質の高い教師の確保特別部会(第11回) 議事録

1.日時

令和6年4月4日(木曜日)9時30分~11時30分

2.場所

文部科学省会議室(対面・WEB 会議併用)(東京都千代田区霞が関3-2-2)

3.議題

  1. 教師の処遇改善の在り方について
  2. その他

4.議事録

【貞広部会長】  定刻となりましたので、ただいまから第11回中央教育審議会 初等中等教育分科会 質の高い教師の確保特別部会を開催いたします。
 皆様、お忙しい中、本日も御出席いただきましてありがとうございます。
 本日の議題に入る前に、事務局に人事異動があったということですので、御紹介をお願いいたします。
【堀家財務課長補佐】  初等中等結局財務課の堀家でございます。4月1日付の事務局の人事異動を紹介させていただきます。
 初等中等教育局初等中等教育課長の常盤木でございます。
【常盤木初等中等教育企画課長】  よろしくお願いします。
【堀家財務課長補佐】  初等中等教育局企画官の浅原でございます。
【浅原企画官】  よろしくお願いいたします。
【堀家財務課長補佐】  私、初等中等局財務課の堀家も、4月1日付で着任いたしました。どうぞよろしくお願いいたします。
【貞広部会長】  ありがとうございました。
 本日の会議もウェブ会議と対面を組み合わせたハイブリッド形式にて開催させていただきます。会議を円滑に行う観点から、大変恐れ入りますが、委員の皆様におかれましては、御発言以外はマイクをミュートにしていただくようお願いいたします。カメラにつきましては、御発言時以外も含め、会議中はオンにしていただきますよう、よろしくお願いいたします。
 また、本日も、報道関係者と一般の方向けに本特別部会をユーチューブにて配信しており、ユーチューブでの傍聴者から録音及び録画の御希望がございましたので、御承知おきいただければと存じます。
 それでは、事務局より配付資料の確認をお願いいたします。
【堀家財務課長補佐】  本日、配付資料はお手元の議事次第の4、配付資料にありますとおり、資料1から資料3、及び、参考資料1から参考資料7となっております。御確認いただきまして、過不足等ございましたら事務局までお申しつけください。
【貞広部会長】  それでは、早速でございますが、議題1といたしまして、教師の処遇改善の在り方についてに入ります。
 本特別部会では、昨年5月の文部科学大臣からの諮問を受けて審議を進めておりますけれども、参考資料5にありますとおり、諮問に先立ち、調査研究会において、5つの論点を整理しました。前々回の第9回会議から、これらの論点のうち、教員給与等の在り方について御議論をしていただいていますけれども、本日の会議でも、引き続きこの点について議論を深めていただきたいと考えております。
 本日は、まず、文部科学省が令和4年度に実施した教員勤務実態調査の確定値について、事務局より御説明いただきます。昨年4月に速報値が公表されておりますけれども、その後データの精査や詳細な分析が行われ、このたび確定値が取りまとめられたとのことですので、この点について御報告をいただきます。
 続きまして、教師の処遇改善の在り方に関する関連資料や論点について、前回会議から追加された事項を中心に、事務局より御説明をいただきたいと思います。
 それでは、資料1、資料2及び資料3に基づきまして、事務局より御説明をお願いいたします。
【安井財務課長】  財務課長の安井でございます。事務局からまず、御説明をさせていただきます。
 まず、資料1でございます。令和4年度に実施をさせていただきました教員勤務実態調査につきまして、昨年4月に速報値を御報告させていただいたところでございますが、その後、データの精査等を行いまして、今回、確定値ということで御報告をさせていただくものでございます。
 資料1の1ページから4ページにつきましては、在校等時間の結果のデータということでございますが、今回、確定値ということでも、大きなデータの変動はございませんでしたので、こちら、昨年御覧いただいたものと、在校等時間の時間につきましては、ほぼ同様の結果となってございます。
 まず、1ページでございますけれども、前回調査、平成28年度の実施と比較いたしまして、平日、土日ともに、全ての職種において在校等時間、減少はしてございますが、依然として長時間勤務の教師が多い状況であると認識しております。
 2ページ、御覧いただきますと、在校等時間、業務内容別に整理をしたものでございますけれども、平日については、授業、朝の業務、学習指導の時間の増加がございましたが、学校行事、あるいは小学校の成績処理、学校経営、また、中学校の学年・学級経営、生徒指導の時間が減少しているというところでございました。また、土日につきましては、学校行事、部活動の時間がかなり減少しているという結果でございました。
 3ページにつきましては、こちら1週間当たりの教諭の総在校等時間についての時間分布でございます。
 それから4ページでございますが、長期休業中、8月の勤務状況ということであります。平日20日間のうち、所定の勤務時間を勤務した日数につきましては、小学校で5.6日、中学校で8.4日という結果でございまして、これ以外の日につきましては、終日の年休、あるいは部分休を取られているという状況でございます。
 5ページ以降が、今回、確定値の結果と合わせて、データの分析をさせていただいたものの御紹介でございます。まず、左側は先ほども御覧いただきました在校等時間の平均値分布になりますけれども、前回調査時と比べまして、学校間でのばらつきが減少をしてございますし、また、在校等時間が長い学校も減少しているというところであります。
 一方で、②の右側のグラフでございますが、在校等時間の学校の平均値、これが短い学校でございましても、在校等時間の長い教諭というのは、やはり一定割合、存在しているというところでございますので、学校全体の業務改善についての組織的アプローチに加えまして、在校等時間が長い教師への個別なアプローチということも必要と考えられるのではないかと存じます。
 6ページにお進みをいただきまして、こちらは、どういう属性の教諭が在校等時間が長い傾向にあるのかということについて、統計的に回帰分析を行った結果でございます。小中学校ともに年齢が若い、あるいは担任学級児童生徒数が多い、担当授業コマ数が多い、また、教務主任、学年主任等の主任業務を担当されている方の在校等時間が長いという傾向が確認されたところでございます。こういった状況も踏まえまして、それぞれ、若手教師の支援、学級規模の縮小、持ちコマ数の軽減、主任層の教師のサポートでございますとか、あるいは人的な配置の支援ということも必要であると考えられると思います。
 続きまして、7ページでございます。こちら、学校における働き方改革の取組について、積極的に行われている学校ほど教員の時間管理意識が高くなるという傾向が確認されたところでございます。また、管理職がリーダーシップを発揮し働き方改革を進めていると認識されている教諭ほど、時間管理意識が高いというところでございまして、時間管理意識が高い教諭ほど、③のところでございますが、在校等時間も短くなるという傾向もございますので、教師の時間管理意識の向上ということを、学校の働き方改革の取組と併せて行っていくことが重要と考えてございます。
 また、8ページでございますけれども、こちらについては、1週間当たりの在校等時間につきまして、その長さに応じて3グループに分けまして、どういう業務内容の時間的な違いが見られるかということを比較したものでございます。
 小学校においては、授業準備、あるいは学校行事における差が大きいというところでございました。また、中学校では部活動、授業準備、学年学級経営における業務時間の差が大きいという結果でございます。
 また、9ページを御覧いただきますと、今回の調査で、教員に対する質問紙調査で、ストレス状況についても確認をしてございます。全体的に在校等時間が長い、あるいは、年齢が若い、担任する学級に不登校の児童生徒が在籍しているという教諭ほど、心理的なストレス状況が悪いという傾向がございました。
 また、一方で、④でございますが、管理職がリーダーシップを発揮して働き方改革を進めており、また、教諭自身の時間管理意識も高まっていると考えている教諭につきましては、相対的に心理的ストレスの状況がよいという結果も見られたところでございます。
 続いて、10ページでございます。こちら、部活動の関係のデータになります。28年の調査では、担当する部活動の活動日数が週6日以上であった教諭の割合は65%ほどでございましたが、今回は6.9%ということで、部活動ガイドラインの趣旨が、定着が進んでいる状況も考えられると思っております。また、担当する部活動の活動日数が多いほど在校等時間が長いということ、また、部活動の従事時間が長くなりますと、教科指導、生徒指導に従事する時間が短くなるというような状況もございます。また、部活動指導員が活用された場合は、部活動に係る在校等時間については短くなるという結果も確認をされているところでございます。
 最後、11ページでございますけれども、教員業務支援員でございます。こちら、令和6年度の予算におきまして、全小中学校配置に必要な経費も予算計上されているところでございますけれども、教員業務支援員が配置されている学校におきましては、そうでない学校と比べまして、特に学校全体の事務的な業務に従事する時間が御覧のように短くなっているというデータも確認をされております。
 また、②でありますが、スクールカウンセラーが配置されている学校の教諭につきましては、そうでない学校と比べて心理的ストレスの状況がよいというような状況でございます。また、学校徴収金の徴収管理を教職員が関与しない方法で行っている学校におきましては、学校徴収金以外の取組も含めてということでございますけれども、在校等時間が御覧のように短い結果が確認できているというところでございます。
 以上、こういった分析結果もしっかりと踏まえまして、さらなる取組の強化に努めてまいりたいと考えてございます。
 続きまして、資料2を御覧ください。こちらにつきましては、教師の処遇改善の在り方に関する関連資料ということで、前々回からお配りをさせていただいているものでございますけれども、今回、幾つかの資料を追記させていただきました。
 資料21ページを御覧ください。こちら、諸外国の教師の給与についてでございますが、超過勤務時間に対する給与上の扱いについて、文部科学省の委託研究で諸外国の給与状況について調査したものから御紹介をさせていただくものでございます。今回、全体の中で韓国につきましては、1日4時間を上限に時間外勤務手当を支給されているというところでございますが、全体的には、必ずしも時間外勤務手当の支給が一般的ではないという状況がございました。アメリカ、オーストラリアの例でございますと、超過勤務に対する追加的な給与はなく、その代替措置として、給与水準が高く策定されているという状況でございました。また、イギリス、カナダ、ニュージーランドの例でございますと、超過勤務時間や特定の活動等の超過勤務に対する処遇は設定されていないというような結果でもございました。
 続きまして、資料の44ページでございます。こちらの教育職員の健康福祉の確保等についての関連資料でございますが、昨年の御議論の中でも一度御覧いただいたものを再掲させていただいてございます。44ページにつきましては、教職員の勤務条件等に関する基本的な制度でございますけれども、市町村の設置する小中学校の教職員につきましては、服務監督につきましては、市町村教育委員会が実施をするということでございますし、また、各学校におきましては、校長が勤務時間の割り振りや教育課程の編成を行うというところでございますが、これらの職員に関する勤務条件の設定、または給与負担につきましては、県費負担教職員制度ということで、都道府県の教育委員会が行うということになってございます。
