教育の専門性を有する教職員に加え、地域とも連携しながら、多様な職種の専門性を有するスタッフを学校に置き、校長のリーダーシップの下、それらの教職員や専門能力スタッフが自らの専門性を十分に発揮し、「チームとして学校」の総合力、教育力を最大化できるような体制を構築する。こうした観点から、教職員と専門能力スタッフ(心理、福祉、部活動、特別支援教育、地域連携)について検討を加える。
教職員及び専門能力スタッフ一覧
1.教職員の指導体制の充実
ア 教員
イ 指導教諭
ウ 養護教諭
エ 栄養教諭・学校栄養職員
2.教員以外の専門能力スタッフの参画
1)心理や福祉の専門性等を有する専門能力スタッフ
ア スクールカウンセラー
イ スクールソーシャルワーカー
2)授業等において教員を支援する専門能力スタッフ
ア ICT支援員
イ 学校司書
ウ 英語指導を行う外部人材と外国語指導助手(ALT)等
エ 補習など、学校における教育活動を充実させるためのサポートスタッフ
3)部活動に関する専門能力スタッフ
ア 部活動指導員(仮称)
4)特別支援教育に関する専門性等を有する専門能力スタッフ
ア 医療的ケアを行う看護師等
イ 特別支援教育支援員
ウ 言語聴覚士(ST)、作業療法士(OT)、理学療法士(PT)等の外部専門家
エ 就職支援コーディネーター
3.地域との連携体制の整備
ア 地域連携を担当する教職員
(教員の業務の在り方)
我が国の教員は、教育の専門性を生かし、これまで学習指導のみならず、生徒指導等の面でも主要な役割を担い、子供たちの状況を総合的に把握して指導を行うなど、学校において中心的な役割を果たしている。このような取組は高く評価され、成果を上げてきた。
しかし、主体的・協働的な学習やカリキュラム・マネジメントの取組等が求められる中、教員に期待される専門性は高まっており、教員は、授業準備や研修等に、より多くの時間を割き、自らの専門性を高めることが求められている。
(主体的・協働的な学習の必要性)
新しい時代に必要となる資質・能力を育成するためには、「何を教えるか」という知識の質や量の改善だけでなく、「どのように学ぶか」という、学びの質や深まりを重視し、学ぶことと社会とのつながりをより意識した教育を行い、子供たちがそうした教育のプロセスを通じて、基礎的な知識・技能を習得するとともに、実社会や実生活の中でそれらを活用しながら、自ら課題を発見し、その解決に向けて主体的・協働的に探究し、学びの成果等を表現し、更に実践に生かしていけるような学習活動を行うことが必要である。
そのような主体的・協働的な学習を行うためには、知識の質や量の改善を主眼とした学習と比較して、質量ともに充実した授業準備や教材研究等が必要であり、あわせて、学習成果の評価方法についても開発する必要がある。
さらに、現在の教員の多くの教員が経てきた養成課程は、今後求められる主体的・協働的な学習に十分対応できる内容や手法であるとは限らないことから、主体的・協働的な学習の指導方法を自ら意識的に身に付ける努力が求められている。
(カリキュラム・マネジメントの必要性)
また、新しい時代に必要となる資質・能力を子供たちに身に付けさせるためには、それぞれの学校において、子供や地域の実態に基づき、カリキュラムを自分たちで作りだし、PDCAサイクルをまわしていくというカリキュラム・マネジメントに取り組むことが必要である。
カリキュラム・マネジメントを推進していくためには、カリキュラムは与えられるものであるという意識を改革し、カリキュラムを作り出し、評価・改善するという取組が求められる。
(研究・研修の機会の確保等)
主体的・協働的な学習の取組を推進するためには、教員一人一人が、質量ともに充実した授業準備や評価方法の開発等の研究に取り組むことが求められるとともに、教科の特性も踏まえつつ、特定の教科だけでなく、学校全体でチームとして、校内研修を進めることが必要である。
また、カリキュラム・マネジメントを推進するためには、教員がカリキュラム全体を意識して、日々の授業を組み立てることが求められるとともに、教科横断的な研修や教育課程全体の研修に学校全体でチームとして取り組むことが不可欠である。
(教員の業務の見直し)
主体的・協働的な学習やカリキュラム・マネジメントの取組等を進めていくためには、教員の業務を見直し、教員が教員でなければできない業務(a)に可能な限り専念することができるような体制を整備することが必要である。
そのため、学校に、教員に加えて、多様な専門性を持つスタッフ等を置き、
については、校長のリーダーシップの下、教員と事務職員、専門能力スタッフとの間で連携、分担を行い、学校の教育力を最大化していくことが必要である。
〔教員の業務の分類(例)〕
(a)教員が行うことが期待されている本来的な業務
(b)教員以外の職員が行うことが効果的な業務
(c)教員以外の専門能力スタッフ等が担ったり、関わったりすることで、より効果を上げることができる業務
(d)多様な経験等を有する地域人材等が担うべき業務
ただし、諸外国と比較した場合、日本の教員が、子供に包括的に関わることが教育の成果につながっていることから、専門能力スタッフ等の活用に当たっては、単なる業務の切り分けとならないよう注意が必要である。
例えば、いじめへの対応について、スクールカウンセラーがカウンセリング等で関わることは、有効な機能を発揮しているが、スクールカウンセラーに全ての対応を任せるだけでは、解決につながらないことも考えられる。日常的に子供に関わっている教員、いじめ等のサインに気付きやすい立場にある養護教諭、心理学の観点から助言や援助を行うスクールカウンセラー、これらの役割や専門性を異にする職員が様々な立場から、総合的に関わることで解決につなげることが可能になる。
特に、(c)の業務に関わる職員や専門能力スタッフは、教員と連携して、力を発揮することが期待されている※1
※1 平成25年に制定された「いじめ防止対策推進法」は、第8条において、学校及び学校の教職員に対して、いじめの防止やいじめを受けている児童等に対処する責務を規定した上で、第18条で、国及び地方公共団体は、いじめの防止等のための対策が専門的知識に基づき適切に行われるよう、心理、福祉等に関する専門的知識を有する者の確保のために必要な措置を講ずるものとすると規定している。
〔「チーム学校」による教職員構造の転換(イメージ) 作業部会事務局作成〕
(教員の指導体制の充実)
業務改善に取り組んだ上で、主体的・協働的な学習やカリキュラム・マネジメントを全国に広く展開していくためには、各学校におけるカリキュラム開発、指導計画策定、教材開発、人材育成、校内研修等を総合的に行う教員の配置が重要であり、このために必要な定数措置を図ることが必要である。
また、社会の状況を踏まえ、小学校における指導内容が高度化していること、また、小学校の意識や学校文化を変えるきっかけにもなることから、例えば、英語や理科、技能教科に対応するための専科教員の配置が求められている。
あわせて、関係団体ヒアリングでは、いじめ等に効果的に対応するため、授業や校務の負担が軽減されるとともに、学校における事件や事故が起こった際に中心的に対応できるような教員の配置や、特別支援教育を充実させるための教員の配置など、教員の配置数の充実を求める意見があった。
(改善方策)
(現状)
指導教諭は、優れた指導力を生かして、示範授業を行うことなどにより、指導方法の改革に力を発揮することが期待されており、平成26年4月現在、67都道府県・指定都市教育委員会のうち、23教育委員会で設置されており、配置人数は、1,873人である。
(成果と課題)
文部科学省の調査※2によれば、指導教諭の配置の主な成果について、調査対象の都道府県の約8割、市区町村、学校の約9割が「教職員の指導力の向上」、「指導体制、研究体制の充実」、「OJT、校内研修の活性化や質の向上」としている。
一方、配置の課題については、同調査において、「指導教諭の通常の授業時数が多く、期待される校務を処理できない」、「指導教諭の役割等について校内の理解が進んでいない」とする指摘が多い。
※2 全国の公立の小学校、中学校、高等学校、中等教育学校及び特別支援学校の2%に相当する学校(674校)及び、これらの学校を設置する市区町村教育委員会(329教育委員会)及び各都道府県・指定都市教育委員会(67教育委員会)を対象に、平成27年に調査を実施。調査対象は平成27年5月1日時点。
(改善方策)
(現状)
養護教諭は、児童生徒の「養護をつかさどる」教員(学校教育法第37条第12項等)として、児童生徒の保健及び環境衛生の実態を的確に把握し、心身の健康に問題を持つ児童生徒の指導に当たるとともに、健康な児童生徒についても健康の増進に関する指導を行うこととされている。
また、養護教諭は、児童生徒の身体的不調の背景に、いじめや虐待などの問題がかかわっていること等のサインにいち早く気付くことのできる立場にあることから、近年、児童生徒の健康相談においても重要な役割を担っている。
特に、養護教諭は、主として保健室において、教諭とは異なる専門性に基づき、心身の健康に問題を持つ児童生徒に対して指導を行っており、健康面だけでなく生徒指導面でも大きな役割を担っている。
