初等中等教育分科会(第134回)議事録

1.日時

令和4年1月14日(金曜日)14時00分~16時30分

2.場所

文部科学省(※WEB会議)
(東京都千代田区霞が関3-2-2)

3.議題

  1. 第3次学校安全の推進に関する計画の策定について(答申案)
  2. 令和3年度文部科学省補正予算・令和4年度文部科学省予算案(初等中等教育局関係)及び令和3年度教育委員会における学校の働き方改革のための取組状況調査結果について
  3. 新型コロナウイルス感染症と学校等における学びの保障のための取組等による児童生徒の学習面、心理面等への影響に関する調査研究について
  4. 教育データ利活用ロードマップについて
  5. 総合科学技術・イノベーション会議における審議状況について
  6. 部会の設置について
  7. その他

4.議事録

【荒瀬分科会長】 皆さん、こんにちは。荒瀬でございます。定刻となりましたので、ただいまから第134回中央教育審議会初等中等教育分科会を開催いたします。本日は御多忙の中、御出席いただきまして誠にありがとうございます。
 では、本日の会議開催方式及び資料につきまして、白井教育制度改革室長から御説明をよろしくお願いいたします。

【白井教育制度改革室長】 本会議は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防止するため、Webexを用いたウェブ会議方式での開催とさせていただいております。大変恐れ入りますけれども、御発言時以外はマイクをミュートにしていただくようにお願いいたします。カメラについては、御発言時以外も含め、会議中はオンにしていただけるように、どうぞお願いいたします。いろいろ御不便おかけすることもあると存じますけれども、どうぞ御理解のほど、よろしくお願い申し上げます。
 資料について確認させていただきます。本日の資料は議事次第にございますとおり、資料1-1から資料6-2まで、それから参考資料として、1から3までの資料となってございます。御不明な点等ございましたら、事務局までお申しつけください。

【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。
 それでは、議事に入りたいと思います。本日は議題が6つございます。時間も2時間30分ということで予定をしているところでございます。
 まず、議題1として、第3次学校安全の推進に関する計画の策定について(答申案)。議題2といたしまして、令和3年度文部科学省補正予算・令和4年度文部科学省予算案(初等中等教育局関係)及び令和3年度教育委員会における学校の働き方改革のための取組状況調査結果について。議題3といたしまして、新型コロナウイルス感染症と学校等における学びの保障のための取組等による児童生徒の学習面、心理面等への影響に関する調査研究について。議題4といたしまして、教育データ利活用ロードマップについて。議題5といたしまして、総合科学技術・イノベーション会議における審議状況について。そして、最後、議題6といたしまして、部会の設置についてということになっております。たくさんありますが、どうぞよろしくお願いいたします。
 なお、本日は報道関係者と一般の方向けに、本会議の模様をオンラインにて配信しておりますので、御承知おきいただきたいと思います。
 では、まず、議題1でございます。第3次学校安全の推進に関する計画の策定について(答申案)ということです。前回の本分科会で答申素案を御審議いただきました後、中央教育審議会総会でも審議が行われました。それらの結果を踏まえ、答申案が取りまとまったということでありますので、変更点を中心に御説明をいただいて、再度、御審議いただきたいと思います。答申案に関しましては、本分科会で議論をする最後となります。
 では、御説明をお願いいたします。石塚男女共同参画共生社会学習・安全課長からお願いをいたします。

【石塚男女共同参画共生社会学習・安全課長】 総合教育政策局男女共同参画共生社会学習・安全課長の石塚でございます。
 前回、昨年12月1日に第3次学校安全の推進に関する計画の答申素案について御審議いただいたところです。本日は、前回いただいた御意見、その後の安全部会等における審議を踏まえた答申案について、ポイントを絞って説明させていただきます。資料1-1と資料1-2をお手元に用意いただければと思います。
 まず、資料1-1でございますが、計画の大枠の構成ということで、概要を作っております。1ページ目の総論、そして2ページ、3ページ目の取組方策の5項目という構成につきましては、前回の説明から基本的に変更はございませんので、このような構成のままということでございます。
 続きまして、資料1-2の計画本体に基づいて御説明いたします。前回の分科会におきまして、委員の皆様から学校評価との関係、通学路の安全に関すること、家庭との連携、自治体の防災担当部局との連携に関すること、また、子供が主語になる学びを増やしていくという必要性など、多くの御意見をいただいたところでございます。
 まず、本体の4ページの総論のところでございます。御覧いただきますと、基本的方向性というものを掲げております。2番目の丸のところに、真ん中のほうに、「子供の視点を加えた安全対策を推進する」という記述、子供の視点というところを加えさせていただいております。本文中にも通学路の日常の安全点検ですとか、学校の点検に子供の視点を加えることなども明記しているところでございます。その下、「目指す姿」と記載しておりますけれども、児童生徒が主体的に行動できるような資質・能力を身に付けることなどを目指す姿として、明記しているところでございます。
 その下の、4ページの下から学校経営への学校安全の明確な位置づけというところ、5ページにわたって記載しておりますけど、5ページの主要指標の3ポツ目のところに学校評価に関する内容を加えているところでございます。
 少し飛ばしまして、7ページでございます。学校における人的体制の整備というところが上の半分にございますけれども、3段落目の「国は」というところに、学校安全の中核を担う教職員の位置づけに関する実態を踏まえ、制度上の位置づけを含め、具体的に検討することという記載がございます。そして、その少し下のほうに「なお」とありますけれども、この段落の中で、その整備に当たっては、学校における働き方改革の観点を踏まえてということの記載も加えているところでございます。
 少し飛ばしまして、10ページでございます。家庭、地域等との連携・協働というところで、通学路の安全に関する取組でございます。3段落目、「通学中の」というところですけれども、通学路につきましては、学校だけではなく道路管理者の取組、警察の取組というところが重要でございますので、関係省庁の連携について具体的に記載をしたところでございます。
 続きまして、11ページの真ん中、災害発生時の避難所運営に関する取組というところがございますけれども、ここにつきましても、1段落目のところに平時からの連携を深めること、2段落目、あらかじめ学校施設の避難所としての利用方法を決めていくとなど、自治体との連携の重要性について記載をしているところでございます。
 また、少し飛ばしまして、15ページですけれども、一番下のところに幼児期、特別支援学校における好事例の収集、発信について追記しているところでございます。
 そのほか、安全管理や横断的な取組につきましても、記載の具体化や整理をしたところでございます。
 答申案の御説明につきましては、簡略ですけど、以上になります。現在、この答申案に関するパブリックコメントを実施しているところでございまして、その結果や本日の御審議を踏まえたものにつきまして、次の中央教育審議会総会へ答申案として諮りまして、本年度中の閣議決定に向けて取組を進めていきたいと考えております。
 私からの説明は以上でございます。御審議のほどよろしくお願いいたします。

【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。ただいま御説明いただきました答申案でございますけれども、御質問ございましたらお願いしたいと思います。ただ、先ほど申しましたように、今日は案件がたくさんございまして、特にこの点はということがございましたら、お聞かせいただきたいと思います。いつものように挙手ボタンをよろしくお願いいたします。では、岩本委員、お願いいたします。

【岩本委員】 岩本です。よろしくお願いします。
 1点だけ、表現の問題なんですが、目指す姿の1つ目で、「全ての児童生徒が、自ら適切に判断し、主体的に行動できるよう、安全に関する資質・能力を身に付けること」という表現になっているんですけれども、気になったのが、主体的なのは一番大事ですけど、協働的な部分の視点が、この姿に見えないなと思いました。安全教育の目標のところには、自他の生命尊重を基盤としながら、進んで安全で安心な社会作りに参加し貢献できるような資質・能力の育成を目指すというのが安全教育の目標で書かれている中で、個別最適で、主体的に自ら判断するというところは大事なんですけど、協働的な学びとか協働や自他の他の視点が少し見えにくくなってます。みんなが自分勝手に動くことで全体のリスクが高まるということもありますし、AEDじゃないですけど、他者をお互い助け合いながらみたいなところとかは結構、自他の生命尊重とかに大事な中で、「自ら適切に判断し」という表現の中に主体的な要素が入っていると思うんですけど、その後の行動のところが「主体的」だけでいいんだろうかというところが、表現レベルですので中身とは関係ないと思うんですけど、少し気になったというところです。
 すいません。以上です。

【荒瀬分科会長】 ありがとうございます。なるほど。その辺につきましては、もっと見える形にということですが、また、後ほど、これは渡邉先生のほうからも御意見をいただければと思います。ありがとうございます。
 ほかにいかがでしょうか。よろしいですか。ありがとうございます。前回いろいろおっしゃっていただいたことを相当盛り込んでいただいたことで、あまり御意見が出ないのかも分かりません。本答申案、先ほど申しましたように、また、石塚課長のほうからも御説明がありましたように、中央教育審議会の総会のほうに図られる予定となっております。今、岩本委員のおっしゃったことも含めまして、この答申案の取りまとめに御尽力いただきました、部会長の渡邉先生のほうから御発言をいただければと思います。渡邉委員、よろしくお願いいたします。

【渡邉(正)委員】 部会長を担当しています、渡邉正樹です。
 前回の分科会の御意見を持ち帰りまして、12月22日に最後の第9回学校安全部会を実施いたしました。今回の第3次ですけれども、第1次、第2次から、例えば、学校管理下の事故の数とか、そういった面では改善が見られているわけですけれども、まだ学校差であるとか地域差という問題が指摘されておりまして、それをできるだけ小さくしていこうという視点で改善を図っております。また、各項目の中に評価を明確にし、指標を出して、これから5年間実施するわけですけれども、定期的に評価できる視点を盛り込んでおります。また、これを基にして、子供たちの命を守っていくことが進められていくことを願っております。
 これまでいろいろと御議論いただきありがとうございました。

【荒瀬分科会長】 渡邉先生、ありがとうございました。それでは、先ほど岩本委員のおっしゃったことも踏まえまして、もう一度、また具体に見ていただいて、総会のほうにお出しいただきたいと思います。ありがとうございました。
 それでは、議題の2番目に移ります。令和3年度文部科学省補正予算、令和4年度文部科学省予算案(初等中等教育局関係)と先ほども申しましたが、それと、令和3年度教育委員会における学校の働き方改革のための取組状況調査結果につきまして、事務局、村尾財務課長から御報告をいただきたいと思います。お願いいたします。

【村尾財務課長】 財務課長の村尾でございます。
 まず最初に、令和4年度の文部科学省予算案の概要について、御報告をさせていただきます。資料のまず、1のところですけれども、義務教育費国庫負担金については、後ほど別資料で説明をさせていただきます。そして、働き方改革の推進という観点で、支援スタッフの充実を図っております。教師の負担軽減のための教員業務支援員、いわゆるスクールサポートスタッフですけれども、今年度の39億から45億円の6億円増ということになっております。それから、GIGAスクール構想の関係ですけれども、こちらについては、主に本年度の補正予算と、それから来年度の予算案、これを合わせてお考えをいただくとよろしいかと思っておりますけれども、まずはGIGAスクールの運営支援センターの整備事業、補正予算と合わせまして、1人1台端末環境の円滑な運用を支えるため、これは広域的に、各都道府県等に、全国で言えば、大体200か所程度を想定しておりますけれども、運営支援センターを整備して、組織的、安定的な支援体制をつくっていくというものでございます。
 その下の最後のところに少しございますけれども、学習者用デジタル教科書関係ですけれども、こちらについては、小中学校におけるデジタル教科書を令和6年度の本格的な実施に向けて、実証研究のために配っていくというものでございます。補正予算の分と合わせまして、全小中学校に提供していくということで、予算には計上しているところでございます。この中では英語については全校で、英語以外については8割の小中学校を対象として1教科ということで考えているところでございます。
 右のほうに移りまして、3の幼児教育の関係ですけれども、こちらにつきましては、幼保小架け橋プログラムの開発・推進など、幼児教育スタートプランの実現に向けてということで、補正と来年度予算に所要の額を計上しております。
 4の感染症対策の関係になりますけれども、こちらも補正のほうで305億円ほど積んでおります。これによりまして、例えば、必要な検査ですとか、あるいは保健衛生用品の購入とか、そういったものができるようになっているところでございます。
 次のページをめくっていただきまして、6の教育相談体制の充実、いじめ、不登校、虐待、自殺対策等の推進というところですけれども、一番上のほうにございます、いじめ、不登校対策の総合推進事業の関係では、今回、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーの配置について、過去最高となりますけれども、5億円の増ということになっております。この中ではスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーの重点配置校という数を増やしているところでございます。
 それから、1つ飛んで、3つ目に児童生徒性暴力等防止推進事業というのがございますけれども、これは昨年、新しい法律ができたことを踏まえまして、取組の状況の把握ですとか、あるいは有識者による点検・分析、こういったものについて、必要な予算を計上しているところでございます。
 7番の新しい時代に求められる資質・能力の育成の中では、新時代に対応した高等学校改革の推進、この中では普通科改革支援ということで、来年度から設置ができるようになります学際領域学科ですとか地域社会学科ですとか、そういったものへの支援も盛り込んでいるところでございます。
 右の8番、障害者の学びの推進というところの関係では、医療的ケア看護職員の配置人数を今回、拡充しております。2,400人から、来年度については3,000人、600人増という拡充になっております。
 9番の学びのセーフティネットの構築というところでは、高等学校等の就学支援金につきましては、これまでは早生まれの高校生については、若干不利になるような判定基準になっていたわけですけれども、その部分についての改善を図っているところでございます。
 それから高校生等奨学給付金の関係、これについては、低所得世帯の家庭学習を支える通信費の支援ということでは、要保護児童生徒援助費補助金ですとか、あるいは特別支援教育就学奨励費についても共通しますけれども、ICT端末の持ち帰りなどが増えていることに伴いまして、通信費の相当額も増えているということで、こういったものの増額も図っているところでございます。
 参考資料の1ページを、次はおめくりいただきまして、先ほど後ほど御説明すると申し上げた、義務教育費国庫負担金の関係ですけれども、右のほうにございますように、小学校における35人学級については、来年度は小学校3年生の標準を引き下げることに伴いまして、3,290人の改善の増ということになっておりますけれども、左のほうにございますように、小学校高学年の教科担任制の推進などにつきまして、こちらについては、加配定数ということでございますけれども、合計で1,030人の改善の増ということで計上されているところでございます。このうちの小学校高学年の教科担任制の推進に係る部分は950人ということでございますけれども、これについては、中段のほうにございますように、4年程度かけて段階的に進めるということで、令和4年度は950人ということですけれども、4年間総計すると3,800人程度ということで進めていくこととしているところでございます。また、その下にございますように、中学校の関係につきましても、生徒指導の対応ですとか、あるいは、これは教科担任制とも共通しますけれども、小中一貫・連携教育への支援ということで、合計しますと150人程度の改善増を計上しているところでございます。
 予算関係については、以上でございまして、次に資料2-2、引き続きまして、学校の働き方改革のための取組状況調査、これを毎年実施しておりまして、昨年の末に、令和3年度分について、公表したところでございます。概要について御報告をさせていただきます。これは各教育委員会に対して調査をしたものでございます。
 左のほうにありますように、教職員の勤務実態の現在の状況ということで、4月から8月の在校等時間の状況を把握して、分析をしたものでございます。これは平成30年度以降、データを取っておりますけれども、全体の傾向として申し上げますと、おおむね改善の方向にはあるということでございますけれども、長時間勤務の教職員も依然として多いということでございます。昨年度については、コロナの状況もございましたので、令和元年度との比較で申し上げますと、例えば小学校の5月というところで言いますと、月45時間以下の勤務時間というのが、5月ですと48%程度だったのが、令和3年度については64%、中学校について言えば、33.5%だったものが47%に、45時間以下の割合というのは増えているというデータになっております。
 それから、勤務実態の客観的な把握というところにつきましては、都道府県政令市が100%、市町村についても86%ということになっております。この中で、まだ客観的な把握を、今後していくというところもあるわけですけれども、やる予定がないと言っているところも一部ございますので、この辺りについては、引き続き呼びかけていきたいと考えております。
 それから、令和元年の給特法の改正を踏まえまして、上限指針にのっとった条例規則の整備などについては、多くの自治体で整備済みということでございます。なお、1年単位の変形労働時間制、これは自治体の判断で導入できるというものでございますけれども、令和3年度中に整備をするというところについては、都道府県のうちの4分の1ということになっているところでございます。
 右のほうに移りまして、具体的な取組の実施状況というところで書かせていただいておりますのは、平成31年の中教審の答申で、学校、あるいは教師が担う業務というものについて3分類しておりまして、基本的には、学校以外が担う業務、それと学校の業務だけれども必ずしも教師が担う必要のない業務、教師の業務だけれども負担軽減が可能な業務、3分類しておりますけれども、調査結果の中で見られますのは、支援スタッフを活用していくとか進んでいる項目というのも多いわけですけれども、基本的には学校以外が担う業務というところについては、一層実施を促進していくことも必要というような調査の結果になっているところでございます。
 このほか、事例等についても本体のほうでは掲載しておりますので、また、後ほど御覧いただければと思います。以上でございます。

