第3 障害者制度改革の基本的方向と今後の進め方

 第2の基本的考え方を踏まえ、障害者制度改革の基本的方向と今後の進め方については次のとおりとする。

1.全体的な当面の進め方

1)平成22年内の進め方

  • 推進会議は、第一次意見を基に、障害者基本法の抜本改正を始め、改革が必要な分野について個別に部会や作業チーム等を設け、分野別課題の検討に着手する。
     また、推進会議は、改革の推進体制、モニタリング機関の在り方、これまで議論していない事項を含め各分野において更に検討すべき課題等の事項について引き続き議論を行い、平成22年秋から年末を目途に、制度改革の重要方針に関する第二次意見を取りまとめる。
  • 政府は、第一次意見を踏まえ、速やかに制度改革の基本的な方向性を決定するとともに、第二次意見を踏まえ、制度改革の重要方針を決定すべきである。

2)平成23年以降の進め方

  • 政府は、制度改革の重要方針に基づき、障害者基本法の抜本改正や制度改革の推進体制等に関する法律案を平成23年の常会に提出すべきである。
  • 推進会議は、改革集中期間(※)内において、改革が必要な分野の制度・施策の在り方や次期障害者基本計画の在り方・方向性等を具体化するため、部会・作業チーム等での議論を踏まえ、必要に応じ政府に対する意見提出を行っていくこととする。
  • 上記の法律案が成立し、施行された後は、3の1)‐2において後述する、推進会議の機能を継承する審議会組織において、検討すべき課題について引き続き議論を行い、必要に応じ政府に対する意見提出等を行っていくべきである。

※「改革集中期間」は、「障がい者制度改革推進本部の設置について」(平成21年12月8日閣議決定)に定める「障害者の制度に係る改革の集中期間」をいう。

2.基礎的な課題における改革の方向性

1)地域で暮らす権利の保障とインクルーシブな社会の構築

 国際障害者年以降、ノーマライゼーションの理念が日本にも紹介され、地域福祉が進んできたことは事実であるが、社会一般とは異なる生活をしている障害者が依然として多く存在している。
 障害に応じたきめ細やかな支援が必要であることはもちろんであるが、それは、限りなく一般社会生活に近い形で提供されなければならず、一般の社会生活とは異なる生活形態を強いられ、社会から分離・排除されてはならない。
 こうした観点から、教育、福祉、医療等における制度設計に当たっては、分離又は排除の傾向や地域間格差を限りなく取り除き、誰もが有する地域で暮らす権利を実現するため、地域移行や地域生活支援の充実を柱に据えた施策を展開していくことが求められる。また、そのために必要な財源を確保し、財政上の措置を講ずるべきである。

2)障害のとらえ方

 障害のとらえ方について世界保健機関(WHO)が提唱した国際障害分類(ICIDH)が、環境との相互作用によるものとする国際生活機能分類(ICF)に改められ、また、障害者権利条約では、社会モデルを踏まえたとらえ方が示されている。
 社会モデルは、障害という属性を有する人をありのままで受け入れようとしない社会の有り様そのものを問うものである。
 こうした障害のとらえ方は、障害者施策全般に及ばなければならず、より根本的には国民全体の意識変革に結びつかなければ、真の共生社会の実現には至らない。

3)障害の定義

 障害のとらえ方は障害の定義に影響を及ぼし、障害の定義は障害の種類、範囲、障害者の総数、障害者施策の内容や対象を画するものとなる。
 医学モデルによると障害の原因となる疾患や症状とその程度によって障害が規定され、それをもとに障害者施策の内容や対象範囲が限定されることになるが、社会モデルによると疾患や症状を有する、あるいは有するものとみなされる人々が負うところの社会的不利の種類やその程度に応じて障害が規定されることになる。
 また、障害の定義は障害者施策の入り口を画する機能を有する疾患や症状の違いにかかわらずサービスを必要としている障害者をあまねく含めることが重要である。
 こうした観点から、国際的水準も踏まえ、障害者基本法やその他の法制における諸定義は見直すことが求められる。

4)差別の定義

 これまでの社会は、障害者に対する社会の異なる取扱は、個人の障害に起因するものとして、平等な社会参加を困難にするものであっても、これを差別であるとは認識してこなかった。しかし、「障害のある人もない人も共に暮らしやすい千葉県づくり条例」制定に向けて行われた千葉県の差別事例の募集や内閣府の調査によっても、きわめて多くの差別事象が存在し、救済されることなく放置されている実態が明らかとなった。
 こうした実態からすると、障害を理由とする差別の定義(合理的配慮を提供しないことを含む。)を明らかにし、新たに策定される障害者差別禁止法制に取り込むだけでなく、既存の法律に散在する差別禁止条項にも障害に基づく差別禁止を盛り込むことが求められる。

5)言語・コミュニケーションの保障

 これまで、手話、点字、要約筆記、指点字等を含めた多様な言語の選択やコミュニケーションの手段を保障することの重要性及び必要性は省みられることが少なかったため、それらの明確な定義を伴う法制度が求められる。

6)虐待のない社会づくり

 障害者に対する虐待は、障害者の尊厳を著しく侵し、その自立及び社会参加に深刻な影響を与えるものである。障害者の人権擁護の観点から、障害者に対する虐待の防止、虐待を受けた障害者に対する救済等を目的とする法制度の構築が求められる。

7)障害の表記

 「障害」の表記については、「障害」のほか、「障がい」「障碍」「しょうがい」等の様々な見解があることを踏まえ、障害者の「者」にあたる部分の表記の在り方も含め、推進会議としては、今後とも、学識経験者等の意見を聴取するとともに、国民各層における議論の動向を見守りつつ、それぞれの考え方を整理するなど、引き続き審議を行う。

