教員養成部会 教職課程の基準に関するワーキンググループ(第3回)議事録

1.日時

令和元年6月28日(金曜日)14時00分~16時00分

2.場所

文部科学省東館3階3F2特別会議室

3.議題

  1. 課程認定後も全学的に教職課程の質を保証し、向上させるための継続的な仕組み
  2. その他

4.出席者

委員

山口宏樹主査、安部恵美子委員、大森昭生委員、加治佐哲也委員、北上正行委員、酒井朗委員、佐古秀一委員、添田久美子委員、本図愛実委員、森山賢一委員

(発表者)川手東京学芸大学教授、田子東京薬科大学教授、高橋玉川大学教師教育リサーチセンター長

文部科学省

清水総合教育政策局長、平野大臣官房審議官、柳澤教育人材政策課長、長谷教員免許企画室長、高田教員養成企画室長 ほか

5.議事録

【山口主査】 皆さん、こんにちは。定刻より若干早いんですが、柳澤課長が遅れておみえになるということで、それ以外、予定された方全員おそろいですので、開始させていただければと思います。本日は、中央教育審議会初等中等教育分科会教員養成部会の下にある教職課程の基準に関するワーキンググループ第3回に御出席いただきまして、大変ありがとうございます。
きょうは特に教職課程の質保証に関する取組について審議いただくわけですが、その際に委託研究を実施しておられる二つの団体の方々にも御出席いただいておりますので、まずは私から御紹介させていただきます。
まず1団体目、一般財団法人教員養成評価機構の教員養成教育認定評価開発研究推進会議の座長をお務めの東京学芸大学副学長、川手圭一先生です。

【川手東京学芸大学教授】 川手でございます。よろしくお願いします。

【山口主査】 よろしくお願いいたします。
それから、もう一つの団体は、一般社団法人全国私立大学教職課程協会ですが、そこから専務理事、事務局長をお務めの東京薬科大学生命科学部、田子健教授です。よろしくお願いします。

【田子東京薬科大学教授】 田子でございます。よろしくお願いいたします。

【山口主査】 同じく全国私立大学教職課程協会「教職課程の質保証に係る特別委員会」監事、事務連絡担当でいらっしゃいます玉川大学の高橋正彦センター長です。

【高橋玉川大学教師教育リサーチセンター長】 高橋でございます。よろしくお願いいたします。

【山口主査】 ありがとうございました。皆様、よろしくお願いいたします。
それでは、まずは事務局から本日の配付資料の確認をお願いいたします。

【尾白教育人材政策課専門官】 失礼いたします。資料の確認をさせていただきます。
お手元の端末に、本日の会議資料であります議事次第、そして、議事次第に記載の資料1から6まで、また、参考資料1から4まで表示されております。また、端末のデスクトップには、前回までのワーキンググループの会議資料を格納したフォルダもございます。このほか基礎資料としまして、教職課程認定申請の手引の冊子、それから、本日の会議資料にも入っておりますが、教員養成評価機構でおまとめいただいた自己分析書作成の手引き、そして、もう一つ冊子として、全国私立大学教職課程協会さんでおまとめいただいた報告書がございます。
以上でございます。不明な点等ございましたら、お近くの事務局員までお申し付けください。

【山口主査】 ありがとうございました。よろしいでしょうか。
それでは、本日、議事の1について議論を進めるわけですが、まずは事務局から説明いただいた上で、お越しいただいている教員養成評価機構及び全国私立大学教職課程協会の方々から、現在の取組について御説明を頂く予定でおります。その上で、改めて事務局から論点例について説明いただき、最後にまとめて皆さんからの自由な御意見を頂くと、そういう段取りで進めさせていただきます。よろしく御協力ください。
それでは、議事の1に具体的に入りますが、まずは事務局から説明をお願いいたします。

【長谷教育人材政策課教員免許企画室長】 それでは、教員免許企画室長の長谷でございます。本日は、調査研究をお願いしております2団体から御説明いただきますけれども、その前提としまして、現状の制度について御説明申し上げたいと思います。
まず、お手元の資料1で、教職課程の質保証・向上に関する、過去の中央教育審議会でどういう提言がなされてきたかということを確認しました上で、資料2で制度の現状が今どうなっているのかという順番で、御説明申し上げたいと思います。
まず、お手元の資料1の1ページ目から御覧いただきたいと思います。
教職課程の質の保証・向上に関しましては、平成27年12月の中央教育審議会の答申、これが直近の答申ということになってございます。この中で、この箱の中にございますように、教職課程の質の保証・向上ということで、4点ほど出ておりました。
一つが、全学的に教職課程を統括する組織の設置について努力義務化する。二つ目が、教職課程における自己点検・評価の実施を制度化する。3番目が、教職課程の第三者評価を支援・促進するための方策について検討する。4番目が、大学教員についてのFDなどを実施するということでございます。
この中で、「全学的に教職課程を統括する組織の設置」ということが前回、前々回でも議論になっておりましたので、少し具体的にどういう機能でありますとか組織の形態が提言されていたかということを確認しておきたいと思いますけれども、1ページ目の下のところで、アというところから、全学的に教職課程を統括する組織の設置と中教審の本文が出てございます。この中で出てございますように、1行目の終わりから2行目の辺りに掛けまして、「教員養成カリキュラム委員会を設置し」ということで、その後のところに、期待される機能というのが出ておりますけれども、例えば「教職課程のカリキュラムの充実や複数の教職課程間における科目の調整、教育実習の適切な実施、教育委員会との連携によるカリキュラムの改善等を図る」ということが期待される機能として出てございます。
更にということで、「このようなことから」の段落の2行目の中ほどからでありますけれども、「上記のような機能に加え、学生への教職指導や教職課程を担当する教員に対するFDの実施、学校インターンシップ等の企画・実施等の機能」ということが言われておるところでございます。
こういった教職課程を統括する組織の形態につきましては、1ページ目の一番下のところ、「こうしたことから」というところがございますけれども、「教職課程を置く大学における教員養成カリキュラム委員会や」で次のページに入っていただきまして、「教職支援センター等の整備状況を踏まえつつ、全学的に教職課程を統括する組織の設置について努力義務化することが適当である」となっておりまして、例えば組織の形態としては、委員会の形式でありますとか、あるいはセンターといった形での学内組織ということが提言されていたわけでございます。
それから、27年の答申の関係で、少しだけ、1点だけ触れておきたいと思いますのが、少し進んでいただきまして、3ページ目のところでございます。
この中で、後半の部分、ウのところで、教職課程担当教員の資質能力の向上等というところで、2段落目の部分でございますが、「このため」という段落、「このため、大学においては、教職支援センター等の教職課程を統括する組織や教職大学院が中心となって、教職課程の科目を担当する教員に対し、」で次の段落に行きまして、「FDなどを行うなどの取組を進めることが必要である」と言われておりまして、教職支援センターのような組織の役割として、FDということが挙げられておりますけれども、併せまして、教職大学院につきましても、この学内全体の教職課程の質保証・向上の取組の中心的な役割を果たすということが期待をされていたということを一つ付言しておきたいと思います。
それから、4ページ目に入っていただきますと、今度は平成24年の答申が出てございます。平成24年の答申の中でも既に大体同じようなことが提言をされておりまして、4ページ目のページで行きますと、組織体制というところで、二つ目の丸のところでございますが、「教員養成の質を全学的に高めるため、『教職センター』等の全学的な体制を整備し、」ということがありまして、「教職センター」ということはこの当時から提言されております。
それから、5ページ目に入っていただきますと、教職課程の質保証ということで、いろいろな取組がここでも提言されておりまして、1番上の丸のところでございますが、下線を引いてないですけれども、ポイントだけ申し上げますと、1番上の丸のところが、コアカリキュラムの作成、2番目の丸のところが、これが教職課程認定の審査の厳格化ということ。それから、3番目の丸のところが、情報の公表。それから、その次のところが事後評価ということで、その下線の入っているところですけれども、教員養成教育の評価システムや大学間コンソーシアムを活用した相互評価システムということで、第三者評価の仕組みでありますとか、大学間でのピアレビューの仕組みというような、事後評価ということが提言をされていたところでございます。
このような提言に対しまして、現状の制度がどういうふうに対応しているかという部分でございます。資料2、パワーポイントの横書きのポンチ絵を御覧いただきますと、課程認定後の教職課程の質保証・向上に関する現状ということで、先ほど見ていきましたような取組につきまして、現状を簡単に整理しております。
