教育課程部会 社会・地理歴史・公民ワーキンググループ(第14回) 議事録

1.日時

平成28年6月13日(月曜日)17時00分~19時00分

2.場所

文部科学省 旧庁舎 6階 第二講堂
東京都千代田区霞が関3-2-2

3.議題

  1. 社会・地理歴史・公民の改善充実について
  2. その他

4.議事録

【原田主査代理】  定刻となりましたので,ただいまから,中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会社会・地理歴史・公民ワーキンググループの,本日は第14回ですが,開催いたします。お忙しい中を御参集いただきまして,誠にありがとうございます。
本日は,主に高等学校の「地理歴史科」等について御議論いただく予定としておりますので,その関係の方々にお集まりいただきました。また,進行は前回と同様に私が務めてまいりますので,よろしくお願いいたします。
それでは,最初に,配付資料の確認をお願いします。

【大内学校教育官】  失礼いたします。配付資料の確認をさせていただきます。本日は,議事次第に記載しておりますとおり,配付資料の1から,資料15まで,それから参考資料といたしまして1から19まで,それぞれ御用意させていただいております。また,過去の資料でございますとか,関連する資料につきましては,机上の方に御用意させていただいております。必要に応じて御覧いただければと思います。
また,不足等ございましたら,事務局の方にお申し付けください。
以上でございます。

【原田主査代理】  これより議事に入ります。本日は,報道関係者より,会議の撮影及び録音の申出があり,これを許可しておりますので,御承知おきください。
さて,本日は主に本ワーキンググループとしての取りまとめ(案)などについて,高等学校の「地理歴史科」等を中心とした意見交換を行いたいと考えております。議事の流れとしましては,事務局から資料に基づき御説明いただいた後に,議論の内容ごとに意見を伺いたいと思っております。
これに先立ちまして,高等学校部会の議論の状況につきまして事務局から御説明をお願いいたします。

【大杉教育課程企画室長】  失礼いたします。高等学校部会評価の在り方,資質・能力の育成の在り方,全般的に御議論いただいておりますけれども,特に今回,科目構成の大幅な変更がかなりございます。当ワーキングで御議論いただいております地歴・公民のほか,例えば国語科あるいは外国語科,それから情報科。それから,大幅ではございませんけれども,家庭科あるいは数学においても科目の新設なり見直しということが議論されております。また,教科横断的なということで,「理数探究」,あるいはその「理数探究」の誕生に伴う総合的な学習の時間のさらなる充実のための見直しということで,かなり多くの教科を見渡した形で科目の構造の見直しということが進んでいるところでございます。
そうした中で,参考資料18を御覧いただければと思います。高等学校における教科・科目の構成及び単位数ということで,最終的には各教科の御議論を踏まえながら,高等学校部会あるいは教育課程部会教育課程企画特別部会で高等学校の単位数の全体像をデザインしていくことになりますけれども,その方向性について御議論いただいたペーパーが参考資料18でございます。
参考資料19には,少しめくっていただきますと,様々な高校の科目履修のイメージの現状が付いているところでございます。例えば1ページ,2ページ目辺りは,主に大学進学を希望する生徒が多い文系普通科の履修イメージでございますし,3ページ目は理系普通科の現状でございますし,5ページ目は就職希望者が多い普通科の履修イメージの現状,あるいは更におめくりいただきまして,7ページ目が専門学科の履修イメージ。さらに,10ページ目には学び直しということに重点を置いた高校の履修イメージということで,いずれも様々工夫を凝らしながら,ただ,履修イメージとして余裕があるという状況ではないところでございますので,そうした各高校のカリキュラムの現状ということも踏まえながら,全体の科目構成単位数を考えていく必要があるということでございます。
参考資料18にお戻りいただきますと,現状ということで,御承知のとおり,高等学校は74単位が卒業に必要な単位数ということ。そして,必履修科目,共通必履修,選択必履修でございますけれども,減単しない場合で最低38単位ということになっているところでございます。
1枚おめくりいただきますと,2ページ目に卒業に必要な単位数,履修単位数の現状ということで,調査の結果を載せさせていただいているところでございます。
こうしたことも踏まえながら,新たな科目の設置等を踏まえた教科・科目の構成及び単位数についてということが3ページ目からでございます。
卒業までに習得させる単位数については,現状と同じく74単位ということ。
それから,必履修科目につきましては,現行の単位数を維持するということを前提に,各教科の枠の中で考えていくということ。そして,選択科目につきましては,マル1,マル2,マル3とございますけれども,各教科の必履修科目との関係や履修順序,生徒の進路に応じた選択を可能とすると共に過大にならないようにすること。現行の各教科における科目の履修状況を考慮して単位数を定めるという,まずは大方針ということでございます。最終的には,教育課程部会において,各ワーキングの御議論を踏まえながら具体的な単位数を定めていくということになりますけれども,まずはこうした大方針ということでございます。
それから,(3),御参考までに,今回,「理数探究」というSHHの活動なども踏まえながら,科学的な探究を主体的に行う時間というものが創設される予定でございます。これと総合的な学習の時間と課題研究ということについては,ある意味高等学校における探究の総仕上げということで捉えまして,次の4ページ目の中ほどでございますけれども,具体的には「理数探究基礎」と「理数探究」ということになりますけれども,この履修をもって総合的な学習の時間の履修に代えることができるという位置付けにしていくということ。また,探究の総仕上げということを位置付けるために,高等学校の総合的な学習の時間については,総合的な探究の時間という名称変更を考えてはどうかということ。また,さらなる充実のために,高等学校における共通に活用できる教材を作成するということも検討されているところでございますので,御参考までに紹介をさせていただきます。
それから,専門学科における教科・科目の履修については,現状を踏まえて対応するということでございます。
以上,高等学校部会の主に科目構成・単位数に関する議論の状況について御紹介をさせていただきました。ありがとうございます。