【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。御意見御質問を頂戴することにいたしますが、こちらのほうに文科省での会場での声が大きいというお声と、声が小さいというお声の両方のお声を頂戴しております。大変お申し訳ありませんが、どっちかだと調整できるんですけども、両方ありますので調整ができませんので、お手元で何とかしていただけると大変有り難いです。申し訳ありません。よろしくお願いいたします。
 それでは、ただいまの御説明に関しまして、御質問、御意見頂戴できればと思います。また、手を挙げるのボタンをよろしくお願いいたします。それでは、小林委員、戸ヶ﨑委員の順でお願いいたします。

【小林委員】 至民中学校の小林でございます。よろしくお願いします。
 文科省の予算についてのところで、9番のところの学びのセーフティネットについてのところでございますが、今、学校では1人1台端末が来まして、タブレットのおかげで本当に第6波の影響で、濃厚接触者とかという生徒が出てきても、授業の様子をお家に配信するということもできて、大変助かっているところです。中教審の会議もそうなんですけど、この先もコロナ以外でも学校に集まることができないという、そんな場合はまた出てくるんじゃないかと思うんですが、一方的な配信じゃなくて、この会議のようにやり取りができる授業の形式に近いような形というのはとても有効です。
 ただ、こういう授業を行いたくても、平等性という部分で、Wi-Fiの環境がお家にないと、なかなかそれを実施することが難しくなります。9番のところにありますように、1つお願いなんですけど、今、例えば福井市ではWi-Fiのない家庭にルーターを貸して、そのルーターを使っていただいているような形になっています。これはコロナ交付金でまかなっていることで、実際にコロナがなくなると、こういうお金がもう出てこないんだと思うんですが、今、低所得世帯とか要保護児童とかに限っての支援ということになっていますが、こうした通信費の支援というのを限られた子たちだけではなくて、本当に要保護児童になっていなくてもWi-Fiの環境が整えられないようなお家に対して、通信費としての補助ができないものかということを、こちらの現場では非常に切に願っているところです。
 今すぐに何というわけではないんですが、現状をお伝えしておきますので、また御検討ください。

【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。では、戸ヶ﨑委員にお願いいたしますが、その後ですが、清原委員、渡辺弘司委員、黒木委員、吉田信解委員の順でお願いいたします。大変申し訳ありませんが、意見は吉田信解委員までということで、お願いをいたします。それからの御発言いただく皆様にお願いをいたしますが、できる限りコンパクトに御発言いただきますように、よろしくお願いいたします。いつも同じようなことばかり申し上げて大変恐縮ですが、よろしくお願いいたします。
 では、戸ヶ﨑委員、お願いいたします。

【戸ヶ﨑委員】 戸田市教育委員会の戸ヶ﨑です。
 まずは、平成4年度の初中局関係財政の重要なトピックとなった「小学校高学年における教科担任制」について述べます。
 令和3年12月3日財務省の財政制度等審議会から出された「令和4年度予算の編成等に関する建議」では、次のような記載があります。
 「日本の小学校教員の年間授業時数は、主要先進国の中ではすでに低水準であること、また、中学校教員の週平均の授業時数は、学校規模で差があることから、定数増を行わなくても、小中連携等の学校間連携や担任間での授業交換、学校間のオンライン授業化の工夫等により、教科担任制を導入できる可能性がある。」
 つまり、「授業時数はさほど多くないし、定数増をせずにも教科担任制はできるはず」という論理です。
 このような流れの中、定数増の予算を確保された村尾課長をはじめ文科省の関係各位に感謝申し上げたいと存じます。そこで、教育関係者が、この予算を最大限に効果的に活用できるよう、改めてしっかり理解しておくべきことは、「小学校の高学年における教科担任制の意義」であろうと思います。今更ですが大きく2つあります。
 ひとつは、専門性の高い教科指導を通じた教育の質の向上、もう一つは、教員の持ちコマ数軽減など学校における働き方改革です。学校現場においては、地域や学校等の実情に応じた取組により、この意義が十分生かされるよう早めの準備を進めておく必要があると思います。
 その際、なぜ高学年で4教科優先なのかということも大切です。それはSTEAM教育の充実等の観点からです。また、中1ギャップの解消や小中学校間の教師の人事交流の促進による一貫したカリキュラム形成などに役立つことも期待をできます。さらに、令和7年度には、高学年の学級担任の持ち授業時数は計算上3.5コマ程度減ることになることも周知しておく必要があると考えております。
 なお、教科担任制による児童生徒はもちろん教員に対する効果についても、実証的な研究を主体的に教育委員会等で取り組んでいく必要もあると思います。
 次に、学校の働き方改革についてです。教員の時間外勤務については、教職員給与特措法に基づいた4%の教職調整額、超勤(いわゆる歯止め)4項目、変形労働時間制などの制度上の議論があり、私も意見があります。今回はそれはさておき、この調査の結論についてのみ申し上げます。
 調査結果では、在校時間や時間外勤務が減ったことは明らかになっても、その要因が明確になっていません。コロナ禍の影響があって、行事や部活動等が精選・縮小したためか、GIGAスクール構想によりICTインフラの充実が図られたからなのかよく分かりません。
 特に本市においても課題ですが、「校務のデジタル化により在校時間等が減った」というのはエピソードベースでは校長会と教育委員会とで共有されていますが、「デジタル化によってどのくらい減少したのか」というエビデンスベースでの検証がありません。今後は時間減少に効果のある客観的な要因を明らかにしていくという必要があると思います。
 また、「これまで学校・教師が担っていた業務についての3つの分類」という考え方が示された、平成31年当時は社会が強い関心を示していました。しかし、その関心と同時に、「教職はブラック」という考え方も同時に持たれてしまったようです。一方で、この3つの分類は、本市においてもコミュニティスクールの学校運営協議会での議題として取り上げられ、学校への支援が議論されるなど大変意義があるものと感じています。
教育の質の担保をしながら、業務改善を着実に進めるということは容易ではありません。そこには、保護者はもちろん地域社会の理解が不可欠です。そのための対策も急務だと思います。また、教職員定数外での人材の投入は、予算面だけではなく活用の仕方等で新たな負担が生じかねません。働き方改革に関しては、自治体や学校の主体性というより、大臣を本部長とする「学校における働き方改革推進本部」等で、より現実的で実効性のある働き方改革を示し、社会全体への理解啓発や予算面を含めたリーダーシップに大いに期待したいと思っています。

【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。では、清原委員、お願いいたします。

【清原委員】 ありがとうございます。清原です。本年もよろしくお願いいたします。
 『令和3年度教育委員会における学校の働き方改革のための取組状況調査』と来年度予算案との関係で幾つか申し上げます。本文の32ページに、「国としての今後の取組が重要」ということで整理をしていただいている論点をヒントに申し上げます。
 1点目、「学校における働き方に係る取組の総合的かつ着実な実施」ということに向けて、来年度は、「小学校における35人学級の計画的整備」や「小学校高学年における教科担任制の推進」等の「教職員定数の改善」などを、予算でもしっかりと推進していくということが示されています。あわせて、現在、中教審では「教員免許更新制度の発展的解消」に向けた検討も行われていますが、1点だけ、さらに御努力をお願いしたいことを提案します。それは、「学校向けの調査の精選、削減等」についてです。働き方改革に関する調査については、コロナ禍のお忙しい中、御協力いただいて、これは学校の環境を子供たちを中心によくするための調査なので、引き続き調査は継続はしていただきたいのですが、その他の調査については、EBPM (Evidence-Based Policy Making)も重要ですが、精査することによって、調査に割く人員というのはさらに工夫で削減できると思います。
 次に、「勤務実態の客観的な把握の推進」ですが、ICカード、タイムカード、パソコンの使用時間の記録等によって客観的な方法で把握している教育委員会の割合は伸びています。けれども、まだ地域差があるようです。特にこうしたICTに関わる分野では、子供たちにはGIGAスクールが進んでいますが、「教員1人1台パソコン」については地域格差があるようですので、この点のきめ細かい助言、支援が必要だと思います。
 「3分類に係る取組等の実施の推進」については、特に「ICTを活用した校務効率化や教員業務支援員の活用」ということが提案されていますが、それは必要です。ただ、配置率とかICTの活用の比率だけではなくて、とりわけスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーについても予算を配慮していただいているようですが、配置はしている、でも、1市町村に1人というのでも配置したということにはなるんですが、人数の把握だけでは不十分で、量的把握から(効果をはかる)質的把握が必要であり、次の調査においては、さらなる現場の実態の把握をお願いしたいと思います。
 そして、「改正給特法を踏まえた対応」についてですが、これはまだまだ都道府県、指定都市において条例で根拠づけているものに沿って、市町村教育委員会の規則による上限方針策定が大いに進んでいるとも言えないようで、まだこれからという状況のようです。是非フォローアップをお願いします。
 最後に、来年度予算で「デジタル教科書に関する実証研究」ということが明確に打ち出されました。(無償の)紙の教科書があるのにデジタル教科書が必要なのかという反応も一部にはあるようですけれども、私たちは堀田先生を中心に、デジタル教科書についても、この間研究を進めていただいてきましたし、学習者用のデジタル教科書の在り方については、GIGAスクール構想を進める上で、正に連携して進めていくべきことです。紙の教科書とデジタル教科書と、それぞれの目的、あるいは機能、さらに課題等について、今回、実証研究の予算を提案していただいておりますので、この中でしっかりと分析して、子供たちの視点で、子供たちには学習効果が上がるように、そして、教員にとっても望ましい教育の担い手として働き方改革にも資するような、そんな取組が提案されていくことを期待しています。
 以上です。どうもありがとうございます。

【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。では、渡辺弘司委員、お願いいたします。

【渡辺(弘)委員】 資料2-2に関しまして、3点、意見を申し上げたいと思います。
 まず、資料2-2の本文の5ページからでございます。勤務実態の把握ということで、時間外勤務の調査をなさっておられるんですけれども、在宅、言い換えると、自宅に持ち帰っての勤務状況の把握は困難なのかという疑問があります。私が把握している限り、学校だけでは業務が終わらず自宅に持ち帰っての業務をなさっている先生を数名知っております。時間外勤務の定義を、自宅では行っていないと文科省はお考えなのかどうかという疑問がございました。
 それから、2番目は12ページの勤務実態の具体の把握方法のところで棒グラフを書かれておられまして、最低というのと、伸び率トップがありまして、伸び率トップが広島県になっております。こういう調査をせっかくなされたのであれば、例えば、広島県が最下位に近いところから大きく改善された理由を分析して、各都道府県の行政関係のところにお伝えいただくのが、より効果的な利用の仕方ではないかと考えました。
 それから、3点目は14ページ以降ですけれども、政令市と、都道府県、市区町村という分類で、教員業務支援委員や支援スタッフの活用状況を示されたデータがございます。ほとんどの項目で、政令市が非常に良い結果を示しており、市区町村の対応が遅れている項目が非常に多いように思います。これは交付金の利用の仕方を自治体に任せているためなのか、それともそれ以外の理由があるのかということを分析していただいて、市区町村のほうが政令市よりも劣っているところを是正するような対応を、是非文科省として考えていただきたいと思いました。
 以上3点でございます。

