第2章 これからのコミュニティ・スクールの在り方と総合的な推進方策について 第2節 これからのコミュニティ・スクールの仕組みの在り方

ポイント

  • コミュニティ・スクールの仕組みとしての学校運営協議会制度の基本的方向性
    • 学校運営協議会の目的として,学校を応援し,地域の実情を踏まえた特色ある学校づくりを進めていく役割を明確化する必要。
    • 現行の学校運営協議会の機能は引き続き備えることとした上で,教職員の任用に関する意見に関しては,柔軟な運用を確保する仕組みを検討。
    • 学校運営協議会において,地域住民や保護者等による学校支援に関する総合的な企画・立案を行い,これらの者の連携・協力を促進していく仕組みとする必要。
    • 校長のリーダーシップの発揮の観点から,学校運営協議会委員の任命において,校長の意見を反映する仕組みとする必要。
    • 小中一貫教育など学校間の教育の円滑な接続に資するため,複数校について一つの学校運営協議会を設置できる仕組みとする必要。

  • 制度的位置付けに関する検討
    • 学校が抱える複雑化・困難化した課題を解決し,子供たちの生きる力を育むためには,地域住民や保護者等の参画を得た学校運営が求められており,コミュニティ・スクールの仕組みの導入により,地域との連携・協働体制が組織的・継続的に確立。
    • このため,全ての公立学校がコミュニティ・スクールを目指すべきであり,学校運営協議会の制度的位置付けの見直しも含めた方策が必要。その際,基本的には学校又は教育委員会の自発的な意志による設置が望ましいこと等を勘案しつつ,教育委員会が,積極的にコミュニティ・スクールの推進に努めていくよう制度的位置付けを検討。

1.コミュニティ・スクールの仕組みの基本的方向性

(1)コミュニティ・スクールの仕組みとしての学校運営協議会の役割と現行の機能の取扱い

 コミュニティ・スクールの仕組みとしての学校運営協議会は,校長の作成する学校運営に関する基本的な方針の承認等を通じ,校長のビジョンを共有し賛同するとともに,地域が学校と一定の責任感・責任意識を分かち合い,共に行動する体制を構築するものである。すなわち,学校と地域がビジョンや課題,情報等を共有し,熟議し,意思を形成する場であり,学校と地域が相互に連携・協働していくための基盤となる。
 学校運営協議会制度を導入していない教育委員会や学校の課題認識として,地域連携がうまく行われている,既に地域住民や保護者等の意見が反映されているといった認識があるが,学校運営協議会制度を導入することによって,学校において,地域との連携・協働体制が組織的・継続的に確立され,その基盤が確固たるものとなる。
 一方,現行の地教行法における学校運営協議会制度は,学校の教育方針の決定や教育活動の実践に地域住民や保護者等の意向を的確かつ機動的に反映させることで,学校の管理運営の改善を図るというガバナンス強化を目的として導入されたものであることから,ややもすれば,学校が地域住民や保護者等の批判の的となるのではないかといった印象を持たれてしまうことがある。同制度は,各学校の運営に地域住民や保護者等が参画することを通じて,地域ならではの創意や工夫を生かした特色ある学校づくりが進むことが期待されるものであり,そうした理念の適切な浸透を図っていく必要がある。
 このため,学校が抱える課題の解決を図り,子供たちに対する教育活動等を一層充実していく観点から,学校運営協議会制度について,これまでの役割を重視しつつ,学校運営の最終責任者である校長を支え,学校を応援することで,地域の実情を踏まえた特色ある学校づくりを推進するという役割を明確化していく必要がある。

 次に,現行制度上の機能の意義や課題等について,以下に整理する。

1.校長の作成する学校運営に関する基本方針の承認

 現行制度において,指定学校の校長は,当該指定学校の運営に関する基本的な方針(以下「学校運営に関する基本方針」という。)を作成し,学校運営協議会の承認を得なければならないとされている(地教行法第47条の5第3項)。
 これは,学校運営協議会が,校長と共に学校運営に責任を負っているという自覚と意識を高めるとともに,校長が作成する学校運営に関する基本方針に地域住民や保護者等の意向を反映させることを目的としたものである(※1)。
 27年度調査において,学校運営協議会の機能の意義に関して調査(校長が回答,指定・未指定問わず)したところ,承認の意義としては,「学校・家庭・地域で目指す子供像・学校像を共有するため」との回答が最も多く,「保護者・地域住民の学校運営に関する当事者意識を高めるため」「保護者・地域住民の学校理解を得るため」「保護者・地域住民の意向を学校運営に反映するため」といった回答が続いている。
 一方,未指定の教育委員会や校長からは,学校の自律性が損なわれるのではないかといった指摘がある。これについては,指定学校の校長は,承認された学校運営に関する基本方針に沿い,その権限と責任において教育課程の編成等の具体的な学校運営を行うことが求められるものの,個々の具体的な権限の行使の在り方や内容について,学校運営協議会の指示や承認を受けるものではなく,校長の学校運営の権限が制約されたり代替されたりするものではない。
 (校長のリーダーシップの発揮の観点については本節1(4)に記載)


  • ※1 学校運営に関する基本方針の承認を通じ,育てたい子供像や目指す学校像等のビジョンを共有した上で,協働して教育の充実に取り組む目的意識や当事者意識の向上,役割の分担につながることから,重要な意義を持つ。

