学校安全部会(第8期~)(第3回) 議事録

1.日時

平成28年8月23日(火曜日) 14時00分~16時00分

2.場所

文部科学省 東館3F2特別会議室 【東京都千代田区霞が関3-2-2】

3.議題

  1. 学校安全の取組を推進するための学校・家庭・地域の効果的な連携の在り方について
  2. 児童生徒の通学路安全に関する効果的な取組について
  3. 熊本地震の被害を踏まえた学校施設の整備について(報告)
  4. 意見交換
  5. その他

4.議事録

【小原部会長】  それでは、定刻となりましたので、ただいまから、第3回中央教育審議会初等中等教育分科会学校安全部会を開催いたします。
本日は、皆様、お忙しい中、御出席いただきまして、誠にありがとうございます。まず、前回までの学校安全部会に御欠席で、本日御出席の委員がいらっしゃいますので、事務局から御紹介をお願いいたします。
【中村健康教育・食育課課長補佐】  それでは、御紹介いたします。
小川委員でございます。
【小川委員】  小川でございます。よろしくお願いします。
【中村健康教育・食育課課長補佐】  続きまして、国崎委員でございます。
【国崎委員】  危機管理教育研究所代表を務めております国崎です。よろしくお願いいたします。
【中村健康教育・食育課課長補佐】  また、本日は、有識者ヒアリングといたしまして、NPO法人スクール・アドバイス・ネットワークの生重理事長にもお越しいただいておりますので、併せて御紹介させていただきます。
以上でございます。
【小原部会長】  それでは、議事に入ります前に、配付資料の確認を事務局からお願いいたします。
【中村健康教育・食育課課長補佐】  お手元の議事次第に従いまして紹介いたします。資料1が生重理事長の本日の御説明資料でございまして、資料2、小川委員の御説明いただく資料でございます。資料3が「熊本地震の被害を踏まえた学校施設の整備について」ということで、大臣官房文教施設企画部より御報告申し上げる資料でございます。資料4といたしまして、前回の本部会におきます主な意見の概要をお配りしております。資料5が今後の日程ということでございます。
本日の議題に関しまして、参考資料1といたしまして、遠藤委員、また、参考資料2といたしまして、今村委員から、資料を頂いておりますので、こちらも併せてお配りしております。
資料3は前回からお配りしておりますが、関係のデータ集、そして、資料4が学校安全部会の委員の名簿ということでございます。
それから、机上配付資料といたしまして、第2回の議事録も配付しておりますので、こちらも併せて御参照いただければと思います。
以上でございます。
【小原部会長】  ありがとうございました。
また、本日は、報道関係者より、会議の撮影及び会議内容の録音を行いたい旨の申出があり、これを許可しておりますので御承知おきください。
それでは、議題に入ります。
最初に、NPO法人スクール・アドバイス・ネットワーク生重理事長から、学校安全の取組を推進するための学校・家庭・地域の効果的な連携の在り方について、15分程度で御意見を伺い、関連して、遠藤委員より5分程度で参考資料1の御説明をお願いいたします。その後、5分程度で質疑をいたします。
まず、生重理事長、よろしくお願いいたします。
【生重理事長】  生重でございます。よろしくお願いいたします。
こちらに御出席の委員の皆様方は、昨年の12月21日に答申が出ました地域と学校が連携してコミュニティ・スクールを推進すること、地域学校協働本部、それから、チーム学校という三本柱の答申をよく御存じでいてくださると思うのですが、私の事務所のある杉並区では、以前の名称である学校支援地域本部が、全小学校・中学校へ設置されております。コミュニティ・スクール、学校運営協議会につきましては、現在、半分以上が指定を受けて、段階的に取り組んでいっているということでございます。
一昨年、データを取りましたら、地域運営と学校支援という両輪があることによって、最初、戸惑いがあった教員の先生たちの方でも、今では、有効に連携できるようになったら、次に学校を転任する際に、この機能があるところに転任したいという希望が約9割、80数%の数値を示してくるぐらいになってまいりました。その上で、コミュニティ・スクールを通しての地域との協働ということを少しだけお話しさせていただきます。
よく私は、全国に研修会の講師で出向くのですが、地域の中で、コミュニティ・スクールに抵抗を示される部分の多くが、教員人事に一般の地域の住民が介入するところと受け止められがちなのですが、私どもがやってみて本当に思うのは、学校長の経営手腕、学校長の学校経営の計画に基づいて情報公開がなされ、それに対して私ども運営委員が賛同していくということが大切なことで、そこに向けて例えば私たち地域ができること、共に責任を取ること、子供たちの安全・安心を守ること、そういうことを語り合っていく良い場になっていると思っています。
人事についても、学校長のしっかりした経営方針に基づいて人事が行われているというところで、私どもが、この先生が、あの先生がということでとやかく御意見をするということではなく、それぞれの学年体制がうまくいくようにということで協議が行われるということになっています。
それから、答申を受けた後、学校と地域の連携・協働体制の正式名称は「地域学校協働本部」ということになりましたが、ここには学校を支援する地域の機能ということで書かせていただきました。もちろん環境整備活動ですとか、それから、子供たちの学校教育外においても、学校教育内においても、読書活動の推進支援については多くの人が入ることと、司書さんがいる場合には、司書とうまく連携することで非常に子供の読書率も上がっている。放課後の学習支援、夏休み中の今日も、私のコーディネーター仲間が三鷹で、漢字検定をやっているというふうに、検定事業から放課後、夏休み学習、冬休み学習、土曜日の学習に至るまで全て地域のスタッフが行うということで、先生たちと連携協働しながらも、先生たちの本来業務が速やかに行えるような体制作りをしているという形になります。
行事の運営につきましても、運動会、学芸会、音楽会、合唱コンクール、どれをとってもスタッフが多くいて、先生たちだけで全てやってしまうよりは、本当に速やかに、学校の様々な行事が運営されるようになってきているのではないかと思います。
授業の支援につきましては、例えば英語で先生のサポートをするT2、T3というふうにサポート員を入れていくとか、キャリア教育というものがとてもこれからの新学習指導要領教育課程の中でも重要になってきますが、より多くの生き生きと働く大人たちとか、様々な職業に触れていくとか、授業の中にゲストティーチャーを入れていくということも含めて、トータルで学校環境、学校を支援するということがある。それの根底の一番土台のところが安心・安全な地域づくりだと、コミュニティ・スクールの運営側も、学校支援をしているスタッフ側も、研修も含めて極めてそこのところを重要視しているということになります。学校と一緒になって、自分たちがコミュニティ・スクールを運営することで地域課題の解決、それが安心・安全の問題であったり、例えばその地域における伝統を築いていくことであったり、様々なことを学校と保護者と地域が一体になって解決できる。
そのために、実は私どもはずっと熟議を進めておりまして、今年度も、今週の金曜日に、3校合同、中学校1校と小学校2校が私どもの地域でございますが、3校合同CSということで、ここでのテーマは、「地域の顔を知って、お互いに助け合える関係を築こう」ということで、天沼中学校、天沼小学校、沓掛小学校、私どものところではAKAと呼んでいるのですが、AKAは毎年1回、必ず合同会議をしております。
この防災と安全・安心以外のところでも、例えば子供たちの自主活動の中でも、大人も熟議をしますが、子供たちもとても熟議をして、昨年、一昨年は、子供たち自身が選んだ「いじめを自らの力で防止する」という一大テーマで、中学生の発案で、大きな会場を借りて、いじめ防止サミットというのを中学生が開催いたしました。そのときに、23校それぞれの中学校の代表者たちから、刺し言葉を禁止しよう、心を傷つける刺す言葉、子供たちが考えた言葉なのですが、刺し言葉を禁止する、そういうことを自分たちの力でやっていこうということが決議されました。今年度はまた違うテーマで、大人も交えて8月30日に準備を行っていたりしております。
それぞれの23校の学校で、中学生自らが様々なことを考えられる土壌は、大人たち自らが語り合い、それから、忌たんのない意見を発信できる場を大人自らが持つということと、そういう背中を見て、子供たちが自分たちも意見を言える場を作れるという自覚につながっているのではないかと思っております。
私どもは、PTAも含め学校で指導すること、家庭でしつけることということを年に1回、必ず勉強するようにしております。これは、社会教育実践研究センターがお示しくださった、子供の成長過程において必要なことということでとても分かりやすくまとめてくださっているので、私どもの研修会では、必ず毎回、このペーパーを出すようにしておりまして、全てのところ、地域の教育力、家庭の教育力、学校の教育力、それぞれが一緒になってやっていくことが大事であろうということで、安心・安全な地域づくり、健康・安全への配慮、安全・安心な学校づくりということで、それぞれが常に自覚をするということを根底に置いている。そこを学習会とか、様々な発表の場を地域、行政が支援してくださるという形をスムーズに取れるようになってきたかなと思っております。ここの部分を、常に全てのこの条件を私たち地域の人間も、それから、PTAの皆様方も、学校のそれぞれの先生たちも自覚をしていくということで、共に学び合う地域ということを作ってきています。
それ以外にも、今日は持ってこなかったのですが、実は私、公益社団法人のベネッセでアドバイザーをさせていただきまして、ベネッセから、全国どこからでも無償でお送りできる小学生の通学路の安全に向けた、親子で読んでいただく冊子を作りまして、無料配布をしております。そのときに、一緒にきちんと作ってくださったのが「うさぎママのパトロール教室」の武田先生です。子供たちが定期的に、通学路に向けての安心・安全、夏休み前に安心・安全というふうに、自ら学ぶ場というものを作っています。これは広げた新聞紙をくるくると丸めたものなのですが、大人に手をつかまれない最善の距離ということを子供たちが実際に体感をしているところです。高校のコーディネーター活動もさせていただいているのですが、高校においても、こういう形で、地元にいて一朝事あったときに、お互いに助け合える関係、インクルーシブなまちづくりということで、最終的には、1年間通してこの地域課題を解決するNPO法人を仮に作ってみようという事業をさせていただいております。これは現在、都立高校として、人間と社会に転じましても、これをベースにした形で、耳が不自由な方や、目が不自由な方や、それから、老人の皆様方とどうつながっていくのかということをしっかり年間を通して学んで、自分たちが地域の中でできることを考えてもらうような活動をしております。
これは実際、高校生が地域の消防の方から救命救急を学んでいるところです。実は杉並は10年前から、杉並区中学生防災レスキュー隊活動というのを続けておりまして、委員の皆様方のお手元にも、2年前、平成26年に出した、中学生防災レスキュー隊の年間活動の報告を置かせていただきました。それは、また御興味がおありでしたら、是非後でお目通しを頂ければと思います。日頃からそれぞれの学校で、自分たちの知識として例えばガス復旧操作訓練とか、水防訓練とか、それから、自動販売機が倒れてきた際に、その下に人が挟まっていたときにどう助けるか、ジャッキの使い方とか、様々なことを地域の消防団とともに専門家に学ぶという活動を10年続けてきております。
