資料5 國定委員意見提出資料

小・中学校の配置・運営等についての一考察
(小・中学校の配置・運営等の在り方に関する作業部会提出意見)

平成20年12月19日
三条市長 國 定 勇 人

 

 本作業部会での意見をとりまとめていくにあたって、今回の会議に残念ながら公務のため出席できませんので、これまでのヒアリングや当市での取組等を踏まえ、まとまりがなく雑駁なものですが、書面にて所感をまとめ提出させていただきます。ご審議の参考にしていただければ幸甚に存じます。


1.    小中学校の適正配置について

(1)適正配置に関する市町村の役割・責任について

 中教審では、国全体の教育水準確保の観点から、市町村の判断の参考となる考え方を示すことが必要であるが、実際に各地域の実情を知り、その地域の将来像を打ち出していくのは市町村の役割である。

 適正配置は市町村が主体となって検討するものであり、そこに全国や都道府県内における教育水準の維持向上の観点から、国や都道府県が支援(参考となる情報提供、補助事業の充実など)をするという基本的な考え方を再確認すべきではないかと思う。
 

(2)国や都道府県の考える適正配置の基準について

 国や都道府県の考える適正配置の基準は、市町村が検討を行う上で、あったほうがよい。
 また、学級数についても、特段変える必要はないのではないか。
 ただし、基準は基準として、実際には各市町村が地域の事情を考慮して判断できるようなものとすべきではないか。
 たしかに地域により様々事情は異なるが、都市部と郡部で基準をわけるというよりは、基本となる基準を参考にしつつ、市町村ごとに判断できるようにした方がよい。
 その上で、市町村あるいは都道府県の境を越えた広域的な連携が必要な場合には、国や都道府県のサポートが求められる場合もあると考えられる。


(3)市長部局と教育委員会の協力について

 
市長部局の考えるまちづくりのビジョンと教育委員会の考える子どもたちの教育方針が両輪となって地域の未来を描けるよう、教育委員会と市長部局が十分に意見交換を行い、協力しながら取りくんでいくことが必要不可欠であると考える。


2.現在行われている学校と地域との関わり方の整理について
 
 
現在、学校と地域との関係においては、PTAをはじめ、放課後子ども教室、放課後児童クラブ(厚労省)、学校支援地域本部事業、学校運営協議会(コミュニティスクール)、学校評議会などの様々な取組がある。
 これらは、縦割り行政の問題もあり、煩雑な実態となっているので、一定の整理が必要ではないかと思う。
 ただし、類似のものは整理すべきであるが、何でも一本化してしまうよりも、複数のメニューから、市町村側で地域の事情に応じて選べたり、段階を追って取り組めたりするとよいのではないか。
 また、国は、単に適正規模の標準を示すのみならず、典型的な日本の学校のモデルを取りまとめて、統廃合やそれに伴う新しい学校のモデルを、学校のスタッフや地域との関わり方も含めて、市町村にサンプルとして示すことも考えられるがどうか。
 市町村では、主体的に参考にするであろうと思う。


3.学校選択制について

 
現在、三条市では学校選択制は行っていないが、様々な事情による通学区域の変更は、柔軟に認めている。
 これらは、地域の事情による部分が大きいため、一律に学校選択制を導入すべきということではなく、市町村の主体的な判断を尊重することが必要ではないかと考える。


4.公共施設としての学校施設への要請について

(1)地域や教育以外の行政ニーズを把握して総合施設化

 
市政全般を見ていると、公共施設は、縦割りの強さを感じる。学校はその最たるものである。今後はこれまで以上に地域の意見を聞いて公共施設を新築したり、増築したり、あるいは廃校舎の活用を行ったりすることが重要なのではないかと考える。
 そこで、ハードである学校建築を行うに際しては、ソフトである教育はもちろん、様々な地域のニーズ、教育以外の行政のニーズを把握して企画することが求められると思う。
 学校施設の中に取り込んでよいと考えられるものとしては、例えば、放課後児童クラブ、放課後子ども教室の事務室、就学前の幼児のための発達教室、老人向けのデイサービスセンター、幼稚園の併設などが考えられる。これらはすでに当市や先進市などに事例がある。


(2)総合施設化のメリット

 
その運営についても、コミュニティスクールを基本に、地域や保護者の活躍の場をつくり、役割分担をしていけば、教師への負担軽減にもつながるのではないか。
 それには、校長のマネジメント能力が必要不可欠になるし、あるいは別に、複合施設の運営に携わる統括者を設定してもよいのではないか。
 やむをえず少人数の学校にならざるを得ない場合でも、教職員以外の方々とのふれあいや、未就学児や卒業生などとのふれあいの機会をつくり、少人数の欠点を補えるのではないか。

