教育課程部会 中学校部会(第1回) 議事録

1.日時

平成28年4月21日(木曜日) 15時00分~17時30分

2.場所

文部科学省 旧庁舎6階 第二講堂
東京都千代田区霞が関3-2-2

3.議題

  1. 中学校の教育課程の改善・充実について
  2. その他

4.議事録

【石田教育課程企画室専門官】    それでは定刻となりましたので、ただいまから中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会中学校部会の第1回を開催させていただきます。
  本日はお忙しい中、御参加を賜り、誠にありがとうございます。
  開会に当たりまして、文部科学省初等中等教育局長の小松親次郎より御挨拶を申し上げます。
【小松局長】    失礼いたします。こちらから御挨拶をさせていただきます。
  本日はお忙しいところお集まりいただきまして、本当にありがとうございます。
  まず、御挨拶といいますか、第1回でございますので、時間も限られておりますから、簡潔に趣旨を御説明して、御挨拶に代えさせていただきたいと思います。学習指導要領と教育課程の見直しでございますけれども、この検討そのものにつきましては、一昨年から御議論を賜っていて、昨年夏、8月に教育課程部会の教育課程企画特別部会、全体をまとめるところで、論点整理という形で全体の方向が出されております。これがまず1点でございます。
  それで、現在の状況は、昨年出されました論点整理を踏まえて、その後、各教科などの、いわば縦割りと言えば縦割りになるかもしれませんが、そういうワーキンググループでそれぞれ専門的に検討を深めていただいているという状況でございます。
  これらは全体も非常に大事でございますけれども、学校段階で見ますと、中学校というのは一つの塊になっておりまして、かつ、その視点といたしましては義務教育の後半、最後の教育機関として非常に重要な位置付けを持っていると。そこで全体の方向としては、新しい時代に求められるような資質・能力を子供たちにいわば確実に育成することが求められる段階だということでございます。
  そこで、中学校としての全体というところについて、さらに整理をして、全体につなげる必要があるということで、この中学校部会を開かせていただくわけでございますけれども、本日は次期学習指導要領の趣旨を実現する上で、中学校教育としての課題は何かということをテーマに御議論いただきたいと思います。
  そういう趣旨も含めまして、形としては少人数グループによるグループ別協議という形をとらせていただき、今までの成果を前提にしていただくことはできますけれども、中学校の教育課程をめぐる課題の洗い出しをお願いいたしまして、それで、全体の洗い出しを基に第2回目以降の議論につなげてまいりたいと考えているわけでございます。
  なお、全体といたしましては、今年度中、平成28年度中に幼・小・中・高・特別支援教育等、全てのまとまり、学習指導要領の改訂へということになりますので、この夏を目途に、今までの成果あるいはここで御議論していただいたことを1度集めて、それで全体を秋に向けてまとめていかなければいけないということでございます。
  そこで、大変恐縮でございますが、4月半ばになってしまったのですけれども、この4半期に集中して数回ぐらい、この会議を開かせていただきながら、夏の早い時期を目途に、中学校の横串としてはこんな感じといったものを整理させていただければと考えております。
  大変お忙しい皆様ばかりでございますが、そういう趣旨と構えでございますので、何とぞよろしく御協力くださるようお願いを申し上げます。【石田教育課程企画室専門官】    それでは引き続きまして、本部会の主査及び主査代理について御報告を申し上げます。初等中等教育分科会教育課程部会運営規則に基づきまして、本部会は教育課程部会の決定により設置されておりまして、主査及び主査代理は教育課程部会長が指名することとされております。無藤部会長より御指名いただき、市川伸一委員を主査に、田中庸惠委員を主査代理にお願いしておりますので、よろしくお願いを申し上げます。
  それでは次に、委員の皆様を御紹介申し上げます。資料1としてお配りしております本部会のグループ別の委員名簿、こちらの名簿順で御紹介をさせていただきます。
  貞広斎子委員でいらっしゃいます。
【貞広委員】    貞広でございます。よろしくお願いいたします。
【石田教育課程企画室専門官】    石鍋浩委員でいらっしゃいます。
【石鍋委員】    石鍋です。よろしくお願いいたします。
【石田教育課程企画室専門官】    廣田康人委員でいらっしゃいます。
【廣田委員】    廣田でございます。よろしくお願いいたします。
【石田教育課程企画室専門官】    山口香委員でいらっしゃいます。
【山口委員】    山口です。よろしくお願いいたします。
【石田教育課程企画室専門官】    先ほど主査で御紹介申し上げました市川伸一委員でいらっしゃいます。
【市川主査】    よろしくお願いします。
【石田教育課程企画室専門官】    村川雅弘委員でいらっしゃいます。
【村川委員】    村川です。よろしくお願いします。
【石田教育課程企画室専門官】    田中庸惠委員でいらっしゃいます。
【田中主査代理】    田中でございます。よろしくお願いします。
【石田教育課程企画室専門官】    伊藤俊典委員でいらっしゃいます。
【伊藤委員】    伊藤です。よろしくお願いします。
【石田教育課程企画室専門官】    帯野久美子委員でいらっしゃいます。
【帯野委員】    帯野です。よろしくお願いします。
【石田教育課程企画室専門官】    奈須正裕委員でいらっしゃいます。
【奈須委員】    奈須でございます。よろしくお願いします。
【石田教育課程企画室専門官】    青木経委員でいらっしゃいます。
【青木委員】    よろしくお願いいたします。
【石田教育課程企画室専門官】    山中ともえ委員でいらっしゃいます。
【山中委員】    よろしくお願いいたします。
【石田教育課程企画室専門官】    小室淑恵委員でいらっしゃいます。
【小室委員】    小室です。よろしくお願いいたします。
【石田教育課程企画室専門官】    尾上浩一委員でいらっしゃいます。
【尾上委員】    どうぞよろしくお願いします。
【石田教育課程企画室専門官】    なお、本日は御欠席でいらっしゃいますが、内田高義委員が本部会の委員に就任されております。
  委員の御紹介は以上でございます。
  続きまして、事務局の御紹介を申し上げます。先ほど御挨拶申し上げました初等中等教育局長の小松でございます。
【小松局長】    よろしくお願い申し上げます。
【石田教育課程企画室専門官】    初等中等教育局担当審議官の浅田でございます。
【浅田担当審議官】    よろしくお願いいたします。
【石田教育課程企画室専門官】    主任視学官の清原でございます。
【清原主任視学官】    よろしくお願いいたします。
【石田教育課程企画室専門官】    続きまして、教育課程課長の合田でございます。
【合田課長】    合田でございます。よろしくお願いいたします。
【石田教育課程企画室専門官】    本日は第3班のファシリテーターを担当いたします。
  教育改革調整官の平野でございます。
【平野調整官】    よろしくお願いいたします。
【石田教育課程企画室専門官】    本日は第2班のファシリテーターを担当いたします。
  なお、第1班のファシリテーターは市川主査にお願いをしております。
  続きまして、教育課程企画室長の大杉でございます。
【大杉室長】    よろしくお願いいたします。
【石田教育課程企画室専門官】    本日の協議の総合司会を担当いたします。
