教員養成部会 教員養成のフラッグシップ大学検討ワーキンググループ(第3回) 議事録

1.日時

令和元年7月4日(木曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省東館3階3F1特別会議室

3.議題

  1. 教員養成フラッグシップ大学における教育課程と教育研究について
  2. 教員養成フラッグシップ大学における大学教員の養成・採用・研修について
  3. その他

4.出席者

委員

三島良直主査,加治佐哲也主査代理,戸ヶ﨑勤,堀田龍也,牧野光朗,松田恵示,水落芳明,三村由香里,両角亜希子,山口宏樹,若江眞紀の各委員

文部科学省

平野大臣官房審議官,柳澤教育人材政策課長,髙田教員養成企画室長,長谷教員免許企画室長 他

5.議事録

(1)事務局から,教員養成のフラッグシップ大学における教育課程と教育研究について,資料に基づき説明があり,その後,意見交換が行われた。

【三島主査】  ただいまから中央教育審議会初等中等教育分科会教員養成部会教員養成フラッグシップ大学検討ワーキンググループの第3回を開催させていただきます。本日は,御多忙の中,御出席いただきまして,ありがとうございます。1回目,2回目を通じて,議論の方向性が見えてきたなと思っているところでございますので,本日も是非よろしくお願いいたします。
 まず,配付資料の確認を事務局から,よろしくお願いいたします。
【髙田教育人材政策課教員養成企画室長】  それでは,資料の確認をさせていただきます。端末のデスクトップに今回の会議資料を格納したフォルダがございますので,御確認いただければと思います。
 議事次第の中に本日の議事と配付資料を記載しております。資料1から10,参考資料としてOECD国際教員指導環境調査(TALIS)と,6月25日に公表されました「新時代の学びを支える先端技術活用推進方策(最終まとめ)」を用意しております。
 このほか,前回までの会議資料などをファイリングした資料を机上に用意しております。
 御不明な点等ございましたら,お近くの事務局員までお申し付けください。以上です。
【三島主査】  それでは,御紹介ございましたように,二つの議題がございますので,早速始めたいと思います。
 議事の1番目の,教員養成フラッグシップ大学における教育課程と教育研究について,本日,ある程度まとめたいと思っています。
 議事の2番目は,フラッグシップ大学における大学教員の養成・採用・研修についての議論を進めていきたいと思います。
 それでは,まずフラッグシップ大学における教育課程と教育研究について,始めさせていただきます。
 資料1,資料2,資料9について,事務局から御説明をお願いいたします。
【髙田教育人材政策課教員養成企画室長】  それでは,資料1でございます。こちらにつきましては,前回のワーキングで御議論いただきました主な意見をまとめたものでございます。前回は,教員養成フラッグシップ大学の目的と役割について,また,フラッグシップ大学の教育課程と教育研究について,御議論いただきました。その他,関連する御意見などをいただきましたものをまとめております。ここでの議論を次の資料2に反映いたしておりまして,反映した部分が赤字になっております。
 資料2に移らせていただきますと,前回,教員養成フラッグシップ大学の目的と役割について御議論いただきましたが,その中で,教員養成フラッグシップ大学というのは,国民から見て,「さすがフラッグシップ大学だよね」ということが前提であるというような御意見がありましたので,目的と役割の部分について,赤字で追記させていただきました。
 そして2ページ目に移りますが,国際的なプレゼンスの向上という書き振りにしておりましたが,日本とOECDとの共同研究といった話もあるだろうという御意見もいただきましたので,そのような要素を踏まえた書き振りに直しております。
 また,三つ目の目的と役割で,我が国の教員養成全体を支える役割という部分につきまして,前回の御議論の中で,フラッグシップ大学については教育行政や,例えば指導主事の養成といったものなど,教育委員会の高度化を推進するようなことも必要ではないかというような御意見をいただきましたので,教育行政やチーム学校の高度化を図るための人材養成への寄与なども,役割の一つとして追記させていただきました。
 次に,今回,ある程度まとめていただこうと思っております教育課程と教育研究については,前回,御議論いただいた御意見をおおむね反映させていただきまして,四つの小見出しでまとめております。
 一つが,社会に開かれた教育課程ということで,民間など様々な外部との連携や,社会人といった開かれた教育課程を具現化するようなことを先導的にやってもらおうというような趣旨のことをここに入れております。
 二つ目で,科学的といいますか,理論的といいますか,単なる実践といったものをきちんと理論化したり,定量化したりしてやっていこうというものを推進していくようなことを,ここの二つ目のパラグラフにまとめております。
 三つ目で,そもそも新しい教員養成の在り方を提案するような,研究開発が必要だということですので,規制緩和的なことをここにまとめて書いております。方向性といたしまして,前回の議論でも,学部段階と教職大学院の段階で養成の在り方も違うのではないかというような御意見もございましたので,そのような免許の資格制度,あるいは教職大学院の学位の制度というようなことについて留意しながら,弾力化・緩和措置を実施することについて記載しておりますし,また6年制についても,検討課題として記載しております。
 四つ目で,新たなモデルの提示ということで,先ほど指導主事等のことを申し上げましたが,更に,課題として上がっているのは,高等学校改革や地域課題についても,積極的に高いレベルのモデルを提示いただくようなことを,教育課程の中で実践していただければというようなことを記載しております。
 また,前回頂いた意見で,ガバナンスやマネジメントについて,いわゆる規制緩和をするに当たっての規制強化の部分や,ネットワークの構築を具体的にどうしていくのかという御意見もいただきましたが,それについては,今後議論していくということで,今回はその部分については,記載しておりません。
 先へ進みまして,参考資料について,少し関連する部分として,議論の参考に御紹介させていただきます。
 参考資料1でございます。前々回に諸外国の取組について事例みたいなものが何かないかというような御意見もいただきましたけれども,最近OECDから発表された調査として,TALIS2018という諸外国の教員を比較した調査がございます。大きくは学校の状況,あるいは教員の勤務状況などの調査項目がございますが,このTALIS調査の一番下の方に,授業の状況などについてまとめた部分がございます。そちらを御覧いただければと思います。
 この調査については,教員に対するアンケートのようなものです。日本人は,「できているか」,「できていないか」と問われた場合に,どちらかというと厳しめに答える傾向にあるので,諸外国との比較の上では,その点を少し考慮する必要はあるかと思いますが,例えば,ICTの活用の状況について,上から日本の小学校,中学校,海外の中学校となっておりますけれども,例えば中学校について前回調査の9.9%に比べれば,17.9%と伸びてはいますが,まだ十分ではないというようなことがございます。
 あと,海外の教員との関係で大きな差があるところとして,児童生徒の批判的思考を促すとか,児童生徒に勉強ができると自信を持たせるなどについて,もちろん,飽くまでもこれは自己評価なので,国民性の違いはありますが,かなり差が開いているというところが,留意すべきところではないかと思っております。
 次に,参考資料2ですが,これは先月末,文部科学省でまとめました「新時代の学びを支える先端技術活用推進方策(最終まとめ)」でございます。これについても詳しくは説明いたしませんが,6ページに,先端技術の機能に応じた効果的な活用の在り方について,かなり分かりやすく,こんなことを取り入れたらどうかといったことが,写真付きで入っておりますけれども,例えばこの右下の方に,今後の方向性ということで,今後,文部科学省や国立教育政策研究所の事業等での実証等を踏まえ,令和2年度内を目途に,「学校現場における先端技術利活用ガイドライン」を策定するといったような動きがございますし,その次の7ページでは,教育ビッグデータの在り方といたしまして,教育データの標準化を今後はしていこうといったようなことに向けて,ロードマップを策定していこうという文部科学省の動きがありますので,御紹介いたしました。
 最後に,資料9の論点例の中の二つ目と三つ目を御覧下さい。二つ目が,前回,御議論いただいた内容についてでございます。前回,御議論いただいた際のキーワードとして,このようなことも触れてみてはどうかということで,挙げた例でございます。
 その次に,本日,御議論いただきます大学教員の養成・採用・研修などについても,その括弧の部分で,このようなことが議論の題材になるのではないかとして,キーワードを挙げたものをここに記載しておりますので,御参考にしていただければと思います。
【三島主査】  それでは,今,御説明いただいた,特に資料2の部分の4ポツの教員養成のフラッグシップ大学における教育課程と教育研究ということで,赤い字でまとめてあるところが,前回頂いた御意見をまとめたような形になってございますので,これを見ながら,自由に御発言をいただければと思います。いかがでしょうか。それでは,加治佐主査代理,どうぞ。
【加治佐主査代理】  まとめていただいた資料2の4の括弧3のところなのですが,教員免許制度及び教職大学院制度の研究開発ということで,研究開発する大学に,フラッグシップ大学はなるわけですけれども,最初の丸のところで,資格や学位の制度であることを踏まえ,総修得単位数と必履修事項は原則として維持しつつ,弾力化・緩和措置を実施,ということが書かれています。免許制度,それから教職大学院制度,どちらもですが,特に免許制度は,かなり厳しい基準規制になっていると思います。ですから,免許制度については,規制緩和を含めた在り方を検討しているわけです。
 教職大学院制度も,教職大学院はそれなりの成果を上げていまして,評価も高いです。ただ,教職大学院制度につきましても,もう10年以上たちまして,基準の在り方というのを考え直す時期に来ているのではないかということを私自身,思っています。特に修士課程の教科教育分野を教職大学院に移すときに,それぞれの大学で,特色ある取り組みが行われてきていると思うのです。そうすると,総単位数はともかく,必履修事項ということが,原則として維持となっていますけれども,この部分も含めて,考え直した方がいいのではないかと思います。
 例えば教職大学院だと,共通科目が5領域20単位あります。それから実習10単位,あと選択科目,専門科目となっているわけです。これはとても厳しいものがあります。ただ,これまでも,共通科目20単位は少しずつ緩和されてきて,管理職を目指す現職教員を対象とする学校経営に特化したコースについては,12単位ぐらいでもいいということになってきているわけです。
