教育課程部会 児童生徒の学習評価に関するワーキンググループ(第12回) 議事録

1.日時

平成30年12月17日(月曜日) 10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省 東館3階 3F1特別会議室

3.議題

  1. 児童生徒の学習評価に関するワーキンググループにおけるこれまでの議論の整理について
  2. その他

4.議事録

【市川主査】  それでは,定刻となりましたので,ただいまより教育課程部会児童生徒の学習評価に関するワーキンググループ第12回を開催させていただきます。
 初めに,本ワーキンググループの審議等につきましては,初等中等教育分科会教育課程部会運営規則第3条に基づきまして,原則公開により議事を進めさせていただきます。それとともに第6条に基づきまして,議事録を作成し,原則これも公開するものとして取り扱うこととさせていただきます。よろしくお願いいたします。
 なお,本日は,報道関係者の方々より,会議の撮影及び録音の申出がございます。これを許可しておりますので,御承知おきください。
 それでは,事務局より配付資料の御確認をお願いいたします。
【白井教育課程企画室長】  お手元の議事次第にございますとおり,本日資料1をお配りしております。不足等ございましたら事務局にお申し付けください。
【市川主査】  それでは,議事に入ります。委員の皆様には,以前,今後の流れについて共有したと思いますけれども,本日のワーキンググループが年内最後の開催となりますので,本日議論を取りまとめたいと思います。
 まず,12月3日に開催いたしました教育課程部会と本ワーキンググループの合同会議におきまして,皆様から頂いた御意見等を踏まえまして,児童生徒の学習評価の在り方について(これまでの議論の整理(案))を修正いたしました。まずは,事務局から,児童生徒の学習評価の在り方について(これまでの議論の整理(案))について御説明をお願いいたします。
【白井教育課程企画室長】  失礼いたします。
 それでは,お手元の資料1に基づいて御説明をさせていただきたいと存じます。前回の合同部会から大きく変わっていないというふうに考えてございます。主な修正点は4点ございますので,また後ほど追って御説明申し上げたいと存じます。既に委員の皆様方,内容については何度も説明をさせていただいていると存じますので,ごく簡単に全体の御紹介,その途中で主な修正点についての御紹介をさせていただきたいと存じます。
 まず1ページです。はじめにということで中教審答申からこれまでの評価に至る流れ,それから評価の考え方について記述をしてございます。
 2ページ目です。学習評価についての基本的な考え方ということで,カリキュラム・マネジメントの一環としての指導と評価,それから,主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善と,それの最後に資質・能力を確実に育成するという観点から学習評価の役割を記載していると。(3)ですが,一方で,学習評価については,様々な課題,典型的には,表面的な態度の評価になってしまっているんじゃないかという「関心・意欲・態度」の評価など,様々な課題も指摘されていると。そういう中で4ページ目になりますけれども,(4)学習評価の改善の基本的な方向性としては,今後の児童生徒の学習改善につなげる,教師の指導改善につなげる,また,慣行として行われてきたことでも,必要性・妥当性が認められるものについては大胆に見直すということで,これまでの御議論を頂いてきたところでございます。
 5ページです。3というところで,学習評価の基本的な枠組みと改善の方向性です。(1)のところでは,図の1をお示ししておりまして,各教科における評価の基本構造として,学習指導要領の目標,内容を3つの柱で整理をしています。それに基づいて各観点別学習状況の評価をしていくということになりますけれども,ただ,学びに向かう力,人間性等のうち,感性,思いやりなど,観点別評価になじまないものについては,個人内評価として児童生徒一人一人のよい点や可能性,進歩の状況について評価をしていくというのが基本的な仕組みということになろうかと思います。
 6ページです。(2)としまして,観点別学習状況の評価の改善についてという点です。丸1の観点別学習状況の評価についてというところでは,先ほど申し上げましたように,今回,資質・能力の3つの柱で学習指導要領を整理したということに基づいて,観点についても,「知識・技能」,「思考・判断・表現」,「主体的に学習に取り組む態度」,その観点に基づく評価を行うということ。また,その際には,現行と同様に3段階,A,B,Cによる評価をするというふうに記述をしてございます。また,「知識・技能」の評価について,これについても,ペーパーテストにおいても単に事実的な知識の習得を問う問題だけでなく,概念的な理解を問う問題とのバランスに配慮する等々の具体的な工夫の事例について記述をしてございます。
 7ページの中段,丸3,「思考・判断・表現」についてです。こちらの評価につきましても,同様にペーパーテストのみならず論述,レポート作成,発表,グループでの話合い,作品の制作,表現等の多様な活動を取り入れたり,それらを集めたポートフォリオを活用した評価をするということが記載されているところでございます。
 8ページの中段,丸4からが,「主体的に学習に取り組む態度」の評価についてというところでございます。先ほど申し上げましたように,8ページの一番下ですが,「学びに向かう力,人間性等」の中には,観点別評価を通じて見取ることができるものとしての主体的に学習に取り組む態度と,それから,観点別評価になじまない個人内評価で見取る部分があるということに留意をするということを書いてございます。
 次のページにお進みいただきたいと存じますが,10ページの冒頭のところです。「主体的に学習に取り組む態度」については,2つの側面の評価が大事であるということで,丸1としまして,知識及び技能を獲得したり,思考力,判断力,表現力等を身に付けたりすることに向けた粘り強い取組を行おうとする側面,それから丸2として,丸1の粘り強い取組を行う中で,みずからの学習を調整しようとする側面という,この2つの側面を評価することが大事であるということを書いてございます。これについては,11ページの図2においても,イメージとして図示を今回入れさせていただいているところでございます。なお,この点について,何点か細かい修正がございます。
 まず,10ページの一番下の脚注13というところでございます。この評価についてですけれども,先ほど申し上げました丸1の側面,丸2の側面,両方あるわけでございますけれども,その2つの側面をそれぞれ個別に評価をするということになってしまいますと,事実上4観点のようにもなりかねない部分がございますので,実際の評価の場面においては,これらの側面,丸1,丸2双方の側面を一体的に見取ることも想定されるんだ,十分考えられるんだということについて,13ページの脚注において記載をしてございます。
 またもう1点,細かいところでございますけれども,11ページの一番上のパラグラフになります。前ページからの記述ですけれども,「主体的に学習に取り組む態度」の観点については,単に学習に対する粘り強さだけを評価するということではなくて,丸1,丸2の両方の側面を評価していくということが基本になります。当初,仮に丸1の側面について,特筆すべき場面,事項がある場合にはということで,特に非常に粘り強い側面が見られる場合には,総合所見等において評価をしてはどうかということが書いてございましたけれども,ただ一方で,特に自己調整について頑張っているという面もあるだろうということもございますので,丸1や丸2の側面,「主体的な学習に取り組む態度」のそれぞれの側面について特筆すべき事項がある場合には,必要に応じてそこの総合所見欄において評価をすることも考えられるということで,丸2の側面というところを追記させていただいております。
 11ページの下の方の,一番下のパラグラフになりますけれども,各観点ごとの関係性等についても今回記述してございます。指導と評価の取組をふだんの授業において行っていただくということで,単元末,学期末,あるいは学年末の結果として出される観点別評価については,観点ごとに大きな差は普通は生じないのではないかと。仮に,例えば単元導入時等において,CCAであるとか,AACといったばらつきのあるような評価が考えられるという場合には,先生方に適切な対応を行っていただくということが重要であろうということを記述してございます。
 12ページ,ウ)のところでは,「主体的に学習に取り組む態度」の評価の方法として,具体的には例えばノート,レポート等における記述,授業中の発言,教師による行動観察,児童生徒による自己評価,相互評価,これらを材料として先生方に評価をしていただくということになろうかと存じます。
 また,12ページの中段ですが,発達の段階に応じた評価ということも重要であるということから,例えば特に小学校の低学年,中学年などの段階では,学習の目標を教師がめあてなどの形で提示をして,それに向かってどんな工夫をしているのかといったことを評価する。ほかの児童との対話を通してみずからの考えを修正したり,どのように考えているのかと,そのあたりを評価することが大事ではないかということを記述させていただいております。
