教育課程部会 児童生徒の学習評価に関するワーキンググループ(第9回) 議事録

1.日時

平成30年10月23日(火曜日)10時00分~12時00分

2.場所

スタンダード会議室 新虎ノ門店 第二秋山ビル4階

3.議題

  1. 児童生徒の学習評価の在り方について
  2. その他

4.議事録

【市川主査】  それでは,定刻になりましたので,ただいまより教育課程部会児童生徒の学習評価に関するワーキンググループ第9回を開催させていただきます。
 初めに,本ワーキンググループの審議等につきましては,初等中等教育分科会教育課程部会運営規則第3条に基づきまして,原則公開により議事を進めさせていただきます。それとともに,第6条に基づきまして議事録を作成し,原則公開するものとして取り扱うこととさせていただきます。よろしくお願いいたします。
 なお,本日は,報道関係者より会議の撮影及び録音の申出がございます。これを許可しておりますので,御承知おきください。
 それでは,議事に移る前に,事務局の異動がありましたのですが,これは事務局から御報告をお願いいたします。
【白井教育課程企画室長】  失礼いたします。文部科学省の人事異動がございまして,初等中等教育局長が髙橋から新たに永山に,また教育課程課長が望月から松永に異動しております。本日,局長の永山,それから教育課程課長の松永はいずれも所用がございまして,遅れて参る予定でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【市川主査】  それでは,事務局より配付資料の確認をお願いいたします。
【白井教育課程企画室長】  本日,お手元の議事次第にございますとおり,資料1と資料2をお配りしております。不足等ございましたらお申し付けください。
【市川主査】  配付資料を御確認ください。よろしいでしょうか。
 それでは,議事に入ります。前回のワーキンググループにおいて,委員の皆さんから頂きました意見を踏まえて,事務局の方で検討を要する論点を更新しております。
 それでは,事務局から,資料に基づきまして御説明をお願いいたします。
【白井教育課程企画室長】  それでは,資料1としまして,今後の方向性(たたき台)という資料を御用意させていただいております。これは前回のワーキンググループでの御審議,それから,この審議の経過について教育課程部会,親部会の方にも御報告させていただいておりまして,そこでの御意見も踏まえながら作成しているものでございます。それでは簡単に説明させていただきます。
 前回の論点から今後の方向性ということで,記載を全体に充実させていただいております。まず,1ページの最初の方ですけれども,中教審において平成28年に,この学習指導要領の基になります答申が取りまとめられたと。答申においても学習評価の基本的な考え方について整理がされているということがございます。今回,例えば1ページの中段にございますように,四角枠囲みの中で,この中教審答申においてどのような記載があったのかということを参考に,記載させていただいているところでもございます。
 1ページの中段からが基本的な考え方についてというところでございます。答申の中では,「子供たちの学習の成果を的確に捉え,教員が指導の改善を図るとともに,子供たち自身が自らの学びを振り返って次の学びに向かうことができるようにするためには,学習評価の在り方が極めて重要」として,その意義に言及されているということでございます。
 1ページの中段以降です。指導と評価は学校教育の根幹である。この充実が必要であるということをまず申し上げております。
 その一方で評価については,例えば学年末,学期末等における事後的な評価に終始してしまうことが多くて,なかなか学習の改善につながっていないんではないか。「関心・意欲・態度」の評価については,挙手の回数,ノートの取り方など,一時的に表出された場面を捉える評価であるような誤解が払拭されていないんではないか。先生方が評価のための「記録」に労力を割かれて,指導に注力できていないんではないか。また,2ページになりますけれども,相当な労力を掛けて先生方が記述をしていただいている指導要録について,次の学年や次の学校段階で必ずしも活用されていないんではないかといったような御指摘もございます。
 こうした課題に応えながら,また同時にこの教員の働き方改革ということも,中教審の別の部会で御議論いただいており,こちらの方も喫緊の課題となっているということもございます。こういったことも踏まえながら,学習評価の在り方については,児童生徒の学習改善,また教師の指導改善,それから,これまで慣行として行われてきたことでも大胆な見直しが必要じゃないかという3点を基本的な考え方として,記載をさせていただいております。
 続いて,3ページにお進みいただきたいと存じます。観点別学習状況の評価について,3ページ以降でまとめております。まず,中教審答申を少し振り返りますと,四角の枠囲みの中でありますけれども,この観点別の学習状況評価については,小・中・高等学校の各教科を通じて,「知識・技能」,「思考・判断・表現」,「主体的に学習に取り組む態度」の3観点に整理をするとして,指導要録の様式についても改善することが必要ということは,まず提言いただいております。
 また,これに関連して,資質・能力のバランスのとれた学習評価を行っていくためには,指導と評価の一体化を図る中で,論述やレポートの作成,発表,グループでの話し合い等,多様な活動に取り組ませるパフォーマンス評価などを取り入れ,ペーパーテストの結果にとどまらない,多面的・多角的な評価を行っていくことが必要であるということは,同じくこの答申の中でも御提言いただいているところでございます。
 こういったことを踏まえまして3ページの中段以降で,観点別学習状況の評価について,各観点ごとに記載をしております。
 まず3ページの全体的な考え方というところですけれども,この答申の考え方を踏まえまして,この学習指導要領改訂においては,各教科の目標,内容について,「知識及び技能」,「思考力,判断力,表現力等」,「学びに向かう力,人間性等」という3つの柱で整理をしている。この考え方に沿いまして,評価についても「知識・技能」,「思考・判断・表現」,「主体的に学習に取り組む態度」という観点に基づいて,評価規準を作成して評価をすることが適当ではないかということを,まず1点目として書かせていただいております。
 それから2点目としまして,観点別学習状況については,これまで定着を図る取組が様々学校段階で行われております。評価の段階及び表示の方法については,現行と同様に3段階のA,B,Cとすることではどうかということを,この原案では書かせていただいております。
 それから3ページの下の方です。まず「知識・技能」の観点の評価についてというところでございます。この「知識・技能」の評価については,各教科における学習の過程を通した個別の知識及び技能の習得状況について評価を行うとともに,それらを既有の知識,技能と関連付けたり活用する中で,他の学習や生活の場面でも活用できる程度に概念等を理解したり,技能を習得しているかとったことを評価するものである。
 このような考え方は,現行の評価の観点である「知識・理解」においても重視されてきたところであるけれども,新学習指導要領に示されたこの規定を踏まえながら,各教科の特質に応じた評価方法の工夫改善を進めることが重要であるという,基本的な考え方を述べさせていただいております。
 またその際には,今回の学習指導要領の答申においても記載されておりますけれども,事実的な知識と,また概念的な理解ということも大切であって,それらをバランスよく問うようなペーパーテストの工夫改善を図るとともに,児童生徒に文章による説明をさせたり,実際に技能を活用させたりする場面を設けるなど,多面的・多角的な評価の実施に留意が必要であるということを書いております。
 続いて,4ページの中段,「思考・判断・表現」の評価についてというところです。「思考・判断・表現」というものの評価については,それぞれの教科等の知識及び技能を活用して課題を解決するといったことのために必要な思考力,判断力,表現力等を身に付けているかどうかについて評価するものである。
 現行でも思考・判断・表現の観点というのは当然あり,こういった考え方を重視してきたところでございますけれども,新学習指導要領に示された各教科の目標,内容の規定を踏まえて,各教科の特質に応じた評価方法の工夫改善を進めることが重要であるということは,知識・技能の柱の観点と同じでございます。
 具体的な評価の方法としては,ペーパーテストだけでなく,論述,レポートの作成,発表,グループでの話し合い,作品の制作といった多様な活動に取り組ませるパフォーマンス評価なども取り入れた,多面的・多角的な評価が考えられるということを提案させていただいております。
 5ページ目です。「主体的に学習に取り組む態度」の評価についてという点です。この点について再度答申の方について振り返りたいと思いますけれども,答申においては,この「主体的に学習に取り組む態度」についてと,資質・能力の柱である「学びに向かう力・人間性」の関係については,この「学びに向かう力・人間性」においては2つの部分があると整理をしています。
 1つ目が,主体的に学習に取り組む態度として,観点別評価を通じて見取ることができる部分,それから2つ目が,こういった観点別評価や評定にはなじまずに,こうした評価では示し切れないことから,個人のよい点,可能性,進歩の状況について評価するという,個人内評価を通じて見取る部分があるといったことに留意することが必要であると言われてございます。
 そこでここでは,「主体的に学習に取り組む態度」についての評価を中心に御議論いただくわけですけれども,この「主体的に学習に取り組む態度」については,挙手の回数,ノートの取り方など形式的な活動ではなくて,児童生徒が「子供たちが自ら学習の目標を持ち,進め方を見直しながら学習を進め,その過程を評価して新たな学習につなげるといった,学習に関する自己調整を行いながら,粘り強く知識・技能を獲得したり思考・判断・表現しようとしたりしているかどうかという,意思的な側面を捉えて評価することが求められる」と,この中教審の段階で御提案をいただいているところでございます。
 この中教審答申の考え方を下敷きにしまして,5ページ以降で今回のこの態度の観点に関する評価について記述をしております。まず5ページの中段です。答申では,先ほど申し上げましたとおり,「主体的に学習に取り組む態度」として観点別評価を通じて見取ることができる部分と,それからこういったことになじまずに,個人内評価を通じて見取る部分があるということに留意する必要があると言われているところでございます。こういった考え方を踏まえながら,各教科等における目標や内容の規定を踏まえた,また各教科の特性に応じた評価方法の工夫改善が重要であるという記述については,ほかの観点と同様の記述でございます。
 また,この「主体的に学習に取り組む態度」については,近年の心理学等の学問的な発展を踏まえて,いわゆるメタ認知など,学習を行う上での自己調整が,この答申の中でも重視されているということに留意をする必要がございます。
 これはどういうことかといいますと,5ページの一番下になりますけれども,単に粘り強い行動や積極的な発言等を行っている状況を評価するということではなくて,知識及び知能を獲得したり,思考力,判断力,表現力等を身に付けたりするために,自らの学習状況を把握して,自らの学習の進め方について試行錯誤するなど,学習の自己調整を図りながら,よりよく学ぼうとしているかどうかという意思的な側面を評価するんだということかと考えられます。
 6ページでございます。このため,この態度の観点に基づく評価としては,2つの観点がございます。知識及び技能を獲得したり,思考力,判断力,表現力等を身に付けるために,粘り強い取組を行おうとしているかという意思的な側面ということが1つ目。それから2つ目として,この粘り強い取組が,単に粘り強く行っているということではなくて,自らの学習の自己調整を行いながら,よりよく学ぼうとするために行われているかという,この2点が必要なんではないかということでございます。
 なお,現行の「関心・意欲・態度」の観点における評価においても,こういった学習内容にただ関心を持っているだけでなくて,よりよく学ぼうとする意欲を持って学習に取り組もうとする態度を把握するという趣旨で,本来は重視されるべきものだったと考えられますけれども,この点について改めて,今回のこのレポートの中で強調させていただきたいということでございます。