2.学校運営に関する教育委員会又は校長に対する意見

 現行制度において,学校運営協議会は,当該指定学校の運営に関する事項(教職員の任用に関する事項を除く。)について,教育委員会又は校長に対して,意見を述べることができるとされている(地教行法第47条の5第4項)。
 これは,学校運営協議会が,学校運営に関して協議する機関として設置されるものであることから,学校運営に関する基本方針の承認にとどまらず,当該学校の運営全般について,広く地域住民や保護者等の意向を反映させる観点から意見を申し出ることができる旨を規定したものである。学校運営に関する意見を通じ,地域住民や保護者等と共に考え行動することで,学校運営の改善につながるなどの意義がある(※2)。


  • ※2 前述の学校運営協議会の機能の意義に関する調査によると,教育委員会に対する意見の意義としては,「学校の教育課題の解決を図るため」との回答が最も多く,「保護者・地域住民の意向を学校運営に反映するため」「保護者・地域住民の学校運営に関する当事者意識を高めるため」との回答が続いている。また,校長に対する意見の意義としては,「保護者・地域住民の意向を学校運営に反映するため」との回答が最も多く,「保護者・地域住民の学校運営に関する当事者意識を高めるため」「学校運営の点検と見直しを図るため」「学校の教育課題の解決を図るため」といった回答が続いている。
     さらに,同調査によると,学校運営協議会の意見によって実現した具体的事項として,「地域人材が活用されるようになった」との回答が最も多く,「生徒指導の創意工夫が図られた」「施設・設備の整備が図られた」「学習指導の創意工夫が図られた」「新たな教育活動の時間が生まれた」といった回答が続いている。

3.教職員の任用に関する教育委員会に対する意見

 現行制度において,学校運営協議会は,当該指定学校の職員の採用その他の任用に関する事項について,任命権者に対して意見を述べることができるとされている(地教行法第47条の5第5項)。
 これは,学校運営に関する基本方針を踏まえて実現しようとする教育目標・内容等に適った教職員の配置を求める観点から,教職員の任用に関しても意見を申し出ることができる旨を規定したものである。教職員の任用に関する意見を通じ,学校の抱える課題の解決や教育の充実のために必要な校内体制の整備・充実が図られるなどの意義がある(※3)。
 また,25年度調査によると,実際に教職員の任用について意見が出された学校の割合は,指定校の約16%であり,意見の内容としては,教職員人事に関する一般的要望が約64%を占めている。
 一方,未指定の教育委員会や校長からは,任用に関する意見の申出で人事が混乱するのではないか,学校運営協議会と都道府県教育委員会,市町村(特別区を含む。以下この章において同じ。)教育委員会,校長の権限関係が曖昧であり不安であるといった指摘がある。
 これについて,法律上,教職員の任用に関する意見については,任命権者に対し,学校運営協議会から指定学校の職員の任用について意見が述べられた場合,当該職員の任用に当たり,意見を尊重する旨の規定があり,任命権者は学校運営協議会の意見を尊重し,その内容を実現するよう努める必要があるが,これによって,任命権者の任命権(地教行法第37条)の行使そのものを拘束するものではなく,任命権者は,市町村教育委員会の内申(※4)や人事評価(※5)の結果等を総合的に勘案し,職員の任用を行うこととなる。また,学校運営協議会が設置された場合であっても,市町村教育委員会の内申権(地教行法第38条),校長の意見具申権(※6)(地教行法第39条)そのものに変更が生ずるものではない。さらに,採用その他の任用に関する事項とは,採用,昇任,転任であり,分限(免職,休職,降任,降級),懲戒(免職,停職,減給,戒告),勤務条件(給与,勤務時間の決定)等は意見の対象とならないものとされている。
 実際に,25年度調査において,指定前後の課題に対する認識の変化を調査(校長が回答)したところ,「任用の意見の申し出で人事が混乱しないか」といった課題意識について,指定前に約23%であった割合が,指定後には約1%に低減されており,指定により課題は大きく解消される傾向にある。
 このため,改めて,国は教育委員会等に対し,学校運営協議会の権限についての正確な解釈も含めた周知徹底を図るとともに,校長が自身の学校の教育目標等の達成のために有効に生かしていくことができるよう,その意義や成果等について理解を促していくことが求められる。一方,依然として教職員の任用に関する意見に対する抵抗感が強く,学校運営協議会の設置の足かせとなっている実態も存在することから,教職員の任用に関する意見については,柔軟な仕組みの在り方を求める声が強いことにも配慮する必要がある。


  • ※3 前述の学校運営協議会の機能の意義に関する調査によると,教職員の任用に関する意見の意義としては,「教職員体制を改善するため」との回答が最も多く,「教職員の意識改革を進めるため」といった回答が続いている。
  • ※4 県費負担教職員については,都道府県教育委員会は,市町村教育委員会の内申をまって,任免その他の進退を行うものとされている(地教行法第38条)。
  • ※5 平成26年6月に地方公務員法が改正され,人事評価制度が導入される予定であり(平成28年4月施行予定),改正後の同法第23条では,人事評価制度を任用,給与,分限その他の人事管理の基礎とする旨が規定されている。
  • ※6 当該教職員が在籍する学校の校長は,所属の職員の任免その他の進退に関する意見を当該市町村の教育委員会に申し出ることができることとされている(地教行法第39条)。
(現行の機能の取扱い)

