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資料 5

ABA(American Bar Association)の行う適格認定について

1   ABAの性格
   ABAは、弁護士35万人以上を含む40万人以上の会員からなる民間の法律家の協会。
   1921年に法学教育のための最低基準を採択し、この基準を満たすロースクールのリストを出版。現在、全米で約180のロースクールがABAによって認定。
   ABAの審議会(American Bar Association, Coucil of the Section of Legal Education and Admissions to the Bar)は、法学分野における専門アクレディテーション機関として連邦政府により認証(1952年)。
   大多数の州最高裁判所は、その州の弁護士資格の取得に必要な法学教育が個々のロースクールで行われているか否かを、ABAの認定ロースクールであるか否かにより判断。
 
2   ABAの認定手続きの流れ(「Rules of Procedure for the Approval of Law Schools」より)
 
   ロースクールからABAコンサルタント(認定事業の実施責任者)への申請書、自己評価報告書等の提出
 
[必要書類]    大学総長及び学長の申請書、実地調査用質問票の完全な回答書、年間活動質問票の回答書、自己評価報告書、過去3年間の財政活動報告書及び貸借対照表、利用する土地・施設に係る所有権を証明する書類、実地調査の希望時期 等
   実地視察団による実地視察
 
   実地調査は通常の授業が実施されている時に、申請書の受理から3ヶ月以内に実施。
   通常3日以上を要し、授業の視察、教員の質の審査、アドミッションポリシーの審査、記録簿の監査、施設の検査、図書館審査、質問票における情報の確認、大学総長(president)その他の管理職員、学長(dean)、ロースクール教員、学生等との面接により実施。
   実地視察団は速やかに実地視察報告書を作成。
   実地視察報告書へのロースクールの意見申立
 
   実地視察報告書は、当該大学の総長及び学長に送付し、修正及び意見申し立ての機会を付与。
   アクレディテーション委員会による認定の可否の決定
 
   ロースクールの申請書類、実地調査報告書、期限内にロースクールから提出された資料、その他の関連情報に基づき、申請を審査し、可決を決定。
   決定に対するロースクールの再審査請求
 
   ロースクールは、アクレディテーション委員会の決定について、決定がなされた日から30日以内に委員会又は審議会に対し、再審査を請求し、又は不服申立てを行う。
   審議会による認定の可否の決定
 
   審議会は、委員会が決定を下した際に提出された資料、委員会の決定通知書、及び審議会におけるロースクールの申し立てに基づき審議を行い、認定の可否を決定。
   審議会決定に関するロースクールによる代議員会への申立
 
   審議会において仮認定又は正式認定の申請が否決されたロースクールは、当該決定を代議員会に申し立てる(appeal)ことができる。
   代議員会(House of Deligates)による決定
 
   審議会における仮認定又は正式認定の決定は、代議員会において審議・賛成されて初めて効力を発生する。
   代議員会が審議会に差し戻す場合には、理由を明示する必要。差し戻しは最大2回、2回目の差し戻し後は、審議会の決定が最終的なものとなる(代議員会による確認手続き不要)。
   
   「仮認定」の申請は、ロースクールとして1年以上の活動後に初めて行うことができ、「正式認定」の申請は、仮認定後2年以上の活動後に初めて行うことができる。
 
 

 
主なABA認定基準
 
【   】内の番号は、ABA認定基準の番号
《教員組織》
   教育(学歴)、教室における授業能力、教育・実務経験、並びに学術研究・論文により証明される、高い能力を有する教授を有するものとする【401a】
   
   LSは、本基準の要件を満たし、その教育プログラムの必要に応じた、十分な人数のフルタイムの教授団を有するものとする。人数は以下の事項により定まる。【402a】
 
   学生の規模、個別に教授に面会して相談する機会
   教育プログラムの性質及び範囲
   教授が教える義務を果たすとともに、学問的研究を行い、LSの運営・法曹界及び公共に対する奉仕に効果的に参加する機会
   
   開校初年度のLSは、1名のフルタイムの学長及び1名のフルタイムの法律図書館長に加え、少なくとも6名のフルタイムの教授団メンバーを有するものとする。【402b】
   
   フルタイム教授団メンバーは、学年度中、実質的にすべての就労時間を教育、法学研究に注ぎ、かつ、LSの管理及びサービスに参加し、学外で事務所を持ったり事業活動を行わない者である。【402c】
   
   LSの教育については、フルタイムの教授団が主要な責任を負う。【403a】
   
   フルタイムの教授は、フルタイムのカリキュラムの1年目又はパートタイムのカリキュラムの最初の2年間の全授業の主要な部分を担当する。【403b】
   
   LSは、教育プログラムを向上させるために、フルタイム又はパートタイムの教官の中に経験豊かな弁護士及び裁判官を含むべきである。LSは、これらの教官に対し、オリエンテーション、指導、監督及び評価を行う。【403c】
 