8)実態調査

 障害者にかかわる制度設計は、障害者及びその家族の実態に基づいて行うことが求められる。

3.横断的課題における改革の基本的方向と今後の進め方

1)‐1障害者基本法の抜本改正

 障害者基本法は、もともと心身障害者対策基本法を出発点としており、改正後も障害者施策の基本を定めるという枠組みを出るものではない。
 しかし、障害者権利条約で示された障害者の人権の確保のためには、締約国の義務履行を担保する受け皿として、障害者基本法を抜本改正して社会権や自由権を実現するための基本法として位置付け、障害者の人権を確保するための諸施策を規定すべきである。
 具体的には、制度の谷間を生まない包括的な障害の定義、合理的配慮を提供しないことが差別であることを含む差別の定義、手話及びその他の非音声言語が言語であること、障害ゆえに侵されやすい基本的人権などを総則で確認すべきである。
 また、人権の確保、障害のある女性が複合的差別を受けやすい状況、及び、障害のある子どもが自らその権利を確保することに困難を抱えている状況に配慮するといった観点から、既存の諸施策に関する規定を見直すべきである。
 さらに、政治参加や国際協力等の現行法の規定にない施策分野について新たな規定を追加することを検討すべきである。
 また、改革期間終了後、障害者権利条約の実施状況の監視を始めとした次の機能を担う審議会組織をいわゆるモニタリング機関として法的に位置付けることを検討すべきである。

○所掌事務
 障害者施策の推進に係る調査審議、障害者施策の実施状況の監視(モニタリング)等

○権限
 関係各大臣等に対する勧告、資料提出要求等

1)‐2改革集中期間における推進体制

 改革集中期間内における改革の推進等のため、中央障害者施策推進協議会及び推進会議を発展的に改組し、障害当事者、学識経験者等で構成する、次の機能を担う審議会組織を新たに内閣府に設置すべきである。
 なお、改革集中期間終了後に、同組織は、前出のモニタリング機関へと改組されるべきである。

○所掌事務
 障害者制度の集中的な改革の推進、障害者施策の推進に係る調査審議、障害者施策の実施状況の監視等

○権限
 関係各大臣等に対する勧告、資料提出要求等

(今後の進め方)
 推進会議又は作業チームによる検討を経て、平成22年内に取りまとめを予定する第二次意見を踏まえ、政府は平成23年の常会への法案提出を目指すべきである。

2)「障害を理由とする差別の禁止法」(仮称)等の制定

 あらゆる分野における差別類型を明らかにしてこれを包括的に禁止し、また、これらの人権被害を受けた場合の救済等を目的とした「障害を理由とする差別の禁止法」(仮称)(以下「障害者差別禁止法」という。)の制定に向けた検討を進める。検討に当たっては、現在検討中の人権救済制度の検討状況にも留意するものとする。なお、差別禁止の検討に併せて、障害者制度改革の推進に必要な他の関係法律を一括して整備するための法案の検討も行うものとする。
 また、政府は、障害を理由とする差別を防止するため、当該差別に該当するおそれのあるものについて事例収集を行い、その結果を公表すべきである。

(今後の進め方)
 本年夏頃に、推進会議の下に「差別禁止部会」(仮称)を設け、障害者差別禁止法の制定に向けた検討(※)を開始し、平成24年末を目途にその結論を得る。これを受けて、政府は25年の常会への法案提出を目指すべきである。併せて、現在検討中の人権救済制度に関する法律案についても、早急に提出できるよう検討すべきである。

※労働及び雇用、教育、建物利用・交通アクセス等の各分野における合理的配慮の内容等についての検討も行う。

3)「障害者総合福祉法」(仮称)の制定

 現行の障害者自立支援法を廃止して、新たな「障害者総合福祉法」(仮称)を制定する。
 この制定に当たっては、制度の谷間を生まない障害の定義のもとに、すべての障害者が地域において自立した生活を営むことができる制度構築を目指すべきである。具体的には、医学モデルに偏った障害程度区分を見直すとともに応益負担を廃止し、一人一人のニーズに基づいた地域生活支援体系を整備し、最重度であっても、どの地域であっても安心して暮らせる、24時間介助制度を始めとするサービスを提供するものとする。そのためにも、入所者・入院者の地域移行を可能とする仕組みを整備するものとする。

(今後の進め方)
 本年4月から推進会議の下に「総合福祉部会」を設けたところである。当面対応が必要な課題について、同部会において整理された意見を踏まえ、政府は必要な対応策を講ずるべきである。同部会では、推進会議における大枠の議論の枠内で、障害者に係る総合的な福祉法制である「障害者総合福祉法」(仮称)の制定に向けた検討に着手しているところであり、平成23年夏から秋までを目途に結論を得る。これを受けて、政府は、24年の常会への法案提出、25年8月までの施行を目指すべきである。

4.個別分野における基本的方向と今後の進め方

 以下の各個別分野については、推進会議の問題認識を踏まえて改革の集中期間内に必要な対応を図るよう、横断的課題の検討過程や次期障害者基本計画の策定時期等も踏まえた改革の工程表を示していくべきであり、事項ごとに関係府省において検討を進め、所要の期間内に結論を得て、必要な措置を講ずるべきである。

1)労働及び雇用

(推進会議の問題認識)

 障害者が地域において自立した生活を営み、より一層社会参加ができるようにするためには、障害のない人と等しく障害者が職業等を選択でき、多様な働く機会(自営等を含む。)が確保されるとともに、人としての尊厳にふさわしい労働条件や利用可能な環境が整備されることが不可欠である。

【障害者の雇用の促進】
 現状において障害者の雇用状況は、障害者雇用促進法に基づく法定雇用率を達成している企業が全体の半数に満たないなど、厳しい状況にあり、また、障害の種別・程度によって職域や雇用義務の有無、さらには雇用の機会等に格差があるなど、障害者の雇用の促進を図るために大幅な改善が求められている。
 このような観点から、以下を実施すべきである。