こちらの資料の表紙をおめくりいただきまして、1ページのところに入っていただきますと、教職課程認定大学実地視察というところが出てまいります。
課程認定を行った後、この教員養成部会が審査を行うわけですけれども、この教員養成部会が実地視察という形で、実際に認定を行った大学を訪問しまして、教職課程の水準の維持向上を図るという観点からいろいろな指摘をしているところでございます。
実地視察の内容というところが出てございますけれども、具体的には、お手元に参考資料ということで、平成28年度の実地視察の資料というのをお配りしております。非常に大部ですので、後ほど御覧いただければと思うんですけれども、そちらの実地視察の報告の中にいろいろ出ておりますけれども、例えば観点としては、教員養成に対する理念、設置の趣旨でありますとか教育課程履修方法、組織の在り方、施設設備等々につきまして、そのチェックをしておりまして、実地視察の際のチェックのポイントとしましては、当然課程認定基準を満たしているかどうかということを最低限のところとしてチェックをしていくわけでありますけれども、それ以外にも更に教職課程の質を向上させる観点からアドバイスを行っているということになっております。
それから、2ページ目に入っていただきますと、情報の公表のところがございます。これは先ほど24年の中教審の答申で提言されていたものでございますが、平成27年度から、この教育職員免許法施行規則の規定に基づきまして、情報の公表というものが義務付けられてございます。
この下にパーセンテージが出ておりまして、各項目についてどれぐらい公表しているかということが出てございます。この調査でございますが、この後もいろいろこの調査が出てまいりますが、大学基準協会に平成29年度に調査をしていただいておりまして、今回は、本日はこちらの調査のダイジェストだけお示しをしておりますけれども、次回の第4回のワーキングのときに大学基準協会には御出席をいただきまして、もう少し詳細に御説明をしていただきたいと考えております。
具体的に情報の公表をする項目というのが、このマル1からマル6のところに並んでいる項目ということになっております。この中で、例えばマル2の辺りですけれども、教員養成の組織でありますとか教員の数、担当している授業等々が公表の対象になっているということ。それから、アウトプットの指標としまして、卒業者の免許取得の状況でありますとか就職の状況といったことについても情報を公表するということになっております。
例えば前回のワーキングで、学内の共有化について議論をいただいたときに、その学内でリソースを共有化していくときに履修環境の確保への配慮が必要であるということで、例えばということで、事務局から情報の公表を充実してはいかがでありましょうかという論点を提示させていただきました。
そこで申し上げました情報の公表というのは、この施行規則の22条の6に定めるところを指してございまして、ここに掲げられている項目以外につきましても、更に充実を図っていくかどうかというところが一つ、御議論のポイントになろうかと考えております。
次の3ページ目に入っていただきますと、全学的に教職課程を実施する体制についての状況がございます。これは27年、24年の中教審の答申で、いずれも提言を頂いておりますが、現状では努力義務という形でも規則には位置付けられてございませんで、大学の任意の取組として現状では取り組まれているということになってまいります。
その下のところに、教職課程の全学的なマネジメント体制の整備状況という数字が出ておりますけれども、まず、マル1のところで、教職課程センターといった全学的な独立の組織を設置するところが35.7%。委員会のような形で会議体を設置しているところが78.2%ということで、複数回答ですので、かなり100%を超える。合計すると100%を超えておりますけれども、何らかの形で、いろんな大学で、こういう全学的なマネジメント体制が整備をされているところが非常に多いというところが出てございます。
更にその上の参考のところで、免許法の施行規則の規定を幾つか引いてございます。大学全体として、その責務が課せられている部分が施行規則の中にはございます。細かい文字で恐縮でございますけれども、例えば一番上のところ、22条のところで、体系的に教育課程を編成するということ。それから、その下のところで、22条の4のところで、学生が必要な科目の単位を修得するに当たっては、適切な指導、助言を行うよう努めなければならないということ。それから、その次のところで、教育実習を行うに当たっては、実習の受け入れ先の協力を得て、円滑な実施に努めなければならないということ。それから、最後のところで、先ほどの情報の公表というところがございます。
ですので、教職課程を設置する単位としては、前回も御議論いただきましたように、学科等が単位になっておりますけれども、その課程認定を有する大学全体として責務が課せられている部分がございますので、こういった大学の責務をちゃんと果たすために必要な体制というものが恐らく必要になってくるのではないかということで、いろんな大学もこうした形の整備をしていただいているところであろうというふうに理解をしております。
それから、4ページ目のところでございます。自己点検・評価等の内部質保証の取組でございます。これは薄い青の中に入っておりますように、大学全体の教育研究の総合的な状況について、自己点検・評価を行うということが学校教育法の中に位置付けられております。
ただ、教職課程を特化したような自己点検・評価ということについては、特段義務付け、制度化がなされていない状況でございます。現状としましては、その下の数字に出てございますように、学部等の自己点検・評価の中で教職課程を検証しているところが35.9%。教職課程のカリキュラム委員会等を通じて検証しているところが50.3%。マル3のところで、教職課程独自の自己点検・評価をやっているところは5.8%でございまして、逆に、マル5のところで、内部質保証の体制を特に整備していないというところが16.4%程度あるというところでございます。
大学全体の教育研究の総合的な状況ということで、自己点検・評価を行うということが義務付けられているわけでありますけれども、この教職課程のPDCAサイクルというものを組織的な活動としてどのように織り込んでいくのかというところが、一つ論点としては上がってこようかと考えております。
5ページに入らせていただきます。5ポツ、認証評価でございます。この薄い青の箱のところに書いてございますように、自己点検・評価に加えまして、教育研究の総合的な状況について、認証評価機関による認証評価を受けることが義務付けられてございます。学校教育法に規定がございます。これも教育研究の総合的な状況ということでございますので、大学あるいは専門職大学院に着目した形での認証評価ということが行われております。
一つは、専門職大学院につきましては、認証評価の周期のところに書いておりますように、つまり、今回の文脈では、教職大学院ということになりますけれども、5年以内ごとに認証評価を受けるということになっておりまして、具体的には、現在は、教員養成評価機構、本日もお越しいただいておりますけれども、東京学芸大学、日本教育大学協会等が中心になって進められてきました、教員養成評価機構で教職大学院の評価ということが行われているという現状になってございます。
ただ、それ以外には、学部段階を見てみますと、学部段階の認証評価につきましては、大学全体としては7年以内ということで行われているわけでありますけれども、教職課程に特化した形での第三者の評価、外部の評価ということについては、制度化がされていないという状況にございます。
現在、その第三者、外部の者が入る形で評価を行っているというのが、評価ではないんですけど、教職課程の状況をチェックしているというのが、冒頭で申し上げました実地視察ということになってまいりますので、実地視察も含めた形で、この第三者あるいは外部から目をどのように入れていくかということが一つの論点になろうかと思います。
最後になります。6ページ目のところで、教職課程を担当する教員に対するFDということになります。
こちらも大学全体につきましては、大学設置基準で、組織的な研修、ファカルティ・ディベロップメントの実施というものが義務付けられているところでございます。ただ、大学全体としてはFDが義務付けられておりますけれども、教職課程に特化したFDの取組状況ということについて数字を見てまいりますと、教職課程を担当している全専任教員による組織的なFDを行っているのは9%。部局の専任教員が参加して行う全体的なFDの取組として、教職課程のFDを行っているのが22.9%でございまして、特に教職課程の内容・方法を目的とするFDは制度化していないというのが61.2%という状況ですので、大学全体の活動の中としては、FDは行われているんですけども、教職課程についてのFD、意識、資質能力の向上ということをどう図っていくかということが論点になろうかと思います。
私の方からは以上でございます。