【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。それでは、黒木委員、お願いいたします。

【黒木委員】 全国町村会の行政委員で宮崎県の西米良村長の黒木でございます。
 まず、教員確保について意見を申し上げたいと思います。資料2-1にありますように、令和4年度の予算案におきまして、小学校高学年における教科担任制の推進、そして35人学級の推進に係る教員確保、教科担当制の推進分として950人、教職員定数は1,030人の増ということが予算化されました。これは私どもが以前からいろいろお願いを申し上げておることでありまして、これによって大きく改善すると考えるため、感謝を申し上げたいと思います。
 その中で、今も御発言がありましたように、共に町村の部におきましても、教育の質の向上や職員の働き方の改革の関係からも極めて重要だと思っておりますが、引き続き、教職員の確保については、多様な観点から御検討を続けていただきますようにお願いをいたします。また、学級担任制のよさも生かしつつ、教育の質の向上、均衡ある確保のための観点からも、地域の実情に応じて柔軟な導入が可能となることも是非御配慮いただきたい。小さな市町村になればなるほど、必ずしもここで議論され、決まったようなことが即実施できるとは言えません。実施する方法を、我々はしっかりと取り組みたいと思いますので、そのような柔軟な対応をお願いいたします。
 以上です。

【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。では、吉田信解委員、お願いいたします。

【吉田(信)委員】 全国市長会社会文教委員長の、埼玉県本庄市長の吉田でございます。
 いろいろと予算確保には御尽力いただいていることに深く敬意を表したいと思います。1点だけなんですけども、実は今回の資料の中に、学校施設の整備についての項目が、特出しの中では見当たらないかと。昨年度に比べて、令和4年度には概算要求の中で、教えていただいた中では、学校施設の複合化に伴う長寿命化改修の補助率の引上げをしっかりやりますとか、単価改定をやりますという話はあったのですが、この中に見当たらないものですから、それが少し心配になったということ、1点でございます。どこかに載っていて、私の勘違いかもしれませんけれども、これは非常に大きなことだと私は思うので、もう少し特出ししてもよかったのかと思っているところでございます。
 私からは以上でございます。

【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。大変申し訳ありません。これで御発言はここまでとさせていただきます。
 それで、今、各委員からいろいろと御指摘、あるいはお尋ねのようなこともあったかと思うんですけれども、村尾課長のほうからおっしゃることがあれば、お願いいたします。

【村尾財務課長】 委員の先生方、多岐にわたる御発言、御支援いただきまして、本当にありがとうございます。小学校の教科担任制につきましては、市長会、町村会からも多大な御支援をいただきましたし、また、戸ヶ﨑教育長にも御尽力をいただきまして、本当にありがとうございます。
 それで、1点、先ほど施設整備の関係について触れられていないということについてですけれども、大変恐縮ですけども、これは初等中等教育関係だけを抜粋したものでございまして、施設についても、吉田委員が市長御指摘のとおり、大変重要な項目について、今回、予算計上させていただいておりますので、何らかの形で、文部科学省の予算全体について、御説明をさせていただければと思っております。
 それから、御指摘の中で、勤務時間の持ち帰りの把握ということについて、渡辺委員からも御指摘ございました。文部科学省としては、持ち帰りを、基本的にはしないという方向性について、従来から指針等で示しているところでございます。その上で、テレワークなどについては、きちんと勤務時間を管理できる形で把握をしていくこととなっており、こういう調査の中でも反映させていくということになろうかと思っております。ただ、今回の調査につきましては、それぞれの自治体がどのように把握をしているかということを集計したものということになっております。
 それから、清原委員から御指摘いただいた中で、教員の1人1台パソコンの整備というお話がございました。これにつきましては、令和3年度の12月に成立した補正予算の中でも、教員の、指導者のパソコンというものについても整備の対象にしているところでございます。
 以上でございます。

【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。また御意見おありかと思いますが、事務局のほうにメール等で頂戴できればと思います。よろしくお願いいたします。
 それでは、議題3に移りたいと思います。新型コロナウイルス感染症と学校等における学びの保障のための取組等による児童、生徒の学習面、心理面等への影響に関する調査、研究についてということでございます。この件に関しましては、以前も初中分科会で御説明いただいて、御議論いただいたところでございます。ただし、時間が十分に取れずに、なかなか御説明のほうも、あるいは御意見のほうもやり取りが必ずしも十分でなかったのではないかと思っております。今日もそれほど時間を取れるわけではございませんが、具体的に取組をしてくださっています中村先生、松岡先生、それから苅谷先生にも御参加いただいております。今日は中村先生のほうから御説明をいただいた後、少し時間を取って質疑応答、意見交換をさせていただければと思っております。では、よろしくお願いいたします。中村先生、どうぞお願いいたします。

【中村東京大学大学院教授】 今、御紹介いただきました、東京大学の中村でございます。時間もございませんので、早速報告に入らせていただきたいと思います。
 本日、私のほかに早稲田の松岡准教授と報告させていただいて、後ほどの質疑のところで、松岡先生、苅谷先生と私の3人でいろいろとお答えできればと思っております。
 既に今、御案内ありましたように、7月の本分科会で御報告させていただきまして、一連の委託調査プロジェクトの第2回目の中間的な報告という形になります。前回は主に教育委員会調査の分析から大卒比率の高い地域でコロナ休校時の対応が進みがちだったという報告をさせていただきました。今回は児童生徒及び保護者調査のデータが出来上がってきておりますので、その分析結果、まだ途中ですけれども、一部抜粋して御紹介させていただくという形になります。
 次のページをお願いいたします。調査の概要は前回も軽く御紹介しましたので、詳細は省略いたしますけれども、メンバーは中央右にありますように、今日の報告の3人のほかに上智大学の相澤先生、大東文化大の香川先生、法政大の多喜先生、浜銀総研の有海先生と共同して進めております。本日、取り扱うのは下段の下のほうにあります、児童生徒、保護者と書いてある調査のデータであります。こちらの調査なんですけれども、2021年の2月に実施をしておりまして、先ほど申しましたように、今、分析途中でありますので、本日は速報値として、諸データをお示しする予定になっております。学校の調査に関しては、間もなく刊行される数理社会学会の『理論と方法』という雑誌があるのですが、そちらのほうで、法政大の多喜先生を中心に解説論文が、もう本当にすぐ近々に出る予定になっております。その論文にもあるんですけども、非常に学校調査のほうはバランスよくデータ収集できておりまして、児童生徒及び保護者の調査のほうを今日、報告いたしますけれども、そちらのデータも、詳細は述べませんけれども、児童生徒の地域ブロック別でありますとか、性別の回収サンプルの分布などを見ますと、いずれも全国の分布と非常に重なっておりまして、大きなゆがみはないデータになっているんじゃないかと現状では判断しております。そういったデータとして御覧いただければと思います。
 では、次のページをお願いいたします。本日の報告では、家庭、学校間の格差の影響を簡単に見ていきたいと思っておりますが、分析の軸といたしまして、親の学歴、それから世帯構成を組み合わせた指標を使って、コロナ禍での社会経済的格差の実態を確認するというところをさせていただきたいと思っております。この設定なんですけれども、コロナの社会的影響というのを考えましたときに、特に雇用に対する影響というのはいろいろとあったと思うんですけども、それらを考えますと、学歴ですとかジェンダー、あるいは世帯の構成といった違いがいろいろな局面に大きな影響を及ぼしていると、そういう認識がありまして、そのような変数をつくって見てみたという次第です。ここのグラフにあります、円グラフの凡例のところ、図の右側にありますところがカテゴリーになるんですけれども、上から5つ目、シングルマザー非大卒となっておりますけど、ここまでの分類を、主に後の分析では使っていきます。注目するべきところはシングルマザーと書いてあるところなんですけれども、母親1人の世帯ということです。こちらは、この図で言いますと、青色と黄色の6.3と2.8となっておりますけれども、10%弱ぐらいの数値になっておりまして、決して無視できるような数字ではありません。ですので、これも分析に組み込んで見てみようと、そういうアイデアになっております。シングルファーザーに関しましては、非常に重要な対象なんですけども、今回は人数が少ないという事情がありまして、あえて示さない形で御報告させていただくことを御了承ください。
 それに追加する形で、在宅人数、御家庭の在宅人数に注目した分類も、報告の最後に少しだけ使いますので、その点も御留意いただければと思います。これは家庭でのフォロー体制を別の視点から見るという意図であります。
 では、次のスライドをお願いいたします。それで、児童生徒の家庭学習のデータを御覧いただきたいんですけど、その前に基本的なポイントを簡単に確認させてください。このスライドは、小学校5年生のデータについて、先ほどの5分類別に世帯収入を見ているものです。御覧いただくとすぐ分かると思うんですけれども、シングルマザー世帯の収入は明らかに低く、また、シングルマザー大卒世帯で23.5%、シングルマザー非大卒世帯では40.1%が年間200万未満となっています。
 次のスライドをお願いいたします。さらに、こうした格差があるという確認は簡単にできるわけですけれども、これがコロナの影響をどのように受けているのかという点を確認したのが、このグラフです。これを御覧いただきますと分かりますように、世帯内に大卒の保護者が少ないほど、コロナ禍の影響を受けて生活が苦しくなったと回答しています。特にシングルマザー非大卒世帯が生活への負の影響を感じている割合が非常に高くなっているのが注目されます。先ほど、前のスライドと合わせて考えますと、コロナ禍は、もともと存在する学歴による世帯間の収入格差を拡大させているんじゃないかということが推測できます。それから、2021年2月の時点で確認された格差の拡大傾向というのは、コロナ禍が長期化するほど、さらに顕在化していくということも推測できるわけです。
 この点は押さえていただいた上で、以下、コロナ休校時の家庭学習関連の項目を御覧いただきたいと思います。では、次のスライドをお願いいたします。まず、見ていただくのは、中学2年生における休校期間中の家庭学習の課題についてであります。多くの学校が休校していた期間というのが2020年の4月から5月頃になりますけれども、この期間中に、学校の課題や宿題を終わらせる際に勉強を手伝ってくれる人がいなかった、左のグラフになります。それから、学校から出された課題、宿題がよく分からなかった、これは右側のグラフになりますけれども、そのような質問に回答した中学2年生の割合です。非大卒の親が多い世帯ほど高く、右に行くほど高くなっており、それからシングルマザー非大卒世帯ではさらに高くなる傾向がここでも見受けられます。これは先ほど予測しましたとおり、もともと厳しい社会環境下に置かれている世帯において、コロナ禍はさらに不利な状況を生み出していたことを示唆しているわけです。
 なお、このデータは小学校5年生のデータでも同じように確認できます。今後、お見せするデータもおおむねそのように、小学校のデータ、中学校のデータを合わせて、実際には見ていっているんですけども、大体同じ傾向が見られるということです。
 次のスライドからは早稲田大の松岡准教授のほうからお願いいたします。

【松岡早稲田大学准教授】 松岡と申します。教育社会学が専門で、主に教育格差について研究しています。よろしくお願い致します。
 現在画面共有されている6ページ目ですが、左側は、休校期間中に中学2年生が学校の宿題をどの程度の頻度で行っていたのかをまとめたものです。「ほぼ毎日した」がグラフの青色の部分で、「週に数日した」がオレンジ色、「しなかった」が灰色で示されています。これらは中学2年生自身の回答に基づいていて、「両親とも大卒」といった家庭の社会経済的地位による5分類は、保護者回答を用いています。
 休校期間中は学校の授業がない分、学校の宿題をすることが期待されるわけですが、家庭の社会経済的地位によって中学2年生が「ほぼ毎日した」割合に差があることが分かります。このような家庭の社会経済的地位による学習行動の差は、資料右側にある「学校の宿題以外の勉強をする」だとより大きいと言えます。「両親とも大卒」層は、「学校の宿題以外の勉強をする」を「ほぼ毎日した」中学2年生の割合が明らかに高く、「シングルマザー非大卒」層では、「しなかった」割合がほかの層と比べて高いことが分かります。私の『教育格差』という新書でも様々なデータを示したのですが、家庭の社会経済的地位によって通塾の有無や大学進学を前提としているかなど様々な差があることが、これらの学習行動格差の背景にあると考えられます。
 7ページは、中学校2年生の回答に基づいて、学習形態別に「臨時休校なし、またはそのような課題(宿題)・指示はなかった」を分母から除外し、課題や指示があった場合について、「きちんとやった」割合を家庭の社会経済的地位の層別に出したものです。画面左側の「配布されたプリントの学習」や「教科書に基づく学習内容の指示」は、画面右側の「デジタル教材やソフトを使った学習」や「インターネットで直接先生とやりとりできる授業」などと比べると、社会経済的地位による差が比較的小さいことが分かります。プリント学習のように何をすべきか明確であると、家庭の社会経済的地位による差がないわけではないものの、相対的にほかの学習形態よりは差が小さかった実態があったと言えます。なお、小学校5年生のデータでも同じような傾向を確認することができます。これらは紙かデジタルかという話ではなく、何をすべきか明確な課題のほうが、中学校2年生が「きちんとやった」と報告する割合の社会経済的な格差が小さいということです。デジタル教材などを通じた学習の導入初期には、家庭の社会経済的地位による格差に対して、より気をつける必要があると考えられます。
 8ページは、休校期間中の学習以外のICT活用頻度を示しています。画面左端の「スマートフォンや携帯電話を使う」を「ほぼ毎日した」中学校2年生の割合に着目すると、「両親とも大卒」層と「両親いずれか大学」層の割合が他層と比べるとやや低いことが分かります。画面右端の「テレビゲーム機や携帯ゲーム機で遊ぶ」も同様です。一方、学習以外の用途であっても、「パソコンやタブレット」を「ほぼ毎日」使っていたのは保護者が大卒の層でした。学校がない期間、家庭の社会経済的地位によって中学2年生のICTの活用頻度に差があったことが分かります。
 9ページに進みます。これは、休校期間中の親の在宅状況とオンライン学習の対応について、中学校2年生と比べて親の手助けがより必要と考えられる小学校5年生の親の回答を用いて作成されたグラフです。ここでは8ページまでとは違い、家庭環境については、親の学歴と休校期間中の在宅状況で6つの層に分類しました。グラフの一番上の「両親とも大卒」で休校期間中に親が1人以上「在宅」層をご覧ください。この層は「休校期間中、オンラインで学習教材を使えるようにした」について「よくあった」割合が45.2%でした。他層と比べると最も高い割合です。たとえば、同じ「両親とも大卒」でも、上から4番目の「両親とも大卒・非在宅」だと、「よくあった」割合が29.8%と、先ほどと同じ両親大卒の「在宅」の層より低いことが分かります。親の学歴とは別に、親が在宅していたかどうかで差があったと言えます。この在宅の有無による差という傾向は「両親いずれか大卒」と「両親とも非大卒」でも見られます。
 先ほどから度々言及しています社会経済的地位とは、社会的、経済的、文化的な要素を総合した概念です。分析の際は、「文化的」は親の学歴、「社会的」は親の職業で主に代理します。このグラフでは、親の学歴やシングルマザー家庭かどうかといった観点とはまた別の側面で、休校期間中の家庭における学習機会格差を照射していることになります。社会経済的地位の「経済的」な要素である世帯収入を統制しても、これらの傾向は確認できます。
 重要なことに、非大卒と比べて、大卒のほうがリモートワークを可能とするホワイトカラーの仕事に就いている傾向があるので、親が在宅していたかどうかは無作為に起きていたわけではありません。10ページ目のグラフをご覧ください。横軸は各小学校の児童の両親大卒家庭割合です。拙著『教育格差』でも様々なデータを示したのですが、98%の児童が公立校に通う小学校であっても、学校間には通学している児童の出身家庭による社会経済的な格差があります。児童の親の大卒割合が高い地域のほうが、大学進学期待割合が高い、学力が高いなどといった傾向があります。
 社会経済的に恵まれている家庭のほうが在宅勤務していた傾向があるので、横軸の各学校の両親大卒家庭割合と、縦軸の各学校の親1人以上在宅家庭割合が重なっていることが分かります。社会経済的に不利な家庭の割合が高い学校では、休校期間中に親が非在宅の割合が高かったことを意味しています。これは、コロナ禍の前から存在する社会経済的な格差が、休校という特殊な時期において、親の在宅・非在宅という形で現れたことになります。ここから指摘できることは、通常の期間であっても教育をする上で不利な状況にある学校が、休校によってより大きな困難を抱えていた可能性です。公立小学校の教師の目線だと、担当している子供の親の大半が在宅していないのであれば、宿題の手助けや進捗状況の確認を親に期待することは難しかったはずです。また、休校期間中にどの程度、家庭で親の学習支援があったかどうかで、休校期間の後の授業の進め方にも差があったと考えられます。
 最後の11ページに分析結果をまとめました。コロナ禍以前から存在する家庭間の社会経済的な格差があることに加え、非大卒層、特にシングルマザー非大卒世帯は収入も低く、コロナによって生活が苦しくなったと感じていました。
 休校期間中の学習についても、家庭の社会経済的地位による格差が見られました。ただ、プリント学習のように何をすべきか明確な宿題については、ほかの学習形態に比べれば、相対的な差が小さかったことも分かりました。また、親学歴に加え、社会経済的地位と関連した親の在宅の有無によっても、家庭におけるICTを利用した学習機会の整備状況に差がありました。これらの結果から、家庭の社会経済的地位による学習機会や学習行動の格差について、より注視する必要があると言えます。
 第6波だけではなく、自然災害などで休校になることは、今後もあり得ることかと思います。どのような学校において社会経済的に困難を抱えている児童生徒の割合が高いのかは既存のデータで分かりますので、文部科学省、都道府県教育委員会、市町村教育委員会、学校といったそれぞれの単位で支援を検討する際、一律ではなく、特に困難を抱えた児童生徒と学校に対して追加的に支援し、それらがどの程度効果があったのかデータを収集し検証して、その次の政策・実践の参考にすることが重要かと思います。
 私からは以上となります。ご清聴ありがとうございました。

