資料3 体育・保健体育、健康、安全WGにおけるとりまとめのイメージ(案)

体育・保健体育、健康、安全WGにおけるとりまとめのイメージ(案)
1.現行学習指導要領の成果と課題
○体育科、保健体育科については、生涯にわたって健康を保持増進し、豊かなスポーツライフを実現することを重視し、保健と体育との一層の関連や発達の段階に応じた指導内容の明確化・体系化を図りつつ、指導と評価の充実を進めてきた。その際、「技能」「態度」「知識、思考・判断」のバランスのとれた指導に留意するとともに、学習したことを実生活、実社会において生かすことを重視する等、知識や技能の習得や向上のみに偏らない指導に留意してきた。
○体育については、小学校、中学校、高等学校の12年間の系統性を4年ごとに整理し、児童生徒の発達の段階に応じた指導の充実を図ってきた。小学1年生から4年生までを「各種の運動の基礎を培う時期」とし、生涯にわたって運動に親しむ資質や能力の基礎を育てること等を目指した。小学5年生から中学2年生までを「多くの領域の学習を経験する時期」とし、生涯にわたって運動に親しむ資質や能力を育てること等を目指した。中学3年生から高等学校卒業までを「卒業後に少なくとも一つの運動やスポーツを継続することができるようにする時期」とし、生涯にわたって豊かなスポーツライフを継続する資質や能力を育てることを目指した。
○「する、みる、支える」等のスポーツとの多様な関わり方等の楽しみ方の理解を図るため、中学校・高等学校において、知識に関する領域として、国際的なスポーツ大会が果たす役割等、具体的な指導内容や指導の時間数の目安を示した。また、運動に関する領域においては、前述のとおり、「技能」「態度」「知識、思考・判断」のバランスのとれた指導に留意してきた。そのため、「する、みる、支える」等のスポーツとの多様な関わりの必要性の理解や、公正、責任、健康・安全等、態度の指導内容の理解に一定の成果が見られる。一方で、習得した知識を活用して課題解決する学習の充実を図ることや、学習したことを相手に分かりやすく伝えること等に課題があるのではないかという指摘がある。
○子供の体力の低下傾向に対応して、実生活、実社会で運動が継続できるよう、体つくり運動を小学校低学年から実施し、多様な動きをつくる運動(遊び)を新たに示した。また、中学校以降は、指導の時間数の目安を示すとともに、自らのねらいに応じて運動の計画を立てて取り組む能力の育成を重視してきた。そのため、運動やスポーツが好きな児童生徒の割合が高い等、一定の成果が見られる。その一方で、依然として運動する子供とそうでない子供の二極化傾向が見られることや、子供の体力について、低下傾向には歯止めがかかっているものの、体力水準が高かった昭和60年ごろと比較すると、依然として低い状況が見られる。また、運動やスポーツが「嫌い・やや嫌い」と回答する子供がおり、中学校女子においては約2割となっている。
○保健については、健康に関する基礎的な知識の習得を目指した学習が定着しており、子供たちの健康の大切さへの認識や健康・安全に関する基礎的な理解に一定の成果が見られる。一方で、健康課題を発見し、習得した知識を活用して課題解決する学習は不十分で、子供の論理的な思考力(特に健康課題の解決方法を根拠に基づいて評価し、目的に応じて活用する力)の育成に課題があるのではないかという指摘がある。また、社会の変化に伴う新たな健康課題に対応した教育が必要ではないかという指摘がある。
○特別な配慮を要する児童生徒について、体育科・保健体育科においては、これまで、安全上の配慮から、当該児童生徒の能力等に応じた適切な学習機会を十分に提供できていない状況や、他の児童生徒との円滑な関係を構築するための指導が十分にされていない状況及び指導場面において、安易な学習内容の変更や学習活動の代替になっているのではないかという指摘がある。

2.育成すべき資質・能力を踏まえた教科等目標と評価の在り方について
(1)体育科・保健体育科等の特質に応じて育まれる見方・考え方
○各教科においては、育成すべき資質・能力の三つの柱を明確化し、深い学びにつなげていくことが求められている。その際、各教科の特質に応じ育まれる「見方・考え方」が重要とされている。
○体育科・保健体育科としては、各種の運動がもたらす体の健康への効果はもとより、心の健康も運動と密接に関連していることを踏まえ、生涯にわたる豊かなスポーツライフを実現する資質・能力の育成や健康の保持増進のための実践力の育成及び体力の向上について考察することが重要である。
○このため、体育及び保健のそれぞれの「見方・考え方」について、体育においては、「運動やスポーツについて、その意義や特性に着目して、楽しさや喜びを見出すとともに体力の向上に果たす役割を捉え、公正、協力、責任、参画、共生、健康・安全といった視点を踏まえながら、自己の適性等に応じて「する・みる・支える・知る」等の多様な関わり方について考えること」と整理することが適当である。
○また、保健においては、疾病や傷害を防止するとともに、生活の質や生きがいを重視した健康観を踏まえ、保健の見方・考え方として、「健康や安全の視点から情報を捉え、心身の健康の保持増進や回復、それを支える環境づくりを目指して、疾病等のリスクを減らしたり、生活の質を高めたりすることについて考えること」と整理することが適当である。

