資料1-3 第2期教育振興基本計画 初等中等教育分科会関連箇所抜粋

第2部 今後5年間に実施すべき教育上の方策 ~四つの基本的方向性に基づく,8の成果目標と30の基本施策~

基本的な考え方

  • 国が行う教育政策の意義・狙いを国民一般,関係者等に分かりやすく伝え,共有するとともに,政策を効果的かつ着実に実施するためには,目標を明確に設定し,成果を客観的に検証し,そこで明らかになった課題等をフィードバックし,新たな取組に反映させる検証改善サイクル(PDCAサイクル)の実践が重要である。
  • この点を踏まえ,本計画においては,第1部に示した四つの基本的方向性の実現に向けて,平成25年度から平成29年度までの5年間における,1.成果目標,2.成果指標,3.その目標を達成するために必要な具体的施策を示すこととする。
  • なお,本計画に掲げる成果目標等は,教育の実施の多くを民間や地方公共団体が自律的に担うものであることに留意し,国全体において目指すべき水準,国自身が行う施策を整理したものである。各実情に即した具体的な教育の在り方,目標については,国全体の方向性も参考にしつつ,各関係者が自主的に設定することが望ましく,そのような自発的取組を国として促すこととする。

(注1:成果目標の考え方)

  • 成果目標は,政策の事業の量ではなく,教育政策の受益者(学習者,社会全体)に対していかなる成果(アウトカム)を目指すかといった観点に基づく目標である。
  • その内容として,最終的には,経済指標の向上など社会全体への波及効果を目指すべきであるが,これらの効果の発現に当たっては長期間を要し教育政策以外の様々な要因が介在するため,教育政策との因果関係の立証は必ずしも容易ではない。このため,本計画では,社会全体への波及効果を目指しつつ「どのような知識・能力が身に付くことを目指すのか」,あるいは「どの程度教育を受ける機会を確保するのか」といったような教育政策による寄与が比較的大きいと考えられる成果目標を設定。
  • また,教育政策のアウトカムによる目標設定が困難である場合には,例えば,全国的な取組数の増加など教育政策の実施により直接的に発現する結果(アウトプット)に係る目標を設定。

(注2:成果指標の考え方)

  • 成果指標は,成果目標の内容を補足するとともに目標達成度を直接的又は間接的に測定するための指標として,本計画においては,特に重要と考える指標を例示。その際,客観性の確保のためには数値による指標設定が望ましいが,数値化が困難である指標については経年において増減を把握できる内容とする。
  • また,達成度の評価に当たっては,本計画に記載しなかった様々な指標の活用や新たな指標の開発,様々な事例の収集等も考慮することが重要。

(注3:基本施策の考え方)

  • 施策は,本計画に定める成果目標の達成に向けて,5年間において実施する取組(インプット)であり,いつどのように行うのかといった工程(インプット目標)を極力明記。

1 四つの基本的方向性に基づく方策

1.社会を生き抜く力の養成

(1)主として初等中等教育段階の児童生徒等を対象にした取組

成果目標1(「生きる力」の確実な育成)

  変化の激しい社会を生き抜くことができるよう,「生きる力」※1を一人一人に確実に身に付けさせることにより,社会的自立の基礎を培う。また,一人一人の適性,進路等に応じて,その能力を最大限伸ばし,国家及び社会の形成者として必要な資質を養う。
(※1)生きる力:いかに社会が変化しようと,自ら課題を見付け,自ら学び,自ら考え,主体的に判断し,行動し,よりよく問題を解決する資質や能力など,「確かな学力」,「豊かな心」,「健やかな体」から成る力
(確かな学力※2)世界トップの学力水準を目指す。
(※2)確かな学力:1.基礎的・基本的な知識・技能の習得,2.知識・技能を活用して課題を解決するために必要な思考力・判断力・表現力等,3.学習意欲などの主体的に学習に取り組む態度

【成果指標】

  1. 国際的な学力調査の平均得点を調査国中トップレベルにする。
      あわせて,習熟度レベルの上位層の増加,下位層の減少。
      全国学力・学習状況調査における過去の調査との同一問題の正答率の増加,無解答率の減少
  2. 児童生徒の学習意欲の向上や学習習慣の改善
  3. 幼・小・中・高等学校における障害のある幼児児童生徒に対する個別の指導計画及び個別の教育支援計画の作成率の増加

(豊かな心)豊かな情操や,他者,社会,自然・環境と関わり,自らを律しつつ共に生きる力,主体的に判断し,適切に行動する力などを持つ子どもを育てる。

【成果指標】

  1. 自分自身や他者,社会等との関わりに関する意識の向上
    • 学校のきまりを守っている児童生徒の割合の増加
    • 自分には良いところがあると思う児童生徒の割合の増加
    • 人の気持ちが分かる人間になりたいと思う児童生徒の割合の増加
    • 将来の夢や目標を持っている児童生徒の割合の増加
    • 地域社会などでボランティア活動などに参加している児童生徒の割合の増加など
  2. いじめ,不登校,高校中退者の状況改善(いじめの認知件数に占める,いじめの解消しているものの割合の増加,全児童生徒数に占める不登校児童生徒数の割合,高校中退者の割合の減少など)(成果目標6に後掲)

(健やかな体)今後10年間で子どもの体力が,体力水準の高かった昭和60年頃の水準を上回ることを目指すなど,生涯にわたってたくましく生きるために必要な健康や体力を養う。

【成果指標】

  1. 体力の向上傾向を確実にする(今後10年間で子どもの体力が昭和60年頃の水準を上回ることを目指す)。
  2. 学校における健康教育・健康管理の推進
    • 健康の重要性を認識し,日常生活の実践に生かしている児童生徒の割合の増加
    • 学校保健委員会を設置する学校の割合の増加
    • 朝食を欠食する子どもの割合の減少
    • 学校給食における地場産物を使用する割合の増加

