教育課程部会 児童生徒の学習評価に関するワーキンググループ(第4回) 議事録

1.日時

平成30年5月30日(水曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省 第2講堂(旧文部省官舎6階)

3.議題

  1. 児童生徒の学習評価 の在り方について
  2. その他

4.議事録

【市川主査】  それでは,ほぼ定刻になりまして,皆さん,おそろいということですので,始めさせていただきたいと思います。ただいまより,教育課程部会児童生徒の学習評価に関するワーキンググループ第4回を開催させていただきます。
 初めに,本ワーキンググループの審議等につきましては,初等中等教育分科会教育課程部会運営規則第3条に基づきまして,原則公開により議事を進めさせていただくとともに,第6条に基づきまして議事録を作成し,原則これも公開するものとして取り扱うこととさせていただきますので,よろしくお願いいたします。
 それから,本日は,報道関係者より会議の撮影及び録音の申出がございます。これを許可しておりますので,御承知おきください。
 それでは,事務局より配付資料の確認をお願いいたします。
【白井教育課程企画室長】  お手元の議事次第にございますとおり,本日資料1から資料5までをお配りしています。不足等ございましたら,事務局にお申し付けください。
【市川主査】  資料についてはよろしいでしょうか。
 それでは,議事に入ります。本日のテーマは,高等学校における学習評価についてでございます。初めに,国立教育政策研究所の二井研究官から,国立教育政策研究所が作成している「評価規準の作成,評価方法等の工夫改善のための参考資料」について発表をお願いいたします。その後,観点別評価を高等学校に実際導入しているという,岩手県教育委員会の中村指導主事様から御発表をお願いいたします。
 さらに続いて,以前,県の教育委員会で入試担当をされていらっしゃり,かつ,現在は高等学校長をされている松尾委員から御発表をお願いすることになっております。
 最後に,工業高校の校長をされている清水委員から,松尾委員の発表に加えて,さらに専門高校の観点から,補足的に御意見を頂ければと思っております。
 それでは,まず国立教育政策研究所の二井研究官から,よろしくお願いいたします。
【二井総括研究官】  失礼します。国立教育政策研究所の二井と申します。よろしくお願いいたします。パソコンの操作の関係で座って説明させていただきますけれども,よろしくお願いいたします。
 私自身は,平成11年及び21年の指導要領改訂に伴う評価の参考資料を作成する際,高等学校の世界史に携わった関係で,具体的には地理歴史科の世界史を事例にしつつお話をさせていただければと思います。
 初めに,国立教育政策研究所が評価の参考資料を作成するようになったいきさつですが,これは平成12年の教育課程審議会答申において目標に準拠した評価を観点別評価で行うことになり,そのための参考となる指針を国立教育政策研究所が開発するように提言されたことを受けたものです。国立教育政策研究所では,この答申を受け,小・中学校の評価の参考資料を平成14年,高等学校版を平成16年に作成しました。今回の御報告では高等学校の例でお話しさせていただきます。
 まず作成の方法ですが,指導要領とその解説書に基づきながら,そして,作成する評価規準や評価方法を検証するために研究指定校の協力を得ながら検証作業を進め,資料を作成しました。
 次に,資料の内容構成です。まず「第1編 総説」,これは資料がありますけれども,資料Aのページで総-1~22に当たる部分ですが,ここでは評価の考え方,資料の構成,留意事項等を詳しく説明しています。そして,第2編からは,「各教科における評価規準の作成,評価方法の工夫改善」が示されています。資料Aの地-1ページ以降には,地理歴史科の例が示されていますが,「第1 教科目標,評価と観点及び趣旨」には,「教科目標」が指導要領から,「評価の観点と趣旨」が学習指導要録改善通知から引用され,記載されています。
 そして,「第2 各評価の観点の趣旨」には,前項の1と2を基にして国立教育政策研究所で作成した各科目の評価の観点の趣旨が示されています。なお,このスライドでは青字の部分が国立教育政策研究所の作成した部分となっています。
 そして,「第3 必履修科目における内容のまとまりごとの評価規準及びその具体例」については,世界史Bの例として,資料A,地-21ページ以降にその本文があります。「2 科目の評価の観点・趣旨」以降は,基本的に学習指導要領やその解説等を参考に国立教育政策研究所が作成した部分となります。
 次の「第4 単元の評価に関する事例」は,資料Aの地-90以降のページに事例が示されていますが,研究指定校の実践などを基に,単元の目標,単元の評価規準,指導と評価の計画,観点別評価の進め方,観点別評価の総括といった項目を立てて事例が作成され,紹介されています。これが大まかではありますが,国立教育政策研究所が作成した平成10・11年版指導要領に基づく評価のための参考資料の内容です。
 このような資料が小・中・高等学校のほぼ全ての教科,科目にわたって作成されました。
 次に,この参考資料がその後どう評価され,どう利用されたかということです。ある新聞から,「このようなものを作った人間の顔が見たい」といった御批判を,記者ノート欄で頂いたりしました。恐らく新しい評価への深刻な不安や誤解がある中で,結果的に非常に大部,大量の資料となってしまった国立教育政策研究所の参考資料への御批判であったのだと思います。
 確かに観点別評価や評定を目標に準拠した評価として行う際の負担感や,評価技術への不安を払拭するものになっていたかということを考えたとき,その後の評価の実施状況の調査などを見ても,改善すべき点がいろいろあったのではないかと思います。
 また,各地で行われた評価に関する研究会や研修会での発表や実践レポートなどでは,国立教育政策研究所の参考資料に示された評価規準と,その具体例をそのまま使用した各学校や教師の主体性の見られない実践や報告が頻発したのも課題だと考えています。
 次に,これは私が教員研修センターで平成18年から21年度の「教職員等中央研修・中堅教員研修」への参加者,合計666名に対して行ったアンケートを整理したものです。主には,全国の高等学校の教務主任などの先生方の御意見をまとめたものになると思いますが,これを見ても,高等学校における評価への不安などが多く,参考資料が評価を実践する際の指針として機能したかどうかは心もとない状況にあったのではないかと思います。
 このような状況の下,平成20・21年版の指導要領が告示され,評価の在り方についても教育課程部会で議論され,平成22年に「児童生徒の学習評価の在り方について」という報告がなされました。そして,国立教育政策研究所については,マル3にあるように,新たな評価の参考資料を再び作成することが明示されました。また,高等学校での指導要領の扱いについては,マル5のように示され,観点別の評価結果を記載すべきとまではされませんでしたが,きめの細かい学習指導の充実と,子供一人一人の学習内容の定着を図るため,指導要録において,観点別の記載ができるようにすることは有効な手段であるとされています。
 この報告を受けて,平成22年より国立教育政策研究所では,再び新しい評価のための参考資料作りが始まりました。特に改善点としては,「A 負担感や円滑に実施できていない点についての対応」として,効果的・効率的な評価の提案をすること。例えば,毎時4観点の評価を行うのではないことの事例の提示や,「思考・判断・表現」,「関心・意欲・態度」の評価事例を提示すること。そして,「B 各学校には評価規準を設定する役割があることを明確にすること。」そして,「C その他」に,特に高等学校では各学校,各教員が手にとり,観点別評価に取り組んでみようと思うような資料にすること。観点別評価の必要性やメリット,指導と評価の一体化について,分かりやすくコンパクトに解説すること。各教科科目の事例は細かくなり過ぎないように配慮し,観点別評価の大まかな流れを提示することといった点に配慮し,資料を作成しました。
 そして,高等学校の資料の本編では,まず「第1編の総説」は,資料Bの5ページ以降にもあるように,前回のような解説文ではなく,学校の先生方が手にとって読んでいただきやすいよう,やってみようと思っていただけるように,Q&A形式に整理して示しています。これによって,観点別評価を目標に準拠した評価として行う必要性や,メリットが伝わりやすくなるように工夫してあります。
 次は「第2編」ですが,ここからは「各教科における評価規準の作成,評価方法の工夫改善」について示されています。ここでは資料Bの23ページ以降に示しましたように,地理歴史科の例で御紹介しようと思います。まず,「第1章,教科目標,評価の観点及びその趣旨」は,指導要領と指導要録改善通知の内容を引用して作成してあります。
そして,「第2章」からは具体的な各科目の参考例が示されています。事例は資料Bの25ページから示されていますが,ここに示された「1 目標」は指導要領に示された目標です。「2 評価の観点の趣旨」は,指導要領通知,解説書を基に国立教育政策研究所で作成したものです。
 次の「4 学習指導要領の内容,内容のまとまりごとの評価規準に盛り込むべき事項及び評価規準の設定例」では,世界史Bの場合は,資料Bの26ページ以降にありますが,指導要領の大項目を内容のまとまりとして設定し,各大項目の指導要領の内容と,指導要録の改善通知,解説書を基にして,「評価規準に盛り込むべき事項」と,「評価規準の設定例」を示しました。前回の参考資料で「評価規準」,「評価規準の具体例」として示した部分を,評価規準に盛り込むべき事項などの表現にしたのは,各学校や教師が評価規準を設定する役割を担っていることを強調しようとする意図からです。
 そして,「評価規準の設定例」はあくまでも設定例としての例示であることを強調し,また,評価の観点ごとに大項目レベルでの評価を基本とし,観点によっては中項目レベルで示すという形式にしました。これは,前回の参考資料が中項目ごとに4つの観点の評価規準とその具体例を示したことで,観点による評価のスパンの違いが明確にならず,評価が煩雑なものと印象づけられたのとは異なる示し方になっています。
 その後には,「5 評価に関する事例」が示されます。資料Bの37ページ以降ですが,初めに評価事例の見方等を説明し,円滑な評価方法への改善を提案するものになっています。その後に,具体的な評価の事例が示されます。資料Bの39ページから御覧ください。この事例は,「ヨーロッパの拡大と大西洋世界」という中項目レベルでの単元設定となっており,単元の目標は学習指導要領から,評価規準は先ほどの国立教育政策研究所の参考資料で示した設定例を基に設定されています。
 そして,次には7時間ものの単元の指導の計画と評価の計画が示されています。各時間,どのような授業をし,どのような評価を行うかを示すことによって,評価場面の精選について視覚化し,無理のない評価の在り方を示そうとしています。
 さらに,評価に活用する事業用のワークシートの例も示し,日常の授業の延長線上で評価が行えることを例示しています。どの時間にどの観点を評価するかということと関連付けながら,ワークシートの構成を説明してあります。その後には,観点別評価の進め方や総括の仕方等の提案がなされ,観点別評価の方法,負担感の削減のための工夫,評定への総括方法などについて具体的に提案し,参考資料は締めくくられています。
 このような参考資料を作成したのですが,実際に平成20・21年版の学習指導要領の下での評価の状況はどうかということについては,昨年度の意識調査の結果が公表されています。まず,観点別評価の実施状況は,やはり「関心・意欲・態度」,「思考・判断・表現」,「技能」,「知識・理解」の順に課題を抱えており,そして高等学校が特に課題を抱えている様子が,このグラフからは読み取れます。
 また,観点別評価の実施の円滑さについては,小・中・高等学校ともに,平成21年の調査のときよりは状況はよくなってきていますが,まだまだ十分とは言えないのではないか。特に,高等学校はまだ横軸1目盛り分ぐらいの低調な実態が見えてきます。
 そして,高等学校についてもう少し細かく見てみると,高等学校では指導要録や通信簿への観点別学習状況評価の記録は,この後に御発表される岩手県のお取組などもあり,平成21年の調査よりは増えていますが,それでも1割余りの状況に留まっているという課題があります。