また、健康診断・健康相談については、学校医や学校歯科医と、学校環境衛生に関しては学校薬剤師との調整も行っているところである。
さらに、心身の健康問題のうち、食に関する指導に係るものについては、栄養教諭や学校栄養職員と連携をとって、解決に取り組んできているところである。このように、養護教諭は、児童生徒の健康問題について、関係職員の連携体制の中心を担っている。
(成果と課題)
養護教諭は、学校に置かれる教員として、従来から、児童生徒の心身の健康について中心的な役割を担ってきた。
今後は、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーが配置されている学校において、それらの専門能力スタッフとの協働が求められることから、協働のための仕組みやルールづくりを進めることが重要である。
また、児童生徒の心身の健康に関して課題の大きな学校については、養護教諭の複数配置を進めていく必要がある。
(改善方策)
(現状)
近年、偏った栄養摂取など食生活の乱れや肥満・痩身傾向などが児童生徒に見られる。こうしたことから、児童生徒が食に関する正しい知識と望ましい食習慣を身に付けることができるよう、学校において食育を推進することは喫緊の課題となっている。
栄養教諭は、児童生徒の「栄養の指導及び管理をつかさどる」教員(学校教育法第37条第13項等)として、その専門性を生かし、食に関する指導の全体計画の作成等で中心的な役割を果たすとともに、食に関する指導について、学校内における教職員間の連携・調整や、家庭や地域との連携・調整で要としての役割を果たすことが求められている。
(成果と課題)
栄養教諭が配置されている学校においては、食に関する指導は充実したものの、食育について学校の教育活動全体で組織的に取り組むという点では、改善の余地がある。また、栄養教諭の配置が進んでいない都道府県も見られるところである。
(改善方策)
生徒指導に関する課題の解決に当たっては、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの協力を得ることが重要である。そのためには、まず、教育委員会がスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの活動方針等を策定し、学校の教職員に対して周知することが重要である。
一方、生徒指導に当たっては、あくまでも校長や生徒指導担当教員のマネジメントの下、教員がスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーと連携・協働して取り組むことが重要である。教員がいじめや問題行動、また、家庭環境などの問題を生徒指導に関する専門能力スタッフに任せきりにするようでは、かえって問題をうまく解決できないことも考えられる。
教員を中心として、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーがそれぞれの専門性に基づき、組織的に問題の解決に取り組むため、学校においては、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの役割等を明確化し、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーを生徒指導や教育相談の組織に有機的に位置付け、教職員に周知徹底することが求められる。
また、特に、養護教諭は、児童生徒の変調のサインを把握しやすい立場にあることから、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーと養護教諭との連携・協働体制にも留意することが重要である。
(活用状況等)
スクールカウンセラーは、心理の専門家として児童生徒へのカウンセリング困難・ストレスへの対処方法に資する教育プログラムの実施を行うとともに、児童生徒への対応について教職員、保護者への専門的な助言や援助、教育のカウンセリング能力等の向上を図る研修を行っている専門職である。
活用状況としては、教育委員会に採用され、非常勤の職として各学校に週1回程度派遣されていることが多く、国の補助事業で配置・派遣されているスクールカウンセラー等は、平成26年度で7,344人となっている。
(資格)
スクールカウンセラーとして選考する者について、国の「スクールカウンセラー等活用事業実施要領」では、「1.財団法人日本臨床心理士資格認定協会の認定に係る臨床心理士、2.精神科医、3.児童生徒の臨床心理に関して高度に専門的な知識及び経験を有し、学校教育法第1条に規定する大学の学長、副学長、学部長、教授、准教授、講師(常時勤務をする者に限る)又は助教の職にある者又はあった者」のいずれかに該当する者としている。
実際の配置状況を見ると、平成26年度にスクールカウンセラーとして配置された者の約84%が臨床心理士、約16%が教育カウンセラー、学校心理士、認定心理士等となっている※3。
(成果と課題等)
文部科学省の調査によれば、スクールカウンセラーの配置の主な成果として、「学校の教育相談体制の強化」や「不登校の改善」、「問題行動の未然防止、早期発見・早期対応」などがあげられ、調査対象の96%の学校が、「必要性を感じている」としており、配置の拡充や資質の確保が望まれている。
一方、同調査では、配置に係る課題として、大多数の都道府県、市町村、学校が、「勤務日数が限られており、柔軟な対応がしにくい」、「財政事情により配置や派遣の拡充が難しい」ということをあげている。
また、スクールカウンセラーについて、学校に必要な職員として活用を進めていく上では、その職務内容等の明確化や教育委員会配置等による外部性の確保が重要であるなどの指摘がある。
さらに、スクールカウンセラーの活用については社会的な要請も高まっており、「子供の貧困対策に関する大綱」において、学校は貧困の連鎖を断ち切るためのプラットフォームとして位置付けられ、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーの配置を推進することとされている。
※3 平成27年9月16日、公認心理士法が公布され、保健医療、福祉、教育その他の分野において、心理学に関する専門的知識及び技術をもって、心理に関する支援を要する者の心理状態を観察し、その結果を分析すること等を行うことを業とする者が法律上位置付けられた。
(改善方策)
(活用状況等)
スクールソーシャルワーカーは、福祉の専門家として、問題を抱える児童生徒が置かれた環境への働きかけや関係機関等とのネットワークの構築、連携・調整、学校内におけるチーム体制の構築・支援などの役割を果たしている。活用状況としては、教育委員会に配置し、学校へ派遣を行う派遣型や学校等へ配置する配置型などがあり、国の補助事業で配置されているスクールソーシャルワーカーは、平成26年度で1,186人となっている。
(資格)
スクールソーシャルワーカーの選考は、国の「スクールソーシャルワーカー活用事業実施要領」において、「原則として、社会福祉士や精神保健福祉士等の福祉に関する専門的な資格を有する者のうちから行うこと」とされているが、地域や学校の実情に応じて、福祉や教育の分野において、専門的な知識・技術を有する者又は活動経験の実績等がある者であって、問題を抱える児童生徒が置かれた環境への働き掛け等の職務内容を適切に遂行できるもののうちから行うことも可としている。
実際の活用状況を見ると、平成25年度にスクールソーシャルワーカーとして配置された者の有する資格は、社会福祉士が47.0%、教員免許が36.1%、精神保健福祉士が25.1%となっている。
(成果と課題等)
文部科学省の調査によれば、スクールソーシャルワーカーの配置の主な成果として、「関係機関との連携の強化」や「ケース会議等により組織的な対応が可能となった」などがあげられ、調査対象の約75%の学校が、「必要性を感じている。」としており、量的拡充・資質の確保が望まれている。
一方、同調査においては、配置に係る課題として、大多数の都道府県、市町村、学校が、「勤務日数が限られており、柔軟な対応がしにくい」、「財政事情により配置等の拡充が難しい」、「人材の確保が難しい」としている。
上記資格の項目に記載のとおり、スクールソーシャルワーカーとして配置された者の有する資格としては、教員免許が2番目に多い。しかし、ケース会議における対応について、福祉の資格を有するスクールソーシャルワーカーと教員免許の資格を有するスクールソーシャルワーカーを比較すると、福祉の資格を有するスクールソーシャルワーカーの方が、有意に取組を行っていたという調査結果がある※4。
こうしたことから、原則として、社会福祉士や精神保健福祉士等の福祉に関する専門的な資格を有する者をスクールソーシャルワーカーとして選考すべきである。ただし、地域や学校の実情から、福祉に関する専門的な資格を保有しない者をスクールソーシャルワーカーとして選考する場合は、福祉の専門性を高めるような方策が必要である。
