新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会 (第1回) 議事録

1.日時

令和元年6月27日(木曜日)9時30分 ~ 12時30分

2.場所

都道府県会館 101大会議室 (東京都千代田区平河町2-6-3)

3.議題

  1. 部会長の選任等について
  2. 部会運営規則等の制定について
  3. 新しい時代の初等中等教育の在り方について

4.議事要旨

○「新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会」部会長について、荒瀬委員が適任である旨の発言があり、了承された。
○荒瀬部会長から、天笠委員、加治佐委員が部会長代理に指名された。
○事務局からの説明の後、資料2のとおり部会運営規則、及び資料3のとおり「新しい時代の高等学校教育の在り方ワーキンググループ」の設置が了承された。

5.議事録

【荒瀬部会長】 それでは、これより議事を公開といたします。本日は報道関係者から録音、撮影を行いたい旨の申出がありました。許可しておりますので、御承知おきください。なお、個人を特定するような撮影は御遠慮くださるようお願いいたします。
では、改めまして、部会長を務めることとなりました荒瀬でございます。どうぞよろしくお願いいたします。本特別部会の発足に当たりまして、部会長として少し御挨拶をさせていただきたいと思います。
この部会は4月の大臣からの諮問及び5月8日の初等中等教育分科会の審議を受けて、新しい時代の初等中等教育の在り方に関する重要事項を調査審議することとなります。Society5.0時代の到来といった予測できない急激な社会の変化が進む中、子供たちが主体的、自立的に未来社会を生きることを通して、よりよい社会の形成に参画するための資質、能力を一層確実に育成することが求められております。それに対応して、学校教育も必要な変化をしていかなければならないということであります。
その際、極めて重要な点は、子供たちを主語にして考えるということではないかと思っております。新しい時代の初等中等教育の在り方について、義務教育の在り方、高等学校教育の在り方、増加する外国人児童生徒等への教育の在り方、これからの時代に応じた教師の在り方や教育環境の整備等、課題は極めて広範、多岐にわたりますが、本部会において諮問事項全体について横断的に議論し、検討事項の具体化に向けてしっかりと取り組んでいきたいと思っているところでございます。各委員におかれましては、積極的に御意見を頂ければと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
次に、文部科学省丸山大臣官房審議官から御挨拶を頂戴したいと思います。
【丸山大臣官房審議官】 皆さん、おはようございます。本日、特別部会の初回ということでございますので、事務局側を代表いたしまして一言御挨拶を申し上げたいと思います。
今回の部会での審議に当たりまして、委員の皆様方には大変お忙しい中、全国各地から、また様々なお立場から委員をお願いいたしたところでございますけれども、お集まりいただいたこと、誠にありがとうございます。
先ほど荒瀬部会長から御挨拶いただきましたけれども、本年4月に中央教育審議会の総会におきまして、新しい時代の初等中等教育の在り方について、柴山文部科学大臣より諮問をさせていただきました。本諮問の内容が非常に多岐にわたるということでございまして、本部会は諮問事項全体について横断的に御議論いただく、そういった場ということで、本年5月に初等中等教育分科会において設置がなされたということでございます。
本諮問は、初等中等教育における様々な課題を克服し、新しい時代を見据えて教育の質を高めるために総合的な検討をお願いするというものでありまして、これからの教育、ひいては我が国の未来を左右する非常に重要なものとなると考えております。初等中等教育に関する知見を有する委員の皆様方におかれましては、高い御見識と様々な御経験を踏まえた御意見等を頂戴できればと考えておりますので、積極的な御議論を賜りますようにお願いを申し上げます。どうぞよろしくお願いいたします。
【荒瀬部会長】 ありがとうございました。審議官はちゃんとお立ちになって御挨拶をしていただいて、私は座ったままで大変失礼いたしました。ことほどさように不慣れでございますので、どうぞよろしくお願いいたします。
では、今から説明をしていただくわけでありますけれども、きょうは3時間という非常に長い時間でございまして、今から少し丁寧に事務局から御説明を頂いて、その後、休憩を取らせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
議題3と4につきまして、まとめて事務局から御説明を頂き、御質問、御議論は休憩の後にお願いいたしたいと思っています。それではまず、議題3、新しい時代の初等中等教育の在り方について、次に議題4、その他関連する内容ということで事務局から御説明をよろしくお願いいたします。
【望月初等中等教育企画課長】 初等中等教育企画課長、望月でございます。私からは、先ほど部会長から御挨拶もございましたけれども、諮問事項につきまして若干御説明をさせていただきたいと思っています。また、今後の議事の進め方等にも関係することにつきまして御説明をさせていただきたいと思っております。
資料4-1が4月17日に柴山文科大臣から中教審総会に諮問をさせていただいた資料でございます。資料4-2がその諮問の概要でございます。資料4-3が関係する資料でございます。それから、資料4-4が今申し上げました4月17日の総会並びに5月8日に初中分科会がございまして、ここで2回、この諮問事項に関しましてフリーディスカッションという形で議論を頂いておりますので、それを簡単にまとめたものでございます。それから、資料5-1が今後の初中分科会でのこの議題、幅広い検討課題についての検討の進め方の考え方の図でございまして、さらにそれを今回、検討の進め方とスケジュール(案)ということで資料5-2を用意してございます。私からは、先ほど部会長からもございました諮問の内容につきましての趣旨、諮問事項、審議の進め方の案につきまして資料4-2、諮問の概要の2枚紙、進め方につきましては資料5-1と5-2を使って説明をさせていただきます。
まず、資料4-2、諮問の今回の趣旨でございます。
新しい時代の初等中等教育の在り方、新しい時代というのは、Society5.0時代あるいは令和の時代、これからの初等中等教育の在り方を総合的に検討いただくということでございます。部会長からございましたけれども、今後のSociety5.0時代の到来といった急激な社会的変化が、今も進行してございますけれども、さらに今後の社会的変化が予想される中で、子供たち一人一人、子供たちを主役にということ、部会長からございましたけれども、子供たち一人一人が予測不可能な社会でみずからの力で自立的に生きて、社会の形成に参画していく、そういった資質・能力を確実に育成することが求められているわけでございます。
資料4-2の現在の学校教育の成果の例でございますけれども、現在、これまでの各学校ないしは各自治体の御努力あるいは取組によりまして、知徳体を一体で育む日本型学校教育というものは、着実に成果を上げてきている。これは疑いないところでございますが、一方で、やはり子供たちの語彙力あるいは読解力などの基礎学力には、いまだ課題も指摘されている。あるいは、高校生につきましては、従前から言われてございますけれども、大学受験に最低限必要な科目以外の教科や科目というものを真剣に学ぶ動機が低下している。そのための入試改革も行ってございますけれども、その結果として、文理分断と言われるような文系、理系といったところで、特に文系と言われる生徒たちは理数科目を高校2年生や3年生で学ぶ動機がかなり薄れて、結果として十分に学んでいないということも起きているといったこともございます。
こういった状況もございまして、現在、各学校では2020年4月から本格実施されます新しい学習指導要領も踏まえた準備を行ってございまして、まさに新しい学習指導要領の下でしっかりとした基礎学力を身に付けて、主体的にみずから学んで解決していく力を身に付けていくこと、あるいは生きるための基盤、学校教育を通じてトータルとしての人間教育をしっかり行っていく中で、子供たちの力を育んでいくということが大切だと思ってございます。
こうした新しい学習指導要領をしっかり進めていくということを前提としながら、さらに基礎的な力をしっかりと身に付けていく。学校教育においての生きる力を育んでいくことがこれから求められているわけでございます。
それから、非常に御承知のとおりのところでございますけれども、こうした我が国の質の高い学校教育というものが高い意欲あるいは能力を持った教師の努力によって支えられているということは間違いないわけでございまして、何より教育は教師でございます。そのため、この教師の状況、今考えてみると、働き方改革が求められているところ、長時間勤務の実態が深刻である、あるいは採用選考試験の競争率の減少というものも非常に危惧されるところでございまして、教職の魅力を高めていく、学校の働き方改革を果断に進めていくということが大きな課題でございます。これも各自治体で今取組を進めているというところでございます。
新しい学習指導要領、そして学校の働き方改革を進めていく中において、今後の社会の変化、Society5.0時代を考えたときに、これからの時代の学校教育におきましては、教師を支援し、あるいは教育の質を高めるツールとしての先端技術をしっかり活用していくことによりまして、さらに一人一人の適性あるいは能力に応じました学びを実現し、提供していくことが可能になり、それが必要不可欠になっていくと考えてございます。AI社会の到来の中で、AIをしっかり使いながら、この時代を生きていくという力が求められていくわけでございます。
一方で、学校のICT環境というものはかなり脆弱であって、地域間格差も大きいということが危機的な状況になっておりまして、条件の環境の整備としましても、こうした整備を着実に進めていくという課題もございます。
こうしたSociety5.0時代の教師には、子供たちの学びの変化に応じた資質、能力も求められているところでございまして、こうした教師の育成、あるいは多様な人材の活用によるチームとしての学校を推進していくことも重要でございます。
さらに、こうした状況に加えまして、人口の減少というのは今後も続く。少子化、高齢化といった社会の大きな波の中で、児童生徒数の減少に伴う教育環境の変化あるいはその影響というものもしっかり見据えなければいけないと考えてございます。
こうしたこれまでの教育の成果を基盤としながら、これまでの学校教育というものの成果をしっかり引き継ぎ、今進めようとしている教育改革の方向を踏まえて、さらに教育の質を高めていくということから、今回、様々な課題にも対応するために、幅広い審議事項につきまして諮問をお願いしているところでございます。
資料4-2の2ページ目でございますけれども、大きく四つの審議事項についてお願いをしているところでございます。
一つ目は、義務教育の在り方についてでございます。今ほど申し上げましたように、基盤的な学力の確実な定着の方策。義務教育9年を見通した発達の段階に応じた学級担任制と教科担任制の在り方、あるいは習熟度別指導など進めているところでございますけれども、それを含めた今後の指導体制の在り方。あるいは、年間授業時数や標準的な授業時間等の在り方を含む教育課程の在り方。障害のある者を含む特別な配慮を要する児童生徒に対する指導及び支援の在り方など、一人一人の児童生徒の能力、適性等に応じた指導の在り方等についてでございます。
大きく二つ目には、高等学校教育の在り方でございます。後ほどにも、教育再生実行会議の報告につきましての説明をいたしますけれども、その中でも取り出されている普通科における教育の在り方を含めた各学科の在り方。あるいは、先ほど申しました文系、理系に関わらず、様々な科目を学ぶことによるSTEAM教育の推進の在り方。あるいは、定時制、通信制の在り方。地域社会や高等教育機関との協働による教育の在り方などでございます。
大きく三つ目には、今後も予想される外国人児童生徒等への教育の在り方でございます。この指導体制の確保、あるいは日本語指導も含めた外国人児童生徒への就学、教育の機会の確保の在り方や教育の充実につきましての審議でございます。
それで、四つ目には、今申し上げましたようなことに横串で通ずることがございますけれども、教師の在り方あるいは教育環境の整備についてでございます。学級担任制を重視する段階と教科担任制を重視する段階に捉え直すことができる義務教育9年間を見通した教職員配置や教員免許制度の在り方。そして、高等学校にももちろん通じますけれども、養成、免許、採用、研修、勤務環境、人事計画の在り方。それから、研修も含めた免許更新講習等の関係などの免許更新制の実質化。そして、多様な背景を持つ人材によって教職員組織を構成し、チーム学校の推進にも資するような免許制度、あるいは教員養成、採用、研修、勤務環境の在り方など、教師に関わる制度面も含めた在り方でございます。
また、幼児教育の質の向上、それからいじめの重大事態や虐待事案に適切に対応するための方策。学校の小規模化を踏まえた自治体間の連携を含めた学校運営の在り方やICT環境や先端技術の活用を含む条件整備の在り方など、幅広いことについての審議事項をお願いしているところでございます。
これらの事項について一体的に、関係する事項も多いので、本特別部会の設置をお願いしたところでございますけれども、4月17日の総会あるいは5月8日の分科会でも、御紹介する時間がなかなかないんですけれども、資料4-4にございますように、とりわけ御意見が多かったのが小学校における教科担任制の導入のこと、あるいはこれからの時代の教師の在り方やICT環境を含めた教育環境の整備の在り方でございました。
本部会では、資料5-1でございますが、この本特別部会に高校改革ワーキンググループを設置いたしまして、高校改革に関することは高校改革ワーキンググループで集中的に議論を行っていただきつつ、本特別部会で議論したものを初中分科会にお戻しして、そこで論点の整理を行い、教育課程部会と教員養成部会にも専門的に審議する事項を議論していただいて、それをまた特別部会に返していただいて、その特別部会の状況について逐次分科会で議論をしていくという形にさせていただきたいと考えてございまして、その点、5月の分科会では御承諾を頂いたところでございますが、今回、資料5-2を御用意させていただきましたが、分科会でも御意見が出ていましたけれども、少し幅広い事項が多い中で、どれを優先的に議論し、またどういったスケジュール感を持っていくのかという点がございましたので、今回、資料5-2で今後のスケジュール案を含めたことにつきまして御提案をさせていただきたいと思ってございます。
