新しい時代の高等学校教育の在り方ワーキンググループ(第9回) 議事録

1.日時

令和2年7月9日(木曜日)10時00分~12時00分

2.場所

新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点から、オンライン会議にて開催

3.議題

  1. 新しい時代の高等学校教育の在り方について
  2. その他

4.議事録

【荒瀬主査】 皆さん、おはようございます。定刻となりましたので、中央教育審議会初等中等教育分科会、新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会、新しい時代の高等学校教育の在り方ワーキンググループの第9回会議を開催いたします。
委員の皆様には御多忙の中、御出席いただきましてありがとうございます。本日は新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防止する観点から、オンラインでの御参加と、この場への御出席の2通りの形で会議を進めてまいります。この会議室にも10名の委員が出席ということで、久しぶりに、何かまた別の形で緊張しておりますが、よろしくお願いいたします。会議の公開につきまして、前回同様に、YouTubeによる同時配信を行っております。
それでは、本日の配付資料等について、事務局から御説明をお願いいたします。
【酒井参事官補佐】 事務局でございます。今、主査から御案内いただきましたように、本日この場に傍聴者の方はおられませんが、YouTubeを通じて同時配信されております。
本日は、対面とウェブ会議システムの併用により御議論いただくとなってございます。そういった観点から、特にウェブ会議の参加される委員の皆様におかれまして、お願い事項でございます。
いつものお願いでございますが、1点目として、御発言に当たって、インターネット上でも聞き取りやすいようにはっきり御発言いただくように御配慮いただきたいと思います。2点目といたしましては、御発言の都度、お名前をおっしゃっていただければと思います。3点目でございます。御発言のとき以外は、マイクをミュートにしていただければと思います。4点目は、御発言に当たって、手を上げるボタンを押していただき、また、御発言の後は手を下ろすボタンを押していただければと思いますので、御協力のほどよろしくお願いいたします。
本日の配付資料でございます。議事次第にございますように、資料1から資料の6と、参考資料1から3。また、岩本委員から参考資料4を御提出いただいてございます。本日御出席の皆様には机上に配付させていただき、事前にウェブ参加の委員の皆様には事前にメールでお送りさせていただいております。また、会議の中で説明する際には画面上に表示させていただきます。御不明の点、資料の過不足等ございましたら、お申しつけください。
【荒瀬主査】 よろしいでしょうか。それでは、議事に入ります。
前回、6月2日の第8回会議におきましては、皆様の御意見を基に事務局でまとめていただきました「新時代に対応した高等学校教育の在り方」の、これまでの議論を踏まえた論点整理のイメージについて、御意見を頂きました。
本日も引き続き御議論いただき、その結果をまとめて、7月17日に開催されます、新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会に報告したいと考えております。
そこで改めて諮問を受けた中教審といたしまして、答申に向け、どのように検討を進めているか、特に本ワーキンググループの検討事項につきまして、再確認しておきたいと思います。
資料1を御覧ください。現在、中央教育審議会に対する諮問事項について、1ページの図のように、初等中等教育分科会の下で、各種部会等が検討を進めているところです。
検討事項は2ページ以降ですが、本ワーキンググループには、3ページ、真ん中やや下にありますように、生徒の学習意欲を喚起し、能力を最大限伸ばすための普通科改革など学科の在り方、時代の変化、役割の変化に応じた定時制通信制課程の在り方、地域社会や高等教育機関との協働による教育の在り方の3点が付託されています。
論点整理案はこれに沿って、皆様の御意見をウィズコロナ、ポストコロナの視点も盛り込んでまとめていただいたものです。それでは、酒井参事官補佐から資料の説明をよろしくお願いいたします。
【酒井参事官補佐】 本日、事務局から提出させていただいております資料について御説明をさせていただきます。少し資料の種類が多く、大変恐縮でございますが、簡潔に御説明させていただければと考えてございます。
まず、資料の2をお願いできればと思います。資料の2につきましては、去る6月11日に、本ワーキンググループの上位の部会に当たります、初等中等教育の在り方特別部会、また7月2日の初等中等教育分科会において御議論いただきました、新型コロナウイルス感染症を踏まえた初等中等教育におけるこれから学びの在り方について、遠隔オンライン教育を含むICT活用を中心としてについて御紹介させていただきたいと考えております。
とりわけ、1ページの(2)でございますが、基本的な考え方といたしまして、新型コロナウイルス感染症を踏まえた今後の初等中等教育の在り方についておまとめいただいているところでございます。
2ページをお願いできればと思います。2ページの1つ目の丸でございます。新型コロナウイルス感染症が収束しておらず、必要に応じて臨時休業等行われる段階においては、非常時の対応として、遠隔オンライン教育やICT等を活用した家庭学習、地域社会の専門機関等との連携など、あらゆる手段を引き続き講じる必要があること。一つ飛ばしまして3つ目の丸でございます。今後新型コロナウイルス感染症が収束した後においては、初等中等教育の本質的な役割を踏まえつつ、非常時の対応として取り組まれている家庭や地域社会と連携した遠隔オンライン教育等を積極的に取り入れていくことにより、多様な子供たちを誰一人取り残すことのないよう、個別最適化された学びと社会につながる協働的・探求的な学びを実現していくこととが提示されたところでございます。
2ポツの必要な取組でございます。そのために必要な取組ということで、2ページの後段以降おまとめいただいておりますが、本ワーキンググループとの関係について御紹介させていただきますと、5ページになります。新型コロナウイルス感染症の収束したポストコロナ段階の新たな学びの実現といたしまして、前回の本ワーキンググループでも御議論いただきました、高等学校における遠隔授業の活動についてということでございますが、高等学校における同時双方向型の遠隔授業実施について、単位数の算定、対面により行う授業の実施などの要件の見直しを行い、教師による対面指導と遠隔授業を融合させた柔軟な授業方法を可能とし、多様かつ高度な学習機会の充実を図ること。
おめくりいただきまして7ページでございます。マル9番、個々の才能を存分に伸ばせる高度な学びの機会など、新たな学びへの対応といたしまして、高校段階において、多様なメディアを効果的に活用し、家庭における同時双方向型オンデマンド型の学習を授業の一部として特例的に認めることにより、対面指導と遠隔オンライン教育等ベストミックスさせた指導方法の研究開発に向けた実証研究を実施する、こういったことが御議論をいただいていたところでございます。
続きまして資料の3の1と3の2を御用意いただければと思います。本ワーキンググループの諮問事項の一つであります、通信制課程の在り方についてですが、通信制高等学校の在り方につきましては、通信制高校の質の確保向上に関する調査研究協力者会議が同時に実施されているところでございます。
6月23日に実施されました、この協力者会議につきまして、この資料の3の1につきましては、各委員の意見概要をまとめた資料となってございます。そして、この6月23日の会議を踏まえまして、協力者会議でおまとめいただいた内容が資料の3の2となっておりますので、御紹介させていただければと思ってございます。
高等学校通信教育の質保証方策(論点整理案)概要になります。一部の通信制高校において違法・不適切な学校運営や教育活動等が明らかになった状況を踏まえ、ところでございますが、しかしながら、近年においても、未だに様々な課題が明らかになっているところでございます。
とりわけ、文部科学省が実施しております点検調査と呼ばれる調査の中では、以下の指摘がなされているところで、不適正な教育活動等の例を、1ページの枠囲みの中に提示させていただいているところでございます。例えば、教育課程の編成・実施に関する主な事例といたしまして、100人を超える生徒に対し、教員が1名で、面接指導を実施する事例でありますとか、生徒が独自に行ったアルバイトを特別活動の時間としてカウントしている事例でありますとか、試験の実施を面接指導時間数としてカウントしている事例、さらには、4泊5日の集中スクーリングにおいて8時10分から1限目が始まり、21時30分に13限目が終わるという、1日に50分の面接指導を13コマ実施しているような事例が見られたところでございます。
そのほかにも、広域通信制高校の展開するサテライト施設に関する主な事例といたしまして、サテライト施設において担当教科科目の教員によらない指導を、当該教科の科目の面接指導時間数としてカウントしている事例であります。学校評価に関する主な事例としまして、法令上義務づけられている自己評価の実施公表がなされていない事例が報告をされているところでございます。
おめくりいただきまして2ページ目でございます。こういった状況を踏まえまして、通信制高校で学ぶ全ての生徒が適切な教育環境の下で、存分に学ぶことができるよう、以下の対応方策を講じることが必要ではないかということで、大きく4点、御提案を頂いたところでございます。
1点目は、教育課程の編成実施の適正化でございます。各年度における添削資料、面接指導、試験の年間計画やその実施予定内容等を記載した体系的な計画として、通信教育実施計画、これは仮称でございますが、策定し、あらかじめ、生徒や保護者に対して明示するよう義務づけてはどうかという御提案がまずあったところでございます。その上で、面接指導の意義、役割等の明確化といたしまして、面接指導は少人数で行うことを基幹とすること、集中スクーリングで1日に実施する面接指導の時間数を適切に定めること、多様なメディアを利用して行う学習の報告課題等にも観点別学習状況の評価を実施すること、試験の時間及び時期を適切に定める等の事項を明確にすることを御提案いただいたところでございます。
マル2は、サテライト施設の教育水準の確保でございます。面接指導等実施施設として備えるべき教育環境の確保といたしまして、どの都道府県が設置認可する施設であっても、高等学校通信教育を担うのに適当と考えられる教育環境を共通に確保するため、実施校と同等の教育環境を備えられることとなるよう、面性指導等実施施設に求められる共通の基準に関し必要な措置を講ずるといったことが御提案いただいたところでございます。
マル3番、多様な生徒にきめ細かく対応するための指導体制の充実といたしましては、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー等の専門スタッフの充実は、関係機関等との連携促進を図るようなこと、また、面接指導は本来的には現個別指導原則とする趣旨を踏まえた上で、教育を適切に配置すべきであることを明確化し、その際には生徒数に応じた具体的な教員等の人数をガイドラインに明記する等の措置を講ずることでございます。
マル4番、主体的な学校運営改善の徹底といたしましては、法令に基づく学校評価の実施公表の徹底を図るとともに、第三者評価の推進を図ること、さらには情報開示の徹底・好事例の創出共有といたしまして、教員、生徒、教育課程設備等に関する学校の基本情報の開示を義務づけること。さらには各学校が互いに、よりよい通信教育を主体的に研究するための高等学校通信教育研究協議会等の場を設ける、こういったこと御提案を頂いたところでございます。
続きまして資料、4の1と4の2を御用意いただければと思います。4の1、4の2は、前回の会議でも御議論いただきました新時代に対応した高等学校教育の在り方、これまでの議論を踏まえた論点整理案でございます。
4の1は、前回の御指摘を踏まえて修正したものを溶け込ませた、溶け込み版と呼ばれるものでございます。4の2は修正履歴つきのものでございます。4の2で御紹介させていただきたいと思います。
資料の4の2でございます。このうち、1ページから20ページまでにつきましては、前回の本ワーキンググループにおいて、各委員の皆様から御指摘いただいた内容について、主として修正、反映をさせていただいているものでございます。
21ページ以降につきましては、今、御説明申し上げました6月23日の通信制有識者会議の御議論を踏まえた修正となってございます。その点、御確認いただければと思います。
