第3章 地域の教育力の向上と地域における学校との協働体制の在り方について 第5節 国,都道府県,市町村による推進方策

ポイント

  • 国は,全国的に質の高い地域学校協働活動が継続的に行われるよう,以下のような,制度面・財政面を含めた条件整備や質の向上に向けた方策を実施。
    • 活動推進のための体制整備及びコーディネーターの役割・資質等についての明確化
    • 各都道府県・市町村における地域学校協働活動の推進に対する体制面・財政面の支援
    • 都道府県,市町村,コーディネーター間の情報共有,ネットワーク化の支援
  • 都道府県の教育委員会は,地域や学校の特色や実情を踏まえつつ,首長部局との連携・協働の下,ビジョンの明確化・計画の策定,市町村における推進活動の支援,域内の住民等に対する情報提供・理解促進活動,都道府県立学校等に係る活動の推進等を実施。
  • 市町村の教育委員会は,地域や学校の特色や実情を踏まえつつ,首長部局との連携・協働の下,域内のビジョンの明確化・計画の策定,体制の整備,コーディネーターの配置,研修の充実,地域の住民等への情報提供・理解促進等を実施。

 本章第3節において述べた今後の方向性に基づき,第4節に記載した地域における学校との協働活動を推進していくためには,地域住民,保護者等が様々な学校支援活動,放課後や土曜日の学習支援活動,地域の行事や文化・スポーツ活動等の地域活動に自ら積極的に参加していくことが何よりも重要である。これらの住民等の地域における学校との協働活動への参加を促し,活動を推進していくためには,国や都道府県・市町村により,それぞれの役割を踏まえつつ,コミュニティ・スクールの推進とも連携しながら,地域学校協働本部(仮称)の整備を図っていくことが重要である。 
 地域における学校との協働活動を全国的に充実していくための推進方策として,有効と考えられる方策は以下のとおりであり,国は,以下の推進方策を着実に実行することが必要である。各都道府県・市町村は,地域における学校との協働活動の促進に向けて,それぞれの地域の特色や方針を踏まえつつ,地域学校協働本部(仮称)の整備その他の必要な施策を講じ,各地域において積極的な取組を進めていくことが必要である。

1.国の役割と推進方策

 これまでに述べてきた提言を踏まえ,国は,地域における学校との協働活動の全国的な推進を図るため,以下のように,制度面・財政面を含めた条件整備やこれらの活動の質の向上に向けた方策を総合的に推進していくことが必要である。

(1)基本的な枠組みの整備

 地域における学校との協働活動の推進のため,第3節で述べた地域学校協働本部(仮称)を全国的に整備していくことが重要である。国は,地域学校協働本部(仮称)の全国的な整備の推進のため,その基本的な目的,方向性について明確化し,整備の趣旨を広く普及していくことが必要である。
 第4節で述べたように,地域学校協働活動とは,学校支援活動,放課後や土曜日の学習支援,家庭教育支援及び学びによるまちづくり等の地域活動等により,地域と学校が協働して,未来を担う子供たちの成長を支えるとともに,持続可能な社会を創っていく取組である。このような地域学校協働活動を全国的に推進していくに当たっては,単に活動の数が増えればよいということではなく,学校や参画する住民にとって有意義な活動となり,子供たちの成長につながる効果的で質の高い活動となることが必要である。このような目標・理念の下に,全国的に質の高い地域学校協働活動が継続的に行われ,子供たちが地域の協力を得て成長できるよう,また,継続的・安定的に地域の住民,保護者等がその活動に参加することができるよう,国は,都道府県や市町村において地域学校協働活動を推進するための体制整備その他の必要な施策(例えば,地域学校協働本部(仮称)等の体制の整備,コーディネーターの配置,地域住民に対する地域学校協働活動に関する情報提供や理解促進等)を図っていくことについて,法令若しくはガイドライン等において明確にすることが必要である。
 また,第2期教育振興基本計画において,学校支援地域本部や放課後子供教室等の取組を充実するための体制を全国の小・中学校区に構築することが施策目標とされているが,国はこの着実な実施を通じて,地域学校協働本部(仮称)への発展を目指して体制の整備を推進していくことが必要である。また継続的な整備を図るため,第3期教育振興基本計画において,地域学校協働活動の推進及び地域学校協働本部(仮称)の整備に係る目標を掲げることを検討すべきである。

