学校安全部会(第8期~)(第2回) 議事録

1.日時

平成28年7月25日(月曜日) 16時00分~18時00分

2.場所

文部科学省 東館3F2特別会議室 【東京都千代田区霞が関3-2-2】

3.議題

  1. 近年の子供の犯罪被害の状況及び被害防止のための効果的な取組について(有識者からのヒアリング)
  2. 東日本大震災後の取組の現状と課題(委員からのヒアリング)
  3. 意見交換
  4. その他

4.議事録

【小原部会長】  それでは、定刻となりましたので、ただいまから、第2回中央教育審議会初等中等教育分科会学校安全部会を開催いたします。
本日は、皆様、お忙しい中、御出席いただきまして誠にありがとうございます。まず、前回の学校安全部会に御欠席で、本日御出席の委員がいらっしゃいますので、事務局から御紹介をお願いいたします。
【中村健康教育・食育課課長補佐】  それでは、御紹介いたします。
今村委員でございます。
【今村委員】  今村です。どうぞよろしくお願いいたします。
【中村健康教育・食育課課長補佐】  また、本日は、有識者からのヒアリングといたしまして、兵庫県立大学の竹内准教授でございます。
【竹内准教授】  よろしくお願いします。
【中村健康教育・食育課課長補佐】  また、科学警察研究所の原田特任研究官にお越しいただいておりますので、併せて御紹介いたします。
当省におきまして、6月21日付で局内に人事異動がございましたので、御紹介いたしたいと思います。
瀧本大臣官房審議官、初等中等教育局担当でございます。
【瀧本大臣官房審議官】  瀧本と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
【中村健康教育・食育課課長補佐】  藤原初等中等教育局長に関しましては、所用により少し遅れておりますので、到着次第、御紹介申し上げたいと思います。
【小原部会長】  それでは、議事に入ります前に、配付資料の確認を事務局からお願いいたします。
【中村健康教育・食育課課長補佐】  それでは、議事次第を御覧ください。議事次第の2で配付資料に関して記載しております。
資料1から3までが本日のヒアリングで御説明いただく資料でございます。そして資料4といたしまして、第1回において委員の先生方から頂きました主な御意見を概要的にまとめてございます。資料5といたしまして、今後の日程(案)でございます。
さらに、参考資料1といたしまして、議題(1)の関係で、渡邉委員から関連の資料ということで頂いておりますので、こちらもお配りしております。さらに、参考資料2が参考のデータ集で、参考資料3が部会の名簿でございます。
さらに、机上のみ配付としておりますが、中川委員から議題(2)に関しまして、参考の資料を頂いておりますので、こちらもお配りしております。
以上でございます。
【小原部会長】  ありがとうございます。
また、本日は、報道関係者より、会議の撮影及び会議内容の録音をしたい旨の申出があり、これを許可しておりますので、御承知おきください。
それでは、議題に入ります。
最初に、兵庫県立大学、竹内准教授から、「子供を取り巻くネット環境」につきまして、15分程度で御意見を伺い、関連して渡邉委員より、5分程度、参考資料1の御説明をお願いいたします。その後、5分程度でございますが、質疑といたします。
それでは、竹内先生、よろしくお願いいたします。
【竹内准教授】  皆さん、こんにちは。今日は「子供を取り巻くネット環境」について話します。こういう機会にしゃべらせていただくことはとても光栄です。私は、元中学校教員で、子供の近くにずっといました。子供たちの今のネット問題について、短い時間ですが、皆さんと共有できるように話したいと思います。今日は「低年齢化」「子供が被害者」「子供が加害者」「違法・有害サイト」の4つについて話します。子供について考える際に参考にできるものについては、成人の事例も紹介します。
まず「低年齢化」です。
これは、私が2年前に兵庫県猪名川町の全小中高校生対象に行った携帯電話所持率調査の結果です。よく見ると、小学校3年生の所持率の方が小学校4年生よりもかなり高いです。理由が分からなかったので聞き取り調査をしたところ、保護者の問題だということが分かりました。つまり、両親の両方がスマホを持っているので固定電話が家にない。だから連絡用に子供に携帯電話を持たせているのです。減っているのではなくて、下から増えてきているのです。つまり、この子たちは「ケータイネイティブ」に育てられた「ケータイネイティブ2世」なのです。
子供たちがどんなふうにネット接続しているか、今年7月、兵庫県で調べてみました。すると小学生の約8割、中学生の約9割が日常的にネット接続していることが分かりました。接続機器は、小学生はスマホではなくてゲーム機の場合が多く、ゲーム機をWi-Fiでネット接続してYouTube等を見ている場合が多いことが分かりました。中学生の場合は音楽プレーヤーを用いて、Wi-Fiでネット接続していることが多い。つまり、子供たちの問題は、「スマホ問題」というよりも、「ネット問題」と言わなければならない状況になってきています。
次に幼児の情報端末の使用状況です。総務省のデータから、0歳児約11%、1歳児約17%、2歳児約32%、3歳児約35%、4歳児約41%が情報端末を使用していることがわかっています。0歳児が自分で見るとは考えられないので、最初は保護者が見せているのでしょう。だんだん率が上がり、4歳児は約41%が使用しています。使用端末で一番多いのはスマホだとわかっています。今後、「スマホ育児」が社会問題になっていくと考えています。ネットの問題は、低年齢化から更に進んで、育児の問題に進んでいます。
私は少し前に東京入りして、ポケモンGOの調査をしていました。まだ配信されて4日しかたっていませんが、すごい状況で驚きました。来る人、来る人がスマホを手にしていて、そのほとんどがポケモンGOをしていまいした。ただ、よく見るとやっているのは、大学生から社会人がほとんどでした。小中学生は余り見かけませんでした。小学生は「妖怪ウォッチ」の方が好きですし、さらに、登場するポケモンの多くを今の子供たちは知りません。今、登場しているポケモンは、今の大学生が小学校の頃に親しんでいたポケモンです。こう見ると、今のターゲットは、今の子供たちではなく、大人なのかもしれません。またゲームの機能もまだ初期段階で、今後、改善されていくでしょう。また、個人同士で、通信機能を使うことは現状できません。もちろん、ポケモンの交換や対戦はできませんが、そのうちできるようになるでしょう。またテレビアニメで、ポケモン新シリーズを始めると一気に状況は変わってきます。子供たちへの影響は、まだ先だと思いますが、今の大人の状況からわかるように、将来的には大変な事態が予想されます。
アメリカの学生たちから情報を集めましたので紹介しておきます。1つ気になったのが、ルアーモジュールです。これを置くと、30分間、ポケモンが引き寄せられてきます。約100円です。私も買ってみましたが、ポケモンがいっぱい集まってきました。「犯罪多発地区にルアーモジュールを置いて、つられて集まってきた高校生が強盗に遭う」という事件がたくさんあったということです。聞いた学生は、「意図的なのかどうか分からない」と話していましたが、ポケモンGOの場合は海外から入ってきているので、海外の事例から学ぶことも必要だと思います。
次に「子供が被害者」です。
例として、アイドルがSNS(Social Networking Service)で知り合った男性ファンに刺されたという事件を紹介します。新聞等によると、容疑者と被害者はツイッターで親密になり、何度もやりとりをしました。真偽は定かではありませんが、ネット上の情報では、容疑者は腕時計等の贈物もしたそうです。被害者は怖くなったのか、返事をしないようになったそうです。すると、容疑者の書き込みは攻撃的になり、「贈物を返せ」というようになり、被害者は贈物を送り返しブロックしました。この行為に容疑者が逆上して犯行に及んだというふうに言われています。これはアイドルだけの問題ではなくて、誰にでも起こり得る問題です。
このときに警察がストーカー認識をしなかったことが問題視されています。被害者を助けることができなかったことは、非常に残念ですが、警察を責めるだけでは問題の大切な部分が見えなくなると思います。ストーカー規制法のつきまといの要件が、まだメール送信や電話しか認められていないことが大きな問題だと思います。現行のストーカー規制法では、ツイッター等のSNSはまだつきまといの要件に入っていません。つまり、法律が時代に追いついていないのです。これが最大の問題だと私は思っています。大人社会の全体の責任だと考えています。現行法では、子供たちに自衛させる必要があります。
7月1日に私の大学のある兵庫県では、条例が改正されました。全てのSNSが対象になり、警告なしでも逮捕できるようになりました。それから、同性間でも適応されるようになりました。逆に言うと、新聞によると、青森、岩手、宮城、福島、群馬、千葉、神奈川、石川、岐阜、静岡、三重、京都、奈良、岡山で、既に条例改正がなされており、兵庫県の改正も今回の事件がきっかけではなく、以前から決まっていたことだったようです。警察庁も6月20日に「SNSも考慮しなさい」と指示を出していますので、全国的に対処できるようになっていますが、ネット上の問題は日進月歩ですので、子供たちが被害者になってしまわないようにするために、早急な対応ができる体制づくりが急務です。
一方、教育も必要です。「知らない人は危険」と教えるのは当然ですが、一部の識者は、「急なブロックは危険だから、ゆっくりフェードアウトしなさい」と子供に伝えるべきだと話しています。確かに今回の事件は、急なブロックが招いた部分は大きいと思いますが、難しい状況です。「危険を感じたら、すぐに逃げなさい」と言いたいところです。特に低年齢化が進んでいる現状、小学生に「ゆっくりフェードアウト」は至難の業でしょう。
参考までに、大阪の中高生対象の2万人調査(2015)の結果をお示ししましょう。「面識のない人とLINEやメールをしたことがあるか」の問いに「ある」と答えたのは、スマホ所持生徒の48%、ガラケーやキッズケータイ所持生徒の25%。「ネットで知り合い実際に会ったことがある」と答えたのは、スマホ所持生徒の14%、ガラケーやキッズケータイ所持生徒の3%でした。さらに、「ネットで知り合った人と交際したことがある」と答えたのは、スマホ所持生徒の3%、ガラケーやキッズケータイ所持生徒の1%でした。私には非常に危険な状況と思えます。しかし、スマホ所持生徒の約半数が面識のない人とネット上でやりとりしている現状では、子供たちに幾ら「危険だ、危険だ」と大人が連呼しても子供たちには響かなくなっています。実際、私のインタビュー調査で、ある中2男子は「先生や親はすぐ危険、危険とばかり言います。僕たちは『ハイハイ』と聞き流しています」と話しています。こういう現状を私たち大人は、しっかり認識した上で、子供たちの心にどう響かせていくか、考えなければならないと思います。
次に「子供が加害者」です。