 6ページの上から1つ目の丸です。したがって,この意思的な側面,粘り強い取組を行おうとする丸1の側面が認められるとしても,丸2の自己調整を行いながら,よりよく学ぼうとする意思的な側面が十分でない場合,ただ粘り強く取り組んでいるといったような場合には,この「主体的に学習に取り組む態度」の評価としては,基本的にはこの「十分満足できる」というAの評価は,なかなか考えにくいんじゃないかということになろうかと存じます。
 6ページのその次の丸です。ここではその趣旨についてもう少し詳細に記述をしております。これは「主体的に学習に取り組む態度」の観点については,学習に対する粘り強さであるとか,積極性といった児童生徒の取組だけを承認したり,肯定するということではなくて,その方向が学習の改善に向かって行われているかどうか,よりよく学ぼうとしているのかというところを含めて評価することが必要であるという趣旨を踏まえたものであるということでございます。
 そのため,仮にこの粘り強い取組を行おうとする意思的な側面,丸1の部分が認められても,それが学習改善につながっていない,ちょっと方向性が違うんだけどとにかく頑張っているので高い評価をするということがあっては,逆に児童生徒に対して誤ったメッセージを与えてしまうことにもなりかねないということに,留意が必要ではないかということでございます。
 もちろん,この粘り強い取組,丸1の側面を重視するということの重要性を指摘するお声もございます。ただ,今回この「主体的に学習に取り組む態度」の性格を踏まえた自己調整という観点を含めた観点である,この態度についての評価であるべきということはあろうかと思います。特にこの粘り強い取組を行おうとする意思的な側面,丸1の側面について,特筆すべき事項がある場合には,基本的にはその教科等の観点ということではなくて,例えば総合所見及び指導上参考となる諸事項,その欄において評価を記述するということは考えられるかとも思います。
 6ページの一番下です。「主体的に学習に取り組む態度」の評価については,この意識的な側面,知識及び技能を獲得したり,思考力,判断力,表現力等を育成したりする学習場面に関わって,その意思的な側面を捉えて評価を行うものである。その評価の結果がこの学習改善である指導改善に生かされた,バランスのとれた資質・能力の育成を図るという視点が重要であるということでございます。
 7ページに進みますけれども,そのため,この態度の観点だけを取り出して形式的態度を評価するということは適当でなくて,他の観点と合わせて行うことになるんではないか。この考え方に基づいていくと,例えばその単元の導入の段階においては,観点別学習状況の評価にばらつきが生じる。例えばその知識及び技能をまだ獲得できていないけれども,非常に粘り強くやろうとしているといったようなことが考えられるということがございますけれども,ただ指導と評価を先生方に熱心にしていただく中で,単元末,あるいは学年末の評価の結果として算出される3段階の観点別学習状況の評価については,基本的には観点ごとに大きな差が生じるということは,余り考えられないんではないか。
 例えば,若干極端な例かもしれませんけれども,「知識・技能」,「思考・判断・表現」,「主体的に学習に取り組む態度」の各観点について,「CCA」であるとか,あるいは「AAC」といったような評価結果というのが,なかなか例外的な場合を除いては想定されないんではないか。例えば「知識・技能」,「思考・判断・表現」が「A」の場合には,基本的にはこの態度についても良好であるということが考えられることから,このようなケースにおいて「C」という評価を与えることは,生徒の学び方がよくない,よりよく学ぼうとしないという先生からのメッセージになりますので,そのあたりは慎重であるべきではないかということを書かせていただいております。
 7ページの中段です。この態度の観点の評価の方法としては,児童生徒による自己評価,ノートやレポート等における記述,授業中の発言,他の児童生徒による相互評価,教師による行動観察,こういったものを教師が行う評価の材料とすることは考えられるけれども,当然各教科の特質に応じて,また児童生徒の発達段階であるとか,一人一人の個性を十分に考慮した適切な方法を検討する必要がある。例えば文章での記述が不得手な児童生徒に対しては,個別に話を聞いたり,発言が少ない児童生徒に対してはノート,レポート等から意見を見取るといった工夫も重要であるということを書いてございます。
 また,7ページの下から2つ目の丸です。こういった児童生徒を的確に評価できるような授業作り,授業デザインということも先生方に考えていただくことも必要でございます。例えば,自らの理解の状況を振り返ることができるような発問をしていただくとか,他者との協働を通じて自らの考えを相対化する場面を設けるとかいったことについて,先生方にもお考えいただく必要があるということを書かせていただいております。
 7ページの一番下の丸です。この態度の評価については,学習改善につなげていくという観点から,早い段階での介入,支援が特に重要である,記録を集めることに終始してしまって,学年末,学期末まで必要な指導,支援を行わない,こういった先生はほとんどいらっしゃらないと思いますけれども,そういった評価ということは不適当であると,念のため書かせていただいております。
 7ページの一番下からです。次の論点になりますが,評価を行うタイミングや頻度についてです。8ページにわたりまして,中教審答申におきましては,毎回の授業で全観点を評価するということではなくて,単元,題材などのまとまりの中で,評価の場面を適切に位置付けるということが求められています。現行で,毎授業で複数観点を評価される先生もいらっしゃると思いますけれども,先生方にとって,常に記録をしなければいけなかったり,生徒にとっても常に評価されているということがありますので,なかなか難しい部分もあるということが指摘されております。
 したがって,この評価については,日々の授業の中できちんと学習状況を把握して指導に生かしていくということに重点を置きながらも,特にこの記録の部分については,基本的には単元,題材等のまとまりごとに,それぞれの仕上げの段階,最後の段階において評価することが適切じゃないかということを記載しております。
 また,学習指導要領の規定にもよりますけれども,例えば単元,題材ごとということだけではなくて,適切な場合には複数単元,題材にわたって,長期的な視点で評価することについても考えてはどうかということも書いておりますけれども,その際には児童生徒に,その評価の在り方についても誤解がないように伝えておくことが必要であるかと存じます。
 続いて8ページです。指導要録の改善についてというところです。こちらについては,前回お出ししました論点から,基本的なことについては大きく変わってございません。まずこの答申の中では,この観点について3観点に整理をして,指導要録の様式を改善することが必要という御提案をいただいているということになります。そしてその答申の中では,小・中・高等学校,各教科を通じて,この3観点に基づいた整理をするということが指摘されているところでございます。
 そして8ページの一番下ですけれども,従前より観点別学習状況の評価の欄が設けられていなかった高等学校についてです。こちらについては現行でも熱心な高校においては,この観点別学習状況が行われている実態もあるという御意見もございます。ただ,現実に指導要録の欄に観点別学習状況の評価を記録している学校の割合は,高校については13.3%にとどまっているということもございます。こういった取組を後押しするためにも,高等学校においても観点別学習状況の評価について,指導要録の様式欄を設けてはどうかということが1つ目のポイントになります。
 9ページです。指導要録の取扱いについてということで,ほかに2つ論点を挙げてございます。
 まず1点目が,「総合所見及び指導上参考となる諸事項」など文章記述によるもの。これについては文章だけじゃなくて,本人あるいは保護者に伝えられることで学習改善に生かされるものであるということがございます。日常の指導の場面で,評価についてフィードバックの機会を充実させるとともに,例えば通知表や面談の機会などを通じて,言葉で返していくという部分が重要ではないか,その分,この文章記述については簡素化をしてもいいんではないかということが1つ目です。
 それから2つ目です。指導要録の様式については各学校の設置者,公立学校であれば教育委員会が作るということになっております。一方で,各学校では独自に通知表を作っておられますけれども,もしこのような条件に合致するような場合,域内の学校において,指導要録の「指導に関する記録」に記載する事項を全て満たすような通知表を作成することが可能という場合には,この指導要録と通知表の様式を共通のものとすることについても可能としてはどうかということでございます。これはそうしてくれということではなくて,そういったオプションも取ることを明示してはどうかということになります。
 9ページの中段以降です。観点別学習状況の評価と評定の取扱いについてというところでございます。観点別学習状況の評価,それからその評定の関係についてですけれども,観点別学習状況の評価においては分析的な評価を行う。各教科の評定を行う場合における基本的な要素と,これが位置付けられているということがございます。また,指導要録の改善通知におきましても,評定の適切な決定方法等については各学校において定めるとされているところでございます。
 この評定についてですけれども,9ページの一番下です。総括的な各教科の評価を表す数値ということで,生徒,保護者にとっても全般的な学習状況を把握できる指標として捉えられている,また高校の入試選抜,あるいは大学のAO・推薦を中心とした入試選抜,奨学金の審査といったところで用いられているなど,広く普及,活用されているという状況がございます。
 10ページに入りますけれども,一方で,この学習指導要領の改訂が,平成5年の改訂までは,この評定というのはいわゆる相対評価,学級,学年内における位置付けを評価するものと位置付けられてまいりました。そのため,いまだにこの評定については,学習指導要領に定める目標に照らして,実現状況を総括的に評価する,いわゆる絶対評価,目標準拠評価という趣旨がなかなか浸透しておらずに,保護者,生徒の関心が評定に集中してしまっていて,観点別学習状況の評価に期待される役割が十分発揮されていないという指摘も,大変強くいただいているところでございます。
 また,この評定が入学者選別,奨学金審査に活用される場合には,本来この観点別学習状況の評価を評定として総括する際の観点ごとの重み付けというのが,先ほどの通知にもございましたけれども,各学校で決めているという状況がございます。要はばらつきがあり得るということでございます。本来は生徒一人一人をきめ細かく評価するためには,元のデータ,ローデータである観点別学習状況の評価を活用することの方が重要じゃないかといった御指摘も,この部会でもいただいているところでございます。
 こうした指摘を踏まえると,評定を指導要録,調査書においてどう取り扱うか,特に慎重な検討が必要である。特に,従来4観点で行われた評価について,3観点での評価とする場合には,その重み付けについて,3分の1ずつにするのか,それとも各教科の特質に応じて重み付けを変えるのかといったような課題についても,検討していかなければいけない部分があるということがございます。
 10ページの一番下です。なお,この調査書というものが入学者選抜に使われておりますけれども,こういった入学者選抜であるとか,就職活動,それから奨学金の審査といったような,ユーザー側に対する配慮というのも,この部会における議論においては一方で必要な部分もございます。特に大学入学者選抜においては2021年度から,一般入試においてもこの調査書をどのように活用していくのかということを,各大学の募集要項に明記することが定められておりますので,こうした影響についても配慮した議論が求められる部分があろうかと存じます。
 11ページにお進みいただきたいと存じます。学習評価の高校入学者選抜,それから大学入学者選抜での利用についてという論点です。まず,一番上の四角枠囲いですが,中教審答申では,「学習評価にあたっての留意点」として,この学習指導要領の趣旨を踏まえて,高等学校・大学入学者選抜の質的改善が図られるようにする必要があると記載をしております。