  • 現行制度における「障害者」の範囲については、就労の困難さに視点をおく社会モデルの観点に立ち、その認定に係る制度の仕組みを含め見直す方向で検討する。
  • 障害者雇用率制度(法定雇用率の水準、ダブルカウント制、特例子会社制度等)、障害者雇用納付金制度(納付金の額、助成金の対象と期間等)等については、雇用の促進と平等な取扱いという視点からその在り方を検証した上で、積極的差別是正措置としてより実効性のある具体的方策を検討する。
  • 精神障害者は雇用義務の対象となっていないなどの障害種別による雇用義務の格差を是正し、すべての障害者がその種別にかかわらず同程度に雇用機会や労働条件が確保されるよう、必要な措置を講ずる。【厚生労働省】

【福祉的就労に従事する障害者に対する支援】

 福祉的就労に就いている障害者の月額工賃は平均して約一万二千円程度であり、地域で自立した生活を送るには困難な低水準にあるほか、労働法規で定められているような措置の対象とならない場合があるなどの問題がある。このような状況を改善するため、以下を実施すべきである。

  • 福祉的就労の在り方について、労働法規の適用も含め、雇用施策における位置付けを検討するとともに、いわゆる「最低賃金減額特例措置」については、賃金補填等の所得保障に係る新制度との整合性を図った上で、重度障害者の雇用の確保に留意しつつ、当該措置の適用の在り方について検討する。また、就労継続支援や就労移行支援の対象となる「障害者」の範囲や利用者負担等の問題については、総合福祉部会等において検討する。
  • 障害者も障害のない人も対等な立場で一緒に働くことができる形態の職場を設置している者に対し、その運営に要する賃金を含む経費の一部を補填するいわゆる「社会的事業所」について、地方公共団体における先進的な取組を参考にしつつ、その一層の普及がされるよう必要な措置を講ずる。併せて、障害者に多様な就労機会を提供するため、協同労働等の仕組みの構築等必要な措置を講ずる。【厚生労働省】
  • 国等の物品、役務等の調達に関し、障害者就労施設等の受注の機会の増大を図るため、国等が障害者就労施設等から物品等を優先的に調達することも含め、具体的方策を講ずる。【厚生労働省・財務省・総務省】

【職場における合理的配慮や必要な支援の整備】
 障害者が自らの能力を最大限に発揮し、障害のない人と同様に安全かつ健康的な労働環境を確保するためには、障害を理由とする差別が禁止され、職場において必要な合理的配慮や支援がなされる必要がある。
 このような観点から、以下を実施すべきである。

  • 厚生労働省において、現在検討中である障害者雇用促進法の見直しの議論の中で、障害を理由とする差別の禁止、事業主への合理的配慮の義務付け及びその取組を容易にするための助成や技術的支援、合理的配慮に関する労使間の紛争解決手続の整備等の職場における合理的配慮を確保するための具体的方策について、推進会議等の議論も踏まえ引き続き検討を行う。
  • 障害者に対する通勤支援、身体介助、職場介助、コミュニケーション支援(手話通訳、要約筆記等)、ジョブコーチ等の職場における支援の在り方については、既存の助成制度も含め、障害者雇用促進法の見直しの議論及び平成23年末を目途に得られる総合福祉部会等の検討結果を踏まえ、法制化を含めた必要な措置を講ずる。【厚生労働省】

(政府に求める今後の取組に関する意見)

○障害者雇用促進制度における「障害者」の範囲について、就労の困難さに視点を置いて見直すことについて検討し、平成24年度内にその結論を得る。

○障害者雇用率制度について、雇用の促進と平等な取扱いという視点から、いわゆるダブルカウント制度の有効性について平成22年度内に検証するとともに、精神障害者の雇用義務化を図ることを含め、積極的差別是正措置としてより実効性のある具体的方策を検討し、平成24年度内に結論を得る。

○いわゆる福祉的就労の在り方について、労働法規の適用と工賃の水準等を含めて、推進会議の意見を踏まえるとともに、総合福祉部会における議論との整合性を図りつつ検討し、平成23年内にその結論を得る。

○国及び地方公共団体における物品、役務等の調達に関し、適正で効率的な調達の実施という現行制度の考え方の下で、障害者就労施設等に対する発注拡大に努めることとし、調達に際しての評価の在り方等の面から、障害者の雇用・就業の促進に資する具体的方策について必要な検討を行う。

○労働・雇用分野における障害を理由とする差別の禁止、職場における合理的配慮の提供を確保するための措置、これらに関する労使間の紛争解決手続の整備等の具体的方策について検討を行い、平成24年度内を目途にその結論を得る。

○障害者に対する通勤支援、身体介助、職場介助、コミュニケーション支援、ジョブコーチ等の職場における支援の在り方について、平成23年内を目途に得られる総合福祉部会の検討結果等を踏まえ、必要な措置を講ずる。

2)教育

(推進会議の問題認識)

 障害者権利条約においては、あらゆる教育段階において、障害者にとってインクルーシブな教育制度を確保することが必要とされている。
 障害の有無にかかわらず、それぞれの個性の差異と多様性が尊重され、それぞれの人格を認め合う共生社会の構築に向け、学校教育の果たす役割は大きい。人間の多様性を尊重しつつ、精神的・身体的な能力を可能な最大限度まで発達させ、自由な社会に効果的に参加するとの目的の下、障害者が差別を受けることなく、障害のない人と共に生活し、共に学ぶ教育(インクルーシブ教育)を実現することは、互いの多様性を認め合い、尊重する土壌を形成し、障害者のみならず、障害のない人にとっても生きる力を育むことにつながる。
 また、義務教育だけでなく、就学前の教育、高校や大学における教育、就労に向けた職業教育や能力開発のための技術教育、生涯教育等についても、教育の機会均等が保障されなければならない。
 なお、現行の教育基本法の第4条第1項の教育上差別されない例示に「障害」が明記されていないところであり、「障害」が除かれる趣旨ではないものの、今後明文化することも検討すべきである。