また、スクールソーシャルワーカーについて、学校に必要な職員として活用を進めていく上では、その職務内容等の明確化や教育委員会配置等による外部性の確保が重要であるなどの指摘がある。
スクールソーシャルワーカーの活用については、社会的な要請も高まっており、「子供の貧困対策に関する大綱」において、学校は貧困の連鎖を断ち切るためのプラットフォームとして位置付けられ、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーの配置を推進することとされている。
さらに、文部科学副大臣を主査とする「川崎市における中学1年生殺人事件に関するタスクフォース」が平成27年3月31日にとりまとめた「川崎市における事件の検証を踏まえた当面の対応方策」において、「不登校支援の中心となる教員・地域連携を担当する教員の明確化や、スクールソーシャルワーカーの配置等による、組織的な対応のための体制の整備」等が盛り込まれている。
(改善方策)
※4 「ケース会議において、把握されていない子どもの背景が伝わるように意識する」「ケース会議において、関係者と学校が協働して支援するプランニングを行う」などの項目において、教員免許を有している者と、社会福祉士及び精神保健福祉士の資格を有している者を比較すると、社会福祉士等の資格を有している者が有意に取組を行っていたという調査結果がある(「エビデンス・ベースト・スクールソーシャルワーク」研究代表者:山野則子)。
授業等における支援に関する専門能力スタッフの参画に当たっては、校内で、どのような活動のために、どのような専門能力スタッフの参画を得るのか、という方針を定める必要がある。
その上で、個別の授業や活動において、連携・協働する教職員は、専門能力スタッフに任せきりになったりすることがないよう、事前の打ち合わせや事後の振り返りをしっかりと行うことが重要である。
(活用状況等)
ICT支援員は、学校における教員のICT活用(例えば、授業、校務、教員研修等の場面)をサポートすることにより、ICTを活用した授業等を教員がスムーズに行えるように支援する役割を果たしており、地方公共団体で配置されているICT支援員の人数は、平成25年度末で2,000人となっている。
国は、ICT支援員の配置について、所要の地方財政措置を講じている。
(成果と課題等)
近年、情報セキュリティポリシーの運用に対する支援やネットワークセキュリティ対策に対する支援をはじめとした学校の情報管理面やICT環境の運用管理面からの支援等、ICT支援員に求められる役割や能力は多様化している。
さらに、ICTを活用した教育の普及により、教職員を教育活動面や情報セキュリティ等の面でサポートする一定の資質・能力を備えたICT支援員の必要性が高まっていることから(ICT支援員を確保している自治体数:平成20年度末200自治体、平成25年度末353自治体)、今後、人材が不足することが懸念されており、教育再生実行会議第七次提言(平成27年5月14日)においても、ICT支援員の養成、学校への配置の促進が求められている。
(改善方策)
(活用状況等)
学校図書館は、学校教育において欠くことのできない基礎的な設備であり、その運営は、司書教諭と学校司書が協働して行っている。
司書教諭は、学校図書館の専門的職務を掌(つかさ)どる者(学校図書館法第5条第1項)として、学校図書館を活用した教育活動の企画等を行っている。司書教諭は、学校図書館法上、12学級以上の学校において必置とされており、教諭等をもって充てることとされている※5。
一方、学校司書は、学校図書館の日常の運営・管理、教育活動の支援等を行っている職員(学校図書館法第6条第1項)であり、学校事務職員等をもって充てられている。学校司書の配置状況については、事務職員定数の活用や、各地方公共団体の努力等により拡大しており、平成26年5月時点で、小学校では54.3%、中学校では53.0%、高等学校では64.5%となっている。
さらに、学校図書館法の一部を改正する法律(平成26年法律第93号)により、学校には、学校司書を置くよう努めなければならないとされたところである。
※5 司書教諭に充てられる教諭等は、大学その他の教育機関が文部科学大臣の委嘱を受けて行う「司書教諭講習」を修了した者でなければならない(学校図書館法第5条第2項)。司書教諭講習では、「学校図書館メディアの構成」等の学校図書館の運営に当たって必要な内容を学修することになっている。
(成果と課題等)
学校図書館は、読書活動の推進のために利活用されることに加え、例えば、国語や社会、美術等様々な授業等における調べ学習や新聞を活用した学習活動等で活用されることにより、学校における言語活動や探究活動の場となり、「アクティブ・ラーニングの視点からの不断の授業改善」を支援していく役割が期待される。
そのため、学校図書館の運営の改善及び向上を図り、児童生徒及び教職員による学校図書館の利用の一層の促進に資するため、学校司書の配置の充実を進める必要がある。
さらに、学校司書については、学校図書館法の一部を改正する法律において、その専門性を確保するため、資格・養成の在り方等について検討を進めるとともに、研修の充実等必要な措置を講ずることとされた。
(改善方策)
(活用状況等)
小学校等における外国語指導助手や外国語が堪能な地域人材による指導は、教員とのティーム・ティーチングによるコミュニケーション活動や、教材作成支援など、授業等において、教員を支援する重要な役割を担っている。
公立学校の外国語指導助手の配置実績は、全体で15,475人となっており、そのうち、JETプログラム※6による外国語指導助手は4,093人となっており、所要の地方財政措置が講じられている(平成26年度「英語教育実施状況調査」文部科学省)。
※6 1987年に開始された、地方公共団体が総務省、外務省、文部科学省及び自治体国際化協会(CLAIR)の協力の下に、外国人青年を招致する事業。各地で、外国語指導助手(ALT)、国際交流員(CIR)、スポーツ国際交流員(SEA)として活躍し、外国語教育の充実、地域レベルの国際交流、地域の国際化等に貢献。
(成果と課題等)
ALTについては、教員が多忙のため授業準備のために必要なALTとの打ち合わせ時間が十分にとれないこと、活用の状況に地域差があるなどの課題も踏まえつつ、次期学習指導要領の改訂に向けて、ALTの質・量ともに確保することが急務である。
特に、小学校におけるALTについては、学級担任と外部人材の連携について、それぞれの役割を明確にしつつ、適切かつ適正なティーム・ティーチング等が行われるための体制整備の充実を図っていく必要がある。
また、小学校高学年における英語の教科化に当たっては、専門性を有する適切な人材に特別免許状を積極的に授与し活用することや、英語が堪能な地域人材による指導、英語担当教員の退職者等を非常勤講師として活用するなど、地域の実情に応じた指導体制を充実させることが重要である。
今後、外国語指導助手や英語指導の専門性を有する外部の専門人材の配置への支援を行うとともに、それらの質を確保するための研修等を含めた取組を充実していく必要がある。
(改善方策)
(活用状況等)
多様な子供の実態に応じて、効果的な指導を行うためには、多様な経験を持った地域人材等の教育活動への参画を得ることが重要である。
そのため、各地方公共団体では、地域や学校の実情に応じ、補充学習や発展的な学習の実施などのためのサポートスタッフ(退職教職員や学生等)を学校に配置している。
国においても、補習等のための指導員等派遣事業を実施し、児童生徒学習サポーターや教師業務アシスタント等に対する支援を行っており、平成27年度予算では対前年度2,000人増の10,000人の配置に係る経費を計上している。
また、学校における印刷業務等の事務作業を補佐する職員を配置することにより、教員の業務負担を軽減することも有効である。
(成果と課題等)
全国学力・学習状況調査の結果の分析等によれば、児童生徒の学力に家庭状況等の社会経済的背景が影響を与えているとの指摘もあり、格差の再生産・固定化を招かないようにするためには、学校も重要な役割を果たすべきである
このため、家庭環境等に左右されず、学校に通う子供の学力が保障されるよう、学習内容の定着や学習上のつまずきの解消等を図る観点から、学校において、きめ細かな指導や放課後補習などの取組が求められている。
一方で、TALISの結果において、我が国の教員は、課外活動の指導や事務業務に多くの時間を費やし、参加国中で勤務時間が最も長いという結果も出ており、教員や支援教員が不足していると回答した校長の割合も高くなっている。そのため、補習などの教育活動を充実させるため、学校や教職員をサポートするスタッフの充実を進めていく必要がある。
(改善方策)
部活動は、生徒の自主的、自発的な参加により行われるものであり、学校教育活動の一環として、大きな意義や役割を果たしている※7。また、部活動指導の充実については、生徒や保護者、地域の期待も高い。