 13ページ,(3)にお進みいただきたいと存じます。ここでも若干修正を加えてございます。評価の方針等の児童生徒との共有についてということで,あらかじめどのような基準で評価を行うのか,これについて児童生徒とも共有していくことが大事ではないかという御指摘を,これは若江先生からも頂戴していたところでございます。この表現について,もともとは評価の方針等としておりましたけれども,少し分かりにくいのではないかという御指摘がありましたので,評価の基準や評価方法等の評価の方針について,これを共有していくということが大事ではないか。また,このパラグラフの最後の方ですけれども,こういった評価の方針等について共有していくということで,どんな力を付けていったらいいのかという具体的なイメージを児童生徒に持ってもらうということからも重要であるということに加えて,こういう見通しを持たせることが自己の学習調整を図るきっかけになるということも期待されるであろうという,この最後の文を追加させていただいてございます。
 続いて14ページの(6)障害のある児童生徒など特別な配慮を必要とする児童生徒に係る学習評価についてというところにお進みいただきたいと存じます。こちらについては,前回の教育課程部会との合同会議におきまして,天笠部会長から,当初,障害のある児童生徒中心の記述でございましたけれども,学習指導要領の記述に沿って,日本語の習得に困難な児童生徒,不登校の児童生徒など,特別な配慮を要する児童生徒に関する学習評価について,もう少し包括的に書くべきではないかという御指摘を頂戴しております。その御指摘を踏まえまして,今般,14ページの一番下のパラグラフにおきまして,障害のある児童生徒はもちろん,日本語指導を必要とする児童生徒,それから,不登校の児童生徒についても,それぞれの状況に応じた評価方法の工夫改善を通じて,学習状況を適切に把握して,指導,学習改善に生かしていくんだと,それぞれの実態に応じた対応が求められるという記述を追加してございます。
 また,より具体的には,ちょっとこの注釈は大変小さい文字で恐縮でございますけれども,15ページの一番下の注釈18,19を追加してございます。これまでも日本語指導を要する児童生徒,あるいは不登校の児童生徒に関しては,特に個別の通知であるとか書類改正等を行ってきたところでございます。
 まず18では,日本語の指導を必要とする児童生徒については,現在特別の教育課程を編成することができるという仕組みになってございます。そこで取り出しの指導をするということが可能なわけですれども,この日本語指導の学習の際には,多面的な把握に基づいて指導の目標,指導内容を明確にした指導計画を作成して学習評価を行うというふうにされてございます。こうした学習評価の結果,日本語指導の学習評価の結果については,児童生徒の担任,もともとの学級担任,あるいは教科の担当とも共有をして,在籍学級における各教科等の指導や学習評価においても考慮することが望ましいんだということをまず注釈の18において記述をしてございます。
 それから,注釈19が,不登校児童生徒に関する記述でございます。こちらについても,平成15年に文部科学省が通知を出しているというところでございますけれども,不登校の児童生徒の評価については,評価の指導要録の記載について,必ずしも全ての教科,観点について観点別学習状況,それから評定を記載することが求められるものではないとして,学習状況の把握の状況に応じてそれを文章記述するなど,次年度以降の児童生徒の指導改善に生かすという観点に立った適切な記載に努めることが求められるというふうにされておりますので,この記述を追加しているところでございます。
 次のページ,16ページにお進みをいただきたいと存じます。16ページの(7)は,指導要録の改善についてという点でございます。こちらについては特に変更はございませんけれども,丸1としまして,高等学校においても指導要録の参考様式に観点別学習状況の評価の様式欄を設けるということ,それから丸2としましては,指導要録の改善としまして,総合所見の記述については,例えば箇条書きにするなど,必要最小限のものにとどめてはどうか。また,小学校の外国語活動についても,特に顕著な事項がある場合にその観点について児童生徒の特徴を記入するということにしたらどうかといったことを記述してございます。また,17ページの中段では,通知表と指導要録について,これは条件が合う場合にということでございますけれども,それを共通の様式にすることも可能であるということを教育委員会にお知らせをしていくという点。17ページの最後では,ICT環境の整備,校務の情報化ということが,これから指導要録の作成という観点からも非常に重要になってくる。また,将来的には,データ・ポータビリティ,進学や転校等の際に自分のデータをどういうふうに持っていくのかということについても検討しなければいけないということを記述してございます。
 続いて,18ページからが丸3,観点別学習状況の評価と評定の取り扱いについてという点でございます。18ページでは,観点別学習状況の評価,評定については,それぞれの役割や歴史的な背景があるということについて記述してございます。観点別学習状況の評価については,その辺各教科でどういう観点で課題があるのか,すぐれているのかといったことを明らかにしてくれる,評定については,教科レベルでどの教科に課題があるのか,よくできているのかということを明らかにしてくれるという現状がございます。また,この評定については,現在,高等学校,大学の入学者選抜,奨学金の審査等でも利用されていると。一方で,いまだに相対評価であるんじゃないかというような認識も残っているということもございます。
 19ページの第2パラグラフ以降が,前回,ペンディングとさせていただいた部分でございます。今回,19ページのパラグラフでは,こういった様々な指摘等を踏まえると,国として評定を引き続き指導要録に位置付けるという上で,いろんな課題も指摘されているということがございますので,観点別学習状況の評価とそれから評定,双方の本来の役割を発揮するようにすることが重要である。具体的には,今後,指導要録に関する通知を発出するわけでございますが,様式等の工夫を含めた改善を行って,それぞれの役割,その趣旨を関係者にしっかりと周知していく必要があるんではないか。また,これは鈴木委員からも御指摘を頂いておりましたけれども,今後,調査書の見直しということ,今回新しく作られる指導要録に基づいて調査書を見直していくということがございますけれども,その際には,観点別学習状況の評価についても記載をすることで,1人1人に着目したよりきめの細かい入学者選抜が可能になるということを記載してございます。
 また,19ページの一番下のパラグラフです。観点別学習状況評価の評価,A,B,C等をどのように評定に総括するかについては,従来から学校で定めるというふうにされてきたところでありますので,今後もその方針を継承するとした上で,一方で,国立教育政策研究所が作成する学習評価の参考資料において,その取り扱いの考え方,現在でも幾つかのパターンをお示ししておりますけれども,そのようにすることが適当ではないか。また,この評定をどのように用いるのかということについては,通知表においては各学校において,それから入学者選抜における扱いについては,選抜を行う側である大学であるとか高等学校において,この評定の役割,よい面,あるいはその指摘されているような課題を踏まえた上で,観点別学習状況の評価をこれから大学入学者選抜も含めて活用することが可能になってまいりますので,適切な在り方を検討することが求められるのではないかということを最後に記述をしてございます。
 20ページの(8)からが,学習評価の高校入学者選抜・大学入学者選抜に関する記述です。これについては,大きな変更はございません。特に高等学校の入学者選抜においても,各学校の入学者選抜の方針等に基づいて適切な選抜方法,それから調査書の活用の方法,学力検査の内容等について見直しを図っていくことが求められるということを記載してございます。
 22ページでございます。こちらも変更は特にございません。(9)というところで,外部試験や検定等の学習評価への活用についてということで,指導要録,調査書等全てを先生が,あるいは学校が把握をするということだけではなくて,特に個人的な活動については必ずしも学校が把握するのではなくて,1人1人の申告,提出書類等を用いて確認するなど,入学者選抜を行う大学や高等学校における工夫というのも必要ではないかということを書いてございます。
 23ページの4です。学習評価の円滑な改善に向けた条件整備というところです。こちらも大きな変化はございません。国立教育政策研究所に求められる参考資料の策定等における配慮に関する事項,それから24ページ以降ですが,教育委員会における各種の研修や独自の参考資料の作成,校内の研修,それから教員養成課程,大学における新しい学習評価に関する指導の充実といったことを記載してございます。
 25ページの(3),最後ですけれども,教職員,保護者等の学校関係者,社会一般への周知ということも当然重要になってくるということを最後に記述をして終わりになっているという状況でございます。
 簡単でございますけれども,説明は以上でございます。
【市川主査】  どうもありがとうございました。
 既に大筋については皆様の了承を得られていると思いますけれども,今回の修正に関する御意見や取りまとめに関する御感想などございましたら,どうぞいつものように名札を立てていただければと思います。いかがでしょうか。
 鈴木委員,どうぞ。