 最後に,国立教育政策研究所が作成する資料について,今私が考える課題を,思いつく程度ですが,挙げさせていただくとすると,まず,研修資料等での活用に留まらない国立教育政策研究所の参考資料の利用を広げていく工夫が必要なのではないかということ,日常的に使用される資料の在り方を考える必要があるのではないかということです。
 次に,観点別評価を効率よく実施するためには,年間指導計画を前提にした評価箇所の整理を提案するのがよいのではないかということです。こうすることで,教科・科目の年間指導を視野に入れて評価場面や方法を効率化,適正化できるのではないかと思います。
 そして,カリキュラム・マネジメントのPDCAサイクルにおいても,子供たちの資質,能力がどのように育成されているかをつかむことは欠かせませんから,目標に準拠した評価,観点別評価の適正な実施は大変重要になるという意識の醸成が必要なのではないかということです。
 以上で説明を終わります。失礼しました。
【市川主査】  どうもありがとうございました。
 それでは,次に中村指導主事からお願いいたします。
【中村先生】  皆さん,おはようございます。岩手県教育委員会の中村と申します。では,岩手県の取組事例について,発表いたします。
 まず,今日話す内容,あるいは取組の概要ということで,あらかじめ4点示しました。まず1点目ですが,平成29年度から観点別評価による成績通知を全県立高校で行っております。2番目は,そのために平成23年度からの取組ということになっております。3番目,スムーズに観点別学習状況の評価を行っていくために,各校に担当者として学習評価改善推進担当者というのを置きました。また,国立教育政策研究所の資料が非常に参考になったわけですけれども,その資料を基に,さらに岩手県版の学習評価の手引というのを作成して各校のサポートに当たったということです。4番目,事務的な処理をスムーズに行うために,全県立高校に校務支援システムを整備した。こういった内容をこの後,お話をいたします。
 導入の経緯ということになりますけれども,これはやはり国から示されている報告や通知に基づいて行ったということになります。これは,御存じの平成22年の報告,高校でも学習評価の一層の改善が求められるという報告,その下,22年の通知ですが,高校でも引き続き観点別学習状況の評価を実施しと,現実はなかなか厳しい状況があった。本県におきましても,やはりまず授業自体,いろいろな工夫をされている先生方もいたわけですけれども,どうしても講義中心のものが多かったということ。
 それから,評価につきましては,これも岩手県だけではないかと思うんですけれども,例えば期末考査を7割見て,いわゆる平常点というのを3割程度見ると。考査は知識,理解が中心の問題がほとんど,それから平常点につきましては,通常の授業で行っている小テストや学習課題の提出とか,学校によっては出席状況と,そういったものを加味しながら平常点をつけていったという状況がありました。
 それから,年間指導計画,シラバスにつきましては評価規準が明記されずに,いわゆる単元が並んで,進行表みたいな形で作られていたというような状況がありました。そこで,まずそもそもの始まりが,国からの通知等を受けまして,平成23年度の教務主任会議で観点別評価の成績通知を行いますということを,教務主任さん方に説明をいたしました。
 当然学校の先生方を動かすためには,校長先生方に御理解いただかなくてはいけないということで,平成24年の4月,当時の太田視学官から校長先生方に講演をしていただいたと。そして,平成24年の教務主任会議で,平成28年度から完全実施しますということを説明し,ここでは当然観点別評価というのはこういうことですよという説明もした。
 それから,岩手県として,こういった形で進めていきますという工程表を提示いたしました。この教務主任会議を受けまして,年度の後半では,この教務主任会議の資料を基に,各校で観点別評価の成績通知というのはこういうものですということの校内研修を行いました。
 明けて平成25年度,ここでもまず県立学校長会議で向後教科調査官から校長先生方に講演をいただき,校長先生方の理解を深めていただく。それから,5月に教科別学習評価説明会ということで,各教科ごとに観点別評価の説明を行いました。ここでも国立教育政策研究所の資料を基に説明を行いました。私自身のことになりますが,平成25年の4月から今の職に就きましたので,非常に辛かった。3月までは学校現場にいて,それは何なんだというふうな状況でいたのが,いきなりこの説明会を誰がやるんですかと言ったら,理科についてはおまえだということになりまして,それで,毎日,毎日,国立教育政策研究所の資料を開かない日はない,そういう状況で資料を作成いたしました。
 2時間半程度の説明があったんですが,後半1時間はずっと先生方からの質問責めに遭うという不安も大きかった,そんな状況がありました。この5月の教科別の説明会を経て,さらに各校においては,7月までのところで教科別の研修会を行ってくださいということで,各学校でも理解を深めていただいております。
 そして,あと並行して事務処理をスムーズに進めるための校務支援システムを導入しようということになりました。ただ,これ全県統一したシステムになりますので,各学校がより使いやすい状況にするために,各学校の意見を聞かなくてはいけない。そうしますと,普通高校,専門高校,総合学科高校,それから各教科においても,こういったのがいいんだということを御意見を頂くために,5月28日から校務支援システムの検討委員会ということで,各学校,それから総合教育センターの先生方,10名ほどの委員でより良いシステムについてどうしたらいいかということについて,検討を行いました。12月までに7回行っております。
 それで7月1日に県教委から通知を出しました。ここではっきりと文書で平成28年度から観点別評価による成績通知を行いますということで,通知を行っております。それは参考資料の1としてお示ししております。文書としては,これと,添付したのは年間指導計画,こういった参考様式ということで示しました。各校任意でいいんだけれども,評価規準についてはちゃんと入れてくださいと。
 それから,10月に岩手県版の学習評価の手引を出しますというふうなこと。そして,最後に,改めて平成28年度までの工程表を示したというのが,参考資料として付けておりますので,後ほど御確認をお願いしたいと思います。
 続いて,8月現状に学習評価改善推進担当者会議というのを開きまして,ここで改めて観点別評価について各校での取組について状況の確認等を行っております。これにつきましては,平成27年度まで年に1回,3回実施しております。
 その下,当初10月の予定で,やっぱりなかなか作るのも進まずに,結局発行は11月になりましたが,岩手県版を発行しました。基本は国立教育政策研究所の資料が基になっております。私自身が作るときに,先生方は何が一番大変なのかなということを考えたときに,評価規準の設定が非常に大変なのかなと。恐らく授業に入る前に評価規準を考えておくだけで1時間,2時間たってしまいそうな,私自身そんなイメージがありましたので,国立教育政策研究所で具体的な事例がせっかくありましたので,国立教育政策研究所のこの具体的な事例のこの文言は,学習指導要領や,あるいはその解説のここの部分を見ると,こういう表現がありますよと。
 あるいは,共通して基となる表現というのがあると思いますので,単元によって違う表現,単元でも違う表現,そういったところを明示して,先生方がいずれ評価規準を作りやすいように,そういうふうな解説,手を入れて国立教育政策研究所の資料からさらに解説を加えたのがそういった部分です。
 あと,評価の参考例とかも,自分がしゃべるんだったらこんな感じかなということで,国立教育政策研究所の資料を参考に作ったということになっております。特に,私,理科の担当をしているんですが,一応物理が専攻ではあるんですが,必ずしも物理だけではない。生物も,科学も。特に岩手県は今,小規模校が進んでいますので,理科の先生が各校に1人,2人しかいないとかいったときに,本当にこの評価規準の作成は,自分の専門教科でないものを作るのは非常に負担かなと思って,なるべく作りやすいようにという視点で作りました。
 それから,あとは年度末,教務主任会議ということで,ここでは評価の総括方法ここも具体的なものは後でお示しいたしますが,こういった形で評価を行いますということを提示しました。
 それ以降,その下に書いていますが,教務主任会議や学習評価改善推進担当者会議では,年度ごと大体2校ずつ,観点別評価通知の取組,授業改善の取組の事例というのを発表していただき,各校の参考としたものです。
 そして,平成27年11月9日に,これは参考資料の2になりますが,これは神奈川県のものを参考にはしたんですけれども,いよいよ28年度から成績通知を行うということで,保護者宛て,こんな形で文書を出してくださいということを例示いたしました。
 あと,平成27年11月に手引の改訂版,これは評価の総括方法と,それから総合的な学習の時間についてまだなかったので,これについて追加して発行した。先ほど,ずっと平成28年度の完全実施ということで話をしていましたが,冒頭に話をしましたとおり,結局は29年度の完全実施となりました。2月に,実は平成28年度は岩手国体が開催される年でもあり,先生方の動員もあって非常に多忙であったということもあります。
 それから,校務支援システムの使い勝手がなかなか浸透しないということもありました。あと,やっぱり23年度から段階を踏んで準備はしてきているんですが,なかなか実施間際になると,観点別評価はちょっとという躊躇するような声もあり,では,1年間掛けてさらにより良いものにできるようであればと。29年度とすることも可とするということで,どうぞ,28年度から実施しても差し支えないですし,それ以前に実施している学校もございましたが,結果として29年度から実施した全日制高校の数ですが,これは27校。それ以外は28年度までに実施を行ったということになっております。
 こんな形で各学校に我々は話をしていますということで,余り真新しいものはないんですが,まずは観点別評価に当たっては,1番目,信頼性,妥当性を高めてください。まずここが一番ですという話はしております。学習目標,評価規準と評価を適切に対応させてください。多様な方法で適切に評価してください。あとは,どうしても先生方がとらわれるのは客観性というところですので,これに対する不安というのはとても大きいです。客観性にとらわれ過ぎないでください。あとは,教科の特性,生徒の実際に配慮してくださいということ。
 それから,2番目として,指導と評価の一体化ということです。先生方は,でも,無意識のうちに,やはり評価することで自分の授業改善につなげているところも正直あったかと思います。ただ,そこを改めて意識を持って自分の授業改善に生かすという位置付けの評価を考えてくださいということで,話はいたしました。
 それから,3番目として,4つの観点があるわけですが,どうしても先生方は知識・理解のところを重く見たいというところもございますけれども,これは年間を通じてバランスよくということでお話ししました。具体的に数値は示しませんでした。ここが先生方も不安なところで,いずれ何%までいいんですか,バランスよく見てくださいと,こういったやりとりをずっとやってきております。
 いずれ,評価をすることが一番ではなくて,授業を変えていくということが趣旨ですので,そこは先生方に御理解いただいて,いずれバランスよく見るということは,4つの観点をバランスよく評価できる授業をすることなんですという説明はいたしました。当然,各学期ごとにでこぼこはあってもいいですし,年間を通じて全部が全部4分の1でなくても,それはいいんですよという話はしております。
 それから,どうしても高等学校の場合は評定の前に評点というのを付けています。点数が付いていました。どうしてもそこから脱却するのがなかなか難しいと。従来の評価からスムーズに移行するためにも,ここは4観点を点数化したものを最後にまた合わせるという形で,岩手県では行っております。
 あと,5番目として,これも従来ですと期末考査を大きく見たいというのがあるんですが,期末考査とそれ以外,要するに日常の授業等での見取りを適切に。とにかく,なるべくバランスよく見てくださいよという話で,下に書いてありますとおり,期末考査のみの評価はできません,駄目ですという話でしております。