佐賀県で、県立学校の情報システムが外部から不正アクセスを受け、生徒や保護者、教職員の個人情報等を含むファイル約15万件が漏えいしたとして、17歳の少年が逮捕されたという報道があります。これは佐賀だけの問題ではありません。新聞等の情報によると、この少年は知り合いの高校生に教員からID等を聞き出させ、夜に敷地に忍び込んで無線LANでシステムに進入し、情報を抜き取ったとされています。この少年は、以前にB-CASカードを使わずにテレビを見て逮捕されるなど、こういうことにかなり詳しい少年だということが一方で報道されていますが、今後、このように学校の教職員等よりも、インターネット等についてよく知っている児童生徒が増えてくる可能性が高いです。学校でプログラミング教育もしていこうという方向性も聞こえてきていますので、私たち大人社会は子供を加害者にしない努力も必要になってくるのではないかなと思います。
この写真は、熊本地震直後に「おい、ふざけるな、地震のせいでうちの近くの動物園からライオン放たれたんだが。熊本」という言葉ともにSNSを通して全国に広まりました。もちろん、デマの写真で、実際は外国の写真だったそうです。この写真を広めた20歳の男性は「偽計業務妨害罪」で逮捕されました。この男性は「悪ふざけでやってしまった」と話しているそうですが、このときの報道を子供たちに見せると「えっ? それぐらいで逮捕されるの? ネットって何やっても、何書いてもいいと思ってた」と言います。最近は、子供たちのフィルタリング設定率がかなり下がってきていることもあり、ネット上で違法、有害サイトを目にすることも増えています。何度も見るうちに彼らの感覚が麻ひしてしまっているとしたら危険です。子供たちには、自分が加害者になる意識も非常に少ないので、そのあたりも必要だと思っております。
最後に「違法・有害サイト」です。
分かりますか。これはネット上から拾ったものですけれども、高校生がIS国のまねをしたものです。子供たちに示してどう思うか聞いたことがあります。「これぐらい、みんなやってる」「LINEだから、表に出ないから大丈夫」とあっけらかんと話す中学生がいました。これはそのときの新聞ですが、「うち1人は、専門学校の進学を断念」と書かれています。子供たちはあ然とし、自分の投稿について反省する生徒も出てきます。また、この写真は、ネット上で「首切りの動画」が流れたときに投稿されたものですが、それに刺激されてやったものでしょう。その首切りの動画を子供たちが目にできるということ自体、大変な問題です。スマホが主流になって、フィルタリングが機能していないことが問題なのだと思っています。
与えられた時間が尽きましたので、これで終わりますが、子供たちというのは、大人よりもよく知っています。それはそれで問題ですが、実際は知らないことが多いです。逮捕されるとか自分たちにとって不利益なことは知らない場合が多いです。
この問題はますます低年齢化しています。残念ながら、ネット上にはまだまだ違法・有害サイトが多数あり、多くの子供たちがそれを簡単に目にしています。子供たちを被害者にも、加害者にもしない努力が私たち大人には必要です。
まとまりのない話でしたけれども、以上で私の話を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。
【小原部会長】  ありがとうございました。
それでは、次に、渡邉委員から資料の説明をお願いいたします。
【渡邉副部会長】  私の方から資料を提供しておりますので、参考資料1を御覧ください。今の竹内先生からのお話と重複するようなところも出てきますけれども、この資料は、私のところにいました大学院生が修論としてまとめたものでして、今、学会誌に投稿している関係上、余り詳しくは申し上げられない部分があるんですけれども、既に公表している部分もありますので、そこをかいつまんでお話ししたいと思います。
高校生のSNSの利用というのは非常に多いわけですけれども、それに伴って起こる様々な、犯罪とまではいかなくても、迷惑行為を取り上げています。
2ページになりますけれども、SNS利用の実態と、そういったことの危険性を高校生がどのくらい認識しているかというようなことの調査を実施しました。
これはWeb調査で行っているんですが、特定の地域や学校で調査を実施しますと、そこの特徴が出てしまうということもありますので、人数は多くないんですが、Web調査をやりまして、全47都道府県からの回答がありました。男女それぞれ250名ずつとっております。
SNSの利用経験、これは昨年の2月の調査なんですけれども、ほぼ90%が「現在利用している」、あるいは「利用していたが、今は辞めた」であり、大体今現在の高校生の実態とほぼ同じではないかというふうに思います。
ここで、それぞれ迷惑行為が、法律やモラルに反してSNS利用者の不安をあおるような行為ということで幅広くとっているんですけれども、その被害と加害の実態が次の4、5ページになります。4ページ目は、被害経験なんですが、どういうものが多いかというと、「無断で自分の写真や動画を載せられた」とか、「自分の悪口や嘘の情報を書かれた」などが上位に挙がっていますけれども、複数回答になっておりますが、このような迷惑行為の被害の経験ありというのが、利用経験者の中で44.4%、4割強あったということです。
もう1つは、SNSの加害経験ということで、こちらの方は、利用経験者のうち24.5%ですから、大体4分の1が行ったと。大体被害と加害は対応しているんですけれども、写真や動画を載せたとか、悪口や嘘の情報を書いたというようなことが挙がっておりました。
6ページになりますが、これは、そういう迷惑行為はその程度危険と感じているかということなんですけれども、「とても危険」だとか「やや危険」だと回答した割合を出しております。これは全部の利用経験者500人の回答になっております。
この図では余り危険と感じていないものが上の方で、下に行くほど危険だと感じているということになりますけれども、「キャラクターの写真などを投稿」、「写真や動画を投稿」、などは比較的危険の認知が低い方です。それだけではなく、「直接交流のない人と友達になる」、「知らない人からのメールに返信」など、そういったこともどちらかというと危険の認識が低いということになります。危険の認知が高い方を見ますと、「住所や電話番号などの情報を投稿」するような個人情報を出すのは危険だという認識があるようです。
あと、これらの関連なども調べているんですけれども、被害経験と加害経験の間には正の相関があったんですが、被害経験と、今見ていただきました危険認識というか、リスク認知の間には関連がありませんでした。つまり、被害に遭ってもこれらのリスク認知は余り変わらないということになります。
加害者の方は、むしろ経験とリスク認知の間に負の有意な相関があります。つまり、こういう加害経験のある人はリスク認知が低いということになります。
こういう経験をしたということで、一般的にはリスク認知が高まり、安全な行動をとるようになるというのが、防災であったりとか、ほかの研究などでも指摘されているんですけれども、ここに関して言いますと、被害経験はリスク認知を高めることに役立っておらず、加害経験はむしろリスクが低くなる傾向がある。これらのことを踏まえますと、経験だけではやはり変わるということは難しい。リスク認知が高まると安全な、SNS利用に自己効力感が高まるということ、この間には正の相関があるわけなんですけれども、やはり教育という取組が行われないと、なかなか安全なSNS利用にまでつながらないだろうというような結果となっています。
最後に、8ページのところには、それらのパス解析の結果が出ていますけれども、今申し上げたようなことがこのような形で出ております。
簡単ですけれども、以上です。
【小原部会長】  ありがとうございました。
ただいまのお二人の御説明を受けて、御質問等がございましたら、どなたからでも結構ですので、御発言をお願いいたします。
なお、発言の際は、机上のファイルの上に名札を立てていただきますようお願いいたします。
このポケモンGOですが、ゲームができないよう、私有地であるとか、例えば学校の中に設定しないというのは、任天堂の方では作れるんですか。それとも、それはもう全く分からない、GPSでランダムに入れてしまうということになっているんですか。
【竹内准教授】  分かりました。ポケモンGOについて説明します。
配信して間もないので、まだ詳しいことはわかっていません。御了承ください。これは、今朝7時50分の日比谷公園の状況です。こんなにたくさん、ポケモンが日比谷公園にいました。ここに、ポケモンを欲しい人が集まってきます。見たら分かるように、ホテルとか、劇場とかあちこちにいます。次にこれは虎ノ門近辺です。文部科学省にはいませんが、隣の文化庁の中にいます。もしここにレアなポケモンが出現したら、マニアが集まってきます。
このポケモンをゲットするには、モンスターボールが必要です。その他、いろいろと必要なものがあり、それポケストップという場所でもらえます。もちろん、ネット上の地図に表示されます。これは、昨晩、水天宮前駅付近の様子です。ピンクの花びらのようなものが舞っているのは、ルアーモジュールが設置されているポケストップです。これはだれでも100円くらいで設置できますが、設置するとポケモンが引き寄せられてきます。ある大学での状況をお知らせします。ポケモンGO配信直後、学生たちは大学構内に2つのポケストップがあることを知ります。すぐに誰かがルアーモジュールを設置し、2時間後には、そのあたりが黒山の人だかりになっていたそうです。大学生は勉強が本分なので、抗議が必要な場合もあります。任天堂は、ポケストップ等の削除要請を受け付けていて、HPに記載もされています。そのあたりについて、社会として考えていく必要があると思います。
水天宮前、つまり東京の中心部あたりにはこんなにたくさんのポケストップがあります。ざっと数えて80くらいでしょうか。どこでもこんな状況かというとそうでもありません。これは私の教え子に送ってもらったものですが、見渡す限り、一つもありません。一番近いポケストップまで10キロくらいかかるそうです。彼は、奈良県十津川村の教員をしていますが、今のところ、ポケモンGOのトラブルは皆無だと言っています。
今のところ、騒ぎになっている地域は限定的で、夢中になっているのは、子供たちというより、大学生以上の大人だと見ています。とりあえず以上でいいです。
【尾上委員】  尾上と申します。どうぞよろしくお願いします。
質問というより、全体的なことですが、お話の中に法律が追いつかないという話が出ておりましたが、当然ながら、どんどん進化している、新しいものが出てきている中では追いつかないとは思いますが、私たち保護者にとって、夏休みのこの時期に出るということ自体が伝えられない。内閣府のサイバーセキュリティセンターからも文書が発信されましたが、21日の日付で発信されたということを考えますと、家族も含めて地域で対応するというのは相当難しいですよね。そういったところは、しっかりと製作会社も含めて話をする機会も持たなければいけないし、安心ネットづくり促進協議会という組織もそういったところを注視していますが、個人としてとか、我々組織としてやるべきことは何かないかというところを、すごく気にはしています。
この二、三日のニュースを見ていますと、自転車を運転しながらの衝突や、車が玉突きという事故のニュースがどんどん飛び込んでくるので、手の打ちようがないのですが、そういったところをどうすべきかと悩んでいますが、少し大きなくくりなので、助言とかはないかと思いますが、できたらそういったところを教えていただきたいと思います。
