教育課程部会 児童生徒の学習評価に関するワーキンググループ(第10回) 議事録

1.日時

平成30年11月26日(月曜日) 10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省 東館3階 3F1特別会議室

東京都千代田区霞が関3-2-2

3.議題

  1. 児童生徒の学習評価の在り方について
  2. その他

4.議事録

【市川主査】  それでは,定刻となりましたので,ただいまより教育課程部会児童生徒の学習評価に関するワーキンググループの第10回を開催させていただきます。
 初めに,本ワーキンググループの審議等につきましては,初等中等教育分科会教育課程部会運営規則第3条に基づきまして,原則公開により議事を進めさせていただきます。それとともに,第6条に基づきまして議事録を作成して,原則これも公開するものとして取り扱うこととさせていただきます。よろしくお願いいたします。
 なお,本日は,報道関係者より会議の撮影及び録音の申出がございます。これを許可しておりますので,御承知おきください。
 それでは,事務局より配付資料の確認をお願いいたします。
【白井教育課程企画室長】  お手元の議事次第にございますとおり,本日,資料1と資料2をお配りしております。不足等ございましたらお申し付けください。
【市川主査】  資料の方,よろしいでしょうか。
 それでは,議事に入ります。前回の会議で,今後,更に検討を要する論点として,1つは「主体的に学習に取り組む態度」の評価と,2つ目としまして評定についてがあるというふうに整理させていただきました。そのうち,本日は,「主体的に学習に取り組む態度」の評価を中心に議論を進めたいと思います。3観点のうち「主体的に学習に取り組む態度」について,具体的にどのように評価することができるのか,5名の教育課程調査官から御発表いただく予定にしております。
 それでは,事務局から,配付資料の説明と,「主体的に学習に取り組む態度」の評価の具体的なイメージについて御発表をお願いいたします。
【白井教育課程企画室長】  失礼いたします。
 それでは,まず,資料1に基づきまして,私の方から15分から20分程度頂きまして,資料の全体像について御説明をさせていただき,その後,教育課程課の調査官の方から小・中・高等学校における具体的な「主体的な学習に関する態度」の評価のイメージについて御説明させていただきたいと存じます。
 初めに,資料1を御覧いただきたいと存じます。資料1につきましては,前回頂いた委員からの御意見等を踏まえましてブラッシュアップを掛けたものでございます。大部になってきておりますので,ポイントのみ御説明させていただきたいと存じます。
 まず,1ページ目です。児童生徒の学習評価の在り方について(これまでの議論の整理について(案))ということで本日お出しさせていただいております。今回の案につきましては,これは天笠部会長からも御指摘があったところでございますけれども,中教審答申においてカリキュラム・マネジメントという概念が示されているということを踏まえまして,この指導と評価というのもカリキュラム・マネジメントの一環であるということを各所に明示をしているところでございます。それが1ページ目から2ページ目にかけてというところになります。「基本的な考え方」の部分でも,カリキュラム・マネジメントの一環として行われるのは学習の指導と評価であるということを改めて明記しているところでございます。
 3ページです。また,今回,主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善,いわゆるアクティブ・ラーニングという概念も新しい学習指導要領の重要なコンセプトでありますけれども,この視点からの授業改善を通して各教科等における資質・能力を確実に育成していく上で,学習評価が重要な役割を担っているということを,3ページの第1のパラグラフにおいても明記をしているところでございます。
 3ページの中段です。一方で,この学習評価の重要性にもかかわらず,いろいろ課題も指摘されているということがございます。例えば,この評価が学期末・学年末の事後的な評価で終わってしまっていて,なかなか学習改善につながっていない。「関心・意欲・態度」の評価については,従前から表面的な態度についての評価であるみたいな誤解があります。
 4ページに進みますけれども,先生によって評価の方針が異なって,なかなか学習改善につなげにくい,先生方が評価のための「記録」に労力を割かれて,指導に注力できないのではないか,指導力がなかなか活用されていないのではないかといったような御指摘もあるところでございます。こういったところについては,第7回のワーキングにおいて高校生等からもヒアリングを行って,彼らからの御意見も出ているということもございますので,脚注に明記をしているところでございます。
 「改善の方向性」は,前回どおりであります。児童生徒の学習態度につながるもの,そして教師の指導改善につながるもの,必要性・妥当性が認められないものについては大胆に見直していくという基本的な方向性で考えているところでございます。
 5ページです。「学習評価の基本的な枠組み」ということで,全体像について,短い文ですが,触れております。学習評価というのは,学校における教育活動に関して,児童生徒の学習状況を評価するものです。現在では,「観点別学習状況の評価」と,これらを総括的に捉える「評定」というものが両方あるという状況でございます。一方で,観点別学習状況の評価や評定には示し切れない児童生徒一人一人のよい点,進歩の状況等については「個人内評価」を行うということも,現行のスキームでも明記をされているところでございます。
 その上で,6ページ以降,「観点別学習状況の評価について」ということで,各観点ごとに明記をしております。
 6ページ目の上から2つ目の丸のところですけれども,観点別学習状況の評価の表示の方式については,御議論もございましたけれども,現時点では評価の段階,表示の方法については現行同様に3段階(ABC)評価でいいんじゃないかということをこの原案では明記をしてございます。
 6ページの一番下,「『知識・技能』の評価について」ということです。この「知識・技能」については,個別の「知識・技能」の習得状況について評価を行うとともに,それらを既有の「知識・技能」と関連付けて活用する中で,他の学習や生活の場面でも活用できる程度に概念を理解したり,技能を習得したりしているかについて評価するものであるという基本的な考え方を明記させていただいております。
 7ページです。具体的な評価の方法,「知識・技能」の観点で評価の方法についてですけれども,ペーパーテストが中心になるということは変わらないかと思いますが,特に事実的な知識の習得を問う問題,それから知識の概念的な理解を問う問題,バランスに配慮するなどの工夫改善は必要じゃないか。そのための具体的な場面設定についてもここで書かせていただいてございます。
 7ページの下です。「『思考・判断・表現』の評価について」です。各教科の「知識・技能」を活用して課題を解決する等のために必要な思考力,判断力,表現力等を身に付けているかどうかを評価するもの,これが今回の「思考・判断・表現」の観点になるということです。
 8ページに進ませていただきまして,最初の丸,こうした考え方は,現行の「思考・判断・表現」においても重視されてきたところであるけれども,各教科の目標・内容を踏まえて,更に工夫改善を図っていくことが重要です。具体的には,ペーパーテストだけでなくて,論述・レポートの作成,発表,話し合い,作品制作といった多様な活動があるし,また,それらを集めたポートフォリオのようなもの,それを活用することも考えられるのではないかということを書かせていただいております。
 続いて,8ページ,「『主体的に学習に取り組む態度』の評価について」は,かなり紙幅をとって記述を書いております。
 まず,一番下です。学びに向かう力,人間性等という資質・能力の目標がございますけれども,そちらとの関係についてです。学びに向かう力,人間性等については,丸1としまして,「主体的に学習に取り組む態度」として観点別評価を通じて見取ることができる部分と,それから,こうした評価になじまなくて,個人内評価を通じて見取る部分があるということにまず留意をするということを書いてございます。
 9ページです。まず最初の丸では,学びに向かう力,人間性というのは,生涯にわたって学習する基盤を形成する上で極めて重要な柱であることということを明示しています。
 その上で,その次の丸になりますけれども,この「主体的に学習に取り組む態度」の評価に当たっては,生涯にわたって学習を行っていく基盤を培うという視点を持つことが重要ではないか。それについて,最近の心理学,教育学等の発展もございますので,特にメタ認知などの学習に関する自己調整に関わるスキルが重視されているということを留意する必要があるということを明記しています。
 9ページ中段以下です。「『主体的に学習に取り組む態度』の評価の基本的な考え方」という点です。繰り返しになりますけれども,単に継続的な行動をとったり積極的な発言を行うなど,性格・行動面の傾向を評価するということではなくて,各教科の観点の趣旨に照らして,知識・技能を獲得したり,思考力,判断力,表現力等を身に付けたりするために,自らの学習状況を把握して,学習の進め方について試行錯誤するなど,自らの学習を調整しながら学ぼうとしているという面を評価するんだという基本的な考え方をここで述べてございます。
 その上で,10ページになります。10ページの最初の丸のところになりますけれども,「主体的に学習に取り組む態度」に係る評価の観点の趣旨に照らして,ここでは丸1,丸2として,丸1に「知識・技能」を獲得したり,思考力,判断力,表現力等を身に付けたりすることに向けた粘り強い取組を行おうとする側面,それから丸2として,丸1の粘り強い取組の中で自らの学習を調整しようとする側面という,2つの側面を評価するということを明記しております。
 具体的には,11ページの右側の図を御覧いただきますと分かりやすいかと思いますけれども,11ページの図の方では,この丸1と丸2の観点いずれも重要であるんだということをビジュアルで図示させていただいております。
 10ページの中段の方に戻りたいと思いますけれども,10ページの中段,今回の主体的に学習に取り組む態度については,あくまで意思的な側面ということでございます。必ずしも適切に行われているかどうか,それ自体を評価するというものではないということには御留意を頂きたいと存じます。
 また,10ページの中段から一番下の「また,」で始まるパラグラフですけれども,当然,学習の調整に向けた取組というのには,一人一人の特性,個性があるということも考えられますので,特定の型にはめたような自己調整の仕方の指導ということのないように配慮することも重要ではないかということを明記しております。
 また,10ページの一番下です。例えば,丸1の観点,粘り強さについて十分であると認められた場合でも,自己調整について十分じゃないという場合には基本的にはAという評価はなかなか付くことはできないのではないか。単に頑張っている,粘り強くやっているということを評価するのはこの態度の趣旨ではないのだということを明記してございます。
 11ページにまた進みまして,中段の丸です。「主体的に学習に取り組む態度」と他の観点関係について書いてございます。この態度の観点だけを取り出して,その形式的な態度を評価するのは,そもそも適当ではなく,他の観点に関わる学習状況と照らし合わせながら学習改善,指導改善を図ることが重要ではないかという考え方を書いています。
 また,11ページの一番下になりますが,この考え方に基づけば,基本的に単元末,学期末等で算出される3段階の観点別学習状況の評価については,観点ごとに大きな差が生じるということはなかなか考えられないのではないか。仮に,例えば単元の導入評価において,「CCA」であるとか「AAC」といったばらつきは考えられるという場合には,それに応じた指導・支援を行っていくといったような対応が求められることになろうということを書いてございます。
 12ページです。「『主体的に学習に取り組む態度』の評価の方法」という点になります。
 まず最初の丸です。具体的な評価の方法としては,ノート・レポートにおける記述,発言,教師による行動観察,それから児童生徒による自己評価・総合評価,こういったものを材料として先生が評価をしていただくということになろうと思います。もちろん,発言,文章での記述が不得手な生徒もいると思いますので,例えばその場合にはノート・レポート等から見ていくといったような工夫も必要になるということがあろうと思います。