 現行の学校運営協議会制度は,地域とともにある学校の理念を実現させるための有効な仕組みであり,地域住民や保護者等が学校の運営に真に参画し,協働することを保障するために,少なくとも同協議会が備えるべきとされた機能が現行の地教行法に規定されている三つの機能である。現行制度が有する意義や成果等を踏まえると,学校運営協議会は,法律上の機能である「学校運営に関する基本方針の承認」,「学校運営に関する意見」及び「教職員の任用に関する意見」の三つの機能を備えるべきである。その上で,教職員の任用に関する意見については,これまでの心理的抵抗を払拭し,学校運営協議会制度を新たに導入しようとする積極的な検討を促す観点から,柔軟な運用を確保する仕組みとしていくことも検討すべきである。

(2)学校支援の総合的な企画・立案,連携・協力の促進の観点

 現行制度において学校運営協議会が有する機能は,前述のとおり,学校のガバナンス強化のための機能となっているが,学校・家庭・地域の信頼関係や協力関係を築いていくことが,学校運営協議会の取組を充実していく鍵である。
 23年度調査によると,学校運営協議会で学校支援活動を実施している学校では,学校の活性化や学校関係者評価の効果的な実施等の「学校運営の改善」,児童生徒の学習意欲の向上や生徒指導上の課題解決等の「児童生徒の変容」,教職員の意識改革や教職員の子供と向き合う時間の増加等の「教職員の変容」,学校に対する保護者や地域の理解の深まりや保護者・地域からの苦情の減少等の「保護者・地域連携の変容」,家庭や地域の教育力の向上等の「学校外の変容」といった様々な面で成果認識が有意に出ている。
 また,27年度調査によると,指定校(校長が回答)において,学校運営協議会が学校支援に関わることによる成果(※7)として,「より特色ある学校づくりを展開することができた」「学校運営協議会の意見等によって学校のニーズにより的確に対応した支援を受けた」「より持続可能な学校支援活動を受けることができた」といった認識も具体的に明らかとなっている。
 学校が抱える課題の解決を図り,子供たちの教育活動等を一層充実していく観点から,地域住民や保護者等による学校の教育活動等を支援する機能は欠かせないものとなっており,学校運営協議会の機能として支援機能を位置付けている割合は約68%と,実態からも支援機能の必要性が整理できる(※8)。
 このように,学校運営協議会において学校運営の方向を協議し支援につなげるという構造を取ることで,学校運営に関する基本方針を踏まえた教育支援活動が展開できる,学校・家庭・地域が課題や情報等を共有することで地域住民や保護者等による学校支援が活性化されるなどの意義がある。 承認した学校運営に関する基本方針の達成に向かって,地域全体で共に前進し行動していくことは,当事者意識等の向上につながり,学校はより良く発展していく。
 こうした意義や成果等を踏まえ,学校運営協議会が法律上有している役割の重要性を押さえた上で,学校の総合力を高め,一層活性化させていくためには,学校運営協議会が,学校に対する地域住民や保護者等の理解や協力,参画を促し,学校を支える基盤であるという観点を明確化していくことが必要であり,学校運営協議会において,地域住民や保護者等による学校支援に関する総合的な企画・立案を行い,これらの者における連携・協力を促進していく仕組みとしていく必要がある。また,このような役割を学校運営協議会が果たす上では,第3章で示す統括的なコーディネーターや地域コーディネーター等を委員として位置付けていくことが求められる。
 この際,こうした仕組みを検討するに当たっては,当該機能がトップ・ダウン型で一方的に展開されることなく,地域住民や保護者等と教職員とが協働で企画したり活動を実施するなど,学校と地域で連携・協働した活動が展開されるよう配慮することが必要であり,また,子供の学びを中心に据えた協働的な活動を通じ,地域づくりに発展していく取組を推進していく視点も有効であり,第3章で示す「地域学校協働本部(仮称)」との一体的・効果的な推進にも留意する必要がある。


  • ※7 以下,成果認識が7割を超えるものについて割合の高い順に記載。
     「学校運営協議会の意見等によって学校のニーズにより的確に対応した支援を受けた」(88.3%)「より持続可能な学校支援活動を受けることができた」(87.3%)「より特色ある学校づくりを展開することができた」(86.5%)「より組織的かつ計画的に学校支援活動を受けることができた」(84.5%)「学校支援活動が活性化した」(82.8%)「学校支援組織の人材を確保しやすくなった」(82.4%)「学校運営協議会の活動自体が活性化した」(78.8%)「学校運営のより確実なPDCAサイクルの確立につながった」(78.3%)「学校運営協議会の意見等によって,保護者・地域のニーズにより的確に対応した支援を受けた」(77.6%)「保護者や地域住民等の学校運営への参画の機運が高まった」(74.8%)「学校支援ボランティア等が教育目標などを共有することによって保護者・地域の当事者意識が高まった」(74.0%)
  • ※8 ある教育委員会では,学校運営協議会に,協議する機能に加え,学校教育を支援する機能を持たせた上で,承認した教育目標の実現に向けて,学校,家庭,地域,そして子供たち自身が熟議を行い,それぞれの立場でできることを具体的に示した行動指針(パワーアップアクションプラン)を策定しており,各々の組織・場で主体的な取組を実践することで,より質の高い学校教育の実現につながっている。