まず、資料5-2の1のところで諮問事項の第一、義務教育の在り方及び関連する第四の教師の在り方と教育環境の整備につきまして、本特別部会においては優先的に審議を頂きたいと思ってございます。諮問事項1の義務教育、とりわけ小学校において、基礎的読解力などの基盤的な学力の確実な定着に向けた方策と、9年間を見通した児童生徒の発達に応じた学級担任制と教科担任制の在り方や習熟度別指導の在り方など、今後の指導体制の在り方につきまして、関係して第4につきましての教師の在り方、免許制度も含めて教師の在り方、そしてこれらを踏まえたチーム学校の実現等に向けた教職員や専門的人材の配置、教師を支援し、教育の質を高めるICT環境や先端技術の活用を含む条件整備の在り方について、まず御議論をお願いしたいと考えてございます。これを19年末頃までに一定の論点の取りまとめをしながら、今後の方向性を考えていければと考えてございます。
そして、2020年1月以降、今の申し上げました検討事項につきまして、分科会の整理に基づきまして、特別部会、教育課程部会及び教員養成部会においてさらに検討を進めていただき、課程部会と養成部会の結果をまた特別部会にも御報告いただき、特別部会において横断的に議論し、分科会に適宜報告して審議を行う。そして、各部会で扱わない事項につきましては、当然、分科会において審議を行ってはいかがかと考えてございます。
資料5-2の2ページ目でございますけれども、諮問事項の第二に関しましては、先ほど申しましたように、高等学校の在り方についてはワーキンググループにおきまして集中的に議論を頂き、その他の諮問事項のSTEAM教育の推進等につきましては、特別部会あるいは教育課程部会において審議を行ってはいかがかと考えてございます。
第三の増加する外国人児童生徒等への教育の在り方につきましては、これは別途、他省庁も含めて、文科省だけではない取組や施策も必要でございまして、文科省内に設置した外国人児童生徒等の教育の充実に関する有識者会議において検討を進めまして、その状況をこの特別部会に報告する形にしてはいかがかと考えてございます。
当面のスケジュールでございますけれども、本日を含めて第2回、第3回も少し長丁場になりますけれども、3時間コースでの審議をお願いしたいと考えてございます。3回議論を頂きましたら、初中分科会に先ほど申しましたように、一度、議論の状況を報告して、分科会において議論をしていただき、第4回の特別部会では、別途、教員養成部会で議論している状況や高校ワーキンググループでの検討状況の報告、あるいは外国人児童生徒に関する有識者会議での検討状況を報告いただき、論点を年末までに一旦取りまとめを行いまして、翌年以降の議論をさらに深めるという形でいかがかと考えてございます。
今回の議論につきましては、非常に幅広い審議事項でございますけれども、まずは審議事項の1ないし4の一定部分につきまして議論を優先的に行ってはいかがかということを御提案させていただきます。よろしくお願いいたします。
【田中教育制度改革室長】 続きまして、教育制度改革室長、田中でございます。お手元の資料6-1と6-2に基づきまして御説明申し上げますが、主として6-2をごらんいただければと思います。
こちら、Society5.0に向けた人材育成、社会が変わる、学びが変わる(概要)となってございますけれども、日付としては、昨年6月5日となっております。これは林前文部科学大臣の下でまとめた報告書でございます。1年前の報告書でございますけれども、この報告の内容というものが、この後説明のあります教育再生実行会議の第11次提言につながっている部分、あるいはこれもこの後、御説明申し上げます新時代の学びを支える先端技術活用推進方策、こういったところにつながっておりますし、またSociety5.0に向けた人材育成ということで、今回の諮問そのものにもつながる部分がございますので、簡単ではございますけれども、御説明申し上げたいと思います。
まず、この報告でございますけれども、表紙にございますように、二つのクレジット、大臣懇談会と省内タスクフォースとございます。林大臣の下で、上の大臣懇談会でございますけれども、有識者の方々、例えば経済学者であるとかAIの研究者であるとかアーティスト、あるいは自治体の市長さん、そういった方々にお集まりいただきまして、Society5.0という新しい時代へ向けた人材育成の在り方について大所高所の御議論を頂いた。それと同時に、省内タスクフォースというのは、省内の課長級職員を中心に構成されましたが、それに関わらず、課長補佐、係長級の若手も含めて、この大臣懇談会の議論と並行しながら、具体的にどういった施策があり得るのかということにつきまして、短期のもの、あるいは少し中長期のものを含めまして、その方向性あるいは具体策について議論をしたものでございます。
では、1枚おめくりいただきまして、1ページをごらんいただければと思います。この報告は3章構成になっておりまして、1というのが第1章でございますけれども、Society5.0の社会像、それから求められる人材像、学びの在り方につきまして、こちらは大臣の懇談会、有識者の懇談会の議論を元に主に構成しているところでございます。
Society5.0の社会像について議論を頂いたわけですけれども、キーになるのはAI技術の発達であると。そうなりますと、こちら矢印でございますように、定型的業務や数値的に表現可能な業務は、人間ではなくてAI技術によって代替が可能となってくると。こういったことに伴いまして、プラットフォームビジネスの展開など産業構造の変化、それから人々の働き方も変化するだろうと。こういった社会の変化を見据えたときに、まず日本の課題、左下でございますけれども、このSociety5.0に至るに当たって、そもそもAIに関する研究開発の人材が例えば米国、中国等に比べて圧倒的に不足している。また、少子高齢化が進んでいる中で、つながりの希薄化も見られる。また、いろいろバーチャルリアリティーなども進みますけれども、その一方で自然体験の機会の減少といったものもあるのではないか。また、右側、人間の強み、人間の強みというのは、AIに対する人間の強みということでございますけれども、AIというのはアルゴリズムであって、いろいろなこと、翻訳等、いろいろできるようになってきていますけれども、必ずしも情報の意味そのものを理解しているわけではない。そうしますと、人間の強みというのは、現実世界を理解して、その意味付けできる感性、それからさらに倫理観。また、いろいろな考え方、利害の中で板挟みに遭う、あるいは想定外の事態と向き合い調整する力、責任を持って遂行する力、これは人間じゃないとなし得ないものである、こういった議論がなされたことでございます。
こういった議論を踏まえまして、Society5.0における学びの在り方、求められる人材像についての議論がございました。まず、AI等の先端技術が教育にもたらすものということで学びの在り方が変わっていくだろうと。これはまたこの後の説明で出てまいりますけれども、スタディ・ログ等の活用が可能になってくるということです。それから、学校が変わる、学びが変わるということで、少し刺激的な言葉も使われておりますけれども、今までの一斉一律授業の学校とするならば、それがさらに基礎的な学力を確実に習得させながら、個人の能力や進度、関心に応じた学びの場に変わっていく。同一学年集団での学習だけではなくて、異年齢、異学年集団での協働学習も拡大していく。学校の教室での学習だけではなくて、大学、研究機関、企業、NPO等、様々な施設等も活用した多様な学習プログラムに展開していくだろうという方向が示されております。
また、Society5.0に求められる力でございます。下にございますけれども、共通して求められる力というのは、Society5.0を生きる全ての人に必要な力。それというのは、AIにない人間の強みということを考えますと、文章や情報を正確に読み解き対話する力。あるいは、科学的に思考、吟味し活用する力。価値を見付けて生み出す感性と力、好奇心、探究力等でございます。
その下の新たな社会を牽引する人材というのは、特にSociety5.0のリーダーとなるべき人材についてでございますけれども、技術革新や価値創造の源となる飛躍知を発見、創造する人材。さらに、それらと社会課題をつなげましてプラットフォームを創造できる人材。また、AIの力を活用できる人材、そういったものというところが提示されております。
続きまして、2ページでございますけれども、こちらは先ほど申し上げました大臣懇談会を踏まえて、主として省内タスクフォースでの議論を整理したもので、Society5.0に向けて取り組むべき人材育成施策の方向性を示したものでございます。
まず、左側に今ほど申し上げました求められる人材像として、学びの在り方の変革として共通する力とリーダーとなる牽引する人材の育成というのがございます。それを右側で現状、課題を整理しております。ここの部分も諮問の問題意識にもつながっている部分があろうかと思いますけれども、例えば小中学校であれば、OECD、PISAでも高い到達水準を示しているわけですけれども、読解力に課題があるとの指摘もあると。それから、貧困の連鎖を断ち切って、全ての子供たちがSociety5.0時代に求められる基礎的な力を確実に習得させることが必要だと。高校につきましては、普通科7割、専門学校は3割という状況の中で、例えば大学受験等の影響によりまして文系、理系に分かれて、特定の教科を十分勉強しない傾向があること。さらに、一部の高等学校では多様な学びも進んでいるということ。さらに、大学教育、社会人の方ですけれども、4年制大学がかなり人文系に偏っている状況もあるということ。それから、これからSTEAMやデザイン思考が必要だということでございます。
こういった現状、課題を踏まえまして取り組むべき方向性として右にございますような1、2、3の三つの柱が掲げられたところでございます。公正に個別最適化された学び、それから基礎的読解力、数学的思考力、情報活用能力などを全ての子供に身に付けさせる。文理分断からの脱却でございます。
3ページ目でございますけれども、これ以降につきましては、Society5.0に向けたリーディング・プロジェクトということで、すぐに取り組むべきこと、短期的に取り組むべきことについてまとめたものでございます。これらの中のものは、既に文部科学省によって予算等で事業化しているものもあるところでございます。
まず一つ目は、公正に個別最適化された学びを実現するための多様な学習の機会と場の提供ということで、学習の個別最適化や異年齢、異学年など多様な協働学習のためのパイロット事業の展開。これにつきましては、事業で予算化している部分もございますし、またこの後、報告のあるところ、先端技術の活用方策につながってまいります。その下もそうでございますけれども、スタディ・ログ等を蓄積した学びのポートフォリオの活用、それからEdTechとビッグデータを活用した教育の質の向上、学習環境の整備充実でございます。
次のページ、4ページをごらんいただければと思います。2番目の基礎的読解力、数学的思考力等の部分でございますけれども、学習指導要領の確実な習得、それから情報活用能力の習得、また基盤的な学力を確実に定着させるための学校の指導体制の確立、教員免許制度の改善、こういったところも今回の諮問につながる部分でございます。
続きまして、最後のページ、5ページ目になりますけれども、文理分断からの脱却ということで、文理両方を学ぶ高大接続改革、これは初等中等教育だけではなくて、当然、高等教育にも関わる課題でございますが、文理両方学ぶ人材ということで、ワールド・ワイド・ラーニング・コンソーシアムの創設とございますけれども、これにつきましても本年度から先行時なものとして予算事業化を図っている部分がございます。
また、それから下の地域のよさを学び、コミュニティーを支える人材の育成ということで、高校と地元の自治体、高等教育機関、産業界と連携するような高校を創設するということでございますけれども、これにつきましても、今年度の予算によりまして関連する事業を立ち上げて推進を始めたところでございます。
これにつきましては、簡単でございますが、以上でございます。
【谷合内閣官房教育再生実行会議担当室参事官】 内閣官房教育再生実行会議担当室の参事官をしております谷合でございます。教育再生実行会議では、本年5月17日に第11次提言を取りまとめました。そして、総理に提出するとともに公表いたしましたので、本日はお時間いただいて、その説明をさせていただきたいと思います。
お手元に資料7-1と資料7-2の御用意をお願いいたします。本日は概要資料であります資料7-2を用いまして御説明をいたします。資料7-2でございます。
このたびの実行会議の第11次提言におきましては二つのテーマ、すなわち一つは、技術の進展に応じた教育の革新、そしてもう一つは、新時代に対応した高等学校改革、この二つを取り上げて審議をいたしました。
資料7-2の1ページ目が一つ目のテーマであります技術の進展に応じた教育の革新でございます。今ほど御説明があった部分と重なるところもあるわけですけれども、背景にありますように、AIやIoTなどの技術革新が社会構造までも変えるインパクトがある。その技術を効果的に活用した教育の展開が求められる。その一方で、学校のICT環境が脆弱であるなどいろんな課題もある。そういった問題意識で検討が始まっております。
主な提言事項でございますけれども、まず(1)Society5.0で求められる力と教育の在り方といたしましては、基礎的読解力や数学的思考力のほか、データサイエンス等も含めました学力が必要であること。それから、二つ目の四角にあるSTEAM教育の推進。それから、三つ目の四角でございますが、学習指導要領については10年程度の改訂サイクルで行っておりますけれども、時代の変化に迅速に対応するためには、適時適切に不断の見直しを行うとともに、教科書につきましても、弾力的な見直しを行うことの検討が必要であると提言をしてございます。
そして、右側、(2)でございます。教育の担い手である教師の役割というのも当然重要になってまいりますから、教員の養成、採用、研修の全体を通じた資質向上が求められるとともに、都道府県が策定いたします教員の資質向上に関する指標ですとか教員研修計画、こういったものにICTの活用指導力の育成についても明確に位置付ける、こういったことなどを提言しているところでございます。
そして、その右、(3)ですけれども、新技術の活用という観点で、全ての小中高等学校で遠隔教育を活用することですとか、先ほども少しお話がありました二つ目の四角ですけれども、スタディ・ログと呼ばれる児童生徒の学習履歴を蓄積し、個別最適化された学びの実現について実証研究を行うことなどを提言しているところでございます。
そして、(4)では学校における働き方改革の観点からの活用ですとか、(5)では、高等教育につきましても、全ての大学生がAI、数理、データサイエンスの基礎的な素養を身に付けられるよう、標準カリキュラムの作成が必要であることなどが述べられてございます。
(6)では、特別な配慮が必要な児童生徒への支援といたしまして、障害のある児童生徒への指導の効果を高めるための活用ですとか、通学が困難な児童生徒、帰国・外国人児童生徒等への支援などにも遠隔教育の活用ができるのではないかといったことを提言しております。