 続いて、45ページでございます。令和元年の給特法の改正によりまして、公立学校の教師につきまして、文部科学大臣が、健康福祉の確保を図ることにより、学校教育の水準維持向上に資するということで、教育職員の業務量の適切な管理に関する指針を定めるということが定められたところでございます。これに基づきまして、46ページでございますが、指針が文部科学省において定めてございますけれども、1か月の時間外在校等時間について、45時間以内という定めをしてございます。
 また、47ページでございますけれども、教育職員の服務を監督する教育委員会が講ずべき措置ということで、この上限方針を踏まえた所管に属する各学校の取組の実施状況を把握をした上で、その状況を踏まえて、業務分担の見直し、適正化、必要な環境整備等の在校等時間の長時間化を防ぐための取組を実施するということを服務監督教育委員会に求めているところでございます。また、上限方針で定める上限時間の範囲を超えた場合には、所管内の各学校における業務や環境整備等の状況について、事後的に検証を行うと定められているところでございます。
 48ページ以降につきましては、今、御覧をいただきました上限指針に規定をされております教育委員会が講ずべき措置に関しての取組状況について、昨年、文部科学省において調査をした結果を御報告させていただいたものでございます。所属の全ての学校における取組の実施状況の把握でございますとか、把握した状況を踏まえて、教育委員会として、在校等時間の長時間化を防ぐための取組の実施等々についての状況を調査した結果でございます。
 続きまして、資料3の、本日の審議の論点について御説明をさせていただきます。資料3につきましては、前々回の会議から処遇の改善に関する論点ということで整理してございますが、今回の審議として、5ページ、6ページを追加させていただいたところでございます。前々回の会議でも処遇の在り方を考える上で留意をすべき教職の重要性、あるいは、特性に関する御議論をいただいていたところでございました。こういったところも踏まえまして、今回の論点についての御議論も深めていただければと思います。
 教職の重要性を踏まえた教師の処遇改善の在り方についてということでございます。今後、教師の処遇改善をどのような手立てで実施するかを検討するに当たりまして、教師が高度専門職として、その専門性を最大限に発揮して子供たちへの教育を行うことができる業務遂行の在り方が実現できるようにするということを踏まえた、処遇改善の具体的な手立てについてどのように考えるかということでございます。
①でございますけれども、在校等時間と教育の成果の関係についてでございます。勤務時間内に効率よく職務を終えている教師、また、あるいは自発的に教材研究や授業準備に励まれて、時間外在校等時間が長くなっている教師がいらっしゃるわけでございますけれども、こういった実態も踏まえまして、教育の成果というものについて、勤務時間の長さのみに基づいて考えることができるかどうかということについて、どのように考えるかということでございます。
 また、②でございますけれども、時間外勤務手当に関する考え方についてということでございます。仮に、時間外勤務手当を支給することといたしました場合に、以前から御検討いただいております教師の職務の特殊性等も踏まえた上で、教師の行う個別具体の職務につきまして、学校管理職が時間外勤務命令を発することが適切なのかどうかについてどのように考えるか、また、実務上の観点も踏まえながら、個別具体に時間外勤務として承認をすることができるのかどうかということについて、どのように考えるかということでございます。
 また、仮に時間外勤務手当を支給することとした場合に、都道府県が給与負担者であります県費負担教職員制度の中におきまして、服務監督権者である市町村教育委員会に、時間外勤務を削減するインセンティブというものについて、民間の場合と同様に機能するかどうかということについてでございます。
 また、6ページでございますが、諸外国におきましても背景は様々でございますが、専門職として、教師は時間外勤務手当の支給に関する規定の適用外とする国もある状況でございまして、時間外勤務を時間によって測定をして、それに対して追加的な給与を支給する仕組みは必ずしも一般的ではないというところでございますが、教師の職務の特殊性を踏まえた仕組みについて、どのように考えていくかということでございます。
 ③でございます。教職調整額の在り方についてでございますが、教師の職務等の特性を踏まえて、現在、時間外勤務手当の支給ではなく、勤務時間の内外を問わず、教師の職務を包括的に評価して、給料月額の4%を支給するということで、現行、教職調整額が設定されてございますが、その水準も含めてどのように考えるかというところでございます。また、その際に、教育職員に優れた人材を確保するために、人材確保法によりまして、教師の給与について、一般公務員より優遇するとされておりますけれども、現在、その優遇分が僅かとなっているということについて、どのように考えるかということでございます。
 そして、④、教師の健康福祉確保についてでございます。現在、教育職員を正規の勤務時間を超えて勤務させる場合につきましては、政令で定める基準に従って条例で定める場合に限るとされております、いわゆる超勤4項目でございますが、その在り方について、どのように考えるかということであります。また、学校における働き方改革の実効性向上ということに向けて、各教育委員会が行う在校等時間の把握、業務分担の見直し、適正化、必要な環境整備、健康福祉を確保するための取組につきまして、PDCAサイクルを通じて実効性を高めるために、具体的にどのような仕組みがさらに考えられるかどうかということでございます。
 以上、論点に関する資料3でございます。
 それから参考資料について、簡単に御紹介をさせていただきます。参考資料2-1、2-2でございますけれども、中教審の初中分科会教員養成部会におきまして、優れた教師人材の確保に向けた奨学金返還支援の在り方について、議論が先般、お取りまとめになられましたので、そちらについて共有をさせていただくものでございます。
 また、参考資料3でございますが、こちらは文部科学省の委託事業でございます、学校における働き方改革の推進に関する調査研究でございますけれども、学校の働き方改革を民間事業者等の専門的な知見も活用しながら、伴走型の支援を行うという実証事業でございます。昨年度の取組状況についての報告の資料について、お配りをさせていただきました。
 事務局からは以上でございます。
【貞広部会長】  ありがとうございました。
 それでは、ただいま事務局より御説明いただきました資料のうち、特に資料3の論点を中心といたしまして、委員の皆様から御意見をいただきたいと存じます。御意見等ある方は手を挙げるボタンを押していただきますようお願いいたします。こちらから順次、指名をさせていただきたいと存じます。
 なお、大変恐縮でございますが、できるだけ多くの委員の皆様から御発言をいただくために、御発言を1人当たり3分以内としていただきますようお願いいたします。
 では、早速でございますが、戸ヶ﨑委員、お願いいたします。
【戸ヶ﨑委員】  これまで繰り返し述べてきましたが、教師の仕事は、子供の幸福を実現し、よりよい社会のために貢献する、その生きがいと使命感などが、昔も今も教師たちを支え続けているはずです。処遇改善の手立てについては、そうした精神を尊重した仕組みとすることが不可欠だと思います。
 また、時間外勤務手当を支給することとした場合の管理職の命令についてですが、このことについては様々な問題が予想されます。まずは、日々変化する目の前の子供たちの状況に応じ、臨機応変に対応する「教育タクト」のスキルを上げていくことこそ、教師が高度専門職である所以です。
 管理職が、そうした教師の個別具体の職務について、個別に見届けることは不可能に近く、様々なトラブルも予想されます。そこに、個々命令を発することは馴染みません。そのような在り様は、管理職の負担だけでなく、教師一人一人の職務の裁量を狭めてしまう恐れもあります。
 さらに、よりよい授業に向けた教材研究や授業準備は際限がなく、教師の主体性に期待する面が大きいわけですが、そのような際限のなさを管理職が超過勤務として見取り、時間に換算するような処遇改善は、教職の本質を踏まえると適切とは言えないと思います。仮に、それが実行されると、仕事の能率化・効率化に努めている教師ほど給与料が相対的に減少するなど、働き方改革へのブレーキも当然予想されます。
 教職の性質は全人格的なものであり、教師の仕事を勤務の内外に切り分けて考えることは、極めて難しいというより、そもそもすべきではなく、勤務時間の内外を包括的に評価する教職調整額の仕組みは、今でも一定の合理性を有すると考えています。
 また、教育の成果が勤務時間の長さのみに基づくものではないことは言うまでもありません。それは教師の熱意や効率などといった部分にも由来していますが、仮に、同じ人が勤務しても、児童生徒や保護者、また地域の状況に応じて教育効果も異なることを考慮していく必要があります。
 加えて、民間企業における時間外勤務削減のインセンティブは、人件費削減や生産性の向上など、利益追求と効率性向上という民間企業の目的に直結します。しかし、学校教育は、時間外勤務を削減しても、服務監督権者である市町村の財政にインセンティブがないということは、この議論を進める上で極めて重要な点です。
 これまでも繰り返し申し上げていますが、服務監督権者である市町村教育委員会や学校が、自分事として必死に取組を進めるためには、業務量や働き方改革の取組についての公表を進め、地域の目に触れるよう、「見える化」を進めていくべきです。そうすることで、改善に向けたインセンティブが生まれると考えていますが、現状はまだまだ進んでいないと思います。また、処遇の手立てについては、教師特有のものとすることと併せて、服務監督の仕組みもまた、学校の実態に応じて最適なものとすることが肝要と考えます。
 なお、超勤4項目は、教師の過重労働を防ぎ、健康と福祉を守るための重要な枠組みであり、今後も維持されるべきです。この制度を通じて、教育職員の労働環境の改善と教育活動の質の向上のバランスを取ることが可能となります。あってはならないことですが、処遇改善が実現された場合に、時間外勤務が当たり前ということにならないためにも、現在の項目に絞り、歯止めをすることが重要と考えます。
 以上のことを鑑み、今回の処遇改善全体として、人材確保法による7%以上の優遇分を取り戻す必要があると考えています。教職調整額の水準もそれが実現されるよう改善されるべきと考えます。加えて、教師が専門職であることに応じた対価が反映される賃金体系が必要であり、新たな職・級の創設や学級担任の処遇改善は、年功序列型でも成果主義でもなく、真に頑張っている教師が報われる制度であり、是非とも実現して欲しいと思い
ます。
【貞広部会長】  ありがとうございます。資料3の5ページから6ページにかけての論点、満遍なくコメントいただきました。ありがとうございます。
 今、コメントの中にも民間との比較という視点を入れていただいていますけれども、ちょうど次に、では、その論点も含めまして、橋本委員、お願いいたします。
