資料1 第6回体育・保健体育、健康、安全ワーキンググループにおける主な意見(未定稿)

1.体育・保健体育における特別支援教育の観点から必要な支援等について

■必要な支援を行う上での重視すべき視点について
○ いろいろな人が存在し、多様性があるということを知識として知っておくという ことを指導する面で、体を動かすときとか健康を保っていくときに、多様な人たちがこの世の中には共存していると、そのような知識として子供たちに提供していく ことも大切な視点。

○ 共生社会ということを考えると、健常者も障害者も一緒になってスポーツを楽し むことが求められていると思うが、特に健常者が障害者のスポーツに対する意識とか、本当にともに楽しむとか、相手の立場を思うということを伝えていかないと、 経験していく必要があるのではないか。

○ 小・中・高と子供たちが育っていく過程がどのようになっているかということについて、通常学級の先生も、特別支援学級の先生もしっかり押さえて、なめらかにつながっていけるように考えていく必要があるのではないか。

○ 障害のある子供たちの健康課題とか、健康特性、あるいは行動の特性はかな 様々であって、ほかの子供たちがなかなか理解できない、場合によっては指導者もなかなか理解できていないのではないか。ほかの子供たちが、そのような行動特性があるということ、例えば地域で聴覚に障害のある人たちだと自転車の方向に対して非常に脅威を感じるとか。そのような特性を持っている。そのようなことを子供たちも含めて理解する必要があるのでないか。

○ 特別支援教育と特別支援という言葉に変更になったのは、それほど古いことではない。そうしたときに、基本的に学習のコンセプトを考えていったとき、健常者と障害者と一応対立的に見ているけれど、今はみんなそれぞれ出来る力があって、出来ないのではなくて、出来ないというのは、ある共通の目的があって、それに対して出来やすい子と、出来にくい子と区別しているだけであって、その子供の今そこにいる人間の存在から考えれば、何か出来る力はあるといった視点が重要ではないか。

○ 心臓病であるとか、腎臓病であるとか、あるいはアレルギー疾患とか、ハンディ キャップのある子供は、当然学校の中にはたくさんいる。例えば、体育であれば、 学校の生活管理指導表に沿って運動させるということなど、そのような個々の慢性的な疾患というところにも、ほかの障害と同じようにもっと焦点を当ててもいいのではないか。

○ 知的障害のある子供でいえば、非常に集中力がある、我々以上に何か物事に集中してこつこつとやっていく、これをよく我々は見ている。そのような何かいいものを伸ばすといった見方、視点は非常に大切ではないか。

○ 特別支援というものをひとくくりに考えるのはいいが、特別支援学校と特別支援学級と通常学級と、指導環境は非常に違うのかなと思う。そのような中で、十分な活動の機会を与えていないのではないかということが、このまま現場に下りて行ったときに、障害の特性等を十分理解していない通常学級のレベルで、必要以上なこと、やれること以上のことをやらせて、けがをしてしまうというようなことも心配されると思うので、これを進めると同時に、指導環境の整備が必要になってくる。特に体育の場合は、それが必要なのではないか。

○ 特別な支援を要する子供たちが将来にわたって自立していくということを、どう支援していくかということは、最大支援から最少支援へというのが特別支援学校でもよく言われていて、支援がなくても出来るようになるような支援という、まずは手厚い支援をしながら、最終的には自立していくことも大切なので、そのような子供たちの発達や程度に応じて徐々に変えていくという考え方が大切ではないか。

■体育・保健体育で行うことによる意義等について
○ 知的障害のある子供に対する保健学習は、危険回避能力や危険予知能力であるとか、自分の発達や成長について事前に知っておくとか、そのような健康について事前に学んでおくといった意味において非常に意義があるのではないか。

○ 障害者がスポーツをやろうというベクトルはあるが、もっと健常者が障害者スポーツを経験する機会を増やしていくと、そのような考えや意識も広まっていくのではないか。特にコミュニケーションを高めるという意味でも、障害者スポーツのような、身につけるというよりも、それを手段としていろいろなものを学ぶ機会と捉えると体育の意義の一つとして考えられるのではないか。