左下の(7)ですが、これまで述べましたような新たな学びの基盤となるべき環境整備についてでございます。平成30年度から地方財政措置といたしまして単年度で1,805億円、5年間合計で約9,000億円の地方財政措置が講じられるということになってございますが、自治体によって活用状況というのが様々でございまして、学校ICT環境の整備が遅れている自治体も見られております。こうした地方間格差を是正するために必要な対応を実施するほか、二つ目の四角にありますように、自治体によってはこれまで、それぞれの商習慣などによりまして、高い機材でありますとか、あるいは不必要にスペックの高い機器を購入しているケースもあるという指摘がございましたので、安価にICT機器を調達できるように、例えば価格の相場観なども含めてモデルの提示等を行うことなどを提言しているところでございます。
そのほか、(8)では生涯学習の観点、(9)では、教育現場と企業等との連携、協働について述べてございます。これが一つ一つ目のテーマでございます。
1枚おめくりいただきまして2ページ目でございます。二つ目のテーマであります新時代に対応した高等学校改革でございます。御承知のように、高等学校は中学校を卒業した生徒ほぼ全てが進学しているという状況にあり、高校生の能力、適性というのは極めて多様化している、そういった状況にございます。そうした状況の下、グローバル化ですとか、先ほど御説明しました技術革新の進展など、激しく変化する社会の中で生徒一人一人がたくましく生き抜く力を育成していくことが必要であろうということで検討がスタートしているところでございます。
主な提言事項でございますが、まず(1)学科の在り方でございます。一つ一つ目の四角では、全ての高校についてでございますが、生徒受け入れに関する方針、教育課程編成・実施に関する方針、修了認定に関する方針を策定することを提案してございます。大学で言うところのいわゆる3ポリシー、アドミッションポリシー、カリキュラムポリシー、ディプロマポリシー、これに当たるものの高校版を策定することを求めるものでございます。まず、各高校にこれを明確にしていただく。
そして、その上で、二つ目の四角ですが、これが普通科改革の部分でございます。今回の11次提言に関する報道では一番大きく取り上げられた部分でございます。普通科につきましては、高校生の73%が在学する最大のボリュームゾーンということになっていまして、それゆえに多様化が一番著しい部分となっております。それを一くくりに普通科とするのではなくて、それぞれの高等学校がそれぞれの教育理念に基づいてみずからの高校にふさわしい類型というものを選択することにしてはどうかと。
その類型の例示として、点線で囲んであります類型の例というところですけれども、例えばキャリアをデザインする力の育成重視ですとか、グローバルに活躍するリーダーの素養の育成重視、それからサイエンスやテクノロジーの分野等におけるイノベーターとしての素養の育成重視、地域課題の解決等を通じた探究的な学びの重視、こういった四つの類型の例を掲げているところですけれども、例えばこういったものを学校が選択するような形にしてはいかがかという提案でございます。
これはあくまで例示でございまして、類型の種類ですとか、あるいはそれぞれの類型に応じて、例えば履修をどうするのかとか、指導体制をどうするのかというのは、当然、これから類型によって変わってくるものですし、議論が必要でございますので、恐縮ですけれども、そういった部分につきましては、まさにこの中教審において専門的、実務的な見地から御検討をお願いしたいと今回の提言では述べているところでございます。
そしてまた、四つ目の四角では、文系、理系科目をバランスよく学ぶ仕組みの構築ということでございます。高等学校においては、2年生から文系コース、理系コースに分かれるといったケースが見られておりますけれども、Society5.0時代におきましては、文理に偏らない幅広い学力が必要ではないかという意見が出されたこともございまして、こういった提案をしているところでございます。
これに関連しまして、項目の順が飛びますけれども、そのすぐ下の(6)中高・高大の接続という部分をご覧ください。今説明いたしましたような高等学校における文理に偏った履修というのがあるとすれば、やはり大学受験における受験科目の設定によって大きな影響を受けていることが考えられます。このため大学入試につきましても、文系、理系に偏った入試科目設定、こういったものからの脱却を目指しまして、大学入学者選抜の在り方の見直しを求めております。
二つ目の四角では、こうした入学者選抜改革に取り組む大学があれば、そうした大学に対しては必要な支援を充実していくということを提言しているところでございます。
上段中ほど(2)でございますけれども、ここの部分は、高等学校の教育内容を時代の変化に迅速に対応したものとすべく、先ほど述べたことと重なりますけれども、学習指導要領の一部改訂ですとか、教科書の弾力的な見直しの検討等について述べてございます。
右側(3)定時制・通信制課程の在り方といたしましては、定時制・通信制課程における生徒のキャリア形成に必要な社会的スキル、例えばコミュニケーション能力といったものも考えられると思いますが、こうした能力の育成方策について検討すること。
そして、(4)、真ん中ですが、教師の養成・研修・免許の在り方といたしましては、校内研修の充実のほか、三つ目の四角にありますように、特別免許状による外部人材の活用、四つ目の四角にありますような校長の在職期間の長期化等について述べているところでございます。
(5)地域や大学等との連携の在り方では、一つ一つ目の四角にありますように、高等学校と市町村、産業界、大学等が協働した地域課題の解決等を通じた学びの実現、こういったことについて提案をしております。二つ目の四角では、高等学校におけるコミュニティ・スクールの導入と地域学校協働活動の実施、それから三つ目の四角では、そうした高等学校と地域をつなぐコーディネーターの役割や在り方、こういったものを提案しているところでございます。
そのほか(7)では、特別な配慮が必要な生徒への対応ということで、不登校ですとか、特別な配慮を必要とする生徒への対応、こういったことについて述べているところでございます。
そして、最後に(8)少子化への対応といたしまして、離島や中山間地域の高等学校については、例えばICTの導入ですとか、高等教育機関との連携強化によって、学習の多様性や質の高度化を図る、こういったことを述べているところでございます。
以上のような内容となっておるところでございますが、今回、教育再生実行会議の第11次提言では、技術革新への対応と、それからもう一つは高等学校改革、二つのテーマについてかなり網羅的で総合的な提言がなされたものと考えてございます。中教審の委員の皆様におかれましては、今回の教育再生実行会議11次提言の趣旨を御勘案の上、今後の御検討のほど、何卒よろしくお願いをしたいと思っております。
説明は以上でございます。
【桐生学びの先端技術活用推進室長】 初等中等教育局の学びの先端技術活用推進室室長の桐生でございます。お手元の資料8-1と8-2で示されております、新時代の学びを支える先端技術活用推進方策の最終まとめの御説明をさせていただきたいと思います。資料8-2の青の文字の概要をごらんいただければと思います。
こちらのお話し合い、今二つ御説明ありました30年の大臣懇談会、それから教育再生実行会議の提言での議論をもちろん踏まえておりますし、昨年11月に柴山大臣が発表されました学びの革新プランというSociety5.0の先端技術を教育にどのように活用していくのかといったプランがございましたが、この具体化を示すものを今回最終まとめという形で出しておりまして、現在までの知見をまとめたものと、これからのロードマップを示すといった性質のものでございます。
1ページを開けていただければと思います。こちらの最終まとめ、全体の構成としましては、現状の認識と現状の課題、今後示す施策の三つの柱で成り立っております。
一つ一つ目の総論でございますが、1ページ、2ページ、3ページと示しておりますが、1ページ目には、新時代における先端技術を効果的に活用した学びの在り方はどのようなものがあり得るかといったことで将来像を示してございます。Society5.0時代の到来において、先端技術を活用した社会構造の変化でありますとか、雇用関係は当然変わっていきますし、教育環境も大きく変わっていくだろうということが想定されますが、恐らく変わっていかないのは、多様な子供たちを「誰一人取り残すことのない、公正に個別最適化された学び」の実現と真ん中にございますが、こういったものを目指して先端技術をうまく活用しながら、どのような教育が成り立っていくのかというのを具体的に考えていくべきであるといったのがこちらの将来像でございます。
2ページ、3ページには、先端技術、又は先端技術から取得できる教育ビッグデータ、こういったものをフルに活用していった場合に見られる将来像といったものを四つの事象、機能をまとめて示してございます。
左上は、学びにおける時間や距離の制約など、こういったものが取り払われた姿というのが一つ一つ想定されるだろうというのが一つ一つでございます。
右上は、個別に最適で効果的な学びや支援、こういったものができるようになるだろうといったものが一つ一つ。
右下は、学びの知見の共有や生成ということで、これまで見づらかった学びあるいは教授法といったものの可視化や、またこれまで分からなかった学びのプロセスといったものが分かってくるのではないか、そういったものが共有されて、学びの質を向上させることができるのではないかといった姿であるのが右下でございます。
左下は非常に分かりやすいお話ですが、学校における事務や大量の仕事といったもので圧縮可能なもの、あるいは迅速かつ便利にできるもの、こういったものを効率化できるといったことが四つの機能として挙げられるだろうといったことが2ページでございます。
次のページへ行っていただきまして、3ページには、202X年、未来のイメージ・スナップショットとしまして、202X年にはこういった技術をフルに活用した場合に描ける姿といったものを示しておりまして、教員、子供、保護者、教育委員会、国や大学機関、大学や研究機関等の視点から、それぞれ様々な視点からどのような姿が見られるかといった姿を示してございます。報告書の中でも、どのような姿が描けるかというのが具体的に提示してございます。
このような未来の姿が描けるのではないかといった点に関して、現状、足元を見ますと、そことの間で大きなギャップがあるなというのが4ページに示してございまして、大きく二つ、ハード上の課題と利活用上の課題がございます。
一つ一つ目のハード上の課題は、そもそもICT環境整備が不十分であり、かつ地域間格差も大きいということ。また、もう一つは、パソコンを買う際の大きな課題としましては、市場の機器と比較しても高く整備されているのではないかといった課題がございます。
下の赤文字の利活用上の課題ですが、利活用上、こういったデータなり技術を使う上での課題としましては、こういったいろんなツールが出てきているけれども、どのような場面でどういうふうにやっていくと非常に効果的なのかということがいま一つよく分かっていない、実証的でないということが一つ一つ。それから、データがたくさん飛び交っているが、それぞれの事業者ごとのデータ活用にとどまっていて、それらを大きく活用して全体で活用できるといったデータポータビリティーといったものが実現されていないのではないかというのがもう1点。2点目、3点目は同様のことでございます。
こうした課題を解決するために方策をまとめていく必要があるのではないかとしまして、次のページ、おめくりいただきまして5ページでございますが、どのような施策、取組があり得るかといったことで大きく三つの分野を示してございます。一つは、先端技術のツールを活用してどのようなことをやっていくべきかということです。その二つ目の緑の部分は、こういった先端技術から得られる教育ビッグデータを活用してどのようなことができるか。また、教育ビッグデータで得られたものがまた先端技術に活用されて、ここが両方ぐるぐると循環して、よりよい活用ができていくはずではないかといった図を示してございます。
ただ、こちらの上の先端技術と教育ビッグデータのフル活用に当たっての前提条件となる下の学校ICT環境整備、こちらがまだ整ってございませんので、こちらも併せて進めていかないといけないということで、三つの柱を立ててございます。
次のページ、6ページ目からは、一つ目の先端技術のお話でございますが、先ほど未来像のところでお話ししましたように、先端技術の機能というものは様々、日進月歩で開発されてございます。こちらに掲げてあります機能は、今現在、見受けられる技術であって、それぞれの効果と留意点といったものを今回の最終まとめでまとめてございます。
一方で、こちらのそれぞれのツールや機能といったものをより学習の現場においてどのように適用していくともっと効果的なのかといったことをさらに深掘りしてまとめる必要がございます。左下にアスタリスクが振ってありますが、発達段階ごとに恐らくこれらの使用方法は違ってくるでしょうし、どのように効果的に活用していくのがいいのかといった手引のような形のガイドラインというものが必要だろうと我々は考えておりまして、右下の赤い文字で、赤線で囲まれておりますように、来年度中にこうしたガイドラインといったものを、これらをさらに検証、深掘りした上で策定していこうと考えております。
続いて7ページ、二つ目の柱の教育ビッグデータの在り方でございますが、こちらは先ほどの課題意識で申しましたように、たくさんデータというものはあちこちあふれておりますが、それらがうまく活用されてない状況ではないかといったことで、ビッグデータの活用は大きくミクロの視点とマクロの視点がございます。ミクロの視点というのは個人で、例えば学校の中、あるいは学校の外で家庭学習でやった場合のデータというのをそれぞれ違ったツールでデータというのが収集されておりますが、それを個人ごとにスタディ・ログのような形で蓄積して、本人の振り返りにもなるし、そういったデータを活用して個別に最適な形でのツールの提供というのができるのではないかというミクロな視点というのが一つ。
もう一つ、マクロの視点というのは、医療の世界ではよく活用されているそうですけれども、匿名化した大量のデータを活用して研究をしていくと、こういった病気の要素を持つ人は、こういった病気にかかりやすいといった大きなトレンドというものが分かるわけですが、教育においても恐らくそういった匿名化した大量のデータから学習の傾向でありますとか、こういったところでつまずくということは、こういった要因がもう少し分かっていなければいけないのではないかといった学習や文化活動、運動活動といった学校の活動の中で大きなトレンドデータといったものが取れるのではないかと考えておりまして、ビッグデータの活用を進めていく必要があると考えております。
それに当たりましては、まず差し当たりとしまして、教育データ、流通しているデータの意味をそろえていく必要がございます。それぞれ違った形のデータを使っていっては進まないので、そちらの目盛りを合わせる、データの標準化と呼ばれておりますが、この標準化をまずは進めていく必要があると考えております。
