第4章 コミュニティ・スクールと地域学校協働本部(仮称)の一体的・効果的な推進の在り方について

ポイント

  • 地域とともにある学校に転換するための仕組みとしてのコミュニティ・スクールと,社会教育の体制としての地域学校協働本部(仮称)が,相互に補完し,高め合う存在として,両輪となって相乗効果を発揮していくことが必要であり,当該学校や地域の置かれた実情,両者の有機的な接続の観点等を踏まえた体制の構築が重要。
  • 普段からの情報の共有や,地域コーディネーターと地域連携の推進を担当する教職員との連携の強化を図るとともに,国は,一体的・効果的な推進のイメージや両者が円滑に機能している実例の発信等により,取組を促進。

1.コミュニティ・スクールと地域学校協働本部(仮称)の関係の在り方

 第2章で述べたとおり,コミュニティ・スクールは「地域とともにある学校」へと転換していくために有効な仕組みであり,学校を応援し,地域の実情を踏まえた特色ある学校づくりを推進していく役割を明確化するとともに,その役割を具現化する機能として,地域住民や保護者等による学校支援に関する総合的な企画・立案を行い,これらの者における連携・協力を促進していく仕組みとしていくことが提言されている。地域とともにある学校として,より多くの地域住民や保護者等が学校運営に参画し,協働による取組を展開していくためにも,地域学校協働本部(仮称)との連携を強化していくことが有効である。
 また,第3章で述べた地域における学校との協働体制は,社会教育の実践の場であると同時に,地域がきっかけを作ることで,子供たちが学習を深化させるものである。特に,これから望まれる地域における学校との協働体制(地域学校協働本部(仮称))が,コミュニティ・スクールと共に活動を推進することにより,学校教育を含めた子供たちの教育の質を格段に向上させること等も期待される。
 このように,子供たちのために,また,地方創生の実現のために,コミュニティ・スクールの機能,地域学校協働本部(仮称)の機能のそれぞれを大切にしつつ,両者が相互に補完し,高め合う存在として,両輪となって相乗効果を発揮していくことが必要である。
 さらに,コミュニティ・スクールや地域学校協働本部(仮称)の推進に当たって重要なことは,学校と地域の特色を生かし,学校と地域が共に考え,地域全体が当事者として参画していくことであり,従前の自律的・主体的な取組を生かしながら,学校と地域が連携・協働して行う企画運営や活動を大切にしていくことである。すなわち,両者の関係は一律に示されるものではなく,当該学校や地域の置かれた実情,経緯,両者の有機的な接続の観点等を踏まえた体制を構築していくことが重要である。
 以上のように,それぞれの地域や学校における事情や背景により,コミュニティ・スクールや地域学校協働本部(仮称)の整備状況等は異なるものであるが,全国どの地域においても子供たちが地域の協力を得て成長していくことができるよう,それぞれの地域において,その実情に即してコミュニティ・スクールと地域学校協働本部(仮称)の両者が整備され,両輪となって,学校と地域との連携・協働が推進されていくことを目指していくことが重要である。
 過渡的な状態にあっては,例えば,地域学校協働本部(仮称)のみが整備され,学校運営協議会が設置されていないケースや,その逆のケースがある。このような場合であっても,地域学校協働本部(仮称)における活動の実績によって学校と地域との信頼関係が構築され,学校運営協議会の設置につながる,また逆に,学校運営協議会への参画によって学校と地域との信頼関係が構築され,学校運営協議会に参画した地域住民や保護者等を軸に地域学校協働本部(仮称)の体制の充実につながるということも期待される。

 また,第1章では「チームとしての学校の在り方の検討」が進められていることについて触れたが,「チーム学校」の実現を支える観点からも,コミュニティ・スクールや地域学校協働本部(仮称)の整備を促進する必要がある。
 コミュニティ・スクールや地域学校協働本部(仮称)の整備は,必ずしも小学校や中学校等の個別の学校区単位で行われるものではない。地域においては,複数の小学校・中学校が連携して教育体制を構築している例や,従前より行われていた個別の学校区を越えた地域活動を基盤に地域学校協働活動の体制が構築される例も見られる。今後,コミュニティ・スクールと地域学校協働本部(仮称)の在り方を考えていく上で,複数校の連携・接続にも留意しながら,学校と地域の連携・協働体制を構築していくことも重要である。

2.両者の一体的・効果的な機能の発揮のための方策

 地域とともにある学校に転換するための仕組みとしてのコミュニティ・スクールと,社会教育の体制としての地域学校協働本部(仮称)が円滑に連結し,両者の機能を一体的・効果的に高めるための方策としては,それぞれの活動の企画等の段階から,双方の運営方針や取組計画等を共有したり,互いの取組の充実や重複を避けるための提案をしたりするなど,普段からしっかりと関係者間でコミュニケーションや情報共有を行うことが有効である。
 特に,地域学校協働本部(仮称)において主に連絡調整を担う地域コーディネーターと,第2章で触れた地域連携の推進を担当する教職員や学校運営協議会の委員との連携の強化を図ることが重要である。加えて,統括的なコーディネーターは地域コーディネーター間の連絡調整等を主な役割とするが,各学校区における個別の地域学校協働活動に関して学校側と連絡調整を行う場合もあり,このような場合には,統括的なコーディネーターと,地域連携の推進を担当する教職員や学校運営協議会の委員との連携を強化していくことも重要である。
 それぞれの地域や学校の特色により様々なケースがあるが,地域学校協働本部(仮称)において中核となる地域コーディネーターあるいは統括的なコーディネーターが,学校運営協議会の委員として地域における学校支援や学校運営に関する協議に参画したり,学校運営協議会の委員が,地域学校協働本部(仮称)における企画調整に携わったりするなど,それぞれの経験や考え方を,お互いの発展のために生かす人的配置の工夫も有効である。

 今後,コミュニティ・スクールと地域学校協働本部(仮称)が両輪として共に一体的・効果的に機能を発揮していくよう,国は,地域や学校の実情や特色に応じて,両者の整備状況,発展段階,運営,連携体制,人的配置等には様々なケースが在り得ること,学校現場において,教職員が子供と向き合う時間を確保するための配慮が必要であること等を十分に認識しつつ,一体的・効果的な推進のイメージや両者が円滑に機能している実例を,都道府県・市町村の教育委員会,学校,地域学校協働本部(仮称)の関係者等に情報提供・発信することにより,その取組の促進を図ることが必要である。

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初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室

(初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室)

-- 登録:平成28年01月 --