 評価の総括方法ですが,文部科学省からの通知は,右側の評点については,1,2,3,4,5,のここについては書かれているんですが,観点別評価のA,B,Cの段階は特に高等学校については示されていません。中学校ではこういうふうに示されていますので,県といたしましても,それをそのまま観点別評価もこういうふうに見ます。そうしたときに,観点別評価のAの下限と評定の4の下限が表現上一致するだろうと。それから,Bの下限と3の下限が一致するだろうと。この一致というのは,要するに先ほど話をした点数化としたときに,点数の下限をどこに持ってくるかということの設定ということになります。
 その下,書いてありますとおり,Aの下限と5段階評定の4の下限が一致するような点数設定ということで実施しております。こうすると,BBBBは必ず評定3になるということです。状況を踏まえて,5の下限と2の下限は各学校で適切に設定してくださいという話をしております。
 それで,今実際に各校ではこんな形で行っているんですが,まず初めに,各観点の重み付け,どれぐらいの割合で見るかということを決めます。ここでは全部,本当にバランスよくということで見ていますが,若干重み付けが変わっても,そこは差し支えないという話をしております。そうすると,この重み付けに応じて,今度は考査と考査以外をどれぐらいの割合で見るのかということを見ます。
 そうすると,右側の考査のところは,関心・意欲・態度はなかなか難しいので,そこはゼロですが,残りの3観点については考査で10,15,15の割合で見る。これらは当然,期末考査100点満点で行ったとすると,その中で3つの観点に分けられていますから,その中の点数が10,15,15の割合に圧縮されて,そこで点数化されるということになります。
 それから,右側の考査以外のところにつきましては,さらにこういった日頃の授業の中の小テストや単元テストとか,そういったものをそれぞれ観点に応じて評価して,ここの25,15,10,10といった割合に圧縮して評価する。これらを合わせて,学期,あるいは学年末の評価とするということにしております。
 当然全てが全て点数化されるわけではなくて,途中はA,B,Cの段階でレポートとかを評価する場合もあるんですが,これは適宜適切に学校で評価,点数化していただくということでやっています。
 それから,例えばということで,先ほど点数化の例ということで,5段階評定を100点の割合で,こういった形で設定していくとすると,4が65点以上ということになりますので,Aの下限はその評価の65%以上,Bの下限は45%以上,こういった設定になりますということで話はしております。
 あと,そういったことで,それらを学期ごとにまとめて評価が行われることになります。これは通知表の一部を持ってくるような形になりますけれども,実際の通知表の様式につきましては資料3ということで示しております。資料3,2枚ありますが,最初のもの,これが成績通知表ということで,観点のA,B,Cの段階の評価と,評点並びに評定が示されているということになっています。これは,必ず各校で保護者宛て通知するものということです。
 もう一枚ありますが,観点別学習評価の記録というもの,これは補助資料ということで,具体的に先ほど点数化で行っているということで話をしておりますので,具体的に何でこれ,Aなのは,この観点は何点という評価だったからAとなっていますということが説明できるような形。各観点はその基となる点数がありますので,これに基づいて説明をしているということです。
 このスライドで示しているのは,重み付けが25と,4分の1ずつ全部割合をバランスよく見た場合にこういったのもありますし,中には年間通じて若干4つの観点がちょっと違う重み付けにはなっていますが,大体バランスよくは付いている。こういったこともありますよというふうなことで,学校にはお示ししているところです。
 成果ということで,評価を付けることが目的ではなくて,授業改善が目標ですので,授業改善は確かに進んでいるなと,そのように感じております。それから,生徒の自己理解,あるいは生徒は今まで期末考査に集中すればいいだろうという意識もあったんですが,毎日の授業の取組についても向上しているというところがあります。
 ただ,一方で,先生方に言わせると,期末考査を軽んじられないかという不安を持っている先生方もいるようです。ただ,やはり毎日の授業にしっかり取り組むということが大切ではないかなと思っております。
 課題です。まず1番目のぽつですが,4観点作業をすることになります。そのために校務支援システムを導入しているわけですが,各学校にはいろいろな事情があって,それが必ずしも使い勝手がよくないという部分もあり,今年度改修することになりました。そういったこともあって,非常に煩雑になったという声が聞かれました。
 また,今多忙化解消ということが言われていますが,実に多くの仕事がやはりある。岩手県ですと,課外授業とか,当然ほかの学校もそうですが,部活動,土曜,日曜もやはりなかなかそういったことでということで,非常に評価自体,授業を考えること自体,先生方は喜んでやるわけですけれども,ほかの仕事の関連もあって多忙にはなっているなと。
 それから,その次,4観点をバランスよく評価するために,評価機会の増加ということです。観点の重み付けに応じて,何を言いたいかというと,関心・意欲・態度,その下に書いていますが,そこを評価するときに,どういった材料で評価するかというのがまだ手探りの状態ということ。それと,やはり回数はある程度限定してはいいんですが,少な過ぎても,本当に保護者に説明できるのかといった不安もあって,やはりどうしても回数は増えてしまうというのが,先生方の傾向があります。何で評価するかということと,それから25%を評価するために,評価を持ってくるというところも,現実はあるような話です。
 3番目,関心・意欲・態度ということで,先ほども客観性,妥当性,信頼性が一番ですという話をするにしても,なかなか客観的に表れないものについては,非常に困難だということ。当然,先生方の指導改善に生かすためには,行動観察というものは非常にいいんですが,これで成績付けのための評価をしようとするのは,やはり困難はある。そうすると,やはりなかなか評価材料も限られてしまうのだなという話があります。
 あとは,これは観点別評価に限らずですが,なかなか全教員への理解が大分浸透はしてきているんですが,中にはやっぱりなかなか理解していただけないというところもあります。若い先生方は非常にアクティブに取り組んではいるんですが,どうしても今までの経験から出し切れないという先生方もいるのも事実だということ。
 あと,これは不登校生徒や特別な支援,数が少ない例の話で大変恐縮なんですけれども,先日も運動ができない子の体育の評価はどうしたらいいのかという問い合わせがありました。
 あとは,点数化している関係で,当然理論上はAAAAで4となるところもあるわけですが,中学校までで観点別評価で,AAAAでまず4になる現状はないというお話を伺っていました。そうすると,これで4となったときに説明はするわけですが,感情的にどうなんだという話もあると。
 あとは,どうしても点数化のところに話が行っちゃうんですが,そもそも点数というのは付ける必要があるかどうかという議論はあるとは思います。点数化したときに,学校の内規で平均点を何点と設定するということはどうしても出てくるわけですが,果たしてそれは本当に妥当なのかといったところが絶えず議論にはなっております。大学入試で推薦書に順位を出さなくてはいけないという例もあって,どうしてもやっぱり点数化が必要だという声もあります。
 一方で,昨日新任教務主任さんの研修があったんですが,そこでは思い切って順位付けはやめましたという学校の例も出てきて,前例にとらわれない,本当に観点別評価の趣旨を理解しながら取り組んでいこうとする学校も見られてきているということです。
 以上でございます。どうもありがとうございました。
【市川主査】  どうもありがとうございました。
 それでは,続きまして,松尾委員の方から御発表をお願いいたします。
【松尾委員】  失礼いたします。松尾でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは,時間も限られているようですので,簡潔にお話をさせていただきたいと思っています。これまで,それぞれの各委員の先生方から,学習評価の在り方について様々な視点からの御発言があって,私にとっても非常に勉強になりました。評価の考え方,それから理念,そして実際にそれを学校現場で行っていらっしゃる指定校なり,先進校の校長先生の御発表もあり,本当に参考になりました。
 しかしながら,これまでのこのワーキンググループに参加させていただいて,ずっと私の心に引っかかっているのは,そういう学校ではない,多くの大半の学校は,この理念とか考え方は分かってはいても,実際にそれをどのようにして実践していくのか,そして,それをどのように実践できるように示していくのかという話をこの場でしていかないと,そのことまでを踏まえながらしていかないと,なかなか定着をしないのではないかと思っています。
 それで,まず私が今日ここで述べたいことは,今言いました論点1です。今日,国立教育政策研究所の二井先生とか,それから岩手県教育委員会の方から,具体的な学校現場の先生たちに本当に参考になるような御発表がありましたけれども,そういうことをもう少しじっくりと考えていくことも必要ではないかなと,私は考えました。
 今日発表するに当たって,添付資料として,今年度の福岡県の学力検査の問題の一部を提出させていただいております。その提出していただいた教育委員会の現場にいた指導主事からいろいろな意見を聞きました。是非この場で,学校の現場でどういう声があるかということを伝えてほしいということで,そういう観点からお話をさせていただきたいと思っています。これが私の論点の一番目でございます。
 それから,論点の2です。今,学習指導要領が改訂されていて,本当に世の中のパラダイムが大きく転換しています。それで,今こそ学習評価,授業改善をするということは随分浸透してきましたので,その評価をどういうふうに変えていくか。これが今,最後のチャンスではないかと考えています。このことについては,学校だけでは到底無理ですので,文部科学省,それから保護者も巻き込んでしなければ,なかなか学校だけの努力では進んでいかないのではないかということを考えております。
 続いて,これは当たり前のことなんですけれども,まずは授業が改善されなければ,3観点別の学習状況の評価ということは進められないということで,授業改善のことも実際に評価の前に十分に行わなければならないと考えています。
 それと,論点の4としては,先ほどの岩手県の御発表にもありましたけれども,やはり学習評価それ自体が目的化してしまったらいけないと思っています。それを生み出さないために,じゃ,どのようにしたらいいかということを考える必要があるということで,論点4とさせていただきました。
 そして,論点の5でございます。これも当然のことではありますが,授業改善,それから学習評価,指導要録,調査書,これは一連一体のもので,それが最後には児童生徒一人一人の学びの履歴,ポートフォリオが完成するということでございます。
 それでは,もう少し今の論点のことについて詳しく述べたいと思っています。まず論点1でございます。現状は,そこに書いてありますように,それぞれ小・中・高,このことについては以前,髙木委員でございましたか,同じようなことをおっしゃられていたと思いますけれども。小学校ではこのように教科書準拠の業者テスト,中学校の方は,各教師が作成したテスト問題を中心に評価しているけれども,ただし,これも教師の個人差が非常に大きいということでございます。高校に至っては,先ほどの調査結果にもありましたように,なかなか現在の4観点を意識した評価は浸透していないというのが,御承知のとおりの現状でございます。
 それで,あともう一つは,現在,退職者が大幅に出て,大量採用の時代に入っていて,若年教員とか講師の増加があり,このような力量のある教員が減っていることで,さらにこの状況が悪化しているという現状もございます。
 それで,解決の方法としてつらつらと考えるに当たっては,まずはこの3観点別学習状況の評価の在り方について,何度でもしつこいぐらいに説明を徹底していくしかないと。それと,もう一つは,これは先ほどから発表いただいている国立教育政策研究所の方でのマニュアル作り,こういうものも併せながら,そういうサポート体制を作っていくことも肝要かと思っています。
 続きまして,論点2の方でございます。パラダイムを転換するという話でございますが,とにかくこの評価に対しては教師,生徒,保護者,関係者の全てが,考え方が固定化してしまって,なかなか改まらないというのが現状でございます。特に保護者については,なかなかこれを払拭できないのが現状ではないかと思っています。これを根本から,いや,そうではないんだと,今後の社会を見据えると,今ここで日本の教育を変えていかねばならないんだという強いメッセージを発することしかないと思っています。