標準化というのは二つ意味がございまして、左下にございますが、データ内容の規格の標準化、それから技術的な規格の標準化でございます。②の技術的な規格の標準化というのは鍵と鍵穴の形を合わせるといった意味合いですが、こちらは国際的な標準規格というのが既にございますので、今後、外国とのデータのやり取りをする上でも可能性があると考えると、こちらの国際標準規格を活用しながらやっていくのが妥当かなと考えております。
一方で、①のデータ内容の規格ですが、こちらは各国ごとに現在でも、学校の文脈ですとか背景が違うので、各国ごとにこれはそれぞれ規定しておりまして、校務系データ、学習系データそれぞれにおいて標準を作っていくと。どういった単位でそれを取っていくのかといったことを検討していきたいと考えております。
こちらの学習系データの一つのイメージとしまして、具体的な例として右下に学習指導要領のコード化と書いてありますが、現在あります学習指導要領にコードを振りまして、どういった学習分野を学習しているのか。今様々な教材では単元が教科書、問題集ごとに異なっておりますが、こちらにコードを振って、同一のコードの下、処理をしていくことができるのではないかと考えておりまして、こういったことを具体化を進めていきたいと考えておりまして、左下の赤い文字に書いてございますように、来年度中にこういった枠組みについて一定の結論を得たいと考えております。
続きまして、8ページ以降はICT環境整備でございますが、これまでICT環境に関しましては御説明がありましたので、前提のところは省略させていただきまして、10ページのSINET、今現在、高等教育機関と研究機関をつないでおります高速のSINETというネットワークがございますけれども、こちらを初等中等教育機関に接続するようにしたいというのが1点でございます。
それから、13ページに飛んでいただきまして、クラウド活用の積極的な推進も進めていこうと。これはセキュリティポリシーを今後改定しまして、サーバーの連結からクラウドの積極的活用に変えていこうといったのがこちらの13ページでございます。
もう1点、14ページ、安価な環境整備に向けた具体的モデルの提示ですが、こちらは今回、最終まとめで具体的に初めて示しているモデル案でございますが、これまで提言されてきておりましたパソコンが市場価格に比して高く買われているのではないかといった御指摘に対しまして、それではクラウド接続等を前提とした場合に、どういったモデルならば安価に買えるのかといった具体的なモデル例としてお示ししているものでございます。
15ページを開いていただきたいんですけど、15ページは、こうしたICT環境を整備する上で、専門性を持った人材の育成や確保も必要でございまして、そのための取組を進めていくといったことを示してございます。
16ページは、今お話ししました三つの先端技術、教育ビッグデータの利用、ICT環境整備のそれぞれの工程表を示しておりまして、これらを具体化していくと、その工程表を示してございます。
今後、こちらの具体化に当たりまして、文科省としましても、おおとい、大臣を本部長とします利活用の推進本部というものを設置いたしまして初会合を開催しておりまして、これらの本格的な整備を進めてまいりたいと考えております。
以上でございます。
【柳澤教育人材政策課長】 引き続きまして、総合教育政策局教育人材政策課長の柳澤と申します。資料9に基づきまして、ごく簡単に御説明をさせていただきたいと思います。
資料9、2枚紙でございますが、教員に求められる資質能力に関する過去の答申の記述というものでございます。かなり重複もありますので、ポイントのみ御説明をさせていただきたいと思います。
まず、1枚目の冒頭ですが、平成27年の中教審の答申の中で、教員に関しまして、自律的に学ぶ姿勢を持ち、時代の変化やみずからのキャリアステージに応じて求められる資質能力を生涯にわたって高めることができる力、あるいは情報を適切に収集し、選択、活用する力等が必要だということを述べられております。
それから、アクティブ・ラーニングの視点からの授業改善、ICT、あるいは発達障害等を含む特別な支援を必要とする子供への対応。さらには、多様な専門性を持つ人材と効果的に連携、分担するという組織的な協働的な動き、これらが提示をされているところでございます。
その下は、学習指導要領についての答申の中でございますけれども、教科等を超えたカリキュラム・マネジメントの実現、主体的・対話的で深い学びを実現するための授業改善や教材研究等を教師自身ができるようになる力が必要であるということが求められてございます。
それから、次のページでございますが、平成24年の中教審では、教職員に対する責任感、探究力あるいは自主的に学び続ける力、さらには2番目の専門職としての高度な知識・技能、その中でも、新たな学びを展開できる実践的指導力等々が指摘されておる。さらに3点として、総合的な人間力、地域や社会の多様な組織等と連携、協働できる力というのも提示をされているところでございます。
それから、ちょっと前になりますが、平成17年の中教審答申の中では、教職に対する強い情熱、使命感、誇り、愛情、責任感、さらに常に学び続ける向上心、さらには2点目、教育の専門家としての確かな力量、3点目として総合的な人間力、対人関係能力、コミュニケーション能力等も指摘をされているというところでございます。
さらにさかのぼりまして平成9年、教育職員養成審議会、今の中教審の教員養成部会の前身でございますけれども、その中でも、いつの時代にも求められる資質能力としての教育的愛情、専門的知識、広く豊かな教養、実践的指導力等が求められ、さらに、今後特に求められる力として、地球的視野に立って行動するための資質能力等々が求められていると。さらに、3点目として、得意分野を持つ個性豊かな教員というのも提示をされているところでございまして、全教員に共通に求められる資質能力の確保とともに、積極的に各人の得意分野作り、あるいは個性の伸長を図ることが大切であるということが述べられている。こういうことが教員に求められるものとして過去の答申では提示を頂いてきているということがこれまでの蓄積でございます。
以上でございます。
【荒瀬部会長】 ありがとうございました。これで全て御説明が終了したということであります。大変な情報量でありまして、おなかがいっぱいになったというところではないかと思いますが、この後、全体的なディスカッション、質問をお願いをしたいと思います。今、私の時計で午前10時52分でありまして、10分後、11時2分から再開させていただきたいと思います。
では、暫時休憩に入らせていただきます。
( 休憩 )
【荒瀬部会長】 お約束しておりました時間になりましたので、再開させていただきたいと思います。
全体についてのディスカッションをしたいと思います。大変幅広い内容を承ったわけでありますけれども、きょうは初回でもありますので、フリーのディスカッションとさせていただきたいと思います。また、事務局から御説明いただきましたことに対する御質問とか御意見がございましたら、お願いしたいと思っております。
大変恐れ入りますが、名札を立てていただきまして、私にお名前が見える形で立てていただきまして、それで指名をさせていただきたいと思います。順序が少しずれる可能性がありますけれども、御容赦いただきたいと思います。
では、いかがでしょうか。それでは、長谷川委員、よろしくお願いいたします。
【長谷川委員】 LITALICOの長谷川でございます。
一つ最初に、会議自体の進め方という観点なんですけれども、説明、非常に丁寧に頂いたんですけれども、個人的にも、説明をずっと長時間聞くのを大変苦手としておりまして、大学の講義を非常に懐かしく思いながら拝聴したんですが、基本的なドキュメントは事前に送っていただいて、読めばある程度理解ができますので、事前に、1週間前に送っていただいて、全員必ず読んで参加すると。ここにおいて説明しないということで、もしそれを見てない人がいたら、見てなかったあなたが悪いと運営した方がより効率的な議論ができるんじゃないかと思っていますので、一つ御提案させていただきたいと思っています。
本題に入っていくと、様々な教育再生実行会議での提言も含めて、今回の諮問も含めて非常にいい論点が方向性としても示されて、実現できたら本当に大改革が実現できるものだと非常に希望を持っています。一方で、これだけの改革を本当に実現して、現場に実態として行き渡らせていこうとなってくると、もっと力強い推進力というのが必要であると考えておりまして、例えば今回も具体的な各方向性や施策の目標といつまでに達成するのかというデッドラインを明確に決めていくというところまで最終的には落とし込んでいくというのが非常に大事なのではないかと思っておりまして、例えば今回、eラーニング、EdTechをもっと推進しようというところも非常に大事な点だと思っています。
例えばうちにこの前来ていたお子さんで、中学校は通級に行っているお子さんがいました。高校に進学の段階になって、学力の問題もあって特別支援学校しか難しいと言われているお子さんだったんですね、学校の勉強も付いていけなくて。ただ、御両親の願いもあって、私立で構わないから、進学校にどうしても行きたいということで、結果的に私立の高校の進学校に進学されました。最初1年間、最初はビリの成績で入ったんですが、リクルートさんが提供しているスタディサプリというeラーニングで1年間学習した結果、特別支援学校しか無理と言われていた子が学年トップになったんですね。かなり奇跡的なところだなと思っていまして、eラーニングを使ったら、それだけ学力が伸びていくポテンシャルがある子たちがたくさんいる。
今回、習熟度別の学習を推進するというところの論点に入っていて、非常にいい方向性だと思っていますが、ゆっくりのペースで学習するクラスというのができたときに、その中でもかなりばらつきがあるんですね。学年一つ、二つ、三つ、四つ遅れているという子もそこに入ってくるとなると、少人数で習熟度別になったとしても、先生がそれを個別個別に対応するのはなかなか難しいと思うので、例えば習熟度別の学習を推進する科目に関しては、全てeラーニングの学習環境をデフォルトで整えるということを非常に強い強制力を持って推進できることが大事ではないかと思っているので、具体的に、例えば5年後の2024年までに必ず習熟度別の学習においては、eラーニングで全ての子供が学習を受けられる環境をどの学校も整備するということを具体的な目標として明記する。
そういうことが行われると、民間のビジネスをやっている皆さんからしても、そうかと、学校もビジネスチャンスだなということで、もっと算数の教材を作っていこうとか、AIを活用した国語の教材も作ろう、理科の教材も作ろうという形で、民間の活力を使ってICTの導入、EdTechの導入というところが進んでいくと思いますので、そういった形で具体的な目標と期限を明確にするまとめというところができると非常に心強いと思っています。
以上になります。
【荒瀬部会長】 ありがとうございました。多分、各委員は事前の資料はお読みになっていると思います。ただ、今日は特別に長い説明であったわけでありますけれども、ここで事務局から御説明いただくことによって、いわば資料の中身の軽重といいますか、全て大事だとしても、そういったことの改めての共有ができると思いますので、可能な限り説明は短くしていただくというのはお願いをするわけですけれども、説明をなしにというのはいかがなものかとも思いますので、御理解いただければと思います。
それと、締め切りを作るというのは、非常に大事な話で、締め切りのない仕事というのはいい仕事にならないというのは私も思うんですが、締め切りだけが先行してしまってはいけませんので、そのあたりをここで議論していくということでお願いいたします。大変重要な御提言を頂きました。ありがとうございます。 では、毛利委員、佐藤委員、橋本委員、小川委員、吉田委員、小林委員の順でお願いいたしたいと思います。
【毛利委員】 つくば市立みどりの学園の毛利と申します。私が勤務する学校は、昨年度、開校したばかりの義務教育学校。義務教育学校というのは小中一貫の学校ですが、普通の公立学校です。昨年度から小学校5年生以上、教科担任制をしいてやっておりますので、教科担任制が話題に出ておりましたので、どういう感じで進んでいるかというのをお話しさせていただきたいと思います。
どちらかというと、教科担任制で議論されているのは専門性のこと、専門的なことが学べるので学力が向上するというお話が割と出ているかと思いますが、それ以外に、非常に子供の心が安定します。それはなぜかといいますと、小学校高学年になりますとやはり思春期にも入ってきますので、いい先生、悪い先生ということではなく、自分に合う、合わない、人として、家族だって中学生、高校生だと、お父さん嫌いとかお母さん嫌いとなるように、苦手な先生とかもいるわけですけど、教科担任制にすると、小学校10教科ほどありますので、10人の先生と相対するんですね。なので、いろんな先生にいろんな悩みの相談をするということができて、一人一人子供たちに対応できるので、非常にいい制度ではないかなと思っております。
あと、教材の準備も、私、小学校の担任もしたことがありますが、やはり全部の教科を全部教えていたんですけど、なかなか大変です。ですが、3クラス1学年にあれば、教材の準備も3分の1で済みますし、3回やると結構上手になったりするんですね、直していきながら。なので、そういうこともできますし、3分の1減った分、深く教材も整えることもできますし、働き方改革としても、やはり心のゆとりもできますので、子供に対峙する時間も増えるということがあります。
あと、本校では最先端のICT技術を取り入れておりまして、先ほど委員からもありましたように、eラーニングをつくば市ではやっておりまして、小学校1年生から中学校3年生まで7万問の問題があります。これは、小学校1年生は1年生だけじゃなくて、小学生でも中学校の勉強も解けます。中学生でも、ちょっと苦手だなと思ったら下の学年の勉強も解けるようになっています。そういうeラーニングがあって、学習の履歴も取れます。何秒で解いたか、何回失敗したか、どこを解いているかというのもできます。家でも学校でも病院でも、入院していても、不登校でも、市外からでも、どこからでもできるようになっています。ですので、小学生でも英語の英検準1級を受験してみたり、歴史の勉強をしてみたりもしています。
ただ、あくまでもこれは学校教育の支援としてやっておりますので、不登校を助長したり不登校を推進しているものではなくて、あくまでも学校に来るためのシステムとしてやったりしています。そういう学習を推進しております。
以上でございます。
【荒瀬部会長】 ありがとうございました。では、続きまして佐藤委員、よろしくお願いいたします。
【佐藤委員】 佐藤でございます。日本PTA全国協議会という団体の会長をしておりまして、PTAの立場からということで御発言をさせていただきます。
