資料4 子ども・子育て新システムに関する中間とりまとめについて

平成23年7月29日
少子化社会対策会議決定

 子ども・子育て新システムは全世代型の社会保障の構築を目指す社会保障改革において、国民の安心確保のための最優先項目の一つであり、早期に実現する必要がある。

 子ども・子育て新システムについては、昨年9月より子ども・子育て新システム検討会議作業グループの下、基本制度ワーキングチーム、幼保一体化ワーキングチーム及びこども指針(仮称)ワーキングチームにおいて、「子ども・子育て新システムの基本制度案要綱」に掲げられた基本的方向性を踏まえて、関係者間で意見集約を図りながら、議論を重ねてきた。去る7月27日に基本制度ワーキングチームにおいて、これまでの議論の到達点として、別添のとおり中間とりまとめが行われ、給付設計や幼保一体化を中心とした制度設計が示されるとともに、今後の検討課題が明確にされたところである。

 一方、6月30日には「社会保障・税一体改革成案」(政府・与党社会保障改革検討本部決定)において、子ども・子育て新システムにかかる工程表として、「税制抜本改革とともに、早急に所要の法律案を提出する」とされたところである。

 今後、「子ども・子育て新システムの基本制度案要綱」及び別添「子ども・子育て新システムに関する中間とりまとめ」を踏まえ、費用負担の在り方などの残された検討課題について子ども・子育て新システム検討会議作業グループの下で開催されるワーキングチームにおいて検討を進め、実施主体である地方公共団体をはじめとする関係者と丁寧に協議を行い、理解を得たうえで、子ども・子育て新システムの成案をとりまとめ、恒久財源を得て早期に本格実施(それまでの間は、法案成立後、平成25年度を目途に、子ども・子育て会議(仮称)や国の基本指針など可能なものから段階的に実施)できるよう、平成23年度中に必要な法制上の措置を講じることとされている税制抜本改革とともに、早急に所要の法律案を国会に提出する。


子ども・子育て新システムに関する中間とりまとめについて

平成23年7月27日
基本制度ワーキングチーム

○ 本ワーキングチームは、昨年9月より子ども・子育て新システム検討会議作業グループの下で14回開催され、議論を重ねてきた。また、同時並行して、幼保一体化ワーキングチームについては9回、こども指針(仮称)ワーキングチームについては6回、それぞれ開催され、随時、本ワーキングチームにおいて議論の状況の報告を受け、議論を重ねてきた。

○ 本ワーキングチームとしては、他の2つのワーキングチームとともに、「子ども・子育て新システムの基本制度案要綱」(平成22年6月29日少子化社会対策会議決定)に掲げられた基本的方向性を踏まえて、関係者間で意見集約を図りながら重ねてきたこれまでの議論の到達点として、子ども・子育て新システムの全体像、給付設計の在り方、幼保一体化の在り方、質改善(機能強化)の在り方等について、別添の通り、中間的に議論をとりまとめた。

○ 質改善(機能強化)については、量的拡充と合わせて1兆円を超える額を見込んでいる。その実現のためには財源の確保が不可欠であり、政府においては、その確保に向けて最大限の努力をされたい。

○ 本ワーキングチームとしては、今後も「子ども・子育て新システムの基本制度案要綱」及び本とりまとめを踏まえ、「社会保障・税一体改革成案」(平成23年6月30日 政府・与党社会保障改革検討本部決定)の工程表にあるように、平成23年度中に必要な法制上の措置を講じることとされている税制抜本改革とともに、早急に法案を提出し、恒久財源を得て早期に本格実施(それまでの間は、法案成立後、平成25年度を目途に、子ども・子育て会議(仮称)や国の基本指針など可能なものから段階的に実施)できるよう、1.国、地方及び事業主の負担の在り方、利用者負担の在り方、既存の財政措置との関係など費用負担の在り方、子ども・子育て包括交付金(仮称)の在り方、2.国における所管の在り方、3.ワーク・ライフ・バランスの在り方、4.国の基準と地方の裁量の関係など地域の実情に応じた給付・事業の提供のための仕組みの在り方、その他の残された検討課題について、できる限り速やかに検討を再開したい。また、検討に当たっては、基本制度案要綱に掲げられた、すべての子ども・子育て家庭に必要な良質の支援を行い、地域主権を前提とした住民の多様なニーズに応えるなどの観点も含め、実施主体である地方公共団体など関係者と十分に意見交換を行うこととしたい。
 政府においても、国と地方の協議の場などを通じて地方公共団体と十分に協議を行うとともに、関係団体などの関係者の理解も得た上で、成案化されたい。


(別添)

子ども・子育て新システムに関する中間とりまとめ 

 子どもは社会の希望であり、未来をつくる力である。

 子どもが、それぞれの個性と能力を十分に発揮すること、人の気持ちを理解し互いを認め合い、共に生きることができるようになること、このような子どもの健やかな育ちは、子どもの親のみならず、今の社会を構成するすべての大人にとって、願いであり、また喜びである。
 乳幼児期の教育は、生涯にわたる人格形成の基礎を培う、極めて重要なものである。そして、子どもの健やかな育ちは、我が国にとっての最大の資源である「人」づくりの基礎であり、子どもの育ちと子育てを支援することは、未来への投資でもある。
 親の経済状況や幼少期の成育環境によって格差が生じることがないなど、子どもの最善の利益を考慮し、すべての子どもが尊重され、その育ちが等しく確実に保障されるよう取り組まなければならない。

 他方、子どもの育ちや子育てをめぐる環境の現実は厳しい。非正規労働者の増加などの雇用基盤の変化、核家族化や地域のつながりの希薄化による家庭や地域の子育て力・教育力の低下により、若者が雇用など将来の生活に不安を抱き、結婚や出産に関する希望の実現をあきらめ、子育て当事者が悩みを抱えながら苦労している。
 子育てとは本来、日々成長する子どもの姿を通じて親に大きな喜びや生きがいをもたらす営みである。親が子育ての充実感を得られるなど「親としての成長」を支援していく必要がある。
 そして、ワーク・ライフ・バランスを推進しつつ、子ども・子育て支援を質量ともに充実させることにより、家庭を築き、子どもを生み育てるという希望がかなえられる社会を実現していかなければならない。

 そのためには、子育てについての第一義的な責任が親にあることを前提としつつ、かつては家族や地域が担っていた子育てに関する支え合いの機能や、企業による日本型の生活保障機能が低下していることを踏まえ、こうした子ども・子育てを支える機能を新しい形で再生させる必要がある。こうした機能の再生は、地域社会そのものの再生にも大きく寄与する。

 今般の東日本大震災においては、子どもと大人、被災者と支援者など、地域の中あるいは地域を超えた様々な人と人とのつながり、地域の人々の参画と助け合いの大切さが再認識されている。
 子ども・子育て支援についても、こうした助け合いの気持ちを確かなものとして国民が共有し、子どもの育ちと子育てを皆で支える新たな絆の仕組みを構築しなければならない。