 それで,先ほどから細かい評価になると,どうしても,どうしてそうなるのかとなって,今,知識,技能とか,思考力・判断力・表現力,それから,学びに向かう力とか,そういうものを評価にするといったときに,それぞれが個別に分けられたものではなくて,やはりそれぞれが絡み合っているし,それから,短期的なものでもなく,長期的に見ていかなくてはいけない。それこそ科目横断で,年次もスパイラル的に身に付くような,そういうのが学力ではないかと思っています。
 そう考えると,余りに緻密にし過ぎてしまうと,それはなかなか説明がつかない,そして納得も得られないのではないかと考えています。では,どうしたらいいかということは,解決策としてはなかなか難しいんですけれども,5段階評定とか評点,それについてどのように考えて,もう少し大胆に見直してもいいのではないかと考えます。
 それから,授業のことについて,先ほどアクティブ・ラーニングの手法のことがずっと出て,それを入れないと,思考力・判断力・表現力とか,評価できないという話なんですけれども,最初いろいろなアクティブ・ラーニングの話が出てきたときに,反転学習とか,協働学習とか,グループワーク,ペアワークとか,そういういろいろないわゆる手法について非常にスポットが当たっていたようで,ICTを駆使して若い先生がいろいろ取り組んでいただいたりはしたと思います。
 しかしながら,ずっと時間がたって,いろいろな先生方の授業を見ていくと,やはり授業の王道である,まず発問の工夫とか,良質な資料提供,それからどういうテスト問題を出すかということで,非常に多くのものがこのアクティブ・ラーニングだけに頼らず,本当はできていなのではないか。まずは,これが必要なのではないかということを感じるようになりました。
 これは,研修会で学ぶことも多いんですけれども,やはり日頃の職員室での,同じ学年,同じ教材を扱っている先生方が日頃に意見交換をしながら,より良いものに高めていくという,そういう教員にとっての時間というものが非常に必要になっているのではないかと感じております。
 しかしながら,多忙化ということで,今の職員室でそういう話がなかなか行われていないというのが実情で,保護者の対応,生徒の対応,それからいろいろな書類の提出について忙しくしているようで,本来的な教員のそういう大切な時間というのがなかなかとれていなくて,それはとても残念なことであり,課題ではないかと考えています。
 それから,このことについて,問題のことなんですけれども,試験問題というのは出題の仕方によっては,単なる知識の暗記を問うものではなくて,先ほどから申し上げているような思考力・判断力・表現力を問う問題にできるというふうに考えています。力量のある先生が良い質問をすることによって,一斉授業ではあるんだけれども,児童生徒は主体的,対話的で深い学びをすることにつながっていると。
 それから,ICTを使った授業を最初に取り入れるのはどちらかというと若い先生方ですけれども,長く見ていくと,年配の先生もICTの操作に慣れてくると,結果的に良い授業になっているのは,そういう本来の授業の王道がきちんとできている先生方の方がより深い学びに到達しているような印象を受けるということが,私のいろいろな授業を見たときの感想でございます。
 それから,生徒が知的な刺激を受ければ,それは主体的な学びに自然となっていくわけです。試験問題が変われば授業の受け方も変わりますし,ただ写すだけのノートも,自らが創っていくノートに変わると考えることができるのではないでしょうか。ですから,いろいろなマニュアルとかを作っていただく上では,そういうことももう一度,原点に立ち返って説明をしていただくような,そういう資料になるといいのではないかと思っています。
 そうすれば,先生方も今までの授業を,自分のやり方を全て否定されるとか,変えるとかいうことではなくて,少しプラスアルファをしていけば,さらにすばらしい授業になるということを実感して,取組やすいものになるのではないかと考えています。
 それから,先ほど申し上げましたように,次の論点4でございますけれども,余り緻密にするということは結局は自分たちの首を絞めますし,評価のための評価になると思っています。もちろん,保護者とか生徒への説明責任,どういうふうに納得を得られるかというのは非常に課題ではございますけれども,そもそも教員にとって授業改善,それから評価というのは永遠の課題であり,これがベストだということはないわけで,そのことも理解していただきながら。
 それをどう理解するかというのは,先ほどから申し上げているように,学校だけに任せるのはとても無理で,やはり全体でやっていかねばならないと思っていますし,何とかそのことが浸透するように,御努力をいろいろな機関にしていただければと思っています。
 論点5については先ほど申し上げましたので,少し飛ばしていきます。
 それと,まとめとして提言と書いてありますが,まとめでございます。提言1は,先ほどから言っておりますように,具体的な評価の仕方を示して,それが学校現場にきちんと浸透するような手だての検討。提言2については,教師,生徒,保護者等のパラダイム転換を図るために,大々的なキャンペーン等を展開していただきたいと。
 文部科学省の方がいろいろお話しされるのは学校とか,教育関係者が大半だと思いますけれども,例えばPTAとかのいろいろ集まりがございますが,本来は,その辺にこういうお話をされてはどうかなと思います。学校のPTA総会でも,そういう話を一言挨拶の中に入れたいと思っても,実際に総会に来られる方々は非常に少ないですし,クラス懇談会があったとしても,それはなかなか浸透しないので,国としてそういうことも考えていただければありがたいと思います。
 それから,次の提言3は当たり前のことですので,これも飛ばします。それから,4も当然のことですので,後から見てください。
 提言の5でございます。高校にとっては,特に大学入学者選抜というのは非常に大きなもので,学力の3要素ということがきちんと評価されている調査書の内容を,大学がきちんと理解した上で選抜が行われるということが非常に重要だと思っています。学習評価について,大学と高校が共通理解を持って選抜を実施することで,高校での学びの質がさらに高まると考えています。
 個別の入学者選抜の改革と連動して,大学の認証評価制度においても,評価項目の中に取り上げていただいているようですが,それを評価したいと思いますし,さらに今後ともそれを徹底し,推進していただければ,高校現場としてもさらにこの改革が進んでいくのではないかと思っています。
 それと,一応ここで,提言5で終わりでございますが,配付資料として,今年度の福岡県の学力検査の問題の抜粋を付けさせてもらっています。簡単にかいつまんで説明をしたいと思います。ちょっと見づらくて申し訳ないんですけれども,問題番号に黄色いマーカーが付いたところがあるのではないかと思いますが,そこについて少しコメントをさせていただきたいと思います。
 まず,福岡県では最初からこのような形式になっていたわけではなくて,紙面もこのような冊子形式にしたのは4年前でございます。それはなぜかというと,全国学力・学習状況調査のB問題のような問題にするためには,どうしても紙面が必要であるということで冊子化を図り,そして社会との関わりとか,探究活動を意識した出題とか,複数の資料を読み取って情報を統合,考察する力の重視とか,解答形式の多様化を図るためには,どうしても紙面が必要ということで,このような形に変えました。
 そして,今年度の入試に当たっては,大量の資料を読んだりする。福岡県は,どちらかというと他県に比べて文字量も少なかったんですけれども,それを可能にするために検査解答時間も5分増やしたということがあります。
 それでは,具体的に最初の英語です。マーカーを付けています大問の4は,与えられた目的とか,場面,状況において,自分の答えとその理由を考えて,それが読み手に正しく伝わるように書く力を問う問題ということで出しています。これは,授業中のコミュニケーション活動の場面を設定して,目的や場面,状況等に応じて一貫性のある,まとまりのある英文を書かせるように工夫した出題でございます。
 続きまして,国語の方に行きます。国語も大問の5になります。伝えたいことが効果的に伝わるように表現を工夫して書く力とか,伝えたい事実や事柄について,自分の考えの根拠を明確に表現する力を問う問題ということでございます。生徒会活動という,生徒にはなじみの深い活動の取組とインタビューの内容からキャッチフレーズを考えて,それを3つ目の資料として発表原稿を作らせるような工夫をしてございます。
 続きまして,社会でございます。大問の6,問1,問2でございますが,ここでは社会的事象の要因を説明する力とか,習得した知識や概念を使って社会問題を解決するための方策を構想する力を問う問題で,資料やグラフ,会話文等を多く用いて思考力・判断力・表現力等を駆使するように工夫した問題になってございます。
 続きまして,数学です。数学は大問3の(2)になります。判断の根拠を表現し,説明する力を問う問題で,読んだ本の冊数に関する資料を基にした会話文を読む中で,資料の特徴について考えさせるように工夫しています。
 次に理科に行きます。大問5の問3,問4のあたりです。地学的な現象を適切に説明できる力,地層のでき方を考察し,重なり方などの規則性を見出すことができる力を問う問題で,レポートの観察記録を基に対話活動を通して分析,解釈させるような設定となっている,そのような問題。こういうふうな問題を今年度出しています。
 まだ県としての分析については資料をもらっておりませんけれども,先日,塾の先生と話をしているときにこのように言われていました。例えば,これまで何々の値を求めなさいというような問題ならば間違いなく解答できていた生徒が,今年度の入試においては,会話文を読んで,理解して,答えを導く形式の問題になったら,正解を導き出せない生徒がちらほら出てきたんだと。それを塾としても感じているということを話していただきました。
 ということは,日頃の会話の中でも,もしかすると子供たちは正しく文脈を理解できていない状況がある。そして,正解を導くことができなかったというのは,会話のやりとりから読み取らなくてはいけない情報を正しくキャッチすることができなかったとか,心情を読み取るとか,そういうことができていないのではないかと考えることができます。
 ということは,先ほどから,ペーパーテストでも知識,技能以外の思考力とか,コミュニケーション能力とかが,一部ではございますけれども,測れるのではないかと考えてもいいのではないかなと,そういうお話をさせていただいたときに感じた次第です。
 以上で終わらせていただきますが,私の発表というよりは,問題提起をして,ここで皆さんにいろいろな知恵を出していただければありがたいなということで,時間を頂きました。どうもありがとうございました。
【市川主査】  どうもありがとうございました。
 それでは,最後に清水委員からお願いいたします。
【清水委員】  埼玉県の川越工業高校の清水と申します。どうぞよろしくお願いします。
 私はおおよそ5分ぐらいと伺っておりますので,要点のみ発表をさせていただきますので,しばらく時間を頂きたいと思います。着座にて失礼いたします。
 工業高校について,皆様におかれましては,どのような学習活動を行っているのかというのが,なかなか御理解いただけていないのかなということもあります。資料の1ページを御覧いただきますと工業科の目標,高等学校学習指導要領では,基礎的・基本的な知識,技術の習得から始まりまして,創造的な能力と実践的な態度ということで,教科の目標が明記してあり,日々の学習活動を進めております。内容につきましては,資料をお読みいただければと思います。
 次の資料の中には,この工業科の学習を進める中で,大きなものが2つございます。1つは,「工業技術基礎」という科目。これは,工業科には様々な学科がありますけれども,全ての学科で原則として学ばせなければならない科目ということでございます。あと,「課題研究」,これは,多くの場合,普通科における総合的な学習の時間の代替科目となっており,この2科目につきましては,工業に関する各学科においては,原則として全ての生徒が必ず履修するというものであります。
 特徴的なのが,工業科の科目,いわゆる実習科目,座学科目を含めて,総授業時数の10分の5以上は実験・実習に配当することになっているということで,多くの実験・実習が行われる指導計画になっています。