全国に800万人の会員がおりまして、全国の会長さんが64の協議会で構成されているのが日本PTAということになっておるんですが、この中で今たくさんの項目がある中で、国が予算を付けたものとかが地方交付税とかで全国にお金が行くわけですが、市町村まで行くとそのお金が教育現場になかなか落ちてこない。それは各都道府県とか市町村によるというところがあります。これについても今盛んに話題になっておりまして、例えばエアコンの設置等につきましても、物すごく設置率が高い県とそうでない県。この中の資料にもありましたけれども、ICTの機器の問題についても、生徒1人に1台いっているところもあれば、全くそこに予算が付いていないという問題もあります。それについても、日本PTAで全国の調査をしながら、皆さんのところはどうですかということで、せっかく64の協議会の会長さんが集まる場が年に何回かあります。こちらで議論されていることを皆さんに問い掛けることもできますので、そういった情報収集もしていきたいと思っております。
また、私、日本PTAの会長でもあるんですが、地元では中学校のPTA会長をやっておりまして、茨城県の牛久市というところで中学校の会長をやっているんですが、そこでたまたまこの間、学校運営協議会におととい出たときに言っていたのが、リトアニアかどこかの子供たちと通信を使って英語の勉強をするためにやっているんだけれども、通信環境が物すごく悪くて途切れ途切れになってしまう。結局は、学校の先生のスマートフォンの機能を使って外国とやり取りをしている。その通信料がどうなるか分からないんですが、そういったことで、先ほど言った地域間格差というのが、うちの方は牛久大仏という大仏があるところのすぐそばで大変田舎なんですけれども、関東にいながらも相当悪いという感じ。これが日本全国と考えますと、大分通信環境もこれからよくなるだろうと思うんですが、なかなかその辺が学校現場に予算も落ちてないし、環境もないというのは先生方が嘆いておりましたので、そういったところも全国、公教育ですので、公共の教育としてしっかりとそういったものが配分されるというのが、全国協議会としてはそういうふうにしていきたいと考えておりますので、1年間、よろしくお願いしたいと思います。
以上です。
【荒瀬部会長】 ありがとうございます。では、橋本委員、お願いいたします。
【橋本委員】 たくさんのポイントがありますので、きょうは高校教育のことだけに絞って申し上げたいと思います。
今回、急速な社会の変化を前提に高校、特に普通科の在り方についてこれまで余り議論されてなかった分野ですけど、ワーキンググループも設置してしっかり議論していくということは大変有意義じゃないかなと思っております。
ただ、今回、高校に入って学習意欲や満足度が低下していること、あるいは学習時間が減少していることが見直しの背景にあるんじゃないかなと思うんですけれども、これらにつきましては、高校の教育の問題もあるとは思うんですけど、それ以前にと申しますか、それ以上に、これまでの画一的で受動的であった学習スタイルの問題や、知識重視型の大学入試の在り方、また今、受験勉強しなくても簡単に入学できる大学が多いといった大学の在り方あたりの問題が大きいんじゃないかな、そんなふうに思っております。
したがいまして、高校の教育だけではない、周辺のことも十分考えていく必要がありますし、何よりも、今取組中であります新学習指導要領による授業改善を進めたり、大学入試改革を抜本的に改めていく改革を進める、こういったことがまず大切ではないかなと思っております。
その上で、今の高校、特に普通科の学習についてですが、これはひょっとすると京都府の特徴かもしれませんけれども、保護者の大学に入れたいという期待が非常に強い。そのことを受けまして、どうしても大学受験というものを意識したカリキュラム等になりがちである。各学校で特色化等、様々な工夫はされているんですけれども、全体として見ますと、際立った特色あるいは多様性という面では欠けている。また、職業学科なんかに比べましても、魅力とかおもしろさには少し欠けているんじゃないかな、そんな印象を持っております。
そういう意味では、本来はもっと受験と切り離した高校教育ができないのかな、理想としてはそんなふうに思うんですけれども、いずれにしましても、これから高校教育、もっと多様化をしていく、また特色化を際立たせるという大きな方向性は大賛成であります。
しかし、その手段として、今提案されておりますけれども、類型化を進めるという手法、意図はよく分かるんですけれども、様々な課題がありそうなので、これについては慎重な審議が要るのかなと思っております。
例えばですけれども、類型化について特に枠をはめるような形で進めますと、生徒の同質性が高まって、かえって人材の多様性が損なわれるんじゃないかなということもありますし、よく言われていることかと思うんですけれども、中学生という早い段階で類型化を選ばせることの難しさ。高校側からしますと、募集定員の設定の仕方の難しさ、結果的にミスマッチを生まないかという懸念があります。そんなことを考えますと、類型化を進めるにしましても、様々な柔軟性を持った仕組み等が必要じゃないか。これからの議論ではありますけれども、そんなことを今の段階では意識をしております。
それともう1点ですけれども、今高校の現場では、令和4年度の新学習指導要領の実施に向けまして教育課程の検討なんかを進めてきております。類型化等を進める、大きな改革を進めるとなりますと、各学校の教育課程のみならず入試制度、また教員体制の問題、かなり幅広な影響が出てくるものと思っておりますので、内容の議論はもちろんですけれども、どんなスケジュール感を持ってこの改革を進めていくか、そうしたことも現実感を持ってしっかりと議論をし、考えていく必要があると思っておりますので、よろしくお願いいたします。
以上です。
【荒瀬部会長】 ありがとうございます。先ほど長谷川委員もおっしゃいましたけれども、スケジュール感ということ、これはまた大事なお話かと思います。今のお話は高校、新たに設置する予定の高校改革ワーキングで具体のスケジュールについても考えていくことになろうかと思いますが、私たちも全体でいつまでに何をすることが必要かというのは、締め切りを決めてしまうだけではできない面もあるわけですけれども、締め切りがなければできない面も当然あるわけですので、そのあたりを見ながら議論を進めていっていただければと思います。
では、小川委員、よろしくお願いいたします。
【小川委員】 テーマが多岐にわたっていますので、いろいろ発言もしたいのですが、きょうは一つだけ、焦点を絞って教職員定数の改善の手だてをしっかり図っていく必要があると考えますので、それに関わって少し発言をさせていただければと思います。
諮問内容は先ほど説明あったように、本当に多岐にわたっています。これらの多岐にわたる教育課題を担って、実際取り組むのは教員ですので、そうした教員に課された課題の大きさ、負荷、特に本来業務である授業の高度化、また児童生徒一人一人に個別最適化された学習指導を保障していくという学習指導の高度化ということを考えたときに、それに対応できる教員の量と質をどう確保するかというのが徹底的に重要だと考えています。
そういう意味もあって、諮問内容の中では、教員の資質向上という課題に対しては、養成、採用、研修など一連の制度の見直しとか運用の見直しの中身は諮問されているのですが、肝心の教員の定数とか教員の量という点では、諮問の中には積極的に言及されていないという印象を持ちました。
特にそれに関わって懸念しているのは、これは文部科学省が経済財政諮問会議の要請を受けて、2018年度中に公立小中学校の教職員定数の中期見通しを策定することが求められていたということもあって、この3月29日に文科省が教職員定数の中期見通しを策定しています。その中身を読ませてもらいましたが、やはり児童生徒数の減少に伴って、基礎定数部分で2018年度、約63万3,000人が何もしないと8年後には約60万6,000人と2万7,000人減るという試算をしています。これはあくまで児童生徒数の減に関わる単純計算ですので、このとおりにはいかないと、いってほしくないと考えていますが、教職員定数の改善に関わる様々な処方策、手だてを取らないと、つまり何もしないと、8年後には3万人近い教職員定数が減少する、そういう事態になるということです。
今回の諮問内容の重要さ、多面性を考えたときに、単純に児童生徒数が減ることでこれくらいの大幅な教職員定数が減になるということは、やはりこれからの取組にとっては最大の支障になると思います。そういう点で、教員の質、量、それぞれ重要ですけれども、特に諮問内容で余り触れられてこなかった量についても、少し腰を据えてやっていただければなと思います。
ちょっと発言が長くなりますが、宜しいでしょうか。学校における働き方改革がようやく今進行しています。その中で、学校や教員が担う業務の明確化、適正化という取組も始まっています。こうした働き方改革は、これまでの日本の組織の在り方、教員の仕事の在り方を大きく変えていく可能性があると私は考えています。
特に留意したいのは、組織を論ずるときに、よくメンバーシップ型組織かジョブ型組織かということを対比して論ずることがあるかと思います。これは詳しい説明は、皆さん御承知だと思うのでしませんけれども、従来の日本の学校はメンバーシップ型組織だったと思います。このメンバーシップ型組織の最大の問題点は何かというと、構成員個々の職務内容が非常に不明確であって、組織内で新しい仕事が増えた場合には、現有スタッフで増えた分の仕事を担って何とかやりくりしていく、そういう特徴を持っていて、必ずしも客観的な業務量に対応した人員を配置しないというところにメンバーシップ型組織の大きな問題点があったかと思います。
メンバーシップ型組織というのは、確かに柔軟性を持っているというメリットはあるかと思いますが、必ずしも客観的な業務量に対応した人員を配置しないという、今あるメンバーでもっていろんな仕事をこなしていく、そういう最大の問題点があると考えています。
ですから、メンバーシップ型組織とも言えるこれまでの日本の学校は、配置される教職員の数とか配置というのは、今ある業務量を確定した上で、その業務量にふさわしい教職員数を算定しているわけではないということをまず確認しておきたいと思っています。
今回の働き方改革における業務の明確化とか適正化という取組は、その方向性には教員の本来職務は何かということを明確化することで、従来型のメンバーシップ型組織からジョブ型組織に日本の学校を変えていこうという趣旨を含んでいると思っています。そういう点で、働き方改革の取組を踏まえつつ、実際の学校現場の業務の量、教師の業務の量をきちんと客観的に把握した上で、それに即した教員の配置、定数改善ということをきちっと取り組んでいく、そういうスタンスでもって是非この特別部会でもやっていただければなと思っています。
もう一つは、教員の本来業務である授業においても、先ほど言ったように授業の高度化とか学習指導の高度化が求められていますので、これまでのような教員定数の考え方、特に教員の持ち授業コマ数の考え方を従来とは違った発想で考えられていく必要があると思っています。
御存じかと思いますけれども、イギリスでは、教員が担当する授業時間数の10%以上を授業の準備とか成績処理などを行う時間として、法定勤務時間の中に含んでおかなければならないという制度があると聞いています。日本でも今後、教員の授業の高度化とか学習指導の高度化を担保する方法として、勤務時間の中にそうした授業準備、従来の一律で一斉授業をイメージした授業準備とは、これからの授業の在り方は抜本的に変わってきますので、新しい授業のありようを踏まえた授業準備を考えたときに、これまで以上にそうした授業準備に対する時間というのは相当要すると思いますので、そういう授業準備のある一定部分については勤務時間の中に組み込んだ上で、そうしたものを含めた上で教員の持ちコマ数はどれくらいが合理的かということを算定していく。それを踏まえた教職員定数の改善の方策ということもやっていく必要があるのではないかと思っています。
そういう課題も含めて、教員の客観的な業務の量、業務の質に見合った教職員定数の算定とか改善の方策についても、是非広く、その可能性をこの特別部会で検討していっていただければと思います。
【荒瀬部会長】 ありがとうございました。今のは大変重要なお話で、とりわけ小川先生は、前期の初中分科会長として働き方改革をおまとめいただいたわけでありますので、お考えを承って、私たちもそれを引き継いでやってまいりたいと思うところであります。かつ、先生がおっしゃいました教員の業務の量と質をどのようにしていくかというのは、この特別部会でも議論しつつ、教員養成部会でも是非やっていただくということで、こちらに加治佐先生がいらっしゃいますけれども、教員養成部会長をお務めでありますので、こういう議論が教員養成部会にも、あるいはまた教育課程部会にもしっかりとつながって一体的に改革が進められればということを思っております。ありがとうございました。
では、吉田委員、よろしくお願いいたします。
【吉田委員】 ありがとうございます。今回も本当に多岐にわたる諮問がありまして大変だと思うのですが、私、まず第一に見過ごしてはいけないと思っているのは、今まで教育再生実行会議からいろいろおりてきて、検討して出来上がってというものが多数ありますが、そういう中で、2020年の高大接続改革に伴う大学入試という問題は、もう既に高校2年生になってしまっているにもかかわらず、中学校1年生のときに大学入試が変わると言われ、1点刻みから段階別評価に思考力、判断力、表現力をしっかりと身に付けた子供たちを大学入試で判断して、英語については4技能を重視して、しっかりとしたグローバル人材に育てるんだということでスタートしてそうやって学んできたわけですよね。しかしながら、今の段階においても、まだ大学が英語4技能試験をどのように使うか。特に国から運営費交付金を頂いている国立大学協会に至っては、協会自体ではある程度の方針を決めたにも関わらず、一切使わない大学もあったり、そういう意味では子供たちが迷子になっている実態にあります。
そういう中で、子供たちは何とかして自分たちの将来を切り開いていかなきゃいけない。そのためには、今回、いろいろ諮問していただいた内容というのもすばらしいとは思うのですけれども、例えば新学習指導要領がここで3年後、4年後ということでどんどんスタートしてくるわけですけれども、そこにまた新たな課題がどんどん出てきています。そして、例えば再生実行会議のSociety5.0の問題などで言えば、教育課程の不断の見直しを進め、中長期的な観点から教科書の弾力的見直しについても検討という言葉がありますけれど、こんなこと、今始まるばかりの、これから10年間のことをやる新教育課程があるのにどうやってできるのか。そして、Society5.0の中でも、やはりこれは私は非常にいいことだとは思いますけど、個人の進路や能力、関心に応じた学びの場とか、個別最適な教育ということがどんどん出てくるわけですけれども、それをやるためには、今の小川先生のお話にもありましたが、教員の数はちゃんと考えているのか。