 また,12ページの中段です。これも御議論あったところでありますけれども,特に低学年の児童生徒の場合には,なかなか自己調整は難しいのではないかといったような御意見もございました。この場合には,特に評価の観点の趣旨というものを今後作成しますけれども,そこにおいて発達段階に応じた柔軟な対応は可能であるんだということを明記するとともに,例えば,先生が「めあて」のような形で学習の目標を示して,それに向けてどういうふうに努力をしているのか,自らの考えを対話を通じて修正したりしているのかどうか,そういった面を見ていくことが重要ではないか。また,こういったことをすれば十分に低学年の児童でも評価はできるんじゃないかといったような御意見がございました。
 また,12ページ,一番下です。児童生徒の学習状況を評価するためには,当然,授業デザイン自体を考えていく必要があります。先生が一方的に行うような授業であれば,なかなか態度を見取ることもできないというのも当然のことでございます。きちんと子供たちの評価ができるような授業の設計をお願いしたいというところでございます。
 13ページ,一番上です。今回の学習指導要領では,言語能力等,教科横断的な視点での資質・能力というのを入れておりますけれども,これらについては各教科の学習の文脈の中で横断的に育成・発揮されるということを目指すということが適当ではないか,各教科の文脈の中で評価をしていくということになろうかと思います。
 13ページの中段です。「評価を行うタイミングや頻度について」です。
 これまでも,今の参考資料の作りにもよりますけれども,毎回の授業において複数観点を評価するというような運用がかなり行われてきた部分もあったかと思います。その場合,先生方,また児童生徒にとっても負担ということもありますので,原則として,単元・題材等のまとまりごとに,それぞれの実現状況が把握できるような段階で評価を行うということが適切ではないかということをここでは書いてございます。また,場合によっては,単元・題材ごとということではなくて,複数の単元・題材にわたって長期的な視点で評価をするということも考えられるということを明記しております。
 13ページ,一番下です。評価について,記録を集めることに終始してしまって,本来行うべき指導・支援を行わないままに評価をするようなことにはならないようにしなければならないということも明記をしております。
 14ページにお進みいただきたいと思います。「指導要録の改善について」という点です。
 まず,14ページの最初の丸,「高校における観点別学習状況の評価」についてですけれども,これについては,高等学校においても観点別学習状況の評価自体は行ってきていただいているという状況かと思いますけれども,今般の改訂では,指導要録の参考様式に観点別評価の欄を設けるということで改善を図るということにしたいと考えております。
 14ページのその次です。「指導要録の取扱いについて」ということですけれども,ここでは幾つか,先生方の勤務実態などを踏まえて改善すべき点として掲げております。まず,文章記述の欄については,もちろんこれは大事ですけれども,ただ,なかなか生徒に十分伝わらないというような御指摘もございます。そういった中で,日常での指導の場面で評価についてのフィードバックを行う機会を充実させる,面談・通知表を充実させるといったような部分が重要であって,例えば,総合所見欄については要点を箇条書きにするなど,必要最小限のものにとどめることを記述しています。
 それから,15ページの一番上になりますけれども,小学校の外国語活動の状況について,現在では,5・6年生において,観点別にそれぞれの学習状況を記述するということをしておりますけれども,新しくできる3・4年生の外国語活動の欄については,記述欄を簡素化して,特に評価について顕著な事項がある場合には特徴を記入するという形にしてはどうかという点を記述しています。
 また,15ページの中段です。特に働き方改革という観点がございますけれども,校務のICT化等を進めることは,今後,非常に重要になってくるということでございますので,この点を明記しております。さらに,今後は,様々なデータが記録・蓄積されていきますと,例えば進学したり転校する際に,そのデータをどのように次の学校,別の学校に持っていくのかというデータ・ポータビリティのような議論も出てくると思いますので,この点についての検討が必要であるということも明記をしております。
 15ページの一番下です。「観点別学習状況の評価と評定の取扱いについて」という点です。
 評定,それから観点別学習状況の評価,それぞれの役割があるということがございます。
 16ページにお進みいただきたいと思いますけれども,まず,一番上の丸になりますが,観点別学習状況の評価については,どういった観点でよいのか,それとも改善が必要なのかということが分かる。一方で,評定については,どの教科の学習状況でよい部分があるのか,それから改善が必要なのかということが分かるという,それぞれの役割がございます。
 また,評定については,現在では学習状況を全般的に把握できる指標として広く受けられている。また,入試や奨学金の審査なんかでも使われているという現状がございます。
 ただ,一方で,絶対評価であるというような認識がいまだに根強くあるという指摘があります。また,評定する際の観点ごとの重み付けについては,学校や先生方によっても差異があるのではないかというようなこともございましたので,そういった課題もあるということがございます。
 17ページの一番上のところは,本日はペンディングということで括弧にしておりますけれども,こういった指摘を踏まえて,仮に評定を今後位置付けるような場合には,特に観点ごとの重み付けをどうするのか,また,その際に,観点ごとの重み付けについて国として一定の指針等を示すべきなのかどうか,こういったことは課題になってくるのではないかということはございます。
 17ページ中段以降が,学習評価と,それから高校・大学入学者選抜との関係,そこにおける利用という点でございます。
 まず,高校入学者選抜についてですけれども,現状では,法令上も,調査書,その他必要な書類,選抜のための学力検査の成績等を資料として選抜を行うということが定められているところになります。
 この調査書を使うことについては,17ページの一番下の丸になりますが,学力検査を実施しない教科,例えば技術・家庭とか保健体育等について学力を把握することができます。さらに,18ページに進みまして,1日の,学力検査当日の成績だけでなく,ふだんからの学力をより正確・公平に把握することができます。さらに,様々な観点についてバランスよく把握をすることできるというメリットがあります。
 一方で,課題としては,学習評価が優先になってしまって,説明責任が問われることから,どうしても指導改善につなげるという教師側の視点がおろそかになってしまっているのではないか。仮に,中学校の途中までちょっといまいちだったが,中2・中3から頑張りましたという場合にも,中学校3年生までの成績が全部評価されるとなるとなかなか回復が難しくなる場合もあると。これについては,参考までに脚注のところで,都道府県による差異があるようでございます。例えば東京都なんかにおいては,中学校3年時の成績のみを考慮するようでございますけれども,それは例外的な場合のようでございまして,全体としては87%,41の都道府県において中学校3年間にわたる成績を内心の方で評価をしているという状況のようでございます。また戻りまして,18ページの中段のところです。ほかにも,例えば,内申点をどう上げるのかということに中学生がとらわれてしまっている,授業中の話し合い等で先生の意向を踏まえたり,本意でないのに挙手をしたり,生徒会役員に立候補するといったようなケースもあるのではないかというような御指摘もございます。
 このように調査書自体が非常に大きな影響を持っているということからすると,今後は,18ページの一番下のところになりますけれども,特に高校入学者選抜については,様々な意味での質的な改善,入学者選抜の質的な改善を図るために,改めて入学者選抜の方針,選抜方法の組合わせ,調査書の利用方法,学力検査の内容等について見直しを図ることが必要ではないか。特に,学力検査の成績との比重,それから学年ごとの学習評価の重み付け等については,十分に狙いを踏まえて検討するべきじゃないか。各高校に一律での調査書の一定の利用を義務付けるというよりも,高等学校の入学者選抜の方針に基づいた適切な調査書の利用になるようにするべきじゃないか。さらに,この調査書については,中学校の先生方に対する働き方改革という点もございます。過重な負担が掛かったり,生徒の学習活動に悪影響を及ぼしたりすることのないように,十分な情報共有・連携が必要ではないかということを明記してございます。
 また,19ページの最後の丸では,大学の入学者選抜に関しては今後検討されていく中で,この調査書の在り方についても併せて検討が行われていくということについて記述をしてございます。
 19ページ一番下,「障害のある児童生徒に関する学習評価」という点です。
 20ページに進みまして,殊に知的障害を持つ児童生徒に関する教育課程についても,文章記述という考え方を維持しながら,観点別での学習状況を踏まえた評価を取り入れるということをまず明記しております。また,そもそも個別の指導計画に基づく指導が行われているわけですけれども,これに基づいて評価等も行われる場合があるということを踏まえて,この評価と指導要録,それらの関係を整理することによって,指導に関する記録を大幅に簡素化できるのではないか。さらに,評価結果を指導改善につなげるのではないかということを重視するということを明記しております。
 20ページの中段は,「外部試験や検定等の学習評価への活用」という点です。ふだんから様々な児童生徒が検定試験を受験したり,あるいは外部の試験等を使うということはあると思いますけれども,それらについては必ずしも学習指導要領の目標・内容と整合するものではない場合もあるということに十分に留意をした上で活用いただきたいと考えております。
 20ページの一番下のところになりますけれども,一番下の丸で,なお,学校外で行う多様な活動,例えば地域スポーツクラブあるいは習い事,趣味等に関する活動については,必ずしも先生が全部把握するということでもないかと思います。こうしたものについては,また学校によって指導要録,調査書等に書く場合でも規準が違うと。児童生徒は書いてほしいのに,なかなかこの辺りを書いてもらえない,あるいは逆のようなケースもあるということもあるようですので,そういったことがないように,児童生徒が提出する調査書というのはあくまでも学校における活動の記録であるということの前提の上で,入学者選抜を行う高校・大学サイドにおいて,例えば児童生徒一人一人の姿を把握できるように,提出書類,申告等を通じて確認するといったことが必要じゃないかということを書いております。
 21ページ,国立教育政策研究所が作成する参考資料等についての記述です。こちらについては前回から大きな変更はございませんけれども,参考資料については,詳細な評価の規準の設定例を示すということではなくて,あくまでも手順を示すということが基本ではないのか。参考資料による評価の方法についても,信頼性,妥当性の向上につながるようにするべき。そのためには様々な創意工夫が行われるように,学校の柔軟性に配慮した取扱いは周知するべきではないか。それから,評価について,例えば単元・題材を超えたような長期的な視点での評価というようなことについても評価の事例として入れてはどうかといったようなことについて書かせていただいております。
 また,22ページの中段ですが,「教育委員会,学校等に求められる取組」ということで,今後,各教育委員会においては,この指導,学習評価のワークのレポート,通知等を踏まえまして,教員研修,それから各種の参考資料の作成に御努力をお願いしたいと考えているところであります。
 また,各学校においても,この評価の信頼性,妥当性を向上させていくために,教務主任,研究主任を中心にした校内組織における校内研修の充実等をお願いしたいと思います。
 また,教員養成課程においても,大学の方でもこの学習評価に関する教育の充実をお願いしたいということでございます。
 22ページの一番最後です。この評価についても学習指導要領本体と同じように,学校関係者,保護者,また一般によく周知をしていって御理解を頂くということは重要であるということから,1節を設けているということになります。
 こちらからの資料1についての説明は以上でございます。
 続いて,資料2の方に移らせていただきたいと存じます。
 今回,スライドのみの表示とさせていただいておりますけれども,「主体的に学習に取り組む態度」の評価のイメージ案ということで,先ほどの本体資料の方に入っていたものと同じでございます。
 丸1,粘り強く取り組む態度の部分と,それから丸2,自ら学習を調整しようとする態度ということで,2つの観点があって,これが右上に行くほどAに近づいていくということになろうかと思います。今回,この辺りについて,具体的に,どのように評価をしていくのかということについて,小・中・高の各教科における特定の単元・場面等を取り上げていただきまして,調査官の方から御説明をさせていただきたいと考えているところでございます。