 まず,この入学者選抜ですけれども,高等学校の場合には学教法の規定がございまして,この調査書その他必要な書類,選抜のための学力検査を用いて入学者の選抜を行って,校長が入学の許可をすると規定されております。
 この規定に基づいて,現在,公立高校中心に,中学校における調査書,いわゆる内申書,これが高校入学者選抜において利用されているわけでありますけれども,特に一般入試においても,多い場合には学力検査と同程度,5割ぐらいの比重で位置付けられておって,この中学校における指導要録,あるいは調査書,内申書の在り方というのは,入試に大きな影響を与えているということがございます。
 もちろん,これについてはメリットもございます。11ページ中段ですけれども,学力検査を実施していない教科についても学力を把握することができる。学力検査当日の1回の成績だけじゃなくて,全体的な成績について,より正確・公平に見取ることができる。学力検査で把握することが難しいような観点も含めて,様々な観点をバランスよく判断できるというメリットがございます。
 一方で課題としては,例えば中学校の途中まで成績が不良であった生徒が,後から頑張って学習改善に取り組んでも,それまでの成績,ほとんどの都道府県においては中学校1年次から3年次までの成績全体を考慮して,内申書の成績としています。その場合,中3で頑張ったけれども,それがなかなか報われることが難しい,再チャレンジの妨げになっているんじゃないか,また,中学校の通常の授業で行われる日常的な評価というものが,本来厳格な公平性が求められる選抜に使われるため,先生方も,この評価の材料の収集であるとか記録,保護者への説明責任を果たすことに,当然敏感にならなければいけないということがございます。その分,評価を児童生徒の学習改善,授業改善につなげていくという面が,なかなか難しくなっているんではないかとケースもあることも指摘されています。
 また,中学生が入学時から常に入試を意識した生活を送らなければいけない。極端な例ですけれども,教師が「内申に響くぞ」といったような形で調査書を使われる場合もあるんじゃないか,そういった指摘もございます。
 12ページの中段です。中学校における学習評価というのは,本来学習改善,授業改善を目的として行われているものであって,高校入試に用いることを一義的なものとしているものではないということがございます。高校入学者選抜において調査書が大きな比重を占めていることから,一方では,この高校入試の在り方というのが,中学校における評価,あるいは学習活動そのものに大きな影響を与えていることから,特にこの高校入学者選抜においては改善点として,12ページに挙げている点について考えてみたらどうかと。
 まず1点目としては,高校入学者選抜について,この学習指導要領の趣旨を踏まえた各学校の教育目標達成に向けて,入学者選抜の質的改善を図るため,改めて各高校,設置者において,入学者選抜の方針や選抜方法の組み合わせ,調査書の利用方法,学力検査の内容等について見直しを図るべきではないか,これは学習指導要領に合致したものになっているのか,学習指導要領の趣旨を体現できるものなっているのか,それから具現化ができるものになっているのか。
 調査書の利用に当たっては,その狙いを明らかにして,学力検査との比重や,学年ごとの学習評価の重み付け等について検討することが必要ではないか。例えば,都道府県教育委員会によっては,所管の高校に一律の比重で,例えばこの県では全体の5割とか,4割とか決めていらっしゃる場合もございます。そういった場合には,各高校の入学者選抜の方針に基づいた適切な調査書の利用となるように,改善を図っていくべきじゃないか。
 入学者選抜の改善に当たっては,働き方改革やこの学習指導要領の趣旨も踏まえて,中学校の教職員に過重な負担が掛かったり,生徒の学習活動に悪影響を及ぼしたりすることのないように配慮するべきではないかといったようなこと。
 それから13ページに進みまして,大学の入学者選抜についても1パラグラフ入れています。大学の入学者選抜においては,現在,高大接続の議論をいただいているところであります。各大学のアドミッション・ポリシーに基づいて,多面的・多角的な評価が行われるように調査書を適切に活用することが必要である。指導要録の簡素化の議論も踏まえながら,その調査書,これは指導要録を基に作成されるものですが,入学者選抜で必要となる情報を整理した上で検討していくべきではないかということを記載させていただいております。
 13ページ,次の論点,障害のある児童生徒に係る学習評価については,後ほど担当視学官の方から御説明させていただきたいと思いますので,ここではスキップさせていただきます。
 13ページの下の方から,国立教育政策研究所が作成する参考資料についてという点です。答申の記述を確認したいと思いますが,この参考資料についても詳細な規準じゃなくて,資質・能力を基に再整理された学習指導要領を手掛かりに,教員が評価規準を作成し見取っていくために必要な手順を示すものとなることが望ましいということが,提案されているところでございます。
 こういったことを踏まえまして,13ページの下の方ですけれども,改善のポイントということで,現行の参考資料のように,評価規準の設定例を詳細に示すのではなくて,あくまでその手順を示すべきではないか。
 それから,現行の参考資料では,基本的な評価については各単元,題材ごとに整理されて示されていますけれども,場合によっては複数の単元,題材を超えたような,長期的な視点での評価についても事例を示していったらどうか。
 それから14ページですけれども,参考資料に示す評価の方法については,学習指導,学習評価の柔軟性に配慮して示すことが必要じゃないかという点を記載しております。
 14ページ,最後の論点です。外部試験,検定等の学習評価への活用についてという点です。学習評価を進めていく上では,先生が自ら行っていただく評価というのももちろん重要ですけれども,例えば全国学力・学習状況調査,高校生のための学びの基礎診断といったような新しい仕組みもございます。その他様々な外部試験等の結果というものもございますので,こういったものについて,児童生徒の学習状況を把握するために用いることで,先生が自らの評価を補完したり,必要に応じて修正したりしていくことも重要ではないかという点がございます。例えば,その児童生徒が受検した検定試験の結果等から課題を把握して,自らの指導,評価の改善につなげるといったことも考えられるということでございます。
 ただ,こういった様々な試験,検定等については,本来学習評価は学習指導要領に規定する目標,内容に照らして評価を行っていくというところには,当然配慮しなければいけないということがございます。必ずしもこの外部の試験,検定等が学習指導要領と同じ目標,評価ではない場合もございますので,あくまでもその違いについては十分に配慮しなければいけないという点を,最後に留意を書かせていただいているということでございます。
 それでは,青木視学官の方から,特別支援の部分について御説明申し上げたいと思います。
【青木視学官】  視学官の青木でございます。特別支援教育調査官を併任しております。改めまして,資料1,13ページを御確認ください。障害のある児童生徒に係る学習評価について,私の方から説明をさせていただきます。
 まず冒頭,特別支援教育の対象となる児童生徒が増加し,それらの児童生徒に対し,小・中・高等学校における通常の学級,通級による指導及び特別支援学級並びに特別支援学校の多様な学びの場において教育が行われることを踏まえ,障害のある児童生徒に係る学習評価の見直しについても,全体として,現在御議論をいただいている学習評価の見直しと同様の考え方により行われるべきであるということ,さらに障害のある児童生徒の学習場面において,障害者差別解消法で示されている合理的配慮又は今回の新学習指導要領解説の各教科等において示した困難さに対する指導上の配慮や具体的な手だてなどを行った場合であっても,目標に準拠した評価を適切に行うべきであることが重要であると考えております。
 また,参考でございますけれども,平成27年11月に文部科学省が障害者差別解消法に関する対応指針を策定してございます。その中で,不当な差別的取扱いに当たり得る具体事例ということで,例えば学校への入学出願の受理,受験,入学,授業等の受講や研究指導,実習等校外教育活動,入寮,式典参加を拒むことや,これらを拒まない理由として正当な理由のない条件を付すことであるとか,試験等において合理的配慮の提供を受けたことを理由に,当該試験等の結果を学習評価の対象から除外したり,評価において差を付けたりすること,これについては不当的な差別的取扱いに当たる具体事例と示しているところでございます。
 これを受けまして,13ページでございますが,障害のある児童生徒に係る学習評価については,児童生徒の障害の状態等に応じた指導と評価を適切に行うということを前提としつつ,以下の2点について挙げさせていただいております。
 まず,知的障害者である児童生徒に対する学習評価でございますけれども,今回の改訂において知的障害者である児童生徒の各教科においても,小学校,中学校及び高等学校の教科と同様に,目標及び内容について,育成を目指す資質・能力の3つの柱で整理をしてございます。したがって,従前から行われている文章による記述という考え方を維持しつつ,観点別学習状況を踏まえた評価を取り入れることというものでございます。
 2点目でございます。障害のある児童生徒についての個別の指導計画に関することでございますが,特別支援学校等においては,児童生徒の障害の状態等を適切に把握した上で,指導目標,指導内容,指導上の配慮事項等を記載した個別の指導計画を作成,活用するということになっております。
 実際学校現場においては,この個別の指導計画に基づく学習評価が行われ,通知表としての役割も果たしている場合がございます。そのことに鑑み,指導要録との関係性を整理した上で,指導の記録の簡素化及び学習評価の結果を指導や学習の改善につなげることに重点を置くべきではないかということでございます。
 またこれにより,指導と評価の一体化,現場の負担軽減にもつながるとともに,学校等における個別の指導計画のより一層の活用が期待できると考えております。
 私の方からは以上でございます。
【市川主査】  どうもありがとうございました。それでは,ただいまの事務局からの説明を踏まえまして,今後の方向性について意見交換をできればと考えております。かなり論点も出そろってきましたので,皆さんの活発な御意見をお願いいたします。
 それではいつものように,名札を立てていただけますでしょうか。それでは川間委員,お願いします。
【川間委員】  それでは,最後の青木視学官からの特別支援教育についての今後の方向性のお話がありましたので,それについての意見をちょっと述べさせていただきたいと思いますけれども,特別支援学校の場合も,特に知的障害のある児童生徒のための各教科の目標,内容を大幅に見直して,小・中・高等学校と同じように,3つの観点から目標の整理をしたというところから,学習評価に当たっても当然,この評価の仕方というのは3つの観点で評価をすること,もうそれは是非進めていかなくてはいけないということが前提にあります。
 それから,さっき合理的配慮のことで,障害者差別解消法に基づいてということですが,今回の学習指導要領の小中学校の解説の方では,各教科の一番最後のところに,困難者に対する指導の意図,具体的な手だてということが書き込まれていて,これはもう結構画期的だなと思っているんですけれども,そうした配慮をすることが,さっきの説明にありました学習評価の対象にならないことがあってはならないということですが,僕は肢体不自由の特別支援学校の校長をしているときに,手に麻痺があって漢字の書き取りができないから,それは指導しないと。それを指導しないときに,要するに調査書にかけるときの国語の評定が,いや,もうやっていないんだからそれは低く付けるべきだという先生が多数を占めて説得できないと,校長先生から電話が掛かってきたりとか,そういったところは結構たくさんあります。
 それから,字が書けないということになると,例えば学習障害で書字障害の子供たちは本当に,物すごく頑張れば字は書けるけれども,普通には書けなくて,したがって学校では,高校なんかだったらiPadを活用したりパソコンを活用したりしていますが,小学校だったらほとんど介助員さんが筆記を代わりにしているとか,そういったような状態のときに適切な学習の合理的配慮をやると,従来ほかの子でやったような評価方法だと評価できないのでどうしようということがたくさん出てきますので,そのことについての事例集くらいはもう少ししっかり丁寧に準備できると,小中学校の先生方も,大きな混乱とか考え方の違い方とかということがなく,子供たちが不利にならないように評価できるのかなと考えています。