それがタブレットなりパソコンでやっていくという、遠隔地教育とか、そういうことも含めてやっていくということになった場合に、そうすると、きょう御説明いただいた新時代の学びを支える先端技術の活用推進方策というのが出てきていますけど、はっきり言って、計画も何も書いてあります。しかし、例えば我々は今、実際にパソコンを生徒1人1台持たせて使っている立場として、一番大きな問題はWi-Fiの問題があります。例えば50人が一斉に海外とオンラインスピーキングといって、1対1で英語の勉強をする授業があるんですけれども、それをやった場合に、先生方が付いてないと、大抵どこかしらが突然切れたりします。これを完全に解決させるとなると、SINETがどのぐらいやっていただけるのか分かりませんけれども、よっぽど強いものをしっかり入れさせていただかないと、今ですらもお金が掛かっているのに、それを国がやるとなったときに、公立学校と私立学校では、一体どういう費用負担になっていくのか。
そして、パソコンも、実はデジタル教科書のときに、本来、1人1台という話だったはずが、デジタル教科書は目を悪くするからどうのとかいろんなこともあって、3人に1台という話で落ち着いていました。それが今、突然また1人1台という問題が出てきて、そしてこのICT教育を充実させてということですけど、そうすると、今まで言っていた目の問題だとか、もっと原点に立ち返りますけれども、SNSの扱いの仕方とか、コンピューターを子供たちに持たせた場合に、どこまできちんとした指導をできるのかどうか。ただ何でもかんでもその場でばらまいて渡し、それでやりたい放題やらせるではいけないのではないか。一方で、それを今度怖がり過ぎて、今東京都の場合ですと、区によってお金のある区とない区があるわけですけど、お金のある区は全員、小学校、中学生に公立学校で、タブレットを配っているところがあります。ただ、そういうところは、配られていても、1日のうちちょっと触るだけで、家にも持って帰ってはいけないし、何も使っている意味がない。ただ置いてあるだけになっている。やはりそういう基本のことをしっかり決めた上で広めていくという体制をとらない限り、だめなのではないかなと。
そして、この工程表が付いていますけれど、工程表には是非お金も一緒に付けていただきたい。お金なしで予定だけが進んでいくなどということはあり得ないことですので、その部分もしっかりとできればなと願っておりますので、よろしくお願いいたします。
【荒瀬部会長】 ありがとうございました。では、次、小林委員にお願いいたしますが、その後の順番を申し上げます。清原委員、天笠委員、神野委員、今村委員、竹中委員、松尾委員、森山委員、貞広委員の順によろしくお願いいたします。大変恐縮でありますけれども、私にお名前が見えるように札を置いていただけると大変ありがたいと思います。角度によりましてお名前が見えないということがございますので、大変申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします。
では、小林委員、お願いいたします。
【小林委員】 私、本会議の中で唯一、経済界の立場で出席させていただいております。実は、経済同友会では、今年の4月に初等中等教育についての提言をいたしました。何で経済界が初等中等教育についての提言をするのかといいますと、これまでは我々の提言というのは、ほとんど高等教育でしたが、今の経済と職場の現状を見ていくと、高等教育への関与だけでは十分ではないだろうと思われます。その一番の原因は、高等教育のこと、ここでは余り議論していませんけど、これは企業ということだけではなくて、実社会で必要とされている人材、そこで活きていける人材は、これまでの標準化され理想とされているような人ではなくなってきていると感じるからです。やはり企業、それから社会が多様性を持っていないと新しい発想だとか問題の解決ができないという世の中になってきています。これは企業のこれからの発展、日本の競争力においても非常に大きな問題であると同時に、やはり社会全体の問題であると考えております。
その中で、経済界としても、この問題は大学や、高等教育だけで解決できる問題ではないので、初等中等教育のところから子供たちに物を考えるとか、新しい社会に対応する力を付けてもらうということを経済界としても期待しているんだということを含めて、メッセージを発したわけです。もう既に、先ほど橋本委員あるいは小川委員がおっしゃられたことですけれども、まず一つは、多様性の時代にあって、類型で決めてほしくないなと。子供たちの能力というのはどこで花ひらくか分からないので、余り早い段階で、あなたは将来こういうエリアで活躍しなさいということを規定してしまう必要はなくて、むしろ、社会に出たときに自由に自分の能力を発揮できる人材を育てていかなければいけないのではないかという点です。あるいは、類型でまとめても、その間の移動が自由にできる仕組みである必要があるんじゃないかということが一つ。
2点目は、先ほどから教員の役割ということで、どうやって教員の質の向上のための負荷を減らしていくか、あるいは人員増という議論、お話がありましたけれども、今回のきょうの資料を見ていますと、社会人の活用についてはICT等の専門分野についてしか視野に入っていないようですが、我々の中の提言では、企業はもっと教育に関わるべきだし、それは必ずしも専門分野だけではなくて、企業OBが学校の先生の負担を減らすような例えば社会との関わり、あるいはPTAとの関わり、問題についての学校の先生が今担っているところをもっと社会の企業人が担える部分もあるので、幅広く、どうやって企業あるいは地域社会からの人材の活用をするのかということを少し広い視野で考えていただいたらよろしいんじゃないかという点です。我々経済界としては、企業側にもそうした人材を積極的に出すように、地域の教育に協力するようにと声掛けを始めていますので、その辺を考えていただきたいと思います。
【荒瀬部会長】 ありがとうございます。後でおっしゃったことは、具体化が進んでいる面は結構あると思うんですね。今後、そういった例などもお示しいただければと、事務局で把握してらっしゃる部分について知らせていただければと思います。私も幾つか知っております。ただ、なかなか進んでないというのも事実ですので。ありがとうございます。
それでは、清原委員、よろしくお願いいたします。
【清原委員】 ありがとうございます。清原です。この4月まで三鷹市長をしておりまして、その実践の中から、市長部局と教育委員会の密接な連携なくして望ましい教育は進まないと考え、教育委員会を尊重しながらも、他の行政との関わり、そして地域との関わりが極めて重要だと認識を持っております。そこで3点申し上げます。
1点目は、「Society5.0やSDGsと言われる国際的に新しい社会の動向や開発目標に向かって協働していくプロセスの中で、今、初等中等教育は何を求められているか」という点ですが、私は、技術がこのように変わるからとか、社会がこのように変わるから、それに応用して教育を考えていくというような「対応していく視点」だけではなくて、不透明な未来をどのように切り開いていくか。今、所与のものとして見えているかもしれない技術ですが、私たち人間の生きる上で必要なニーズが先行して技術は開発されていくべきであり、相互作用だと思いますけれども、技術がこうなるから、これに対応して教育をというだけではなく、「教育をこのようにしたいから、このような技術変革を、改革を」という方向も認識していかなければいけないのではないかなと考えています。
その意味では、AIやICTの活用が言われる中、初等中等教育学校の風景も、パソコン教室という特別教室から教室にタブレット型端末を持ち込むというように、パソコンも特別な教育から一般的な教育へと変わってきている動向があります。その中で、吉田委員も言われましたけれども、Wi-Fiであれネットワークであれ、基盤の整備というのは地域格差なく、国が進めていくべきものと考えています。
それから、「情報利活用能力」というのも、識字能力であるリテラシーだけではなくて、企画し、創造していくという能力も求められますが、やはり個人情報の保護や、あるいは倫理観、さらにはSNSを使って被害者にも加害者にもならない取組というのがより一層重視されていくと思います。
また、グローバル化の中で英語教育が小学校から入ってくるという中、英語だけが重視されてはいけないのですが、それがきっかけとなり、「東京2020オリンピック・パラリンピック」も踏まえて、国際的な視野というのは幼児から小学生に始まり、長寿の皆様よりもむしろ若い世代に視野が開けているかもしれません。インターネットを使えば、遠くの国も近くになる。その中で、いかに人権の意識を持って、語学だけではない国際的な人間力を図っていくかという上でも、比較的外国の方にめぐり合える都市部だけではなく、中山間地も含めた地域格差のない視点の取組が必要と考えます。
また、産業や職業が多様化してきました。将来、今、小学生、中学生がイメージしている職業が残るのかということすら言われています。しかし、職業教育というのは、どの職業に就くにせよ、やはり必要な能力だと思いますので、初等中等教育の中で職業に適応する、あるいはイメージする力とみずから職業を生み出していくというか起業していくというか、どんな職業があったとしても、今イメージできないものであったとしても適応していく、「人生100年時代の基本的な能力」が培われなければならないと思います。そういう意味では、初等中等教育に期待される能力のダイバーシティー、多様性が言われているというのは、今までの委員の発言に共感するところです。
それでは、2点目。「そのような課題を解決する上で教師には何が求められるのか」ということですが、これだけ多様な能力の育成を求められる教員というのは、学級担任制のメリット、教科担任制のメリット、専科の教員も必要でしょうが、専門性だけがたけてはいけないので、「教科間の横連携」というのがもちろん求められていくと思います。先ほど小川委員がおっしゃいましたように、これまで「学校における働き方改革」を初等中等教育分科会で議論してきて、質と量の両立を求めて定数の問題も大いに議論してきたところです。引き続き、学級担任制がいいのか教科担任制がいいのかだけではなくて、先ほど小林委員も言われたように、私たちが学校を開かれた存在として企業人あるいは弁護士、税理士、様々な士業の方、医師も含めて関わっていただけるようなオープンな教育の担い手を求めていくことが必要だと思いますし、その中でまずは教員の働く環境を整えていくということが重要だと考えます。
「文理融合」が文理分離より重要だと言われていますが、「文理融合」を進めていくには、教員の養成課程から工夫が必要でしょうし、実践を通した専門性を生かしつつ、繰り返しになりますが、横連携が重要だと考えます。
そこで、最後に3点目、「検討のスケジュール」でございます。今回はまずは諮問事項の第1及び第4について進めて、後半から高等学校の教育に移っていくということです。私はこの検討スケジュールでよろしいかと思うんですけれども、やはり前半のところでこれから求められる義務教育の在り方の中で、小学校、中学校だけではなくて、高校との小中高の一貫制あるいは高大接続が極めて重要になってきますので、常に一貫して連携、接続あるいは持続性ということを意識しながら部会長を中心につないでいっていただければなということを期待いたします。
「異年齢・異学年協働性」、「多職種・多世代連携」、そんなことを理念的に言うのは容易なんですが、初等中等教育学校の中で仕組みとしてどうコーディネートしていくのかというのは、実際はなかなか難しい課題だと思います。ICTの基盤作りも含めて、この分科会での提案が具体的な来年度2020年度の予算に反映できるような緊急提案があれば、秋前に出していくということも有効かなと考えました。
以上です。よろしくお願いいたします。
【荒瀬部会長】 ありがとうございました。高校につきましては、高校改革ワーキングを間もなく立ち上げることになります。そこでの議論がまたここでも紹介があって、全体的には初中分科会で議論していくということになろうかと思います。
では、天笠委員なんですが、大変申し訳ありませんが、私の進行がまずくて、長いと思っておりました3時間もあと残すところ40分となりました。これから御発言いただく方は本当に申し訳ありませんけれども、そこのところを少し意識していただきまして、よろしくお願いいたします。
【天笠部会長代理】 では、短く三つ申し上げさせていただきます。
まず一つは、学習指導要領の改訂ということに関わってですけれども、新しい学習指導要領、昨年度の3月末に指導要録の在り方ですとか、学習評価の在り方についての通知が出てということで、従来の捉え方でいくと、一連の新しい学習指導要領の改訂に伴う作業はそれで一段落したと、終了したという見方もできなくはないと思います。言うならば、そこで一区切りして、新しいテーマが、あるいは新しい課題が動き始める、新しい議論が始まるという区切り方というのも、従来の整理の仕方からするとできなくもないんですけれども、今回の場合は、私はこれまでの改訂に伴う、それとともに、いよいよこれからが本番ではないか、そういう認識を持っております。それは御承知のとおり、来年の4月から、小学校から順次本格実施という形で、学習指導要領はそれぞれの小中高で展開されるということで、言うならば、学習指導要領というのは、学校、実践、現場に受け止められて何ぼの話ではないかと思います。
ですから、そういう点からすれば、まさにこれからということだと思うんですけれども、今回の改訂の場合に、そこにとりわけ重要なこととして、これまでと比較しますと、条件整備をどう絡めていくのかということが本格的な実施にとって大きなポイントになったということを私ども認識しているというんでしょうか、だからこそ働き方改革ですとか、この特別部会があるんだということであって、ですから、条件整備という観点からも、これからの新しい学習指導要領の本格実施ということとうまくこの議論が平仄を合わせるということの大切さというのが、必要性ということも含めてあるのではないかと考えております。
したがいまして、これからの例えば高等学校の在り方をワーキンググループで検討するにしても何にしても、新しい学習指導要領をいかに具体的に実施するか、その話と常に絡めながら進めていくことの必要性があって、またぞろ新しい話が始まっちゃうんだということではないんだということを常に我々は強く自覚しながらやらないと、何しろ、この学習指導要領こそSociety5.0を開いていく一つの試金石になるものではないか、そういう認識を持っていますので、どれほどこれを昇華できるかどうかということについて、我々は強く問題意識を持つべきではないかと思います。
そういうことからすると、ちょっと話はずれるかもしれませんけれども、教育課程の不断の見直し、あるいは学習指導要領の一部改訂ということなんですけれども、私はほぼ10年に一度、フルセットで学校の在り方を見直していこう、こういう改訂のスパンというのは一つの知恵ではないかと思っています。それをもう少し短く、この世の中の動きですから、時間の短縮というのはあり得るかもしれませんけれども、ただ10年という中で、その中で不断の見直しということの必要性が世の中の動きとしてあるということはよく分かる。