 じゃ,お願いします。
【笠井教育課程調査官】  先生方,おはようございます。小学校算数の国立教育政策研究所の教育課程調査官,文部科学省の教科調査官をしております笠井と申します。
 まず,小学校算数の例についてお話をさせていただきたいと思います。
 算数科のこの最初のイメージの図は,左側に学習指導要領の内容を示していて,右側にそれに対応する評価の観点を書かせていただいております。小学校学習指導要領では,算数科の教科目標の(3)としてさらに,今回の学習指導要領から学年目標の中にも(3)として学びに向かう力,人間性等を示しています。
 今度は内容として,今回これは第2学年の乗法の場面ですけれども,アとして知識及び技能,イとして思考力,判断力,表現力等を示していますが学びに向かう力,人間性等については特に内容には示していないといった状況になっています。
 そこで,教科目標の学びに向かう力,人間性をもとに今回イメージとして書かせていただいたのは,主体的に学習に取り組む態度としている文章です。また第2・第3学年の学年目標の文章の学びに向かう力,人間性等をもとに,イメージとして「主体的に学習に取り組む態度」として書かせていただきました。
 次の図で,第2学年の乗法で具体的にお示しします。「知識・技能」は,今の学習指導要領の内容として示したものがそのまま同じような形で移行させました。「思考・判断・表現」については,小学校算数についてはこの部分はどちらかというと余り内容限定ではなく広く書かせていただいて,「計算の意味や計算の仕方を考えたり」と書かせていただいているのですけれども,この単元では乗法ですから,「乗法の意味や乗法の計算の仕方を考えたり」,「計算」を「乗法」というように少し焦点化した言葉で書かせていただきました。
 そして,「主体的に学習に取り組む態度」です。これについては,これらの知識及び技能や思考力,判断力,表現力等の内容を鑑みて,さらに,第2学年の「数量や図形に進んで関わり,数学的に表現・処理したことを振り返り,数理的な処理のよさに気付き生活や学習に活用しようとしている」といった主体的に学習に取り組む態度の趣旨イメージを踏まえて,内容として以下の2つの点を設定しました。
 一つが,「累加の簡潔な表現としての乗法のよさに気付き,ものを数えるときに乗法を用いようとしている」。それから,もう一つが「進んで乗法の計算の仕方を考えようとしたり,乗法に関して成り立つ性質を見いだしたり,見いだした性質を活用しようとしたりしている」です。
 評価場面の一つの例として,2の段から5の段の乗法九九の学習をした後に,6の段の中の,特に6×5について答えの求め方を考えようという場面で評価をするということで考えました。B評価として,これが規準と考えたわけですけれども,乗法の意味や乗法に関して成り立つ性質を基に,乗法の計算の仕方を考えようとしている。6×5というのは6+6+6+6+6で乗法の意味から求められますし,または,先ほどの乗法に関して成り立つ性質として1つ前の答えに6を足せばいいといったことも今回習う性質としてありますので,6×5は六四,二十四+6で求められる,若しくは交換法則として6×5は5×6という計算法則がありますから,それでこのようなことを使って求めようとしているということをB評価としました。
 それで,A評価としては,それらの幾つかの方法で考えるということを考えました。例えば6×5は6+6+6+6+6という計算する際,子供たちによっては暗算が苦手で,6+6は12,12+6は18,18+6は22かなってやって,22+6は28といったように,途中で答えを間違えてしまう子供がいるわけですが,そのときに六五は五六だから,五六,三十だから,あ,30だな,じゃ,もう一回ちょっと計算し直してみようといったようなことで,幾つかの方法で考えることによって答えが確かなことを確認しようとしている。こういった姿をAと評価するというふうに考えました。
 それから,Cの評価としては,実際こういった6×5については,子供たちにこういったアレイ図という丸が5の列が6列並んでいるような図を示すことが多いのですけれども,こういった数を基に,1,2,3,4,5,6,7,8,9,10と,掛け算を使わないで答えを数えて求めているといった子はCだろうというふうに判断しました。
 以上が2年生の掛け算の例です。
 次は5年生の例です。今度は4・5・6年生の教科目標が同じ文言で学びに向かう力,人間性等を示しているので,このことを踏まえて,4・5・6年生としては,「数学的に表現・処理したことを振り返り,多面的に捉え検討してよりよいものを求めて粘り強く考えようとしたり,数学のよさに気付き学習したことを生活や学習に活用しようとしたりしている」ということを「主体的に学習に取り組む態度」のイメージを考えました。
 そういったことを踏まえて,今回,第5学年の平面図形の面積では,三角形,平行四辺形,ひし形,台形の面積の求め方を考える場面なのですが,第2学年の乗法と同じように学習指導要領の内容に示した知識及び技能と思考力,判断力,表現力等を踏まえて評価規準も書きました。
 「主体的に学習に取り組む態度」は,このように考えました。一つは,5年生の平行四辺形の面積のときは,4年生に正方形や長方形などの面積を学習していますので,「その求め方に帰着させて考えることで,三角形,平行四辺形,ひし形,台形の面積を求めることができるというよさに気付き,学習したことを生活や学習に活用しようとしている」としました。それからもう一つは,「三角形,平行四辺形,ひし形,台形の面積について,数学的に表現・処理したことを振り返り,多面的に捉え検討してよりよいものを求めて粘り強く考えようとしている。また,三角形,平行四辺形,ひし形及び台形の面積の公式を導きだそうとしている」としました。
 教科書会社によって平行四辺形と三角形を学習する順序が違ったりしているのですが,一つの例として,平行四辺形の面積の求め方を考えたり,公式を導いたりする学習の後に,三角形の面積の求め方を考えようとしている場面として評価するとしたらどうなるかということを考えました。
 B評価としては,例えば,三角形のある部分を移動して長方形にして,長方形の面積の公式を用いて面積を求める方法,若しくは,元の三角形と合同な三角形を組み合わせて平行四辺形にすることで,平行四辺形の面積の求め方を用いて面積を求めようとしている。こんなような求め方をしようとしているということが分かればB評価としていいのではないかと考えました。
 一方,A評価としては,そういったことについて,今お話しした方法で面積を求めた後,数値や形を変えた三角形についても,それらの方法が使えるか検討しているということを考えました。例えば,最初は,底辺が6センチで高さが4センチ,こんなような底辺も高さも偶数の形で面積を求めた考え方が,今度は奇数になった場合は,例えば横に切ったりとかしづらい図形について,また,高さが底辺からはみ出してしまう,こういう図形についてうまく使えるのかなといった,先ほどの長方形にするといったことはちょっと使いにくくなってくるわけですが,そんなようなことを考えてよりよい方法を見付けていこうとすることをA評価としたらいいのではないかなということを考えました。
 一方で,C評価は,苦手な子供たちのために,ある程度量感を持たせたいといったことから,方眼の上に三角形を描いて示すということもよくあるわけですけれども,その方眼を実際数えて面積を求めようとするということにとどまっている,こういった子もCではないかなと考えました。若しくは,5年生ぐらいになると,首都圏では中学校受験等もあるので,先に塾で習っちゃって,三角形の公式は底辺×高さ÷2だから,もうそれで終わりと,もうそれ以上考えようとしないといった子もCではないかなと考えました。実際こうやって公式を覚えている子は,なぜそんな公式が使えるんだろうかということを,この具体的な三角形の意味に基づいて,例えば三角形を2つ合わせると平行四辺形になることからこういう公式が導き出されているんだなということを考えられれば,BやAになるわけですけれども,ただ公式だけ使って答えているという子供はCでいいのではないかなというようなことを考えました。
 以上です。
【鳴川教育課程調査官】  小学校理科を担当しております鳴川と申します。どうぞよろしくお願いします。小学校理科におきまして,「主体的に学習に取り組む態度」について,現段階における考えについてお話をさせていただきます。よろしくお願いします。
 まず,目標の部分に示してありますように,学習指導要領では,資質・能力の学びに向かう力,人間性等におきましては,小学校理科は「自然を愛する心情や主体的に問題解決しようとする態度を養う」としています。本日,資料としては配付しておりませんけれども,小学校理科の解説におきましては,この「主体的に問題解決しようとする態度」については大きく3つの視点で記載しております。意欲的に粘り強くということ。それから,他者と関わりながらということ。そして,学んだことを自然事象や日常生活に当てはめてみようとするという視点です。今,粘り強くという側面と,自らの学習を調整するという2つの側面があるというふうに議論されていますけれども,それらの側面から考えながら評価規準の方について考えてみました。
 ここに示しているのは中学年の例です。第3学年の「物と重さ」という単元です。資料の右上,この評価の趣旨(イメージ)のところにありますけれども,ここでの記載に付ける要素,ポイントは3つあります。1つは,1行目の終わりにあります「他者と関わりながら」という視点。それから,「意欲的に問題解決しようとする」という視点です。そして,「問題解決の過程を通して獲得した知識及び技能や思考力,判断力,表現力等を日常生活などに生かそうとしているという,この日常生活に生かそうとする」,この3つは要素としてあります。
 これらを3つの要素として具体的に書かせていただいたのが次の資料でございます。
 まず,B規準として書かせていただきましたものは,今の3つの要素に照らし合わせまして,「物の形や体積と重さとの関係について,他者と関わりながら,意欲的に問題解決しようとしているとともに,学んだことを日常生活などに生かそうとしている」ということをB規準としました。先ほどお話ししたように,「他者と関わりながら」ということと,「意欲的に」ということ,それから「日常生活などに生かそうとしている」といった側面から考えさせていただきました。
 それがB規準となっておりますけれども,さらに,それがA規準となるというところにつきましては,この「他者と関わりながら」という視点に加えながら,「自分なりの考えをもち」というところを付け加えさせていただきました。他者と関わりながら自分なりの考えを持ってということで,自らの学びを調整するという側面が入っているような表現にさせていただきました。中学年という発達の段階を踏まえまして,このような表現とさせていただいたところです。
 続きまして,高学年の例です。6年生の「燃焼の仕組み」です。資料の右上の評価の趣旨のイメージのところですけれども,先ほどお示ししました視点ですね,「他者と関わりながら」ということと,「自分なりの考えをもち」ということ,そして先ほどは「意欲的に」でしたが,「粘り強く」という視点,そして「日常生活に生かそうとしている」という,大きく4つの側面から書かせていただきました。高学年の場合はこの4つ。つまり,先ほどの中学年のA規準と同じような視点として高学年のB規準を設定したというところでございます。イメージとしては,階段状になっているようなイメージを持っていただければと思います。
 具体的に,次の資料を見ていただきたいと思います。具体的にB規準としては,ここに書かせていただきましたが,「燃焼の仕組み」について,1つ目,「他者と関わりながら」,「自分なりの考えをもち」,3つ目,「粘り強く問題解決しようとしている」,そして4つ目として「日常生活に生かそうとしている」,このような4つの側面からB規準を設定させていただきました。
 さらに,それをB規準として,A規準になるとしたときにはもう一つ新たな視点として,「自分なりの考えをもち」の次に,「自分の考えを見直しながら」というところの側面を加えさせていただきました。「燃焼の仕組みについて,他者と関わりながら,自分なりの考えをもち,自分の考えを見直しながら,粘り強く問題解決しようとしているとともに,学んだことを日常生活に生かそうとしている」ということでA規準とさせていただきました。具体的に「自分の考えを見直しながら」という言葉を追加しましたが,理科で育成を目指す資質・能力の中には問題解決の力というのがあります。そこには,より妥当な考えを作り出す力ということも入っておりまして,「自分の考えを見直しながら」ということは,理科で育成を目指す資質・能力,問題解決の力にとっても大きな重要な視点であると考えておりまして,このような側面からA,Bなどの規準を考えさせていただきました。
 以上でございます。
【岡田教育課程調査官】  小学校図画工作科を担当させていただいています岡田です。よろしくお願いいたします。
