資料3-1 中高一貫教育制度に関する主な意見等の整理(概要)

1.総論

○ 中高一貫教育制度は、平成9年6月の中央教育審議会第2次答申に基づき、中学校と高等学校の6年間を接続し、6年間の学校生活の中で計画的・継続的な教育課程を展開することにより、生徒の個性や創造性を伸ばすことを目的として、平成11年度から選択的に導入され、平成22年4月現在、402校を数える。平成9年答申の理念に基づき、具体的な成果が上がっている学校が見られる反面、平成9年答申において示された懸念が現実になっていたり、平成9年答申には示されていない論点が課題として挙がったりしているなどの現状も見られる。  

2.特色ある教育の展開について

○ 中高一貫教育校における教育では、様々な試行錯誤をしたり、体験を積み重ねること等を通じて、豊かな学習をし、個性や創造性を伸ばすといった考え方が、制度創設後10年を経た現在、一定程度達成されている。今後とも、各学校がその特色を活かした教育活動を展開していくことが望まれ、

  • 目指す学校像や生徒像の明確化、教育活動の特色化や積極的な広報、
  • 海外留学や国際バカロレア認定校としての取組等、中高一貫教育校の特色ある教育活動の積極的な支援、

 が必要である。

3.教育課程の特例の活用状況とその拡充の必要性について

○ 中高一貫教育校では、様々な試行錯誤をしたり、体験を積み重ねるなどゆとりある学校生活を送るとの中高一貫教育のねらいを達成する観点から、学習指導要領において所要の特例が設けられているが、現状として、その活用は一部の特例に限られ、決して十分とは言えない状況にある。

○ このような中、中高一貫教育校が今後とも特色ある教育を展開することを促すため、教育課程の特例について、更なる拡充を講じる必要があり、具体的には、

  •  「高等学校段階における学校設定教科・科目について卒業に必要な修得単位数に含めることのできる単位数の上限」について36単位までとすること
  • 中学校段階内においても、各学年及び各教科の標準授業時数を確保しつつ、学年間において指導内容の一部を移行し、かつ、当該内容を本来の学年で指導しなくてもよいこととし、その旨を明確化すること

 が必要であるほか、連携型の特例の拡充についても、今後検討が必要である。

4.学力差やいわゆる「中だるみ」への懸念と学習意欲の向上を図る取組について

○ 多くの学校において、生徒間の学力差、あるいは学習意欲の低下(いわゆる「中だるみ」)を課題として捉えるようになってきており、それらをいかに向上させるかが課題となっている。中でも中学校段階と高等学校段階の接続に当たる時期において、色々な行事を取り入れたり、  生徒へ課題や試験を課したりする等の取組が引き続き有効であると考えられる。

○「中だるみ」を単に学習意欲の低下ではなく、まさに中等教育の段階で迎える重要な思春期の心の葛藤や不安定さと捉えるべきとも考えられ、中高一貫教育本来のゆとりのある安定的な学校生活を送る中で、6年間の計画的・継続的な教育を展開するという理念のもとで、生徒間の学力差や学習意欲の低下という課題との整合性をどのように考えていくかが重要な視点である。

5.入学者選抜の在り方と高等学校段階に進む時点での配慮について

○ 公立学校(中等教育学校・併設型中学校)において入学者選抜を行う際には、設置者において、学校の目標、人材育成像、教育内容・方法の特色や、これらに基づきどのような適性を有する生徒を求めるのか、その考え方がどのように選抜方法に反映されているのかを明確にし、広く周知することが最も重要である。また、各学校において入学者選抜の方法を決定するに当たっては、  「受験エリート校化」や「受験競争の低年齢化」といった懸念を招くおそれがないか、  こうした懸念を上回る必要性があるのか、  等を見極める必要がある。その際、地域や学校の状況に配慮することが重要である。
 現状の「適性検査」については、これらを踏まえ、その内容が妥当なものであるかどうかを、各教育委員会において検証していくことが必要である。制度上、「学力検査」を実施しないこととされていることについては、このような状況を踏まえつつ、これを改めるかどうかを判断することが重要である。