  最後に、私、担当専門官の教育課程課の石田でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
  それでは、議事に入ります前に、市川主査、田中主査代理からそれぞれお一言ずつ御挨拶を頂戴できればと思います。
  それでは市川主査、よろしくお願い申し上げます。
【市川主査】    本部会の主査ということで拝命いたしました市川です。
  この小学校部会、中学校部会、高等学校部会という横割りの部会なのですが、前回の指導要領の改訂のときからできたのかなと私は認識しております。いわゆる教科等別の縦割り部会に対して、校種別の横割りの部会ができたと。このことの意味はやはり大きいと思います。いきなり縦割りの教科等ごとの議論に入るのではなくて、やはりそれぞれの校種に応じた子供たちの発達の様子を見て、あるいは学校の先生方の事情というところから問題を洗い出して、それを何らかの形で学習指導要領の改訂に反映させていこうという趣旨だと思いますので、是非きょうもその一環として、先生方からは中学校段階におけるいろいろな問題を洗い出していただければと思います。よろしくお願いいたします。
【石田教育課程企画室専門官】    ありがとうございました。
  それでは、田中主査代理より御挨拶をお願いします。
【田中主査代理】    主査代理を拝命いたしました田中でございます。市川主査を支えて、円滑な議事進行に努めてまいりましたと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。
  実は私は現職の教育長で、もともとは中学校の教員出身でございます。そういう立場から、教育行政の立場、また、中学校の現場で教員の立場という形で、話の中にまた参加をさせていただきながら、そういう立場から意見を申し述べることができればと思っておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
【石田教育課程企画室専門官】    ありがとうございました。
  それでは、これより議事の進行を市川主査よりお願い申し上げます。
【市川主査】    それでは、座ってになりますが、失礼いたします。
  議事に入ります前に、先週の14日より続いている熊本県を中心とした九州地方での一連の地震がございます。尊い命を落とされた方々がたくさんいらっしゃるわけで、深くお悔やみ申し上げたいと思います。現在、我が国では、被災地において、昼夜を分かたずに救命救助の活動を行っておられる関係機関の方々をはじめとして、国を挙げて多くの人々が各々の持ち場で支援に当たっておられます。被災地の方々の一刻も早い救援を心からお祈り申し上げたいと思います。
  それでは、議事に入ります。本日、あらかじめ御連絡申し上げましたとおり、少人数によるグループ協議を行います。この形式ですが、昨年、教育課程企画特別部会でもこういうやり方で開催したところ、通常の会よりも非常に密度の濃い議論ができたと好評を頂きました。それを受けて、今回も議論がより深まればという趣旨から、このような形式といたしました。
  テーマは、スライドにも出ておりますが、次期学習指導要領が目指す社会に開かれた教育課程の趣旨を実現する上で、中学校教育の課題についてということが出ております。社会に開かれた教育課程ということ、かなり広い意味に捉えていただいていいと思います。社会に生きていくための資質・能力を育てるということから言えば、教育課程でやろうとしていることは、本来、社会に開かれているもの、社会と結び付くものだったわけです。ただ、今回、特別それが強くうたわれています。
  そういう意味では教育課程全体に関する話題というのが何らかの意味でこの社会に開かれたということになっているのだろうと思いますが、ところが、実際にはそういう事を進めようとしても、なかなか中学校段階で難しいといいますか、課題がある。そんなにスムーズに行かないのではないかという面もあります。それをむしろ洗い出していただきたいということです。
  本日は、報道関係者等より会議の録画・録音の希望があります。これを許可しておりますので、御承知おきください。
  それでは、本日の協議の流れ等につきまして、事務局より御説明をお願いいたします。
【石田教育課程企画室専門官】    それでは、本日の協議の流れにつきまして御説明を申し上げます。後ほど詳細は室長の大杉より申し上げますので、私の方から簡単に日程の御説明を申し上げます。
  本日は、この後、16時40分ぐらいまでグループで協議を行っていただきました後、グループごとの発表、そして意見交換という流れでお願いしたいと考えております。
  なお、議論の参考としていただくために、お手元に議論に関連する資料をタブレットに入れる形で御用意をしております。操作方法等につきましては、お近くの事務補助員に御不明な場合はお尋ねいただければと思います。
  また、本部会の設置にかかり、新たに中央教育審議会初等中等教育分科会の委員になられた先生方におかれましては、机上に事例の入った封筒を置いておりますので、後ほど御確認を頂ければと思います。
  次に、傍聴者の皆様への御注意の点を御説明申し上げます。報道関係者を除きまして、傍聴者の席の前に緑のラインのテープが貼ってあると思いますが、そこを越えて会場内に立ち入ることはお控えいただければと思います。大変恐縮でございますが、報道関係者以外の方は御着席いただいて場内の様子を御覧いただければと思います。また、報道関係者の皆様におかれましても、撮影等される際には議論の妨げとならないよう御配慮をお願いしたいと考えております。入退場は自由になっておりますが、グループ討議は御覧のようにマイクを使用せず行いますので、御静粛にお願いできればと考えております。大変恐縮でございますが、会の円滑な運営に御協力くださいますよう、よろしくお願い申し上げます。
  次に、グループ協議の趣旨や流れについて、大杉室長より御説明を申し上げます。
【大杉室長】    失礼いたします。それでは、資料2を御説明させていただくのですけれども、まず先ほど皆様に自己紹介をそれぞれしていただいたのですが、グループの中での自己紹介を3分程度、ファシリテーターの方の進行でしていただければと思います。よろしくお願いいたします。それぞれお願いいたします。
(自己紹介)
【大杉室長】    ありがとうございます。それでは資料2の御説明に移りたいと思います。資料2でございますが、きょうのテーマ、「次期学習指導要領が目指す「社会に開かれた教育課程」の趣旨を実現する上で中学校教育の課題は何か」ということでございます。
  議論の方法は様々で、最初に軸を決めてこの論点についてというやり方もございますけれども、きょうは皆様、御議論いただく中でその軸を満たしていただきたいということで、かなり自由度の高い議論の進め方を設定しておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
  論点のテーマのペーパーはこの資料2だけでございます。論点整理で示された社会に開かれた教育課程の実現を共通の理念として、学校種間のつながりも見据えながら、中学校教育の課題ということでございます。
  2段落目にございますけれども、学習指導要領等の改訂の方向性にとどまらず、学習指導方法の改善や学校の組織運営の改善、評価の在り方、教員の養成・採用・研修の在り方、地域との連携・協働、学校種間の接続など、学校教育に関する課題全体を見渡した点について御議論を頂ければと思います。
  本日、課題の洗い出しをお願いしております。一番下にございますように、課題の具体的な解決策については次回以降、2回目以降の中学校部会で順に御議論をさせていただければと思っております。もし課題が洗い出されて、お時間がチームごとにございましたら、解決の方向性についても少し進んでいただければと思います。