<5年間における具体的方策> 

基本施策1 確かな学力を身に付けるための教育内容・方法の充実

【基本的考え方】

  • 子どもたちに基礎的・基本的な知識・技能と思考力・判断力・表現力等,主体的に学習に取り組む態度などの確かな学力を身に付けさせるため,教育内容・方法の一層の充実を図る。その際,特に,自ら課題を発見し解決する力,他者と協働するためのコミュニケーション能力,物事を多様な観点から論理的に考察する力などの育成を重視する。
  • このため,グループ学習やICTの活用等による協働型・双方向型の授業への革新,学校と家庭・地域との連携の推進を図りつつ,新学習指導要領を着実に実施する。また,高等学校段階においては,高校生としての基礎的・基本的な学力を確実に身に付けさせるため,生徒の学習の到達度を適切に把握する仕組みを導入するなど,高等学校教育の質保証に向けた取組を進めるとともに,各学校における地域の実情や生徒の実態を踏まえた育成すべき資質・能力に応じたきめ細かい施策を講じる。

【主な取組】

  • 1-1 新学習指導要領の着実な実施とフォローアップ等(言語活動,理数教育,外国語教育,情報教育等の充実)
    • 新学習指導要領の趣旨が各学校現場で理解され,実現されるよう周知・広報を推進する。特に,思考力・判断力・表現力等の効果的な育成に向け,各教科等を通じた言語活動の充実のための取組を推進するとともに,児童生徒のコミュニケーション能力や情報活用能力の育成,観察・実験の重視をはじめとした理数教育や外国語教育の充実のため,指導体制・教材等の整備や効果的な指導方法に係る情報の収集・提供などの支援に取り組む。
        また,全国学力・学習状況調査や国際的な学力調査などの結果等により,新学習指導要領の実施状況や学校現場が抱える課題を把握し,必要な支援策を講じるとともに,学習指導要領の不断の見直しを行う。さらに,土曜日における授業や体験活動の実施など,各地域の実情を踏まえ,土曜日の活用を促す。あわせて,新学習指導要領の実施以後の学校現場での指導の実態や課題等も踏まえながら,教科書の内容・体様等について,教科書発行者に対してより一層の改善を促す。
  • 1-2 ICTの活用等による新たな学びの推進
    • 確かな学力をより効果的に育成するため,言語活動の充実や,グループ学習,ICTの積極的な活用をはじめとする指導方法・指導体制の工夫改善を通じた協働型・双方向型の授業革新を推進する。
    • デジタル教科書・教材のモデルコンテンツの開発を進めつつ,各教科等の指導において情報端末やデジタルコンテンツ等を活用し,その効果を検証する実証研究を実施する。実証研究の成果を広く普及すること等により,地方公共団体等に学校のICT環境整備を促す。また,学校において多様な情報端末でデジタル教材等を利用可能とするため,デジタル教材等の標準化を進める。さらに,できるだけ早期に全ての教員がICTを活用した指導ができることを目指し,教員のICT活用指導力向上のための必要な施策を講じる。
  • 1-3 高等学校教育の改善・充実
    • 高等学校において, 高校生としての基礎的・基本的な学力を確実に身に付けさせるため,生徒の学習の到達度を把握するための新たなテストの導入に向けた取組を進めるとともに,教科・科目の特性を踏まえつつ,技能検定の活用等を促進し,客観的な把握に基づく評価の充実を図る。
    • さらに,高等学校教育を通じて身に付けるべき資質・能力を多面的に評価する手法について調査研究を進める。
  • 1-4 復興に向けた教育の推進
    • 東日本大震災の教訓を踏まえ,被災地の復興とともに,我が国全体が希望を持って未来に向け前進するための教育を「復興教育」と位置付け,被災地における多様な主体による特色ある教育支援の取組や教育プログラム作成を支援することにより,社会を生き抜く力の育成に向けた新たな教育のモデルを開発・普及する。
    • 東京電力福島第一原子力発電所の事故の教訓を踏まえ,児童生徒等の発達段階に応じて放射線に関する正しい理解を促進するために必要な取組を推進する。
  • 1-5 社会的・職業的自立に向け必要な能力を育成するキャリア教育の推進
    (基本施策13-1に後掲)

基本施策2 豊かな心の育成

【基本的考え方】

  • 子どもたちの豊かな情操や規範意識,自他の生命の尊重,自尊感情,他者への思いやり,人間関係を築く力,社会性,公共の精神,主体的に判断し,適切に行動する力などを育むため,道徳教育や人権教育を推進するとともに,体験活動や読書活動,生徒指導,青少年を取り巻く有害情報対策等の充実を図る。

