第3章 地域の教育力の向上と地域における学校との協働体制の在り方について 第1節 地域における学校との連携・協働の意義

ポイント

  • 厳しい教育環境の中,子供を軸として,次代を担う子供たちの成長に向けての目標を共有し,地域社会と学校が協働して取り組むことが必要。
  • 地域と学校が連携・協働することで,新しい人と人とのつながりも生まれ,地域の教育力の向上につながる。
  • 地域の教育力の向上は,地域の課題解決や地域振興,さらには,持続可能な地域社会の源となり,「生涯学習社会」の構築にも資する。

 第1章でも述べたように,未来を担う子供たちは,厳しい挑戦の時代を乗り越え,高い志や意欲を持つ自立した人間として,他者と協働しながら未来を創り出し,課題を解決する能力が求められている。「社会に開かれた教育課程」の実現に向けた学校のパートナーとして,地域の側も広く子供の教育に関わる当事者として,子供たちの成長を共に担っていくことが必要である。さらに,子供たちの成長に向けて,多くの住民が参加して地域と学校とが連携・協働していくことは,子供たちの教育環境の充実にとどまらず,地域住民の学びを起点に地域の教育力を向上させるとともに,持続可能な地域社会を創っていくことにもつながる。
 このため,今後,より多くの,より幅広い層の地域住民が参画し,子供たちの成長を地域で担うため,地域における学校との連携・協働を積極的に推進していくことが必要である。
 地域における学校との連携・協働を進めていく際には,子供たちの将来,子供たちの成長・発達に向けて,何よりも子供を軸として検討することが必要である。すなわち,変化の激しい社会の中で,次代を担っていく子供たちに対して,どのような資質を育むのかという目標を共有して,地域社会と学校が協働して子供の教育に取り組んでいく必要がある。また,今後は,子供たちを社会の主体的な一員として受け入れ,子供も大人も,より多くの,より幅広い層の地域住民が参画し,地域課題や地域の将来の姿等について議論を重ね,住民の意思を形成し,様々な実践へつなげていくことが重要である。
 このように,子供の教育という共通の旗印の下に,地域住民がつながり,地域と学校が協働することで,従来の地縁団体だけではない新しい人と人のつながりも生まれるであろう。さらに,地域社会の課題解決にも,地域の一員として学校も関わっていくことにつながる。このため,真の意味で地域と学校が連携・協働することを目標としていく必要がある。
 地域社会の側においても,これまでの単なる「学校支援」を超えた体制整備が必要である。社会教育の実施体制を強化しつつ,それぞれの地域の状況に合ったコーディネート機能を構築するとともに,学校のパートナーとしての機能・実態を持った地域社会を維持することが必要である。例えば,郷土の伝統文化や地域防災,子供たちとの接し方等について,大人が子供たちに教えるためには,まず大人が学ばなければならない。学校に関わることは,すなわち大人の学びが豊かになることであり,子供の教育を軸として,学校教育と社会教育は表裏一体の関係であると言える。そのため,公民館等の社会教育施設をはじめとする学びの場やICTを活用したものも含め,多様な形態による学習機会を整備することなど,今後も社会教育を充実していく必要がある。
 さらに,地域の教育力の向上は,地域の課題解決や地域振興に向けた連携・協働につながり,持続可能な地域社会の源となる。また,人々が,生涯のいつでも,自由に学習機会を選択して学ぶことができ,その成果が適切に評価される「生涯学習社会」の構築に資するものである。

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-- 登録:平成28年01月 --