(2)地域コーディネーターや統括的なコーディネーターをはじめとする人材の確保と資質の向上

 第4節でも述べたとおり,地域学校協働活動の全国的な推進のためには,それぞれの地域において学校との協働活動を実施する住民等の活動を支援し,連絡調整する地域コーディネーター及び統括的なコーディネーターによるコーディネート機能が非常に重要である。これらのコーディネーターの資質の維持・向上に向けて,国は,都道府県・市町村や社会教育関係団体等と協力しつつ,地域コーディネーターの研修プログラムの開発・普及等の地域コーディネーターの育成施策を支援することが必要である。
 また,地域学校協働活動を推進していく上で,地域コーディネーターや統括的なコーディネーターの役割が重要となってきており,全国的に質の高い活動が行われるためには,それぞれのコーディネーターの質の確保が重要である。特に,地域における地域学校協働活動の進展により,地域コーディネーター間の連絡調整,地域コーディネーターの育成・資質向上,地域学校協働活動未実施の地域における地域学校協働活動の取組開始の促進等を行う統括的なコーディネート機能が重要となってきている。今後,都道府県や市町村において適切な人材を統括的なコーディネーターに委嘱することができるようにするためには,その求められる主な役割や資質等が明確となっていることが重要である。
 このため,国は,都道府県・市町村の教育委員会において適切な人材を育成・確保,配置することができるよう,統括的なコーディネーター等に求められる主な役割・求められる資質等について法令若しくはガイドライン等において明確化することが必要である。
 その際には,それぞれの地方公共団体の実情や方針によっては,統括的なコーディネーター等に関する職務を,地域学校協働活動に関する業務や調整の経験を有する社会教育主事や教育委員会の職員によって行うこともあることを踏まえて検討することが重要である。
 さらに,国は,都道府県・市町村の教育委員会において地域コーディネーターや統括的なコーディネーターの整備の促進の参考となるよう,コーディネーターの活躍によって地域学校協働活動の促進に効果を上げている事例を収集し,市町村・都道府県教育委員会に情報提供を行うなど,その役割や効果的な活動内容について理解を図ることも重要である。

(3)体制面・財政面における支援の充実

 地域学校協働活動の推進に伴う体制面・財政面において,国は以下の取組を支援していくことが重要である。

  • 全国各地域において,地域住民等による学校との協働活動が推進され,各地域の子供たちがその活動を経験することができるよう,各地域へのコーディネーターの配置及び地域学校協働本部(仮称)の整備の支援
  • 各地域における学校間の協働活動の連携の促進や未実施地域における取組促進等に向けた統括的なコーディネーター配置への支援
  • 地域コーディネーターをはじめとする人材の確保と資質の向上に向けた研修・育成等の支援
  • 学校支援活動,放課後や土曜日等における学習,体験活動等の支援活動の充実に向けた支援

(4)都道府県,市町村,コーディネーター間の情報共有,ネットワーク支援等

 国は,地域学校協働活動の全国的な推進・充実に向けて,都道府県,市町村,コーディネーター間における情報共有,ネットワーク化を支援するため,以下の取組を支援していくことが重要である。

  • 地域学校協働本部(仮称)の整備の促進に向けた好事例の収集・普及
  • 統括的なコーディネーター,地域コーディネーター間の研修・ネットワークを目的とした全国集会等の支援