なお、前回の本ワーキンググループの意見概要につきましては、参考資料1を御参照いただければと存じます。
続きまして資料の5の1、5の2を御用意いただければと思います。資料5の1、5の2につきましては、前回のこの本資料につきましても前回の本ワーキンググループで御議論いただきました。さらなる制度設計の検討のための論点資料でございます。資料5の1が修正を反映させました溶け込み版、資料の5の2が修正履歴付き資料でございますので、5の2で御紹介させていただきたいと思います。なお本資料につきましては、前回の本ワーキンググループでも時間十分におとりすることができなかったということでございますので、引き続き御議論をお願いしたいと考えているところでございます。
4ページ、5ページをお願いできればと思います。マル1番からマル4番につきましては、前回の御議論を踏まえまして、またその後、委員の皆様から個別に頂戴した御意見も踏まえまして、修正させていただいたものとなってございます。
マル5番につきましては、前回の御議論の中で、高等学校の配置の適正化に関する御議論があったところでございます。中でも、人口減少が進む地域の小規模の高等学校の在り方について御指摘をいただいたものと、受け止めてございます。そういった御指摘を踏まえまして、小規模の高等学校をはじめとしまして、あらゆる高等学校において、特色化・魅力化を推進する方策といたしまして、各高校の自主性を活かしつつも、複数の高等学校が連携協働して、地域や県域全体で高校教育活動に取り組むことが有効な方策であると考えられるといたしまして、現在の学校間連携の仕組みの見直しを図るとともに、県域内の複数の学校による連携協働体制を整備して、ICTも効果的に活用することで、単独校だけでは提供困難な特色・魅力ある教育を実現するための仕組みを構築することも進めてはどうかということを新たに提案させていただいたところでございます。
6ページをお開きいただければと思います。6ページにつきましては、前回の御議論の中で、文系、理系の類型に関するこれまでの議論の整理等について御指摘をいただいたところでございます。6ページの参考3でございますけれども、これは文系理系の類型の現状についておまとめをさせていただきました。国立教育政策研究所が平成24年度に実施した調査研究の結果を掲載させていただいておりますが、高等学校の3校に2校において、文系理系のコース分けが実施されていること。文系理系のコースに分かれる時期は大半が2年生の4月からであって、3年生の4月からという学校が少数見られること。文系理系のコース分けについては、大学進学者の割合が高い学校でより実施される傾向が見られるといったことが、24年度の調査研究で指摘されておりました。
この傾向は昨今も同じだと認識しておりまして、資料の中段以降でございますが、現在私どもの部署で担当させていただいております、地域との共同による高等学校改革推進事業、ワールド・ワイド・ラーニングコンソーシアム構築支援事業で今年度予算事業指定を受けている。全日制普通科高等学校から提出いただいた教育課程表を確認したところ、何らかの教育課程の類型を設けている学校は全体の86%、そのうち文系理系の類型分けを行っている学校は全体の67%、文系理系以外の独自の類型分けを行っている学校が全体の20%、類型分けを行っていない学校は全体の14%という状況になっておりまして、国立教育政策研究所の24年度の状況と、大きな傾向は変わっていないかと考えてございます。
この教育課程の類型に関します、これまでの変遷でございます。これについては7ページの参考4でおまとめさせていただいたところでございます。学習指導要領上の記載の変遷ということで、おまとめさせていただいております。現在の記載は高等学校学習指導要領解説総則編において記載されているところでございますけれども、教育課程の類型をどのように設定するかについては、生徒の特性、進路等に応じて適切な教育課程の編成となるよう、各学校において工夫して決めることが記載をされてございます。
これにつきましては、昭和30年代においては、当時の教育課程審議会の答申等を踏まえました。例えば通知の中で具体的な類型の形が示されていて、具体的な教科科目の構成が例示されていたり、その後の高等学校学習指導要領の中でも、原則として教育課程の類型を設けること。そして解説の中で具体的な教育課程の編成例としまして、具体的な科目構成、標準単位数、各学年配当単位数と具体的に提示されていたという状況がございます。その後、昭和55年の高等学校学習指導要領等です。類型設定においてはかなり弾力化をするということがございまして、さらには平成11年の高等学校指導要領以降です。類型の形自体も、解説等の中では例示されないことになりまして、現在において各学校の工夫の下で類型を設けるというふうに法令上はなされている状況であることを御紹介させていただければと思います。
10ページをお願いできればと思います。10ページの参考9でございます。単位制高校の事例についてでございます。こちらは、前回の御議論の中で単位制高校の実態について御紹介をという御議論がございましたので、新たに記載させていただいているところでございます。3段落目の「一方、」でございます。単位制高等学校につきましては、学年による区分を設けない教育課程という定義付けをされております。例えば、学年制を採用しているかのような教育課程表を作成し運用している学校であります。生徒による科目選択の幅が極端に小さく限られた範囲のみで、科目の選択履修が許容されている学校などが見受けられるというところを記載させていただいてございます。
続きまして参考10、公立高校が立地していない市区町村の状況というところで記載をさせていただいております。これにつきまして、資料の6を御用意いただければと思います。資料の6に関係資料、公立高校の配置を記載させていただいております。これにつきましては、前回の御議論の中で、公立高校の立地数が0ないし1の市町村について、どのような実態になっているかという御指摘があったところでございます。
おめくりいただきまして1ページでございます。公立高校の廃止としまして、公立高校が全く立地0の市区町村でございます。全国の市区町村のうち、公立高校が立地していない市区町村は480、全体の27%という数字になっております。このうち、各都道府県別に見ますと、公立高校が立地していない市区町村の割合が最も多いのは鳥取県となっておりまして、最も低いのは兵庫県といったデータになっております。
おめくりいただきまして2ページでございます。先ほど1ページは、公立高校の立地が0の市区町村でございます。次いで2ページは、0ないし1の市区町村のデータでございます。全国の市区町村のうち、公立高校の立地が0ないし1であるものは1,088となっておりまして、全体の6割の市区町村が0もしくは1の高校が立地している状況でございます。この割合が最も高いのは北海道となっておりまして、最も低いのは兵庫県でございます。
3ページにつきましては、公立高校の立地が確認できる比較可能なデータが平成22年度以降になっておりますので、22年度から令和元年度までの割合の変化についてもお示しした資料となっております。
続きまして本資料の4ページ以降でございます。高等学校卒業後の状況についてと題した資料でございます。これは前々回の本ワーキンググループにおきまして、荒瀬主査より、専門学校を中心としました高校卒業後の進路状況につきまして、都道府県別のデータについて、提出の御指示を頂いたところでございますので、御用意させていただいた資料でございます。
まず、4ページを御覧いただければと思います。4ページが普通科の高校卒業後の状況でございます。一番上の段が全国となっておりまして、水色が大学等に進学した生徒の割合。赤色が専修学校に進学した生徒の割合、黄色が就職した生徒の割合、緑がその他となっております。普通科の場合は6割を超える生徒が大学等に進学し、専修学校への進学を含めると85%程度の生徒が上級学校に進学を行っているという状況でございます。都道府県別に確認すると、例えば沖縄県を見ていただきますと、大学等への進学は5割を切っている状況でございまして、専修学校を含めても上級学校に進学は、7割を超える数値という状況になっているところでございます。
おめくりいただきまして5ページをお願いできればと思います。5ページが農業に関する学科の状況でございます。全国的に見ますと、大学等に進学している生徒の割合は10%台の中盤、専修学校を含めましても40%を超える生徒が上級学校に進学し、約半数の生徒は就職をしているという状況のデータでございます。例えばこの中でも、広島県や高知県などでは、大学等や専修学校を含めた上級学校への進学は6割前後という数字になっております。一方で、三重県などを見ていただきますと、上級学校への進学は3割を下回る数値となっておりまして、7割の生徒は就職の道を選んでいることが分かるかと思います。
同様に6ページを御覧いただきますと、工業に関する学科の状況でございます。全国的な状況でございますけれども、3割を下回る数字が上級学校への進学と、6割以上の生徒が就職をしている状況でございます。例えば東京都や京都府などでは上級学校への進学が4割を超える数値となっております。一方で、山口県などを見ていただきますと、上級学校へ進学は10%強で、8割の生徒が就職している状況が見受けられるかと考えております。
7ページをお願いできればと思います。商業に関する学科の状況でございます。全国的な状況を申し上げますと、5割を超える生徒が大学とか専修学校の上級学校へ進学をし、4割の生徒が就職しているところでございます。例えば、新潟県などでは7割の生徒が上級学校へ進学をしていると。一方で、静岡県や愛知県などでは、上級学校への進学は4割強にとどまっており、約5割の生徒が就職の道を選んでいるといった状況が明らかになっているかと思います。
8ページでございます。水産に関する学科の状況でございます。全国的な状況は上級学校への進学は3割を下回る数字でございまして、6割の生徒が就職しているという状況でございます。例えば福井県のデータを見ていただきますと上級学校に進学が7割超えている状況となってございます。
9ページは家庭に関する学科の状況でございます。全国的な状況を申し上げますと、6割をやや下回る数字が上級学校への進学、4割程度の生徒が就職という状況でございます。例えば新潟県を見ていただきますと、ほぼ9割を超える生徒が上級学校へ進学している状況が見受けられるかと思います。
10ページ、看護に関する学科でございます。このうち水色の大学等というのは専攻、高校の専攻科を含んだ数値となってございます。全国的に見ますと、85%以上の生徒が上級学校もしくは専攻科への進学を選んでいるところでございますが、例えば神奈川県では、そういった生徒は3割を下回る数字となっている状況でございます。
11ページは情報に関する学科の状況でございます。全国的に言いますと、7割近い生徒が上級学校へ進学している状況でございます。例えば香川県では9割近い生徒が進学している一方で、例えば福岡県では4割を下回る生徒が上級学校に進学を選び、6割以上の生徒が就職していることが明らかになるかと思います。
12ページは福祉に関する学科の状況でございます。全国的に見ますと、5割を少し下回る数字が、上級学校への進学、5割の生徒が就職しているという状況でございます。例えば岩手県や秋田県においては、岩手県はもうほぼ全ての生徒が就職し、秋田県においても9割以上の生徒が就職している状況が見受けられるところでございます。
13ページはその他の専門学科の状況でございます。その他の専門学科は、全国的に言いますと7割弱の生徒が大学等へ進学し、専門学校、専修学校を含めますと85%以上の生徒が、上級学校への進学を選択しております。例えば、栃木県や石川県、岡山県、鹿児島県などでは、大学等への進学が5割前後となっている状況でございます。
最後、総合学科の状況でございます。総合学科につきましては、全国的な平均といたしましては、専修学校も含めます上級学校への進学は65%程度となっております。例えば兵庫県や広島県では、8割を超える生徒が上級学校への進学を選択している状況でございます。
資料の説明は以上でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。大変たくさんの資料を御説明いただきました。
今から御議論いただくわけでありますけれども、具体的にいろいろな資料がございましたので、どの資料の、何ページの、どの位置のことについて御発言いただくかということを大変申し訳ありませんがその都度、おっしゃっていただきたいと思います。