【山口主査】 ありがとうございました。
それでは、続きまして、教員養成評価機構の川手教授から説明をお願いいたします。
質疑応答は、全て説明が終わってからまとめて行いたいということを冒頭申し上げました。その旨、御了解ください。スクリーンを使いますので、事務局の方々、申し訳ありません。準備等お願いします。それでは、お願いします。

【川手東京学芸大学教授】 では、改めまして、川手でございます。よろしくお願いします。
では、早速報告をさせていただきます。私の報告は、昨年度、教員養成評価機構が受けました受託事業に関するものですけれども、これは大きく分けて二つの柱からなります。つまり、一つは、第三者評価としての評価事業の可能性について。そして、もう一つは、各教員養成機関に対して、自己分析活動の実施を提案するということからなっておりました。しかし、本日は、その基礎となった、以前、東京学芸大学が中心となって開発した教員養成教育認定システムがそもそもどういうものであったのかというところからお話しさせていただきたいと思います。
スライドは2ページが映っておりますが、今も申し上げました、今回の事業の前提になるのは、2010年度から2014年度、東京学芸大学の「教員養成評価プロジェクト」です。
ここでは、大学の学部における教員養成教育の質向上を目指し、全国国公私立大学教員、有識者の協力を得て、コミュニティを形成しながら、教員養成教育を評価するシステムを開発しました。
次のスライドですが、そして、続く2014年度から2016年度に掛けて、「日本型教員養成教育アクレディテーション・システムの開発研究」ということを行いまして、ここでは、今申し上げました「教員養成教育認定評価システム」を用いた教員養成認定評価の試行を行いました。参加大学は今お示ししている国私立8大学10学部です。3期に分けて行いました。
では、この「教員養成教育認定評価システム」の考え方と特徴を御説明します。
まず前提として、この認定評価システムは、我が国の教員養成が設置主体や目的の異なる教員養成機関によって、教員養成が行われている開放制の原則の下で行われているということを踏まえて、教員養成教育の多様性に対応するものとなっております。
そこにお示ししていますけれども、各大学が適切に内部質保証を行っているかを外部から評価するということ。そして、相互に学び合う教員養成機関が自発的に参画するということ。そして、教員養成教育を担っている大学、学部だけでなく、大学間、学校、教育委員会、学会、評価団体などと連携した評価システムであり、ピアレビューを中心とした相互に学び合うコミュニティの形成を目指すというものです。
次のスライドですが、次に評価の実施体制ですが、スライドを先に3枚ほどめくります。今御覧いただいているこのスライドが示しますように、評価の手順は、まず当該の教員養成機関自身による自己分析、そして、それを書面調査、訪問調査、そして、調査報告書という流れで進みますが、元のスライドに戻りますね。
それを担っているのが、今映っている3層の評価委員会、評価部会、評価チームであり、特に一番下の評価チームが個別の機関の評価を行います。その評価チームの構成ですが、今映っておりますように、評価チームは、大学教員3名、教育委員会又は学校関係者1名からなるということを原則しています。
ちょっと細かいですが、うち、大学教員1名は、評価する教員養成機関と同程度の規模と種別の大学教員。そして、大学教員もう1名は、課程認定を受けた教科と関連する専門性を有する大学教員等ということになっています。
さて、次ですが、基準の構成です。教員養成教育認定基準では、教員免許状を取得する学生に対して、カリキュラム全体をどう保証するのかという観点から、教員養成教育を総合的に評価する五つの基準領域、13の基準、40の観点を設けています。一番上の基準領域は、教育の柱となる五つの内容からなっていて、それぞれの基準領域には、二つから三つの基準を設けています。そして、合計13の基準は、基準領域ごとに判断して、一定程度満たしていればよく、そして、その下には、その基準の内容を具体的に判断する上での観点が示されています。しかし、ここでも全てが一定水準に達していなければならないというわけではありません。基準領域、基準、観点、取組例と、そこに出ていますけれども、細かなことにつきましては、今、皆様のお手元にあります橙色の、今回作成しました「自己分析書作成の手引き」(資料3-2)の中に詳細は出ておりますので、また後から御参照ください。
さて、次のスライドですけれども、では、更に中身に立ち入って、今申し上げました各基準領域の内容と関係を見ていきます。今映っているのが、これが全体の五つの基準領域とその関係性を示すイメージ図です。
まず、図の真ん中にある1が、「構成員の合意に基づく主体的な教員養成教育の取り組み」となっていますが、これが全体の核となる部分で、カリキュラムの全体像を構成員がどれほど主体的に捉えているかどうかを検証します。ここには、ほかより多い四つの基準があり、基準は、「教員養成教育に対する理念の共有」、「教職課程のカリキュラム編成の工夫」、「教職員の組織体制に関する工夫」、「教職課程に対する自律的・恒常的な改善システムの構築と運用」という四つの基準を設定しています。
一方、再びイメージ図を御覧いただきたいと思いますが、2から3、2は下にありまして、2から3に縦軸に矢印が伸びておりますが、これは「教職を担うべき人材の確保」、つまり、学生をどのように受け入れ、送り出していくかを検証する部分です。つまり、学生が入学してから卒業するまで、教職に係る教育と支援をどのように行っているのかを検証します。
次に、今度は横軸ですけれども、横軸には4から5となっていますが、この4から5の横軸ですが、ここでは各機関が大学としての自律性、主体性を持って、教員養成カリキュラムを運営しているか。そして、それが同時に教育関連の諸機関。教育委員会であるとか、あるいは学校とどのように組織的な連携協力体制を作っているのか。また、社会的要請にどのように答えているのかを検証する部分となっています。
矢印は、それぞれの関係性を示していますが、各基準領域は、このように相互に関連し合い、全体を構成しているというふうになっております。
今申し上げました認定基準に照らして、これは先ほどのスライドですけれども、先ほど申し上げましたように、各機関は、自己分析書を作成し、それを書面調査、訪問調査を経て、報告、調査、評価報告書を作成するということになっております。
次のスライドです。認定の要件と評価結果の公表ですが、五つの基準領域ごとに、AからCの判定を行い、全ての領域がB以上であると認定します。認定された場合は公表し、認定されなかった場合は公表しないというふうにしております。
以上が、ここまでが以前、東京学芸大学で開発した認定システムに関するものです。
今からが後半の話になりますけれども、今申し上げましたように、以前、東京学芸大学が中心になって開発、試行した教員養成教育認定評価ですが、昨年度、こうしたプロジェクトを踏まえて教員養成評価機構が実施したのが今回のプロジェクトとなります。
東京学芸大学ではなく、教員養成評価機構が担うというのは、これは教員養成教育認定評価を将来、本格実施することを見据えたときに、東京学芸大学という一国立大学法人がこれを担うのはなじまないという判断からでした。今映っておりますけれども、事業の柱は二つございます。
一つは、各教員養成機関が自律的に教員養成教育の質保証・向上の取組に着手する提案。つまり、自己分析(自己点検・評価)活動の実施です。
そして、もう一つが、第三者評価としての評価事業の可能性の検討ということでした。一つ目の自己分析(自己点検・評価)活動の支援の実施についてですが、ここでは大きく次の三つの作業を行いました。
意向調査、訪問等による説明、そして、自己分析活動支援ツール(解説動画)の作成です。順に説明いたしますけれども、まず意向調査。これは全国1,390の教育組織(543大学)に調査票を送付いたしました。回答は217学部等からで、回収率は、残念ながら、15.6%でしたけれども、ある一定の傾向は読み取れたのではないかというふうに思っております。
そこで質問した内容は、今お示ししています四つの点です。教職課程の自己分析(自己点検・評価)に関する現在の体制は? という質問。そして、自己分析の実施に適した単位は何かということ。そして、自己分析を実施する場合、「教員養成教育認定基準」のどの基準領域について実施することが効果的だと考えるか? という質問。そして、教員養成評価機構が提案する自己分析活動実施の意向はあるか? ということを質問いたしました。
細かなことは別に報告書にまとめておりますが、大きな特徴だけ、意向調査をまとめますと大きく四つの点が見て取ることができました。一つは、教職課程の自己分析に関しては、まだ4分の3の教員養成機関で体制が整えられていない。そして、取り組むなら、学部単位より全学的に、と考える教員養成機関が多い。そして、全ての基準領域を用いた自己分析の実施が効果的と考えられている。そして、自己分析活動を実施しようという教員養成機関も少なくない。また、体制作りができたり、時間的な余裕が生まれれば、取り組んでみようと考える潜在的なニーズは一定程度あるのではないかということが読み取ることができました。
詳細は、渡辺先生の報告になっております。
次のスライドです。そうしたことを踏まえた上で、今のこの意向調査からも、自己分析のニーズはあるというふうに判断できるのですが、それを踏まえて、今回、教員養成機関の関係者などが活用できるインターネット上のツールとしての解説動画の作成を行いました。5種類の10分程度の動画で、教員養成評価機構のホームページからも入っていけるようにしてございます。自己分析活動の手助けとなるように分かりやすい教材となっています。
手前みそになりますが、手弁当ながら非常によくできたのではないかというふうに自賛しておりますので、是非皆様には御覧いただきたいというふうに思っております。渡辺先生のものから始まりまして、全部で六つございます。
次のスライドです。次に、「自己分析書」作成の観点と基本的考え方についてですが、今回、教員養成教育認定評価の全体の中から、自己分析の部分だけを取り出して実施しました。むろん、自己分析だけに特化したということは、資金がないなどという、以前の東京学芸大学で研究開発した教員養成教育認定評価システム全体を事業展開する物理的な前提が整っていないということがあったわけですが、しかし、自己分析活動、それ自体にも一定の意義があると考えております。つまり、教員養成教育の質をどのように向上・改善しようとしているかという観点から、自己分析を行うこと自体が既に内部質保証という観点から意味があるのだというふうに考えました。
そして、その結果である各大学の優れた取組を大学の情報提供できれば、大学間で相互啓発的に質の向上を図ることも可能ではないかというふうに考えました。その意味で、自己分析書については、教員養成評価機構ウェブサイトへの掲載ということも提案しております。
なお、自己分析活動を行う際に重要な点は、単に課題の指摘・析出にとどまらず、問題・課題の解決・解消の具体的な措置を講じているかどうかがポイントになるというふうに考えております。
次に、事業のもう一つの柱である教員養成教育認定評価を第三者評価として実施する上での課題についてです。平成27年12月の中央教育審議会の答申にありますように、言わずもがなですけれども、大学の教職課程の第三者評価については、将来的には様々な評価主体によって全国的に取り組まれるとされていますが、しかし、これを実際に進めようとすると、現時点では幾つかの課題に直面します。
今挙がっておりますが、五つですね。実施単位、教員養成系大学、そして、それ以外の様々な大学の教員養成をどう位置付けるか。そして、初等教育と中等教育の教員養成の違い。評価者の確保をどうするか。そして、評価費用をどうするかといった、そういった諸問題です。
少し細かくなりますが、一つ一つ簡単に見ていきます。まず、最初の実施単位ですけれども、「学部」相当組織で行うとしても、対象数の多さが非常に大きな障壁となります。それからまた、総合大学では、全学的に教職課程を統括する組織になりますが、これを実施単位とすることも検討課題となります。つまり、学部単独と、そうした教職課程センターとの関係性の整理ということになります。さらに、評価活動では当該教職課程に携わる者に負担が掛かる中で、学内コンセンサスの形成をどう作っていくのか。そして、自己分析活動に伴うエビデンスの収集、整理、分析の作業量も大きな問題となってきます。
そして、二つ目の課題ですけれど、教員養成系大学、そして、それ以外の様々なタイプの異なる大学の教員養成をどう位置付けるのかということも課題になります。つまり、開放制理念に基づく教職課程の場合、それぞれの設置学科等にポリシーやカリキュラムがございます。そうしたものは無視ができないわけです。その意味で、教員養成系大学と同じ基準で評価することは難しいということは、それは明らかなことであるわけです。したがって、タイプの異なる教員養成機関が同じ基準で行う場合、汎用性が求められていくということになります。
先ほどお示ししました基準領域における基準観点では、かつての東京学芸大学のプロジェクトでは、基準観点に関して、全てを満たす必要はないというふうにしていましたが、しかし、前のプロジェクトではそうした疑問の声が多く上がりました。したがって、更に分かりやすく説明する工夫、弾力的な対応ということが求められるのではないかと思います。
そして、教員養成教育認定の基準領域全てではなく、一部だけを取り出して実施することは可能かということも問題にあります。本来、体系的に全ての基準領域を行うことに意義があって、先ほどお示ししました意向調査でも全体で行うことがいいという、そうしたことが多くの御意見としてうかがえるわけですけれども、そうしたことを踏まえる中で、全体の構造を損なわずにコンパクト化することが可能かどうかということも検討していかなくてはいけないというふうに考えております。
それから次ですが、初等教育と中等教育の教員養成の違いということも問題になります。中等教育の教職課程において、教科の専門性をどのように評価するかも課題です。前に東京学芸大学で行いました調査では、文学部、理学部などから、中等教育では教科の専門性を重視するので、「深い学問理解につながる教科の領域(項目)を設定すべき」という意見を頂きました。それから、開設している機関数が少ない教員免許状に係る場合には、評価者の確保を含め、実際上の対応が難しいということもございます。
今、最後に申し上げました評価者の確保ということも大きな課題です。ピアレビューによる評価は、評価者自身にとっても評価事業に携わることで、みずからが所属する教職課程の在り方を再考できるという点で、大きなメリットがあります。しかし、他方で、評価者としての業務(役割)に対する負担感は大きなデメリットとなっております。したがって、評価作業に従事しやすい環境作り、評価員業務を、個人の研究業績等として評価する文化の形成などが課題ではないかというふうに思っております。
認定評価に当たっては、かなりの数の評価者を集めなくてはなりませんが、大学教員の忙しさ、評価事業の負担の中で、その確保は難しいというのが現状ではないかと考えております。
そして、最後の課題ですけれども、評価に係る費用ですね。第三者評価の場合、「評価する」、「評価を受ける」という関係があるわけですから、当然費用が発生します。認証評価の手数料は、1大学、一般に300万円前後と聞いております。「教員養成評価開発研究プロジェクト」のかつての調査では、「100万円以上負担可能」という回答は、全体のわずか7.4%でした。
自己分析活動に対しては、フィードバックを受けることが有効ですが、費用はどうするのか、あるいは費用を掛けない工夫は可能なのかということを検討していかなくてはなりません。そのフィードバックの工夫、フィードバックの経費削減の工夫ですが、一つには、実施方法においてフィードバックを、例えば書面のみを対象とするのか、あるいは、書面等資料データ、映像資料等の検証とするのか。あるいはそれとも、訪問調査を実施するのかという選択肢があります。
他方、別の観点から申し上げますが、「評価する側」、「評価される側」という関係性ではなくて、複数の教員養成機関が集まり、相互にフィードバックする。例えば、基準領域ごとの研修会のように、ピアレビューを実施する。そうした形で、各教員養成機関がコミュニティを形成することが望まれるのではないかというふうに考えております。あくまで教員養成機関が主体的・自律的に実施することが肝要かというふうに考えます。
最後ですけれども、各教員養成機関が自律的な質保証に取り組むことで、教職課程の質の向上、そして、関係者の意識の向上につながります。ある意味では、教職員の意識改革こそが教員養成教育認定評価の目指すところであり、そのプロセスを通して、それが実現できれば、大きな目的は達成されたと言えるのかもしれません。今回の私どもの事業では、自己分析活動に特化しましたが、これに外からのフィードバックが加われば、これは更に格段に有効な取組になるというふうに考えております。
教員養成評価機構では、次の課題として、是非今後、このフィードバックの在り方を検討・検証していきたいというふうに考えています。
引き続き、教職課程における実現可能な第三者評価の在り方を検討してまいりたいと思っております。
以上で私の御報告にさせていただきます。ありがとうございました。