○ 体育の場合には、特に体を動かす技能というものを求められるので、それは難しいでしょうということになるのだけれども、よく考えてみると、以前の学習指導要領もそうであるが、我々は観点別評価をやっている。つまり、技能は1 かもしれないけれども、戦術を考えたり、いろいろなものを見たり、非常にするどい分析をしたり、いわゆる興味関心があって、いろいろなゲーム分析をしたり、我々は多様な関わり方を大事にしましょうと言っているわけで、多様な関わり方がある。いろいろな関わり方に対して評価をしていこう、そのようなことでいえば、今のそれこそ技能だけに焦点化して考えるという考え方ではなくて、いろいろな観点でその子のいいところを評価していくといったことが大切ではないか。

○ 得意な分野をどのように伸ばすのかということでは、ダンスの意義は高いと思われる。ダウン症の子供で、音楽に触れるとすぐリズムに乗って動く子供がいた。身体の内面から沸き立つような純粋な喜びを表現できるという点で役に立っているのではないか。

○ 特別支援学校とか、特別支援学級にいる子供たちが、将来に向いてどのように運動、スポーツと関わっていくかという、そこが一番大事であり、そのためのアダプテッド・スポーツも含めた教材等を体育として検討できるのではないか。

○ この学習指導要領の改訂が行われて学ぶ子供たちは、オリンピック、パラリンピック、特にパラリンピックのレガシーを活用して生涯体育を実現していく子供たちであるということ。そうすると、そのタイミングでいうと、今回の指導要領の改訂の中で、特別支援教育の観点から学習指導要領の内容を身に付けるために配慮が必要という方向だけでなく、スポーツにはスポーツそのもの、今持っている力で、みんなが楽しめるという文化的価値があるのだということを、体育・保健体育の部分で何か示すことができるのではないか。

■具体的な支援の方策について
○ 障害のある子供たちにとって学習における困難さというのは様々ある。情報入力で見えにくいとか、聞こえにくいとか、あるいは情報統合などの色の区別が困難であるとか様々な困難さを抱えているのではないか。そのような点で指導の方法とか教材の在り方を、まず工夫しなければならない。特別支援教育などでは身近にICTがかなり活用されている。そのようなICT の活用なども含めて検討できるのではな
いか。

○ 理解に時間が掛かったり、すぐ忘れてしまう、なかなか記憶に残らないこともあったりするので、視覚支援、ユニバーサルデザインがいわれているが、視覚支援をしながら、運動の姿はすぐ消えていくので、ICT にしても消えていくので、写真とか掲示をずっと見せながら、活動の動きも全体を見せながら、特別支援学校でよく取り組まれていることを小・中・高等学校でも手立てとして取り組んだり、あちらとかこちらも分かりませんから、指さししてとか、動きを見せてとか、そのような手立て等を取り入れていくことが一つあるのではないか。

○ 特別な支援をする子供たちにとってみると、運動は難しかったり、ルールが複雑であったりと、いろいろな配慮が必要。必ずしも一緒にすることはできなくても、課題と条件と評価のような形に分けていくと、課題を変えるのか、課題は同じだけれど条件はやさしくするのか、あるいは課題と条件は同じだけれど評価のところはやさしくするとか、いろいろな配慮の仕方があると思うので、そのようなことも踏まえながら、今、障害者スポーツのことをアダプテッド・スポーツとよくいうが、アダプテッドというのは適合するとか適応するということなので、スポーツの方に子供たちを寄り添うように、近付けるのではなくて、子供たちの実態にスポーツが寄り添っていくような、そのような教材やルールの工夫等もしていくことも一つの支援かと思う。

■教員の養成、教員の資質向上の視点として
○ 特別支援学校では具体的に多様な実践の積み重ねが行われてきているけれども、特に若い時期に特別支援学校に体育の専科の人たちは行って、その後、小・中・高等学校に赴任するとき、そのような経験、情報の持ち込みがうまくできていない部分があって、それを具体的に共有していくような手立てを検討する必要があるのではないか。

○ 特別支援教育について具体的な手だてを示すことは、指導者にとっては非常に大事であると感じる。小学校のことを考えると、通常の学級と関わるような場面が多くなると、なおさらともに学習する場面における配慮について、通常の学級の先生も勉強するという機会も、もっと持たなければいけないのではないか。

○ 大学の中でこのことに関してきちんと指導して、体験していくことが必要なのかと思う。うちの大学は介護実習の中に特別支援学校を入れてはいるが、ただ入れているだけで、きちんとした内容の整備をしていない。あるいは免許更新講習とか、様々な機会で特別支援の子供たちに対する対応を、体育としてもきちんと捉えてやっていく必要があるのではないか。