それから、具体的にこれから議論していきますけれども、基本的には資料の4と5につきましては、それぞれ1ではなく、4の2、5の2に基づいて御議論いただければと思いますが、最終的に7月17日の特別部会に報告をすると申しましたけれども、基本は、4の2に基づいたものが、報告の内容となります。この4の2の中に、5の2の内容が盛り込まれていくことになるわけです。資料の4の2も大部でありますので、初めに1と2について全般に関わるものについて御議論いただく、その後、3といたしまして、将来の社会像地域像を見据えた各高等学校の役割の再定義に関するものを次に御議論いただく。最後に4といたしまして、学科課程の特質に応じた教育実践の充実強化についてということで一応区分を考えておりますけれども、そのどこにうまくはまるか分かりづらいものもあるでしょうから、その点はどうぞお気になさらずに御発言いただければと思います。
そういたしましたら、会場にいらっしゃる方は名札を立てていただく、オンラインで御参加の方は手を挙げるのボタンを押していただくということで、よろしくお願いしたいと思います。どうぞ。
では、末冨委員お願いいたします。
【末冨委員】 資料4の2の5ページの丸2番目、特に対面指導かICT活用の二元論ではなくて、最適な指導形態を探していかなければならないということが書いてあるのと。
【内堀委員】 すみません、私だけでしょうか、聞き取りにくい感じがするんですが。【末冨委員】 多分マイクがあまり拾えていないのでは。これぐらいで話します。
【荒瀬主査】 内堀先生、聞こえますか。
【末冨委員】 聞こえます? これぐらい近づいたら、聞こえますか。
【内堀委員】 はい、大丈夫です。
【末冨委員】 5ページの3つ目の丸のところに、要するに指導の方法も最適化していくことと、最近、個別最適化という言葉から中教審でよく使われるようにはなっているんですが、個別最適化についての目的であるとか、あるいは一人一人の個別の計画を作りましょうという話が恐らくほかの分科会とか全体会からも出ているはずですが、かなり注意深く定義しながら使っていかないといけないと思っています。とりわけ個別最適化の学びをするときにネックになってくるのは、高校も含めて大きいクラスサイズですね。各教科の担当教員が1学級40人を担当します。さらには、学年も非常に大きい高校も多いですね。高校によって違いますが、非常に大きい学年集団、非常に大きいクラス集団を、どのように個別最適化するのかを考えると、実は学級、学校のサイズは避けて通れない問題になってくる、その規模の問題なしに、個別最適化というのは、どれだけICTを使っても、丁寧に行えることはできないことについて、注意深い表記が要ると考えます。
もう1点、とりわけ日本の中等教育段階の教員について私が強い懸念を持っているのは、一人一人の生徒の評価に対する能力ですとか、その教員自身の評価が果たして、絶対評価としてあるいは観点別評価として適切なものであるのかとの教授者側の評価能力です。実は教員のアセスメント能力を向上や評価でできる公的な仕組みがないままに絶対評価が運用され、内申点や指導点に跳ね返っている状況があるということで、個別最適化を語るときには、教授者の側のアセスメント能力やサポート能力の向上が不可欠であるはずですので、教授者の側の資質、能力の向上といったものも併せて記述される必要があるかと考えます。以上です。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。
オンラインでお聞きの皆さんの、もし聞こえにくいようなことがありましたら、御遠慮なくおっしゃっていただきますようによろしくお願いいたします。
では、清水委員、お願いいたします。
【清水委員】 ありがとうございます。今、末冨委員から話がありましたけれども、クラスサイズについては、以前も申し上げたことがあると思いますけども、40というクラス集団、これに対してオンラインを使っての学習は、かなり無理があるかとも考えております。
これから先、こういったことを考える上においては、この人数についてもしっかり議論をして、少なくとも20人学級ぐらいにはしていかないと、対応し切れなくなってくるのではないかとも考えております。是非その部分についても取り上げていただけるとありがたいと思います。以上です。
【荒瀬主査】 ありがとうございます。
他にはいかがでしょうか。オンラインで御参加の委員の皆様もどうぞ手を挙げるのボタンを御遠慮なくお押しください。佐藤委員、お願いいたします。
【佐藤委員】 佐藤でございます。生徒の人数の規模というお話がありました。学校で対面して授業を行うときには、できるだけ少人数の方が取りこぼしがないと思いますけれども、オンライン、YouTubeで授業の動画を流したときに思ったことは、同じ授業を大勢の生徒が見ることができて、しかも繰り返し何度も何度も見ることができるんですね。そうすると、今までは学校では、1回の授業が、そのときだけ行われて、あと視覚的に見ることができない、自分のノートや、参考書や教科書しか残っていないんですけれども、映像は何度も何度も見ることができるし、大勢の生徒が同じ授業見ることができるので、これはなかなか活用できれば面白いと私は考えております。授業の予習・復習、それから発展授業、基礎授業を、オンライン上に置いておけばいろいろな能力を持った生徒が、自分の能力に合わせて、繰り返し同じ授業を見ることができる。学校に来たときには、それを教師が対面で確認してあげる、生徒が持っている力を評価してあげるという、今までと違った学校の在り方の可能性が広がります。ICTを使った授業については、まだまだ研究の余地があると思っております。以上です。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。そうなると、最初、末冨委員がおっしゃったそれこそ評価する側の資質、能力は非常に重要になってくると思います。
もう一つ最後に酒井補佐から御説明いただきました、同じくくりの学校でも、地域によるその進路の差は非常に大きいことは、これは必ずしも進路が結果的に変わりましたというだけではなくて、指導の仕方とかあるいは高等学校に入るまでの中学から高校への進路指導、あるいは地域がその高等学校に対するどういう期待を持っているかどうか評価をしているかといったことも含めてあると思いますが、これ一概になかなか言えない面があることが、データの上から明らかになったものではないかと思って聞いておりました。
ですから、そういう意味ではそれぞれの学校でどうしていくのか、今日の我々の考えているスクール・ミッション、スクール・ポリシーは、ますます重要になってくるのかとも思いながら聞いておりました。
では、鍛治田委員、それから香山委員、田村委員、そして山口委員の順番でよろしくお願いいたします。鍛治田委員、どうぞ。
【鍛治田委員】 YMCAの鍛治田です。ちょうど昨日、大阪府の学び直しが特色の公立のエンパワメントスクールの校長とお話をしていました。今回のコロナ禍で、休校の連絡などは、学校のホームページで連絡ができないとおっしゃっていたんです。生徒は何とか自分でアルバイトをしてスマホを持っている生徒が多いけれども、親がそのホームページを見る環境になく、オンライン授業はとても考えられないとおっしゃっていました。第2波が来てオンライン授業をしなければならないときは、一番近くの学校のパソコンルームを借りたい、借りるしかないんじゃないかということを教育委員会と相談しながらも非常に苦慮しているとおっしゃっていまして、一人親の多い高校で、オンラインが進めば進むほど教育格差が広がらないかということも考えていくことが必要ではないでしょうか。以上です。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。大変重要な御指摘かと思います。
では香山委員、お願いいたします。
【香山委員】 オンラインの可能性は本当にたくさんあると、お聞きしていたんですけども、私は今回オンライン授業の一つのいいモデルとして、ミネルバ大学という海外の大学に着目していて、講座の人数が20名以下、しかも教師は、90分の授業の中で、10分以下でしゃべらなきゃいけないといったルールもあり、かつ基本的に学生が対話をして、深い学びをしていくと聞いております。教師はその10分のしゃべる内容も、同じ科目を教える教員が協働で授業を設計し、私の理解では、複数の教員が、生徒が発言するのを、ルーブリックを見ながら評価して、フィードバックをしている。
我が国におきましても、高等学校で、今後、一つの可能性として、そういったオンラインにおける主体的、対話的な授業、そして深い学びの得られる授業を実現していくことを期待しています。しかもそれは、地域を離れて可能ですので、中山間地や離島でもその授業が受けられるといった一つのモデルを早く作っていく必要があるのではないかと感じております。今日の資料の2で、7ページでしたか、酒井さんが説明してくださった中にも、特にその優れた子供たちを指導するような、個々の才能を存分に伸ばせる高度な学びの機会など、新たな学びへの対応、あるいは、不登校の対応の8番であるとか、あるいは3番の高等学校における遠隔授業の活用といったところについて、具体的なモデルを作っていけたらと感じております。以上です。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。田村委員、お願いいたします。
【田村委員】 田村です。スクール・ポリシーのことについて話題を移してもよろしいでしょうか。
【荒瀬主査】 どうぞ。
【田村委員】 ありがとうございます。資料の4の2で言いますと、10、11ページ辺りにスクール・ポリシーのことが書いてあります。これを実際にやっていくとなりますと、2つの懸念、1つは、新しい義務が増えるという負担感、もう一つは、形だけになるという懸念があるかと思います。実際にこれまでもしっかり実践に取り組んでいらっしゃる学校様は、学校の教育目標を明確化されていますし、あるいはこのような入学生を求めるということを既に書いているし、グランドデザインなどで表明していらっしゃるところだと思います。
それで、具体的に何をやったらいいのかを、私は議論させていただきたいと思います形だけにならないためには、アドミッション・ポリシーについては、入試の内容あるいは形態といったところに反映をしていく。それから、カリキュラム・ポリシーは当然、カリキュラム・マネジメント、それから学校でやっていらっしゃる授業研究ですね、それから、このカリキュラム・ポリシーあるいはグラデュエーション・ポリシーというのが、最終的には1つ1つの授業、あるいは学級経営、総合的な探究の時間、課題研究、キャリア研究、学校行事といった教育活動に落とし込まれていくことが必要かと思いますので、その辺を書き込んでいただけるとありがたいと思いました。
もう一つ、PDCAサイクルを回していくことにも関わるんですけれども、学校評価との関連ですね、学校評価のために学校は目標を設定していきますので、そのときにスクール・ポリシーとの関連を、整合性を持たせていくことが重要かと思います。以上です。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。
それでは、山口委員に御発言いただきますが、その後、牧田委員、川上委員、岩本委員、そして、奈須委員、角田委員、跡部委員、小田切委員、この順でよろしくお願いいたします。では山口委員、お願いいたします。
【山口委員】 山口でございます。今、お話のありました、まず資料の4の2の10ページに関わるところ、そしてまた、先ほど酒井様から御説明ありました関係資料の6の4ページからの、高等学校の卒業後の状況に関するところ、その2点について、両方を見ながら荒瀬主査から御指摘のありましたこのスクール・ポリシー等を含めたところについて意見を述べさせていただきます。よろしいでしょうか。
10ページにありますこの3つのポリシーのところで、特に私が今、現場の高校の校長として中学校の進路指導、中学校からほとんどの生徒さんが高校に進学する中で、中高の現場の毎年3年生を御担当される中学校の先生というのが、人がどんどん変わりまして、毎回新たな、例えば高校側ではこのようなことは当たり前だと思ったようなことも丁寧にお伝えすることが、今、非常に重要だと認識しております。高校側でこの3つのポリシー、特にグラデュエーション・ポリシーのところで卒業の段階で先ほどの資料6のところで、各家庭でかなり多様な、実は都道府県ごとでも先ほど御説明でもそうでしたが、かなり多様な進路状況にございます。それを中学校側に適切にお伝えしていかないと、中学校も多くの先生方がまた、普通科高校を御卒業されていて、そちらの分野はよく御存じですが、専門学科について等の、なかなか情報はないと認識しております。そのため、今、本県でもそうですが、中学校の先生方対象に、この分野はこういう卒業後の進路になっていくので、生徒さんのそれぞれの状況に応じて、こういう分野にお薦めされてもいいのではないかということを御紹介する機会を持っております。そういう形での丁寧な接続といいますか、せっかくこの3つのポリシーを作ってここでやってこうというときに、そこを明確にお伝えしていくと、より中高の連携がうまくいくのではないかと考えております。以上でございます。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。ありがとうございました。