【橋本委員】  橋本です。包括的な意見になりますけど、御了承ください。
 我々、民間企業におきましても、特に事務職については、管理職は厳密な時間管理を行ったうえで残業を命令するということは、一応建前はそうなっていますけども、実際のオペレーションではなかなか難しいところありまして、実態的には、個々人が自分の判断で残業を行って、それを管理職が追認しているというケースが多いと思います。
 先生方がそれぞれの教育観に基づいて、授業やその準備を組み立てている学校という現場においては、校長先生、あるいは教頭先生の2人しかいらっしゃらない管理職が、個々の先生の業務の状況を把握した上で、時間外勤務を命じるということは、我々、民間企業の現状を見ても、現実的にはさらに難しいのではないかと感じています。
 先生方の自由な裁量と現場のオペレーションを考えた場合には、現在の教職調整額という制度には、私はある程度の合理性があると感じています。ただ、今の社会情勢の中で、その水準が妥当かどうかということについては当然問題がありまして、そこは再考の余地がかなりあるのではないかと思います。
 また、教職調整額は、残業何時間分といった、そういう制度設計ではありませんけれども、仮に例えば20時間に相当する額を払うとすれば、それぞれの先生方に創意工夫を凝らして自由に取り組んでいただきつつ、管理職はそれぞれの先生の経験年数や能力も加味しながら、例えば20時間という範囲の中で、業務が収まるように仕事の量を調整していかないといけないという形になってくると思います。
 さらに、先生方が過労で疲弊してしまわないように適当なサポートを行う、そして、DXによる業務の効率化や働き改革を推進するなどして、管理職には日々の時間管理を超えた大きなマネジメントを行っていただく必要があると思います。
 そんな中で、その枠を超えた勤務は働き過ぎなんだということが職場に浸透して、それぞれの先生方の働き方改革と行動変容が促されて、それが働きやすい職場の実現と、教職員の皆さんのウエルビーイングの向上につながっていく、こういう姿が求められていくんじゃないかと思います。
 何よりも、管理職の方が管理職として役割を果たせるように、学校運営を変えていかなければ、そもそもの問題であります、教師の長時間勤務というのは変わることはありません。また、長時間労働の解消に取り組んだ管理職がきちんと評価されるという仕組みづくりが極めて重要じゃないかというふうに考えています。
 特に、働き方改革をしっかりやっていったかどうかについては、下から見るとよく見えるわけですが、我々も既に実践していますけども、上からの評価、あるいは下からの評価を加味して評価をするという360度評価等も検討の価値があるのかというように思います。
 先ほど戸ヶ崎さんもおっしゃっていましたけども、働き方改革の取組状況を学校ごとに公表し、可視化することも一つの効果的な措置だと思います。何よりも管理職の方々がやる気とモチベーションにつながっていく制度設計をしっかりつくっていくということが極めて重要じゃないかなと考えています。
 これまで特別部会で報告されました、各地の教育委員会の取組、あるいは先ほどの資料にあったような伴走型のコンサルを使った改革など、大変すばらしいものが各地で出てきていますけども、なかなか全体の流れを変えるという力にはなっていないのかなと思います。
 必要なのは、そうした点と点の努力がつながっていって、全体として大きなうねりになっていくことで、そういううねりが自然に全国に広がるような制度や仕組みというものをビルトインすることが大事でありまして、そのためには、管理職の方々が自分自身の判断で適切なリーダーシップを発揮できるような評価の在り方というものは極めて大事かなと考えています。
 さらに、前回の会議で、職階が5段階では少ないということを多くの方がおっしゃっておられましたが、少ないことが悪いわけではありませんけれども、前回も申し上げたように、少ないとどうしても停滞感が出てしまいます。学校現場での頑張り方というのは、我々、営利を目的とした民間企業とは違っていますので、そこは間違ってはいけないと思いますが、しかしながら、働き手が安心して働ける環境、頑張れる環境や、頑張った人が適切に評価され、報われる仕組みというのは、これは別に学校であろうと民間企業であろうと同じ原理かなと思います。
 そして、さらに誰でも意見を言えるような、心理的安全性の担保といったものは学校の現場でも大変重要でありまして、このような風土をつくるための制度設計は、ぜひお願いしたいなというところであります。
 残業代を払うか払わないかという論点になりがちですが、あるべき姿は何かということが大事だと思います。働きやすい職場、やりがいのある環境といった、あるべき姿を明確に定めた上で、だからこういった制度にするんだと持っていかないと、なかなか全体の納得が得られない。そして、あるべき姿を定めた上で、実現に向けた具体的な工程というものを、時間軸を含めて設計し、提示していくことが必要なんじゃないかと思います。
 給与面での処遇を向上させることが必要だということは、そうだと思いますけれども、給与制度というものは、あくまでもツールでありまして、こういう姿を目指していくということを明確にした上で、これから未来像をお取りまとめいただければ、非常にいいんじゃないかと思います。
 以上です。
【貞広部会長】  ありがとうございます。民間企業の御経験から、採用とオペレーションへの目配りが必要なことや水準の再考が必要なこと、そして、何よりも考え方としては、働きやすい職場というところからバックキャストで考えて、工程と条件整備を考えていかなきゃいけないんじゃないかという御提案をいただきました。全くそのとおりだと思います。ありがとうございます。
 では、続きまして、会場から金子委員、お願いいたします。
【金子委員】  連合の金子です。よろしくお願いします。今回、教職の重要性を踏まえた教師の処遇改善の在り方が追加されましたが、資料1で見ると、平成28年からの6年間において時間短縮に取り組んだ結果、30分しか短縮されていないといった実情をしっかり認識すべきだと思っています。
 今回の論議も重要ですけれども、それと同様に、教職員の長時間労働是正に向けた実効策についても、しっかり早急に議論を深めていくべきだと思っております。
 その上で、今日の論点について、2点だけ申し上げたいと思います。
 1点目は、教職調整額の在り方について、教師の職務を包括して評価する現行の在り方を踏まえつつも、労働として認める業務を見直して、時間外労働として認定する業務に見合った対価でしっかり評価をすべきだと思っています。その上で、具体的な水準については、それぞれの教育職場の勤務実態、勤務時間の実態に見合ったものとしていくべきだろうと考えております。加えて、義務教育等の教員特別手当については、人材確保法の理念にふさわしい水準に引き上げていくべきと考えています。
 2点目は、教師の健康福祉確保についてですが、いわゆる超勤4項目は、現状に鑑みると、実態にそぐわないものになっているのではないかと思っています。様々な業務が多岐にわたり、多様化している現状もあります。民間企業で職務の専門性から、労基法第38条の3で、いわゆる裁量労働制を導入しているケースも多々ありますけれども、その場合も、時間外労働に相当する時間分については、しっかりそれに見合う手当相当分が支払われています。
 加えて、労働安全衛生法の観点で言えば、実労働時間の客観的な把握の下で健康福祉を確保する観点から、事業者に対して様々な健康確保措置が義務化されていることも、言わずもがなかもしれませんが、そういった意味でも、教員についても、同様の規律を規定していくべきではないかと、このように考えているところです。
 以上になります。
【貞広部会長】  どうもありがとうございます。そもそも長時間労働是正の実効策が何よりも重要であるという御指摘を踏まえた上で、時間外労働として認定する労働に見合った対価に、教員調整額の水準を引き上げるべきだということや、健康確保措置を義務化していく、もう少し強く働いていくような仕組みが必要であるという御意見をいただきました。ありがとうございます。
 では、続きまして、オンラインから、ちょっとハレーションしていますね。オンラインから熊平委員、秋田委員の順番でお願いしたいと思っております。熊平委員、お願いいたします。
【熊平委員】  ありがとうございます。熊平でございます。
 最初に、時間外勤務手当について意見を述べさせていただきます。教員の処遇改善については、時間外勤務手当ではなく、現在僅かになっている優遇分を高めていくという方向で検討を進めることが望ましいと考えます。
 先ほど、戸ヶ﨑先生がおっしゃられたように、教員の職務の本質というところから考えても時間外勤務手当は適していないと思いますし、それ以外にも幾つか理由がございますので、コメントさせていただきます。
 その根拠としまして、一番大きな点は、教員の業務が非常に多岐にわたっており、授業以外にも大変多くの幅広い職務があるという現実があります。そして、一人ひとりの先生が何を担うのかは様々な背景により異なるという現実がございます。
 先生の職務の違いが生まれる背景は、大きく5つに分類されるのではないかと思います。一つ目は、児童・生徒の多様性です。先ほどの御説明では、児童・生徒の人数が、教員の勤務時間に影響するというお話もございましたが、人数だけではなく子どもたちの特性や多様性により先生に期待される事柄は全く変わってまいります。当然その結果、時間の使い方も変わってまいります。また、地域や、そこにいる大人、そして、保護者の状況によりまして、先生方の負担も全く変わってまいります。
 さらには、先生方の能力の差が、勤務時間に反映される場合があります。能力の差は、経験値によるところも多いと思いますが、例えば新任教員の方が担任になった場合には、すべての授業の準備をゼロから行うために、準備に長時間要することになります。また、組織編成によって、例えば20代が非常に多い組織の中で、40代のベテランがいらっしゃれば、その先生は、より多くの負担を負うことになりますので、所要時間が変わってまいります。
 そして、最後に、スクールリーダーの組織マネジメント力によって生産性が変わりますので、校長のマネジメントスタイルにより、先生方の時間の使い方が変わります。このように、先生の業務を一律で捉え難い現実の中で、時間という尺度を用いる時間外勤務手当を適応することは現実的ではないと考えます。
 このほかに、あと2点申し上げたいことがあります。1点は、ベテランの方たちが本当にいろいろな形で負担を多く負っているという現実に対しては、適切な報酬を提供できるような環境をぜひ御検討いただきたいということです。
 そして、最後に、今、教育が大きく変わろうとしていることについて触れさせてください。今、この議論が、できる状態ではないなと正直思っています。しかし、時代が求める教育は、従来のように、教科書どおりに教えるという教育ではありません。個別最適という言葉も独り歩きしておりますが、個々の子どもたちの様子を見ることは、非常に時間を要することです。また、一人ひとりの子どもに合わせて最適な指導を行うために、あるいは探究型の教育を行うために、教育をデザインすることも、実は今、先生方に求められ始めております。