 上記の理念を踏まえ、これまで「子ども・子育て新システムの基本制度案要綱(平成22年6月29日少子化社会対策会議決定)に掲げられた幼保一体化(こども園(仮称))等の基本的方向性を踏まえて重ねてきた議論の到達点として、次のとおり子ども・子育て新システムの具体的制度設計の在り方に関し、中間的にこれまでの議論をとりまとめた。今後、基本制度案要綱及び本とりまとめを踏まえ、幼保一体化を含む子ども・子育て新システムの理念の実現に向けた取組を推進していくことが必要である。 

1 市町村、都道府県、国の役割

○ 子どもの育ち・子育て家庭を社会全体で支えるため、市町村(基礎自治体)が制度を実施し、国・都道府県等が制度の実施を重層的に支える仕組みを構築する。

○ 事業ごとに所管や制度、財源が様々に分かれている現在の子ども・子育て支援対策を再編成し、幼保一体化を含め、制度・財源・給付について、包括的・一元的な制度を構築する。

 ※ 残された課題については、今後、更に検討する。

○ 実施主体は市町村(基礎自治体)とし、新システムに関するすべての子ども・子育て関連の国庫補助負担金、労使拠出等からなる財源を一本化し、市町村に対して包括的に交付される仕組み(子ども・子育て包括交付金(仮称))を導入する。

 ※ 上記は基本制度案要綱における記述であり、国、地方及び事業主の負担のあり方、既存の財政措置との関係など費用負担のあり方、子ども・子育て包括交付金(仮称)のあり方については、今後、更に検討する。

○ 地域主権改革の観点を踏まえ、また、実施主体である市町村及びそれを支援する都道府県と十分調整しながら、以下の点について、今後、更に検討を行う。
(1)事業計画の策定など地方公共団体の実施する施策についての国の関与のあり方
(2)国が定める基準と地域の実情に応じるための地方公共団体の裁量との関係
(3)指定制における指定や総合施設(仮称)の認可等の主体のあり方
(4)都道府県の具体的な役割やその財源措置のあり方 

1 市町村の役割

(1)市町村の権限と責務

 市町村は、新システムの実施主体としての役割を担い、国・都道府県等と連携し、自由度を持って地域の実情に応じた給付等を設計し、当該市町村の住民に新システムの給付等を提供・確保する。そのために必要な以下の権限及び責務を法律上位置づける。

  • 子どもや家庭の状況に応じた給付の保障、事業の実施
  • 質の確保された給付・事業の提供
  • 給付・事業の確実な利用の支援
  • 事業の費用・給付の支払い
  • 計画的な提供体制の確保、基盤整備

(2)「市町村新システム事業計画」(仮称)の策定

  • 市町村は、潜在ニーズも含めた地域での子ども・子育てに係るニーズを把握した上で、管内における新システムの給付・事業の需要見込量、見込量確保のための方策等を盛り込んだ「市町村新システム事業計画」(仮称)を策定し、本計画をもとに、給付・事業を実施する。
  • 市町村新システム事業計画(仮称)の策定及び記載事項を法定する(計画記載事項は別紙のとおり)。
  • 市町村新システム事業計画(仮称)の策定における市町村内の関係当事者の参画の仕組みについて検討する。

2 都道府県の役割

○ 都道府県は、広域自治体として、新システムの給付・事業が健全かつ円滑に運営されるよう、必要な助言・援助等を行うとともに、子ども・子育て支援施策のうち、広域的な対応が必要な事業等を行う。

○ 都道府県は、「都道府県新システム事業支援計画」(仮称)に基づき、市町村を支援する。「都道府県新システム事業支援計画」(仮称)の策定及び記載事項を法定する(計画記載事項は別紙のとおり)。

○ 都道府県新システム事業支援計画(仮称)の策定における都道府県の関係当事者の参画の仕組みについて検討する。

3 国の役割

○ 国は、新システムの制度設計、市町村への子ども・子育て包括交付金(仮称)の交付、基本指針(仮称)の策定等、新システムの給付・事業が健全かつ円滑に運営されるよう、必要な措置を講ずる。

○ 基本指針(仮称)については、その策定及び記載事項を法律上明記し、国の「子ども・子育て会議」(仮称)の審議を経て策定する(指針記載事項は別紙のとおり)。

○ 基本指針(仮称)には、家庭・地域を含めたすべての子育て関係者を対象とした、子どもに関する理念、子育てに関する理念を示すものである「こども指針(仮称)」を位置づける。

2 給付設計

 市町村は、子ども・子育て支援給付(仮称)及び子ども・子育て支援事業(仮称)を実施する。

1 子ども・子育て支援給付(仮称)

 子ども・子育て支援給付(仮称)は、個人に対する以下の給付とする。 

(1)子ども手当(個人への現金給付)

 子ども手当については、新システムにおける給付に位置づける。(別途検討)

(2)こども園給付(仮称)

 こども園給付(仮称)については、質の確保のための客観的な基準を満たした施設として指定を受けたこども園(仮称)に関する給付とする。
※ こども園(仮称)とは、指定を受けた総合施設(仮称)、幼稚園、保育所、それ以外の客観的な基準を満たした施設であり、その総称である。総合施設(仮称)とは、学校教育と保育及び家庭における養育の支援を一体的に提供する施設。その名称については、今後検討する。 

(3)地域型保育給付(仮称)

 地域型保育給付(仮称)については、質の確保のための客観的な基準を満たす事業者として指定を受けた小規模保育事業者、家庭的保育事業者及び居宅訪問型保育事業者等に関する給付とする。
※ こども園給付(仮称)及び地域型保育給付(仮称)は、早朝・夜間・休日保育にも対応する。
※ 出産・育児に係る休業に伴う給付(仮称)

 ○ 産前産後・育児休業中の現金給付から保育まで切れ目なく保障される仕組みの構築が課題であるが、出産手当金(健康保険)、育児休業給付(雇用保険)の適用範囲や実施主体に違いがあること等を踏まえ、両給付を現行制度から移行し一本化することについては将来的な検討課題とする。

2 子ども・子育て支援事業(仮称)

 子ども・子育て支援事業は、市町村が実施する以下の事業とする。

  • 地域子育て支援事業(仮称)
     ※ 地域子育て支援拠点事業、一時預かり及び乳児家庭全戸訪問事業等(対象事業の範囲は法定)
  • 延長保育事業、病児・病後児保育事業
  • 放課後児童クラブ
  • 妊婦健診