【竹内准教授】  非常にいい御指摘です。私も危機感を持ったので、SNS等で全国の先生方にポケモンGOについての現状を調べてみました。全国的にもう夏休みなので、先生方は詳しい様子は分からない場合が多かったです。「マスコミ等で大変な状況らしいことは分かるが、夏休みなので、対策するのが難しい」と異口同音に話していました。学校任せではない、何かの対策が緊急で必要と思います。やはり、マスコミ等での呼びかけ等が中心になってくると思います。質問された中身と少しずれますが、今、このゲームのターゲットは、まだ子供ではないのではないかと私は見ています。今、夢中になっているのは、大学生以上、30代の大人です。配信されているポケモンは、彼らが小学生の頃やっていたもので、今のものではありません。もう少し猶予があると思います。ゲーム会社が今の小学生、中学生をターゲットにするとかなり状況は変わってきます。御質問の答えになっていませんけれども、各地で予想していない問題が起きるかもしれません。私たちがこういう会議で問題提起をしながら、教育委員会、学校の先生、地域の方々、みんなが一緒になって対策を考えていかなければならないと思います。文書での啓発、パトロール等、何が必要かわかりませんが、今までにない対応が必要かもしれないと見ています。明確な答えになっていませんが、以上です。ありがとうございました。
【小原部会長】  どうもありがとうございました。
それでは、次に、科学技術警察研究所、原田特任研究官から、子供の犯罪防止に向けた取組ついて御意見を伺います。よろしくお願いいたします。
【原田特任研究官】  御紹介を頂きました科学警察研究所の原田です。どうぞよろしくお願いいたします。
私の方からは、子供さんの、これは一般的な路上犯罪を想定しているんですけれども、犯罪の被害の防止に向けた取組、これをできるだけ研究が研究で終わらずに、現場で実際に使っていただけるようにするにはどうするのかというところを目指して、この4、5年、試行錯誤してきましたので、その一端について御紹介させていただきたいと思います。
背景ですけれども、去年、一昨年、それから今年の春になって、また事件の発生は2年前だったんですけれども、逆に2年間監禁されていたという衝撃的な事件が起こるということで、子供の犯罪被害がまた大きな社会の問題ということで認識が新たになってきたと考えています。ただ、子供の犯罪被害というもの自体は、決してそんなに重篤な事案がたくさんあるわけではないのですけれども、ただ、一旦起こってしまうと、子供さん自身、それから御家族、社会全般に与える影響が甚大ですので、これを何としても未然に防ぐことが重要であると考えています。
それからもう1つ気になる問題として、これは外国の例で恐縮なんですけれども、犯罪の被害は日本で減っているという統計が出ておりまして、これはこれ自体喜ばしいことであり、決して間違っているわけではないと思うんですけれども、ただ、状況によって、思いのほか犯罪のリスクが高い状況があるのではないかということが海外の犯罪研究、最新の研究で指摘されるようになっています。
ここにお示ししたグラフは、2012年に発表された論文の中から引いてきたものです。これまで、人々が移動している間に被害に遭うかという問題は、ある時間、ある場所に何人の人がいるのかが分からないと、被害のリスクは計算できませんので、詳しいことは分からなかった。それが最近の、例えば携帯電話のデータであるとか、SNSのデータ、ツイッターを使うみたいな提案も今なされておりますけれども、そういうものを使うことによって、移動中の人がいつどこにどれぐらいいるのかということが数字として分かる可能性が今出てきています。そういうものをいち早く取り入れた海外の研究で、このスライドの赤丸で囲った、表記が英語で大変申し訳ないんですけれども、一番左側が学校への行き帰りです。それから、その次の丸のところが職場への行き帰りです。学校とか職場、そういうところへの行き帰りで起こる犯罪被害、つまり、これまでは分母になる数字が取れなかったので、被害のリスクを数値化することができなかったんですけれども、これをやってみると、実はそういう状況が意外に危ないということが分かるようになってきています。
今の研究に触発されまして、自分たちも、ちょっとデータが古いんですけれども、2008年のデータを使って、ひったくりについて分析をした例の一端を今御覧にいれています。これは、子供を狙った犯罪ではなく、そもそも子供はお金を持っていませんので、ひったくりのターゲットになることはめったにないんですが、逆に、グラフで見ていただくと、60歳以上、一番右側になるんですが、ここに注目してください。単純な件数で見ると、左から2番目の20代、30代の方と件数的にはほとんど同じです。青い棒グラフで示してあります。一方、赤い折れ線グラフ、これがその日、そのときに、その場所にいたであろう人の頭数を東京大学から拝借してきたデータで推計し、それを分母に取って被害のリスクを計算したものです。そうしますと、20代から30代の方が1.69、それに対して60歳以上の方は4.47ということで、2倍以上の開きがあるということが分かりました。
同様に、学職別で見ていきますと、同じように青い棒グラフ、ひったくりの件数で見ると、職業を持っている女性、ちなみに、ひったくりの被害者は95%女性ですので、この分析はそもそも女性しか扱っておりません。女性で有職の方の件数よりも、主婦や無職の方の方が、青い棒グラフで示した件数で見ると少ないのですけれども、これを被害のリスクで計算しますと、むしろ主婦や無職の方の方がうんと高くなっている。こういう結果が出てきました。
つまり、これらのことは、年配の方であるとか、当然、年配の方は職業を持っていない方が多いということもありますので、このような防衛力が弱い、犯罪弱者という言葉がありますけれども、そういう方々の被害の危険性が高いことを物語っています。全体の平均値で見た犯罪率は下がっていますけれども、犯罪弱者と言われている方々の被害の問題については、しっかりと焦点を絞った対策が必要、そういう状況に今なっているのではないかと考えるわけであります。
恐らく子供さんの犯罪被害ということについても、やはり小学生などは大人とは圧倒的に体力の違いがありますので、犯罪弱者という点では、高齢の方と同じではなかろうかと思います。こういう皆さんに対する安全対策が、今、非常に重要なものとして求められている時代になっていると思います。
文部科学省の方でも、このスライドに示した通達を去年の3月に出されて、子供さんたちの自らを守る安全教育、それから周囲の大人たちが環境を改善することによって安全な地域を作るという取組を並行して進めましょうという方針であると聞いております。ただ、こういう取組は、かなり手間暇がかかるという声も、現場の方々からよく聞きます。特に、安全点検を行って、それを地図の形にまとめる、これは合意形成のためには大変有効な方法なんですけれども、地図を手作りで作るというのはまたまた手間のかかることですので、どうしてもそれで息切れしてしまう、年に一遍できればせいぜいです、みたいな話もよく聞きます。そういうような現場の負担をいかに軽減するかということを、我々研究者の方でも、実際に使っていただける現場の身の丈に合った道具立て、あるいはやり方、考え方、こういうものをお届けすることによって、現場の負担を減らしていくことを、真剣に考えなければならない。つまり、研究と実践、研究と現場、これをつなぐ取組が今、以前にも増して求められている状況ではないかと考えています。
私どもとしても、研究の成果を社会に実装するということは、この4年、5年の大きな課題でありました。現時点では、2つの成果物を提案しています。
1つは、「危険なできごとカルテ」というものを用いた「ヒヤリ・ハット」、つまり、重大事件の前兆かもしれない事案を先制的に調査して把握をして、そして対策につなげる、そういう道具立てであります。このスライドにお示ししたように、QRコードを使うことによって、今はまだ開発途上なんですけれども、将来的には現場の学校などで、我々がお手伝いしなくても、半自動的にこういう調査ができるようにするというのが現時点の目標です。
それからもう1つが、『聞き書きマップ』という、これは簡単な地図作りソフトなんですけれども、こういうものを使った安全点検、そして結果を地図にまとめることが、現場の例えば小学校とかでも簡単にできる、こういうようなものを考えています。研究の結果を現場に返すというと、研究で得られた「知見」を「参考にしてください」という形で返すという発想になりがちで、我々も昔はそういうふうに考えていたんですけれども、なかなか現場の忙しい先生方の中に、そういうやり方だけでは定着し切れないということを、自分たちの取組の中で痛感しました。むしろ、産総研(産業技術総合研究所)の西田先生という方が提案されている「コンテンツ駆動型」、つまり、現場ですぐ役に立つ、すぐ使える、そういうコンテンツを最初に現場の皆さんに提案をする、こういうアプローチが、実装に向けた最初のきっかけとして有効であるという考え方が、自分たちにも大いに参考になると考えているところです。
この2つの私どもの提案について、順次、駆け足で説明をさせていただきます。
最初のもの、「危険なできごとカルテ」の基本になる考え方は、先生方はもう先刻御承知のいわゆる「ハインリッヒの法則」というものでありまして、1件の重大な事件や事故を防ぐために、その前兆かもしれない何百件もあるようなヒヤリ・ハット、これを知ることによって先制的な対応につなげることができるだろう、こういう考え方に基づいています。
実際にそれを調べるための調査用具として、このような、このスライドでは2ページに見えていますけれども、実はA4の1枚の紙の裏表です。ヒヤリ・ハット事案1件について1枚の「カルテ」に簡単な記入をしてもらう。そして地図をこれに付けておりまして、調査票から剝がしたシールをその上に貼っていただくことで、発生地点も記録できるという組合せ、これを考えているわけです。
ただ、この地図を読み取るというのは結構大変な作業でありまして、我々の研究開発段階では、アルバイトさんを使って人海戦術でやっていたんですが、とてもこんなことでは学校の現場に定着できるはずもありません。そこで現在、文部科学省のモデル事業を昨年度からやらせていただいておりますので、この中で、先ほど申しましたQRコードを地図とカルテ両方に付けることによって、最近は学校でもA3ぐらいのスキャナーを持っておいでのところはたくさんありますので、スキャナーに通してあげれば、こういうヒヤリ・ハット地図の基になる情報を半自動的にデータ化することができる、こういう仕組みの研究開発に取り組んでいます。幸い、この4月から新しい3年計画の科研費を頂くことができるようになりましたので、是非ともこれを機に、こういったヒヤリ・ハット調査が文字通り学校教育、小中学校の現場でできるようになることを目指して取組を進めたいと考えています。
提案の2番目は、『聞き書きマップ』というソフトウェアです。これは安全点検地図を作って関係者の皆さんで情報共有、それから連携をした対応、これが実現できるように、それを手間暇かけず、お金もかけず実現できるようにするということを目標にして開発してきたものです。
具体的に言いますと、このスライドに示したようなGPSの受信機が、最近は極めて安価に買えるようになっています。ここに示したものは、1個4,500円です。これを使って、デジタルカメラで撮った写真、デジタルカメラは自動的に撮影時刻が記録されますので、その撮影時刻とGPSのデータをひも付けることにより、自動的に、何時何分何秒に撮ったのだったらそれはこの場所でしょう、ということを、GPSのデータが教えてくれます。