その一方で、部活動指導の専門性について、平成26年7月に日本体育協会が公表した「学校運動部活動指導者の実態に関する調査」によると、運動部活動の指導者について、担当教科が保健体育以外であり、担当している部活動の競技経験もない教員が中学校で45.9%、高校で40.9%という結果が出ている。
さらに、TALISでは、中学校教員の課外活動指導時間は、週7.7時間であり、参加国平均の2.1時間と比較すると、大幅に長いという結果が出ている。
※7 中学校学習指導要領の総則では、次のように規定されている。
「(13)生徒の自主的、自発的な参加により行われる部活動については、スポーツや文化及び科学等に親しませ、学習意欲の向上や責任感、連帯感の涵養等に資するものであり、学校教育の一環として、教育課程との関連が図られるよう留意すること。その際、地域や学校の実態等に応じ、地域の人々の協力、社会教育施設や社会教育関係団体等の各種団体との連携などの運営上の工夫を行うようにすること。」
(現状と課題等)
部活動の指導を充実していくためには、地域のスポーツ指導者等の参画を得ていくことが重要であるが、部活動の指導者や顧問に関するルール等については、全国的な基準があるわけではなく、都道府県や競技種目によって異なっている※8。
今後、部活動をさらに充実していくという観点から、教員に加え、部活動の指導、顧問、単独での引率等を行うことができる新たな職(部活動指導員(仮称))の在り方について検討する必要がある。
ただし、部活動の顧問の業務には、生徒に対する技術的な指導だけでなく、部活動に関する年間・月間活動計画の作成や部活動予算の調整、学校内外の顧問会議への出席等もあることから、部活動指導員(仮称)は、教員との連携・協力が不可欠である。
部活動指導員(仮称)をはじめとする専門能力スタッフの参画に当たっては、特に、具体的な指導の内容や方法、生徒の状況、事故が発生した場合の対応や責任体制などについて、十分な調整を行い、共通理解を得ながら進めることが重要である。
また、部活動については、児童生徒や保護者、地域の期待も高いことから、専門能力スタッフの参画に当たっては、事前に情報提供するなど、理解を得る努力を行っておくことが重要である。
さらに、勝利至上主義的な指導とならないよう、また、学校教育の一貫として行われるよう、専門能力スタッフに対する研修を行うことが大切である。
※8 部活動の指導者等について文部科学省の調査では、以下のような結果であった。
〔部活動における顧問と外部指導者の役割 作業部会事務局作成〕
(改善方策)
特別支援教育に関する専門能力スタッフの参画に当たっては、校長がリーダーシップを発揮して、次のような校内の連携体制を構築する必要がある。
(活用状況等)
医療的ケア※11を行う看護師、准看護師、保健師、助産師は、対象となる児童生徒に対して、医師の指示の下、学校生活における日常的な医療的ケアを実施するほか、当該児童生徒に関わる教職員への指導・助言、保護者からの相談への対応、主治医や放課後デイサービス等との連絡を担い、医療的ケアに関する校内体制の中心的役割を果たしている。
学校における看護師等の配置や職務内容について、法令上の位置付けはなく、教育委員会が、医療的ケアを必要とする児童生徒等の状態等に応じ、雇用・配置している。
※9 障害のある幼児児童生徒一人一人のニーズを正確に把握し、教育の観点から適切に対応していくという考えの下に、医療、保健、福祉、労働等の関係機関との連携を図りつつ、乳幼児期からの学校卒業後までの長期的視点に立って、一貫して的確な教育的支援を行うために、障害のある幼児児童生徒一人一人について作成した支援計画。専門能力スタッフのうち、特に、看護師等や就職支援コーディネーターは、学校外の機関との連携する上で、個別の教育支援計画を参照することが重要である。
※10 障害のある幼児児童生徒一人一人の障害の状況等に応じたきめの細かい指導が行えるよう、学校における教育課程や指導計画、当該幼児児童生徒の個別の教育支援計画等を踏まえ、より具体的に幼児児童生徒一人一人の教育的ニーズに対応して、指導目標や指導内容・方法等を盛り込んだ指導計画。専門能力スタッフのうち、特に、特別支援教育支援員や言語聴覚士等は、児童生徒等の指導目標等に応じた支援を行う上で、個別の指導計画を参照することが重要である。
※11 いわゆる「医療的ケア」とは、法律上に定義されている概念ではないが、一般的に学校や在宅等で日常的に行われている、たんの吸引・経管栄養・気管切開部の衛生管理等の医行為を指す。医師免許や看護師等の免許を持たない者は、医行為を反復継続する意思をもって行うことはできないが、平成24年度の制度改正により、看護師等の免許を有しない者も、医行為のうち、たんの吸引等の5つの特定行為に限り、研修を修了し、都道府県知事に認定された場合には、「認定特定行為業務従事者」として、一定の条件の下で制度上実施できることとなった。
平成26年度の活用状況等としては、公立特別支援学校において、医療的ケアが必要な幼児児童生徒数は7,774人、医療的ケアに携わる看護師等の数は1,450人であり、ともに増加傾向にある。また、医療的ケアのうち、たんの吸引等の特定行為を行っている教員数は3,348人である。また、公立小・中学校の医療的ケアが必要な児童生徒数は976人、医療的ケアに携わる看護師等の数は379人となっている。
国は、特別支援学校における看護師等と教職員の役割分担や連携等に関する調査研究及びモデル事業を踏まえ、平成25年度から特別支援学校への看護師等配置の補助事業を実施し、毎年約330人分を補助している。
(成果と課題等)
医療技術の進歩等を背景に、特別支援学校、小・中学校ともに医療的ケアを必要とする児童生徒数は増加傾向にあり、医療的ケアを必要とする児童生徒が安心して学校で学ぶことができるよう看護師等の配置を進めていく必要があるが、国が補助している看護師等の人数は、医療的ケアを必要とする幼児児童生徒の人数に比べて不十分である。
また、小・中学校に配置されている看護師等に係る支援は行われていない。
なお、看護師等の免許を持たない教職員も、一定の研修を受ければ、一定の条件のもとに「認定特定行為業務従事者」として医療的ケアのうち5つの特定行為を実施することが可能となっている。
しかしながら、認定特定行為業務従事者は、特定行為以外の医療的ケアを行えず限界があること、さらに、医療技術の進歩に伴い、人工呼吸器を付けた高度な医療的ケアを必要とする児童生徒や、複数の医療的ケアが必要となる児童生徒など、医療的ケアの内容は高度化・複雑化していることから、このような児童生徒が在籍する学校への看護師等の配置は不可欠である。
このため、学校における医療的ケアは、「特別支援学校等における医療的ケアの今後の対応について」(平成23年12月20日付け初等中等教育局長通知)のとおり、特別支援学校においては、看護師等を中心に教員等が連携協力して特定行為に当たり、特別支援学校以外の学校においては、原則として看護師等を配置又は活用しながら、主として看護師等が医療的ケアに当たり、教員等がバックアップする体制が望ましい。
さらに、校内の体制整備を図る際には、医療的ケアを必要とする児童生徒の安全を最優先に考え、また教職員の負担軽減にも十分配慮しながら、教育委員会の総括的な管理体制の下に、校長を中心として組織的に行うことが必要である。
また、小・中学校における医療的ケアの体制整備においては、特別支援学校のセンター的機能の活用など、広域的な取組も引き続き有効である。このため、都道府県教育委員会においては、市町村教育委員会と連携・協力し、域内の小・中学校における体制整備に努めることが必要である。
(改善方策)
(活用状況等)
特別支援教育支援員は、障害のある児童生徒等の日常生活上の介助、発達障害の児童生徒等に対する学習支援など、日常の授業等において、教員を支援する役割を担っている。
特別支援教育支援員が共通して有すべき資格はなく、対象となる児童生徒等の支援に必要な技能等を有する人材が採用されている。
また、学校における特別支援教育支援員の配置や職務内容について、法令上の位置付けはなく、教育委員会が、支援を必要する児童生徒等の状態に応じ、雇用・配置しており、公立学校における配置実績は、平成26年度においては、幼稚園で5,638人、小・中学校で43,586人、高等学校で482人となっている。
国は、特別支援教育支援員について、所要の地方財政措置を講じている。
(成果と課題等)
特別支援学級の在籍者や通級による指導の対象者は増加し続けており※12、また、通常学級においても発達障害の可能性のある児童生徒への教育的な対応が求められている。
多様な子供のニーズに的確に応えていくためには、教員だけでの対応には限界があり、特別支援教育支援員の配置を充実し、担任の指揮監督の下、学級全体の指導体制を強化していく必要がある。
また、特別支援教育支援員を配置するに当たっては、教員と特別支援教育支援員との役割分担と協働の在り方等について、教員と特別支援教育支援員の双方で具体的に理解していく必要がある。
※12 平成25年には、学校教育法施行規則が一部改正され、障害のある児童生徒の就学について、個々の障害の状態等を踏まえ、総合的な観点から就学先を決定する仕組みとされた。
