中央教育審議会初等中等教育分科会 教育課程部会教育課程企画特別部会 論点整理 (平成27年8月26日)<抜粋>

                                                        

5.各学校段階,各教科等における改訂の具体的な方向性
(2)各教科・科目等の内容の見直し
【15】道徳教育
○ 学校における道徳教育は,自己の生き方を考え,主体的な判断の下に行動し,自立した一人の人間として他者とともによりよく生きるための基盤となる道徳性を養うことを目標とする教育活動であり,「どのように社会・世界と関わり,よりよい人生を送るか」の根幹となるものである。
○ このような資質・能力の育成を目指す道徳教育においては,既に学習指導要領が一部改訂され,小学校では平成30年度,中学校では平成31年度から,「特別の教科 道徳」(道徳科)が実施されることとなっている。本「論点整理」が目指す「これからの時代に求められる資質・能力の育成」や,「アクティブ・ラーニング」の視点からの学習・指導方法の改善を先取りし,「考え,議論する」道徳科への転換により児童生徒の道徳性を育むものであり,道徳的諸価値についての理解を基に,自己を見つめ,物事を多面的・多角的に考え,自己の生き方や他者との関わりについても考えを深める学習を通して,道徳的判断力,道徳的心情や道徳的実践意欲と態度を育てるものである。
○ 道徳の特別教科化は,これまで軽視されがちだったと指摘される従来の道徳の時間を検定教科書の導入等により着実に行われるように実質化するとともに,その質的転換を図ることを目的としている。
○  特に,後者の「考え,議論する」道徳科への質的転換については,子供たちに道徳的な実践への安易な決意表明を迫るような指導を避けるあまり道徳の時間を内面的資質の育成に完結させ,その結果,実際の教室における指導が読み物教材の登場人物の心情理解のみに偏り,「あなたならどのように考え,行動・実践するか」を子供たちに真正面から問うことを避けてきた嫌いがあることを背景としている。このような言わば「読み物道徳」から脱却し,問題解決型の学習や体験的な学習などを通じて,自分ならどのように行動・実践するかを考えさせ,自分とは異なる意見と向かい合い議論する中で,道徳的価値について多面的・多角的に学び,実践へと結び付け,更に習慣化していく指導へと転換することこそ道徳の特別教科化の大きな目的である。
○ 義務教育においては,従来の経緯や慣性を乗り越え,道徳の特別教科化の目的である道徳教育の質的転換が全国の一つ一つの教室において確実に行われることが必要であり,そのためには,答えが一つではない,多様な見方や考え方の中で子供たちに考えさせる素材を盛り込んだ教材の充実や指導方法の改善等が不可欠である。
○ なお,道徳科は,改めて,教育課程全体を通して道徳教育の成果を上げるために,その核となる役割を果たすことを求めて実施を図るものである。そのために,道徳科と各教科等との関係性を明らかにすることを通して,教育課程に占める道徳科の位置付けを明確にする必要がある。
○ このように,道徳の特別教科化を着実に実施するため,文部科学省には万遺漏なきよう諸施策に取り組むことを求めるものであるが,質的転換の進展状況を踏まえ,学習指導要領も含めた道徳教育の在り方については常に見直し,改善することが重要である。
○ 次期改訂においては,先んじて導入された小・中学校における道徳科の内容を踏まえつつ,高等学校における道徳教育の在り方について,公民科等における内容の充実・改善と併せて検討を行うことが求められる。

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