【山口主査】 どうもありがとうございました。大変中身の濃い話をいろいろまとめていただいたと思います。
それでは、続きまして、全国私立大学教職課程協会の田子教授、高橋センター長から御説明をお願いいたします。

【田子東京薬科大学教授】 発表の機会を頂きましてありがとうございます。一般社団法人の全国私立大学教職課程協会の専務理事をしています田子と申します。
私どもの法人は、略称、全私教協と申しまして、任意団体としては、1980年に発足をしておりますが、一般社団法人となりましたのが2016年で、まだ比較的新しい団体でございます。全国の423の私立大学が加盟しております。私立大学の教職課程を置く大学の相当数が加盟をしている全国団体でございます。
本日、テーマになっております教職課程の質保証の問題につきましては、任意団体あるいは法人となった後の定款においても、質の高い教員養成教育を私立大学において行うということを法人の目的としておりますので、本来、本質的な中心になるテーマであろうかと思われますが、今、川手先生から御発表になられた、これまでの積み上げを基とした御報告に対しましては、私どもは、この平成30年度の文部科学省から頂きました教員の養成、採用、研修の一体的改革推進事業が初めてでございます。ということから、発表の内容が次元が異なると思いますので、その点についてあらかじめお許しいただければと思います。
私どもが平成30年度に頂きました委託研究で、研究のテーマといたしましたのは、先ほども御紹介ありました中央教育審議会答申等で、教職課程質保証評価の必要性というものが指摘をされております。様々な組織形態の私立大学で、質保証評価というものがどのような原理、方法で行われるということが望ましいんだろうかという、その素朴な最初の問いから始まりました。法令に基づいて、大学の目的によって設置をされており、学科ごとに認定されて、運営されている教職課程でございます。この現状を踏まえて、評価手法の開発ということが課題ではないかと考えた次第でございます。
先行事例との関係は、相当程度、先行の研究あるいは評価から学ばせていただくという関係にございますので、開放制の私立大学の質保証評価に適した形に改善・改良する意見交換をさせていただければと思っております。実施可能で、公正かつ質保証・向上に結果する評価の在り方を見出したいということでございます。
昨年度取り組みましたものはかなり、初年度であったので、頑張って目標を六つ立てたのでございますけれども、まず1年間でできる限りのことはいたしました。土曜日も日曜日も出てまいりまして、委員間での意見の交換ということもやったときもございます。きょう、御出席の委員の先生方には、白い表紙の冊子をお配りしておりますけれども、近日中に私どものホームページに掲載をさせていただく予定ですので、また、きょうお集まりの先生方も御覧いただければと思います。
6点についてまとめはいたしましたが、本日は、川手先生の御発表とも重なるところで、5の、一体、今、私立大学各校で教職課程質保証評価について、どのような御意向をお持ちなのかということの現状についての御紹介を主なものとさせていただきたいと思います。
「私立大学における教職課程質保証評価の在り方に関する調査」ということで、昨年の12月から今年の1月に掛けて行いまして、このときは加盟校420校でございまして、回答数は348校で回収率82.9%でございました。
質保証の必要性についての認識は、回答大学の7割について、何らかの形で既にやっているという回答でございます。一定程度、その制度化ということについての意識は醸成されていると思われますけれども、評価票等を使った基準を客観的に持って、自己点検・評価をしているのは、回答のあった大学のうちの1割でございます。
これまで先行の研究で最も代表的な東京学芸大学のプロジェクトの13の評価基準について、13項目を問われた場合に、どの回答が回答しやすいのかということについて質問をしたところ、直接教育に関わる「学生への指導、カリキュラム、理念の共有、指導を支える組織体制、実習」、それから、「教員養成教育の直接的な活動内容とそれを直接支える条件整備」という辺りが最も重要項目というふうに捉えられております。
しかし、私どもとしても、私立大学が回答しやすいという項目だけを選んで、質保証評価の実施ということは、これは行えないと考えておりますので、例えば、「大学としての自律的とスタッフ・教育課程の充実」という大学全体との関わりということについては、選ぶ数が少ないんですけれども、こうしたものについてはやはり取り上げていくということで考えなければいけない。この先行の評価項目についての調査を通じて、開放制の教職課程が多い私立大学への質保証評価の内容・基準、項目について、検討を進めていく必要があると考えました。
外部評価の効果とその課題認識についてですけれども、回答大学の多くが、質保証評価として、外部評価の効果を認めております。外部評価の効果として、選択肢の中に置いた「今まで気づいていなかった課題が浮き彫りなる」というのが最も多く、「教職課程運営に組織的な強化が図られる」等が続いております。「カリキュラムの充実につながる」というのがもっと高い数字が出てくるのかと思ったんですけれども、それほど多くなくて、これはひとつ検討課題、理由を考えなければいけないと考えております。
それでは、外部評価を行う場合の課題認識ですけれども、「事前準備や実施時の事務作業等の負担が過剰にならないか」というのが、回答大学の83%から出ております。点検・評価の公正性・妥当性や否定的評価がなされた場合の対処に対する不安ということについてもございまして、各大学の独自性や多様性、特色を正しく評価されるのかどうか、弱点だけ指摘されて、あら探しになってしまわないかという項目も、回答大学の半分以上が選んでおります。
私立大学の教職課程の多くが開放制でございまして、大学の独自性・多様性というものが正当に評価されるのかどうかということが今後の大きな課題であろうかと思います。私立大学という設置形態は同じなんですけれども、また、同時にその中に独自性・多様性、それから、各大学の規模の違いというものが大変大きな形でございまして、こういう形を考慮した上で、しかも、その調査を行う場合の人的・経済的な経費の負担増というものについてどう対処していくのかということが大きな課題であろうかと、課題としてはそういうところがございます。
それでは、私どもの団体として、どういうことが優位性があるのかということについて考えてみました。何分にも平成30年度から着手しているわけでございますので、足りないところはたくさんございます。それでどこがいいんだろうかと考えてみたんですけれども、ほかの機構よりも私学の実態をしっかりと把握できており、適切な評価が期待できるという項目を挙げたところ、回答大学の6割が選んでいただきました。
また、加盟校内での優れた取組が共有でき、加盟校全体の質向上が期待できるというものも3割ございました。また、同時に、内部での点検・評価で公正さが担保できるのかどうかという、これも当然の御指摘だと思いますけれども、これも3割ございます。
こういうことを考えますと、複数の評価機構があった場合、全私教協もその役割を果たさせていただくとすれば、各大学の負担増の懸念材料をはじめ、諸々の解決すべき課題について、研究を深めていくということが急がれると思われます。
次のスライドは小さくなって申し訳ないです。全私教協で評価を実施する場合の具体的な事項なんですけれども、「既存の第三者評価の形態」でよいという回答は1割にも満たない数字になっております。「評価基準や項目を厳選、提出書類の重点化・簡素化」ということを図ってほしいという回答が8割以上で圧倒的でございます。近隣ブロックの評価委員を選んで、実地調査を1日でやってくれというのが約4割ございます。
今の段階では何とも判断がつきませんけれども、書類審査のみで実地調査はしないということについて、それが可能なことは可能ですけれども、よいのかどうかということについては、まだ判断はしておりません。
調査頻度でございますけれども、「7年に1回」というものが40%を超えております。「5年に1回」も27%ございます。その他で、「期限を定めない」あるいは「必要なし」という意見ももちろんありますが、まだ加盟校の中で、他の制度との区別がついていない状況も見られまして、課程認定や実地視察の動向を踏まえた方がよいのではないかということがございまして、これは踏まえることはそうだろうと思いますが、区別はついていない。もっと質保証評価あるいは第三者評価ということについて、基本を御理解いただくということをしていかなければいけないと考えております。
次に、それでは、私ども全私教協で八つの地区の、普通で言う支部のような地区協議会というものがございまして、北海道から九州までございます。この大学に所属している先生方の中から、評価委員の半数程度を選んで、残りの半数程度を他地区あるいは東京等から派遣するということを考えているんですけれども、評価委員を派遣する可能性ということについて聞いてみましたところ、派遣できる教員がいないというのが4割の大学から回答がございまして、残りの6割でこれを賄わなければならないというのが現状でございます。
ここから、そうしたことについてのノウハウ。先ほどこうしたことも研究業績にというお話もございましたけれども、教員がこれに携わる必要性というのは、皆さん、お持ちになると思いますけれども、それと同時に、そのメリットというものをやっぱり与えていかないと、長続きする制度はなかなか構築できないのかなとも思われます。
次に、私立大教職課程の規模と、その中での質保証評価に関しての経費負担について聞いてみたところ、420大学のうち、年間の教員免許取得者数が100名以下の大学が6割ございます。もっと言いますと、そのうちの半分以上が50人以下です。少人数の教職課程、これも学科ということではなくて、大学として50人という少人数教職課程が多数ありまして、同じ設置形態である私立大学でも非常に大規模の大学と小規模大学と同じ基準で評価するということはなかなかできないと思われますので、この違いをどう考えればよいのかということも大きな課題でございます。
経費負担につきましては、「20万円以下」という項目を置いたところ、そこを選んだ大学は60.6%というふうに高くなっておりまして、置かない方がよかったのかなという反省もございます。
私どもとしても、「20万円以下」でできるというふうには考えておりませんけれども、しかし、逆にこうした項目を置くことによって、加盟校側の費用感といいますか、負担感というものはつかむことができました。
もっと経費負担自体が困難であるという意見というのは、数として数えましたら、12校程度は費用負担自体が困難だという回答でした。
全私教協といいますか、当協会の役割として今後の課題ということでございます。
まず、加盟校の内部質保証評価、これは各大学御自身でやっていただくことであるわけですけれども、その仕組みと方法の共有化ということを協会としても、これはサービスということになりますけれども、お手伝いをしていかなければいけない。しっかり内部質保証評価について、私立大学教職課程は取り組んでいただいて、それぞれの大学が特色ある教職課程を作っていっていただくというのがまず第一だろうと思います。今もやっているわけですけれども、これからも大きな課題だということになります。
2点目に、アクレディテーションのための認定機構を組織する準備というものもしていかなければならないと思います。今年度、試行調査で四つから五つの大学について、私どもで考えている評価項目に基づいて、実地にやってみたいと考えております。
3点目に、これら事業のための地域の学校、あるいは教育委員会、文部科学省、それから、各学会、専門機関との連携協力ということをしていただきまして、後発の団体でございますので、なかなか分かっていないことも多いので、教えていただきながら、なるべく早く可能な状態になっていきたいというのが私どもの考えるところでございます。
今御紹介いたしましたように、時間の流れの違いから、川手先生の御発表のような内容ではなくて大変恐縮でございますけれども、私立大学の質保証評価について、何か御参考になることがお話しできていればと思っております。
以上でございます。