【地域における就学と合理的配慮の確保】
 日本における障害者に対する公教育は、特別支援教育によることになっており、就学先や就学形態の決定に当たっては、制度上、保護者への意見聴取の義務はあるものの、本人・保護者の同意を必ずしも前提とせず教育委員会が行う仕組みであり、本人・保護者にとってそれらの決定に当たって自らの希望や選択を法的に保障する仕組みが確保されていない。
 また、特別支援学校は、本人が生活する地域にないことも多く、そのことが幼少の頃から地域社会における同年齢の子どもと育つ生活の機会を失わせたり、通常にはない負担や生活を本人・保護者に求めたり、地域の子どもたちから分離される要因ともなっている。
 障害者が地域の学校に就学し、多大な負担(保護者の付き添いが求められたり、本人が授業やそれ以外の教育活動に参加しにくいまま放置されるなど)を求められることなく、その学校において適切な教育を受けることを保障するためには、教育内容・方法の工夫、学習評価の在り方の見直し、教員の加配、通訳・介助者等の配置、施設・設備の整備、拡大文字・点字等の用意等の必要な合理的配慮と支援が不可欠である。
 このような観点から、以下を実施すべきである。

  • 障害の有無にかかわらず、すべての子どもは地域の小・中学校に就学し、かつ通常の学級に在籍することを原則とし、本人・保護者が望む場合のほか、ろう者、難聴者又は盲ろう者にとって最も適切な言語やコミュニケーションの環境を必要とする場合には、特別支援学校に就学し、又は特別支援学級に在籍することができる制度へと改める。
  • 特別支援学校に就学先を決定する場合及び特別支援学級への在籍を決定する場合や、就学先における必要な合理的配慮及び支援の内容を決定するに当たっては、本人・保護者、学校、学校設置者の三者の合意を義務付ける仕組みとする。また、合意が得られない場合には、インクルーシブ教育を推進する専門家及び障害当事者らによって構成される第三者機関による調整を求めることができる仕組みを設ける。
  • 障害者が小・中学校等(とりわけ通常の学級)に就学した場合に、当該学校が必要な合理的配慮として支援を講ずる。当該学校の設置者は、追加的な教職員配置や施設・設備の整備等の条件整備を行うために計画的に必要な措置を講ずる。

【文部科学省】

【学校教育における多様なコミュニケーション手段の保障】
 障害者の人格、才能及び創造力並びに精神的及び身体的な能力を可能な限り発達させるためには、教育が本人にとって最も適当な言語並びにコミュニケーションの形態及び手段によって行うことが確保されなければならない。
 このような観点から、以下を実施すべきである。

  • 手話・点字・要約筆記等による教育、発達障害、知的障害等の子どもの特性に応じた教育を実現するため、手話に通じたろう者を含む教員や点字に通じた視覚障害者を含む教員、手話通訳者、要約筆記者等の確保や、教員の専門性向上に必要な措置を講ずる。
  • 教育現場において、あらゆる障害の特性に応じたコミュニケーション手段を確保するため、教育方法の工夫・改善等必要な措置を講ずる。

【文部科学省】

(政府に求める今後の取組に関する意見)

○障害のある子どもが障害のない子どもと共に教育を受けるという障害者権利条約のインクルーシブ教育システム構築の理念を踏まえ、体制面、財政面も含めた教育制度の在り方について、平成22年度内に障害者基本法の改正にもかかわる制度改革の基本的方向性についての結論を得るべく検討を行う。

○手話・点字等による教育、発達障害、知的障害等の子どもの特性に応じた教育を実現するため、手話に通じたろう者を含む教員や点字に通じた視覚障害者を含む教員等の確保や、教員の専門性向上のための具体的方策の検討の在り方について、平成24年内を目途にその基本的方向性についての結論を得る。

3)所得保障等

(推進会議の問題認識)

 障害者は、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有しており、障害者が地域で自立した生活を営むためには、一定水準の所得を保障することが不可欠である。

【公的年金制度改革における検討】
 厚生労働省において平成25年常会に法案提出を予定している新たな年金制度創設に向けた議論の中で、障害者が地域において自立した生活を営むために必要な所得保障の在り方について、給付水準と負担、並びに稼働所得との調整の在り方を含めて検討を行うべきである。

【厚生労働省】

【無年金障害者の所得保障】
 国民年金制度の発展過程において生じた特別な事情等により、障害基礎年金の支給対象から除外されている無年金障害者(20歳以前の初診日認定ができない者、国籍条項撤廃時(1982年)に20歳以上の在日外国人障害者等)が、現在多数存在している。
 このような現状を受けて、学生無年金障害者等を福祉的措置によって救済するために設けられた「特別障害給付金」の給付対象範囲の拡大を含め、無年金障害者の困窮状態の改善を図る措置を早急に講ずるべきである。

【厚生労働省】

【住宅の確保】
 障害者が地域において自立した生活をするためには、住居の確保が不可欠であるが、家賃等の負担が大きく、地域での生活が困難になっているという現状がある。
 したがって、住宅確保のための支援の在り方について家賃等の軽減を含め、引き続き総合福祉部会における議論と整合性を図りつつ検討を行うべきである。

【厚生労働省】

(政府に求める今後の取組に関する意見)

○障害者が地域において自立した生活を営むために必要な所得保障の在り方について、給付水準と負担の在り方も含め、平成25年常会への法案提出を予定している公的年金制度の抜本的見直しと併せて検討し、平成24年内を目途にその結論を得る。

○特別障害給付金法の附則において、給付金の支給対象とならなかった在日外国人障害者等に対する福祉的措置の検討規定が設けられており、この法律附則の検討規定に基づき、立法府その他の関係者の議論を踏まえつつ検討する。

○障害者の地域における自立した生活を可能とする観点から、障害者の住宅確保のために必要な支援の在り方について、総合福祉部会における議論との整合性を図りつつ検討し、平成24年内にその結論を得る。

4)医療

(推進会議の問題認識)