【原田主査代理】  では,続きまして,5月18日に開催されました高等学校の地歴・公民科科目の在り方に関する特別チームの議論,及び社会・地歴・公民ワーキンググループにおける公民関係の議論の状況につきまして,資料を含めて事務局から御説明をお願いします。

【梶山主任視学官】  それでは,私の方から御説明させていただきます。参考資料5というものがお手元にあろうかと思いますので,参考資料5以降の資料を御覧いただければと思います。
まず,高等学校の「公共(仮称)」でございますが,「公共(仮称)」の改訂の方向性につきましては,本ワーキンググループの特に公民を中心に御検討いただいているグループにおける検討の状況というものを特別チームの方でも御議論いただいたところでございます。基本的には,この方向性というものを御覧いただいたところでございますが,二つはぐっていただきまして参考資料7を御覧いただければと思います。前回,参考資料5に関して,様々な内容が書いてあるけれども,この内容が具体的にどのように教科の実態につながっていくのか,イメージがなかなかわかないという御意見も多かったところでございます。それに対応いたしまして,前回のワーキンググループにおきまして,「公共(仮称)」というものに関して三つの柱で考えているわけでございますが,その三つの柱においてこのような指導が考えられるのではないかという実例をこちらの方で御検討いただくということでいただいたところでございます。こちらが参考資料7でございます。
併せまして,参考資料8を御覧いただければと思います。こちらは,本日御議論いただきます地歴系のところでも同様の御意見を,特に歴史系に関して頂いたところでございますが,公共というものにつなげて,新選択科目である「倫理(仮称)」であったり,「政治・経済(仮称)」というものを考えた際に,その関係性というものに関して若干分かりにくいところがあるのではないかという御意見を特別チームから頂いております。そのために,新選択科目の「倫理(仮称)」というところを御覧いただければと思いますが,原典も活用し様々な先哲の考えを手掛かりとして,哲学に関わる対話的手法も活用してというような,公共との違いみたいなところを出させていただいているところ。それから,右でございますが,「政治・経済(仮称)」についても,「政治・経済」の特質を総合的・一体的に捉えると共にグローバルな視点をより重視してというところを追加で入れているところでございます。
それに併せまして,参考資料9-1,9-2も関連のところの修正を図り,今,最終の確認を頂いているところでございます。
また,参考資料10を御覧いただければと思います。参考資料10は,地歴科,それから公民科を含めまして,特別チームにおいて御議論いただいたペーパーでございます。
そもそも新必履修科目と新選択科目について,地歴科・公民科でどういう大きな共通点,説明ができるのだろうということで,新必履修科目の上の横の枠を見ていただければと思いますが,現代社会の諸課題の解決を視野に入れて考察していく。各科目について,主として「空間」「時間」及び「現代社会の構造等」に着目して見ていくようなところが新必履修科目ではないかということ。
それから,その下の新選択科目というものに関しましては,必履修科目で育んだ理解とか技能を用いて,より専門的な視野から広く深く探究していく。このようなところから,それぞれの科目というものを考えていくということについて御提案させていただいているところでございます。
1点,名称でございます。下の枠のところを御覧いただければと思いますが,「地理歴史科」については,新必履修科目の名称としては,両者を習得することによって,当該教科の高等学校における目標を達成するために必要とされる資質・能力を育む科目として,両科目に「総合」を付すということと共に,生徒の興味・関心や進路等に応じて「総合科目」を基盤に,より専門的な視野から考察を深め,探究を行う科目については「探究」を付すということでどうかということ。
それから,2番目,公民科につきましては,自立した主体として他者と協働して社会に参画し,公共的な空間を作る主体を育むことを目指す科目の内容を端的かつ適切に示すということで「公共(仮称)」とすると共に,選択科目につきましては,「地理歴史科」と同様に探究を行う科目ではございますが,学習対象である倫理については「探究」というものがその本質的な内容の一部であることから,「倫理探究」といった科目名はなじまないのではないかということ。また,「政治・経済」のみに「探究」を付すということは,同一教科に置かれる同一の性格を持つ科目の名称について,混乱を生じさせるおそれもあるのではないかというところから,「倫理(仮称)」,それから「政治・経済(仮称)」ということで行ってはどうかということ。こちらについても御議論いただくことにしておるところでございます。
特別チームにおける「公共(仮称)」,それから全体の御議論について,以上でございます。