 今日は,この中で「工業技術基礎」という科目につきまして,ある単元にポイントを絞ってお話をさせていただきます。この「工業技術基礎」の科目の目標といたしましては,技術への興味・関心,工業の意義や役割を理解,工業の発展を図る意欲的な態度,こういったものを育成していきましょうということであります。
 その中で基礎的な加工技術,形態を変化させる加工という内容について,本校の授業での実践を御説明させていただきます。この「工業技術基礎」,本校の例ということになりますので,全ての学校がこのようにやっているということではないことを,あらかじめお断りしておきます。本校には,5つの学科が設置されている学校ですが,その中の建築科を例に説明させていただきます。
 「工業技術基礎」の授業がスタートする前,授業に入る前,授業に臨む心得を明らかにしようということで,必ずこういったことを生徒に伝えているということでありました。生徒に伝えている言葉そのものをここに書かせていただいておりまして,全部で3つの臨む心得を挙げています。1つ目が安全を第一に考えて作業をするということ,2つ目が,ものづくりというものに対しては,必ず作った物の先には人がいるんだということを意識しながら,誠意を持って丁寧に物を作っていくということ。
 3つ目がグループで作業をするところが多くとありますけれども,社会に出て働くようになると,一人で何かを作って終わるということはあり得ないということから,必ずグループで話し合い,協力しながら作業を進めること,この辺が大きなポイントということで進めさせていただいております。こういったものを授業の一番初めのときに示して,その後に,各単元に入るごとに,単元の目標を必ず伝えてからスタートします。
 この目標に当たるところで,今言葉では一般的になってきましたけれども,この単元を通して何ができるようになるのかということ。ここでは,腰掛け蟻継ぎという,木材加工の1つの例をお示ししてありますけれども,こういった木材加工を通して,何ができるようになるのか,そして,何を学ぶのかということを単元の始まる前に話をするということで,ある意味,ここで目標設定をしっかりさせるということになります。
 ただし,先ほどお示しした写真は,雄木と雌木が分かれた状態の写真を示してありますけれども,今日は説明ということでこれを使っておりますが,実際に生徒に示すのは,つながった状態のものを示すことの方が多いようにしていると,担当者が申しておりました。それにつきましてはこの後,説明をいたします。こういった目標設定をまず明確にして,これがそのまま評価につながっていくわけなんですけれども,これを作業するに当たって,どのように評価するのかということも,この段階で述べております。
 次のページを見ていただきますと,例えば関心・意欲・態度については,正確で効率的な作業を目指しているかどうか,安全を意識しながら作業しているかどうか。「思考・判断・表現」では,対話・協力しながら創造的な作業をしているかどうか,課題を適切に判断し,誠意ある丁寧な作品になっているかどうか。このようなことを授業の冒頭で,こういった面を評価しますよということを,生徒には明らかにするようにしているということであります。
 特に思考・判断・表現については,ここには対話・協力しながらというキーワードが入っています。先ほどなぜこの写真が分かれた状態ではなくて,つながっている状態を生徒にまず示しますということを申し上げたかというと,作り方,やり方を全部説明してしまうと,生徒は作業だけして終わるという授業になってしまいます。そうならないためにも,つながった状態を示して,これは実際どうなっているんだろうということを考えるようにします。生徒は相談をしながら,考えながら,自分はどのように作業を進めていけばいいのかということを考えるために,思考・判断・表現の観点で,対話,協力ということが学習状況の観察から判断できるだろうという,ある意味,課題というか,発問と実際の評価を工夫しながら,生徒が自然に対話ができるように工夫して指導することも実践しているということであります。
 今申し上げている内容については,木工という題材の,先ほど申し上げたこの腰掛け蟻継ぎというものでありますけれども,工業科の特徴といたしましては,安全性と施設・設備の観点から,1クラス40名を大まかですけれども,大体10名ずつ,1グループ10人という人数での授業もあります。その10人がさらに2人とか,3人とかのグループになって作業することもありますけれども,この場合,ここで書いてあります何を評価するのかにおいて,一人一人の学習活動を細かく観察し見取ることができます。
 10名であるがゆえに,安全面のこと,生徒の動き,生徒の発話,どんなことを意見交換しながら進めているのかということがしっかり見取れるということになります。
 また,知識・理解では,こういった実習系の科目であることの確認プリントをやったり,あとはレポートというものを受け取ることになります。レポートを受け取る際には,そのレポートの中について担当教師の質問に生徒は答え,そういったやりとりをして初めてレポートを受け取るということで授業が進んでいるということになります。こういった,やるべき内容と,何を評価するのかということも最初にしっかり説明をして,授業に入っていくということを,やっているようにしています。
 最後にということなんですけれども,評価を行うに当たって,先ほどからも話が出ておりますけれども,評価の目的そのものは,やはり教師の授業改善であるということ,生徒の自己理解であるということ,そこにより結び付けられるようにしていきたいと考えております。生徒にどのような力が身に付いたのか,生徒の学びに向かう力がしっかりと高まったかどうか,意欲が高まったかどうかを,しっかりと実習などを通しながら確認をしていくということになります。
評価については,観点ごとA,B,Cに評価をいたしますが,全員がB以上となるような評価になるように指導しております。教師の指導の仕方,支援の仕方が悪ければCが付くこともあるんだということで,検証しながら,Cになるような生徒がいないような授業をどのように作り上げていくのかということで,授業改善に結び付けていくことを考えております。  
ポイントとして,資料には書いておりませんが,教師に言うことにつきましては,こういうキーワードがあります。「教え過ぎるな」ということを常に言っています。例えば,先ほどの腰掛け蟻継ぎの加工についても,指導者として全て教えてしまって加工させる。これは,それで良い製品ができるかもしれませんが,対話が生まれなかったりとか,考える時間が全然与えられなかったりということに,つながってしまいます。教え過ぎないで生徒を支援するということを考えながら,授業を一つ一つ計画するようにということであります。
 雑駁な説明でありましたけれども,以上とさせていただきます。どうもありがとうございました。
【市川主査】  どうもありがとうございました。それでは,それぞれの御発表に関しての御質問,御意見などを是非お出しいただきたいと思います。いつものように名札を立てていただきたいと思いますが,いかがでしょうか。
 すみません,ちょっと私,名前がよく見えないことがあるので,発言の前に一言,何々ですと言っていただけると助かるんですが。
【石井委員】  それでは,失礼します。京都大学の石井と申します。この間,初回は参加させていただいたんですけれども,その後,なかなか日程が合わず,久しぶりの参加ということになるわけですが。
 今日のこの御発表,それぞれ興味深く聞かせていただきました。それを受けて,この間の議論に関しても,関連するところで2点,考えたことを述べさせていただければと思います。
 まず1つは,この評価,評価と言った場合に,それは形成的評価のことを言っているのか,総括的評価のことを言っているのかということを,それは明確にしておく必要があるのではないかなところです。例えばこの間の審議というか,議論のまとめを見ていても,特に主体的に学習に取り組む態度の評価,これは形成的評価について言っているのか,総括的評価について言っているのか,ここをちゃんと腑分けして議論しておかないと,かなり混乱の元になるのではないかなと思いました。
 そう思うと,現在の観点別評価,それを促進するための評価資料を県が作成しているものですけれども,これは,例えば資料の17ページあたりに指導と評価の計画といったものも載せていただいています。これは形成的評価の計画というふうに考えれば,確かにこういうことはあってもいいのかなと思いますけれども,これを全て評定につなげるような総括的評価の計画というふうに考えてしまうと,評価はどんどん煩雑なものになっていて,指導と評価の名の下に指導の評価化というか,評定化みたいなことにならないかどうかということを,すごく危惧するところです。
 むしろ形成的評価というのを通じて,この授業の中で4観点と言ったものを,ある種目標のような形で意識することによって,豊かな授業を作っていく。でも,その先に最終的に,例えば単元末であるとか,中間と期末の評定につながるような部分がどうなされていくかということで言うと,ペーパーテスト。特に断片的な知識を問うようなペーパーテストでなされているとすれば,目標と指導と評価の一貫性は全然確保されていないわけです。
 だから,授業では豊かな授業をしておいて,評価が貧弱という状況になっている,これが多分一番の問題なんだろうと思います。特に今回,学力観の転換があったといったときには,指導と評価の一体化という言葉もそうなんですが,要は目標と,指導と,評価,これの一貫性をどういうふうに担保するのかということが本丸ではないかと思います。
 むしろ豊かな評価に向けて,どう頑張っていくのか。ある種,部活動とかでも,試合があるから,それに向けて頑張って練習する。評価に向けて頑張っていくというのは,そういう構造だと思うんです。そのときに,試合が貧弱で練習が豊かということはすごくミスマッチな話で,それに当たるようなことが起こっているのではないかなと思うわけです。それがまず1つ,形成的評価と,総括的評価といったものを,やはり分けながら議論していくということ。
 もう一つ,先ほど言いましたように,総括的評価にメスを入れていくと。特に単元末であるとか,学期の節目になされる,その見せ場に当たるところにメスを入れるということで言えば,この間,断片的な知識を問うテストと,やる気を問う平常点という,この枠組みを少し考えていく必要があるのではないかなと思いました。
 ですから,これ,特に福岡の事例がすごく興味深いなと思ったんですが,まさにテストの在り方を問うていく。豊かなテスト,思考力を問うような,そういったチャレンジングなテストを作っていくということ。それから,一方で,平常点といったものを,ある種授業中の態度であるとか,そういったもので見ていくというよりも,まさに先ほど川越工業高校さんが,腰掛け蟻継ぎの例で示してくださいましたけれども,これは1つのプロジェクトなのかなと思うんです。
 だから,ある種プロジェクトに取り組んでいて,あるいはほかの教科理科であるとか,社会科もそうですけれども,レポートであるとか,そういったまとまった作品を作っていく。そこで,認知的なところに留まらないような,幅広い実力を問うような,そういう豊かな力を問う作品をベースにして評価していくということが大事なのではないかなと思います。
 ですから,テスト,それから,ある種テストに留まらないような作品であるとか,プロセスといったものを評価していくときに,それぞれの質をバージョンを上げていくということが大事なのではないかなということを思いました。そうでないと,それぞれ断片的な知識を問う,やる気を問う平常点ということからすると,特に態度の部分の評価というのは,いかに回数をたくさんするのかという話になってしまって,エビデンスの質が問われないのではないかなということを思います。だから,中身をしっかりした,そういった確かなエビデンスをベースにしていくということが大事かなということです。すみません,長くなりました。
【市川主査】  ありがとうございます。
 それでは,続きまして,藤本委員,善本委員,お願いします。
【藤本委員】  高松市の藤本でございます。先般,高松市の方から御報告させていただいたように,やはり子供に還元できる評価であり,教師が授業改善できる評価であるという願いの下に,本日も様々な発表がなされ,非常に参考になるところでありました。
 また,先ほど石井先生の方からも貴重な御提言を頂き,現場の方でもまた考えていかなければいけないことだなと思っております。
