資料1-1 第1回体育・保健体育、健康・安全ワーキンググループにおける主な意見(未定稿)

体育・保健体育,健康,安全に関する現状と課題について

○ 現行の学習指導要領は,指導内容を盛り込んだということが大きな特徴であった。また,小中高と4・4・4制を体系化したところであるが,そのことも踏まえ,現状の課題を整理しておく必要がある。

○ 現状の子供たちの課題としては,例えば,小学校の段階でロコモティブシンドロームの問題,中学校期では運動習慣の二極化,特に女子の問題等,幾つかの課題が大きく出てきている。

○ アクティブ・ラーニングの視点については,体育の実技,運動学習の中では「かかわる・わかる・できる」という三位一体の学習活動を実施している現状を踏まえると,これはアクティブ・ラーニングの視点を踏まえた取組を先取りしたと考えられるのではないか。ただし,OECDの学力論に沿って言えば,具体的にその中から日常生活に本当に発展できたのかという問題を考えておかなければいけない。

○ 体力の下げ止まりと言われている中で,日常生活の中で運動やスポーツを楽しむということが本当にうまく実現できているかどうかということも課題として整理しなければいけないのではないか。

○ 団塊の世代の教員が退職する中,若い教員,経験の浅い教員が多くなる現状がある中,学習指導要領,生きる力,体育としての体力も含めて実現する授業を実践していくかということは,学校現場としては大きな課題。

○ 現行の学習指導要領は,指導内容が体系化されて,教える内容がとても明確化されたところであるが,果たしてその内容が北海道から沖縄まで,等質で浸透しているのか疑問を感じる。体育の場合は非常に指導者によって授業の質にばらつきが出ているのではないか。教員は教科の特性は感じているとは思うが,教科としての本質的な意義を現場のレベルで認識して授業に取り組んでいくことが課題ではないか。

○ 高等学校では,女子の運動率が低調というような課題が特にはっきりしてくる。自分から運動しようということよりも,ほかに楽しいことがあるというなかなか運動への意欲ということも見られない部分がある。しかしながら,体育の授業でできなかったことができるようになったといったことに対しては意欲が増してくるといった実感はあることから,そのような視点をしっかりこれから意識して授業作りすることが重要。

○ 体育の取組については,校種に特化する傾向があり,校種間をどう接続するのか,つながりを持たせるのか,見通しを持たせるのかが重要である。最終的には卒業後もスポーツと豊かな関わりを継続していけるのか,ライフステージに応じてスポーツとどう関わっていくのかというところが重要な視点であるのではないか。

○ 現状分析とともに,今後,新しく求められるような,現代的なニーズとか,今日的な課題についても対応していくことが必要ではないか。

○ パラリンピックについて強調されているが,特別支援学校や特別支援学級の体育の授業の中で体育が果たす役割は大きいと考える。健常者に障害者スポーツを教える機会をもっと増やしてもいいのではないか。健常者がもっと障害者スポーツを理解すれば,よりよい共生社会を築けるのではないか。

○ 日本の体育は世界的にみて,全ての子供たちが一定の時間体育の授業において運動するという,非常に特徴的な取組をしている。心と体は一体であり,体を動かすということは,頭,あるいは心を活発化することにもつながることから極めて重要ではないか。

○ 健康教育の視点から,子供が大人になっていく過程において,自分の体を守る,知識を持って,更に自分の健康を増進するという目的とすると,それを達成するために教えている内容が少な過ぎるのではないか。これでは子供が大人になっていく過程において自分の体を守るだけの知識が与えられていないのではないか。 保健の分野の教育をもっと,子供が大人になる過程において必要な知識を与えるべきではないか。

○ 女性アスリートの無月経から疲労骨折という問題もあり,女性アスリートは現役を終わってからの人生の方が長いことを踏まえ,スポーツと健康についての体と心の教育は大切。また,男女一緒に教育を行い,一緒の気持ちで成長していけるような環境を作ることも大切ではないか。

○ 体育の存在意義というのは,いろいろな科目に対してのベース教育になるのではないか。体育をするためには体が必要で,それが食育,家庭科にもつながり,オリンピック・パラリンピックの教育をするといった意味ではいろいろな国の現状を知る社会科の授業,平和とか感謝ということに関しては道徳教育,豊かな環境があるからこそスポーツができるといった意味では理科,そして,性教育といった意味では生物,というようにベース教育になる体育であることを踏まえて教育を進めていくと,いろいろな視野を広く持った子供たちが育つのではないか。