ただ、このあたりの不断の見直しとか一部改訂というのが非常に切り取られた形で、そしてそのところだけが中に入っていく形になっていくと、全体と部分の整合ということも、また一部といった場合には非常に重要になってきているんじゃないか。いろんなそれぞれの思惑の中で、一部改訂というところだけが特化して進行していくとすると、全体の姿というものが見えなくなる。ですから、そういう意味で言うと、全体とフルセットの部分と部分というところの平仄を合わせた検討、議論の仕方というのが学習指導要領の改訂で必要なんじゃないかと思います。
一つ目がそれで、二つ目は、教科担任制のことでちょっと触れさせていただきたいと思うんですけれども、既に折々にこういう席上でも、小学校における教科担任制の普及率というんでしょうか、パーセントというのはときどき資料として提出していただいていますけれども、あれをごらんになっても分かりますように、それなりに小学校の教科担任制は入っているということであり、私の認識では、それは昭和30年代、40年代にその起源があるというんでしょうか、さかのぼるということで、ですから、これからまた小学校の教科担任制の検討が、議論があるかと思うんですけれども、更地からではなくて、既に各都道府県でそれなりのものがある。ただ、都道府県というのは、それぞれの地域的事情があって、かなりばらつきがあるんじゃないか。そこら辺のところを丁寧に押さえながら、小学校の教科担任制を。
その場合に、昭和30年、40年と申し上げましたけれども、そのときの取組方を一つ見たときに、今、我々が検討するとすると、その当時は中学校という視野がなかったように思います。小学校の枠の中での役割の分担の工夫というのがその当時のそれであって、今回の小学校担任の在り方は、私は少なくとも中学校の教師の在り方、あるいは小学校と中学校の教師の在り方の行き来、そういうことも検討の課題の中に加えていくということがまた必要なのではないかと思います。要するに、小学校の教科担任制なんですが、小学校の先生方の中の分担の工夫というところにとどまりますと、議論の視野の範囲が狭いのではないかなと思います。以上、2点目であります。
それから、最後ですけれども、昨今、折々にSociety5.0という御説明を伺います。折々に大変勉強させていただいているんですけれども、私は説明を聞けば聞くほど、どうもSociety4.0とSociety5.0の境というのか、そこのところがときどき見えなくなってくるというか、Society4.0、幾つの話の延長線上の話を今なさっているのか、それとも、4.0を超えて5.0の社会。超えるというあたりのところの明確化とか問題意識の鮮明化ということが実はすごく大切なように思うんですけれども、4.0の延長線上のような話の5.0があるような、そんなニュアンスのものが私は5.0に少なくないように思う。もうちょっとそこら辺については、ある意味で飛躍とか、情報化社会、4.0で言うところの超えるというところが、何をどういうふうに超えるかということをもうちょっと明確にしていくということもこれから一つのテーマかと個人的には思っておりまして、またそのあたりについてはいろいろと御教授等々いただければという思いも持っております。
以上です。
【荒瀬部会長】 ありがとうございました。現在、正午2分前であります。大変申し訳ありませんが、時間の共有をよろしくお願いいたします。
では、神野委員、お願いいたします。
【神野委員】 初めまして神野といいます。私は、人工知能を用いて個別最適化された教育を届けている株式会社COMPASSという会社をやっておりまして、その立場から、個別最適化ですとか習熟度別というところが今回すごく入っていますので、その部分に関してお話しさせていただければと思うんですが、まず、例えばAIを使って個別最適化したときに何が起こるのかということの一例といたしまして、小学校1年生から、算数、数学の数ⅠA、ⅡBまでに必要な子供たちが獲得しなければならない技能、スキルというものを8,000種類くらいで定義しております。
8,000種類というのは物すごく細かい単位でして、例えば括弧を外す展開というところに関しても、1桁の計算でできる場合、2桁の計算でできる場合、文字が入ったらどうなのか、物すごく細かい単位で解析を行います。そうしていったときに生まれる習熟度別の勉強方法というものは、従来で考えると基礎クラス、発展クラス、特進クラス、スーパー特進クラス、この4クラスぐらいを作るのが限界だったところに対して、およそ1,000種類から2,000種類ぐらいの習熟度別のクラスを用意できるようなものになります、子供たちの学び方とすれば。
それぐらいの習熟度別ということを用意できたときに、子供たちに何が起こるのかというところを今回やらせていただいたのが、経済産業省さんと一緒にやらせていただきました未来の教室実証事業という枠組みの中で、千代田区立麹町中学校の現場にこの教材を届けさせていただいて、いろいろ実証結果としてデータを取らせていただいた。
まず、起こったこととして、当然、皆さん御想像のとおり、学力の向上というものもかなり出ました。麹町中学校は基礎クラスと発展クラスと2クラスに分かれているんですが、基礎クラスの子たちがどれだけ発展クラスの子たちに追い付くことができるのかという形で、学力の向上ということを図らせていただいたんですが、平均すれば偏差値で3ぐらい全体で追い付くことができました。ということができたというところで、まず学力の向上というところに、まさに皆様方もおっしゃられているとおり、eラーニングであったり、個別最適化された教育というものが果たすということは物すごく言えると思います。
また、あと三つほど言わせていただきたいことがありまして、一つ目が自己肯定感ということを育むことができますよということをお届けさせていただきたいものになります。どういうことかといいますと、特に算数、数学とか英語というものは、一度つまずくとその後の授業中、子供たちはずっとバツをもらわなきゃいけないんですね。ただ、アダプティブラーニングという形で届けられますと、どんなに少なくても6割から7割ぐらい、どんな子でも丸をもらえるんです。その子自体が分からないことをちゃんと読み取ってあげながら学習を行うので、そういった意味で無用なバツをもらうことがなくなることによって、その学問にもう一度のめり込む、そのような機会を届けられる。
もう一つが生徒と先生のコミュニケーションが圧倒的に増えます。これはアダプティブラーニングだからというよりは、eラーニングだからという特質だと思うんですけれども、先生が一斉指導しない授業スタイルになりますと、子供たちにとってみれば、分からない瞬間に先生にすぐ聞きに行くんですね。若しくは、分からない瞬間にすぐ隣の子供たちに聞く。実は、その態度というのは、学習者から見ると対話的であったり主体的であるのではないかというのは僕らも考えておることなんですけれども、そういうコミュニケーションが増えていったときに、先生もまた子供たちの気持ちが分かるようになったとか、子供たちも先生に相談していいんだという雰囲気になっていったことで相談しやすくなったということもまたアンケート結果で出ていることであります。
そして最後に、これはかなりセンシティブな内容になるのですが、麹町中学校で起こった実証結果として、教科書の設定時間に対して2倍速で終わったという実証結果があります。ですので、3学期中には、次の学年にどんどん進んでしまって、全員進んでしまったんですね。全員2倍速で終わってしまったという実証結果になります。
このようなものを持って、僕らは一つ、世の中に対して発信しているものは、確かに基礎学力は大事です。基礎学力を落とすということ自体は、今の国において全くできない。ただ、21世紀型スキルというものも身に付けていかなければいけない。学習者からしてみると、勉強しなきゃいけない内容はどんどん増えていくという中において、唯一の解決策というのは、習熟度別という学び方を子供たちに届けることによって、あるスキルを獲得するための時間を短くしていくということでしか解決しようがないんじゃないかというものがまず僕らが思っていることであったりします。
そのような結果というものを表せていただき、もちろん麹町中だからできたとか、いろんなまだまだ環境面があるのかもしれません。ですので、今後、地方においてでも、こういう教育を届けさせていただいたときに、どのようなことが起こっていくのかということはまだまだ実証していかなければいけないと思っておるのですけれども、そのようなものはどうやってやっていくのかという中で、吉田委員もおっしゃられておりましたインフラということもあると思います。このインフラというものを僕らがどう立ち位置として捉えているかというと、まさに先生、生徒に対して学習機会というものを与えられるためのインフラだと思います。インフラは機会だと、オポチュニティーであると。
なんですが、機会があったとしても、先生自体がその教育というものをやってみたいと思うモチベーションがない限り、生徒に届かないんですね。麹町中の現場でも、最初から僕らの教育というのを信じてもらえたわけではなくて、最初の2学期の頭の時点では、工藤校長と教科主任の2人の方々が僕らのプロダクトに対して少し可能性を感じる、やってみたいということを言ってくださって始まったものの、現場の先生方というのは、まだまだこの教育にすごく懐疑的でした。ですが、教科主任の先生が中心になっていったときに、先生方も直感的に、この生徒だったら、大体この月、このぐらいまでならできるよねという当て勘があると思うんですけど、その当て感をはるかに超えるような実績と、またある生徒が、この子が1週間で1,200問も数学の問題を解いているのというデータが見えてきたんですね。そのときに、この教育、もしかしたら本当に可能性があるのかもしれないと。そのようなことを先生方が思ってくださったことによって、麹町全体で熱狂が起こっていったという背景になっております。
ですので、僕らがそのときにやらせていただいたことは、この教育を用いてどうやって学習指導略案を作るのかというものが現場まで入って一緒に伴走させていただきながら、どうやって先生方がやりたい教育を考えていくか。ひいては、子供たちに対してどういう教育を届けていくかということを一緒になってやらせていただいたと。これをやはり全国でやっていくということが、まさにこういうような学び、ICTを用いた学びを届けていく上でもすごく大事なことなんじゃないかなということは私自身思っております。
以上です。ありがとうございます。
【荒瀬部会長】 ありがとうございました。この後、今村委員、竹中委員、松尾委員、森山委員、貞広委員、香山委員、田村委員、山中委員、石橋委員、浜田委員と御発言の御意思を確認しておりますが、大変申し訳ありませんが、全ての方に回ることはないと思っております。申し訳ありません。どうしても今日是非とも発言をしておかなければならないということを伺いたいんですが、多分皆さん、きょうどうしても発言なさりたいと思ってらっしゃると思うんです。非常に申し訳ありません。この時間ももったいないわけですけれども、非常に申し訳ありませんが、どこかで切れた段階で、その委員の方々は次回、次回の日程も決まっておりますので、必ず優先的に御発言いただくということできょうのところは何とかお許しを頂きたいと思います。それでお願いいたします。
では、今村委員、よろしくお願いいたします。
【今村委員】 私は、地方の地域において子供たちの教育に関わってきた立場から、今回のいろいろなところで御提案されているICT利用について絡めて発言させていただきたいと思います。
教育をただ誰一人として取り残さないということを考えていったときに、昨今の人口減少の中で、子供の数が減ってきていることを前提に、どのように学校を活かしていくかということを考えることがあります。小学校の数が減るスピードが一番速いのは青森県で、この10年で3,700人ぐらい小学校6年生が減ったということもあって、学校も統廃合が減り、その減り幅は地域によって全然違います。そういうところは大体、既に学校が少ないところからさらに学校を減らしていかざるを得なくなっているので、統廃合が進むと、さらに遠いところの学校に行かなくてはいけなくなり、バス通学になってしまうということが起きます。
子供の自己肯定感についてずっと取り組んできた立場から、子供たちの自己肯定感や社会性を育んでいくのは、決して学校教育だけの役割ではなくて、むしろ地域社会でのコミュニティーとか人との人間関係とか、親以外の人との人間関係の中で憧れを見付けたり、支えられたり、例えば東北の地域でもあったんですけど、虐待の発見すら地域の児相よりも早く、当然警察よりも早く、地域の方々の目の中で救われたというケースも、私たちの支援している子供たちの中でもありました。
そんな中で、今回、未来の教室でも、再生実行会議でも、いろいろな文科省が作られている資料の中でも、EdTechの推進という方向が提言されていますが、とても大きな希望に私には見えます。先程のQubenaさんの話もありましたが、私たちの現場でも実は使わせていただいています。決して麹町中学校の優秀で目立った校長で、都会だからあれが成り立っているとかじゃないんです。例えば私たちが関わる宮城県女川町の子供たちも利用させてみたんですけど、低学力層の子の方が、そっちの方が楽しいという感じになってしまって、それまで塾の先生を雇用していた事業と比べて、どっちの方がいいんだったっけということになりました。
ということで、これからの先生の仕事はどうあるべきかいま一度考えていく方がいいのかなと思っています。先生はファシリテーターとなって、テクノロジーとか外部資源とか、そういったものをコーディネートして、個別学習計画を作り、できるだけ歩いていけるところに小学校が残っているという状態をどう実現していくのか。確かに合唱コンクールもできなくなるし、部活もできなくなるし、特にバレー部とか野球部とか人数が必要になるのはどんどんなくなってきていて、既にバトミントンとか卓球しか残ってない学校もあるというのはあるんですが、やはり地域の人たちとの人間関係があるというのはすごく重要なんです。
もちろん移行期はどうするのかはありますが、地方にこそスピードを上げてテクノロジーの環境、ICT環境を整えて、学校をなくさなくたって先生が1人いればいろんな教科を見られて、授業自体を持つというよりは、個別学習計画をどう作るかというところにリソースを割けるみたいなことに先生の役割が変わっていくということで、子供たちの見守りとモチベーションの支援を同時に追いかけていくということを長期的には考えていきたいし、短期的にも、小学校を減らす前に検討したいなということを感じています。
ただ、もう1点だけ、このテクノロジーの理由が、短期的には手段と目的がどっちなのかが分からなくなっている学校も既にあって、さっきから話題になっているように、実際はWi-Fiの問題だったりするので、つながらないとか言っているうちに、50分、授業が終わってしまったということもよく聞く話です。移行期に何をKPIにして学校にテクノロジーの利用をおろすのかということで言うと、やっぱり先生の余白がちゃんとできて、子供と向き合う時間ができたというところを、どれだけ時間が捻出できたかというところをKPIにして、各県でおろしていくということを支援されてはどうかなと感じています。