《教育内容・方法等》
   LSは、卒業生が弁護士資格を取得できるようにすること、及び効果的かつ責任を持って法曹に参加できるようにすることを準備する教育プログラムを維持するものとする。【301a】
   
   LSは、学生が現在及び将来起こりうる法的問題を扱う準備をさせる教育プログラムを維持するものとする。 【301b】
   
   LSは、法又は法曹の特定の側面に重点を置いた教育プログラムを提供することができる。【301c】
   
   LSはJDプログラムの全学生に対し、以下のものを提供する。【302a】
 
   法曹として効果的かつ責任を持って活動するために必要とされる実定法、その背後にある諸価値及び技能(法的分析及び推論、法的調査、問題解決、及び口頭又は書面でのコミュニケーションを含む)についての教育、
   最低1つの厳格な論文作成の経験、
   法曹の専門的技能についての指導に対する適切な機会の付与
   
   LSは、JDプログラムの全学生に対し、ABAの模範弁護士行動準則についての教育を含む、法曹の歴史、目標、構造、義務、価値及び責任についての教育を義務づけるものとする。LSはこの教育に裁判官及び弁護士を関与させるべきである。【302b】
   
   LSの教育プログラムは、セミナー、直接指導による研究、少人数クラスでの適切な研究機会を提供する。【302c】
   
   LSは、実際の依頼者その他実社会の実務経験を提供するものとする。LSはこの経験を全学生に対して提供する必要はない。【302d】
   
   LSは学生に対し、プロ・ボノ活動に参加する機会を提供すべきである。【302e】
   
   LSは、司法試験準備のためのコースを提供することはできるが、当該コースに単位を与え、又は当該コースを卒業の要件としてはならない。【302f】
   
   LSは、学生の規律遵守、進級及び卒業についての明確な基準を含む、学業成績についての適切な基準を有し、かつこれを遵守する。【303a】
   
   LSは、学習継続が当該学生に誤った希望を抱かせ、経済的搾取となり、又は他の学生に有害な影響を与える程、学習能力の欠如が明らかな学生には在学を継続させないものとする。【303c】
   
   LSは、全ての教授団メンバーが404aの方針における責任をどの程度果たしているかを定期的に評価する。【404b】
   
   1学年度は、少なくとも8ヶ月以上の期間とし、少なくとも130日は授業(読書・試験期間を除く)が行われるものとする。【304a】
   
   LS外における学習・活動、又は通常授業への出席を要しない学習活動への参加を許容しまたは求める教育プログラムを開設できる。【305a】
   
   基準の在学期間中及び授業時間の要件を満たす単位が与えられる時間の合計のうち、45,000分以上は、LSにおける計画された授業への出席、又は、学生が他のLSで単位を与えられている場合は、当該単位を与えるLSにおける授業への出席によるものとする。【305b】
   
   在学期間中に取得した授業時間単位は、学生が費やした時間・努力・学生の教育経験の質に相応しいものとする。【305c】
   
   学習・活動の成果は教授団のメンバー(フルタイム、パートタイム又は補助教員)によって評価される。【305d】
   
   学習・活動はLSのカリキュラム承認手続により事前に承認され定期的に見直される。【305e】
   
   実地指導プログラムについては  【305g】
 
   第1学年度を修了するまでは参加できない
   実地指導期間中においては、教員・学生間で確実かつ定期的なコミュニケーションを行う
   実務指導官は、教授団メンバーとともに評価に加わる
   教授団メンバーは現場を定期訪問する
   併行して教授団メンバーが授業・個別指導を行う。
   
   LSは、審議会の承認を得ることなくJDプログラムに追加して他の学位プログラムを設けられない。【307】
   
   LSは、JDを取得するために必要な単位の3分の1を超えない範囲で、他の州認可のLSにおける学習に対して単位を与えることができる。【506ab】
   
   LSは、JDを取得するために必要な単位の3分の1を超えない範囲で、外国のLSにおける学習に対して入学を許可し単位を与えることができる。【507ab】
  《課程の修了要件等》
   LSは卒業の要件として、6学期間以上にわたって、学外研究を含め、56,000分以上の授業時間を修了することを要求するものとする【304b】
   
   学生は、各学期10単位以上登録し、9単位以上取得しなければならない。【304c】
  《施設及び設備等教育条件》
   LSが大学に所属していない場合、所属していても大学の他の部分から離れた場所にある場合には、LSは大学の図書館でのみ一般に発見できるような資料を含むように図書館の蔵書を拡充し又は同地域内の他の教育機関との関係を発展させることによって、学生及び教授団に大学との関係に通常由来する利益を提供するよう努力すべきである。【208】
   