それから、現地でこういう安全点検をやると、必ずメモとかを作るわけなんですが、これが結構面倒くさいので、その部分を改善するために、ICレコーダーを使って端から音声で録音してしまおうと考えました。まちあるきから帰ってから『聞き書きマップ』を立ち上げていただいて、データを読み込む、そして写真を選んでいただくと、その写真の撮影時刻で録音がジャンプしまして、シャッターを切ったその直後にしゃべった音声が自動的に再生される。それによって現地で一々メモを取ったりしなくても、ツイッターのごとく写真を撮ってつぶやいていただく、例えば、「ここは柵(さく)があるんですけれども、壊れていてどんどん子供が入っていきます」とか、「ここは本当は私有地なんだけれども、ポケモンGOで入ってくる人がいます」とか、そういうことを見つけたときにすぐつぶやいていただければ、簡便な操作で、それらがすぐデータとして扱えるようになる、こういう仕組みであります。
これを昨年度からスタートした文部科学省のモデル事業で早速取り入れていただきまして、ここに写っているかわいい小学校4年生、10歳の子供たちが、自分たちで安全点検のフィールドワークをやった事例がありますので、ビデオを御覧にいれたいと思います。ごく短いものです。
(映像上映)
【原田特任研究官】  このような動く地図、これを10歳の子供たちが自ら点検し、自らデータをパソコンに読み込み、そして内容を『聞き書きマップ』で聞いてテキストに書き込む、そういう一連の作業によって作ったのです。これを昨年の10月から11月にかけて、私どもの最寄りの柏市立の小学校でやっていただいた。そして、最終的に地図を仕上げる作業そのものは、みんなで手を動かしながらやった方が効果的ですので、取り込んだデータはすぐ紙に打ち出して、それをコンピューター室の隣の図画教室に持ち込んで、子供さんたちがこうやって床に広げるような形で、わいわいがやがや話し合いながら、こういう手書きの地図として完成させる、そういう取組をやっていただきました。
この取組について、地元柏市の市役所がやっている広報番組で取材していただき、市役所の広報ビデオ、下のアドレスがそのURLでして、ここをクリックしていただければ、今でも柏市のウェブページから、全部で15分ぐらいのものですけれども、全編を見ていただくことができます。この中で自分が一番重要ではないかと思ったところを抜粋してきましたので、そこを見ていただきたいと思います。
(映像上映)
【原田特任研究官】  このような形で紹介していただいたわけですが、やはり体を動かして体験的に学ぶということは大変重要でありますと同時に、恐らく同じようなやり方が、安全学習だけでない別の分野でも使えるのではないかと思っております。実際、『聞き書きマップ』というのは、衛星測位の技術を使っておりますので、こういった衛星測位、今、日本製の準天頂衛星システムというのが、再来年ぐらいに、実運用が始まる予定になっておりまして、そちらの関係者の方々からも、こういう取組が、子供たちへの宇宙教育のために使えるのではないかという提案も頂いております。そういう意味で、学校での体験的な学習を、そういう複合的な目的意識を持って進めてはどうだろうか。安全が安全だけで完結してしまうと、どうしても息切れがしたり、暗くなったりしがちですので、例えばこうした宇宙教育のような、もっと未来志向的なものとセットにしてやっていただくのが、一つの有望な方向性ではないかと思います。
あと、こういうものを更に普及していくために、今使っているGPSの受信機などは、値段が安いのが利点なのですが、外国製品であるために、クオリティーコントロールの問題がいろいろ出てきて、悩みの種になっています。その対策の一つとして、スマホ版も今、開発に着手したところです。ただ、先ほども竹内先生のお話にありましたように、歩きスマホ問題は大変重大な問題ですので、私たちはそれとあえて最初から明確に一線を画して、画面表示として面白いものは一切出さない、スマホはポケットから取り出さないでください、ポケットの中に入れたままで歩いて使ってもらえる、そういう差別化をむしろ意識的に図っていきたいと考えています。
ちょっと時間が超過ぎみですけれども、まとめさせていただきますと、このようにコンテンツ駆動型の実装という考え方に基づきまして、具体的に現場で使える地域の問題を洗い出すためのツール、それから、合意に基づく問題解決につなげていくための簡便な地図作りソフト、こういうものを提案していきたいと考えています。
さらに、この取組のもう1つ、絶対に忘れてはならない側面がありますので、ちょっと時間が過ぎているかもしれませんが、一言だけ追加をさせていただきたいと思います。
それは、専門機関との連携の仕組み作りということです。このスライドに示したのは「ヤード」と呼ばれる自動車解体工場なんですが、ごくまれに、こういう車の解体工場が、盗んだ車をばらして部品を不正輸出する、そういう犯罪者たちの拠点になっている場合があります。こういうものがもし万一、安全点検で見つかっても、これに対して有効な対処をするのは、例えば警察のような機関でなければできないことだと思います。ですので、こういうことを私どもの親会社でもある警察庁の方にも意見具申をさせていただきまして、今年、ちょうど今月1日付で、平成28年度の文部科学省モデル事業の管轄の県の警察本部に対して、警察庁から「是非協力方よろしく頼む」という事務連絡を流していただきました。こういうことが、専門機関と学校での取組とが有機的に連携する、そのための受皿作りの第一歩ではないかと考えています。
以上のことを、「科学が支える子供の被害防止」の将来のイメージとしてまとめてみたいと思います。いろいろな方々がそれぞれの場面で現に進めてくださっている取組があります。そういうものに対して、私どもが現場ですぐに使えるコンテンツを提供するとこと、それから、学校や警察に対する研修活動などで人材育成を図ること、これを車の両輪として、それを続けていくことによって、関係者が本当の意味で有機的に連携した、合理的で科学的な対策の推進につなげることができるのではないかと考えています。
ちょっと時間を超過してしまったと思います。大変申し訳ありません。以上です。
【小原部会長】  ありがとうございました。
それでは、ただいまの御説明を受けて、御質問等がございましたら、どなたからでも結構ですので、御発言をお願いします。
【中川委員】  中川です。ありがとうございます。
こういうGISマップを使ったような地図作りは、防災の方でもやってきています。阪神大震災後にやり始めたときに私が気を付けたことは、その地域を子供たちが嫌いになってしまわないように考えました。例えば防災だと、その地域のいいところとか、いい眺めみたいなものを探してもらって、危ないところとの両方を入れたりしていました。この取組の場合だと、子供110番の家とか、その地域に安全を作ってくれるような場所を子供たちで探したりして、安全な場所が分かるような、危険との両面が入っているのではないかと思います。その辺はどのように工夫されていますでしょうか。子供を安全な場所だけに囲い込んでしまえるわけではないので、教育で危ない場所を教えるのではなく、子供たちを地域で守っていくためにも、安全を作ってくれるものを見える化して、子供たちがどう守られているかみたいなことが地図上に載ってくるといいのかなと思います。その辺、どんな工夫をされているか教えていただければと思います。
【原田特任研究官】  ありがとうございます。
去年の文部科学省モデル事業における取組の中で、これは我々が提案したというよりも、学校の先生方が発案してくださったんですけれども、子供たちにただ歩いて自分の目で観察して声で録音するだけではなくて、地元の方にインタビューをしなさいということを先生が指導してくださっておりまして、それが本当に子供目線で地元の人とお話をして、こういう人たちが地域を守ってくれるんだという実感につながったと思います。今日のスライドではお見せできなかったんですけれども、まちあるきの当日は、全部で20のグループが手分けして地域を回っていて、それぞれのグループが必ず1人か2人の方にお話を伺ってくるという形でやってくださいました。こういうことが、地域を好きになる、あるいは地域の方々とのきずなを深める、そういうポジティブ形になる1つのアイデアだと思っております。現場の先生方が発案されたこういう側面を是非強化していって、そのプラスの面を子供たちも体感しながら、その中で、でもこれはちょっと危ないよねというところがセットで学べる、そういうところを是非目指していければと考えています。どうもありがとうございます。
【中川委員】  付け加えると、私たちが最初にやったときに、やっぱり子供が好きなところは結構危ないところが好きだったりするので、逆に、どういうところが好きかとかというところを逆に聞いて、そういうものの危なさをうまく伝えたりもしようというようなこともやったりもしたので、今の話はすごく面白いなと思いました。ありがとうございました。
【原田特任研究官】  ありがとうございます。是非それも今年の取組の中で反映させていただきたいと思います。
【戸田委員】  よろしいですか。
【小原部会長】  はい。
【戸田委員】  戸田でございます。原田先生、本当に長いこと子供の犯罪被害防止について取り組んでいただいており、心から敬意を表したいと思います。ますますバージョンアップして、より具体的になっており、とてもすばらしいなと思ってお聞きいたしました。
その中で、いろいろ方法はあるけれども、とりわけ、これから大事になるものの1つとして、研修ということをおっしゃいましたけれども、例えばどんなことをイメージされて、誰を対象にした研修というふうに考えていらっしゃるのかお聞きしたいんですが、いかがでしょうか。
【原田特任研究官】  ありがとうございます。
まず、私どもは警察庁の附属機関ですので、警察の部内向けの研修というのは、『聞き書きマップ』に限らず、今日はこちらの別の席にいるんですけれども、同じ研究室の者たちが中心になって、「防犯実務専科」という形で、年に1回の研修活動を行っています。こういった警察部内向けの研修も進めていきながら、これからは、できることでしたら、学校の先生方のための研修、それも恐らく教職課程の学生さんは忙し過ぎると思いますので、現場の体験を既に持っている、現職の先生方の更なるパワーアップにつながる研修に取り入れていただけないだろうかと考えています。恐らく、現場感覚を既にお持ちの先生方の方が、こういうツールで、どれぐらい手間が省けるようになるか、それから、応用範囲として具体的に何ができるかということを、必ずピンときていただけると思います。そういう意味でも、現職の先生方に対する研修の仕組みの中で考慮していただけると、大変有り難いと思います。
【戸田委員】  ありがとうございました。
【小原部会長】  どうもありがとうございました。
それでは、次に、今村委員から、「東日本大震災後の取組の現状と課題」について、御意見を伺います。
よろしくお願いいたします。
【今村委員】  今村でございます。本日、初めての参加になります。よろしくお願いいたします。資料に基づきまして、まず、自己紹介ということでございます。
現在、私は、東北大学の災害科学国際研究所の所長でございます。ちょうど震災後1年でできた総合的な災害科学に関する研究所でございまして、災害科学の進化、また、実践的防災学の展開を2つの柱にしてございます。現在、約100名の教員がいます。理工系だけではなく、人文系、また、社会、具体的には防災教育から心理学、情報科学、また災害医学の先生も入ってございます。