【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。中村先生、よろしいでしょうか。
 では、中村先生と、松岡先生のほうから御説明をいただきました。これにつきまして、御質問や御意見等をお願いできればと思います。また、挙手のボタンをどうぞ。
では、八並委員、貞広委員の順でお願いいたします。

【八並委員】 八並です。どうも御発表ありがとうございました。今の御発表で4点ほど、お願いを含めて、お話ししたいと思います。
 第1点は、前回の御発表もそうでしたが、大学研究者以外の方もいらっしゃるので、この委託調査の目的や研究の仮説、あるいは分析モデルといった全体像を先に示しておいていただいて、その上で、今回の発表は、どの部分を解析されて発表しますと、プレゼンの冒頭で示していただけると、より理解が進むかと思います。
 第2点は、最初のプレゼンテーションのタイトルでは、特にコロナ禍で、学びの保障のためによる、児童生徒の学習面、心理面等への影響に関する調査研究となっています。それが今回の発表では、特に保護者の属性、学歴や両親ともそろっているかというデモグラフィックなデータからの分析になっています。学習面はもちろん、後半お話がありましたが、心理面の影響というのは、今は分析の途中で、今回、外されているでしょうか。また、心理面といったときに、どういった分析をされようとしているのか、もし簡単にお話しできるのであればお教えください。
 第3点は、貴重なエビデンスを出されているわけでが、最後のスライドで、最も負荷のかかる層、シングルマザー非大卒世帯なども念頭に置いて、今後のサポートを検討していく必要があると書かれています。もちろん先生方の委託研究では、この結果から何かしら具体的な示唆を出すのがミッションではないかもしれませんが、今回のデータ分析を受けて、今後のサポートというのは具体的に、例えばこういうものがあるのではと、御教示いただけるのであれば御願いします。
 第4点は、保護者の学歴は、恐らく調査票のフェースシートでチェックされていると思います。では、収入に関しては、どのように特定されていますか。調査票の中に収入の選択肢があって、それをチェックしてもらっているということでしょうか。
 以上です。よろしくお願いします。

【荒瀬分科会長】 ありがとうございます。まとめて後からお答えをいただく部分はお答えをいただきたいと思います。貞広委員、よろしくお願いいたします。

【貞広委員】 千葉大学の貞広と申します。中村先生、松岡先生、大変貴重な御報告をいただきまして、ありがとうございます。
 現場も含めて、そういう状況なのではないかと思われていたことを明確なデータで検証していただいた、大変貴重な知見だと受け止めました。また、こちらで先生方に分析いただいた構造というのは、コロナ禍だからこそということではなく、以前から潜在化していた構造が、より明確な形で明示的になったものだとも受け止めております。
 その意味で、今、画面共有されている11枚目のスライドの四角の下のところに御指摘されていることは大変重要だと思っています。これまで我が国においては、どういう社会的、経済的背景や困り感を抱えている子供も、同じ扱い、同じ配分をすることを、公正なり、平等なりということで考えていきました。ただ、もともと配分できるリソースも非常に限られる中で、全ての子供たちを社会的に包摂するということを考えていきますと、最後の御指摘にあるように、一律の支援ではなく特に困難を抱えた層に対するきめ細やかな支援、これはリソースの配分も含めてということであろうかと思いますけれども、それを効果検証も含めて取り組んでいくということが、コロナという問題だけではなく学校教育全体で非常に必要な観点であろうと思います。そういう意味でも、大変貴重な御報告をいただいたと思っております。ありがとうございます。
 以上でございます。

【荒瀬分科会長】 ありがとうございます。ほかにはいかがでしょうか。ありがとうございました。では、清原委員、お願いいたします。

【清原委員】 ありがとうございます。すいません、一言だけ申し上げます。
 大変貴重な研究調査の結果を御説明いただいたんですけれども、今後の御提案に向けて、1点だけ気になることがあります。研究上の分類では、「非大卒のシングルマザー」と表現してしまうことは、当然他の類型と並んで重要な1つの類型だと思うんですけれども、ただ、「非大卒のシングルマザー」が直面している問題というのを共有する重要な結果であると思いつつ、そのところだけが強調されてしまうことによって、シングルマザーの皆さんのおかれている他の状況や要因も含めた説明や分析をしていただかないと、何となく特別に、こういうコロナ禍において問題が生じやすい家庭環境であるかのようになってしまうことはよくないと感じております。多様な視点から見ていただく上で、孤立しやすい、あるいは、なかなか支援を求めにくい層の1つとして類型化し、象徴的に取り上げていくということは重要だと思うのですが、まとめのときにも繰り返し、「シングルマザー非大卒」というのが課題のある類型とされるのではなく、(人数が少なくて分析されていなかったシングルファーザーの課題についても触れるなど)、もっとほかの分析についても淡々と併記しつつ、その上で、「より深い支援と多様な相談体制などが求められる一例」というようにまとめていただいたほうがいいのではないかと思います。強調されていると受け止め過ぎているかもしれませんけれども、私自身も大卒のシングルマザーなものですから、ちょっと一言、御配慮が必要な部分ではないかと思い、発言をさせていただきました。よろしくお願いいたします。

【荒瀬分科会長】 ありがとうございます。ほかにはいかがでしょうか。
 それでは、今、御意見、あるいは御質問も出たわけですけれども、中村先生、松岡先生、それから苅谷先生も含めてでしょうか、お答えいただけることがございましたら、あるいは、御意見いただけることがございましたら、お願いしたいと思います。いかがでしょうか。

【中村東京大学大学院教授】 では、私から答えられることをお答え申し上げたいと思います。いろいろな御意見、あるいはコメントをいただきまして、大変参考になりました。ありがとうございました。
 まず、八並先生から御指摘いただいたポイントで、お答えできるところから言いますと、まず、委託調査の仮説モデルを示すというのは、確かにおっしゃるとこりで、分かりにくい発表になってしまったと反省しております。私どもの計画としましては、最初に駆け足で言ったので、あまりうまく伝えることができなかったんですが、一応パネル調査のような形、2時点なんですけども、今、正に2回目の調査を進めているところなんですけれども、2時点で取ることで、1時点では分からなかった、コロナ禍の影響みたいなものを深く掘り下げたいと、それが強くありました。
 それと同時に、今回、先ほども強調しすぎているとのご意見もあったんですけども、社会経済的な背景の問題、これも教育の調査ではしっかり取ることが大事だということで、しっかり取ると。そことの関連を見るというのが2つ目のポイントで、それから、3つ目は、これはまだやっていないんですけれども、全国学テとか、ほかの文科省が行われている調査と紐づけることで、より立体的な分析ができるんじゃないかというのを考えておりまして、こちらについても今、進行中で、まだ十分にできていないんですけれど、本来でしたら、それを合わせて提示するというのを最終的な目標にしております。
 それから、2つ目の心理面の影響については、私自身が心理的な変数について、まだ十分にいじっていないので、もし感触を持っているようでしたら、あとで松岡先生、苅谷先生から御感想をいただければと思いますけれども、心理的な項目は、当然テーマがそうなっておりますので、いろいろと調査項目に入れております。意識面に関しては、教育の問題ですので学歴変数ですとか、そういったものは心理面にも結構強く関連しているという印象は持っておりますけれども、そういう観点だけじゃなくて、もっと多面的なところから分析したいとは思っております。
 それから、シングルマザー非大卒というところで、具体的なサポート例という話があったんですけれども、これは、ご指摘のあった収入の質問項目とも絡むんですけれども、収入をコントロールした上でも、例えば親の学歴変数が効いてしまったりすることがままあるんです。これは非常によくあることで、我々、普通に調査をやっているときでもよくあるんですけれども、これは何を意味しているかというと、経済的なサポートも重要なんですけれど、それだけじゃ駄目なんだろうというのはすごく思うところで、いろいろと教育的にサポートしたりとか、情報を提供したりとか、あの手この手を使ってのサポートというのが必要になってくるというイメージは持っております。
 ただ、私も教育実践家じゃありませんので、その辺りは具体的なものは持っていませんので、是非皆さんのお力をお借りして、いいアイデアが出ればと思ってデータを出している次第です。
 それから、収入変数はどのように取っているかというと、これは保護者の調査とリンクしているものですから、保護者のほうから世帯収入をカテゴリーで聞いております。それをこちらで合体させて、保護者のデータとリンクする形で集計しているので、それでデータが出てきていると、そういう次第になっております。
 また、貞広先生がおっしゃっていただいたことは、もうそのように読んでいただけると本当に有り難いと思ってお聞きした次第です。
 それから、清原先生が御指摘になったポイントも、強調し過ぎというのは全くおっしゃるとおりかと思うんですけども、一方で、私が教育のいろいろな調査や議論を聞いておりますと、逆に強調されなさ過ぎているような感じを受けているんです。ですので、どうしてもそこを、こちらとしては中和する意味で、こういう情報を初中分科会でも出させていただいたほうがいいのではないかという意識がありました。ただ、あまり強調し過ぎると、先生がおっしゃるような問題がありますので、そこは今後データを出していくときに十分配慮していかなければいけないと思っております。
 そのほか松岡先生、苅谷先生から、もしありましたらお願いします。

【松岡早稲田大学准教授】 苅谷先生からお願いします。

【苅谷オックスフォード大学教授】 せっかくですので、一言発言させていただきます。それぞれにとても貴重なコメントをいただきました。ありがとうございました。
 この調査は、前回のときにも申し上げましたけれども、とにかく走りながらやっている調査で、現在もパネル調査の2回目を正にやっているところなんです。当然、もう少し時間的余裕があれば、もっと深い分析もできたんですけれども、同時に調査をやりながら、こういう機会をいただいて、1回目のパネル、1回目の研究については、まず、ひとまとめをしようということで、今回の発表に至りました。そういった点では幾つか至らないところがあったと思います。
 ただ、これだけ短時間の中で発表させていただくときに、どこかに焦点を絞る必要があります。特に中教審の委員の先生方に、政策を考える際にどういうところにポイントがあるのかということを御理解いただくときには、どうしても類型的なものになってしまう。その中でも、特に今回のパンデミックは、雇用への影響もあるし、特に収入の面でも影響が大きい。それから特に在宅勤務ができる家庭とできない家庭とでは子供の教育への影響も随分違うだろうということで、そこで、今回のようなシングルマザーへの注目ということに1つ特化した発表になったのです。もちろん最終的な報告を出すときには、もう少し気をつけて発表しますし、また、もっと多面的な分析もしていかなければならないと思います。
 ただ、政策を考える際に、これも前回、7月のときに申し上げたんですが、私の印象だと、なかなか文科省レベルの政策レベルでは、学校支援と言ったときに、先ほども貞広先生から御指摘いただいたように、どうしても公平性というのが一律ということと結び付きやすくて、一番ニーズの必要なところにちゃんと資源が届いているのだろうかと、そこのところを実証的なデータでどうしても明らかにして、社会の理解を得ながら、それに対して文科省や、あるいは教育委員会が支援を手厚く、そしてきめ細かにしていくということが大事になってくると思います。そういった点で、私自身、日本での教育の不平等問題をずっと見てきた社会学者からすると、ここは強調しなきゃいけないかなと思った次第です。
 取りあえず、私からは以上です。ありがとうございました。