 一番上のところ,算数と理科と同じように,ここのところに学びに向かう力,人間性について書いてあります。私の方からは,低学年と高学年の同じ絵や立体,工作に表す活動というところで説明をさせていただきます。
 低学年は,「楽しく表現したり観賞したりする活動に取り組み,つくりだす喜びを味わうとともに,形や色などに関わり楽しい生活を創造しようとする態度を養う」という目標であり,評価の観点は御覧いただいたような形になります。
 そして,内容としては,A表現の中には,発想や構想――ここが思考力,判断力,表現力等になるんですけれども,発想や構想と,(2)が技能という形,そして共通事項として,アのところが知識,そしてイのところが思考力,判断力,表現力等という形になっています。
 で,評価規準の設定例のイメージは,左側の内容に示したところに対応して書いてあるとおりになります。
 具体的には,題材として,子供たちがこれぐらいの大きさの紙に好きなものや好きなことをどんどん描いていくという,絵に表す活動を想定しています。
 評価規準なんですけれども,ちょっと大きく書いていますが,「楽しく好きなものや好きなことを絵に表す活動に取り組もうとしている」で,この右側のA,B,Cと判断した例のBのところがこの評価規準になる場合もあると思います。
 そして,評価の場面としては,発想や構想をする,技能を働かせて表す場面になります。
 Bのところは,「作品を見直しながら,粘り強く発想や構想をしたり技能を働かせて表したりするなどし,楽しく絵に表す活動に取り組もうとしている」として設定し,Aは,「友人の作品などを参考にするなどして」というところと「より深く作品を見直しながら」というところをAとして設定してみました。「友人の作品などを参考にするなどして」というのは,友人の発想や構想や表し方の工夫などを参考にするということです。より深く作品を見直すというのは,例えば発想がとか,ここのクレヨンの使い方がとか,あと,何回もというところも入ると思います。そして,「粘り強く」というところはBにも入っていますけれども,ここのところはAとBとは同じような表記の仕方をしています。先ほどのお話にもあったんですけれども,「めあて」を示すというところが低学年では重要になってくるかと思いますので,作品を見直すという場面を何らかの形で設定する必要があるかなと思っています。例えば,これが2時間続きの図工の場合に,2時間目の最初に今まで描いてみた絵を描いた順番に並べてみようとか,好きな順番に並べてみようなどという教師のアプローチがあって,そこで作品を見直すということを子供たちができるような場が必要かなと考えています。
 これが低学年です。
 そして,高学年になります。これも同じことなんですけれども,「主体的に表現したり観賞したりする活動に取り組み,つくりだす喜びを味わうとともに,形や色などに関わり楽しく豊かな生活を創造しようとする態度を養う」というところで設定をしています。
 ここも,低学年,中学年,高学年とも同じで,(1)が発想や構想,(2)が技能,そして共通事項のアが知識,そしてイが思考力,判断力,表現力という形になっています。
 高学年は,学校の中の心に残る場面を絵に表す活動として設定をしてみました。先ほど申し上げたとおり,ここを大きく書いていますけれども,このBのところが規準になる場合もあると思います。ここも,「友人の活動や作品などを参考にする」,「より深く活動や作品を見直す」というところがAのポイントになります。ここで,低学年では「作品」とだけだったんですけれども,高学年では「活動」というふうに入れてみました。例えば作品だけだと,発想や構想,表し方の工夫などを参考にするということが考えられますが,活動となると,例えば,どこかの場所でスケッチをして,教室で絵の具で色を付けている場合に,あ,もう一回,その場所に行って,どんな感じがしたかもう一回感じ取ってこようってしている友達の活動の様子を参考にして,自分も見直してみる,自分自身の活動を見直してみる。それから,友達のところに「どういうふうにして描いたの」という,具体的にやっている友達の活動自体を参考にして,自分も活動を見直すということも考えられると思います。そのときに,高学年なので,奥行きなどの表し方ということも参考にするということがあると思います。これも何らかの場面がやっぱり必要になると考えています。例えば,高学年の子の活動ですと4時間,6時間題材になりますので,「次の週の最初に作品を見てみよう」や,先生がそういう活動の時間を設定するようなことでできるかなと思っております。
 図画工作科は,つくり,つくりかえ,つくるという学びの過程を大切にする指導ということを,長い間,大切にしています。子供が一度作って満足することもありますけれども,つくっている途中で考えが変わってつくりかえることもあります。次々に試したり,前につくっているものと今つくりつつあるものの間を行きつ戻りつしたり,再構成したり,思ったとおりにいかないときは考えや方法を変えたりして,実現したい思いを大切にして活動しています。図画工作科はこのような学びの過程を児童自身が実感できるようにすることが大切であるというふうにこれまでしてきたわけなんですけれども,こういう考えを具体化することとも言えると考えております。
 以上です。
【山田教育課程調査官】  中学校外国語担当の山田と申します。
 中学校外国語における学びに向かう力,人間性等に係る目標は,この左の上の箱に示しました,「外国語の背景にある文化に対する理解を深め,聞き手,読み手,話し手,書き手に配慮しながら,主体的に外国語を用いてコミュニケーションを図ろうとする態度を養う」というものです。ここでのポイントは2つございます。1つ目は,文化に対する理解を深めること。2つ目は,相手に配慮すること。
 この2つのポイントを踏まえて,評価の観点の趣旨としましてはその右横のようにしてみました。「外国語の学習を通して外国語の背景にある文化の理解を深めようとしたり,聞き手,読み手,話し手,書き手に配慮しようとしたりしながらコミュニケーションを図ろうとしている」。
 そして,この評価の観点の趣旨を踏まえて,例えば1つの単元ではどのような評価規準等が設定できるかというものを示したものが次のページです。ここでは,中学校第1学年の観光地等を紹介するという内容の単元を例に挙げました。この単元であれば,評価規準は,一番左の箱ですが,「町や観光地の魅力を伝えるために,理解の程度等を聞き手に確認しながら言語活動に取り組んでいる」。先ほど申し上げた2つのポイントのうちの1つ,相手への配慮ということを取り上げて,ここでは,聞き手に確認しながら取り組んでいるかどうかということを見取ろうと考えました。
 評価の場面としては,この単元の終末の授業で,町や観光地の魅力について口頭で伝え合うという活動が該当すると考えています。
 一番右の箱はABC基準です。Bは先ほど申し上げた評価規準と同じです。BとAの違いは,町や観光地の魅力を伝えるという目的を達成する上での配慮の程度で違いを書き表してみました。したがいまして,Aは,「町や観光地の魅力を伝えるために,聞き手の理解の程度等を確認することに加え,繰り返したり,言い換えたりなどしながら言語活動に取り組んでいる」というふうに設定することができるのではないかと考えました。Cは,Bを満たしていないものということです。
 ちなみに,学習に関する自己調整ということについて申し上げますと,この目的を達成するために,言語活動に取り組んでいる生徒が,自分のこの伝え方で紹介している町や観光地の魅力が伝わるかどうかを振り返る,つまり,自己の学習状況を,言語活動を通して把握している状態のことだと考えています。つまり,先生から教えてもらったり,仲間から学んだりしながら,こういう伝え方はどうかな,これはどうかなというように試行錯誤しながら言語活動に取り組んでいるという意思的な側面と捉えています。そういう意思が働いた結果,姿として現れたものを見取ろうと考えて設定したものが,今見ていただいている評価規準ということでございます。
 以上です。
【臼井教育課程調査官】  続いて,高等学校芸術科(音楽)を担当しております臼井と申します。よろしくお願いします。
 画面にありますように,高等学校芸術科(音楽Ⅰ)の例,(1)歌唱を想定した例でございますが,目標のところは,芸術科の場合は芸術科の目標がありますので,芸術科の目標を受けた音楽Ⅰの目標ということで設定をされています。ここに書いてあるのは音楽Ⅰの目標でございます。
 その下にあります学習指導要領の内容につきましては,今あるのは,(1)歌唱についてのみです。また,歌唱,器楽,創作,観賞,全てに関わるものとして〔共通事項〕というものが設定されていますので,ア,イということで,歌唱の学習を展開する場合,これらの事項が関係してくるということになりますが,今回の例示は,アとイの(ア)とウの(ア)及び(イ)という組合せで合唱題材を構想した場合の例になっております。
 評価規準の設定のイメージということでこのように書いております。
 先ほどの評価規準,この左側ですが,「音の連なりや重なりによって生み出される雰囲気や曲の文化的・歴史的背景に意識を向け,主体的・協働的に音楽表現を工夫して歌う学習に取り組もうとしている」ということになります。音の連なりや重なりというのが,要素で言うと旋律やテクスチュアということになるわけですけれども,それを開いた形で言っております。
 学習場面としては,上の方の場面は,題材の導入に近いような場面になりますけれども,ここでの学習がその後の「知識及び技能」の習得あるいは「思考力,判断力,表現力等」の育成に非常に関わっていく,支えとなる部分でして,音楽の学習では非常に重要視しているところでございます。下のところは,創意工夫する場面ですので,「思考力,判断力,表現力等」の育成に係る場面を想定しております。
 音楽科の科目の特性としまして,対象としている音や音楽が基本的には消えてなくなっていくという,そういう特質を持っているということ。あと,一人一人の感じ方や考え方が異なっていくということが十分あり得るということ。その結果,確実にこれが一つの答えであるというところに収束しない学習が十分考えられるというような特性があります。
 そういったことを踏まえまして,右側上の場面でいきますと,A,B規準においては,「つながり方や重なり方によって生み出される雰囲気の違いについて感受したこと」,これは自分が感じたことですけれども,「を,曲の文化的・歴史的背景との関わりを意識して発言したり,他者の発言等に反応したりしている」ということになります。それに対してAについては,「比較」ということをしながら,要するに一人一人違う可能性が十分あるということですので,比較するという視点を持って,「共通点とか相違点を見いだそうとする」ということで更に学習を進めていこうとしているという子供がAになるだろうと。Cにつきましては,「何らか自分が感受したことを発言したり記述したりしているが」,こういう活動は一応しているんだけれども,学習の中身として,本来目指しているつながり方や重なりとか背景とかということに意識が向いているという様子がうかがえない。そういう状態であれば,何かやっているようには見えるけれども,学習には向かえていないだろうという,そういうCを想定しております。下のところについても,Bのところですけれども,「どのように歌うかと考えたり他者と共に歌い試したりしようとしている」ということをBと置いて,上のAにはやっぱり「比較」というような視点を持ったり,あるいはCについては,みんなで歌いましょうねという活動は仕組まれるわけですので,その活動には参加しているんだけれども,「思考力,判断力,表現力等」の育成の方にはどうも向いていない。一応そこに参加しているだけというふうになってしまうものについては,今回の趣旨からいけばCになるのかなという,そういった想定でございます。
 いずれにしても,次々と消えていくものを相手にしているということで,粘り強さがないと第一印象だけで終わってしまうので,これでは学習が成立しないということで,粘り強さの視点,あるいは他者との関係,どういった視点で物を見ていくか,何に意識を向けていくかという点で自己の学習を調整するといった視点が出るのかなということで,現時点でこんなことを考えております。
 以上でございます。
【市川主査】  それでは,ありがとうございました。
 今の事務局からの御説明,それから調査官からの御発表を踏まえまして,「主体的に学習に取り組む態度」の評価について意見交換をしていければと考えております。
 それでは,御意見のある方は,いつものように名札を立てていただけますでしょうか。はい,鈴木先生。