■支援を充実させるための連携について
○ 特別支援学校は、かなり丁寧に実施している。子供たちに対応される先生方はチームを組んでいるので、子供たちの障害に個々に応じた情報は共有されて、そこでいろいろな配慮をされる。それが小学校のケースだと、学級担任だけで実施すると、
今度その子の情報をほかの担任となかなか共有しにくいと、お互いのサポート体制がつらくなるところが逆に出たりする。そういう意味での教員サイドの情報共有のシステム、それから子供たちの中でのお互いの理解を促すようなしつらえ、そこをうまくかみ合わせておかないといけないのではないか。

○ 意外と通常の学級の先生と特別支援の学級の先生との間の交流というのは、あるようでない。具体的に言うと、職員室そのものが離れていたりすることもあるので、十分な意見交換があって共通の理解をしながら何かに取り組むというところまでの時間が十分取れていないところもある。

○ 障害や慢性疾患を持っているお子さんたちの状況はみんな違う。医療では、一つの病気の程度に応じてプロトコール、ガイドラインを作り、日本全国一定の基準で対応することに努めているところ。医療提供者側と教育の先生方とが密接な連携を取る必要があるのではないか。

■学習指導要領の改善・充実にあたっての留意点について
○ 総合的な時間、あるいはほかの時間を使って、これはやれるのだけれども、実は学校体育という学習指導要領上の中で教材を自由に組み替えることが、教材自体はもちろん可変性があるということで、子供たちに合わせてという範囲なのだけれど、あくまでも現行の学習指導要領上は健常児に合わせた発想なので、そこをどのように特記事項として書き加えていくかというテクニカルな問題があるのではないか。

○ 共生協働インクルーシブ教育と叫ばれている中、支援の方策を示していくのはとても大切なこと。支援を要する子供たちというのは、種別もそうだが、多岐にわたっている。そのような中で、どのような子供たちを想定して例示の中に盛り込んでいくのかということでは、慎重にしていかなくてはいけないのではないか。

○ 困難さということでは同じであっても、教科に落とされたときの困難さとは、又少し違うということだと思う。ただ、おおむねここで総則ではこのようなことが事例としては挙げられて、それをどのように体育・保健体育の方には落とし込んでいくかということだと思う。

○ 周囲の子供たち、支援が必要な子供たちだけではなくて、周囲の子供たちに理解できるような内容が、どこかに、入っていると、もっと健常者の子供も、自分に出来ることは何だろうというところで考えることができるのではないか。

2.体育・保健体育におけるアクティブ・ラーニングの三つの視点を踏まえた、資質・能力の育成のために重視すべき学習過程について

○ 運動領域、体育に関しては、もう既にアクティブ・ラーニングをしてきたのではないか。これは教科横断的に出てきたこと、体育、運動領域でもこれから話をしていくことは必要だと思うのですが、教員からすると、今までやってきたことに、更にアクティブ・ラーニングという言葉が加わったことで、現場の混乱が予測されることもあると思うので、このあたりはきちんと整理をして落とし込んでいく必要があるのではないか。

○ 保健の自尊感情とレジリエンスについて、1 教科で書いたとしても、日本人の特性というか、性格、気質というか、自分の捉え方というか、大きなことになってくるので、総則とかもっと大きなレベルで、目標にすることは大事なのではないか。

○ 対話的な学びについては、競争と協働というところを実際の活動の中で、友達との関わりの中、それから教員との関わりの中で深めていける、アクティブ・ラーニングを今までも実践してきた教科なのではないか。

○ どのように学ぶかという考え方としてアクティブ・ラーニングがあるのであれば、その考え方の一つに、どのように学ぶかの前と後ろ、学びの方向性をきちんと示しておくこととか、それから学んだ後の成果をきちんと子供にフィードバックしてやることとか、そのようなことがとても大切なのではないか。

○ 深い学び、より主体的な学びに向かわせるために、一つの授業の中でもきちんと今日学ぶ内容、目当てを提示することであったり、それから授業の終わりに、学んだことをしっかりフィードバックさせていくことであったり、そのようなことがセ
ットになって初めて効果が出てくるというか、学力が高まり、体力が高まり、授業の質が高まっていくのではないか。

○ 体育の場合は、技能ももちろんそうですけれども、思考判断であったり、態度であったり、いろいろな知識であったり、そのような観点から子供たちの伸びを評価して生徒に返していくことが、さらなるアクティブ・ラーニングの深まりになっていくのではないか。

○ アクティブ・ラーニングとなると個ではなくて、ほかの子供たちと一緒に協力、協働して何か学んでいくという、その学び方を学ぶということにも大事なところがあるのではないか。