【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。松岡先生からもございますでしょうか。

【松岡早稲田大学准教授】 ありがとうございます。
 手短に申し上げます。苅谷先生、中村先生を含む教育社会学者が、長い間、研究で明らかにしてきたように、戦後に育った全ての世代において、出身階層によって最終学歴が違うという教育格差はずっと見られてきた現象です。この傾向を変えたいところですが、どのような家庭や学校にどのような困難が集積しているのかということをデータで見ずに政策を打っても効果は期待できません。データは、ある種、不都合な事実を照らしてしまうことにはなると思いますし、表現の仕方等々、ミスリーディングにならないように配慮すべきであることも重々承知しております。その上で、このようなデータが示す実態を、特に中央教育審議会という場で、議論の大前提としていただきたいと願います。
 私からは以上です。

【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。2回にわたって御説明をいただきまして、これは、まだこれから進めていかれるということで、また、お話を伺う機会を是非作っていきたいと思っております。先ほど貞広先生がおっしゃったことが、1つのまとめということにもなるのかもしれませんが、今までそうではないかと思われていたことが、こういう形ではっきりとしてきた、しかもこれが決してコロナということだけが原因ではなくて、もともとそうだったことがさらに顕在化したんだということの御指摘、皆さんも非常に重く受け止めていらっしゃると思っております。本当にありがとうございました。
 これは、また是非お進めいただきまして、さっき中村先生や苅谷先生もお話の中で、松岡先生もそうですけれども、おっしゃっていましたような方向で、是非まとめていただいて、またお示しいただきたいと思います。本日は本当にありがとうございました。

【松岡早稲田大学准教授】 どうもありがとうございました。

【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。それでは、この議題はここまでとさせていただきます。
 では、4つ目の議題に移ります。教育データ利活用ロードマップについてであります。このたび、デジタル庁等の関係省庁と文部科学省が連携して教育データの利活用に向けた論点や方向性が整理されたとのことでありますので、その内容の御説明をお願いしたいと思います。吉田デジタル庁統括官付参事官から御説明をお願いいたします。

【吉田参事官】 デジタル庁の吉田でございます。貴重な機会をいただきまして、ありがとうございます。短い時間ですけれども、1月7日にデジタル庁、それから、先ほど今、御紹介いただいたとおり、文科省、総務省、経産省で一緒になって策定した教育データ利活用のロードマップ、これの概要を御説明させていただきたいと思います。
 最初に若干、言い訳めいた話になりますけれども、このロードマップを1月7日に発表して、報道、あるいはSNS上で若干炎上気味なところがあって、何かというと、国が個人の教育データを一元的に管理するというような誤解を招く形での報道が一部なされて、それがSNSで広がったということもありましたけれども、これは、端的に申し上げまして、全く逆のことがここのロードマップには書いてあって、むしろ一元的に管理するデータベースを構築することは考えていないとか分散管理を基本とする、そういったことが記載されているんですけれども、若干、一部マスコミのミスリードもありまして、こちらのほうは丁寧に、これからも説明することも当然のことながら、データを取り扱うときの難しさ、特に国がそういったことをする、データの利活用の検討を行うときに常に付きまとう話でありますので、襟を正しながら、きちんと検討を進めていきたいと思いますけど、まず、その旨を申し上げさせていただきます。
 資料は、実は2つ付けてございまして、資料4-2のほうが、特に牧島デジタル大臣のほうから、その旨をきちんと読んでくださいという形ではあるんですけれども、決して一元的な国による管理ということではなくて、分散管理の下で、個人情報保護のルールにのっとって、データがきちんと活用される、そういったことを目指しながら検討を進めている旨を申し述べておりますので、これは念のため、参考で付けさせていただきました。
 それでは、ロードマップの全体像を簡単に御説明させていただきたいと思います。資料4-1の1ページ目のところで、今回、先ほど来、4省庁書いてございますけれども、実はこれはデジタル庁を含めて、関係省庁の課長級、皆さんデジタル庁の人間として併任、デジタル庁の職員として発令させていただいて、一緒になって議論を進めてきたものでございます。検討の途中で、アイデアボックスという形で皆さんの御意見を伺ったり、あるいは、堀田先生ですとか戸ヶ﨑教育長をはじめ、有識者の方々の御意見も伺いながら、議論を重ねてきたものです。
 ここは最初の導入のところですけれども、上のほうにデジタイゼーション、デジタライゼーション、デジタルトランスフォーメーションと青地に白で書いてございますけれども、よくあるのがデジタル化という言葉の英語がデジタイゼーションなのか、デジタライゼーションなのかという話で、デジタイゼーションは単なるアナログのデジタル化、いわゆる電子化と言われるところ、教育に関して言うと、正にこれはGIGAスクールでの1人1台端末の配備というところ、こういったツールを整えたという意味では、そういうことなのかと思っています。これからのスコープはデジタライゼーションのところですけれども、ICTをフル活用して、学習者主体の教育への転換、それから教職員が子供たちと向き合える環境にするためにはどうすればいいのか。具体的に教育データ流通、蓄積の全体設計といったものを考えていく必要があるのではないかということで、下のほうは、これはイメージで出しているだけですけれども、様々な階層に分けて、プレーヤー間のデータのやり取りといったものをモデル化して、検討を進めてきたというものでございます。
 次のページをお願いいたします。実際のロードアップの中身を目次的に書いてございますけれども、全体像をこれから考える上でのパーツとして、デジタルの標準化、これは文科省の有識者会議で御議論いただいているものと認識していますけれども、それから、校務のデジタル化も含めた学校、それから自治体などのデータの利活用環境の整備が必要だということが1つ、項目としてございます。それから個人情報、セキュリティの問題ですとか、教育データの利活用のルール・ポリシーの考え方、そういったことを全体網羅的に整理したということで、これから検討する中身を、ここでテーブルの上に整備させていただいたということでございます。
 それで、下のほうにデータ連携による支援が必要な子供への支援の実現という項目がございますけれども、教育以外も含めたこども、いわゆるこれから新しい省庁ができるということも、総理から方針が示されているものと考えてございますけれども、各自治体において、教育、福祉、保育、医療、こういったところの様々なところで、データが実は存在しているんだけれども、それらはばらばらで連携していないと。これを必要に応じて連携するシステム、それから、それを確認できるような体制を整備して、真に支援が必要な子供の発見ですとか、ニーズに応じたプッシュ型の取組に活用できるような、そんなことも考えておりまして、そこの補正予算計上などもしておりますので、ここも文科省を含めた関係省庁と連携しながら施策を推進していくということで、若干、教育からこどもといったところまで広がったスコープになっておりますけれども、全体のロードマップを今回、書いてみたということでございます。
 次のページに移っていただいて、概要は3ページで終わりでございますけれども、ここで、いわゆるロードマップとしての工程表のエッセンスを書かせていただいております。短期、中期、長期ということで、短期は今年中と、それから中期は2025年ぐらいをスコープにして、長期はあと5年ぐらいということで、これは頃というところで、僕らも完全にこれを区切って議論ができている訳ではありませんけれども、短期のところに関しては、まず現場を対象にした調査や手続をオンライン化すると。あるいは校務のデジタル化により、学校の負担を軽減すること。あと、そもそものネットワークなどのインフラ面の阻害要因を解消する、この辺を強調して書いてございます。
 その上で、中期のところに関しては、学習者の端末の日常使い、それから何を学んだかの内容情報、何をしたかの活動情報、こういったものが一定程度標準化されて、学校、自治体間でのデータ連携が実現するということを、これくらいの時間軸で目指していきたいと考えています。
 長期というところに関しては、ここは、先ほどの冒頭の発言にも関係しますけれども、国ではなくて学習者が主体となって、パーソナルデータストア、これは別に教育に限った話ではありませんけど、個人が自らの情報をきちんと管理、活用できるような仕組み、こういったものを活用して、生涯にわたって、当人からのデータを蓄積、活用できるようにするということを目指していきたいと考えておりまして、この時間軸に関しても、関係省庁で議論の上、こういったことを書かせていただいたということでございます。
 あとは具体的な中身になりますので、ごく簡単にかいつまんで御紹介、どんなことを書いているかということを御紹介させていただきますと、12ページまで飛ばしていただいてよろしいでしょうか。ページが飛ぶまでしゃべらせていただきますけれども、教育データと言っても、様々なプレーヤーが様々な使い方をするということでございますので、これをきちんとユースケースとして、どんな使い方をして、どんなメリットがあるのかということを提示して、それごとの議論が必要かと考えておりまして、12ページのところは、学習者の立場からすると、どのような使い方が考えられるのかということで、学習者のほうは、いつでも個に応じて、誰でも、どこでも自分らしい学びができるということで、イメージがしやすいところでございますけれども、例えば、特性に合わせた自分らしい学び方が学べる。あるいは不登校とか病気療養の間でも学べたりというところで、正に去年、中教審でおまとめいただいた答申にある個別最適な学びと協働的な学びを実現するということが、これはイメージしやすいかと思うんですけれども、教師のほうです。
 13ページ目になりますけれども、教師の立場からのイメージということになると、学習指導とか教育関係業務の効率化、いわゆる教師の働き方の負担の軽減といったところにもつながってくると思いますけれども、特に何らかの支援を必要としているけれども気づかれない、いわゆるノーマークの児童、生徒を早期発見すると。あるいは、受け持つ生徒に適した教材が見つかるみたいなところまで、このデータの活用でメリットを感じていただけるようなことを目指していきたいと思います。
 それで、じゃあ具体的にどういう検討をしたのかというと、もう少しまた飛んで、19ページぐらいに、教育データの全体像のイメージというものを示しています。非常にビジーな資料で、これを全部、読んでいただくことは想定していないんですけれども、基本的には、それぞれのプレーヤーがどのタイミングで、どのデータを使うのか。そのデータの項目というものを整理してみたものです。ただ、この整理もまだ完全に網羅的にできているものではなくて、先ほどのユースケースにしたがって、これをさらに精緻にしていく。そのためのデータの標準という作業がこれから必要になってくるということになろうかと思います。
 あと、2つだけトピックを、33ページまで飛ばしていただいてよろしいですか。先ほど清原先生からも教職員端末の御指摘ございましたけれども、いわゆるデータ利活用環境の整備ということで、ネットワーク環境ですとか教職員端末ですとか、こういったところの現在の状況、それから今後の施策の方向性を取りまとめさせていただきました。学校のネットワーク環境、教職員端末については、文科省さんの御尽力で、令和3年度補正予算に計上。高校については、これは既に進められている都道府県も半分弱あると認識していますけども、新型コロナウイルス感染症対策地方創生臨時交付金の活用、これも含めて、これから国として都道府県の整備状況をフォローアップして、必要な取組を促すということを既に閣議決定として記載させていただいておりまして、これを受けて、文部科学省の局長通知が年末に出て、今週、1月11日に文科大臣と、それからデジタル大臣の連名での共同メッセージを自治体に向けて発出されたということですので、高校の1人1台端末というところも、是非環境整備がなされていくことを期待したいと思います。
 最後に、これはまた飛んで申し訳ないんですが、47ページを出していただけますでしょうか。先ほどの長期のところにも関係するところでございますけれども、デジタル社会を見据えた教育ということで、右側の教育DX後の世界、目指す姿、例えば学校は児童生徒が学校で集うこと、学校では、そこで集うことでしかできない学びを行う、それ以外は本人に適切な場所で学ぶですとか、あるいは教員側からすると、生徒の学びがより進むように学びをデザインして支えるとともに、様々な人材のリソースをコーディネートする役割といったものを求められるですとか、本人の特性、理解度に応じて、同じ年齢でも児童、生徒ごとに学ぶ内容、順序が異なる、こんなイメージで教育が展開されるということを提示させていただきました。これも関係各所、それから有識者の方々の御意見も踏まえて、ある種、仮説でございますけれども提示させていただいております。これを踏まえた具体的な施策は、これから正に皆様の今回の審議会を含めた様々な場で御議論いただければ、我々、勉強させていただきたいと思います。
 このロードマップ自体、まだまだ先ほどのデータの構造も含めてでございますけれども、これから深掘りしなければいけない、まだこれは全体像を示したということでございますので、ここに関して、これからがスタートだということでございますので、関係省庁で検討することはもちろんですけれども、学校現場の先生方、それから保護者、教育委員会を含む地方公共団体、研究機関、事業者、子供たち、様々な意見を聞きながら、施策を推進していきたいと思っておりますので、そういったことで、今回、御紹介させていただいた次第でございます。御清聴ありがとうございました。

【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。
 それでは、ただいまの御説明に対しての御意見、御質問をいただきたいんですけれども、まず、堀田先生からよろしくお願いいたします。

【堀田分科会長代理】 東北大学の堀田です。吉田参事官、御説明ありがとうございました。
 私も、このロードマップには、とりわけ文部科学省の専門家会議の座長をしておりましたので、その部分について関わってまいりました。誤解もされ、炎上するということは、いろいろな意見が出てきて、懸念があればそうならないようにこれから軌道修正していけばいいわけです。でも公表されなければ、いつまでも何らかの標準化は行われないわけで、私は大変意味のある公表だったのではないかと思っております。
 教育データの利活用にはミクロとマクロの観点があります。ミクロに言えば、今、この問題が解けているとか解けていないとか、どのぐらい自分はやってきたかみたいなことを子供自身が見て、リフレクションして、次なる学びを進めていく、そういう個別最適な学びにはもちろん有効ですし、それを支援する教師から見れば、ここはもう1回説明が必要かなとか、この子には励ましが必要かなとか、そういういつもやっていることをデータドリブンでしっかりと確認しながらやっていくという、指導の高度化という観点もあります。また、学校の欠席とか早退の理由、こういう情報も自分のクラス、自分の学年は何とか把握できても、他の学年の子とどう関係して、実は一緒に休んでいるみたいなことなんかはなかなか分かりにくいわけで、こういうのは何らかのシステムによる支援があったほうが指導しやすいと、そういう現実があります。
 一方で、マクロに見れば、学校全体でいろいろ取り組んでいることの努力がちゃんと、例えば学力に反映されているのかどうかとか、あるいは今のようなことも全国学力・学習状況調査のみで判定することはあまりにもタイミングが少ないので、それを日常的にリフレクションできるようにするということ、あるいは、例えば、ある教科書のある単元が一体いつ頃から始まって、いつ頃に終わる傾向があるのかみたいなことが、全国で同じ教科書を使っている自治体ごとにどう分布しているのかみたいなことすら私たちはまだ分かりません。こういうデータが分かってくれば、例えば学習指導要領の改訂とか教科書改訂には非常に有効なデータになろうかと思います。ただし、それぞれのデータがどこに保存されるかとか、どんな形式で保存されるのかが不統一だと、そういう分析はできないわけです。今回のロードマップは、そういうことを標準化していこうという取組だと考えております。
 問題はユースケースと言われる部分について、まだ十分に議論できていない、これは私も含めてですけど、だと思います。ミクロのデータ、さっきどこが解けたとかと解けないとか分かっていないとかということが、長い人生ずっと付きまとうようなユースケースがないようにしなきゃいけないわけです。それはもちろんのことです。ですから、データをどう利活用するかというユースケースをしっかりと考えていく、これからのデジタル教科書やデジタル教材が広く使われるようになるタイミングでこういうことが公表され、これから柔軟な見直しをしながら、より精緻にしていくということは非常に意味があることだと思っております。
 長くなりました。以上です。