 教職大学院というのは基本的に,教師としてのジェネラリスト的な能力を育成するということになっているわけです。ですから,共通科目が20単位ということで重視されているわけです。ただ,現実のニーズは様々ありまして,例えば,管理職になりたい人にとっては,共通科目が必ずしも合っているわけではない。あるいは特別支援教育や,議論しているICTもそうだと思うのですけれども,それをもっと深く学びたいというニーズのある者にとっては,共通科目をたくさん履修するということは,必ずしも合わないということはあると思うのです。
 また,実習科目についても,実習は当然必要なのですけれども,特に現職教員については,現在は多くの場合は,自分の学校に戻って実習をするということになっているわけです。それが学校にとっても,あるいは学生自身にとっても,必ずしも歓迎されているわけではないという傾向も見えますので,最初から10単位ではなくて,実習の在り方そのものも含めた検討をしてもらった方がいいのではと考えています。必履修事項は除いてはどうかという要望です。
【三島主査】  はい。必履修事項ですね。
【髙田教育人材政策課教員養成企画室長】  ここは,学部段階と教職大学院をまとめたような書き方をしておりますが,ここに「原則として」というのを入れたのは,学部段階は,必履修事項を,外してまでやるということについては相当な理由が必要になるのではと感じています。一方で教職大学院については,何か新しい特別のコースやプログラムをつくる際に,例えば5領域について全てやる必要があるのか。あるいは今,最大12単位まで緩和されていることについて,もっと大胆な緩和をする必要があるのかということについては,我々としても,検討していくべき内容ではないかと思っております。
【三島主査】  前回から,現行制度の緩和について意見が出ているところでございますけれども,その他に,御意見ございますか。松田委員,どうぞ。
【松田委員】  今のことに若干関連してなのですけれども,学部の養成段階を考えたときに,Society5.0でのイノベーター教員をつくっていこうとする大学を考えました場合に,課程認定の縛りというのは,教育課程を考えるときに足かせになる場合が割とあるのではないかという感想を持っています。
 このあたり具体的に考えていかないと,指摘できないところもあるのですけれども,課程認定との関係を柔軟に検討でき得るような余地がありますと,思い切った教育ができるのではないかということが,一つ感想でございます。
 もう一つは,教育課程を考えるときに,実践的な教育の最大の場であります教育実習なのですけれども,ざっくりとした言い方ですが,ある種,こういうイノベーティブな,先導する教育を行う教育実習というのが,従来の学校で行えるとは,余り思えないのです。そういう意味で,附属学校の在り方について,大学の附属学校というのは,ある種,日本のコアの教育のショールームのようなイメージで,最先端を,具体的に運営として賄えているというようなところがあってこその,教育実習と教育課程との連動性が出てくるのではないかというふうに感じるところがございました。附属学校の研究開発校という議論もございましたけれども,在り方ということも連動して検討していく必要があるのではないかと感じます。
 最後,括弧3で,教員免許制度と教職大学院制度の研究開発という,教員養成を考えますと,非常に重要な事項が挙げられているわけですが,Society5.0時代の教育ということは,そもそもAIなりIoTが基幹をかえてしまうような技術だということで,Society5.0という政策課題が出ているところがあると思いますし,機械学習とかディープラーニングということで,つまり,これまでの考え方ではフォローし切れない課題が非常にたくさん出ています。
 そのような中で,そもそも何を教育すれば良いのかとか,教育の方法がICTとひも付いて行われた場合,例えば国語もいつもタブレットで行うという授業が展開されるときに,そこで教えられるべき内容は何なのかとか,どういう方法で教えるのかなどというのは,従来の教員養成の研究では,まだ届いていないところだと思うのです。
 ですからそういう意味で,昨今の学習指導要領でも,情報活用能力というのが学力の基盤の方へ滑り込んだという構造的な変化があるのですが,そういうことを踏まえて,教育の在り方自体を,政策課題との関係の中で実践的に研究するという機能が必要なのではないかと思います。
 従来,教育科学は,旧帝国大学の教育学部でも研究しているわけですけれども,アカデミアの教育側の内在的モチーフで進む研究と,こういう政策課題に対応して進むべき外在的なモチーフとの両面があって,特に後者をしっかりと担っていくという機能が,このフラッグシップに期待されるのではないかと感じたところでございます。
【三島主査】  ありがとうございます。教育のやり方や研究開発のところに踏み込んでいただいておりますが,水落委員,どうぞ。
【水落委員】  加治佐主査代理がおっしゃったことに関わってなのですが,例えば教職大学院の共通5領域20単位を減らすということについては,先の有識者会議の中でも,相当な議論があって,これが16単位か18単位というところで,とどまったと思います。
 そういう改革をやっていく際に,一方で議論になったのが,もともとの修士課程との差が,なくなっていく方向に進んでしまうのではないかということでした。したがって,そういう方向にまた戻ってしまう危険性のないようにすることが大切です。ただ一方で,おっしゃったように,例えば管理職に進む人にとって,余り必要としない共通5領域の内容があるということであれば,見なし規定のようなものをつくって,この単位については,もう取得したと見なすことができるというようにして,総単位数は変えずに,履修したと見なすというような対応をしていくのが,現実的なのではないかなと感じています。
 そうすると,どうすれば見なすことができるかを考えることになるわけですから,何ができるようになったのかという,今回の学習指導要領改訂と同じ方向で,学部や教職大学院の中でも,これができるようになっていれば,この単位は取得と見なすことができるという方向に進むのではないかと考えています。
【三島主査】  ありがとうございます。堀田委員,どうぞ。
【堀田委員】  先般申し上げたことを,もう一度言うような形になるのですけれども,教育課程に関することですので,2点発言させていただきます。
 一つは,このフラッグシップというのが,フラッグシップ教育学部なのか,フラッグシップ教員養成単科大学の話なのか,あるいはコースの話なのか,フラッグシップ教職大学院の話なのかということによって,同じ議論ではできないことも,いろいろあろうかと思います。
 教員養成フラッグシップ大学という,これから免許を取る人にどうするかという話で言えば,免許法の現状の制約を外すというのは,難しいだろうという気がします。一方で,この間も申し上げたように,免許の科目は内容で整理されていますけれども,その内容をどういう学習環境で,どういう教育方法で教えるかによって,AIやIoTの恩恵を使いながら理科教育を学ぶとか,そのようなツールを使いながら道徳のディスカッションをしてみるとか,そのような体験を,一般の大学生にも本来はさせるべきだと私は思いますけれども,そのようなことをまず先にやってみせるようなフラッグシップ大学の教員養成であってほしいという願いがあります。
 そのためには,科目の羅列であるところの免許制度をすぐにいじる必要はなくて,その教育方法なり教育環境なりをむしろきちんと規制して,こういうふうにやるんだというようなことを大学では先んじてやっていただいて,そして,それを広く公表して,ほかの大学がまねしやすくするというようなことが必要なのではと思います。
 そのためには,教員養成大学の大学教育の場が,どれだけ新しいインフラに対応できているか。旧来のように集合型の大きな教室で,机椅子も動かせなくて,アクティブ・ラーニングは大事ですということを一斉講義でやっているような授業ではないような形に,すべきだと思います。理念を伝えるときは,それでよかったとしても,体験して,彼らが身につけていくということが,何より重要だと思います。
 今申し上げたのは,フラッグシップというのは,どういう単位を想定しているのか。単位というのは,教員養成なのか。教職大学院なのかというような話と,もう一つは教育方法の話です。この二つの話をくっつけた理由は,「フラッグシップ大学になりました。そこにはAIの科目を10個入れました」では,新しいAIに関する知識が10個増えても3年後には古くなる知識で,それでは何も変わりませんから,教員を養成するときの教育方法に,教育環境に大分踏み込む必要があると思います。そうすると,お金もかかるのではないかなと思っております。
【三島主査】  科目の数とかそういうことより,中身をどういうふうにするかを重点的に考えるべきであろうというようなことかと思います。戸ヶ﨑委員,どうぞ。
【戸ヶ﨑委員】  前回,私の申し上げたことを,たくさん入れていただいて,感謝申し上げます。そこに付け加えさせていただきたいと思います。先ほど参考資料2の中で,述べられていることに対して,若干,前回と重複してしまうかもしれませんけれども,申し上げたいと思います。4の括弧2の科学的手法に基づく研究開発の推進という中で,フラッグシップ大学の役割という視点での話が記述されています。我が国の新しい教育というものを創造する研究開発大学になるというようなことが,前回あったわけですが,その研究の基盤は何なのかなと考えたときに,大事なのは教育のデータの利活用がしっかりできるということなのではないかと思います。
 今,全国の学力・学習状況調査等についても,研究者に貸与するという取組が始まったということで,大変良い試みではないかと思っています。とはいっても,現在の日本の教育データというものが,言うなれば異なる指標をもって実施されていることが多く,膨大なデータを集めたとしても,データポータビリティーというようなものが確保されていないということがあり,正確な比較や参照ができにくいという現状があります。ですから,データを集めても質の向上になかなか活用できないという現状があるということが一つと,あとは個人情報保護法制2000個問題と言われている,個人情報やプライバシーの保護の観点,さらにはネットワーク等のセキュリティーの観点から,データの活用というのは大変リスキーなものであるという認識があって,我々教育委員会の立場だと,なかなか手が出せないという現状が一つあります。
 今後を考えていったときに,学習者の特性に応じた個別最適化とかテーラーメード教育といったものを実現させていくためには,データの標準化や個人情報の法整備をしっかりと進めていかなくてはいけないのではないかと思います。
 先ほどの参考資料2の中にもありましたけれども,イングランドのMIS(Management Information System)といったものに代表されるような,安全で信頼性の高い日本型の教育ビッグデータの管理運用システムといったものを早期に研究開発できるような大学であってほしいという思いがあります。