【鈴木委員】  高等学校の立場からちょっと一言。今ちょうど高等教育局の方もいらっしゃいますから,今,私の学校はどうなっているかと申しますと,ここでも紹介されましたeポートフォリオ系統と。いろんなものがいろんな民間の業者さんから提案されておりまして,私の学校の進路課では,もうどこかの民間の方々が作成しているeポートフォリオをやらないと大学に出願できない,ですから急いでどこをやるか決めなきゃいけないと焦っておりますが,そんなことはあるんでしょうかと。ちょうど高等教育局の方がいらっしゃいますので。そんなはずはないんですけど。今の提案されているいろんなeポートフォリオを見ますと,非常に量が多くて,働き方改革と言っているのと全く逆行するようなことになっておりまして,イギリスでも,ここで何回も申しましたが,そのようなものをやって,余りに負担が多くてほとんど使われなくなったということがありますから,eポートフォリオに反対するわけではありませんけれども,できるだけ例えば総合学習とか,そういうものと,一部自分の目標を立てるとか,そういうものに整理しないと大変まずいことになるんではないかと。少なくとも私の学校では,どこかの民間業者のeポートフォリオをやらないと大学に出願できないと思ってしまっていますので,まずいのではないかなと思います。
【市川主査】  これはいかがでしょうか。eポートフォリオについては,このワーキンググループの中でも御説明を頂いたことがありますし,どんなものであるかということは共有されていると思いますが,それをどういうふうに,例えば高校の中で生かすのか,あるいは大学入試においてどういうふうに生かすかというところまで詰めて議論しているわけではないと思います。この部会として,是非こうするとよいというような意見を取りまとめているわけではないと思いますけれども,鈴木委員の方から非常に気になるということなので。大体高大接続のこと自体が余りこの部会の中で情報共有したり方針をこういうふうにしてほしいというような要望を出すことはやっていないわけですが,少なくともそういうことで高校が,先生の高校ではみんなそう思っているということですか。
【鈴木委員】  結構信じていると思いますよ。
【市川主査】  教員の方ですか,生徒の方ですか。
【鈴木委員】  教員の方。
【市川主査】  教員の方が信じているということで気になるということですので,何かこれについての情報を頂いてよろしいでしょうか。
【吉岡高等教育企画課専門官】  今,委員がご質問されていた点について御説明をさせていただきます。ご質問頂きましたのは,大学入学者選抜改革推進委託事業の主体性等分野において,3年の事業として今年度最終年度で取り組まれています実証事業,JAPAN e-Portfolio という事業のことであるかと思います。これは,あくまで国の委託事業の調査・研究として複数の大学がコンソーシアムを組む形で取り組んでいただいているものですので,これがなければ大学に出願できないということはもちろんございません。高校現場の一部でそういった誤解があるというところについては,この事業のこういった性格を御説明しているところです。
 以上です。
【市川主査】  鈴木委員,よろしいでしょうか。
【鈴木委員】  はい。
【市川主査】  佐藤委員,お願いします。
【佐藤委員】  失礼します。
 私どもが委託事業を受けてやらせていただいていますけれども,その点から2点ほど申し上げたいと思います。
 第1点は,高大接続の問題もございますけれども,その前に中高,それから小中,それから幼小の連携,それから一貫ということがありまして,これを見てみますと,今の高校のこの改革,高大接続の改革の主体性の評価について,保護者の方,それから生徒はもちろんですけれども,中学生もやっぱりそういうふうな情報を得ている,小学生も得ている,保護者の方も得ている。そういう点では,学びを振り返る,かつてから学習指導要領のように見通し,振り返りの振り返り,それからここで出ている粘り強く取り組むという自己調節といいますか,そのようなリフレクションをするということが非常に我が国の子供たちにいい影響を与えているんじゃないかというふうに思います。その点では,主体性,今,私どもはアンケートをいろいろとって,統計をまとめておりますけれども,非常に子供たちや保護者の皆さんにとって学びというものは自分で進めるんだと。自己学習能力を育むという,その点では非常にいい影響になっているんじゃないかということが1点です。
 2つ目は,先生方が入れ込むというよりも,子供たち自身が様々なタブレットやスマホを通して,デバイスを通して入れ込んでいって,自分たちの学びを可視化できているという,これは非常にいい点ではないかと。今まではノートで鉛筆で書くということで,なかなか画像,動画というのはできませんけれども,例えば科学とか理科系のもの,実験のデータ,様々な実験の様子をタブレットで撮って,動画として押さえ込むという,それをまた振り返ってみるですとか,画像として自分たちがボランティアに行った様子をまた振り返ってみるですとか,大変いいなというふうに思っています。
 ただ1つ,課題といいますか,この後,鈴木委員も懸念されていることかと思いますけれども,入試のためにやるということではなくて,学びを自分でやっぱり進めていくという,このための一つの手段としてやっているという,何のためにやっているかという目的意識をもう少しはっきりさせなきゃいけないかなというふうに思っております。その点の周知徹底というのはこれから重要かなというふうに考えております。
 以上でございます。
【市川主査】  ありがとうございました。
 それでは,善本委員。松尾委員,髙木委員の順でどうぞ。
【善本委員】  ありがとうございます。
 まず初めに大変な御苦労をいただいて,ここまでおまとめいただいたことについて,心から感謝を申し上げたいというふうに思います。様々な議論がございましたけれども,特に中学校,高等学校をお預かりしている立場としては,特に高等学校側には新しいことになりますので,これを現場でどういうふうにやっていくかということをこれからしっかりとやっていかなければならないというふうに決意を新たにしているところでございます。その上で,本当に最後の議論だということの中で,先ほど鈴木先生,佐藤先生からもお話があったことに少し関連があるかと思いますけれども,2点,お願いを申し上げたいと思います。
 それは,まず1点目は,この新しい学習指導要領に基づく評価の中で,特にここでも長い時間議論いただいた「主体的に学習に取り組む態度」の評価については,新学習指導要領の中にも具体的な記述というものがほとんどないということ,これは前回の合同部会でもお話が出ていたと思います。ですから,そういった意味で様々に受け止めに幅が出ているということから,それを具体化していくということが結局評価としていくためには大変重要なことになるかと思いますので,そこに今後いろんな苦労が出てくるだろうなと思いますので御腐心をお願いしたいということです。実際に新しい学習指導要領の中に本当に理念的な文言しか入っていないので,それを具体的にどうするかということはこれから非常に大事なことだろうというふうに思います。
 それから次の点は,今,鈴木先生,佐藤先生からお話があったことに非常に関連することなんですけれども,これまで何度か私は高等学校においては,指導要録とか調査書は一体のものだというふうなお話をしてきました。校種によって受け止めが違うのは承知している中で,これはいつも白井教育課程企画室長からもお話があるように,高大接続の方がちょっと先に動いているということがあって,新しい学習指導要領の今ここでは議論をしているので,そこにいろんな問題でタイムラグが出てきている。ただ,そのタイムラグについて,実際にかなりやっぱり現場で困っている,混乱があるということがあります。それで,ちょっと参考までに,12月5日に東北大学が平成33年度入試における本学の基本方針についてと予告されたものから引用させていただきたいのですけど,特にこんなふうに書いております。
 学力3要素における主体性を持って多様な人々と協同して学ぶ態度の評価,(主体性評価)については,志願書に,調査書に対応した5項目程度のチェックリスト項目を設け,志願者がこれをチェックする自己申告方式をとります。その補足説明の中に,主体性を持って多様な人々と協同して学ぶ態度を調査書や志願者本人が提出する資料,面接などにより適切に評価することは入学者選抜における重要な要素であると考えています。一方で,こうした評価によって志願者,高等学校及び大学,それぞれに過重な負担が掛かることは避けなければなりません。また,主体性評価を過剰に意識した活動が学校内外で増え,本来の学校教育活動が妨げられることがあってはなりません。こうした問題を考慮し,主体性評価について,本学では簡便なチェックリストによる志願者の自己申告方式をとるとともに,その根拠を学校内の活動を中心とした調査書の記述に求め,調査書以外の資料の提出は求めないこととしました。また,調査書の記載については,根拠になる事項が簡潔に記述されていればよく,事項の多寡,記述量は評価しませんというふうに書かれているんですけども,これは一大学の御決定ですから,それについて私が何か申し述べることではないんですけれども,一つやっぱりずっと気になっていたのは,高大接続の方で先んじていらっしゃるので,いわゆる私たちが主体性評価と言っているものについては,高大接続では主体性を持って多様な人々と協同して学ぶ態度というふうに整理されています。理念は同じなんですが,文言としてはずっとそういうふうに整理されて議論が進んできている。ここでは,「主体的に学習に取り組む態度」という表現で小中高共通の言葉として整理されていると。そこにある理念というのは,ある程度共通性があるんでしょうけど,文言が高大接続側と食い違っているというようなところも,やはり現場の生徒1人1人から見れば混乱のもとになるだろうと思いますので,今後,もちろん先ほど申し上げましたようにタイムラグがあることによって起きていることですから,それは新学習指導要領に向けて評価をされていく中で,どのように整理していかれるかということをやはりしっかりと議論していただきたいということと,大学側の受け止めもこのように大変ばらばらですので,新しい学習指導要領に基づくというところでは,そこがきちんと整合性を持って扱われるように,要するに現場はそれをすごく気にしているんですね。実は,鈴木先生がおっしゃったこともそういったことと関連すると思いますけれども,それを気にするということを押さえながらこの先進めていっていただければというふうに願っています。