【原田主査代理】  ありがとうございました。
それでは,本日御議論いただく内容に移ります。
初めに,高等学校学習指導要領における「地理歴史科」のうち,歴史系科目の改訂の方向性について御意見を交換していただきたいと思っています。これまでの議論を取りまとめ(案)に反映し,整理していただいておりますので,事務局から,本資料及び関連するこれまでの資料について,主に変更点を中心に説明をお願いいたします。

【大内学校教育官】  失礼いたします。
それでは,お手元の方に,この後,御入り用になります資料としては,資料7,それから資料8-1から資料11までがメーンとなります。資料7,今,主査代理の方から御紹介いただきました本ワーキンググループにおける取りまとめ(案)につきましては,先週の金曜日の時点で各委員の先生方にメールで送付させていただいております。その送付させていただいているものの資料を机上の方にも御用意しておりますので,御参考になさっていただければと思います。
まず初めに,資料8-1をお手元の方に御用意いただけますでしょうか。資料8-1,高等学校学習指導要領における「歴史総合(仮称)」の改訂の方向性マル1(案)というものでございます。こちらにつきましては,前回,5月13日に開催されました本ワーキンググループにおきまして御議論を頂戴した中,あるいはその後に開催されました特別チームにおきまして頂いた御意見を踏まえまして,次のような箇所を主に変更してございます。
まず初めに,左側の方に18世紀後半から20世紀後半~現在という形での時期区分を示してございます。こちらと関わりまして,これは特別チームの方で頂いた御意見だったのですが,近代化,大衆化,グローバル化という歴史の転換を押さえていくという場合に,大衆化というのがいいのかどうかという御議論を特別チームの方でも頂戴いたしました。それと関わりまして,大衆化のところに大衆の参加の拡大という表現で整理してみてはどうかという御意見を頂戴し,一方で,近代化,大衆化,グローバル化という大きな歴史の転換の軸は維持しつつ,左側に示しております19世紀後半~現在というところで,「大衆の参加の拡大が社会全体の在り方を規定するようになりはじめた」という形での修正を行ってございます。
また,中央の部分でございますけれども,歴史の扉の部分です。三つの枠組み,近代化・大衆化・グローバル化という大きな単元の例の中の導入部分に当たります歴史の扉の部分でございますけれども,歴史をなぜ学ぶか,どう学ぶかというところで,従前でありますと,近代化以前の歴史,すなわち近世等をはじめとする歴史に係る内容の記載があったわけでございますけれども,こういった内容については,近代化と私たちの中で,いわゆる近現代の前史ということで,今回でありますと,17世紀前後の日本とアジア域内貿易という形での整理をさせていただきました。
一方で,歴史の扉のところですけれども,ここは扉としての機能をしっかり果たすという観点から,「歴史と現在~現代的な諸課題」という副題を立てまして,その一つ上の方にございますが,現代的な諸課題につながる歴史的な状況といったものについて,その諸課題の形成に関わる近現代の歴史を題材として,学び方をここで学ぶという位置付けに変えたところでございます。
それから,3点目でございますけれども,今,見ていただきました近代化,大衆化,グローバル化のそれぞれの副題のところでごさいますけれども,従前でありますと,問いを立てるような大きな問いの形で示してございました。こちらをより単元の内容を表す,分かるような形で,あるいは学ぶ学び方を示すような形でという御意見を頂戴しておりましたので,近代化と私たちにつきましては,社会構造の変化を考察するために。大衆化と私たちについては,個人・集団と社会との関わりを考察するということ。グローバル化と私たちにつきましては,持続可能な社会を展望するためにという形で,大きな問いを示しておったところを項目の副題という形で,再度,御意見を踏まえ,修正を図ったところでございます。
また,各単元で,あるいは考察を深める問いの事例,従前もございましたけれども,こちらの内容につきまして,御指摘を踏まえての修正を図っております。例えば,アジアやアフリカの変容というのが近代化と私たちの中の二つ目のマルに単元例として示されているんですけれども,こちらについては,中黒で従前結んでおりましたのを,「や」という少し開く形で示させていただいてございます。
また,大衆化と私たちの単元例につきましても,一つ目のマルで,現在のマイノリティに閉わる記述の御意見,御指摘を頂戴しておりましたので,こういったものを受ける形で社会運動の高まりという形での修正を図ってございます。
また,それ以外に,日本と世界の歴史を融合的に取り扱うという観点からの所要の修正。例えば,大衆化のところでございますと,二つ目のマルのところで日本の外交,あるいは考察を深める問いの事例ということで,なぜ世界大戦がおこったのか,日本はどう対応したかという形での記載を,ほかの箇所についてもございますけれども,所要の修正を図っているところでございます。