 それから,知的障害の子供たちの各教科も,観点別に評価をするということになるんですけれども,この知的障害のある子供たちの教科の観点別評価でちょっと難しいことは,現行の指導要録は教科の欄はありますが,教科ごとに横の罫線が引いていませんし,それから観点別評価もしていないんです。
 というのは,知的障害のある子供たちの教科の学習に当たっては,施行規則の第130条の第1項と第2項があるんですが,第2項の方は領域・教科等を合わせて指導することができるという規定があって,昭和20年代くらいから行われてきた,いわゆる生活単元学習であるとか作業学習であるとか,教科の目標,内容を合わせているという解釈で行われている授業がたくさんあります。
 これらの授業は,今は文科省は言いませんけれども,昭和50年代くらいは,例えば生活単元学習というのは,生活の中で課題を見つけて,それを子供たちが解決するという,生活に基づいた教育方法の工夫ということですが,これは教科の目標や内容を習得したり,進めるべき学習ではなくて,こういった学習活動を行うことによって,結果として教科の目標,内容を学習していくんだということで,合わせているけど分けられないというような考えが強いところから,現行の指導要録なんかでも教科の欄に横罫線がなく,実際に行われている朝の会は子供たちはこうでした,生活単元学習ではこういう目標で取り組んで,こういうことができるようになりましたという記載をしていますので,教科ごとに観点別に書くということを,多分特別支援教育の関係ではほとんど経験せずにきているところがあります。
 こうした合わせた指導もすぐれた実践もあって,成果も上がっているところなんですけれども,ただ,今回の特別支援学校小学部・中学部学習指導要領解説の総則編に書いてありますが,こうした合わせたという指導の形態と,学習内容の混同が現場にかなり見られるところから,いわゆる生活単元学習はこういう目的のためにこういう内容をやるんですよと,あたかももうそういったものが決まっているかのごとく現場で理解されている誤解があるところを,やっぱり変えていかなくてはいけないということがあります。
 そこで,合わせた指導のところも,基本的に教科別・観点別評価というところを強く進めていくんですけれども,これについては結構知的障害の学校では,ちょっと具体的にはどうしたらいいのかというイメージができていないところも多いかと思います。県によっては指導要録を知的障害の子供たちに合わせた指導も,教科ごとにもう現段階で記載しているところもありますし,それから学校によってもそういった取組をしているところもありますが,そういった発想が全くないところもありますので,ここに適切な例示が必要かなということがあります。
 それから,この観点別評価をするんですけれども,小中ではA,B,Cということがあるんですが,これが多分知的障害の教科ではかなり難しくて。というのも,知的障害の教科は小学部では1段階,2段階,3段階と段階を示しているんですが,例えばこの1段階の目標や内容を見てみますと,定型発達に合わせると,およそ1歳から3歳くらいの内容かなと思われるんですが,非常に障害の重たい子供たちだと,この1段階の内容を小学校6年間でおおよそ習得することが難しい子供たちもたくさんいます。そうすると,ずっとCのままかということになります。
 ただ,子供たちはゆっくりでありますが着実に習得した状況を積み重ねてきていますので,そうしたことは単にA,B,Cの評価ではなくて,丁寧に記述をしていかざるを得ないなと思っています。指導要録を観点別評価で記述していくというと,ページ数も1枚ではおよそ収まらないし,ちょっと労力が増えるというところがあるんですが,子供たちの学びを正確に表現するいい手というのは,ほかになかなか考えられないかなと思っています。
 それから,最後にちょっと出ていましたけど,指導要録を個別の指導計画にもって代えるというところは,基本的に賛成なんですが,この個別の指導計画の様式とかというのは,各学校ごとに定めていて,これは本当にバリエーションが多過ぎます。多いところは,例えばA4で20枚になるくらいどんどんデータを入れているところもあれば,簡潔にとA4,2枚以内にまとめましょうとやっているところもあれば,それから,知的障害のある子供たちや障害のうんと重たい子供たちを教科ごとに記載しているところもあれば,障害の重たい,いわゆる重度障害の子供たちに対しては教科の記載が一切ないところまで,様々ありますので,これをもう指導要録に変えるときには,どのような個別の指導計画が,その条件というか,事項を含んでいるのかということの整理をかなりしっかりしていかないと,非常に困るということがあろうかと思います。
 特に特別支援学校にいる子供たちで障害の重たい子供たちは入退院を繰り返して,転校なんかも多くありますので,いろんな学校の様式の指導要録がばさっと入ってくると,全く学習の様子が分からないというようなことにもなりかねませんので,そこのところをさらに検討していただければと思っています。
 以上のところ,意見を言わせていただきました。
【市川主査】  どうもありがとうございました。
 それでは,永山局長がいらっしゃったということですので,御挨拶を頂くということでよろしいでしょうか。
【永山初等中等教育局長】  10月16日付で初中局長に就任いたしました永山と申します。本ワーキンググループは本当に大変重要なテーマを御議論いただいておりまして,議論途中といいますか,終盤での参加になりますけれども,キャッチアップしてまいりますので,どうぞよろしくお願いいたします。
【市川主査】  よろしくお願いいたします。
 それでは引き続きまして,御意見がある方はどうぞ名札を立ててください。じゃ,秋田委員,どうぞ。
【秋田委員】  この間,ここまで今後の方向性について的確なおまとめをいただいたことを,本当に感謝申し上げたいと思います。その中で,4点ほど意見を述べさせていただきたいと思います。
 1つは,主体的に学習に取り組む態度の評価の在り方に関しまして,6ページにおいて,これが意思的な側面だけではなくて,自己調整を行うような側面という,粘り強さだけではありませんということを明確に分けたところは,大変重要な点であろうと思います。
 細かなことですが,「より良く学ぼうとする」のところの「より良く」のよさというものは,大変価値的ではないのかと思います。そのためむしろ「より深く」とか,さらに「創意工夫して学ぶ」ということを私どもは大事にしているのであって,教師から見てよく学んでいるというような価値ではないはずだと思いますと,このあたりについて少し表現を工夫していただけるとよろしいのではないかと思います。
 同様に,この主体的なところで7ページ目でございます。具体的な評価の方法ということで,いろいろな教科の特質,発達段階等というようなことがここに書かれています。具体的な方法が挙げられているのですが,特に小学校低学年あたりでは,ここに挙げられているような形はかなり難しい思います。そのあたりのニュアンスが,ここに一応「発達の段階」とは書かれているんですけれども,学年や発達の状況に応じて,教師の方で創意工夫しながら評価の方法を考えていくことの必要性のニュアンスが,もう少し伝わるとよろしいのではないかと思います。
 細かな点でございますが,その次の丸のところも,教師として的確に評価するための授業デザインが大事だということは私も積極的に同意し,参加するところでありますが,「自らの理解の状況を振り返ることができるような発問をする」という表現です。教師が発問して振り返らせるということが大事なのか,私が知っている小中学校ではかなり良質な取組をしている学校は,教師が発問するのではなく,例えば振り返りのノートなどを,環境を設定することによって,常に生徒自らが,そういうことができるようなこともしています。教師が発問するのが大事なのではないので,「状況を振り返ることができるような機会を設定する」とか,教師が何かをするというだけではないようなニュアンスの表現にしていただけると,この主体的に取り組むということの重要性がより見えるのではないかと思います。1点目の細かな表現の調整をお願いしたいということでございます。
 それから2点目として,今回9ページ目ですが,「指導要録と通知表の様式を共通のものとすることが可能である」と書いていただけたのは画期的であり,非常に重要なことであると賛同したいと思っております。
 そして,3点目になるんですが,10ページ目のところで,先ほども御意見が出ておりました,観点別学習状況の評価と評定の取扱いについては,これまでも各学校において定めるとされてきたわけで,それを考えますと,私個人としては10ページ目において,どのように重み付けを加えるのか,3分の1なのか,どのようにするのかということに関しては,やはり慎重に各学校なり委員会なりが自立的に定めることができるというところが,穏当な判断ではないのだろうかと考えます。
 以上3点,意見を述べさせていただきました。
【市川主査】  どうもありがとうございました。それでは鈴木委員,どうぞ。
【鈴木委員】  主体的に学習に取り組む態度の件ですけれども,これは前回の関心・意欲・態度と同様に,教育評価の世界では,これを信頼性・妥当性をもって評価できるということは全く考えておりませんので,あくまでいろいろこうしたらどうか,いろんな細かい点で工夫の改善の余地ありです。それから重要性もそのとおりです。
 しかしながら,信頼性・妥当性のある評価はできない。それからそういうことをやった国もありませんし,そういう研究例もはっきり言ってありませんので,これは信頼性・妥当性を高められないということを前提に議論する必要がある。これは何かあたかも信頼性・妥当性があるような評価ができるというふうに議論するのと,現行の関心・意欲・態度と同じような問題にまたぶつかってしまうので,そこは是非確認していただきたい。
【市川主査】  ほかに御意見いかがでしょうか。渡瀬委員ですね。
【渡瀬委員】  よろしくお願いします。以前の会議でもこういう意見が出たように記憶はしていますけれども,この6ページの中ほどにあります「粘り強い取組を行おうとする意思的な側面が認められても,それが学習改善につながるものでなければ,肯定的に評価をすることは,かえって児童生徒に対して誤ったメッセージを与えることになりかねない」ということは分かりますが,7ページの上からちょっと行ったところの,「それぞれ各観点についてCCAやAACといった評価結果は,例外的な場合を除いては想定されない」という部分が,やはり気になります。
 子供によっては,客観的に見たときに,粘り強く学ぼうという意思があっても,その期の最後の総括的な評価においては,知識・技能や思考・判断・表現のところにCが付いてしまうということがあった場合に,CCAとか逆にAACというのは,あり得るんじゃないかと思います。
 例えば,このCCAということに対して,このまま努力を継続すれば,次にこのCCの部分がより改善される可能性がある,という形成的な評価を与えて,次へ進むということの方が正しいメッセージなのであって,それは誤ったメッセージにはならないのではないか。AACの子に対して,このまま安心していると危ないよというメッセージをきちっと与えてるような形成的な評価を行うことで,このAACを付けるということもあり得て,それは例外ではなくて,想定され得るのではないかと思います。
 以上です。
【市川主査】  ありがとうございます。それでは続いて,嶋田委員,それから天笠先生,どうぞ。
【嶋田委員】  先ほど秋田先生がおっしゃっていたように,小学校の段階,低学年においての主体的に学習に取り組む態度についての評価の在り方といったところは,また別立ての記述といいますか,御示唆が必要かなと感じているところがあります。
 それから,確かに教師の発問だけではなくて,例えば振り返りの時間をしっかり確保するとか,書くことによって一人一人の振り返りの姿が見えるというような形が必要かなと思います。発問で誰かが手を挙げて,それについて言って,以上終わりではなくて,それがやはりきちんと残しておけるということや,ある程度の時間が授業の中で,その振り返りをきちんとさせるためには必要になってきますから,その時間が毎時間ではないですけれども,単元のポイントとなるところでの時間の確保というところも,きちんと記述する必要があるかなと感じたところです。