私自身は、津波工学ということで、科学技術系でございます。数値シミュレーションから始まりまして、津波避難、また様々な防災マップ作成と活用等も展開してございます。
震災後は、6つ目の項目にあるような様々な委員会等に参加させていただいております。文科省関係は、震災直後の防災教育・管理に関する有識者会議、地震調査委員会では津波評価部会、また、宮城県の方では推進ネットワークのメンバーでございます。
本日の話題は、赤で書きました3つをまとめさせていただきました。
1つ目は、防災教育の、改めて何だろうというところも、今、まとめてございます。
2つ目は、学校での管理についてということで、実は不確定性になります。余り関係ないかもしれませんが、赤字のところを話題提供させていただきます。
最後は、防災教育についてということで、副読本にもなるような「みんなの防災手帳」、手帳を提案しておりますので、それを紹介させていただきたいと思います。
まず第1の防災教育とはということでございますが、1年半になります。戸田先生、渡邉先生にご参加いただいた国連の防災世界会議の中で、まさにこちらの議論をしたということでございます。下の方に書いてございますが、主催者の中には、学術と内閣府と文科省が、恐らく防災教育としては初めて1つの組織に入り、議論をしたということでございます。このときに、我々は仙台宣言をまとめさせていただきまして、防災教育とはというところを改めて議論させていただきました。こちらを紹介させていただきたいと思います。
「防災教育は全ての防災対策の礎である。自然災害を乗り越える力は、過去の経験、先人の知恵を学び、家庭・学校・社会において協働で日頃から実践し育んでいく私たち一人一人の能力にかかっている。その力を組織的に高める試みが防災教育である。私たちは、防災教育を積極的に進め、自然災害から尊い命を一つでも多く救い、多くの人々と協力しながら厳しい状況を克服していかなければならない」と、こういう形でまとめさせていただきました。恐らくまだまだ追加・改善は必要かと思いますけれども、非常に重要なエッセンスをまとめさせていただいたかと思ってございます。
次のスライドは、仙台宣言の実際にESDとも連携したものでございますので、後で見ていただければと思います。
2つ目の課題でございます。我々、リスクを考えるわけでございますが、残念ながら不確定性というのが常に存在します。特に不確定性というのは、実は2つございます。1つは、認識論的不確定性でございまして、もう1つは、偶然的なばらつきということでございます。
前者においては、我々、様々な科学技術で努力はいたしますが、モデリング、又は予測の上で、残念ながら未解決、またよくまだ理解できていないところがございます。しかし、これは今後のデータの蓄積とか、また、進歩によって、ある程度は低減できる不確定性かと思います。3.11も当時の巨大地震、マグニチュード9というのは推定できませんでした。しかし、今朝のNHKのニュースにあるとおりに、例えば海底に地震津波計を置く、また、「京」などのスパコンを使う、これによって認識論的不確定性はかなり抑えられると思ってございます。
しかしながら、2つ目に書いてございます偶然的ばらつきがございます。これはあらゆる現象において、残念ながら我々が予測できない範囲で必ずばらつきがあるということでございます。
残念ながら、今後のリスクは、将来、いつどこで起きるか分からないものでございます。この2つの不確定性を認識しながら、リアルタイムで情報収集をし、判断をし、かつ行動をとらなければいけないと思ってございます。ここに書いたものは、今後、またアップデートはされると思いますけれども、重要な認識だと私自身考えておりまして、ここでまとめさせていただきました。
2つ目のもう1つの延長でございます。リスクへの対応方法ということで、これは自然災害の上では、3つの柱がございます。1つは防護、2つ目が順応、最後が撤回ということでございます。
防護においては、先ほど述べました予測がある程度可能であれば、事前にその規模、また内容を評価し、これを低減することができるだろう。しかしながら、社会のニーズや費用対効果を考えて、どの程度までリスク管理をする、また、低減をするかというのは左右されるわけでございますが、防護というのは、まず出てくる重要な項目でございます。震災後、津波に関しては、レベル1、レベル2という考えが提案されましたが、レベル1の考えでございます。具体的には、防潮堤、防波堤などのハードで対応するというのがこの中心になります。
2つ目が、順応でございます。残念ながら予防できないリスクは存在するということを認識し、これを許容していかなければいけません。発生後にすぐに対応できるようなものにする。まずは被害が拡大しないこと、二次被害抑止、また関連被害の軽減でございます。その次には、早い復旧・復興につなげていき、トータルでの被害を小さくさせる、津波防御でいうと、レベル2の考えになります。
最後は、どうしても撤回ということもございます。予測されるリスクが余りにも大きい場合は、我々、そこでの環境も考慮しながら、そこでの活動を諦めるという判断も重要だということでございます。
3つの自然災害での考えも、本委員会でも参考にしていただけるのではないかなと思いまして、書かせていただきました。
3つ目が、実践的防災学の1つということで、直接副読本ではないのですけれども、地域の方に日常的に持っていただきたい防災手帳でございます。我々は研究所でございますので、様々な学術論文またレポート等を発信しますが、今回の震災の教訓を一人一人のもと、手にとっていただきたいということで、幾つかのポイントを挙げて手帳を作りました。
まずは、災害というのは残念ながら今後も発生するだろう。熊本も同じでございます。共存して「生きる力」を高める、これが第1に掲げている特徴でございます。
2つ目は、市民又は生徒一人一人の知識だけではなくて、災害対応能力を底上げしなければいけない。これが2つ目として最も重要だと思ってございます。
3番目が、先ほど言いました実践的防災学を1つの形にする、論文とかレポートだけではないものになります。
4番は、マニュアルでなく手帳ということでございます。後から見ていただく知識編というのはあるのですけれども、手帳でございますので、自分又は家族又は学校関係で、自分で記入していただく欄があります。その記入によって初めて完成するものである。そういう手帳を目指してございます。
最後は、この手帳の発想は、もともと母子健康手帳をイメージしております。どういうものが最も身近であり、大切にしていただくかなということを議論させていただきましたが、正にこの母子手帳というのが、その重要なヒントにあったということでございます。生まれる前から、生まれてから、成長するまで、常にお母さんが手元に持って記録を残している、それが非常に重要であると考えてございます。
ここでの手帳というのは、幾つかの重要な知識、情報をまとめてございますが、その1つが、被災の時間軸でございます。今ちょうど発災のところが書いてございますが、10時間後、100時間後、1,000時間後、10,000時間後、これはちょうど1年後、数年後ではございますけれども、各団体で必要な項目に関して整理します。直後においては命を守ることが必要です。また、100時間後には生き延びるため、避難所であるとか、又は仮設住宅でございます。あとは、生き抜くため、また、1年後では復興ということになります。それぞれを章立てに整理するということでございます。この時間軸でまとめることによって、今は例えば発災直後でありますけれども、今後何が必要かということも改めて理解いただくことでございます。
ポイント1は、先ほど述べました手帳方式で、ちょっと見にくいかと思うのですけれども、それぞれ確認しよう、自分の役割を決めよう、ポーチを準備しようということで、作業を伴い、それを記録するということをポイントの1つとして挙げております。
2つ目は、先ほどの時間軸でございまして、先ほどは発災後から10,000時間までまとめましたが、当然、震災前の備えということもまとめております。
ポイント3は、まさに3.11の被災者の方の生声を最後のところに書きました。我々がヒアリングさせていただいて、当時、苦しかったこと、参考になったこと、また、ほかの地域に伝えたいこと、それらを声としてまとめさせていただいたところでございます。
4番目が、動詞で語りかけるということで、暑さ・寒さをしのごう、このような動詞で最後をまとめ、アクションを求めるという形にしております。
また、全体的に、文章はちょっと多いと思われます。できるだけ文章は少なくし、イラストを加えて中身が分かるようにという工夫はさせていただいております。
このような活動を紹介させていただきながら、この最後のページは、この部会での検討項目と伺ってございます。今日紹介させていただいた3つの項目などは、それぞれのカリキュラムやマネジメント、また地域での連携等で参考にしていただけるのではないかと思ってございます。
簡単でございますが、自己紹介も含めて、3つの項目について説明させていただきました。ありがとうございます。
【小原部会長】  ありがとうございました。
それでは、ただいまの御説明を受けて、御質問等がございましたら、どなたからでも結構ですので、御発言をお願いいたします。
手帳は学校に配っているんですか。
【今村委員】  手帳は、各家庭に配らせていただいております。現在、岩手県は全て、あと、宮崎とか、もちろん宮城県、また埼玉県などで、今、66万部ほど配布させていただいておりますけれども、今後どういうふうに展開させるかというのか1つの課題かなと思っています。
【小原部会長】  そうすると、頂きました、どうもありがとうございましたで、そのまま棚に載っている可能性もあるわけですね。どこかの段階で、学校であるとか、集会の場所できちんと説明なりする必要もありますよね。
【今村委員】  そのとおりでございます。実は配布というのが第1段階で、必ずその後、研修会を設けまして、これはリーダーの方にこの使い方を提供するのですけれども、その後、必ず防災訓練であるとか、研修であるとか、後援会のときに持ってきてくださいと依頼しております。今またフォローアップして、どんな活動にこの手帳を使っていただいているかというのをまたリサーチさせていただいております。
【小原部会長】  例えば、こういった内容を教職課程の学生にどこかの時点で事前に教えておくということも必要ですよね。
【今村委員】  はい、そのとおりです。
【小原部会長】  横を見たら先生も一緒になって聞いていたというのでは話にならないわけですから。
【今村委員】  そのとおりです。「みんなの防災手帳」は、いわゆる大人向けでございますけれども、子供向けの生徒手帳というような内容も今検討しております。恐らく岩手県で作っていただけそうです。この費用は、結構ばかになりませんで、1冊400円なり、部数が少ないと1,000円ぐらいになるのです。今、協力いただいているのは、某民間のテレビ会社さんで「24時間テレビ」というのがありますが、そこの基金を頂いて、少しずつ展開しているというのが現状であります。
【小原部会長】  そのほかございませんでしょうか。
先生、どうもありがとうございました。
【今村委員】  どうもありがとうございました。
【小原部会長】  それでは、これまでの3つのヒアリング等を受けて、意見交換を行います。御意見、御質問等がございましたら、どなたからでも結構ですので、御発言をお願いいたします。
その前に、課長補佐の方から。
【中村健康教育・食育課課長補佐】  局長が参りましたので、御紹介させていただきます。