(2)小・中・高を通じて育成すべき資質・能力の整理と、教科等目標の在り方
○体育科、保健体育科においては、生涯にわたって健康を保持増進し、豊かなスポーツライフを実現する資質・能力を育成することを重視する観点から、育成すべき資質・能力の三つの柱(「知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」「学びに向かう力、人間性等」)で整理する。
○また、幼児期に育まれることが期待される健康な心と体等の基礎の上に、小学校・中学校・高等学校教育を通じて育成すべき資質・能力を、三つの柱に沿って明確化し、バランスよく育成していく。併せて、2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピック競技大会を契機としながら、各学校段階を通じて、運動やスポーツへの関心を高め、「する、みる、支える、知る」等のスポーツとの多様な関わり方を育み、運動やスポーツがもつ価値を理解し、楽しむことができるようにすることが大切である。併せて、健康の価値に気付き、自他の健康の保持増進を図り、明るく豊かで活力ある生活につなげることが重要である。
○体育・保健体育においては、課題を発見し、その解決を図る主体的・協働的な学習活動を通して、体育や保健の見方・考え方を働かせ、心と体を一体として捉え、心身の健康の保持増進と豊かなスポーツライフの実現を目指すため、次のように資質・能力を育成することを目標とする。
【小学校】
1 各種の運動の特性・魅力に応じた行い方や身近な健康についての理解を図るとともに、基礎的な動きや基本的な技能を育成する。
2 運動や健康についての自己の課題に気付き、その解決に向けて思考・判断し、他者に伝える力を育成する。
3 運動の楽しさや喜びを味わうとともに、健康の保持増進と体力の向上を目指し、楽しく明るい生活を営む態度を育成する。
【中学校】
1 各種の運動の特性・魅力に応じた運動についての理解や自他の健康についての理解を図るとともに、基本的な技能を育成する。
2 運動や健康についての自他の課題に気付き、よりよい解決に向けて思考・判断し、目的に応じて他者に伝える力を育成する。
3 生涯にわたって運動に親しむとともに、健康の保持増進と体力を向上を目指し、明るく豊かな生活を営む態度を育成する。
【高等学校】
1 各種の運動の特性・魅力に応じた運動についての理解や自他や社会の健康についての理解を図るとともに、段階的な技能を育成する。
2 運動や健康についての自他や社会の課題に気付き、よりよい解決に向けて思考・判断し、目的や状況に応じて他者に伝える力を育成する。
3 生涯にわたって豊かなスポーツライフを継続するとともに、健康の保持増進と体力の向上を目指し、明るく豊かで活力ある生活を営む態度を育成する。
○体育においては、体育の見方・考え方を踏まえ、学習したことを実生活や実社会で生かすことができるよう、運動に関する「知識・技能」、「思考力・判断力・表現力等」、公正、協力、責任、参画、共生、健康・安全等の態度を含む「学びに向かう力、人間性等」の三つの資質・能力をバランスよく育成することが必要である。
○保健においては、保健の見方・考え方を踏まえ、健康に関する「知識・技能」、健康課題の発見・解決のための「思考力・判断力・表現力等」、主体的に健康課題の解決に向けて取り組む態度等を含む「学びに向かう力、人間性等」の三つの資質・能力を育成することが必要である。
(知識・技能)
○「知識・技能」については、豊かなスポーツライフを実現する観点から、発達の段階に即して、運動の特性に応じた行い方や一般原則等の知識及びスポーツに関する科学的知識や文化的意義等を理解するとともに、各種の運動が有する特性や魅力に応じた動きや技能を段階的に習得できるようにすることが重要である。また、生涯を通じて心身そのものの働きや自他の健康を保持増進し、改善するための基礎的・基本的な知識・技能を発達の段階を踏まえて体系的に習得していくことが重要である。
・小学校運動領域については、各種の運動が有する特性や魅力に応じた知識や技能を習得し、運動の楽しさや喜びを味わうことができるようにする観点から、各種の運動の行い方に関する基礎的な知識と基本的な技能を相互に関連付けながら身に付けていくことが重要である。
・小学校保健領域については、身近な生活における健康・安全についての基礎的・基本的な知識・技能を重視する観点から、健康な生活、体の発育・発達、心の健康、けがの防止、病気の予防に関する知識、不安や悩みへの対処やけがの手当に関する技能の習得を図り、身近な生活場面に役立つ知識・技能として身に付けていくことが重要である。
・中学校体育分野については、運動の多様な楽しさや喜びを味わうことができるようにする観点から、中学校第1学年及び第2学年においては、すべての領域において、小学校高学年との接続を踏まえて、技術の名称や行い方等、各領域の内容と関連する知識を理解し、基本的な運動の技能として発揮したり、身体表現したりすることができるようにすることが重要である。運動の特性に応じた行い方や一般原則等の知識と往還を図るための指導を充実することが重要である。また、中学校第3学年においては、選択した領域においては、生涯にわたって運動に親しむための知識及び基本的技能を一層関連させ、理解を深めるとともに、性差や技能の違いを超えて、場面に応じた技能を発揮できるようにすることが重要である。さらに、「する、みる、支える、知る」等のスポーツとの多様な関わり方や、運動やスポーツの価値を理解する観点から、スポーツに関する科学的知識や文化的意義等の基本的事項について理解を図ることが重要である。
・中学校保健分野については、個人生活における健康・安全についての科学的な知識・技能を重視する観点から、現代的な健康課題を踏まえて、心身の機能の発達と心の健康、健康と環境、傷害の防止、健康な生活と疾病の予防に関する知識、ストレス対処や応急手当に関する技能の習得を図り、個人生活で活用できる知識・技能として身に付けていくことが重要である。
・高等学校科目体育については、運動の多様な楽しさや喜びを深く味わうことができるようにする観点から、選択する領域等に関わる、技術の名称や行い方等、各領域の内容と関連する知識を実践的に理解し、運動の技能として発揮したり、身体表現したりすることができるようにすることが重要である。また、「する、みる、支える、知る」等のスポーツとの多様な関わり方を育み、運動やスポーツがもつ価値を理解し、実生活や実社会で生かす観点から、スポーツに関する科学的知識や文化的意義等について理解し、統合的に理解を図ることが重要である。
・高等学校科目保健については、個人及び社会生活における健康・安全についての総合的な知識・技能を重視する観点から、現代社会に生じた健康課題の解決に役立つ知識、健康な生活と疾病の予防に関する知識、ライフステージを踏まえた生涯を通じる健康の知識、応急手当や社会資源の活用に関する技能の習得を図り、個人及び社会生活で活用できる知識・技能として身に付けていくことが重要である。
(思考力・判断力・表現力等)
○「思考力・判断力・表現力等」については、豊かなスポーツライフを実現する観点から、課題に応じて活動を選んだり工夫したり、課題に応じた運動の取り組み方を工夫したり、伝える相手や状況に応じてわかりやすく表現することが重要である。また、生涯を通じて自他の健康課題に適切に対応できるようにする観点から、健康の保持増進や回復、それを支える環境づくりを目指して疾病等のリスクを減らしたり、生活の質を高めたりする思考力・判断力・表現力等の基礎を身に付けることが重要である。
・小学校運動領域については、自己の能力に適した運動課題をもち、課題の解決に向けて活動を選んだり工夫したりする力を重視する観点から、自己の能力に適した運動課題に気付き、解決するための活動を選ぶ、運動の行い方を工夫する、思考し判断したことを言葉や動作等で他者に伝える等の思考力・判断力・表現力を育成することが重要である。
・小学校保健領域については、身近な健康課題に気付き、健康を保持増進するための情報を活用し、課題解決する力を重視する観点から、身近な健康課題に気付き、正しい健康情報を集めて、課題の解決方法を予想し考えたり、学んだことを自己の生活に生かしたり、健康に関する自分の考えを伝えたりする等の思考力・判断力・表現力を育成することが重要である。
・中学校体育分野については、自己や仲間の課題に応じた運動の取り組み方を工夫できる力の育成を重視する観点から、各領域の特性に応じて、改善すべきポイントを見付けること、課題に応じて適切な練習方法を選ぶこと等の運動の学習に関連した思考力・判断力・表現力を育成することが重要である。それらのことに加え、各領域の学習を活用して運動を継続して楽しむための自己に適した関わり方を見付けること等について思考し、判断したことを、根拠を示しながら他者に言葉で伝えたり、動作等で表現したりすること等の思考力・判断力・表現力を育成することが重要である。また、多様なスポーツの行い方を場面に応じて選択し、実践できるようにする観点から、体力や技能の程度、年齢や性別及び障害の有無等を超えてスポーツを楽しむことができるよう、指導の充実を図ることが大切である。
・中学校保健分野については、健康課題を把握し、適切な情報を選択、活用し、課題解決のために適切な意思決定を行う力を重視する観点から、自他の健康課題を発見し、健康情報や知識を吟味し、活用して多様な解決方法を考えるとともに、多様な解決方法の中から、適切な方法を選択・決定し、自他の生活に活用したり、自他の健康の考えや解決策を対象に応じて表現したりする等の思考力・判断力・表現力を育成することが重要である。
・高等学校科目体育については、自己や仲間の課題に応じた運動を継続するための取り組み方を工夫できる力の育成を重視する観点から、各領域の特性に応じて、課題解決の過程を踏まえて自己や仲間の課題を見直す等の、運動の学習に関連した思考力・判断力・表現力を育成することが重要である。それらのことに加え、生涯にわたってスポーツを楽しむための自己に適した関わり方を見付けて提案する等の主体的、継続的に運動に取り組むことにつなげるために、思考し判断したことを、根拠を示したり他者に配慮したりして、他者に言葉で伝えたり、仲間と合意した内容を動作等で表現する等の思考力・判断力・表現力を育成することが重要である。また、多様なスポーツの行い方を状況に応じて選択し、実践できるようにする観点から、体力や技能の程度、年齢や性別及び障害の有無等を超えて運動を楽しむことができるよう、指導の充実を図ることが大切である。
・高等学校科目保健については、健康課題の解決を目指して、健康情報を批判的に捉えたり、論理的に考えたりして、適切に意思決定・行動選択する力を重視する観点から、社会生活に関わる健康課題を発見する、健康情報を分析し、社会背景や置かれている状況に応じて解決方法を考える、解決方法を活用し、自他の健康やそれを支える環境づくりを目指して適切に意思決定・行動選択する、自他や社会生活の課題解決に必要な知識や技能、健康の考えや解決策を社会へ発信する等の思考力・判断力・表現力を育成することが重要である。
(学びに向かう力、人間性等)
○「学びに向かう力、人間性等」については、豊かなスポーツライフを実現する観点から、運動の楽しさや喜びを味わい、運動やスポーツがもつ価値を理解し、生涯にわたって運動に親しんだり継続したりするとともに、これらの学習を通して、明るく豊かで活力ある生活を営む態度を育成することが重要である。また、現在及び将来の生活を健康で活力に満ちた明るく豊かなものにすることを目指し、主体的に健康の保持増進に取り組むとともに、自他の健康の取組や心身の発達を肯定的に捉える態度を育成することが大切である。
・小学校運動領域については、各種の運動の楽しさや喜びを味わい、楽しく明るい生活を営む態度を重視する観点から、仲間と楽しく運動することを通して、進んで学習活動に取り組む、約束を守り、公正に行動する、友達と協力して活動する、自分の役割を果たそうとする、友達の考えや取組を認める、安全に気を配る等の態度を育成することが重要である。
・小学校保健領域については、健康の大切さを認識し、自己の健康の保持増進や回復等に主体的に取り組み、楽しく明るい生活を営む態度の育成を重視する観点から、自己の健康に関心をもち、健康の保持増進のために協力して活動する、自他の心身の発育・発達等を肯定的に捉える等の態度を育成することが重要である。
・中学校体育分野については、生涯にわたって運動に親しむとともに、明るく豊かな生活を営む態度を重視する観点から、第1学年及び第2学年では、運動における競争や協同の場面を通して、多様性を認識し、公正、協力、責任、参画、共生等の意欲をもつ、健康・安全を確保する等の態度を育成することが重要である。また、第3学年では、学習する領域を生徒自らの意思で選択し自主的に取り組めるようにすることが大切である。なお、多様なスポーツの行い方を状況に応じて選択し、実践できるようにする観点から、体力や技能の程度、年齢や性別及び障害の有無等を超えてスポーツを楽しむことができるよう、指導の充実を図ることが大切である。
・中学校保健分野については、自他の健康の大切さを認識し、健康の保持増進や回復等に主体的に取り組み、健康で豊かな生活を営む態度の育成を重視する観点から、自他の健康に関心をもち、自他の健康に関する取組のよさを認める、自他の健康の保持増進や回復等のために主体的、協働的に活動する等の態度を育成することが重要である。
・高等学校科目体育においては、生涯にわたって豊かなスポーツライフを継続するとともに、明るく豊かで活力ある生活を営む態度を重視する観点から、運動の合理的、計画的な実践を通して、多様性を尊重し、公正、協力、責任、参画、共生等の意欲をもち、健康・安全を確保する等の態度を育成することが重要である。そのため高校入学年次においては、中学校までの学習が確実に身に付いているか確認し、手だてを要する生徒への配慮をすることが大切である。また、多様なスポーツの楽しみ方を卒業後も実践できるようにする観点から、生涯にわたるスポーツの場面を想定して、競技会・発表会の企画・運営やルール等の合意形成を図る機会を提供したり、勝敗を超えて、協同して楽しむ運動の有用性を認識する機会を提供したりする等、体力や技能の程度、年齢や性別及び障害の有無等を超えて運動を楽しむことができるよう、指導の充実を図ることが大切である。
・高等学校科目保健については、自他の健康を優先し、社会生活を踏まえて健康で豊かな活力ある生活を営む態度を重視する観点から、社会生活に関わる健康づくりに関心をもち、社会生活において健康・安全を優先する、自他の健康の保持増進や回復に取り組むとともに、それを支える環境づくりに参画する等の態度を育成することが重要である。