【主な取組】

  • 2-1 道徳教育の推進
    • 「道徳の時間」を要として学校の教育活動全体を通じた道徳教育の質の向上を図り,道徳的な心情,判断力,実践意欲と態度などの道徳性を養うため,「心のノート」をさらに充実させ,全小・中学生に配布するとともに,道徳教育推進教師を中心とした指導体制の充実や教員の指導力の向上への取組,魅力的な教材の開発や活用など,児童生徒の発達段階や学校・地域の実情に即した多様な取組に対する支援を行う。こうした取組の成果も踏まえつつ,道徳をその特性を踏まえた新たな枠組みにより教科化することについて具体的な検討を行う。
  • 2-2 人権教育等の推進
    • 学校における人権教育の指導方法等に関する調査研究とその成果の普及,実践事例の収集・公開等により,教育委員会・学校における人権教育の取組の改善・充実を支援する。
        さらに,学校・家庭・地域の連携により,社会参画意識や公共の精神など主権者として社会で自立するための基礎的な能力や態度の育成に資する取組を推進する。
  • 2-3 生徒指導体制及び教育相談体制の整備・充実
    • 小・中・高等学校の継続性を保ちつつ,関係機関等と連携を図りながら,全校体制で一人一人の 児童生徒の健全な成長,自ら現在及び将来における自己実現を図っていく自己指導能力の伸長を目指した各学校における教育活動を促進する。
    • 教育相談を必要とする全ての小・中学生が適切な教育相談等を受けることができるよう,スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー等の外部専門家の活用など教育相談体制の整備を支援するとともに,各学校や市町村等における不登校の子ども等の教育機会の確保や児童生徒の自殺防止に向けた取組を支援する。
  • 2-4 いじめ,暴力行為等の問題への取組の徹底
    • いじめは決して許されないことであるが,現実的には「どの子どもにも,どの学校でも起こり得る」ものであることを周知徹底し,定期的に児童生徒から直接状況を聞く機会を確実に設ける等,各学校及び教育委員会における,いじめの実態把握のための取組を促進するとともに,いじめの問題に関する認識を深め,人権感覚を涵養し,早期発見や適切に対応できる能力を向上するため,いじめの問題に関する教職員への研修等の充実を図る。
    • いじめや暴力行為等を未然に防止するため,道徳教育・人権教育・体験活動等の推進,非行防止教室の開催などの取組を促進する。
    • 問題行動等を起こす児童生徒については,出席停止や懲戒等の措置も含め毅然(きぜん)とした指導を促し,いじめられている児童生徒の立場に立った取組を促進するとともに,安心できる教育現場とするため,問題行動への対応等を行う警察官経験者等を学校へ派遣するなど,学校・教育委員会と警察を含む関係機関との連携・協力を促進する。さらに,社会全体で子どもを見守り育むため,学校・家庭・地域の連携により,いじめの問題など,学校や地域が抱える課題を共有し地域ぐるみで取り組めるような体制の構築を推進する。また,いじめの防止対策に関する法制化を推進する。
    • なお,体罰は学校教育法で禁止されており,いかなる場合も許されるものではない。体罰のない,児童生徒理解の内面に迫る生徒指導が行われるよう,全ての教職員に体罰禁止を徹底する。
  • 2-5 学校における体験活動及び読書活動の充実
    • 生命や自然を大切にする心や他人を思いやる優しさ,社会性,規範意識などを育てるため,学校における自然体験活動や集団宿泊体験等の様々な体験活動の充実に,関係府省が連携して取り組む。また,豊かな情操等を育む読書に子どもたちが親しむよう,全校一斉の読書活動など子どもの読書活動を推進する。
  • 2-6 伝統・文化等に関する教育の推進
    • 我が国や郷土の伝統・文化を受け止め,それを継承・発展させるための教育を推進する。また,小・中学校等と博物館や劇場,音楽堂等,文化芸術団体との連携・協力を図りつつ子どもたちが一流の文化芸術に触れる機会の提供を推進するとともに,子どもたちが地域の伝統文化に触れる機会を提供する取組への支援を行う。さらに,我が国固有の伝統的な文化である武道の振興を支援する。
    • 宗教に関する一般的な教養に関する教育を推進する。
  • 2-7 (略)
  • 2-8 実施とフォローアップ等(基本施策1-1の再掲)
  • 2-9 復興に向けた教育の推進(基本施策1-4の再掲)

基本施策3 健やかな体の育成

【基本的考え方】

  • 学校保健,学校給食,食育の充実により,現代的な健康課題等に対応し,子どもの心身の健康の保持増進を図る。さらに,子どもの安全・安心を確保するため,防災教育を含む学校の安全に関する教育を推進する。
  • 子どもの体力の向上傾向が維持され,確実なものとなるよう,学校や地域における子どものスポーツ機会の充実を図る。

【主な取組】

  • 3-1 学校保健,学校給食,食育の充実
    • 学校保健に係る教職員の資質・能力の向上及び学校医・学校歯科医・学校薬剤師等の活用促進を図るとともに,体育・保健体育などの教科学習を中核として学校の教育活動全体を通じた体系的な保健教育を充実する。また,学校保健委員会の設置率の向上を目指し,学校,家庭及び地域の医療機関等との連携による保健管理等を推進する。
    • 栄養教諭を中核とした学校・家庭・地域の連携による食育の充実を図る。あわせて食に関する指導を充実させるため,学校給食において地場産物を活用する取組を促すとともに,米飯給食の一層の普及・定着を図る。
  • 3-2 学校や地域における子どものスポーツ機会の充実
    • スポーツ基本計画に基づき,体育・保健体育の授業や運動部活動等の学校の体育に関する活動や地域スポーツを通じて,子どもが十分に体を動かして,スポーツの楽しさや意義・価値を実感できる環境整備を図る。
  • 3-3 新学習指導要領の着実な実施とフォローアップ等(基本施策1-1の再掲)
  • 3-4 復興に向けた教育の推進(基本施策1-4の再掲)
  • 3-5 学校における体験活動の充実(基本施策2-5の一部再掲)
  • 3-6 主体的に行動する態度を育成する防災教育など学校安全に関する教育の充実(基本施策19-2に後掲)

基本施策4 教員の資質能力の総合的な向上

【基本的考え方】

  • 基本施策1,2,3に掲げた質の高い学習を実現するため必要な教員の資質能力を総合的に向上させる。
  • すなわち,課題探究型の学習,協働的な学びなど,新たな学びを展開するための教員の実践的指導力,高度な専門的知識や地域と連携・協働する力などを向上させるため,教育委員会と大学との連携・協働により,修士レベル化を想定しつつ養成・採用・研修の各段階を通じた一体的な改革を行い,教職生活全体を通じて学び続ける教員を継続的に支援するための仕組みを構築する。

