学校運営の状況が地域住民や保護者等に分かりにくく,学校の閉鎖性や画一性等の指摘がある中,時代の変化に応じて,地域住民や保護者等から,学校教育に対する多様かつ高度な要請や,開かれた学校運営を求める声が寄せられるようになっていること等を背景とし,平成16年に地方教育行政の組織及び運営に関する法律(以下「地教行法」という。)が改正され,学校運営協議会制度が導入された。これは,平成12年の学校評議員制度による学校と地域との連携を更に一段階進め,地域の力を学校運営そのものに生かす発想からくるものである。
学校運営協議会は,地域住民や保護者等の側に,自らが学校の運営に積極的に参画することによって,自分たちの力で学校をより良いものにしていこうとする意識の高まりを的確に受け止め,学校と地域住民や保護者等が力を合わせて学校の運営に取り組むことが可能となる仕組みとして意義を持つ。国は,制度導入後,学校運営協議会を設置する学校をコミュニティ・スクールと呼び,第2期教育振興基本計画(平成25年6月閣議決定)において,コミュニティ・スクールを全公立小・中学校の1割に拡大することを成果指標と定め,その推進を図ってきた。
第1章で述べたように,様々な教育改革や地方創生等の動向を踏まえながら,学校と地域は一体となって連携・協働体制を築いていく必要がある。コミュニティ・スクールの仕組みについても,制度導入から10年余が経過した今,新しい時代における学校と地域の目指すべき連携・協働の姿を見つめながら,その実現にふさわしい仕組みへと創り上げていく必要がある。このため,改めてコミュニティ・スクールの意義や成果,課題等を検証した上で,制度面の改善や財政面の措置も含めた方策について審議した。
平成27年4月現在,全国2,389校(全国5道県235市区町村の教育委員会)がコミュニティ・スクールに指定されており,幼稚園95園,小学校1,564校,中学校707校,高等学校13校,特別支援学校10校と,小・中学校を中心に指定校の数は増加してきている。
平成27年度に実施したコミュニティ・スクールの実態に関する調査(以下「27年度調査」という。)によると,コミュニティ・スクールに指定した理由(※1)(教育委員会が回答)として,「学校を中心としたコミュニティづくりに有効だと考えたから」「学校支援活動の活性化に有効と考えたから」「学校改善に有効と考えたから」といったことが挙げられている。
また,同調査によると,コミュニティ・スクールに指定された学校(校長(幼稚園の場合は園長。以下同じ。)が回答)の成果(※2)として,「学校と地域が情報を共有するようになった」「地域が学校に協力的になった」「特色ある学校づくりが進んだ」といった認識が明らかとなっている。
さらに,同調査によると,地域との連携により学校運営の改善が図られる中で,教職員の意識改革や,学力や学習意欲の向上,生徒指導上の課題の解決等の成果認識があるほか,学校を核とした協働活動が行われることに伴って,地域の教育力の向上や地域の活性化等の成果認識も明らかとなっている。
同様に,教育委員会に対しても,コミュニティ・スクールの導入による成果を調査したところ,おおむね同様の項目において,成果認識が高いことが明らかとなっている。
コミュニティ・スクールの導入・運営に当たっての課題として,平成23年度に実施したコミュニティ・スクールの実態と成果に関する調査(以下「23年度調査」という。)によると,指定校(校長が回答)において,「学校運営協議会に対する一般教員の関心が低い」「管理職や担当教職員の勤務負担が大きい」「委員謝礼や活動費などの資金が十分でない」といった認識(※3)が示されている。
また,27年度調査によると,コミュニティ・スクール未指定の教育委員会において,導入していない主な理由(※4)として「学校評議員制度や類似制度があるから」「すでに保護者や地域の意見が反映されているから」といったことが挙げられている。
このほか,少数であるものの,「管理職や教職員の負担が大きくなる」「学校運営協議会委員の人材がいない」「任命権者の人事権が制約される」「特定の委員の発言で学校運営が混乱する」といった理由が挙げられている。
なお,コミュニティ・スクールに対する課題認識について,平成25年度に実施したコミュニティ・スクールに関する調査(以下「25年度調査」という。)において,指定前後の課題に対する認識の変化を調査(校長が回答)したところ,課題認識の多くは,指定によって大きく解消される傾向が見られる。
制度面の改善や財政面の措置も含めた方策の検討に当たっては,こうした課題認識も踏まえた検討を進めていく必要がある。
初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室
-- 登録:平成28年01月 --