(3)資質・能力を育む学習過程の在り方
○体育科・保健体育科における学習過程については、生涯にわたって健康を保持増進し、豊かなスポーツライフの実現に向け、これまでも自己の運動や健康についての課題の解決に向け、積極的・自主的・主体的に学習することや、仲間と対話し協力して課題を解決する学習等を重視してきた。そうした学習過程を引き続き重視するとともに、体育、保健体育で小学校・中学校・高等学校教育を通じて育成すべき「知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」「学びに向かう力・人間性等」の三つの資質・能力を確実に身に付けるための学習過程を工夫する必要がある。
・体育については、運動に対する関心や興味を高め、「する、みる、支える、知る」等のスポーツとの多様な関わり方を楽しむことができるよう、三つの資質・能力をバランスよく育むことができる学習過程を工夫し充実していくことが重要である。また、三つの資質・能力を確実に身に付けることができるよう、粘り強く課題の解決に取り組むとともに、自らの学習活動を振り返りつつ、仲間と共に課題を解決し、次の学びにつなげるという主体的・協働的な学習過程が重要である。
・保健については、三つの資質・能力をバランスよく育むことができるように、現代的な健康課題に関する課題解決的な学習過程や、自他の健康の保持増進を目指した主体的・協働的な学習過程を工夫し充実していくことが重要である。