【鈴木委員】  「主体的に学習に取り組む態度」,A,B,C,教科調査官の方々,非常に難しい観点で,大変御苦労されたことと思います。私も実際に評価規準を「思考・判断」も含めて提案しておりますので,大変難しい評価規準を考えていただいたと思います。ここまでいろいろ苦労して,この「主体的に学習に取り組む態度」だけではなくてほかの観点も,学校の現場の先生も,それから教科調査官の皆さんも,評価規準や,それから学校の教員は一生懸命それを評価しているわけですが,それが入試になると,多くの場合,評定一本で示されてしまうと。せっかくこれだけ3観点,主体的学習態度の評価は特に難しいわけですが,これだけ苦労して3観点についてこれから評価しても,入試の段階で中学から高校及び高校から大学,ほとんどそれは評定で示されるだけというのは大変惜しいのではないかと思います。せっかくこの観点,これまで苦労したんですから,調査書の中に観点別評価の結果も書くべきではないかと。これまでは評定が主として書かれていたわけですけれども,観点の結果も書くことが,ここまで苦労してやるならば必要ではないかと思います。
 それから,ずっと入試改革,我が国は何て言ってきたかといいますと,「多面的・多角的評価が大事である」と言ってきたのですから,生徒や児童の多面的な状況を示すことも入試においても必要ではないか。そういたしますと,調査書に観点の結果も書き,及び評定も残すならば評定も書くというやり方の方が,これまでの多面的・多角的な評価を入試においても進めていくという方針から考えれば,その方が正当ではないかと思います。
 それから,本会議で前々回,かなり観点別評価を重視して,場合によっては評定をなくそうというところまで行ったのですから,やはりその意見を,先生方の意見を重視して,調査書にも観点別評価の結果を書いた方が,ここの会議のずっと議論してきたことにもつながっていいのではないかと思います。
【市川主査】  ありがとうございました。
 ほかの委員の方,いかがでしょうか。渡瀬委員,どうぞ。
【渡瀬委員】  ありがとうございました。この机上配付資料の1ページのところにあります2つの側面を表したX軸とY軸のようになったこの図ですが,「主体的に学習に取り組む態度」のここに示された2つの側面,1つ目,粘り強く取り組む態度と,2つ目の自ら学習を調整しようとする態度というのは,別々の側面というよりはどちらかというと,1の粘り強く取り組む態度の上に,更にそれが高次になって出てくるものが2の自ら学習を調整しようとする態度のようなイメージを私は持ちます。言葉が難しいですけど,1は単なる試行錯誤で,2の方はどちらかというと,その試行錯誤を重ねる中から学習目標に向かって自己調整しようとする,少しより高次の試行錯誤のようなイメージを持っています。そうすると,この図は,このようにX軸とY軸のように単純に示すのではない表し方もあるかなという印象を持ちました。
【市川主査】  ありがとうございます。私もちょっと関係ありますので。最初,私も,2つの側面ということからいえば2軸というのは分かりやすいかなとも思ったんですけれども,改めてこの最初のページの文章を見ると,丸2としては,丸1の粘り強い取組の中で,自らの学習を調整しようとしている側面というので,むしろ丸1の「粘り強い取組の中で」という感じがちょっとこの図だと見えないところがあります。独立した軸というよりは,例えば同心円のような感じですね,立体で見ると円錐のようなもので,一番土台にあるのが粘り強く取り組む態度があって,さらに,その上で上から見ると同心円で,その中に自ら学習を調整しようとしていろいろ工夫を入れているというようなものが見られると。で,中心に行くほど創意工夫が強くなるという,上から見れば同心円,横から見ればピラミッドのような積み重ねのような形になっている方が,粘り強く取り組む態度というのは一応大前提ですよと。その上で更にという感じが出てくるかなという気がいたしました。言いたかったことは渡瀬先生と同じイメージかなと思います。
 それでは,石井委員,いかがでしょうか。
【石井委員】  では,失礼します。今回の主な議題でもある「主体的に学習に取り組む態度」について,今回の事務局の方が示してくださった中でも,それを一般的なある種スキルであるとか学び方にしないというふうなことを,それを形式化というか,ほかの観点と独立して形式化しないというふうなことが示されていることは,とても重要かなと思います。そうでないと,この「主体的に学習に取り組む態度」というのが一般的な要領のいい子を更に優遇するような,そういうふうなことになりはしないかというふうなことを危惧するのです。
 それで言いますと,この自己調整というふうなことも,自己調整一般ではないのかなと思うんですね。先ほど渡瀬委員の方からも御指摘いただきましたように,ただの試行錯誤ではなくて,より高次なというふうなところがポイントかなと思います。今回,算数の例にも端的に表れているかなと思いますし,ほかの教科もそうであったかと思うんですが,自己調整一般ではなくて,正にその教科にとって本質的な試行錯誤をしているかどうか。現行の学習指導要領の言葉で言えば,それを表す言葉は「見方・考え方を働かせて」というふうなことだったかと思うんですね。その言葉を使うかどうかは別にしても,その教科として妥当な学習対象への向かい方ができているかということが重要なのかなと思います。ですから,結局,算数の場合においても,単なる試行錯誤というのではなくて,算数のこの内容を踏まえてより簡潔に思考しようとしているかどうか。更に言うと,1つのことですぐ納得しないというふうな,ある種,算数的な,そういった態度みたいなものが問われているのかなと思いますので,そこはこの自己調整一般ではなくて,教科の本質に照らした自己調整であるというふうな点を強調する必要があるのかなと思います。
 あともう一つですけれども,今回,資質・能力の3つの柱との整合性というふうなことで言えば,正に「主体的に学習に取り組む態度」というのを「知識・技能」,そして「思考・判断・表現」と一体的に育てていく,そういうふうな場面をこそ,この態度を評価する場面として設定していく必要があるのではないかなと思います。それで言いますと,今回示された中で言えば,やっぱり低学年に関して言うと豊かな習得の場面というふうなことになるかと思いますが,ある程度,中学年,高学年,中学校,高等学校というふうになっていけば,問いと答えの間が長いような,正に知識を分かって習得することの先にある,分かったことを総合的に使いこなしていくような,そういうふうな場面をこそ,態度を評価する場面として設定していく必要があるのかなと思います。
 それから,学力の3要素一般ではなくて,正に今回,資質・能力の3つの柱,そこに即した3観点であるということが重要なのかなと思います。ですから,その大きなメッセージというのは,正に社会に開かれた教育課程というふうな言葉が表しているように,よりよく生きていくことにつながるような教科学習の在り方を展望していく。正にOECDの言葉で言えばウェル・ビーイングにつながるような教科学習。それで言えば,例えば面積の公式を導き出すこともそうですけれども,それを基に,学校ではとか,実際に身近な校舎の面積であるとか教室の面積といったものを計測したりであるとか,そういった知識を複数の,平行四辺形もひし形も台形も三角形も,それを総合的に使いこなすような,そういうふうな場面をこそ評価の場面として設定していく。それから,日々の授業の中での形成的評価といったものの先にある,それを使いこなすような場面を評価の場面とすると。更に言うと,国立教育政策研究所から提示する評価材料といったものも,そういったダイナミックな学習活動であるとか評価場面がどこに当たるのかというふうなことの検討が作れるような,そういったものが示されていくことが重要なのかなと思います。
 あともう1点だけ,すみません,長くなっていますけれども,評定のことに関して言うと,1つ何か誤解があるかなと思うのは,観点別評価というのが評価で,それで,いわゆる評定欄が評定であるというのは,若干正確さを欠くように思います。観点別評価のA,B,Cも,これは分析評定であるわけですから,この間,評定がなくなるといった,そういうふうな報道がなされていますが,厳密に言うと,それは総合評定をなくす云々というような議論だと思うんですね。ですから,分析評定と総合評定だというふうなこと,そこをちゃんと区別した上で考えていく。そのように考えれば,先ほど鈴木委員が御指摘されたように,分析評定である観点別評価のA,B,Cをベースにしながら入試に活用していくというふうなことは大いに考えられることだと思いますので,総合評定一般だけで入試材料にしていくということだけではなくて,分析評定としてのA,B,Cの観点別評価をうまく活用していくという,そういうふうな道もあるのではないかなというようなことを思います。
【市川主査】  ありがとうございました。石井先生,最後におっしゃってくださったことは大事な点で,基本的には観点別評価も評定をしているわけで,ただ,俗に総合的な3観点をまとめたものを評定,評定と言っていますけれども,それは総合的な評定であって,どちらも評定をしていることには変わりないと。短く単語にしてしまったときにちょっと誤解を招くかもしれないので,それは大事なことかと思います。
 それでは,次に,若江委員,善本委員の順でお願いします。
【若江委員】  若江でございます。少し次元が変わってしまうかもしれませんけれど,私は,評価を考えたときに,ついつい総合的な学習の時間の評価を考えてしまうのですが,本日事前の御説明にありましたように,今回,自らの学習を調整しようとする態度について,これをするにはルーブリックだとか何かがないと,先生方,どうやって取り組んでいかれるんだろうなと思っておりましたところ,教科を事例に各調査官の方から事例を御提示いただきました。ただ,この評価規準の設定したものは,先生だけのためのものであって,子供たちには開示をするというイメージではないんでしょうか。そこをまずお聞かせいただきたいです。先生方用の評価規準の設定例で,これは子供たちには提示は考えていないのでしょうか。
【市川主査】  じゃ,幾つかの御質問を頂いてから,後でまとめて御回答頂くようにしてもよいでしょうか。
【若江委員】  はい。究極的には,やっぱり自ら学習調整しようとする姿勢であれば,子供たち自身が自分でルーブリックを設定できる,このような評価規準を作れる子ということでないといけないと思います。ですので,こういった御提示があった場合には,先生だけが抱えているブラックボックスではなくて,やはり子供たちにきちっと提示をして土壌を培っていくということがすごく大事ではないかなと思いました。
 そうなっていくと,19ページのお話のところにあった大学のアドミッション・ポリシーに基づいて多面的な評価というようなことがあるのですが,ちょっととっぴな話になるかもしれませんが,目標とする大学のアドミッション・ポリシーが明確なルーブリック規準が作られていたとするならば,子供たちは,個別にその目標とする大学の評価規準に沿って,個別の目標をうまく設定していけるようになったりするのではないかなと,ちょっとそんな発想も持ちました。
 以上でございます。
【市川主査】  じゃ,これは後で幾つかの御質問に対してまとめて答えていただくということでよろしいでしょうか。今,これまでも議論出たと思いますけれども,教師側がこういう規準というのを持っているだけでよいのかと。児童生徒の方にもこういう規準というものが共有されて,自分の学習改善に生かすというようなことも大事ではないかというお話で,それに対してどういうお考えかということを後で伺えればと思います。
 善本委員,どうぞ。
【善本委員】  ありがとうございます。大変丁寧な資料を作っていただきまして,ありがとうございます。参考になる部分が非常に多く,本日の議論は,「主体的に学習に取り組む態度」についてどのように評価するかということにフォーカスしているということですので,その点に絞って,中学と高校の現場を預かる立場から気になることを幾つかお話しさせていただければなと思います。
 まず1点目は,中学校に関して言えば,小学校もそうですけれども,もう長年,観点別評価をやってきたという歴史があって,現場の努力もあってそれを定着させてきたという思いも非常に強くあります。したがって,逆に,この「主体的に学習に取り組む態度」というのがこれまでの「関心・意欲・態度」をスライドさせたものだというような理解が非常に進んでいく可能性があるのではないかなと思います。それが違うものであるのならば,逆に,そこが高校との違いですけど,これまでとは違うというところを非常に明確に示していかないと,定着しているがゆえに,その修正が非常に苦労するという問題が起きるかなと思います。それは中学側です。