これは、年に1回行うだけではなく、それぞれの学校にこの中学生防災レスキュー隊というのが置かれていて、学校ごとの防災訓練に向けての訓練とか、23校の訓練とか、定期的に地域と関わりを持ちながら、元々この活動を始めたのは、地域のアイデンティティーを高めよう、都市部においても、顔の見える関係作りをして、助け合える関係というものをどう作っていけるのかということが、子供たち自身がまず自分たちにできることということを自覚することで、実際本番が来たときにも様々なところで、例えば私も、阪神・淡路大震災のときに実は中学生とこういう活動を単独で始めたのですが、そのときにも、中学生から出てきた言葉は、やはり顔を知っていて、自分たちにできることは少なくても、笑顔でつながれる地域の環境を作っていくことできっと何かができるということを、子供たち自身が言葉にしてくれたというのがすごくうれしい記憶ですし、私自身は、今回の熊本には残念ながら行けていないのですが、3.11のときには、各地を回らせていただきまして、その際でも、やはり学校を支える地域がある。地域運営協議会、学校支援地域本部というものが確たるところできちんと機能ができているところがやはり素早く、安定した避難所運営につながったという感想も伺っていますし、中学生、地元の子供たちがどれだけ大人を力づけ、心を励ますということをしてくれているのかということも実際、様々な方々から伺いました。
こういうことを目指しながら、いつ何時、何があるか分からない。朝の挨拶運動は当然、子供たちも、大人もやっております。そして、人とのつながりというものを確認しながら、子供たち同士もつながり合い、学習面でもつながりますが、地域の中で、道を歩いていてお互いに認識し合える関係性を作っていく。ジェネレーションを越えて作っていくということを東京、杉並の荻窪駅の真ん中で、地元ということを子供たちとともに意識しながら活動している、それが杉並全体の中学生の防災レスキューであり、安心・安全であり、それから、先ほど申し上げた自分たちの力で自分たちの間に起こるいじめを解決していくという自主的な活動につながっている。
その一番根底を支えるのは、地域の大人たちの地域運営であるということで、責任を持って関わっていく姿と、それから、学校を丸ごと地域社会で応援していくという体制が一番肝心なのではないかなと。そういう信頼できる大人の下で子供たちは大人になっていく。今も実はうちの中学校では、今年、159名が中学校防災レスキュー隊の隊員になっているのですが、2年前、3年前に卒業した生徒が高校生になって戻ってきて、中学生と一緒になってリーダーになって活動してきてくれている、そういうつながり感を今後も作っていくような活動にしていきたい。
こちらの報告をおまとめいただく際には、コミュニティ・スクール、地域・学校運営をするところ、それから、学校と地域が連携協働しているというところがその母体を支えていき、多くの問題を地域のこととして自らが課題解決できる、そこに一番つながっていくということを是非置いていただければなと思っております。
私からは以上でございます。どうも御清聴、ありがとうございました。
【小原部会長】  ありがとうございました。
それでは、次に、遠藤委員から資料の説明をお願いいたします。
【遠藤委員】  参考資料1になります。宮城県の地域連携の取組についてですけれども、資料をめくっていただきまして、2ページ目、宮城県における人的配置での防災・安全対策の構築ということで、宮城県では各公立学校、全ての公立学校に防災主任を配置しておりまして、各学校の防災教育・防災体制の中心的役割を担っていただき、さらには地域との関わりもコーディネーター役として活動をしております。
中身は、校内活動、校外活動ということで、地域との訓練の実施に係る調整ですとか、そういったところを任務としてやってございます。また、右側の方ですけれども、安全担当主幹教諭ということで、小・中学校になりますが、地域の拠点校に、現在、仙台市を含めて80名配置をしてございます。昨年度までは防災担当主幹教諭ということで、防災を中心に防災主任が取りまとめ役ということで活動しておりましたが、今年度からは学校安全の3領域に広げて、防災主任、また、各学校の安全担当の調整役ということで取組を進めてございます。また、いじめ・不登校に関する地域連携の業務も、今年度、加わっております。
次のページをお開きください。3ページになります。防災主任・安全担当主幹教諭を中心とした地域連携のイメージということで、防災主任、各学校で地域とも関わっておりますけれども、その取りまとめを主幹教諭がしている。ですので、市町に複数校ある場合は、そういったところを主幹教諭の方が取りまとめて、地域との関わりを推進していくといった状況でございます。
4ページ目をお開きください。一つの事例として、大崎市立岩出山小学校の地域連携の事例を紹介させていただきたいと思いますが、大崎市は、内陸に位置しておりまして、平成18年に合併をした町でございます。学校が小学校5校、中学校1校というところで、この中心校にあります岩出山小学校に安全担当主幹教諭を配置しているというふうなところでございます。
次のページをお開きください。5ページになります。この岩出山小学校におきまして、学校・地域防災(安全)委員会を組織してございます。昨年度までは防災委員会ということだったんですけれども、安全3領域に広げて、地域との関わりを持って子供たちの安全を考えていくという取組で、このように防犯の関係者の方々、また、警察の関係者の方々が集まってございます。また、学校のPTAの方々も一緒に入ってございます。さらには旧町内の防災主任の方々も参加をしてございます。
次のページをお開きください。どんな内容をお話ししているかということですけれども、6ページ目になりますが、年3回の会議の中で、災害や事故が発生した場合のそれぞれの対応について、また、連携しなければならない点というところを確認しており、さらに、各学校の防災教育や安全教育の取組についても地域の方々から助言を頂いたりというところをしてございます。
下の方に「歴史編」、「現代編」ということでありますけれども、これは昨年度、まず大人がしっかりと地域を知る必要があるのではないかということから、ここの安全担当主幹教諭がこの委員の方々のお知恵を借りながら作成をしたものでございます。
次、7ページをお開きください。今年度の取組について紹介させていただきますけれども、中学校区の合同の引渡し訓練を実施するということで、その実施に向けた話合いが6月に持たれております。実際、実施したのは7月ということで、スクールバス等をたくさん使っている学校はあるんですけれども、そういった中で意見交換がされてございます。
また、防犯対策につきましても協議をされまして、岩出山小学校の不審者対応の取組につきまして話をしてございます。この中でも、学校によっては、警察が学校に到着するまで5分以上かかる距離なんだというふうな話があり、いろいろ確認をされてございます。こういったところを各学校の担当者、防災主任が各学校に持ち帰って、それぞれの地域と学校で話合いを持っているというところでございます。
次のページをお開きください。合同の引渡し訓練を行った新聞記事になってございます。ちょっと見にくくて、大変申し訳ございません。こういった会議等を通しまして、地域の方々が安全意識の向上に更につながっていっているということが成果としてはあげられるかなと思ってございます。
次のページ、9ページをお開きいただけますでしょうか。宮城県の地域と連携した今後の学校安全の体制につきましてですけれども、紙面のように整理をしてございます。これまで防災に関しましては、まず県レベルの防災教育推進ネットワーク会議ということで、今村委員、小川委員にも出席いただいておるんですけれども、教育庁の関係各課の課室長、また、各教育事務所の所長、あと校長会、警察、警備課、生活安全課、そのほか大学の先生方に参加いただいて、県としての防災教育の在り方、地域連携の在り方について、ここで協議をして、圏域ごと、市町村ごと、学校ごとということで、県としての取組の浸透であるとか、又は地域の実情に合わせた連携強化を図る仕組みをしてございます。これに加えて、来年度から交通・生活安全についても一緒に考えていきましょうというところで進めておりまして、先ほど紹介させていただいた岩出山小学校については、ちょうどステージ2辺りのところに入ってくるかと思いますけれども、旧市町というところですので、こういったところで展開されているというところでございます。
最後、10ページでございますが、今後の安全教育の取組ということで整理をしたものでございます。これまで東日本大震災以降の取組、主幹教諭の配置、防災主任の配置をして、ネットワーク会議等を開催してございます。そういった成果から、地域、県レベル、圏域レベル、市町村レベルでの連携が少しずつ図られてきているといった現状でございます。
今後は、防災のこれまでの取組を生かして、総合的かつ効果的な学校安全推進につなげていく取組を、地域とともに構築できるように展開をしていきたいなと考えてございます。
以上です。
【小原部会長】  ありがとうございました。
それでは、お二方の発表に対する質問等がございましたら、どなたもよろしくお願いいたします。
【藤田委員】  大阪教育大学、藤田です。生重先生には以前、地域とともにある学校の在り方に関する作業部会で御一緒させていただきました。ありがとうございました。
それで、2点、生重先生にお伺いしたいのですが、議論の際に、今日も出ていました、いわゆる地域学校協働本部の活動の中で、各学校の中に連携担当教諭等の設置が望ましいという文言があったと思うのですが、先生が担当しておられる杉並の学校でのそういった連携担当教諭の設置状況はどのぐらい進んでいるのかということをお伺いしたいのと、もう1点、これは先生のお考えを今日お示しいただいた中でも、やはり協働ということを通じて、子供の安心・安全、また、地域の安心・安全に一緒に責任を持つことの大切さというのが、これはコミュニティ・スクールでも、また、学校安全の推進においても大変重要なポイントになるかと思っておりますが、やはり子供の安全・安心を担う活動を担う人材の確保が高齢化とか、また、特定化されてしまうという課題があるのですが、そういった中で、今日、御指摘いただいた地域学校協働本部の活動の中に、子供たちの安心・安全を担う、そういった活動の人的な工夫というものについて、先生のお考えがあればお聞かせいただきたいと思いました。
【生重理事長】  ありがとうございます。最初の質問については、予算措置がまだされていないので、連携担当教員は1名も配置されておりません。ただ、私どもは早い段階から連携を進めている町なので、主幹教諭、それから、副校長、校長先生、それから、普通に学校の教員も常にそういう場に出てきてくれる。それから、学校を越えて情報交換会をするというのも、1年に1回、広いエリアを分区に分けて、七つのエリアで行うのですが、そのときには、地域側の責任者2名とともに、学校から必ず地域連携担当として、出てくるようになっています。私どもの願いは、できれば予算措置されて、しっかり文書として起こってくることを望みますが、今の段階ですと、前向きに取り組んでくださる各学校が意識を上げてくださるために、様々な担当になった先生たちを私どもの情報交換の場に送り出してくれる学校長がすばらしいなと思っております。連携担当というところの措置がなされることを心から願ってはおります。
2つ目の質問についてなのですが、割と町ぐるみ、行政も含めて例えば子供たちの通学路の安心・安全は、1学期の間は保護者も割と総掛かりで、交代で通学路安全のための活動をします。特に1年生の場合は、PTAの本部役員とか、委員が交代で。それではPTAさんに負担じゃないかと言われるかもしれません。でも、意外とヒヨコちゃんたちに毎年会うのが楽しいと、PTAの人たちが毎回、あの黄色い帽子をかぶって、そこで顔を覚えて、名前を覚えて、学校に来ても声を掛ける関係性をPTA側も作れるので、楽しいと、私の知っているPTAの方は言ってくださる。行政が手当してくださっているところの安全指導の皆様方は、高齢化はしているのですが、結構全区でやっているので、定期的に募集があって、割と人気が高くて、いつの間にか引退なさっていて、次の世代にバトンが渡っているような気がしています。