(4)「目標に準拠した評価」に向けた評価の観点の在り方
○体育科・保健体育科における評価については、これまで、「技能」「態度」「知識、思考・判断」の指導を、「運動や健康・安全への関心・意欲・態度」「運動や健康・安全についての思考・判断」「運動の技能」「運動や健康・安全についての知識・理解」の四つの観点に即して評価してきた。今回の改訂では、体育においては、三つの育成すべき資質・能力を踏まえ、「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の三つの観点で評価することが必要である。
○「知識・技能」については、「運動や健康についての知識・技能」とし、体育においては「各種の運動の行い方等を理解するとともに、その運動をできるようにする」と捉える。その際、それぞれの習得に順序性を決めるものではなく、「わかってからできる」「できたうえでわかる」等、運動の特性及び児童生徒の実態等により多様であることに留意する。ここでは、「わかること」と「できること」のどちらも重要であることを示すものである。また、豊かなスポーツライフを実現する観点から、スポーツに関する科学的知識や文化的意義及び一般原則等の知識の理解について評価することも必要である。
・体育においては、各種の運動の行い方についての知識と、その運動に関する技能を相互に関連付けて評価する。具体的には、小学校では、各種の運動を行う上での基本的な知識と技能を、中学校では、運動の多様な楽しさや喜びを味わうための、特性や魅力に応じた各種の運動に関する基本的な知識及び運動の特性に応じた基本的な技能を、高等学校では、運動の多様な楽しさや喜びを深く味わうための、特性や魅力に応じた各種の運動に関する知識及び運動の特性に応じた段階的な技能を評価する。
・保健においては、健康に関する知識や技能を習得した実現状況を評価する。具体的には、小学校では、身近な生活における健康・安全について、課題解決に役立つ基礎的な知識や技能を身に付けている、中学校では、個人生活における健康・安全について、課題解決に役立つ基礎的な知識や技能を身に付けている、高等学校では、個人及び社会生活における健康・安全について、課題解決に役立つ基礎的な知識や技能を身に付けていることを評価する。
○「思考・判断・表現」の観点については、「運動や健康についての思考・判断・表現」とする。体育においては、ここで示す「表現」とは、運動の技能に関わる身体表現や表現・ダンス領域における表現とは異なり、思考し判断したことを他者に言葉や文字、動作等で表現することと捉えるものである。これらについては同一の用語を用いるため、教育の現場で混乱が生じないよう、整理する必要がある。
・体育においては、体育の特質に根ざした見方・考え方を踏まえて、運動課題の解決に向けて考えたり判断したり表現したりしている実現状況を評価する。具体的には、小学校では、自己の能力に適した課題に気付き、その解決を目指して考え、判断し、表現していること、中学校では、自他の課題に気付き、よりよい解決に向けて思考・判断するとともに、目的に応じて他者に伝えていること、高等学校では、運動を継続するための課題を把握し、課題解決の過程を踏まえて思考・判断するとともに、目的や状況に応じて他者に伝えていることを評価する。
・保健においては、保健の特質に根ざした見方・考え方を踏まえて、健康課題の解決に向けて考えたり判断したり表現したりしている実現状況を評価する。具体的には、小学校では、身近な課題に気付き、その解決を目指して考え、判断し、それらを表現している、中学校では、個人生活における課題を把握し、その解決を目指して科学的に考え、判断し、それらを表現している、高等学校では、個人及び社会生活における課題を発見し、その解決を目指して、総合的に考え、判断し、それらを表現していることを評価する。
○「主体的に学習に取り組む態度」の観点については、従前の「運動や健康・安全への関心・意欲・態度」が相当するが、体育においては、公正、協力、責任、参画、共生、健康・安全に関する態度の指導が「主体的に学習に取り組む態度」の育成と密接に関連する。そのため、評価においても、これらの態度に関する指導を総合的に捉え、「主体的に学習に取り組む態度」として評価することが求められる。
・体育においては、主体的に運動に取り組むとともに、公正、協力、責任、参画、共生、健康・安全に関する態度の実現状況を評価する。具体的には、小学校では、進んで学習活動に取り組む、約束を守り公正に行動する、友達と協力して活動する、自分の役割を果たそうとする、友達の考えや取組を認める、安全に気を配る等、中学校では運動の多様な楽しさや喜びを味わうことができるよう、運動の合理的な実践に主体的に取り組もうとしていることを、高等学校では、運動の多様な楽しさや喜びを深く味わうことができるよう、運動の合理的、計画的な実践に主体的に取り組もうとしていることを評価する。
・保健においては、主体的に知識や技能を習得したり、習得した知識や技能を活用して思考・判断・表現したりしようとしている態度等の実現状況を評価する。具体的には、小学校では、健康を大切にし、自己の健康の保持増進に関する学習活動に主体的に取り組もうとしている、中学校では、自他の健康を大切にし、健康の保持増進や回復に関する学習活動に主体的に取り組もうとしている、高等学校では、個人や社会の健康を大切にし、自他の健康の保持増進や回復及びそれを支える環境づくりに関する学習活動に主体的に取り組もうとしていることを評価する。