○ 連携型においても、学習意欲の低下や学力差については課題意識がある。また、「簡便な入学者選抜」という言葉が、あたかもその高等学校における入学者選抜の難易度や教育内容の程度が低いかのような印象を与えることがあるとの指摘がなされた。

○ 高等学校段階に進む時点では、一部、「他の高等学校等に進学」する例が見られるが、転居等を除き、生徒本人の進路希望を踏まえた上で保護者を交えた面談を行い、他校への進学意思を確認するなど必要な配慮が行われており、この点に関して、特段の課題は認識されていない。

6.心身発達の差異や人間関係の固定化を踏まえた異年齢集団の活動について

○ 中高一貫教育を導入した結果、当初ねらいとしていた学校より多くの学校で異年齢交流による生徒の育成に成果があったとしており、学校運営が困難とする学校は少ない。また、生徒の人間関係の固定化を課題とする学校も決して多くない。

○ 心身発達の差異や人間関係の固定化に対する取組として、スクールカウンセラーの活用や、内進生・外進生、学級、年齢の別を超えた活動、行事や部活動等での交流が行われている。特に、中学校段階から高校生と深く交流することができる異年齢集団の活動については、その成果が学校側からも評価されており、生徒側からの評価でも、中高の6年間において深い人間関係が形成されることについての高い評価が見られる。

7.中高間の教職員の配置・交流と教職員の負担への対応について

○ 教職員の意識改革・指導力の向上に成果を認める一方で、教職員の負担が増えているとする学校が多く、教職員の負担感が、制度導入時には懸念されていなかった新たな課題として生じてきている。これらに関する取組として、例えば、校務分掌の中高一体化やITの導入による負担の軽減等の取組が認められるほか、6か年を見通したシラバスの作成等の取組が広く行われることが有効であると考えられる。

○ また、学校側からは、公立学校においては高等学校・中学校それぞれから背景の異なる人事により赴任することに起因する困難さも指摘されており、例えば職員室を同じにするといった取組や職員研修などを通じて、双方の教員の相互理解の促進に資することが重要であると考えられる。

○ なお、負担感の増加には、中高一貫教育校であることに由来する要因のほかに、「子どもと向き合う時間の確保」の指摘に見られるように、そもそも教職員の超過勤務の常態化等の構造的な背景があることにも留意し、例えば教職員の持っている能力や適性に応じた校務分掌を行うことも重要である。

8.その他の論点

<各地域における中高一貫教育校の整備>

○ 中高一貫教育についての生徒や保護者の期待やニーズが非常に高まっており、それに学校の整備が追いついていないとの意見が出された。  地方公共団体や学校設置者の主体的な判断により、今後とも中高一貫教育校の量的充実が図られることが求められていると考えられる。    

<地域への影響>

○ 中高一貫教育校が生徒や保護者のニーズに応える形で際だった才能や意欲を示す子どもを受け入れ、地域のリーダーを育成するといった教育目標を掲げる一方で、公私のバランスや地域の一般の公立中学校への影響を懸念する声もある。一方、これらの学校についても、進路意識が明確になった時点で、最もふさわしい学校を主体的に選択できるなどの利点を有することには留意が必要である。  

<連携型中高一貫教育校>

○ 連携型はその学校数が近年伸び悩んでいるが、離島など当該地域から離れた高等学校に通学することが難しい地域を中心に、教育委員会や保護者、地域住民が地域ぐるみで連携型中高一貫教育校における教育活動の充実に取り組んでおり、連携型についても、前述した教育課程の特例の拡大などの検討を行うとともに、その取組を支援していくことが必要である。

9.まとめ

○ 中高一貫教育制度は、制度創設時に期待された成果が達成される一方で、制度創設後に生じてきた課題なども見られ、必要な制度の改善や各学校における取組が促されることが必要である。また、単に中高一貫教育制度のみの改善にとどまらず、高等教育との接続の観点も含め、今後の高等学校教育の在り方を検討する中での視点も重要である。

○ 本作業部会としては、今後とも中高一貫教育校の設置が促進され、今後より一層、生徒の個性や想像力を伸ばすとともに、21世紀の社会で活躍できる人材の育成につながるよう、我が国中等教育の多様化・複線化が深まることを期待する。

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初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室

(初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室)

-- 登録:平成23年09月 --