入学式とか卒業式には必ず御出席くださるので、そのときにお話しするのですが、御自身たちの体力が続いて、元気でいるうちはずっと続けていきたいと皆さんが言ってくださっていて、結構そういうところで安心・安全で、例えばシルバーという形で、給与を若干高齢の方たちに発生させてくださる行政がいて、なおかつ、シルバーポイントというのがうちの町にはありまして、そういう活動をするとポイントがたまります。そのポイントで何か特典があり、それで子供たちともつながり、朝、横断歩道だけじゃなくて、通学路も含めて子供たちとの会話が、いつ見掛けてもなされていて、それは生きがいになってくれているような気がしております。ですから、ほどよいところで定期的に、御自身たちが体力の続く限り、続けていってくれるのではないかと思います。
それと、杉並は、小学校の校庭が芝生緑化なのですが、芝生緑化の緑化推進にも、プラスでお手伝いしてくださる安心・安全指導員の方たちがいて、そこもみんなで運営していく際に、地域が運営するのですが、芝生緑化隊の方たちは、特典として芝生の上で1年に1回、一番きれいなときにみんなでランチをする。それが世代間交流になっていて、若いお父さんやお母さんや、御年配の御自身のお嬢さんや息子さんじゃない方たちや、子供たちも含めてみんなで作ってきたものを食べ合うランチ会とかをやっている姿を見ると、これがパートだからとかという義務感ではなく、地域のつながり感みたいなのでやっているので、私の考え方としては、やはり顔の見えない御年配者とか、顔の見えない状態の方たちをなるべく少なくしていって、みんなが一朝事あるときは助け合える、顔の分かる関係性という意味においては、花を植えに来てくださったり、田んぼを手伝ってくださったり、芝生の手入れを手伝ってくださったり、そして、子供たちの顔と名前を覚えて、安心・安全の面でも全面的に一緒にやってくださる、そういう地域をこれからも続けていきたい。
私たちの学校へは自転車に乗っていってはいけないのですが、学校開放を利用している方が「自転車に乗っていきたい」ということでの話合いにも、コミュニティ・スクールがあることで、学校副校長や学校長が話合いの真ん中に立つ、矢面に立つことではなく、我々利用する地域の者として、みんなで話し合って解決していくという熟議の考え方を課題解決にも向けていっている。そういうところで、みんなが自分の主張だけではなく、みんなが使いやすい学校づくりというようなことを意識することで、さっきも言いましたが、小学生も中学生も、大人たちが課題に向けて真摯に話し合う姿というものが随時、公開されているので、子供たちの中でも自由にきちんと自分の考えを述べていい。そして、自分たちも、自分たちのこととして責任を持つということが子供にも伝わっていっているんではないかと思っております。
【藤田委員】  ありがとうございました。
【小原部会長】  それでは、次に、小川委員から、児童生徒の通学路安全に関する効果的な取組として御意見を伺います。よろしくお願いいたします。
【小川委員】  東北工業大学の小川でございます。よろしくお願いします。
通学路の安全に関する効果的な取組について、最近、私が関わっております通学路の安全推進事業でいろいろと見いだされたことなどを少しまとめまして、今日、報告させていただきます。よろしくお願いします。
最初に、これまでやってきた推進事業の成果というのをまとめるに当たっては、リスクという概念を使った方が説明しやすいのではないかと思っております。交通安全の問題をリスクとして捉えていくと、いろいろと説明上の利点があります。学校安全の3領域というものをリスクという概念を用いて説明することによって、一つ、統一した視点で説明できるのではないかと思っております。
例えば災害安全の問題については、自然環境のリスクがある環境の中で私たちは生きているわけですから、その自然環境のリスクにどう適応していくかということを学校安全教育の中で進めているのだと説明できます。
それから、生活安全、防犯の問題も、防犯上のリスクというのがあって、そのようなリスクがある生活環境の中で私たちは生きているわけですから、生活環境のリスクにどう適応していくかということを子供たちと一緒に学んでいるということになります。
こういう枠組みの中で見ると交通安全も同じことであって、交通事故のリスクというものがあり、そのリスクのある環境の中で、子供たちの安全をどう大人が守っていき、子供たちがどう適応していくか、そのために教育をやっているのではないかと思っています。最近、リスクという概念を使った方が説明しやすいと思っており、今日もこの概念を使って説明していこうかと思っています。
一般的に、ハザードとリスクという概念は、このように定義されております。危害を与える可能性のある環境内の状況・条件、他者の行為というものがハザードであり、そういうハザードというものが道路環境の中にある。それを特定するということが最初にあって、具体的には、見通しの悪い交差点であるとか、大型車が頻繁に右左折するような交通条件がハザードに対応します。これに対して、具体的にハザードが特定されていきますと、そういう場所では、どんな事故が具体的に起きるのか、その可能性が見えてきます。これがリスクの概念です。ハザードが特定されてくれば、この交差点では出会い頭事故が発生する可能性があるのではないかとか、右左折時に子供がはねられる可能性が高いということが見えてくる、そういうことを私たちは通学路の安全推進事業でやっているのではないかと思いました。
そうしますと、安全推進事業が目指していることとは何か、それは大きく分けると2点にまとまります。
一つは、通学環境内のリスクを抽出し、分析し、管理することです。危険箇所点検で住民の方々、地域の方々から、危険箇所を取り上げていただいたというのは、リスクの抽出であり、それをハザードマップで示していった。その後、合同点検で連絡協議会を開催して、専門家がそれぞれの専門的な視点で通学路のリスクを分析した。実際、登下校の様子を観察し、関係者間でリスクを共有して、ここではどういうふうに、どんな事故が起きるのかということを分析した。そして、最後、具体的な対策案を講じる。これはリスク管理の問題ではないかと思います。道路環境改善、規制、旗当番などをどうするかという話をしながら、マネジメントを進めていくということになるのかと思います。
一方、教育の面については、リスクがない環境ということはあり得ないわけで、交通事故のリスクが考えられる、想定されるのであれば、子供たちにそのリスクというものをきちんと伝えて、適応能力を育成する。そういう教育を展開する必要があると思います。具体的には、子供たちにリスク情報を共有してもらう。マップを子供たち自身の手で作っていく中で、具体的なリスクが共有されていくということを子供たち自身が学んでいく。そして、具体的なリスクが分かれば、リスクを回避するためには、どうしたらいいのかという行動基準を考える、例えば確認するとか、止まるとか、そういう行動基準を自分たちで考えていく教育を展開してはどうかと思います。こういうふうに考えていきますと、通学路の安全推進事業でやっていることというのは、リスクコミュニケーションの交通安全版だと思っております。
これは、具体的に私が関わった合同点検の中で、調査の対象となった危険箇所の写真を並べたものです。何十か所という危険箇所を見てきましたが、ここは危ないぞというところをとりあえず手当たり次第見ていったわけです。この段階では、リスクを抽出していると考えます。
たくさんの危険箇所を見ていくと、その特徴から幾つかの分類ができます。歩車分離が不十分、側方間隔が不十分、それから、子供たちのそばを高速走行する車がある。特に抜け道利用が問題です。それから、信号、交差点を横断する際、右左折車両と交錯する。死角状況がある。こういった箇所が危険箇所として挙がってきます。それぞれに対して連絡協議会等を開催し、アドバイザーが入る中で、実際、現地へ行って、ここはどう危ないのかということを詳細に調べ、分析していく。そうすることによって、交通事故のリスクがより具体化してきますので、どうしたらいいかというハードウェア的な対策も見えてくるし、子供たちに伝えるべき内容も具体化されていくかと思います。
できましたら、通学時間帯に、実際に子供たちが通学しているときに視察をすべきだと思います。昼間に行っても、交通量が少ないものですから、何がどう危ないかよく分からないんです。実際、朝の通学・通勤時間帯に行きますと、こんなにも危ないところを子供たちが毎日、横断しているのかということが見えてきます。一つの例ですけれども、静岡県で撮影した様子を御覧ください。
(映像上映)
今、カメラを持って立っているところに子供たちがいます。子供たちは、左側の方向に渡るのですが、今、左側の方向は赤になっているので渡れない。バスが出てきましたが、このバスが行き来するところが旧街道で、非常に交通量が多い。抜け道利用されている。さらに、子供たちは左側に渡りますが、その方向には渋滞車両があります。抜け道と並行して走っているバイパスがあり、そのバイパスに入ろうとする車が渋滞していて、その渋滞の最後尾の車が交差点の中にたまってしまっているという状況です。
抜け道利用する車が強引に来ますので、たまっている車と直進できない車があって、こういうふうに交錯するわけです。こういう状況です。
今、カメラを持っているところに子供たちがいます。信号がここで黄色になりますが、ものすごい勢いで対向車が走ってきます。ここを子供が横断する。こういうような状況です。対向車の行き違いが十分にできないものですから、もし交差点内で正面衝突でもするならば、子供たちが今、待機しているところに衝突した車が飛んでくる可能性があります。しかし、子供たちが待機しているところには、ガードレールはありません。もし対向車同士の衝突事故があったら、飛んできた車が子供たちに当たるリスクがあるということが一つ目の問題です。
それから、もう一つ問題があります。子供たちはこのように横断するのですが、今、右側から右折車両が来ました。横断している子供たちが、交差点の中にたまってしまっているバンの陰に隠れて、見えなくなります。これが、もう一つの事故のリスクです。今、右折車両が曲がってきましたが、このように対向右折車両にはねられるというリスクが見えてきます。
こういうふうに、実際、朝の通学あるいは夕方に、子供たちが通行する時間帯で視察することによって、ここではどんな事故が起きるかということが具体化されると思います。
御参考までに映像を御覧いただきました。
さて、子供の教育についてですけれども、こういうリスクある環境にどう適応していくのか、教育はそれを支援するための能力開発だと思っています。最も手っ取り早い具体的な教育実践としては、マップ作りがあります。校区の危険箇所に関する情報を、自分たちで地図に表し、どこがどう危ないのかということを共有する。そして、各交差点、あるいは危ない箇所における危険予測を学習する。危ない箇所が分かってきましたら、リスク回避のための学習を行う。実際どう通行すれば安全になるのかを自分たちで考えていく。「止まる」、「見る」、「確かめる」をキーワードにして、それを具体化していってはどうかと思います。
次に、私がこの安全推進事業で関わった学校での取組を幾つか紹介します。一般的なやり方としては、左の写真にありますように、子供に地図を作ってもらって、その地図をこういう形で表していきます。ただ、危険というのは目に見えるものではないので、地図上に余り多く危険箇所が示されない場合は、危険を見る視点というものを定める必要があります。例えばこういう沿道施設の出入口などは事故が起きやすいということを子供たちに示してあげると、そう言えば自分たちの地域にもよく似た場所があるなということで、子供たちの意識も高まって、地図上に示される危険箇所の数が増えていきます。それが終わった後、具体的な危険箇所の映像などを使いながら、リスク回避のための学習を行います。