では、牧野委員、お願いいたします。
【牧野委員】 6ページの、将来の社会を牽引する人材を育成するためにというところをベースにして話をしたいと思います。高等学校で提供できる学びだけでは必ずしも十分ではないというのはそのとおりですが、後ろには結構地域とのことについて詳しく書いて、触れてあるんですが、ここの部分におきましても、国内外の大学や企業等という形でさらっと書いてはあるんですけれども、もう少し踏み込んで、書いていただくほうがいいかと思います。特に、地域との関係につきましては、社会を牽引する人材を育成するという観点では非常に重要だと思いますので、是非地域あるいは自治体との連携を意識した形にしていただきたいと思います。
もう一つ、将来の社会を牽引する人材のところで、大学の協力と書いていただいているんですが、高大連携については、もう少し踏み込んで考えていただいてもいいかと思います。実際に大学生と高校生が、地域のことを一緒に学ぶことを実践している立場から申し上げますと、高校生のみならず、大学生にとっても大変刺激のある、お互いにメリットがある、連携ができてきていますので、そういった観点からの、この高大連携の必要性についても是非言及していただければと思います。以上であります。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。川上委員、お願いいたします。
【川上委員】 川上でございます。資料4の2で言いますと、6ページ、最初にクラスサイズの議論が出ていたかと思いますけど、もう一つクラスサイズの議論と併せて、学校規模の議論についても御検討いただきたいので、発言させていただきます。
学校の規模論で言うと、現状何をしているかというと、わざわざ遠路はるばる遠くから集まってきて、冒頭の個別最適化の議論でいうと個別最適化に適さないクラスサイズに人を集めて、わざわざ遠くから人を集めて学習をしているような状況にあるものに対して、学習の個別最適化を進めていきましょうと、そのためにはクラスサイズをという話だったんですが、もう一つその学校規模としても、小規模な学校をきちんと残せるようにしていく、学習拠点が分散しているんだよと。あまり学習拠点が1地域とか1学校に集中し過ぎている状況を補正しておかなきゃいけないという意味では、小規模の学校をきちんと残すことについて、もっと積極的な意味付けをされてもいいのかと。むしろすべきではないかと考えました。
これに関連してもう一つ、4の2の、今見て、6ページの3となっているところです。小規模な高等学校におけるICTを活用して複数の学校の協働等による教育活動、これは非常に賛成ですが、もう一つ考えておかなければいけない、結局、結論は先ほどと同じになるんですが、小規模な学校がきちんと残っていけるような保障がセットになるという話が結論になるんですが、結局何かというと、これまで学校が、特に高等学校が、特色を出しますというのが、学校の生き残り策みたいなものとセットになってきたと思います。それは何かというと、近隣の似た生徒層を想定している学校からより多くの生徒が、うちの学校に来るようにという競争なわけですね。そうすると、特色ある教育活動を単独の高校でやったとしても生き残りが前提になっていると、近隣の学校との協働はなかなかやりにくくなるわけですね。うちの生き残りのツールにしているこのプログラムを、何でよその学校と共有せにゃいかんのだという話になってしまう。生き残りというのと特色化というのと、一定の規模がないと潰されるというものがミックスになっているとこういう状況が起きる。きちんと個別最適化した学びを保障していきましょうと、かつ一個の学校が持っている特色、特徴あるプログラムというのは、一個の学校で大事にとっておくんじゃなくて、なるべく共有しましょうということをしたいんであれば、小さな学校もちゃんと生き残れますと、そこにこだわらなくてもちゃんと存続は保障されますということを言ってあげないと、多分特色ある教育をやっている学校は、よそと共有したいと思わないかもしれない。みすみす、そのまま繰り返しですけど、共有したばっかりに、うちの学校のアドバンテージがなくなりましたみたいな話になっては困ってしまう。そうすると、一定規模以下の学校とかについてもきちんと残れますという、ある種の生き残りについてきちんと保障していくという話。
もう一つは、それを保障しつつ、学校間、要は各個別学校に任せた協力関係ではなくて、設置者がきちんと情報提供とか仲介するとかということをしてあげないと、各学校の利害に沿って各学校が動きますとなると、想定したような機能が果たせなくなるのではないかという危惧がありまして、小規模が残れるよと、特色を出してきちんと連携していって、学習の拠点が分散化するという小規模学校がちゃんとあるのは、むしろいいことなんだというメッセージと一緒に連携を保障する仕組み、実働する仕組みというのを作っていく必要があるのかと思いました。以上です。
【荒瀬主査】 ありがとうございます。岩本委員、お願いいたします。
【岩本委員】 最初この資料6の公立高等学校の配置のところから入りたいと思います。この公立高等学校の立地が0ないしは1である市区町村が全国の62.5%ということで、こうした市町村に暮らしている生徒の多くは、家から通える高校がたくさんあるわけではないと。通学可能な高校が一つしかないような地域も多くあるところですので、通学可能な高校が一つしかない場合、その高校が何かに特色化をした際に、その特色に合わない子はそこに行けないというのが現実的に起きてくるというのがあります。これが資料4の2で言うスクール・ポリシーの話に関係するんですけども、このスクール・ポリシーの議論も学科の議論も基本は特色化に向かっていく話なわけですけども、こういう通学可能な高校が一つしかないようなところで、例えば特色のあるアドミッション・ポリシーをと言っても、基本的にそういった高校はどんな子でもこの地域で育った子たちは受け入れて、それもいろいろな困難を抱えた子も、すごく国際的なことをやりたいという子も受け入れて育てていくという機能を担ってきている高校が、全国にたくさんある。しかもそういった高校ほど小規模なケースが多いところでありますので、こういったスクール・ポリシーや学科の話と併せて、こういう通学可能な高校が限られている地域における高校の在り方については、これはこれで、先ほどの規模の話も含めてしっかりと検討しないと、一緒くたにすると見えなくなっていくものが物すごくあるというところを前回も少し頭出しさせていただいたところです。
そこに対して、参考資料の4を出させていただいています。この参考資料の4、まさにそういう通学可能な学校が限られている地域における高等学校の在り方をどういうふうに考えていくべきなのかというこの問いですね。今までの議論だと、こういった高校はこの議論から取り残されてしまっているところにおいて方向性を書かせていただいています。資料1は前回少し話をさせていただいたところで、こういった地域の高校は、スライドの2ページ目のイメージ図でありますけども、地域社会の様々な学校も含めて連携協働し、あとはオンラインを活用しながら他の地域の専門の高校もそうですし、定通だとかそういったところも含めてた様々な形でのネットワークを持ちながら、特色化というよりはその中で多様な生徒の一人一人の学びに対応できる多様な教育を可能としていくという方向性をしっかりと進めたほうがいいと。
そのやり方として資料2にいろいろ書いています。先ほど言いました教育課程の共有化なんかを図りながら、講義、演習が中心な教科科目なんかオンラインを使いながら相互の履修だとかそういったところもできるわけですし、また、実習や実技が必要になってくる、例えば芸術とか家庭科といったところなんか近隣の場合には小中学校へとの共有化とか、あとはその農業とか商業とか工業とか専門の高校に本当だったら行きたかった子も、来るわけですから、そういう専門高校とも連携しながら例えば地域のそういった専門家に特別免許状なりを出しながら、講義は遠隔でもいいけども、実習や実技、課題研究などはその地域の実際の施設や設備や、フィールドを活用した形でそういった子たちの学びの機会を守っていく。
一方で、勤労青少年や不登校だとか特別支援なんかも含めてそういった子たちもこういった高校に実際来ますので、そういった場合は、場合によっては定時制通信制高校なんかとも連携協働しながら、多様なメディアの活用だとか、添削や面接指導等も適切に活用した形で学びを保障できるという、例えばこういった体制を、小さい学校で通学可能な高校がほかにないというようなところには整備をしていく必要があります。最後、スライド3枚目に載せていますけども、誰一人取り残さないでどの学校でも、どの地域に生まれてもこういった学びを保障できるような体制や環境、制度的な基盤というところで、ここに書かせていただいていますけども、今日の話であれば例えば学級編制基準もこういったところはまず、率先して、40人を見直していくだとか、また、こういったことをやっていくと、出てくるのは教育の質の保障の話だとか評価、何でもかんでもいいのかと、グラデュエーション・ポリシーとか含めて何でも卒業させているのかというような話なんかも出てくるわけですけども、例えばそうしたときに、高等学校卒業程度認定試験もあります。例えば、こういったものを活用して、CBT化やオンライン化し、こういったところは各学校で受験できるようにして、客観的に見られるような仕組みなんかも、こういったところからこそ進めていって、生徒たちの多様な学びと質の保障の両立も目指していく。こうした従来の制度だとか学科の枠組、環境ではできなかったような取組を可能としていくような、特別なのか、新しいこういった制度的もしくは体制、環境面での措置をこういったところにしていく方向性を是非盛り込んでいただきたいと思いますし、こうしたところで成果が出てきたような取組なんかは全国のほかの高校でも、規模が小さくなくても都市部でも使えるようなものもどんどん出てくるかと思いますので、そういった意味においてもこういったところはしっかりと特出ししてでも、保障していくようなことを是非書き込んでいただきたいと思っております。以上です。
【荒瀬主査】 ありがとうございます。
話は全般にわたっておりますので、私は先ほど冒頭に、少しよく分からない区分をいたしましたけれども、気になさらず、言えなかった委員もいらっしゃると思いますので、後ほどまた、御発言を頂きたいと思います。
では、奈須委員、お願いいたします。
【奈須委員】 文系理系のところ、今回、資料も丁寧に出していただいて非常によく分かったんですけども、普通科の今後の在り方を考えていく上で、各科目の内容については、学習指導要領で規定するわけですけども、それをどんな風に履修をしていくかということは、この類型という話になるわけで、現行指導要領では例示をされていないということですけれども、歴史的にはここの資料3の5の2の、参考3、参考4で出していただいたようなことだったと。したがって今でもその文系理系というのは非常に多いことが分かってまいりました。
一つの問いとして、この文理というのはどこから来たのかについては、今回資料を出していただいてはっきりしたと思います。また、その文理というのを、僕らは金閣玉条に信じてきたわけですけども、それは不変で妥当なのか、あるいはそうでないとすれば、文理という選択は今後も妥当なのか、妥当でないとすればどんなふうにしていくのかが、一つ大きな課題かと思います。
資料の5の2の6ページ、7ページ、丁寧な資料を出していただいて、これは全国で共有されていいと思いますけれども、これを見ますと、改めて思うことは、昭和30年代に、CDEというのが出ているわけですね。Cというのが今で言えば多分国立向け、Dというのが私立文系、Eというのが私立理系ですかね、あるいは今度35年のほうを見るとAの1から6、さらにBという風になっていて、Aの1から6を見ると男子と女子で違う類型になっていて、今日的にはそのジェンダーに関わる議論からすればもう多分とんでもないという話になるかと思います。かつての中学校の技術・家庭科が男女別修であったようなことですよね。だから今日には妥当しないものだろうと思うわけです。