(改善方策)
(活用状況等)
言語聴覚士等※13は、障害のある児童生徒に対し、医学・心理学等の視点による専門的な知識・技術を生かし、教員と協力して指導の改善を行うとともに、校内研修における専門的な指導者としての役割を担っている。
国は、平成25年度から、特別支援学校に言語聴覚士等を配置し、特別支援学校の専門性の向上を図るとともに、地域内の小・中学校等に専門家を派遣するなど、地域のセンター的機能を充実させるためのモデル事業を実施している(平成26年度は、1,380人の専門家を配置)。
※13 言語聴覚士(Speech-Language-Hearing Therapist:ST)は、言葉の発声・発音の評価、摂食機能の評価・改善、人工内耳を装着した児童生徒の聞こえの評価・改善等を行っている。作業療法士(Occupational Therapist:OT)は、着替え、排泄、食事、道具の操作等の日常生活動作の評価及びこれらの日常生活動作を獲得するための補助具等の制作・必要性の評価、日常生活、作業活動の改善に役立つ教材の製作等を行っている。理学療法士(Physical Therapist:PT)は、呼吸状態や姿勢等に関する身体機能面からの評価、学校生活で可能な運動機能の改善・向上についての指導、障害の状態に応じた椅子や机など備品の評価・改善等を行っている。その他、専門性を活かして指導内容の改善等を図るため、心理学の専門家や視能訓練士等とも適切な連携を行っている。
(成果と課題等)
特別支援学校が地域におけるセンター的機能を発揮するため、配置校のみではなく、地域内の小・中学校の教職員とも連携できるよう、国のモデル事業の成果を踏まえた適切な配置や連携の仕組みを普及させることが必要である。
(改善方策)
(活用状況)
障害のある生徒が自立した社会参加を図るためには、学校においてキャリア教育・職業教育を推進し、福祉や労働等の関係機関と連携しながら就労支援を一層充実させる必要がある。就職支援コーディネーターは、特別支援学校高等部及び高等学校において、ハローワーク等と連携して、障害のある生徒の就労先・就業体験先の開拓、就業体験時の巡回指導、卒業後のアフターフォロー等を行っており、一人一人の障害に応じた就労支援を充実する役割を担っている。
国は、平成26年から就職支援コーディネーターの配置等を推進する委託事業を実施しており、全国40地域が指定され、配置が促進されている。
(成果と課題)
就職支援コーディネーターが配置された学校においては、生徒一人一人の適正に応じた現場実習先や就職先が開拓され、一般就労につながった等の成果が見られるところである。
一人一人の障害の特性等に応じた就労を促進するためには、教員だけでなく障害者の就労を支援する専門的な人材が必要であり、今後とも長期的な配置が必要である。
(改善方策)
(活用状況等)
子供たちや学校が抱える課題を解決し、学校が「社会に開かれた教育課程」を編成し、実施することにより、子供たちの豊かな学びを実現していくためには、コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)や地域学校協働本部(仮称)(これまでの学校支援地域本部等の体制をさらに発展させた体制)等の仕組みによって、社会総掛かりでの教育を進めていくことが重要である。
学校が地域と連携するに当たっては、地域や教育委員会との連絡・調整、校内の教職員の支援ニーズの把握・調整、学校支援活動の運営・企画・総括などの役割を担う者を置くことが効果的である。
文部科学省の調査によれば、学校と地域との連携を担う教職員について、教育委員会規則等に基づき、校務分掌上に位置づけている学校は約3割であり、教育委員会規則等に位置付けがなくとも、学校の方針として、校務分掌上に位置付けている学校も含めると約7割となる。
(成果と課題等)
学校と地域との連携を担う教職員を位置付けることにより、学校と地域の信頼関係の構築や組織的な地域連携活動の展開等の成果が見られるところであり、その役割の必要性や重要性に関する認識を高めていくことが重要である。
そのため、地域連携担当の教職員の職務内容や位置付けを明確化するとともに、そのような教職員に社会教育主事の有資格者を活用することについても検討する必要がある。
また、地域連携を担当する教職員と、地域に配置され、学校との連携窓口を担う地域コーディネーター(学校側の教育活動支援等のニーズに応え、取組を進めていくための地域側の連絡調整役)等との連携を図っていくことが重要である。
(改善方策)
学校が地域とも連携しながら、一つのチームとして機能するように、学校のリーダーシップ機能や学校の企画・調整機能、事務体制を強化するとともに、学校に関わる全ての職員がチームの一員であるという意識を共有する。
(校長のリーダーシップ発揮の在り方等)
校長は、学校の長として、リーダーシップを発揮するために、まず、子供や地域の実態を踏まえ、学校の教育ビジョンを示し、教職員と意識や取組の方向性の共有を図ることが重要である。
それに当たって、「チームとしての学校」における校長には、多様な専門性を持った職員を有機的に結びつけ、共通の目標に向かって動かす能力や、学校内に協働の文化を作り出すことができる能力などの資質が求められる。
また、学校の教育活動の質を高めるためには、校長の教育的リーダーシップが重要であり、教育指導等の点で教職員の力を伸ばしていくことができるような資質も求められている。
校長は、学校という組織で求められるマネジメントの能力と、組織一般で有効なマネジメントの能力をバランス良く身に付ける必要がある。
あわせて、校長がリーダーシップを発揮し、複雑化・多様化した課題を抱える学校を変え、学校の教育力を向上させていくためには、校長の補佐体制を強化することが必要である。例えば、副校長の配置や、教頭の複数配置、事務長の配置など、校長の権限を適切に分担する体制や校長の判断を補佐する体制の整備によって、管理職もチームとして取り組むことが学校の改革のためには有効である。
さらに、校長が、自らの示す学校の教育ビジョンの下で、リーダーシップを発揮した学校運営を実現できるよう、校長裁量経費の拡大等の学校の裁量拡大を一層進めるとともに※14、保護者や地域住民等が学校運営に参画するコミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)等の仕組みを活用しつつ、「チームとしての学校」の力を一層高めていくことも重要である。
さらに、校長が自らの教育理念に基づき、特色ある教育活動を推進することができるようにするためには、校長の同一校における在職期間の長期化を図るなど、人事異動の在り方を見直すことも必要である。
※14 なお、学校裁量予算を導入している教育委員会は、都道府県で約4割、市区町村で約1割(教育委員会の現状に関する調査(平成25年度間))であり、その取組の一層の促進が期待される。
(副校長、教頭のリーダーシップ発揮の在り方等)
教頭は、「校長(副校長を置く学校にあつては校長及び副校長)を助け、校務を整理し、及び必要に応じ児童(生徒)の教育をつかさどる」職(学校教育法第37条第7項等)として設けられており、原則として、全ての学校に置くこととされている。
副校長は、「校長を助け、命を受けて校務をつかさどる」職(学校教育法第37条第6項等)として、平成19年に制度化され、平成26年4月現在、67都道府県・指定都市教育委員会のうち、44の教育委員会において、3,646人が配置されている。副校長は、教頭と同様、校長を補佐する職であるが、校務の一部を自らの責任で処理することが想定されている職であることが、教頭とは異なっている。
副校長の配置状況を学校種別に見ると、公立の小学校(20,558校)に1,750人、中学校(9,707校)に900人、高等学校・中等教育学校(3,658校)に758人、特別支援学校(1,037校)に238人となっている。
副校長及び教頭は、「チームとしての学校」において、教職員と専門能力スタッフ等の調整や人材育成等の業務に当たることが期待されており、事務職員との連携や業務の見直し等により、副校長及び教頭が力を発揮できる体制を整えることが重要である。
さらに、規模が大きい学校や課題を抱えた学校については、副校長又は教頭を複数配置することも効果的である。
(改善方策)
(管理職候補者の現状等)
管理職に適材を確保できなければ、学校の組織力・教育力も低下することは確実であり、優秀な人材が管理職を目指すような取組が求められている。
しかし、近年、管理職選考の倍率の低下や、希望降任の増加など、管理職の魅力が低下しているのではないかという指摘がある。また、都道府県によって違いはあるものの、30代半ばから50歳までの教員数は、近年、減少しており、今後、管理職候補となる教員の数が少なくなることが予想される。
このような状況の中、優れた管理職を養成していくためには、管理職として優れた仕事をすることで自分の担任している子供たちだけでなく、学校全体の子供たちの教育を改善できること、担任では改善できないことを改善できること等、学校の管理職として仕事をすることの意義を教員に理解してもらうことが、まず重要である。