【主な取組】

  • 4-1 学び続ける教員を支援する仕組みの構築  -養成・採用・研修の一体的な改革-
    • 教員として適性のある優れた人材を確保するとともに,教員が高度な専門的知識と実践的指導力を身に付けることができるよう,修士レベル化を想定しつつ,教職生活の全体を通じて教員が学び続ける基盤の整備を図るなど,養成・採用・研修の一体的な改革を着実に進める。
  • 4-2 大学・大学院における教員養成の改善
    • 学部レベルにおいては,学校現場での体験機会の充実などを通じて,いじめをはじめとする生徒指導上の課題や特別支援教育に対する実践力の向上などを推進する。
    • 教職大学院の発展等により,修士レベルの課程の質と量の充実を図る。あわせて,一般の研究科における教員養成機能の強化を図る観点から,専修免許状の取得において実践的科目を必修化する等の取組を進める。
    • あわせて,社会人等が大学院で学びやすい環境を整備するため,夜間開講や通信制などの課程を充実させる。
  • 4-3 教員採用の在り方の改善と多様な人材の登用
    • 適性のある優れた人材を確保するため,選考方法等の改善を進めるとともに,社会人や大学院修了者等の幅広い登用を進めるため特別免許状や特別非常勤講師制度の活用を促す。
  • 4-4 教育委員会・学校と大学との連携・協働による研修の高度化
    • 優れた教員については,教職大学院への研修派遣を通じてマネジメント等について修得させ,管理職や指導主事に登用するなど,各学校や地域の中核となるべき人材の育成システムの構築を図る。
    • 初任者研修をはじめとする現職研修のより一層の充実・高度化を推進するとともに,研修等定数の効果的な活用を進める。
    • 都道府県教育委員会において大学との連携・協働による現職研修のプログラム化・単位化の仕組みが構築されるよう先導的な取組に対する支援を行うとともに,退職教員を活用した研修の推進等の支援を行う。これらの取組を通じて,専修免許状の取得の促進を図る。また,教員免許更新制については,受講者のニーズに応じた講習の質の向上など,制度の運用面での課題や,その在り方について検討を進める。
  • 4-5 適切な人事管理の実施の促進
    • 教員一人一人の能力や業績を適切に評価する教員評価を実施し,評価結果を教員の処遇等へ適切に反映することを促進する。あわせて,優れた成果を上げた教員を評価し,意欲を高めるための優秀教員の表彰を行う一方,指導が不適切な教員に対する指導改善研修の実施,不適切な服務上の問題への厳正な対応等の適切な人事管理の実施を促進する。
    • また,学校教育は教職員と児童生徒の人格的な触れ合いを通じて行われるものであることから,教職員が心身共に健康を維持して教育に携わることができるようにするため,予防的な取組や復職支援の充実等の教職員のメンタルヘルス対策を推進する。
  • 4-6 メリハリある給与体系の確立
    • 真に頑張っている教員を支援することにより,教員の士気を高め,教育活動の活性化を図るため,教員の給料や諸手当等の在り方を見直し,それぞれの職務に応じてメリハリある教員給与体系の確立に向けて検討する。

基本施策5 幼児教育の充実

【基本的考え方】

  • 生涯にわたる人格形成の基礎を培う幼児教育の重要性を踏まえ,幼稚園等における幼児教育の充実を図るとともに,子ども・子育て支援法等に基づく新たな制度の構築により,質の高い幼児教育・保育を総合的に提供するための更なる条件整備を図る。また,幼稚園における子育て支援活動・預かり保育の充実を図る。

【主な取組】

  • 5-1 幼児教育の質の向上
    • 幼児教育の質の向上を図るため,小学校教育との円滑な接続や子育て支援活動・預かり保育の充実,学校評価の推進などの課題への対応を含めた幼児教育の理解促進を図るとともに,幼稚園における指導上の課題等を把握し,幼児教育の改善を図る。
    • 子ども・子育て支援法等に基づく新たな制度の具体化を踏まえつつ,幼児期の子ども一人一人の発達と学級集団の状況に即した指導を適切に行うことができるよう,教職員配置の在り方について検討する。
    • 教職員の資質向上のため,幼稚園,保育所,認定こども園の教職員の合同研修の促進や,幼稚園教諭免許と保育士資格の併有促進,幼稚園教諭一種免許取得者数の増加を図る。
    • 子育て支援活動や預かり保育も含め,幼稚園における多様な教育活動の充実を図るため,引き続き,財政支援を行う。
  • 5-2 質の高い幼児教育・保育の総合的提供等
    • 子ども・子育て支援法等に基づく新たな制度により,幼稚園及び保育所から認定こども園への移行を促進することで,質の高い幼児期の学校教育・保育の総合的な提供を一層促進する。
    • 幼稚園,保育所,認定こども園を通じた共通の給付(子ども・子育て支援法に基づく「施設型給付」)を満3歳以上の小学校就学前の全ての子どもに保障する。

基本施策6 特別なニーズに対応した教育の推進

【基本的考え方】

  • 様々な背景を有する者が共に暮らし,支え合う共生社会の形成に向けて,特別なニーズに対応した以下の取組を行う。
    • 障害のある者がその年齢及び能力に応じ,かつ,その特性を踏まえた十分な教育が受けられるようにするため,可能な限り障害のある児童生徒が障害のない児童生徒と共に学ぶことができるよう配慮しつつ,教育内容・方法の改善充実などを図る。
        また,高等教育段階においても,意欲・能力ある障害者の教育機会の確保に向けた支援を推進する。
    • また,海外で学ぶ子どもたちの教育環境の充実を図るとともに,国内の帰国・外国人児童生徒等について,日本語指導や適応指導の充実等を含めた公立学校における受入れ体制の整備を推進する。

【主な取組】

  • 6-1 円滑な就学手続の実現及び障害のある子どもに対する合理的配慮の基礎となる環境整備等
    • 障害者の権利に関する条約に掲げられたインクルーシブ教育システムの構築に向けて,就学手続に関係する法令改正等を行い,新たな手続の下での円滑な就学手続を実現する。
        また,個別の教育支援計画・指導計画の作成等による指導,乳幼児期を含めた早期からの一貫した支援体制の構築,職業教育・進路指導の充実,ICT等の活用を含めた教材の確保,バリアフリー化の推進や特別支援学校の教室不足の解消を含めた施設・設備の整備,専門性ある教員・支援員等の人的配置,交流及び共同学習の実施,合理的配慮の充実に向けた調査研究及びデータベースの整備等に取り組む。
        さらに,意欲・能力ある障害者の高等教育における修学機会の確保に向けて,支援する。
    • ※ 障害者の権利に関する条約において,「合理的配慮」とは,「障害者が他の者と平等に全ての人権及び基本的自由を享有し,又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって,特定の場合において必要とされるものであり,かつ,均衡を失した又は過度の負担を課さないものをいう」とされている。
  • 6-2 発達障害のある子どもへの支援の充実
    • 発達障害のある子どもへの支援の充実を図るため,小・中学校における通級による指導への対応や特別支援教育支援員を含めた教職員体制の整備について検討し,必要な措置を講じる。また,全ての教職員が発達障害に関する知識・技能を身に付けられるようにするための施策を実施するとともに,特に,特別支援学級の新任担当者研修や管理者研修を集中的に実施する。幼稚園,高等学校等についても,特別支援教育体制の一層の整備を図る。さらに,ICTを活用した指導方法の開発や独立行政法人国立特別支援教育総合研究所による積極的な情報発信を行う。
  • 6-3 特別支援学校の専門性の一層の強化
    • 特別支援学校の教職員の特別支援学校教諭免許状の取得に係る研修の充実を図る。また,域内の教育資源の組合せ(スクールクラスター)や特別支援学校のセンター的機能を活用するため,特別支援学校間でネットワークを構築し,域内の特別支援教育を支える体制の構築を促す。
  • 6-4 海外で学ぶ子どもや帰国児童生徒,外国人の子どもに対する教育の充実
    • 海外で学ぶ子どもたちの教育環境の整備・充実を図るため,在外教育施設に対して,引き続き質の高い教員の派遣や教材整備等を行う。また,帰国・外国人児童生徒等に対するきめ細かな指導・支援体制を整備するため,個々の実態を踏まえた日本語指導の在り方の検討,教員や支援員の確保及びその資質の向上等に取り組む。このほか,高等学校における受入れ状況を把握し,編入学機会の拡大を図る。さらに,不登校・不就学の定住外国人の子どもに対して日本語等の指導や学習習慣の確保を図るための場を外国人集住都市等に設け,主に公立学校への円滑な転入ができるようにする。