 それから,指導要録の取扱いについては,特に9ページに「文章記述欄については大幅な簡素化」と書いていただいて,大変ありがたいと思っております。小学校の場合には,外国語が入り,それから道徳というところで,全部で大きく記述が5項目ございます。その中で一体どこの部分をどういうふうに今後簡素化していくのかといったところが,このワーキングの中でなのか,どこでなのかは,ちょっと私の方は分からないところはあるんですが,ある程度方向性をきちんと出していただけるとありがたいかなと思っています。
 通知表にしても,東京都においても,全ての市区町村で校務システムがきちんとできていて,全てデータで保存できているという状況ではございません。例えば都立学校については,東京都の場合はそれはできていますけれども,設置者の小中になると,状況によってまだまだ差異がございますので,そのような点も踏まえて,校務システムの推進とかというところも意識しながら,この指導要録の取扱いについては考えていく必要があると考えております。
 以上です。
【市川主査】  天笠先生,どうぞ。
【天笠教育課程部会長】  失礼いたします。先生方,ここまで議論を詰められて,こういう形でまとめられたということについて,心から敬意を表させていただきたいと思います。おおむねこの御提案の方向で,さらに議論を詰められていくことになると拝察しておりますけれども,是非その方向でおまとめをお願いできればということを,まず前提として申し上げたいと思います。
 その上で,恐らくこれからのまとめの段階で,それがプラスされていくんではないかということも拝察するんですけれども,それは学校全体で組織的に評価に取り組む,こういうことというのは前回のまとめのときにも,その柱があった。それは評価の方向性が固まってから,方向が出されてから,学校として組織的に取り組むんだということとしてまとめた,そういう経過をたどったという記憶を持っているんですけれども,今回も恐らく,今後そういう手続に入っていくことになるんじゃないかと思うんです。その点について申し上げさせていただきたいということなんですけれども,その扱いを是非付け足しのような形にしていただきたくないということで,この議論の経過そのものが組織的な対応ということと,常に一体的なものとしてあるんだということ,是非そのあたりのところを関連させながらというか,一体的に捉えていくことの必要性があるんじゃないかということを申し上げさせていただきたいと思うんです。
 それは,この1ページのところで,基本的な中教審の答申の中に出てきていた,その四角で囲まれた答申文そのものの中に,学習の成果を的確に捉えると。的確に捉える方向性とか在り方ということで,ここまで詰められてきたんじゃないかということなんですけれども,その次の文章として,「教師が指導の改善を図るとともに」と。ここの「指導の改善を図る」ということが,この後の方向にどう担保されているのかということで,こういう形で子供たちを評価する,そのプロセス自体が,実は教師の授業改善ですとかそういうものと,ある意味では一体的になるという,まさに指導と評価の一体化ということを,全体としてまとめていく,そういうスタンスを是非お願いしたい。
 私はこの学習の成果を捉え,教師の指導の改善を図るということが,カリキュラム・マネジメントの核になる部分ではないかと思っております。この部分が抜けたカリキュラム・マネジメントというのは,大切な部分がすっぽり抜けたそれになるのではないかと思っていまして,この授業と教師の指導改善,そのこと自体が実は評価の在り方を考えることと,学校におけるカリキュラム・マネジメントの在り方の結節点になる部分ではないかと捉えていきたいと思っております。そういう点において,先ほどのこれは組織としてあるものだというのを付け足しにしていただくのではなくて,どんどん組み込んでいただくようなスタンスをお願いしたいということです。
 今度そういう観点から見たときに,これは事業者お一人お一人が,それぞれPDCAサイクルをという部分と,それから例えば教科部会としてのPDCAサイクル,あるいは学校全体としてとか,それぞれがまだ渾然一体となっているような状況が,現在のこのまとめということだと思います。それは判然と整理し切れるものでないということも一つあるかとは思いますけれども,それは事業者お一人お一人が御努力されなければいけないところと,それから例えば学年としてとか,教科部会としてとか,あるいは学校としてとか,それぞれがそれぞれとしてそれがあると。
 さらに言うならば,教育委員会,行政として,その方向性を示さなければいけないところというのもあるのではないか。それらのことというのが,現在の段階で一体としてですけれども,今後学校として組織としてという場合に,そのあたりのところを少し整理したり区分けしたりするのが一つなのかなと思います。前回のこの種のまとめのときには,カリキュラム・マネジメントということがまだ形にもならなかったし,扱うということもなかったですけれども,今回の場合には,授業の改善と学校の改善としてのカリキュラム・マネジメントがあるところ一体的に捉えていくと。
 そのときに先ほど申し上げている,教師の指導の改善ということが,これとセットされているところの大切さというあたりのポイントのところを,その学校の組織全体としてというあたりのときに,うまくつないでいただくような,そういう組み立て方を議論で検討していただければということをお願いできればと思います。
 以上です。
【市川主査】  ありがとうございました。それでは続いて,若江委員と善本委員,お願いいたします。
【若江委員】  ありがとうございます。民間でもやはり評価については,物すごく大きな課題にはなっているんですけれども,以前からお話をお聞きしておりますが,教員の厳しい労働条件の中で,本日お話がありましたように,合理化の一つとして,この学習指導要領と通知表の共通化というのは,無駄をなくすという意味でもすごく重要だと思います。秋田先生からお話がありまして,それが学校ごとに違うというのであれば大きな問題で,鈴木先生からお話のあった信頼性と妥当性まではいかないにしても,やはり評価については,透明性,客観性だとか一貫性というのが担保されていないと意味がないと思いますので,学校ごとに違うのだとしたら,学校単位で授業が始まる前に,学年ごと,学期ごと,明確に事前に提示をする必要があるのではないでしょうか。
 ただそのときに,これも秋田先生から御指摘のありました,6ページの主体的に学習に取り組む態度の事例のところで,「自己調整を行いながら,より良く学ぼうとする」,「より良く」というのが,深くなのか,多面的なのかとありますように,自己調整そのものも,自分で気が付いて調整ができるのか,それとも他者から気付きを投げ掛けられて,その上で調整できるのかというのでも違ってくると思います。こういったところが,評価で言うと評価の規準と基準になるんでしょうか,もう少し先生方が具体的にイメージができるような項目出しというのが必要でしょうし,多分それが国立教育政策研究所が御提示をされる参考資料になろうかと思いますが,まさに先ほど天笠先生がおっしゃいましたように,評価というのは,授業デザイン,カリキュラムデザインの基になるものだと思いますので,それを導入するに当たって,せっかくこれだけ議論されているので,それがうまく現場の先生に導入しやすい,そこまでの配慮が必要ではないかなと感じました。
 以上です。
【市川主査】  善本委員,どうぞ。
【善本委員】  私も皆様がおっしゃっているように,大変よく整理していただいたなと思って,まずは感謝を申し上げたいなと思います。冒頭,秋田委員もおっしゃっていたとおりで,粘り強く取り組む意思的な側面と,自己調整とかメタ認知の言葉を非常に明確に言っていただいたのは,現場の実感にもかなり近いというか,このことをきちんと分けていただいたのは,すごく私としても納得性の高いものだなと感じているところです。その上で,全体的に非常によく整理していただいたと思いますが,幾つかの点でちょっとお話を申し上げたいと思います。
 先ほど多くの先生方から,指導要録と通知表の共通化ということについてお話しいただいていて,先般ある新聞で,通知表をもって指導要録に代えるということで文科省が方針を固めたという記事が出ていまして,それは文科省の責任ではないと思うんですが,かなりこの記事で現場が混乱していて,ここに書いていただいたので私も安心したんですけど,「指導に関する記録」に記載する事項を全て満たす通知表の場合はということなので,実際には中学校,高等学校で,全く5段階評価を記さない通知表を出している学校って結構あるので,本当に100点満点評価しか書いていない学校とか,10段階評価しか,年度末も含めて出していない学校というのは,公立では余りないかもしれないですけど,私学さんなどではかなりあるんじゃないかと思うので,その辺が誤解のないようにしていかないと,今の通知表がそのまま指導要録になるという誤解が広がらないようにしなくてはいけないかなと思っています。
 それから,観点を入れる上での様々な評価の課題点の中でずっと出てきた中で,大きいものと小さいものがあると思うので,私はそこをうまく峻別していくことが必要かなと。例えば奨学金というのもずっと出てきているのですが,これに関しては,個々の学習の活動を見るというよりは,私の理解では,条件のために出されているのにすぎないので,例えば今までの数値で3.5となっていたものを,観点別評価のA評価が幾つ以上みたいに変えれば済むことなので,余り本質的な問題ではない。
 それよりもむしろ,例えばこれを児童生徒及び保護者がどのように受け止めるかとか,一人一人を見なくてはならない就職試験で,民間企業がどのように受け止めるかとか,あるいは大学側がどのように受け止めるかとか,そういった議論が非常に本質的で大事なことだと思いますので,そのあたりをしっかりと区別しながら進めていかれると,とてもいいのかなと思っています。
 そういう意味で,全体的に非常によく書いていただいている中で,なかなかみんなが印象的にそう思っているんだけど本当にそうだろうかという部分は,ちょっと精査していただいた方がいいかなと思います。
 例えば11ページのところで,入学者選抜において生徒の学びが途中から非常によくなった場合に,再チャレンジが妨げられる仕組みがあるというふうに,中学校の例として挙げていただいているのですけれども,これは多分都道府県によっても,また学校によっても違うのかもしれないんですが,中学の場合は,東京都の場合に限って申し上げます,ほかのことは私はちょっと不勉強で存じ上げないので。中学校の2学期の評価が高校入試に使われているので,そういう意味で言うと,中学校1年,2年のときの学習の評価というのは,もちろん積み上げであるわけですが,影響しないので,余りこの再チャレンジが妨げられるという事例には当たらないのではないかと。
 むしろそれが一番大きいのは高等学校で,高等学校は1年から卒業までの学びが全て調査書となって出ますので,ある意味評定平均など今まで問題にしている場合でも,1年生のときに非常に学びが不調であった場合に,それを回復することってほとんど難しいということなので,そのあたりはちょっと実態に即して,これが中学校の実態とすべきなのかどうかということは,検討していただいていいかなということと,「内申書に響くぞ」なんていう表現もあるんですが,印象的なことだけじゃなく書いていただいた方がいいかなと思います。
 最後のページに,外部試験や検定等の学習評価を,教師が自らの指導や評価の改善につなげるようにと書いていただいていて,これはそのとおりで,既に学校の現場ではかなりここに力を入れて,中学校,高等学校の場合はやっていますけれども,そこでやっぱり気を付けなければいけないのは,そういったものが学校で行われる評価に比べて過度に比重が大きくなっていく。私は今回のことでちょっとそこを心配しているんです。
 観点別評価そのものの意義や価値をうまく生徒,保護者に浸透していかないと,そちらが形骸的になって,むしろ外部の塾や予備校などの模擬試験とか外部試験に,過度に比重が掛かるようなことになってしまうと,本来の目的からちょっと逆になるようなことがあると思うので,そのあたりはどういうふうにやっていくか。
 これまでここの議論はかなり,当然なんですけど,「べきだ」論というか,理念で「べきだ」の部分にウエートを置いて進めてきたと思うんですが,これからは「どのように」という部分がすごく大事だと。具体的にこれがうまく浸透していくためには,方法論の部分が非常に大事だと思うので,そういった意味で非常によく整理していただいたなと思っています。