 以上です。
【市川主査】  では,松尾委員,どうぞ。
【松尾委員】  私も直近の2回の会議は都合で欠席をさせていただきましたが,このまとめを読ませていただいて,随分と踏み込んだ内容で,大方の人にも分かりやすい内容になっているものと思います。これまで取りまとめていただいたことに心から感謝をしたいと思っています。その上で,これが現場に実際に落とし込まれていったときに,きちんと機能しなければやはり実効性がないものに終わってしまいますので,その辺について,感想にはなりますけれども,今,現場でどんなふうなことが感じられているのか少しお伝えしたいと思っています。
 まず,観点別学習状況の評価,これは特に高校では,今まで何度も重要性を言われてきたところですけれど形骸化してしまっている。それを何とかしようとして,今,いろんな議論が何時間も重ねられてきたと思っています。指導要録の記載欄の改善,それから新たに調査書の中にも観点別評価を記載する場所を設けようというふうに,随分と観点別評価を進めていかなければならないという条件は前よりも進んだと思っています。しかしながら,まだまだ私は,これぐらいではなかなか実際にこれが浸透していかないのではないかという懸念を持っています。現場の先生だけでなくて,いろんな人に聞くと,本当に高校でもこれぐらい本気になってやるのでしょうかというふうな考えを持っている方もかなりいらっしゃると思いますし,それから,ここに書いてあるように生徒にただただ評定だけではなくあなたの評価はこうですよと伝えてきた今までの高校での流れをその時々に応じて生徒の学びを促すような,そして先生方も自分の授業改善となるような評価,声掛けというものをしていくことは非常に大切だとは思いますけれども,その時間とかいうものがどこで作られるのか,それは非常に難しいなと感じているところです。
 それで,私としては,今後,どのようになるかは別として,本当にこれを定着されていくためには,大学入試,それから高校入試について,観点別評価,それから評定をどのように扱っていくかということはもう少し具体的に,ある意味必要性を感じさせるような手立てを講じていかなければなかなか難しいのかなというふうに思っています。ですから,評定を残すということになっておりますので,観点別評価とリンクしやすいように,例えば今,観点別評価はA,B,Cとなっていますが,評定は5段階評価に大方の学校がなっていますので,その辺をできるだけ簡素化して,観点別評価が評定につながるような形にできないものかというふうなことは思っています。それが1点です。
 それともう一つは,ICTのことでございます。先ほど鈴木委員からもありましたように,学校では,やはりICTの推進をしなければいけないというのは非常に大きな課題で,特に公立学校の場合は予算的なものがありますから,いろんな意味でそう簡単には進まないと思います。しかしながら,私学においては,学校の特色を出すという意味ではICTの推進を前面に出してPRしているところはあると思いますが,その辺の予算的な面で十分な配慮をしなければ,今後,格差が非常に出てくるのではないかと思っています。
 それと,なぜICTを入れるのか,さっきのeポートの話ではございませんけれども,保護者も今,ポートフォリオをずっと作っているんだけれども,あれは本当に調査書に書いたときにどこまで大学が見てくれるんですかねというふうに私に話してくださった保護者がいます。それと同じように,先生方にも一生懸命ポートフォリオの作成を促していますが,この保護者と同様な考えを持っている先生もいます。生徒は私たちと違って割と自分の振り返りに使っている部分が多くて,それを読んで教師の方で気付かされる面もあるというふうに聞いていますけれども,こんなに一生懸命3年間記録を残してきたのに,これが何になったのというふうに現場の先生方に受け止められてしまってはだめなんじゃないかなというふうな懸念を抱いております。
 ちょっと長くなりましたが以上でございます。
【市川主査】  ありがとうございます。
 髙木委員,どうぞ。
【髙木委員】  3点,申し上げたいと思います。
 まず第1点目です。今の松尾委員と全く同じなんですが,実は今,公立の小中学校では,各都道府県や市町村教育委員会の段階で校務支援システムがかなり入ってきています。ただ,それぞれの委員会の予算等で校務支援システムが十分に入っていないところもまだ随分あるようで,伺うと,まだですよなんて言っているところもあります。今回の場合,指導要録と通知表とのリンクを図っていかなければいけない状況が出てきていますので,これに対する予算的措置をきちんとしませんと,働き方改革も含めてそうですが,そういったことを先生方の御努力だけではもうできないような状況,ICT含めてそういったものが必要だと思います。例えばフィンランドでは,フィンランド全土で成績や単位取得状況を管理するシステムwilma(ヴィルマ)いうのがありまして,これは通知表も,それから行動も,朝何時に学校に来たのも全部一気に入る,そういったシステムがありまして,子供も知っている,家庭も知っている,学校も知っているという連絡簿みたいなもので使えるもの,これは民間のものなんですけども,そういったものも入っていますので,やはり校務支援システムをどうやって,実際に書く段階になると大変必要になってくるというふうに思います。それが第1点です。
 それから第2点目です。これは,本当に御理解いただきたいと思っています。本日の資料の11ページの最初の丸ですが,ちょっと読みながら解説します。「主体的に学習に取り組む態度」の評価は,知識及び技能を習得させたり,思考力,判断力,表現力等を育成したりする場面に関わって行うものと書いてあります。知識及び技能,それから思考力,判断力,表現力等は,今回の学習指導要領で既に学習指導要領の内容として明確に示されているものです。したがって,主体的に取り組むということは,学習指導要領に書かれている内容に即してのものであって,辞書的な意味の主体的という言葉では全く異なるということを明確につかんでおきませんと,前の「関心・意欲・態度」の時に,本来の趣旨と異なって取り違えられたことと同じ轍を踏むと思います。この委員会でも,きちんとこれは理解しておかないと周知ができないというふうに思います。さらに前々回,この会議の第10回の資料を見ますと,調査官の方々も表を作って,きちんと学習指導要領に示されている「知識及び技能」「思考力,判断力,表現力等」と「主体的に学習に取り組む態度」の関係を明示してあります。やはり議論を積み上げていく中で,ここで言われている定義化された「主体的に学習に取り組む態度」というのはやはりきちんと理解しないと,何か自分の感覚だけで主体的ということを言っていますと間違った評価を行いかねませんので,ここは十分注意していきたいというふうに思っております。まずは,学習指導要領にこれから子供たちが必要な知識及び技能の内容が書かれているということ,さらに「思考,判断,表現等」を一般的な「思考,判断,表現等」ではなくて,各教科ごとにそこが求める「思考・判断・表現」であるということ,それに伴う「主体的に学習に取り組む態度」であるということ。ですから,ここのところをきちんと理解しませんと,全くずれた発言になっていくというふうに私は思っています。
 3つ目です。本日の資料の13ページです。上から2つ目の丸です。ここに,その際,児童生徒の発達の段階にも留意した上でと,その後にシラバスという言葉が書かれております。シラバスという用語は,今から約10年ぐらい前,これは多分東京の日比谷高校が一番最初だったと思いますが,教育課程の内容を生徒に示すための概要として使われてきました。高等学校ではその後,これがかなり一般化されまして,日比谷がやったせいもあるんですが,一般化されて,子供たちに示す事例が出ております。ただ,シラバスを作って教育課程を全く編成していないという高等学校も随分あります。このシラバスという用語は,高等学校で用いられていますが,小中学校ではほとんど用いられていません。ここにシラバスと書かれますと,小中学校ではなじみのない用語ですので,これは前後の文脈から考えますと,ここで用いていく言葉としては,児童生徒用に示す学習の計画というような言葉の方が小中高ともに分かりやすい言葉ではないかと思いますので,御検討いただきたいと思います。
 以上,3点です。
【市川主査】  ありがとうございます。
 今の2番目の点に関して,ちょっと髙木委員に確認というか,質問なんですけど,まず,「主体的に学習に取り組む態度」といっても,学習指導要領に書かれているような知識,技能,あるいは思考,判断,表現に関することなので,例えばそれ以外のことで主体的に,自発的に頑張っていますというようなところまでをここに入れる必要はないのだという,そういうふうに理解してよろしいですか。