 ※ 市町村の独自事業の取扱いは今後検討する。 

3 幼保一体化

1 基本的な考え方

○ すべての子どもの健やかな育ちと、結婚・出産・子育ての希望がかなう社会を実現するため、以下の三点を目的とする幼保一体化を推進する。

  • 質の高い学校教育・保育の一体的提供
  • 保育の量的拡大
  • 家庭における養育支援の充実

※ ここで言う「学校教育」とは、学校教育法に位置付けられる小学校就学前の子どもを対象とする教育(幼児期の学校教育)を言い、「保育」とは児童福祉法に位置付けられる乳幼児を対象とした保育を言う。以下同じ。 

○ 具体的には、以下の給付システムの一体化と施設の一体化を推進する。

(1)給付システムの一体化

○ 地域における学校教育・保育の計画的整備(市町村新システム事業計画(仮称)の策定)

 市町村は、地域における学校教育・保育の需要をはじめ、子ども・子育てに係る需要の見込み及び見込量の確保のための方策等を内容とする市町村新システム事業計画(仮称)を策定する。

○ 多様な保育事業の量的拡大(指定制度の導入)

 客観的基準を満たした施設及び多様な保育事業への財政措置を行うこと等により、多様な事業主体の保育事業への参入を促進し、質の確保された保育の量的拡大を図る。

○ 給付の一体化及び強化(こども園給付(仮称)の創設等)

 学校教育・保育に係る給付を一体化したこども園給付(仮称)を創設することにより、学校教育・保育に関する財政措置に関する二重行政の解消及び公平性の確保を図る。

(2)施設の一体化(総合施設(仮称)の創設)

 学校教育・保育及び家庭における養育支援を一体的に提供する総合施設(仮称)を創設する。

2 子どもや家庭の状況に応じた子ども・子育て支援

○ 子ども・子育て家庭については、乳幼児の子育てをしている、育児休業中の家庭、共働き家庭、いわゆる専業主婦家庭など、様々な状況の子ども・子育て家庭がある。

○ 子ども・子育て新システムにおいては、すべての子どもに、良質な成育環境を保障するため、それぞれの子どもや家庭の状況に応じ、「子ども・子育て支援給付(仮称)」を保障する。

○ 子どもが満3歳となったとき、子どもが学齢期となったときなどに円滑に切れ目のない支援を行うため、施設間・事業間の連携・提携等の仕組みを検討する。

○ また、子育てに孤立感・負担感を感じている保護者が多いこと等を踏まえ、すべての子ども・子育て家庭に、それぞれの子どもや家庭の状況に応じ、子育ての充実感を得られるような親子の交流の場づくり、子育て相談や情報提供、親子登園などの支援を行う。

3 幼保一体化の進め方

○ 国においては、幼保一体化を含む子ども・子育て支援に関する基本指針(仮称)を策定するとともに、給付の一体化及び強化等により総合施設(仮称)への移行を政策的に誘導する。

○ 都道府県については、広域自治体として、都道府県新システム事業支援計画(仮称)を策定し、市町村の業務に関する広域調整等を行う。

○ 市町村においては、国による制度改正及び基本指針(仮称)を踏まえ、市町村新システム事業計画(仮称)に基づき、地域における、満3歳以上の保育所等を利用する家庭の子どもの状況、満3歳以上の保育所等を利用しない家庭の子どもの状況、満3歳未満の保育所等を利用する家庭の子どもの状況など、地域の実情等に応じて、必要な施設・事業を計画的に整備する。
 ※ 具体的な施策については、今後、地方自治体、関係者等と十分に協議を行う。

4 地域における学校教育・保育の計画的整備(市町村新システム事業計画(仮称)の策定)

○ 市町村は、地域における学校教育・保育の需要をはじめ、子ども・子育てに係る需要の見込みを調査し、その結果に基づき市町村新システム事業計画(仮称)を策定する。

○ 市町村は、当該計画に基づき、指定されたこども園(仮称)や多様な保育事業を行う、多様な事業主体を共通の財政措置(子ども・子育て支援給付(仮称))の対象とするなど、地域の実情等に応じて提供体制を計画的に整備する。

○ 家庭における養育を支援する事業(地域子育て支援拠点事業等。対象範囲は法定。)についても、広く財政措置の対象とし、当該計画に基づき、計画的に推進する。

5 多様な保育事業の量的拡大(指定制度の導入)

(1)基本的な考え方

○ 新システムにおいては、質の確保のための客観的基準を満たすことを要件に、認可外施設も含めて参入を認めるとともに、株式会社、NPO等、多様な事業主体の参入を認める。 

○ 指定制の導入により、保育の量的拡大を図るとともに、多様なメニューの中から、あらかじめ質が確保されている施設や事業であることを行政が確認し、指定された施設又は事業者の中から、利用者がニーズに応じた施設や事業を選択できる仕組みとする。

(2)具体的制度設計

1 法人格

○ こども園(仮称)については、学校法人、社会福祉法人、株式会社、NPO等、多様な事業主体の参入を可能とする。ただし、安定的・継続的な運営を担保する観点から、法人格を条件とする。

○ 地域型保育給付(仮称)の対象となる多様な保育事業を行う指定事業者については、地方単独事業の対象の個人立の認可外保育施設が存在することも踏まえ、法人でない場合でも、一定の条件を満たせば、指定の対象とする。

2 指定基準

○ 指定基準については、こども園(仮称)、指定小規模保育事業、指定家庭的保育事業等の施設・事業ごとの客観的な基準を、全国一律の基準として定める。

○ その際、国の基準と地方公共団体の裁量の範囲については、今後、更に検討する(基準の客観性は担保)。

○ 指定基準は、施設・事業の内容ごとに、現行の基準を基礎とする。

○ 教育・保育の質の確保・向上の観点から、職員配置基準の引上げ等を検討する。

3 撤退規制等

○ 継続的な運営が基本であるが、やむを得ず事業を撤退する場合には、指定辞退の事前届出を行わせる。

○ 指定辞退については、法律で予告期間を設定するとともに、利用している児童が他の施設等で継続的に利用できるようにするための調整義務を施設・事業者に課す。

○ 施設・事業者による調整に対する都道府県又は市町村の援助の在り方について検討する。

○ 指定については、質の確保の観点から、他の類似制度を参考に、数年ごとに更新する。

○ 保護者の選択に資する観点から、情報開示の義務化を行う。

○ 具体的には、以下の項目について情報開示を行う。
 ア 学校教育・保育の理念など、施設の運営方針
 イ 学校教育・保育の内容及びその特徴
 ウ 一人の職員が担当する子どもの数
 エ 職員の保有免許・資格や経験年数
 オ 定員以上に応募がある場合の選考基準
 カ 上乗せ徴収(実費徴収を除く)の有無
 キ カで「有」の場合、その理由及び上乗せ徴収額  等

4 需給調整

○ 指定制度においては、指定基準を満たす施設については、すべて指定する。

○ ただし、市町村が策定する新システム事業計画(仮称)における供給量を超えた供給がなされている場合など、施設数が過大となっている場合については、指定主体の権限において新規の指定や更新を行わないことができることとする。
 ※ 目標供給量を盛り込む市町村の計画に関する策定手続きを含めた国による策定のための指針、事後の点検・評価を含めた必要な情報の開示等、適正性・透明性を確保するための仕組みを検討する。 