 個別最適な学習も、探求型学習も、その準備には時間を要します。また、新しく始めることでもあるので、先生方においても、学びの時間も必要になって参ります。本来であれば、先生方が学ぶ時間も含めて、先生たちの勤務時間の中に組み入れられることが望ましいと思います。少し前ですと、東京都では、水曜日の午後に半日、先生方も研究の時間を持つことができていたと記憶しております。将来的には、自己研鑽の時間も含めた時間配分が可能な人材配置や環境整備が必要であると考えます。
 長くなりました。以上でございます。
【貞広部会長】  ありがとうございます。現状のみならず、今後の教育のありようの転換を見据えた御提案をいただきました。どうもありがとうございます。
 この後ですが、秋田委員に御発言いただきますけれども、その後、鍵本委員、妹尾委員に手を挙げていただいているんですが、吉田信解委員が途中で退室されると伺っておりますので、秋田委員の後、吉田委員に先に御発言をいただきたいと思います。申し訳ありません。お願いいたします。
 では、秋田委員、お願いいたします。
【秋田委員】  ありがとうございます。学習院大学の秋田です。
 これまでの御発言にもありました、戸ヶ﨑委員や、熊平委員も言っておられましたけれども、公教育の中核を担う教員は公的な使命、それに対して、専門家として働く時間の質ということが重要であります。それによって先ほどもお話がありました全人格的な子供を幸せのために育てていく、そのために包括的にその仕事が評価されていく、また、チーム学校として育てていくということが極めて重要であろうと思います。
 今回の勤務実態調査を見ますと、回帰分析結果からは、6歳未満のお子さんを持っている方たちの勤務時間が有意に低い結果が出ています。私は、これはお互いに学校の中の教職員の同僚性があって、保育園などのお迎えの時間で、みんなが働きやすいような理解や支え合いを行うことによって、これが可能となっていることを示しているのではないかと思っています。
 学校がチームとして、お互いに支え合ったり、互いに思い合いながらやっていくことが学校としての管理職のリーダーシップとともに重要であり、単純なクロックタイムとしての個々人の時計の勤務時間と、業績や成果というものを直結させて考えることでは難しい問題がいろいろあるのではないかと考えています。
 今の実際の時間外の勤務手当に関しましては、戸ヶ﨑委員も言われましたけれども、私は基本的に、勤務時間外を管理職が管理するということは高度専門職の自立性というものを損なうとともに、管理職の業務の負担をさらに増やすだけであるので、これは適切ではないと考えます。
 その代わりに、教職調整額の在り方を考えるべきであります。先ほど資料2のほうで、諸外国の事例が、21ページのほうでありまして、韓国以外では時間外の調整が支払われていないということです。アメリカのワシントン州やオーストラリアの事例というのが出ていました。これらの事例の元の調査報告書も私は、ダウンロードして読んでみましたけれども、初任給において一般公務員に比べて、もちろん諸外国が直接日本と比較はできませんけれども、オーストラリアなどでは、公務員でおいても10%以上、12%近く高くなっている。やはり専門職として妥当な初任給というものを上げていくということが、人材確保というような点からも極めて重要な点になっていると思います。これが世界各国、高度専門職ということを認めていくための一つの手立てとしてなっているのではないかと考えるところであります。
 実は、あと、休暇や時間の使い方ということで、今回、上限とともに、変形裁量労働制もできるように、公立学校の教員でもなっているにもかかわらず、実際の自治体で導入ができないのはなぜかというと、上限の時間の42時間というところまで勤務が五時間が減っていないからというようなところもあると聞いております。この辺りについて、今後さらに考えていく、そして、教員が専門家として働くべき仕事と、今回いろいろなデータを出していただいていますが、例えば不登校の支援であったり、それから事務的な支援であったり、部活動の支援など、チーム学校として、教員の調整や時間の問題とともに、学校として、どういう形で、より教員たる仕事ができるためにリソースを当てていくのかというようなことの財源ということについても考えていく、一緒に考えていくことによって、教師の働く質、時間の質を上げていくという発想が重要ではないかと考えるところでございます。
 ぜひとも、福祉や健康の確保というようなところでも、まとめて休暇が取れるというようなことを考えていくことが必要ではないかと思います。以上です。
【貞広部会長】  ありがとうございます。働く時間の質、クロックタイムではない働く時間の質をいかに上げていくかということを考えたときに、高度専門職としての自立性を担保し、管理職の負担を増やしていかないためには水準を上げていく。または、全体のリソースをもう少し手厚くして、まさに質を底上げしていくのが必要であるという御意見をいただきました。ありがとうございます。
 では、オンラインから吉田信解委員、お願いいたします。
【吉田委員】  すいません、途中退席ということで先に発言をさせていただきます。お許しいただきたいと思います。
 先日、小中学校で、公立小学校で卒業式がございまして、行ってまいりましたけども、本当に感動の卒業式を見ることができました。特に中学3年、本当に感動して、生徒からも声をかけられて、生徒が退場していくときの姿、先生方にも拍手を送りたくなったわけでございます。
 校長先生と帰りがけに話しましたら、市長、あの大泣きしていた先生は初担任なんです。あれで一遍に苦労が報われて、また一生懸命教員として頑張るでしょうという、そんな話を聞かされました。
 そのときに校長と雑談したんですけども、端的に言いますと、校長が言うには、我々管理職というのは教員の勤務時間を見るのではなくて、教員の教員としての状態、今どのくらいエネルギーがあるかな、どのくらいエネルギーがないかな、今はどうかな、そういう状態を見るんですよねという話でございました。
 私もまさにそうなんだろうなと思うわけでございます。難しいことは申し上げませんけども、教員全体の給与、今の状況については、しっかりと確保していくということ。時間外勤務とかというのではなくて、教員を教員として見て、しっかりと処遇を図るということが大前提として、私は大事なんだろうなと思っているところでございます。
 そんなことで考えれば、ぜひ調整額の優遇分が僅かとなっているなんていうことは、これはしっかりと是正をしていただきたいわけですし、それから、先ほどからもお話が出ている学校の、学校ごとのいろいろな個性というんでしょうか、地域性ももちろん実はあるんです。いろいろな課題を抱えている学校もありますし、地域によっては、実は課題の多い地域なんていうのもあるんです。
 これ、それを全体的に見て、学校をどのように支援しようかという視点は絶対大事なんです。大事なんですけども、それを公表するということについては、少し私は議論があってしかるべきかなと思うんです。公表はすべき部分と、あまり公表しちゃうと、あの学校は要するにいい環境だとか、この学校は悪い環境だと、それだけで、先生たちが外に対していろいろなことを説明しなきゃいけないということにもなっていく。大事なんです。公表することによって、いろいろ説明することは大事だし、改善すべきは改善するというのは非常に大事なんですけども、過度な公表が、先生方が要らぬことまでまた負担が増えるというか、説明しなきゃいけなかったりなんだり、そういうことになってほしくないなと私自身は思うわけでございます。
 もちろん比較をしっかりして、どの学校がどういう状態にあって、だからこの学校には、どういう支援が必要かということを検討していくということは、これはぜひ必要ですけど、それは全部公表してやるというよりも、しかるべきところで情報共有をしながら支援していくということも、私はあってしかるべきなのかなと感じているところです。
 雑駁な言い方になりましたけど、申し訳ございません。この後、警察のほうで春の交通安全運動に行かなきゃいけないので、これで失礼いたします。ありがとうございました。
【貞広部会長】  大事な業務の前にありがとうございます。今、吉田信解委員まで、6名の委員の方に御発言をいただき、多岐に及ぶ御意見をいただいているんですけれども、共通しているのは、6名の方、全ての方が優遇額の水準が低過ぎる。これは上げなきゃいけないということを共通しておっしゃっていただいております。吉田委員にもそのような御意見をいただきました。ありがとうございます。
 では、鍵本委員、お願いいたします。
【鍵本委員】  鍵本でございます。私からは3点申し上げます。
 まず、1点目は、論点の中では、(4)の➁に関連をいたしまして、時間外勤務手当についてであります。前々回の会議でも申し上げましたけれども、仮に時間外勤務手当を支給するとした場合に、教員が行う個別具体の職務について、学校管理職が、時間外勤務命令を発することができるかと言えば、これも多くの委員がお話しになられましたけれども、実務上、難しいと言わざるを得ないと私も考えます。
 そして、管理職が個々の教員の勤務時間管理を行うことは、少数の管理職に対して多くの教員が在籍をしております現在の学校管理体制では困難だと思っております。それをあえて行えば、管理職と教職員間に無用の軋轢を生じさせ、学校現場に混乱を起こすことになると考えております。
 申し上げるまでもありませんけれども、教員の職務は、その自発性、創造性によるところが極めて大きく、多様な子供たちがいる状況の中で、個々の子供に応じた指導や支援を各教員が判断しながら進めているものでありまして、管理職がその内容を把握し、時間外勤務命令の判断をすることは極めて難しいと思います。
 もし、管理職から、その判断を受けることに伴います混乱が生じた場合には、教員がその混乱を回避するために、教員の自発性や創造性を生かした仕事の進め方を手控えるようになりますと、子供たちにも影響が出てしまうことを私は心配しております。したがいまして、教員の職務の特殊性を生かすのならば、勤務時間の内外を問わず、その職務を包括的に評価いたしました現在の教職調整額の在り方自体は維持しつつ、これも先ほどお話がございましたけれども、その水準を見直すことが適当であると私も考えます。
 次に、2点目でありますけれども、同じく(4)の②にあります、時間外勤務手当となった場合に、時間外勤務の削減に向けたインセンティブが民間企業と同様に機能するかということについてであります。もうこれらも御承知のように、小中学校の多くは市町村立の学校でありまして、その服務監督権は市町村の教育委員会にありますが、給与は、県費負担教職員制度によりまして県教育委員会が負担しております。こうした構造の中では、仮に時間外勤務手当になった場合におきましても、民間企業のような時間外勤務手当を削減しようとするインセンティブは、服務監督権者である市町村教育委員会に対して直接には働かないと考えます。
 本県では、今後どういった観点について、働き方改革をどう進めていこうとしているのか、市町村教育委員会と一緒に連名で方向性を文書に記して、各学校に向けて示すことにしております。その作成に当たっては、考え方や実態の違いから様々な意見がありましたが、多くの議論を重ねて同じ方向を向くことができました。しかし、今後、働き方改革の実効性を上げていきますためには、県の教育委員会と服務監督権者である市町村教育委員会がしっかりと連携を図りながら、その状況も共有し、同じ方向性を持って、PDCAサイクルを回し、その進捗を共に確認していく取組が必要になるのではないかと考えます。