【髙木委員】  すごい大きな話で乱暴になってしまいますので,要するにこの3観点というのは,学習指導要領に沿って単元の単元目標を作るときに設定するものです。ですから,その単元の中での学習指導に関わるものという,そういう考えです。もしそこで,だから主体的という言葉が今,主査が言ったような言葉を入れるならば,目標にきちんと言葉を入れておけばそこの目標になるということです。ただ,原則的には学習指導要領の内容と関わりますので,一般的な主体的という言葉ではないということは押さえておかないと,かなり広まっちゃってもうとりとめがなくなるということです。
【市川主査】  分かりました。実はそのことは非常に大事なことで,例えば高校入試や大学入試にいろんな課外活動的なことも評価してほしいと思えば,それは全部学校の先生にそのことも含めて調査書に入れてくださいというわけではなくて,むしろそれは,それこそ自己申告なり,自分でこういう活動をしてきたというようなことを各自がアピールすればいいということですね。生徒が全部学校にそういうことを報告して,学校の調査書の中にそういうことも含めて,この子は主体的に頑張っているとか,そういうことまで学校が何も請け負わなくてはいけないということではないということも別にあるので,そのことと連動すると,ある意味では制度的にこっちはできているのかなと思います。
【髙木委員】  今,主査が言われたのは,eポートフォリオの方でそれはやっていくことになろうとしている話で,学習指導要領をもとにした観点別学習状況の評価とは異なります。
【市川主査】  それは各自が,例えばeポートフォリオの中で,自分はこんな活動をやっていますということをアピールすればいいんですけれども,それを何も確認したり保証したりするのが学校の役割ではないということでしょうか。
【髙木委員】  そうです。
【市川主査】  分かりました。
 では,藤本委員,お願いします。
【藤本委員】  この学習評価の在り方につきましては,本日のまとめの1ページのはじめにの一番下の丸印に書かれていますように,教育課程の改善とか学習指導要領の改訂の中身をどう学校現場に定着させていくかということについて,非常に大切なものであると思っております。これがきちんとできなければ,せっかく教育課程の改善,学習指導要領の改訂をしても無意味なものになりますので,この評価がいかに学校現場できちんと定着していくかがとても大事になってくるのではないかなと,もう皆さん周知のとおりですけど,そのためには,これから関係者にどう周知徹底していくのかということが非常に大きな役割になっているのではないかなと思います。私たち市町教育委員会では,今,学習指導要領改訂の方向でさえ隅々まで周知徹底していくことに悪戦苦闘しているところです。その上に今度,この学習評価に関しての中身をどう1人1人の先生方に徹底して1時間1時間の中でそれをやっていくかということにまで向けていくには,相当な苦労が必要だと思っております。また,これについては,ただ教員だけではなく,保護者とか子供にも伝えていく必要があるだろうと思っておりますので,最後の端にその記述等もありますけども,保護者,子供たちにどのような方法でどう周知徹底していくのかということも十分にこれから御検討いただきたいと思っております。
 それともう一つ,関係者の中には,文部科学省の中でも私は周知徹底を是非図っていただきたいと思っております。評価が独立したものではなく,他の施策にもやはり反映するように。今,先生の方からもございましたように,校務支援システムにしても私がいる香川県では,8市あるんですけど,その8市の中で校務支援システムが入っているのが,私たちの高松市を入れて2市です。残りの6市がまだ校務支援システムが稼働しておりません。私たちの高松市においても,校務支援システムが今年度更新したばかりで,次の更新が5年後になりますから,その更新途中に中身の変更をしていかなければいけない,導入しているところでさえそういう苦労があるところがあります。ましてや小さな町では入っていないところがたくさんありますから,今,国の方でも校務支援システムを統合型のを入れていくということがありますけれど,それぞれ市町の予算的なこともありますので,十分そのあたりのところも鑑みていただいて,ICTの環境整備等も含めて,多分施策とも連動してこの評価が文部科学省なりで大きな使命として徹底できるようにしていただきたいと思います。私たち市町においても,これから指導要録,また,通知表等の改訂に掛かっていかなければいけませんので,1人1人の指導主事等にそれが徹底するように文部科学省の方から,学習指導要領の改訂の伝達講習よりもなおきめ細かな周知徹底等を行っていただいたらと思っております。
【市川主査】  ありがとうございました。
 ほかの委員の方,いかがでしょうか。それでは,順番に4人の委員の方,お願いします。
【嶋田委員】  今のお話もすごく実感するところでございます。校務支援システムについては,東京都の場合,やはり高校については東京都の教育委員会で,ただ,小学校,中学校については各区市の教育委員会で校務支援システムの導入,検討を進められているというところですので,同じ東京都の中でも,小学校のある市では校務支援システムが入っていて,通知表から要録への変換といいますか,そこの部分を十分にやりやすいようになっているところがありますけれども,そうじゃないところもあり,手書きで行っているところもまだまだあるというところですので,是非進めていただくように働き掛けをお願いしたいことと,それから,これから今の時期,私立の中学校を受験する保護者の方が調査書を持ってきて,6年の担任の方に書いてほしいと言ってくる時期なんですけれども,東京都の場合の中高一貫の学校については,もうそれがちゃんとICTを使って,つまりデータで来ていますので,そこに入れて作っていくことができますが,私立の中学校の場合にはほとんどが手書きで,それを1人の子供について何校も受験したりすることが当然ありますので,冬休みのいわゆる期間,6年の担任は,調査書をずっと作っているという状況がございます。是非私立の学校への,特に中学校を感じますけれども,働き掛けをお願いしたいなというふうに感じています。
 2点目に,小学校外国語活動の記録について,17ページに指導要録の取り扱いに記述していただいて,特に,3,4年生については,顕著な事項がある場合などにその特徴を記入すると。どの程度の部分を押さえればよいのかといったところが,実際に教員の方が全ての項目にやはり記述をしていくのだろうか,のみなのだろうかというところを私も校長としてこれを読んだときに分かりにくいところがあるかなというふうに思いますので,また御検討いただければと思っております。
 最後に,25ページになりますが,教員の養成課程においての学習評価をしっかりとカリキュラムに位置付けるというところが書いてございます。今,若い先生方が非常に増えてきているところで,先ほどの委員の方からもございましたけれども,主体的に学習に取り組む態度についても,特にみずからの学習を振り返っての自己調整の部分とか,そういうところについては是非具体的な授業の中で,実際に学生自身がこのような状況だとどんなふうに評価をしていくのかといった,非常に現場に即したような形での授業に大学で持っていっていただければありがたいというふうに思っています。
 以上です。
【市川主査】  佐藤委員,どうぞ。
【佐藤委員】  失礼します。
 今回の「これまでの議論の整理のまとめ」は,大変,端的にまとまっていて大変よろしいんじゃないかと思います。とりわけ,これから周知徹底する上で,3つのキーワードをやっぱりきちんと伝えてもらいたいなというふうに思っております。1つはバランスですね。2つ目はサイクルですね。3つ目はモデレートかなと思っています。
 1つ目のバランスは,先ほど髙木委員もお話しなさいましたけれども,やっぱりYes or No と二律背反的に捉えたり,何か観点を1つだけ取り上げられるというものではなくて,やっぱりこの3つの柱をバランスよく育むというこの点を伝えていかなければいけないと思います。何よりも恐れるのは,「関心・意欲・態度」の時代のこともありますが,若い先生方,それから,2000年以降この評価規準ということが出ているわけですけれども,それ以降に大学を卒業した方々で,やっぱりこういうふうな過程をよく分かっている方だといいんですけど,年配の教員の方々,2000年以前の,そういう方々も含めてですけれども,やっぱりきちんと4観点から3観点へと,ただ数が変わっただけでなくて,内容的なもの,内実をやっぱり伝えていくということが必要ではないかと思います。
 もう一つはサイクルですね。サイクルは,この資料で言いますと24ページのところにも,「各学校において」ということで研修等のことを書いていますけれども,やっぱりカリキュラム・マネジメントの一環としての学習評価があるのだという,このサイクルの中で示していく。25ページの上の方には,「学習評価を位置付けたカリキュラム」ということも書いてありますけれども,このようなことが実質化されなければやはり評価だけが,評価のための評価に陥ってしまうのではないかということを大変懸念しております。
 それから,3つ目はモデレートですけれども,各地域,それから私も国立におって私学に移りましたけれども,国立は今,教職大学院化されてあって非常に実践志向されています。ところが,私学の教職課程の中では,やっぱり学問領域やディシプリンがあるものというのが中心で,これからばらつきが出てくるというのを非常に恐れます。ですので,各先生方,やっぱり評価の力量というのが圧倒的に指導にも反映するものですので,見取れない人はやっぱり指導ができないんだろうというふうに思いますので。子供の状態をよく見取るということが重要で,そのためには研修のシステム,それから養成課程の在り方,実際にそういうことにも踏み込んで,積極的に評価というものについて,ばらつきが出ないように,とりわけ若い先生方に分かりやすく説明していただけると,大変ありがたいというふうに思います。