  次のページをめくっていただきまして、これから附箋に、中学校教育での課題について1人1人課題を書き出していただく時間ということでお願いしたいと思います。時間としては35分ぐらいまで、少し様子を見ていただきながら延ばしていただいても構いません。
  その後、ファシリテーターさんにおまとめいただきながら、16時25分ぐらいまでお話し合いをしていただきながら、課題の整理、洗い出しをお願いしたいと思います。
  その後、発表準備ということで、各班で発表していただきます。パソコンも用意しておりますけれども、主査と御相談させていただいて、基本的には模造紙ベースでプレゼンしていただいた方がいいのではないかということでございますので、模造紙に全て附箋を貼ってまとめていただき、ポイントを後ほど資料で発表いただければと思います。仮に議論の中でパソコンを使った方がいいというようなことになれば、もちろん御自由にお使いいただいて構いません。
  その後、意見交換、まとめということでさせていただければと思っております。
  進行の点について、何か御質問等ございますでしょうか。
  それでは、主査、ファシリテーターさんのリードで始めていただき、各班、まずは附箋に書き出すところからお願いいたします。タブレットに様々な資料も入れてございますので、補助者の方で必要に応じ対応させていただきますので、御覧いただきながらということでお願いいたしたいと思います。
 
(グループ討議)
【大杉室長】    予定では大分休憩の時間があるのですけれども、35分から発表の時間といたしたいと思いますので、少し休憩いただければと思います。
(  休憩  )
【大杉室長】    それでは、発表の時間に移らせていただきます。1班、2班、3班の順でお願いいたします。
  それで、模造紙が少し見えにくいと思いますので、他の班の先生方、お立ちいただいて、模造紙の近くに少しお寄りいただきながら聞いていただければと思います。まずは1班の方に少し動いていただけますでしょうか。
  傍聴席の方々、申し訳ございません。少し見にくいと思うのですけれども、模造紙は会議が終わった後に少し残しておきますので、御承知おきいただければと思います。
  それでは、1班の御発表をお願いいたします。
【市川主査】    石鍋先生から。
【石鍋委員】    それでは失礼いたします。1班を代表しまして、御成門中学校校長、石鍋と申します。よろしくお願いいたします。
  まず1班は、このラベルの色から説明をさせていただきますけれども、市川先生のアイデアで、まずピンク色はホットな話題。今、国や都道府県で、いろいろなところでのホットな話題を入れてみようではないかということで始めました。黄色は、昔から続いているような、そんな課題を挙げています。そして、青は、そこに自分のアイデアがあるのだったらオリジナリティーを入れていこうと始めました。
  最初は、ここに三つ書いてありますけれども、生徒自身、学校、教員、地域と書いてあるのですが、この枠組みはありません。まずはフリーに出したと。その中でカテゴライズしていった結果、このような形になったということです。
  少し説明をさせていただきます。縦列、生徒自身の課題ということなのですけれども、まず中学校はどうしても思春期の真っただ中に突入するというところで、どのような課題があるかといいますと、自己肯定感が低いですとか、心と体の成長のバランスにアンバランスが出てきてしまう、また、当然体の変化が起きている。このあたりが非常に課題として考えられる。また、社会の当事者としての意識も低い部分があるだろうということです。
  もう一つは、学習や生活への適応に関する課題。先ほどとの関連もありますけれども、自信のない生徒が多い、また、学習意欲が小学校に比べるとやはり低下をしているのではなかろうか。そして、特別な配慮が必要な生徒への対応もかなり複雑化しているのではないかなどなど、挙げております。
  次にこちら、学校、教員の課題。この縦列について御説明をしますが、まず今、国全体を挙げて言われているアクティブラーニングです。アクティブラーニングの趣旨と方法をどこまで周知ができているのか。また、アクティブラーニングを未経験の教員、それをどのように研修していくのか、養成をしていくのか。生徒主体の学習への転換がどれぐらい図れるのか。この辺の課題意識をやはり持つべきであろうということです。
  そして、ここは受験。どうしても中学校は高校受験が絡んできます。受験と学力観という枠を設けました。一つは、まず学力差。中学になると学力差があるので、学習困難の生徒。先ほどの意識とも関わりますけれども、受験を諦めてしまうという実情が出てきたり、基礎的なものが身についていない子供たちをどのように育てていくかというところ、また、習熟度の差が非常に大きくなってまいりますので、そこらあたりのフォローをどうしたらいいのか。このあたりです。
  あともう一つは、受験の裏に、受験対策があると逆に体力が低下してしまう。そのような問題もまた周りには出てきてしまうのではないかということです。
  そして最後に、アクティブラーニングと高校受験を比べてみますと、ここにミスマッチが存在しないかと。受験用の勉強とアクティブラーニングをどうマッチさせるのか。これは大きな課題であろうということでした。
  次は、教員を取り巻く課題です。一つは生徒指導と家庭の問題。そこがどうしても合致しない。また、教員の仕事が量的にも幅の面でも非常に広がり多くなっている。そして、優秀な先生を確保することが非常に難しい状況もある。また、教員の中には前例踏襲の意識がまだまだ強くて、新しいものを取り入れていく踏み出しが出来づらい、そのような話も出ておりました。また、教員などのスタッフの決定的な不足も出ております。
  時間も限られておりますので、次はこちらの枠にまいります。ここは、今話題になっている道徳、もう一つは英語についての話題が出ておりました。道徳教育は生徒にとって意義ある内容にすべきだというのは当然のことなのですが、それを今後、どのようにやっていくべきか、道徳の教科化と絡めて課題になっていくであろうと。英語の場合には、英語嫌いがまだまだ多過ぎるのではないかということですとか、今言われている短時間学習をどのように取り入れていくのかとか、また、英語教育の高度化も考えていかないと、今後のグローバルな社会の中で通用できるのかということも出ておりました。
  行ったり来たりで恐縮です。ここで、もう一つは、中学校独特の問題が、高校もあると思いますけれども、小学校と大きく違うのが、教科を超えるという、そこの壁です。教科等横断的な考え方がどうしても不足しがちであると。教科等横断的なカリキュラムマネジメント、非常に難しいので、このあたりをどう解決するかということも話題になっておりました。
  それでは最後、大きな柱の3番目です。地域との関係。地域との関係は、地域の教育力を活用するというカテゴライズ、それでカテゴリーを作らせていただいています。例えばボランティア活動、また、福祉領域との連携、地域のOB・OGの参画、企業との連携、そして地域、家庭との連携。そのあたりでは、今、東京都も推進しているオリンピック・パラリンピック教育の充実、そのあたりからも子供たちの力を付けていくことにつなげることができるのだろうという話です。
  あと、家庭の教育力の低下が叫ばれておりますけれども、やはり親、特に父親が教育にどれだけ参画できるのか。また、家庭環境がかなり変化していて、格差もありますので、そのあたりが教育とどうリンクしていくのか。それをどのように解決するのか。このあたりが課題であろうということでした。
  ひとまず1班のまとめは以上にさせていただきます。ありがとうございます。