5 指定・指導監督の主体

ア こども園(仮称)

  • こども園(仮称)の入園に際しては、保護者が自ら施設を選択し、施設と契約することとなるため、市町村域外からも子どもを受け入れることが想定され、より広域的な調整が必要となることから、その指定・指導監督の主体は都道府県とする。
  • また、大都市(指定都市、中核市)に関する特例等を設けるかについて、今後、更に検討する。その際、更なる権限移譲の観点から、主体を市町村とするかを含め、検討する。
  • 指定・指導監督の主体を都道府県とする場合、指導監督に市町村が関与する仕組み(報告徴収の権限や指定主体に指導監督の実施を求める権限等)も他の類似制度を参考に検討する。

イ 多様な保育事業を行う指定事業者

  • 多様な保育事業を行う指定事業者の指定・指導監督の主体については、地域の実情に応じた供給量の確保の観点から市町村とする。

6 指定・指導監督の権限

 指定事業者には、指定基準に従い、事業を実施しなければならない義務を課すほか、指定・指導監督主体に、報告徴収、立入検査、基準遵守の勧告・措置命令、指定取消等の権限を与える。

(3)制度施行時の経過措置

 新たな制度を施行する際に、現に幼稚園又は保育所の認可を受けている施設については、こども園(仮称)の指定があったものとみなす経過措置を設ける。
 ※ 施行前に現に認可を受けている施設については、法人格を有しなくても指定を受けられることとする。
 ※ 認定こども園の取扱いについて、今後、更に検討する。

(4)運営費の在り方等

 イコールフッティングの下で、一定の客観的な基準を満たした多様な主体の参入促進を図るため、以下の点について、今後、更に検討を行う。

  • 運営費の使途範囲について、こども園給付(仮称)等を提供するための費用とすることを基本としつつ、多様な主体の経営努力により柔軟な経営を可能とする観点から、他会計への費用の繰入を認めること
  • 施設整備費について、運営費に上乗せする仕組みとすること
  • 会計基準について、法人種別に応じた会計処理を基本とした上で、資金の流れを明確化する仕組みとすること

6 給付の一体化及び強化(こども園給付(仮称)の創設等)

(1)こども園給付(仮称)の創設

 学校教育・保育に係る給付を一体化したこども園給付(仮称)を創設し、学校教育・保育に関する財政措置に関する二重行政の解消及び公平性の確保を図る。
 ※ こども園(仮称)とは、指定を受けた総合施設(仮称)、幼稚園、保育所、それ以外の客観的な基準を満たした施設であり、その総称である。

(2)契約方式

 こども園給付(仮称)については、保護者に対する個人給付を基礎とし、確実に学校教育・保育に要する費用に充てるため、法定代理受領の仕組みとする。

1 保育の必要性の認定

 例外のない保育の保障の観点から、市町村が客観的基準に基づき、保育の必要性を認定する仕組みとする。

ア 保育の必要性の認定を受ける子どもの認定基準及び認定手続

  • 国は、「事由」「区分」「優先利用」に関する認定基準を策定する。
  • その際、国の基準と地方公共団体の裁量の範囲については、今後、更に検討する(基準の客観性は担保)。
  • 具体的な認定基準と認定手続は、以下の通りとする。

○ 認定基準

 A 事由

  a 就労

    フルタイムのほか、パートタイム、夜間の就労など基本的にすべての就労
    ※ 一時預かりで対応可能な極めて短時間の就労は除く。

  b 就労以外の事由

  • 保護者の疾病・障害、産前産後、同居親族の介護、災害復旧、求職活動及び就学等
     ※ 現行の政令で定めている「同居親族等が保育できない場合」という条件は、外す又は必要度を低くする方向で検討する。
  • その他これらに類するものとして市町村が定める事由 

 B 区分

月単位の保育の必要量に関する区分(2区分程度(「長時間利用」及び「短時間利用」))を設定

 C 優先利用

ひとり親家庭や虐待のおそれのあるケースの子ども等

○ 認定手続

  • 市町村は、認定基準に従って審査を行い、認定を行う。また、これとあわせて保護者負担の区分も決定する。
  • 市町村は、認定を行った利用者(保護者)に対して、認定証を交付する。
  • 認定証には、事由、区分(長時間利用又は短時間利用)、優先利用及び保護者負担の区分を記載する。

イ 保育の必要性の認定を受けない子どもの受給手続 (満3歳以上の学校教育のみを受ける場合)

  • 満3歳以上の学校教育のみの利用を希望する場合、市町村に申請を行う。
  • 申請を受けた市町村は、当該市町村に居住する満3歳以上の子どもであることが確認できた場合は、保護者負担の区分の決定を行い、これを受給者証に記載して交付する。
    ※ 受給者証は、主として、施設が保護者負担の区分を確認するためのものであるが、その要否を含め、今後、更に検討する。

2 公的契約

  • 契約については、保育の必要性の認定を受けた子どもと受けない子どものいずれについても、市町村の関与の下、保護者が自ら施設を選択し、保護者が施設と契約する公的契約とする。
  • 公的契約については、「正当な理由」がある場合を除き、施設に応諾義務を課す。「正当な理由」については次のとおりとする。
    ア 定員に空きがない場合
    イ 定員以上に応募がある場合(この場合、選考の実施が必要となる。)
    ウ その他特別な事情がある場合 
     
  • 定員については、保育認定を受けた子どもの利用と、保育認定を受けない子どもの利用を、地域の需要に応じ、ともに保障する観点から、保育認定を受けた子ども、保育認定を受けない子どもの別に設定し、上記イの場合に行う選考についても、それぞれの定員枠ごとに行う。
  • 定員以上に応募がある場合の選考については、その基準を国が定め、施設は、国の選考基準に基づき選考を行うものとする。
  • その際、国の基準と地方公共団体の裁量の範囲については、今後、更に検討する(基準の客観性は担保)。
  • 国が定める選考基準については、概ね次のとおりとする。
    ア 保育の必要性の認定を受けた子ども
     a)家庭の状況や保護者の就労状況等に基づく保育の必要度に応じて選定する。
     b)ひとり親家庭、虐待のおそれのあるケースなどは、a)に関わらず、優先的に選定する。
     c)特別な支援が必要な子どもの受入れ体制が整っている施設については、a)に関わらず、特別な支援が必要な子どもを優先的に選定する。
    ※ 保育の必要度の判断の具体的な手続については、今後、更に検討する。

    イ 保育の必要性の認定を受けない子ども
     a)1.抽選、2.先着順、3.建学の精神等設置者の理念に基づく選考など、施設の設置者が定める選考基準(選考方法)に基づき、選定する。
     b)特別な支援が必要な子どもの受入れ体制が整っている施設については、a)に関わらず、特別な支援が必要な子どもを優先的に選定する。
     