(3)学校評価との一体的な推進の観点

 現状としては,各学校や地域の実情等に応じて,学校運営協議会の機能として学校評価の機能を位置付けている割合が約78%に至っている状況であり,学校関係者評価委員を学校運営協議会の委員が兼務し,学校運営協議会の機能の一つとして学校関係者評価を実施している,学校運営協議会で評価結果と併せて,改善に向けた支援策を協議し実施しているなどの実態が見られる。
 学校運営協議会と学校関係者評価を一体的に推進することで,成果や課題の共有,取組の改善に生かし,学校運営の評価・改善サイクルが充実していくなどの意義がある。また,学校運営協議会において学校評価を行うことで,「様々な課題が共有され,そのための具体的な対策を協議会で協議し,具体的な改善にもつながっている」「次年度の学校運営の基本方針等に着実に生かされており,学校運営協議会委員の参画意識の向上につながっている」といった成果も指摘されている。
 学校関係者評価の質を高め,より実効性を高める観点から,また,学校運営協議会の設置の促進の観点からも,既にある学校関係者評価委員会を基盤に学校運営協議会制度を導入していくことが有効であることから,学校教育法体系上位置付けられている学校関係者評価について,学校運営協議会と有機的に組み合わせ,両者を一体的に運用していくことを積極的に推進することが重要である。その際,教育委員会規則において,学校評価の部会等を設置できる規定を盛り込むなどにより,学校運営協議会の機能として,効果的な学校評価を実施していくことが有効である。
 一方,学校運営協議会が形骸化しないためには,実効性ある運営と併せ,学校運営協議会の取組そのものも適正に評価される必要があることから,教育委員会における定期的な点検・評価の実施を一層推進していくことが必要である。その際,教育委員会にとどまらず,第三者も含めた点検・評価を実施することも有効である。

(4)校長のリーダーシップの発揮の観点

 学校における一切の事柄の責任と権限は,最終的には教育委員会が有するものであるが,日常的な学校運営は,校長の責任と権限に基づいて処理される(※9)。
 未指定の教育委員会や校長からは,現行の学校運営協議会制度において,校長と学校運営協議会の委員が対立しないか,特定委員の発言で学校運営が混乱するのではないかという不安感を抱く声があるが,前述のとおり,学校運営協議会が設置された場合であっても,学校運営の責任者として教育活動等を実施する権限と責任は校長が有するものであり,学校運営協議会が校長に替わり学校運営を決定,実施する権限を持つものではない。
 大切なのは,校長が,学校運営協議会の委員に対し,子供たちをどのような方針で育てていくのかというビジョンを示し,意識や取組の方向性の共有を図ることであり,学校運営協議会は,学校運営に関する基本方針を承認した限りは,校長と共に責任感をもって行動する体制を構築していくことが重要である。
 複雑化・多様化した課題を抱える学校の運営を改善し,学校の教育力を向上させていくためには,校長のリーダーシップが一層発揮される環境を整備するとともに,学校運営協議会の委員として,自らが学校の運営に積極的に参画することによって,学校をより良いものにしていくという当事者意識と意欲を持ち,学校と共に行動していける人材を確保していく必要がある。
 多くの教育委員会においては,学校運営協議会の委員の任命に際し,校長の推薦を得たり意見を聴取するなどの工夫をしている状況も踏まえ,校長のリーダーシップの発揮の観点から,学校運営協議会の委員の任命において,校長の意見を反映する仕組みとしていく必要がある。なお,校長のリーダーシップの発揮の観点からも,本節1(2)の学校支援の総合的な企画・立案等を行える仕組みとしていくことが望ましい。


  • ※9 学校教育法第37条第4項において,「校長は,校務をつかさどり,所属職員を監督する」ものとされている。

(5)小中一貫教育への対応など学校間連携の推進の観点

 地域ぐるみで子供たちの義務教育9年間の学びを支える仕組みとして,中学校区の複数の学校が連携した教育支援体制を構築することは重要であり,小中一貫教育とコミュニティ・スクールを有機的に組み合わせて大きな成果を上げている例も見られる。これらの一体的な導入により,地域住民や保護者等と教職員とが,学校の教育目標や,学校・子供たちが抱える課題やその解決策等について9年間を見通して共有し,より広い地域からの組織的・継続的な学校支援体制を整えることが可能となる。特に,小中一貫教育をこれから導入しようという地域においては,導入前から関係の小学校・中学校について学校運営協議会を合同で設置し,学区の地域住民や保護者等の意向を反映させながら,新たなカリキュラムや学校施設の在り方等を具体的に構想していく工夫も考えられる。
 また,今後制度化される小中一貫型小学校・中学校(仮称)においては,一貫教育の実質を適切に担保する観点から,学校間の意思決定の調整システムを整備することが要件として定められる予定であるが,具体的なシステムとしては,学校間の総合調整を担う校長を定めることや,あるいは,一体的なマネジメントを可能とする観点から小学校・中学校の校長を併任させることに加え,学校運営協議会を合同で設置し,一体的な教育課程の編成等の学校運営に関する基本方針を承認する手続を明確にしておくこと等が想定されている。
 小中一貫教育とコミュニティ・スクールを組み合わせて実施するためには,中学校区で一つの学校運営協議会を置くことが有効であるが,現行の地教行法では学校運営協議会は学校ごとに置くこととなっている(地教行法第47条の5第1項)ことから,学校ごとに学校運営に関する基本方針を別々に承認することとなり,9年間を通じた方針・目標等の共有がしにくいという課題がある。このため,小・中学校の学校運営協議会をリンクさせるために,学校運営協議会の委員全員を関係する全ての学校の委員として併任させたり,各学校について協議会を置いた上で,更にその上に小中合同の会議を開催したりするなどの工夫を講じている例もあるが,委員や学校の大きな負担につながっている。
 一方,27年度調査によると,複数校について一つの学校運営協議会を設置できるようにすることを希望(校長が回答,指定・未指定問わず)する割合は約64%に上る。
 このため,小中一貫教育の取組を一層充実する上でも,中学校区内の複数の小・中学校について一体的な学校運営協議会の設置を促進することが有効であり,学校運営協議会を学校ごとに設置することを基本としつつ,小中一貫教育など学校間の教育の円滑な接続に資する観点から,複数校について一つの学校運営協議会を設置できる仕組みとしていく必要がある。
 この際,9年間一貫した教育目標や教育課程等の学校運営に関する基本方針の承認のほか,地域住民や保護者等の意向を踏まえた,小中一貫教育の軸となる独自教科の検討,9年間で一貫した学校運営に対する意見の聴取,9年間を通じた学校支援や学校関係者評価の実施など,そのメリットを最大限生かした運営がなされるとともに,負担軽減策も含め,より効果的かつ効率的な運営がなされるよう配慮していくことが求められる。また,小中一貫教育以外にも,幼稚園も含めた中学校区全体の連携,中高一貫教育など,多様な学校間の教育の接続・連携にも配慮することが求められる。