(管理職養成の課題等)
教育委員会は、校長に求められる資質・能力に基づき、将来、管理職として活躍することが期待される教員に、若いうちからマネジメント能力をつけさせるよう、計画的に教職大学院や民間企業への派遣、教育委員会事務局での勤務、学校現場でのOJT等の経験を積ませる必要がある。
その中で、学校現場におけるOJTは重要な役割を果たしているが、例えば、年齢等にとらわれず、適材適所で主任に充てるなど、教員の持っている良さや持ち味をより発揮できるような経験を積ませることにより、当該教員に、主任、主幹教諭、教頭という新たなステージに上がる資質・能力を育むことができる。その際、校長は、教員を育てるという意図を持ち、必要に応じて、教員を支援することが重要である。
また、主幹教諭として業務を担うことは、分掌を超えて、学校全体を見渡す経験を積む良い機会となる。
さらに、各自治体で教育センター等を活用して行われている管理職養成の取組に関する情報共有も有効である。
(改善方策)
(管理職選考の現状等)
管理職の選考試験においては、67都道府県・指定都市教育委員会のうち41教育委員会が短答形式による筆記試験を導入し、63教育委員会が小論文や作文による筆記試験を行っているが、試験の問題作成に教育委員会が多くの時間を費やしているという現状がある。
また、女性管理職の割合が、全職員に占める女性教員の割合に比べて低いことから※15、女性管理職の登用が進むような方策を検討する必要がある。
※15 小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校の教員のうち女性の教員の割合(数)は、49.6%(489,716人)となっている(平成26年度学校基本統計)。
一方、公立の小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校の管理職に占める女性職員の割合(数)は、校長14.1%(4,771人)、副校長19.4%(707人)、教頭15.9%(5,385人)となっている(平成25年度公立学校教職員の人事行政状況調査)。
(改善方策)
(管理職研修の課題等)
教育委員会が実施している管理職研修の内容についても、校長に求められる資質・能力に基づき見直しを進める必要がある。特に、「チームとしての学校」を実効的なものにしていくために、教員や事務職員に加えて、専門能力スタッフで組織される学校を効果的に運営できるようなマネジメントを身に付けさせるための研修を取り入れていくことが重要である。
また、管理職研修の見直しを行うに当たっては、教職大学院をはじめとした大学と連携することが考えられるが、研修の実施方法について、管理職が受講しやすいように工夫することが必要である。
(改善方策)
(活用状況等)
主幹教諭は、「校長を及び教頭を助け、命を受けて校務の一部を整理し、並びに児童の教育をつかさどる」職として、平成19年に制度化され、平成26年4月現在、67都道府県・指定都市教育委員会のうち、55の教育委員会において、19,742人が配置されている。
学校種別に見ると、公立の小学校(20,558校)に9,009人、中学校(9,707校)に6,224人、高等学校・中等教育学校(3,658校)に3,432人、特別支援学校(1,037校)に1,077人となっている。
(職務内容等)
主幹教諭には、学校を一つのチームとして機能させるため、全体をマネジメントする管理職と教職員、専門能力スタッフとの間に立って、「チームとしての学校」のビジョンを始めとした意識の共有を図る、いわばミドルリーダーとしての役割が期待されている。
主幹教諭が実際に担当している業務としては、文部科学省の調査によると、・ 学校運営の企画及び調整に関する校務
の割合が高い。
特に、小・中学校では、「教務に関する校務の整理、調整」を担当している割合が高く、教務主任が担っている校務を担当していることが伺える。
また、「校長、副校長、教頭等の管理職の補佐」としての業務の中で、主幹教諭が担当している割合の高い業務は、
となっている。
この結果から見えてくるのは、主幹教諭は、主任業務を担っている者が多いこと、また、管理職の補佐として担っているのは、渉外や庶務業務の一部であり、人材育成機能について成果があがっているという割合は必ずしも高くないこと、である。
(成果と課題等)
文部科学省の調査によれば、主幹教諭の配置の主な成果について、配置された学校において、分掌間・学年間の調整など学校の総合的な調整が図られ、「学校の組織としての力が向上」、「管理職と教職員のパイプ役になり、校内のコミュニケーションが改善」、「教職員間の業務調整の円滑化による、業務の質の改善や効率化」とするものが多くあった。
また、
といった効果も指摘されている。
一方で、配置の課題については、同調査において、「主幹教諭の役割等について校内の理解が進んでいない」、「主幹教諭となる者の人材育成」、「主幹教諭の授業時数が多く、期待される校務を処理できない」とする指摘が多い。
また、関係団体ヒアリングでは、主幹教諭が期待される役割を果たしていくために、管理職としての位置付けを明確にするべき、という意見もあった。
地域や学校の実態も踏まえ、主幹教諭の配置を進めていくための方策について、引き続き検討する必要がある。
(改善方策)
(職務内容の現状)
事務職員の職務について、学校教育法は「事務に従事する」と規定しているのみであるが、概ね、事務職員が従事している職務は、
など、総務・財務等に関する事務全般である。
(職務内容に関する課題等)
事務職員は、学校運営事務に関する専門性を有している、ほぼ唯一の職員である。教育委員会によっては、学校組織マネジメントを効率的・効果的に行うための学校経営職員として位置づけ、総務・財務等に関する事務以外の職務(地域連携や学校評価、危機管理等)にも事務職員が積極的に携わっている例も見られる。今後、事務職員には、その専門性等も生かしつつ、より広い視点に立って、副校長・教頭とともに校長を学校経営面から補佐する学校運営チームの一員として役割を果たすことが期待される。
文部科学省の調査においても、これからの事務職員に求められる資質・能力として、都道府県の約8割、市区町村と学校の約7割が、「学校運営等の充実・改善に貢献しようとする意欲や能力」をあげている。
一方、教員の勤務実態に関する各種調査の結果によると、教員が様々な事務業務を行っており、それが教員の負担になっているという実態も見られる。
特に、教頭は、事務業務の負担が非常に大きく、校長の補佐や人材育成等の業務を十分に果たしていくためには、教頭の業務の改善を図っていくことは不可欠であり、教頭と事務職員との間での業務の連携や分担を進める必要がある。
教員が、より子供と向き合う仕事に取り組み、副校長・教頭が教員への指導等に取り組むことができるように、副校長・教頭や教員が行っている管理的業務や事務的業務に関して事務職員が更に役割を担うことも効果的と考えられることから、学校事務体制の充実を図ることが必要である。
さらに、学習指導要領の次期改訂では、学校におけるカリキュラム・マネジメントが重要となってくるが、教育内容と、教育活動に必要な人的・物的資源等を効果的に組み合わせていくために、学校の予算や施設管理等に精通した事務職員が大きな力を発揮することが期待されている。
(事務職員の採用等の改善)
事務職員の採用方法や人事異動の在り方については、任命権者によって様々に異なっているが、教育委員会は、事務職員が学校運営等に関わって、その専門性を発揮することができるよう、採用段階からの意識付けを行うとともに、教育行政や学校事務に携わってこなかった職員を学校に配置する場合には、必要な研修を実施するなどの配慮が求められる。
(改善方策)
(事務職員の学校運営への参画の現状と課題等)
現在、学校の管理職の多くは、教員出身者であり、行政事務に十分に練達しているとはいえない。今後、学校の業務が一層、複雑化・多様化することが考えられることから、学校の自律的な運営を可能とするためには、教育行政事務の専門性を有する者が学校運営に参画することが望ましい。
小・中学校においても、例えば、一定規模以上の学校については、事務長等の学校運営事務の統括者を置くことができることを法令上、明確化することが考えられる。
(改善方策)
(事務職員の研修に係る現状と課題等)
小・中学校の場合、事務職員が一人配置であることを考えると、事務職員の資質・能力の向上は大きな課題であるが、事務職員向けの研修を企画できる指導主事が少ないことや事務職員向けの研修プログラムが少ないことなどの課題がある。
(改善方策)
(地域全体での教育活動の充実)
学校の事務・業務を効率化し、あわせて質を充実していくためには、教育委員会と学校の役割分担についても見直すことが求められる。
教育委員会は、各学校ごとの対応では限界があり、域内で共通に取り組むべき課題に対応した施策の推進や、先導的な研究や実践事例の提供、学校の教育課題に沿った指導・助言等に重点的に取り組むべきである。