  • 施設の設置者が定める選考基準(選考方法)については、指定制度の一環である情報開示の標準化の開示項目として、開示する。

(3)市町村の関与

1 関与の具体的仕組み

  • 保護者が選択した施設・事業者に申し込むことを基本とする。市町村は、管内の施設・事業者の情報を整理し、子育て家庭に広く情報提供し、相談に対応する。
  • 特別な支援が必要な子どもなど、あっせん(市町村による、利用可能な施設との契約の補助)等による利用が必要と判断される場合には、市町村が、関係機関とも連携して利用調整を行い、認定証の交付と合わせて、利用可能な施設・事業者をあっせん等することとし、その具体的な仕組みについては今後更に検討する。

2 当面、保育需要が供給を上回っている間の関与の仕組み

  • 市町村は、計画的な基盤整備により保育需要が供給を上回る状態を解消する取組を強力に推進することが制度の前提である。その上で、当面の対応のため、次のような対応を検討する。

    ○ 特別な支援が必要な子どもなど、まず、優先利用の対象となる子どもについて、市町村が利用調整を行い、利用可能な施設・事業者をあっせん等する。
    ○ それ以外の子どもについては、保護者が市町村に利用希望を提出し、市町村が利用調整を行い、利用可能な施設・事業者をあっせん等する。

3 市町村による措置

  • 保育の利用が必要と判断されるにもかかわらず、保護者が進んで保育の利用をしない場合など、契約による利用が著しく困難と市町村が判断した場合には、当該子どもについて、市町村が施設・事業者に対して措置する(措置による入所・利用)こととし、具体的な仕組みについては今後更に検討する。

(4)給付の内容

1 給付構成

 こども園給付(仮称)については、次のような給付構成とする。

  • 満3歳以上の幼児に対する標準的な教育時間及び保護者の就労時間等に応じた保育に対応する給付
  • 満3歳未満児の保護者の就労時間等に応じた保育に対応する給付
    ※ 「標準的な教育時間」とは、学校教育における教育課程に係る時間を言う。以下同じ。

2 公定価格

  • こども園給付(仮称)については、質の確保・向上が図られた学校教育・保育を提供するために必要な水準の給付を、すべての子どもに保障する(公定価格)。
  • 新たな制度における価格設定方法については、次の考え方を基本とする。

    ○ 質の確保・向上が図られた学校教育・保育を提供するために必要な水準として、人員配置基準や設備環境を基に、人件費、事業費、管理費等に相当する費用を算定する。

    ○ 人件費相当分については、職員の配置基準や施設の開所時間を踏まえた価格設定を行う。この際、子どもの過ごす時間と職員が勤務する時間の違いを踏まえ、認定時間数に対応する価格設定ではなく、必要な職員の配置を考慮した価格設定を行う。

    ○ 子どもの年齢及び人数に対応した給付を基本とするが、施設の規模による経費構造の違いや地域別の人件費等の違いを考慮し、定員規模別、地域別の価格設定を行う。

    ○ 施設の減価償却費に相当する費用についても算定する。
     
  • その際、国の基準と地方公共団体の裁量の範囲については、今後、更に検討する(基準の客観性は担保)。

3 支払い方法

  • 満3歳以上児については、標準的な教育時間に対応する区分及び月単位の保育の必要量に関する区分(2区分程度)に応じ、単価区分※(3区分程度)を設ける。その上で、各月初日の在籍児数を基本として、毎月給付する。
  • 満3歳未満児については、月単位の保育の必要量に関する区分(2区分程度)に応じ、単価区分※(2区分程度)を設ける。その上で、各月初日の在籍児数を基本として、毎月給付する。 
    ※ 具体的な単価については、上記の単価区分に応じ、2.で記述した通り、年齢別、地域別、定員規模別に設定する。

4 上乗せ徴収

ア 実費徴収

  • 国が定める基準に基づく学校教育・保育の活動の一環として行われる活動に係る費用であって、施設による費用のばらつきが大きいこと等から、こども園給付(仮称)の対象とすることが困難な費用(特別な教材費、制服代など)について、実費徴収を認める。
  • 国において、実費徴収の実態(各施設における実費徴収の費目と一人あたりの実費徴収の総額)を勘案した上で、実費徴収の対象範囲及び各施設における実費徴収の上限額に関する基準を定める。
  • その際、国の基準と地方公共団体の裁量の範囲については、今後、更に検討する(基準の客観性は担保)。
  • 低所得者に対しては、一定の要件の下で、公費による補足給付を行うこととし、その具体的仕組みについては、今後、更に検討する。

イ 実費徴収以外の上乗せ徴収

  • 次の要件を満たす施設については、その対価として、実費以外の上乗せ徴収を行うことを認める。
    a)国が定める基準に基づく学校教育・保育であること
    b)低所得者については、当該徴収を免除すること
    c)指定制度の一環である情報開示の標準化制度の開示項目として、上乗せ徴収の理由及び額を開示すること
    ※ 当分の間、市町村及び社会福祉法人以外の者が設置する施設に限る。
     
  • なお、国が定める基準に基づく学校教育・保育以外の活動(教育課程終了後に行う体操教室など)については、選択できる旨や利用料額の説明をあらかじめ行い、利用者の了解を得た場合には、費用の徴収を可能とする。 

(5)地域型保育給付(仮称)

○ こども園(仮称)を対象とするこども園給付(仮称)に加え、以下の保育事業を地域型保育給付(仮称)の対象とし、多様な施設や事業の中から利用者が選択できる仕組みとする。

  • 小規模保育
  • 家庭的保育
  • 居宅訪問型保育
  • 事業所内保育

○ 待機児童が都市部に集中し、また待機児童の大半が満3歳 未満の児童であることを踏まえ、こうした小規模保育や家庭的保育などの量的拡充により、待機児童の解消を図る。

○ 小規模保育、家庭的保育など、事業それぞれの特性に応じた客観的な指定基準を設定し、質の確保を図る。

○ その際、国の基準と地方公共団体の裁量の範囲については、今後、更に検討する(基準の客観性は担保)。  

○ 保育の必要性の認定、公的契約、市町村の関与、公定価格の算定の考え方、給付の支払方法などは、こども園給付(仮称)と同様とする。

7 施設の一体化(総合施設(仮称)の創設)

(1)基本的位置づけ

○ 学校教育・保育及び家庭における養育支援を一体的に提供する総合施設(仮称)を創設する。総合施設(仮称)の根拠法として総合施設法(仮称)を制定する。
※ 総合施設(仮称)の名称については、今後検討する。 