 2点ほどお伺いしたいんです。1つは,二井研究官にです。先ほど,高等学校の評価を中心に御説明がありました。高等学校の教員というのは,岩手県の方から,理科という範囲で,小さな学校が増えているのでということもありましたけれども,多くの高等学校の教員が狭い範囲で世界史とか,地理とか,生物とかという担当をしているのにもかかわらず,評価についての実施状況の成果が思わしくない。
 小・中学校であれば教科,また,その学年の全ての教科を受け持ちながら,教科に関する評価がまあまあのところであるということで,高等学校の先生方にとって,この評価の実施状況がよくないというようなところは,どのように今,研究官の方でその実態を捉えられているのかということについて,1つ,お伺いしたいと思っております。
 それと,岩手県の中村指導主事には,校務支援システムを導入することによって,観点別評価の成績処理を効率的に行っているということで,今日の資料の中でも評価方法のあたりのところが,この校務支援システムの具体ではないかなと思っているんですけれども。どの程度,効率的に校務支援システムを導入することによって観点別評価が効率化されているのか,従来の方法に比べてどの程度効率化されているのかということを,お教え願いたいと思います。
 2点,よろしくお願いいたします。
【市川主査】  それでは,今のお答えを一問一答式にやっていくと,ちょっと委員からの御質問,御意見,全部なかなか出せなくなってしまうと思いますので,先に委員からの御質問,御意見を出していただいた上で,まとめて最後の方でお答えいただくということで,よろしいでしょうか。
 それでは,続いて善本委員,お願いします。
【善本委員】  ありがとうございます。特に現場の校長として,現場を見て,御苦労されている皆様からの御発表というのは非常に共感できるところが多かったです。ありがとうございます。そのことを踏まえた上で,特に岩手県教委さんに3点質問させていただきたいのと,それに関連したことも含めて,多少私の意見も言わせていただければと思います。
 まず1点目はすごく単純なことで,当初28年度から実施予定が29年度でも可となったときに,29年度から始められた学校が29校おありだということでした。当初の予定どおり,28年から始められた全日制の学校の校数を参考までに教えていただければと思います。
 それから,2点目は,この議論をするときに恐らくずっと課題になるのが,先ほど藤本先生からもお話がありましたけれども,負担感とか,業務量の増加をどうしていくかということだと思います。それで,先行的に実施されているという大変貴重な事例ですので,このことによって従来型の評価と,教員の実務に関わる時間数が具体的に何分とか,何時間とか,増加したというふうな調査をされているか,あるいは今後される予定がおありかということをお聞きしたいと思います。と申しますのは,私は教員の業務時間がなかなか減らない原因の1つは,仕事をどれだけ時間が掛かるかというふうに考えるという習慣が,私は現場で三十何年やってきて実感しているんですけれども,ないんです。それは余りないです。
 この仕事はどのぐらい時間が掛かるかということよりも,子供のためになることだったらいくらでもやるという感じで,もちろんそれは残業手当が付かないということがあると。そういう意味で,業務を時間のコストで常にカウントしていくという発想が,非常に学校現場には乏しいと思います。なので,このことによってどのぐらい業務量が増えるのか。それによって,もちろん,でも,絶対に必要であることならば,やっていかなければいけないわけですが,そうしたら,そのほかの業務を具体的に減らす方法を考えるということが,セットで考えられなければいけないと思います。なので,時間のコストがどのぐらい増加したかということを,もし調査されているようだったら,教えていただきたいと思います。
 あと,3点目の質問は,この評価について,学校設定教科・科目についての評価の仕方をどのように御指導されているかということについて,参考までにお伺いしたいと思います。
 この後は私の意見です。先ほども御意見がありましたけれども,福岡の大変参考になるテストの資料もありがとうございました。また,校長先生からのお話も,非常に同じ校長の立場で共感できるところが多かったです。福岡で先進的に取り組まれているこのテストの中身というのは,実は私どもは公立の中高一貫校なので,入試に際して学力検査をすることは許されていなくて,適正検査というのを行っていますが,この適正検査の内容にかなり近いものです。ですから,公立の中学校の入試では適性検査で既に随分前からこのような形での考査が行われているということも,皆様に是非御理解いただければなと思います。
 あと,観点別評価について,現場の実感として,保護者の理解というか,評価というかが,必ずしも高くないということを非常に実感しています。観点別で評価されることによって,自分の子供の学力がより精緻に評価されているという感覚を,保護者は余り持っていないのではないかなというのを実感として持っています。ですので,先ほどもお話がありましたけれども,保護者の理解ということは,もちろん生徒の理解とつながるわけですけれども,そこを是非とも進めていただくということが非常に重要かなと思っております。
 私からは以上です。
【市川主査】  ありがとうございます。それでは,続けて7人の委員の方,鈴木委員,無藤委員,秋田委員,嶋田委員,髙木委員,若江委員,天笠委員の順にお願いしたいと思います。
 それでは,鈴木委員,お願いします。
【鈴木委員】  平成12年の指導要録の改訂の答申に関わった者として,一言御案内します。国立教育政策研究所に参考資料を作ってくださいというのは,その会議のときからです。大変御苦労をお掛けしております。プラス,12年から目標準拠評価になったということも御承知のとおりだと思います。
 いろいろ御苦労なさって,もちろん平成22年も参考資料を作っていただいたわけですけれども,大変申し訳ありませんが,なかなか参考資料が現場に生かし切れないというのもまた事実であります。なぜそうなってしまったかということをちょっと,教育評価の理論的な発展の歴史,特に目標準拠の理論的な発展をごく簡単に御説明したいと思います。
 もともと目標準拠,英語で言えばCriterion Referenced Assessmentです。これが1963年にアメリカのグレイザーがCriterion Referenced Assessment,彼はCriterion Referenced Testingと言っているんですけれども,多少意味は違いますが,どちらでも。グレイザーが,今我々が言う目標準拠評価を最初に提案いたしました。
 しかしながら,そのCriterionはどういう意味なのかということが評価の研究の中で大きく問題になりました。そこで,まず最初に,前回もルーブリックのところでお話ししましたポファムが,ドメイン準拠評価という解釈があり得ると。これは,一定の明確に定義された範囲の中でたくさんの問題を出題して,何%できるかで評価していけば,何題できたかというのでパッティングストンを決めれば,明確に評価できるという形で,まずCriterionの解釈をドメイン準拠評価という形で提案いたしました。
 実は,我が国には,これがまず入っていない。ですから,目標準拠評価が我が国では,大体ドメイン準拠評価的に解釈される例が非常に多いということです。しかしながら,学習と目標が思考力や判断力に広がってくるにつれて,そのようなドメイン準拠評価では不十分ではないかということから,1980年代の後半に,オーストラリアのルイス・サドラーがスタンダード準拠評価というのを提案いたしました。
 ですので,現在では,クライテリオン準拠評価,我が国で言う目標準拠評価にも,ドメイン的な解釈と,それから後で出てきましたスタンダード・レファレンス・アセスメントの解釈と,2つあります。残業ながら,最初に入ってきたのが,我が国に関してはドメイン準拠評価ですので,大変申し訳ないですが,国立教育政策研究所が作成している参考資料は,ほぼドメイン準拠評価的に解釈した参考資料を作っております。
 しかしながら,思考力・判断力のようなものの場合は,今ではスタンダード・レファレンスド・アセスメントの方がいいだろうというのがほぼ共通理解で,残念ながら,我が国はそのスタンダードの考え方の紹介が遅れてしまったためにこれは私の責任でもありますが,今国立教育政策研究の参考資料で,各学校が必ずしも十分生かし切れないのは,そのスタンダードで評価する部分が十分に理解されない。
 参考資料を作成するにあっても,どういう理論的な前提で作っているかをもう少し明確にしないと,御苦労をお掛けした上で,なかなか使えないということになってしまうと思っています。
【市川主査】  ありがとうございます。
 では,無藤先生,お願いします。
【無藤教育課程副部会長】  私,コメントのようなものですが,2つです。委員の皆様方の発表などで,ある程度共通に出てきている幾つかのうち,関心・意欲・態度の評価が難しいということと,それから生徒,また保護者と共有する,理解してもらうあたりが難しいというのがあったと思うんですけれども。私が以前から考えているところでは,1つは,関心・意欲・態度については,今回学びに向かう力とか,主体的に学習する態度という方向を考えているわけですが,私の理解では,それは単なる言葉の言い換えではなくて,もっと生徒自身の自己学習スキルに注目していく方向なんだと思っております。
 言い換えれば,意欲を持っているか否かは大事ですけれども,それ以上に大事なのは,意欲を高める工夫や,やり方を知っているかとか,持っている意欲を維持できるか,そのやり方を分かっているかということだと思っております。そういうやり方は授業の中で教えることがある程度できるということが重要なポイントなので,したがって評価もできると思います。
 2番目は,生徒や保護者との共有の問題です。現場で忙しい中でできるかどうかという話を別にすると,通知表などで数字や,あるいはA,B,CのAとか,Bとか,それは観点でもう少し詳しくなって,そういうものを生徒に配ることが生徒の学習行動を改善するかについては,過去数十年の少なくとも教育心理学等の知見を見る限り難しいと思います。
 言い換えれば,生徒の学習の行動の具体的にうまくいっているところ,うまくいっていないところの指摘を含めて,それがなぜうまくいくのか,いかないのかという理由の説明などのフィードバックが必要だと思います。評価というのが,学習行動改善のためのフィードバックとしての機能を重視するということであれば,それはそのような意味での具体性を持たせる必要がある。そのために時間を使うことが,私は負担を現場に与えるかもしれませんが,生徒の学習を改善する上では一番の王道であると考えております。
 その点の議論がまだ余りなされていないように思いました。以上,2点です。
【市川主査】  ありがとうございます。
 続きまして,秋田委員,嶋田委員の順にお願いします。
【秋田委員】  ありがとうございます。今日,4名のそれぞれの方の御発表が高校の評価を考える上で大変有効だと思いました。それらをつなげて考えてみますと,国立教育政策研究所と岩手県の関係ということを考えたときに,要するに学習評価のフレームワークを作ったときに,それをどうインプリメンテーション,つまり実際に実施していくのかという関係について考えたときに,岩手県の方で,国立教育政策研究所の方が細か過ぎるとうまくいかないのだということを,過去の経験から語ってくださいました。岩手県の中で組織体制として教務主任や,校長や,校内研修というような形で順を追って実施していくと。いくら説明会をやっても,実際にはうまくいかないわけで,それをこのような形で入れていったという御報告の関係が非常に重要だろうと思います。
 また,まだ高校では,観点別の実施状況がよろしくない。しかし,生徒の学習を考えていけば,この機に観点別評価をきちっと入れることは,生徒の学習をきめ細かく捉えていく上で重要なことだろうと思っております。
 ただ,一方で,無藤先生と結構似ていることを偶然考えていたなと思ったのは,この観点別のうち,やはり関心・意欲・態度はいろいろなアンケートでも難しいという調査結果が出ているので,逆に言えば,まず思考・判断・表現や技能,知識というところを,明確にそこで評価できることを求めていく。逆に言えば,関心・意欲・態度が評価されることによって,関心・意欲・態度が上がることはほとんどあり得なくて,むしろ知識や理解を育てていくことが関心・意欲を育てていくというサイクルを考えるならば,むしろ観点は4観点なければならないけれども,入れるべき評価は大胆に3つは総括的に表す形が,方向としてはあり得るのだろうということも考えた次第です。