 併せて,例えば脳波による子供の集中力の可視化とか,AIによるつまずきの分析といったもの,医療とか工学の分野,さらには産業界と積極的に連携して,様々な教育のエビデンス自体の開発をするような,教育を科学することをリードする大学であってほしいというのが一つ目です。
 それからもう一つ,括弧1の社会に開かれた教育課程に関してですけれども,先ほど堀田委員からもありましたが,そこに記載してあるように「講義室が常時開放され,どの科目にも」とあって,来年度から御案内のとおり,小学校から順次,新学習指導要領が展開されていきます。その中で,社会に開かれた教育課程とかカリキュラム・マネジメント,そして主体的・対話的で深い学びという視点からの授業改善が,もう待ったなしで全国的に進んでいくわけです。
 そんな中で,そのような教員養成のカリキュラムということはもちろん,大学の教室の施設設備そのものが,本当に新学習指導要領に対応したものになっているのかどうかということなのです。
 フラッグシップ大学としてのもう一つの重要な役割というのは,我が国の教員養成全体を支える基幹大学であるという話が前回ありましたけれども,そのような役割という視点で考えたときには,学生一人一人がコンピューターを一人1台マストアイテムとして,十分に使いこなして,効率的な基礎学習や,また主体的・対話的で深い学びというのは当然ですけれども,PBLとかSTEAM教育などを日常的に学べるような整備環境というのが必要になってくるのではないかと思います。ある意味,未来の教室を先取りするような大学であってほしいと思っています。
【三島主査】  今のデータの活用,教育を科学するというようなところは,非常に重要だと私も思います。ありがとうございます。三村委員,どうぞ。
【三村委員】  先ほどの戸ヶ﨑委員の意見に関連してなのですけれども,これまで教育というのは,成果がいつ出るのか,すぐ出るのか,例えば10年後に出るかもしれないというようなことで,なかなか評価が難しいということが言われていた中で,エビデンスに基づくということは,大きな進歩だと思います。
 一方で,先ほど言われましたように,学習調査の結果をもとに施策の効果をいざ分析しようと思ったときに,様々な要因が多過ぎて,例えば教育学部は心理学の先生が主に統計専門なのですけれども,その先生には分析できないというような事態もあります。
 そのようなことを解決するために,現在,私どもの大学では,計量経済学の実証的な統計が使えないかというようなことで,アドバイザーを雇用しているのですけれども,エビデンスが重要である一方で,どのようにエビデンスを作っていくのか。また,エビデンスを作るのは,主に例えば行政とか大学ということになるかと思うのですけれども,そういったエビデンスを実際の教員が使おうとしているのかどうか。例えばアクティブ・ラーニングがいいということで,アクティブ・ラーニングを実施するとしても,アクティブ・ラーニングに,どのようなことが期待でき,どのような場面で使うと効果的であるかというようなエビデンスや理論を,まだまだ十分には活用できていないのではないかという思いを持っております。
 その意味では,このようなフラッグシップ大学においては,正確なエビデンスを作ることはもちろんのこと,それをいかに先生方に使いやすいようにしていくかということが重要なのではないかと思っております。
 特にこのSociety5.0というような先の見えないような時代ということでは,例えばこういうことができれば,その時代に役立つという,その「こういうことが」というのをあらかじめ教えることができませんので,日々の実践の中で,例えば課題を見つけるとか,それを理論や根拠をもって改善して振り返るというような一連のことができるようになることが,将来的でもありますし,4の一番下にある地域課題というのも様々なところで,自分が赴任した教育現場で,どう活用できるかというようなことを含めると,そういった力を養成できることも重要だと考えております。
【三島主査】  ありがとうございます。牧野委員,どうぞ。
【牧野委員】  今の三村委員のお話とも関係するのですけれども,これからの教員養成で,どういった教員を養成していってもらいたいかということについて,地域の現場の立場から申し上げれば,それは間違いなく,地域課題を一緒になって,教育者としての立場から考えていってもらえる,そういった先生方だと思うのです。
 では,今,そうなっていないのかというと,微妙です。といいますのは,例えば地域の様々な集まりの中で,先生方がその中に入り込んで,一緒になって地域のことを考えていくということができているかというと,そうでもないわけです。先生方というのは先生方だけでまとまって,どうしようかと考えているということが多いけれども,今の課題というのは,先生方の集まりだけで解決できるような単純なものではなくて,もっといろいろな方々の協力を得る中で,地域全体で人材育成をどうしていくかということを考えていかなければ,さっきお話があったように,Society5.0に対応できるような人材というのは,恐らく育成できないと思います。
 先ほどの話ではないですけれども,教室の中だけで,そういったSociety5.0に対応できるような人材が育成できるかといったら,私はとても無理だと思うのです。先生方にそれだけの能力を求めるのも無理だと思うのです。いろいろな皆さん方が,そこに集まって,地域の将来を担うような人材をどうやって作っていくかということを考えていける,その中に,普通に入っていけるような先生方,そういった先生方こそが,これからは大変重要になってくるというふうに思います。
 そういった意味では今,地域人教育を高等学校教育の改革の中でやっていますけれども,地域人教育に関わっている先生方というのは,非常にそういうことを重視されます。地域の中に入ってきて,普通に地域のことを議論して,どういった人材育成をやっていったらいいかということをみんなで一緒に考えようという姿勢が非常に出てきています。
 私はそのようなものが,これから非常に大事になってくるのではないかと思います。要は,答えが見えていないのですから,それをみんなで一緒に考えていこうよといった人間関係の構築をきちんとできるような先生を,どうやって養成していくかということではないかと思います。
【三島主査】  ありがとうございました。とても重要な点かと思います。若江委員,どうぞ。
【若江委員】  ありがとうございます。フラッグシップ教員養成大学が目指すべきことというのは,あるべき未来の教育を担える人材を育成していくことです。考えますと,産業界でも同じように未来の経済界を支える人材を育成していくということで,いろいろなことが取り組まれていますが,極端に違うのは,教員養成では,どうしても教育のこれまでと今というところに視点がおかれています。しかし,産業界の場合には,常にこれからという未来を考えて,やり方としても,変革を多くもたらしたようなケーススタディーメソッドをたくさん分析して,そこから,何が次につながるのかということを見つけ出していくという手法などが一般的でそれにはやはり,多様なステークホルダーが関わっています。今回のフラッグシップ教員養成大学には,単に教育の分野のことだけではなくて,教育に関わる多様なステークホルダー,それは保護者だったり,地域だったり,教育委員会だったり,いろいろなことに触れられるカリキュラム内容が必要になってくるでしょうし,そのための体制づくりも必要です。だからこそ,いろいろなステークホルダーが関われるような運営体制というのが,必要ではないかなと思っています。
 そして本日,堀田委員や戸ヶ﨑委員のお話をお聞きしていまして,私なりに産業界の関わりが見えてきたかなと思いましたのは,堀田委員からお話があった,どの部分でフラッグシップ化をしていくのかというところなのですが,教科については,私はよく分からないんですけれども,教育方法とか環境を整えていくというところでも,産業界が何らかの関与ができると思いますし,特にその場合には,一気に多くの大学に普及を目指していくということになってくると思いますので,その部分での連携が不可欠だなと思いました。また,戸ヶ﨑委員がおっしゃったように,データベースマネジメントをしていくというところであれば,収集をしたり,分析をしたり,活用をしたりというところにこそ,企業が入っていかないと,なかなか教育分野だけでは成し得ないのではないかという気がしております。
 研究開発とあわせて,これからのことを考えたときに,少なくともその三つのレイヤーで,民間との連携を考えていけるのではないかと感じました。
【三島主査】  ありがとうございます。水落委員,どうぞ。
【水落委員】  ありがとうございます。今,御意見の出ている,例えば課題を発見する力を伸ばしていくという意見や,地域の教育課題を解決していくということ,また,民間との連携を深めていくということ,ごもっともだなと思って聞いておりました。
 新たな課題を発見していく能力を伸ばしていくときに,これは本学の内容で恐縮ですけれども,本学教職大学院の実習は,学校支援プロジェクトといって,一般の地域の学校に入っていくのです。課題を抱えている学校の課題を,学生たちと現場の先生方が一緒になって解決をしていきます。その実習では,あらかじめ用意したカリキュラムで学生たちが学んでいくというのとは,少し異なっていて,最前線でこんなことが起きているのかということに一々直面することになります。
 すると,私も小学校や中学校の経験ありますけれども,私も経験したことがないようなことに出くわしながら,それをどうやったら解決できるか,そのときに民間の力をおかりしたり,新しい知見を一緒になって勉強したりということが出てくるのです。
 実習の単位うんぬんということも先ほどありましたが,実習の使い方を,例えば民間等に協力していただきながら行う方向でデザインしていくとか,一般の最前線の学校に行って学ぶことで,課題を発見しながらやっていくという形にしていくことで,この辺の改革というのは進んでくるのかなと思います。フラッグシップ大学の在り方の議論の一つに,実習もあっていいのではないかと思いながら,伺っていました。
【三島主査】  ありがとうございます。具体的なアイデアが出てきました。では両角委員,どうぞ。
【両角委員】  今,議論をずっと聞いていまして,どれも必要だなという感じで聞いてはいたのですが,堀田委員がおっしゃっていた,どの単位で何をするのかというところが,やはりとても重要なのではないかなと思っておりました。
 聞いていますと,フラッグシップ大学で先導的に,ほかではできないようなことをやるという話と,それはフラッグシップに関わらず,どこでもやった方がいいのではないかという話の両方が交ざっているような印象を受けました。例えば地域問題の解決であったり,データの活用も,本当に一部の拠点の大学でしかできないことなのか。私は,どこでもやってほしいような内容だと感じています。むしろ,こういったものに,学部のレベルなのか,教職大学院なのか,大学全体で指定するのか,コースなのかということにもよるかと思うのですけれども,従来とは全然違う,規制を外して大胆なことをやるとか,あるいは,先ほど教育環境や方法の方でというお話がありましたけれども,平たくいうとお金がかなりかかって,普通の予算の中では,試してみたいけれども,とても試せないということを,予算をつけるからやってくれという場として活用したいのか。いろいろなタイプのフラッグシップのモデルがあっても,いいのではないかなと思っています。