2.コミュニティ・スクールの仕組みの必置の検討

 教育再生実行会議が平成27年3月に取りまとめた第六次提言「「学び続ける」社会、全員参加型社会、地方創生を実現する教育の在り方について」において,教育がエンジンとなって地方創生を成し遂げる必要があるという理念の下,学校は,人と人をつなぎ,様々な課題へ対応し,まちづくりの拠点としての役割が求められるとの観点から,「全ての学校において地域住民や保護者等が学校運営に参画するコミュニティ・スクール化を図り,地域との連携・協働体制を構築し,学校を核とした地域づくり(スクール・コミュニティ)への発展を目指すことが重要」であると提言された。また,そのために,「国は,コミュニティ・スクールの取組が遅れている地域の存在を解消し,一層の拡大を加速する。このための制度面の改善や財政面の措置も含め,未導入地域における取組の拡充や,学校支援地域本部等との一体的な推進に向けた支援等に努める。そして,全ての学校がコミュニティ・スクール化に取り組み,地域と相互に連携・協働した活動を展開するための抜本的な方策を講じるとともに,コミュニティ・スクールの仕組みの必置について検討を進める」ことが提言された。
 このことを受け,本審議会では,学校運営協議会制度の基本的方向性を踏まえた上で,コミュニティ・スクールの仕組みの必置について多様な観点から審議した。

(1)学校や地域の状況

 現在,学校と地域の連携・協働体制の一環として,法律に基づく学校運営協議会を置くコミュニティ・スクールのほかにも,学校評議員をはじめ,地域による学校運営への関わり方には様々な形がある中,類似の仕組みを導入することによるコミュニティ・スクールへの不要感を指摘する声がある。
 学校評議員については,平成24年3月現在で公立学校は80.2%の設置率となっており,校長の求めに応じ,学校運営に関し,地域住民や保護者等の意向を把握し反映することができる仕組みであるが,実質的な制度の形骸化等(※10)について指摘がある。25年度調査によると,調査に回答した半数以上の学校の校長は学校評議員制度が形骸化していると認識している。
 また,27年度調査によると,学校運営協議会の設置に伴い,学校評議員又は類似制度を廃止又は停止している学校の割合は約77%という状況であり,そのうち,「学校評議員を学校運営協議会委員とし,さらに新たな人材も委員に加えた」が約50%,「学校評議員のうち一部を学校運営協議会委員に移行させた」が約29%という状況である。
 同調査によると,「学校運営協議会の設置によって,学校支援活動や学校評価などの活動が積極的に展開できている」との回答が約67%,「学校運営協議会委員は学校評議員等よりも当事者意識が高い」との回答が約62%,「学校運営協議会は学校評議員等よりも活発に意見を出してくれる」との回答が約60%という状況である。
 一方,中には,○○型コミュニティ・スクールといった名称で,法律に基づかないものの,独自に学校運営協議会類似の仕組みを取り入れ,地域住民や保護者等が活発に学校運営に参画している地域もある。そうした地域においては,学校と地域の連携・協働関係,信頼関係の土台ができている面もあり,教育長・校長の声として,類似の仕組みも含めた多様なコミュニティ・スクールの在り方を求める声もある。
 前述のとおり,学校運営協議会は,育てたい子供像,目指すべき教育のビジョンを地域住民や保護者等と共有し,目標の実現に向けて共に協働していく仕組みであり,類似の仕組みから法律に基づく学校運営協議会に発展することで,学校において地域との連携・協働体制が組織的・継続的に確立されるという魅力・メリットが存在する。学校と地域の連携・協働体制を一時的なものとせず,持続可能な仕組みとして発展・充実していく上で,学校運営協議会制度の意義は大きい。また,学校と地域において共通したビジョンを持った取組の展開が可能となる,学校運営に関する基本方針の承認を通じて,地域住民や保護者等に対する説明責任の意識が向上するとともに,地域住民や保護者等の理解・協力を得た風通しのよい学校運営が可能となる魅力・メリットもある。
 このため,国は,学校評議員制度からコミュニティ・スクールへの移行を積極的に促すとともに,○○型コミュニティ・スクールなど,学校運営協議会制度によらずに地域住民や保護者等が学校運営に参画する仕組みを構築している取組(※11)についても,コミュニティ・スクールへの過渡的な段階の姿(コミュニティ・スクール化)として捉え,コミュニティ・スクールへの移行を促進していくことが重要である。なお,新たに学校運営協議会を置く場合には,教育委員会の判断により学校評議員を廃止又は活動を停止するなど,それぞれの学校の実情に応じて,効率的・効果的な活用を図ることが重要であることを併せて示していく必要がある。