 一方で,高等学校に関して言えば,もちろん内容的に観点別のような評価を取り入れていたとしても,実際上,はっきりと分かる形ではやってこなかったということからいうと,これからやっていかなくてはいけないというところですので,小・中とは全く違う努力と苦労がこれから起きるわけですけれども,そういう中で,小・中と違う観点としてちょっと押さえておいていただきたいなと思いますが,ちょうど本日,中学校の外国語をお示しいただいたので,そこで,中学校の外国語の中では,目標のところに「主体的に外国語を用いてコミュニケーションを図ろうとする態度を養う」というのが学習指導要領に書いてありますので,これが1つ規準になって,それを評価の観点として評価していくということになるんだと思うんですけれども,高等学校の場合も,外国語の目標の中にほぼ同じような表現があって,高校の場合は,「主体的」の後ろに「自律的」という言葉が入ってきて,同じなんですけれども,ただ,高校の場合は教科で評価しません。評価はその下にある科目の評価なので,そして,学習指導要領の例えば必履修である英語コミュニケーション1を見ると,目標の中にも「主体的に学習に取り組む態度」に関わるような表現とはっきり分かるものはほとんどないです。ほとんど書かれてないです。これは教科によっても書きぶりがかなり違っていて,国語の場合も同様で,「主体的に学習に取り組む態度」に関する学習指導要領上の表現というのはほとんど書かれていないです。一方で,「知識・技能」と「思考・判断・表現」については,国語と英語はきちんと項目を立てて書いている。そうでない教科もまたあると。本日お示しいただいた音楽などは,「主体的に」という言葉を目標の中に明確に書いているという意味では比較的分かりやすいというところなんですが,教科ではなく科目で評価するということと,教科・科目の性質によってもかなり学習指導要領の書きぶりにも実態上差があるということを踏まえていただいて,現場が混乱しないように,これから正にどのようにだと思うので,作っていっていただかなければいけないのかなと思っています。
 あと,事務方の方でおまとめいただいた資料の中でちょっと気になるところを申し上げます。12ページのところなんですけれども,これ,今回修正されたというのではなく,これまでの資料にも入っていたので,どこかでお話をした方がいいかなと思っていたんですけれども,先ほどの御説明にもありましたが,12ページの「『主体的に学習に取り組む態度』の評価の方法」の中で,「一人一人の個性を十分に考慮した」という表現の中で,「例えば,文章での記述が不得手な児童生徒に対しては,個別に話を聞いたり,発言が少ない児童生徒に対してはノートやレポート等から意見を見取ったりするなどの工夫が重要である」と。個に対応したというところはとても大事なんですけれども,やっぱりこの表現,少し気になるというのは,公平性とか客観性の観点からこの表現で大丈夫であろうかというところが若干気になるところであります。
 それともう一つは,特に高等学校などの場合は,1人の教員が300人ぐらい評価するということが普通にありますので,そのような評価の現場でこのようなことが実際上に可能であるかどうかというところは,現場の立場で申し上げると一方で非常に難しい点。もちろん,努力をして個々を見取るということをやっていかなくちゃいけないんですが,難しい場面かなと思います。
 それから,冒頭,鈴木委員からお話があったとおりで,調査書においても観点の評価を入れていくというのは私は当然のことだと思っていまして,これまで申し上げてきたとおり,指導要録と調査書というのは一体のものであるというふうに現場は運用してきていますので,観点別評価が導入されれば,例えば中学から高校へ,高校から大学へ,観点も,仮に評定が今残るという方向なんでしょうか,そちらになるとしても,観点も上げていくというのが当然のことではないかなと思っています。
 その一方で,この事務方の資料の方に,19ページの一番最後のところですね,大学の入学者選抜について書かれたところです。「その際,指導要録の簡素化の議論を踏まえ,指導要録を基に作成される調査書についても,大学入学者選抜で必要となる情報を整理した上で,検討していくことが求められる」と書いてあります。この部分については,是非事務方の方で高大接続と調整をお願いしたいなと思います。今,必ずしもそのような横の調整がうまくできてないかなと感じているところです。観点ができれば観点を上げていくのは当然のこと。一方で,簡素化をどのようにしていくかという議論は,併せてやっていっていただかなくてはいけないところではないかなと思います。
 あと最後に,これも高校の立場から1点です。できるだけ早い段階で様式の見本をお示しいただくことが必要かなと思います。というのは,中学校であれば教科が9教科しかありません。ですから,九三,二十七で観点も合わせて27しかないですけれども,高等学校の場合は,普通科であっても大体40科目ぐらいあります。で,それぞれに3観点が入る。これが総合学科であればもっと科目数が多いですから,どのような様式に落とし込んでいくかということを早めにお示しいただくことが,現場で混乱なく進めていくためにも大変重要なことかなと思います。
 長くなりました。以上です。
【市川主査】  じゃ,続いて,奈須委員,秋田委員の順でお願いします。
【奈須委員】  よろしくお願いいたします。今回,態度ということの概念をかなり精緻にしたというか,変えてきたと思います。先ほど石井先生からもありましたけど,内容や領域に依存するものだということがはっきりと本日の事例でもお示しいただいたのは,とってもよかったかなと思います。自己調整といったことも,心理学なんかでは非常に一般的な能力として言われていますけど,実際に形成する際には,具体的な領域で具体的な問題解決を通して徐々に形成されて,その膨大な経験が徐々に一般的なものになっていくんだろうと思うので,とてもいいなと思っています。
 今回,総則の方で教科等横断的な資質・能力ということが言われていますけど,この実態がはっきりしないまま,まだ進んでいるかなと思いますけど,今回の評価の議論の中で,各教科の中でどんな力が3つの観点で育成されるかということがはっきりしてきて,それらが各教科でしっかりと鍛えられたものが教科横断的に備わっていくんだという話なのかなと思って伺っていました。
 本日のお話を伺うと,すると,その知識や思考力が形成されてこないと実は態度ということもよりよく発揮できないと。これは,これまでの観点と大分違うことだろうと。私はこれでいいと思っておりますけれど,うまく広報していくというか,周知していく必要があるなと思っています。
 と同時に,そういうその教科ならではの思考力や知識を基盤にした適切な取組態度,粘り強い態度による取組が行われていくと,知識や思考力の深まりもよくなってくるし,定着もしっかりしてくると。つまり,その知識や思考力と態度が往還的な関係にあるということもはっきり示されたのかなと。依存的であると同時に往還的な関係にあるということも示されたのかなと思っています。
 そうなってきたときに,実は指導が決め手になってくるということも,先ほどの例ではっきりしたかなと思います。算数で言えば,既習を生かして未習に取り組むということ。先ほど事例等にもありました,これ,算数全般そうですよね。こういった指導がどの単元でもしっかりと行われ,積み上がっていくことで,子供たちが未習である問題を,これまでの既習を何とか生かせないかという取組,正にその着眼が生まれてきて,粘り強い態度が備わってきて,それがまた思考力の醸成に帰っていくという正に系統的な回路を生み出す,そういうものとして出てきたかなと。図工でも,作品を見直す場面をしっかり作るかどうか。ただ作品を見直せと,それを評価するよと言っても,その場面を教師がしっかり設定する,その意味をちゃんと分かりやすく子供たちに提示するということが必要だということがあったかなと思います。
 これは結局,態度の評価を通して,いわゆる指導と評価の一体化ですね。態度でCを付ける子供をたくさん出すということは,この子が悪いのではなくて,私の指導が至らなかったのだということだという話でしょうし,そうなると今度はカリキュラム評価にもなってくると思います。こういった評価をきちんとやっていくことで,カリキュラムや指導を見直していく,指導の評価の一体化。それから,カリキュラム・マネジメントの中核にもなりますが,カリキュラム評価に連動することになっていくということだろうと思います。また,系統的に適切な指導が行われることがこの態度の評価の基盤にもなってくるということで,今回,見方・考え方というのがありましたけれども,教科の見方・考え方あるいは教科の本質,教科の系統指導につながっていくような評価観点の設定枠組みが形成されたのではないかなと思います。
 そのカリキュラムと,あるいはその教科の関係といいますか,各教科が教育課程上でどんな独特な位置と役割を果たすのかということもこの延長線上にある。そう考えたときに,今回,カリキュラム・マネジメントということが言われて,各教科を充実させると同時に,教育課程全体で子供に何ができるようにするかという話があるわけですけれども,評価の観点をきちんと作り,それを適切に運用し,そのために指導をきちんとする,あるいは指導と評価の一体からカリキュラム評価に帰っていくという,かなり大きな循環的な回路を生み出す中で,この評価の観点の作り方,特に態度の大きな改善というか,変革が有用性を持っているということが何か見えてきた気がして,ただ,これを周知するというか,御理解いただくのがとっても難しいと思いますけれども,そのことに向けて取り組むということが大事かなという気がいたしました。
 以上です。
【市川主査】  秋田委員,どうぞ。
【秋田委員】  ありがとうございます。本日,低学年から高等学校まで様々な教科の具体的な評価規準の中での「主体的に学習に取り組む態度」のイメージを出していただいたことによって,大変具体的に,この「主体的に学習に取り組む態度」ということがよくわかりました。やはりずっと小学校の最初から高校までを貫いて学び方を学んでいく中核の態度を育成していくのだということがよく見えてきたと思います。
 一方で,先ほど渡瀬委員や市川座長の方からもありましたように,むしろそうしたことを見ていくと,今回のイメージ案のX軸,縦軸,横軸型ではなく,多分,さっき市川座長も言われましたが,粘り強く取り組む態度というようなものによって,まず自らの考えや自らの表現というものが生まれていき,それを他者や違ういろいろな考え方と関連付け,すり合わせることによって,自らの学習を調整しようとするという態度が生まれていき,その両方の関係がどうなのかという点でどのような形の表現がよいのか,円錐なのか,よく分かりませんが,この2軸の見方よりも,相互に関連して深まっていったり上がっていくようなイメージというものが出てくることが良いのではないかと思われます。従来の「関心・意欲・態度」もよりよく学ぼうとするものだということを伝えていたのですが,その細かな書きぶりが伝わりにくかったので,今回の「主体的に学習に取り組む態度」という,この2つの軸で押さえたというところがよりよく分かりやすくなったのではないかと思います。
 ただ,それを評価するときのキータームというのを,皆様の具体的なものを伺っていると,まず,自分なりの考えや自分なりの活動なりの工夫というものを子供がきちんと導けているのか。それから,それをより多様な考えや意見と照らし合わせて考えることができているのか。そしてさらに,よりよいものとかより深い概念へ未習から既習であったり,既にあるものからより広がったものの活用であったり,そういうものにつながっているのかということを意味しているのだということを,よりもう少し具体的にこの評価の在り方の文書の中に書き込めるならば,より分かりやすくなるのではないかと考えました。2つのポイントなんだけれども,それは要するにこういうプロセスをたどることだということの説明が,更に本日の規準のイメージから書き加えられるといいのではないかと思いました。
 それは,先ほど奈須委員も言われましたが,例えば,粘り強く取り組もうとするならば,粘り強く取り組めるだけの時間を授業デザインでカリキュラムや単元が組めない限りできません。時間で押されていくだけであれば,多分,知識は詰め込まれたとしても,子供自身が粘り強く取り組めなければ表現や考えも生まれないので,それ自身が多分カリキュラムのデザインをもう一度見直すということを求めているのであるというようなニュアンスが伝わっていくことがとても大事になってくるのではないかと思います。こちらの報告の方で,「『主体的に学習に取り組む態度』の評価の方法」という12ページのところでありますけれども,この評価の方法というところにおいても特に大事になるのが,私は,ノートやレポートの記述と同時に,教師による行動観察だと思います。特に学びのプロセスを見るわけですから,その辺りを丁寧に書き込むことが必要であろうと思います。そうしますと,12ページで,「例えば,文章での記述が不得手な児童生徒に対しては,個別に話を聞いたり,発言が少ない児童生徒に対してはノートやレポート」って書かれていて,いまだに発言が多いか少ないかで生徒を分けるような表現がここに残っているわけです。けれども,発言が少ないという中には,ゆっくり粘り強く取り組んで自分の表現をまだ探そうとしている生徒もいたり,多様な生徒がいることを考えますと,この辺りの1つ目の丸の書きぶりについては,もう少し工夫も必要なのではないかと思います。先ほど奈須委員が言われたように,文章での記述の不得手な生徒なのか,教師の指導やデザイン,環境の仕方で表現がまだ十分に至っていないのか,そこのところ辺りを生徒に帰属するのか,教師側の授業やカリキュラムの在り方に帰属するのかというのは,書き方をもう少し考える必要もあるのではないかと思いましたし,12ページの最後の授業デザインというところも考えたいと思います。