 障害者が地域において安心して自立した生活が送れるためには、すべての障害者が障害を理由とする差別なしに可能な限り最高水準の健康を享受できるよう、必要な医療やリハビリテーション等が提供されなければならない。特に精神医療に関しては、医療と福祉が混在し制度上の問題を多く含んでいる精神保健福祉法の抜本的な改正が必要である。

【精神障害者に対する強制入院等の見直し】
 現行制度では、精神障害者に対する措置入院、医療保護入院、裁判所の決定による入院、強制医療介入等については、一定の要件の下で、本人の同意を必要とせずに、強制的な入院・医療措置をとることが可能となっており、障害者権利条約を踏まえ、自由の剥奪という観点から検討すべき問題がある。
 このため、現行の精神障害者に対する強制入院、強制医療介入等について、いわゆる「保護者制度」も含め、見直すべきである。

【厚生労働省】

【地域医療の充実と地域生活への移行】
 精神科病院においては、入院治療の必要がないにもかかわらず、長期入院による自立生活の困難等の問題により入院せざるを得ない、いわゆる「社会的入院」患者が厚生労働省の統計から推定される人数でも約7万人いるといわれている。
 このような現状を改善するため、入院中の精神障害者に対する退院支援の充実を図るべきである。退院支援や地域生活への移行後における医療、生活面からのサポート(ショートステイ等を含む。)の在り方については、総合福祉部会で検討を進める。

【厚生労働省】

【精神医療の一般医療体系への編入】
 現行制度においては、精神疾患のある患者は、臨時応急の場合を除いて、原則として精神病室以外の病室には入院できないこととなっており、このことが精神障害者とって一般医療サービスを受けることを困難にしている。また、精神科医療の現場においては、いわゆる「精神科特例」により一般医療に比して医師や看護師が少ない状況にある。
 このような状況を踏まえ、以下を実施すべきである。

  • 精神医療の一般医療体系への編入の在り方について、総合福祉部会での今後の議論を踏まえ、推進会議において検討を進める。
  • 特に精神医療の現場における医師、看護師が一般医療より少ない現状を改善し、その体制の充実を図るため、「精神科特例」の廃止を含め、具体的な対応策を講ずる。

【厚生労働省】

【医療に係る経済的負担の軽減】
 障害者は健康面における特段の配慮や対応を必要とする場合が多いが、継続的な治療等に要する費用負担が大きいため、必要な医療を受けることが困難な状況がある。
 このような状況を改善するため、障害者がその健康状態を保持し、自立した日常生活等を営むために必要な医療を受けたときに要する費用負担については、本人の負担能力に応じたものとする方向で、総合福祉部会において引き続き検討する。

【厚生労働省】

【地域生活を容易にするための医療の在り方】
 日常生活における医療的ケア(たん吸引、経管栄養等)についても、一部はホームヘルパー等によって行われているが、原則として医師・看護師等のみに限定されているため、単身での在宅生活の途が閉ざされ、また同居の場合その家族にとって重い介助が負担となっている。
 このような状況を改善するため、以下を実施すべきである。

  • たん吸引や経管栄養等の日常生活における医療的ケアについては、その行為者の範囲を介助者等にも広げ、必要な研修や手続の更なる整備等を行う。
  • 障害者や児童に対する受診拒否の実態を把握し、改善のための措置を講ずる。

【厚生労働省】

(政府に求める今後の取組に関する意見)

○精神障害者に対する強制入院、強制医療介入等について、いわゆる「保護者制度」の見直し等も含め、その在り方を検討し、平成24年内を目途にその結論を得る。

○「社会的入院」を解消するため、精神障害者に対する退院支援や地域生活における医療、生活面の支援に係る体制の整備について、総合福祉部会における議論との整合性を図りつつ検討し、平成23年度内にその結論を得る。

○精神科医療現場における医師や看護師等の人員体制の充実のための具体的方策について、総合福祉部会における議論との整合性を図りつつ検討し、平成24年内を目途にその結論を得る。

○自立支援医療の利用者負担について、法律上の規定を応能負担とする方向で検討し、平成23年内にその結論を得る。

○たん吸引や経管栄養等の日常における医療的ケアについて、介助者等による実施ができるようにする方向で検討し、平成22年度内にその結論を得る。

5)障害児支援

(推進会議の問題認識)

 障害児は、一人の子どもとして尊重され、すべての人権、基本的自由を享受すべき観点から、障害児の最善の利益を考慮した施策が講じられる必要がある。

【障害児やその保護者に対する支援】
 相談支援については、障害児の出生直後又は「気になる」・「育てにくい」段階から、医療及び福祉関係者からの適切な情報提供、心理的サポートが不足しており、障害児を含め、その家族に対する十分な支援が提供されていない。
 このような現状を改善するため、以下を実施すべきである。

  • 子どもの障害について、地域の身近なところで第一次的に相談対応を行い、必要に応じて適切な専門機関へとつなぐ仕組みを構築する。
  • 障害児及びその保護者に対する相談や療育等の支援が、障害の種別・特性に応じた言語環境により、かつ地域の身近なところで提供されるよう必要な措置を講ずる。
  • 障害の専門機関の者が地域に出向き、保健センターや地域子育て拠点における保健師、保育士等と連携した効果的な相談支援を提供できるよう、必要な措置を講ずる。
  • 障害児支援においては、家族(特に母親)に過大な負担を強いる現状を十分に配慮し、家族の負担を減らすための具体的な施策を講ずる。

【児童福祉における障害児支援の位置付け】
 障害児支援は、早期に必要な専門的支援が求められる反面、その支援が障害児のみに注目した形でのサービス提供になりがちであるため、その家族への支援や地域社会との関係が置き去りになっている場合がある。また、障害の軽減のみが重視されがちであり、そのことが本人の障害に対する否定的な認識を助長してしまうという問題もある。
 このような現状を改善するため、障害児支援については、家族への子育て支援や地域において一般児童と共に育ち合うことが保障されるよう、一般の児童福祉施策の中で講じられるようにすべきである。