【山口主査】 どうも大変ありがとうございました。実態が何となく分かったような気がしております。本当にありがとうございました。
それでは、文科省の方は席に戻っていただきます。
ただいまの2団体からの御発表を基にこれから議論するわけですが、議論する上で参考として、事務局で論点例を整理していただいています。その説明をお願いできればと思います。

【長谷教育人材政策課教員免許企画室長】 それでは、お手元の資料5、課程認定後の教職課程の質保証・向上に関する論点例の資料を御覧いただければと思います。
論点例と申し上げましたけれども、質保証・向上のためのツールを並べているだけでございまして、上から、全学的に教職課程を実施する体制、教職課程の自己点検・評価等の内部質保証の取組、教職課程の第三者による評価、学外者による点検。これには例えば実地視察でありますとか大学側のピアレビューということもあろうかと思います。
それから、教職課程を担当する教員に対するFD。その他の在り方ということで、例えば先ほど御紹介した中では、情報の公表でありますとかコアカリキュラムといったものもあろうかと思います。
このツールの中で、先ほどの御報告にもありましたように、実際に教職課程を置いている大学の目的でありますとか規模といったものが多様であるということも踏まえまして、全ての大学に対して義務として課していくもの、あるいは努力義務として課していくもの、あるいは大学の目的、性格でありますとか、今後議論していただきます大学の共同設置のような、あるカテゴリーに着目して義務付けていくものという、いろんな精査があろうかと思いますので、そういった観点も御留意いただきながら、御議論いただければと思います。
なお、この中で、1ポツのところ、全学的に教職課程を実施する体制につきましては、次回第4回のワーキングで具体例のヒアリングも含めまして、御発表いただいて、深い議論をしていただく機会を設けていただくという予定にしてございます。
以上でございます。

【山口主査】 ありがとうございました。
それでは、ただいまの論点例も参考にしていただきながら、川手教授、田子教授から御説明いただきましたそのことに対する御質問も含めまして、御意見等があればお願いいたします。
どなたからでも結構ですが、いかがでしょうか。誰も目と目を合わさないようにしているような感じですが。

【加治佐委員】 では、よろしいですか。

【山口主査】 はい、どうぞ。

【加治佐委員】 少し大きいことを言いますので、それで議論のきっかけになればと。教員養成の分野、学部などでちゃんとした、いわゆる第三者評価の認証評価の取組をしているのがこの東京学芸大学、現在は教員養成評価機構で取り組まれているもののみというわけですね。中身的に非常に充実しているということがよく分かりました。
ただ、残念ながら、まだ実施している大学というのは非常に少ないんですよね。国立大学、私立大学、どちらも少ないという状況です。もちろん第三者評価機関はたくさんあることは当然望ましいわけですけれども、なかなかそういう機関を設けること自体も困難な感じがするんですよね。そうすると、やはり現実的に考えた場合は、今やられている教員養成評価機構のものがより幅広くカバーしていくということが一番望ましいと思うんですけども、ただ、残念ながら、なかなかいろいろ課題も挙げておられましたけど、難しいですよね。
私も教員養成大学を担当している者として、やはり一番は負担感なんですよね。私学さんもおっしゃっていましたけども、いろんな評価が既にあるわけですよね。全学的な機関別認証評価があります。教職大学院については独自の認証評価もあるということで、そういう中で、これだけを独自にやるということに対する負担感なり、抵抗感というのは物すごくあります。特に費用もありますけど、労力という面でもあるんですね。
もちろんそのことによって、そういう努力をして、それが改善につながるという面は当然否定はできませんけれども、ただ、そこのところが克服できないと、私学だけじゃなくて、国立に対してもなかなか広がっていかないんじゃないかという気がしているんですけども、何かそこらについてございませんか。

【山口主査】 川手先生。

【川手東京学芸大学教授】 先ほど申し上げましたように、今回の事業の中で意向調査をして、こうしたものに、私たちが提案したものに参加する意向があるかどうかということを聞いたときに、全くなくはなくて、ある程度の興味はあるということで御回答頂いた部分もありました。
ただ、今、先生おっしゃいましたように、ただし、そこでやる気持ちはあるんだけれど、現在、様々な課題を大学自身が抱えている中で、すぐにはできないというような、そういった御回答があったかと思います。なので、そこのところで、負担感はもちろんあるんですけれども、一方で、必ずしも、全くできないわけではないというふうに私たちは考えました。そのときに、何ていいますか、外から押し付けられるというのでは、やはり大学教員として、それは負担感として来るところがあって、ですので、私たちが考えましたのは、先ほどの報告でも繰り返し申し上げましたけれども、そこにピアレビューをしていく。例えば研修会のような形で、つまり、この評価していくところに参加していただいていく中で、評価をする側、評価を受ける側という二項関係ではなくて、一緒に作っていく関係性ということが、少し理想的な話かもしれませんけれど、そこがやっぱり目指していくところなのかなと思っております。

【山口主査】 よろしいですか。関連してでも。はい。大森先生。

【大森委員】 大森です。ありがとうございます。一つは質問というか、私が理解が追いついてないので質問が一つと、もう一つは感想なんですけど。感想というか、私としては重要なポイントだと思っているんですけど、一つ質問は、今、教職課程を持っている大学には、教員養成部会で実地調査をしていただいていると思うんですけれども、今後は実地調査はやめて、こういうピアレビュー的な質保証にしていこうという動きなのか。実地調査もやるけれど、こっちもやってねという、その実地調査、本当にしっかりと見ていただくので、かなり課題も分かってきたりとか、理解が進むチャンスだと私は思って、本学にも来ていただいて。あれはかなりいい質保証の機会になっているんじゃないかなというふうには思っていて、そこがあるけれども、更にやるのかという。この議論の方向の話が。これは質問の話です。
もう1点が、今、負担感のお話がありましたけれども、我々、今回この基準を検討しようというワーキングができた一つの底流に、教職課程をどのぐらい維持をしていったらいいのかというか、日本全体の教職課程の、あるいは各県の規模感みたいなものが少し曖昧なまま議論をしていると思うんですけれども、本学も全私教協に加えていただいて、さっきの調査で言うと、100人以下の大学の一つということになると思いますけれども、本学は初等も持っているので、教職課程は非常に重要な位置付けではあるんですけれども、一般学部で、中等の教科だけを出しているところで、例えば年間、免許を取る学生は10人とか20人ですよという大学さんにとって、負担感が増せば増すほど、今回の再課程認定もそうでしたけれども、じゃあ、やめようかなという。
つまり、正直言えば、10人で、例えば私学経営のプラスになるというものでは決してないわけですから、むしろ持ち出しで教職課程を持っているわけですので、それがなければ、そういう先生をそろえる必要もなければと。でも、やっぱり地域に対して非常にそういう責務があると思って、歯を食いしばってやっているというところの中で、更に負担を増していくことで、じゃあ、ちょっとやめますというところがこれ以上出てくるということは十分あり得る中でですね。ただ、質保証の重要性は重々分かっているんです。
今、私の娘も自分の教え子に担任してもらっていまして、非常に自分たちの教育の質というのを身をもって、非常にいい授業をやってくれているんですけれども、感じて、それは現場にとっては絶対必要なんだけれども、その教職課程をどのぐらいの規模感を持っていきたいのかというのが出発点だとすると、そこのバランスというのはそれぞれに考えないと、質保証だけをガーッと突き詰めていくと、かなりしんどいものになっていくのかなというふうには感じます。だから、実地調査もありながら、これもやってというところとも関連してくると思うんですけれども。

【山口主査】 まず実地調査の件で、今後どういう展開なのか。

【長谷教育人材政策課教員免許企画室長】 ありがとうございます。この実地視察との関係というのは非常に重要なポイントだと思います。先ほど私から御説明申し上げました資料2の1ページ目のところを御覧いただきますと、ポンチ絵の横の資料でございます。この中で、教職課程認定大学実地視察のところで、実地視察大学数の推移というものがございます。
この実地視察ですが、言わば設置審のアフターケアと機関別認証評価との関係性のようなところがございまして、この教職課程の実地視察も御指摘いただきましたようにかなり念入りにチェックをしているものでございまして、非常に重要な質保証のためのツールでありますけれども、やはり行ける大学数が限られてくると。直近で、28年度以降から少しずつ少なくなってきておるんですけども、これは再課程認定の関係で、養成部会の先生方、事務局、それから、受け入れていただく大学の負担も考慮いたしまして、数が減っておりまして、31年度からまた元の数に増やしていこうと思っているんですけども、それでも26年度、27年度を御覧いただきますと、大体30校、行くか行かないかぐらいが年間の事実上の限度になっていますので、この数との関係で、実地視察と大学の自己点検・評価でありますとか、外部からの評価といったものとどのように役割分担していくかというところが、一つの御議論いただくポイントになってこようかなというふうに考えております。

【山口主査】 ありがとうございました。先ほどの加治佐先生の話にも絡むんですけど、若干、私、認識が違っているというか、このところの認証評価の動きを見るにつけ、内部質保証の話がもう第一義的と、一番重要なものとして提示されていますよね。これは第三者評価とかそういう話ではなくて、独自に内部質保証をするんだ、それが大前提だという話で、ある意味、マストの話になっているという理解ですね。だから、負担感なんて、本当は言ってきたらいけない。つまり、こういう第三者評価を使うがゆえに楽になるというふうに持っていくのが本来的な姿。現実は違うのは分かって、あえて言っています。
というのは、私自身、工学なので、日本技術者認定機構という、JABEEと言われるものがあって、それがなかなか、一時期は増えていたんですが、最近、負担が多くて、やめましょうという話になりつつあるんですが、ただ、そのときに他の例えば認証評価にJABEEの結果を使うようにするとか、そういう調整が今動きつつあるということからすれば、教職課程の質保証についても同じように整理はされていくんだろうなと。していかなくてはいけないんだろうなとは思います。
ただ、いずれにしても、内部質保証というのは、一番上の最重要で、その意識で大学がいないといけないという、それは再認識すべきではないかという気はしました。現実問題、大変なのはよく分かるんですが、そこが崩れると負担感だけが残るというような感じがしました。
座長があんまり言っちゃいけないんですが、そんな印象を持ったので。
はい、どうぞ。