藤原初等中等教育局長でございます。
【藤原初等中等教育局長】  遅くなって申し訳ございません。去る6月21日付で初等中等教育局長を拝命いたしました藤原でございます。いろいろとお世話になります。どうぞよろしくお願いいたします。
【小原部会長】  それでは、質問の時間になりましたので、もし、ちょうど発表された3人の方もいらっしゃいますので、質問等がございましたら、お願いいたしたいと思いますし、また意見がありましたら、お願いいたします。
【太古委員】  失礼いたします。舞子高等学校の太古でございます。
先生方のお話をお伺いしまして、私もポケモンGOについて知らなくて、今日、新聞で読んできました。本校もスマートフォンや携帯電話の持込みを禁止していませんので、この問題についてはしっかりと考えていかないといけないと思っていました。
本校では特に重点的に気を付けなければいけないと思っていることに、サイバー犯罪防止教室、これは薬物乱用も絡めて行っていますが、兵庫県警と協力し、1年に1回全校生に必ず実施をしています。生徒たちには、自分は大丈夫だと思っていても、悪意をもっての行為については、注意をしても更に注意をするようにと、講演会を実施しています。保護者にも案内をして一緒に聞いていただくようにしています。
また、安全マップ作りについては、本校は防災についての専門学科ですので教育課程の中で、近隣の小学校は防災教育の一環で行い、一緒に実施をしています。子供たちがこのような活動をすることで、その子供たちが成長する中で防災について家庭や地域の方と話し活動しながら協力していくことで、地域のことを知ることになり、小学校の先生も喜んでいただいています。
東日本大震災の取組については、東日本大震災が起こった直後からの募金活動や楽器集め、4月6日には釜石に先遣隊が入り、その後、5月7日からは、環境防災科3年、2年、1年、普通科の有志が、一月間、支援ボランティアをさせていただきました。次の年にも3回、東北に行かせていただき、支援ボランティアをさせていただきました。平成23年からは全国防災ミーティング、26年からは全国防災ジュニアリーダー合宿を実施し、防災・減災の担い手である中学生、高校生を中心に、阪神・淡路大震災や東日本大震災の教訓を学び、今後の防災・災害に備えていく目的で、取組を進めています。
今日、先生方に教えていただきましたことを、今後に生かしていきたいと思っています。どうもありがとうございます。
【小原部会長】  次に戸田先生、お願いします。
【戸田委員】  三人の先生方、大変貴重な御提言をありがとうございました。
三人の先生方は、いろいろな形で本当に先駆的に実践されていらっしゃるんですけれども、そういう中で、特に対策と教育という2つ両面から考えていかなければいけないと三人の先生方がおっしゃったように思うんですけれども、それに加えて、それらを広げて普及していくということがとても大事なことで、すごくいいアイデア、すごくいい方法、すごくいい考え方でも、なかなかうまく普及できない。1つの学校でとどまる、1つの地域でとどまる、あるいは一定でとどまるということで、残念ながらこれまでいろいろな安全教育の様々な試みというのは、風化したり、マンネリ化したり、そのうち廃れていったりということがあると考えています。それで三人の先生が、今、取り組まれている、あるいは過去に取り組まれている中で、こんなふうにやったらもう少し全国の学校に普及するのに、こんなふうにできたらいいのになどというようなアイデアなどをいただけたら有り難いと思います。いかがでしょうか。三人の先生にお聞きしたいと思います。
【小原部会長】  発表の順番でよろしいですか。
【戸田委員】  はい、結構です。
【小原部会長】  それでは、竹内さん、お願いいたします。
【竹内准教授】  何分ぐらい話して良いでしょうか。
【小原部会長】  時間よりも内容で行きますから。
【竹内准教授】  では、失礼します。一番は、まず大人が状況を知ることです。危険性や不具合の指摘は誰でもできますが、対策を考え、実行できる体制づくりをすることが必要です。例えば、ポケモンGOの危険性はよく指摘されますが、ポケストップの削除要請については意外と知られていません。出雲大社とか、熊本城とか、もう削除要請を出しているそうですが、これは任天堂の公式HPにちゃんとあります。ポケストップやジムについての問題を報告する。そうすると任天堂も対応する。そういう一連のことをしっかりした上で、産官学一緒に子供たちを守り育てていくことが必要だと思います。そのためにも、まず大人が知ることが必要です。例えば、先ほど、舞子高校の先生がおっしゃっていただきましたけれども、兵庫県警の方々は非常に熱心で、私の研究室の学生たちと日々、調査研究しています。年間100回近く、一緒に啓発活動もしています。地域の状況を各市教委に聞きながら、その地域にあった内容にしていっています。さらに、いろいろな企業とも協力しながら進めています。兵庫県ではこのように産官学一緒に取り組んでいますが、とても良い方向性だと思いますので、全国に広がっていけばよいと思います。
私の携帯電話を映します。ここにポケモンGOを立ち上げてみます。これがポケモンGOです。これは私です。これが文部科学省。ここにポケストップがあります。文部科学省のすぐ前にジムがあります。ここでバトルができます。文科省の近くに来ると、モンスターボールをもらえます。ですから、近くに人がたくさん集まってきます。少し長くなりましたが、まず私たちが現状を知って、知った上でどういう対策が必要なのか考えていかなければなりません。校長先生も是非帰られたら、学校の近くにポケストップやジムがあるか調べてみてください。そういう知るための努力が必要です。もし調べ方が分からなかったら、いろいろな大人に教えてもらう。子供たちは間違いなくネットでつながっています。大人がつながることが必要です。それが難しい場合は、子供たちが一番よく知っているので、子供たちに教えてもらえば簡単です。
実は私、尾上委員と一緒に、昨年から近畿2府4県の子供たちを集めて、「関西スマホサミット」を開催しています。スマホの問題について子供たち自身が考え、自分たちはどうしていけばよいか議論するための会です。予想以上に子供たちはいろいろな危険について認識していますが、驚くような部分で無知です。子供が何を知っていて、何を知らないか、私たちが理解した上で対策を講じていく。
ネット問題については、世界的に見ても、日本はこれまで良く対策してきたと私は評価しています。フィルタリングを無料で子供たちに提供できているのは、世界的に見てもすばらしい。しかし、スマホやポケモンGO等の出現で今、新しい局面が始まっています。
少し説明します。最近の私の調査では、小学校の子供たちはインターネット接続をゲーム機でやっていることが多いのがわかっています。中学生は音楽プレーヤーです。これらの機器はWi-Fi接続が必要ですので、外でポケモンGOはできません。この子供たちが本気でポケモンGOをやりたがると、スマホを買おうと親にプレッシャーをかけます。そうすると、日本中の子供たちがスマホをもっと持ち出して、トラブルが大きくなっていく可能性があります。
こういう新しい局面ですので、全ての大人が協力して方策を考える必要があります。例えば私は、いろいろな県教育委員会に呼ばれますけれども、生徒指導担当、情報教育担当、人権教育担当、いろいろな担当者があります。それぞれがそれぞれで様々な方策をしているので、効率が悪いような感じがしています。そろそろいろいろな部署が協力してやっていかなければならない時期だと思います。
私は大阪府の寝屋川から来ました。昨年、中学生2人が殺害される事件がありました。この事件はスマホの事件ではありません。しかし、深夜に中学生2人が暗い夜道を歩いていたのは、彼らがずっと無料通話アプリで友達とやりとりしていたことと無関係ではないと思います。ネット上には、被害中学生が直前まで級友とやりとりしていた無料通話アプリの画面が公開されています。真偽のほどは定かではありませんが、問題提起の意味で前に映しています。真夜中、3時「ちゃうわ」「えー」「おやすみー」等のやりとりをしています。それに対して、朝6時には、「自転車見つかった。今から電車で京都に遊びに行ってくる」「絶対反対されるから私からは親にも連絡しない」。3時と6時を並べてみますから見比べてください。何か気付きますか。
(「漢字が多い」の声あり)
【竹内准教授】  漢字が多いですよね。まだ捜査段階ですので正確なところは分かりませんが、確かに違和感があります。3時のは被害者が書いたでしょうが、6時のは別の人物、もしかしたら犯人が書いたかもしれません。つまり、3時にはまだ拉致されていないことが分かっても、スマホには防犯の機能はないことがわかります。それなのに保護者の多くは、「スマホがあるから大丈夫」と思っている。防犯の観点から、非常に危険だと思っています。
こういうことを親子で考える機会を作ること。それに尽きると思います。しかし実際は難しい。そういう機会を学校で用意しても、必要な保護者はなかなか来ません。私は元中学校教員でしたが、本当にそういう話が必要な保護者は、「入学式の次に学校に来るのは卒業式」という場合もあります。そこで入学式でそういう時間を作ったりしていますが、それも十分な時間確保が難しい。そこで今、兵庫県では、神戸市、たつの市、相生市、養父市、三木市等で、私の研究室に出入りする学生たちに、子供たちにスマホ問題の授業をさせています。そこでは、大学生が子供たちに教えるというのではなく、子供たち自身に考える機会を提供することを大事にしています。今日のお話を聞いて、皆さん、すばらしい活動をしておられます。私はスマホのことを話しましたが、全ての方に共通することは、子供自身に考えさせることだと思います。以上です。
【小原部会長】  ありがとうございました。
原田研究官、お願いいたします。
【原田特任研究官】  戸田委員から御質問いただきました普及をして広げていくためにどんなやり方か必要であるか。それができないと、そもそも知っていただくことが不十分なまま風化してしまう、忘れ去られてしまうという、まさにその恐怖に、私、この4年間、さらされながら今に至っていますので、もう本当に言い始めたら夜が明けてしまうぐらいのところがあるのですけれども、現時点では、3つほどのことを考えています。
1番目は、先ほども御紹介した産総研の西田先生が、コンテンツ駆動型アプローチということをおっしゃったわけなんですけれども、それに続く第2段階として、クルージ・アプローチということをおっしゃっています。これは現場で既にやっているカリキュラムなど、私がもうちょっとそれをパラフレーズして言いますと、やらなければならないと要請されている、そういうものは実は現場にはたくさんあるはずでして、通学路の安全点検なども典型的なものだと思うんです。こういうものの中に何とか売り込んで、本当にこの4年間、営業部長をやっていましたので、それで使っていただくことによって、なるほど、これは手間が省けるとか、それから、実際に使っていただくと、こういう用途で使えるんだったら、ほかのこともできるよねということで、先生方に体験していただくことによって、次々と新しい用途を、こちらが頼まなくても開拓してくださいます。そういうことによって実感的に共鳴してくださる方を広げていく、これが自分のとったアプローチの1つでした。