推進のための具体的方策

  • 国は,地域学校協働活動の全国的な推進を図るため,以下のような方策を推進していくことが必要である。
    • 都道府県や市町村の教育委員会による地域学校協働活動の推進に係る体制の整備についての法令若しくはガイドライン等による明確化
    • コーディネーターの資質・役割等の法令若しくはガイドライン等による明確化
    • 都道府県・市町村における地域学校協働活動に対する体制面・財政面の支援
    • 地域学校協働活動の全国的な推進に向けた,都道府県,市町村,コーディネーター間における情報共有,ネットワーク化の支援

2.都道府県・市町村の役割と推進方策

 今後,全国どの地域においても子供たちが地域の協力を得て成長していくことができるよう,また住民が地域学校協働活動に参画する機会を得られるようにするためには,各地方公共団体において,域内の子供たちの成長や地域の振興・創生に向けたビジョンを掲げ,域内の住民,保護者,学校及び様々な関係機関や団体間でそれを共有しつつ,積極的に地域学校協働活動を推進していくことが必要である。
 その上で,都道府県・市町村(特別区を含む。以下,本項目において「市町村」という。)の教育委員会は,それぞれの地域の特色や方針を踏まえつつ,域内における地域学校協働活動を円滑かつ効果的に推進するための体制の整備その他の必要な施策(例えば,域内の地域学校協働本部(仮称)等の体制の整備,コーディネーターの配置,地域住民等に対する地域学校協働活動に関する情報提供や理解促進等)を講じることが求められる。
 それぞれの地域において,子供たちの成長を支え,地域づくりにもつながる地域学校協働活動を推進していくためには,都道府県,市町村における社会教育部局と学校教育部局の連携・協働の強化が不可欠であり,両者の連携・協働による取組が必要となるとともに,総合教育会議の活用等を通じた地域振興,社会福祉,医療,防災等を担当する首長部局とのパートナーシップを構築していくことも重要である。
 都道府県・市町村は,計画的・継続的に地域における学校との協働活動に取り組んでいくため,それぞれの地域の実情や特色を踏まえつつ,教育振興基本計画等に,域内の地域学校協働活動の推進に向けて,その体制の整備をはじめとする地域における学校との協働活動の推進について基本的な方針を掲げることが期待される。

(1)都道府県の役割と推進方策

 都道府県の教育委員会は,域内全域において地域学校協働活動が推進されるよう,域内の各市町村における地域学校協働活動に対する市町村間の調整や広域的な観点からの支援にその役割を重点化しつつ,域内全域での地域学校協働活動の充実・拡大や質の確保・向上に責任を果たしていくことが重要である。
 その前提の上で,都道府県の教育委員会は,域内のそれぞれの地域や学校の特色や実情を踏まえつつ,各都道府県内全域での地域と学校との協働活動を継続的かつ効果的に推進するため,その推進に係る体制の整備その他の必要な施策を講じることが必要である。地域学校協働活動の推進に向けてどのような施策を講じていくかについては,それぞれの域内の地域や学校の実情・特色や域内における整備状況を踏まえて,例えば,域内の市町村における体制整備,コーディネーターの配置・育成,好事例の収集・情報提供,域内の都道府県立学校に係る体制の整備,地域住民等に対する情報提供,理解促進活動等,必要な施策を検討していくことが求められる。
 特に都道府県教育委員会の重要な役割は,域内の市町村における地域学校協働活動の推進を広域的な観点から支援することであり,当該都道府県における子供たちの成長や地域づくりのビジョンに基づき,地域振興,社会福祉,医療,防災等を担当する首長部局とも連携・協働しつつ,域内の市町村における取組を広域的に支援することにより,都道府県全域において地域学校協働活動の活性化をリードしていくことが期待される。
 また,これまでの地域による学校支援活動等は,より住民に身近な市町村の小・中学校中心に行われてきたが,今後,都道府県は,特に地域とのつながりが深い高等学校等の都道府県立学校に係る地域学校協働活動を中心として,当該学校が所在する地域におけるニーズを踏まえつつ,その学校が所在する市町村教育委員会との連携を図りながら,高等学校等の特色を生かした取組を進めていくことが重要である。