こう考えていきますと、この類型は歴史的に見て、その時代その社会の中では妥当であったんだろうと思いますが、逆に言うと、時代や社会に極めて強く依存するものであるという認識を共有することができるんじゃないかと思いますね。つまり、文理もそんなに普遍なものではないと。ある時代ある社会の中では妥当であったかもしれないけれども、未来永劫不変なものではないのではないかと私は思うわけです。その意味で今後、これが妥当なのか、妥当でないとすればどんな可能性があるのか。もちろんこれをすっかりやめてしまえと言っているわけではないですけども、これに強くこだわって、これを前提として、まだまだここが履修を主導していることに対するある種の問い直しは大事だろうと思います。その意味で現行指導要領では類型が例示されていないことは望ましいと思います。学校に委ねると。
ただ、例示していないというのは消極策ですよね。つまり各学校で判断してくださいと、文部省としては強い例示をしませんと。しかし、消極策というのは、ややもすれば現状における在り方をそのまま維持しがちであります。ですから、今後何らかの積極策にする必要があるというのが、この時点での位置ではないかと思います。
そう考えたときに、資料の5の2、4ページの中段辺り、丸2の「その際、」の中段になりますが、これは見え消しで消されているんですけど、私はこの文章は残していただいたほうがいいと思って、「また、現代的諸課題に対応した学科を設置する際には、従来の普通科が一般的に設けている文系理系の類型ではなく、当該課題に対応した」という、「ではなく、」というのは否定ではないと思いますけど、捉われることなく、こだわることなくということを明確に出すのは大事かと。前回、私も含めて、文系理系というのは問い直してほしいと要請しましたけど、現状においてはそれで動いている学校が多いわけで、それに捉われることなく考えましょうという文は残してほしい気が、まずいたします。
それとの関係で、4の2で言いますと、このことは2ページに出てくるかと思います。2ページの中段、白丸の2つ目。「特に普通科においては、多くの生徒がいわゆる文系・理系に分かれ、2年次以降、特定の教科について十分に学習しない傾向があるとの指摘がある」と、これも残していただいたほうが、私なんかはよいかと思います。そういう問題を指摘した上でどうしていくかということがその以下にあって、文系理系に捉われない、それを問い直しつつ、新しい履修のモデル、履修システムを構築、提示し、また各学校の創意工夫で打ち出していこうという趣旨を出す上では、現行の文系理系という、何か思い込んでこれしかない、これでよいのだという類型に対して、批判的に吟味し問い直し、その上でないと創造というのは出てこないので、少し強いかもしれませんがこれは残していただいたほうがよろしいかと思います。以上でございます。
【荒瀬主査】 ありがとうございます。
文系理系は、本当にこれはなかなか難しい話で、こういう話が出ると常にまた大学入試との関係は出てきますので、我々の議論はどこかで切れるということが当然ないわけですけれども、いろいろなところで本当にこれからのことを、それぞれ考えていく中で重ね合わせるのは非常に大事かと思いながらお聞きいたします。
では、角田委員、お願いいたします。
【角田委員】 角田です。よろしくお願いいたします。今の関連でいきますと、私はこのワーキンググループグループに参加させていただくときから、高校の文理分けを潰したいというようなことを思っていたものですから、少しこだわって、残していただけたらと思っています。
現実には、国公立大学文系進学コースとか、私立大学文系進学コースとか進学希望先といった意味合いでのコース分けが行われているんですね。そうではなくて、今回、主張しているカリキュラム・ポリシー、カリキュラム・マネジメントに基づいた教育課程を、本当に再度、構築していただきたいと思っています。
最初のオンライン学習についてですが、個別最適化の文脈で強調されることが多いんですけれども、私は社会につながる協働的、探究的な学びでもオンライン学習の可能性が大きいと思っています。今回ね、オンライン学習ができない高校は探究も止まっている状況があります。オンライン学習ができているところは、前回発言しましたけれども、海外の方とつながったり、今まで経済的距離的に無理だったことが実現しています。オンライン学習については、探究学習でも大変なメリットがあることを強調したいと思っております。
それから、6ページの辺で、高校の配置についてですが、これも私の印象論ですけれども、今、人口減少ということで、全国で現場の先生方にとってはむごいと思われるような統廃合が進められている現状もあると思います。市町村とのつながりを非常に重要視していらしたところがそういったことが評価されないというような例もあるようです。現在進行形の市町村とのつながりがこれからもちゃんと生かされるように、その取組自体をきちっとすくい上げるような視点を、設置者側に求めたいと思っています。
それから、10ページ、11ページのスクール・ポリシーのことですが、これも田村先生が先ほどおっしゃられたとおりと思いますけれども、ステークホルダーがたくさんいて、策定の仕方など一体どうしたらいいのか分からないという声がこれから多分現場に起こると思います。そのときに、安易に作成されないような策定の工程といったことにも、考慮することが必要ではないかと思っています。 大学のアドミッション・ポリシーなどについては、担当者が作文したと自虐的に聞くことも結構ありましたので、高校のスクール・ポリシーはそうではないものとなってほしいと思っています。
また、田村先生がおっしゃいましたけれども、大学のアドミッション・ポリシーは入学者個別選抜に反映されるものですが、公立高校の場合はそこまでできるのかと疑問に思っています。高校の入学者選抜との関わりについても考慮していったらよいのではと思っています。以上です。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。
まだ皆様、御発言なさってないのに、私が余計なことを言うのはいかがかと思いますが、一つ、角田委員がそうだとおっしゃっているわけではもちろんないと思いますけども、探究学習においてICTの環境が整っているかどうかは非常に大事ですけれども、この間、それができなかった高校で、探究求 学習が止まっていたのかとか、レベルが下がったのかというと必ずしもそうでないという実践の御報告もたくさん頂いています。ですから、ICTが整わない、すなわち探究も難しいとなるケースはもちろんあると思いますけど、そうでないケースも多々あると思っております。余計なことを言ったかもしれません。
それから、最後におっしゃった、グラデュエーション・ポリシーとアドミッション・ポリシーですね、その点でいうと、これは付け加えていただいたところですけれども、12ページの丸の2つ目の4行目にあるのをどう解釈するかですけれども、私は非常に重要だと思っておりまして、アドミッション・ポリシーに基づき高等学校による選抜という視点とともにという、高等学校による選抜は、必ずしも、県内で一律の選抜をするのがいいのかどうかというのが地域による差は必ずしも、県が一つであれば全て一つであることにはつながらないわけですから、そういった幅も今後考えていくのがスクール・ミッション、スクール・ポリシーの基本的な発想かと思って考えております。さらに余計なことを申し上げたかもしれません。
【橋本委員】 ありがとうございます。京都府の教育長の橋本です。
まず、資料4の2でいうと9ページ辺り、資料5の2で論点整理されている1ページです。まず、スクール・ポリシー等に関してやります。スクール・ポリシーについては、学校運営の一体性を考えますと、学校全体を単位として策定していくことを基本に、課程の違いなどを踏まえて、書き加えるイメージなのかと思いますし、一方のポリシーについては、特にカリキュラムなどは、課程や学科により大きく異なりますので、課程や学科単位を基本に、共通する要素をそこに加える。こんなイメージになるのかと想像しております。また、年限につきましては、ポリシーのマイナーチェンジ辺りは、校長の意向も踏まえて、少し短いサイクルになることもあり得ると思いますけど、ミッションに関しましては、設置者が策定する高校全体のビジョンとの関係もありますので、ここは中長期の年限とすべきだろうと考えます。いずれにいたしましても、2ページの箱囲みの中に、最後に書かれていますように、地域や学校の事情に応じた取組となるよう、具体的な枠組、あるいは方針については、校長会とも協議しながら、設置者が主体的に検討を進めていくべきものかと考えております。
また、先ほど来ポリシー等の策定にあたっての負担や形骸化についての指摘もあったわけですけども、そうした中で、スクール・ポリシーを実効あるものとするために、社会とどのように関わるか、4の2の13ページ辺りに書いてあるかと思いますが、こうした論点については、地域とよりつながりのある教育活動を進めていくために、コミュニティースクールを活用することのほか、地域連携支援員の配置活用という手法もあるかと考えます。これについては、現場がなかなか大変な中で、フリーな教員配置するという方法ももちろんあると思いますけど、例えば地域事情に詳しい校長OBを活用していくといったやり方、また、事務職員の学校経営参画意識を高めていき、企画調整分野にも積極的に関わっていけるようにする、そのための体制整備を行うといった方法もあるかと思います。事務職員が、一般的には教員より学校をより客観的に見ている、そんな傾向もありますので、そうした力を生かしていくことも重要だと考えております。
それと、先ほどぐらいグラデュエーション・ポリシーの話がありましたけども、高校の入学者選抜の実態を申しますと、近年は、定員割れをしている学校が多いということで、その定員割れをしている中での定員内不合格が出せるかといった難しい現場課題も抱えているということだけ申し上げたいと思っています。
それからもう1件、学科の在り方に関して少し申し上げたいと思います。これらの4の2で言いますと14ページ以下になります。スクール・ミッションやスクール・ポリシーを生かし、特色や魅力ある学校作っていくためには、学校現場が、時代の変化も含めて柔軟に対応していけるように、選択科目の拡大を可能にするなど、教育課程の一層の弾力化を図っていくことが重要だと考えます。
実際には大学入試への対応という制約があるんですけども、改革に前向きな指導主事からは、必履修科目の縛りを緩めてほしい、教科書にしろ、縛られないような授業がもっとできるようにしてほしい、こんな声も頂いています。その上で、資料5の2の4ページ丸1に示されている、普通教育に関する学科を弾力化大綱化する、このことは選択肢の一つかと思いますけども、今の教育課程上の制約との関係で、果たしてどこまで特色が出せるのかという印象を持つとともに、中学生や保護者、中学校の進路担当者の学校選択の判断、指導を少し難しくしてしまう可能性もあると感じております。
また資料5の2で言いますと3ページ中ほどにありましたが、中学生段階で進路をしっかり方向づけることが難しい中、入学後に、進路変更できる仕組みを構築できれば、これは確かに多いんですけども、現実的には転科や転校は決して容易なものではないだけに、むしろ必須科目を減らして、選択科目を増やすという方向、これは設定科目によっては、普通科の総合学科化とも言えるわけですが、そのほうがよいようにも感じております。
次に、資料5の2の丸3にあります、理数等の専門学科についてですが、職業学科とは専門性の意味合いが大きく異なり、研究者志向を持ち高度な学習の意味合いをよく理解している一部の生徒を除きますと、これは特に京都の実態かもしれませんが、まさに難関大学進学を目指した普通科系の進学校、このような受け止め方がされていると感じております。普通教育に普通科以外の学科を設けることとするものであれば、こうした実態や、また普通科でもこれからより探究的な学習を行うようになりますので、そうしたことを踏まえますと、理数科等については普通教育の枠に移行していくほうが収まりがよいように考えます。
さらに職業学科に関してですが、農業の6次産業化の進展に伴って、経営的視点が重視されることから、例えば農業と商業にまたがる領域や、あるいは商品化を意識した農産物加工等での農業と家庭、商業とまたがる領域など、異なる学科間の学際的な学習がより必要になってきていると思います。
こうした時代の変化を踏まえたときに、設置基準にある農業に関する学科、商業に関する学科といった、商学科の区分の意味合いがだいぶ変わってくるんじゃないかと考えます。これらのことを総合して考えますと、従来の普通科、商学科含む専門学科、総合学科という区分ごとに、履修の教科や科目の基準を分けるという発想は改めて、将来的には、学科の違いというものを、よりグラデーションのように捉えて、垣根を取り払っていく、あるいはその垣根を低くしていく、こういった弾力化を検討すべきではないかと考えております。以上です。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。