【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。ほかにございますでしょうか。市川裕二委員、お願いいたします。それから、その後、戸ヶ﨑委員、八並委員の順でお願いをいたします。

【市川(裕)委員】 全国特別支援学校長会の市川でございます。
 48ページにあります、デジタル社会を見据えた教育で、各施策の横串の比較ということで、特別支援教育の考え方をほかの分野においても参考とすべきと書いてあるんですが、特別支援教育において、いつも問題になるのが障害のあるお子さん、もしくは支援のお子さんが一生涯を通じて、教育、医療、福祉、保険等との連携が重要になるということを言われております。その中で、表にあります個別の指導計画とか個別の教育支援計画を作成してきているわけでございますが、これは紙ベースのことなんです。デジタル社会ということで考えたときのデジタルの活用というと、私は他の分野において参考とするということも必要でしょうけども、特別支援教育の今、言ったような一生涯を通じての他機関との連携とかお子さんの支援をつないでいくということで、デジタル化ということが非常に有効になると思っておりますので、その分野も進めていただきたいと強く思っております。
 そのときに、いろいろな省庁が連携をするという話を聞いておりましたが、厚生労働省さんはどこまでこれに関わってくれるのかということを教えていただければ有り難いと思っています。
 以上です。

【荒瀬分科会長】 ありがとうございます。御質問につきましては、後からまとめてお願いしたいと思います。それでは、戸ヶ﨑委員、お願いいたします。

【戸ヶ﨑委員】 戸ヶ﨑です。
 ロードマップが示されたことは、大変意義があると思います。GIGAスクール構想により、学校現場もICTインフラ等が整備され、スタディログをはじめとして様々なデータを蓄積できる環境ができつつあります。各自治体、教育委員会、学校は、このロードマップを参考にして、先ほども強調されておりましたが、国では行わないこと、つまり様々なデータを実際にどのように一元的に蓄積していくのか、それを客観的根拠に基づいた指導改善や適切な評価、また、プッシュ型支援などに、得られたデータをどのようにフィードバックしていくのかということについて、受身ではなく、主体的に今から考えていく必要があると思います。
 現在、本市においても、この教育データの利活用等について、今、お話にあった特別支援教育や生徒指導なども含めて、日々独自の模索を続けています。課題山積ですが、当面する「初期課題」として感じられているのは、大きく次の3点です。
 1つは、教師や児童生徒がデータを活用しやすくなるように、ダッシュボード等の工夫が必要です。また、データの整備を進めるためには、各教師や子供が自己のために活用でき、その有用性を感じられるデータであるとことが、必要ではないかと思います。二つ目は、教育委員会、学校、教師、それぞれが様々なデータを正しく読み取れる最低限のデータリテラシーの育成が必要だと思います。また、その結果を主体的に教育活動に生かしていこうという意識をより浸透させて、学校現場から得られる気づき、言うなればスモールデータといったものをEBPMの中に反映していくということが何よりも今後、大切だと思っています。
 最後ですが、データは、過去のものですので、そういった過去のデータを現在とか未来に生かすために解釈して、新たな策を講じることができる、「データと現場のつなぎ役」が自治体や教育委員会に今後は必要だと感じています。
 以上でございます。

【荒瀬分科会長】 ありがとうございます。では、八並委員、お願いいたします。

【八並委員】 日本生徒指導学会会長の八並です。
 第1点目は、今の御発表のスライドで言うと、9ページや19ページに関わります。19ページの教育データの全体像の中に、生徒指導関連のデータがありません。例えば、いじめや不登校、それから、特別支援教育のデータ、キャリア教育あるいは進路指導データ、このような重要で、切れ目のないサポートを要する事項の記載がありません。これだけ見ると、生徒指導、特別支援教育、キャリア教育のデータは、ここでは扱わないように見えてしまいます。図を少し今後、検討されて、工夫していただけないかと思います。
 第2点目は、切れ目のないサポートについてです。不登校の支援や特別支援教育でも言われていますが、これは個人情報を学校間で受け渡すわけですから、個人情報保護法上、本当に問題ないのでしょうか。例えば、不登校の小学生がいたとして、その子が6年生から中1に上がったときに、中学校側に不登校のデータを渡すとなったときに、本当にシステム上だけでやっていいのでしょうか。本人や保護者からの同意をとる必要はないのでしょうか。個人情報保護法が、一部改正されているので、その辺はどうなのか気になるところです。
 第3点目は、個人情報を扱うので、情報の管理や保存、特に漏えい防止を、もっと強調していく必要があるのではないでしょうか。既にタブレットのパスワードが甘く、いじめが起きました。こうしたデジタル情報というのは、非常に便利ですが、その反面、運用ではハイリスクなわけです。
 第4点目は、用語の印象の問題です。私だけかもしれませんが、例えば流通という言葉を使われています。蓄積はいいと思いますが、流通という用語は、ビジネス用語あるいは運輸系の用語だと思います。流通と言われると、あたかも個人情報を教育以外の分野に流していく、目的外使用されるような印象を与えます。したがって、利活用といったときに、教育の世界のクローズされた中での利活用だけでなく、それ以外にも使われるような印象を与えないでしょうか。流通という言葉は、変えたほうがいいのではと思います。
 関連して、今、御発表の中でプレーヤーという言葉を使われました。例えば、学校現場の小中学校や、これを扱う教育委員会は、プレーヤーという捉え方になるんでしょうか。プレーヤーという用語は、英訳ではいろいろな捉え方がありますが、個人情報の中の超機密情報を扱う中で、使われていいのでしょうか。違和感を感じるのは、私だけかもしれませんが。
 以上です。すいません、長くなりました。

【荒瀬分科会長】 ありがとうございます。では、この件、最後に今村委員、お願いをいたします。すいません、今村委員と田中委員と、2人手を挙げていらっしゃいますので、今村委員、田中委員の順で。

【今村委員】 聞こえますでしょうか。

【荒瀬分科会長】 今村さん、ちょっと待ってください。今村委員、田中委員、杉本委員まで御発言をいただきます。よろしいでしょうか。では、今村委員、お願いいたします。

【今村委員】 ありがとうございます。今のデジタル庁さんのロードマップの話を聞いて、いろいろと感じることがありましたので発言をさせていただきます。
 まず、数日前の年明けの牧島大臣の御発言について、本当に勘違いだったと思うんですけれども、物すごくヤフトピとかいろいろなところで炎上しているところをたくさんお見受けして、本当に大切な部分が伝わっていないということを心配していたんですけれども、あのような、どこでどのように共有されているものなのか分からないんですけれども、一元管理なんて言っていないんだということを、きちっと表明されることで誤解を解いていくということは、本当にロードマップを推進していく上でとても重要なことだと思って聞いていました。
 私は、この議論、これをやっていく意味は、先ほど貞広先生がおっしゃっていた平等とは何かということに尽きる、重要な問いを進める重要な取組だと思っています。私はNPOを経営しているんですけれども、比較的困難な状態にある子供や家庭と出会うことが非常に多いです。この審議会に様々関わらせていただく中で、特に初中分科会なのでということもあるかもしれませんが、ここで議論されることがどうしても供給者目線、政策の供給者目線で、こういうことをすべきという議論になるんですけれども、個々の一人一人と関わっている立場から見ると、本当にこのやり方で、子供たちにクオリティの高い、困っている状況を救える政策に繋がっていくのだろうか、何年後に届くのか、そのつなぎをどうすればいいのか、どう発言していけばいいのか悩むことがよくあります。ただ、デジタルを活用することで、様々なデータがローコストに、学校とか自治体を超えて簡単に共有できるようになるということは、例えば、自治体ごとだと少数しかいない合理的配慮が必要な子供の各論とか、合理的配慮が必要な子供に対する支援の合理的な支援の方法とかも共有していくことができることになるということは、デジタル活用の最も重要な点だと思っています。なので、供給者目線で議論するのではなくて、利益者の視点に立ったときにどんな学びを届けるか、どんなスピードで、子供たちがどんな空間で学ぶことができるかということのアウトカムのほうに目線を置いた政策検討をするためにも、デジタルを活用したロードマップはきちっと推進していっていただきたいと思っていて、すごく期待をしているところです。
 2つ目なんですけれども、先ほどの議論においても、初中分科会なので、様々な未曽有の災害が起きたり、今回のコロナのようなことが起きたときに、学校での子供たちに対する教育の機会が乏しくなってしまうというか、力が弱くなってしまうと、家庭の能力、家庭の力によって子供たちが受けられる教育の質が変わってしまうということは、私も現場で感じているところでした。そのときにプレーヤーは本当に行政や学校だけなのか、私たち民間のNPO、また、コミュニティスクールなど、サブシステムとなって受け入れる、本来はみんなで受け止めることができるはずのシステムがワークしていないということが、どっちかというと、そっちの方がこの国の大きな問題なんじゃないかなと。パソコンが配られないといって学校に怒るとか、それは分かるんだけれども、でも自分たちの力で、どうすれば困っている子を見つけて助けに行けるんだろうというところのほうをもっと促進していく施策も重要なんじゃないかと思っています。
 そういう意味で、デジタルのロードマップを推進していく上で、情報やデータみたいなものは、個人情報のこともあるし、民間団体はどこまで安心なのかというところはあると思うんですけれども、困っている子供たちにきちっと支援を届ける、教育を届けるためにも、民間や市民も何らか活用していけるようなものの方角でプレーヤーになっていけるように、公教育を支えるプレーヤーになっていけるようなものになったらいいなと思っていました。東日本大震災が起きたときに、文部科学省さんが国だけではもうできないからということで、民間の支援したい人たちが立候補して、文部科学省のホームページのほうに支援をしたい人と支援が欲しいをマッチングしていくような機能のサービスを作ってくれたんですけれども、例えば、あのような形でやっていくとか、様々な民間や一般の人たちもプレーヤーにしていけるようなこともこの議論の延長にしていただけると、子供たちにとって救いがたくさん届くんじゃないかなと思って聞いていました。
 私からは以上です。

【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。では、田中委員、お願いいたします。

【田中委員】 青少年自立援助センターの田中です。私からも御発表、御報告を伺ったときに、期待というかを込めて、私たちが日々させていただいている指導が必要な子供について、このように活用されていくととてもいいなと思ったところだったので、48ページ……。

【荒瀬分科会長】 田中委員、申し訳ありません。ちょっとお待ちください。田中委員、どうぞ、お願いいたします。

【田中委員】 このまま大丈夫でしょうか。

【荒瀬分科会長】 多分大丈夫だと思います。

【田中委員】
 48ページに記載がありましたけれども、日本語指導が必要な児童、生徒が公立の学校の中で増加傾向にあるということで、各自治体だったり、学校でもかなり取組は進んできているところかと思いますが、一番大きな課題感としては、誰がちゃんと教えられるのかという担い手不足がすごく大きいなと感じています。子どもの日本語教育体制は自治体や学校間の格差が大きく、外国人が少ない地域ではまとまった対応が難しいというところはたびたび指摘されている点です。ただ、語学教育は専門分野というところもあって、そうした特性から同時方向型やオンデマンド型など、日本語が教えられる人がいない地域へ、ITを活用して確実に教育機会を届けていく必要があるところだと思っています。学校の先生方が限られた時間で日本語指導についての研修を受けたとしても、それぞれの多様な背景を持つ子供たちに適切な日本語教育が実施できるかというと、それだけでは難しい部分があると感じます。
 子供の日本語教育は専門家である日本語教師にとっても、何が正解なのか、適切なのかというところを試行錯誤していくような状況でもあります。年齢や母語の状況等によっても、最適なカリキュラムが一体何であるのかというところが、かなり異なってくる部分があり、大人たちが試行錯誤をして適切な教育を子供たちに届けられない間、言葉の分からない子供たちが教科学習が進められないなどによって学習の空白がとても大きくなったり、健全な心身の発達に影響を受けるようなケースも珍しくないという状況です。デジタルを活用することで、現場の中で日々、日本語が分からない子供たちと接している専門支援者の匠の技をデータとして可視化をしたり、エビデンスに基づいた子どもの日本語教育の実施を実現するために、各地で行われている実践データを分析していくという意味でも、私は非常にこの動きに期待をしているところです。

【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。杉本委員、お願いいたします。それから松木委員も手を挙げていらっしゃるので、松木委員までお願いしますが、大変申し訳ありません。あとまだ2つ議題がございまして、手短によろしくお願いいたします。

【杉本委員】 ありがとうございます。簡潔にお話しいたします。
 デジタル教材も充実して、個別最適な学びにつながるというところは大変すばらしいところだと思います。しかし、一元的にデータを管理するということで利便性を高めるということは、一方で機密性が低下するということにつながりかねないと思います。八並委員も発言しておりましたが、個人情報の管理、取扱などということについても懸念を感じるところがございます。情報については、生涯にわたってという部分で、継続的に蓄積するものもあれば、例えば指導要録の内容ですと、5年あるいは20年と保存期限が明確に決められているものもあります。利活用の範囲、並びに、データの保存期限というのを明確に設定した上でシステムを設計していかないと、データを集めたはいいけれども、それが漏えいしてしまったということにつながらないように、十分注意をして進めていっていただけたらと思います。
 私からは以上です。