具体的に、ある交差点を取り上げて、ここはどういうふうに横断すれば安全になるかを自分たちで考えてごらんということをやっています。「止まる」、「見る」、「確かめる」をキーワードにしまして、どこで止まったらいいか、何を見たらいいか、どういうふうに見たらいいか、何を確かめていくか、どういうふうに確かめていくかということを子供たち自身でグループ討議をしていきます。
一つ、この映像を御覧ください。実際にこのような映像教材も作っています。これはメイキングしたものですが、静岡県下田市の大賀茂小学校で、校長先生に協力していただきながら作りました。ここでの問題は、信号がなく、右折車両が歩行者に道を譲って、子供は道を譲ってくれるものですから、パッと渡ってしまう。ところが、直進レーンがあり、この直進レーンを走ってくる車は、この右折車両があるために、子供が見えないんです。ここでよくヒヤリ・ハットが起きるということが具体的に分かっておりますので、もしここで事故が起きるとすれば、直進車両にはねられるという事故が想定されます。このリスクを子供たちに伝えたいがために、こういうふうに具体的に映像を作って、子供たちに、ここでは何が起きるのか、どこで止まって何を見て、何を確認すべきか、ということをグループ討議します。こういうふうにリスクを回避するための教育を行っています。
さて、こういうリスクに適応していくための教育としては、マップ作りの教育が一番手っ取り早くて、効果があるのではと思っています。
そこで、静岡県での取組が非常に参考になると思いまして、今日、実践例を幾つか御報告させていただきます。静岡県では交通安全リーダー制度という仕組みがあり、6年生を交通安全リーダーに指定して、マップ作りを自分たちで行い、地域の人たちと交流する、そういう制度があります。これは上級生として、下級生の模範となるような行動を促す制度として、30年ほど前に始まった静岡県独自の取組です。
その制度の行事として「交通安全リーダーと語る会」というイベントがあります。この行事では、地域の方と子供たちが一緒に学びます。子供たちが作った手作りマップを基に、子供たち自身、どこがどう危ないかを発表し、警察、交通安全指導員、道路管理者、PTAの方々、自治会の地区の方々に入っていただいて意見交流を行います。実際、本当に真剣に、熱心な議論を行っていて、子供たちの方からは、ここは危ないのでカーブミラーを付けてほしいとか、そういう要望を出していきますし、大人たちの方からは、君たちがふだん歩いている姿を見ていて、こういう点が気になるというような発言があります。本当に真剣に議論し、それぞれが意識を高めるということが行われています。地域と一緒に学ぶ教育として、非常にいい制度だなと思いました。
一方で、この制度には、いろいろ課題があるということも分かりました。マンネリ化すると、道路改善の要望のみにとどまってしまうということが起きます。そこで、通学路安全推進事業を展開するに当たり、子供と大人それぞれに課題があるのではないか、子供たち自身も事故に遭わないためにやるべきことがあるでしょうし、地域の関係者の方にもやるべきことがあり、それぞれが自分の課題を再認識してはどうかという方向性を提案しています。子供たちが一生懸命勉強するものですから、大人の方も何かできないかという気持ちになり、警察、道路管理者の方々も、自分たちも何かできることがあるだろうということで、本当に真剣に考えていただいています。
それから、交通安全リーダー制度では、高学年、主に5年生、6年生が学ぶのですけれども、実際には1・2年生の事故が多い。だから、5・6年生が学んだことが1年生にどう還元されるかということが今後の課題ではないかと、今、議論しているところです。今年度は、1・2年生に対しても、5・6年生の児童が、自分たちが学んだことを伝えていくという取組を進めようと計画しています。
それから、学力向上や時間確保の問題も考えないといけません。こういう発表会や行事をやると、多くの時間を使います。他の勉強との兼ね合いがあるのは確かですが、これはやり方次第かなと思いました。後ほど御紹介する事例に、国語の単元とうまく連動させた実践例があります。これは裾野市での事例なのですが、子供たちの発表の表現力がすばらしくて、上の写真を御覧いただきたいのですけれども、発表が終わった後、地域ごとにグループに分かれて、大人たち、それから、5年生、6年生が一緒に議論するわけです。1・2年生が事故に遭う確率が高いことから、1年生に対してどうしたらいいのかと、子供と大人が本当に真剣に議論していました。
この議論の後、まとめの発表を行いました。ここに書記係の子が座っておりまして、いろいろな意見が出てきて、それをまとめて発表するのですが、その発表の仕方が非常に見事でありまして、表現力がとてもすばらしかったです。大人たちもその発表を見て感動しました。あらかじめ用意されたシナリオを読んでいるのではなく、その場でまとめて要点を定めて表現するというものでした。余りにも見事だったので、どういうふうに指導したのですかと、担当の先生に聞いたら、国語の表現の単元で“構成する”というところがありまして、それと関連付けてやりましたとおっしゃっていました。ああなるほどと思いました。要するにこういう行事をこなすことによって、知らず知らずの内に、子供たちの学力が自然と上がっているというやり方です。非常にうまいやり方だなと思った次第です。
それから、下の写真は、石巻市での取組の事例です。ここでは実際に、5年生の児童が学んだことを、1年生、2年生にフィードバックすることが行われています。人形劇、ペープサート(紙人形劇)を使って、この交差点はこう危ないよということを低学年に伝えたということであります。
最後に、まとめます。この通学路安全推進事業ですけれども、成果としては、連絡協議会を通してお互いが協力体制を基に情報共有を行って、非常にいい協力体制ができていると思います。それぞれの役割が認識できて、今までばらばらで進めていたものが、まとまってできるようになったという意味で、一定の成果が得られたのではないかと思います。
それから、「交通安全リーダー制度」、「交通安全リーダーと語る会」のように、地元の地域の方々と一緒に子供たちが学ぶ交流の場がありますと、それぞれの立場での課題が再認識され、安全に対する取組が促進されるということも感じました。
一方で、課題もあり、地域連携が容易にできる地域と、そうでない地域があるということも分かりました。なかなか地域連携ができないところは、こういう推進の仕方は難しいということも感じました。
それから、うまくカリキュラムを作って実施すれば、非常に効果的になるということも分かった一方で、それができる先生がいるか、いないかというのも大きな問題だと思いました。カリキュラムを構築する力や指導方法に精通した、高度な技能を有する教員がいるところでは進んでいく。特に、私の感じでは、40代ぐらいで、能力的に力のある先生がいる学校ではうまく進んでいくという実感があります。
地域と連携して地域の交通安全をみんなでやっていく、こういう事業を推進していくと最終的にどうなるかというと、通学路を通行する大人たちの車利用の問題だということになります。抜け道利用で、猛スピードで走る車がいる。このような人たちに、どういうふうに訴えかけていったらいいのだろうかという最終的な問題も少し見えてきました。この問題が最後に残るのではないかと考えております。
以上でございます。御清聴、ありがとうございました。
【小原部会長】  それでは、ただいまの説明を受けて、御質問等がございましたら、どなたからでも結構ですので、名札をファイルの上に掲げていただければと思います。
【国崎委員】  御発表、ありがとうございました。危険な箇所を特定して、そのリスク情報を共有するということが主な話だったと思いますけれども、昨今、その危険な箇所にとどまらず、交通ルールを守って青信号で横断歩道を歩いていたのに、事故に遭ってしまうとか、それから、集団の登下校中に、子供の列に車が突っ込んでくるというようなこともあったりもします。子供たちは、学校や地域でここが危険だというところは注意をしますが、それ以外のところは無防備になってしまうというようなところもあると思います。その点につきまして、先生はどのようにお考えでしょうか、どのように教育をされていますでしょうか。
【小川委員】  実際、子供の姿を見ているとやっぱり無防備だと感じます。先ほど、ビデオ映像で御覧いただいた交差点でも、周りを全然気にせずに渡っていました。やはりそこは教育で伝えていくしかないかと。危険予測に加えて、ここは、信号が青でも曲がってくる車がいるのだから、ちゃんと見ようねというように、知識を得た上で行動の訓練をしていく必要がある。それは避けて通れないと思います。
それから、もう一つ、ルールとリスクは、ある面では一致するし、ある面では違うということも、私は感じています。子供たちには、ルール、ルールということで私たちは指導してきました。子供たちも、そのルールを知っている。ところが、一方でルールさえ守っておけば安全という意識も、私たちは植え付けてしまったのではないか。ルールに従っていたとしても事故に遭うんだということを学ぶ必要があります。リスクという概念を学習していく必要性があります。小学生には難しいかもしれませんが、中高生になりましたら、リスクとは何かを理解し、リスクマネジメントの力を身に付ける必要があります。まずは自分のリスクを管理し、リスクの少ない行動を取ることができるように考えていこう。そして、仲間や地域の人たちのリスクも管理し、そして、地域のリスクについても管理できる、そういう力を身に付けることもすごく大切だと思います。とにかくルールとリスクについての学習が必要だと思った次第です。ありがとうございます。
【小原部会長】  それでは、野津委員、お願いします。
【野津委員】  筑波大学の野津と申します。小川委員、ありがとうございます。私、健康教育、安全教育の全体を通してリスクマネジメント教育というのがもっと充実していくことが必要だと考えておりまして、今日の先生の交通安全に関わってのお話を聞いて、とても興味深く、勉強になりました。ありがとうございました。
日本人はとかく、安全に対してゼロか100、白か黒かというような捉え方で、両極端になりがちと思います。リスクの概念について正しく理解できるようにすることが、今、求められているんだろうと思うんですが、先生の今日の御発表ではリスク回避とか、リスク予測という表現がありました。片や、これまで文部科学省の方では危険予測、危険回避という表現をしているんですが、どちらの用語を今後、こうした教育のところで使っていったらいいのか、もしお考えがあればお聞かせいただきたいと思います。いかがでしょう。
【小川委員】  私も、その場、その場で言葉を混乱させて使っているところがありますが、子供の前でリスクという概念は難しいので、危険予測とか、危険回避という言葉を使うようにしています。ただ、高校生ぐらいになったら、もう分かるんじゃないかなと思っています。リスクとはどういうものかを理解する上でも、高校生にはリスクという言葉を使った方がいいと思います。全てに可能性があるのだと。災害やけがの可能性があるのだと。ルールを守っていれば、それで十分だということではない。そのことを考える教育をしないと、学校安全の教育はそこで止まってしまう。想像しないし、可能性を考えないものだから、何でこんなことをやらないといけないのかという話になって、そこから一歩も先に進まないんですね。やはり発達段階に応じて、リスクという概念を使っていけたらいいと思っています。答えになりましたでしょうか。