 特に,新しい環境や方法を試すということだと,そのようなことを一体誰が教えられるのだろうかという素朴な疑問がありまして,教えられるのであったら,少しの環境の工夫であれば,もうしているのではないか。したことなければ教えることも大変で,そういう意味で,民間の人材や,地域を活用しながらやっていくのでしょうけれども,そのようないわゆる実験的で,誰が教えられるかも分からないことであれば,一つの大学だけで実験するのでなく,幾つかで実験してみて,何が良いのか試行錯誤するような場が必要だと思います。同時に,大学でそういう環境を整えるだけでも駄目で,学校現場も少しずつ変わっていかないと,せっかく身につけたものを発揮する機会がないという問題もあるので,そのようなところの拠点的な学校というか,実験校みたいなものをどうつくっていくかということが,セットで議論されると良いかなと思って聞いていました。
【三島主査】  ありがとうございます。山口委員,どうぞ。
【山口委員】  両角委員がおっしゃったことと同じようなことを考えていて,堀田委員が,どの部分という問題提起をしていただいたので,頭の中が若干整理できたかなと思っています。皆さん,いろいろなことをおっしゃって,あれもこれもというふうに聞いて,そのようなものができるのかなと思いながら聞いていたというのが,正直なところなのですが,それをうまく部分ごとに整理してあげると,この部分ではどういうところで,とんがった大学あるいは教職課程をつくるのかという話ができるのではないかと。つまり,今までは総論で来たものの,これから一定程度,各論的なことをイメージしながらでないと,具体的にフラッグシップ大学の制度をつくれないなと思ったところだったので,そういう意味では,非常にいい整理ができそうだというのが一つです。
 それと若干絡むのですけれども,今,両角委員は実験とおっしゃったのですが,多分,実装を相当意識したというか,実装そのものをやる大学でもあるべきだという話になっているのかなと,私は勝手に思いました。研究開発から実装まで。研究開発の研究も,先ほど来のお話ですと,基礎研究もありそうですし,ステップで考えると,基礎研究があって,応用研究があって,パーツの開発があって,システム開発があって,そして現場への実装,社会実装になると,もう少し整理しなければ,本当にあれもこれもできるのかなという感じがしますし,どこでとんがったものを目指すのかという議論に,その辺の整理でなるかなと思っています。
 最後に,もう一点だけ申し上げますと,時間軸の話です。こういう大学を作ったときに,どのぐらいのタイムスパンで成果を見るかというのが気になっています。当然,世の中は変わりますし,時代の変革に見合った初等中等教育を目指すわけですから,ある意味,設定はしにくいところではあるのです。ですから,そういう意味では,社会の変革,時代の変革とともに,常に変われるような教育システムというものを目指す大学という話にもなるのかもしれません。いずれにしても時間軸がなかなか考えにくいなと思いました。
【三島主査】  ありがとうございます。かなり,まとめていただいたような御意見で,なおかつ,その時間軸は非常に重要で,教育の成果って一体いつごろあらわれるのかというのは,大学の教育改革でも非常に問われるところですので,そこのファクターも取り入れるというのも,私も賛成でございます。ありがとうございます。
 そうしますと,今のフラッグシップ大学における教育課程と教育研究について,いろいろな御意見をいただきました。それぞれに非常に重要ですけれども,そういうものを全て兼ね備えたものをではなくて,そういうもののどことどこを,自分の大学ではこんなふうにやってみるのだというようなことで,申請ができるようなものにしていくということが重要かなということを,今の山口委員にまとめていただいたようなところがございますけれども,そのほかに付け加えたいということがございますか。若江委員,どうぞ。
【若江委員】  今まとめていただいたように,どことどこに挑戦するというだけでは,今までと同じだと思います。どうしてもこれまで文部科学省の事業というと,この分野の研究校,この研究校というようにばらばらで,本来はそれをきちんと統合するべきなのにいつもそれをしないというのが,私のイメージですので,このフラッグシップ大学は,要素ごとの取り組みではなく全ての要素に総合的に取り組むという大学も,一つは絶対に必要で,その事例は重要だと思います。
【三島主査】  ありがとうございます。どれとどれにチャレンジするかというところは,柔軟性はあっても,どういう人材を育て上げるかというところで,そのための教育の仕方ということでは,一つのストーリーがしっかりできていないと,「この部分だけやります」では,駄目だということですね。加治佐主査代理,どうぞ。
【加治佐主査代理】  大学のどの部分,または全部なのかということを決めていかないと,話が進まないということは全くそのとおりだと思うのですが,教員養成大学・学部の現実を見たときに,旧来の制度や基準の中で養成や現職教員の教育をするという機能は外せないわけです。そして,それに加えて,こういう研究開発的な,チャレンジングなものをしていくということになります。
 そうすると,そのチャレンジングな部分というのは,やはり大学の一部分になるんだと思います。一部分がどの割合かは,ともかくとして,大学の持っている優れた資源は,そこに当然,投入することになると思います。しかも,それが一大学だけではなくて,複数集めてこないと,多分できないです。これは外部資源も,外部人材も当然,そこに関わっていくことにはなると思います。それから実験校的な学校も,附属になるのかもしれませんが,作っていかなければいけないというイメージになるのかなという気がします。
 ですから,大学間の連合とかネットワーク作りというのも,併せて考えていかないと,なかなか難しいのかなという気がします。そうでないと,現実化しないと思います。ただ,そこに何らかの一定のミッションを与えることと,後から出てくるマネジメント,特にガバナンスへの規制というのは必要ですし,かつ一定の支援がないと,なかなか現存の力だけでは難しいかなという気はしています。
【三島主査】  ありがとうございます。堀田委員,どうぞ。
【堀田委員】  今の加治佐主査代理の御意見に僕も賛成です。先ほど両角委員がおっしゃったこととも関係するのですが,そしてまた,私が前回申し上げたことでもあるのですけれども,今,日本の教員養成には課題があって,その課題をどうするかというのは,もう有識者会議でも,ある程度,方向は出されていますし,各教員養成大学の学部等でも,いろいろな苦労をされて,工夫をされて,そしてそれはグッドプラクティスとしても出ていて,それぞれ自助努力をされています。
 そういうやり方だけではなかなかできないことを,先んじてやってもらう研究開発学校のような大学を指定して,そこに,お金も含めた資源や,あるいは規制緩和という何らかのインセンティブみたいなことを与えて,現行の枠組みを余り変えずに工夫でできる範囲と,新しいものを投入し,新しい仕組みでやらないとできない範囲とを峻別して,それを先んじて先導的にやっていただくようなところこそ,フラッグシップというべきだと思います。何か教員養成大学のたくさんうごめいている課題を全部,フラッグシップが解決するみたいなことは無理だと思いますし,そういう観点から,フラッグシップには特定の課題,ミッションを与え,そして何らかのインセンティブを与えるという形で,例えば2年とか3年とかで,ここまで成果を出してくださいとするのか,5年かけて,こういうことをやってくださいとするのかは課題のサイズによって違うと思いますが。それを,最初は,ある部分でやるかもしれないけれども,できるだけ教員養成学部内全体にそれを広げるにはどうするかとか,他大学に広げるにはどうするかというところの道筋までやるならば,5年といったことも考えられます。何かそういう形の与え方で,フラッグシップ大学も一様でないという可能性が,十分あるなと思っております。
【三島主査】  ありがとうございます。松田委員,どうぞ。
【松田委員】  そういう意味では,このフラッグシップ大学が,教員養成の高等教育機関のシステムの中で,どういう機能を持つかという議論と,そもそも教員養成という大学は,どういう機能を持つべきかという議論が,混同しているところがあると思いまして,これは後ほどの議論にもなるのだと思いますけれども,その点の整理が必要だと改めて思いました。
【三島主査】  ありがとうございます。牧野委員,どうぞ。
【牧野委員】  今の堀田委員のお話も,そのとおりだと思うのですが,結局,そういったフラッグシップ大学の評価を誰がどういうふうにするかというところが,非常に重要になってくると思うのです。
 有識者会議のときには課題をどう解決するかを大学で考え,グッドプラクティスが出てきています。では,そのグッドプラクティスをどう評価するかという話になったときに,前回もそうでしたけれども,なかなか改革が進んでいないところもあるようですので,むしろ一点突破,ブレークスルーを狙って,フラッグシップ大学というものを検討していくという考え方もあるのではと思うのです。
 だから,そのときにどういうふうに評価するかということをある程度しっかり決めておかないと,結局,あとは大学の方で,フラッグシップ大学としてやってくださいよというだけでは恐らく,その後の評価が,本当にこれでよかったかどうかという話になってしまうと思うのです。
 ですので,評価基準をきちんと決めて,どこまでできていて,何ができていないのかということを確認する必要があるかと思います。フラッグシップ大学になったら,そのままということはないというのは,まさにそういうことだと思うのです。あなたの大学は,ここまでだったねという話にして,フラッグシップの試みは,ほかの大学にやってもらうという話にするのかどうかは,評価の世界だと思うのです。そのようなことも考えていかなければと思います。
【三島主査】  初等中等教育をこれから変えていかなければという非常に大きな変化に向かうわけなので,フォローアップみたいなことがやはり必要かなというような気は,確かにいたします。
 今,文部科学省で動いている卓越大学院プログラムのような,フォローアッププログラムが最初からできていて,現地を見に行くとか,どんな成果が出ているかを報告することもあるので,その辺も確かに重要なことだと思いました。
 それでは,時間が押してまいりました。最初の議事の教育課程と教育研究については,ここで一度まとめさせていただいて,次回にまたブラッシュアップが必要であればという形にさせていただければと思います。