○ 総合施設(仮称)においては、
(1)満3歳以上児の受入れを義務付け、標準的な教育時間の学校教育をすべての子どもに保障する。また、保育を必要とする子どもには、学校教育の保障に加え、保護者の就労時間等に応じて保育を保障する。
(2)保育を必要とする満3歳未満児については、保護者の就労時間等に応じて保育を保障する。   

○ 総合施設(仮称)については、学校教育法、児童福祉法及び社会福祉法における学校(1条学校)、児童福祉施設及び第2種社会福祉事業として位置づける。

○ なお、満3歳未満児の受入れは義務付けないが、財政措置の一体化等により、満3歳未満児の受入れを含め、幼稚園及び保育所等の総合施設(仮称)への移行を促進する。
※ 例えば、現行制度でいえば、幼稚園型認定こども園の保育所機能部分、保育所型認定こども園の幼稚園機能部分についても基準を満たせば財政措置を受けられるようにすることや、調理室等への補助制度を創設すること、保育単価等によるインセンティブを付与することなどが挙げられる。 

(2)基本的な考え方

 総合施設(仮称)の創設により、次の内容を実現する。

1 学校教育法及び児童福祉法上の位置づけの付与による学校教育・保育の質の保障

○ 現行の保育所における幼児教育※に対し学校教育(1条学校)としての位置づけを付与するとともに、現行の幼稚園の預かり保育のうち、保育の必要性の認定を受けた子どもを対象とするものに対し児童福祉としての位置づけを付与する。

○ これにより、学校としての基準(学級担任制、面積基準等)と児童福祉施設としての基準(人員配置基準、給食の実施等)を併せ持つ基準を適用し、質の高い学校教育・保育を保障する。
※ 満3歳以上の幼児を対象とするもの。満3歳以上の幼児を対象とする保育所については、総合施設(仮称)へ移行する。 

○ その際、国の基準と地方公共団体の裁量の範囲については、今後、更に検討する(基準の客観性は担保)。

2 保育の量的拡大

 現行の幼稚園が保育機能を強化することにより、保育の量的拡大を図る。

3 家庭における養育の支援の強化

 現行の幼稚園・保育所が、地域の拠点として、地域の子ども・家庭に対する養育の支援を必須の事業として実施することにより、地域の子ども・家庭に対する養育の支援機能を強化する。
※ 他の事業も含めた施設の取組状況や地域の実情等に応じ、地域子育て支援事業等により行う。 

4 二重行政の解消

 現行の幼稚園、保育所、認定こども園に対する行政庁(地方公共団体)の認可・認定を一本化することにより、二重行政の解消を図る。

○ 総合施設(仮称)に係る具体的制度設計については、質の高い学校教育・保育を保障する観点から、現行の幼稚園制度及び保育所制度の双方に求められる質の水準を基本とする。

○ 総合施設(仮称)における指導・援助の要領として「総合施設保育要領(仮称)」を定める。

※ 総合施設保育要領(仮称)については、こども指針(仮称)を踏まえ、策定する。

(3)具体的制度設計

1 設置主体

  • 総合施設(仮称)の設置主体は、組織・資産等において永続性、確実性、公共性等を担保するため、国、地方公共団体、学校法人、社会福祉法人及び一定の要件を満たした株式会社、NPO等の法人とする。
      ※ 一定の要件を満たした法人を国、地方公共団体、学校法人、社会福祉法人と同じ扱いとするか、学校教育体系の原則に基づき、国、地方公共団体、学校法人及び社会福祉法人を原則とし、一定の要件を満たした法人は地域の実情に応じた例外とするか、については、今後検討する。なお、施設の認可の透明性の確保についても、今後検討する。
     ※ 上記のほか、会計間の繰り入れ制限を行うか否か等については、今後検討する。

2 認可・指導監督権等

  • 総合施設(仮称)の設置認可等については、現行の幼稚園及び保育所の例にならい、都道府県単位で行う。
  • また、大都市(指定都市、中核市)に関する特例等を設けるかについて、今後、更に検討する。その際、更なる権限移譲の観点から、主体を市町村とするかを含め、検討する。
  • 総合施設(仮称)は、学校教育と保育を一体的に提供する施設であることから、その設置認可、指導監督等については、認定こども園の例にならい、学校教育と保育の双方を統括する都道府県知事が行う。
  • 都道府県知事が総合施設(仮称)に係る事務を行う場合には、都道府県教育委員会は、一定の関与を行うこととする。
  • また、大都市(指定都市、中核市)に関する特例等を設けるかについて、今後、更に検討する。その際、更なる権限移譲の観点から、主体を市町村とするかを含め、検討する。

3 評価、情報公開

  • 学校教育・保育の質の向上を図る観点から、自己評価を義務化し、関係者評価、第三者評価を努力義務化する。また、地域住民・保護者の理解増進及び連携・協力に資するため、総合施設(仮称)の運営に関する情報提供を義務化する。

4 施設に置かれる職員

  • 総合施設(仮称)は、学校教育・保育を一体的に提供する施設であることから、現行の幼稚園及び保育所の双方で必要とされる職員を置く。
    ※ これらの職員については、幼稚園の職員と同様に資格要件及びその資格要件違反に対する罰則を設けるため、法律で規定する。
  • 学校教育と保育を担う職員として、新たに保育教諭(仮称)等を置く。
  • 保育教諭(仮称)は、幼稚園教諭の免許状と保育士資格を併有することを原則とする。
    ※ いずれかしか有しない者については、現在の幼保連携型認定こども園制度における扱いを参考にしながら、特例措置を講じる。
  • なお、職員の資格については、教員免許・養成制度の見直し及び保育士資格制度の見直しの検討状況等を踏まえた上で検討する。

5 研修

(公立)

  • 教育基本法第9条の規定により、職員の研修の充実を図る。
  • 公立の幼稚園教員と同様に研修を受ける機会を付与するとともに、新任者に対する研修等を義務化する。

(私立)

  • 教育基本法第9条の規定により、職員の研修の充実を図る。また、職員は、必要な知識等の修得に努めるものとする。

6 監督

・総合施設(仮称)は、学校及び児童福祉施設の双方の性格を有し、学校教育と保育を一体的に提供する施設であることから、私立の総合施設(仮称)を含め、立入検査、改善勧告、改善命令の権限等を監督権者に付与する。

7 政治的行為の制限

(公立)

  • 総合施設(仮称)における政治教育その他政治的行為を禁止する。
  • 職員の政治的中立性を確保するため、現行の公立幼稚園教諭と同じ政治的行為の制限を課すことを基本とし、その具体的方法については今後更に検討する。  

(私立)

  • 総合施設(仮称)における政治教育その他政治的行為を禁止する。

8 経過措置等

  • 保育所(満3歳未満児のみを保育するいわゆる乳児保育所を除く。)については、小学校就学前のすべての子どもに学校教育を保障する観点から、一定期間後にすべて総合施設(仮称)に移行する。
  • 総合施設(仮称)への移行に係る経過措置等の在り方について、今後検討する。