  • ※10 学校評議員の実質的な形骸化については,「会合開催数が少なく,学校評議員が学校の実態を十分に把握しておらず,議論が活発化しない」「地域の名誉職が評議員となるため,地域のご意見番という性格が強く,組織的ではなく個人的な動きになりやすい」「建設的な意見がなく,形式的で学校が一方的に報告する会議となっている」「様々な助言はもらえるものの,課題解決のアクションを起こすのが学校だけではオーバーワークで機能しない」といった指摘がある。
  • ※11 地域の人々や保護者等が学校運営や教育活動について協議し意見を述べる会議体※を設置している取組を指す。
    • ※ 教育委員会の規則や教育委員会の方針等に基づき学校が作成する要綱等により設置されている会議体で,校長の求めに応じた意見聴取にとどまらず,主体的に学校運営や教育活動について協議し,意見を述べることができる会議体(任用等に関する意見を主活動として位置づけていない協議会も含む)。
       例えば,学校評議員の発展型として協議会を設置し,学校運営全般に参画しているものや,学校支援等の取組の発展型として協議会を設置し,学校支援にとどまらず,学校運営全般にも参画しているもの,学校関係者評価委員会の発展型として,評価にとどまらず,学校運営全般にも参画しているものなども考えられる。

(2)市町村や学校の規模との関係

 27年度調査によると,コミュニティ・スクールの指定を行っていない理由について,自治体の規模別に見ると,小規模の自治体においては,「地域連携がうまく行われている」,「すでに保護者や地域の意見が反映されている」といった回答のほか,「学校運営協議会委員の人材がいない」といった回答が有意に高い状況であった。本調査からも分かるように,小規模の自治体では学校運営協議会の委員の確保が難しい側面があり,また,小中一貫教育以外の学校間連携のネットワークも必要となることが多い。
 また,同調査によると,「学校ごとではなく複数校まとめた学校運営協議会を設置できるようにすることが望ましい」との回答(校長が回答,指定・未指定問わず)について,自治体の規模別(区市町村別)に見ると,小規模の自治体であるほど回答が高い傾向がある。また,学校の規模別に見ても,小規模の学校であるほど回答が高い傾向がある。
 こうした実態や,小規模の学校においては多様な教育環境が十分に確保できていない現実があることを踏まえれば,小規模の学校のネットワークをガバナンスの面から支える観点から,複数校について一つの学校運営協議会を設置することは有効である。
 その際,単に小規模だからという物理的な要件のみを設定するのではなく,学校間のネットワーク化を通じて子供たちをどう育てていくかというグランドデザインや,教育課程上の接続を図るなど,異なる学校の間における教育の円滑な接続や連携を図る観点等を要件として設定していくことが求められる。
 なお,小規模の自治体においても,学校運営協議会,教育委員会,学校が適切に連携・協力して運用がなされることにより,各学校の運営の改善にとどまらず,教育行政全体の活性化の面,まちづくりや地域の活性化の面での効果も期待される。

(3)幼稚園,高等学校,特別支援学校の特性を踏まえた在り方

 本審議会では,幼稚園,高等学校及び特別支援学校の特性を踏まえたコミュニティ・スクールの在り方についても審議した。
 全国的に見ると,コミュニティ・スクールは小・中学校を中心に増えており,幼稚園は95園,高等学校は13校,特別支援学校は10校とごく一部にとどまるが,子供たちの生きる力は学校だけで育むものではなく,地域や社会の多様な人々と関わり,育まれるものであることは,どの段階においても変わるものではない。地域や社会を支える子供たちを育成していくためにも,学校種の特性を生かしつつ,幼児・児童・生徒の発達段階等に応じて,地域や社会との協働体制を構築していく必要がある。

幼稚園の特性を踏まえた在り方

 幼児期に家庭や地域の人々など,様々な人に愛情を持って関わってもらうことが,幼児期の豊かな体験となり,地域への愛着や誇りを持つ基盤となる。子供たちが地域で活躍する活動や場を作ることで,自己肯定感も育つ。
 また,子供たちの健やかな成長のためにも,幼稚園,家庭,地域がそれぞれの役割と責任を自覚し,地域全体で教育に取り組む体制を構築していく必要がある。
 具体的には,学校運営協議会を地域において幼児期から子供の育ちを一体的に考える場としていくことが重要であり,卒園児の保護者や区域の小学校や教育・保育施設の関係者等の協力を得ることで,小学校との円滑な接続や教育・保育施設との円滑な連携の推進等が期待される。

高等学校の特性を踏まえた在り方

 高等学校は,全日制・定時制・通信制,普通科・専門学科・総合学科など,様々な課程や学科等があり,それぞれに特有の学校運営の在り方等が存在している。
 また,義務教育諸学校とは異なり,生徒の選択により入学する学校種であるため,通学区域が広範囲に渡ることにも留意する必要があり,広く社会との関わり・連携を深めていく視点が求められる。
 高等学校において広く地域や社会の参画・協力を促進することは,学校運営の改善につながり,学校の魅力化や特色づくりに資するものである。具体的には,これまで培われた地域や社会との関係を生かして,学校運営協議会を通じ,学校が所在する地域の住民や近隣の大学の教員,地元の商店街,企業,NPO等の団体,地方公共団体等の協力を得ることで,

  • 地域の差し迫った課題を,高校生自らが地域と協働して解決していく地域課題解決型学習を実施したり,町興しイベント等の企画・実施を通じて地域の活性化を図るなど,高等学校と地域の双方向的な魅力を発信したり,
  • キャリア教育を推進する観点から,当該高等学校の周辺地域の企業等と連携・協力してインターンシップ等を実施したり,
  • 専門高校等において,地域産業と連携し,職場で実践的な技術研修を実施したり,特別非常勤講師等として招へいして授業を実施するなど,