(2)事務局から,教員養成のフラッグシップ大学の大学教員の養成・採用・研修について,資料に基づき説明があり,その後,意見交換が行われた。

【三島主査】  それでは,本日の議題の二つ目でございますが,教員養成フラッグシップ大学における大学教員の養成・採用・研修について,検討してきたいと思います。
 まずは事務局から,資料について御説明いただいた後,自由に御討論いただければと思います。よろしくお願いいたします。
【髙田教育人材政策課教員養成企画室長】  資料がたくさんありますので,ポイントだけ説明したいと思います。
 まず資料3でございます。議論するに当たって,教員養成大学の大学教員の在り方というのが,過去にどのように議論されてきたのかということについて,振り返りながら,現状についてのデータを御説明したいと思っております。
 まず,少し古くなりますが,平成13年の国立の教員養成系大学・学部の在り方に関する懇談会の中で,大分変わっている部分もございますが,例えば教員養成学部の教員の在り方ということで,その当時は教科専門科目担当の教員,いわゆる理学部とか工学部,あるいは文学部出身の教員が,それぞれの専門分野について教えているというのが,当時教員全体の6~7割ということでございますけれども,現状では5割程度になっております。これは過去20年ほどの改革で,教職重視の姿勢が打ち出されたり,あるいは実務家教員を積極的に雇用していくという中で,この6~7割という割合が5割程度まで下がっているということでございます。
 そういった中で,教科専門の,例えば生物学とか,あるいは国文学だとかを教えていく中で,単に専門分野を教えるということではなくて,それを実際の教育で使う教員に,どう学校の実践と関連付けて教えていくかということが,ずっと課題になってきたということでございます。
 2ページの丸4に,教員養成学部にふさわしい教員の確保というところがございます。そこでは,教員の意識改革だけではなくて,教員養成学部にふさわしい教員をどのように確保していくのかということが記載されておりまして,当時,平成8年ごろに教員養成大学の博士課程というのができてきて,在り方が期待されるというようなこともございました。
 下段に,丸の「したがって」というところがございます。教員募集時に,きちんと必要とされる資質能力や役割を明確に示していくべきではないか。あるいは,採用後に教員養成学部の教員として取り組むべき教育研究の内容等について,絶えざる自己研鑽を求め,教員養成学部にふさわしい教員を確保していくことが必要であるとございます。
 そういった中で,例えば教員を採用する際,免許状の有無,教職経験や実践の経験を課したり,また採用後に附属学校での研修といったものを課していってはどうか。さらに,その後ではファカルティ・ディベロップメント(以下,「FD」という。)といったような在り方について,当時かなり具体的なことが提言されて,それに基づいて,ここ10年,20年,教員養成学部は取り組んできたというところでございます。
 次のページに移りまして,当時,まだ実務家教員というのが,それほど入っていなかった時期でしたので,現職教員や指導主事を積極的に活用していくことが必要ではないかといったことも,ここでは述べられておりました。
 4ページに移りまして,こちらが平成29年に出された国立教員養成大学・学部,大学院,附属学校の改革に関する有識者会議の報告書でございますけれども,ここでは更に進んで,教科専門の授業の在り方だけではなくて,教科専門と教科教育をより一体化させて,あるいは教職とも関連付けるというような,さらに授業内容の高度化,発展を求めているようなことが指摘されております。
 そして丸3で,実務家教員の実践研究論文というところがございます。この中ほどで,過去,実務家教員をどんどん入れていくような改革がなされていたわけですけれども,一方で,実務経験が豊富な教員が,必ずしも優秀な実務家教員としての高い指導力を発揮できているのかという指摘もあるということで,教職大学院の実務家教員については,実践だけではなく,理論をはじめとした資質も求められるのではないかということが,ここで記載されております。
 そして,次のページでは,一方,研究者教員について,現場経験等が必要だということ,あるいは,例えば実務家教員とチーム・ティーチングを行ったりするような取組をしてはどうかといったことも記載されております。
 5ページの最後の部分でございますが,教職大学院についての対応策ということで,ここで学びのサイクルの普遍化ということで,教職大学院で学んだ後に,学校現場に戻って,また数年後に博士課程で学んで,更に学校現場を経て,教職大学院の教員として教鞭をとるというような,そういったサイクルみたいなものを,更に進めるべきではないかというようなことがございます。
 次のページで,前回も議論がありました教職大学院の上に置く,教職修士の上の実践を重視した学位として,Ed.D.というようなものを具体的に検討していくべきではないかというようなことが提言されているところでございます。
 次の7ページでございます。ここは,教員養成に限らず大学一般に言われていることでございます。中央教育審議会の昨年の答申ですけれども,この中で,学外資源の活用という観点から実務家や,多様な視点からの教育研究という観点から若手,女性や外国籍といった様々な方が,登用されるようにしていこうということや,教員の多様性を確保していくということともに,必要な研修や業績評価,教育研究活動を行うことができる環境の整備などが提言されております。
 また中ほどで,クロスアポイントメントも積極的に活用していこうというようなことが出ております。
 さらに次のページの最後の部分でございますが,例えば実務家教員の育成プログラムを開発・実施するとともに,その修了者の情報に係る共有の在り方を検討するというようなこと。先ほど,教職大学院で学んだ後に,学校現場に戻って,また数年後に博士課程に学んで,更に学校現場を経て,教職大学院の実務家教員として教鞭をとるといったサイクルの話をいたしましたが,そのようなことを意識的に計画的にやっていくことかと思いますが,そのような提言がなされております。
 次に資料4でございます。これは御参考までですが,教科専門,教職専門とか,教科教育といった教員の実際の数と割合について書かれているもので,大学によって大きな違いがあるというのが,分かるかと思います。恐らく,そのほかという先生が多いところについては,教員免許を取らなくてもいい課程があるというようなところが,そのほかの先生が多いところになっているのではないかと思っております。
 資料5に移りたいと思います。資料5が,教職大学院の教員に関する実態調査ということであります。まず,教職大学院については,実務家と研究者の教員割合が半々に近いような形になっております。年齢の部分を見ますと,60歳以上の実務家教員というのが半数以上というのが,今の教職大学院の実態ということになっております。
 そして,学位の保有状況のところでございます。現在の実務家教員について,学士の割合が半分以上という形になっておりまして,先ほどでいう実務家教員についても,より理論的なものを学んでいく必要があるのではないかという有識者会議の提言が出ておりますが,それは,これを受けたものかと思っております。
 次のページに移りまして,実務家教員については,退職教員の割合が44%ということになっておりますけれども,その他,転職教員とか,あるいは交流の教員という形で,教育委員会から交流人事として採用された人や附属学校の教員などが,これに当たります。
 このその他の教員の内訳が,文部科学省との交流人事が1名,民間企業の実務家が1名ということで,当初,例えば教員以外の実務家というのもあり得る,例えばスクールカウンセラー的なことだとか,スクールソーシャルワーカー的な人たちも,入るのではないかということはあったのですけれども,今のところ,教員以外の実務家というのは,ほとんど入っていないというのが現状でございます。
 また,実務経験年数についてですけれども,30年以上の実務経験を持っていらっしゃる方が54%ということで,おおむね退職又は定年退職直前に転職されたという方が,かなり多いというのが今の実務家の状況でございます。
 次に,資料6-1,6-2については,東京学芸大学の例と兵庫教育大学の例をまとめたものでございます。こちらについては,詳しく申し上げませんが,東京学芸大学の1ページ目のところに,教員構成というのがございます。東京学芸大学を例として挙げましたのは,いわゆる伝統的な教員養成大学というのは,恐らくこういう感じだろうということでございます。一般学部・大学院出身の方が6割程度というような形で,その他を教員養成系学部・大学院の出身の方や,非教員養成系の教育学部の方たちが入っているというようなところでございます。それと特筆すべきこととして,教員養成系学部・大学院を卒業した中で,博士課程を持っている人が18人というところでございます。
 東京学芸大学についてはこの後,3ページ目のところに,クロスアポイントメント制度でAIの関係者を採用して,平成31年度から取組も始めたということが,特筆すべき事項として書いております。
 その他,その後ろの方に実際のFDやスタッフ・ディベロップメント(以下,「SD」という。)の事例などをつけておりますので,後で御参考として見ていただければと思います。
 資料6-2に移りまして,これは兵庫教育大学の例でございます。兵庫教育大学は新構想大学といいまして,現職教員の再教育,リカレント教育を熱心にやる大学ということで,設置目的で出されたところですので,その影響もあるかと思いますが,比較的,教職の先生が多くなっているというのが,この表からも分かるかと思います。一般学部・大学院出身者が半分以下になっておりまして,教員養成系の教員たちが多くなっているという大学でございます。