【大杉室長】    石鍋先生、ありがとうございました。
  それでは恐縮ですが、2班の模造紙の方に移っていただければと思います。
  2班、御発表は村川先生、お願いいたします。
【村川委員】    ワークショップの指導は1,000回ぐらいやっているのですが、発表するのはほとんど初めてなので、緊張しております。よろしくお願いします。
  まず大きく、上から下のこの構造を説明したいと思います。上の方は、いわゆる子供に付けたい力、資質・能力、これは主にブルーのあたりになっています。資質・能力、従来型の学力も含めてですね。それから、子供たちの資質・能力を育むカリキュラム、授業ですね、この課題はここに書いてあります。授業の問題もそうですけれども、この課題を解決するためのものとして、アクティブラーニングが今回導入されつつあるということです。
  こういったカリキュラムの改善だとか授業改善に関わるものが、この赤い部分です。教師の力量をどのように育てていくかということになります。
  多分3班でも出てくると思うのですが、やっぱり小学校教育と中学校教育の連携がうまくいっていない。中1ギャップというのは小小格差、複数の小学校から上がってきたときに、学習規律や意欲の問題で、学校間格差がそのまま中学校の課題にいっているのかなということで、カリキュラムの中に入れています。緑色の部分です。今言いましたように、このカリキュラムを支える、授業を支えるものとして、教師の力量があるけれども、その力量向上のための研修の問題がこのあたりです。
  しかし、中学校の問題としていつも言われるのは、授業改善、子供との関わりは一生懸命やりたいのだけれども、時間がないと。部活を頑張っていますからと。部活動による多忙化です。でも部活動をやることによって生徒指導の問題を何とか解決しているという学校もあります。このように上から、いわゆる能力の問題、カリキュラムの問題、マネジメントの問題となっています。
  もう少し細かく見ていきたいと思います。ちなみに社会に開かれた教育課程というものに関しては、いろいろなところに関係していますので、このように青い下線を引きました。また後で総括的にそのことをお話ししたいと思います。
  まず資質・能力の面ですけれども、これからの時代ですから、地域を理解し、貢献する力だとか将来設計する力、困難なことや新しいことに挑戦する力、こういうものが必要です。いわゆる生きる力というか、汎用的な能力ですけれども、一方で従来型の学力の差はやはり否めない。
  このような学力差だとかこういう力が子供に十分付いていないのは、一つはやはり一方的な授業でとどまっているのではないかということです。その改善として、今回文部科学省が提案しているのがアクティブラーニングです。
  もう一つ、カリキュラムの問題としては、やはり教科等別指導の限界がまだまだあるということと、総合的な学習の時間が、小学校の方は充実していて、中学校の方は体験や行事で終わっていたり、場合によっては教科の補充で終わっていたりして、子供たちの中で意欲が減退している。職場体験も1日~5日と日数の問題もありますが、質の問題、このあたりが改善の余地がある。
  結局、ここで育もうとしている力は、このあたりの教科等横断だとか総合の充実、それから職場体験の充実、このあたりがとても大事かなと言われています。それから授業自体の改善ですね。
  では、この授業の改善やカリキュラムの充実を考えていったときに、何が必要かというと教員の指導力です。結局、学習指導要領が変わっても、先生方が新しい教育課程に見合ったカリキュラムなり授業を実施するかということですが、そういった教師の指導力をしっかり鍛えていく必要があるということです。
  先ほどの1班と同様に、他の教科はアクティブラーニングだとか従来の言語活動の充実ということで随分改善されてきたのだけれども、英語教育の教科書に関してはまだまだ、それこそこういう社会との関わり、将来との関わり、生活との関わり、あるいは他の教科との関わり、そういう面が弱いかなという話がありました。
  もう一度、研修のところに話を戻しますと、せっかく学習指導要領を変えていったとしても、あるいは小中連携を図ろうとしても、中学校の先生方に出てくるのは、必ずと言っていいほど、「授業を変えたいと思います、教材研究もしようと思います、あるいは子供ともっと関わって、そういう支援も考えたいと思います、でも忙しいのですよ」ということなのです。「土日も部活に行っています」ということで、時間がない。部活動を茶色にしたのは、本当に土にまみれて頑張っているということです。その部活動で頑張っていることによって、いろいろな学校の問題も、子供同士のコミュニケーション、あるいは主体性だとか、そういうことも大事にしているけれども、一方で今言ったように、本来学習指導要領の改訂の中で新しい授業作り、あるいはカリキュラムの充実といったときに、先生方の力量を付けなくてはいけないのだけれども、研修の時間の確保が十分できないということです。
  そこで条件整備ということでいろいろ挙がってくるのですが、今回の社会に開かれた教育課程のテーマからしますと、子供たちがどんどん地域に出掛けていって、本当の意味の職場体験をやっていくと私は思っています。子供自身が自己理解だけではなくて、職場体験を通して地域理解をしていく。そういうようなことをしながら、本当に将来の地域を担う、あるいは地域を担わないとしても、そういう意識を持った人材を育てていかなければいけない。そういう意味で、地域の力を借りながら、そういう力を付けたり、子供たちが地域に貢献するだけではなくて、もっと地域におられる方たち、いわゆる応援団とうまく連携しながら、部活や各教科等の授業の支援をしていただくということが大事かなという意見が出ました。
  そういう意味で、今回、カリキュラムマネジメントという言葉が言われていまして、これは基本的には学校中心のカリキュラムマネジメントの話だと思うのですが、こういった小小連携がしっかりできる、小中連携がしっかりできる、あるいはこういったカリキュラムが充実する。それから、部活動においても、地域の教育力を使って先生方が少しでも楽になるためには、学校と行政と地域との全体のコーディネートといいますか、そういう意味では、学校のカリキュラムマネジメントを超えた地域のカリキュラムマネジメントをしっかりやっていくということが、最終的には子供たちに力を付けるためのアクティブラーニングだとかカリキュラムの充実の実現につながる。教師の指導力を高めるための研修時間の確保といったこのあたりの関係をしっかりやっていかないと、せっかく改訂したとしても、それが現場の中における実行に十分につながらないという話になりました。
  以上です。
【大杉室長】    村川先生、ありがとうございました。
  それでは、3班の方に移らせていただきます。
  奈須先生、よろしくお願いいたします。
【奈須委員】    もう大分二つのグループとかぶっているところがあるのですけれども、見ていただきたいと思います。3班はむしろ教員の労働環境問題というか、頑張っているのにとても生産性が悪いとか、裏目に出ているとか、後手に回っているとかという話から出ました。例えば部活動の問題。やっぱり中日本の中学に固有な問題としての部活動の問題です。ここにとてもエネルギーをかけて、もちろんそれで生徒指導がやられているとか、子供との関係が形成されているということもあるし、子供もそこに居場所があるということもあるのですけれども、逆に言えば、なぜ部活動で生徒指導をやらなければいけないのだという話ですよね。授業を改善するとかいうことではなぜいけないのかという話。あるいは、学校で教えるべき内容とか目指すべき人材像が随分変わっているのではないかという話がそこから出てきます。