3.資質・能力の育成に向けた教育内容の改善・充実
(1)資質・能力の整理と学習過程の在り方を踏まえた教育内容の構造化
○現状では、体育科、保健体育科の内容の規定は、体育においては、(1)技能、(2)態度、(3) 知識、思考・判断、保健においては、「知識」の構造となっている。今回の改訂においては、育成すべき資質・能力が「知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」「学びに向かう力、人間性等」の三つに整理されることを踏まえ、体育科、保健体育科については、(1)知識・技能、(2)思考力・判断力・表現力等、(3)学びに向かう力、人間性等に構造化する。
○体育については、体育の見方・考え方を踏まえ、三つの資質・能力を育成する観点から、運動に関する「知識・技能」、運動課題の発見・解決のための「思考力・判断力・表現力等」、主体的に学習に取り組む態度等の「学びに向かう力、人間性等」に対応した目標、内容に改善する。その際、児童生徒の発達の段階を踏まえて、学習したことを実生活や実社会に生かし、運動の習慣化につなげ、豊かなスポーツライフを実現することができるよう、小学校、中学校、高等学校を通じて体系化を図るとともに、主体的・協働的な学習過程を明示する等の改善を図ることが重要である。
○生涯にわたる豊かなスポーツライフの実現に向けて、小学校から高等学校までの12年間を見通して、各種の運動の基礎を培う時期、多くの領域の学習を経験する時期、卒業後に少なくとも一つの運動やスポーツを継続することができるようにする時期といった発達の段階のまとまりを踏まえ、目標や内容を示すことが重要である。
○保健については、保健の見方・考え方を踏まえ、三つの資質・能力を育成する観点から、健康に関する「知識・技能」、健康課題の発見・解決のための「思考力・判断力・表現力等」、主体的に健康の保持増進に取り組む態度等の「学びに向かう力、人間性等」に対応した目標、内容に改善する。その際、健康な生活と疾病の予防、心身の発育・発達と心の健康、健康と環境、傷害の防止、社会生活と健康等の保健の基礎的な内容について、小学校、中学校、高等学校を通じて系統性のある指導ができるように体系化を図るとともに、児童生徒の発達の段階を踏まえて、現代的な健康課題に関する課題解決的な学習過程、自他の健康の保持増進を目指した主体的・協働的な学習過程を明示する等の改善を図ることが重要である。

(2)現代的な諸課題を踏まえた教育内容の見直し
○生涯にわたって健康を保持増進し、豊かなスポーツライフを実現する資質・能力の育成を重視する観点から、健康な生活と運動やスポーツとの関わりを深く理解したり、心と体が密接に繋がっていることを実感したりできるようにする等、体育と保健の一層の関連を図った指導の在り方について改善を図る。
○体育については、児童生徒を取り巻く社会状況や生活習慣等を考慮するとともに、幼児期からの多様な動きの獲得の状況等を踏まえ、発達の段階に応じて各種の運動の特性や魅力に触れることができるよう、内容を検討する。また、全国体力・運動能力、運動習慣等調査の結果等を踏まえ、児童生徒の運動についての関心や意欲を育むとともに、体力の一層の向上を図る観点から、内容を充実する。低下傾向が指摘されている握力及び投能力の向上を視野に、関連する領域において取り上げる運動の充実を図る。さらに、運動する子供とそうでない子供の二極化傾向が見られることから、学習したことを運動の日常化につなげることができるよう、指導内容の充実を図る。
○資質・能力の育成のためには、体育で学習したことを実生活、実社会で生かすことができるよう、学校全体の取り組みを充実することや、年間指導計画の充実、体育・健康に関する指導との一層の関連を図る。
○また、体力の向上を重視する観点から、体つくり運動の内容等の改善を図る。さらに、その他の領域においても、学習した結果としてより一層の体力の向上を図ることができるよう、指導の在り方について改善を図る。