基本施策7 各学校段階における継続的な検証改善サイクルの確立

【基本的考え方】

  • 基本施策1に係る取組をより実効あるものとする観点から,全ての児童生徒を対象とする全国学力・学習状況調査の結果等に基づく教育施策や教育指導の充実・改善を行う継続的な検証改善サイクルを義務教育段階において確立する。
  • 高等学校段階においては,高校生としての基礎的・基本的な学力を確実に身に付けさせるため,生徒の学習の到達度を適切に把握する仕組みを導入するなど,高等学校教育の質の保証に向けた取組を進める。

【主な取組】

  • 7-1 継続的な検証改善サイクルの確立に向けた取組の充実等
    • 全国学力・学習状況調査について, 国として市町村や学校等の状況を把握するとともに,全ての市町村や学校等に,全国的な状況との比較による課題把握,指導改善等を行う機会を提供するため,全数調査を継続的に実施する。あわせて,経年変化分析や経済的な面も含めた家庭の状況と学力等の状況の把握・分析等が可能な「きめ細かい調査」を組み入れるなど調査の充実を図る。また,調査結果を活用した,教育委員会や学校等における教育施策や教育指導の充実・改善に向けた一層の取組を促す。
    • 高等学校については,基本施策1―3に記載した取組を進める。
    • 各学校における学習指導や教育課程全体の改善を図るため,学習評価の充実等の取組を促進するとともに,教育活動その他の学校運営の改善を図るため,実効性ある学校関係者評価の実施の促進等,学校評価の取組の充実を図る。

2.未来への飛躍を実現する人材の養成

成果目標5(社会全体の変化や新たな価値を主導・創造する人材等の養成)

  「社会を生き抜く力」に加えて,卓越した能力※を備え,社会全体の変化や新たな価値を主導・創造するような人材,社会の各分野を牽(けん)引(いん)するリーダー,グローバル社会にあって様々な人々と協働できる人材,とりわけ国際交渉など国際舞台で先導的に活躍できる人材を養成する。
  これに向けて,実践的な英語力をはじめとする語学力の向上,海外留学者数の飛躍的な増加,世界水準の教育研究拠点の倍増などを目指す。
 (※能力の例:国際交渉できる豊かな語学力・コミュニケーション能力や主体性,チャレンジ精神,異文化理解,日本人としてのアイデンティティ,創造性など)

【成果指標】

<新たな価値を創造する人材関係>

  1. 国際的な学力調査の平均得点を調査国中トップレベルにする。
    あわせて,習熟度レベルの上位層の増加(成果目標1の再掲)
  2. 難しいことでも失敗を恐れないで挑戦している児童生徒の割合の増加
  3. 国際科学技術コンテストへの参加者の増加
  4. 社会を牽(けん)引(いん)するリーダーを養成するための専門分野を超えた教育プログラム実施数の増加
  5. 世界で戦える「リサーチ・ユニバーシティ」を10年後に倍増
  6. 大学の国際的な評価の向上(研究面や教育面,国際面等で国際的に高い評価を受ける大学の増加)

【成果指標】

<グローバル人材関係>

  1. 国際共通語としての英語力の向上
    • 学習指導要領に基づき達成される英語力の目標(中学校卒業段階:英検3級程度以上,高等学校卒業段階:英検準2級程度~2級程度以上)を達成した中高校生の割合50%
    • 卒業時の英語力の到達目標(例:TOEFL iBT80点)を設定する大学の数及びそれを満たす学生の増加,卒業時における単位取得を伴う海外留学経験者数を設定する大学の増加
  2. 英語教員に求められる英語力の目標(英検準1級,TOEFL iBT80点,TOEIC730点程度以上)を達成した英語教員の割合(中学校:50%,高等学校:75%)
  3. 日本の生徒・学生等の海外留学者数,外国人留学生数の増加(2020年を目途に日本人の海外留学生数を倍増など)
  4. 大学における外国人教員等(国外の大学での学位取得,通算1年以上国外で教育研究に従事した日本人教員を含む)の全教員に占める比率の増加
  5. 大学における外国語による授業の実施率(外国語による授業/全授業数)の増加
  6. 大学の入学時期の弾力化状況の改善(4月以外で入学した学生数の増加)

<5年間における具体的方策>

基本施策14 優れた才能や個性を伸ばす多様で高度な学習機会等の提供

【基本的考え方】

  • 社会全体の変化や新たな価値を主導・創造する人材等を育成するためには,初等中等教育段階から,「社会を生き抜く力」を育成し,各分野に興味・関心を有する子どもの裾野を拡大するとともに,その才能を見いだして,創造性やチャレンジ精神などをより一層伸ばしていくことが必要である。
  • このため,意欲と能力のある児童生徒等に対し,ハイレベルな学習機会や切磋琢磨(せっさたくま)する場を提供することが求められ,これまで活用事例の少ない大学への飛び入学促進,高等学校段階における早期卒業制度の検討や,先進的な教育を受ける機会の提供や全国レベルで競い合う科学の甲子園等の推進を含めた理数教育の充実などを図る。