 最後に,若江委員が言われたところで,評価規準を生徒も知っているとか,私はこの中の最後のところには,活用できるというだけではなくて,自分なりにより探究したいとか,そういうもっと具体的に問うて考えられるというようなところが最終的に「主体的に学習に取り組む態度」としては必要であり,もっとこんなことをやってみたいと自分で思うとか,もっと知りたいと思うというような,そういう探究的な課題を子供自身が見出していけるということが,その学習の中で一番重要なところではないかと思います。その辺りは全員に求めることはできないのかもしれませんけれども,特に中等教育段階ではそうしたところもニュアンスとして入れられないのかなとは思いました。
 以上です。
【市川主査】  ありがとうございます。
 それでは,次に,清水委員,お願いします。
【清水委員】  御説明ありがとうございました。先ほど善本委員からもお話がありましたけれども,小・中学校は既にこれまで様々な取組をしておりますので,今後の内容につきましてもおおむね取り組めるかなと思いますけれども,高等学校において,私がいる専門高校においては,実習形態であったりだとか,座学的な学習であったりだとか,様々な授業形態があるので,比較的この観点別の評価というのはやりやすい部分はあるのかなとは思います。しかし,評価の標準化だとか様々な観点から,1人の教員が8クラスだとか300人を超えるような非常に多くの生徒の観点別評価をしていくということ,これはかなり難しい面もあるかなと思うんですけれども,中学校の先生方がこれまで取り組まれているということでありますので,そちらの方にできるだけ早く変化をもたらして,何とか取組をしていきたいなと思いますけれども,かなり時間がどうしても掛かってしまうのではないかな,そんなふうな危惧はございます。
 また,別の内容なんですけれども,本日,各教科・科目の一つの例をA,B,Cの判断した例ということで示していただきました。この中で非常に重要なのは,評価規準をどう作るかということになってくるのかなと思います。評価規準,B規準を作ることが非常に重要なことになってきて,それを上回れば当然Aでしょうし,下回ればCになっていくだろうということになりますので,本日,文章としていろいろお作りいただいてはいるんですけれども,Bという規準というものをどう定めていけるのか。当然,「主体的に学習に取り組む態度」という項目ですから,「主体的な」というキーワードをBに盛り込んだ方がよいのかだとか,いろんなこともあるかと思いますけれども,B規準そのものをもっともっとこれから私たち自身も整理をして,しっかりとしたものを定めていかなければならないのかなと。そうなってくると,多分,どの科目もこのB規準というのは,もしかすると各学校において定めなくても,各単元においてはこういうことが重要なんですよということをしっかり定めていただくことによって取り組みやすくもなるかもしれないなというふうなことも感じました。
 以上です。
【市川主査】  それでは,続いて,伊藤委員,川間委員,どうぞ。
【伊藤委員】  先ほどは,5名の調査官の方,本当にありがとうございました。大変な御苦労があったのではないかと思いますけれども,非常に分かりやすい資料を御提示いただきまして,ありがとうございました。
 私からは2点ほど意見を申し上げたいと思います。
 今,資料1としてお配りいただきました冊子の10ページの2つ目の丸のところでございます。先ほど石井委員からもございましたけれども,この自己調整という言葉は,より高次な試行錯誤というようなものに置き換えてもいいのではないかという,そういう内容のものじゃないかというお話もあったところですが,ここで,「『自らの学習を調整しようとしている』意思的な側面が認められるかどうかを判断するものであり,その学習の調整が『適切に行われているか』を判断するものではない点に留意する必要がある」という表現で説明されていますが,ちょっとここが現場からすると誤解を招きやすい言葉かなと。やはり先ほど調査官の御説明を聞いていても,現場がどういうところにゴールイメージを持っていくのかって考えたとき,やっぱりある程度妥当な方向に子供たちの取組が向かっているというところの視点は避けられないのではないかなと。適切に行われているかを判断するものではないと言い切っていいのかなというふうにちょっと思いましたので,まず気付きとしてそこが1点です。
 それから2点目は,先ほど秋田委員からプロセスが大事だというお話がありました。このワーキングに参加させていただいていて,私はずっと,教師と児童生徒との話し合いや面談の時間をきちんと確保することが必要なんだろうなと強く感じているところです。第7回のワーキングでしたか,高校生からの意見をお伺いした際に,社会人のたしか1年目の方でしたか,どういうところがよかったとか,あるいはどういうところがもうちょっと頑張ってほしいというフィードバックがもっとあれば,より自分ごととして考えながら,自己を向上させることにもつながったというような御意見があったかと思います。こういう言葉掛けとか日頃からのフィードバックが必要だということは,実は多くの教員が感じているのだろうと思っています。ただ,30人とか35人という児童生徒を対象とした授業では,意図的・計画的にやっていかないとこういうものが確実なものになりにくいのが現実で,教員の意識だけでは改善に持っていくのは難しいんだろうなと。何かしらのシステムといいますか,そういうものが必要なんじゃないかなと思うわけです。前にも,中学校での学習に関する面談は,主に毎学期末の通知表を渡すときに学級担任が一括してという学校が多いんじゃないかという話もしましたけれども,やはり児童生徒と教科担当との面談の時間ができれば単元ごとに確保される,位置付けられるということ,そうした継続的な取組の中で,「自らの学習を調整しようとしている」という意思的な側面というものもしっかりと見えてくるのではないかと思いますし,そういう機会を設けることで,教員の評価に対する意識や考え方も変わってくるのではないかと思っています。
 以上です。
【市川主査】  ありがとうございました。
 川間委員,お願いいたします。
【川間委員】  この「主体的に学習に取り組む態度」の今回の評価のイメージのところで,教科ごとに,やはりかなり教科の特性に応じて異なるなということも分かりましたし,ですけれども,ずっと学習指導要領自体のそのところも教科ごとに書きぶりとか大切にするところがかなり違うので,機械的に並べられているわけではないので,そのことが案外,僕の周りの先生は教科によって結構違うと。特に小学校の先生,全部ざーっと見たときに,共通しているようで,この「主体的に学習に取り組む態度」のところは教科ごとの特質が結構あるなというところを思いました。特に,今,研究で理科なんか取り組んでいると,やっぱり問題解決がありますから,他者と力を合わせていくというのは大きな柱になっていくと思うのですけれども,そうすると,算数,数学もそうだろうなとか,いろいろ思うところもあって,こういうところはまだまだ議論して整理のところかなと思いました。
 あともう一つ思ったのは,特別支援学校の方で知的障害のある子供たちの各教科を設定しているんですけれども,小・中の教科の目標・内容と整合性を持たせながら作っていますが,その場合の「主体的に学習に取り組む態度」の評価というところを考えたときに,もともと知的障害のある子供たちですから,主体的になかなか取り組めなかったり,他者と力を合わせるのが弱かったりする中で,もうちょっと評価の観点を深めてディスカッションしていかないと,どの子も全部Cだというようなことになりかねないなというところで,本日聞きながら,そこのところもしっかり考えていかなきゃいけないなというのを特に強く感じたところです。
 それから,評価のことはちょっと違うんですけれども,障害のある児童生徒に関わる学習評価のところに関係するところですが,実は特別支援学校等で校務支援システムのIT化の導入が結構遅れているというところがあります。何でかというと,自立活動という領域が別に加わっていることや,下の学年の目標・内容を取り扱えたり,知的障害の教科に代えることができたり,教科等に代えて自立活動を中心で行うことができるような様々な工夫があるので,小学校や中学校の指導要録等のフォーマットが全く使えないというところから,いろいろ聞くと,小・中学校はIT化しているけど,まだうちは手書きだという学校は実は結構多いというところなんですね。そういうふうに考えていったときに,知的障害のある子供たちの教科の評価は,観点別評価になりますけれども,個々の子供の状態がかなり違いますので,現在ではそれはA,B,Cではなくて記述評価を行っていくということになっていますので,場合によっては現状よりも記述量がうんと増えていく。さらに,指導要録と個別の指導計画を今後一体化してということですが,そこの校務支援システムがうまくいかないと,今以上に,倍以上に記述が増えてしまいかねないというところもちょっと危惧をしておりまして,ちなみに,多分,大学の教員養成系の附属の特別支援学校はほぼ手書きになっていますし,それから,特別支援学校の多くは都道府県立ですけど,市立とか区立のところも聞くとほぼ手書きで,校務システムは予算が付かないので作れない。見積もりをとったら250万って,1校当たり250万はとても教育委員会や大学は出してくれないというような,そんなところもちょっとあって,瑣末な,瑣末というか,課題なんですけど,実際進めていくときにはちょっと大きな課題かなと思っているところでございます。
【市川主査】  ありがとうございました。
 それでは,鈴木委員,髙木委員の順でお願いします。
【鈴木委員】  最初に私が申しました調査書に評定のみならず観点の評価も入れるべきだというのは,17ページの「学習評価の高等学校入学者選抜・大学入学者選抜での利用について」,その最後のところに「多面的・多角的な評価が行われるよう」と言っているわけですから,評定のみならず観点の評価も入れるべきではないかと,そのような趣旨のことをここに,評定だけではなくて観点の評価の結果も入れた方が望ましいというようなことを入れたらどうかという趣旨で申しました。
 それから,この「主体的に学習に取り組む態度」の重み付けの問題が今までちょっと出ておりませんけれども,従来は,これに対応する「関心・意欲」は4観点のうちの1つですから,一応単純ウエートでは4分の1。今回は3観点になって,このウエートが3分の1に上がったんですけど,いろいろこの観点の評価の難しさを考えると,これが3分の重み付けになるのは,従来の観点の4分の1から考えても少し重過ぎるのではないかと。例えば,他の観点を2に,そしてこの観点は1,このぐらいの比重にした方がいいのではないかと思います。または,先ほど石井先生がおっしゃったように,他の2観点との連動性があるということを考えれば,他の2観点で,ここにも書いてあるんですけど,AAならば,基本的にはこの観点はよほどのことがない限りAと,CCならば,この観点はよほどの証拠がない限りCと,こういう形で考える方法もあるかと思います。
【市川主査】  髙木委員,お願いします。
【髙木委員】  今までいろいろ評価の話,本日,内容的なものはかなり具体的になっていますが,委員の皆様の話をお聞きしていると,これは教育の大きな全体的な問題というふうに捉えていく必要があるのではないかということです。それはどういうことかというと,ここまでも出ていますが,丁寧な評価を行うということや,例えば面接をやっていくとか,先ほども高校で300人の評価を丁寧にしていくには教員の数が足りないとか,いろいろ出ています。今,働き方改革と言われていますが,実は学校も目一杯で,かなり人も足りないような状況の中で,働き方改革で時間数減らせということを言われてきている。その現状をやっぱり考えていただかないと,簡単に言えば,教員の数をもう増やしていかないと学校教育というのはかなり行き詰まってきているということを社会的に周知していただきたい。そういうことと併せて,こういった子供たち一人一人を丁寧に見ていくには,先生方の勤務状況というものも考えて,こういった評価と指導,今までもカリキュラムの問題も出ていました。それから指導と評価の一体も出ていました。そういうことをやっぱり総合的に考えていかないと,この評価だけでは全て解決できないと思います。ここで言ってもせんないことかなとは承知の上,あえて,現行行われている働き方改革が学校教育に本当に意味あるものになっているのか,人を増やさなきゃいけない状況ということを,丁寧な評価をすればするほど先生方のお時間は使われなければいけないということを,これ,国民的議論としてやはり考えていただきたいなとは思っています。
 以上です。
【市川主査】  それでは,奈須委員,お願いします。時間が押してきましたので,奈須委員,最後にさせていただくということでよろしいですか。