 以上です。
【市川主査】  ありがとうございます。それでは続いて,髙木委員,鈴木委員,お願いします。
【髙木委員】  たまたま今,善本委員と話すことがかなり一緒になってきまして,ここまでまとまってきた,次の段階を私はここで考えていかなきゃいけないと今思っております。それは,例えば今回の改訂は,実は昭和23年の学籍簿からの改訂,今70年たって,5,4,3,2,1ということが一般社会や国民の中に定着していて,それを変えることに対しての違和感が,抵抗感はそんなにないと思いますが,恐らく出てくるだろう。
 要するに一般社会では評定と評価の区別さえ付いていない状況の中で,それをどういうふうに示していくか。まさにこれからやろうとしていることは,学校教育の中で学んだことへの質的な内容を,子供たちをよりよくしていくために評価していこうという方向ですが,そういった考え方を一般社会に知っていただかないと,なかなかそれが浸透していかないだろうと思います。
 そこで,できれば児童生徒だけではなくて保護者も,さらに一般社会も含めて,今回の学習指導要領改訂が何を資質・能力として育成しようとしているのか,それをどう評価しようとしているのかということ。例えば,この会でもそうでしたが,知識・技能の内容は何かと聞かれたときに,いっときは空理空論というか,空中戦がありました。中身分からず。思考力・判断力・表現力等というのはどんなものかと。それが実は今回の学習指導要領の中に明示化されているわけで,そういうことに対して評価していくんだということを,一般社会,もっと言えば児童生徒や保護者に周知徹底する必要があるだろう。
 平たく言ってしまえば,一般社会の人たちもこの学習指導要領を読んでいただいて,その内容に基づいて評価があるんだということを知っていただかないと,これまでの皆さん自分が受けてきた教育の体験を基に,5,4,3,2,1ということを当てはめながら評価を考えてしまうと,せっかくのこの評価の在り方がずれていってしまうだろう。したがって,そういう学習指導要領とこの評価との関係を一般社会にも分かり,さらには一般の方々が,これは繰り返しになりますが,学習指導要領を読んでもらえるような方向を是非考えていただきたい。
【市川主査】  鈴木委員,お願いします。
【鈴木委員】  前回の最後に,この会は非常に形成的評価が非常に注目されて重要であると,皆さんがおっしゃっているんですけれども,世界全体でも1998年のポール・ブラックとダイアナ・ウイリアムズの研究成果で,形成的評価が非常に学習の改善に効果があるということで,全世界が今,どうやって形成的評価を実施するかということに力を注いでおります。
 本会も,形成的評価が重要であると皆様方がおっしゃっているとおりですけど,前回もう一回確認いたしますと,形成的評価が機能するためには,生徒自身も何が学習の目標であるかということを理解する必要がある。先生だけではなくて,生徒自身も理解する必要がある。それから2つ目は,その目標と自分の学習状況の乖離を知る必要がある。これは先生も教師も。それから最後に,3番目に,その乖離,ギャップを埋めるための改善策を指導される必要がある。
 以上の3点なんですけれども,これは特にいわゆる高次の技能に関することについての3条件です。知識みたいもの,例えば歴史の年号を覚えるとか,各時代の重要な人物の名前を覚えるというのはこの対象ではありません。これは学習の目標が明確だからです。
 しかしながら思考・判断・表現,世界共通の言い方をすると高次の技能(Higher Order Skill)ですけれども,これに関しては生徒自身も何が目標であるかということを理解しないと,学習の改善は望めないということで,第1の条件が出てまいりました。やはり生徒自身が,例えば文章を書く場合,レポートを書く場合,どんなことが求められているかを頭に思い浮かべて作業をしないと,いい作品はできないというのが共通理解です。ですから,作り出す作品や論文を書き出すその時点で,目標が何かということを生徒自身も頭に入れておかないと,いい作品はできない,論文はできないということです。
 そこで,これは一種のメタ認知を含むものだということです。形成的評価はある種のメタ認知が必要であるということを前提に考えております。そこで今回の学習指導要領,それから観点として,主体的に学習に取り組む態度の中に,この議論のたたき台にもあったように,メタ認知を含むということが指摘されていることは,極めて重要だと思います。ですので,今回の主体的に学習に取り組む態度がここに置かれた一番の意義は,形成的評価はメタ認知が必要であるということを観点として出しているということ。
 ですので,これを先ほど言いましたように信頼性・妥当性がある評価をしろということではなくて,形成的評価が成り立つためには,この主体的に学習に取り組む態度というのがメタ認知を含むとして考えれば,必要であるというメッセージとしては非常に意味がある。ただし,繰り返しますが,信頼性・妥当性がある,そういう評価はできないということ,形成的に用いるべきであるということが私の意見です。
【市川主査】  ありがとうございます。松尾委員,どうぞ。
【松尾委員】  私が今から申し上げることも,もうこれまでに数人の委員の先生が本日述べられていましたけれども,回を重ねるごとにというか,急激に,この観点別評価とか,それから評定のこと,指導要録,そして日々の授業が一体的に変わっていくという大きな流れになってきたなと思っています。
 今大事なことは,これを学校現場にいかに定着させるかということを,もう少し丁寧に考えていかなくてはいけないなと思っています。学校現場は,一般社会よりも随分このことについては理解が深まってきていて,そして観点別評価,評定のことについても,私はおおむね受け入れられていると感じています。
 だから,そうするから,じゃ,具体的にどういうふうに日々の授業のこと,それから様々な様式のこと,これまで考えて当たり前だと思っていたことを,どの程度変えていけばいいのか,少しヒントなり道筋を示してもらえたら,もっと進めるのにという思いが強いんだろうと思っています。
 以前,意見発表させていただいたときも申し上げましたけど,やっぱり学校現場だけじゃなくて,特に保護者,それから一般の方に,この考え方をいかに浸透させていくかという手だてを考えるべきだということに,今から腐心しなくてはいけないんじゃないかなと思っています。
 しかしながら,本当に今回のこの流れは途絶えさせてはいけないと思うし,せっかくここまで深めて議論していただいたので,この流れを閉ざさないように,私たちがここでもっと具体的なものをできるだけ早く,現場の先生に伝えることが重要かなと思いました。
 以上でございます。
【市川主査】  ありがとうございます。伊藤委員,どうぞ。
【伊藤委員】  ありがとうございます。今,松尾委員さんから,学校現場への定着,浸透が必要だという御意見がありましたけれども,私も全く同感です。
 実は,先日少し時間がありましたので,本校の3年生の生徒22名がおりましたけれども,通知表にある5,4,3,2,1の評定は,あなたたちは必要だと思いますかという問い掛けをしてみたんです。そうしましたら22名のうち3名が,「どちらとも言えない」,そして残りの19名は,何と「なくしてほしくない」と答えたわけです。
 理由を尋ねますと,やはり5段階で示される方が一目で分かると。分かりやすいということですね。中学生ですけど。そして,やはり3を取った人は4を,4を取った人は5を目指して頑張ろうとすると。なくすとモチベーションが下がってしまう。なくすとどの教科が得意なのか,苦手なのかが分かりにくくなってしまうとか,A,B,Cの3段階だけだと段階ごとに幅があって,成績の自分自身の変化が分かりにくいのだというようなものが挙がっておりました。
 評定をなくすことのよしあしというのは別にして,あくまでも現状としてですが,生徒にとって評定は今あるのが当たり前だと。思った以上にそれを自分自身の励みにしていたり,どれだけ努力できたかということを見るときの尺度にしているということを,私自身も改めて感じた次第です。
 校種によっても異なるところだろうと思いますが,例えば評定をなくすことによって,モチベーションが下がってしまうと今感じている生徒もいるわけです。ですから,これをなくすにしても,そこのところをしっかりと私たちが認識しながら,上手に移行していかなければならないし,先ほどありましたように,丁寧に説明していかなければならないと思いますし,何よりも全ての教員がそこをきちんとできなければ,生徒,保護者を含めて,大混乱を生みかねないと思うわけです。
 今から先は,教師と児童生徒のコミュニケーションとか,日頃からのフィードバックということを丁寧に行うことが,より一層求められていくんじゃないかと思います。そういった意味で,例えば様々な条件整備,定数改善とか,やはりセットでこの議論を進めていただくと,現場にとっても非常に安心感が生まれてくるんじゃないかと思いますので,そこのところもできましたら少し御検討いただければと考えています。
 以上です。
【市川主査】  今の御意見で,一応確認しておきたいんですけれども,ここで評定と観点別評価。やはり評定は必要だと。子供も保護者もやっぱり評定がある方がいいという御意見を,私もよく伺うんですけれども,ここで出てきた議論は,指導要録においては別に評定はなくても結構です。子供に対してフィードバック,評定が必要だということになれば,それはどうぞ通知表でやってくださいということだったので,19名の方が,これがモチベーションにつながるので評定は必要だというのは,それならどうぞ,通知表ではお出しください,あと,通知表じゃなくても,ふだん何か評定になるようなものが必要ならばやってください,ということになります。
 ただ,指導要録という原簿,残すものとしては評定がなくてもよいというか,評定なしというのは,これまで何人かの委員の方から意見として出てきたということですので,子供に対してフィードバックが必要だから評定は残すというのだと,ちょっと議論がずれてしまうかもしれないので,それは御確認よろしいでしょうか。
 通知表の書き方まで,このワーキンググループなり文科省なりが制約しているわけではないのですけど,これは誤解を招くといけないので。子供にも評定を返してはいけないというようなことは,委員会としても言っていないということです。その上で指導要録には要らないのではないかという意見がこれまであったということです。
 今回見ますと,それは大分トーンは下げられていて,これまで両論併記でした。評定を残すべきという意見,それから評定は指導要録には要らないという意見,両方併記されて議論もしてきたわけですけれども,今回は両方というよりは,それだけ評定がやっぱり現場からは必要であるというならば,また学校の先生もそれを原簿にも残しておきたいというならば,そこはいじらないようにしようかということもかなり出てきてますので,そこはいじらないかもしれないんですが,その理由として,子供にフィードバックが必要だとか,保護者もそれを知りたがっているからというのだと,通知表の議論と指導要録の議論がずれてしまいますので,これは誤解のないようにして議論していただきたいということです。それはよろしいですか。
【伊藤委員】  はい。
【市川主査】  じゃ,秋田委員,どうぞ。
【秋田委員】  本日の皆さんの御意見を伺って,特に天笠委員が言われた,やっぱり学校全体としてというところに関して,この報告なりについて貫いていただくということが大事だと思います。例えば1ページ目のところでも,新学習指導要領の趣旨を踏まえて,指導と評価の充実を図るというときにも,「学校全体として」とか,それからいろいろなパフォーマンス評価の多角的評価を行っていくという方法に関しても,「学校全体で協力し合いながら」とか,そういう全体の報告書の中において教員1人の取り組みのみではなく協働して,チームとしてやっていくというニュアンスを,その文面に入れていただくと良いと思います。