○ 中学生とか,高校生になると女性があまりスポーツをしないという現状があるが,スポーツは,身体能力が高い低い関係なく,遊びながら体力を向上できる,参加できるという視点が重要ではないか。 ○ 体育が全体のベースになって,いろいろな教科につながっていると考える中で,共通性と差異化をしっかりと整理する必要があるのではないか。

○ アクティブ・ラーニングを進める上では教員の資質というのが非常に問題になるのではないか。

○ ダンス教育に限ってみれば,運動会でおしまい,振り付けダンスでおしまいというような実際がある中,指導要領の解説で書かれている趣旨がどれだけ浸透しているのかということが課題である。

○ 体育学習,保健学習,健康教育を進める上で幼小中高の校種間の接続を踏まえた取組はとても大切と考える。

○ オリンピック・パラリンピックの教育推進校の指定を受けて実践研究する中で,オリンピック・パラリンピックのアスリートに来てお話をいただいたりすると,子供たちの目の輝きが違うということがある。子供たちが一生懸命その種目に取り組んで,成果があるということを感じる。

○ 健康教育の課題は山積しており,喫緊の問題では,心の問題,いじめ,自殺など,本当に減らない状況がある。また,女子の痩身志向が,貧血や大人になってからの生殖の問題などになるのではないか。がんについては,今3人に1人がかかるともいわれており,そういう現状の中で,がん教育についても,子供たちに学ばせていかなければいけないのではないか。

○ 子供たちにスキルを身に付けさせる必要がある保健の内容というのは山積しており,内容を精査しながら,限られた授業時間の中でしっかりとした実践力まで養えるぐらいの保健の授業ができるよう改善する必要があるのではないか。

○ 健康教育は,教育課程全体で行うことになっているが,保健や安全のことも確実に指導していくこととなると,教科が核になると考える。保健でなければ身に付かない資質・能力とは何かということが明確にしていくことが重要ではないか。

○ 現状の成果や課題を議論する上で学術知見,エビデンスに基づく分析,課題ということも次期改訂に向けては非常に重要。

○ 幼稚園と小学校の連携において,運動を通して健康の大切さを理解するといった視点で改善の余地はないのかという検討が必要ではないか。

○ 現場の教員から体力や運動習慣の二極化の話はよく聞くが,それに加えて,小さいうちから一つの種目に搾って取り組む子供が増えているため,運動が得意な子供でも,体力の偏りや運動技能のバランスの悪さが以前より拡大しているのではないか。 ○ 小学校では,個人的に頑張られている先生は多くいるが,それが学校として機能していない状況や,中学校では,自分の専門種目に重きをおくことが多い状況であり,教員の意識が自分の専門種目だけではなくて,保健体育科として全ての種目を満遍なくやるという意識が足りないのではないかと感じる。

○ 小中高の連携という部分については,小学校の先生が中学校の授業を見る機会,逆に,中学校の先生が小学校の授業を見る機会というのが少なく,それぞれ異校種でどのような授業が進められているかわかない中で授業を進めているというような現状がある。

○ 保健の指導に関して,個々の家庭環境に非常に差があり,指導する内容を,どのように指導していけばよいのか,何に配慮すればよいのかという観点において,現場で非常に苦慮しているとの話がある。

○ 体育の中で保健の知識を持って体育の指導もするということは非常に有効であると考えられることから,保健体育科の教員がそのような認識を持って授業に臨むことは重要ではないか。

○ 小さい頃から特定のスポーツや部活を行っている人は,必ずしも大人になってから運動を続けてなく,体を使った遊びを多く行っている人,いろいろな運動,スポーツの経験がある人は,大人になってから運動を続けており,その根底には,運動の面白さとか,がおっくうではないといった意識が非常に強いのだろうということが最近の研究でもわかってきている。

○ 体育の授業作りは,先生方が非常に一生懸命やっていて,こんなにすばらしい体育の授業をやっている国はなかなかないと思うが,その後の生涯スポーツにつながらないというところの一つの問題点は,総則に書いてあるような教育活動全体を通して行うという日常化,生活化の部分や部活の在り方も含めて,地域とか家庭との連携という内容が非常に薄いではないか。