 以上でございます。
【市川主査】  ありがとうございます。
 河野委員,どうぞ。
【河野委員】  どうもありがとうございます。
 12回ものいろいろな議論をお取りまとめいただき本当にありがとうございました。分かりやすくなってきたかなと思って拝見いたしました。社会一般からということで感想としてなんですけれども,今回,期待があって動いているというか,社会が大きく動いている中で,これがあるということを常にやはり関わる全員が理解しながら進めていくということはすごく重要ではないかなと思います。その上で,これから運用していくのにいろいろ課題も出ると思うんですけど,やはりスピーディーに走りながら,いろいろな課題が出ても共有して改善改革していくという意識を持って,全員でムーブメントをポジティブに起こしていくという,そんな流れを文科省さんの方で作っていただき,そして例えば県,市,町も含めての教育委員会等と連携していただきながらうまく進めていけたらいいなと思います。
 もう先生方のことはたくさん出ているんですけれども,現場でちょっと声を聞くと,本当皆さんどうしていいんだろうということが多くて,こういう言葉を言っていいか分からないんですけど,よく何かあると,でも文科省で決めたことだからというようなことをいろいろなところで聞いたり,上が決めたことだからさというようなのがちょこちょこいろんなことであるんですが,今回,私はそれはよくないと思うので,例えばそうならないように,逆になったときに,これはちょっと方法論なんですけど,自分で調べられるような,先ほど髙木先生もおっしゃってくださったようなああいうこともちょっと自分で調べたいと若い先生たちが思ったときに,ホームページか何かにアクセスすると自分で学習できる,これは県,市,町がやることかもしれないんですけど,そういうような少しノウハウも共有しながら,若い先生たちもポジティブに動けるようにしていっていただければと思います。
 最後なんですけども,国民と,それからあと産業界のそれぞれの重鎮もいろいろこういうテーマについては最近,興味というか,関心が高くなってきているのもあるので,一番最後のところに書いていただいているんですけれども,国民全体を交えた宣伝といいますか,説明なども是非お願いしたいと思うのと,ここで言っていいか分からないんですが,マスコミの影響は非常に大きいものですから,是非逆にこれからのプラスに動くような方向性でみんなに分かりやすく,またうまく伝えるような御協力を頂けたら私はうれしいなと思いました。感想です。
 以上です。
【市川主査】  ありがとうございます。
【天笠教育課程部会長】  失礼いたします。
 既に御意見にあるように,私も委員の皆さんの議論の積み重ねがここまでまとめられたということについて,敬意を表させていただきたいと思います。その上で,今,資料1に基づいて条件整備という観点から2つ申し上げさせていただきたいというふうに思います。
 1つ目が,2ページのところに表記されている点なんですけども,そこにありますようにカリキュラム・マネジメントと今回,指導と評価とそれからカリキュラム・マネジメントということが,こういう形で1つの世界を作ろうとしているということについて,この方向ということは私は大変大切だと思います。その上で,2ページの下から3行というんでしょうか,ここの文言の実現というんでしょうか,具体化ということがすごく重要なんじゃないかというふうに思っております。別な言い方をすると,言っていることはそういうことなんですけども,なかなか実質化しないとか,あるいはこのところが文言だけであってというふうな形になりがちな世界,状態でもあるんじゃないかと思っています。少し,そこを一緒に御覧いただければと思うんですけども,学習指導と学習評価が学校の教育活動の根幹であるという,これはもうほぼ全ての人がそういう認識を持たれているんじゃないかというふうに思います。今度はその次のところに,教育課程に基づいて組織的,計画的に教育活動の質の向上を図るという,これも長年提起され,求められ,そして進んでいくところです。課題は何なのかというと,1つ目の文章と2つ目の文章がある意味でいうとつながっていない場合が実態としてあったりですとか,それこそ学習指導と学習評価の営みと,それから,教育課程として組織的,計画的な営みというのが,どちらかというと2元的に言われていたり取り組まれていたということで,今回,カリキュラム・マネジメントが提起されるということは,この2つをつなぎ合わせたりですとか,2つをつないでより実質化する,教育の質を上げていく,授業の改善を上げていく,子供たちの力を付けていく,こういうことであってということで,ですから,まさに学習指導と学習評価がカリキュラム・マネジメントの中核的な役割を担っているんだという,このことがどれほど現場サイドにおいて習熟されて,そして実質化するかどうかということが大変重要なんじゃないかと思うし,カリキュラム・マネジメントが提起しているというのもそういうことなのではないかと思っております。
 その具体は,私はページをずっと追っていきますと,24ページのところに書かれている,各学校においては,学習評価の妥当性や信頼性を高める云々とか,組織的かつ計画的な取組に努めることを求められるという,こういうことなんですけども,この種の文言というのは,ある意味でいうと,これまで常に繰り返されて説かれてきたことでもあるんじゃないかというふうに思うわけですけども,学校の組織的な営みで学習評価を受け止め,そしてその充実を図っていこうという,こういうことであって,いうならば,カリキュラム・マネジメントでのそういう組織的な対応ということと,授業をどういうふうに充実させ指導するという評価と,ここがとかくつながり切れなかったり2元的になったりするのを,何とか一体的な一つのつながりにしていくというところの一つの視点としてこういうことが挙げられているんじゃないかというふうに思っております。そういう意味では,24ページの(2)の上のところに書いてありますけども,参考事例の示し方も検討する必要があるんだという,そういう国立教育政策研究所に求められる取組の一連の文脈の中に,今申し上げているのはこういうことについての具体的な改善の方向性ですとか具体的な取組ということをカリキュラム・マネジメントと併せてということで参考事例として示すことも検討するということですけど,この文言を受けてもらって,具体的に今申し上げているようなところについてのこういう在り方の在りようがあるとか,こういう先行するケースがあるとか,それを発掘したりお示しいただくということについて是非お願いを申し上げたいというふうに思います。これが1点です。
 それからもう一つが,今度は17ページのところなんですけども,2点目のそれは何かといいますと,働き方改革とこのワーキンググループのまとめというんでしょうか,それとの関わり,関連ということについて少し申し上げさせていただきたいと思います。ここのところでは,下の丸のところですけども,学校における働き方改革を推進する観点からは,以下いわゆるICT環境の整備という話になるんですけども,ICT環境の整備は整備として,先ほど既に御意見がありましたように,これは進めなければいけない課題であることは間違いないわけで,働き方改革は働き方改革としてということで,働き方改革即ICT環境の整備だと短絡的に結び付けるということよりも,もっと働き方改革というのは大きな枠組み,文脈の中でのそれであるわけですので,その一端としてこういう視点というのもあり得るというふうに思いますけども,ただ,ICT環境はICT環境として,学習評価との対応においてしっかりと受け止めてまとめていかなきゃいけないんじゃないかと,そういうお示しの仕方をした方がいいと思いますし,働き方改革が提起しているところは,学校の取組をこれまである意味では慣行,慣習として積み上げられてきた取組等々ももう一度見つめ直す必要があるんじゃないかと,そういう提起がそんな文脈の中に含まれているかというふうに思います。ですから,そういう意味では,例えばその隣の16ページのところにあります,教師の勤務実態を踏まえた場合の指導要録の簡素化等々というような,こういうこともこの中で研究されているわけですので,働き方改革ということに向かい合うならば,相応の整理の仕方,ここにあるのをもう一度前後を整理されるというのもまた一つじゃないかと。そういう点では,ICT化はICT化としての対応ということで,ここはここでもおまとめになるというのが一つの在り方ではないかと思いますし,働き方改革は働き方改革として,学習評価の在り方からすると,どういうところにこれから目を向けていかなければいけないんじゃないかという,そういう提起というのも,ここに示されているようなことをまたまとめられるというのも一つの整理の仕方ではないかというふうに思います。
 以上です。
【市川主査】  ありがとうございました。
 それでは,若江委員,若瀬委員,どうぞ。
【若江委員】  ありがとうございます。