 学校の活性化や教育の質の向上に資するとともに,地方創生の観点からも,地域の課題解決・活性化に資することが期待される。

特別支援学校の特性を踏まえた在り方

 これからは,誰もが相互に人格と個性を尊重し支え合い,人々の多様な在り方を相互に認め合える全員参加型の社会である「共生社会」を目指す必要がある。
 このため,障害のある子供が,その能力や可能性を最大限に伸ばし,自立して社会参加することができるよう,医療,保健,福祉,労働等の連携を強化し,社会全体の様々な機能を活用して,十分な教育が受けられるよう,地域住民や保護者等との連携・協働を一層推進し,障害のある子供の教育の充実を図ることが重要である。
 障害者に対する理解を推進することにより,周囲の人々が障害のある人や子供たちと共に学び合い生きる中で,公平性を確保しつつ社会の構成員としての基礎を作っていくことが重要であり,学校と地域が連携・協働しながらこうした環境を醸成していくことは,共生社会の構築につながる。
 具体的には,学校運営協議会を通じて,地域住民や保護者等に加え,医療,保健,福祉等の代表の協力を得ることで,子供たちが自立し社会参加できる環境の充実を図るほか,地元の職業センター等の代表の協力を得て,地場産業への就労を目指す教育課程の工夫や地域の特産品を活用した作業製品の開発・販売を進めるなどにより,学校の活性化や教育の質の向上,さらには,共生社会の実現に資することが期待される。
 また,センター的機能(※12)の役割を果たす特別支援学校が有する資源(教材・教具,施設・設備,特別支援教育に関する相談・情報提供等)の有効な活用を図ることを通じて,地域の活性化に貢献していくことも期待される。


  • ※12 学校教育法第74条に基づき,特別支援学校は小・中学校等や保護者に対し,障害のある児童生徒等の教育についての助言又は援助を行う。平成17年12月の中央教育審議会答申で示されたセンター的機能の例示は以下のとおり。ア 小中学校等の教員への支援機能,イ 特別支援教育に関する相談・情報提供機能,ウ 障害のある幼児児童生徒への指導・支援機能,エ 福祉,医療,労働などの関係機関等との連絡・調整機能,オ 小・中学校等の教員に対する研修協力機能,カ 障害のある幼児児童生徒への施設設備等の提供機能。

(4)小規模自治体における教育委員会と学校運営協議会との関係の取扱い

 小規模自治体の場合,学校運営協議会と教育委員会の関係について,両者の機能・権限や委員が重なるのではないかといった課題が指摘されている。
 学校運営協議会は地教行法第47条の5に基づき,学校運営に関する基本方針を承認する機能等を有する。一方,教育委員会は地教行法第21条に基づき,学校の組織編制,教育課程,学習指導,生徒指導及び職業指導に関する管理・執行権限等を有する。
 両者の法律上の機能・権限は異なるものであり,一体として捉えることはできないものであるが,教育委員には,単に一般的な識見があるというだけではなく,教育に対する深い関心や熱意が求められることから,例えば,PTAや地域の関係者,学校運営協議会の委員等を選任することは有効である。

(5)これからの学校運営協議会の制度的位置付けの検討

 学校運営協議会については,公立学校を設置・管理する権限を有する地方公共団体の教育委員会において,学校や地域の実態等を十分に踏まえて,学校ごとに判断されることが望ましいとされ,現行制度上,任意設置とされている(地教行法第47条の5第1項)。
 本審議会では,現在の学校や子供たちが抱える課題等を解決し,学校が組織としての力を発揮していくために,全ての学校が,地域とともにある学校としてコミュニティ・スクール化を図り,学校と地域の連携・協働体制を構築していくことを目指すべきとの視点に立ちながら,コミュニティ・スクールの仕組みの必置に係る検討の一環として,学校運営協議会の制度的位置付けについて審議を行った。
 学校運営協議会の制度的位置付けの見直しを求める意見としては,以下のような意見が挙げられる。

  • 学校運営協議会は学校と地域に様々なポジティブな影響を与える可能性があること  から,仕組みを必置とすることが望ましい。
  • 徹底した理解を図り,人の配置や予算面での支援等により誘導を図っていくことで,必置ということも無理ではない。
  • 全ての学校をコミュニティ・スクールとするならば,既存の様々な取組を制度に位置付けることで,停滞しがちな面もある既存の取組を安定させ持続可能な取組としていけるといった面をアピールしていく必要がある。
  • 地方創生の実現の観点からも,開かれた学校にとどまるのではなく,地域とともにある学校に転換する必要があり,責任を持って地域が学校運営に参画していく仕組みとして,学校運営協議会を必置として考えていく必要がある。
  • 人口減少が加速している中,学校を核にするならば,コミュニティ・スクールは必然である。類似の仕組みにとどまることなく,法令に基づいて設置される学校運営協議会に一定の権限と責任を担保させることが重要である。

 一方,学校や地域の実情を踏まえた在り方を求める意見としては,以下のような意見が挙げられる。

  • 実態に合った取組ができるよう段階的仕組みとすべきである。
  • 小・中学校は地域との関連性が深いことから必置とすることが望ましいが,それ以外の学校種は通学区域が広域で一律必置は難しく,取組を検証しながら導入を促進していくことが望ましい。
  • 全ての学校にコミュニティ・スクールの仕組みを取り入れるのであれば,そのハードルを下げていかなければならないし,難しい仕組みにしてはいけない。
  • 今の学校運営協議会の仕組みを必置として押しつけることは得策でない。
  • 全校をコミュニティ・スクールとするにしても,トップ・ダウンで一気に進めていくのではなく,各自治体にモデル校を指定し,成功体験を積ませた上で,モデルケース化していくような地域の納得性を得られた形で制度を広げていく方法もある。