【添田委員】 すみません。先ほどの加治佐委員のお話の続きになるんですけれども、認証評価ということで、機関別評価と分野別評価で、私どものところは教職大学院で認証評価を頂いて、機関別でまた受けるんですけれども、この間やりとりがありまして、教職大学院の認証評価をもらったものについては、機関別ではこの部分はいいですよというように言っていただけるところもあるんですね。
ただ、あそこがなかなか難しいというか、限定的であったりとかしますので、その点について、もう少し教職大学院の方で認めたもの、あるいは私どもだと、テッドコールというのは観光なんかでもあるんですね。そういうものを機関別のところで、もっと簡単にと言ったら申し訳ないんですけども、決まったものとして認めていただけると、非常に負担感が、最初から事務作業しなくていいということが分かるのでいいのかなということが1点。
もう1点は、先ほどから出ています、受ける側の事務量の膨大さということで、この間、10年ほど教職大学院の認証評価に関わらさせていただいたんですが、教職大学院、もちろん規模も小さいですし、形も決まっているのでやりやすいということはあるとは思うんですけれど、ただ、作る前から、こういう基準で認証評価を受けるんだということが分かっていますので、そういったものを資料として、教職大学院側も整えています。内部質保証として必要に、出せと言われるものをもともと整えているので、出してください、受けますと言っても、探してくる必要はなくて、それに沿って、ためているものを出すと。もう教職大学院は2周目に当たりますので、どこの大学さんもそういう意味では、かなり手慣れてお出しいただけるようになってきましたので、もしかすると今後の、今回、大学全般的に内部質保証ということが言われている、これを機に、例えば教員養成の学部は内部質保証の中に、こういう項目を入れていただいて、それをそのまま認証評価に持っていけるというような、2回作業をするんじゃなくて、一つの作業で、全部が通っていけば、それほど難しい、まあ、大変ですけれども、あっちとこっちで違うものを用意しないといけないという負担感がかなり軽減されるのかなというふうにも思っております。
ということですので、学部の方も、項目とかを今すぐ義務化とか言うよりも、そういうところをはっきり先に提示していただいて、何年か後にそれに沿ってということだと、あんまり負担感はないのかなという気がいたします。

【山口主査】 ありがとうございました。はい、どうぞ。お願いします。

【北神委員】 今、添田先生からお話あった部分のところですが、認証評価にしても、質保証にしても、基本は大学、学部の自己点検・評価なんですよね。それがきちんと機能しないと、第三者評価を受けようが、それは完全には役に立たないだろうと。そうすると、その各大学、学部が行う自己点検評価を後押しする、その中で負担感も軽減できるようなやり方が必要ではないか。例えばその点で考えたとき、東京学芸大学、今は教員養成評価機構ですけども、そこが作っていただいた5領域、13基準、40の観点という部分が、それぞれの学部が自己点検をするときの項目として使えるような、何かそういうものの一つの基準として活用できるという形になればよいのではないか。大学は法令上、自己点検・評価しなければならないし、その結果を公表しなければいけないということは法令上、決まっているわけですから、その意味では、そういう基準がある中で、毎年、報告書を各大学、学部が作って、それに見合うエビデンスも付けるという形で、各年度ごとに作っていくと。それを例えば5年とか7年ごとに受けるというときには、その年度の報告書を全部まとめて提出すれば、それで済むんだというような形でいけば、毎年のPDCAサイクルが5年ごと、7年ごとの方にもつながっていくと、そういう形でやり方というか、フォーマットがある程度示されれば、そんなに負担感がなくてやれるのではないかと思います。
そういう部分のところで、機構が作られている5領域13基準40について、意向調査をされた結果があるところですが、この点、例えば各大学から何かその部分での要望とか改善課題みたいなというのが出ているのか。フォーマットそのままという形なのか。その辺り、実際に調査された渡辺さんがいらっしゃるので、そこから当事者としてどういう分析をされたのか、ちょっとお話を伺えればと思うんですが。

【山口主査】 よろしいですか。渡辺先生、直接お答えいただいて。

【北神委員】 大丈夫ですか。すみません。

【教員養成評価機構(渡辺)】 ありがとうございます。教員養成評価機構の委託研究で委員を務めております渡辺と申します。よろしくお願いいたします。
今回の意向調査につきましては、本日もお配りしております『教員養成教育認定 自己分析書作成の手引き』という橙色の冊子(資料3-2)をお送りして、意向をお聞きしています。その中には5領域13基準40の観点が示してありますけれども、調査自体は基準領域ごとの取り組みやすさというか、基準領域1、2、3、4、5、どれに取り組むことが効果的と考えるかという形でお聞きしてしまったので、基準や観点についての評価というのはお尋ねしておりません。
ただ、東京学芸大学のプロジェクトにおいて、この40の観点について今回の調査対象と同じ方々にお聞きした際には、基本的には、これらはおおむね評価の観点として妥当であるという御意見を頂きました。ただ、併せて、それが実際にどれぐらい取り組めているかということもお尋ねしましたが、そこには濃淡がありました。その調査から時間がたっておりますので、私の個人的な意見ですけども、もし少し余裕があれば、改めてまたお尋ねしてみることも重要ではないかと考えました。ありがとうございました。

【山口主査】 どうもありがとうございました。突然振りました。
はい。本図先生。

【本図委員】 今の基準のことにも関係するんですけれども、むしろ、川手先生にお尋ねしたいんですが、教職大学院の評価の10の基準というのは非常によくできていて、大学の認証評価の基準と大体沿っているんですけども、その一部をクローズアップして、今回のこの五つの基準というふうに理解できるのか。あるいは、教職の本来的な在り方というところで、とにかく学部はということで、この基準だったのか。将来的には、北神先生おっしゃるように、やっぱり大学も大学院も体系化した中の基準の中に入っていくべきだとも思うんですけども、御研究のときにはどういう理念だったんでしょうか。

【川手東京学芸大学教授】 今回の私どもの評価機構のものは、先ほど申し上げましたように、ほぼ10年前から行っている、東京学芸大学で行った開発研究ですけれども、これは基本的には学部を想定して行いました。ですので、現在、評価機構で行われている教職大学院のものとは連動しておりません。

【本図委員】 ありがとうございました。これは意見としては、やはり教職大学院の基準というのは、大学の全体の認証評価とも大体そろっていて、網羅的だと思うので、その中の一部を強調すると、こういう基準になるんだというふうになってくると、体系性も出てきて、学部、大学院と一体性も出てくるのかなと思っております。

【山口主査】 やはり教職課程に関する内部質保証的なものを一本、筋を通すということなんだと思います。それが無駄もなくすし、負担も少なくできるということなんだと思うんですが、ついでに、また長谷さんに御質問なんですが、実地視察のときの評価項目というかな、着目点と、今の機構の話とは全く関係してないんですか。
実地視察は、それはそれですごくいいとおっしゃっているわけですから、何かその辺が首尾一貫していないと、何の保証になっているか分からなくなりそうな気がするんですけど。

【尾白教育人材政策課専門官】 失礼します。教育人材政策課の尾白です。実地視察の資料、資料2を御覧いただければと思います。資料2の1ページ目でございます。
実地視察の内容というところで、マル1からマル7まで掲載しているというところです。教員養成に対する理念設置の趣旨が、マル1、2として教育課程や履修方法。マル3として教員組織、施設・設備、教育実習の実施計画、学則、学生の教員への就職状況等となってございますので、かなりの部分で重なっているところはあるのかなとは思うんですが。

【山口主査】 重なってはいますが、区分けの仕方が全然違うという感じですよね。
どうぞ。本図先生。

【本図委員】 多分、実地視察は、課程認定に対する法的な最低限のところを確認するというような意味合いだとは思っております。

【山口主査】 関連してでも御意見ありますか。佐古先生。

【佐古委員】 ありがとうございます。前回までの議論の脈絡で言うと、教職課程の授業科目設置の共通化ということで一つの方向性が出ていたと思いますが、そのことのためには教職課程の質保証を担保する評価システムを整備することは必要であると思います。方向性とすれば、教職課程についてのきちんとした評価を行い、質保証の担保を付けて、科目の共通開設等の道を開いていくようなことを考えておくべきだと思います。
もう一点、自己分析・自己評価がその基本であると思いますし、東京学芸大学から御提示のあった資料も非常に参考になりましたが、違和感を感じますのは、教職課程の設置主体と評価を受ける主体とのズレの問題です。教職課程の設置単位は、学科等とすることで大体意見が整理されてきたと思いますが、提示していただいた資料では、評価の対象は、学科等ではなくて、学部とされています。。例えば、教職課程の理念の共有という項目があったとしても、学部の中で様々な教科の免許を出している場合、何について評価されるのかが分からなくなるのではないかと思います。評価を受ける対象と、現実に教職課程を運営している主体が、一致していないような印象を持っております。その点いかがでしょうか。この点、何かありましたら教えていただきたい。

【川手東京学芸大学教授】 今、先生から御指摘頂きましたことは、私たち、10年前からこれを開発していく中で、常にあった一つの問題ではないかと思っております。私の職場のように、教員養成系大学の場合には、そうした矛盾というのは生じないわけですけれども、しかし、様々な大学がある中で、そうした矛盾にどう向き合っていくのかというところで、作っていく中で、そういった意味では、シンプルに、かつ汎用性のあるものということで開発をしましたけれども、しかし、今、先生から御指摘頂いたようなずれみたいなところが残ってしまっていて、その中で、先ほど御報告頂きましたように、私たちのこれを利用していこうとしたときに、様々な大学からは使い勝手というところで、そうした御意見を頂いているというふうに思っています。ですので、そこの汎用性と、それから、シンプルさがありながら、しかし、今みたいなところをどう乗り越えていくのかが課題ではないかと思っています。

【山口主査】 ありがとうございます。
ほかに御意見ございますか。酒井先生。

【酒井委員】 ありがとうございます。全然違う観点なんですが、先ほど、先生、工学のことをおっしゃって、そのことが一つなんですけど、要するに、それぞれの専門学部、専門学科、要するに、開放制の中では、一方では、工学としての水準維持・質保証がある。その話と、工学ですと多分理科だと思うんですけれども、理科の教科の専門性の質保証の基準というのは、ある部分は非常に合致するんですが、ある部分は多分違うんですね。
そうすると、どっちを向いて質保証するのかということが、ある部分ではやっぱりバッティングしていくんじゃないかと。ですから、全体の話と同じなんですけど、要するに、今、質保証ということで、いろんなところで、いろんな観点で質保証があるんですけども、その質保証の全体の調整をしていかないと、これだけを独り歩きさせるというのはちょっとおかしいかなというのは意見としてございます。