  今、中学の先生方が頑張っている方向が、基本的に違うのではないかと。頑張っても少し以前の人口ボーナス期、いわゆる産業社会に合うような人材像をどこかイメージしてやっているのではないかと。その結果が、子供からも何か受け入れられないし、うまく回っていかないのではないかということでした。
  それとの関係で、まず一番中核的になる集約的な問題は、社会像や人材像が社会の変化に伴って転換していると。相変わらずオールマイティーに、オール5あるいは平均的な知識をたくさん持っている子供を何とか育てようと頑張っているというのは、もう違うのではないかと。もちろん知識の質も。アクティブラーニングとか、資質・能力ということも含めてですけれども、まずこのあたりの話ですね。人材像がどう社会的に変化しているか。それに伴って、カリキュラムの知識や学力の質が今回どう転換しようとしているのか。それは今、実際に各教科の議論が出て、見方・考え方なんかもそうですけれども、その辺をどうやって伝えていき、実現化していくのかということ。あるいはそれを実現する方法としてのアクティブラーニングとかの実施にも関わってくるだろうと。教え込む授業から、考えて発信する授業とか協働的な授業とかということですよね。
  もう一つは、それとの関連で、新しい社会像に基づくカリキュラム領域としてといいますか、キャリアライフプランのようなものですね。例えばワークライフバランスなんていうことがちゃんと扱えていないのではないか。子供たちが将来どんな仕事に就いて、社会に出ていくかということを、子供たち自身が学ぶ場や学ぶ機会がまだまだ少ないし、先生もそこを余り大切にしていないのではないか。それとの関係で、地域との連携もうまくいっていないのではないか。地域から外部講師も来てもらうのだけれども、相変わらず正解や知識を教えてもらう人になっていて、だったら先生の方が絶対に上手です。そうでなくて、その人たちが日々実践している営みを子供と一緒にやるというふうに発想を変えれば、多分変わっていく。アクティブラーニングとか探究型の授業イメージに変えていけば、地域人材の活用とか地域社会との連携も質が変わってくるはずなのだけれども、そういったもろもろのことは全部学校がどんな学力論をもって、どんな人材像を目指していくのかということの抜本的転換と、それの具体化と絡んでくるのではないかと。
  そう考えると、部活で生徒指導をして学校の秩序を維持しようという発想も変わってくるのではないか、あるいは部活の中身も変わってくるのではないかという話が出てきました。
  それとの関係で、教員の研修とか専門性にもやっぱり問題があるのではないかと。教科専門性が高いというけれども、高校に比べれば中途半端に低いし、小学校から見れば、子供の側に寄り添うとか教科を超えたということができていない。中学校の教科の専門性をどう考えるかということは大事な問題だろうと。あるいは、新しい課題としてのプログラミングとか情報教育とか英語も出てくるわけですけれども、そういったことにまだまだ対応できていないのだけれども、どうしようかと。
  そういうことを考えたときに、では、研修ということの在り方なのですけれども、上から下に教えるような研修の機会を増やしていくのか。そうするとまた多忙化するわけです。一つのやり方は、日本の学校教育が誇るべきものですけれども、自分たちが日々やっている実践を自分たちで協働的に内製する、いわゆる授業研究ですね。今、これはレッスンスタディーという名前で、むしろ日本が海外に輸出して海外の授業の質を上げていますけれども、いわゆるお医者さんがやるようなカンファレンスのような営みですよね。チーム学校というのは何も仕事をするだけではなくて、自分たちの授業を内製して、自分たちの研修を深めて、気付きを深めていくということもあるわけで、そういった機会を一つの研修の柱にしていく。
  それはある種の子供研究。子供というのは一般的にどういうものか、あるいはこの子がどういうものかということを授業の具体を通して、みんなの知恵を合わせながら、その意味を読み解いていくような研修、研究を中心にして専門性を上げるという筋道もあるのではないかと。
  また、そうすることで、ほかのグループでも個人性への対応ということが随分話題になっていましたけれども、子供1人1人が今どういうありようをしている、どんな可能性があるかということの見方・考え方を質的に転換することが大事で、それもやっぱりそういった授業の事実や子供の事実を丁寧にみんなで議論をして、洞察を深めていくような在り方の中で形成できてくるのではないか。まだそこが弱いのではないかと。つまり、どうすればいいのかではなくて、子供がどういうふうにいるのかということの洞察が弱いのではないかという話でした。
  今、動きとしておもしろいことは、社会像や人材像の転換ということと、子供というのはどういうふうに学び、生き、育っているのかということの研究が同じ方向を向いているという理解ではないかと。つまり、産業主義の時代には、正解を大量に蓄積して、それを定型的に実施できるということが要求されていたわけで、すると、1人1人の子供が自分で考え、判断して、協働的にそこに価値を生み出していくような学力論や知識像というのはむしろ都合が悪かったのではないかと。だから、これまで特に中学校はそれをある種子供の本性に合わない形で抑え込んで、知識を注入する。知識を注入されると子供は余りおもしろくないので落ち着かない。だから部活動で居場所を作って、それで生徒指導を円滑に進めて秩序を維持するという構造になっていたのではないか。
  ところが、社会像、人材像が変わってきたことで、自分で考えるとか判断するとか、協働的に価値を生み出すとかいうことが学力の中心になってきて、アクティブラーニングのような方法が推奨されてくると、それは子供の本来の学びや知識の在り方と同方向を向いているので、そのことに今気付いて、その方向で修正していくと全体が好循環に向かっていくのではないか。つまり、一つ一つを抑えていくのではなくて、何らかの好循環を生み出すようなシステムとかサイクルを考えていくということを教育課程行政の中で考える必要があるのではないかという議論が出ていました。
  そうなってきたときに、いわゆるカリキュラムマネジメントということが一つ、中核的な概念になる。カリキュラムマネジメントというのはまだまだ中学校では弱い、特に教科王国的に、教科セクトに分かれていくので、それを超えてやっていく。あるいはもっと実務的なところで、ICT化を適切に推進して、それがサポーティブになるようにしていく必要もあるだろうと。
  また、もう一つ、やっぱり学校間接続ということを考えたときに、下は小学校、上は高校という、間に挟まれているしんどさがあるわけですけれども、それも今、小学校、高校改革が進んできて、高校の教科もどんどん今のような話になってきますし、小学校の改革も進んでくるので、そこで逆に中学校がこの辺を変えられないと、とても乗り遅れてしまってボトルネックになってしまうと。小学校、高校の改革をうまく受け止めて、意識の改革を具体的なシステムとしての好循環を生み出すような改革に結び付ける手立てを今回考えていく必要があるのではないかなという議論になりました。
  以上です。
【大杉室長】    ありがとうございました。
  それでは、残りの時間で意見交換とさせていただきたいと思います。
  市川主査に進行をお願いいたします。
【市川主査】    それぞれのグループから御発表をどうもありがとうございました。まずはとにかく問題点の洗い出しということで、頭の中にはこれを入れていただきたいのですけれども、次期学習指導要領が目指す社会に開かれた教育課程、その趣旨を実現する上では中学校教育の課題は何かということだったのですけれども、今伺ったように、中学校における様々な問題が出てきました。ただ、それを、改めて社会に開かれた教育課程という、次期学習指導要領が目指している、既に論点整理などでも語られているようなことと関連付けながら、意見交換をしていければいいと思います。