また、地域全体の教育力の向上を図り、多様な教育活動を推進するという観点からも、教育委員会、学校は、子供に必要な教育活動を行うため、学校内の教育資源だけでなく、他の学校、地域の関係機関、関係団体等と連携して、地域全体で教育活動を活性化していくことが必要になってきている。
その中で、事務体制の見直しについては、多くの小・中学校においては、事務職員が一人配置であるため、学校事務を効率的に執行する観点から、事務の共同実施の活用は有効な方策として進められてきた。
(事務の共同実施の現状と課題等)
市町村における事務の共同実施の実施率は、域内の一部の地域で実施しているものも含めると、約5割の実施率となっている(平成24年度文部科学省委託事業「学校運営の改善の在り方に関する取組(報告書)」(全国公立小中学校事務職員研究会))。
共同実施については、事務処理における質の向上やミス・不正の防止、学校間の標準化による事務処理の効率化等において大きな成果が見られるところであるが、この他にも、教員の事務負担の軽減や事務職員の学校運営への支援・参画の拡大等においても成果が見られるところであり、今後の取組の一層の充実が期待される。
特に、事務長が置かれている場合には、事務の共同実施は、事務機能の一層の強化に効果的であると考えられるため、事務長等の位置づけの明確化の検討と併せて、事務の共同実施との一体的推進の検討をする必要がある。
(改善方策)
「チームとしての学校」において、教職員一人一人が力を発揮できるよう、人材育成や業務環境の改善等の取組を進める。
(教職員に係る人事評価制度の取組状況)
教職員が意欲を持って、それぞれの専門性を生かし、自らの職責を果たすことができるようにするためには、一人一人の教職員の能力や業績を適正に評価し、適切に人事や処遇等に反映することが極めて重要である。そのために、職員の評価に係る制度として、地方公務員法は勤務評定制度を設けている。
しかし、勤務評定制度については、「評価項目が明示されない」「上司からの一方的な評価で結果を知らされない」「人事管理に十分活用されない」等の問題点も指摘されており、文部科学省は、公務員制度改革の状況も踏まえつつ、平成15年度から平成17年度までの間、都道府県・指定都市教育委員会に対して、教員の評価システムの改善に関する調査研究を委嘱し、教員に係る人事評価の改善を進めてきた。
調査研究における評価のイメージは、概ね、以下のとおりである。
〔年度当初〕
〔年度半ば〕
〔年度末〕
※ 教員は、評価結果を次年度の目標設定等に反映。
このような目標管理型の人事評価制度は、平成26年4月1日現在、全ての都道府県・指定都市教育委員会において導入されており、人事評価制度を活用した人事管理も浸透してきているが(「平成25年度公立学校教職員の人事行政状況調査」文部科学省)、評価の対象となる職員が一部であったり、評価結果の活用方策が異なっていたりするなど、教育委員会によって実情は異なっている。
(地方公務員法の改正による人事評価制度の導入への対応)
平成26年6月に地方公務員法が改正され、勤務評定制度に代えて人事評価制度が導入される予定である(平成28年4月施行予定)。地方公務員法で導入される人事評価制度は、能力・業績の両面から評価するものであり、評価基準の明示や自己申告、面談、評価結果の開示等の仕組みにより客観性等を確保し、人材育成にも活用するものとされている。
地方公務員法の改正内容や留意事項等については、総務省の通知により既に示されており、それらに基づき、教育委員会は、公立学校の教職員に係る人事評価について、必要な見直しをそれぞれ行うことが求められている。
(人事評価の改善・充実)
人事評価制度を今後、更に改善・充実していくためには、人材育成と業務改善の向上の2つの視点を重視することが大切である。
改正後の地方公務員法では、人事評価制度を任用、給与、分限その他の人事管理の基礎とすると規定している。校長等の評価者は、教職員一人一人をしっかりと評価することが求められており、評価者に対する研修を充実することが重要である。
その上で、学校において、教職員同士や専門能力スタッフ等との協働を進めていくために、チームとしての活動を適切に評価できるような工夫を講じることが重要である。
また、人事評価を行うに当たっては、校長が、教員の授業を見たり、校務の取組状況等を把握したりすることが重要であり、その際、校長は、適時、適切なフィードバックを行うことが人材育成の観点から重要である。
なお、学校評価と教職員の人事評価は、密接に関連するものであり、両者を連動させた取組の工夫についても検討していく必要がある。
(改善方策)
・ 教育委員会は、評価者研修を実施するとともに、地方公務員法の趣旨を踏まえ、人事評価の結果を任用・給与などの処遇や研修に適切に反映させることによって、教職員一人一人の成長を促していく取組を進める。
(教職員表彰制度の取組状況)
優れた教育実践等で成果を上げた教職員に対する表彰制度の取組は、多くの教育委員会においても実施されているが、国においても、学校教育における教育実践等に顕著な成果を上げた教職員を文部科学大臣が表彰し、その功績を広く周知することにより、教職員の意欲及び資質能力の向上に資することを目的として、平成18年度から文部科学大臣優秀教職員表彰を実施している。平成26年度は、国・公・私立の830人の教職員を表彰した。
(教職員表彰制度の改善・充実)
優れた教育実践等で成果を上げた教職員や高い指導力のある教職員を顕彰する仕組みについては、国、教育委員会ともに、更なる推進を図っていく必要がある。
その上で、学校において、教職員同士や専門能力スタッフ等との協働を進めていくために、チームとしての取組を教職員表彰の対象として加えることも考えられる。
また、表彰する際には、どのような点が優れているのかを明らかにすることによって、チームとしての優れた取組を幅広く共有し、より汎用性のある形で全国に展開していくことが重要である。
なお、表彰に伴う措置として、特別な研修機会を付与するなどの取組を進めていくことも大切である。
(改善方策)
(業務改善の必要性)
教員勤務実態調査やTALIS等において、教員の多忙化が指摘されているように、社会や保護者等からの学校の要請の多様化や、学校現場を取り巻く環境の複雑化・困難化、様々な教育課題への対応等を背景とした教員の負担の増加は大きな課題となっている。
また、全国公立学校教頭会の調査においても、教頭が費やしたい職務内容としては、職場の人間関係づくり、教職員の評価・育成や校内研修などがあげられているが、実際には、各種調査依頼への対応や外部対応に時間を費やしており、取り組みたい業務に十分に取り組むことができていない実態が明らかになっている。
(業務改善の推進)
これからの学校が、複雑化・多様化した課題を解決し、子供たちに力を身に付けさせていくためには、学校や教員一人一人の業務を見直し、改善していくことが求められる。
まず、業務の範囲については、現行の学校制度が整備された当時は想定されていなかった業務や役割が増大してきたことを踏まえ、全ての業務や役割を学校で担うという発想に立つのではなく、学校として、必ずしも行う必要がない業務、他の機関と連携した方が効果的な業務など、教員の業務と同様、地域や学校の実態も踏まえ、整理することが必要である。
次に、業務の進め方についても、学校だけ、教員だけで抱え込むのではなく、必要に応じて、専門能力スタッフや関係機関、地域と協働することが重要である。その際、教職員の業務の軽減と効率化を図るとともに、教育活動に関する情報を教職員間で共有することなどにより、教育活動の質の向上を図るためにも、ICTを活用し、校務の情報化を推進することが必要である。
また、学校や教員自らが業務の範囲や進め方について、問題意識を持ち、見直す意識を持つことが重要であることから、学校評価に取り組む中で、業務改善に係る目標設定等を行うなど、教職員や専門能力スタッフ等の間での課題意識等の共有を進め、学校におけるチームとしての取組を推進していくことが求められる。
文部科学省は、平成19年に学校現場の負担軽減プロジェクトチームを設け、当面取り組むべき事項として、平成20年度以降、文部科学省が学校を対象として行う定期的な調査の見直しを行っている。具体的には、調査の廃止・統合、調査項目の削減等を図るとともに、学校が見通しを持って対応できるよう、年間調査計画の作成、周知を行ってきており※16、引き続き、調査の見直しに係る取組を進めていく必要がある。
また、教育委員会においても、学校現場を対象とした調査等を実施する場合には、その必要性、実施方法について絶えず検討・改善を図ることが求められる。
※16 学校現場の負担軽減プロジェクトチームのとりまとめ(平成20年3月)では、調査文書等に関する事務負担の軽減のため、調査文書等の見直しの観点として、1.調査事項の精選、2.調査方法の改善、3.調査体制の改善、4.調査計画の策定、5.文書処理の方針、6.事務処理の体制、という6つの観点があげらている。
(学校現場における業務改善のためのガイドライン等を活用した取組の推進)