【山口主査】 ありがとうございます。御指摘のとおりだと思います。あえて工学の方の技術者教育の認定の話で言えば、工学、それこそ機械とか土木とか多岐にわたるわけですね。それを共通してくくった基準というのは当然あります。ただ、専門性が違えば、質保証の中身も若干ずれるという意味で、分野別要件みたいな、ちょっとだけ下位の基準でちょっとカバーすると。だから、全体を全てカバーするのはかなり大くくりにして、本当の基本的なところだけにしておくというのがスタンスだと私自身は理解しています。だから、同じようなことができないのかなと正直思いながら、ずっとお話は聞いているというところです。
それと、佐古先生がおっしゃったように、このワーキングは、ある意味、規制緩和を前提として、教員養成の効率化も図ろうと。そのときに過去2回のワーキングで常に出たのが、質保証、絶対やった上だよねという話できょうの議論がありますから、そういう意味では、質保証の一般論も当然さることながら、やっぱり規制緩和的なことを考えるに当たっては、特にどこに注意すべきかという観点も必要なのかなと私自身は思っています。
いかがでしょうか。森山先生。

【森山委員】 東京学芸大学さんとは最初の辺りからずっとお世話になりまして、勉強させていただいたわけですし、今回、全私教協の委員として担当したものですから、何となく発言しづらいなという点もありますが、一、二点、御意見を伺いたいと思いますので、発言させていただきます。
評価疲れといいますか、そういう中で、例えば教職課程ということに限定した場合には、これまで大学の認証評価の中でも扱われなかったわけです。いわゆる開放制教員養成大学の中では、教職課程というのはあるけれど、大学そのものの認証評価の中では、教職課程は評価されていない。もちろん教員養成系大学の場合は、大学の認証評価イコール教職課程の評価みたいなものですから、これはある程度一致がなされるわけですけども、これまでの経緯を見ますと、やはり認証評価自体に教職課程そのものがオプション的なものとして扱われて、大学の認証評価になっていなかったというようなところからスタートしているわけですね。
そういう意味では、大学の認証評価の中での教職課程そのもの自体がなかったわけです。取り扱おうとしても、やはり教員養成系大学の教職課程の評価と開放制のところの教職課程の評価は、ある程度区別されてしまう。ベースのところだけを考えればいいのでしょうが、そうすると今度は、教員養成系大学のレベルとしては、そういう評価では機能しないということで、先ほど酒井先生のお話、御指摘ありましたとおり、私もその辺りのところがしっくりとこないと思っているわけです。
その中でまた教職大学院等が5年で認証評価ということ、あと、法科大学院や専門職の大学院があれば、大学の中でそういうものも認証評価として動いています。加えて教職課程の認証評価、大学全体の認証評価ということで、恐らく総合大学であれば、いつもいつも評価を受けていることになりはしないかと思います。
そうなると、今回は学部で認定をしていますが、本当に学部での評価がいいのかどうかということも検討の必要があると思っています。大学によっては、学部で受けるということで、何となく教職課程の評価を受けていないような、そういう大学もやっぱりありますし、それから、いや、ずばりこれがいいんだという大学もありますし、これはもう大学によって、教職課程をどう位置付けているか、あるいは、大学の組織の中で例えばセンターが主導で動いているのであれば、学部をある程度評価しても、そこが浮き彫りになってこないというのもあるでしょうし、センターを中心としないで、学部を中心として教職課程の運営がなされていれば、それはずばり、そのもの認証評価に適合するというようなところもあったり、なかなかその辺りのところが一致しないような大学も出てきているはずだと思いますので、そういう意味での交通整理といいますか、大枠はやはり整理していかないと、Aという印象を受けたものをこれもある程度こちらに移行しようと、使おうといったときにも問題が出てくるんじゃないかという感じがしています。
だから、その辺りのところの整備をしていって、それによって、質の保証がある程度明確になるということを前提に、この委員会、ワーキンググループの議論が進んでいくのではないかと思いました。
それから、あともう1点は、評価者の育成が必要になってくるでしょう。私も実は東京学芸大学の、それこそ各先生方と御一緒に、評価者のトレーニングを受けたわけですけども、これをどのようにやっていくのかということです。これが質保証の認証評価を大きく左右する一つの要因だと思いますので、その辺り、それぞれのきょうの二つの組織から御意見頂ければ有り難いと思います。
以上です。

【山口主査】 ありがとうございました。今の森山先生の御発言に対して御意見ありますか。加治佐先生。

【加治佐委員】 また個人的な意見になりますけれども、きょう御紹介ありましたように、これまでも答申で何度かこの問題が言われてきているわけですよね。ですから、今回で一定の何らかの結論を出すんでしょうかね。何かそう思うんですよね。つまり、端的に言うと、自己評価を義務化するのか。内部質保証ですね。それとも第三者評価まではいくら何でも行かないかなとは思いますが、そういうところまで踏み込んでいくのかという、そういうことについて具体的な結論を出すということだと思っています。
そうした場合、いろんな課題が当然出てきますよね。今、皆さんがおっしゃったとおりなんですけども、やはりその中で最大の問題は、大森先生がおっしゃった、質保証のための評価を、評価の仕方もいろいろありますけど、厳しくすると、やはり量的なものの減少ということは伴うんですね。例えば法科大学院が典型的だと思います。教職大学院は就職率がいいということで何とか踏みとどまっているという状況ではありますけれども。
入り口のところの課程認定ももちろん今、物すごい厳しくなってきていますけれども、これまでの歴史の中で、特に開放制のところはかなり広く課程認定をしてきたということはあるわけですよね。
これからは少子化ということもあります。少子化もあって、教員ニーズも減ってくるという状況の中で、特に現場は課題が多いわけですよね。それに対応できる教員、さらには、先生になろうとする人が減ってきていると、そういう厳しい状況もあるわけですよね。そういう中で、意欲の高い、非常に成長可能性を持った学生を現場に送り出すためには、それを行う機関のかなりの程度の質保証が要るということで、自己評価を義務化するのか、あるいはもっと行くのか。規模的に縮小はある程度はやむを得ないというか、あるいはもっと言うと、教員養成を行うところに対しての一定の、何ていいますかね。本当にやる気というかな、覚悟みたいなものを問うことにもなるのかという気は個人的にはしております。

【山口主査】 ありがとうございます。一定程度のものが出ると、ここでは公には言えないですね。文科省に振っても困りますね。振りたい気持ちはやまやまなんですが、お聞きしたいんですが、やめておきましょう。
それと、最後の加治佐先生の、質を担保するには、規模を縮小してもやむを得ないという話、なかなか重い御発言のように、私個人的には思いました。

【加治佐委員】 いや、結局、何といいますか。教職課程だけの評価を行うということにおいては、そういう目的もあるんだと思うんですよね。ほかに大学全体の評価もあるわけですし、プログラムごとに専門職大学の認証評価もあるんですよね。そういう中で、教職課程を別途やらなきゃいけないという問題意識の中には、最低限の質保証のできない教職課程には退場していただくということがあるんだと思うんですね。

【山口主査】 安部先生、よろしければ。

【安部委員】 今、大学では、教育の質保証のための自己点検活動が盛んです。7年ごとの認証評価が、機関として義務化されているという枠組みの中では、教員養成に特化した学部、学科においては、今示していただいた基準がベースとなり機関としての評価につながっていくのだと思います。一方で、教員の多様化が求められる中にあっては、一般学部における教員養成を引き続き開放していかなければならないという前提があります。例えば本日の参考資料2の実地視察大学に関する平成28年度の視察書を見ると、少人数の教員免許取得の課程で、教員になる方も1桁ぐらいの人数の私立大学はとても多いわけです。そういうところの教育の質の担保や教員養成教育の評価をどうしていくかということについては、例えば機関としての認証評価の項目の中に、教員養成系の項目等を設けることで総合的な認証評価制度として一本化するという方法も考えられないかなと思います。
先ほどから負担が大きいという話もありますが、非常に多くの評価の報告が求められるために、大学の評価疲れという現状もあるわけですから、もっと簡素化するというか、一本にまとめるというようなやり方も、規模などと照らし合わせて考えてみる必要もあると思います。しかし、流れとしては、やはり質保証のための評価基準の精緻化は求められています。その中で、分野別の認証評価の在り方が議論されている状況がありますので、教員養成におきましても、今回御提示していただいた認証基準を活用するということは非常に重要なことだという、一見矛盾した二つの観点があると思います。
まず、教員養成の規模を前提として、機関としての教員養成がどのような認識で捉えられているのか。特に私立大学は教員養成をどのように大学全体で考えているかというような視点が大切であるし、それに沿った認証評価並びに自己点検の仕方というのを検討していく必要があるのではないかなと思います。
以上です。

【山口主査】 ありがとうございました。私学の場合の話が結構出たんですが、田子先生がここで調査したことも踏まえて、何か御意見あれば伺いたいと思いますけど。

【田子東京薬科大学教授】 いろいろ刺激的な御意見を拝聴しておりまして、ここは全私教協としての立場で言う場面ではありませんので、そこは控えめにはしたいとは思いますが、教員養成機関というふうに言った場合に、私学も国立も一般大学の学部というのは、教員養成機関という定義に入るのかどうかということがまず我々としては知りたい。1学部でも課程認定を受けている学科と受けていない学科が混在しているところがあるわけですので、その辺りの定義付けといいますか、これはどこかで教えてもらいたいなと思います。
それから、規模が小さくて教員になる人が少なければ、これはなくなってもいいのかというふうに言うと、これは誰もいいとは言わないと思いますが、しかし、片方で、規模の縮小ということも出てきております。これはやはり教職課程、教員養成教育をやるかどうかは大学自体の判断ですので、それに任せる以外はないわけですけれども、できる限りそうした意味のある教員養成に対しては、意味を残してもらうようにサポートしていくというのが我々のというか、全私教協としては、文部科学省にも是非お願いしたいし、また、自分たちも自己努力として、協会として、そうした研究の活動も行っております。
そういう立場からしますと、教員養成機関で、学部として報告書を出すということの書類にどう書いていけばいいのかというのがまだちょっと、正直、まだよく判断がついていないというところがございます。
それから、評価基準や項目についても、やはり多様性を持ってもらいたい。一つの、東京学芸大学の基準はよくできていると思いますけれども、やはりそれを加盟校に聞いたところ、こういう項目等はやっぱり遠いと、あんまり近くないんだという率直な意見が出てきていますので、そういう遠いところを、必要な意味を残して、評価項目としてどういうものを作るかということです。全私教協は委託研究を受けた1年目ですので、我々としては今からやるつもりで私立大学の特色を反映できる評価項目を作りたいと思っております。

