第1章 時代の変化に伴う学校と地域の在り方について 第2節 これからの学校と地域の連携・協働の在り方

ポイント

  • これからの学校と地域の連携・協働の姿として,以下の姿を目指す。
    • 地域住民と目標やビジョンを共有し,地域と一体となって子供たちを育む「地域とともにある学校」への転換
    • 地域の様々な機関や団体等がネットワーク化を図りながら,学校,家庭及び地域が相互に協力し,地域全体で学びを展開していく「子供も大人も学び合い育ち合う教育体制」の構築
    • 学校を核とした協働の取組を通じて,地域の将来を担う人材を育成し,自立した地域社会の基盤の構築を図る「学校を核とした地域づくり」の推進
  • 上記の姿を具現化していくためには,学校と地域の双方で連携・協働を推進するための組織的・継続的な仕組みの構築が必要。

1.これからの学校と地域の目指すべき連携・協働の姿

(1)地域とともにある学校への転換

 社会総掛かりでの教育の実現を図る上で,学校は,地域社会の中でその役割を果たし,地域と共に発展していくことが重要であり,とりわけ,これからの公立学校は,「開かれた学校」から更に一歩踏み出し,地域でどのような子供たちを育てるのか,何を実現していくのかという目標やビジョンを地域住民等と共有し,地域と一体となって子供たちを育む「地域とともにある学校」へと転換していくことを目指して,取組を推進していくことが必要である。すなわち,学校運営に地域住民や保護者等が参画することを通じて,学校・家庭・地域の関係者が目標や課題を共有し,学校の教育方針の決定や教育活動の実践に,地域のニーズを的確かつ機動的に反映させるとともに,地域ならではの創意や工夫を生かした特色ある学校づくりを進めていくことが求められる。
 これまでの提言(※1)では,地域とともにある学校の運営に備えるべき機能として「熟議」「協働」「マネジメント」の三つが挙げられており,これらはこれからの学校運営に欠かせない機能として,再認識していく必要がある。

  1. 関係者が皆当事者意識を持ち,子供たちがどのような課題を抱えているのかという実態を共有するとともに,地域でどのような子供たちを育てていくのか,何を実現していくのかという目標・ビジョンを共有するために「熟議(熟慮と議論)」を重ねること。
  2. 学校と地域の信頼関係の基礎を構築した上で,学校運営に地域の人々が「参画」し,共有した目標に向かって共に「協働」して活動していくこと。
  3. その中核となる学校は,校長のリーダーシップの下,教職員全体がチームとして力を発揮できるよう,組織としての「マネジメント」力を強化すること。

  • ※1 「コミュニティ・スクールを核とした地域とともにある学校づくりの一層の推進に向けて」(平成27年3月 コミュニティ・スクールの推進等に関する調査研究協力者会議),「子どもの豊かな学びを創造し,地域の絆をつなぐ~地域とともにある学校づくりの推進方策~」(平成23年7月学校運営の改善の在り方等に関する調査研究協力者会議)

(2)子供も大人も学び合い育ち合う教育体制の構築

 学校,家庭及び地域は,教育におけるそれぞれの役割と責任を自覚するとともに,相互に協力していくことが重要である。地域が学校や家庭と共に教育の担い手となることが社会的な文化となっていくためにも,地域の一部の人々だけが参画し協力するのではなく,地域全体で子供たちの学びを展開していく環境を整えていくことが必要であり,子供との関わりの中で,大人も共に学び合い育ち合う教育体制の構築が必要である。
 地域には,学校,教育機関,首長部局等の行政機関,社会教育施設,PTA,NPO・民間団体,企業・経済団体など,様々な機関や団体等がある。他方,個人として学校支援ボランティアに関わっている地域の人々もいる。子供たちや学校の抱える様々な課題に対応していくためにも,また,子供たちの生命や安全を守っていくためにも,子供を軸に据え,様々な関係機関や団体等がネットワーク化を図り,子供たちを支える一体的・総合的な教育体制を構築していくことが重要である。学校と地域が連携・協働するだけでなく,子供の育ちを軸に据えながら,地域社会にある様々な機関や団体等がつながり,住民自らが学習し,地域における教育の当事者としての意識・行動を喚起していくことで,大人同士の絆(きずな)が深まり,学びも一層深まっていく。地域における学校との協働活動に参画する住民一人一人が学び合う場を持って,子供の教育や地域の課題解決に関して共に学び続けていくことは,生涯学習社会の実現のためにも重要である。
 さらに,家庭教育の支援の観点からも,家庭教育の支援を視野に入れた地域と学校の連携が進むことで,課題を抱えた保護者に対する支援の充実につながるとともに,孤立感を抱えた保護者を含む多くの保護者に対し,学校との連携・協働による活動に参画していく機会を作ることにつながる。