橋本委員のおっしゃったこと、また、余計なことをまた思って、お話をしてしまうんですけれども、京都では専門学科、その他専門学科が難関大学に行くための学科になっているということをおっしゃったわけではないんですけれども、ともすればそのように聞こえなくもないように、私は聞いてしまいましたので、結果として特色あるとその取組が、そういった大学にもつながっていくということは、これは幾つかの、とりわけ府立高校がたくさん特色ある活動なさっているわけですけれども、あると思いますが、そこのところはまた、京都の中でですね、十分お考えいただければと思いました。余計なこと、また申しました。
では、跡部委員、お願いします。
【跡部委員】 跡部です。先ほど来、スクール・ミッションについての話が出ておりました。私立学校はまさにそのスクール・ミッションありきで動いていますので、少しだけお話をさせていただきたいと思います。ご存じのように、建学の理念という形で創設者が作ったものを、その後、どう引継ぎながら、今の時代に合わせて、教育を発展させて変えていくかというところが、私立の難しさであると同時にやりがいのある部分ではないかと私は考えています。古ければ古い学校ほど、多分その時代では最先端だったと思いますけども、驚くような言葉で書かれていることがあり、そういった建学の理念を、後の時代の先生たちが現代に合うように言語化するのはなかなか苦労を伴うことがあります。スクール・ミッションをお作りになるときに、普遍的なものをうまく取り入れられると、後の時代にも、それが言語化しやすくて、後の先生が困らなくて済むのではないかと思います。私たちの学校は、たまたま非常に普遍的なものを残してくださっているので、そこのところは割にやりやすいのですが、そうでない学校も結構あるというお話を伺うことがあります。校長はそういう理念をどれだけ、今の時代に合わせたものに変えながら、ポリシーに落としていくかというところに皆さん苦労されているようです。
また、公立の校長先生の年限が非常に短いようですが、異動されるケースが多いと伺っているんですけれども、これは生徒の立場からすると、こういう学校だって思って入ったのに、割とすぐに中身が変わっていくというのも、少しかわいそうな気もします。そういう意味では、年やそこらでは全然物事は動かないし、大変だろうと。ですから4年、6年とかそういうスパンで、きっとお考えになって回されるのだろうとイメージしております。
それと、先ほど橋本委員から、事務の方が結構客観的に見ているという話がありましたが、私も同じように感じます。これは教職協働という形で今、私たちも現場で取り組んでいますが、教員以外の方の力を学内でどれだけ活用できるかというところは学校を発展させる上で、非常に大事な部分ではないかと。以上です。【荒瀬主査】 ありがとうございました。小田切委員、お願いいたします。
【小田切委員】 明治大学の小田切でございます。発言の機会はそう多くないと思いますので、私の専門の地域政策あるいは農村政策の立場からまとめて3点ほど、いずれもコンパクトな指摘でございます。
その前に4の2の6ページ、7ページで自前主義についての注を入れていただきました。前回この自前主義という言葉について私は、少し申し上げたんですが、確かにこういうふうに、文部科学行政では比較的狭い意味で使われていることがよく分かりまして、どうもありがとうございました。
その点でまず、4の2の7ページ、1つ目のポツで、これは先ほど岩本委員が議論されたところですが、一方、中山間地域や離島などに立地する高等学校においては云々かんぬんというところがあるんですが、調べていただきましたように、公立高校が0ないし1の市町村が63%ございますね。これは統計的に見ると実は中山間地域の割合を超えています。農水省が市町村ごとに定義しております。この市町村ごとといっても、平成合併前の市町村で、この1,700とは一致しないんですが、そのときの割合が50%ですね。つまりそこから類推できますように、中山間地域や離島からはみ出している割合です。その意味で、地方都市も含めてかなり、こういった地域が、広がりがある、その意味で岩本委員の挑戦は、単に、離島や中山間地域の狭い範囲でないものがあったことが分かって、ここの文言については、恐らく修文が必要だろうと思っております。
それから2点目は、7ページ目の2つ目の丸2を8ページ目にかけて読んでいくと、適正化の議論が残っております。先ほど5のところで、県域連携という非常に前向きな議論を頂きました。にもかかわらず、ここの部分は適正化の議論がやや残っている感があって、恐らくその点との調整が必要かと思っております。
ちなみに県域連携について言えば、恐らく、学校市町村あるいは産業界などが入ったコンソーシアムができれば、この県域連携も、コンソーシアム間連携という形でやりやすくなると思いますが、いずれにしても、先ほどの自前主義ではないのですが、困難はあると思います。そういう困難があるとすれば、県域にとどめることなく、都市部と地方との連携まで踏み込んでもいいのではないか。つまり、ハードルがさほど変わらないと考えることもできるのではないかと考えております。
それから3点目、資料6について、資料6は実は前回、私からお願いして、こういう資料を作っていただきました。大変ありがたいと思います。少し検討すべきことが必要かと思っておりますが、データの2枚目に先ほどの数字ですね、0校ないし1校が62.5%、しかもそれを県別に示していただいているわけですが、それでは、地図上で白い地域がきちんと市町村ごとに公立学校が張り付いているのかというとそうではなくて、実は白い部分、例えば、西中国地方とか、あるいは長崎とか新潟など、これらの市町村合併が急速に進んだところです。つまり、ここは実は市町村合併が進むことによって、どこかに高校があるという状況を反映していることになって、これを読む際には市町村合併のバイアス、これはかなり地域差があるんですが、それを入れ込むことが必要だと思います。併せて、全く高校がないところが23%ある。私は改めてこの数字を見て、教育の機会均等としての公立学校の存在について今、議論していることの大前提として、この国は4分の1の市町村で高校を失って、高校とは公立高校ですが、ということでいいのかという思いが非常に強くございます。
教育という面においての対応は、今まさに議論されているわけですが、実は地方創生、今度の新しい地方創生の総合戦略、私も作るのに関わったんですが、その中では、高校を拠点とする地方創生という議論がありました。こう考えると、地方創生において、高校を拠点とするという足がかりがない市町村、地域が随分存在していることを考える必要があるかと思います。
その点で少し大胆な提起ですが、仮に県立高校が廃止されるという方向があった場合に、北海道では事例がありますが、大変難しい議論ですが町村に移管するような、これは当然財源とともにという条件が必要かと思いますが、そういったことも将来を考えるときには、少なくとも選択肢としてあっていい、あるいはその選択肢のハードルを下げるような議論はどこかであっていいように思っております。
いずれにしても、申し上げたいのは、この地図が出てくることによってかなりエビデンスベースの議論が進展すると思っております。それを是非さらに進めていただきたいと思っております。以上でございます。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。
今、手を挙げていただいた方を確認いたします。長塚委員、牧田委員、末冨委員、内堀委員、鍛治田委員、香山委員、佐藤委員、田村委員。ほかにはいらっしゃいませんか。
では、田村委員までとさせていただきたいと思います。あとの時間、どうぞよろしくお願いいたします。では長塚委員、お願いいたします。
【長塚委員】 長塚でございます。4の2について3点ほどお話ししたいと思います。1つ目は、コロナの状況下でオンラインの活用が随分話題になって、2番目に盛り込まれ、5ページ辺りに書かれているわけですが、この間、オンラインというのは、評価の問題を抜きにして取り組み、どの様な教育効果があるのかということをあまり考える余裕もありませんでした。とにかく、平素の授業と同じようなことをしなきゃいけないということで、オンラインを使ってなんとかやりくりしてきたというのがここまでの実態だったと思います。しかしこれからは、オンラインを使った様々な授業が、効果がどの程度あるのか、ここにも効果を測るという表現が書いてあるんですが、二元論でなくて対面の効果と、ICTの効果と、つまりそれぞれに効果測定のようなことがないまま行われてはいけない。オンライン指導をしているときにも、生徒たちに、どのような評価をするかというようなことを提示しないまま実はやっていた実態があると思います。本来ならば、このオンライン授業を通して、どういうことを期待しているのか、その結果としてどういう評価するのか、対面が始まって、またペーパー試験による評価だけに戻ってしまうのか、多分そうではないだろうと思いますが、なかなかこの間は考えられなかった。でもこれからはですね、いろいろな方法論があるんだけども、その教育効果としての測定エビデンスをちゃんと把握した上で、いろいろな方法を用いていくということにならなければいけないと思います。
ちなみにオンラインによる場合には、例えば知識的な内容を動画で何度も繰り返して学習するようなことには非常に効果的だとか、学習成果の定着も相当あると期待できるわけですが、そういうことを実際に確認する必要があるということでございます。それが、1点目です。
2点目は、3番になるんでしょうか、6ページ以降にある、大きな意味での、これからの高校の在り方に関してですが、新指導要領では、どのような力をつけようとしているのか、各学校が資質、能力ベースで、単に教科の学習だけじゃなくて教育活動全体を通して、学校が育成しようとする資質、能力を明確にすることが求められているわけで、ここでいうミッションやポリシーと符合するわけですが、それを明らかにしていくというのは、単に文系や理系ということの求めに応じるのではないことは明らかだと思います。そこで、あえて思うことは、この文書の中に、公立高校という表現は結構あるんですが、先ほど跡部委員からも私立高校の場合とか、今、区市町村で公立高校がないところがあるとかいう御指摘もあったわけですけども、国公私という種別、設置者別の種別ごともミッションがあるだろうと思います。ここが一言も触れられていないのは、少し残念な思いがいたします。国立であれば、教育研究が主眼となっていると思いますが、私立は全国でいえば3割ぐらいを占めているわけですが、都市部に私立高校は多いですね。例えば東京では6割の生徒が私立高校の生徒です。という具合に、確かに地域によっては、私立高校が少ないので、公立高校をしっかりと、配置するような政策も必要だろうと思います。私立の役割としては、それぞれのミッションに基づいて、建学されてきたこと自体にあるんですけども、それらの設置者別のミッションもあるということを、どこかに盛り込んでいただければというのが2点目。
3点目はですね、4番目の(2)で、定時制・通信制課程に関わるところです。19ページを見ますと、たしかに定時制・通信制の多様な取組の必要性が書かれているんですが、この文言は、少しネガティブな表現で始まっていて、不登校の生徒とか、あるいは非行、犯罪歴を有する生徒のためなどという言葉が、いきなり出てきているのは、これから、多様な学びをしようとする生徒たちにとっては、少しどうかと、もう少しポジティブな捉え方もあっていいのではないか。
20年、30年後とは言わずとも、テレワークが広がろうとしているこの社会では、学校の学びも時間や場所など、相当組み合わせる必要が出てくる、さらに人生100年時代構想というのは、学校出て就職し定年を迎えるという3ステージじゃない、高校出てからも、就職してからも大学にもう一度行こうとする、そういう時代が人生100年時代と言われているわけでありまして、そのときはいろいろなことがあったけれども、いろいろな学び方ができるんだという可能性を示していくことが、課程別の、全日、通信、定時の意義だと思います。
これは、これからの人生100年時代における多様な学びの可能性として、制度の意義を、もう少しポジティブに書いておいてもいいのかなという思いがいたします。その上で、当然ながら設置基準もしっかりと見直していただく必要があると思います。
ちなみに、通信制といっても通学型、定時制といっても昼間定時制、まことにこの制度ができたときとは違った状況になっているわけであります。そういう現状をしっかりと捉えて、未来につなげていくような制度の生かし方、現状の制度を柔軟に見直して活用していくという方向性がないと、実態には対応できないんじゃないか、そんな思いがしております。以上でございます。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。では、牧田委員、お願いします。