【野津委員】  子供たちは学校で確率の学習もしますので、その辺も考えてどうかということもあるし、小学校で英語もやるようになりますから、これまで以上にリスクという言葉を使って教えていけるのかもしれないと個人的には思っています。どうもありがとうございました。
【小川委員】  どうもありがとうございました。
【小原部会長】  それでは、次に、文部科学省から、熊本地震の被害を踏まえた学校施設の整備について、報告をお願いいたします。
【西村施設企画課課長補佐】  文部科学省施設企画課の西村です。資料3に基づきまして、熊本地震の被害を踏まえた学校施設の整備について、緊急提言の概要を御紹介させていただきたいと思います。
こちらは有識者による検討会を設けて御検討いただきまして、先月末、7月29日に取りまとめて公表しているものでございます。概要の説明に入る前に、1枚、資料をおめくりいただきまして、右肩に参考と振ってあるものから御説明させていただきたいと思います。
参考として本検討会の設置要綱をお付けしておりますが、まず趣旨といたしましては、学校施設は、子供たちの学習・生活の場であるとともに、非常災害時には地域住民の避難所としての機能も実際には担っているところも多々あるところでございます。
三つ目の段落ですけれども、今年の4月に発生した熊本地震では、学校の校舎本体や、体育館の倒壊・崩壊といったものは発生しなかったということでございますが、その一方で、体育館のブレース、これは斜め材です。こういったものが破断するとか、あるいは構造体ではない天井、窓や外壁といった非構造部材が破損するなどの被害が発生し、そのような中で今、様々な課題が生じているところでございます。
そういったことから、有識者による専門的、実務的な検討会を開催いたしまして、これまでの学校施設整備の効果を検証するとともに、今後の課題についても、御議論いただきまして、提言を取りまとめたということでございます。
また、更に1枚おめくりいただきまして、委員としては、11名の先生方に務めていただいておりました。建築の構造、建築計画、建築環境といった建築の専門家のほかに、防災研究としては群馬大学の片田先生に入っていただきまして、そのほか、仙台市、神戸市、長岡市といった過去、地震による被害を受けた自治体の方にも参加していただき、御議論を頂いたということでございます。ちなみに、座長は、東洋大学名誉教授の長澤先生に座長を務めていただきました。
1枚目に戻っていただきまして、緊急提言の概要でございます。本提言でございますけれども、構成としては、大きく3点の構成になっておりまして、まず1点目が、児童生徒の安全確保ということでございます。それから、概要の後ろに行きますが、2点目としては、避難所機能の確保ということでございます。そして、3点目といたしまして、1点目と2点目を踏まえながら、今後の推進方策ということで緊急提言を頂いたということでございます。
それでは、1枚目に戻りまして、概要を御説明させていただきますが、まず1点目、児童生徒の安全確保ということでございます。こちらにつきましては、まず1といたしまして、構造体、それから、体育館等の吊り天井といったようなものの耐震対策ということでございますが、こちらにつきましては、これまで国公立学校の施設においては、柱やはりなどの構造体の耐震化、それから、体育館といったような天井高の高いものの吊り天井の落下防止対策について、平成27年度末までの完了を目指して取組を進めてきておりまして、これはおおむね完了といったところまで進んできたところございます。
今回の熊本地震では、最大震度7の地震が立て続けに2回、それから、余震も7月の中旬まで1,900回を数えるまで発生しているということでございますが、耐震化が完了していた学校施設については、倒壊・崩壊等の大きな被害が出ていなかったということでございます。一方で、私立学校については、耐震化率が国公立学校に比べてはまだやや低いというところがございまして、耐震化が未完了のものもあったわけでございますが、そういったような耐震化が未完了の学校施設においては、構造体に甚大な被害を生じたものもあったということでございますし、吊り天井に関しては、耐震対策が講じられていた吊り天井では脱落被害がなかったというような状況でございます。
そういったようなことも踏まえまして、今後の方向性としては、この構造体の耐震化、それから、体育館等の吊り天井については、現行の方針に従い、引き続き推進していくことが望ましいといったようなことで提言に盛り込んでいただいてございます。
それから、大きな2点目でございますが、吊り天井以外の非構造部材の耐震対策でございます。どういったものかといいますと、下に被害状況の写真を幾つか載せておりますが、例えば壁の落下でありますとか、窓がサッシごと脱落する、あるいは校舎の天井が脱落するといったような被害が見られたということでございます。
こちらについては、これまで柱やはりなどの耐震化というものを最優先に進めてきた一方で、老朽化が進行してきた学校施設というのが増加してきております。そういう中で、今般の熊本地震では、こういった外壁や窓等で古い工法のもの、要はその取り付け方が古いものや、あるいは経年劣化したものの被害が顕著であったということでございました。
そういったことから、今後の方向性といたしましては、老朽化対策を行っていくことが重要であるということでございますが、これはかなりの量になりますので、優先順位を付けて計画的に老朽化対策を行っていくことが必要だろうというようなことで提言に盛り込まれているところでございます。
続きまして、裏面でございます。大きな2点目、避難所機能の確保ということでございます。学校における避難所としての防災機能の強化につきましては、5年前の東日本大震災の教訓を踏まえて、公立学校でも国庫補助制度を新たに創設するといったようなことも取り組まれておりますし、様々、普及啓発、あるいは指針等が策定されているところでございます。今回の熊本地震においても、多くの学校施設が避難所となり、大勢の地域住民を受け入れて、備蓄倉庫でありますとか、あるいは太陽光発電設備等々が役立った事例もあったということでございます。
一方で、どうしても本来教育施設であることから、やはりトイレ、それから電源の確保といったようなことについては、様々な不具合、不便といったようなことも報告されているということでございます。今回の地震では、実際に地震発生後に、災害救助法に基づいた支援が行われて、環境改善が図られた事例ということも報告されております。写真には、トイレの事例といたしまして、左側は仮設トイレ、右側はマンホールトイレの写真でございます。
それから、右の2枚は空調設備でございますが、今回、熊本でございましたので、避難生活が長引くと、やはりどうしても暑くなるという懸念があったようで、空調設備についても、これは災害救助法に基づいて仮設の空調設備が設置されたといったような事例もございました。
そういったことから、今後の方向性といたしまして、こうした避難所として活用される際の設備でございますが、1点目は、やはり教育委員会、あるいは大学関係者が避難所としてどういったものが必要かというのは、なかなか判断、検討が難しいということも御議論がありましたので、報告書には、防災部局が中心となって教育委員会と連携して学校施設ごとに避難所として求められる役割、備えるべき機能、施設利用計画等々を明確にすることが重要であるといったようなことが盛り込まれてございます。
どういったものが必要かといった検討の上で、あらかじめ整備しておくもの、それから、今回の事例に見られたように、発災後に仮設等々で調達するものといったものを見極めて優先順位を付けて整備していくことが重要であろうということ。それから、整備するといった場合においても、学校施設関係予算のほか、防災関係予算等々を活用して、多様な予算を活用して整備していくことが重要であるといったようなことが盛り込まれてございます。
その下にありますのは優先順位の考え方ということでございますが、いずれにせよ、地域の実情に応じてということでございますが、一つの考え方として、定義にも盛り込まれておりますが、学校施設にあらかじめ備えておくべきものとして、生命確保期、これは大体二、三日後まで、支援が到達するまでということでございますが、そういったところまでの機能を中心に、優先的に整備しておくことも考えられるということ。
それから、避難生活が長期化する場合も想定して、どういったものが生活環境の向上のために必要かということについて検討し、そういったものについては、場合によっては仮設による対応なども事前に検討しておくことが必要であるということ。
また、それとは別に、例えば障害者や妊産婦などの要配慮者、あるいは衛生面の配慮といったようなものについては、これは当初から備えておくことが必要だろうということで、報告書に盛り込まれているところでございます。
そういったような1、2の方向性を踏まえて、報告書では、3点目として今後の推進方策が盛り込まれております。実際に報告書では、国はこうすべき、地方公共団体はこうすべきと書き分けておりますが、この概要では、特に国でやるべきことを書いてございます。1点目でございますが、文部科学省は、耐震化の早期完了と老朽化対策を強力に進めていくことが必要であると。その上で、やはり今回、非構造部材の被害が多かったことも踏まえまして、非構造部材の点検、それから対策を要請するとともに、きちんとフォローアップをして実態把握をしていくことが必要であるということ。
それから、避難所機能に関しましては、どうしてもこれは関係省庁と連携しなければなりませんので、連携しながら、きちんと要請していくことが必要であるということ。それから、当然必要な予算を確保していくことが必要であるといったようなことが緊急的に盛り込まれているところでございます。
簡単でありますが、私からは以上でございます。
【小原部会長】  ありがとうございました。それでは、ただいまの報告を受けて、御質問等ございましたらお願いいたします。なお、名札を立てていただくようお願いします。渡邉副部会長、お願いします。
【渡邉副部会長】  御説明、ありがとうございました。東日本大震災の際にもやはり同じように、学校施設の整備についてという御報告があのときにもございました。そのときもやはり耐震化の効果であるとか、あるいは非構造部材の問題とかいうのは、指摘があったかと思います。
この学校施設の話が出てくるといつも感じることですけど、もちろん子供たちの安全を図るためにも、また、その避難している住民の方のためにも、こうした施設が充実していくということは大事ですが、学校はそもそも学校教育をやる場所ですので、教育機能を維持していくということはとても大事だと思います。今日頂いた資料の中にも、今後の方向性の4番目に、避難者の受入れ等、避難所機能を維持しつつ、着実な学校再開へ向けた取組も重要という記述がありますが、この点についてはどのような議論をされたかということがあれば、お聞きしたいんですが。
【西村施設企画課課長補佐】  ありがとうございます。2点ございまして、まず1点は、ちょっとこれは、学校施設とはまた別なものになるんですが、今回の熊本地震でも、例えば市民体育館とか、そのような体育施設に関しても避難所になった例が多くありました。今回の熊本地震でもある程度期間が過ぎた場合に、避難所の再編、集約というのが行われたんですけれども、今回は学校施設ということで、直接の検討対象ではなかったんですが、そういったところも耐震化を進めることが重要であろうということで、「その他」という形で、そういった市民体育館の耐震化やその天井対策というのも大事だろうと。それは学校再開を進めることにも役立つだろうというような意見がございました。
もう1点は、やはり当然学校の再開ということも重要でございますので、それに関する御議論もございまして、避難所としての活用も重要だけれども、地域が災害を乗り越えて復旧復興に歩み出す象徴的な一歩に学校の再開というのがなり得るんだということで御議論も頂きまして、避難所と併存するということも、今回もございましたので、その場合にはきちんと施設の利用というのを考えて、どこを避難所エリアにするか、どこを学校教育のエリアとするかといったようなことで、きちんと動線の交錯がないように配慮することも重要だといったことも本文には盛り込ませて、概要では少し書かせていただきました。