○学習したことを実生活や実社会で生かし、運動の習慣化につなげる観点から、運動やスポーツの価値及び意義について理解し、運動の楽しさや喜びを味わうことができるよう、指導内容の充実を図る。
○体育では仲間と運動に取り組む過程において、自己や仲間の体力や技能の違いを認識し、感情や行動をコントロールするための素地をつくることが期待されることから、「学びに向かう力・人間性等」の資質・能力を育むための指導と評価の在り方について、これらの点を踏まえて内容の充実を図る。
○オリンピック・パラリンピックに関する指導の充実を図るため、各種の運動についての知識・技能等を習得する過程やスポーツに関わる科学的知識において、オリンピック・パラリンピックの意義や価値等を踏まえた指導内容の充実を図る。
○体力や技能の程度、年齢や性別及び障害の有無等を超えて、多様なスポーツの行い方を場面に応じて選択し、実践できるようにする観点を踏まえ、「する、みる、支える、知る」等のスポーツとの多様な関わり方を楽しむことができるようにするための指導の充実を図る。
○グローバル化する社会の中で、我が国固有の伝統と文化への理解を深める観点から、日本固有の武道の考え方に一層触れることができるよう、武道の充実について改善を図る。
○小学校運動領域については、運動の楽しさや喜びを味わうための基礎的・基本的な「知識・技能」、「思考力・判断力・表現力等」、「学びに向かう力、人間性等」の育成を重視する観点から、内容等の改善を図る。
・生涯にわたって健康を保持増進し、豊かなスポーツライフを実現する資質・能力の育成を重視する観点から、体育と保健の一層の関連を図った指導の在り方について改善を図る。
・生涯にわたって運動やスポーツに親しむ資質・能力の基礎を育てる観点から、各領域で身に付けたい具体的な内容を、資質・能力の三つの柱に沿って明確に示す。
・全ての児童が、楽しく、安心して運動に取り組むことができるようにする観点から、運動が苦手な児童や運動に前向きでない児童への指導の充実を図る。
・オリンピック・パラリンピックに関する指導の充実を図る観点から、児童の発達の段階に応じて、スポーツマンシップ、スポーツの意義や価値等に触れることができるよう指導の在り方について改善を図る。
○中学校体育分野については、生涯にわたって運動やスポーツに親しみ、多様なスポーツの行い方を場面に応じて選択し、実践できるよう、「知識・技能」、「思考力・判断力・表現力等」、「学びに向かう力、人間性等」の育成を重視する観点から内容等の改善を図る。
・生涯にわたって健康を保持増進し、豊かなスポーツライフを実現する資質・能力の育成を重視する観点から、体育と保健の一層の関連を図った指導の在り方について改善を図る。
・生涯にわたって運動やスポーツに親しみ、多様なスポーツの行い方を場面に応じて選択し、実践できるようにする観点から、各領域で身に付けたい具体的な内容を、資質・能力の三つの柱に沿って明確に示す。
・体を動かす楽しさや心地よさを味わうとともに、健康や体力の状況に応じて体力を高める必要性を認識し、運動やスポーツの習慣化につなげる観点から、体つくり運動の充実について改善を図る。
・生涯にわたって運動やスポーツに親しみ、多様なスポーツの行い方を場面に応じて選択し、実践できるようにする観点並びにオリンピック・パラリンピックに関する指導の充実を図る観点から、知識に関する領域において、スポーツの意義や価値、オリンピック・パラリンピックの意義や価値等を踏まえた指導内容について改善を図る。
・グローバル化する社会の中で、我が国固有の伝統と文化への理解を深める観点から、日本固有の武道の考え方に一層触れることができるよう、武道の充実について改善を図る。
○高等学校科目体育については、生涯にわたって豊かなスポーツライフを継続し、多様なスポーツの行い方を状況に応じて選択し、実践できるようにすることができるよう、「知識・技能」、「思考力・判断力・表現力等」、「学びに向かう力、人間性等」の育成を重視する観点から内容等の改善を図る。
・生涯にわたって健康を保持増進し、豊かなスポーツライフを実現する資質・能力の育成を重視する観点から、体育と保健の一層の関連を図った指導の在り方について改善を図る。
・生涯にわたって豊かなスポーツライフを継続し、多様なスポーツの行い方を場面に応じて選択し、実践できるようにする観点から、各領域で身に付けたい具体的な内容を、資質・能力の三つの柱に沿って明確に示す。
・体を動かす楽しさや心地よさを味わうとともに、健康や体力の状況に応じて自ら体力を高める方法を身に付け、運動やスポーツの習慣化につなげる観点から、体つくり運動の充実について改善を図る。
・生涯にわたって豊かなスポーツライフを継続し、多様なスポーツの行い方を場面に応じて選択し、実践できるようにする観点並びにオリンピック・パラリンピックに関する指導の充実を図る観点から、知識に関する領域において、スポーツの意義や価値、オリンピック・パラリンピックの意義や価値等を踏まえた指導内容について改善を図る。
○保健については、生涯を通じて自他の健康課題や回復に適切に対応できるようにする観点から、健康に関する「知識・技能」、健康課題の発見・解決のための「思考力・判断力・表現力等」、主体的に健康の保持増進に取り組む態度等の「学びに向かう力、人間性等」の三つの柱に沿った資質・能力のバランスのよい育成を目指して、内容や構成を工夫することとする。
○小学校保健領域については、身近な生活における健康・安全についての基礎的・基本的な「知識・技能」、「思考力・判断力・表現力等」、「学びに向かう力、人間性等」の育成を重視する観点から、指導内容の改善を図る。その際、自己の健康の保持増進や回復等に関する基礎的・基本的内容を優先するとともに、「技能」に関連して、心の健康、けがの防止の内容を充実する。また、運動領域との関係を踏まえた内容の在り方について改善を図る。
○中学校保健分野については、個人生活における健康・安全についての「知識・技能」、「思考力・判断力・表現力等」、「学びに向かう力、人間性等」の育成を重視する観点から、指導内容の改善を図る。その際、心の健康や疾病の予防に関する健康課題の解決に役立つ内容、ストレス対処や心肺蘇生法等の技能に関する内容等を充実する。また、現代的な健康課題を解決することを重視する観点から、健康な生活と疾病の予防の内容を各学年に配当するとともに、体育分野との関係を踏まえた内容の在り方について改善を図る。
○高等学校科目保健については、個人及び社会生活における健康・安全についての総合的な「知識・技能」、「思考力・判断力・表現力等」、「学びに向かう力、人間性等」の育成を重視する観点から内容の改善を図る。その際、少子高齢化や疾病構造の変化による現代的な健康課題の解決に役立つ内容を取り上げるとともに、ライフステージにおける健康の保持増進や回復に関わる内容や疾病の時間的な経過を踏まえた一次予防、二次予防、三次予防を体系的に理解する内容を充実する。また、健康で安全な環境づくりに関する内容の充実を図るとともに、科目体育との関係を踏まえ、心身の健康の保持増進とスポーツとの関連等の内容の在り方について改善を図る。