それから,各単元の最後の部分,まとめというところがございます。こちらについては,この資料8-1の一番下のところにアスタリスクで示されておるんですけれども,上記(まとめ)は,中学校までの既習事項を活用しながら,歴史の大きな転換が現在とどのように関わっているか考察する単元として構成することが考えられるということで,まとめ単元であるということを明確に示すような修正を図っております。
また,右側でございますけれども,取り上げられることが考えられる題材というところでございます。こちらについても,本ワーキンググループ,それから特別チームで御意見を頂戴しております。先ほど近現代の前史の取扱いのところでも御説明申し上げましたけれども,アジア域内貿易という言葉でありますとか,中央中段のところですが,教育という題材を挙げてございます。また,従前,ファシズムとか民族主義という表現も用いてございましたけれども,その範囲をきちんと規定する必要があるのではないかということから,ファシズムについては全体主義,民族主義についてはナショナリズムという形での修正を行っております。あと,ポップカルチャーについては見直しをした方がいいという御意見がございましたので,ここからは削除させていただいております。
主な修正点は以上でございます。
次に,8-2は,この「歴史総合(仮称)」を資質・能力ベースで示しておる資料でございます。こちらにつきましては,小・中・高を通じた資質・能力を育成するワーキングの方からの御意見も踏まえまして,特に中央左側に黄色で資質・能力というところがございます。その枠の中で一番下のマルのところでございますけれども,このマルは,学びに向かう力,人間性に該当するところでございまして,主体的に調べ分かろうとして課題を意欲的に追究したり,この後の「,する態度」は削除してください。追究したり,よりよい社会の実現を視野に世界とその中における日本の在り方について歴史的な観点から意欲的に追究しようとする態度ということで,主体的な社会参画あるいは実際のよりよい社会の実現に向けてという視点を,この「歴史総合(仮称)」をはじめ,関係する地歴科の中で盛り込んではどうかという御意見を頂戴しておりましたので,その反映をこちらの方でさせていただいてございます。
また,中央の「歴史総合(仮称)」の歴史の扉の部分,先ほど申し上げましたとおり,その位置付けを,各科目を学習する際の導入ということを明確にする観点から,現代的な諸課題の形成に関わる近現代の歴史を題材に,歴史を学ぶ意義や歴史の学び方について考察するということを明確化しました。この修正に合わせまして,次の下のところでございますけれども,近代化と私たちについては,日本とアジア域内貿易に関わる記述をこちらのほうに移動させてございます。
取り上げることが考えられる題材につきましては,先ほど御説明したとおりですので,省略させていただきます。
次に,資料9でございます。資料9につきましては,高等学校学習指導要領における歴史科目の改訂の方向性(案)ということで,「歴史総合(仮称)」と新選択科目である「世界史探究(仮称)」あるいは「日本史探究(仮称)」との関係性を示したものでございます。こちらにつきましては,特に「日本史探究(仮称)」に関わりまして,上から一つ目のマルのところで,世界史と同様に,地理的条件や世界の歴史に着目していくという点を加筆したところでございます。
また,資料10に参りますけれども,資料10におきましては,高校における世界史科目の改訂の方向性ということで,先ほど申し上げました中央の部分で,資質・能力に関わる所要の修正を図ってございます。具体的には,よりよい社会の実現を視野に入れてという形での,学びに向かう力,人間性の部分の修正を図ったこと。
それから,「世界史探究(仮称)」あるいは「日本史探究(仮称)」等で「歴史総合(仮称)」との関わりについて,特別チームあるいは本ワーキンググループにおきまして御意見,頂戴しておりましたので,その関係性を「世界史探究(仮称)」の緑色の部分に,「歴史総合(仮称)」を踏まえた前近代を学ぶ視座として,近代化以前の多様で複合的な社会,あるいは大衆化以前の身分や階層社会を学んでいくということを明記してございます。
同様に,ちょっと飛びますけれども,中央下のほうの部分です。今度は,近現代に関わる部分の矢印,緑色の部分について,「歴史総合(仮称)」で獲得した世界と日本に関わる総合的な視野,前近代の学習で成長させた歴史を考察し表現する力を活用していくという形での,前近代あるいは近現代に関わって,「歴史総合(仮称)」との関わりというものを加筆したところでございます。