   LSは、法律図書館を維持するものとする。【601a】
   
   法律図書館は、LSの授業、研究及びサービスプログラムを支えるのに十分な経済的基盤を有するものとする。【601b】
   
   LSは法律図書館の十分な独立した管理上の自治権を有するものとする。【602a】
   
   学長及び図書館長はLSの教授団と協議の上、図書館に関する方針を決定するものとする【602b】
   
   法律図書館長及び学長は、人材の選任・雇用、サービスの提供、蔵書の維持・拡充について責任を負う。【602c】
   
   法律図書館の予算は、LS予算の一部として決定され、同様の方法で管理されるべきである。【602d】
   
   法律図書館は、フルタイムのディレクター(館長:LS教授団の一員)により管理される。【603ad】
   ディレクターの資格要件は、法学の学位および図書館学または情報科学の学位を有し、かつ、図書館の運営に通じていること。【603c】
   
   法律図書館は、適切な図書館サービスを提供するのに十分な数の有能な職員を有するものとする。【604】
   
   レファレンス(文献照会)、ビブリオグラフィー(文献目録)その他LSでの教育・研究に必要なサービスを提供するものとする。【605】
   
   法律図書館は、LSの学生、教授の教育、研究上の要求を満たす十分な蔵書を有するものとする。【606】
   
   LSは、現在の法学教育のプログラム及び直近の将来において予想される成長の両方について適切な物理的施設等を有するものとする。【701】
   
   法律図書館の広さ、場所及びデザインは、LSのプログラム及び登録学生数に照らし、LSの学生、教授団、法律図書館のサービス、蔵書、スタッフ、運営及び設備に関して十分なものとする。【702】
   
   LSは、その施設内に、学生及び教授団のために、調査研究のための座席を確保する。【703】
  《管理運営等》
   学長(dean)及び教授団(faculty)は、教育方法、入学、学生の在学・進級及び卒業についてのアカデミック・スタンダードを含むLSの教育プログラムを作成してこれに従った運営をし、かつ、教授の選抜、採用、昇進、テニュア(終身在職権)付与について勧告するものとする。【204b】
   
   LSの学長は、経営委員会又は経営委員会が指名した者によって選ばれたフルタイムの学長を有するものとし、学長はその選任者に対して責任を負う。【205a】
   LSは学長に対し、その地位に伴う責任及び本基準に規定された責任を果たすため必要な権限及び支援を与えるものとする。【205b】
   
   学長及び教授団の双方が、各LSの定めるところにより、教育方針の決定について実質的な権限を有する。【206】
   
   LSは、同窓生、学生その他の者を関係者あるいは助言者として関与させることができる。しかし、学長及び教授団は、LSの教育プログラムに影響を与える事項についてコントロールを保持するものとする。【207】
   
   LSの学長及び教授団は、その使命の表明を含む文書による自己評価を作成し、定期的にこれを改訂するものとする。
   自己評価は法学教育プログラムについて記述し、LSの使命に照らしてそのプログラムの長所、短所を評価し、プログラムを改善するための目標を設定し、LSが未だ実現できていない目標を成し遂げるための方法を述べるものとする。【202a】
   
   自己評価は、当該LSの法学教育プログラムが基準301(a)及び(b)(目的)の要件にどのように従っているかを記述するものとする。【202b】
  《学位関係》


   LSは、学位取得の要件が満たされると同時にJD学位を授与するものとする。【102c】
  《入学資格等》
   LSの入学許可方針は、その教育プログラムの目的及び当該目的を実現するために利用可能な諸資源に一致したものとする。【501a】
   LSは、その教育プログラムを満足に修了し、法曹資格を認定される能力がない入学希望者の入学を許可しないものとする。【501b】
   
   学士号を有するか学士号を得るために必要な単位の4分の3を修了したことを入学許可の要件とする。【502a】
   特別な場合に、LSは、入学希望者の経験、能力その他の特徴が、法律を学ぶ適性を明らかに示す場合は、学士号を有していない者を入学させることができる。【502b】
   
   LSは入学試験を実施する。LSATを利用しない場合は、他の適切な試験を利用していることを証明する。【503】
   
LSは、適切とみなす範囲において、入学許可判定機関が入学希望者の人格及び適切を決定する上でLSにとって有益・適切と判断したテスト、アンケートまたは紹介状を利用できるものとする。【504】
   
   LSは、過去に学業上の理由から失格とされた学生が、必要な能力を有すること、及び以前の失格が入学許可するロースクールにおいてプログラムを修了する能力の欠如を意味するものではないことを証明したときには、入学又は再入学を許可することができる。【505】

 

(高等教育局高等教育企画課)

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