4 子ども・子育て支援事業(仮称)

 子ども・子育て支援事業(仮称)は、子ども・子育て家庭等を対象とする事業として、市町村が地域の実情に応じて実施する以下の事業とする。

1 地域子育て支援事業(仮称)

○ 以下の事業を地域子育て支援事業(仮称)として、市町村が地域のニーズ調査等に基づき実施する旨を法定する。市町村は、市町村新システム事業計画(仮称)で需要の見込み、見込量の確保策を記載し、提供体制を計画的に確保する。
(1)地域子育て支援拠点事業
(2)一時預かり
(3)乳児家庭全戸訪問事業
(4)養育支援訪問事業
(5)ファミリー・サポート・センター事業 等(対象事業の範囲は法定) 

○ すべての子ども・子育て家庭を対象としたこれらの事業の実施が必要であり、特に、地域子育て支援拠点事業については、実施主体である市町村と当該事業者が連携し、個々の子育て家庭に身近な立場から、その事情に応じた、利用者支援の役割を果たすものとする。

○ 一時預かりは、保護者の働き方に関わらず、日常生活を営む上での利用や、社会参加を行うための利用など、普遍的に子ども・子育て家庭に必要なものであり、すべての子ども・子育て家庭が身近に利用できる事業とする。

○ 乳児家庭全戸訪問事業、養育支援訪問事業は、都道府県等が実施する社会的養護、障害児支援と連携して実施することとし、市町村新システム事業計画(仮称)において、都道府県等との連携方策を位置付けることを検討する。

○ 事業ごとに、質の確保を図る観点から、国は一律の基準を設定する。

○ その際、国の基準と地方公共団体の裁量の範囲については、今後、更に検討する(基準の客観性は担保)。

2 延長保育事業、病児・病後児保育事業

○ 保護者の残業、子どもの病気など、保育の利用にかかわる突発的な事情変化にきめ細かく対応できるよう、延長保育事業、病児・病後児保育事業を市町村の事業として位置づける。

延長保育事業
 :認定された保育の必要量を超えて保育を提供する事業

病児・病後児保育事業
 :病気の際に就労等で保護者による自宅での保育が困難な場合に、病児等の特性を踏まえた保育を提供する事業

○ 延長保育事業、病児・病後児保育事業については、市町村が地域のニーズ調査等に基づき実施する旨を法定する。市町村は、市町村新システム事業計画(仮称)で需要の見込み、見込量の確保策を記載し、提供体制を計画的に確保する。

○ それぞれの事業について、質の確保を図る観点から、国は一律の基準を設定する。

○ その際、国の基準と地方公共団体の裁量の範囲については、今後、更に検討する(基準の客観性は担保)。

3 放課後児童クラブ

○ 小学校4年生以上も対象となることを明記し、4年生以上のニーズも踏まえた基盤整備を行う。

○ 放課後児童クラブについては、市町村が地域のニーズ調査等に基づき実施する旨を法定する。市町村は、市町村新システム事業計画(仮称)で需要の見込み、見込量の確保策を記載し、提供体制を計画的に確保する。

○ 質を確保する観点から、人員配置、施設、開所日数・時間などについて、国は一律の基準を設定する。

○ その際、国の基準と地方公共団体の裁量の範囲については、今後、更に検討する(基準の客観性は担保)。

○ 利用手続きは市町村が定める。ただし、確実な利用を確保するため、市町村は、利用状況を随時把握し(事業者は市町村に状況報告)、利用についてのあっせん、調整を行うことを検討する。

4 妊婦健診

○ 妊婦健診については、市町村新システム事業計画(仮称)の記載事項に位置づけることとし、市町村において確実な実施を図る。

○ 国は「健診回数・実施時期」及び「検査項目」について基準を示すこととする。 

5 社会的養護・障害児に対する支援

○ 子ども・子育て新システムの給付・事業は、社会的養護施策の要保護児童、障害児等を含め、地域の子ども・子育て家庭を対象とするものである。一方、都道府県は、社会的養護、障害等のニーズに対応する専門性が高い施策を引き続き担うこととし、市町村と都道府県の連携を確保する。市町村(新システムの実施主体)と都道府県等(措置制度等の実施主体)との関係については、今後更に検討する。
 ※ 都道府県等が担う児童相談所を中心とした体制、措置制度等は現行制度を維持する。
 ※ 障害児に対する支援については、障害者全般についての改革推進に係る議論の状況等を踏まえ検討することが必要である。

○ 市町村は、要保護児童、障害児等を含め、地域における学校教育・保育の需要の見込み及び見込量確保のための方策を市町村新システム事業計画(仮称)に明記する。また、市町村による利用調整により、確実な利用を支援する仕組みを検討する。

○ 虐待予防の観点から保育の利用が必要と判断される場合など、契約による利用が著しく困難と判断した場合において、市町村が措置による入所・利用を行うこととし、その仕組みを検討する。

○ 市町村は、乳児家庭全戸訪問事業、養育支援訪問事業など、子どもに提供される一般施策を実施する。実施に際しては、都道府県が行う事業(社会的養護、障害等のニーズに対応する専門性が高い事業)と連携が必要であり、相互の連携について市町村新システム事業計画(仮称)、都道府県新システム事業支援計画(仮称)に位置付けることを検討する。

6 子ども・子育て包括交付金(仮称)等

○ 国から市町村に対し、市町村新システム事業計画(仮称)に盛り込まれた給付・事業の実施に必要な費用を包括的に交付するものとして、子ども・子育て包括交付金(仮称)を検討する。子ども・子育て包括交付金(仮称)の検討にあたっての留意事項は次のとおりである。

○ 交付金の対象となる給付・事業の範囲については、新システムの給付・事業の制度設計に加え、既存の財政措置との関係などを踏まえて今後検討する。

○ 交付金の対象となる給付・事業に区分を設けることの是非については、当該給付・事業の性質(義務的経費・裁量的経費)等や市町村の自由度を高める制度改正の趣旨も踏まえ今後検討する。

○ 子ども・子育て包括交付金(仮称)と地域自主戦略交付金との関係について、今後検討する。

○ 市町村は、子ども・子育て包括交付金(仮称)と地方の財源を合わせ、地域の実情に応じ、給付・事業を行うことを検討する。
 市町村での交付金の経理は、交付金は子ども・子育てのために使われるものであるため、一般会計での対応を基本とする。あわせて、子ども・子育てに使われたことが確認できる仕組みを今後検討する。
 ※ 国、地方及び事業主の負担のあり方、既存の財政措置との関係など費用負担のあり方、子ども・子育て包括交付金(仮称)については、今後、更に検討する。

○ 国における会計については、費用負担の検討に応じ、区分経理の必要性について、今後検討する。その際、子ども・子育て会議(仮称)によるチェックなど、関係当事者の参画による運営の透明性の確保を前提とする。