○ 幼児期との連携は非常に大切で,発育発達の観点からでも年中から小学校3,4年生ぐらいまではほとんど同じ発育発達段階なので,幼児期から体育を考える必要があるのではないか。

○ 教師の資質・能力の問題や保健と体育の連携をどうしていくのかという問題,指導内容の問題,系統性の問題だとか,あるいは内容そのものが本当にいいのかという問題についてエビデンスを集め検討する必要があるのではないか。

○ 2030年の社会像をある程度イメージしておかなければいけなく,特に体育に関わるような社会像で言えば,高齢化率が25%超えてくる社会でこれからの子供たちに何が求められるのか,どういうことを知識として知っていて,どういうアクションを起こせるのかということは意識する必要があり,地域そのものがどういう状態なのかということを少しイメージして,その中で,スポーツがどういう役割,あるいは健康の問題がどういう意味を持つのかということは,しっかりと意識しておかなければいけない。また,レガシーというところに観点を置いたとき,体育・保健体育という教科はオリンピック・パラリンピックが終わった後を見据えて,どういう学習内容と指導内容を設定していくのか,ということを十分に踏まえて検討していく必要があるのではないか。

○ 子供たちの生活の様子や家庭環境もかなり変わってきており,また,保護者についても,非常に学校教育に協力的になってきている。それから,地域の方の教育に対する関心が非常に高まってきている状況もある。体育については,今の子供に合った授業展開,指導法の工夫をしていく必要があると考えており,「またやろうよ」という気持ちにさせるような授業を学校も先生方も工夫していく必要があるのではないか。

○ 報道やメディアによる本来の健康教育を埋めるような情報が社会に溢れ,極めて多様化,大量化している。ネットで流されるような情報も含めて国民が直接そこに触れたときに客観的に正しい判断ができるような基本的な学校教育が不可欠と考える。

○ 子供は確かに変わってきているとは思うが,発育,発達の途上にある子供を対象とする学校教育では「成長の段階」という絶対無視できないことがあり,全て合理化して,社会の変化と合わせられるかというと,決してそうではない。それを踏まえ,どのように体育や保健の教育の在り方に折り合いをつけ,教育の時間がない中で,何を誰がどのように教えるのかというところにつなげていかないと,次の10年間,生きる力を涵養するための体育及び保健の教育にはならないのではないか。

○ 保健学習の中の生活習慣を学習する場面において,小中高と系統的に,例えばゲーム依存とかネット依存にならない健康との関連で学習することが重要である。10年前にはなかなか想像できなかったような課題がある中,10年後を見通した検討をする必要があるのではないか。

○ カリキュラムを社会に開かれたものにしていくということは,地域の課題であるとか,実際の現実の問題に開かれたカリキュラム,つながっていくカリキュラムにするとしたときに,地域の求める課題はというのは一致しないという問題もある。現行の指導要領は,指導内容を明確化しているが,それは果たして現場のニーズに合っているのかという問題もあり,質的に自分たちで工夫してみたいとか,もっと自分たちでカリキュラムをベースにして授業を作っていきたいというような,起爆剤になっているのかどうかということも精査する必要があるのではないか。

○ 育成すべき資質・能力,三つの柱は,それをどういうふうに機能化させていくのか,働かせていくのかということが重要ではないか。

○ 生涯スポーツ,スポーツライフということを考えたときに,学校期におけるスポーツ経験,あるいは健康に関する知識の経験というのがベースになっていくが,そこで青少年期モデルとして完成させてしまうということを教育者はやりたがる。「達成したね,よかったね」で終わりではなく,もう少し余地を残すと,その余地の中に何か工夫したり,もう一回やってみたいとなったりとか,いろいろなモチベシーョンというのが起きるので,この関連性を体育がどう引き受けていくのかというところで考える必要があるのではないか。

○ オリ・パラの問題については,イベントというのは一つの核であることは確かであるが,その後の見通しというものをちゃんと考えた学習指導要領の作成が必要と考える。 ○ 幼稚園から小学校への継続で一番の課題は,幼稚園から小学校という4年なのか,6年なのか,5年なのか,その区切りの仕方とかや学ぶべきことが少し明確になると見通しのある指導ができるのではないか。

○ 1人の先生は本当に頑張って一生懸命教材研究もされているが単独で終わってしまって,学校全体に広がってこない。特に小学校は,学校全体を体育・保健体育,健康教育も含めてコーディネートできる方がいるとよいのではないか。

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