【山口主査】 ありがとうございました。
川手先生、ちょっと振っていいですか。まず最初の教員養成機関、定義というのはあってないようなものだとは思うんですけど、それは独自に考えればいい話のように私は思ってはいるものの、その辺も含めて、それから、やはり基準の項目等々が当然、全てに対応できていない現状にあって、今後どう展開し得るのか。特に私が気になったのは、大森先生、安部先生もおっしゃった、極めて小さな組織であって、かつ、教員として配置する人数も本当に少ない。そんなところに同じ基準なのかという。まあ、基準というか、手間暇なのかというところなんだと思うんですが、そういうことに関連して、何か御発言いただけますか。

【川手東京学芸大学教授】 前の東京学芸大学のプロジェクトでいいますと、教員養成の機関というのは、これはやはり一つの学部のところで受けていれば、そこが単位だというふうに私たちは考えて、試行を展開しました。
それから、基準のことについては、つまり、汎用性といいますか、つまり、私たちのような教員養成系大学とそうではない開放制の大学で、同じ基準でということは、私たちの中でも常に問題になりましたが、ただ、先ほどの報告でも申し上げましたけれども、私たちとしては、基準は一つ一つの基準を全て当てはめなくてはいけないということでは考えておりませんでした。なので、その基準の関係性の中で、それぞれのところで、それぞれのタイプの大学のところでできることを書くという、そういうことで一応設けましたけれども、でも、それでもやはり今頂いたような御意見は私たちもたくさん受けておりましたので、そこは更に何ができるのかということを考えていかなくてはいけないというふうに思っています。

【山口主査】 どうもありがとうございます。
どうぞ、大森先生。

【大森委員】 今、川手先生がおっしゃっていただいたことというのは大事かなと思っていて、それは先生が最初におっしゃっていただいた、やっぱり内部質保証ということが原則だといったときに、自分たちで自分たちの教職課程なり、あるいはディプロマカリキュラムなり、どういうふうにその観点でしっかりと保障していくかということは、各大学がまずみずから考えるべきであるというところです。
ただ、最近の我々の若干の、被害者意識じゃないんだけれども、隣に高等教育さんがいるのであれなんだけど、例えばいろんな基準とかでも、うちみたいに小さいところだと、例えばIRの担当者が専任で置かれているかと言われると、いや、無理、無理という話。だけども、それができていないと、何かできていない大学みたいにラベリングされるという恐怖感みたいながあるわけですよね。でも、それがその人が置いてなくても、実質それができるのが小さい組織のよさだったりもするという中でいうと、自分たちにとって、これは使えるというものをきちんと使いながら内部質保証をしていくというようなことというのはすごく観点としてはありだなというふうにはひとつ思いました。
もう一つ言うと、一般学部の場合の質保証のときに、もちろんカリキュラムのことをきちんとやるというのは、その設置基準を満たしているかとかそういうのは見るわけですけれども、やっぱりアウトカムとしては、アウトカムというか、数字にはならないかもしれないんですけども、卒業して就職した学校へのヒアリングですね。これは自分の首を絞めそうなんですけども、うちなんかだと、やっぱり就職している企業さんに全部電話を掛けて、どういうことですかということをやっていて、課程がどうであろうが、だめなものはだめだからということもあるわけですよね。だから、本当はうちなんかだったら、もう群馬県や前橋市の教育委員会さんと一緒になって、勤めている先生たちがどうですかと。こういうところがだめだと言われたら、じゃあ、それをどうしようか、実践が足りないと言われたらとか、英語力が足りないと言われたらとか、あるいは、いいよと言われるかもしれないという。そこが本当の質保証だというふうには思ってはいます。
もう一つ、さっきの教職課程の数の話なんですけれども、私も一定程度あるべきだというふうに思っています。それは、輩出する教員の数だけが教職課程の意義じゃないように思っていて。というのは、教職課程がある大学がある市町村の学校支援とか、地域の様々な課題に対してのアプローチというのがすごく、本学の場合だと、教職課程を置かれてから一気にその関係性が深まっていきました。学生たちも今、放課後、いろんな公民館に出ていって、寄り添い型の学習支援をやったりとか、小規模校に学生が1週間交代で勤務して、先生方の支援をしたりとか、そういうようなことが教職課程があることによってかなりできてきている。子供たちのキャリア教育を学生がやったりとかですね。そこの価値というのもあったときに、単に教員を輩出するという規模感だけではなくて、地域にとっての教職課程があることのインパクトというのも相当にあると考えると、なるべく課程を持っている大学さんがい続けられるような、もちろんここではちゃんと採用試験を受ける学生の母数を確保したいというのは一つの大きな課題ではありますけれども、それだけじゃない価値というのも教職課程にはすごくあるというふうに思っているので、なるべく多くの大学さんが持ち続けられるということをどうしたらいいのかというのを考えられるといいなと思っています。

【山口主査】 ありがとうございました。
どちらにしましょう。酒井先生、先に手が挙がっていました。

【酒井委員】 すみません。時間がないところに。手短に。もう一つお考えいただきたいと思うのは、この東京学芸大学のところの川手先生の、自己評価と、自己分析と第三者評価、二つの課題がある。この二つは質的に違うレベルで設定されるべきだというのがちょっとありまして、要するに、内部質保証評価、これは努力ですので、非常に高い水準を努力として設けて、そこに向かってどうしていこうかというのを大学それぞれが御自身で考える、これは非常に大事なこと。ただ、これを第三者評価にそのまま持ってこようとすると、これは途端に非常に縛りになるというか、非常に強制的なものになる。
実地視察は、先ほど説明がありましたように、法令最低基準を満たしているかという基準でやっているんですね。ですから、もし自己分析のところの評価を第三者評価にかぶせようとすると、途端に非常にスタンダードが上がるわけですね。ですから、それは非常に慎重でなければいけなくて、ですから、ここの部分は、今までの実地視察の考え方が非常に重要だと思っていまして、そこを勘案して考えていかなければいけないんじゃないかというのはちょっと考えました。

【山口主査】 佐古先生。

【佐古委員】 では、手短に、2点ほどお願いします。
1点目は、きょうの議論は、教職課程の自己分析、自己評価についての議論だったと思いますが、自己分析書を作ることが目的となってしまい、それに追われるようになると教職課程の質の改善には至らないと思います。自己分析、自己評価に基づいて、いかに教職課程の質の改善を図っているかが重要なポイントだと思います。
その点で、きょうは議論はありませんでしたけれども、FDが重要になると思います。FDと言うと、個々の教員の授業研究に特化してしまう傾向があるように思いますが、自己評価、自己分析に基づいて、教職課程の在り方とか理念を確認したり、あるいは科目の位置付けを明確にしていくというような活動も含めて、FDを捉えていくべきだと思います。FDに関する考え方も自己分析と連動させて、広げて捉えていくべきだと思います。これが1点目です。
2点目は、これもきょうの議論ではありませんでしたけども、自己分析と言うときの主体は何かが気になっています。おそらく自己分析、自己評価を学部で行うとすれば、学部でいろいろな科目を担当されている先生が集まって、委員会等を作って分担して評価書を作成することになるのが一般的だと思いますが、それで本当にいいのだろうかと思います。つまり、教職課程に責任を持つ主体というものを大学の中でしっかりと位置付け構築していく必要があるのではないか。自己評価、自己分析を行い教職課程の改善を推進する、教職課程の責任ある運営主体を各大学が明確に構築していくことが必要だと思います。これが2点目です。

【山口主査】 ありがとうございました。
私自身はだんだん明確になってきたんですけれども、例えばこのオレンジ(資料3-2)が言われるんですが、タイトルにあるように、これは「認定」なんですよね。「認証」じゃないんですよね。自己評価とかそういう話とは違って、認定なんですよね。認定というのは別の意味、全然違う意味があって、例えば技術者教育で言うと、認定することで、ワシントン・アコードと称して、世界的な教育の質保証をされますというインセンティブが働くものでないと、認定は誰も受けようとはしない。今の場合はまだそこまで全然行っていないから、しかも認証と混同して使われつつあるので、この辺で整備しないと本当に先に進まないだろうなという気はしました。
そのときに、じゃあ、どういう単位で、あるいはどことして、どういう組織で責任を取るかという話、佐古先生の御指摘のとおりで、それも「認証」か、「認定」か、その他かで全然違ってくるんだろうなという気がします。
そんなまとめ風の話をしても先には進まないんですが、認識は共有できたかと思いますし、問題点は十分理解できたので、こういったワーキングの意見が加治佐先生の部会で持ち上がって、更に上に行ってということになっていくといいのかなと思います。
長谷さん、何かありますか。いいですか。
では、時間もちょうど来ましたので、本日の審議はここまでとさせていただきます。活発な御討議、大変ありがとうございました。
事務局においては、毎回大変で申し訳ないんですが、いつも議論を発散気味にしてしまう私の癖で、取りまとめ、大変ですが、何とぞ、事務局よろしくお願いします。
先ほどもちょっとありましたけど、次回の会議では、今回に続いて、本ワーキングの検討事項の3、課程認定後も全学的に教職課程の質を保障し、向上させるための継続的な仕組みについて検討するわけですが、本日と別の団体をお招きして、全学的に教職課程を統括する組織についての取組状況を御説明いただいて、御議論いただきたいと思っています。
今後のスケジュールについては、事務局から説明お願いいたします。

【長谷教育人材政策課教員免許企画室長】 お手元の資料6に今後のスケジュールがございます。次回、第4回は7月23日の10時から12時となっております。先ほど主査からお話しいただきましたように、教職課程を統括する仕組みについての実際の例と、あとは、大学基準協会にも調査を委託しておりましたので、大学基準協会からもお話を頂きたいと思っております。
それから、本日の議論の中で、既存の認証評価との関係ですね。機関別認証評価との関係ということも随分お話を頂きました。実は、本日、高等教育局の評価専門官の竹中補佐にも来ていただいておったんですけれども、やはり既存の評価との関係の整理というのも必要だというふうに感じております。実は大学基準協会には、基準協会でやっております機関別認証評価の中での教職課程の扱いということについても研究していただいておりましたので、そういった点についても、次回また引き続き御議論いただきたいというふうに思っております。

【山口主査】 どうもありがとうございました。
それでは、本日の会議はこれで閉会いたします。本当にありがとうございました。またよろしくお願いいたします。

── 了 ──

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