 また,2つ目としては,やはり教師の負担を私は非常に心配をします。そうしますと,やはり余り細かくなり過ぎないようにしたいと思います。伺ってみたかったのは,本当に岩手県の先生はこうやって実施はされたんですけれども,本音としてどれだけ負担が高くなったのかという報告は余りないので,そこは伺ってみたい。
 それから,福岡県の例も大変おもしろかったんですが,こういう試験になって塾の話はあったんですが,教師はどう判断したのか,どういう反応があったのかというところは実は大変重要なことです。それが逆に言えば,そういうことが重要なことだとメッセージを出していきながらも,指導のところに余り負担を掛けるよりは,今日の4つ目の工業高校の御説明が大変大事だと思いました。形成的に考えたときに,生徒側に教師が指導するだけではなくて,教師の学習において目標として何を評価するのかを後付けで教師が評価するのではなくて,前に生徒には明確に指示することの必要性です。かわりに,教師側は学習の最後に余り細かくなり過ぎないようにして,総括的には評価をする方向性があり得るのではないかと,今日の4人の先生方の御発表を関連付けて考えました。御意見と,2点ほど,教員の負担については伺いたいところです。以上です。
【市川主査】  ありがとうございます。
 それでは,委員の方からは,嶋田委員,髙木委員,若江委員,そして天笠先生だけでよろしいでしょうか。その後,お答えいただく時間がなくなってしまうといけないので,もうその先は4人の今日の発表者の方から伺いたいと思います。
 それでは,嶋田委員,お願いします。
【嶋田委員】  お時間もありませんので,短めに。岩手県の御発表の中で,やはり定期考査での関心・意欲・態度がゼロ%で評価をしていくという形の表が出ておりました。小学校段階のときに,やはり授業の中で振り返りとか,そういうものを大事にしながら,関心・意欲・態度の部分を今評価しているという実態になってきているところがあるということを,お伝えしたいと思います。
 小学校からお話しさせていただきますと,東京都の場合は都立高校については校務システムは都でやっていただけますけれども,小・中については全部区市の財力によって非常に影響が出ているというところがあります。現在,東京都の中でも校務システムが一本化している区市もあれば,まだ入っていないところもありますので,そういう視点を考えていただきたいと。
 今年度から道徳の評価,それから外国語の評価が入っておりますので,低学年でも7教科,中学年,3,4年で7から9教科,高学年で8から10教科の評価をしているという小学校の実態をお伝えして,今後の小・中・高の特性を考えながら議論を進めていただければありがたいと思っております。以上です。
【市川主査】  ありがとうございます。
 続いて,髙木委員,お願いします。
【髙木委員】  お願いします。観点別学習状況の評価は今小・中でも関わりますが,今日は高校ということですので,高等学校での観点別学習状況の評価の実施の具体に関して,意見を2つ申し上げます。
 1点目です。高等学校の観点別学習状況の評価は,各教科の履修単位が年間2単位,約70時間のものが多く,さらに必履修科目でも4単位が上限となっています。そのため,小・中学校よりも年間計画が立てやすいと私は思っています。先ほど,二井総括研究官が御発表の中の5の「おわりに」にお書きになっていますが,教育課程の編成表を今作られていますが,それを年間計画として,評価を入れたカリキュラム・マネジメントをきちんと提示することによって,高等学校における評価観の根本的な転換を図っていくことが重要だと思います。
 現行のままでは,結局中間試験,期末試験,それから,先ほどパラダイム転換という言葉が出ていましたが,今までの評価観からの転換ができていないという状況ですので,今回,総則の方でも書いていますカリキュラム・マネジメントをどういうふうに行っていくのかということが,評価観の転換の1つの鍵になっているかなと思います。
 2つ目です。観点別学習状況の評価は,数値による評定として受け止められています。先ほど形成評価,総括評価の話も出ていますが,その中で5,4,3,2,1という数値による評価ではなくて,観点別学習状況の評価,今A,B,Cで行っているものを,そのまま指導要録に記入するという方向にしていくと,特に中学校,高校の評定はしやすくなってくると考えています。
 それによって成績処理の作業の煩雑化の解消にもなると思います。特に,大学入学者選抜実施要項が平成33年から評定平均値の見直しを図っているわけで,数値による評定平均値そのものがなくなっていきますと,観点別学習状況の評価をそのまま示すことになり,要録との整合性もとられてくると思います。そういった全体的な評価の在り方の改革をしていかないと新学習指導要領にあった評価への転換はできないと考えます。今,学習評価の会議を初中局でやっていますが,高等教育局の方でも,評定平均値,それから大学入試に関しての評価の在り方,内申書を含めて,これを一緒に考えていく必要があると考えております。以上です。
【市川主査】  ありがとうございます。
 では,続いて若江委員。あと河野委員も挙げていらっしゃったということで,若江委員,天笠先生,そして河野委員ということでお願いします。
【若江委員】  ありがとうございます。皆様方のお話を聞きながら,本来,今からやらなければいけない評価は,結果とプロセスの両方を評価していかなければいけないということに転換をしようとしていると。国や県のいろいろな御苦労が生かされていないのは何でだろうと思いながら,いろいろお聞きしていたんですが,私も民間企業でございますので,ちょっと例えて言いますと,民間企業の場合には,評価評定がそのままその人の成長と給与ですとか,昇進だとかに直結をしていくんです。
 ですので,清水先生の工業高校のところがイメージとしては非常に近いなと思っています。授業に挑む前の心得を明確にするというのは,企業理念を明確にして,常にそこに戻り,そして,各科のコースの目標というか,単元とかで与えられているものがセクションごとのプロジェクトの目標で,その目標を通じて常に実現するのは,その企業の理念をいかに実現していくかということを動いていくわけですけれども。
 各プロジェクトに落ちたときに,そのプロジェクトに関わっている人のレベルだとか,役割だとかがいろいろあって,学校教育の中でも同じだと思うんです。それぞれの人たちが個人のレベルだとか,目標を設定する機会がどれぐらいあるのかと。要するにもともとの今も目指している評価が,個人の子供たちの気づきにつながり,かつ,それと同時に授業改善につながっていくということが必要だとするならば,やはり先生が全部を枠組みを決めてしまうのではなくて,子供自身がきちっと自分の目標を作っていけるように,高校ぐらいになれば,なっていなければいけないのではないかと。
 それで思い出したのは,たまたま15年前にうちの息子がアメリカの学校に行ったときに,セメスターごとの保護者,アテンダントミーティングのときに,まさに学校の目標はこれで,これに対して彼はこのことを,この教科で,こういうふうに実現しようと初めに決めて,今これに取り組んでいますということを説明されたことをまざまざと思い出したんです。
 まさに,高校になると,そのように,本来はここで目標に到達しなければいけないことに対して,自分で目標を立てて,教師はそれを,その教科の学びを通じたりだとか,活動を通じて個別の目標を理解しながら,どのように支援をしていくかというスタイルになっていたなと思いました。その中では,当然自己評価,総合評価,他者評価みたいなものがいろいろ組み合わされているので,必然的に自然と評価によって何か新しいものに気づいていったりするという経験も同時に積んでいっていたように思いますので,高校のところで是非質問させていただくとするなら,自己評価とか,他者評価,総合評価みたいなことがどの程度今生かされているのかということを聞きたいと思います。
 それと,最後に働き方のこととか,いろいろありますので,やはり社員で言うならば,各自に評価目標を作らせるというのは,プロジェクトマネジャーに作らせるというのはなかなかできないことなんです。ですので,学校としての目標をきちっと立て,個別の目標は一スタッフ,つまり生徒を巻き込んでやるのが合理的ではないかなと思います。以上です。
【市川主査】  ありがとうございます。
 続いて,天笠先生,お願いします。
【天笠教育課程部会長】  失礼いたします。私も,今日,先ほどの秋田委員がおっしゃったことと非常につながった問題意識を持った次第です。それは,学習指導要領の改訂というのは,ある意味で常にコンセプトを提示する側と,それを受けとめる側があって,いかに受けとめる側が実践を展開していただけるかと,そこになるわけです。その間に,いろいろなそれぞれの改訂の時期をめぐって様々な課題があり,そのところをどういうふうに取り組んでいくのか,どうなのかということがあると,歴史としていろいろ残されているわけであって。
 そういう文脈の中で,この学習の評価の観点別の導入というのも,その大変大きなテーマであると,まずそんな位置づけになるのではないかと思うんです。そうしたときに,国,県,地方自治体という,そういう形でこれがどう伝えられ,おろされていくかという,そこの段取りというか,今日はそういう発表としてそれぞれがおありになったかなというふうに聞かせていただきました。
 最後という言い方はあれなんですが,もう一つあるとするならば,それぞれの各学校でというところの話になるのではないかと思いますんです。それをある意味の代替したのが,工業高校の御発表かなというふうにも受けとめさせていただいたんですけれども。とりわけ高等学校という段階のこの種の導入,普及ということを考えたときに,個々の学校ごとにそれぞれこれを考えていく,受けとめていく,あるいは具体的な方策というものを,そこのところまで視点をおろしていかないと,それぞれの高等学校におけるこの種の改善とか実践というところに,非常に難しい部分というのがあるのではないか。
 一つ一つの学校にもっと寄り添って,そこの授業改善,学習評価の改善,評価の導入ということを,これは丁寧にやっていかないと。学校の手前までということはたびたび言われてきているわけですけれども,典型的な事例になるというのがこれになるかと思います。そこを超えていかなくてはというところに知恵を絞らなければいけない課題があるのではないかと。
 ですから,この御指摘していただいた基本的な方向でいくならば,何をどうかということですけれども,そうしたときに松尾委員が御発表されたこのスライドの中に,11ページなんですけれども,そこのところには授業における王道ということと,今回提起されているアクティブ・ラーニングの手法ということ,それから,それに関わる授業の様々な,ある意味で言うと条件整備的な取組というのが,この一覧がまとまっているわけですけれども。
 このスライドのところには,カリキュラム・マネジメントという言葉が出てきていないんですけれども,アクティブ・ラーニング,支えていくものがカリキュラム・マネジメントだという位置づけになるかなと思って理解していたんですけれども。これを,それぞれの高等学校の中でどう実現していくのか,どう具体化していくのか。そうすると,秋田委員から出てきた,ここに一人一人の校長先生の顔が浮かんできたり,事業者お一人お一人の顔が登場したり,あるいは研究主任というお立場の方とか,それぞれの教科の担当の方というのが,顔が見えてくるのではないかと思うんですが,そのレベルで学習評価の改善ということを考えていかないと先へ進まないのではないかと思うんです。
 そうしたときに何が高等学校は課題かというと,チーム制という問題かなと思っています。お一人お一人の事業者の個々の力量というのか,それぞれの方々が学校を支えている現実の姿があるわけですけれども,どうもこのテーマは一定のチーム性を要求している部分があるのではないかと。どちらかというと,学校の組織というのは個業的な部分というのが非常にあるというのは既に様々指摘されているわけですけれども,このテーマをどう個業ということを超えてというか,そのところとチームというところをつなぎ出していくのか。
 観点別が曲がりなりにも小・中・高別で入っているというのは,小学校の方がどちらかというとチーム制というところで,これをこなす組織的土壌が高等学校にもあるからということで。ですから,そういう点からすると,高等学校の,ある意味で言うと,学校の組織の土壌を耕すということも,併せてこのテーマのときには非常に重要になっているのではないかと。それは,個業というところを,もう少し協業とか,チームというところを事業者の方々にも受けとめていただくような環境作り,風土作りということも,この学習評価の改善のときには併せてテーマにしていくことが大切なのではないかと思います。以上です。