  まずは、どうでしょう。それぞれのグループの発表をお聞きになって、これは少し質問しておきたいとか、御発表内容に即して質問があったら、まず簡単にお願いします。  特に御質問ということでなければ、御意見でも結構です。このグループからこういうのが出たけれども、それについてはこう考えるというような御意見でも結構です。
【村川委員】    一つだけいいですか。
【市川主査】    はい、どうぞ。
【村川委員】      先ほど地域のカリキュラムマネジメントという話をしたのですが、今回、カリキュラムや授業の質的改善を目指していると思うのです。こういった資質・能力を育むのだ、そのためのアクティブラーニングだということが、幼・小・中・高といった縦の関係の中で十分共通理解されるということ。それから横の関係ですね。15年後、あるいは25年後という話も出ていたのですが、それを見据えて学校と家庭と地域社会が子供にどういう資質・能力が求められているのか。そのために授業は今どう変わろうとしているのかと。そういうことをしっかりこの数年間の中で、縦のつながりと横のつながり、そういった中でいかに共通理解を図っていくかということがとても大事かなというのを、自分の班もそうですけれども、ほかの班の話も聞いていて、強く感じました。
【市川主査】    関連して、いかがですか。関連していなくても結構です。
  奈須委員。
【奈須委員】    1班で出たことだと思うのですけれども、受験と学力という話、アクティブラーニングと反するのではないかという話で、つまり、国が今回かなり思い切った学力論の転換・明示化をして、社会に開かれたという方向で学力育成ということを資質・能力としてやっていくけれども、結局、受験という話が出てきてしまうと思うのです。中学は必ず、何かできないというのは、部活と受験という話で、部活の話は随分出ましたけれども、受験というのは結局的には高校入試で、もちろん私立学校もあるのだけれども、多くは公立学校だとすれば、公立高校の入試は都道府県教育委員会が多分にぎっているのだと思うのですが、そこの改革というのはどういう枠組みとか仕組みで転換していくのか、あるいは、それに対して国のレベルで何かやっていけることはあるのか。
  大学入試改革は、高大接続ということですごく理論的にも具体的にも進んでいると思うのですけれども、高校入試の問題というのはやっぱり残ってきて、そこが変わらない限り、最後は建前と本音の話ではないかというふうに中学の先生は必ずお考えになる。子供を守るという意味で、当然先生方はそうお考えになるはずで、そこに対して、保証となるような枠組みの議論をしていって、あるいは実効性のある手続きとしてどんな可能性があるのかということは、どこかで考えていく必要があるのかなと思います。
【市川主査】    今のお話は非常に大事な話だと思いますし、もし情報を持っている方、あるいは文部科学省側からの何らかの説明があれば伺いたいところかなと思うのですが、今、高大接続のところでは、高校教育の改革といっても大学入試が変わらなかったら結局変わらないではないかと。どこの大学にどれだけ入学できたかということで高校教育は評価されがちなところがあって、その大学の方の入試というのは、大学側も実は余り変えようとしていない。徐々には変わっていますが、余り抜本的に変わっていないというので、今度こそはしっかり抜本的に変えるという話が大学入試に関しては結構出ていますね。センター入試も変える、それから、それぞれの大学がやっている入試もかなり変えていくという話が出ているのですが、その割に、では高校入試をどう変えるという話は、これはむしろ一昔前の方が、ペーパーテストだけではなくて調査書重視にしますなんていう、一昔前の議論としてはあったような気もするのですが、今回、余りそれが私も聞こえてこないですね。
  調査書というのも、これは例えば通知表も絶対評価になったりしたときに、調査書も絶対評価にした途端に、入試のときにダイレクトにそれを反映するのが難しくなったとかいって、かえってやっぱりペーパーテストだねという話になってしまったりしがちで、では、そうなった途端に、アクティブラーニングで培ったような資質・能力はどう評価されるのか。評価されないのだったら、アクティブラーニングするよりは少しでも受験に関係ある勉強をやりましょう、あるいは塾にも行きましょうというような話にもなりかねないと。
  この高校入試の改善ということが今回聞こえてこないのではないかというのが奈須委員の御意見で、私もそう思っていたのですが、ずばり言っていただいて、このあたりはいかがなのでしょう。アクティブラーニングを中学校にしっかりやってもらうからには、高校入試もそれに連動して評価システムを変えていくというような動き、情報がありましたら。
【村川委員】    私はアクティブラーニングと現行の高校入試は全然ミスマッチしていないと思います。それがすごい誤解だと思うのです。結局、現時点でもアクティブラーニングのような授業をやっている中学校はたくさんありますよね。そういう中学校ほど、高校入試で学力をどんどん伸ばして入試を突破しているわけではないですか。
  そこら辺の事実が伝わっていなくて、アクティブラーニングをやったらいわゆる従来型の学力が付かないという、そこら辺の誤解を解消していかないといけない。入試改革が同時にできればいいけれども、大事なことは、従来型の学力もアクティブラーニングで伸びるのだと。この事実をしっかり発信していかないと、アクティブラーニングは定着しないと思います。
  以上です。
【市川主査】    分かりました。今のも大事な御意見で、アクティブラーニングをやったからといって受験学力や教科の学力が落ちるわけではない。むしろ、いいアクティブラーニングをやれば、かえって教科の学力もしっかり付くので、ペーパーテストの成績もむしろ上がるのであると。これは下がるに決まっていると思っている方にとっては、いや、そんなことありませんよという面があるということが一方ではあるという御意見ですよね。
  ただ、一方では、総合的な学習の時間などでいろいろ探究したり、発表したり、討論したり、そういう力も付いているのに、では、受験学力は落ちていないというのは分かりますけれども、そういう力はどう評価されるのでしょうか。そこは評価しないでもとりあえずいいのか、何らかの形でそれも評価に組み入れて、そこで培った力もちゃんと入試でも見ますよとかですね。
  かといって、今やっぱり難しいのは、調査書だけに頼れるかというと、調査書がそれほど客観性を持って入試の材料になるかどうか。例えば小規模校もありますし、それから、絶対評価といっても基準は様々。それを一律の何か評価システムに乗せることができるか。このあたりは何か議論とかアイデアはあるのでしょうか。
  合田さん、お願いします。
【合田課長】    事務方から少し補足をさせていただきたいと思いますけれども、大学入試の場合は、基本的には大学の先生方が問題をお作りになりますので、高等学校の教育改革がなかなか反映されにくい構造的な仕掛けになってございます。
  それに対しまして、公立高等学校の入試につきましては、これは各県におきまして中学校の先生と高等学校の先生方が問題を作っていくことになっておりますので、一つは、そういう構造の中で、中学校教育の変化あるいは進化に対して、より入試問題に反映されやすい構造になっているということ、それから、全国学力学習状況調査のB問題などがかなり深く認識されておりますので、これは私ども、まだ量的な調査をしているわけではございませんけれども、公立高等学校の入試の質は一定程度改善をされていて、先ほど村川先生がおっしゃったような状況があると思っております。