【牧田委員】 牧田です。私は、スクール・ポリシーと個別最適の話を少しさせていただきたいと思っています。スクール・ポリシーを作ることが、今、多分問題になると思う、特に、独自入試をしない公立学校が中心になると思いますけれども、高校というのは、前から申し上げているとおり、入り口があって出口がある、中間機関だと認識をしております。今や98.8%の進学率で高校に進学するわけですから、義務教育を終えた子供たちが高校へ進学していくことになったときに、スクール・ポリシーとして何を明確にすべきかということで、資料の8ページにも書いてあるように、各学校が、育成を目指す資質、能力を明確に設定するって書いてあるんですね。その次の行に抽象的で特徴が分かりにくいとも書いてあるわけで、私から言わせると目指す資質、能力を明確にすることも、かなり難しいことだろうと思っていて、それも恐らく抽象的な表現になっていくのではないかと想像するわけです。であれば、先ほど言ったようにその出口を意識したスクール・ポリシーに、大胆にカテゴライズをするべきではないかと思っています。
先ほど、進学先の調査の結果がありましたけれども、大学行くか、専門学校に行くか、就職をするかという、まず大きく3つに分かれるわけですね。ではその学校はその大学の進学を目指すのか、それとも専門学校、要するに中学校までの学びを焼き直して、ある程度の基礎学力を再度つけてから、専門学校に進学していくのかというような、そこから中学校の進路指導の先生方が、どう子供たちの相談に乗るかを考えたときに、その出口が明確になっていたほうが、私は、進路指導しやすいのではないかと思っているわけであります。
それを踏まえてですね、そのスクール・ポリシーを、今、申し上げたように明確にすることが大事だけど、あんまり細かくし過ぎて、何か理念的なことをたくさん、私立は別ですよ、私立はちゃんと建学の精神があって、独自の入試で、欲しい子供たちを入学させるわけでありますから、そうではない公立については、あまりそこのスクール・ポリシーは細かくなり過ぎたらいけないのではないかと思っています。
加えてですね、このスクール・ポリシーは結局その高校という組織の全体のポリシーにもなるわけであります。組織としてのミッションがここに生じるわけで、そこへ先ほどから出ていますように個別最適というような概念が入っていきますと、我々企業経営していますと、常に対峙する言葉として個別最適か、全体最適かというようなことを相反する概念として捉えるんですけれども、当然それは、スクール・ポリシーは組織のポリシーとすると、全体最適を目指していかなければいけないということになりますね。そうすると個別最適はなかなかできないという現状がそこにあるわけで、この個別最適という言葉ではなくて、全体最適のための個別対応というようなニュアンスで、この個別最適という言葉をお使いになればいいのではないかと思っています。これは必ず組織のミッションがどんどん、より厳密に遂行されていけば、必ず個というものとの相反が生まれてきますので、その辺の折り合いを今から考えることは大事ではないかと思っています。以上です。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。末冨委員、お願いいたします。
【末冨委員】 3点、論点について申し上げたいのですけれども、一つはステークホルダーの参画について、現状の論点整理ではかなり薄いと思っております。
例えば資料4-23ページですが、最初の丸のところかなり書き込めんでいただいているんですけれども、ICTの個別最適化も大きな文脈で言えば、学習者重視の流れの中で生まれて、国際的に主張されてきた改革ですが、果たしてこの程度の書きぶりで、学習者重視であると伝わるかどうか少し疑問を感じます。そして高校生は多くの高校では発言や参画は実質的に保証されていないような状況の中で、18歳になったら自動的に成人させられていくというある意味乱暴な高校教育のシステムになっているわけですね。その現状をちゃんと捉え切ったときに、このような書き方で大丈夫でしょうか。私が文科省で出席している大学共通テストの大学入試の在り方に関する検討会議では、高校生が意見表明する機会を作って頂きましたけれども、この国の高校生の意見の尊重や権利も含めて、現状の高校教育ではあまりにも軽視されています。その状態でよく民法成人を18歳にしたなというのが、私自身が現状に対して持っている非常に深刻な懸念の一つです。だからこそ、新時代に対応した高等学校教育と言った場合に、民法成人の話と、現状の高校教育が果たして18歳成人に対応したシステムになっているのか、責任を持って社会を変革していける、主体性を持った大人となっていけるのかといったことについては、もっと根本的な捉え返しが必要だ、ぐらいのことは書いておかないと、我が国の高校教育システムが幾らここで議論したところで何も変わらないのではないでしょうか。
それから、学習者保護の観点から言うと、川上委員がおっしゃったとおりでして、これ以上高校を減らさない歯止めの在り方をどう考えるかということも、法令規定と併せて、検討しておく必要があるだろうと思っています。
現状の公立高校の適正配置及び教職員定数の標準等に関する法律では、都道府県が適正配置の役割を公立については担うと書いてあるんですが、恐らくとりわけ人口減少が進む地域のことを考えれば、設置形態を超えた適正配置、あるいは市町村への移管、あるいは市町村立の高校の設立も含めての総合調整の役割も都道府県が担っていくことが現実的に今起きていることであろう、もっとそういった場面が増えてくるだろうと思っています。ですから特に私立高校と公立高校のバランスのようなものというのは例えばですが、大阪府下においては、公立高校の統廃合が進んだ結果、著しく変化しています。それは私立高校の関係者から見ても、公立高校はどういう役割担っているんですか、あるいは地理的にそこまで公立高校減らして大丈夫ですかということが、私学関係者からも示される状況です。公立高校統廃合は設置形態を超えて、公教育としての高等学校教育について突きつけられている深刻な懸念でもあります。公立高校についてのみ、都道府県側が総合調整の役割を持つのではなく、学習者の学ぶ権利を地理的な制約のために閉ざさないための設置形態を越えた総合調整の在り方についても、この機会に明記をしておく必要があるだろうと思います。将来的に関連の法令の改正が併せて必要になる事項だと考えます。
それから3点目の論点といたしましては、資料4-2で、特に今日の議論を経てと書かれていたのが、10ページ辺り、小規模校の在り方ですよね。12ページ辺りでも構わないですけれども、資料4-2の12ページの(4)ですが、地域社会や高等教育機関との関係だとか、あるいは今日も話題になっておりましたが、スクール・ポリシーの在り方を含めて、リーダーシップの問題が必ず出てくると思います。特に、日本の場合には校長の任期の話も出てきましたけれども、校長のリーダーシップが比較的弱いです。国際的に見れば、どのように、スクール・ポリシーを作っていくのか、あるいは、コミュニティースクールとの関連でコミュニティースクールと校長がそれぞれどういう権限を持っていくのかというような整理もない中で、例えばコミュニティースクールベースで、ポリシーを作りましょうみたいな話をしたところで、恐らくは、形式に流れるはずだと思います。教育委員会や校長がひな形を作って、こんな感じでいいでしょうというように、スクール・ポリシー作文が日本中の高校で行われるにすぎなくなってしまうのではないか。逆に言えばその高校がいかにあるべきかということについての、コミュニケーションを活性化しビジョンを引き出していくことこそがリーダーシップですが、残念ながら日本の、校長のリーダーシップ形成というものは全く戦略的に行われていません。それは高校だけではありません。リーダーシップの問題を、これまた明記せずに、この答申を書かれても恐らくスクール・ポリシーも形骸化するだろうと懸念します。同じように、学校間連携におけるリーダーシップというのはもっと難しい問題になります。単純なリーダーシップではなくて、システムリーダーシップといいますけれども、自分が所属する広い意味でのネットワークの中での自分自身のリーダーシップ、それは決して単独でもない上からでもなく、多様なステークホルダーとのコミュニケーション重視型のリーダーシップといったものを発揮する時のリーダーシップについては教職員研修、特に管理職研修だとか、管理職養成の在り方も、全くもって不十分です。その状態の中で学校間連携を安易に進めると、恐らく全くうまくいかないことになります。それぞれがリーダーシップを単純な意味で、自分が校長なんだから何でそこまで口出されなきゃいけないんだということになりかねません。先ほど川上先生もおっしゃいましたが、何でうちの学校の特色を他校に提供しなきゃいけないんだみたいな、衝突しか起こらない学校間連携になるようなことにもなりかねません。逆にそうではないリーダーシップの在り方、システムリーダーシップを含めて新しい時代の高校教育にふさわしいリーダーシップの在り方も追求していかないと、個別最適化もそうですし、ICT化もそうですが、これまでとは異なる局面での、高校教育への変革を率いていけるリーダーが育たないはずです。だからこそ、リーダーシップ育成の観点を是非入れて頂きたい。特に学校間連携については、これまでのリーダーシップとは違う意味でのシステムリーダーシップが問われていく、局面になるということですので、その点について、特に指摘をさせていただきたいということで、以上3点です。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。
内堀委員、鍛治田委員、香山委員、佐藤委員、田村委員の御発言を最後までお願いしたいと思っておりますので、大変申し訳ありませんが、若干、延長させていただきます。よろしくお願いいたします。内堀委員、お願いします。
【内堀委員】 長野県教育委員会、内堀です。時間がないところですので、簡潔に2点だけお願いいたします。
1点目は資料4の2の、10ページ以降に書かれているスクール・ポリシーの策定のところです。スクール・ポリシーに関しては、学科別・課程別に定めないと、先ほど橋本委員もおっしゃいましたけれども、難しいだろうとは思っています。何年という期間の議論ですけれども、何年って決めちゃうと、また、ここで、柔軟性がなくなると思います。ですので、なぜこれを定めていてどういう趣旨でやっていくのかということについて触れる中で、それぞれの判断でというような形をとるのがいいのかなと思っているところです。
それで、12ページ以降の、先ほどの荒瀬先生も牧田委員も触れたところだと思いますけれども、2つ目の丸の4行目です。高等学校による選抜という観点とともに、となっているんですけれども、このアドミッション・ポリシーを実質化していくためには、公立の各高等学校に何らかの形での入試の裁量権がないと意味がかなり薄まってしまうと思います。具体的には、各校が行える特色入試とか個別入試を、各設置者が設ける必要性があると思いますので、それを書いていただく必要がもしかするとあるのかと思うところです。
2点目は、資料4の2の15ページの専門学科と書かれている上の2つの丸のところです。これは具体的には資料5の2の、4ページの上半分のところで書かれているわけですけれども、その普通科の柔軟性、ここに書かれているとおりであります。普通科教育に多様性を持たせ高校生に多くの選択肢を付与することになるという、この趣旨に沿って考えていただいた部分だと思いますけれども、この中で新しい学科を設置できることとしていますので、大事なこととして、下半分ですね、最後の4行ぐらいのところです、このほかにも、普通教育として求められる教育内容であって、と書かれていますけれど、新たに全国統一の学科を設けて以上終わりとしてしまうと、また新たな縛り的なものが設けられて、柔軟性や多様性といったものが失われていくと思いますので、例示に加えてその他というものを入れていただいたことも非常に重要で、その裁量権を設置者が持つこともまた重要なことかと感じています。以上です。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。では、鍛治田委員。お願いいたします。
【鍛治田委員】 YMCAの鍛治田です。通信制課程について資料からお話、意見させていただきます。資料4の2の、24ページ丸2でサテライト施設の教育水準の部分ここは進めていただいたらと思いますが、面積というよりも、一室で行っているようなところ、生徒のクールダウンや保護者との面談ができないようなところは別室が必要かと思います。
次に、23ページの一番下の中黒、多様なメディア利用が通信制では可能です。面接指導の時間免除ということで、複数のメディアを使うと、10分の8まで免除になります。これは恐らくオンライン授業が主にしている学校が、これを利用していると思います。