文部科学省は、平成27年7月、各教育委員会における学校現場の業務改善に向けた支援に資するよう、「学校現場における業務改善のためのガイドライン」を作成した。
このガイドラインは、主として、学校の設置者である教育委員会が主体的に学校現場の業務改善に取り組み、支援するという観点から策定されたものであり、併せて、教育委員会が業務改善に取り組む際の参考となる実践事例を取り上げるとともに、学校における日々の業務改善に資するようなポイントを示している。
国や教育委員会は、このガイドラインも活用し、教職員が業務を効率的・効果的に進めることができるような支援を行うとともに、関係団体等と連携して、学校や教職員の意識や働き方を改革するための取組を進めるべきである。
(改善方策)
(メンタルヘルス対策の取組状況)
学校における教育活動は、教職員と児童生徒の人格的な触れ合いを通じて行われるものであることから、教職員が心身ともに健康を維持して教育に携わることができるようにすることが重要である。また、児童生徒に対する影響だけではなく、教職員にとっても、意欲的に職務に取り組み、やりがいを持って教育活動を行うことが重要である。
しかし、精神疾患により病気休職している公立学校の教職員数は、平成4年度から平成21年度にかけて17年連続して増加し、平成25年度においても、5,078人と、依然として高水準で推移しており、教職員のメンタルヘルス対策の改善・充実は喫緊の課題である。
精神疾患による病気休職者数が高水準で推移している背景について、単純に一般化することは難しいが、平成25年3月に取りまとめられた「教職員のメンタルヘルス対策について(最終まとめ)」は、教職員のメンタルヘルス不調の背景等として、業務量の増加及び業務の質の困難化や教職員の業務の特徴等をあげている。
具体的には、学校は、管理職等以外の教職員は、職位に差がない一般の教職員が大多数を占めており、企業に比べ管理職が少ない、いわゆる鍋蓋型組織であり、管理職が所属教職員の全てについて日常的に健康状態を見て支援や相談対応等を行うことが難しいこと、また、教職員の職務は、属人的対応が多く、個人で抱え込みやすい性質があるとともに、学級担任や事務職員など、教職員が一人で対応するケースが多くなる傾向にあり、一部の教職員に業務の負担が偏るケースがあること等を指摘している。
(メンタルヘルス対策の改善・充実)
メンタルヘルス対策としては、予防的な取組が重要であり、教職員本人の「セルフケア」の促進とともに、校長、副校長・教頭、主幹教諭等の「ラインによるケア」の充実が必要である。
そのため、メンタルヘルスに関する研修を充実するとともに、校長等は、「ラインによるケア」に取り組むことができるよう、日常的に教職員の状況を把握し、校務分掌を適切に整えておくことが大切である。
平成26年には、労働安全衛生法が改正され、平成27年12月からストレスチェック制度が導入されることとなった。
この改正は、労働者の心理的な負担の程度を把握するための、医師、保健師等による検査(ストレスチェック)の実施を事業者に義務づけるものであり※17、ストレスチェックを実施した場合には、事業者は、検査結果を通知された労働者の希望に応じて、医師による面接指導を実施し、その結果、医師の意見を聴いた上で、必要な場合には、作業の転換、労働時間の短縮その他の適切な就業上の措置を講じなければならないとされている。
国、教育委員会は、学校においてストレスチェックに係る制度が円滑に導入されるよう、制度の周知等に取り組む必要がある。一方で、教員の業務の特性に鑑みると、作業の転換、労働時間の短縮等の措置を直ちに講じることが困難な場合も考えられる。
また、良好な職場環境の整備充実のため、学校の規模や状況を踏まえ、産業医の配置や衛生委員会の設置など労働安全衛生体制の整備や業務改善等に取り組むことが重要である。
※17 ただし、従業員50人未満の事業場については、当分の間、努力義務とされている。
(改善方策)
(指導主事の配置状況等)
「チームとしての学校」を推進するためには、教育委員会の専門性を組織として高めることが不可欠であり、指導主事や管理主事の資質・能力の向上や、指導主事等がその専門性を十分に発揮できるような環境の整備が求められる。
指導主事は、学校における教育課程、学習指導その他学校教育に関する事項の指導に関する事務に従事している。指導主事は、「教育に関し識見を有し、かつ、学校における教育課程、学習指導その他学校教育に関する専門的事項について教養と経験がある者でなければならない」とされており、ほとんどの場合、学校の教員が任用されている。
学校が抱える課題の複雑化・多様化に伴い、教育委員会に求められる専門性も複雑化・多様化しており、指導主事の専門性にかかる期待は、年々大きくなっている。
その一方で、指導主事は、学校への指導・助言だけでなく、教育委員会の様々な業務も担っていることから、指導主事が事務業務に追われて、学校への指導が十分にできていない、指導主事が自らの専門性を高める機会が不足している、という課題も指摘されている。
また、小規模の市町村では、指導主事の配置が少数、あるいは1名もいないところも多い。
(指導主事の力量の向上、配置等の改善・充実)
今後、学習指導要領の改訂の動向も踏まえ、カリキュラム・マネジメントの導入やアクティブ・ラーニングなど指導方法の改革を学校で進めていくためには、教育委員会の方針に基づいて、指導主事が学校に対して指導・助言を行っていくことが重要であり、指導主事の資質の向上や配置の充実が必要である。特に、幼稚園や子ども園については、幼児教育専任の指導主事を教育委員会に配置してほしいという意見があった。
そのために、指導主事を対象とした研修の充実に取り組むとともに、指導主事の力を生かすために、都道府県教育委員会、教育センター、教育事務所、市町村教育委員会それぞれに配置されている指導主事が、しっかりと連携しつつ、役割分担をして、学校に対する指導・助言を行っていくことが重要である。
さらに、指導主事の配置が充実するよう、引き続き、国や都道府県の支援が必要である。
また、近隣の市町村が連携し、複数の市町村で指導主事を共同設置するなど、教育事務の処理の広域化に取り組むといった工夫も考えられる※18。
※18 平成26年7月1日現在で、北海道、山梨県、奈良県の3道県内の31市町において、8件の指導主事の共同設置が行われている(総務省「地方公共団体間の事務の共同処理の状況調査」)。
(改善方策)
(法令にのっとった教育行政)
教育委員会は、教員の任命権者又は服務監督権者として、服務管理をはじめとして、教職員の人事管理に取り組んでおり、引き続き、研修の充実等の方策を講じ、服務管理の徹底に取り組む必要がある。
(教職員の力を引き出し伸ばす人事行政)
一方で、教育委員会は、任命権者として、教職員の力を引き出し伸ばすことができるような施策や、教員の本務である教科指導や生徒指導を伸ばすために必要な人事施策についても考えていく必要があることから、いわゆる指導行政と管理行政との間での連携をより重視していくような視点で組織を充実していくことが求められている。
また、教員とは異なる専門性や文化を有する専門能力スタッフに係る人事管理を十分、担うことができるような体制整備を進める必要がある。
そのため、教育委員会において、教職員の人事管理を主として担当している職員(管理主事等)の資質能力の向上を進めていくことが重要である。国は、管理主事等を対象にした研修を実施しているところであるが、内容の見直しを行うとともに、研修受講者の活用等の方策を検討するべきである。
(改善方策)
(保護者等や地域からの要望等への対応の現状)
教員勤務実態調査の結果によれば、小・中学校教員の約70%が保護者への対応が増えたと回答し、保護者への対応をストレスと感じる教員が50%を超えている。
さらに、保護者や地域からの相談や要望の内容も複雑化・困難化しており、対応に苦慮する事例も見られる。
(不当な要望等への対応)
不当な要望に対しては、法令にのっとって対応し、学校側の姿勢がぶれないことが重要である。そのためにも、担任や担当の教職員だけに対応を委ねることのないよう、問題の初期の段階から組織的に対応し、校長は教職員を、教育委員会は学校、校長を支援するという姿勢を日頃からはっきり示し、学校の要請に応える体制を整えておく必要がある。
(保護者や地域への対応に対する支援の改善・充実)
教育委員会や学校は、保護者やPTA、地域への情報提供や学校評価の取組、コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)等の仕組みの活用等を通して、学校の人員や予算等の実態について説明し、学校として対応可能な範囲について、日頃から理解を求めておくことが重要である。
また、相談や要望を受けた際に、第三者的立場から中立的に問題解決を支援したり、教職員が専門的な知見を直接聞いたりできるような仕組みを作ることによって、学校の負担軽減につなげることが考えられる。
(改善方策)
初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室
-- 登録:平成28年01月 --