また,各項目の中に赤枠・青字で探究例というのを加えてございます。例えば諸地域世界の歴史的特質につきまして,この探究例といたしまして,世界の諸文明と日本の縄文文化とを比較し,諸文明の特質をまとめたり,農民反乱・人の移動と気候の変化と関連付けて説明したりする活動という形で,日本史あるいは地理的な環境,地理との関わりといったものを念頭に置きながら探究していくという学習活動というのを加筆してございます。同様に,諸地域世界の接触と交流以下の各項目につきまして,探究例を加筆させていただいております。
最後に,従前,右側に取り扱う題材というものを示してございました。こちらにつきましては,特別チーム等の御意見も踏まえまして,用語の羅列的なイメージがあるのではないかという御意見,頂戴いたしましたので,「世界史探究(仮称)」におきましては,取り扱う題材としては示さないことといたしました。
最後に,資料11でございます。日本史科目の改訂の方向性の資料でございます。
基本的な修正箇所は,世界史と同様でございます。すなわち,資質・能力の箇所につきまして所要の修正を。また,「日本史探究(仮称)」と「歴史総合(仮称)」との関わりを,「日本史探究(仮称)」につきましては,矢印の赤色・赤文字で示させていただいております。例えば前近代を学ぶ視座としては,近代化以前の多様で複合的な社会,あるいは近代以前の東アジア等との交流,更に大衆化以前の身分や階層社会などというのを視座といたしまして,歴史の展開と資料,展開と解釈,展開と説明という形での項目を示させていただいております。
また,探究例につきましては,先ほど世界史で御紹介したのと同様に,日本と世界との結び付き,あるいは地理的な視点から融合的に探究していく例という形で,青字で加筆させていただいているところでございます。
最後に,参考という日本史科目の一番下のところでございますけれども,括弧で囲われておりまして,一つ目のマルの2文目に,継承や変化に着目して,近現代につながる各時代の展開や,我が国の伝統や文化への理解を深めるという形で,継承や変化に着目ということを加筆してございます。こちらにつきましては,本ワーキンググループにおきまして,現代につながる古代や中世の要素と,それから近代化の中で消えてしまっていくような古代と中世の要素等あるので,継承や変化に着目してという形で加筆させていただいたところでございます。
資料8-1から11につきましては,主な修正箇所として,以上でございます。
それから,資料7,本日,お手元の方にございますのは差し替え版というものと,6月11日付けメールにて事前配付いたしました資料の2種類あるかと思います。6月11日にメールで事前に送付された箇所からの変更箇所が若干ございますので,御紹介させていただきます。資料7の差し替え版の9ページから14ページが地歴関係の記載箇所でございます。
変更した箇所といたしましては,14ページ,一番最後のところでございますけれども,一つ目のマルの世界史に関わる選択科目「世界史探究(仮称)」に関わっての内容構成について記載したところでございます。先ほどの説明でも省略してしまいましたけれども,世界史に関わって,資料10で「世界史探究(仮称)」の一番下の項目で地球世界の到来というものがございまして,地球世界の到来の中で,従来ですと,ここの単元が概念として多元性というものを取り扱うということで御指摘,御意見,頂戴しておりましたが,多元化する一方で一体化していくという傾向があるのも,またこの時代の特色であろうという御指摘,頂戴しておりました。したがいまして,文章といたしまして,それから資料の修正も先ほど省略してしまいましたが,地球世界の到来のところにつきましては,ネットワーク化を背景に,地球規模で一体化しつつ多元性を深める現代世界の構造的特質を扱い,人々が協調し共存できる持続可能な社会の実現について多面的・多角的に考察し課題を展望するという形で,ネットワーク化を背景に一体化しつつ多元性を深めるという形での文言の修正を図ってございます。こちらについて,本文,先ほど14ページの上から一つ目のマルのところでも修正したところでございます。
また,大変申し訳ありません。資料10で,もう1点,主な変更点として御紹介しておくべきところがございました。資料10の各項目の中で,概念的に取り扱う形態といたしまして,例えば諸地域世界の歴史的特質であれば,多様性。以下,複合性,相互依存性,それから多元性と従来なっておったところが,今,御説明申し上げたような,地球世界の到来につきましては,一体化と多元性という形で加筆してございます。また,一つ前の項目,諸地域世界の突合と変容につきましても,従来,相互依存性という形でございましたけれども,相互依存といいますと,お互いが依存しつつという関係性になってございますので,この時代の特色,背景を踏まえますと,相互依存性から関係性という形で表現を変更しているところでございます。
主な変更箇所としては,以上でございます。本文につきましても,先ほどの資料7の9ページから14ページまでにつきまして,資料に合わせた形での修正を行ったところでございます。
御説明については以上でございます。