 そして最後に,国立教育政策研究所の作成する参考資料も,従来ですと各教科の御担当の調査官等がこれを作成されることになると思うんですが,それだけではなくて,やっぱり全体として,学校全体がどのようにこの評価に取り組むということについて参考資料の中に入れていただくこと,また,この指導の評価の在り方が恐らくこれまでと同じであれば,あと10年これから使われることを考えますと,恐らく今学校は,統廃合や小規模化が進んで,過疎のところでは小中一貫等もかなり増えてきていることを考えますと,学校間でも情報を共有することの大切さ等も含めてお書きいただく,評価に関して,教師たちが学校全体としてその地域全体で知識を深めていくための研修の重要性が,多分指導と評価の一体化として重要ではないかと思います。ですので,それを資料に入れていただきたいと思います。また,先ほど善本委員や髙木委員からもありました,いわゆる評価をどうするかということではなくて,どう実施するかというインプリメンテーションの議論としまして,保護者にもこれを各学校が共有しなければならないとか,していく方向性が必要であるということを文章上にも入れ込んでいただくことが,大事になってくるのではないかと思います。
 あと,大変細かなことで,既に中教審の議論でも使われている言葉なんですが,3ページ目のところに,例えばいろんな評価に「パフォーマンス評価」という言葉があるんですけれども,「作品の制作などといった多様な活動に取り組ませるなどの活動を取り入れながら」ぐらいでもよいのかなと思います。パフォーマンス評価という特別の評価のためにこれをやるという発想もありますが,学習活動の一環として,小中学校ではそういう用語は使わないけれども,これまでも十分やってきていて,それをちゃんと評価に使っている学校もあるので,あえてそれをこれは評価のためにやるのだという形で表現をするのは,「パフォーマンス評価」とか,今回「メタ認知」というような専門用語が入ってくるんですけれども,できるだけ学校において従来から使われ行われている,こなれた表現を入れる方がよろしいのではないかと個人的には考えます。
 以上でございます。
【市川主査】  それでは,松永課長がいらっしゃったということですので,御挨拶をお願いいたします。
【松永教育課程課長】  失礼いたします。遅参いたしまして申し訳ございませんでした。16日付で教育課程課長を拝命しました松永でございます。教育課程課の仕事は3度目でございまして,また先生方から御指導賜りたいと存じます。よろしくお願いいたします。
【市川主査】  よろしくお願いいたします。ありがとうございました。それでは続きまして,若江委員,それから善本委員,どうぞ。
【若江委員】  ありがとうございます。今回評価のことを議論されているのは,子供たちが自身の学びを振り返り,また教員が指導の改善を図るというところが焦点であることは理解をしておりますが,先ほど善本委員から,評価,評定について,中学校,高校なんかでどのように使われているかという赤裸々なお話がありましたので,産業界の情報を少しお伝えしておきたいと思います。
 私は幾つかの企業の採用試験ですとか,それから財団などが支給される小学生の選定に関わらせていただくのですが,そのときにいろいろな学校からいろいろな情報が出てくるんですけれども,その成績に関することが余りにも一貫性,客観性がないので,なかなかそれが使えないというのが現状です。
 ですので,同じフォーマットに書き直してくださいと,各学校,高校なんかに再提示をすることがありますけど,その同じフォーマットで出していただいたときに,やはり評価の観点が物すごくずれているなと感じることがあります。学校現場の先生方は,やはりその評価と評定ということに関して,ふらふらとした状態にあるのではないかなと思います。
 ですので,この機会は,単に先生方だけが評価のことについて理解するのではなく,本当に幅広くいろんな人たちが一度評価について,考えていくよい機会になると思いますし,また私たち産業界の人間も,そういうことに動きをとっていかなければいけないと痛感いたしました。
 以上です。
【市川主査】  善本委員。
【善本委員】  先ほど,どうやってという部分がこれから大事だということをお話ししていく中で,やはりこの商品はとてもよい商品だから売るべきだといって,マーケティングリサーチのデータを余り見ないで事を進めるというのはうまくないと思うので,先ほど伊藤委員がおっしゃってくださったことなどは,まさにマーケティングリサーチだと思うんですが,そこの部分をしっかりとやっていただきたいということと,先ほどお話があったんですが,逆に指導要録に観点別評価を記入し,通知表は法令上の定めもなく根拠もないから,5段階だけ出すというようなことが起きた場合には,今ここで考えていることは全く意味をなさないことになってしまうと思いますので,そういう意味ではきちんと整理をして,本来,私はかねてから申し上げているように,指導要録から調査書まで,東京都の場合はシステム上も一体化していますけれども,できるだけ一体のものであるべきじゃないか,指導要録に書かれていることが児童生徒にも通知されるべきではないかなと思っています。
 その逆のことが起きてしまったときには非常にまずいんじゃないかなと思いますので,そこは整理していただけたらいいかなと思うのと,先ほどマーケティングリサーチということを申し上げましたが,指導要録をどういうふうに使っているかということも,かなり私は校種によっても違うんだということを,ここに出てきて実感しました。
 そういう中で,例えば1つ具体的に申し上げると,高等学校の場合は,裁判所をはじめとする公的機関からの文章をもっての正式の照会というのが結構ございまして,それに対しては指導要録の記録を基に,可能な範囲で学校長が回答するということも実際に行われています。なので,そういったことも含めて,指導要録には何が必要で何が簡素化してよいものかということは,きちんと現場の実態に合わせて整理していただくとありがたいなと思っています。
 以上です。
【市川主査】  じゃ,続いて鈴木委員,それから天笠部会長,お願いします。
【鈴木委員】  ここでも何回も申しましたが,前回と前々回,このワーキングの委員でしたけれども,ずっとこの間約20年,一番悩まされたことは,先ほどから私は申しておりますが,関心・意欲・態度の信頼性・妥当性が高まらない,ほぼ無理だという観点の結果を評定に組み込んでしまうということにずっと悩まされて,その改善が必要だと考えてまいりました。
 今回,先ほど市川主査が,必ずしも評定がなくならないのではないかと。なくなるのか,なくならないのかちょっと分からなくなりましたが,どうなるにせよ,もし評定がなくなれば,いわゆる関心・意欲・態度,20年間悩まされた問題は,ある程度解決できると思います。しかしながら,もし評定がそのまま現行のとおり続くとしたら,関心・意欲・態度ではありませんが,主体的に学習に取り組む態度の評価に関して,評定の関連で,また今後20年間ずっと悩まされることになります。これはまずいんではないでしょうか。
 ですから,知識・技能,それから思考・判断・表現に関しては,十分信頼性・妥当性のある評価はできると思いますけれども,繰り返しますが,主体的に学習に取り組む態度に関しては,信頼性・妥当性のある評価はできません。これを再びもう20年間,仮に評定を残すという形でやりますと,また何十年間悩まされることになりますから,ここでそれは幾ら何でもなしにしないとまずいんじゃないでしょうか。少なくとも知識・理解と思考・判断・表現の信頼性・妥当性のあるもので,もし評定を残すとしても,そこにとどめるべきではないかと思います。
【市川主査】  天笠部会長。
【天笠教育課程部会長】  たびたび恐縮でございます。今回のこの出されたやつが,議論を詰める,精査するということが今後また進められるかと思いますけれども,骨格,全体というんですが,それの大切な部分がこういう形でまとめられて,本日ここに出ている,そういう認識を持っております。
 繰り返しますけれども,さらに詰めていただければということをお願いできればということですけれども,その上で,このワーキングは,前回は委員の立場から御一緒させていただいたんですが,そのときと本日のたたき台と称される,これの一つの違いは,中教審の答申文章がこういう枠囲みであるにしても,こういう形で示されている。
 この一つの意識というのは,中教審の答申とこのワーキンググループで方向性を示すということと,つながりをしっかりと意識して,そしてその中教審の答申を,学習評価においてより具体化する,そういう方向性,指向性を示したということ,私はその点について大変必要なのかなと思っています。前回も当然無視したわけじゃなくて,前回はまさに分かったものだということを前提にしてまとめられたわけですけど,今回こういう形で丁寧に記したことの大切さというのが,私は今回あるのではないかと思っています。
 そういうところからしたときに,本日のたたき台の1ページのところですけれども,もう一段そこら辺の工夫が必要なのかなというのは,「本答申の考え方を前提にして」と,全ての考え方を前提にしちゃうんですけれども,基本的はこういうことになるかと思うんですが,その考え方の前提になるものを少し記した方がいいのかなと。ですから,いわゆる長い膨大な前文にする必要は当然ないと思います。やっぱりこの本体はここにあるわけですから。ただ,これが導き出された結論というのが,言うならば,答申の考え方のそれなんだと。
 先ほどの髙木委員がおっしゃったようなことも,その中に私は位置付くのかなと受け止めておりますけれども,今回はいわゆる社会に開かれた教育課程を理念として掲げてということ,その一連の文脈というのもすごく大切に思いますし,またワーキンググループとしてそれを受け止めて,こういう以下の方向性,結論を出したということの提起の部分は,やっぱり大切なのかなと思っています。
 ですから前提として,ここの委員たちはもう当然お分かりのところなんですけど,ちょっとそこら辺を説いていただくというのも,ここの文章を今後おまとめになるときに一つ入れておくというか,位置付けておくことの大切さはあるんじゃないかなと思います。
 以上ということです。
【市川主査】  では,松尾委員,どうぞ。
【松尾委員】  先ほど伊藤委員からおっしゃられた,生徒の実態とかマーケティングリサーチとか,そういうことももちろん大切だと思いますけれども,今,天笠先生が言われましたように,本答申の考え方,これをマーケティング,実態がどうだからそれに合わせて変えるとかいうことではなくて,その現状をよく私たちが認識して,その課題を解決するためにここで話し合いを進める,そのことはきちんと確認しておくべきではないかなと思いました。
 それから,鈴木委員が先ほどから何度も,主体的に学習に取り組む態度,このことについては信頼性とか妥当性の点でほかの2つの観点とは違う部分があるということを強調されていましたが,そのことも含めて一般の社会の方に理解していただくような努力をするべきだと思いますし,そうだからといって,先ほど3つの観点のバランス,均等にするべきなのか,軽重を付けるべきなのかとか,これから難しいことはあると思いますが,妥当性のことだけで軽重として軽くするとか,そういうふうになってはいけないと思いますので,この会で次以降,このことについて話し合いができたらいいかなと思いました。
 以上でございます。
【市川主査】  どうもありがとうございます。髙木委員,どうぞ。
【髙木委員】  だめならやめます。
【市川主査】  いや,どうぞ言い残しのないように。
【髙木委員】  信頼性・妥当性を含めまして,実はこれは昭和55年の指導要録の改訂のときに,それまでの要するに認知面だけの評価から,情意面を入れようと。情意面を入れるというのは非常に難しい評価であって,それにずっとチャレンジし続けながら,ここまで評価論が来たんです。ですから認知面だけ,要するに知識をたくさん覚えているから成績がいいというだけじゃなくて,情意のところを日本の国全体で考えていこうねというのが,この20年ずっとやってきたことであるので,やっぱりその辺を大事にしていきませんと,今までやってきたことが戻されてしまう。
 世界的に見ても今,評価自体は数値の評価から質的な評価へどうやって転換していくかということです。この日本の行っている学習指導要領を目標にして,その目標にしたことを評価していくということ,これは世界の評価の中でも私は非常に進んでいる評価だと思います。恐らくこれは今後,例えばフィンランドなんかでもそうですが,そういった方向へ行く方向性は実は持っているということ,この評価自体の先進性,それから斬新さというか,そういったものを我々は討議してきたんだということを大事にしていきたいと思っています。
【市川主査】  ありがとうございます。言い残しがある委員の方,いらっしゃらなければ,ちょっと私もまとめに入りたいと思うんですが,よろしいでしょうか。