【渡邉副部会長】  ありがとうございました。よく分かりました。やはり学校は再開というか、僕は先ほど教育機能の維持という話をしましたが、例えば企業、あるいは行政機関ですと、事業継続計画は必ず作っていますが、学校はそういう面が少し遅れていると思うんです。ですけれども、こういう災害時こそ、学校教育を続けていくことが結局、子供たちの心のケアにも役立つということも言われていますので、お話にありましたように、学校の機能をちゃんと維持しつつ、そういった避難所をどうやっていくかという、どちらかと言えば、施設というよりはソフト面になるかもしれませんが、そういうところもやはり同時に検討していただきたいと思いますし、あと、避難所になりますと、先生方の負担という問題も出てくるかと思いますので、教員の負担軽減という面でも同時に議論していただければと思います。
以上です。
【小原部会長】  それでは、戸田委員、お願いします。
【戸田委員】  渡邉副部会長の後半の方にもちょっと関連してくるかもしれませんが、検討会は学校施設の整備に関するという施設のハード的な部分で検討されたとお聞きしました。その中で、避難所機能の確保ということで、話がありましたけど、この設備が生きるためには、その避難所に関わる人たちのその関わり方、ここで言うと学校、家庭、地域の様々な方々の連携の仕方というのが極めて重要で、ここのところをどうするかということなどについては、検討する中でお話がなかったかどうかお聞きしたいと思います。
一例を申し上げますと、私は東京都のある区の防災アドバイザーを二、三年前、依頼されて、学校の施設から、学校の防災計画、避難訓練の仕方なども含めてつぶさに視察をさせてもらって、その問題点を整理して改善などをお願いしたことがありました。その中で端的に申し上げますと、避難所の運営の責任者が誰かということが最も重要なところでした。その区では、区のマニュアルで、学校長が運営の責任者になることになっていたんです。でも、それは以前、阪神淡路大震災後に文部科学省でいろいろ調査研究をした中では、そうではなくて、学校の校長先生はじめ先生方は子供たちの安全を守ることと、教育をいかに早く再開をするかということを中心にしながら、教育ということを前提にやって、それ以外のところ、とっさのところはやむを得ないわけですけど、総合的には、地域を中心に、地域の方々の中から避難所の責任者を立てて、そして、学校の先生はどんなことをやるのか、地域の様々な方々は、何をどうするのかということをちゃんと役割分担して訓練しておく必要がある。
例えば年に一度、防災訓練などはどこでもやりますね。そういう中で避難所の運営の仕方などについても具体的に検討し考えていくべきなのではないかという調査研究報告をしています。そういうことでハードとソフトをうまく連携させながら検討して、しかもシミュレーションして毎度毎度やっていかないと、円滑な避難所運営、避難所機能の確保ができないのではないかと考えます。その辺の御検討などの状況はいかがだったでしょうか。
【西村施設企画課課長補佐】  ありがとうございます。二つあったかと思うんですが、まず1点目、やはり学校施設をきちんと生かすという観点から、ソフト面での対応も重要ではないかということでございますが、おっしゃるとおりだと思います。実は今回の熊本地震でも、これは報告書にも載せておるんですが、幾つかそういった意味で施設管理等の面で課題が報告されております。報告書に載せておりますのは幾つかあるんですが、まず一つは、例えばプールの水を生活用水として活用しようとしたところ、避難所として体育館を開けるということはマニュアルにも書いてあるし、実際に鍵は開いたんだけれども、プールの水を活用することは想定していなかったようで、プールに入る鍵が開かなかったというようなことも報告されております。報告書の中では、これもなかなか難しいんですが、いかに学校の中に避難所としての施設設備があっても、結局、実際にそれが活用できないと、それは意味がないので、学校施設を避難所として使うときの学校施設利用計画というのを策定してくださいということはこれまでも言っているんですが、きちんとそれを常にいろいろなことを教訓としてバージョンアップしていかなきゃいけない。今回、熊本地震ではこういうこともあったので、是非その点も含めて、学校施設利用計画というのを見直してくださいということを言っています。それは、プールに限らず、学校施設をどう活用するのかというのをきちんと想定してくださいということ。
それから、2点目、避難所の運営につきましては、基本的には学校の先生ではなくて、避難所が始まってしまうと、これは住民の自治が原則なんですけれども、開設に当たっては、防災部局がその責任を負うというのが一般的だと思います。学校の先生方が責任をというのは聞いたことがないんですが、一般的には防災部局が責任を持って開設するということだと思います。
この報告書の中でも議論がありましたのは、先生方の負担軽減という観点で、やはりまず先生方の本来業務というのは、子供たちの安全確保や安否確認であろうと。その上で、どうしても学校が避難所として使われることも多いことから、初期段階においては、学校の先生方が協力するといったことも実際としては多々あり、今回の熊本地震でも非常に大きな役割を担ってもらったという評価がある。その一方で、防災の担当、役割、責任関係が明確でないといったような課題も指摘されているといったような御議論もございました。
これについては、この会議の場では突っ込んだような議論はしなかったわけですけれども、これは文科省の方でまた別途そういった課題意識を持って、議論が行われていますので、その結果も踏まえながら、対策が講じられることが期待されると報告書に盛り込んでいただいております。御指摘の点はごもっともと思います。
【小原部会長】  和田課長、お願いします。
【和田健康教育・食育課長】  少し補足をいたします。渡邉委員、戸田委員からの御指摘は、非常にごもっともなことでございまして、避難所運営というのは、基本的には防災部局が中心となって、その中で学校が組み込まれるという形が理想ではあります。ただ、実際何か発生してしまった場合に、学校が避難場所になっている以上、その地域の方が学校に押し寄せて、たまたま居合わせた先生が非常に苦労するというパターンは熊本地震でも、東日本大震災のときもありました。まだ、文部科学省の内部、初等中等教育局の内部の話ではありますけれども、今回の熊本地震の件もありましたので、そういったソフト面で実際にどうしたらいいのか、どうあるべきなのかということを、整理検討している段階です。学校安全部会でも、今後もし発表できるような機会がありましたら、御説明することも考えたいと思いますが、いずれにしましても、ソフト面についても若干の危機意識を持って考えているという状況でございます。補足をさせていただきます。
【小原部会長】  それでは、清水委員、お願いします。
【清水委員】  ありがとうございました。頂いた資料の後半にある参考のことについて、お願いやら、何やらと思っております。この参考の裏面を見ていただきますと、御覧のように、いろいろな専門家の先生方が多うございますが、私学中高関係の先生は少数です。前回頂いた資料を御覧になるとお分かりのように、私立学校の耐震化率がまだまだの状況になっております。これは本当に困ったもので、何とか働き掛けをしていただけないだろうか。今度、学校施設の整備に関する検討会でも、そういう声を上げていただきたいというお願いでもございます。
といいますのは、私立学校は、地域の中で緊急避難箇所として指定されるケースは、公立よりはかなり少のうございます。しかし、指定されるかどうかは別にして、地域の方々が困って入ってこられたのを、指定ではありませんから出ていってくださいということは全くできません。必ず受け入れて、その中でやれる範囲のことをやらなきゃいけない。
ところが、この今回の熊本地震でお分かりのように、体育館が耐震化されていない等で、そこに受け入れられないという状況がまだかなりたくさん起こっているわけです。非構造部材だけではなくて、学校の施設の場合には、例えばガラスブロックで明かり取りをしているというのはかなり多うございます。
ところが、仙台の幾つかの学校で、ガラスブロックのところだけそのままずどんと下に落ちて、ガラスが下に散乱したというケースがかなり散見されました。そういうふうなことを考えますと極力、私立学校といえども耐震化を促進していかなくちゃいけない、そういうふうに思っています。難しい問題はたくさんございますけれども、しかし、私立に通う生徒と公立に通う生徒の命に差はあるわけではないですので、何とか工夫して、まず耐震化を進めること、そこからこの議論をしていただきたいなと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
【小原部会長】  次に、国崎委員、お願いします。
【国崎委員】  校舎内の非構造部材の被害については、東日本大震災からずっと継続して取りまとめいただいております。恐らく前の東日本大震災を受けて、今回も当然のごとく非構造部材に焦点が当てられたのかなとも思うのですが、非構造部材以外に、私が熊本地震での支援活動で気づいたのが給食センターの耐震化の重要性です。例えば益城町は給食センターが大きな被害を受けまして、今も子供たちはお弁当を食べています。給食センターの建て替えには大きな費用がかかることや建て替えに時間を要すことから、改めて給食センターが学校施設の設備の耐震化という位置づけの中に入っていたかどうかということをお聞きしたいのと、それから、益城町ではげた箱がドミノ倒しのような転倒状況であったり、トロフィーの飾り棚がひどいことになっていたりした小学校もあったので、非構造部材の耐震化も重要ですが、改めて、施設内にある家具の転倒防止策の徹底についても触れていただきたいと思います。それから、熊本地震では園庭や校庭に亀裂が入っていた施設がありました。これは機会があれば写真をお見せしたいと思いますが、子供たちが校庭にいるときに地震が来ていたら、深い亀裂でしたから、挟まっていた子供たちもいたのではないかとも思うのです。つまり、施設の耐震化だけでなく、脆弱な地盤への対応も必要になると思います。その点についてお聞かせください。
【小原部会長】  よろしいでしょうか。
【金光施設企画課企画調整官】  順番にお答えいたします。まず、清水委員から御指摘のございました私立学校の耐震化でございます。正に今回、熊本でも私立学校の被害は甚大でございました。特に耐震化が遅れていた学校で大きく校舎が壊れたという例はございました。文科省として、先ほど先生がおっしゃったとおり、子供の命に公立、私立で差はございませんので、しっかり支援をしていきたいと考えてございます。
それから、給食センターでございますが、国崎委員が御指摘いただいた耐震化、国庫補助の対象といたしております。ただ、一方で、子供のいらっしゃるところから優先的にという自治体もございましたので、給食センターに被害が出たという例もお聞きはしております。しっかり今後、給食センターについても耐震化を進めていかなければと考えてございます。
それから、げた箱とか、家具の転倒というのも国庫補助の対象となっているところではございます。一方で、学校の中でどこにリスクがあるのかというのを教育委員会の方々、あるいは学校の先生方に確認をしていただくという作業をやっていただいているのですが、まだそこが100%に至っていなくて、学校内、まだまだ安全な場所の把握ができていないというのが現状でございます。しっかり教育委員会の方々にお声をお掛けして進めていくことが必要かなと考えてございます。