【厚生労働省】

(政府に求める今後の取組に関する意見)

○障害児やその保護者に対する相談や療育等の支援が地域の身近なところで、利用しやすい形で提供されるようにするため、現状の相談支援体制の改善に向けた具体的方策について、総合福祉部会における議論との整合性を図りつつ検討し、平成23年内にその結論を得る。

○障害児に対する支援が、一般施策を踏まえつつ、適切に講じられるようにするための具体的方策について、総合福祉部会における議論との整合性を図りつつ検討し、平成23年内にその結論を得る。

6)虐待防止

(推進会議の問題認識)

 入所施設、家庭内、学校、労働現場、精神科病院等の医療現場等において障害者に対する虐待の例もみられるところであり、虐待の防止やその救済等に関する法整備が急務となっている。立法府においては、障害者の虐待防止に係る制度の法制化に向けた検討がなされているが、今後の法整備に当たっては、政府が行う場合も含め、次の方針に沿って検討されるべきである。

(防止すべき虐待行為)

  • 防止すべき虐待行為は、身体的虐待、精神的虐待、性的虐待、放置、経済的搾取の五つの場合とする。

(虐待行為者の範囲)

  • 障害者の生活場面に日常的に直接かかわりをもつ親族を含む介助者、福祉従事者、事業所等の使用者(従業員を含む。)に加えて、外部からの発見が困難な学校や精神科を始めとする病院等における関係者についても範囲に含める。

(早期発見・通報義務)

  • 虐待の事実を早期に発見できるようにする観点から、障害者の生活に関連する者等に対し、早期発見を促す仕組みとする。
  • 虐待の発見者に対して、救済機関への通報義務を課すとともに、当該通報者の保護のための措置を講ずる。

(救済措置の在り方)

  • 実効性のある救済を行うためには、事実確認、立入検査、一時保護、回復支援等のほか、必要な場合には、強制力を伴った措置を講ずる。

(監視機関の在り方)

  • 障害者権利条約の趣旨を踏まえ、虐待を未然に防止するため、効果的な監視が可能な体制を整える

【厚生労働省・文部科学省】

(政府に求める今後の取組に関する意見)

○障害者に対する虐待防止制度の構築に向け、推進会議の意見を踏まえ、速やかに必要な検討を行う。

7)建物利用・交通アクセス

(推進会議の問題認識)

 障害者が、日常生活又は社会生活において、公共的施設・設備、交通機関等を円滑に利用できるようにすることは、障害者の社会参加を促進する観点から不可欠である。
 平成18年に制定された「高齢者、障害者等の移動の円滑化の促進等に関する法律」(バリアフリー新法)の制定等により、バリアフリーの取組においては、一定の進展はみられるものの、地方より大都市におけるバリアフリー整備が優先されてきたことにより、地方における整備の遅れが顕著となっている。また、障害者が公共交通機関を利用するに当たって、乗車拒否や利用拒否等の不当な対応もみられるところであり、障害者にとって、円滑かつ安全に公共的施設・設備、交通機関等を利用できる環境が、必要な情報提供を含め十分に整っているとはいえない状況がある。
 このような状況を改善するため、以下を実施すべきである。

  • 国土交通省において平成23年常会への法案提出を検討している「交通基本法」(仮称)の中で、移動の権利等について明文化する。
  • 地方における公共施設や交通機関等のバリアフリー整備の遅れを解消するため、整備対象施設の範囲の拡大や時限を付した数値目標の設定等も含め、必要な具体的方策を講ずる。
  • バリアフリー新法に基づく市町村の重点整備地区の基本構想の作成・改定に当たっては、当事者参画の一層の推進を図る。
  • 障害者に対する乗車拒否や施設及び設備の利用拒否の実態を把握した上で、合理的配慮が確保されるようにするため、苦情処理の対応を行う第三者機関の設置等も含め、必要な措置を講ずる。

【国土交通省】

(政府に求める今後の取組に関する意見)

○「交通基本法」(仮称)の制定と関連施策の充実について、推進会議の意見を踏まえ、平成23年常会への法案提出に向け検討する。

○地方における公共施設や交通機関等のバリアフリー整備の促進等のため、整備対象施設の範囲の拡大や数値目標の設定等も含め、必要な具体的方策を検討し、平成22年度内を目途にその結論を得る。

○公共施設や交通機関等における乗車拒否や施設及び設備の利用拒否に関する実態を把握した上で、その結果を踏まえ、障害者差別禁止法の検討と併せて合理的配慮が確保されるための具体的方策について、検討する。

8)情報アクセス・コミュニケーション保障

(推進会議の問題認識)

 障害者は、すべての人権及び基本的自由を完全に享有することを可能とするため、必要な情報及びコミュニケーションが保障される権利を有する。
 障害者も、障害のない人と同様に、表現の自由や知る権利の保障の下で、情報サービスを受ける権利を有しており、自ら必要とする言語及びコミュニケーション手段を選択できるようにするとともに、障害者が円滑に情報を利用し、その意思を表示できるようにすることが不可欠である。
 国及び地方公共団体は、障害者が選択するコミュニケーション手段を使用することができるよう必要な施策を講じなければならない。

【情報バリアフリーの取組】
 日本においては、情報や考えのやりとりに必要なサービス(手話通訳者、要約筆記者、知的障害者の支援者等)を利用できないことや、障害に配慮した情報提供(点字化、字幕を付ける、ルビを振るなど)を受けられないこと等、障害者は、生活の様々な場面で情報へのアクセスやコミュニケーションにおける困難に直面している。
 近年、日本は高度な情報・コミュニケーション技術(ICT)を発展させてきたが、障害者がそれを十分に利用できないという事態も生じている。
 このような状況は、障害者に不利益を負わせるだけでなく、障害者と交流する障害のない人にも不利益を生じさせるものである。
 このような観点から、以下を実施すべきである。