4.学習・指導の改善充実や教材の充実
(1)特別支援教育の充実、個に応じた学習の充実
○特別な配慮を要する児童生徒に対しては、体育科・保健体育科においては、これまで、安全上の配慮から、当該児童生徒の能力等に応じた適切な学習機会を適切かつ十分に提供できてこなかった状況や、他の児童生徒との円滑な関係を構築するための指導が十分にされていなかったという指摘があることから、検討が必要である。また、指導において、安易な指導内容の変更や学習活動の代替になっていなかったかという点も指摘されているため、障害の程度にかかわらず、全ての児童生徒の十分な学びが実現できるようにすることが求められる。また、2020年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催等も契機としながら、多様なスポーツの行い方を状況に応じて選択し、実践できるようにする社会の形成に向けた障害者理解の促進を明確に位置付け、運動やスポーツを通しての交流及び共同学習の更なる充実が求められる。
○運動場面の学習においては、障害の有無等の多様性を認識し、障害の有無にかかわらず、ともに運動を楽しむことができるよう、アダプテッドスポーツ等も含めた教材やルールの工夫を検討することが求められる。その際、特別支援学校等で取り組まれている手立て等を参考にしながら、障害の有無にかかわらず、児童生徒が運動に親しむための具体的な手立ての充実を図ることが大切である。具体的には、当該児童生徒の障害特性に応じて、目標や課題を設定すること、当該児童生徒に無理のない活動を選べるようにすること、当該児童生徒の興味や関心、意欲等に応じて、身体的な活動を安全かつ適切に確保すること、障害の程度等に応じた評価規準を設定すること等が考えられる。なお、児童生徒の障害の種類と程度等を家庭、専門医等との連絡を密にしながら的確に把握し、児童生徒の健康・安全の確保に十分留意するとともに、実態に応じたきめ細かな指導に配慮する必要がある。
○体育理論及び保健の学習においては、運動や健康・安全に関する事象に関して科学的に理解する際には、ICTを活用したり、児童生徒の興味・関心や生活経験に関連のある教材を工夫したり体験活動を取り入れたりする等、より具体的できめ細かな指導に配慮する必要がある。なお、障害だけでなく疾患等による配慮が必要な児童生徒についても実態に応じたきめ細かな指導に配慮する必要がある。
○体育、保健体育の特質を踏まえて、児童生徒の個々の特性等を十分理解し、それに応じた指導を行うことが必要であり、指導方法の工夫改善を図ることが求められる。そのことにより,児童生徒一人一人が基礎的・基本的な知識・技能を確実に習得し、それらを活用して課題を解決するために必要な思考力・判断力・表現力等を育み、その後の学習や生活に生かすことができるようにするとともに、主体的に学習する態度を育てることも必要となる。そのためには、個別指導やグループ別指導といった学習形態の導入、知識や技能の習得の状況に応じた繰り返し指導、児童生徒の興味・関心に応じた課題学習、補充的な学習や発展的な学習等の学習活動を取り入れた指導等を柔軟かつ多様に導入することが重要である。
○これらのことを踏まえ、具体的には次のような例が考えられる。
・基本的な運動動作に極端なぎこちなさがある場合、自信をもって取り組めるよう、動きを細分化したり、言葉だけでなく適切に動きを補助したりする。タブレット等で撮影した写真や動画等を活用する。
・勝ち負けにこだわりすぎる場合、感情を適切にコントロールできるよう、勝ったときや負けたときの感情の表し方について、事前に確認する。
・他者と協働したたり、話し合ったりすることが難しい場合、相手の意見を聞いてから発言できるよう、話合いのルールや手順を視覚的に示す。
・自己分析から適切な目標を考えることが難しい場合、目標の達成感が得られるよう、目標をスモールステップで考えられるようにする。
・学習を客観的に振り返ることが難しい場合、どのように振り返ればよいのか分かるよう、振り返りの手順や項目を示した「振り返りシート」等を活用する。

(2)「深い学び」「対話的な学び」「主体的な学び」に向けた学習・指導の改善充実
○体育科・保健体育科における具体的な学習過程は、運動や健康についての課題の内容や児童生徒の実態等により、様々存在し得るものであるが、ここでは論点整理に示された「深い学びの過程」「対話的な学びの過程」「主体的な学びの過程」の三つの視点から整理することとする。なお、これらの三つの視点はそれぞれが独立するものではなく、むしろ相互に関連し合ったり重なり合ったりすることにより、体育科・保健体育科で求められる学びの過程が実現するよう配慮することが大切である。また、これらの三つの視点は、順序性や階層性を示すものでないことに留意することが大切である。
(深い学びの過程)
○「深い学びの過程」については、体育・保健体育の見方・考え方を踏まえ、自己の運動や健康についての課題に気付き、解決に向けて試行錯誤を繰り返しながら、考えを深め、よりよく解決していこうとする学びの過程と捉える。
・体育については、豊かなスポーツライフを実現する課題解決的な学習を重視する観点から、各種の運動の行い方を理解し、自己の能力に適した課題を見付け、課題の解決に向けて、習得した知識を活用して運動の行い方を工夫すること、ICTの活用等により、課題の到達度を確認し、必要な知識を収集するとともに実践すること、自己やチームの能力に応じた運動の楽しみ方を見付けること等が重要である。
・保健については、現代的な健康課題に関する課題解決的な学習を重視する観点から、健康に関する身近な生活やそれを取り巻く社会環境の状況から自他の健康課題に気付き、健康に関する情報を収集、批判的に吟味し、健康課題の解決に役立つ情報を選択すること、選択した健康情報や習得した知識や技能を活用して、疾病等のリスクを減らしたり、生活の質を高めたりする等健康課題の解決方法を考えること、健康課題の解決方法を自他の生活と比較したり、関連付けたりし、適切な意思決定・行動選択に役立てること等が重要である。
(対話的な学びの過程)
○「対話的な学びの過程」については、運動や健康についての課題の解決に向けて児童生徒が対話を繰り返しながら思考を深めていく学びの過程と捉える。
・体育については、自他の運動課題の解決に向けて仲間と豊かに関わる協働的な学習を重視する観点から、各種の運動についての多様な楽しみ方や目的を共有すること、運動課題とその解決方法を仲間と共有し、解決に向けて、助け合ったり教え合ったりすること、仲間と認め合い、励まし合うこと、言語活動の充実やICTの活用等を通して、自己や仲間の学びを理解すること、他者との違いに配慮し、ルールの工夫等を通して協働的に学ぶこと等が重要である。
・保健については、自他の健康の保持増進を目指した協働的な学習を重視する観点から、言語活動を重視し、健康課題や健康情報を仲間と共有すること、健康課題の解決に向けて、仲間と多様な意見を出し合ったり相談し合ったりしながら適切な解決方法を考えること、健康に関する考えや提案を相手の立場を考えて伝え合ったり、健康に関する話し合いを通して、仲間の学びや取組に対するよさを認め、自己の健康の保持増進や回復に生かすこと等が重要である。
(主体的な学びの過程)
○「主体的な学びの過程」については、運動やスポーツの楽しさや健康の意味及びそれらの価値に気付き、運動や健康についての課題の解決に向けて自ら取り組んだり振り返ったりする学びの過程と捉える。
・体育については、各種の運動の特性や魅力に触れるための主体的な学習を重視する観点から、運動やスポーツの楽しさや価値に気付き、自己の目標をもち、課題の解決に向けて粘り強く運動に取り組むこと、学習を振り返り、課題の修正をしたり新たな課題を設定したりすること、公正、協力、責任、参画、共生、健康・安全の大切さや意義を理解し、運動の楽しさや喜びを味わうこと等が重要である。
・保健については、自他の健康の保持増進を目指した主体的な学習を重視する観点から、健康の大切さに気付き、健康課題の解決に向けて意欲的に取り組むこと、学習の見通しをもち、健康課題の解決に向けて粘り強く取り組むこと、学習を振り返り、学びの過程及び健康に関して獲得された健康に関する知識・技能や考え方の成果を確認すること等が重要である。