それから、グラウンドでございます。学校の下にどういうふうに断層等があるのかというところまでは、なかなか把握ができていないというのが現状でございます。もちろん被害が出た場合、グラウンドを元の形に戻すという災害復旧については手厚くやらせていただいているところなんですが、グラウンドでのリスクというのは今後の課題かなと受け止めさせていただきました。すみません。答えになっているかどうか分かりませんが。
【小原部会長】  それでは、これまでのヒアリング等を受けて意見交換を行います。御意見、御質問等がございましたら、どなたからでも結構ですので、名札をファイルの上に置いていただければと思います。
それでは、発言ある方。今村委員、お願いします。
【今村委員】  私の方からは、参考資料ということで、本日、学校と家庭と地域の連携というテーマが一つでございましたので、用意させていただきました。二つの論文でございます。最初の論文は正にタイトルにあるとおり、学校・地域・行政の連携における一斉学校避難訓練の試みでございます。通常、地震、津波の訓練というのは、授業時間帯でやるというのが多いと思うのですけれども、ここでは下校時での災害発生を想定しました。また、地域ということで、小学校だけではなく、中学校、ここは高校がございませんので小・中学校を中心にやったというところでございます。
2ページを開いていただきますと、今回の連携の姿とか、表-1に内陸部と沿岸部での各学校の名称が書いてございます。3.11を受けて、実は浸水を受けた沿岸部では非常に意識は高いのですけれども、一方、内陸では、逆にまだまだ関心としては高くなっていない。その辺りのギャップを埋めるという目的で一斉町内という今回の企画の意図もございます。
3ページの上の方には、これは今回、安否確認ということであります。第1回報告、第2回報告ということで、時事刻々小学校、中学校でどのぐらいの確認をされたかというのが書いてあると思います。一言で言うと、中学校と小学校で率が大分違うと。実は中学校では、その対応がグループでまとめてやるとかなり効率的な準備(備え)があって、一方、小学校では、ばらばらであったというような課題もこういう形で得たということでございます。
4ページを見ますと、幾つかの小学校での生徒数と避難の割合等々もあります。こういう形で宮城県も、先ほど遠藤委員から主任、主幹の話が出ましたが、そういう方たちを中心に連携の活動も始まったというところでございます。
実はもう一つ、重要な点は、どこまで連携して継続できるかというところでございます。その点を調べたのが7ページでございます。繰り返すことによる効果の検証ということで、論文でまとめつつあるのですけれども、まだまだ実は不十分でございまして、例えば表-1のような各市町村で2011年から連続してやっているところもあれば、まだ1回もやっていないところもあります。こういう地域によるばらばらの状況もございますし、繰り返せばいいというものでもないというのが今回の結果でございます。また連携のためのポイント等も整理できましたらば、報告させていただきたいと思います。
以上です。
【小原部会長】  次、田村委員、お願いします。
【田村委員】  今日の話をお聞きして、正に12ページ(第1回学校安全部会資料)に、今、まとめていただいている学校安全の推進に関する計画の概要というのがあるんですが、ずっとこの場で議論をされていることというのは、学校安全についての教育というのをどうしていくかというお話と、あとは学校自体の安全をどう確保していくかということの二つがずっと「表になり裏になり」というお話があって、今日は、かなり衝撃的だったのが、もちろん「知識」としてレッスンもしなければいけません。それから、例えば交通のことを注意しましょうという「態度(アティテュード)」、例えばリスクということも理解しましょうというお話と、あとは実践という訓練というより、どちらかというと体を動かしてみましょうというお話の三つが、これ自体はどちらかというとふだんやられている教育に近いものかなと思ったんですが、結局、この教育をやられている主体というのが安全主任というお名前であったり、コミュニティ・スクールというお名前であったり、いわゆるいろいろなステークホルダーなんですけど、実は実践者のいわゆる「学校の安全を守る実践側に立っている人たち」が「実は教育も担っている」という観点があって、その実践者の人たちは、それだけやっているわけではなくて、実は学校の安全を考える全体の計画というものをお立てになっていて、交通にしろ、防犯にしろ、防災にしろ、結局、リスク評価をして、認識をして被害を見積もって、対応策を考えて、その中で、「安否確認」のことであるとか、例えば「授業の再開」のお話もありましたし、私ども大学であれば、敷地が広いので、そのもう一つの柱として「学校の敷地(キャンパス)閉鎖」というのを入れているんですけど、学校の敷地に入らないでくださいという、その三つの柱があり、対応として、「リスク軽減」「リスク回避」「リスク転嫁」「リスク受容」のどれをそれぞれについて取っていくかという、いわゆる主体を中心として教育と実際の安全というところが一緒に考えられて、もしかすると、これは教育の一つ新しい形を考えていかないと学校安全というもののカリキュラムはできないのではないかというような思いに至りまして、非常に勉強になりました。
こういう考え方で進めていくと、一体的に授業計画、授業とか、学校で教えるという意味においても展開できるんじゃないかなと思ったところでございます。
【小原部会長】  太古委員、お願いします。
【太古委員】  ありがとうございます。今、いろいろな方々からの御発表や協議の中で教えていただいたことについて、実際に私の勤める学校の高校生たちにどのように、力を付けさせていくことが必要なのかということを考えていました。例えば先ほどの通学路について、通学指導をホームルームや集会等を通じて、学期に1回行っていますが、先ほどの映像を見せていただいて、本校も近くに小学校・中学校がありますので、生徒が、自分が被害者や加害者になるということだけではなく、高校生として、近くに生活をしている小学生や中学生と一緒に、気をつけながら学校生活やふだんの生活を送るということを学ばせることが大事だと感じました。本校は、自転車通学、バス通学、徒歩通学の生徒がおりますが、例えば、無理な横断をせず、小学生や中学生の見本になれるような行動をすることがとても大事だということなどを指導しないといけないと、今日のお話をお伺いして思いました。
また、本校は防災の専門学科がありますので、ほかの学校と状況が少し違うと思います。例えば太陽光のパネルを設置して、災害時に、一昼夜電気の使用が可能なバッテリーを設置しています。備蓄も市から預かっています。また、近くに総合病院がありますので、運動場はヘリコプターが降りるということも一応想定しています。先日も消防署の方がお見えになり、もし何かあったときは連携場所です、ということも言われています。生徒たちが勉強する避難所開設の初期については先生たちも研修をしています。このような学校はそれほど多くはないと思います。
また、今回、熊本支援ボランティアに行かせていただきましたが、事前指導の中で、兵庫県のEARTH隊員が、災害時には避難される多くの方が短時間のうちに避難所に来られるので一瞬のうちに学校が機能しなくなるという状況を話してくれました。そのような状況の中で、どう整理し解決していくのか難しいと思っています。今日は勉強をさせていただきました。ありがとうございます。
【小原部会長】  私からも一つ、意見、要望があります。特に学校施設、これに関していろいろな規制、規定があります。それをもっと学校安全と照らし合わせて、もう一度見直しする必要があるのではないでしょうか。というのは、実際、私は今、校舎設計をやっているんですけれども、窓の面積とか、教室の扉がどちらの方向に開くのか、こういうのは見直した方がいいと考えています。例えばここを教室に見立てると、この窓の面積は確か違反になります。床面積の7分の1、窓でなければならない。ところが、ここに書かれているのは窓を点検、そして、修繕するようになっています。窓が多ければ多いほどそれに掛かる経費というのは掛かるわけですし、また、窓が増えれば増えるほど強度を得るのは非常に難しいのです。ですから、もし設備等で強化を図るのであれば、そういった些細なルール、窓の面積の是非から検討し直していただきたいと思います。また、教室のドアの開く方向です。これなんかも緊急時には非常に重要なファクターになります。教室から出なければいけないときに、当然そこへ人間が集まります。ドアを引いて開ける場合は、もうこれは開けられない。そういうところの配慮が今の建築基準には配慮されていません。ですから、そこも見直す必要があります。
それから、先ほど清水委員の方から出てきたんですけれども、私立大学に対する耐震補助は非常に手薄と言えば手薄です。ここ2年ぐらいでようやく私立大学の耐震強化に対する補助金が出るようになりました。それまでは国立大学、公立大学、公立小・中・高、そして、私立学校とあり、私立大学はなかったんです。確か、日本私立学校振興・共済事業団の河田理事長が指摘して、ようやく項目に挙げられました。いわゆる国立中心に全てが考えられていて、私学はどうでもいいというような予算項目になっていますので、ああせい、こうせいと言うんであれば、きちんとそれに見合う補助というものを財務省と交渉で確保していっていただきたいと考えております。
今、清水委員からも指摘があったように、いざ何かあったとき、大学は住民に対し大学から出てもらうことは言えません。実際、私どもも、3.11のときは、地域住民が来たときに、出さずに引き受けた。同じような備蓄品も分けてあげたわけです。それが今度、逆にはね返ってくるのです。何かあったときに、公立の小学校に避難するよりも私立大学に行った方がいろいろ手当てが厚いということがもう広まってしまっています。もう結局、実質、受け入れざるを得ない。しかし、今、そういう補助はないということになれば、これは非常に私学の運営には響いてきます。ですから、もし防災ということを考えるのであれば、国公私という私も忘れないようにしていただきたいというのが我々の願いです。是非その方向でいろいろな検討をしてください。
桶田委員、お願いします。
【桶田委員】  幼稚園ですので、具体的なお話をさせていただきます。幼稚園では、生活安全も交通安全も避難訓練関係のことも、日々の保育の中でいつも意識して取り組んでいますが、一番取り組みやすくて一番難しいのが実は交通安全です。子供たちに指導すると、標識やルールの知識はありますし、実際に模擬指導で歩き方をやっても、約束を守って道を歩き、渡ります。ただ、子供たちが外を歩くことは年に数回の遠足に行ったときくらいで、生活の中、実際の場面では交通安全がないのです。また、幼稚園や保育所に通うときは、徒歩以外に保護者の自転車や通園バスの子供も多く、自分の目や足で信号を確認して渡るというような経験をしていない子供もいます。保育所では庭で遊ぶ場所がないこともあり毎日のように散歩等に出掛けて、ある程度積み重ねていくこともできると思いますが、幼稚園は、登降園ときの保護者頼りというところがとてもあります。保護者にも話していますが、守ってほしい保護者は大体余り聞いていないというのが現状です。そして、幼稚園から小学校に入った途端、今度は子供一人で歩いて登校しなくてはならない状況になります。それから、最近特に心配なのは、自転車事故です。自転車の保護者は交通弱者であるだけでなく、加害者にもなりうる状態です。スピードの出し過ぎや無理な横断などを保護者の自転車に乗っている子供が体感して、何を学んでしまうのでしょうか。幼児から小学校低学年は自転車に乗れるようになろうと親子で練習し、できた喜びを味わう時期だと思います。小学生になれば一人で外で自転車を乗り始めます。私たちがふだん積み重ねているつもりである交通安全指導が実際に本当に1年生につながっているのか、役に立っているのかというところが見えません。交通安全指導において本当に私たちは何をしたらいいのか、いつも気にしながら交通安全の指導をしています。