  • 手話付放送、字幕付放送、音声解説、電話リレーサービス等、あらゆる障害の種別・特性に配慮した方法による情報提供が、関係事業者等により日常生活、社会生活、障害者と障害のない人との交流する機会等のあらゆる場面において行われるよう必要な支援を行うとともに、時限付きの数値目標を伴った情報バリアフリー化のための指針の策定を始め、必要な環境整備を図る。

【関係省庁の協力を得て総務省・厚生労働省】

  • 手話通訳者、点訳者、指点字通訳者、触手話通訳者、要約筆記者、知的障害者の支援者等、障害者と障害のない人のコミュニケーションを支援する人材について、その養成の一層の拡充を図るとともに、公的機関への配置をするための必要な措置を講ずる。

【厚生労働省】

【災害時における緊急情報等の提供】
 災害時における緊急情報等は、生命に関わる極めて重要性の高いものであるが、現状では、被害情報や避難情報等の提供が障害者に配慮された形で行われているとは言い難く、市町村によってもその対応にはばらつきがみられる。
 このような状況を改善するため、以下を実施すべきである。

  • 放送事業者等が災害に関する緊急情報等を提供するに当たっては、手話や字幕等の障害者が必要な情報を迅速かつ的確に入手できる方法が講じられるよう、必要な措置を講ずる。

【総務省】

  • 災害等の緊急事態における国・地方公共団体による避難勧告等に当たっては、あらゆる障害の種別・特性に対応した伝達手段が確保されるよう、具体的方策を講ずる。

【総務省・内閣府・厚生労働省】

(政府に求める今後の取組に関する意見)

○障害の特性に配慮した方法による情報提供が行われるよう、関係省庁が連携し、技術的・経済的な実現可能性を踏まえた上で、必要な環境整備の在り方について、障害当事者の参画も得つつ検討し、平成24年内にその結論を得る。

○放送事業者における現状の対応状況、取組の拡充に係る課題等を踏まえ、平成22年度内に、災害に関する緊急情報等の提供について、放送事業者に対する働きかけ等の措置を検討する。

○国・地方公共団体による災害時の緊急連絡について、あらゆる障害の特性に対応した伝達手段が確保されるための具体的な方策の在り方について検討し、平成24年内にその結論を得る。

9)政治参加

(推進会議の問題認識)

 民主政治の健全な発達を期するためには、すべての国民が自由な意思の下で、公明かつ適正な選挙等の実施を確保されることが不可欠である。
 そのため、障害者についても、選挙等に関する情報における「知る権利」の保障の下で、障害のない人と平等に自己の自由な意思により政治参加の機会が実現されるべきである。
 しかしながら、現状では、障害者の選挙権や投票権の保障が、制度の運用において、障害のない人と同等程度に保障されていない問題が多々あり、早急に必要な改善措置を講ずるべきである。

【選挙等に関する情報へのアクセス】
 選挙等に関する情報の提供においては、点字及び音声による選挙公報等の発行が十分にはなされていないことや、政見放送において字幕、手話の付与が十分にはなされていない等、障害者が情報を得ることが困難な状況がある。
 このような状況を改善するため、以下を実施すべきである。

  • 選挙等に関する情報の提供に当たっては、障害の特性に応じて適切な提供方法がとられるよう早急に改善を図る。
  • インターネットを活用した選挙活動の解禁に係る制度が施行される場合には、障害者の便宜に配慮した運用がされるよう必要な措置を講ずる。

【総務省】

【投票所へのアクセス】
 地域によっては、投票所へ移動する際の困難なアクセスや投票所における物理的バリア等により、障害者の投票機会の確保が容易でない状況がある。
 このような状況を改善するため、以下を実施すべきである。

  • 投票所への移動支援の充実や、投票所の設置及び設備に関するバリアフリー化(エレベーターのない2階以上の室への設置を避けること、スロープ設置による段差解消等)等の障害者の便宜に配慮した措置がすべての地域において講じられるようにする。
  • 投票所において、障害者がその障害に応じた必要な合理的配慮や支援を受けられるようにする(知的障害者や文字を書くのが困難な人への人的支援、他の容易な投票方法への変更、筆談や手話通訳による支援等)。

【総務省】

【選挙活動における配慮等】
 障害者による選挙活動への必要な配慮等についても改善を図る必要があるが、選挙制度の在り方については、議会政治の根幹にかかわる問題であり、各党各会派における議論に委ねられるべきものであることから、以下の事項について、立法府においても真摯な検討を期待する。

  • 障害者が選挙活動を行う際の必要な支援の充実が図られるよう、例えば、選挙運動員とは別に手話通訳や移動介助者等の介助者を公的に保障するなどの具体的方策を実施する。

【国会関係】

  • 選挙権、被選挙権に関する成年被後見人の欠格条項については、後見人が付いているかどうかで差別化する人権侵害の側面が強いことから、廃止も含め、その在り方を検討する。

【法務省・総務省・国会関係】

  • 国会中継、国会会議録等の国会審議に関する情報の提供に当たっては、手話・字幕・点字等の媒体で障害の種別・特性に応じた適切な提供方法がとられるよう改善を図る。

【国会関係】

(政府に求める今後の取組に関する意見)

○障害者が選挙情報等に容易にアクセスできるよう、点字及び音声による「選挙のお知らせ版」について、今年執行予定の参議院選挙において全都道府県での配布を目指す。政見放送への字幕・手話の付与等については、関係機関と早急に検討を進め、平成22年度内にその結論を得る。

○投票所への困難なアクセスや投票所の物理的バリア等を除去するための具体的方策として、投票所への移動が困難な選挙人の投票機会の確保に十分配慮するとともに、今年執行予定の参議院選挙において、投票所入り口の段差解消割合が100%(人的介助を含む。)となるよう、市町村選挙管理委員会の取組を促していく。

○インターネットを活用した選挙活動の解禁に係る制度が障害者の便宜に配慮した運用がされるよう必要な措置を講ずる。

10)司法手続

(推進会議の問題認識)