推進のための方策

  • 都道府県の教育委員会は,域内のそれぞれの地域や学校の特色や実情を踏まえつつ,域内の地域学校協働活動の円滑かつ効果的な推進に係る体制の整備その他の必要な施策を講じていくことが必要である。どのような施策を講ずるかについては,首長部局との連携・協働の下,域内における取組状況も鑑みながら実施していくことが重要であるが,例えば以下のような施策が考えられる。
    • 域内の地域協働活動の推進に関する教育委員会としてのビジョンの明確化と計画の策定,地域学校協働推進活動の改善に向けた取組のフォローアップ  
    • 域内の市町村における地域学校協働活動を推進するための体制の整備や取組の充実のための財政的な支援
    • 域内の市町村における地域コーディネーターや統括的なコーディネーターの配置の促進,その質の向上に向けた研修やネットワーク化の促進
    • 域内の市町村における好事例の収集と情報提供 
    • 地域学校協働活動への地域住民等の参画の促進,活動の質の向上に向けた域内全域の住民,保護者,学校等関係者に対する情報提供,理解促進活動
    • 都道府県立の高等学校等に係る地域学校協働活動の推進に向けた体制の整備,地域コーディネーターや統括的なコーディネーターの配置

(2)市町村の役割と推進方策

 市町村の小学校や中学校は,住民にとって身近な存在であり,多くの地域住民等がアクセス可能であることから,これまでの地域における学校支援活動等において重要な場となっている。今後も地域学校協働活動の推進にとって,市町村の教育委員会は重要な役割を果たすことが期待される。今後,市町村教育委員会は,それぞれの地域や学校の特色や実情を踏まえつつ,域内全域での地域と学校との協働活動を推進するため,その推進に係る体制の整備その他の施策を講じることが必要である。都道府県と同様に,市町村においても,域内のそれぞれの地域や学校の実情・特色や地域学校協働活動の推進体制の整備状況には違いがあるため,重要なことは,子供たちの成長に向けたビジョンをそれぞれの地域で共有し,地域振興,社会福祉,医療,防災等を担当する首長部局とも連携・協働しつつ,子供たちの成長のために何が求められるか,地域住民にとって何ができるかを検討しつつ,例えば,体制の整備,コーディネーターの配置・育成,地域住民等に対する情報提供や理解促進等,それぞれにとって必要な施策を検討していくことが肝要である。
 特に,地域と学校との協働活動が進んでいない地域においては,それぞれの地域の実情や抱える課題も踏まえつつ,例えば,統括的なコーディネーターの配置,当該地域の地域と学校との協働活動を担う人材の確保・育成,好事例の提供,様々なメディアを活用した効果的な情報発信,企画・立案の助言等を通じて,地域と学校との協働活動が展開されるよう必要な措置を講じていくことが重要である。

推進のための方策

  • 市町村の教育委員会は,域内のそれぞれの地域や学校の特色や実情を踏まえつつ,域内の地域学校協働活動の円滑かつ効果的な推進に係る体制の整備その他の施策を講じていくことが必要である。どのような施策を講ずるかについては首長部局との連携・協働の下,域内における取組状況を鑑みながら実施していくことが重要であるが,例えば以下のような施策が考えられる。
    • 域内の地域学校協働活動に関する教育委員会としてのビジョンの明確化と計画の策定,地域学校協働活動の改善に向けた取組のフォローアップ
    • 地域学校協働活動を推進するための体制の整備
    • 域内の地域コーディネーター,統括的なコーディネーター等の配置,その質の向上に向けた研修やネットワーク化の促進
    • 域内の地域学校協働活動への地域住民等の参画の促進,活動の質の向上に向けた理解促進活動

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初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室

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-- 登録:平成28年01月 --