長くなりました。以上です。
【荒瀬部会長】 ありがとうございました。では、竹中委員、よろしくお願いいたします。
【竹中委員】 ナミねぇです。皆さん、短めにと言いながら長いので、私も短めに。
特別支援の関係だけに絞って言います。プロップ・ステーション、御存じのようにチャレンジドをタックスペイヤーにということで、重い障害のある方々が就労に向けて活躍されているんですけれども、目の見えない方というときに、目の見えないというところを世間はネガティブに捉えるんですけど、私たちの立場というのは、例えば世の中に目の見えない人が多ければ、自動車事故は絶対起きないだろうという発想をするんですね。目という不確かなもので判断して、手という不確かなものでそれから逃げようとするという状態は、全く見えない状態でもし移動手段と考えたときには、当たらないということは大前提になるはずなんですね。つまり、そういう発想というのが特別支援教育の中に残念ながら全くなくて、見えないことが見えるよりもネガティブで、聞こえないことは聞こえるよりもネガティブだという、常にできないという方を数えて特別支援教育としても根幹になっているのがすごく、どうにかチェンジできないかなと思っています。
それと、プロップに知的のスタッフがいるんですけれども、漢字交じりの文章とか私なんかよりも入力が早いんですね。聞くと、コンピューターというのは、漢字は全部四つのコードでできていて、当用漢字というのは数が限られているんですが、四つの数字でコードができていて、しかも目で見てバラという漢字を書けなくても、見たら分かるやろと言うから、見たら分かるよ。僕ら見たら分かる。だから、漢字の書き方で覚えるんじゃなくて、見るのとコードでやるとすごく素早い漢字の打ち込みができる。そうなんか、知らんかったわみたいな、チャレンジドから教えてもらうことがすごく多くて、今障害のある人のことを何々が足りないで数えているがゆえに、彼らの中の隠れている能力みたいなのがすごく生かされていないなと思います。
最後に1個ですけど、おとつい、ナミねぇは東京でライブしてたんですけど、ライブのお客様100人のうち10人が聞こえないお客様なんですね。どういうふうに対応するかといったら、歌詞カードだけ前もって10人の方には渡しておくということだけで、あとはほかのお客様以上に聞くことに集中しない分、ステージパフォーマンス全体をすごくシビアに明るく評価をしてくださるんですね。その10人の人がわっと手話で、一角がおしゃべりされていて、そこの手話グループうるさいぞとか言いながらライブをやっているわけですけれども、そういうふうに世の中で、障害をネガティブという視点からちょっとずれただけで日本の国はもっと楽しくおもしろい、いい国になっていくかなと思いました。
【荒瀬部会長】 ありがとうございました。では、松尾委員、お願いいたします。
【松尾委員】 失礼いたします。兵庫県姫路市立白鳥小学校の松尾と申します。地方の公立小学校の校長の立場からお話をさせていただけたらと思っています。
学校教育というのは人格形成の場だと思います。不易と流行の不易の部分で考えると、私自身大切にしているのはやはり心の教育ということで、今子供たちに求められているのは、相手のことを想像できる想像力ですとか、違う友達との意見の折り合いを付けられる折り合い力、調整力といいますか、そういったことも大切にしたいなと思いつつ、兵庫県では小中一貫、義務教育学校への移行ということも図っております。先ほどつくば市の毛利委員もおっしゃいましたけれども、兵庫県も兵庫型教科担任制というのを平成22年度から実施しておりまして、もう10年になります。先ほど天笠先生もおっしゃったように、小学校の中だけの教科担任制ではなく、中学校との義務教育学校としてのお互いの乗り入れ授業なども含めた教科担任制ということを兵庫県も実施しております。
教科担任制と少人数授業ということで、例えば2クラスある学年でしたら、理科と社会をお互い担任が交換します。3クラスある場合でしたら体育の授業も含めたりして、授業時数と絡めながら教科担任制をすることによって、学力向上と人間関係力といいますか、心の面と学習の面の両方から子供たちをチームとして、学校として見ていけるというメリットがたくさんあります。そういった中で、両輪で進んでいくということで、具体的な数値も成果も出ておりますので、また機会があればそのあたりも紹介させていただきたいなとは思っております。
あともう一つ、兵庫県が力を入れていますのはキャリア教育ということで、小林委員もおっしゃいました企業との連携ということで、本校も例えば獣医さんですとか、もの作りですとか、一級建築士の方とワークショップを形成しまして、お互いの職業体験を紹介していただきながら、小学生が実際に体験させていただく場を設定していただいたりするような、企業と連携した上でのキャリア教育なども推進しております。そういった中で、子供たちを全体に人格形成を育んでいくという取組をやっています。また次回、御紹介できたらなと思っております。
以上です。
【荒瀬部会長】 ありがとうございました。では、森山委員、お願いいたします。
【森山委員】 時間の都合もあると思いますので、私からは特別部会の検討の進め方、議論というところで2点だけお示ししたいと思います。例えば教科担任制ということを考えた場合にも多くの課題があるわけです。教員免許制度の見直しであるとか、あるいは研修の確保というのが、私は教科担任制を考える上で大きな鍵になるだろうと思います。
教員免許制度の見直しとなれば、当然、小学校だけの問題ではありませんから、小中高、今日お話にありましたけれども、社会人とか、そのあたりのところまで包含するような検討が必要だろうと。教科担任制でも小学校ということになれば、当然、今の小学校の環境と違うわけですので、専門性を担保しながら、地域や学校の事情に合わせて検討していくということが必要でしょう。あるいは指導の充実を行うということと負担を減らすという二つの相反することを同時に実現するということも必要でしょう。あるいはクラス担任の今までの総合的な能力を担保しながら、当然、学校としては考えなければいけないということもあるでしょう。これは教える教科が少なくなれば、ちょうど教員養成の部分にいる人間としては、教員志望の学生の増加につながるのではないかという考え方もございます。教えるということについては、教科が多かったり、全体的にいろんな要素、これも必要だ、これも必要だということで、小学校の全科制についての議論というのは、教科担任制の中で議論されるべきではないか。そういう意味では、養成と採用と研修ということを一体的に考える今回の部会の進め方ということは、この一つ一つを考えても非常に意味のあるものだと思います。
それから2点目なんですが、教員採用の統一試験のことをここで議論するべきではないかと思います。これは平成27年12月21日に中教審から出された答申の中にも、教員採用に関することが出ておりますけれども、働き方改革の議論を踏まえても、教員採用、選考の在り方というのは、やはり教員の養成と研修をつなぐ段階として重要な意味を持つものではないかと思います。そういう意味では、御承知のとおり、大学においては教職課程のコアカリキュラムの導入が行われていますし、教員研修についても育成協議会の設置が示されて、指標あるいは教員研修計画の策定を柱として教育公務員の特例法の改正も行われております。その段階に至って、新たな段階として教員採用についてこれから検討しないと、この流れの中、ある程度の全体的な実現が不可能になるのではないかという考えもございます。
以上、2点お示ししました。以上です。
【荒瀬部会長】 ありがとうございました。では、貞広 委員、お願いいたします。
【貞広委員】 ありがとうございます。頑張って短くしたいと思います。
1点目ですけれども、今回お示しいただきました非常に魅力のある改革の方向性を考えるに当たって、定数を中心とするリソースの配分制度や配分原則の見直しを見据えて、それも想定してこれを検討するのかどうかということです。裏返して申し上げれば、そこにもちゃんと手を付けないと絵に描いた餅になってしまうだろうということです。
例えば先ほど来、話題に上がっています教科担任制の問題も、今までの定数配分のやり方でそれが実現できるのかどうか。特に地方の小規模校の小学校で今の定数でやっていけるのかどうか。又は、小中連携ということを見据えたときに、どういう定数の在り方があるのかどうかという見直しも含んだ状態で考えなければいけないのではないかということです。
また先ほど、こちらも公正に個別に最適化された教育ということのお話がございましたけれども、個別に最適化されるということは、教育や支援の必要度が子供によって異なるということです。そうすると、先生たちの関わりの度合いが異なるわけで、そうなると、それを想定すると、より困り感のある子供とか、困り感のある学校によりリソースがたくさん配分されるという定数等の配分の仕方も想定しなければいけないんだと思います。このあたりまでちゃんと見えた状態で議論できるのかということを一つ一つ申し上げたいと思います。
あともう1点は教育ビッグデータの問題で、こちらもここまで考えるのかと。見えないものを見えるようにするというのは大変重要なので、こういう方向性が非常に必要なんだと思いますけれども、教育の研究者からすると、まさか日本にOfstedがと思ってしまうような部分もありますが、是非、こうしたデータの蓄積は非常に重要ですので、ただし、その前提に学校や先生方の管理や評価ではなくて、あくまでも教育の支援のツールとして使うということを確認した上で、ビッグデータの導入をしていただきたいなと思います。
また加えて、実は今の学校にも十分たくさんの子供たちのデータ、学びのデータはあるんですよね。ただ、それを分析して手だてを講ずるというリサーチマインドのようなものが学校文化にないんですけれども、そうしたものも合わせて醸成していく仕組みも作りつつ、見えないものを見えるようにした上で、すぐれた教育を展開していく方向性を是非探れたらなと思います。
以上です。
【荒瀬部会長】 ありがとうございます。では、恐らく最後になるかと思いますが、香山委員、お願いいたします。あとの田村委員、山中委員、石橋委員、浜田委員は、大変申し訳ありませんが、次回お願いするということでよろしくお願いいたします。
では、香山委員、どうぞ。
【香山委員】 ありがとうございます。次回は地域のコンソーシアムの第1回目の会合を学校でする当日ですから、地域の首長さんなどもお呼びしておりますために私が欠席するわけにいかないことから、こちらを欠席しますので、貴重な機会を頂いてありがとうございます。
私からは新しい学習指導要領で高等学校の総合的な学習の時間が総合的な探究の時間に変わったということについて思いをいたしたいと思います。
先ほど来、人口減少の話もありましたけれども、大きな推計では2100年には明治維新の頃に近づくという人口推計があります。明治維新の頃は3,300万人だったと思いますので、4,000万人とか、今の日本全体の3分の1ぐらいになる事態が生じるのではないか。そういう時代を迎えるに当たって何が必要かと言えば、全ての子供たちがローカルあるいはグローバルな課題について考え、そして改善提案を出していけるような、誰一人取り残さずに、一人一人がそうやって探究し続ける、そういう子供を育成するというのが喫緊の課題だろうと思いますし、それをゴールにしたときに、全てのことを有機的に結び付けてサポートする環境をどう整えるのか、そういう形で私は今回、この会合に参加させていただこうと思っています。
一番のポイントとして、探究人を育成するには、総合的な探究の時間、3単位なんかでは到底無理で、それはあくまでも一つ一つのきっかけであって、全ての教科の授業においても探究心を育成するような授業にしていかないといけない。今はなかなかそうはいってない現状があって、日本の強みの系統主義的な知識を積み上げていく学習の仕組みに多くの教員が染まっていますし、自信も持っていますので、それに対してもう一つ、経験主義的な探究のプロセスをうまくブレンドしていく、それには毎時間、深い問いを作っていこうと。毎時間というよりは毎単元ですね。深い問いを持った単元を作っていって、子供たちがその単元にワクワクして臨んでいくという環境を整えれば、相当いけるんじゃないかと思っています。
そのためには、実は昔ながらの教育法で形作られた教員ではなかなか厳しいところがあって、私のところには、教員と同じように、例えば地域おこし協力隊という総務省の制度を使った総合的な探究の時間のコーディネーターがいたり、あるいは地域おこし企業人という形で、企業から派遣する、そういう方も過去いました。ただ、これが制度的には3年しかないといったことで、継続した仕組みになってないんですね。ところが、大学と企業の関係で言えば、クロスアポイントメント制度などがあって、常時、非常勤でお互いに行き来するといったことがあるわけです。先ほど小林委員が小中教育にも企業の力をと力強いお話がありましたが、この点についても、探究人を育成するには、企業からも常時来られる仕組みを是非作っていただけたらなと思っております。
それと、今村委員もおっしゃいましたが、私もこれまでの教員だとAIに代替される、そういう時代が今来ていると思っています。そういう意味では、これから教員養成をするときにどういう教員を作っていくのかということは喫緊の課題だと思います。探究人を育成し得る教員の養成の在り方ということについても、是非議論を深めていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
私の学校は和気閑谷高校といって江戸時代にできました、1670年に庶民も入学できる学校として出発しました閑谷学校を由来としております。そういう意味で、地域の子供たち、いろんな子供たちの多様性を伸ばしていこうと思っておりますので、是非それについてもいろんな示唆を頂けたらと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
【荒瀬部会長】 ありがとうございました。今香山委員の御発言で気が付いたのですが、次回にと申しましたけど、次回の御予定の関係で、今日でないと御発言できないという方はいらっしゃいますでしょうか。田村委員、山中委員、石橋委員、浜田委員、次回、お見えいただけますでしょうか。ありがとうございます。本当に申し訳ありません。次回、お願いいたします。
時間を少し超えました。本日はこれまでにしたいと思います。
では、最後に、事務局から次回を含めて御連絡をよろしくお願いいたします。
【田中教育制度改革室長】 ありがとうございました。今次回の日程についても話題になりましたけれども、次回につきましては、7月24日水曜日、9時半から12時半開催の予定としているところでございます。詳細につきましては、追って事務局から御連絡申し上げます。
また、本日の資料につきましては、机上にお残しいただければ、後日、郵送させていただきます。
【荒瀬部会長】 それでは、本日の第1回を終了いたします。長時間、本当にありがとうございました。

―― 了 ――
 

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