【主な取組】

  • 14-1 (略)
  • 14-2 理数系人材の養成
    • スーパーサイエンスハイスクールの取組を充実させるとともに,科学の甲子園,国際科学技術コンテスト,サイエンス・インカレ等の参加者数を増加させる。これらを含め,理数系人材の養成に向けた取組を総合的に推進することにより,理数好きの生徒等を拡大するとともに,優れた素質を持つ生徒等を発掘し,その才能を伸ばし,科学技術人材を戦略的・体系的に育成・確保する。特に,女子生徒・学生向けのガイダンスの充実等により,女性が理数系に進む割合が少ない状況の改善を図る。
    • 20~30年後の社会経済を見通した理工系人材の育成・確保に向け,教育機関,産業界,関係府省が連携した取組を促進する
  • 14-3 (略)

基本施策15 大学院の機能強化等による卓越した教育研究拠点の形成,大学等の研究力強化の促進

【基本的考え方】

  • 産学官の参画を得つつ世界を牽(けん)引(いん)するリーダーを養成するため,博士課程を中心とする大学院教育の抜本的な改革・強化を図るとともに,独創的で優秀な研究者を養成するため,優秀な学生や若手研究者等が自立して学修研究に専念することができる環境を整備する。
  • 各大学等の強みを生かした教育研究拠点の形成を促進するとともに,基礎研究をはじめ,独創的で多様な研究を広範かつ継続的に推進するなど,大学等の研究力を強化する。

【主な取組】

  • 15-1 (略)
  • 15-2 (略)
  • 15-3 (略)

基本施策16 外国語教育,双方向の留学生交流・国際交流,大学等の国際化など,グローバル人材育成に向けた取組の強化

【基本的考え方】

  • グローバル化が加速する中で,日本人としてのアイデンティティや日本の文化に対する深い理解を前提として,豊かな語学力・コミュニケーション能力,主体性・積極性,異文化理解の精神等を身に付けて様々な分野で活躍できるグローバル人材の育成が重要である。
  • このため,「社会を生き抜く力」の確実な養成を前提とし,英語をはじめとする外国語教育の強化,高校生・大学生等の留学生交流・国際交流の推進,大学等の国際化のための取組(秋季入学に向けた環境整備,海外大学との国際的な教育連携等)への支援,国際的な高等教育の質保証(単位の相互認定,適切な成績評価等)の体制や基盤の強化等を実施するとともに,意欲と能力ある全ての日本の若者に,留学機会を実現させる。

【主な取組】

  • 16-1 英語をはじめとする外国語教育の強化
    • 新学習指導要領の着実な実施を促進するため,外国語教育の教材整備,英語教育に関する優れた取組を行う拠点校の形成,外部検定試験を活用した生徒の英語力の把握検証などによる,戦略的な英語教育改善の取組の支援を行う。また,英語教育ポータルサイトや映像教材による情報提供を行い,生徒の英語学習へのモチベーション向上や英語を使う機会の拡充を目指す。大学入試においても,高等学校段階で育成される英語力を適切に評価するため,TOEFL等外部検定試験の一層の活用を目指す。
    • また,小学校における英語教育実施学年の早期化,指導時間増,教科化,指導体制の在り方等や,中学校における英語による英語授業の実施について,検討を開始し,逐次必要な見直しを行う。
    • 教員の指導力・英語力の向上を図るため,採用や自己研鑽(じこけんさん)等での外部検定試験の活用を促すとともに,海外派遣を含めた教員研修等を実施する。また,国際バカロレアの普及のためのフォーラムや教員養成のためのワークショップを開催するとともに,ディプロマプログラム(DP)(※)の一部科目を日本語で行う日本語デュアルランゲージディプロマプログラム(日本語DP)の開発を行う。
    • ※ 国際的な大学入学資格を得ることができる,16~19歳を対象としたプログラム。
  • 16-2 高校生・大学生等の留学生交流・国際交流の推進
    • 日本人の海外留学者数の大幅な増加(2020年を目途に日本の海外留学生数を倍増(大学等:6万人から12万人,高校:3万人から6万人))を目指し,高校,大学等における留学機会を,将来グローバルに活躍する意欲と能力ある若者全員に与えるため,留学生の経済的負担を軽減するための寄附促進,給付を含む官民が協力した新たな仕組みを創設する。また,地域や高校,大学等における留学情報の収集・提供等の強化を実施するとともに,関係府省と連携し,就職・採用活動開始時期を変更し,留学しやすい環境を整備する。
        さらに,様々な交流機会の提供(外国人留学生と日本人学生・若手社会人との知的交流の促進等)や,子どもたちに国際的な視野を持たせ,留学への機運を醸成する取組の充実等を図る。
    • 「留学生30万人計画」の実現を目指し,大学等の国際化に向けた体制整備,奨学金等の経済的支援,海外拠点を活用した留学フェア等の実施,外国人留学生に対する生活・就職支援等の充実による戦略的な外国人留学生の確保を推進するとともに,留学経験者の把握等ネットワークを強化するなど,優秀な外国人留学生の受入れを促進する。
  • 16-3 高校・大学等の国際化のための取組への支援
    • グローバル化に対応した教育を行い,高校段階から世界で戦えるグローバル・リーダーを育てる。このため,語学力とともに,幅広い教養や問題解決力等の国際的素養を身に付けさせる教育を行う新しいタイプの高校(スーパーグローバルハイスクール)を創設する。
    • グローバル社会に対応するため,我が国の大学等の徹底した国際化を広く促進し,国際通用性の向上を図る。特に,国際通用性の高い教育組織・環境を備え,国際競争力を有する拠点大学を形成するため,英語での授業の実施,外国人や海外で学位を取得した若手の積極的採用などに取り組む大学への重点的な支援を行う。また,国際化や多様な体験活動の促進に資する秋季入学について,各大学における検討状況を踏まえた環境整備に係る支援を行う。さらに,海外大学との共同プログラムの構築等の多様な連携を促進する。
    • 大学・短期大学,高等専門学校,専門学校等における職業教育の質を保証し,国際的な通用性を確保するため,学修成果を海外で証明できる仕組みの構築や,海外の学校との共同プログラムの実施等を行う。
  • 16-4(略)