このおまとめと,本日のこれまでの各委員の先生方のお話から,本当にいろいろと学ばせていただきました。特に髙木先生がおっしゃった主体的というのはこういうことなんだということを現場の先生に本当にきちっと伝えなければならないと思いましたし,前回発言をさせていただいたのですが,「主体的に学習に取り組む態度」というのは,もし入試を受ける人,入試に使われるとするならば,大学がアドミッション・ポリシーとしてはっきりと提示すべきだというふうに申し上げたことを,本日善本先生が東北大学の事例で具体的なことを教えていただきましたし,やはり現場ではいろんなことが動いているんだなということを実感いたしました。藤本委員からお話がありましたように,やはりこれをどのように伝えていくかというところなのですが,カリキュラム・マネジメントと直結しているというところには今,いろんな現場の特に若い先生が非常に関心を持っておられます。学習指導要領の改訂もそうですし,評価もそうですし,ぷつぷつと切れた状態ではなくて全部をきちんとつかみたいというふうな思いを持っておられます。でもなかなかその術がなく,断片的な研修に参加されて,糸電話のような伝達研修というようなことが多く,所属されている学校内研修でも中途半端な解しか得られない,教育委員会のサイトを見ても,それが市町村であっても都道府県であっても,やはり断片的で,要点をまとめてあることが余計に抽象的になっていっているというようなことがあると思います。ですので,今回,文部科学省も積極的に広報に取り組んでいただけるということですけれども,もっともっと若手の先生,そして保護者を対象にしていただきたいです。直接文科省のサイトを見て,今のような個々の発言に触れられるような,そういうことがすごく大事で,もしそれが実現をしていくと大きな教育改革の広がりの一歩になると思いますし,そのためには,最後のページにある,26ページのところの社会一般への周知ですが,これまでの社会一般というよりも,やはりこれから産業界はESG投資等で次世代の育成というのは大きな大きな課題になっていますので,もう少し私たち産業界も違ったアプローチでこのことを本質をきちっと伝えられるようにしていかなければいけないなということを改めて感じました。ありがとうございました。
【市川主査】  ありがとうございました。
 渡瀬委員,お願いします。
【渡瀬委員】  天笠委員からお話がありましたカリキュラム・マネジメントの考えに基づいて学習指導要領を評価まで一体的に捉えるということは私も本当にそうだと思います。学習指導要領が改訂されまして,まず何ができるようになるのかということが前面に出てきました。以前までですと,何を学ぶかというのが先に出てきたような気がします。そして何ができるようになるのかということがあって,そして何ができるようになったのかという評価までが一体で考えられて,その中に,何を学ぶのか,どのように学ぶのかということが一つの大きなストーリーとして捉えられているので,非常に分かりやすいと思います。これが1つ目です。
 2点目は,7ページ,8ページのところに書かれている「思考・判断・表現」の評価についてです。例えば思考力を例に挙げますと,思考力を評価するというのは,その学習指導要領の各教科の目標に書かれている事柄に基づいて学習活動ごとにどのように思考したかということを評価するわけです。これは漠然と考えたか考えなかったかを評価するわけではなくて,具体的にその場面ごとに何をどう考えたかということを評価しなくてはいけません。教科ごとに思考すべき事柄ですとか,教科ごとに育てたい思考力というのがあると思うんですけれども,その根底には教科を横断した一般的な思考力のブレークダウンのようなものがあると思います。例えば小学校1年生を教えていると,大体比較して考えるとか順序立てて考えるとかということはどの教科にも出てくるわけですね。そうすると,ある程度発達段階に応じた教科横断的な思考力のブレークダウンみたいなものが今後示されていくと,各教科が育てようとする具体的な思考力を考えていく時のよりどころになると思うんです。そうすると,各学校は,思考力育成ということについてのカリキュラム・マネジメントがとてもしやすくなると思うんですね。やっぱり教科ごとにどういうふうに思考力を育てていこうかと考えているだけではなくて,全体ではどう考えていくか,そしてそれぞれの教科ではどう思考力を育てていくのかというふうに考えられるといいなと思います。今後,そういう思考力の大枠みたいなものとか,今そういうことで先行して研究されている学校の実践の情報などが,文科省からも参考として発表されていくといいのではないかなと思います。
 以上です。
【市川主査】  ありがとうございました。
 じゃ,荒瀬委員,お願いします。
【荒瀬主査代理】  ありがとうございます。
今回のこの評価に関する取りまとめは非常に重要でありますし,内容的にもすばらしいと思います。ただ,長らく高校の校長であったという立場からしますと,これを具体的に進めていくには,学校の現状の改善が必要であると思います。
教員の働き方改革は,教員自身も考えなければならないのは当然ながら,非常にやはり難しい状態というのがあるというふうに思います。ICTを導入することによって軽減をしていくという面も当然ありますから,そういったことも進めていくことが必要だと思うんですけれども,この資料で言うと2ページから3ページに掛けての脚注の部分に,次期学習指導要領第1章総則第1の4,高等学校学習指導要領ではこれは4ではなくて5ということになりますが,この中で,3行目の教育課程の実施に必要な人的又は物的な体制を確保するとともにということが書かれています。
しかし,各学校において,果たしてどれほど人的又は物的な体制を確保するとか改善を図っていくということができるのかというと,これは私の経験では非常に厳しい面があります。もちろん学校の教育に責任を持つのは校長の仕事でありますけれども,それが実現するようにしていくためには,人,物,金が絶対に必要です。その意味で,今回の学習指導要領のカリキュラム・マネジメントの3つの側面の3つ目というのは,とりわけ校長からすると希望の文言であるというふうに思います。学校だけではできないことが書かれているわけですから。当然のことながら,教育は現場で,学校で行われているわけですが,その学校をどのようにしていくのかということは,設置者でないとできないことがありますから,教育課程の実施に必要な条件を整備する側に対する問い掛けでもあると思います。
 申し上げたいのは,今回の学習評価を進める上で空回りにならないように,すぐにできるかどうかはちょっと別ですけれども,先ほど天笠先生がおっしゃっていた学習指導と学習評価は学校の教育活動の根幹であるという,このことがきちっとできるような条件整備を,これはすぐに100%何かができるということはないと思いますけれども,押し進めていかなければ,ここで議論してきた学習評価についてもなかなか進まないということになってしまってはと危惧いたしますので,あえて申し上げました。是非この点については,文部科学省としてもしっかりフォローアップしていただければと思います。
【市川主査】  ありがとうございます。
 鈴木委員,どうぞ。
【鈴木委員】  先ほど渡瀬委員がおっしゃったことと関連して申し上げますが,ちょっとその前に,今回の学習指導要領の改訂は今から6年前ぐらいに育成すべき資質・能力の会議から始まったと思うので,その中でコンピテンシーだとか21st Century Skillsだとかいうのから始まっているわけですけれども,そうなりますとやはり思考力,その一つの例として,欧米で言われている口述の技能の育成が非常に重要だというふうに私は考えているわけですけれど,例えばという本当に小さな例ですけれども,私は社会科の教員ですから学習指導要領をずっと読みまして,1つの例です。小学校3年生でこう書いてあります。これは小学校4年生ですね。こう書いてあります。廃棄物授業の様子を捉え,その授業が,もちろん廃棄物,廃棄物授業が果たす役割を考え,表現すること。廃棄物授業が果たす役割を考え表現すること,これが4年生です。それが5年生になりますとどうなるかというと,例えばですが,食糧生産が国民生活に果たす役割を考え表現すること。違っているのは,廃棄物授業と食糧生産のみです。役割を考え表現すること,ここは全く一緒です。それから6年生になりますと,6年生では,国際交流の果たす役割を考え表現すること。これも全く同じで,役割を考え表現するは全く同じです。違うのは国際交流だけです。要するに,4年生で5年生,6年生,どこが違うか。役割を考え表現するということは共通で,前段が違うだけです。ですから,これで表現力とか考える力とか,この学習指導要領だけではどこが違うかと言われれば対象が違うだけと。やっぱりこれで本当に21st Century Skillsだとかコンピテンシーとかは大丈夫なんだろうかというふうに大変危惧いたします。
 それから逆に非常にミクロな問題なんですが,高等学校の学習指導要領で新しく理数探求が設けられますが,理数探求を今のこの枠組みで本当に評価できるのか。もし私が理数の教員だったら困ったなというふうに思うんじゃないかなと思いますが。
【市川主査】  ほかの委員の先生,いかがでしょうか。時間的にはまだもう少し議論の時間というのは用意されているんですが,場合によっては,多少早く終わっても最後ぐらいはいいというようなことも伺っております。
 それでは,私の方からもちょっとまとめ的なことを申し上げて,それからまた事務局の方からも改めて補足的なことがあればお聞かせ願えればと思います。
 今回,12回にわたる議論があったわけですが,振り返ってみますと,かなり時間を割いて議論したところというのはやはり次の2点であったかなと思います。