 刑事訴訟手続や民事訴訟手続を始めとする司法手続において、障害者がその手続上の権利が保障され、障害のない人と平等に参加できるようにするためには、障害の特性に応じた手続上の配慮の提供が不可欠である。
 しかしながら、特に、適正手続として保障される刑事訴訟法上の各種の権利行使において、そもそも法制度自体が障害者の存在を想定していないとの指摘があり、また運用の実態においても大きな問題が存在している。さらに、刑事被拘禁施設内における処遇においても、障害特性が理解されていないが故の不利益取扱いについて指摘がある。

【刑事訴訟手続における配慮】
(捜査段階)
 障害の特性に配慮した適切な方法による情報の提供等が確保されていないため、令状主義の趣旨がいかされず、弁護人選任権や黙秘権の告知が告知としての機能を果たしておらず、さらには、取調べの適正を欠くといった事態を招いている場合がある。
 このような現状を改善するため、以下を実施すべきである。

  • 刑事訴訟手続においては、手話通訳者、要約筆記者、知的障害者の支援者等の立ち会い等を含め、障害の特性に応じた情報伝達とコミュニケーション確保の保障がなされるよう必要な措置を講ずる。
  • 捜査段階における適正な手続を担保する観点から、被疑者取調べの全面的な可視化を検討する。

【法務省・警察庁】

(公判段階)
 手続的な保障がないままに自白がなされた場合には、証拠として採用されないような仕組みが検討されるべきである。
 また、障害者が被告人や証人として、質問や尋問を受ける場合には、障害の特性に対応した適切な情報提供やそのために必要な手話通訳者、要約筆記者、知的障害者に対する支援者等の支援がされるよう必要な手続上の措置を講ずるべきである。

【法務省】

【被拘禁中の処遇】
 被拘禁中の障害者の処遇に関して、障害の状況に応じた合理的配慮がなされていない状況がある。
 このような状況を改善するため、被拘禁者の有する外部交通権等の諸権利の行使及び刑務作業を含めた施設内の生活全般について、物的な設備や情報提供におけるアクセス、医療面での配慮等がされるよう必要な措置を講ずるべきである。

【法務省】

【コミュニケーション確保に係る費用】
 司法手続が適正になされるためには、障害を理由とした特別な負担を要することなく、当事者のコミュニケーションが十分に確保されることが不可欠である。
 このような観点から、民事訴訟手続や刑事訴訟手続等における障害者のコミュニケーションの確保のために必要な人的、物理的支援に係る費用については、原則として公的負担とすべきである。

【法務省】

【司法関係者(警察官及び刑務官を含む。)の研修】
 司法関係者の障害についての正しい知識や理解が不足ないし欠如していることによる様々な問題が指摘されており、これを改善するため、障害の特性、手話言語や障害に配慮したコミュニケーション、生活支援の基本などについての理解等を深める研修の一層の充実を図るべきである。

【法務省・警察庁・裁判所関係】

 上記の他、判決が知的障害者に対してなされる場合に本人に理解できる内容や言葉遣いでなされていないことや、それが視覚障害者に対してなされる場合にも点字による判決が交付されないこと等の問題がある。また、裁判傍聴に当たっては、パソコン要約筆記による全体投影や磁気ループの設置がなされていないなど障害者による傍聴に際しての配慮がなされていない。さらに、民事訴訟手続においては、障害者の稼働能力が低く認定される結果、逸失利益の認定が低くおさえられるという指摘がなされており、これらの在り方について裁判所における真摯な検討が望まれる。

【裁判所関係】

(政府に求める今後の取組に関する意見)

○刑事訴訟手続において、あらゆる障害の特性に応じた配慮がされるための具体的方策について検討し、平成24年内を目途にその結論を得る。

○司法関係者(警察官及び刑務官を含む。)に対する障害に関する理解を深める研修について、障害者関係団体の協力を得つつ、その一層の充実を図る。

11)国際協力

(推進会議の問題認識)

 障害者施策における国際協力は、日本が国際社会の一員としての責務として諸外国・地域における障害者の地位の向上に寄与し、併せて国内の障害者施策の推進にも資するものである。こうした観点から、障害当事者の権利を尊重した国際交流の推進に当たっては、障害者の能力構築及び自立生活技能の提供など障害に特化した国際協力事業に加え、一般市民を対象とした国際協力事業についても障害者が受益者となりうるようアクセシビリティの確保等を重視した取組を進めることが重要である。
 日本は、第1次及び第2次「アジア太平洋障害者の十年」(1993‐2002、2003‐2012)の提唱国として、NGO等と協力しつつ、「びわこミレニアム・フレームワーク(BMF)」の採択等に積極的に貢献してきている。
 他方で、現在、政府開発援助大綱においては、社会的弱者の状況を考慮する旨が規定されているのみで、障害者については明確に位置付けられておらず、援助が障害者の地位の向上に資するものになっているとは言いがたい。
 今後、障害者権利条約の締結を見据え、日本の障害者施策分野における国際協力について法律等において明確に位置付けた上で、より一層の推進を図る必要がある。
 このような観点から、以下を実施すべきである。

  • 政府開発援助が障害者の地位の向上とバリアフリー化に資するものとなるよう、政府開発援助大綱において障害者を明確に位置付けることを含め、必要な措置を講ずる。
  • 現行の「アジア太平洋障害者の十年」以降、アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)を中心とした、アジア太平洋における障害分野の国際協力に更に積極的に貢献する。

【外務省】

(政府に求める今後の取組に関する意見)

○障害者の地位の向上に資する政府開発援助の在り方について、政府開発援助大綱への障害者の位置付けの在り方を含め、必要な検討を行い、次期政府開発援助大綱の改定の際にその結論を得る。

○現行の「アジア太平洋障害者の十年」以降のESCAPを中心としたアジア太平洋における障害分野の国際協力について、更に積極的に貢献する。

お問合せ先

初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室

(初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室)

-- 登録:平成22年07月 --