7 子ども・子育て会議(仮称)

○ 子ども・子育て支援の給付・事業を、子ども・子育て当事者のニーズに即したものとするため、また、効果的かつ効率的な制度運用のため、地方公共団体、労使代表を含む負担者、子育て当事者、NPO等の子育て支援当事者等が子育て支援の政策プロセス等に参画・関与できる仕組みとして、国に子ども・子育て会議(仮称)を設置する。
 ※ 子ども・子育て会議(仮称)の考えられる機能

  • 国の基本指針(仮称)(地方自治体の計画策定の指針等)その他の重要方針の審議
  • 新システムの対象となる施策のあり方についての審議
  • 各年度の事業方針の審議、費用の使途実績、事業の効果等の点検・評価  など

○ 地方公共団体においても、関係当事者が新システムの運営に参画する仕組み(例:地方版子ども・子育て会議)を設けることと具体的な方策について今後検討する。 

8 費用負担

○ 基本制度案要綱においては、「社会全体(国・地方・事業主・個人)による費用負担」と記載されている。

○ 新システムの施策については、給付等に応じて、税制抜本改革による財源確保を前提とし、公費を中心に負担することとし、具体的な負担の在り方については、今後検討する(なお、基本制度案要綱に記載された事業主拠出については、現行制度も参考に、事業主拠出の対象範囲の明確化や事業主の意見が使途等に反映等される仕組みの必要性も踏まえて、今後検討する)。

○ 新システムにおける利用者負担については、新システムが、「保護者の子育てについての第一義的責任」を前提としつつ、「社会全体で子ども・子育てを支援する」ものであることを踏まえ、施設と利用者の適切な利用関係の確保に資するよう、低所得者に一定の配慮を行いつつ、利用者に一定の負担を求めることとし、その具体的なあり方については、今後検討する。

○ その際、すべての子どもに質の確保された学校教育・保育を保障するとの考え方を踏まえて定める。

○ 既存の財政措置との関係について、今後検討し、その結果に応じて、適切な制度設計を行う。

○ 潜在ニーズを含む保育等の量的拡充※は、最優先で実施すべき喫緊の課題である。

○ これと併せて、職員配置の充実など必要な事項※については、子ども・子育て新システムの制度の実施のため、税制抜本改革による財源を基本としつつ、必要に応じそれ以外の財源を含め、国・地方を通じた恒久的な財源を確保しながら実施することとする。

※ 主な内容
■保育、放課後児童クラブ、地域子育て支援、社会的養護等の量的拡充 ※子ども・子育てビジョンベース 
■0~2歳児保育の体制強化による待機児童の解消           
 ・現在の幼稚園の0~2歳児保育への参入の促進 
 ・小規模保育など新たなサービス類型を創設
 ・長時間の保育ニーズへの対応・延長保育の充実 等                              
■質の高い学校教育・保育の実現(幼保一体化の推進)                             
 ・3歳児を中心とした配置基準の改善
 ・病児・病後児保育、休日保育の充実
 ・地域支援や療育支援の充実 
 ・給付の一体化に伴う所要の措置 等
■総合的な子育て支援の充実
 ・子育て支援コーディネーターによる利用支援の充実 等
■放課後児童クラブの充実
■社会的養護の充実  

○ そのための追加所要額は、潜在ニーズを含む保育等の量的拡充と、職員配置の充実などの質の改善を合わせて2015年度で1兆円超と見込まれる。

  • 「社会保障・税一体改革成案」(平成23年6月30日 政府・与党社会保障改革検討本部決定)においては、税制抜本改革によって財源を措置することを前提に、2015年における子ども・子育て分野の追加所要額(公費)は0.7兆円程度(税制抜本改革以外の財源も含めて1兆円超程度の措置を今後検討)とされた。
  • 上記の額に施設整備費は含まれない。(なお、幼稚園における調理室の新設や緊急的な基盤整備(耐震化を含む)等に係る施設整備費補助については引き続き実施する。)
  • 指定制の導入による保育等への多様な事業主体の参入を促進。(質を確保するための基準とあわせて質の改善を図る。)
  • 質の改善に直接つながる職員配置の充実、その他の職員の処遇改善等については、順次、優先順位をつけながら、実現を図る。
  • 職員の定着・確保を図るため、キャリアアップの仕組みと併せた処遇の仕組みを検討することが必要。その際、職員のキャリアアップに資する観点から、幅広い業務経験を可能とするための運営の在り方についても検討を進める。

9 その他

1 実施体制

○ 新システムを一元的に実施する子ども家庭省(仮称)の創設に向けて検討する。

○ なお、国及び地方における実施体制の一元化については、新システムに係る給付の仕組み全般、PDCAサイクルの在り方等に係る議論を踏まえ、検討する。

2 ワーク・ライフ・バランス

○ 基本制度案要綱では、子ども・子育て新システムにおいて、「ワーク・ライフ・バランスの実現」を掲げている。

○ 今後新システム上どのように位置づけるか検討を進める。 


(別紙) 市町村新システム事業計画(仮称)、都道府県新システム事業支援計画(仮称)、国の基本指針(仮称)の記載事項(更に検討を行う)

1 市町村新システム事業計画(仮称):5年ごとに計画を策定

○ 目標値の設定
○ 圏域の設定
○ 需要の見込み
 ・幼児期の学校教育の需要
 ・保育の需要
 ・地域子育て支援の需要
 ・放課後児童クラブの需要 等

○ 見込み量確保のための方策
 ・こども園(仮称)
 ・地域型保育(仮称)
 ・地域子育て支援事業(仮称)
 ・放課後児童クラブ 等

○ 幼保一体化を含む子ども・子育て支援の推進方策
○ 育児休業明けのスムーズな保育利用のための方策
○ 都道府県が行う事業との連携方策 

2 都道府県新システム事業支援計画(仮称)

○ 市町村の業務に関する広域調整
○ 幼保一体化を含む子ども・子育て支援の推進方策
○ 指定施設・事業者に係る情報の開示
○ 人材の確保・資質の向上
○ 都道府県が指定権限を有する給付類型に係る事業
○ 社会的養護に係る事業
○ 障害児の発達支援に着目した専門的な支援に係る事業
※市町村が行う事業との連携方策を盛り込むことが必要 

3 国の基本指針(仮称)

○ 子ども・子育てに関する理念(こども指針(仮称))
○ 提供体制の確保・事業の実施に関する基本的事項
・幼保一体化を含む子ども・子育て支援の推進方策
・市町村間、市町村と都道府県との間の連携
・指定施設・事業者に係る情報の開示
・人材の確保・資質の向上 等

○ 需要を見込むに当たり、参酌すべき標準
・目標値の設定
・需要の見込量
・見込量確保のための方策 等

お問合せ先

初等中等教育局幼児教育課

-- 登録:平成23年09月 --