 2ページ目のところに,特にその関係として,例えば教授や准教授を採用する際に,1年以上の実務経験を有することなどを条件としたり,さらに助教の場合では,もし実務経験がない場合には,一定期間以上の研修というのを課すというようなことを採用の段階で行っているということでございます。
 東京学芸大学は,例えば免許を保有していることが望ましいとか,あるいは実務経験といった実践をしていることが望ましいというのも,最初の基準に入れたりしているようなところもございます。
 続いて,資料7-1と7-2でございますが,こちらは東京学芸大学の博士課程と兵庫教育大学の博士課程の状況をまとめたものでございます。
 東京学芸大学が今,定員が30名,兵庫教育大学が36名となっております。
 こちらも後で御確認いただければと思いますが,参考で,博士論文をつけておりまして,こういった研究をしながら,博士課程を持って,最終的に現場に戻ったり,あるいは大学教員として採用されたりする方々がいるということです。
 最後の方に,修了生の就職状況などについてまとめた資料がございます。東京学芸大学の場合は,これまで400名以上が修了しておりまして,うち300名程度が大学で教員として働いているというようなことでございます。
 兵庫教育大学については,これまで320名が修了しておりまして,うち165名が大学などで働いていると。兵庫教育大学の特徴としては,もう一回,現場に戻っているという方の割合が非常に多くなっているというのが一つの特徴で,恐らく入学している方も,現職の学校現場の方々がかなり入っているというのが,一つの特徴ではないかと思っております。
 また,資料8でございますが,大学教員に関係するグッドプラクティスを参考でつけております。説明は割愛させていただきます。
【三島主査】  たくさんの資料を用意していただいて,ありがとうございます。
 それでは,今の御説明に対しまして御意見,御質問等がございましたら,御発言いただければと思います。戸ヶ﨑委員,どうぞ。
【戸ヶ﨑委員】  前回も実務家教員のことについて申し上げたわけですけれども,先ほどの資料3の4ページにありますように,実務経験が豊富な教員が,必ずしも優秀な実務家教員として,高い指導力を発揮できる訳ではないという御指摘ですが,これはもっともだろうと思います。前回も述べましたが,先ほどの資料の5番にもあったように,教育委員会や学校で勤務する方々や,校長が定年間際になって,又は定年した後に,教職大学院に実務家教員として就職したときに考えられることは何かというと,言葉は悪いですけれども,自らの教員としての成功経験を一般論として押し付けてしまったりとか,又は時代錯誤というのでしょうか,自らの経験則とか教育勘──この教育勘の勘というのは,観察の観ではなくて,勘違いの勘なのですけど,教育勘を押し付けて──少し言い過ぎかもしれませんけれども,往々にして,学生にそのような指導をしてしまうという危惧が考えられると思います。
 そのような実務家教員だからこそ,新しい社会やSociety5.0の時代を考えてもらわなくてはいけないだろうし,社会の変化に敏感であってほしいと思います。過去の経験や,自分の勘といったもので指導することなく,一刻も早く,エビデンスに基づいたりとか,社会の変化を踏まえて指導できて,さらには実践の研究論文がまとめられるようになってもらわないと困ると思いました。
 併せて,先ほど水落委員から御説明があった取組が,非常にすばらしいと思いました。学校現場に出ていき,最前線の学校現場の中で起きている多くのことを学んでいくというこの取組は,正にそういうところのコーディネーターになってもらうべきなのだろうなと思うのです。
 というのは,今,日本全国どこの学校でも多様なニーズというか,発達障害とか,外国人の子供に対する対応とか,不登校とか様々な課題を抱えていると思います。そのような中で,これは教員だけの問題ではなくて,校内の様々なスタッフとかコミュニティスクールのように外部との関わりといったものを,うまくコーディネートしていかなければならないのです。そのような力を求められるわけで,自分ひとりだけで何か解決するというわけではありません。そのような中で,正に実務家教員が課題を見つけさせて,その課題を自らどう解決していったらいいのかということを,それこそ企業との連携とか大学との連携とか様々な知のリソースを,その中でコーディネートできるような学びというのでしょうか,教員のプロジェクトベースの学びもコーディネートできる役割がこれからの実務家教員に強く求められるのではないかなと感じました。
【三島主査】  ありがとうございます。水落委員,どうぞ。
【水落委員】  今,戸ヶ﨑委員からお話のあったこととも関連するのですが,エビデンスに基づいてという話があったときに,学生たちが言う言葉ですけれども,いわゆる大御所の先生が大学に来て行う授業というのは,武勇伝に満ちているわけで,「エビデンス俺」とか「エビデンス大御所」と言われていますけれども,その授業でSociety5.0に対応するか。現在に対応するのかという話もあるくらいだと思うのです。実際に最前線の学校に行って,「あ,こういうことが起きているのだ」ということに気がつく能力というものが,これからの教員養成大学や,もちろんフラッグシップだったらなおさらだと思いますけれども,大事だと思うのです。
 目の前で起きていることがきちんと見えて,問題を認識し,それにはこういう先行研究があって,こういう対応策があり,例えばこういうことが考えられるというように,複数の選択肢を提示できるような教員が必要になってくると思うのです。新しい問題に対応し,その新しい問題自体は初めての経験だったとしても,様々な新しいものに対応した経験を持っていて,それを学術研究と融合させて解決した経験があるということが,次の新しい課題にぶつかったときに,対応可能とする力になるのだろうと思うのです。
 ですので,今の議題に関わっていけば,大学教員の養成・採用・研修ということであれば,フラッグシップ大学の教員にも基準が必要で,それは,先の有識者会議で示されたように,実務家教員であれば,学術研究との融合ができている教員,研究者教員であれば,現場での教育実践との融合ができている教員,こういう教員が,フラッグシップ大学の教員としてふさわしいのではないかと思います。
 ただ,私も教職大学院の設置審査をやったことのある人間として申し上げると,そういった人間は非常に少ないです。単独では,そういったものは難しいので,クロスアポイントメントということが必要になるでしょうし,そういう教員でフラッグシップ大学を認めるとなれば,先ほど加治佐主査代理がおっしゃった連合やネットワークが重要になるかと思います。複数の大学で合わせていったときに,そういった教員が何人にもなるので,フラッグシップ大学として,連合として認められるような形作りというものが,できるのではないかと考えています。
 Ed.D.を出すような資格というのも,Ph.D.の「マル合」と同様に,フラッグシップにも,教員資格というものが必要なのではないかなと思います。
【三島主査】  松田委員,どうぞ。
【松田委員】  今のお話を伺っていて,第2回で,協働するとかコラボレーションしていくというようなことも,テーマとして上がっていたと思うのです。そのことと少し関連させて言いますと,フラッグシップ大学というのが,どういう役割を担う必要があるのかということから考えたときに,大学,あるいは,学部等の組織体の戦略性がはっきりしているというか,ある種,こうあってほしいという働いてほしい役割というのは,物すごく明確だと思うのです。
 そういう意味では,大学ないしフラッグシップ組織体がチームとして動けるということが,非常に重要ではないかと思っていまして,そのときの,チームというのは逆に,凸凹とか穴ぼこがあるネットワーク関係でないと,チームとしての力が出ないのではないかと思うのです。
 先ほど,本学の例がありましたけれども,従前,本学は,教員養成に関しては批判も受けていて,いわゆる教科専門とか,先ほどの区分でいうその他というような先生方がたくさんいらっしゃって,各学問領域の研究をされているということが,教育にどういう役割を持っているのだということの接点を探せないままに,教育や研究を行っているのではないかという批判がありました。
 最近,本当に大学改革が進んでいまして,今般改組した教職大学院においても,チーム・ティーチングで,そういう方々が教科教育の先生方,あるいは他の先生方とチーム・ティーチングで教えるというまでに,非常にドラスチックに変わってきています。その中で,反発もやはりあります。
 しかしながら,そういう多様性の中でも時間を重ねていくと,戦略の共有を通して,協働,コラボレーションという力が出てくるのではないかと,とても期待しているところがあります。
 そういう意味では,Society5.0というのが分からないことへの取組だとすればするほど,実はいろいろな領域からの力を合わせる動きというものが,大学にとって必要な気がしています。ですからむしろ,一人一人の条件を考えていくというのも大事なことだと思うのですけれども,採用後の大学内でのFD活動,あるいは大学内での研究活動の在り方を通して,ある種,複眼性のある教員というのでしょうか,今こそ,ダブルメジャーのような,そんな教員がしっかりとタッグを組めていけるというような体制作りが必要かなと感じています。
【三島主査】  チーム・ティーチングをだんだんやるようになっているけれども,反発も強いというのは,先生方からの,という意味ですか。