 最後に3点目ですが、(4)の④にあります、いわゆる超勤4項目の在り方についてであります。この超勤4項目は、申し上げるまでもなく、時間外勤務が生じないようにする原則の中で、あくまでも例外的に認めたものでありまして、勤務時間外に勤務を命ずる場合においても、臨時、または、緊急のやむを得ない場合に抑制的に用いるものであると私は考えております。そう考えるならば、この超勤4項目の内容を増やすことは、時間外勤務を認め、増やすことにつながりますので、変更すべきではないと私も考えます。
 いずれにしましても、働き方改革の推進や定数改善等の充実に一体的に取り組んでまいりますことで、このことについても検討しなくてもいいような職場環境をつくり出していかなければならないと考えているところであります。
 私からは以上です。
【貞広部会長】  どうもありがとうございました。よろしいですか。
 主に、(4)のマル2について中心的にお話をいただきましたし、今後、全体の改革を一体的に進めていかなければ何よりも進まないというコメントや、また、県の教育長というお立場から、県の教育委員会と基礎自治体の教育委員会との連携の重要性も御指摘いただいたこと、これはとても重要な御視点かと思います。ありがとうございます。
 それでは、続きまして、妹尾委員、お願いいたします。
【妹尾委員】  妹尾です。よろしくお願いします。最後のほうに参考資料7があると思いますので、それをかいつまんでお話をさせていただこうと思います。給特法についてなのですけれども、幾つか選択肢はあると思います。1から5まで書いていますが、これ以外もあるかもしれませんけれども、考えていく必要があるだろうと思います。
 次のところにアンダーラインを引いていますけれども、何を重視して各選択肢を評価するのかというのはかなり難しいですけれども、幾つかあるかと思います。一つは、働き方改革や健康確保の観点からいいかどうかという点です。2つ目は、イで書いてありますように、優秀な人材を引き付ける上でいいかどうかというところです。ウは、先ほど来、皆さんからもありましたように、教職の重要性を踏まえた処遇として妥当かどうか。これは具体的に言うと、給与水準が高いかどうか、あるいは裁量が大事にされているかどうかといったことが関係すると思います。
 一方で、エ、オで書きましたように、コストだとか副作用もしっかり考えないといけないので、こういったことを総合的に勘案して、どの案がよりいいのかということをしっかり考えないといけない。あるいはどれかの案にした場合に、副作用がなるべく少なくなる施策も合わせ技で打っていく必要があるという、当たり前の話ですが、考えていく必要があると思います。
 時間がないので、選択肢1、2は読んでいただければいいかなと思います。
 「選択肢3は」と1ページ目の下に書いてあるところと2ページ目のところを申し上げますけれども、こちらは調整額が上がるということであれば、その額にもよりますけれども、処遇の改善ということにはなるんだろうと思います。ただ、これは問題がないわけではなくて、この会議では多分、選択肢の3を支持される方が多そうな雰囲気ではありますけれども、一番の問題の一つは、2ページ目の真ん中の辺りに書きましたとおり、時間外勤務の多くが、教員の自主的、自発的ということで、労基法上の労働には当たらないという問題。これは平成31年の前回の中教審答申の積み残しですけれども、これを解決できないという問題があります。具体的に申し上げますと、例えば土曜日とか日曜日の部活動指導については、手当や旅費ということで公費が出ているにもかかわらず、時間外勤務命令を出したものではないという位置づけで、要は、労基法上の労働ではないという、よく分からない、非常にちぐはぐな法制度上になっていまして、こういうのも含めて、本当にいいのかということはしっかり考えないといけないです。先生方が勝手にやっていますというわけではないんでしょうけれども、言わば、そういうふうに労働として認めないということで、本当に高度専門職だと我々が幾ら言っても、これはそういう制度のままでいいのかということはしっかり対策を考えていく必要があるだろうと申し上げたいと思います。
 では、選択肢の4のように、労基法完全適用にするという案ももちろんあるわけですけれども、これについては当然メリット、デメリット両方あるかなと思います。これについては、学生さんの調査とかを見ていると、やはり残業代が出ないのはおかしいよねという意見が結構多いので、素直に言うと、選択肢4というのは一番素直な方策かと思います。一方で、もう一つのメリットとしてはやはりコスト意識ということで、例えば、今、卑近な例で言いますと、教員がプールの管理までさせられているというのは、多分そういうのをやっても追加的な財政コストがかからないというのは、コスト意識があまりないという教育行政の癖かなと思っておりますけれども、一部の附属、国立附属の学校でもありますけれども、時間外勤務手当化することでコスト意識が高まって、働き方改革がより抜本的に進むという例も報告されているのではないかと思います。
 また、先ほど委員の方からも、服務監督と県費教職員制度が違うという話は、もちろんそれはそうなのですけれども、だからといって、できないというわけではないと思うので、これも、例えば今も教職員の旅費については、県費教職員の分は県負担ですけれども、だからといって、湯水のように旅費を使うような基礎自治体は皆無だと思います。そのことも含めて、本当にそういう理屈でいいのかどうかというのは考えないといけないと思います。
 一方で、戸ヶ崎さん含めていろいろな方がおっしゃったように、むしろ残業削減にディスインセンティブになる場合もあるので、これは功罪両方あるかと思いますし、しかも、長くなるので、あとは読んでいただければと思いますけれども、細かく管理職が、「本当にこの時間外が必要なの?」みたいな感じで、あるいは勤務時間の中でも、「この仕事、必要なの?」みたいな形で、放置もいけないんですけど、介入し過ぎても、マイクロマネジメントになり過ぎても非常に裁量が損なわれてしんどいと。この辺、難しいバランスが必要ですけども、考えられると思います。
 あるいは可能性の高いシナリオとしては、ここに書いてありますように、一部の国立附属、委員の中にも附属学校を持たれている方が多いのでよく御存じだと思いますけれども、時間外勤務手当を出すという制度になったとしても、ほとんど申請もされていないみたいな実態のあるところがあって、ほとんど機能していないというような、これはあくまで実態論ですけれども、そういう心配もあるので、本当に選択肢4でハッピーになるかどうかというのはよく考えないといけないと思います。
 一方で、その他の選択肢としては、小川正人先生が提案されていますけれども、一定の時間外が長い方には振替休暇を取って、もっと健康確保に努めようという制度に変えてはどうか。あるいは、その方が振替休暇を取るときには非常勤講師を充てるなどして対策すればいいという案もあります。これも一つの検討課題かなと思いますけれども、ただ、夏休みまで待てないですし、非常勤講師が本当に見つかるのかという問題もありますので、これも難点があるということです。
 4ページ目ですけれども、大学の先生に裁量労働だとか、あるいは高度プロフェッショナル制度をやっている民間もありますけれども、これも今の裁量を大事にするという意味では一つの選択肢かなと思いますけれども、小中高等の先生方はほとんど勤務時間の内容をコントロールできるわけではないので、朝からいないといけないという仕事が多いので、なかなかこれも難しいというところで非常に難しいと思います。
 ただ、今の給特法は、先ほど申し上げましたように、自発的業務として荒く時間外を非常に処理していますし、かといって、高度プロフェッショナルのような処遇を、高いものを用意しているわけではないので、非常に中途半端な制度になっているということを申し上げたいと思います。
 では、どうしていくかについては、また今後も議論していきたいと思いますけれども、例えばここに書きましたように、労働基準監督機関の在り方なども含めて、あるいは勤務間インターバルなどの健康確保なども含めて、いろいろな施策と組み合わせながら、どういうことがより望ましいだろうか、副作用がより小さくなるだろうかということを考えていく必要があると思います。例えば調整額を上げるだけで時間外勤務手当にしないという選択肢を取ったとしても、その調整額を勤務実態調査に応じて、定期的に見直していくとか、そういった制度を変えていくだとか、そんな選択肢も含めて考えていく必要があるかなと思います。
 私からは以上です。
【貞広部会長】  ありがとうございます。処遇改善について幾つかの選択肢を、功罪を丁寧に整理して、可視化をしていただきまして、ありがとうございます。その中でやはり4ページ目に、もう最善の策も、100%も完璧という策というのはないので、何よりもほかの関連制度と合わせ技で考えていくという、この部会でもそういう視点で皆さんに議論していただいていたと思いますが、この点が御指摘いただいた点の中でもとても重要であろうかなと伺いました。どうもありがとうございます。
 それでは、次、オンラインから西村委員、お願いいたします。
【西村委員】  成蹊大学の西村です。3点ほど意見を述べさせていただきます。
 まず、今日追加説明いただいた勤務実態調査の結果ですが、実際の勤務時間はもっと長いのではないかと危惧しています。こうした状況を改善するには、市町村教育委員会による服務監督の強化が必要だと考えます。「上限指針に規定する教育委員会が講ずべき措置に関する取組状況について」の御説明で、取組調査を実施していないというところも若干ありましたし、もっと深刻なのは、服務監督教育委員会として取組をしているにもかかわらず、十分改善されていないということです。今の仕組みがきちんと機能していないということです。
 こうした問題を是正して取組を強化するには、市町村教育委員会にコスト意識でインセンティブを与えるというのは難しいようなので、教員の健康を守り、教育の質を確保する上で、市町村教育委員会が極めて重要な責任を負っているということに強い使命感を喚起することを軸に、改めて効果的な取組の徹底をお願いし、取組が不十分な市町村教育委員会については、都道府県教育委員会が一緒に原因究明に当たり、指導やサポートを行うことで勤務環境改善への取組を強化するべきだと思います。
 PDCAサイクルの活用は確かに意識改革に効果があるかもしれませんが、実効性ある取組が行われてこそ、PDCAサイクルに意味があるので、ここは取組の内容の検討と実践に本腰を入れていただきたいと思います。
 2点目ですが、給与の改善については、前回も申し上げましたが、業務の見直しや意識改革を徹底した上で、本来的業務については、その量や質に配慮して給料表で支払う。一時的あるいは追加で行う職務については手当等で処遇するという、職務を基準としたシンプルな仕組みが大原則であるべきだと思います。
 長時間労働がなかなか解消しない現状を見ると、残業手当を支払うべきという考えも説得力はありますが、時間を基準に支払う時間外勤務手当は、先ほど来出ておりますように、長時間労働を助長する危険もあり、単位時間当たりの業務の質の違いを無視した不公平も生じかねません。本当は業務の質もきちんと評価して処遇に反映できるのが理想ですが、人事評価の活用が進んでいる民間でもなかなかうまくいっていないので、そうした理想は今回はひとまず置いて、まずは業務を基準に処遇を改善するのが妥当だと思います。