  また、高等学校においては個別問作もかなり進んでございまして、かなりチャレンジングな入試をやっているところが公立学校でも出てきているという状況でございますが、他方で、この教育課程部会でも全体でも御議論いただいておりますように、今回の改訂では、先ほど奈須先生がおっしゃったように、知識自体の理解の質をどう問うていくのかと。事実的な知識から概念的な知識にどう展開しているかという、そこをどう評価するかというのが今回の学習指導要領の改訂の大きな眼目かなと思っておりますので、学習評価の議論も頂いておりますが、そういった議論をさらにまた高校入試にどう反映していくのかと。
  併せて、それに伴って、調査書の在り方ですとか、選抜方法の改善といったようなことについて、今回の学習指導要領の改訂の御議論というものをしっかりと入試実施権者に伝えさせていただいて、改善をしていくと。その状況を私どもとしても共有していくということが大事かなと思っておりますけれども、現状について御報告をさせていただきました。
【市川主査】    きょうはとにかく問題点の洗い出しですので、今のことも、できればやっぱり課題としてどこかで取り上げていただければと思います。
  私の議論の絡んだ範囲ですけれども、大学入試でもやっぱり同じ問題が出ました。高校のときに例えば探究的な学習をしたとか、そういうことをやったからといって、大学入試でどう反映できるのかと。高校が出してくる調査書はやっぱりダイレクトには使えないですよね。あと、推薦書。この学生は非常に高い探究能力を持っていますと校長先生が書いてきても、それをダイレクトに入試で客観的資料としては使えないと。でも、やっぱりそういう学生はいるわけですよね。
  では、そういう力をどう評価するというときに、私も10年ぐらい前に言ったときには余り相手にされなかったのですが、例えばそういう探究の学習を通じて得た力というのはあるわけですよね。問題を探究して発表する力、要するにプレゼンテーション力や討論力ですね。そういうのを全員について測定することは難しい。でも、そういうことを一生懸命やってきて、そういう力が付いているというのでしたら、どこか客観的に評価してくれる機関があって、例えばプレゼンテーション検定、それは専門のそういう力をちゃんと見る人がいて、プレゼンテーション検定2級とか1級とか、そういう客観的な機関があれば、それはそこで評価してもらったものを自分で資料としてくっ付けて評価してもらう。あるいは非常に高いレポート作成能力があるのだったら、そういうことを評価してくれる機関があって、そういうところで評価してもらう。つまり、探究的な学習で得た力というのは決して無駄にならないと。そういう学生はペーパーテストの学力も付いているかもしれませんが、付けた力そのものも何らかの形で客観性を持って評価できるというシステムがどこかにあって、そして生かされるというのであれば、例えば推薦入試で生かされるとか、ペーパーテストを受ける人もそういうことをくっ付けると少し有利になるとか、何かそういうシステムができる、あと、当日は実際にプレゼンしたり、教授からいろいろ質問を受けて、質疑応答したりして、ちゃんとそれに答えるというようなことで本人の力を見る、探究力を見るというようなことがあってもいいのではないかと。
  それは高校入試でも同様で、そういうことを一生懸命、小学校、中学校を通じてやってきたのだというのであれば、何かそういうことをパフォーマンスで示すとか、それをどこかで評価してくれるシステムがあれば、そういう生徒も浮かばれるのではないかと。
  ですから、ペーパーテストは当然残ると思いますが、それに加えて、これからの新しい21世紀型学力、スキルと呼ばれるようなものを付けてきた、それはどこかで何らかの形で評価される。全員でなくてもいいから、やっぱりそういうのを付けてきた子が評価されるというのは、どこかにあるといいかもしれないなと。  そういうことは、とにかく10年前に私が大学入試に言っても、割と一笑に付された感じですけれども、今回はそういう感じでもないのです。でも、高校では多分話題にもなっていないと思うのですが、今後は何かそういうシステムも話題に上っていいのかなと。そういうことも問題提起としていただければと思いました。
  ほかにいかがでしょうか。
 
【村川委員】      例えば私は今、高知県に関わっているのですけれども、各教科と探究的な授業改善を目指しております。その際に中学校の先生方と議論しているのは、探究的な授業、アクティブラーニングをやる限りは、中間・期末テストでアクティブラーニングの成果を評価してあげないといけないということで、そういう問題作りを先生方はやろうとしています。
  だから、高校入試も大事なのだけれども、まずは中学校の中間・期末テストと言われる定期考査での問題の改善、そういう問題を作ることによって、先生方はまた授業でどういうような学びを展開していくのかということをすごく意識される。そのあたりも大事かなと思います。
【市川主査】    中学校における評価ですよね。
【村川委員】    そうですね。
【市川主査】    関連して、いかがですか。今、ほとんどの中学校でやっぱり中間テスト、期末テストの結果で評価しようというところは多いと思うのですが、今、村川先生のお話は、中間テスト、期末テストの内容自体、出題自体を話してくださいましたが。
【村川委員】    部分的ですよ。全面的には。
【市川主査】    そうですね、部分的にはやっぱり、例えば論述的なものとか。
【村川委員】    1問入れてみようとか。
【市川主査】    アクティブラーニングをしっかりやっているからこそできるというものを一部入れていく必要があるのではないか。
  関連してですけれども、私はふだんの中学校での評価として、特に社会科や理科ですが、何で中学校ではレポートがほとんどないのだろうと。大学ですとペーパーテストの評価はほとんどなくて、論述とレポートですよね。ふだんの学習をレポートの形でじっくり時間を掛けて自分なりに考えて形にして提出する。これは社会科でも理科でもそういうことだと思うのですが、どうも中学校は、私が見ている限り、ほとんどそういうふだんのレポートで評価するというのがなくて、結局は50分間なりの試験時間の中でどれだけ問題が解けるかということになりがちで、これはやっぱり私は不思議といえば不思議です。何で日本の中学校、高等学校ではあんなにレポート、発表ももちろん余りないのですが、そういうことを評価に組み入れていかないのか。
  もちろん採点のしにくさとか、いろいろあるとは思いますが、アクティブ・ラーニングの先には発表、討論、レポート、論文というようなものがあるはずなので、そういうことをやっぱりやらないといけないのかなと。
  これも問題提起として、もしそういうものを入れていった場合に、どれだけまた学校の先生が多忙になるのかということも考えないといけないのですが、少なくともそういう評価システムを中学校の中にも入れていかない限り、それは最終的には中間・期末の一定時間にどれだけ正解を出せるかということになりかねないのかなという気もいたします。
  ほかにいかがでしょうか。
【青木委員】    荏原平塚学園の青木でございます。今のなぜできないのかというお答えはやはり、教え込むと言われたら教え込む授業になってしまいますが、知識の導入を主体とすれば、どうしても学習指導要領の内容を今の公立学校のレベルで子供たちに基礎・基本の定着とすれば、授業時数のゆとりが、ある意味、確保できないということにつながると思います。
  もちろんやっていないわけではございませんし、評価の内容としてそういった観点も各学校で工夫はしていると思います。ただ、授業の方法論としてのアクティブラーニングが出てきて、それを取り入れたときに、一つはやはり授業時数について、さらに多くの時間を費やすことも予測されると私は考えております。