【松田委員】  これが具体例ということではないのですけれども,例えば,教科専門の領域で研究されている先生がいらっしゃって,各教科の「教科内容」という形で教育に入っていらっしゃいますが,そういう方々は教科教育専門の先生方とチーム・ティーチングをするとなると,教職大学院においても,従来までのように御自身の研究分野を系統立てて追いかけていくような授業にはならないということから,教育とか授業の教材というところのフィルターをかけて,話をしていかないといけません。そのあたりで,研究としてはストレートではないという,ストレスがあるのではないかと感じます。
【三島主査】  なるほど。牧野委員,どうぞ。
【牧野委員】  第2回でも,教員の就職率が低いようではフラッグシップ大学として駄目ではないかという話で,少し議論させてもらったのですけど,その後,先生方から,そうはいってもなかなか大変なのですという話もお聞きしました。
 私は,そもそも今の大学に入ってくる生徒の皆さん方の選び方まで,さかのぼっていくような話ではないかなという気がしています。もっと言いますと,高校と大学がどう連携して,教員を育てていくかというところや,大学入試の在り方自体の話までいくと思うのです。
 つまり,偏差値で大学を選択して入学した学生が,民間企業に,こっちの水は甘いよと言われて,そっちに行ってしまうという状況では,今のフラッグシップのような大学における教員養成というのは,やはり難しいと思うのですよ。
 そういう意味でいくと,ある程度,志を持って,先ほどからお話が出ているように,今までのようにテキストを使って,答えのあることを教えるような教員像ではなくて,むしろ,みんなが,課題は何なのだろうかと,まさに探求力をつけていくとか,さっき申し上げたような人間関係構築力をつけていく,あるいは事業を実際に立ち上げていく事業構想力を培っていく。そのような力を身につける。そのためには人を説得するためのプレゼン力をつける必要もあります。しかし,今までの偏差値教育ではなかなか,そのような力がつけられなかった。そういった力をこれからつけていかないと,Society5.0に対応できる人材は育っていかないということが,ここでずっと議論されていると思うんのです。
 だとすれば,そういった力をつけていくための最初の入り口から変えていかないと,幾らその後の課程で頑張っても,結局,教員就職率が6割くらいに留まる結果になりはしないか。それでは,一体何をやっていたのですかね,という評価になってしまう。ここはやはり本当に大事な指標だと私は思っています。
【三島主査】  私がおりました大学でも,やはり学生が何をしたくてきたのかが,よく分からないし,将来,何をしようと思っているかも言えないという状況がありました。そこはやはり教育の効果をすごく下げてしまいます。若江委員,どうぞ。
【若江委員】  今の松田委員のお話は,ごもっともだと思いました。私は少し別の観点ですが,教員養成にかかわる大学教員の採用というのは,欧米型になっているのだなと少し意外に思ったところがあります。
 その前に,資料3,4,5で御説明いただいて,ショックだったのは,平成13年にこれだけのことの提言がされていながら,17年かけて同じ状況なのかということです。もちろん平成29年にも提言をされているのですが,これは民間では考えられないことです。平成13年に,これだけ話し合われたにもかかわらず,なぜ今また同じことを繰り返しているのかというショックもございました。
 本題は,採用のところでして,資料にもありますように,教員の募集時に資質の明確化をするということが,平成13年のときにはっきりとうたわれていますが,これが,日本の産業界では,実は成し得ていません。今までは要するにメンバーシップ型の採用,人事採用ですので,新卒で採用して,そこから丁寧に育てていって,いろいろなことをマルチタスクでやらせながら,結果的に今,産業界で問題になっているのは,専門性がないために,大きく変化していく時代に適応できる人がいないので,大量リストラというようなことにもなってきているわけです。
 でも,今のように専門性を明確にすることで,欧米のようなジョブ型の採用になってくるので,下からの積み上げではなくて,横軸で,今必要な人を今採用していくようなことが,大学の教員採用のところでは既に取り組まれているということを,これは一つ朗報だと思いました。
 ただ,それを実施するときに,各委員からどんな基準でというお話がありましたように,今,必要なところを埋めるだけではなくて,先のことを考えて,どんな教員を採用していくのかという,まさにガバナンスの問題に関わってくるのだろうと感じました。
【三島主査】  ありがとうございます。では加治佐主査代理,どうぞ。
【加治佐主査代理】  フラッグシップ大学をきっかけにして,教員養成を行う大学教員の資質能力を向上させるということだと思いますが,教職大学院ができたことが一番大きいわけですけれども,今おっしゃったように,平成13年の国立の教員養成系大学・学部の在り方に関する懇談会のときから言われていることですが,実務経験を持った方,実務性を持った方を大学教員にしようということで,ずっと来たわけです。これは大変良い流れだと思います。
 ただ,それはそれで結構なのですが,同時に,研究開発が本当にできる優秀人材をこの業界に引き込んでこないと,多分無理です。実はこういう立場でいろいろ仕事をしていると,どういう人材が大学で貴重かというと,教育実践がすばらしく,学生の授業評価が高い教員というのは当然すばらしいわけです。ただ同時に,大学が改革するためのいろいろな構想をつくらなくてはなりません。そのための研究もしなくてはなりません。そういうことができる人材が必要なのですよ。
 あえて言いますが,そのような人材が必ずしも実務経験があるからすばらしいということではないのです。むしろ,最近は就職難もあって,若手人材が非常にすぐれてきていると思うのですけれども,そういう方は必ずしも経験はないですが,かなり研究を積んできて,博士課程まで行って,博士号を取得して,大学に来られるわけです。教員養成大学にマッチして,新しいアイデアとか構想をいろいろ出します。そういう傾向を最近,非常に感じているのです。
 そういう人材をたくさん入れていく仕組みをつくらないと,フラッグシップ大学は一時的にはできても,その成果がすばらしいものになって,それがまたほかの大学に波及するようになるかというと,難しいのではないかと思います。
 言いたいのは,この業界に優秀な人材を入れる方策も同時に考えないと,難しいかなと思います。例えば産業界から入ってくるべきだとありました。そのとおりですが,現状で,そんな優秀人材が来るとは思えません。CSV=Creating Shared Valueで,教員養成に企業人が携わることは,その企業価値を上げるからやるとおっしゃいますけれども,そういう人もいると思うし,そういう企業はないわけではないでしょうけど,一方で現実的に,待遇面とか,そのキャリアが次にどう生きるかとか,そういうところまで明確にしないと,難しいのかなと思います。具体案があるわけではないのですが,そういうことも考えています。
【三島主査】  三村委員,どうぞ。
【三村委員】  今までの委員の皆様の御意見と関連するのですけれども,松田委員が言われたように,チーム・ティーチングを,実務家教員と研究者教員で行うと,かなり摩擦が起きます。実務家教員からは,現場のことが分かっていない研究者教員がこんなことを言っているとか,一方で,研究者教員からは,本当に経験だけで,理論が全くないというようなところで摩擦があるのですけれども,どちらも歩み寄る必要があると思います。
 例えば資料5のところで,実務家教員がダブルカウント算入しないという方がほとんどだったと思うのですが,算入しようにも,業績がないために,課程認定が通らないというようなことが起こっていますので,実務家教員にも実践の研究業績を残していただく,あるいは,本学では教職大学院の研究者教員は,教育実践の論文を必ずつくるようにというようなことを言っています。
 先ほど加治佐主査代理も言われたように,実務経験があるから,いい教え方ができるということではなく,研究者教員の中でも,現場にかなり寄り添って,柔軟に対応できる教員というのはいますので,実務経験の有無だけではないと思うのですが,ただ,やはり現場を知るということはとても重要です。教職経験のない先生が来られたときに,附属学校に行っていただくというのも一つの方法だと思うのですけれども,現在の教員の年齢構成から考えると,附属学校においても,若手の先生が増えている中で,そこに行ったからといっても,なかなか力がつかないので,例えば県とか地域の教員研修といったようなところに,もともと参画している人と一緒に参画するとか,若手の授業作りを一から指導案を作って,授業実践して,振り返るというような過程を経験していただくような形で,現場を実質的に知るような研修が研究者教員にも必要であるし,そういう中で,例えば実務家教員も一緒にすることで,こういうところで理論を使えば,さらに教育実践の質が高まるというようなことをお互いに実感できるような研修ができればいいのかなと感じています。
【三島主査】  堀田委員,どうぞ。
【堀田委員】  実務家教員あるいは研究者教員の在り方について,様々な意見や考え方があることは承知できるのですけれども,一方で,今回のフラッグシップ大学の検討ワーキンググループの設置目的からいくと,これはSociety5.0なる,これから予測はつかないが,技術によって大分ドライブされてしまうような社会を前提としたときに,そこに人口減少も関わって,社会の形が変わっていくという前提のもとでの学校教育の在り方,それを支える教員の育成ということを考えると,そこでいう実務家は,フラッグシップ大学においては,必ずしも学校現場の実務家とは限らない。Society5.0に関することの実務家かもしれないし,例えばプログラミングをずっと研究してきて,子供向けのワークショップを世の中でやっている人はいるわけで,そういう人を例えば客員としてやるというようなことをやればいいのではないでしょうか。むしろ,すべきではないでしょうか。そこでいう実務家は,いわゆる今までの教員養成あるいは教職大学院で言われてきたところの実務家教員とは,少し違う実務家を定義しないと,このフラッグシップの場合は,設置目的からいって,かなわないのではないかというのが私の意見です。