 3点目ですが、そうした原則で考えると、教職調整額や義務教育等教員特別手当といった仕組み、これは公務員の他の職種に比べて高い給与水準にするためにつくられたものだと思いますが、今の御時世、行政(一)との比較にこだわった給料表にし続ける必要性もないと思うので、長期的には給料表の金額に組み入れ、なおかつ職責の重さや人材確保の観点から給与水準全体を大幅に引き上げていくべきだと思います。
 ただ、それには時間がかかるので、短期的には多くの委員の御意見同様、教職調整額や教員特別手当を大きく引き上げる措置が必要かと思います。あるいは担任業務の負担の重さを給料表への格付で評価できないのであれば、全員に配っている教員特別手当を見直して、担任に対する手当に変えるなど、何らか手当で対応してもよいのではないかと考えています。
 以上です。
【貞広部会長】  どうもありがとうございます。市町村教育委員会の服務監督権をいかに実効化していくかということの重要性と、処遇については、時間ではなくて業務を基準に処遇改善してプラス手当という仕組みをつくっていくべきだと。前回も西村委員から御意見をいただいたことをさらに詳しく御意見を述べていただきました。どうもありがとうございます。
 では、次もオンラインから澤田委員、お願いいたします。
【澤田委員】  先生の幸せ研究所の澤田です。先ほど委員の方から働きやすい職場づくりの制度や仕組みのビルトインという御発言があったかと思いますが、全く同感です。
 私からは3点あります。給与の議論と同時に欠かせない視点で、健康・福祉確保の視点についてです。教師にふさわしい措置というものが必要だと思いますが、服務監督教育委員会が教員の命と健康を絶対に守る責任というのを果たすためには、学校の裁量だからということでお茶を濁しっ放しにできない仕組みにする必要があり、上限時間を超える教員をどれぐらい減らせたかなどを指標とするなどして、着実な改革実行サイクルを徹底していくべきだと考えています。
 2点目は、現場の着実な変化についてです。先ほど事務局から少し報告があった伴走型実証事業には、私もコンサルタントとして、実際に現場の先生方に伴走しました。こうした事業では、やらされ参加の経験がある先生も相当数いると思いますが、今回の参加校からは、もし今後も事業があるなら継続参加を希望するという声が多く、また、あるベテランの先生からは、この年齢になっても考え方も行動も変化することができて驚いて、楽しかったという声もありました。
 今回の事業では、学校現場の尽力と、そして、適切な伴走が合わさったときには、着実によい変化を生み出せるということが示せたのではないかと思っています。とはいえ、日本中全ての学校に民間企業が入るということは現実的ではありませんので、そこは服務監督教育委員会による支援と、もしそれがうまくできない場合には、後押しする都道府県教育委員会の支持が欠かせなく、そのことをセットとして仕組み化することが必要だと考えています。
 3点目です。勤務実態調査の結果を見ますと、管理職がリーダーシップを発揮し、働き方改革を進めており、かつ、自身の時間管理意識が高まったと考える教諭は、相対的に心理的ストレスの状況が良いというわけで、つまり、在校等時間だけではなくメンタルにもよいということです。これは私が学校現場でコンサルとして見る事実とも一致しています。処遇改善の度合いやスキームを考えていくというのはもちろんのことですが、それとともに、校内での具体的な取組のPDCAサイクルを通じた、各学校で中身のある働き方改革の実効性を担保する仕組みづくりをぜひお願いします。
 以上です。
【貞広部会長】  ありがとうございます。あと、委員の方々から複数名、手を挙げていただいておりますが、終了時刻が見えてきてしまいましたので、3分程度でお話をいただければと思います。私も余りコメントを挟まないようにしたいと思います。
 では、会場から川田委員、お願いいたします。
【川田委員】  ありがとうございます。資料3の5ページ、6ページの中で、マル2、時間外勤務手当、マル3、教職調整額の在り方の辺りを中心に、若干のことを述べたいと思います。
 まず、こうした時間外勤務手当であれ、教職調整額であれ、在り方を考える際には給与制度全体、あるいは働き方、あるいはそれに係る勤務制度なども含めた枠組みの中で考えていく必要があるということは、他の委員からも指摘ありましたが、言えるかと思います。例えば、仕事に見合った処遇になっていないというような問題があるとしたときに、仕事の在り方を見直すということも考えられますし、あと、仕事に対して報われるような制度を考えるときに、前回議論されたような給与等級が上がるという形とか、勤勉手当などで対応することも可能性としては考えられるわけで、そういったことも含めた中で考えていく必要がある問題だと思います。
 それを前提として、時間外勤務手当とか教職調整額の在り方について、専門である労働法の視点を踏まえて考えてみると、労働法上は、ここで言う時間外勤務手当というのが労働基準法上の割増賃金という形で、原則的には全ての働く人に適用される最低基準として、原則のような位置づけにあり、それに対して教職調整額のような仕組みは特例というような引受けになるわけで、他の労働基準法等の労働時間に関する特例の在り方なども踏まえて考えると、このような特例が適切なものかという点は、そういう原則、つまり、最低基準とは異なるような仕組みを設ける必要性が十分にあるか。また、原則的な最低基準を動かすという観点からすると、そういうことをしても十分な保護は確保されるのかどうかという、この2つの点が重要な視点になると思います。
 そのような観点から具体的にいろいろな切り口はありますが、特に重要だと思うのは、これまでも議論されてきている教員の高度専門職、専門性を発揮するような形で、自由度を持った働き方をする制度という観点からの特例ということが十分積極的に言えるかというところだと思います。
 ここからの具体的な検討は、既に多くの委員の方もおっしゃっているとおり、時間に応じた賃金制度とした場合の時間管理の難しさという観点があるほか、一定の専門性を持って、需要度を持って働く働き方には、必ずしも厳密な時間と比例しないような処遇が合っている面があると言える一方で、これまでの給特法というのは、この特別部会の議論の出発点でもあると思いますが、教員の働き方は、実際にはなかなか、仕事の進め方とか期間を自分自身でコントロールし切れない。そういう意味での他律性を持った働き方というのが相当程度あると考えられるにもかかわらず、教員の働き方として、自発性、創造性といったところが、ある意味、過度に強調されて、働き過ぎに対する歯止めが十分にかからない事態もでてきてしまったというところもあるわけで、そのような観点から、時間もありますので要点だけにとどめますが、特に正規の勤務時間外の他律性の高い業務をできるだけなくしていくとか、専門性を発揮するような、自由度を持った働き方をどれだけ確保できるか。あるいは、時間ではないとしたら、専門職としていい仕事をしたときにどのような形で報われるかということをはっきりと示すことといった辺りが、このような特例的な制度のほうが良いと考えるかどうかの決め手になるのではないかと思いました。
 最後、時間もありますが、あと2点だけ。教職調整額のような制度を設ける場合の手当ての水準については、他の委員からも増額あるいは実態に合った水準にという御意見が出ていますが、先ほど述べた特例的な制度とするときにも保護は十分である必要がある、原則的な扱いにしての保護が十分に確保される必要があるという観点からは、やはりある程度勤務状況を踏まえた水準である必要があると思いました。
 それから最後ですが、超勤4項目については、ある程度実態を踏まえて考える必要はあると思いますが、基本的には先ほど述べたように、正規の勤務時間外の他律的な業務というのは、基本的になくしていく方向が望ましいと言えますので、そのような観点からは、真にやむを得ないものに限定するという視点が大事だと思います。
 以上です。
【貞広部会長】  ありがとうございます。実は他律性の高い業務がたくさんあるのではないかという、大変重要な点を御指摘いただいたと思います。ありがとうございます。
 では、オンラインから露口委員、お願いいたします。
【露口委員】  失礼いたします。私から2点ほど申し上げます。
 一つは、マル2の1の処遇改善についてです。時間に対して措置する時間外勤務手当よりも、担当する業務やポストへの手当のほうが業務効率上、また、公正性の観点から妥当でないかと思われます。この辺りは西村委員と同じ見解でございます。この場合、どのような業務を手当てしていくのか、優先順位を上げて処遇を改善していくのかという話になりますが、今回お示しいただきました資料1の教員勤務実態調査、6ページの回帰分析の結果ですかね。こちらが大変参考になると思います。こちらの回帰分析の結果には、在校等時間に対して強いインパクトを与える要因が示されています。特に2つの要因に注目したいと思うのですが、1つ目が、担任学級生徒数です。標準化係数は小中学校共に最大になっています。小学校は、担任学級児童1人につき1.27分増、仮に40人学級だと約51分の増加が見込まれてしまいます。中学校は、担任学級生徒1人につき0.88分、40人学級だとすると約35分、増加することになります。これは担任を持つか持たないかで相当大きな変化があるという結果になっています。
 もう一つは主任職への就任です。例えば一番大きな教務主任で言いますと、小学校で36.42分、中学校で34.42分ありますので、教務主任するかどうかで30分以上の差が出てきていると。こういった長時間勤務へのインパクトが強い業務であるとか、ポストへの就任というのがほとんど処遇されていない状況というのは、望ましいものとは言えないと思います。これまで言及してきましたが、やはり学級担任、主任業務等への処遇の拡大ですかね。こちらの重視というのが必要かなと思います。
 もう1点でございますが、4の2の働き方改革の実効性の部分です。この点はもちろん重要なのですが、読んでいきますと、やはり在校等時間のみを働き方改革の成果指標とすることに対するリスクを考慮する必要があるのかなと思います。教員勤務実態調査のほうでは、在庫等時間以外にも、先ほど紹介ありました心理的ストレスや、やりがい、働きがい、幸福感等、多様な指標の例を出してくれておりますので、そちらを参考にした自治体レベルでの指標設定が必要かなと思います。
 実効性保障のためには、これも資料1の7ページで出ておりましたし、また、橋本委員も言及されておりましたが、管理職のリーダーシップがやはり市町村教委の担当者、学校管理職共々必要かなと思います。いきなりやれと言っても難しいと思いますので、やはり担当者の学び直しの機会を教育委員会、教職員支援機構、教職大学院等で設定する必要があるのかなということを意見として申し述べさせていただきます。
 以上でございます。
【貞広部会長】  ありがとうございます。
 では、続きまして、会場から藤原委員、お願いいたします。
【藤原委員】  ありがとうございます。国立教育政策研究所の藤原でございます。2点申し上げたいと思います。
 1点目は、諸外国における超過勤務に関する処遇についてでございます。もう既に秋田委員からも安井財務課長からもお話があったところでございますけども、関連資料21ページにお示ししているのは、委託研究のPwCの調査結果を要約したものでございます。私は、この調査に指導、助言を行う有識者会議の主査として関わっておりますので、少し発言させていただきたいと思います。
 調査では、諸外国における超過勤務に対する処遇について、4つの類型に整理しております。調査対象の9か国、地域的なバランスも考慮しながら選定しておりますけれども、超過勤務時間を測定し、それに対して追加的な給与を支給するという、超過勤務手当の支給制度を導入している国は、韓国、ドイツのみとなっております。各国とも教職の特殊性を踏まえた仕組みをそれぞれ構築していると考えられます。