(3)教材の在り方
○体育については、論点整理で示された「深い学びの過程」「対話的な学びの過程」「主体的な学びの過程」の三つの視点を踏まえて、学習したことを実生活や実社会で生かし、運動の習慣化につなげたり、体力や技能の程度、年齢や性別及び障害の有無等を超えて、多様なスポーツの行い方を状況に応じて選択したりすることができるよう、教材の工夫やICTの活用を図ることが重要である。
○保健については、論点整理で示された「深い学びの過程」「対話的な学びの過程」「主体的な学びの過程」の三つの視点を踏まえて、現代的な健康課題に関する課題解決的な学びや子供たちの多様なニーズに対応し、教科書を含めた教材を工夫することが重要である。また、保健の知識・技能、思考力・判断力・表現力等の育成を目指してICTの活用を図ることが重要である。

5.必要な条件整備等について
○体育、保健体育の改善に向けて、現職教育、教員養成、教材等整備等の環境を整備していくことも必要である。その際、体育については、生涯にわたって豊かなスポーツライフを実現するとともに、多様なスポーツの行い方を状況に応じて選択し、実践できるようにする観点から、条件整備等を行う必要がある。また、保健については、少子高齢化や疾病構造の変化等の社会環境に対応し、子供たちが生涯を通じて自他の健康課題に適切に対応できるようにする観点から、条件整備等をする必要がある。
○教育委員会等においては、カリキュラム・マネジメントの実現やアクティブ・ラーニングの視点に基づく学習・指導の改善・充実のための研修の充実を図るとともに、指導教諭や指導主事の資質向上及び配置等の充実を図ることが大切である。また、さまざまな児童生徒の実態に応じた指導の一層の充実を図る観点から、特別支援教育を含む個に応じた指導に関する研修の充実を図ることが重要である。さらに、小学校における体育専科教員の配置の充実を図るとともに、ティーム・ティーチング等効果的な指導方法の実践的研究を推進する必要がある。
○教員養成においては、各学校種において必修となっている全領域の指導の一層の充実を図ることができるようにするとともに、スポーツの多様性と価値についての理解や、体力や技能の違いに応じた指導方法、体力の低下等の運動課題に関する今日的課題を解決するための指導方法、オリンピック・パラリンピックに関する指導や多様なスポーツの行い方を状況に応じて選択し、実践できるようにするための内容が履修できるように改善を図る必要がある。また、健康や安全に関する新たな内容や現代的な健康課題を解決するための指導方法等を履修することができるように改善を図る必要がある。さらに、児童生徒が運動や健康についての課題の解決に取り組む際、言語を用いて筋道を立てて相手にわかりやすく説明したり、言語をもとに互いの考えを認め合ったりする等、教師や仲間との豊かな言語活動が重要であることから、教員養成における言語能力の育成を一層重視する必要がある。併せて、教育実習やインターンシップの機会を捉えて、学習指導要領の趣旨のさらなる理解や、教育のさまざまな状況に即した指導の在り方について実践的に学ぶことができる機会の充実を図る必要がある。
○また、実際の教育活動にあたっては、地域の人的資源を活用したり、社会教育との連携を図ったりすることが効果的であるが、特に障害者スポーツに関しては、指導者の育成が課題となっており、各種スポーツ団体等においては、そうした人材の養成に関して一層の役割を果たすことが期待される。
○教材等においては、学校現場において、運動に関する「知識・技能」、「思考力・判断力・表現力等」、「学びに向かう力、人間性等」の三つの柱に沿った資質・能力をバランスよく育成するため、アクティブ・ラーニングの視点を踏まえた授業改善に資する指導資料等の作成や、ICTを含めた必要なインフラ環境の整備を図ることが必要である。また、教員が保健の見方・考え方を理解し、心身の健康に関する「知識・技能」、健康課題の発見・解決のための「思考力・判断力・表現力等」、主体的に健康の保持増進に取り組む態度等の「学びに向かう力、人間性等」の三つの資質・能力の育成のための学習プロセスや、健康教育に関わる他教科等との関連や集団指導と個別指導の連携等のカリキュラム・マネジメントについて理解を深めるための資料等の作成及び研修の充実や、AEDトレーナー等、保健の技能に関わる備品等を準備する必要がある。

お問合せ先

スポーツ庁政策課学校体育室指導係

電話番号:03-6734-2674

(スポーツ庁政策課学校体育室指導係)