【奈須委員】  先ほどの鈴木先生の話ですけど,私は全く逆に考えていて,多分,小学校をイメージするのと高校で違うのかもしれませんけど,今回,「主体的に学習に取り組む態度」は,従来の「関心・意欲・態度」とは違って,教科内容との依存関係あるいは教科内容において子供たちが主体的に追究して問題解決をしていくという,あるべき姿ということを反映する観点になったことからすれば,むしろこの評価をきちんとすることが今目指している資質・能力の育成からすれば望ましい。つまり,評価を正すんじゃなくて,その評価に先生方の意識が向かう,それによって,石井先生もおっしゃいましたけど,授業の在り方や授業の場面が変わってくるということを考えれば,むしろ,私は当然これは1,1,1で,小学校的にはこれ,1,1,1にしておかないと,これ,2,2,1とかということになると,もうそこはいいんだと。つまり,知識や思考力が身に付けば,子供の追究の筋道とかプロセスはどうでもいいんだという世論を逆に形成しかねないので,ちょっと高校の事情は私よく分からないのと,小学校の感覚でいうと,むしろここを教科の内容に沿って実質化していく。もっと言うと,プロセスを重視するということをいい形で評価活動に落としていくという世論誘導というか,世論形成ができる。
 また,その背景には,結局,本日出していただきましたけど,各教科における質の高い問題解決,その教科ならではの問題解決ということがはっきりしてこないと,この教科観点が作れない。先ほどの理科で言えば協働的にやるとか,図工で言えばただ作りっ放しにしないでもう一回いくとか,算数で言えば既習と未習の関係に着目するとかという,正に教科の本質。それは,ただ身に付くということじゃなくて,その教科ならではの問題解決ですね,追究のプロセスを動かしていくということに関わってくるので,この観点を設定して,その評価活動することによって,その部分がとっても質の高いしっかりしたものになってくる,それはもう授業改善そのものにつながっていくという回路を生み出す辺りに,ちょっと大変なんですけど,その芽を見たい。と同時に,そうなってくると,それは個々の教師に任せることはちょっと難しくて,調査官の先生とか国立教育政策研究所を中心に,この教科の質の高い問題解決,その教科ならではの問題解決というのはどんなものかということをお示しいただき,それが6年間なり4年間なりの系統の中で,どんな姿からどんな姿に系統的に育ち上げていくのか。それに対して,各内容や領域がどんな役割を相互に果たしていて,その教科全体の構造をなしていくのかということをお示しいただくと同時に,それが各教科の観点に表れていくというふうな例えば資料などを作っていただけると,あ,この教科ってこれが大事だったのねということが,多くの教科を持っている小学校の先生はなかなか教科専門以外分かりにくいんですけれども,評価のことを考えることによって,その教科の系統,教科の筋道,教科ならではのものということが,単なる身に付くものではなくて,追究するプロセス,正に授業設計のカリキュラムデザインの話と相まって出てくるんじゃないかと。その意味では,今回の資質・能力育成あるいは教科の見方・考え方ということで軸を出しましたけれども,それを実質化する上で,今回の態度の観点をどう作っていくかというのは,大変ではあるんですが,重要なプロジェクトあるいは訴求のポイントになってくるんじゃないかなと思って伺っていました。
 以上です。
【市川主査】  それでは,委員の方から御意見,御質問等を頂きましたけれども,事務局あるいは本日御発表いただいた教科調査官の方々から,これは答えておいた方がいいだろうとかいう点がございましたら,お願いします。いかがでしょうか。
【白井教育課程企画室長】  調査官の先生から何か補足的にあれば先に。
 ないようなので,こちらの方から簡単に御指摘の点についてお答えします。
 まず,鈴木委員から御指摘いただいた調査書の中での観点別評価の扱いということですけれども,基本的には,指導要録を基に調査書が作られるということになると思いますので,調査書の設定は各学校,実施者の方で行われるということになりますが,順当に考えればそこに観点別評価も入ってくるものと考えております。
 それから,11ページに入っている図について,粘り強さ,それから自己調整についての二次元の図について御指摘を頂きました。実はこれは,内部でもいろいろ議論をしながら作ったものでございますし,本日御指摘を頂きましたので,これについてまた違う表現の方がよいということがありましたら,また委員の先生方に御相談させていただいた上で,次のワーキングに間に合うような形で出させていただきたいと考えてございます。
 それから,石井委員から,評定の意味について御指摘を頂きました。観点別評価もある種の評定であるということでございましたので,これについては,石井先生から以前にも御指摘を頂いておりましたので,15ページの一番下,脚注のところになりますけれども,脚注の16番というところで,この観点別学習状況の評価についても,評定の一環であるんだということについては明記をさせていただいております。もし記述等で足りない部分があったら,また御指摘を頂ければと思います。
 若江委員からの御指摘の中で,評価の規準について先生方だけなのかという御指摘がございました。本日,評価の規準について,調査官のプレゼンがありましたけれども,結構難しい場合もあるかと思っています。そういう意味で,子供たちの発達段階とかにもよって,このままということではないと思うんですけれども,当然,どういう規準で評価をしていくのかということを伝えていくのが大事だということは,これまでの議論の中でもこの部会でもある程度合意ができているところだと思いますので,それを伝えていくというのは必要だと思いますし,それについてはこの文章の中でも書いていきたいと思います。ただ,どういう形で出すのかというのは,先生向けのものを,例えば低学年の子供にこれを見せてもなかなか分からないところもあると思いますので,どういう形で伝えるのかということについてはまた検討していきたいと思っております。
 それから,善本委員からの御指摘,また秋田先生からも御指摘を頂いた12ページの表現についてです。「『主体的に学習に取り組む態度』の評価の方法」の丸1番のところで,「文章での記述が不得手な児童生徒に対しては,個別に話を聞いたり」というくだりがございます。これについて公平性等の観点でなかなか難しいところがあるんじゃないかという御指摘も頂きました。また,秋田先生からは,そもそも授業デザインという問題もあるのではないかという御指摘もございました。ここで言おうとしているのは,一人一人が「主体的に学習に取り組む態度」の評価についても特性があるのではないか。それを見取ってあげないと,一律的な型を押し付けるような評価になってしまうおそれがあるんじゃないかという懸念から書いているところでございます。基本的には,今回,3つの資質・能力が連動して伸びていくんだ,「知識・技能」習得状況,「思考・判断・表現」の獲得の状況ということと連動して見ていくということがありますので,これだけを取り出して評価をするということはないと思いますので,余りおかしな評価にはならないと思いますけれども,この表現については後ほど御指摘を踏まえてもう一回再検討したいと思っております。
 また,善本委員から,高大接続との関係について,調査書の簡素化についての御指摘を頂きました。以前のワーキングでも御説明申し上げたかと思いますけれども,今,我々が議論している学習評価の在り方というのが,新しい学習指導要領が高校で施行される平成34年以降の状況を想定したものであります。一方で,調査書については,変更する場合にはかなり早い段階から高等学校に予告をしなければいけないということがあって,今,少し充実するような形で調査書は変わっていますけれども,それは現行学習指導要領の中での世界ということがございます。ですので,少しラグができるように見えてしまってというところがあるとは思うんですけれども,新しい学習指導要領の中では指導要録も簡素化していくという中で,それに基づいた調査書の在り方というのもまた今後検討していくということになると思いますので,この部会でのメッセージをしっかりと調査書を担当している高等教育局にも伝えて共有していきたいと思っております。
 また,最後です。秋田先生の方から,評価のキータームのようなものを入れたらどうかというお話がございました。他者の多様な考え方とどういうふうに照合しているのか,自分なりの活動や考えはできているのかといったようなことについて,本日,プレゼンの中で少し具体的な教科・単元における例も出してもらいましたので,そういったことも踏まえながら,具体的なイメージが湧くような記述を検討してまいりたいと思います。
 こちらからは以上です。
【市川主査】  どうもありがとうございました。
 私からも一言だけちょっとコメントしていいですか。1点だけなんですけれども,今回の3観点というか,もともと学力の3要素ですが,まず,「知識・技能」というのがあって,それから「思考・判断・表現」というのもあります。3番目の「主体的に学習に取り組む態度」というのは,その2つのエンジンになるようなものだと思うんですね。どうやって知識や技能を付けていくか,思考力,判断力,表現力等を付けていくかというようなエンジンに当たるものと。これも評価していこうと。これがプロセスの評価にもなるわけですね。
 そのときに,本日,具体的な例をお示しいただいたのは非常によかったと思うんですが,どちらかというと割と高度な「思考・判断・表現」に関わるようなものが多かったかなと。やはり「知識・技能」についても「主体的に学習に取り組む態度」というのがあるわけで,これは実は子供たちにとっても先生にとっても,基礎的なことをちゃんと学んでほしい,それも主体的にやってほしいというのがあると思います。
 具体的にはじゃあそれをどういう材料でどういうふうに評価するかということで,学校の先生も悩んでいらっしゃると思いますが,いろいろやっている学校もあって,例えば小学校でしたらノート点検みたいなのがありますね。ノートを見ると,確かに子供たちがどれくらい主体的に取り組んでいるかというのは結構分かることがあります。一方では,ノートをとらないという子供もいますよね。「僕はノートなんてとらなくていいんだよ」と言って,でも,それですごいいい成績をとっていれば,まだそれもストラテジーかもしれませんけれど,内容を聞いてみるとほとんど理解していないとなったら,これはやっぱりノートをとらないというのはまずいだろうと思われます。次に,とっているけれども,先生が板書したことをそのままただ写すだけという子もいます。これ,実は多いかもしれません。ところが,もっと主体的になってくると,あ,ここは大事だとか書き込みをしたり,ここがポイントとか,あるいは,さっき秋田先生がおっしゃったみたいに,理科の実験でこの条件変えたらどうなるかなんていう疑問を自分で書き込んだり,そういうことをやっている子だと,これは相当主体的に取り組んでいるなという気が確かにいたします。それはまた指導もできると思います。
 中学,高校でしたら,定期テストが返された後に,例えば事後レポートみたいなことを出してもらうという学校があります。すると,自分は今度こういう問題を間違えたけれども,これはこういう点が理解をちゃんとできていなかったからだろうとか,自分はまた計算間違いがすごく多かったと。それをふだんの学習にもこういうふうに生かしていきたいとか,そういう「知識・技能」に関することでも自分の学習を見直して改善を図る,そのためにどんな工夫をしていくかというようなことまで考えているとなると,これはかなりメタ認知とか自己調整という意味から考えて主体的な学習をしている様子だなということが見て取れますし,また,それは指導もできるわけですね。
 ですから,この知識や技能という面についても主体的に学習に取り組む態度というのをどうやって表現していくかということは,どこかで例示があるといいと思います。今回,余り詳しく書き込む必要はないと思いますけれども,そういうことでしたらできそうだし,子供の方もなるほどという,それによって学習改善が図れるんだなというようなことにもつながっていくと思いますので,どこかで示せるといいかなと思いました。
 それでは,時間になってしまいましたので,事務局の方から御連絡等をお願いします。
【白井教育課程企画室長】  本日は充実した御議論を大変ありがとうございました。
 次回のワーキングは12月3日10時から12時,来週のこの時間になりますけれども,教育課程部会との合同会議ということで開催させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
【市川主査】  それでは,本日予定した議事は全て終了いたしました。これで閉会にさせていただきます。どうもありがとうございました。

―― 了 ――

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