 議論が大分煮詰まってきたと思うんですけれども,まだ大きな点で少し詰めていかなくていけないのは,私は2つあるかなと思っています。1つは,この主体的に学習に取り組む態度,これをどういう概念と捉えて,具体的にどういう方法で評価していくのかということです。もう一つは,観点別評価と評定の問題です。それぞれについて,まだ意見は十分一致を見ていないと言ってもいいと思います。
 それでなんですが,まずこの主体的に学習に取り組む態度,これは情意的な面はもちろんありますが,学習の自己調整とかメタ認知ということが入ってきていますので,必ずしも情意的にすごくやる気を出しているとか,頑張っているだけではないということも,今回かなり入っていますよね。この自己調整という言葉が出てきたのは,場合によると,学校の先生も唐突かもしれませんけれども,考え方自体は,もう30年,40年くらい前から心理学の中では出てきています。
 平たく言えば,「学習のPDCAを自分で回していく力」と私は言ってもいいかと思います。自分で計画を立てて見通しを持って,そして遂行して,その遂行の結果がどうであったかということを自分で内省して,次の学習につなげていく。これが秋田先生もおっしゃったように,価値的なことを言うと,ちょっと曖昧になってしまうかもしれないんですが,例えばそこでいろんな学習方法についてのレパートリーを持って,それを自分の目的に合わせて駆使していくとか,そういう姿というのは,余りこれまで学校の中で見取ろうとはしていなかったかもしれませんけれども,見ようと思えば見ることができる。
 これがなぜ心理学から出てきたかといえば,一人一人の子供を丁寧に見ていくと,やっぱりそういうことをかなりやっている子供もいるし,余り考えていない子供もいて,それが実は学習の結果にあたる,知識・技能,あるいは思考力・判断力・表現力とかいうところに非常に大きな影響を持っているんだということが,この20年,30年,示されてきたからではないかと思います。
 しかし,学校の先生は30人,40人を相手にしていると,じゃ,どうやってそれを見取るのかと。一人一人をよっぽど丁寧に見ていれば,心理学で言われているようなことができるのかもしれませんが,なかなか授業の中では難しい。つまり多数の子供を相手にしている中では難しいですが,それを少しでもいろんな資料を基に見取っていくことができるのではないかという見通しがだんだん出てきたので,この話が評価の一つの柱としても表に出てきたのではないかなと思っています。
 実際にもう学校教育法ができたときから,この学力の3要素の3つ目として出てきている。それから答申の中でも,学習指導要領の中でも「学びに向かう力」というのが出てきて,この力というのは,単に頑張っていますというだけではなくて,その頑張り方のことまで含めて見取っていこうと。そこには指導も必要でしょうし評価も必要でしょうということになっているんだと思います。
 鈴木委員のおっしゃるように,確かに知識・技能に比べると,妥当性・信頼性は低いかもしれないけれども,ゼロではないですね。またこれまでは無理だったかもしれないけれども,工夫をしていけば,より妥当性・信頼性の高いものにできるのではないかという見通しがあって出てきたことです。
 これは例えば思考力とか判断力,表現力だって,一昔前ですと,そんなものはとても測れないよと言われました。信頼性・妥当性はないから,そういうものはもう無理だということで,どうしてもペーパーテストの知識・技能だけに偏りがちだった。しかしだんだんそういう方法も開発されてきたので,これをきちっと見ていこうではないかと。
 また今回,社会に開かれた教育課程ですので,社会に出てから何が大事だといったときに,単に知識及び技能だけではないでしょうと。思考力,判断力,表現力等のようなもの。それから,この会議の中でも出てきたと思いますが,企業の方からも,何が大事かというと,この学びに向かう力というものだと。これを学校で身に付けてきてくれることが,企業としても非常に望まれるんだという御意見もあったと思います。
 確かに鈴木委員がおっしゃるように,これまでの学校のやり方だと,信頼性・妥当性は低いし,余りその方向に努力が図られてこなかったとすると,今回はある程度心理学などの実績もあって,そういうものを見取っていこう,また見取っていくことができるし,信頼性・妥当性も高めることができるんではないか。髙木委員がおっしゃるような,これが今回の先見性ということになるのではないかと思います。
 ただそれをもっと具体的な方法として示さないと,学校現場では一体どうやってそれを見るんですかと。自己調整,メタ認知も余り現場にはなじみのない概念ですので。今回答申でも出てきたということは,そういう視点から学習のPDCAを自分で回していく力,これを指導もするし,評価もしようという方向になっているのではないかなと思います。ですからやっぱり主体的に学習に取り組む態度というのも,情意と認知の両方の側面から考えてほしいということです。
 一方ではどれだけ頑張ろうとしているかという情意面。同時に,実際にそういう方向に向かって自分なりにいろんな学習の仕方を模索したり,あるいはそういう指導を先生から受けたりしながら,それを取り入れてやっていこうと。資料としては,例えば自分の学習の計画の立て方とか,自分の学習を内省するときのいろいろな資料とかやりとりのようなものも,先生の方から積極的に収集する姿勢を持ってもらって,それを何とか客観性のある評価にしていこうというのが一つの流れかなと理解しています。
 それからもう一つの評価と評定ですが,これも確認ですけれども,伊藤先生がおっしゃるのも,観点別の評価をすることに対してはもちろん否定はないわけですよね。これも高校の先生からも,これまでにない観点別評価をみんなやってくださいということが,すごく負担にもなるし,反対があるのかなと思ったら,意外とそうでもなかったと。既に多少はやっているところもあるし,観点別の評価を入れるということについては,もう小中高,これは割と合意が取れていて,要するに評定の5段階の点数だけではなくて,もっとよりきめ細かく観点から見ていってくださいという,これを入れる。
 入れるということに大体合意が得られたのは,私は一歩前進だと思います。ただそのときに,この評定をなくすかどうかということについては,かなり賛否両論出ていまして,もちろん指導要録においてですけれども。この観点があれば,何も評定は要らないではないかということをメッセージとして強く出していくべきだというのと,やはりその3観点を総括するものとして評定はあった方がいいという,この両方の御意見が出ているわけです。これについてそろそろ合意を取っていかないといけないかなと思うのですが,今回のまとめでは余り強いトーンで書いていないんですよね。
 それぞれの議論をかなり詳しくということもしていないんですが,このあたりもう一押し,どちらの側からでも,やっぱり指導要録も含めて,例えば善本先生は,通知表も指導要録もこれは内容が一致している方が望ましいということになると,一致させるときに評定は取っちゃった方がいいのか,評定は残すという方向で一致させる方がいいのかとか,先ほど伊藤先生がおっしゃったように,やっぱり評定というのは子供にとっても保護者にとってもかなり大事な面があるので,評定を残すことにはちょっと賛成しがたいということなので,それは指導要録においても同じだというような一言があればいいですし,また髙木先生の方からも,これはもう今回の非常に大事なメッセージなので,評定をこの際指導要録からは外すという方向がいいのかも,一言頂けますでしょうか。じゃ,伊藤委員,どうぞ。
【伊藤委員】  ありがとうございます。先ほどの私の意見は,ちょっと言葉足らずで申し訳なかったですが,現状をまず御報告させていただいたということです。ですから何が言いたかったかというと,大転換を図る覚悟が必要だということなんです。現場はこうだ,生徒の捉えはこうだということを申し上げたかった。だから大転換を図るということは,それなりに全ての教員がそこを理解していなければならないし,先ほど申し上げましたように,ある程度の条件整備もセットで行われるべきだということを,申し上げたかった。
【市川主査】  じゃ,鈴木委員,どうぞ。
【鈴木委員】  主体的に学習に取り組む態度は今後進歩する可能性は十分あると思います。それから,研究としてはいろんなのがあることも事実です。ですので,要するに結果妥当性が実は問題でして,この主体的に学習に取り組む態度をどう利用するかという点の,ちょっとこれまで何も言っていませんが,結果妥当性という概念で考えますと,利用方法が問題であって,評価することがいけないと言っているとか,そういうことではないので,その結果妥当性が問題だということは,評定に入れることが問題だと。
 なぜかというと,評定がもし残った場合は入試等に使われるのでということで,この観点を置くことと評価することはいいと思います。ただし,評定をなくす場合はそのような問題がなくなるということで,考えてみると評定をなくすのが一番いいと。それから2番目としては,少なくとも評定からは,もし残すとしても,この主体的に学習に取り組む態度は外した方が,結果妥当性から見て,利用方法から考えていいんじゃないかということです。
【市川主査】  髙木委員,どうぞ。
【髙木委員】  やっぱりここでのこれまでの議論は大事にしていきたいと思っているんです。それで何回目だったか,夏休みの終わりぐらいに高校生がいっぱい来てやった回があって,あそこではもう,評定は生徒さんはない方がいいみたいな言い方もしていました。そこだけを取り上げるんじゃなくて,実は本日天笠会長もずっと言っているように,これは答申からずっと一貫性を持って来ている話であって,答申から学習指導要領ができて,その学習指導要領を基にこれから子供たちをどういうふうに,記録としての指導要録として何を残していくかという話ですから,その一貫性の中で考えていかなきゃいけないので,一貫性を持って考える以上,この指導要録は社会に開かれた教育課程という以上,教育の内容の質的な大きな転換を図ろうという,強いメッセージがあると思います。
 ですから今までの行ってきた学習指導要領とは,ある意味もう初めから具体的に内容に大きな変化があるという前提の中で来ている以上,これまでと同じ評価の在り方でよかったのかなということをやっぱり考えるべきだろう。ですから強く言ってしまえば評定はなくす。その方向でこれから学校教育の中で,今回の学習指導要領の内容をどうやって実現していくか,そこがやっぱり問われてくることだろう。
 そこには考え方,要するに評価の見方,考え方のパラダイム転換を図っていくということと,先ほどから申し上げているとおり,外国の例をそのまま持ってくるんじゃなくて,この日本の目標,準拠評価はかなり私はいい評価だと思っている。学習指導要領との一体化が図られて,そういったものを評価しやすいものであるということを,ちょっと付け加えておきたいと思っています。
【市川主査】  じゃ,それではそろそろ時間が来てしまいますので。伊藤委員,大転換とおっしゃったんですけど,ただ先ほどのように,実際には通知表というのは各学校に内容は任されています。子供にどういうフィードバックをして,どういう指導をするかということ,それはもう学校の主体性にもちろん任されている。
 だから少なくとも,これまでの議論上,髙木先生がおっしゃったような,こういう中教審なり学習指導要領なりの方針としてはこういうものを強く打ち出すという意味では,評定がなくてもいいのではないかという御意見があったということで。
あくまでも両方から意見が出ておりますので,これから最終調整が必要だと思いますが,また是非御意見等をお寄せいただければと思います。
 それでは本日の議論はここまでということでよろしいでしょうか。それでは事務局の方でお願いします。
【白井教育課程企画室長】  先生方,ありがとうございました。ちょっと1点だけ補足させていただきたいと思いますけれども,このワーキングの方で取りまとめました報告については,親部会であります教育課程部会の方で最終的に取りまとめをいただくということを,今のところ予定してございますので,一応前回10月1日に教育課程部会の方で御議論いただきましたけれども,そちらの先生方の御意見も随時こちらにもフィードバックさせていただきたいと思っています。
 次回のワーキングでございますけれども,11月の上旬,あるいは中旬ぐらいに開催を予定してございますので,また改めて御連絡申し上げます。
【市川主査】  本日はこれで閉会にさせていただきます。どうもありがとうございました。

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