もう一つ、先ほどから私立のお話が出ていますので、別件ですがお話させてください。この間、相模原の施設に不審者がという事件がありましたが、あの後、文科省から通達で、安全管理を徹底するようにということが、都教委、区教委、幼稚園と公立幼稚園だと下りてきます。それを見たときに、これは私立幼稚園に行っているのだろうか、保育所や認定こども園には伝わっているのかと思いました。毎回、そういう安全に関する通達が来るたびに公立は有り難いと思っていますが、幼稚園の公立は本当に少ないので、是非就学前のいろいろな施設に必ず伝わって、そこから小学校に子供たちが上がっていけるよう確実にしていただきたいと思っています。
【小原部会長】  五十嵐委員、お願いします。
【五十嵐委員】  ありがとうございます。今日、たくさんのお話を聞かせていただきました。交通安全を中心にした取組、地域連携の取組、施設のこと等、本当に勉強になりました。
本校でも、東日本大震災の後に、このままでは駄目だ、もうちょっと子供たちが自ら安全を意識して自分の命を守る行動ができるためのカリキュラムを作り直さなきゃいけないと感じ、取り組み始めて4年目になります。そこで実感していることは、先ほど田村委員がおっしゃいましたが、安全に関することを考えると、全てのものが本当に一つにつながっていくということです。安全教育は全ての教科につながっています。リスクを自分たちで読み取って、それにどう対応するかを考えて行動する力を育てるために、まずは生活科や社会科や理科で地域を探究していくときに、地域の良さ、自然の豊かさを発見すると同時にリスクを見取る目の素地も養うことが大切だと思います。理科も社会もすべての教科を別々に考えるのではなくて、統合して扱う視点が大切だと実感しているところです。安全に対するイベント的な取組を年に何回やりましたで済ませて終わらせずに、全ての教科でつなげて、日常的に考えて行動できるように取り組むようにしていくことが大切だと思います。カリキュラムをしっかりと作り直さなければ、実践力は付かないと思っています。
防災に関する取組は、やはり一つの学校だけでは駄目です。当然地域で取り組む必要があります。本校ではまず隣の幼稚園が一緒に動いてくれました。また、進学先の中学校と、その学区内の小学校と一緒になって、引渡しの訓練を一斉にやっています。そして、地域で活躍してもらいたいのが中学生です。いろいろな小学校から集まるので、難しい面はありますが、中学生は地域の力です。先ほど生重先生が言われたように、地域の取組がしっかりしていたら本当にすばらしいだろうなと、そういう地域にしていくために、そういう大人に育つために、そういう目を持った子に育てたいと思います。まちづくりの担い手としての教育を意識して、義務教育を行っていく必要があると思います。例えば避難所運営についても、本校では「生きぬく科」という教科で扱っています。未来の社会人、地域住民を育てる教育です。
施設の問題も本当に大切です。学校施設は避難所にもなります。震災の後に痛感したことは、本校は太陽光発電を取り入れている自慢の施設なのですけれども、蓄電できていないことが分かりました。こんな無駄なことはありません。非常時、いざというときの電力となればいいわけなのですが、コストがかかるということで改善は無理だと言われています。これからの学校施設は、教育の場であると同時に、いざというときの大切な施設にもなることを考えると、もっと工夫できる余地があると思うのです。建物の箱だけではなくて、その中身についても、教育委員会だけではなく、全ての部署を通して考えていくいい機会が、再び来たと思っています。今こそ真剣に考えなければいけないのではないかなと思っています。
今日は勉強させていただきました。ありがとうございました。
【小原部会長】  それでは、尾上委員で、小川委員の順番でお願いいたします。
【尾上委員】  私は先日、国土交通省からあることを紹介されました。これは日本PTA全国協議会で紹介をされたのですが、Web調査という今まで事故の実績が学校の周辺ですぐ見られるようなシステムがあるということで、それをどうにか広げて、安全ツールとして学校安全道路の通路の確保につなげてくれないかというような話の流れでありました。それをどう発信していくかを考えますと、なかなか定期的に地域で検証をしている、点検をやっているというところが目に見えてこなくて、また、それをPTAだけでどう広げていくかというのが難しい話で、例えばスクールゾーンとか、ハンプとかを設置するに当たっては、当然ながら、その辺りは規制がある道路でもあるでしょうし、地域住民の理解というのが本当に必要であるということとともに、今、正に取り組まれている地域学校協働本部が、連携から協働へというようなこの流れをしっかり社会全体で盛り上げていかない限りは、なかなか発信する先がないというように感じております。もし点検するのであれば、地域の保護者とか、住民だけではなく、子供も巻き込んだ上でよく理解をしていくということが今後に向けては大切かと思いますので、生重先生が取り組まれているようなことをしっかりやっていくということは本当に大切と感じました。
ただ、いろいろな絡みがあるのですが、その管理というのがすごく大事な形に今、なってきております。例えば連絡するにしても、連絡のシステムがどうであるか。連絡網がその場で活用できればいいのですが、その手前で情報が漏えいすることもあり、学校側が管理するのか、地域学校協働本部が管理するのかということによっても大分変わってくると思いますし、熊本の地震に関しては、SNSの基地局をキャリア等があちこちに立てたことで、それによってSNSのつながりができたということを考えますと、今後、へき地にある学校がどうやってそういう連絡が取れるのかということとともに、キャリア等との連携というところも考えていかないと、スマホとか、タブレットを主に利用する時代になるとその遮断が一番大変かと思いますので、管理というところとそういった協働、連携というところをしっかり見ていかなければいけないと感じました。ありがとうございます。
【小原部会長】  小川委員、お願いいたします。そして、佐々木委員で最後になるのではないかなと思います。
【小川委員】  先ほど交通安全について、委員の先生方からいろいろと御意見を頂きました。私も同感でしたし、その意見を踏まえまして、私なりに少し考えてみました。発達段階に応じた効果的な教育方法があって、それを開発していくとともに、そういう効果的なやり方を皆さんと一緒に共有していくということが大切だと思いました。園児であれば園児を対象とした場合の効果的なやり方というのもあるだろうし、中高生は中高生なりの青年期の心理特性というものを生かした効果的なやり方があります。交通安全教育というと、何か固定的なイメージが定着しているように思うのですが、決してアプローチは一つだけではありません。いろいろなアプローチ方法があるわけで、そういったアプローチ方法をいろいろ試しながら効果的な手法というものを見いだして、それを共有していく。
もしそれができるのであれば、系統的なカリキュラムの構築につながっていくのではないか。これは何度も何度も繰り返し議論して、答えが出ていない、あの系統的なカリキュラムの問題です。この年代にはこういうやり方をしたらいい、この年代にはこういうやり方をすると効果的だということが分かってくれば、効果的な、系統的な、効率的なカリキュラムの構築につながっていくので、時間確保の問題もおのずと解決していくような気がしました。
園児を対象とした場合であれば、保護者の影響力が強いものですから、保護者と一緒に学ぶ教育方法もあります。園児は大人の姿を見て、それをまねることができますから、保護者が適切な横断行動や確認行動をされたら、子供は自然と学んでいくわけで、そういう手法というものを保護者と一緒に学ぶ行事などを企画されたらいいと思います。中高生、青年期になってきますと、教えられることに対して抵抗感みたいなものがありますので、教え込まれているなということを感じたら、本音と建前を使い分けています。学校現場では分かりましたといい子でいるのですけれども、実際は違う。青年期になりますと、もう少し違うアプローチが必要かと。「自分たちがやっている行動が、他者にどういう影響を与えていっているのか、地域に対してどういう影響を与えていくのかということを考えてごらん。」とか、「自分の後ろに小さい子がいた場合、信号無視していい?」とか、そういうふうに問いかけながら、自分のやっていることが周りにどういう影響を与えていくか。それから、自分たちが学んだことを地域に対してどう発信していくかということが、中高生には効果をもたらすのではないかということを最近、強く感じています。学校だけの価値観で自分たちのやっていることを評価するのではなく、地域の視点から見て、中高生が学んだことが評価されるということを子供たちが実感すると、やる気を持って取り組んでくれます。
マップ作りについては、小学校までは、自分の安全を確保するためのマップ作りでいいと思うのですけれども、中高生になったら、地域の人のためのマップ作りをやってもいいと思います。例えば高齢者の方が事故に遭うような危険箇所を記した地図を作って、高齢者の方に配布していくとか、もし地域に発信していくような勉強をして、地域の方にそれを評価してもらったら、中高生の気持ちも大分変わっていきます。このように各年代において効果的なやり方というのがありますので、是非ともこの部会を通してそういう効果的なやり方というものを整理して、それを共有して、効果的な、系統的なカリキュラム構築につなげていけたらよいと思いました。
以上です。
【小原部会長】  それでは、最後になりますけれども、佐々木委員、お願いいたします。
【佐々木委員】  今日はたくさんのことを勉強させていただきまして、ありがとうございました。今、私、学校の中にいるんですが、学校の中におりますと、教員というのは、教育に関することに関しては全て教育委員会に申し出ると多くのことが解決されるというようなことがございます。先ほど避難所運営の話の中にもございましたが、防災のことに関しましては、やはり部局というのが防災部局や、北海道の場合は危機対策室などが所管をしているわけですけれども、ここの方々と話をすると、どうしても教育委員会との連携がうまくいっていない。そのために防災教育が浸透していかないんだというようなことをよく聞くことがございます。現実にそういうことも多々ありますので、教育委員会と防災部局との連携というものがもう少し密になるような工夫というものができないものかというのをちょっと考えておりました。
以上です。
【小原部会長】  ありがとうございました。なお、追加で御意見のある場合は、9月7日、水曜日まで事務局の方にメール又はファックスにて御連絡を頂ければと思います。
最後に、次回以降の予定について、事務局からお願いいたします。
【中村健康教育・食育課課長補佐】  次回以降の日程につきまして、資料5を御覧ください。次回、第4回は、9月29日の木曜日、13時から、文部科学省3F2特別会議室、この会議室と同じ場所で開催する予定としてございます。
次回に関しましては、学習指導要領の改定に関する議論の状況を御報告しました上で、それを踏まえて、安全教育としての取組について御議論いただければと考えております。
第5回以降の予定も、第8回までの日程を資料のとおり置かせていただいておりますので、皆様の御予定において御了承いただければと思います。
次回の出欠確認については、また追って正式に確認を取らせていただきますので、御返信いただければと思います。
以上でございます。
【小原部会長】  それでは、本日予定した議事は全て終了いたしましたので、これで閉会いたします。ありがとうございました。

お問合せ先

初等中等教育局健康教育・食育課防災教育係

(初等中等教育局健康教育・食育課)