(3)学校を核とした地域づくりの推進

 地方創生の観点からも,地域とともにある学校づくりを進めるに当たっては,学校という場を核とした連携・協働の取組を通じて,子供たちに地域への愛着や誇りを育み,地域の将来を担う人材の育成を図るとともに,地域住民のつながりを深め,自立した地域社会の基盤の構築・活性化を図る「学校を核とした地域づくり」を推進していく視点も持つことが重要である。成熟した地域が創られていくことは,子供たちの豊かな成長にもつながり,人づくりと地域づくりの好循環を生み出すことにもつながっていく。また,地域住民が学校を核とした連携・協働の取組に参画することは,高齢者も含めた住民一人一人の活躍の場を創出し,まちに活力を生み出す。さらに,地域と学校が協働し,安心して子供たちを育てられる環境を整備することは,その地域自身の魅力となり,地域に若い世代を呼び込み,地方創生の実現につながる。
 一方的に,地域が学校・子供たちを応援・支援するという関係ではなく,子供の育ちを軸として,学校と地域がパートナーとして連携・協働し,互いに膝を突き合わせて,意見を出し合い,学び合う中で,地域も成熟化していく視点が重要である。子供たちも,総合的な学習の時間や,放課後・土曜日,夏期休業中等の教育活動等を通じて地域に出向き,地域で学ぶ,あるいは,地域課題の解決に向けて学校・子供たちが積極的に貢献するなど,学校と地域の双方向の関係づくりが期待される。
 地域によっては,公民館等の社会教育施設を一つの拠点として,高齢者の健康維持や文化の伝承等の地域課題に関わる社会教育活動を,住民が主体となって活発に行っているところもある。学校という場を地域の人々が集い,学び合う場としていくだけでなく,このような拠点が学校とつながり,双方向の関係を持つことも有益である。

2.学校と地域の連携・協働を推進するための組織的・継続的な仕組みの構築

本節1.で示した「これからの学校と地域の目指すべき連携・協働の姿」を具現化していくためには,学校と地域の双方で,連携・協働を推進するための組織的・継続的な仕組みを構築していく必要がある。
 現在,学校と地域の連携・協働を推進する仕組みとして,コミュニティ・スクール(※2)(学校運営協議会制度)の仕組みや,「学校支援地域本部」による様々な教育活動,「放課後子供教室」の体験活動等を行う社会教育の既存の体制(※3)がある。
 学校と地域がパートナーとして連携・協働するには,両者がビジョンを共有し,協働して子供たちが見える学びを展開していくことが重要であり,上記の既存の体制による取組を一層推進していくとともに,地域における様々な体制等をつなぐコーディネーターを配置する等の仕組みの構築や,既存の仕組みの更なる工夫が不可欠である。
 このため,本審議会では,これからの学校と地域の目指すべき連携・協働の姿を踏まえながら,地域とともにある学校に転換していくための持続可能な仕組みとして,これからのコミュニティ・スクールの在り方について審議するとともに,地域において子供たちを支える持続可能な仕組みとして,地域における様々な体制等の在り方について審議した。(コミュニティ・スクールの在り方については第2章,地域における様々な体制等の在り方については第3章で言及)
 なお,子供たちの生きる力を育成する観点等からすれば,学校と地域の連携・協働は,公立学校にとどまらず,国立学校や私立学校においても重要なものである。第2章については,学校運営協議会の制度が公立学校の管理運営の改善を図るための仕組みであること等を念頭に,公立学校を中心に述べているものである。また,第3章における地域学校協働活動についても公立学校を中心に述べているが,国立学校や私立学校が所在する地域においては,それらの学校の教育方針や地域の実情を踏まえつつ,地域学校協働活動に取り組むことが期待される。


  • ※2 地方教育行政の組織及び運営に関する法律第47条の5に基づき,当該学校の所在する地域の住民や当該学校に在籍する児童生徒等の保護者で構成される委員が当該学校の運営に関して協議する機関を置く学校。
  • ※3 国及び地方公共団体で分担する補助事業「学校・家庭・地域の連携協力推進事業」における学校支援地域本部や放課後子供教室等(地域コーディネーターの企画調整により地域人材の協力を得て,授業補助や学校環境整備,放課後の体験活動等,様々な教育活動の支援を実施)を行う体制。第2期教育振興基本計画(平成25年6月閣議決定)においては,これらの取組など「保護者はもとより,地域住民の参画により子供たちの学びを支援するための体制」と記載されている。

3.学校と地域の連携・協働を推進するための体制整備

 今後,全国どの地域においても子供たちが地域の協力を得て成長していくことができるよう,また,住民が地域による学校との協働活動に参画する機会を得られるようにするためには,各都道府県や市町村において,子供たちの成長や地域の振興・再生に向けたビジョンを掲げ,地域住民,保護者,学校及び様々な関係機関や団体間でそれを共有しつつ,学校と地域の連携・協働を推進していく必要がある。
 このためには,都道府県や市町村の教育委員会内において,コミュニティ・スクールや学校運営改善施策を担当する学校教育担当部局と,学校支援地域本部や放課後子供教室等の施策を担当する社会教育担当部局との連携・協働体制の構築が不可欠である。
 また,首長部局等との連携・協働は,これからの教育改革の大きな柱となるものであり,学校と地域の連携・協働による取組は,地域のまちづくりや青少年健全育成,福祉,防災等の分野とも関連するものである。取組を円滑かつ効果的に進めていくためにも,総合教育会議を積極的に活用しつつ,教育委員会と首長部局との連携・協働体制として,部局横断で子供の育ちを総合的・一体的に支援する体制を構築していくことが重要である。 
 さらに,学校と地域の双方に,連携・協働を推進する窓口となる人材を配置することで,相互の役割分担を進めながら,連携・協働体制を構築・強化していく必要がある。(地域連携の推進を担当する教職員は第2章,地域コーディネーターは第3章で言及)


  • また,この他,公民館等による地域課題解決等の取組を含む様々な学校づくり,地域づくりのための活動を行う体制も含まれる。

お問合せ先

初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室

(初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室)

-- 登録:平成28年01月 --