【原田主査代理】  ありがとうございました。
それでは,まず「歴史総合(仮称)」について議論していきたいと思いますので,今,御覧いただいた資料7及び資料8-1と8-2につきまして,20分程度時間を取って議論したいと思います。どの点でも構いませんので,御意見をお願いしたいと思います。いつものとおり,名札を立ててくださいますと,こちらで順次指名させていただきますので,よろしくお願いいたします。
では,仙田委員,よろしくお願いします。

【仙田委員】  資料8,それから先ほどの11についても関連で話をさせていただきます。
資料8-1ですけれども,現場にとっては,一番下にある,上記(まとめ)には,中学校までの既習事項を活用しながら,歴史の大きな転換うんぬんとありますね。私はここのところが非常に大事だと思っています。学校間にはいろいろと差がありますので,余り難しいことを1学年の最初に入れてしまうと,歴史が好きにならないという状況も生まれてきますので,中学段階で教えたところをもって「歴史総合(仮称)」を実施することが大事なことじゃないかなと思っています。
もう一点,意見です。8-2です。資質・能力のところに,世界とその中における日本という赤字で書かれたところがあります。この考えを持っていただけると有り難いと思います。そうすると,「歴史総合(仮称)」については,中学での既習事項を活用し,世界とその中における日本という考え方をもって学習を進めてもらえるといいと思っています。
ただし,現場として懸念があります。それは,「歴史総合(仮称)」や「日本史探究(仮称)」「世界史探究(仮称)」について,高大接続テストや学力到達度テストとかい離すると,内容どおりにしなくなってしまいます。ですから,そこのところのかい離を防いでいただきたいというのが現場としての意見です。その力をみんなが見てくれる,試してくれる,またそれを到達度として捉えてくれると生徒も理解できるならば,教員の方もきちんとやると思っています。
それと,「歴史総合(仮称)」で行った近現代史の学習と,後で出てくる世界史と日本史の探究の近現代史はどう違うのかを明確にしないとならない。何だ,同じことじゃないかとならないようにしていただきたいと思います。ですから,その事例がしっかりしないと,二度同じことをやるのかとなってしまいますので,ここが明確に違うんだということをはっきさせてください。この2点については,お願いしたいと思います。
以上です。

【原田主査代理】  ありがとうございました。
ほか,いかがでしょうか。
では,小川委員。

【小川委員】  資料8-1の近代化と私たちの冒頭に近現代の前史が入ったわけです。それで,私自身がこのことをどうもしっくりイメージできないところがございまして,そもそも「歴史総合(仮称)」は近代化という歴史の転換点の視座,視点に基づいて18世紀後半から見るということが提案されてきました。しかしながら,それだけだとヨーロッパ中心史観に陥ったり,それ以前の社会がどうだったのかということを考えることが大事だから,歴史の扉のところで,いわゆる近世の時代について考えようというのが前回までの案だったと思います。確かに現代的な諸課題と結び付きながら歴史のことを考えようということで,歴史の扉の内容自体は大変すっきりしました。その一方で,「近代化と私たち」のところに,17世紀前後の日本とアジア域内貿易だけが入るのが,全体の中でどうもしっくり来ないような印象を私は持ちます。
以上です。

