべきなのかどうかという点は大いに考える必要があるのではないか。
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日本の現行制度の背景や歴史的経緯から考えて、EUが3年制だからという理由で単純に標準年限を一律に3年とするのは難しいのではないか。また、現状でも学部4年間での必要単位を3年間で修得してしまうことも可能であり、「単位」の考え方を実質化する等の方策をとらずに学部を3年間にしてしまうと学部教育がさらに薄くなる恐れがある。
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専門教育は大学院に重点を置き、学部はリベラルアーツを中心として3年間にして、その上に大学院を付け加えるという考え方も十分成り立ち得るのではないか。
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日本での議論は、アメリカのリベラルアーツを「一般教養」と勘違いしている場合が多い。リベラルアーツカレッジは日本の教養学部ではなく、必ずメジャーがあることに留意する必要がある。
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「学士課程教育」という概念を確立することが重要であろう。「学士課程教育」を説明する際、「教養教育」「専門教育」「専門職業教育」など色々な言葉が使われる。どのような視点で補助線を引けばうまく整理できると考えるか。
日本の学部の一部、例えば、文理学部などはリベラルアーツと言ってよいのではないか。
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旧制高校以来の文理学部や経済学部はリベラルアーツカレッジと言えるかもしれない。専門には職業専門とリベラルアーツ専門の2つがあり、これで補助線が引けるかもしれない。「単位」と修業年限は結びついており、きちんとした成績評価が必要である。日本には単位にならない卒論などがあるが、これも単位にして単位を実質化にすれば良いかもしれない。
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大学教育の質保証に関する国際的な調整の必要性について、具体的にはどのような動きがあるのか。また、アメリカやEUでは修業年限の話題はどうなっているのか。また、英国のデアリングレポートではどのようなことが書かれているのか。
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教育の質保証の動きは国際的なものになっており、質保証の国際的通用性が確立するのに5年から10年くらいはかかるのではないか。また、デアリングレポートにはサブデグリーを強化・拡大することが重要だと書かれている。これは、日本の高専が参考にされたという話も聞いている。
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基準上は単位と時間数で規定されているが、実際の現場では「コマ」という単位で動いている。1コマ90分だったり100分だったり様々だ。明確に整理した方がよいのではないか。
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アメリカの「associate degree」は4年制で出す場合もある。2年制と4年制が別の大学という概念ではない。
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日本は職業志向が強く、大学も職業教育を打ち出さないと生き残りが難しいという面もある。一般教養科目の修得必要単位数を各大学の判断に任せたところ、専門教育が拡大し、一般教養科目が減少したという現状がある。学士課程教育とは何か、専門基礎をどうするのか、その前提として職業志向をどう考えるかを検討しなければならない。
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アメリカの学士課程の変化の要因は、1つが学生紛争、もう1つがボケーショナリズム(職業教育重視主義)である。アメリカで一般教育リバイバルがあったのは70年代後半から80年代である。
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学部3年制と大学院という役割分担の形態も今後に向けて考えられるとは思うが、国際的通用性をどう確保するかが大きな課題だ。
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大学院での教育内容の如何にもよるのではないか。
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現在は単位互換が幅広く認められており、4年制大学以外での学修も単位に換算できるようになっている。こういった場合の学士課程の独立性や自主性についてどう考えるか。
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アメリカは州ごとの規則によるが、最後の1年が学位を出す基準になっているところが多いようだ。この問題は個々の大学の教育目標、学位の意味することによる面が大きいのではないか。4年間全て大学で教育を行う必要があるとする大学もあるだろうし、外での学修を積極的に認める大学もあるだろう。実際に1年間の寮生活を強制する大学もある。学位の趣旨に合っていれば良いのではないか。 |