 また,本審議会では,教育委員会・教育長関係団体や校長・園長会からも意見聴取を行った。意見の多くは,これからの学校運営に当たっては,地域との連携・協働は不可欠であり,学校・地域の連携・協働を推進する手段として,コミュニティ・スクールの仕組みの意義や推進は必要であると認識しつつも,一律に導入を促すのではなく,学校や地域の実情等を踏まえた柔軟な在り方が望ましいといったものである。以下,主な意見を挙げる。

  • 法定の学校運営協議会を設置していなくとも,類似の取組を行うなど,実質的に同等の活動を展開し地域との連携を図っている学校も少なからずある。こうした中,全ての学校に現行の学校運営協議会を必置とすることは実現が困難であると考える。このため,顕在化している課題にしっかりと対応した情報発信の改革と支援措置の拡充を図るとともに,学校や地域の実情に応じて一部の機能のみを有する学校運営協議会を置くことができるなど,弾力的な制度設計とすべきである。
  • 学校評議員,学校支援地域本部,学校関係者評価など,様々な仕組みに,更に学校運営協議会も設置することにより学校の負担となることは避けるべきである。全国的にコミュニティ・スクールを推進するに当たっては,実態に合った取組ができるよう段階的仕組みとすべきであり,財政確保と人材確保の保障が必要である。
  • 地域とともにある学校を目指すために学校運営協議会を導入していく方向性は妥当である。一方,全国的に広めていくためには,地域性を考慮の上,柔軟な形態と多様性を認め,拙速な実施にならないよう配慮するとともに,国として予算的な裏付けを継続的に保障すべきである。

これからの学校運営協議会の制度的位置付け

 これまで述べてきたとおり,現在,学校が抱える課題が複雑化・困難化している状況の中,困難な課題を解決し,子供たちの生きる力を育んでいくためには,地域住民や保護者等の参画を得て,力を合わせて学校運営を行っていくことが求められており,第1章で述べた社会の動向や子供たちの教育環境を取り巻く状況等を踏まえればなおさら,その必要性は増している。学校運営協議会制度を導入することで,学校・家庭・地域が育てたい子供像や目指す学校像を共有し,一体となって子供たちを育み,課題の解決に取り組むことが可能となる。また,本制度の導入によって,学校運営の改善をはじめ,児童生徒,教職員,地域住民や保護者等にプラスの変容が見られるなど,様々な面で成果が示されており,何より,学校と地域との連携・協働体制が組織的・継続的に確立されるという点で大きな意義を持つ。
 このような観点を踏まえれば,これからの公立学校は地域とともにある学校へと転換し,地域との連携・協働体制を持続可能なものとしていくことが不可欠であり,今後,全ての公立学校において,地域住民や保護者等が学校運営に参画する仕組みとして,学校運営協議会制度を導入した学校(コミュニティ・スクール)を目指すべきである。
 このため,各教育委員会が,コミュニティ・スクールの推進を図っていくよう,現在任意設置となっている学校運営協議会の制度的位置付けの見直しも含めた方策を講じていくことが必要である。その際,

  • 学校運営協議会を有効に機能させるためには,学校と地域の信頼関係の構築が基盤となることから,基本的には学校又は教育委員会の自発的な意志によって設置されることが望ましいこと,
  • 現在の学校運営協議会の設置率は全公立学校の7%程度という実態を踏まえる必要があること,
  • 学校運営協議会が学校運営に混乱をもたらしかねないといった懸念・不安に基づく制度導入に対する拒否反応を丁寧に払拭していく必要があること,
  • 学校や学校を取り巻く地域の状況は多様であることから,過渡的な段階を経た発展も考慮する必要があること

 等の点を勘案しつつ,教育委員会が,積極的にコミュニティ・スクールの推進に努めていくような制度的位置付けの見直しを検討すべきである。
 法律に基づかない自治体類似の仕組みについても,コミュニティ・スクールへの過渡的な段階(コミュニティ・スクール化)の姿として捉え推進していくことが重要であり,取組の充実・発展を促す中で,最終的にはコミュニティ・スクールとなることを目指して推進していくことが重要である。
 また,国においては,コミュニティ・スクールがより魅力的な仕組みとなるよう,本節1.に示した基本的方向性の実現を図り,学校や教育委員会の主体性を大切にしながら推進していく必要がある。そのためにも,制度の趣旨や目的をはじめ,学校運営協議会が三つの機能を有するからこそ,学校・家庭・地域の各々が,互いの役割を認識し,相互に連携・協働して学校運営を充実させることにつながり,子供たちの生きる力の育成につながるといった,本制度の持つ意義や成果等に対する正しい理解が得られるよう周知を図るとともに,コミュニティ・スクールを推進するための施策面・財政面等における総合的な推進方策を講じていくべきである。
 この際,コミュニティ・スクールが一層推進されるよう,教育振興基本計画等において,国としての方針を明確化し,それに向けて次節に記述する支援方策の積極的な実施と併せ,各地方公共団体の取組状況をフォローアップし,適切な時期に制度的位置付けや支援方策について検討し,その結果に基づき見直しを行うべきである。

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初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室

(初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室)

-- 登録:平成28年01月 --