  ですから、そういった点がうまく解決、新ゆとり論等、出ておりますけれども、教える内容の精査あるいは教え方、その問題と大きな関わりが出てくると思います。
  また、教員の資質の変化という点では、地域のカリキュラムマネジメント、これはある意味教員の意識の変化にもつながると思っておりますけれども、地域の人材をどう導入して、どう生かすかというのは、やっぱり経営者の手腕にかかってくるかと思います。そこが1校に任されたときに、うまく展開できるか。始めたばかりなのですけれども、コーディネーターの役割等も、実際に育てるのは学校であるかと思います。
  ですから、いろいろな意味で学校はこれからやらなければいけないことがますます増えてくるのではないかという意識を私自身は持っております。
【市川主査】    今のお話、非常に大事なことだと思いますが、先ほどから出ているような授業、アクティブラーニング導入とか、それに応じた評価をということになっても、授業時間数と、それから内容というものがかなり圧迫していて、そういうことを十分展開しにくい状況にあるという問題提起です。
  時間を増やすといっても、もうそうは増やせないので、内容の精選を行って、もっとアクティブラーニングにふさわしいような授業内容と評価方法が取り入れられる余地を作ってほしいということになりますかね。
  あと、地域との連携などについてもそういうことで、ますます先生方が大変になるわけで、それに対する環境整備とかサポートを考えてほしいということも是非問題提起として入れていただければと思います。
【青木委員】    もう一つ、いいですか。
【市川主査】    はい、どうぞ。
【青木委員】    全く話と外れてしまうのですけれども、私自身、教育現場として、この新しい方向性を理解させるためには、やっぱり学力の3要素と子供たちに付けたい資質・能力の内容の関連性が、今ひとつ私自身も結び付かないというか、単純に図式化はしているのですけれども、そこをきちんと私どもが捉えていかないと、アクティブラーニングの導入によって学校が変わるという単純な考え方に変わってしまうのではないかという危惧も持っているのです。
【市川主査】    時間的にそろそろまとめた方がよろしいのですか。
【大杉室長】    はい。
【市川主査】    では、今の先生のお話も含めて、まとめ的なことをしたいと思うのですけれども、今のお話はかなり根本的な問題で、学力の3要素とか、資質・能力を育てるとか、そのためのアクティブラーニングということが今非常にうたわれているのだけれども、学校にしてみると、どうもその結び付きというのがいまいちぴんとこないというか、実感を持って受け止められていないところがあるということではないかなと思います。私もその様子はすごく中学校でも、これは小学校や高等学校でもそうなのですけれども、分かります。
  今回、このテーマなのですけれども、「社会に開かれた教育課程」というのは非常に大事なことだし、フレーズとしてもいいと思うのですが、これに対して、では何が問題かというと、社会に開かれていないというのは、逆に言うと、社会に開かれていなかったのかということになりますね。社会に開かれていないというのはどういうことかというと、学校に閉じているということです。
  どうもこれまでの学習というのが、まず生徒から見たときに、中学校の生徒に何でこういう勉強をやっているのと聞くと、自分の社会での生活とこうつながっているからというふうに説明できる生徒が、そういるとはやっぱり思えないですよね。とりあえずこういう勉強をすることになっている、教科書に出ている、そういうことがテストに出るからだと。高校入試があるからだという、これがやっぱり学校に閉じている姿だと。
  それが問題だとすれば、やっぱりそれをもっと子供にとっても社会とつながっているのだと。こういう勉強の内容が、社会がつながっているということが子供に分かるとか、あるいはこういうことをやっていると自分にこんな力が付いて、例えば自分の意見を説明したり、発表したり、討論したりするという学習活動をやっていると、将来、自分が社会に出たときもそれが役に立つ、つながっていくのだということが子供からも見えるかというと、どうもこれまで見えてこなかったのではないかと。
  それを子供にも見えるようにしていこうという話で、では先生の方はどうかというと、先生はこの内容が社会でどうつながるのかとか、子供にこういう力が付いて、それが社会でのこういう力とつながりますということを中学校で先生が十分納得して教えているかというと、やっぱり先生の方も、とりあえずこれはやることになっていますからということになっていたとすれば、これはやっぱり学校で閉じられていることになってしまうと。
  日本の教育は多かれ少なかれ、これは何も中学校に限らず、小学校、中学校、高等学校を通じて、社会にどうつながっていくということが、子供にとっても大人にとっても、どうもうまく見えていなかったのではないかなと。そこがもっとつながって、教育される方もする方も見えるようにしていこうというのが、多分今度のこの開かれた教育課程というものを表に出したことの意義ではないかと私は解釈しているのです。
  合田課長、そういうことだと思ってもよろしいでしょうか。
  とすれば、では、中学校では問題がないかというと、やっぱり問題はあったのだろうと。私も正直なところ、自分が中学生のときに、そんなに社会に出て、今やっていることがどうつながるということが見えていたわけではないのです。とりあえず勉強はおもしろいからとか、あるいは目の前にテストがあるからということでやっていて、たまたま社会に出てみると、ああ、何か役に立っているものもあるなというような感覚でやってきたのを、もうちょっと表に出して、生徒も先生も見えるようにしていこうと。
  そのための今度の学習指導要領の改訂だとすれば、中学校でもやるべきことはたくさんあるのだろうと。先生や子供たちの意識として、社会に向かっているのだということがもっと見えるようなものにしていこうという趣旨ではないかと思いました。
  そういう意味で、今日出てきたようなことをいろいろ取り上げていただいて、中学校に対しては、新しいことというのが小学校、高等学校に比べると今回改訂で一見余りないと言われています。例えば小学校だったら英語が入ってきたり、高等学校だったら地歴公民、そこら辺がかなりいろいろ変わるとか、いろいろな制度的な改革もあるのですが、中学校は道徳の教科化ぐらいはあるけれども、それほど小学校、高等学校ほど目立った課題が外から降ってきているわけではないように見えますが、実は根本的なところで中学校教育の課題というのはあるのだろうと。今回のような趣旨の開かれた教育課程にしようといったときにも、そんなにスムーズにそれが移行できるわけではないという難しさがあるということを洗い出していければと思います。
  今回、洗い出しということでたくさん出していただきまして、また議論を続けていければと思います。
【大杉室長】    ありがとうございます。
【石田教育課程企画室専門官】    それでは、本日は精力的な御議論を頂きまして、誠にありがとうございました。また次回以降の審議に本日の成果をつなげてまいりたいと考えております。
  次回の日程でございますけれども、5月19日木曜日15時からを予定しております。会場につきましては現在調整中でございますので、会場が決まりましたら、改めてお知らせを申し上げたいと思います。
  それでは、これで本日の中学校部会を終了させていただきます。長時間にわたり、ありがとうございました。

――  了  ――

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