3.学びのセーフティネットの構築

成果目標6(意欲ある全ての者への学習機会の確保)

  様々な困難や課題を抱え支援を求めている者に対して,生涯を通じて多様な学習機会を確保する。また,能力と意欲を有する全ての者が中等・高等教育を受けられるようにする。
  これを通じて,経済的,時間的,地理的制約等による教育格差を改善する。

【成果指標】

<主として初等中等教育関係>

  1. 幼稚園等の就園率の増加
  2. 経済的な理由による高校中退者の数の減少
  3. 国際的な学力調査における習熟度レベルの下位層の減少(成果目標1の再掲)
  4. 家庭の経済状況や教育環境の違いが学力に与える影響の改善
  5. いじめ,不登校,高校中退者の状況改善(いじめの認知件数に占める,いじめの解消しているものの割合の増加,全児童生徒数に占める不登校児童生徒数の割合の減少,高校中退者数の割合の減少など)

<主として高等教育・生涯学習関係>

  1. 進学機会の確保や修学の格差の状況改善
    (被災した世帯の学生等も含め,家庭の経済状況によらない高等教育への進学機会の確保)
    • 大学等奨学金の貸与基準を満たす希望者のうち,奨学金の貸与を受けることができた者の割合の増加
    • 低所得世帯の学生等のうち授業料減免を受けている者の割合
  2. 社会人入学者の倍増(成果目標2の再掲)

<5年間における具体的方策> 

基本施策17 教育費負担の軽減に向けた経済的支援

【基本的考え方】

  • 教育格差の固定化解消に向けて,これまでも就学支援や公立高校授業料無償制・高等学校等就学支援金制度,奨学金の充実等の取組を実施してきたところであるが,引き続き,保護者負担を軽減するとともに,意欲・能力のある者の学習機会へのアクセスを可能とするための支援を行う。
  • また,東日本大震災により被災した子ども・若者に対し,切れ目のない就学支援を実施する。

【主な取組】

  • 17-1 幼児教育に係る教育費負担軽減
    • 保護者の所得状況に応じた経済的負担の軽減等を目的として,保育料等を軽減する就園奨励事業を実施する地方公共団体に対し,所要経費の一部を補助する幼稚園就園奨励費補助を引き続き実施することにより,幼稚園への就園を推進する。
        また,子ども・子育て支援法等に基づく新たな制度の構築により,幼稚園,保育所,認定こども園を通じた共通の給付を創設する際には,保護者の所得状況に応じた経済的負担の軽減が図られるものとなるようにする。この状況も踏まえつつ,幼児教育の無償化への取組について,財源,制度等の問題を総合的に検討しながら進める。
  • 17-2 義務教育に係る教育費負担軽減
    • 国公立学校の授業料や教科書が無償とされていることに加え,経済的困難を抱える家庭に対して就学援助を引き続き実施し,適切な教育機会の確保を図る。
  • 17-3 高等学校段階に係る教育費負担軽減
    • 公立高校授業料無償制・高等学校等就学支援金制度については,法律上,施行から3年経過後の見直し規定が存在しており,また,現在も,特に低所得者層においては教育費が負担となっているとともに,公私間の教育費格差も見られる状態にある。限られた財源の下,これらの課題に効果的に対応するために,例えば,現行の制度に所得制限を設け,低所得者のための給付型奨学金や公私間格差の是正方策を現行の施策との関係を含め総合的に検討するなど,高等学校段階に係る教育費負担軽減の施策の見直しを行う。
  • 17-4 (略)
  • 17-5 東日本大震災により被災した子ども・若者への就学支援
    • 経済的に就園・就学が困難な幼児への就園支援,小・中学生に対する学用品費等の援助,高校生・大学生等に対する奨学金支給,特別支援学校等に在籍する児童生徒等への就学奨励,大学・短期大学生,高等専門学校生及び専修学校生・各種学校生の授業料減免などを実施するための経費を,被災地の実情・ニーズを踏まえ,支援する。 また,スクールバスの購入費や,経済的に困難な児童生徒に対する通学費などの支援を行う。

基本施策18 学習や社会生活に困難を有する者への学習機会の提供など教育支援

【基本的考え方】 

  • 教育格差の解消に向け,家庭環境等の要因により学力定着等が困難な児童生徒を対象に学力向上のための取組を行う学校への支援を充実するとともに,離島を含めたへき地の子どもたち等に対する就学支援,東日本大震災により被災した子どもたちに対する心のケアや学習支援等を実施する。
  • また,家庭の経済的格差の教育格差への影響や格差の再生産・固定化が指摘されていることを踏まえ,挫折や困難を抱えた子ども・若者(例えば,若年無業者,ひきこもり,高校中退者など)や非正規労働者・早期離職者が自立し,再び社会に参画できるようにするため,福祉・労働・保健・医療行政等と緊密に連携・協力し,学習支援や体験活動の実施,キャリアアップや学び直しの機会の提供等を行う。
  • さらに,依然として教育上の重要課題である暴力行為,いじめ,不登校など児童生徒の問題行動等の状況の改善に向けて,学校のみならず家庭,地域社会や関係機関が連携した取組を一層推進する必要があり,この点も踏まえて生徒指導体制及び教育相談体制を整備・充実する。