【原田主査代理】  ありがとうございました。
そのほかにいかがでしょうか。出尽くしたでしょうか。
では,大石委員。

【大石委員】  今の小川委員との関係ですが,私はむしろ逆に,アジア域内貿易という用語の出典が私もよく分からないのですが,アジアと言ってしまったときに,東南アジアを含めたアジアのイメージにならないだろうか。ここで言うアジアは東アジアであって,そこへ媒介者としてヨーロッパが入ってきている。そこの近代化,ヨーロッパと接しながら,日本の社会が江戸時代を通じて近代化していく姿を見ていかないと,アジアという言葉で説明するとちょっと混乱が起こるかなということが一つ思われました。
それから,もう一つは,江戸時代をどう見るかということですが,今までみたいな形で,封建制で明治維新で近代化するというのではなくて,私自身は日本史的な近代化ですね。合議制とか天皇制とか,そこのところをそろそろ意識化する必要があって,これは非常に新しいことで,いいのではないかと思います。

【原田主査代理】  ありがとうございました。
いかがでしょうか。よろしいですか。
では,磯谷委員。

【磯谷委員】  その17世紀前後の日本とアジア域内貿易ということでありますけれども,17世紀の日本はグローバルな観点,ヨーロッパとか。あるいは江戸時代にとうもろこしが入ってきたり,じゃがいもが入ってきたり,たばこが入ってきたりというグローバルなときでもあります。それと,近代化というのをヨーロッパの市民革命とか産業革命とかを教えるんですけれども,中学校とのつながりといいますか,そういう観点では,江戸時代のことは中学校ではそれなりに習っているわけですので,ヨーロッパを突然出すのではなくて,江戸時代を媒介として,ヨーロッパの市民革命とか産業革命の様子を教えていくという観点,接続という観点では,使いようによってはいいんじゃないかという感じを受けました。

【原田主査代理】  ほか,いかがでしょうか。
大石委員,どうぞ。

【大石委員】  もう一つ,済みません。度々ここでも議論になって,ボツにされているんですが,上の現代的諸課題につながる歴史的な状況がabcdeなのですが,今の私たちが現代社会の諸課題を認識するときに,少数者,多者と少者,fとして残しておいたほうがいいのではないか。最後のお願いですけれども,改めて言っておきたいなと思います。いろいろな形で対立要素とか共存要素とかあると思うんですが,現代社会の課題といったときにfを落としてしまうというのは,ちょっと残念な気がしますので,もう一度考えていただければと思います。
以上です。

【原田主査代理】  そのほか,いかがですか。
羽場委員。

【羽場委員】  今の大石先生の御発言に共感しますが,私もどこで申し上げようかなと思っていたんですが,全体として非常によくまとまっていると思いますし,様々な点に配慮されて,非常に使いやすい教科書になっていくのではないかと思うんですけれども,fのところに入れるか,あるいは題材のところに入れるか,難しいところではございますが,可能であれば,少数者ないしはマイノリティとかジェンダーというものはどこかに入ってもいいのではないかと思いますので,御一考いただければと思います。

【原田主査代理】  ありがとうございました。
ほか,いかがでしょうか。
小川委員。

【小川委員】  こだわって申し訳ないのですが,産業社会の到来の前史として,アジアの近代化の前史として,17世紀前後の日本とアジア域内貿易を取り上げるのだということは分かります。だとするならば,ヨーロッパの産業革命の前史になることは取り上げないのかということになろうかと思うんですね。なので,前史としての近世を取り上げるのであれば,世界の近世のポイントを総体として捉えるような比較史的な視角,総合的な視角というのが必要です。日本の江戸時代と東アジアのことは大事だし,それを取り上げることは私も以前から賛成してきたのだけれども,そこだけがここに入って,そのほかのことが盛り込まれないというのがどんなものだろうかと思うわけでございます。
以上です。

【原田主査代理】  そのほか,いかがですか。
梶山主任視学官。

【梶山主任視学官】  御議論いただいているところで大変恐縮でございますが,近代以前の,近現代の前史というところで,17世紀前後の日本と東アジアなのかもしれませんが,そういう貿易といったものを特に記述しております。また,産業社会の到来や政治の変革を学習するに当たって,その前史というのか,どういうふうに変わったかというところも若干触れざるを得ないところはあるんだと思います。ただ,同じような形でやってしまうと,本当に後ろのほうができなくなってしまうというのが多分にあるんではないかと思っておりまして,そこをどのように指導していくのかというところは,明確な形として近世まで広げていくのか,後ろの方をやっていくのではないかというところの中で,こちらの方で入れさせていただいた趣旨でございます。
それから,先ほどのマイノリティというのも非常に重要な課題だと思います。先ほど御説明申し上げましたように,社会運動の高まりとか,そういうところに入れさせていただきました。また,教育というところも入れさせていただきました。ですが,歴史的な状況というものは,自由と制限,貧困というように,対立したといいますか,調整が必要な状況ということを中心に書かせていただいておりまして,自由と制限の中に,少数派であったり,マイノリティの人権の確保というところが入ってくるのではないか。また,最終的に一番大きな平和で民主的な国家及び社会の形成というところで,平和を求めていくというところと,人権を尊重して民主的に生きていくという方向性というのは当然出ているところだと考えておりまして,歴史の中身ということでは,社会運動の高まりということを,今回御指摘を踏まえて入れさせていただいたところがこちらの説明でございます。