【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。では、最後に松木委員、お願いいたします。

【松木委員】 ありがとうございます。松木です。
 デジタル化した社会、その後の教育の姿が今回、このイメージを見せていただいて本当にリアルに感じ取ることができました。ありがとうございます。その一方で、不安も少し大きくなりました。デジタル化が進んでいく中で、協働の学びの在り方ってどうなっていくんだろうかということ、もちろんデジタルを活用することによって、協働の学びもより高度化していくことができると思うんですが、一方で、どこからでも学べる、誰とでも学べる、いつでも学べる、自分らしく学べる、これはそのとおり必要なことだと思う反面、それは個に視点が当たった話でもあって、社会の課題に対して、どうやったら共有ビジョンが作れるんだろうかと、どうやったら合意形成能力を培っていけるんだろうか、どうやったら行動に起こす能力を培っていけるんだろうか、もちろんそれにデジタルが絡んでくることは十分分かりつつも、そういった能力を培うための取組というのをどうしていったらいいのかということが、大きな課題として私の中では浮かんできました。
 特に、OECDのラーニングコンパスなんかを見たときに、新たな価値を創造する力に加えて、責任ある行動を取る力とか対立やジレンマ、それを克服していく力ということが求められていると思います。こういったものも、デジタル化の中で個に焦点が当たりつつも、どこかで社会の課題に対して、みんなで共有ビジョンを作り出していく力、こういった部分にどうやってデジタルが絡んでくるのかということを、これからも真剣に論議していかなきゃいけないと改めて思いました。ありがとうございます。

【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。幾つも御意見をいただきました。
 今村委員もおっしゃいましたけれども、私たちは決して単に供給者目線で見ているわけじゃないので、初中分科会として、本当に一人一人に視点を置いて考えていくというといろいろな課題があるといいますか、合意をしていかなければ、あるいは解いていかなければならないものがたくさんあるということが改めて見えたわけでありますが、今出た中で、今の時点で吉田参事官からお答えいただけることを、大変申し訳ありませんが簡潔にお答えいただければ大変有り難いです。よろしくお願いいたします。

【吉田参事官】 ありがとうございます。ごく簡潔に、皆様本当に御意見ありがとうございます。こういった御意見をいただけるだけでも、取りまとめをして発表させていただいてよかったと思っております。当然、勉強させていただくことは様々ありますけれども、そういった中で、きちんと正すべきところは正して柔軟に見直しをしていきたいと思います。
 特に不登校、それからいじめといったところへの活用、それから特別支援教育、さらには日本語教育、こういったところでのニーズというものを非常に具体的にいただきました。ここから先、よく勉強して、そういったところでどういうデータ連携ができるのか、先ほどデータの全体像も、実は小さい字でデータ項目は全てを網羅しているわけではないということを書いてございまして、全体を包括的に捉えていかないといけないと思っておりますので、よく勉強して議論していき、かつ厚労省を含めて、文科省、厚労省では検討は進んでいると承知しておりますけれども、その連携に、デジタル庁としても混ぜてもらいながら進めていきたいと思っております。
 個人情報の扱いについての懸念も示していただきました。ここは、よくよく気をつけていかないといけないと思っておりまして、先ほど牧島大臣の会見のところでも、個人情報保護法に従ったということは当然強調してございますし、特に教育に対して言いますと、個人情報保護条例との関係もございますので、よくそういったところ、国としての考え方を示しながら、きちんとルールを確認して進めていくべきだと考えてございます。ちなみに、このロードマップの検討には、個人情報保護委員会の事務局のメンバーも入ってございますので、そういったところもきちんと議論していきたいと思います。
 先ほども若干、また一元的にということもおっしゃっていただいたこともございましたけれども、言葉遣いを含めて、きちんと皆様に伝わるように、これからもよく練っていきたいと思いますので、是非御指導のほどよろしくお願いいたします。
 ひとまず、コメントさせていただきました。

【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。この件、今後もいろいろと議論を重ねていきたいと思います。
 それでは、一旦、ここでおしまいといたしまして、議題の5番目にいきたいと思います。議題の5番目は内閣府科学技術・イノベーション推進事務局の審議官、合田審議官から御説明いただきますが、合田審議官が4時半までしか時間が取れないと最初からお聞きしております。この件、合田審議官から御説明をいただいて、今回は御説明を聞くということだけで終わりたいと思います。
 では、合田審議官、大変お待たせいたしました。申し訳ありません。お願いいたします。

【合田審議官】 内閣府科学技術・イノベーション推進事務局審議官の合田でございます。
 それでは、資料5に基づきまして、今回、質疑の時間がなかったことは大変残念でございますけれども、御説明をさせていただきたいと思っております。私どもの総合科学技術・イノベーション会議は、昨年3月の閣議決定された第6期の基本計画に基づきまして、昨年1月の中央教育審議会答申で指摘された同調圧力と成果主義からの脱却の観点から、学びの転換について議論すべく、本分科会からも荒瀬分科会長のほかお四方の先生方に御参加いただきまして、教育・人材ワーキンググループを設置し、昨夏より6回開催したところでございます。昨年も一度、本分科会にお時間をいただき、状況の説明をさせていただいたところでございますが、昨年12月24日に中間まとめがまとめられましたので、御報告を申し上げたいと存じます。
 4ページ目を御覧いただければと思います。この政策パッケージの位置づけでございますが、正に今、新課程に向けて、全国100万人の先生方に取り組んでいただいているところでございます。CSTIにおける議論というのは前回も申し上げたように、全く異なる文脈で新しい改革が議論され、進行しているものではありません。今後5年という時間軸の中で子供たちの学習環境をどのように整えていくのか、各府省を超えて政府全体としてどのように政策を展開していくのか、そのロードマップの作成を目指すということが目的でございます。
 次の5ページを御覧いただきたいと思います。6年前にCSTIがSociety 5.0という概念を打ち出しました。その基本的な考え方は、一人一人の多様な幸せが実現できる社会ということでございます。総合科学技術イノベーション会議とお聞きになりますと、1人のイノベーターが社会を引っ張れば、どんなに格差や分断が生じてもいいとお受け取りになるかもしれませんが、well-being、一人一人の多様な幸せが実現できてこそ、科学技術やイノベーションの意味があると。イノベーションは経済的価値だけではなくて、多様性や公正や個人の尊厳といった社会的な価値にも関わるものだと考えているところでございます。
 次のページを御覧ください。これも前回申し上げましたけれども、2017年の学習指導要領の改訂から次の改訂までちょうど今、折り返し地点でございます。先ほどデジタル庁からも御説明ございましたけれども、政府の体制自体が大きく変わる中で、今後5年を見通して、府省、あるいは局課で方向性を共有、文脈を共有し、縦割りを排することが必要だと考えてございます。
 8ページを御覧いただければと思います。以下、簡単に御説明を申し上げますけれども、社会の構造的な変化では、とにかくDXでございます。DXで思考も変えていかなきゃいけないというのが8ページでございます。
 9ページは、先ほど来、お話がございます子供たちを取り巻く環境の変化、フィルターバブルや学校外での同調圧力の背景にもなってございます。
 10ページを御覧ください。これも前回、御説明申し上げましたが、左下から不登校・不登校傾向のお子さん、特異な才能のあるお子さん、発達障害の困難さに向き合っているお子さん、家庭の文化資本の問題、それから外国由来の日本語指導が必要なお子さん、こういった方々がいらっしゃる上に、右下にございますように、子供たちの特性や関心、意欲は様々でございます。先ほど御議論もございましたように、デジタル化は子供たちの特性や関心に応じた学びが実現できる最大のチャンスだと考えております。
 また、11ページを御覧ください。岸田政権が掲げるデジタル田園都市国家構想でございますが、時間、空間、地域、あるいは地方格差の壁を超えるということで、今村代表のカタリバにおいても、シェア型オンライン教育支援センターというお取組をいただいているところでございまして、大きな可能性があると考えてございます。
 12ページを御覧ください。私どもCSTIの立場からも、今、新聞のヘッドラインを見ても、光触媒、リチウム電池、mRNAという言葉があふれておりますし、13ページを御覧いただきますと、これからますます科学の進展を人社系がチェックするという文脈ではなくて、社会課題を解決するために科学が活用するという意味においては、私ども理系のみが振興されればいいとは全く考えておりませんで、やはり人社系も含めた総合知が大事だという前提で議論を進めているところでございます。
 14ページを御覧ください。このワーキンググループの中でも、先ほど松木先生からもお話がございましたけれども、OECDのエージェンシーという議論の中で、既存の枠組みにとらわれずに考える、二項対立の枠組みを越えて考えることが大事でございまして、教科と総合、あるいは探究の二元論ではなくて、全体で問いや仮説を立てる力などを育む学びが必要だという御議論をいただいているところでございます。
 15ページでございますけれども、子供たちの進路を阻む社会的、文化的なバイアスについては昨年も御報告を申し上げました。理系を選択するということについて、これだけ女性の選択が減っていくということは、これは社会的、文化的なバイアスがあると言わざるを得ません。私ども国、あるいは政府というのは、この分野に行くべきだということは絶対に申し上げませんけれども、バイアスを取り除く責任はあると考えているということでございます。
 20ページ目を御覧いただきたいと思っております。20ページ目は転換の方向性でございますが、ちょうど真ん中にございますように、昨年1月の中教審で言われている同調圧力と成果主義というのは、イノベーション創出の最大の敵でもございますので、同じ思いで議論させていただきたいということでございます。
 23ページを御覧ください。これも昨年、御報告を申し上げましたけれども、そのためにはICTを活用しながら、これまでの学びを、教室を変えていくと。紙ベースの一斉授業から個別最適な学びと協働的な学びを一体的に充実するという観点からは、学びについて時間的、あるいは空間的な多様化が必要であるという議論をいただいているところでございます。
 また、24ページでございますが、そのためには学校の姿も変わっていくということでございまして、右側にございますように、先ほど今村久美委員がおっしゃっていただいた、学校も含むプレーヤーという考え方で、レイヤー構造で考えていく必要があると存じております。なお、前回も申し上げましたけれども、先ほどのデジタル庁の御報告にもありましたが、その場合、2つ目のバツ、真ん中あたりでございますけれども、実施主体や責任の所在が不明確になりますので、この点のルール作りというのは不可欠だということで、私どももデジタル庁と議論させていただいているところでございます。
 25ページを御覧ください。その際、ちょうど真ん中にありますけれども、皆と同じことができることのみを評価する、あるいは歴史教科書の脚注を幾つ覚えたかで入試が決まるといったように、丸バツで大人が測りやすい力を評価するということが変わらずに、デジタルによる個別最適化を進めますと、アルゴリズムやAIが指示する学びを他律的に行うことになる。自ら学びを調整する力という主体的、対話的で深い学びの最も重要な要素というものが育成につながらないということになっておりまして、私どもワーキンググループの議論の中でも、であるがゆえに、論文や小論文や対話やディベートといった実演に関するパフォーマンス評価をサイエンスの力を生かしてでも確立するということ、それから個別最適な学びと協働的な学びは必ず両立しなければならない。しかも、知識の習得、活用、探究という流れの中で、習得は個別最適な学び、探究は協働的な学びといった単純なものではない、循環、往還するものだということをワーキンググループでも御議論いただいているところでございます。
 27ページを御覧いただければと思っております。その上で、探究・STEAM教育を社会全体で支えるエコシステムということでございまして、真ん中辺りに2番、3番、5番とありますように、学校の体制整備が重要でありまして、それは先ほど御報告がありました小学校の専科教員の充実ということにも関わってくることでございます。
 また、28ページを御覧いただきたいと思います。特異な才能のある子供たちについてでございますが、先ほど申し上げておりますように、私どもCSTIとしては、特異な才能のある子供をハイタレントとして育てて、社会のために貢献させるという観点ではなくて、これらの子供たちが現在向かい合っている困難さというものをいかに取り除くか。それは成績がいいからというだけで医学部に進学しているという状況も含めて乗り越える必要がある。そのためにこそ学校外プログラムに参加できる教育課程の仕組みと、個別性の高い指導計画の策定ということが不可欠であると考えているところでございます。
 30ページを御覧いただければと思います。文理分断からの脱却やジェンダーギャップの問題でございますが、ジェンダーバイアスがかかり始める段階から、これは社会的なムーブメントを醸成する必要がありますし、理数の専門家が教壇に立つ仕組みも必要かと存じております。そして、政府の教育未来創造会議でも御議論いただきますように、大学の在り方、入学定員の問題も文理分断からの脱却についても重要なテーマであるということで整理をさせていただいております。
 最後、32ページを御覧いただければと思っております。中間まとめにつきましては、昨年の12月24日に公表させていただきまして、現在、1月16日までということで広く意見募集をさせていただいているところでございます。現在はまだ途中でございますので、詳しくは申し上げられませんけれども、中高校生からもかなりの数の御意見をいただいておりまして、大変有り難いと思っております。今後、先ほど申し上げました学びの時間的、空間的な多様化、それから探究・STEAM教育の充実、そして、文理分断からの脱却、それからジェンダーバランスといった柱ごとに具体的な施策を、ロードマップを明確にして政府全体で文脈を共有してまいりたいと思っております。このワーキンググループにお入りをいただいております、5人の本分科会の先生方を含めまして、今後とも中教審の先生方に御指導賜りたいと思っている次第でございます。
 私のほうからは以上でございます。

【荒瀬分科会長】 合田審議官ありがとうございました。
 本当に時間のない中、最後までありがとうございました。それでは、先ほど申しましたように、この件はこれで終わりというわけではございませんが、今日は質疑応答、意見交換はなしということでお願いをいたします。御意見とか御質問とかおありの方は、どうぞメール等で事務局のほうにお送りいただければと思います。合田審議官、本当にありがとうございました。
 それで、4時半の終了時間でありますけれども、もう一件、今のお話、それから1つ前のデジタル庁のほうからの御説明のお話とも関わって、大変重要な案件がもう一件ございますので、少し延長をさせていただきます。大変申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします。
 では、最後の議題、水田初等中等教育企画課長から御説明をよろしくお願いいたします。