その中で、文部科学省のモデル事業に昨年度から取り入れていただいたというのが画期的なことだと考えておりまして、文部科学省モデル事業となると、学校側がものすごく切羽詰まった形で真剣に取り組んでくださいます。吉門調査官がここにおいでなので、余り変な言い方をしてはいけないんですけれども、やっぱりそれだけの切実感があるところで取り入れていただけると、我々自身が当初予想していたものとも比べ物にならない、大きな現場の力が生まれてきます。そういうことによって、成功事例としてそれが1つ出てくると、これを代々木オリンピックセンターの全国成果発表会で全国に紹介していただけますので、こういう形での国の取組が、我々にとっては、1つの後ろ盾を頂いたような形で広げていけると思っています。
それから2番目、これはかなり観点が違うところなんですけれども、私も研究者の端くれでありまして、研究者がこういう営業活動ばかりやっていていいのかということを、この4年間ずっと自問自答しながら来たわけでありまして、こういう取組をやっても、ほぼ論文は書けません。ですので、研究者としての大概の一般的な生産性がうんと下がります。そういうものを恐れる研究者が非常に多いです。この状況が何とかならないと、研究者のサイドで現場に成果を届ける、現場に実装しようというインセンティブが生まれないと思います。ですので、例えば、科研費の申請書の中に、「これまであなたが研究費を取ったものの中で、現場に実装されたものが幾つありますか?」みたいなことを、だって、「過去5年間の研究論文」については事細かに書かせるのですから、それと同様に、現場実践、現場への実装の実績、そういうものが業績として書ける、そういう研究者サイドにインセンティブを与える社会的な仕組み、これが必要なのではないという気がします。
3点目、これは、国による別の施策などの推進母体を巻き込むことです。現に、いろいろなところに切実感を持ってやっている人たちがおりまして、例えば先ほど申し上げた準天頂衛星ですけれども、これは既に国民の税金1,700億円が年度をまたぐ国家債務負担行為という形での支出が決まっています。ですので、このシステムをいかに利活用を拡大する、成果を国民に返すことをやらないと、内閣府宇宙戦略室が主管しているんですけれども、そこ自体が困ってしまうという状況があります。私自身もそこに目を付けて売り込んできたわけでして、その結果、内閣府広報ビデオみたいなもので、もし取り上げていただけるようになれば、その宣伝効果は絶大ではないかと思っております。こういう場でお話しするのは申し訳ないようなギラギラした話ばかりなんですけれども。ある種、こういう営業部長的な感覚を研究者側も養っていかないと、本当の意味で研究成果が現場に返っていくことにはならないのではないかと考えています。
以上です。
【小原部会長】  ありがとうございました。
それでは、今村先生、お願いします。
【今村委員】  今村です。普及と忘却の2つの課題を頂きましたが、私の方は、忘却の課題について一言述べたいと思います。
我々が今抱えている課題(テーマ)は、世代を超えてどうやって経験とか教訓をつなげていくかという課題でございます。そのメカニズムを調べるために、今、やはり過去を学んでございます。いわゆる先人たちの知恵ということで、防災文化に根付いた様々な仕組みであるとか、また、取組なども改めて今勉強・研究してございます。
代表的なのは、地名や神社仏閣、絵図、石碑とか、また、お祭り等々が地域に根ざしたものが、ある意味、災害の教訓として残っています。それのどこが一体インセンティブなり、どういうメカニズムの仕組みが世代を超えられるかというのは、まだ我々、答えはないのですけれども、やはりそこで必要なもの、また楽しいものとか、そういうキーワードは出ています。
これらの内容に関しては、研究として取り組ませていただいて、絵図から何ができるかとか、地名と過去の災害との関係というのは、我々、他分野の方たちと改めて中身を今、詰めているところです。
別のお話になりますが、他分野の方たちとこういうものを学際的に研究しますと、学術論文でも、かなりアクセプト(受理)していただいておりまして、従来は文系の方たちは日本語しか出さない傾向があるのですが、それを我々、英語にさせていただいて、いわゆるナチュラルハザードという自然ハザード関係の論文でも、こういう知見であるとか、人々の関係した取組なども非常に興味を持って査読をしていただいて、アクセプトをしていただいております。今、改めて先人たちの知恵を学んでいるところでございます。
【小原部会長】  ありがとうございました。
それでは、藤田委員、お願いします。
【藤田委員】  藤田でございます。今日、御発表いただきました先生方の、まず犯罪関係で、竹内先生と原田先生の方からお話を伺いまして、私も犯罪予防教育の重要性というものについては、大変重要な課題であると思っています。ただ、以前経験しました池田小事件等のことも含めまして、いわゆる予防教育における情報の共有、先ほど出ました教訓の共有というものが大変重要だと思っております。ただ、それがややもすると、子供たちに対して脅し教育になってしまって、結局それが、今日も議題になっておりましたが、地域とか大人に対する不信感の形成につながっていってしまう。そういうものを今後なくしていくためにはどうすればいいのかというのが、一番大きなこれからの安全教育の課題ではないかと思っております。
そういった中で、例えば、現在、協働という、コラボレーションという概念が大変強く打ち出されておりまして、チーム学校というふうな観点で出てきておりますが、そういった地域とか関係者を参加させて、子供たち自身に何ができるのか、また、当然子供たちも守られるだけではなくて、守る存在としての、今日も御指摘もあったかと思うんですが、親とか学校の教員であるとか、警察や子供110番、地域の方々とか、そういった方々の姿を子供たちの安全育成に関わっている姿を見せるような工夫がこれから必要とされてくるのではないかと思っております。そういった中で、是非、今日は御発言の中に出なかったんですが、学校安全委員会のような制度を学校内において充実していただいて、子供たちに大人の姿を見せることによって、次代の安全を担う人材育成へという観点での安全教育という形で、是非これからも研究を進めていただきまして、またいろいろと御示唆を頂きたいと思っています。
また、渡邉委員から自己効力感のお話が出ておりまして、子供たちの自己効力感を高めるという観点が示され、それから今村先生の方から、手帳の活用、私もそういうものはこれから、子供とか親がどんどん伝えていくという、それを具体的に使うツールと工夫が必要ではないかと思いますので、是非そういう点では、更に一層の制度の充実を期待しております。
今村先生に1つお伺いしたいんですが、災害リスクの対応方法で、いわゆる防護と順応と撤回という、防護、順応というと、これはいわゆる一次予防、二次予防という観点で考えると、三次予防が撤回かと思ったんですが、三次予防というと、いわゆる再発予防のような観点と、若干防災とは違ってくるので、このあたり、どのようなニュアンスで、今後、子供たちへ展開するのがいいと思っておられるのか、御意見があればお聞かせいただきたいと思います。
【今村委員】  ありがとうございます。
撤回に関しては、防災、学校教育、学校安全を考える場合、ちょっとなかなかまだマッチしにくいかと思います。一番大切なのは、場になります。その場におけるリスクを評価し、そこでやはり適切なところを選んでいく。そこをやはり我々、ある程度、情報が入手できますので、収集し、判断していかないと、やはり繰り返してしまうところがあるかなと思います。
【藤田委員】  じゃあ、やっぱり再発予防という概念ということでよろしいでしょうか。
【今村委員】  そうですね。
【藤田委員】  どうもありがとうございます。
【小原部会長】  五十嵐委員、お願いいたします。
【五十嵐委員】  ありがとうございました。今日は、とても勉強させていただきました。ちょうど今朝、ポケモンGOの話題を本校の先生方としていたところでしたので、いいタイミングで勉強になりました。竹内先生、原田先生、今村先生、そして渡邉先生の御発表から、頭の中が整理できました。やはり生活安全面、防災安全面、交通安全面は、全て住んでいる地域をしっかりと歩きながら、地域のことをたくさん知ることが大切です。自分たちの住む町のいろいろないいところ、素敵なところを知った上で、それでも、危ないところもあって、過去はこういうふうにしてきて、こんな先人の知恵もあったのだということを学ぶ必要があると感じました。子供たちは町を作っていく人材ですから、本当に未来を創るという意味で、そういう過去から学ぶための活動は絶対に必要だと思います。
また、情報安全面では、現在もこれからも、きっとたくさんの様々な情報が入ってくるので、その中でもしっかりと正しい知識を大人も子供も学んで、適切にしっかりと判断できるように情報を収集し、情報を活用していく能力もとても必要だと感じました。
今村先生が、知識だけではなくて、災害対応能力をきちんと付ける必要があるというふうにおっしゃいましたが、そのとおりで、実際に行動できる子供に育てなくてはいけないと思います。正しい知識と実際に行動できる、そういう能力を付けるためには、地域をしっかりと学ぶ活動が必要で、そのためには、安全教育の時間を確保する他に道はないと思います。国語や算数や社会や理科などそれぞれの教科にも関連する大事なことがあります。特に社会では地域めぐりの活動がありますし、理科では自然のメカニズムを学びます。それらをつなげていかなくてはなりません。今こそカリキュラムマネジメントが必要です。これから様々な危機が予測される時代ですので、そういうリスクに対応できる子供たちにするために、安全教育の時間を、カリキュラムマネジメントによって、教科を横断する特別な時間として、しっかりと設定するべきではないかということを、私は今日、先生方の御発表を聞きながら改めて思ったところです。
最後に感想です。原田先生がおっしゃったように、本校でもたくさんの専門家にお世話になって教えていただいていますが、やはり現場にこのように貢献していただいてこその研究だと私も痛感しています。先ほどのお話のように、どうしてそれが論文と同じくらいの価値として認められないのか不思議でなりません。是非現場に寄り添い、貢献してくださっている研究者に、社会で高い評価をしていただきたいなということを切に望みます。また、先ほどのポケモンGOの話についてですが、自分も興味をもっています。ポケモンをゲットするのではなくて、ある教員が言っていたんですが、自分の住んでいる町に史跡というか、石碑やお地蔵さんなどがあったことを知ったと言うんです。ひょっとしたら、すごい教材になり得るのかなと。先ほどのカルテ、ツールキットという話がありましたが、そういう有効な知識がもしそれに入り込んでいるのであれば、それを使いながら何かできないかなと。ポケモンのゲームよりはむしろ、何かそういう方の教材に発展できないのかなということを感じました。本当に今日はありがとうございます。
【小原部会長】  よろしいですか。
それでは、中川委員、お願いいたします。
【中川委員】  中川です。ありがとうございます。
机上の参考資料で配っていただいたものは、第1回でお話しさせていただいた熊本地震の被災地で行われていた小学校の理科教育の成果について、災害情報学会のニュースレターや、地方紙向けの子供ニュース欄で書かせていただいたものです。