○ アクティブ・ラーニングが目的化するのではなくて、示されている資質・能力を身に付けさせる方法としてアクティブ・ラーニングがあるのだということを、どこかで発信しなければいけないのではないか。

○ 例えば対話的な学びというのは学習形態のこと。要するにグループ学習だと、対話的な学びというものは当然生産される。何か関係性というものを常に重点に置いた学び方が、指導の工夫としては出てくるのではないか。

○ 深い学びというのは、習得、活用、探究というと、何か習得して活用して探求するのだというような流れが出てきた。プロセスの要素の中で、問題発見、解決を念頭に置くということはどういうことなのか、その辺のところは、習得、活用、探究という学習のプロセスの中で、どのような要素がここでは強調されていくのか、その辺の整理はしておいた方がいいのではないか。

○ アクティブ・ラーニングのそれぞれの要素というのは同時に出てきて、いわゆる時間性というか、順序性で考えられるものではないのではないか。

○ ルール作りなどをグループで考えて、それを発表して実践に移すというような発表会など、自ら生徒たちが考える時間というのもアクティブ・ラーニングに通じるものがあるのではないか。

○ アクティブ・ラーニングの話が出たときに、学校内だけではなくて、地域との関わりとか、そのようなところも議論された。体育・保健体育といったところでも、そのような論点が、必要になってくる可能性があるのではないか。

○ 本来あるべき望ましい授業というものは、目指しているのだけれど、なかなか十分うまくいかない中で、アクティブ・ラーニングという考え方を切り口にして、よりよい完全な授業を目指そうということなのではないか。

○ アクティブ・ラーニングの本質は何かというと、受け身的な学習が、もっと積極的に、主体的に、創造的に学ぶ姿こそが本来の学びにつながっていくという論理だろう。

○ 質の高い効果的なアクティブ・ラーニングを学校に定着させるのかということを考えたときに、体育の授業で今、出来ていないと思うところは、目標をしっかり設定することと、その目標がしっかり到達できたかどうか、授業の終わりに振り返る学習を取り入れているかどうかというところなのではないか。

○ 今、アクティブ・ラーニングが求められるというのは、正に時代の趨勢で、特に先進諸国の中で日本が国際競争力を付けていく上では、これは必須の方法論だということは、日々仕事をしながら感じているところ。アクティブ・ラーニングの本質は何かと考えたときに、汎用力だとか応用力だということ、ここを確認しておかなければいけない。そのような能力を身に付けさせていくということだと思う。

○ 深い学びと、対話的な学びと、主体的な学びという、この構造の中で、資質・能力論がどう絡んでくるのかということを明確に打ち出していった方がいいのではないのか。

○ テーマとしてアクティブ・ラーニングのイメージという形にすると、「これがアクティブ・ラーニング」のような形で発信してしまうので、そのあたりが現場の先生への示し方として、あるいは基本的な考え方も、アクティブ・ラーニングの視点に立った学習過程、学習プロセスを考えるときの基本的な考え方なのではないか。

○ 深い学び、対話的な学び、主体的な学び、アクティブ・ラーニングが実現していると、このような現象が起こってくるという例示項目で挙げていただけると、もう少しイメージが分かりやすいのではないか。

○ 保健のイメージで、主体的な学びのところ、健康に関心を持ちというところがさらっとし過ぎているのではないか。もう少し関心を持つということがないと、健康課題に取り組まないというところがあるので、例えば、自他の健康はもちろん、社会の健康課題に高い関心を持ちとか、もう少し強く言った方がいいのではないか。

○ 対話的な学び以外の深い学びとか、主体的な学び、もちろん他人と協働でということもあるのかもしれないが、自分で考えて課題解決していくような一人で活動するようなものもアクティブ・ラーニングとして例示されていることは、大きな意味があるのではないか。

○ 対話的な学びの中で、取組に対するよさを認める、これが自尊感情形成の例だということとか、あるいは自己の健康の保持、増進や回復に生かすということはレジリエンスだと言われたけれども、自尊感情とかレジリエンスに関しては、例えば主
体的な学びでも関わるのではないか。

○ 自分の学習を振り返って、自分の学習のよさを確認したりするというようなことは、自尊感情の形成に関わるし、それから、主体的な学びの粘り強く取り組むなどというのも、これはレジリエンスに関わるもの。自尊感情とかレジリエンスというものを、どのようにここで捉えるのかということについて共通理解をしていく必要があるのではないか。


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