 超過勤務手当の支給制度を導入しない論理の一つとして、専門職という考え方がございます。例えば、イギリス、アメリカ、カナダなどにおいては、教員は、裁量と自立性を有する専門職として位置づけられて、超過勤務手当の支給制度の適用外となっております。また、別の報告書、諸外国教員給与研究会の報告書でございますけども、例えばイギリスにおいては、教員自身も、時間外勤務手当を求めることは、教職を専門職でないとみなすことになり、勤務時間内外の線引きをすることは非常に難しいという考え方から、時間外勤務手当の導入を求めていないという意見も紹介されております。もちろんどの制度も課題はあるわけでございますけれども、専門職としての教師という前提からは離れないほうがいいと私も考えております。そういう意味で、現行制度にも一定の合理性があると考えております。
 2点目でございますけども、超過勤務手当の支給制度以外の超過勤務手当を抑制する手当についてでございます。超過勤務手当の支給制度というのは、超過勤務を抑制する一つの仕組みにすぎません。したがって、諸外国においても、その手法を取らないからといって、必ずしも超過勤務の抑制に取り組んでいないことを意味するわけではないわけでございます。諸外国においても、教職員定数の改善、担当授業時数の減少ですとか、あるいは教員業務の見直し、代休制度の充実など多角的に取り組んでおります。我が国においても、教職員定数の改善を含めて、多角的に超過勤務の抑制に取り組むとともに、ぜひ改革に取り組むための新しい制度の導入について、御検討を調整していただきたいと思っております。例えばインターバル制についても非常に重要な論点だと思っておりますし、こういうインターバル制の導入も含めて、各教育委員会の取組というものをこれまで以上にモニタリングして、そして、超過勤務の抑制の実効性を高めるための体制整備について、ぜひ国民の理解を得ながら、新しい仕組みをつくっていただきたいと考えております。
 以上です。
【貞広部会長】  どうもありがとうございます。
 では、同じく会場から青木委員、お願いいたします。
【青木委員】  東北大学の青木でございます。私からは3点申し上げたいと思います。
 まず、この部会の名称を改めて考え、そして、部会に与えられた諮問事項等を想起しますと、やはり類似の平成のときの特別部会と、今回の令和の特別部会で少しミッションが違うのかなと思いました。処遇改善と、それから、勤務時間、長時間勤務をどう一体的に解決するかというミッションが、令和の今回の特別部会には与えられていると思います。その意味で想起されるのが、給特法を中心とする昭和40年代から50年代にかけての一連の立法過程でございます。教特法、給特法、人確法という流れで、そのとき、処遇改善と長時間勤務の解決が図られたわけです。
 そのことを踏まえますと、1つ目として申し上げたいのは、給特法の教職調整額、これを政策目的に対応する政策手段として改めて注目すべきと考えます。具体的には、教職調整額を少なくとも10%以上にすることによって、当時実現した一般行政職に対する7%の教員給与の優遇措置というものを改めて回復することが可能となると、私自身も文科省の資料を踏まえて試算しているところです。もちろんこの背景には、当時も今もそうですが、教職調整額には勤務時間を一切考慮しないというわけではございませんので、その要素も加味しているということを認識しての意見です。
 それから、2つ目ですが、政策手段として超勤4項目を動かすということももちろん考えることができるわけですが、私の意見からすると、教職調整額を大きく動かすわけなので、現時点では、超勤4項目については動かさないほうがいいだろうということを申し上げておきたいと思いますし、間違っても増やしてはいけないと考えております。
 最後3点目ですけれども、教職調整額も引き上げるということを前提として、やはり健康・福祉確保措置というのは非常に重要なことになってくると思います。思い起こせば、昭和46年の第65国会で給特法の立法過程で、当時の担当局長の答弁で、校長に対して勤務時間管理をしっかりするよう指導していくという答弁があるわけですが、もう今や、さらにそれを踏まえて仕組みで対応するということが重要だと思います。具体的には、給特法の中でそういった服務監督教育委員会が在校等時間の公表など、踏み込んだことをしっかり実現するような仕組みづくり、この仕組みが実現するような立法措置が必要だと考えております。
 最後ですけれども、あと裁量的な働き方をするということが想定されていますので、管理職もそうですけれども、一般の教員にも働き方というものをどうトレーニングしていくかというのは、これは別途検討する必要があると思っております。
 以上です。
【貞広部会長】  ありがとうございます。かなり具体的な御提案をいただきました。
 では、続きまして、オンラインから、善積委員、お願いいたします。
【善積委員】  ありがとうございます。時間外の定義の難しさというのは、その人たちの仕事のリズムで、時間外に、どういう内容で仕事をされているかというのが個々の先生によるところが大きいので、中身を一律に定義できないというところがこれまで皆様からもお話があり、切り分けができないというところでの給与を調整額という形で対応するというのは私も非常に合理的だと思いますし、額面の問題は常に、現場に行くとよく聞くお話なので、不満があるところは解消するように、調整額の金額は考えていく必要があるかなと思います。
 ただ、一方で、時間外の仕事の中身を教員自身が判断を、自分でその管理をすることができないと、なかなか改善というところにはつながらないんじゃないかなとは考えています。大概その部分が、学年での何らかの取組についての検討だったり、教材を担当する先生方での会議であったり、行事の検討をする会議であったりという、業務的だと捉えられるものもあれば、自己研鑽としてやっておられるようなものや、明日の授業の資料を作るということをやっているような実態とか、結構様々かなと思っています。
 自己研鑽をどう捉えるかというところは、曖昧な状態がある中で、先生のキャリアだったり、考え方、生活スタイルによっても考え方、捉え方が曖昧、ばらばらになっているところもあるので、自己研鑽ということについて、もう少し例示も含めて整理をしっかり伝えていく必要があるのかなと思っています。
 ただ、明日の教材作成とかそういうことが自己研鑽ではなくて、中長期的にどうするかという教材研究だったり、自己の教える技術であったり、子供を観察する力や指導する力をどう養うか。また、保護者や地域とどう関わっていくといいのかということを学ぶことが、ある意味、自己研鑽になると思うんですけれども、私は常々、それを学ぶためには、学校の外にもっと出て、日頃の社会生活であったり、家庭生活であったり、本やテレビ、仲間と雑談する、仲間と趣味を楽しむ、そういった機会を持つことが先生としての質を高めていく、質を高めることが良い教え方も思いつくことにつながっていくというのを研究員としての自分も実感をしているところなので、そういう時間の使い方を工夫して、時間を自分で区切って仕事を行うということにもっと意識を向けていただきたいと思っています。
 私はそこに調整額の意味があると思っていて、そういう時間の余裕を自分でつくり出して、もらえているその分を自分の勉強の時間に使うような、そういう考え方で調整額を受け止めていただけないかなと思っています。
 加えて、業務時間内に業務が終わるということを工夫していくことは一方では必要で、それは例えば今、部活動が、終業時間をまたいで設定されている学校があったり、あるいは休憩時間にかぶる形で補講をされている学校もあって、こういうやり方はもう論外になりますので、そういったところには丁寧に指導、改善を求めていくことが必要かなと思っています。
 資料1の6ページにある、先ほど皆様が例示に出されていた分析資料の中で、若いということなども上がっていますが、これはもう経験的なところになりますから、やはり丁寧な育成は必須かと思います。担任学級の児童生徒数が多いとか、コマ数が多いというのは、制度運用上の問題なので、やはり人材を確保していくと。それで解消するという仕組み、必要が非常に強い要素になるのかと思うんですが、人が辞めないための精神面のケアや不足している人材を学校任せで探させるのではなくて、もう少ししっかりした、バンクのようなものでしょうか、人材を探しやすいような仕組みをつくっていくというところの枠組みは考える必要があると思いますし、教務主任とか学年主任、校務分掌が多いというのは、仕事量が相対的に多くなるということになりますので、ここは手当とかベースをそもそも上げていくということで対応する必要があると思います。
 この意味で言うと、前回御説明のあった東京都の主任制度というのは、そういうポジションにいて頑張っている人の評価をして、給与面でも高く評価しているということになりますので、やはり頑張っている先生方、仕事量が多くて、何とか踏みとどまって、しっかりとマネジメントをやっているそれぞれの先生方が、評価を得ていないと思ってしまわれている現実がないわけではないので、そこはきちっと見ているよと、そして評価しているよというところを形でも表していくほうがいいんじゃないかなと思っています。
 組織全体の評価を外からも高めていくことが学校の運用もしやすくなりますし、保護者との関係もよくなりますし、そこに貢献している先生というところで、また評価をしていったりすることも大事ではないかなと。組織力への貢献、そういったところも見ていってほしいなと思います。
 以上です。
【貞広部会長】  ありがとうございます。
 では、会場から植村委員、お願いいたします。
【植村委員】  ありがとうございます。全連小の植村でございます。私からは、学校現場の状況を踏まえて3点ほどお話をさせていただきます。資料3の論点の5ページ、6ページ辺りでございます。
 まず1点目です。マル2の時間外勤務手当に関する考え方のところでございます。仮に時間外勤務手当を支給することとした場合ということで書かれておりますが、まず、何を時間外勤務とするかということがあるかと思います。日々、毎日、個別具体に管理職が時間外勤務を見極めることは実務上難しいとまず考えています。例えばですけれども、担任は、様々な異なる実態を抱えて、日々、毎日、様々なことが起こり、様々な対応をしております。放課後の職員室では、保護者に個別に丁寧に電話する姿もありますし、臨時に学年会を開いたり、生活指導主任を囲んで話し合ったりする姿というのが日常茶飯事でございます。時間で区切れないということが山積している状況であります。このような職務の特殊性の実態を踏まえて、管理職が日々、毎日、個別具体に一人一人の勤務時間の内外を精緻に切り分けて、かつ適切に判断するということは、実務上、極めて難しいと考えているところでございます。
 2点目です。校長として学校現場の教員の様子を見てというところですが、経験の差などで、肌感覚ではあるんですけれども、いわゆる仕事の早い人と仕事の遅い人がおります、ちょっと不適切であれば、効率のよい人とそうでない人と言ったほうがいいのかもしれません。仮に時間外勤務手当を支給するとしたら、いわゆる仕事の早い人は、時間外勤務手当ゼロ、いわゆる仕事の遅い人がもらえるということが生じた場合に、教員間で不公平感が生じるということが想定されます。