私、昭和の頃からパソコン通信のユーザーですが、当時はおせっかいな人たちがネチケットという言葉で、いろいろルールを教えてくれたりして、そういう雰囲気は、インターネットの初期の時代にまであったように思うんです。なかなか今のように大きくなってしまうと難しいのかもしれませんけれども、また、2005年の台風で宮崎市の電子掲示板では、市民がたくさん情報を書き込み、市の担当者が24時間体制で防災対策本部の情報を流したり、市民からの問合せに答えたりしていていました。役所に文句を書く人もいたのですが、市民側から「ここは文句を書く場ではなく、みんなが情報を共有する場だ」ということで自制が効いていました。これは、災害情報の専門家として「電子掲示板はゴミ情報がいっぱい来るので当てにならないので使えない」というのが常識だったのですが、それを覆した事例です。また東日本大震災では、石油会社の火災で有害物質が出ているというデマがSNSで流れたのですが、企業側の発信を元にみんなで適切な情報を誘導した例があります。先ほどおっしゃったように、実社会として人のつながりを大切にしている大人の姿を見せるのと同様、ネット社会の中で大人というか、もう少し普通の人が「ちょっとそれ、どうなの?」みたいなことを積極的に言うような、そんな可能性があると、みんなで安全と安心を作っていくような感じになると思うんです。サイバーポリスみたいになると違うとは思いますし、人が見えるローカルではなくグローバルなネット社会なので難しいとは思いますが、何かそういう可能性や、方向性がないかとずっと思っているんです。竹内先生、原田先生、何か方法はないものでしょうか。
【竹内准教授】  正に今、私、それに取り組んでいます。少し説明させていただきます。
スマホ問題は特に、子供たちは大人から頭ごなしに言われることを嫌います。しかし、実際は子供たちもよくわからないことが多い。そこで私は、先輩が後輩に教えることが良いと考えています。事例を2つ紹介します。
兵庫県立姫路飾西高校の生徒会執行部員がオープンハイスクールに来た中学生たちのために「受験生のためのスマホ3か条」を作って、それを説明しました。その1つ目は、「スマホ使用は夜9時まで。ただし寝る前10分可」です。彼らは中学生に「寝る前、10分だけスマホを触ってメッセージ等の確認をしても良い。でも、長くなるので返信するのは禁止。返信するのは次の朝。早寝、早起き、朝スマホ」と説明しました。非常にうまい。中学生にとって納得できるルールです。しっかり受け入れられました。
スマホの問題は大人から子供は難しい。ですから本来的には子供同士でルールづくりをするのが最も良いですが、一足飛びにはいかないので、その途中に先輩から後輩に教えるようなシステムが最適だと考えています。今、うちの大学生が、兵庫県各地の小学校に回ってスマホ等の使用についての授業をしていますが、この延長線上です。
2つ目は、兵庫県立猪名川高校の生徒諸君が小学生にスマホ使用について教える事例です。うちの学生が指導した取組ですが、一番面白かったのは、高校生たちは「授業の最後に、小学生に鬼ごっこを教えたい」と言い出したことです。最初は理由が分からず私も困惑したのですが、詳しく聞くと高校生は「僕らが小さい頃はスマホなんかなかったから、ずっと鬼ごっこしていた。小学生にスマホは駄目だって言っても、スマホよりおもろいものなかったら絶対やってしまう。だから鬼ごっこを教えたいんです」と話してくれました。実際に小学生に教えたら、「これ、おもろいな、お兄ちゃん」とずっとやっていました。私は実は、このあたりが核心部分だと思います。スマホ問題の答えはスマホにないと思います。リアルな世界に答えはある。そのことを高校生に教えられた気持ちがしました。防犯等の問題でも、大人が教えるよりも、自分たちで調べたり、学んだりする方が効果的なことがわかっていますが、ちょっと進んで、先輩に学ぶことが大切だと思います。
【小原部会長】  尾上先生。
【尾上委員】  尾上です。本当にいろいろなお話、ありがとうございました。
ここ最近、いろいろなことが起こった後に対策が打たれているという状況が増えていると感じておりまして、例えば、いじめが起きて自殺すると、いじめ対策のための法律が出来上がり、また、不登校の子がいた流れで川崎の事件があり、通学路の中に車が突っ込んで亡くなってからというような、事後対策、事後対応という部分が増えていると思いますが、3人の先生方からお話があった中で、事前に予測されるところを早く手を打っておかなければいけない部分がたくさんあるのではないかなと思われます。
先ほど少しお話ししましたが、もう既にながらスマホで事故が起こっているということは、今後、頻発する可能性があるのに、何も手を打たないのかと。そういった中から考えますと、優先順位というよりは、有効性をしっかり見いだすということが大事であることをお話の中で感じました。
前回もお話ししたのですが、学校安全計画というのが学校の中にあり、それが学校の中で作られて、地域とか保護者とかに展開されていない部分が多々あると思いますし、例えば、私が小学校とか中学校にいるときに、通学路の点検とかというのを誰がやっているかというと、学校の先生かやられているのが中心的で、保護者とたまに一緒にする、それも毎年やらないというような、1回やると、ある程度、何年間は大丈夫だろうといったところを、短時間で更新していかないといけない状況があるのではないかと思われますので、そういったところをしっかりやっていくということと、今回、ポケモンGOに関しては、これをいい機会ととらえて啓発に展開するということがすごく大事だと思います。ながらスマホは絶対にやらないというようなところを注意喚起していくというよりは、社会全体がそういうような意義を作っていくというような形での啓発に切り替えていかないと、社会での教育というのは進んでいかないと思いますので、そこを考えていくというところが、学校安全計画だけではなくて、全体的な試みなのかなと思いますので、何らかのそういった知恵とかがここで出たらいいと感じております。
感想ですが、ありがとうございます。以上です。
【小原部会長】  次に村上先生。
【村上委員】  日頃市中学校の村上です。3人の先生方、大変貴重なお話を頂きまして、大変ありがとうございました。
日頃市中学校では、先日、22、23日ですけれども、終業式の後に、防災チャレンジキャンプをやってみました。私からの指令は、24時間自分たちだけで生き抜け。内容は大きく4つ、1つは、防災マップ作り。2つ目は、明かり作りや段ボールシェルターつくり(住)、3つ目はサバイバルメシ作り(食)、最後は避難所運営、HUGゲームとして静岡県で出しているゲームを高知県の南海中学校とテレビ中継を行いながらやってみました。岩手県は津波警報が出されたら沿岸の学校は生徒を帰さないということが決められておりまして、決められているけれども、本当に警報が出たら、先生たちはどうやって生徒たちを生かしますかというか、安全に学校に置きますか。本校でも何の準備がなかったのです。今回、自分たちでシェルターを作ってみるとか、毛布を1枚持ってくるとか、そういうことをやりながら体験させてみました。子供たちも学校に泊まるということを頭の中では分かっているけれども、実際に泊まってみると、学校に電気がつかないということはとんでもなく大変なことであるし、自分たちで御飯を炊いて食べるということの大変さも自覚したようでございます。
今回、先生方のお話にあったネット環境ですけれども、ネット環境も正しく使うということを子供たちに何とか教えてみたいな、情報教育もやってはおりますけれども、こういう使い方が本来の情報の使い方なのですよということで、南海中学校の生徒たちと、遠く離れたところの生徒たちと一緒に学べたこともよかったかなと思っております。
それから、先ほど、みんなの防災手帳、確かに私もあるけれども、棚に上げたままにしてあるな、これを24時間のところで生徒たちに持ってこさせて使わせたらよかったな、学校に帰りましたら、来年度の防災キャンプにこれを使ってみたらどうかなというのを是非提案してみようと思いました。
3人の先生方、大変ありがとうございました。
【小原部会長】  それでは、桶田委員。
【桶田委員】  ありがとうございました。感想になってしまいますが、幼児教育に携わっている者としては、防災のことに関しては、東日本大震災を3、4、5歳児とともに経験していますので、課題が見えて、できないまでも幼児なりに自分を守ろうとする力を育もうと取り組んでいます。今日のお話のネットとか防犯のことになると、幼児は卒園すると、もうそのような怖い世界が待っているのかという、すごい危機感を持ちました。
子供たちは、保護者に守られる立場ではありますが、それでは園でネットや防犯について何ができるかと思ったとき、具体的ではありませんが、やはり幼いながらも思考力、判断力を育てておかなくてはということだけは思いました。みんながやっているから自分もやってしまおうではなくて、一歩立ち止まれる子にしたいと思いました。
それから、一番今思っているのは、保護者をどう啓発していったらいいだろうということです。世代的にその真っただ中にいる、子供のことを気にせずに夢中になっている保護者や、それこそスマホに子守りをさせている保護者に、まだネットの怖さはまだ先のことと思っていますが、子供たちは保護者の姿を見て自然に学んでいるということを就学前、乳幼児の保護者たちに怖さを、怖さだけではなく正しい使い方を伝えていくことができるのか、もう少しこれから勉強していきたいと思いました。本当にありがとうございました。
【小原部会長】  それでは、遠藤委員。
【遠藤委員】  宮城県の方でも、今回のポケモンGOについても、教育委員会の中でもいろいろ今後議論されていくかなというふうに思っておりました。
様々な今日の御意見を頂いた中で、やはり先生方がしっかりとアンテナを高くしていくというのが必要だというのは、改めて感じさせられました。教育委員会にもいろいろな施設などを持っていて、その中に体育施設とか、美術館とか、いろいろあると思うんですけれども、その中での使用方法も含めて、しっかりと対策はとっていかなくてはならないかなというふうに思っております。
特に子供たちのモラルという部分については、例えば、ポケモンGOをしているのか、それとも別なものを撮って盗撮しているのかというふうなところもなかなか判断しにくかったりというふうなところもあるかなどと思っておりまして、この辺はより一層子供たちの教育がやはり重要になってくるのかなというふうな感想を持ちました。
簡単ですが、以上です。
【小原部会長】  どうもありがとうございました。
時間が参りましたので、今日はこのあたりにいたします。
最後に、次回以降の予定について、事務局からお願いいたします。
【中村健康教育・食育課課長補佐】  配付資料5を御覧ください。次回の第3回でございますけれども、8月23日の火曜日、14時から16時で予定してございます。場所は、本日と同じ、文部科学省3F2特別会議室でございます。
議題はこちらに書いております生活安全とか交通安全とか、いろいろ書いてありますけれども、主に交通安全、またコミュニティ・スクールなどの取組と連携した地域連携の関係など、ヒアリングでさせていただくことを今考えております。
また、追って出欠の確認を送らせていただきますので、御確認いただきますようお願いいたします。
あと、第4回以降も、皆様に頂いた日程を踏まえまして、こういう形で入れさせていただいていますので、併せて御確認いただければと思います。
以上でございます。
【小原部会長】  それでは、本日予定した議事が全て終了しましたので、これで閉会といたします。ありがとうございました。



お問合せ先

初等中等教育局健康教育・食育課防災教育係

(初等中等教育局健康教育・食育課)