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資料 6

英国における教育評価をめぐる状況

1   概況
   イギリスでは、1992年から教育評価(quality assessment)が実施されているが、教育評価は、専攻分野レベルと機関レベルの2つのレベルがあり、評価活動は各機関による自己評価とともに、高等教育審査機関(QAA[注1])が外部評価を実施する仕組みになっている。
   この評価作業が2001年をもって全機関完了するのに伴い、QAAをはじめ、高等教育財政審議会(HEFCE[注2])、全英大学協会(UUK[注3])及び高等教育カレッジ学長会議(SCOP)[注4]の関係4団体は、今後の評価事業の在り方を検討してきている。この間大学側からは、従来の外部評価に対する準備などが大きな負担となっていることが主張され、また費用がかかり過ぎるといった批判がなされている。
 
2   経緯
2001年3月   ブランケット教育雇用大臣の談話
  大学側の主張を受け、ブランケット教育雇用大臣は、審査期間の短縮やすでに高い評価結果を得た専攻については2度目の外部評価を省いて自己評価を中心とするなどの措置により評価を簡素化し、専攻レベルの評価業務を4割程度削減する提案を行った。
2001年6月   総選挙、労働党公約
  「高等教育機関の負担を軽減するために教育評価の内容を精選・簡素化する。」
2001年7月   HEFCE、QAA、UUK等による新しい高等教育評価手法の提案
     政府の提案を受ける形で、高等教育財政審議会、高等教育評価機構、全英大学協会及び高等教育カレッジ学長会議の関連4団体は連名で今後の高等教育評価の在り方に関する文書[注5]を公表した。
  【変更のポイント】
 
従来の評価は、機関レベルと専攻レベルを明確に区別していたが、これは必ずしも有効でなく、今後は機関レベルの評価に軸を置いて実施する。その際、学生数の10%程度をカバーする範囲で専攻レベルについても併せて評価する。
機関レベルの評価において、特に問題があると認められる専攻が明らかとなった場合に限り、追加の専攻レベルの評価を実施する。
このように、機関レベルの評価を効果的に行い、評価の必要が認められる専攻に対象を絞ることで、政府提案の40%削減に対して、少なくとも50%の評価業務の削減が可能である。
2001年8月   QAA長官の辞任
     QAA長官のRandall氏は、QAA等の提案した手法では十分な説明責任が果たせないとして、長官を辞任。
2001年9月   有力大学学長(Russell Group)[注6]によるQAA等の原案への反論
     有力大学の学長グループであるラッセル・グループは、各大学の主体性を重視し、専攻レベルの外部評価を廃止し、機関レベルの自己評価に対する外部評価で十分であると反論。
2001年10月   QAA等の提案に対する意見募集締切
2002年1月から9月   QAA等の提案に関する大学関係者等との協議(予定)
2002年秋   新たな教育評価の実施(予定)
 
注1: 高等教育審査機関=QAA:Quality Assurance Agency。1997年に設置された非営利の有限会社で、それまでの高等教育水準評議会(HEQC)の教育評価と高等教育財政審議会(HEFCE)の教育評価部門における教育評価を効率的に実施するために設置された。HEQCは、1992年に高等教育機関が共同で設立した機関で、大学副学長協会(CVCP)の設置した大学監査委員会(Academic Audit Unit)の機能を引き継ぎ、内部評価を中心とする機関レベルの評価活動を行った。高等教育財政審議会=HEFCE:Higher Education Funding Council for Engalnd。国の高等教育補助金配分機関。1993年から外部評価を中心とする専攻別評価活動を行った。
注2: 注1を参照。
注3: 全英大学協会=UUK:Universities UK。大学の長の全国団体。現在122校が加盟。2000年12月に全国副学長協会(CVCP)が名称変更したもの。
注4: 高等教育カレッジ学長会議=SCOP:Standing Conference of Principals。非大学高等教育機関の長の全国組織。全国60の高等教育カレッジのうち40が加盟。
注5: 文書は、Quality assurance in higher education (Hefce 01/45、2001年7月)。
注6: 全国19の有力大学の長からなる団体で、これにはオックスフォード大学やケンブリッジ大学、エジンバラ大学などが含まれ、教育・研究、高等教育財政など高等教育全般に係わって積極的な発言を行っている。

(文部科学省『諸外国の教育の動き』第290号等をもとに作成)

 

(高等教育局高等教育企画課)

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