 また、現在、ここは先ほど秋田委員からもお話ありましたが、チーム学校ということで、組織としての機能向上が非常に求められているということがあります。もう少し私の言葉で言えば、組織としての凝集性と同僚性が求められていると考えています。その中で、処遇の面で、教員の中で不公平感が生じるというのは、現時点では得策ではないと考えております。そもそも高等な専門職として、子供たちの実態に合わせて、一定の裁量を任されて、よりよい教育、質の高い教育を目指して、創造的な営みを大事に、日々奮闘している一人一人の教員にとって、一律に職務の内外を切り分けて、時間外勤務手当を支給するということは、現在の学校現場の状況からはなじまないのではないかなと考えております。
 3点目です。マル3の教職調整額の在り方についてです。まずは、ほかの委員からもありますが、人材確保法を堅持し、その趣旨を踏まえた処遇改善を進めていくことが急務であると考えています。具体的には、昭和55年当時の一般公務員との差、7.42%というのをお示しいただきましたが、少なくともこれを担保することが必要だと考えます。
 結果として、教職調整額も現行の4%から勤務実態に応じて十分引き上げるということをお願いしたいと考えております。その土台として考えていることですけれども、基本的な考え方として、処遇改善をすればよいということではなくて、働き方改革のさらなる工夫、改善を引き続きしっかり進め、実現しつつ、処遇改善もしっかりと担保し、セットで一体的に進めていくことが大事であると考えております。
 以上でございます。
【貞広部会長】  ありがとうございます。
 では、同じく会場から齊藤委員、お願いいたします。
【齊藤委員】  全日中の齊藤でございます。よろしくお願いします。今、植村委員からも話がありました内容と重なる部分があろうかと思います。学校現場をあずかる立場としてお話をさせていただきます。ここまで各委員の皆様からお話を伺っていて、学校に対して、あるいは教師の取組に対して、評価をいただいて、かつご心配をいただいて本当にありがたいと思いますし、それを励みに現場でしっかりと取り組まなければいけないと思っているところです。そして、今回、論点の整理の記述に加えて植村委員からもありました時間外勤務の手当の支給については、何が時間外の勤務に当たるかということについて、指針等があれば対応はできるかなとは思います。が、その対応に労力をとられ、質の高い教師の確保、管理職の確保が難しくなるのではないかとの思いはございます。ですので、時間外勤務手当については、教師の業務の特殊性ということを踏まえた上で、なかなか導入は難しいのではないかと思います。
 我々の仕事の特殊性とは、例えば、テレビを見ている場面でも、これは授業で使えるなとか、あるいはまちを歩いていても、何かを見て、これは授業で使えるなということは日常ですから、昨日、テレビを見ていたらこんなことがあったので、「それ、時間外勤務になりますか」ということを教師から言われても、「それは難しくないか?」という話にならざるを得ないと捉えていただければと思います。正直申し上げると、24時間365日、年中無休で仕事をやっているとの考えも成り立つというところが率直なところだと思います。
 そして、やはり処遇の改善につきましては、皆さんが御議論いただいているように、手当も含めた報酬の面での処遇改善ということと併せまして、やはり質の高い教師を確保するということは、任用のときに選考で判断をするということと、同時に、任用後の研修等で様々スキルアップをサポートしていくということも必要になってきます。今学校現場では、多忙というところから研修の機会を残念ながら逸してしまっている教師が少なからずおります。やはり研修の機会をしっかりと確保するためには、定数を増やしていただくことに向けて様々な改善を図っていく。これも有効な処遇改善になると思います。
 また、やはり教師としてのプライドを保つことができる制度、なおかつ、意欲をかき立てる制度を考えたときに、勤務実態調査の確定値が出たところで、当然尊重されなければいけないと思います。教師が負担に感じているところについてはそれなりの処遇を考えなければいけませんし、同時に、御指摘があったように、長時間労働が改善されているとは、言えない状況だと思います。
 この点については、学校現場の努力に加えて、行政と連携しながら、さらにいい方法を考えて取り組んでいく。これは、例えば労働時間が減ったから、それでもうおしまいではなくて、常に働くためのより良い環境整備を考えながら、学校経営、学校運営をしていくということを前提に、引き続き取り組んでいきたいと思います。最後に、教師の処遇改善につきまして、改めて報酬の面と、それから定数増の面の両方から有効な手だてを考えていただきたいと思っております。
 以上です。
【貞広部会長】  ありがとうございます。今日、教員給与等の在り方について御意見、御議論いただきたいということで、冒頭、私から投げかけさせていただいたのですが、もちろんそういう処遇改善の在り方はもとより、委員の皆様から、マル4になっている教師の健康・福祉確保についてもかなり多様に御意見をいただきました。今、これは(4)の中のマル4という形に入っていますけれども、もしかしたらこれを独立させて特出ししたほうがいいのかもしれません。ここについても多くの御意見をいただきました。大変重要な御意見をいただいたところではございますし、まだ追加で御意見いただきたいところですけれども、残念ながらそろそろ終了時刻が近づいてまいっております。
 ここで、本日御欠席の荒瀬委員より資料の御提出があるということでございますので、事務局から御紹介をお願いいたします。
【堀家財務課長補佐】  事務局でございます。それでは、荒瀬委員の御意見を私から御紹介させていただきます。参考資料6、御覧ください。「管理職マネジメントの重要性と管理職研修の改革の必要性」と題された資料でございます。かいつまんで内容を御紹介いたします。
 今回の改革を画餅にしないためには、学校における働き方改革を進めることが欠かせないと。そのために、校長をはじめとした管理職によるマネジメントが重要であること、チーム学校づくりが着実に実現していくように強く期待されるということ、そして、令和4年答申で示された「校長等の管理職の育成及び求められる資質能力の明確化」が重要であるということが指摘されております。
 また、このような管理職の能力の育成に向けては、実際の学校の組織課題に対応した探究的な学びを促進することが重要であり、各教育委員会が行う管理職研修において、学校マネジメントに関する内容を着実に盛り込み、実効性のある研修が実施されること、また、国においても必要な支援を講じていただきたいということ。また、任命権者の理解、協力の下、現職教員の大学院等での学び直しの促進も図られるべきであるということ。また、校長の資質向上に関する指標の策定に関する指針において、校長が果たすべき役割として、働き方改革や教職員の専門性、高度化等の重要性をより明確に位置づけることが考えられるということを御指摘いただいております。
 管理職のマネジメントの下、働き方改革を強力に推進し、教師の「学びの時間を確保すること」で、学び続ける教師像の具現化を図り、教育の質向上や管理職を含め優れた人材の育成につなげていくことが重要であると考える。
 以上、荒瀬委員からの御意見でございました。
【貞広部会長】  ありがとうございます。若干、お一人の発言ぐらい余裕があるかもしれないんですけれど、どうしてもという方いらしたら、いかがでしょうか。オンラインのほうも。
 齊藤委員、手が挙がっていますけれども、よろしいですか。はい。よろしいでしょうか。では、会議の運営に配慮して、十分に発言できなかったという委員がおられると思いますけれども、ぜひ事務局宛てにその内容をメールにていただければと思います。
 ちょっと時間は早いですけれども、この辺りにさせていただきたいと思います。本日も多様で、かつ、大変貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。
 最後に、次回の予定について事務局からお願いいたします。
【堀家財務課長補佐】  本日も活発な御議論、誠にありがとうございました。本特別部会の次回の日程につきましては、現在調整中でございまして、追って事務局から御連絡させていただきますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、本日予定いたしました議事は全て終了いたしましたので、これで閉会いたします。ありがとうございました。
 
── 了 ──

 
■会議終了後に頂戴した御意見
【齋藤委員】
今回の論点にも追加されていますが、教職の重要性を踏まえた教師の処遇改善の在り方については、中学校現場を預かる校長として、各委員の皆様から発言はありましたが、教師の専門性、教職の重要性を踏まえて、報酬の面からの処遇改善を図ることに加えて、これまで選考によって個々の人材がもつ、教師の専門性、教職の重要性への認識の高さなどを見極めて任用の可否を判断してまいりました。一方で、今日ではさまざまな教育にかかる課題に適切に対応できたり、解決できたりする教師が求められています。そのための資質も向上させるには、自己研鑽や研修の機会が保証されなければなりません。しかし、現実として、研修に参加するよりも生徒に対応することでいっぱいになっている教員が数多いるのが実態です。このような状況を改善させて、業務の負担軽減を具現させるためには、教員の定数増を具現させることが、教師の処遇の改善につながると以前から申し上げてまいりました。改めてここでも申し上げさせていただきます。
その上で、令和4年に実施された勤務実態調査の結果が示され、教師が業務の何に負担を感じているかが明らかになりました。その負担を軽減させることが、処遇の改善に寄与するものと考えます。例えば、手当等の支給がそれにあたると考えます。ただ、処遇改善の議論を始めてから、長時間労働を鑑みて、時間外勤務手当の支給について論じられております。教師は、街を歩いていても、TVや動画配信等を見ていても、日頃の業務に役立つ情報を得ることが可能な職であります。言い換えれば、24時間年中無休で勤務をしているのです。前もって、学校管理職に「今日、映画を観に行きますが、それは教科のこの単元の何を子どもたちにわかりやすく伝えるためです。」などと申請して、学校管理職が時間外勤務の命令を発すること、「昨日、TVを見ていたら○○がこんな話をしていて、それが教科のこの単元のこの部分に活かせるから、見ていた時間帯を時間外勤務として認めてほしい。」などと事後に時間外勤務を申請されても、命令を発することは困難です。
仮に、管理職は、そこをしっかり確認して申請の受理を適正に判断しなさいと制度化されたとしたら、質の高い学校管理職の確保が困難になるでしょうし、人間関係が正常とは言えない状況を招くことは明白です。そのような観点から、時間外勤務手当の支給を処遇改善の方策とすることは現実的ではないと考えます。それならば教職調整額の水準を現行よりも上げること、人材確保法による教育校務員の給与を一般公務員よりも優遇する制度を検証し、法制度が確立した頃の水準に改善させることがより重要だと考えます。
最後に、教師の健康・福祉の確保については、長時間労働の改善、給与の増額だけで確保できることではなく、業務に携わって達成感や成就感が得られるとともに、ともに業務を遂行する集団との連帯感をもつことができる環境を整えることが重要であり、これらが総合的に整ったときに、健康・福祉の確保が具現できると考え、学校経営に携わっているところです。