【市川主査】  それでは,河野委員,お願いします。
【河野委員】  後ほどお答えいただけるのかなと思うんですが,福岡の先生から,先ほどいただいたペーパーの11ページ,御説明を頂いたときに,ちょっとお言葉の中で,もっと大胆に見直してもいいと思うんですけどねとおっしゃったので,できればそこでお考えをもう少し伺えればと思って,ちょっと質問させていただきたいと思いました。
 そのことについて,私は個人的になんですけれども,今日出ている関心・意欲・態度については,高校生になりましたとき,先ほども若江先生から出ていましたけれども,相当自己評価がしたい時期に来ているので,ここで点数化されたものの評価を通知表等で頂いてしまうことの逆に重みといいますか,ずっと残るものなので,この辺の意味も考えながら,この成績を受ける方の身として,どういう状況のものを得ると,次のステップにいいのかということも考えながら進めるべきかな,なんて思いました。そこだけ,以上にしておきます。
【市川主査】  ありがとうございます。
 それでは,実は残り七,八分しかないんですけれども,4人の発表者の方から順番に,全ては無理だと思いますが,かいつまんで御回答,お願いいたします。
【二井総括研究官】  失礼します。今日発表した担当者,私の考えということで御返事させていただこうと思います。まず,石井先生からの,「これは,形成的評価なのだろうか,総括的な評価なのだろうか」ということですけれども,私自身は「指導と評価の一体化」を重視するという考え方に基づけば,おそらく観点別評価については形成的な色合いが大切になってくるのではないかと思っています。そういうことを考えながらやっているということです。
 2点目,藤本先生から,「高等学校でうまくいっていないのはなぜなのだろうか」という御意見もありました。これについては,私は多くの先生方にお話を聞いたり,アンケートをとったりした結果,やはり一番大きいのはうまくいかなかったときどうすればいいのかという「不安感」なんだろうと思います。特に高校の場合は,学校によって状況がそれぞれ違いますから,学校ごとにいろいろなことを,きちんと自分の学校に合ったことをやっていかなければいけないという意味で,「自分たちで作る」という部分が非常に多くなりますので,「不安感」を抱かれる方が多いんだろうと思います。
 この「不安感」については,目標に準拠した評価を実施することで,今まで見えていなかった評価の難しさや課題が表面化するからでもあると思います。つまり,今までもあったのだけれども,見えていなかった課題も見えるようになってきたのだろうと。
 「不安感」の解消のためには,課題に取り組む時に,2つの座標軸,つまり1つは目標に準拠した評価を導入することで新たに生まれた課題なのか,昔からあった課題が表面化したのか。もう1つは目標に準拠した評価について理解した上で生まれた課題なのか,無理解のところから生まれている課題なのかという座標で整理しながら,どこから手を着けていくかという順序性を考え,山ほどある課題を大事なところから,難しいところから手を付けて解決しなければいけないのだろうと,高等学校の状況に関して思っています。
 あと,鈴木先生の方から,評価の理論についてということですけれども,大変貴重な御意見ですので,真摯に受けとめていろいろまた考えていこうと思います。御指導の程,よろしくお願いいたします。
 私の方からは,全部のお答えになっているかどうか分かりませんが,以上です。
【市川主査】  それでは,中村指導主事,お願いいたします。
【中村先生】  まず校務支援システムによる効率化ということで,校務支援システムを入れる1つのきっかけとしては,観点別評価の成績処理があるということで入れたわけですけれども,実際に観点別評価の効率化という点でいいますと,学習評価シートというのを県独自で作って,そこで4つの観点の成績が集約できて,それをシステムに取り入れるという,そんなに大きな経験にはなってはいないかと思います。
 ただ,もし,これがないと,各学校でシステムを作って,4つの観点をそれぞれ入力してやらなくてはいけない。そういったことでは,効率化にはなっているのではないかなと。それ以外のところでは,ただ1回入力したものが調査書,指導要録,それにつながっていくということ。それから,転勤しても,その学校で同じシステムが使えるといったことで,長期で見れば,かなりな負担軽減にはなっているのではないかと思います。
 それから,観点別評価の導入年度ということで,全日制高校ということで話をいたしますと,岩手県,県立高校全日制が63校,それから盛岡市立高校が1校ございます。そのうち28年度までに入れたのが37校ということになっています。29年度が27校ということになっています。
 それから,負担感につきまして,御指摘のとおり数字はございません。ですので,感覚ということで話をしていることにはなります。ただ,平成29年3月には教職員組合から,負担増につながっているから是非廃止してくれという提言というか,要望書を頂いて,こちらも真摯に対応はしているわけですが,負担感はあるので,私どもの務めとして負担感を減らしていくというところは必要ではないかなと思っております。
 学校選定科目の評価の仕方につきましては,特に取り立てて別枠で説明をしておりません。年間指導計画に評価規準を入れていただいて,それに沿って評価していただくということになっております。ちょっと漏れがあるかもしれませんが,とりあえず以上ということでお願いします。
【市川主査】  では,松尾委員,お願いします。
【松尾委員】  それでは,教育課程部会長と副部会長のお二人の先生方の御指摘,本当にありがとうございました。カリキュラム・マネジメントが入ってはいないということでしたけれども,もちろん,それは念頭に置いたことでございました。それぞれの学校に寄り添うというチーム制の大切さ,それについては今,本当にそうだなと感じたところでございますので,これからまたいろいろと考えていきたいと思っております。ありがとうございます。
 それから,御質問にあった中学校の教師の学力検査の反応についてでございます。私は個別的に中学校の先生とお話はしておりませんが,これによって何か意見が出たとか,そういうことは伺っていません。今年度初めてこういう形式にしたわけではございませんので,徐々に慣れてきたということはあると思います。ただ,ある小さな町の教育委員会の教育長さんとお話をしたときには,やはり子供たちにとっては,問題がどんどん難しくなってきていると,だから大変だというふうな御意見は頂きました。
 それと,最後の観点別評価のA,B,Cとか,そういうところの御質問だったでしょうか。私は,先ほど髙木委員の方からおっしゃられたように,私も大胆に,ここの観点別評価をそのままにして5,4,3,2,1はなくしてもいいのではないかと,確信的には思っていませんが,それぐらいのことをしなければなかなか考え方は変わらないと思っています。
 調査書の評定平均値もなくなるということですから,何をよりどころに保護者は評価を考えたらよいのかというふうになってきて,それこそ細かくすればするほどなかなか説明責任はつかない。今の保護者は,どちらかというと指定校推薦をもらうためには,この評定平均値が何よりも大事で,それに大変敏感になっています。だからこそ,この観点別評価を実効性あるものにするには,それくらい大胆な考え方も考えるべきではないかということで申し上げたところでございます。以上です。
【市川主査】  ありがとうございます。
 清水委員の御発表に対しても幾つか御意見あったんですが,何かお願いします。
【清水委員】  時間もないので簡単に。若江委員からのお話を受けてということで申し上げます。多くの工業高校,専門高校もそうですけれども,大体PBLをベースにしている学校が多いのではないかと感じております。例えば,本校であれば,先ほど申し上げたとおり,全員が履修する科目である「工業技術基礎」,「課題研究」,この2つの科目が非常に大きな象徴的な科目になりますが,1年生のときに「工業技術基礎」で基礎的な学習活動,基礎的な技術など,そういったことを学んでいく。その中で,実習科目で学んでいって,自分の力量,知識を高めていくということになりますが,最後の「課題研究」が非常に象徴的な科目になっている。
 できれば,総合的な探究の時間はそうあってほしいなと思うのですが,これをやりたいということを1年生の頃からいろいろ思わせるようにしています。3年生になったときの「課題研究」で,1年間掛けてこういう研究をしたい,こういう取組をしたいということを低学年から思わせておくことで,今はそれに向けての技術を自分は教えられているんだと。つらい実習はありますけれども,そういった中でしっかりと身に付けていく,学びに向かう姿勢がしっかりと培われていくのかなとも考えております。
 課題として挙げられることを2つだけ申し上げます。一つ目は,工業科ではアクティブ・ラーニングはやっていますという教師がおりますけれども,私から言わせると,アクティブなラーニングをやっていますねということです。生徒を動かせばいいのかというと,そういう問題ではない。自分の考えだとか,発想だとかをもっともっと考えさせなければいけないということで,本来のアクティブ・ラーニングという形を早くベースを作りたいなということ。
 二つ目は,少人数の授業をやればやるほど思うことですけれども,生徒一人一人がしっかり見えていて,一人一人とのつながりが非常に深くなっていきます。そのためにどうしても評価が高めになっていってしまう。評定もそうなんですけれども,全体が高めの値になっていってしまうということ。ただ,できているので,構わないというようには思いますけれども。どうしてもおおむねテストが中心のほかの科目に比べると,評価そのものが高まっていってしまうということが,1つの課題かなと考えているということです。
 十分な回答にはなっていないかもしれませんけれども,以上とさせてください。以上です。
【市川主査】  どうもありがとうございました。このワーキンググループも年内にできれば,何らかの集約を図るという形で進んでいくんだと思います。いろいろな御意見があって大変だと思うのですけれども,恐らくコンセンサスとしては,この評価というのは,子供たちの学習改善のためのフィードバックなんだという,このあたりは皆さん,一致していると思うんです。
 ですから,そのために,PDCAというのはなにも教師が回すだけではなくて,一人一人の生徒が自分でPDCAを回していく,学習もPDCAを回す。そこに先生からの評価というのが情報として役に立つと。ですから,何かこうやって評価システムを導入して,じゃ,それによって子供たちはどれだけ学習改善が起こったのですかということが最終的には問われるんだと思います。
 ですから,もちろん指導要録,通知表の改善は行われるようになるんですが,それだけではなくて,それを改善しようとすることによって,日々の学習のプロセスの中で教師からのどういうフィードバックがあって,最終的にはそれが学習改善に結び付いて,新しい評価システムになって,子供たちが一番喜ぶと。自分の学習改善にうれしい評価システムになりましたと,子供がどれだけ言ってくれるかということになるかと思いますので,そういうことに向けて,このワーキンググループも話を広げて,しかも整理していくということが必要になるかと思いました。
 それでは,今日の議事は以上なんですけれども,事務局の方から御報告がございます。
【白井教育課程企画室長】  2点御報告申し上げます。まず1点目です。平成28年12月の学習指導要領の答申を中教審から出していただいた際にも行いましたけれども,関係する団体にこの学習評価の在り方について,書面でのヒアリングを実施したいと考えてございます。
 現在,教育関係の団体,例えば校長会,教育委員会,あるいは大学の団体,またPTA,経済関係の団体,そういった方々に書面でのヒアリングをお願いしているところでございまして,これが7月以降に取りまとめることになると思いますが,取りまとめた際にはまた改めて御報告を申し上げたいと思います。
 それから,次回のワーキンググループの日程です。6月19日,火曜日,10時から12時ということでおとりしておりますので,委員の皆様方の日程の確保をお願いしたいと存じます。以上でございます。
【市川主査】  それでは,若干時間をオーバーしてしまいまして,申し訳ありませんでした。本日予定した議事,全て終了いたしましたので,これで閉会とさせていただきます。ありがとうございました。

―― 了 ――


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