【水田初等中等教育企画課長】 それでは、資料の6-1を御覧ください。
 ただいまデジタル庁の教育データ利活用ロードマップや総合科学技術イノベーション会議、教育・人材育成ワーキンググループにおける審議状況について、御説明や、それを踏まえた意見などいただきました。中央教育審議会では、昨年1月に令和の日本型学校教育の構築を目指しての答申をおまとめいただきまして、現在、文部科学省において、この答申を踏まえた施策を進めているところでございますが、ただいま申し上げましたとおり、この答申をしっかりと進めていくということを前提としつつ、政府全体でも中長期的な視点から様々な御議論をいただいているところでございます。
 中央教育審議会としましても、こうした検討の状況や結果などを踏まえつつ、令和の日本型学校教育の着実な実現に向けて、デジタル化などの社会変化が進む次世代の学校の在り方について、さらに掘り下げて御審議いただく必要があろうと考えております。
 具体的には、児童生徒への学習指導、生徒指導の在り方や環境整備について、特にGIGAスクール構想に基づくICT環境の整備と活用を進める中で、教科書教材のデジタル化を推進するとともに、既存の教科書、教材との関係を整理し、個別最適な学びと協働的な学びを一体的に充実することなどが求められているところでございます。
 このため、多様かつ専門的な見地から横断的に議論し、検討内容を必要な施策に結びつけていくため、本初等中等教育分科会に新たに特別部会を設置していただきたいと考えております。
 主な検討事項としましては、個別最適な学びと協働的な学びを一体的に充実するための一人一台端末等を円滑に活用した児童生徒への学習指導、生徒指導等の在り方について。教科書、教材、関連ソフトウェアの在り方について。学校内外の環境整備の在り方について。その他としておりますけれども、政府全体における議論も踏まえながら、柔軟に御検討いただきたいと考えておりまして、その議論の状況を本分科会に随時御報告いただき、本初等中等教育分科会で、また御審議いただくということを想定しております。
 名称につきましては、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に向けた学校教育の在り方に関する特別部会についてとさせていただいております。
 資料6-2は、設置を認めていただいた場合の本分科会の構成でございまして、2ページ目の最後にこの分科会という位置づけで記載しております。
 以上でございます。御審議のほどよろしくお願いいたします。

【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。
 今、御説明をいただきました部分、とりわけ資料6-1の2の主な検討事項は3つ書いてあって、4つ目がその他となっておりますが、その他が、ひょっとしたら非常に広がっていく可能性もあるということで、そこでの議論を初中教育分科会に報告して御意見をいただきながら、また進めていくと、そういう特別部会ということでございます。御質問、御意見を少し時間を取ってお願いをしたいと思いますが、いかがでしょうか。岩本委員、お願いいたします。

【岩本委員】 岩本です。よろしくお願いします。
 1点だけ、特別部会への期待について御意見させていただきます。この検討の中で、一人一台端末を具体的にどう使っていくのかみたいな、いきなり具体の手法論から入るよりも、政策の目的、上位目標の設定から骨太な議論がされるといいなと思っています。今日のデジタル庁の話だとか、先ほどの内閣府での話も共通すると思うんですけども、目的としては、子供たち一人一人の多様な幸せ、well-beingの実現というところだと思うんですけども、このwell-beingという言葉も含めて、本当にバズワードというか、それは一体どういう定義で、どういうものを目指しているのかというところが、それぞれの考え方だとかによってあやふやなまま、手法論だけ走っていくと、一体何に向かっていくのかとか、またその後、手法自体が本当に効果的なのかということをデータやエビデンスベースで評価、検証していくということもできないとなっていきますので、そもそもの政策目標だとか、場合によっては指標みたいな設定のところから骨太な議論がされていくということを期待しています。
 以上です。

【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。あと、田中委員、杉本委員、清原委員から挙手のサインをいただいております。大変申し訳ありません。あと3人の委員の方で今日はこの件は止めたいと思いますが、よろしくお願いいたします。では、時間のこともございますので、大変申し訳ありません、かいつまんでと言いますか、端的にお話をいただきたいと思います。田中委員、どうぞ。

【田中委員】 挙手のアイコンを下げるのを忘れてしまって、取下げでお願いします。

【荒瀬分科会長】 分かりました。ありがとうございます。では、杉本委員、お願いいたします。

【杉本委員】 私も下げ忘れです。どうもすいません。

【荒瀬分科会長】 そうですか。分かりました。では、清原委員、お願いいたします。

【清原委員】 ありがとうございます。清原です。
 私は特別部会の設置について本当に喜ばしいことだと思いますし、私も期待をお話しさせていただきます。本日のデジタル庁のロードマップ、また、内閣府のロードマップのお話の中にも共通していることは、「できる限り子供視点で」ということだと思います。今村委員もおっしゃいましたけれども、取組を検討される中で、学校の教室の中においても子供たちの視点からどのような教科書、教材が必要か、そして、どのような生徒指導が必要かという子供視点を尊重した取組を是非お願いします。
 それから、2点目は子供の多様性にいかに対応していけるか、今までの紙の教科書だけではなくて、デジタル教科書になったら、どのぐらい多様性に対応できるか、それも突き詰めていただければと思います。
 そして、本日、岩本委員、松木委員からも御提案ありました、いかに「協働型学習」を進めていくか、そして、意思決定を1人でできる学びだけではなくて、いかに連携しながら課題解決していくか、そういう学びの重要性も確認されたと思いますので、是非「個別最適な学び」と同等に、「協働的な学び」に向けた検討を期待したいと思います。くれぐれもよろしくお願いします。ありがとうございます。

【荒瀬分科会長】 ありがとうございました。
 それでは、ただいま、具体的に特別部会でどういった方向で議論をしていくべきかといった御提案もいただきましたが、資料6-2のとおり、中央教育審議会令第6条等に基づきまして、本分科会の下に個別最適な学びと協働的な学びの具体的な充実に向けた学校教育の在り方に関する特別部会を設けることにいたしたいと思いますが、よろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【荒瀬分科会長】 ありがとうございます。それでは、設置をお認めいただいたということで、そのようにさせていただきたいと思います。
 特別部会でございますが、先ほども申しましたように、審議の状況、議論の状況につきましては、本分科会に随時、報告をいただくということで、こちらでもそのことについての審議、この分科会での審議を進めていきたいと思っています。
 なお、特別部会に属する委員につきましてですが、中央教育審議会令第6条第2項の規定に基づきまして、分科会長が指名することとなっております。部会の委員の人選につきましては、私のほうに御一任いただきたいと考えますが、よろしゅうございますでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【荒瀬分科会長】 ありがとうございます。それでは、おまかせいただいたということで、人選を進めてまいりたいと思います。
 そういたしましたら、本日も大変進行がまずくて、10分ほどもう既にオーバーしてしまっております。次回以降、時間の長さについても、あるいは議題の数等につきましても、また事務局と相談をしてまいりたいと思っております。
 では、次回以降の予定につきまして、御説明をお願いいたします。

【白井教育制度改革室長】 次回の日程につきましては、追って事務局から御連絡を申し上げます。

【荒瀬分科会長】 ということでございます。
 それでは、延長してしまいましたし、また御意見をいただけなかった委員の皆さんもたくさんいらっしゃるかと思います。大変申し訳ございませんでした。繰り返しになりますけれども、御意見、御質問等は事務局のほうにメール等でお寄せいただければと思います。
 それでは、本日はこれで終了いたします。ありがとうございました。
 
―― 了 ――
 
(会議後に事務局に寄せられた意見(順不同))
【市川(伸)委員】
<議題3.新型コロナウイルス感染症と学校等における学びの保障のための取組等による児童生徒の学習面、心理面等への影響に関する調査研究についてへのコメント>
 中村先生たちの社会学的調査の結果は、社会経済的階層が学習に格差を生み出していること、コロナ禍になってその格差が拡大していることで、納得できる結果であり、これがベースになるとは思います。今後の追加分析、あるいは新たな調査に向けて、ということになりますが、格差があまり見られないような自治体、学校、地域、あるいは個人などがあるのか。あるとすれば、そこではどのような対応策がとられているのかということです。
 他の委員からもご意見ありましたが、「非大卒シングルマザーでは~の傾向がある」といったデモグラフィック特性だけで結果を記述していると、「自分は非大卒シングルマザーなので、子どもが勉強しないのはしかたがないのか」といった悲観的な解釈をされかねません。むしろ、支援策や個人のどういう努力がそれを克服していくことになるかという実例を調査から浮き彫りにしていくことが前向きのメッセージとして求められるのではないでしょうか。

【宮澤委員】
<議題4.教育データ利活用ロードマップについてへのコメント>
 教育DXにより、教育の幅が広がることは事実ですが、PC等は、あくまでもツールであり、その有効活用に期待されるところがあると思います。 
 しかし、47ページを見ると、これからの学校では、学びよりもコーディネート機能が強調され、このページだけを見ると学校は必要なくなるようにも受け取れます。学校の役割とよさ、そしてDXでできることを併記して、それぞれのハイブリッドな形が子供たちの健全育成につながると思います。
 また、どこでも、だれとでも、いつでも学べるということは、大変良いことだと思いますが、独りよがりの人間になることが危惧されます。Society 5.0を踏まえた人材育成にもあるように感性を磨いたり、人間らしさを尊重したりすることや心を育てることは、直接人間と関わらなければ育成できないと思います。この点を示す必要があると思います。
 さらに、教育DX後の世界を展開するに当たり、発達段階に応じた学びが必要だと思います。小学校低学年からいきなりPC等で学ぶより、生活の中からの疑問や驚きを大切にし、課題についてどのように取り組んだら良いか、人間である教師が教える必要があると思います。そこから、成長するにつれ、PC等のツールを活用した学びを支援していけば良いと思います。

【清原委員】
<議題5.内閣府総合科学技術・イノベーション会議における審議状況について、へのコメント>
 教育・人材育成ワーキンググループ『Society 5.0の実現に向けた教育・人材育成に関する政策パッケージ<中間まとめ>』の審議については、中央教育審議会からは、渡邉光一郎会長、初等中等教育分科会の荒瀬克己分科会長、今村久美委員、岩本悠委員、戸ヶ﨑勤委員が参加されており、分科会での審議を踏まえつつ、検討を深めていただいていることを心強く思います。

1.4頁において、「科学技術・イノベーション基本計画においては、『一人ひとりが多様な幸せ(well-being)を実現できる社会』としてのSociety 5.0の実現を目指し、今後5年程度という時間軸のなかで子供たちの学習環境をどのように整えていくのか、各府省を超えて政府全体としてどのように政策を展開していくのか、そのロードマップの作成を目指すことが、本政策パッケージ策定の目的」と明示されていますが、特に「各府省を超えて政府全体として」政策の展開を志向しているところが有意義と考えます。特に、個別最適な学びへの展開、たとえば、特定分野に才能を持つ子どもたちを延ばす教育、理数系におけるジェンダーバランスの改善など、広く教育について議論されていることがわかります。その政策のロードマップにおいて、文部科学省がどのような役割を果たすかが重要と考えます。
2.「子供たちの学びを支える主体を多様化し、学校だけでなく地域や保護者、企業、行政など社会全体の理解と連携のもとに、社会全体で教育・人材育成政策を推進する見取り図を示していく。」とあります。これも大変に重要な点です。ポイントは言わば「社会総出」で、一人ひとりのwell-beingを実現するSociety 5.0を目指すものであり、教育界だけでなく、産業界、自治体も含めて、社会全体で子どもたちが多様な時間軸、空間軸で、それぞれに合わせて学ぶことができるような環境を整える方向を目指しているように受け止めました。さらに、「Demand Side子供目線でこれまでのSupply Side行政から脱却し、Demand Side行政(子供目線)への転換を」とあります。これは、デジタル庁・総務省・文部科学省・経済産業省による「教育データ利活用ロードマップ」の報告に関連して、今村委員が言われた提供側の視点からではなく、学ぶ主体である「こどもの視点」の明示であり、現政府の理念の一つである「こどもまんなか」を受けている大事な視点であると受け止めました。それをいかに、具体化していくのかが今後明らかになることを期待しています。
3.5頁に極めて重要なメッセージが示されています。「優れた能力がある者を伸ばせば、どんな個人間・地域間格差を広げてもいいということでは決してなく、「多様性」「公正や個人の尊厳」「多様な幸せ(well-being)」の価値がSociety 5.0の中核であることを踏まえた教育・人材育成政策を示していく」に共感します。特に、「公正さ」をどのように実現できるかが課題と考えます。10頁には、「認識すべき教室の中にある多様性・子供目線の重要性」とあり、11頁には、「『時間』『空間』『地域』『地方格差』の壁を越えるデジタルの力」とあります。私は、20世紀から「メディア教育」「情報格差」「情報バリアフリー」「情報保障」を研究してきましたので、最適なデジタル化を検討することによって、例示のような「不登校」、「病気療養中」のこどもだけでなく、視聴覚障害や身体障害、発達障害のある障がい児・者、(高齢者にとっても、)移動や学習環境の壁、心理的な壁を超える可能性が高いと考えています。デジタル化は多様性を保障するための社会基盤の一つとして位置づけられると考えています。今回報告のあったデジタル庁・総務省・文部科学省・経済産業省の4つ の省で検討されている「教育データ利用ロードマップ」との関連もあると考えており、政府全体での推進が期待されます。
4.15頁以降の「文理分断と理数系の学びに関するジェンダーの偏り」については、大学の専攻による女子学生の比率が、初等中等教育の段階の教育と関連していると考えられるデータが示されています。私は東京工科大学に1999年開設のメディア学部の教員及び学部長をつとめていましたが、メディア学部では文系、理工系、芸術系の学際的教員によって、言わば「文理芸融合」のカリキュラムを、学生一人一台パソコンによる授業展開によって取組んだ経験があります。同大学の工学部には確かに女子学生が少なかったのですが、メディア学部は女子学生も多く、コンピュータ・サイエンスの共通の学びを基礎に、プログラミング、ソフトウェア等の分野に臨んでいました。18頁には、「大学などの高等教育機関に入学した学生のうち、STEM分野に占める女性割合は、OECD加盟国中、日本は最低であり、女性の理工系人材の育成が極めてアンバランスな状況」であることが課題として提起されています。
 今後、この課題については、高等教育と初等中等教育との関連に注目した検討が必要と考えます。

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初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室

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