 1つは,主体的に学習に取り組む態度,これをどういうものと捉えて,具体的にどういうふうに評価していったらいいのかと。そもそもこれが一体どういうものなのかということがどうも現場でも十分浸透していないと。小学校,中学校では,これまで「関心・意欲・態度」があったわけですが,それとどこが違うのかと。それから,高校になりますと今度,3観点の1つとしてこれが入ってくるというときにどう評価していいのか分かりづらいのではないかと。ただ,主体的に学習に取り組む態度ということはもう学校教育法の改正のときから3要素の3つ目としてずっと入ってきているもので,今回の答申,学習指導要領の中でも一つの柱として非常に大切にされているものです。特に今回,自己調整という言葉が入ってきました。これは心理学の方から出てきた言葉ではありますが,これは従来の「関心・意欲・態度」とやっぱり大きく違うところです。全然違うわけではないんですけれども,より明確にしたものかと思っています。
 ところが,自己調整ということが一体何なのかということがなかなか伝わっていないのではないかという気がいたしました。答申の中でもメタ認知であるとか学習方略であるとか,要するに学び方,こういうことがいろいろ話として出てきて,そういうことを指しているわけですね。私もよく比喩的に,学習者が自分自身の学習のPDCAを回すという言い方をしてきました。自分は一体どんな学習,あるいは理解の状態にあって,それをどのように自己診断して,それを改善するためにはどうしたらいいかということを考えて,また次の計画に生かしていくというような力と。こういう力が,学年が上がるにつれて大切になってくることは明らかです。もちろん社会に出ても,社会人として企業の中でも,そのことこそがむしろ大事で,学校で育ててほしいのだという声が聞かれました。恐らく1980年代から自己教育力というような言葉が中教審でも出てきたときからの流れではないかと思いますが,それは研究としてもかなり具体化されてきたし,学校現場の中でもそれを生かしてほしいということです。
 しかし余りイメージが共有されていないということと,例えば高校でしたら学校の先生も忙しいし,たくさんの生徒を持っている中で,1人1人がどうやって自分の学び方を見つめ直して組み立てているかというようなことまでとても見られないという声もあるのだろうと思います。ただこれを今後,少しでも入れていってほしいと。私たちはもともと学習者1人1人の個別学習相談というものをやっていたものですから,生徒がいかにこれに悩んでいるか,またこの力が付いていないといくら頑張ってもなかなか勉強が進まない,頑張っているのに成績が上がらないという子供たちの悩みというのが非常に大きいことを知っています。ただそれは個別学習相談だから捉えることができるので,じゃ,これを授業の中で,あるいは生徒さんを1クラス,あるいは1学年抱えている中でどうするかというところは工夫のしどころで,私たちもそういうことを少しずつ学校と連携して始めてはいるところですけれども,なかなか学校では難しい面もあるだろうと。これはそういう実践,研究も含めてこれからやっていかなくてはいけない。また,実際にそういうことをやっているというところがあれば,是非広く紹介していただければと思っています。このことも大事だというのは,恐らく学校の先生も,それから社会の方々もわかっていて,何よりも子供自身が困っていると,何とかそういう力を付けたいと思っていても余り学校や塾からそういう情報が与えられないまま,結局は点数だけで評価されるというようなことになると,子供自身が一番困ってしまいます。今度の観点別のこういう評価ができるようになって一番喜んでくれるのは,実は子供であってほしいわけですね。こういう先生が丁寧に1人1人を見てくれることによって,自分もいいアドバイスがもらえて,フィードバックされて,自分の勉強の努力,工夫が実るようになったと,しっかり頑張れば。しかも,量的に頑張るというだけではなくて,どういうやり方で頑張れば自分の努力が実るのかということが子供たちにも分かるようになってきましたとなってほしい。中教審,文科省,ありがとうございましたと子供さんが言ってくれるような。この会議も高校生にも,それから大学に入ったばかりの生徒さんにも来てもらって,いろいろ厳しい意見もありました。これまではどうもそういう学習改善の手掛かりがつかめないという意見が出ましたので,是非これを機会に,そういうフィードバックが随分先生から受けられるようになりましたというふうになってほしいと思います。
 それからもう一つの議論の柱としては,観点別評価と評定の問題でした。特に評定を残すのかどうかということについては,相当の議論があったと。激しい議論がありました。結果的に,評定はやはり残していくということになったんですが,これも残すからといって,これまでどおり評定だけに目を奪われてしまうのではなくて,やっぱりせっかく分析的に丁寧に子供たちを見て観点別の評価をしていくわけですから,それがちゃんと生きるような使われ方をしてほしいと。これも子供や保護者にとってということももちろんありますが,大学入試とも関連して,この観点別評価が何らかの形で生かされるようになってほしいわけです。もちろん評定が残るにしても,その3観点の大切さということがちゃんと生かされるといいなと思いました。
 全体的に見ますと,学びに向かう力というようなこと,一種の学習のプロセスに着目していくという,こういう流れなのかと思います。学習の結果,どういう成績になった,どういう知識技能を得たとか,それから,思考力,判断力,表現力等にしても,学習の結果,そういう力が身に付くということは見ていかなければいけませんが,学びに向かう力というのは,そもそも学習のプロセスにも着目して,プロセスにも指導を入れていく。プロセスの中にも,計画を立てるとか,それをしっかり実行していくというような割と見えやすい外的なプロセスもあれば,内的なプロセスというのもあります。内的なプロセスというのは,学習というのはどういうふうな仕組みで進んでいくものかとかいう,学習観ですね。それに基づく学習方略,つまりどんな学習方法をとるかとか,それから,自分の理解状態を自分で診断するという,いわゆるメタ認知,この部分はかなり内的なプロセスに関わることです。外的なプロセスと内的なプロセス含めてというプロセスに着目して,そこにフィードバックを適切に与えていくということによって,もっと学習効果が高まるようにと。それから,観点別というのは,分析的に子供たちを見るということです。丁寧に分析的に子供たちを見るということにつながっていくと思いますし,これも一歩前進かなと思います。
形だけ,よく挙手の回数が何回という,非常に目に見えやすいことだけに「関心・意欲・態度」の頃,なりがちなところもあったというので,そうではなくもっと本質的なところを分析的に見る,それからプロセスも見ていくというようなことによって,最終的に学習改善,授業改善が起こるように,今回の議論をきっかけにして学校現場でもなればと思います。
 主査としてもいい体験をさせていただきましたので,皆さんからの貴重な意見をたくさん伺って非常に私自身も勉強させていただきました。ありがとうございました。
 では,事務局の方から補足,あるいは今後の予定などもございましたらお願いします。
【白井教育課程企画室長】  市川先生,本当にありがとうございました。今,座長の方から丁寧にまとめていただきましたので,特に補足ということはございませんけれども,もし本日のこれまでの御議論で御理解を頂けましたら,今後主査と御相談させていただいてまとめさせていただきまして,今後は,年明けに掛けてパブリックコメントを実施して,1月下旬に教育課程部会の方を実施する予定でございますので,そちらの方で教育課程部会としての最終報告という形で取りまとめをさせていただきたいなというふうに考えているところでございます。
【市川主査】  では,委員の先生方,よろしいでしょうか。最後にこれだけは言っておきたいというようなことがございましたら。よろしいですか。
 それでは,今,事務局の方から御説明ありましたように,本ワーキンググループでの議論というのは一応本日で最後とさせていただきます。私の方で,本ワーキンググループとして報告書案を確定して,教育課程部会において報告するということとさせていただきます。
 それでは,本日予定した議事は全て終了いたしましたので,これで閉会といたします。
 じゃ,事務局の方からいかがですか。失礼いたしました,よろしくお願いいたします。
【永山初等中等教育局長】  すいません,本日,本ワーキンググループは1つの区切りでございますので,事務局を代表しまして私の方から御挨拶申し上げたいと思います。
 市川主査,荒瀬主査代理,それから天笠教育課程部会長,あと,無藤部会長代理にも御参画をいただきました。1年余り12回にわたって本当に精力的に御議論いただきまして,本日このようなまとめを終わらせていただきました。児童生徒の学習評価は,本当に新学習指導要領の実施に当たって非常に貴重な重要な要素でございます。本日頂きましたまとめも踏まえまして,先ほどお話もありましたこれから教育課程部会において御議論いただきまして,最終的には教育課程部会の報告として取りまとめるということになりますけれども,本日頂きました議論も踏まえまして,私どももしっかり取り組んでまいりたいと思います。本当にありがとうございました。
【市川主査】  ありがとうございます。
 それでは,本日は予定した議事は全て終了いたしましたので,これで閉会ということにさせていただきます。どうもこれまでの御審議ありがとうございました。

―― 了 ――

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