本校では面接指導、対面を大事にしていますが、どうしても学校に来られない生徒にはこのメディアを利用しています。ただ、その出し方として観点別学習状況の評価が可能となる報告の課題というようなことが出ております。もともと既存の学校に合わない生徒が全ての学習の中で、メディア学習が主になりますが、いつも評価されていると感じさせることは、萎縮させ、生徒の成長や学びにマイナスにならないかと危惧しています。
また、教員の書類作成が多くなり、生徒との時間が削減されるのではないかということも心配しております。通信制は生徒指導の案件、生徒支援と私たちは言っていますが、その案件が非常に多いです。
YMCAの同法人の公設民営の水都国際中学高校がありますが、そこの教頭と話していますと、生徒支援の案件は非常に少ない、でも本校でいうと、教員の仕事の30%は生徒指導、生徒支援の業務です。中学校からは子ども家庭センターからの、要観察のケースが複数ありますし、常に子ども家庭センターと、報告、相談、また主治医との相談、そういったことが非常に多く、これは定時制も底辺校も同じだろうと思っております。きめ細かくするためにということで、資料の26ページの、丸の2つ目のところにスクールカウンセラーやソーシャルワーカーを入れることが書かれています。これは公立高校に聞きますと、週に何回来ているとか、年に何回来ているということは伺いますが、実際は学校が予約係にしかすぎないところが多いんですね。予約をしているだけ、町のカウンセラーに行くよりも学校だったら無料だから行っているような実態があります。もう少しスクールカウンセラーやソーシャルワーカーが入るのでしたらその役割について、どのように先生がたと連携して、どんなふうに生徒を支援していくか、そういう質的なことが非常に大事かと思っています。
最後ですけれども、ICTが進んでいる通信制高校の中には、「生徒のトラブルには一切関わらない」と断言されておられます。でも、それは学校ではない、塾だと私たちは感じています。例えばオンライン授業するとそのことをSNSに上げてというトラブルが起きています。私たちは、上げた子に対して指導を行い、そして勝手に上げられたほう、傷ついた気持ちを聞き取り、また、クラスでこのことを協議していくこと、こんな1つ1つのトラブルが生徒の価値観や人間として育てていくのが、学校の良さだと思っています。
ですので、26ページの丸3つ目で、面接指導は本来的に個別指導を原則とすると書いてあるのが、これだったら塾だと感じました。もともと集団が苦手な生徒たちですので、個別指導が原則では、学校としての意味がなくなり、自己責任という価値観を生徒に植え付けるのではないでしょうか。生徒の成長のためには「先生、今どこやってんの」とか、「これは分からへんけどどうなってる?」と横の人と雑談することも非常に大事で、オンラインは、グループ学習はできても雑談はできない、これから多様な人と共生していくグローバルな社会になっていくためにも、個別指導が原則という考え方はもう一度考え直していただきたいと思います。以上です。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。香山委員、お願いいたします。
【香山委員】 岡山の香山です。2点、お話したいと思います。
1点目は資料の4の2の、目次ですけども、2番目に、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を通じて再認識された高等学校の役割や在り方とあるんですね。私はこれに、新型コロナウイルスの感染拡大を通じて発見された高等学校の在り方というのを、3番目にあえて入れたほうがいいのではないかと、今日の議論を通してずっと考えました。といいますのが、今日は資料の4の2と5の2が中心になって議論されたわけですけども、資料の2に、しっかりと今後の将来も高等学校の在り方のイメージが立ち上がってくる内容が盛り込まれているわけです。
特に2点あって、1点は、今日何人もの委員の方が、高等学校の規模の適正化の問題について、非常に示唆に富む、いいお話をなさったんですけども、このオンラインの授業の可能性を考えていくときに、私はミネルバ大学の例を出しましたけども、規模の適正化の問題を乗り越えていける、非常に大きな可能性があると思います。
それについて、4の2の資料の中では展開されていないというのが非常に残念で、まだまだ、これまでの適正規模の考え方を引きずる形で4の2が書かれているように、私には感じ取れてしまいます。そういう点で、何が発見されたのかということについて、あえて、資料の2との接続をしっかり書いていただけたらというのが、まずお願いです。
もう1点は、資料の2の4ページに、履修主義と修得主義の記述があります。私は義務教育の段階までは、履修主義に立脚するというのは分かるんですけども、高等学校になってきますと、もっと修得主義的な評価をしていくというところで考えていけば、例えば通信制の問題も、何ができるようになったのかをどう見るのかというところでですね、これまで粗削りなセーフティネットだったのが、もう少しきめの細かいセーフティネットになって、さらに例えば、総合学科と全日制の総合学科と通信制との間の隙間をどう埋めていくのかも議論できるのではないかと思いますので、この資料2の修得主義の考え方に基づいた、これからの高等学校の在り方についての記述も、今後増えていったらいいと思います。以上2点です。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。では、佐藤委員、お願いします。
【佐藤委員】 佐藤です。私も3点お願いします。
1点目は、資料4-2の19ページの、定通課程のところです。先ほど長塚委員さんからもネガティブな表現から始まっていますということをおっしゃっていただきました。
本校は昼夜開講3部制の定時制高校で、第1志望で希望して来てくれる中学生もたくさんいるんです。
全国的に言えば昼夜開講の定時制は、数も増えてきていると思いますし、成果を上げている学校もあると思うので、この定時制・通信制課程での多様な学習ニーズに応じた取組の推進というところの中に、工夫した教育課程を持っている定時制課程の学校のことにも触れていただけたらありがたいと思います。
2点目は、山口委員さんが中学校の進路指導というお話をされていました。中学卒業生の約99%が高校に進学して、そのうちの3割ぐらいの生徒たちは、14歳、15歳で、自分に合っている進路がここだということで、専門学科等を選んで進学しています。しかし普通科を選んだ7割の中の、数は分かりませんけども、かなり多くの生徒たちは、取りあえず普通科に進学してそれから自分の進路を考えようという生徒もかなり多いんじゃないかと思います。実際には、入学してすぐ、初めの中間テストが終わると、2年生から理系にしますか文系にしますかという面談を、学校の先生とすることになるんですが。
スクール・ミッションとかスクール・ポリシーとか、積極的に自立的に進路を考えてくれる生徒のことを考えて、いろいろ高校側も考えるわけですけれども、子供たちの成長は早い遅いがあって、ゆっくり育っていく子もいると思います。橋本委員さんがグラデーションという言葉を使っていらっしゃったんですけれども、フレキシブルなといいますか、のりしろのあるといいますか、そういうスクール・ミッション、スクール・ポリシーを考えていくことも必要ではないかと思います。
中学生の側から見ると、自分はAという高校にしか行けない、自分に最適なのはAという高校だけなんだという気持ちで、Aという高校を受験したら入試で入れませんでしたということではなくて、Aという高校でもBでもCでもいいんだけれども、第1志望はAという学校だとか、何かそういう中学校の進路指導とも、高校が足並みをそろえていけたらいいのかと思っています。
3点目、そのフレキシブルな教育課程というところで、修業年限ですね。例えば本校の場合は、定時制ですけれども、単位制を生かして、4年間でも卒業できるし3年間でも卒業できます。
専攻科のある高校であれば、社会に出る前に、自分の専門の勉強をさらに続けることができます。
それから、岩本委員さんに出していただいた参考資料の4の、3ページの、2つ目の丸に、例えば留学等含めて様々な事情で3.5年でも卒業というような御提案もあります。
修業年限について、これもモラトリアムといいますか、ゆっくり育つ子は少しゆっくり自分の進路なり、適正なりを考えていけるような仕組みも、どこかにあったらいいと考えております。以上です。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。田村委員、お願いいたします。
【田村委員】 田村です。ごく簡単に1点だけ、申し上げたいことがございます。4の2の資料で言いますと13ページから14ページにかけて、関係機関との協働コンソーシアムという話が出ております。こういったことはこれから広がっていくかと思いますけれども、その際に設置者、教育委員会等による積極的な支援であるとか、関与であるといったようなことが必要ではないかと思います。先ほど学校間連携のところでも設置者の役割が議論されました。それから、こちらの文章にも、地域等の諸機関との協働に携わるための教職員数にも限りがあるということがあります。また、校長先生が3年ぐらいで変わっていくという実態もあります。そういった中で、持続可能な、中長期的な、関係協力、関係者の協力、それから、広がりや共有、広がりを持った連携協働ができるためには、設置者による関与が必要かと思います。以上です。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。
途中、私が余計なことをいろいろ申しまして時間が延びて大変申し訳ありませんでした。まだ御意見のおありの方もおられると思いますし、新たにいろいろと御指摘を頂いたわけでありますが、今日頂きました御意見全てを盛り込むことは、大変なかなか難しいかと思います。少しでも、日本の高校教育が前に進むような形で、まとめをさせていただいて、冒頭申しましたように、7月17日の新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会に報告をさせていただきたいと思います。その際、文章の修正等は、主査に御一任いただくということでよろしいでしょうか。オンラインの皆さんよろしいでしょうか。
ありがとうございます。ではそのようにさせていただき、7月17日に報告をいたしたいと思います。なお、今後のこのワーキンググループの審議についてですが、今日もまた新しい御意見も頂いたわけですけれども、今後継続いたしまして、さらなる具体化に向けた検討をお願いしたいと考えています。
資料1にありました。諮問事項の我々に与えられた内容でありますけれども、その中の生徒の学習意欲を喚起し、能力を最大限伸ばすと、こういうことは3項目全てに関わることであろうかと思っております。スクール・ミッション、スクール・ポリシーもそこにつながっていくものでなければならないわけでありまして、この点につきましては、次期学習指導要領の前文に、その最終段落にありますけれども、生徒が学ぶことの意義を実感できる環境を整え、一人一人の資質、能力を伸ばせるようにしていくことは、教職員をはじめとする学校関係者もとより、家庭や地域の人々も含め様々な立場から生徒や学校に関わる、全ての大人に期待される役割であると明記されています。この役割をどう果たしていくのかということに関わって、今後も議論を進めてまいりたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
今日は本当に長時間になりまして、申し訳ございませんでした。最後に次回以降の予定について事務局からお願いいたします。
【酒井参事官補佐】 本日は充実した御審議ありがとうございました。また長時間どうもありがとうございました。
次回のワーキンググループでございますが、今、主査からございましたように7月17日は特別部会で、一旦御報告させていただいて、特別部会で御審議を頂くという段取りになっております。そういった御審議、また今、主査からございましたような、さらなるこの内容の具現化に向けた御審議を頂きたいと思っております。
次回は8月19日水曜日の開催を予定させていただいております。詳細についてまた、改めて御連絡させていただければと考えておりますので、よろしくお願いいたします。以上でございます。
【荒瀬主査】 ありがとうございました。それでは、本日の議事は、全てこれで終了といたします。最後になりましたが、この間の豪雨の関係で非常に大変な状況の地域の方もいらっしゃるかと思います。心からお見舞いを申し上げます。
では、終了いたします。ありがとうございました。

―― 了 ――

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