【主な取組】

  • 18-1 経済的,地理的条件が不利な子どもたちに対する支援
    • 家庭環境等の要因により学力定着等が困難な児童生徒が多く在籍する学校において,補充学習や習熟度別少人数指導等のきめ細かい指導や学び直しの機会の充実により基礎学力の定着や学ぶ意欲の向上が図られるよう,必要な教材の開発や個に応じた指導の推進のための人的支援を行うなど教育体制の整備を行う。
    • へき地や過疎地域等の児童生徒等の学習機会を保障するため,スクールバス・ボートの購入や遠距離通学費への補助等,小・中学校への就学支援を引き続き実施する。また,改正離島振興法の規定を踏まえ,高校が設置されていない離島から高校に通学する生徒に対し,通学費や居住費等の就学支援を引き続き実施する。
  • 18-2 「貧困の連鎖」防止等に向けた多様な主体と連携した学習支援等
    • 高校中退者情報の共有を推進するとともに,在学生に対する支援を充実するなど,学校とハローワーク・地域若者サポートステーションとの連携体制を構築する。また,関係行政機関,NPO等が連携して行う,1.児童生徒に対する学習支援や高校中退者等に対する学び直しの機会の提供,2.課題を抱える家庭に対する家庭教育支援,3.地域の公民館,図書館等を活用した若者の自立・社会参画支援などの取組を推進する。
    • 高等学校の定時制課程・通信制課程におけるスクールカウンセラー等の専門家の配置や資格取得につながる職業科目の設定等の特色ある教育課程の編成・実施等の推進を通じて,中途退学や不登校の経験者,特別支援教育を必要とする生徒など課題を抱える生徒の社会的自立を促す。加えて,義務教育未修了の学齢超過者等に対して義務教育の機会を提供しているいわゆる中学校夜間学級に対する支援を引き続き行う。
  • 18-3 東日本大震災により被災した子どもたちに対する学習支援や心のケア
    • 東日本大震災により被災した児童生徒等に対する学習支援や心のケアについて,子どもたちの実態に応じて,教職員定数の追加配置や切れ目ないスクールカウンセラー等の派遣を引き続き行う。
  • 18-4 生徒指導体制及び教育相談体制の整備・充実(基本施策2-3の再掲)
  • 18-5 いじめ,暴力行為等の問題への取組の徹底(基本施策2-4の再掲)

成果目標7(安全・安心な教育研究環境の確保)

  子ども・若者等が安全・安心な環境において学習・研究できるようにするため,学校等施設の耐震化,防災機能強化等の教育研究環境の整備を図るとともに,自らの安全を守るための能力を身に付けさせる安全教育を推進するなど,学校等における児童生徒等の安全を確保する。

【成果指標】

<主として初等中等教育関係>

  1. 学校施設の耐震化率の向上
    公立学校については,平成27年度までのできるだけ早期の耐震化の完了を目指すとしている「公立の義務教育諸学校等施設の整備に関する施設整備基本方針」を踏まえ,耐震化を着実に推進する。また,私立学校について,公立学校の耐震化の状況を勘案しつつ,できるだけ早期の耐震化の完了を目指す。
  2. 避難所に指定されている学校の防災関係施設・設備の整備状況の向上
  3. 学校管理下における事件・事故災害で負傷する児童生徒等の減少,死亡する児童生徒等のゼロ化
  4. 子どもの安全対応能力の向上を図るための取組が実施されている学校の増加

<主として高等教育関係>

  1. 大学等の耐震化率の向上
    • 国立大学等については,「第3次国立大学法人等施設整備5か年計画」を踏まえ,できるだけ早期の耐震化の完了を目指す。また,私立大学等について,国立大学等の耐震化の状況を勘案しつつ,できるだけ早期の耐震化の完了を目指す。

<5年間における具体的方策>

 基本施策19 教育研究環境の整備や安全に関する教育の充実など学校における児童生徒等の安全の確保

【基本的考え方】

  • 学校施設は,児童生徒等の学習・生活の場であるとともに,災害発生時には地域住民の応急避難場所ともなることから,学校施設の耐震化や非構造部材の耐震対策を含む防災機能の強化,老朽化対策を推進する。
  • また,学校においては,安全の確保を保障するとともに,児童生徒等がその生涯にわたり自らの安全を確保することのできる基礎的な素養を育成していくことが求められることから,国公私立を問わず,学校安全の推進に関する計画に基づき,主体的に行動する態度を育成する防災教育等の学校安全に関する教育や学校における組織的取組の推進,地域社会,家庭との連携の強化等を図る。

【主な取組】

  • 19-1 安全・安心な学校施設
    • 公立学校については,平成27年度までのできるだけ早期の耐震化の完了を目指すとしている「公立の義務教育諸学校等施設の整備に関する施設整備基本方針」を踏まえ,耐震化を着実に推進する。このため,対策が遅れている地方公共団体に対し耐震化の加速を促す。また,非構造部材の耐震対策や津波対策としての避難経路の整備等,防災機能の強化を推進する。屋内運動場等の天井等落下防止対策については,施設の耐震化と同様,速やかな完了を目指す。
        さらに,少子化が一層進展することも見据えつつ,老朽化している学校施設の長寿命化等の取組を推進する。
    • 国立大学等については,できるだけ早期の耐震化の完了を目指すほか老朽改善整備等を推進する。また,非構造部材の耐震対策のうち,屋内運動場等の天井等落下防止対策についても,施設の耐震化と同様,速やかな完了を目指す。このため,「第3次国立大学法人等施設整備5か年計画」を着実に実施する。
    • 私立学校については,「私立学校施設防災機能強化集中プラン」に基づいて,国公立学校の状況を勘案しつつ,早期の耐震化完了及び屋内運動場等の天井等落下防止対策の完了を目指す。また,非構造部材の耐震対策や津波対策としての避難経路の整備等,防災機能強化を推進する。
  • 19-2 学校安全の推進
    • 生活安全・交通安全・災害安全の三つの領域を通じて,危険に際して自らの安全を守り抜くための「主体的に行動する態度」を育成し,共助・公助の視点から安全で安心な社会づくりに貢献する意識を高めるための教育内容の充実や教育手法の改善・普及を図る。
    • 学校における体系的な防災教育に関する指導内容の整理,防災教育のための指導時間の確保など,防災に関する教育の充実を図る。
    • 国公私を問わず,関係部局や地域住民・保護者と連携した学校の施設・設備の安全点検等を含む学校安全計画及び危険等発生時対処要領の改善を促すとともに,学校安全の中心的役割を果たす教職員に対する研修の充実,外部専門家等の活用促進等を通じて安全管理体制の充実を図る。また,スクールガード・リーダーを活用した保護者や地域のボランティアの養成・研修の促進等により,地域社会・家庭・関係機関と連携した学校安全を推進する。
    • 特に,通学路について,関係府省が連携し,学校や教育委員会,道路管理者,警察等の関係機関による交通安全の確保に関する取組が現場で進むよう促す。また,安全点検をはじめとする取組を推進するに当たっては,保護者や地域住民などの関係者との連携も推進する。

お問合せ先

初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室

(初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室)

-- 登録:平成28年03月 --