 それを実現する際に,これから人口が減少していく中で,思い切ってフラッグシップ大学に移ろうとした方のキャリアパスを考えると,いろいろ難しいところはあろうかと思いますので,副業の時代ですから,クロスアポイントメントをかなり積極的に取り入れて,やるべきだと思いますし,それに対する何らかの支援,それは制度的支援か資金的支援かは,いろいろあると思うのですけれども,そういうことを枠組みとして明確にしていくような形にしていかないと,クロスアポイントメントというのがあるのだけど,どうすればいいのかわからないというふうになってしまうのではないかと思うので,そういうことのやり方の例示をすべきかと思いました。
【三島主査】  ありがとうございます。水落委員,どうぞ。
【水落委員】  今の堀田委員の意見に私は,賛成です。実務家教員がいいとか研究者教員がいいとかということではなくて,加治佐主査代理もおっしゃっていましたけれども,実務経験がなくても,教員養成大学ですばらしい実践や研究をしている先生はいます。理論と実践の関係を言ったときに,架橋,往還,融合という段階があると言われます。この融合の経験があるかどうかだと思うのです。どっちかの経験があるとかではなくて,この融合の経験があるかどうかということが,決定的に大事なのではないかなと私は考えています。
 したがって,実務経験がなくても,現場での実践研究をやったことのある研究者教員であれば,活躍できるのではないか。そういうことが大事だと思います。
 それはもちろん民間の方でもいいですし,研究者の方でもいいですし,もちろん実務家,元小学校の先生でもいいと思います。そういう基準で採用していき,そういう先生に何らかのインセンティブを与えていけば,例えばさっき資料で出てきたグッドプラクティスのような短期間で成果を見るという形で,フラッグシップ大学がやられるのとは違って,ある程度,長いスパンでやるフラッグシップ大学というものが出てくるかなと思います。
 もし,それが実現すれば,学生にとっては非常に有益だと思います。学生が,来年度入学の人からは,このカリキュラムでは駄目ですというようなことで,ころころと変わっていったら,これは大変危険な話になると思いますので,そういった基準で採用して,ある程度,長いスパンで見ていきフラッグシップを目指していくというのが,いいのではないかと考えます。
【三島主査】  研究で非常に優秀な先生でも,授業がうまいか下手かというのは全然違うわけで,アメリカのトップ大学は,物すごく講義のうまいシニアの先生に,1年生の講義をやらせて,その学生たちが非常に科学技術なり何なり興味を持つように持っていっていますが,日本の大学はそういうところまで配慮していないので,講義がつまらないという学生が結構いるのです。その辺も一つ重要なファクターだとは思います。ほかに御意見ございますか。山口委員,どうぞ。
【山口委員】  先ほど来,多様な教員をチームとして,置くということになりそうなのですけれども,多様性というのは便利な言葉で,最近やたら使われるものの,往々にしてばらばら感をもたらします。感じではなくて,実際ばらばらになっている場合がほとんどです。そのときに,松田委員が言われたチームとしてのチーム力といいますか,それをどうやって作り上げるかというのが,言うのは簡単で,やるのはすごく難しいですけれども,そこに尽きるのかなと正直思いました。
 そんな中で,本日の資料ですと,大学教員,教員養成系の大学の教員は,教員養成系の学部を卒業し,実務も経験し,教職大学院で最後,学位を取ってという例をおっしゃったのですか,そのときに若干心配なのは,これからの時代,それでいいのかという話があります。
 というのは今,日本経済団体連合会と大学側が,採用と大学教育の未来に関する産学協議会をやっていまして,そこでSociety5.0時代の人材育成というものがどうあるべきか議論しています。そこで出てくるのは,論理的思考力と規範的判断力を育てるためには,リベラルアーツだというのが,かなり明確に打ち出されています。それは,誰も異論なくなりつつあります。
 世の中の状況からすると,教員になる人だって,Society5.0時代の人材ですから,そういう意味では,やはりリベラルアーツ教育,一般的な軽い狭い意味の教養という意味ではなく,先ほど言った論理的思考力と規範的判断力を身につけるためのリベラルアーツ教育が,今の教員養成系大学とか教育学部でできるのだろうかと懸念がございます。それだけ余裕がないといったら,ちょっと語弊がありますが,他学部だって,そんな余裕はない場合が多いです。教員養成だけの問題ではないのですが,その辺も加味していかないと,大学の教員を育てるときにおいても,その点は重要だろうなと思いました。
【三島主査】  加治佐主査代理,どうぞ。
【加治佐主査代理】  論点の中にも出ていましたけれども,博士課程の在り方ということにも言及しなければならないと思います。本日,御紹介がありましたように,教員養成系大学では,東京学芸大学と兵庫教育大学,それぞれ連合方式で今,博士課程を展開しているわけです。博士論文のテーマを御覧いただくと,以前とはかなり違いまして,学校現場の課題なりを非常に踏まえていると思います。実践に役立つような研究がほとんどだと思います。
 ただ,Ph.D.に対して,欧米でいうEd.D.は,日本では制度化されていないわけですけれども,日本でも検討すべきだと思います。それは有識者会議の報告書でも,提言しているわけですけども。欧米と同じなのか,それとも日本独自のものなのかということも含めて,検討すべきではないかと思います。
 実務家教員の話がたくさん出ていますけれども,兵庫教育大学ですと,かなり学校現場での経験のある方が,現職のまま博士課程に入って,その後現場に戻り,大学教員になるというケースがたくさんあります。ただ,彼らは,自分の現場での課題を持って当然,博士課程に来ます。そこで研究しますけれども,それが現場で実際に使われているかとか,博士を取る中で学んだことが自分の能力になって,それが現場で生かされているかというエビデンスはないわけです。現場では実際にあるのかもしれませんが,エビデンスとしてはないわけです。
 ですから,ここの博士課程では,実務家が一番対象になると思いますけれども,その実務家教員が,学び直しができて,彼らがどういう能力をつけて,現場に戻って,あるいは大学教員として,どういう成果を出しているのかということを可視化できるようなものを作る必要があるのかなと思います。
 そうなってくると,先ほど言った人材の問題というのは,非常に重要になってきます。そういうことを指導できる人材がどれだけいるのかということ,これがなかなか難しいです。
 兵庫教育大学でも,博士課程の中でEd.D.を志向してきた時期はあるのですが,私の見方では,どうしてもアカデミックな要素も半分以上入るのです。それはなぜかというと,純然たるEd.D.みたいなもの,つまり実践経験を十分積ませて,その中から自分で理論化を図る中で,自分の実践能力を高めるといったようなところまでということになると,そういうことを指導できる人材が少ないということもあって,なかなか難しいのです。
 そうすると,先ほど言いましたように,大学間でそれができる優秀人材を集約して,そういう機能を持たせるようなことをしなければならない。その内容,方法と仕組みをこの際しっかりつくるべきだと思います。
【若江委員】  少し話を戻してしまうかもしれませんが,実務家教員のところで,民間人との連携は不可欠であるという話がありました。そのときに,先ほど加治佐主査代理が,民間から優秀な人材が教育界に来てくれるのかという話がありましたが,先ほど申し上げましたように,企業も終身雇用の時代ではなくなってきていることが明らかですので,今の優秀な若手は,多様な経験を積みたいというふうに思っているということと,教育界の方が考えている以上に,教育に対しての尊敬とか憧れというものが,すごくあります。
 今の会社の組織に不満があるから,どこかに次のキャリアパスを描こうとしたときに,こうなってしまっているもとが教育だから,教育分野で自分たちの力を発揮したり,もっと勉強したいという人たちは,本当に多くなってきています。ですので,可能性はすごくあると思います。ただ,そのときに気をつけなくてはならないのは,過去,一時,民間人校長のように,企業の経験があれば,マネジメントができるのかという意見がありましたが,やはり学校教育の組織の問題もあり,水落委員がおっしゃったように,融合の経験というものがすごく大切で,その基準がはっきりとしていれば,先ほど山口委員からもお話があったように,産業界との連携の可能性は高いと思います。
【三島主査】  松田委員,どうぞ。
【松田委員】  今,クロスアポイントメントとか,いろいろ人材ということでは考えることが多いのですけど,Society5.0で問題になるのは,先ほど堀田委員もおっしゃいましたけれども,技術,とりわけAIやIoTに関わる人材というのは,本当に取り合いになっておりまして,そういう面も考えていくことは必要かなと思いました。
【三島主査】  それでは,第3回のワーキンググループは以上とさせていただきます。ありがとうございました。


── 了 ──

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