(3)地域の人材について
 
なお、「地域が大切」、「地域と連携」などとよく言われるが、地域の人材の多くが老人であることも少なくない。様々な分野でそれぞれ地域の力をボランティア的に活用しようということになると、意欲のある個人に負担が重なることが予想される。したがって、地域の活用が広がるような方策(財源、権限等)を考えていく必要もあるのではないか。


5.統廃合の際に小中連携や小中一貫教育について検討してはどうか

 
当市では、統廃合のための小中一貫教育ではなく、いわゆる「中一ギャップ」の解消など小中一貫教育そのもののメリットに着目して、全市的に実施すべく取り組んでいるが、他の市町村の例では、統廃合を契機に検討されているところも少なくない。
 統廃合により通学距離などのデメリットを背負う代わりに、統廃合をする際に、小学校と中学校を、一体または隣接して建築し、小中連携や小中一貫教育などで付加価値を高め、さらに教育の充実につなげるなどの工夫があるとよいのではないか。


6.統廃合と地域コミュニティとの関係

 
統廃合は、自治体にとって、大変むずかしい課題である。特に、中学校の統廃合には、いかに適正基準があるとはいえ、おのずと限界もあるのではないかと考える。
 統廃合がかかった途端、地域からの猛反発があるが、その根底には、地域コミュニティの「核」を失いたくないという思いがあると考えられる。
 現在は、代表者による検討委員会により基本方針を策定し、住民に説明会を行い、行政で青写真を作りながら進めていくというパターンが一般的であるが、三条市では、統廃合を視野に入れた小中一貫教育の在り方を話し合う際に、住民全員参加型の協議会を模索している。
 自分たちの知らないところで勝手に決められてしまう無力感が地域社会に横溢することは、長期的に見てマイナス面が大きいのではないかと考える。
 したがって、検討の初期の段階から、反対意見をしっかりと受け止めながら、行政が丁寧に議論をリードし、新しい学校のかたちができた後も、地域にしっかり参画していただくコミュニティスクールなどを推進していくことが、地域と学校の活性化になり、ひいては教育内容の充実につながるのではないかと考えている。
 その際には、小学校と中学校が単に人数的に合わさるだけでなく、事務室を共有し、一元化を図ったり、職員室を一体又は連続させて連携しやすく設計したり、連携に必要な教員の加配を行うなどの、効率性を高めつつ、教育効果を高めるような工夫ができるのではないだろうか。


7.通学距離が伸びることについて

 
統廃合によりスクールバスの事業が拡大し、自治体の財政的負担が増すことは、ある程度やむをえないことである。
 また、国が、子どもの負担の目安として、通学距離や乗車時間の線引きを標準として示されることは、市町村にとっても、今後統廃合や学校の区割り等を検討する際の一定の目安になり、ありがたいと思う。
 教育上の課題としては、学校到着後の運動などに加えて、長時間乗車中にできる有効な時間の使い方(例えば、読書や英語のヒアリングマラソンを推奨するなど)について、無駄にならないよう、また子どもの主体性を束縛しないよう、何らかの工夫にもっと力を入れてはどうか。


8.縦割り行政の壁を乗り越える子どもや保護者側からの視点について

 
三条市は、子ども行政の一元化を図り、教育委員会に「子育て支援課」を新設し、保育、母子保健、児童館、虐待防止、放課後支援の行政を加えた。さらに、市役所の窓口の総合化を図った。
 これは、子どもや保護者が切れ目なく一貫した支援が受けられるように、市民の側からの目線で行政を再構築したということである。
 これまでは、市民のためといいながらも、その業務は縦割りとなっていて、わかりづらく、市民が賢く市役所の各課の業務の中から探し、使いこなしていかねばならなかった。
 学校の統廃合や適正規模、また特別な条件を考えるときには、このような子どもや保護者側の視点が不可欠であると思う。


9.学校のあり方の見直しについて

 
上記のコミュニティスクールのような、学校に地域の人材を活用する取組が進むほど、学校の教職員の役割が問い直されてくると考える。この際、学校スタッフの在り方、その資質や養成方法等についても、国立機関等で研究し、一定の見直しをする時期に来ているのではないか。

 

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