【原田主査代理】  ありがとうございます。
御説明を聞くと,趣旨はよく分かるし,皆さん,ここにいらっしゃる方々は共有できると思うんですけれども,前史という言葉が入るとひとり歩きしがちなので,結局,1600年ぐらいからやるんだなという誤ったイメージを伝えないためにも,大石委員の御指摘があったように,近代の概念自体を,ヨーロッパ的な見方だけではない,日本なら日本というのはどういう視点で近代というものが捉えられるのかと見ていくべきだと思いますので,近現代の前史という形で入れること自体,少し再考した方がいいかもしれないなと思いました。趣旨は皆さん,伝わっていると思うんです。
ほか,いかがでしょうか。
韮塚委員。

【韮塚委員】  別の観点から1点,お願いします。今回,「歴史総合(仮称)」という新しい科目の大きな特徴として,単元の基軸となる問いを設けるということ。それから,その大きな問いを考察していく手だてとして,考察を深める問いという2段階の問いの設定ということが想定されているかと思います。これまで表現として,例えば近代化は何をもたらしたかという形で,基軸となる問いのいわば例文に近いと思うんですけれども,こういったものがはっきり示されていたわけですけれども,今日お示しいただいた中で言うと,基軸となる問いの部分について,色が若干薄まってしまったかなとちょっと懸念しております。この点について,どう考えればいいかと思いまして,発言させていただきました。

【原田主査代理】  韮塚先生,もう少し具体的に何か,この辺りが薄まっているから,こうした方がいいという御意見,特にあれば。

【韮塚委員】  副題として,例えば社会近代化と私たちで言えば,社会構造の変化を考察するためにということで,考察の方向性が示されたと解釈できるんですけれども,例えば考察を深めるための問いについては事例として示されているんですね。なので,とてもイメージがしやすいんですが,いわゆる基軸となる問いという大変大きなテーマに関して,方向性は示されているんですが,例えば全体で言えば,近代化は何をもたらしたかということで基軸となる問いが設定されていたと思うんですね。そういう意味で,考察を深める問いのような形で例示として示すのがよいのか,それとも漠然と,今回の副題のような形で方向性を示すのがよいのか,どちらがよいのかということで発言させていただきました。私は,具体的に示した方が現場の先生には分かりやすいかなと考えます。

【原田主査代理】  ありがとうございました。御意見伺って,その辺りは今後,また具体的な「歴史総合(仮称)」の学習指導要領を考える上でポイントになってくると思いますし,色が薄茶色で見にくいんですけれども,一番左側のそれぞれの三つの各期の下に説明してある。こういう見方を付けるために,今,韮塚先生がおっしゃった問いがあるはずなので,その辺を明記するかどうかも含めて,今後議論していく必要があるとは思います。
そのほか,いかがですか。では,大体20分たちましたし,前回,どっちかというと「探究科目」への御意見がたくさんありましたので,続きまして,「地理歴史科」の「探究科目」についての御意見を伺いたいと思います。もちろん,新たに「歴史総合(仮称)」について御意見がある人は振り返っていただいても構いませんけれども,主に資料9から11の「探究科目」につきまして,20分程度,御意見を頂きたいと思います。どの資料でも構いませんので,よろしくお願いいたします。いかがでしょうか。
では,磯谷委員。

【磯谷委員】  資料10,「世界史探究(仮称)」の古代の探究例のところですが,世界の諸文明や縄文文化を比較し諸文明の特質をまとめたりという例が挙がっているんですけれども,レベルがかなり違うものを比較して特質をまとめているような感じがしまして,例えば古代オリエント文明と古代日本の国家形勢の過程とか,この例に挙げるのはどうかなという感じがちょっとしました。
それから,中世的なところですけれども,旅行家の記録を読み,交易活動をまとめる。これはこれでいいんですけれども,旅行家のバイアスは当然あるものですから,近代のところのポスターとか風刺画というものは,批判的に,当然古代・中世の記録を生徒が読んだりするときには,それも生徒に意識させていく必要があるのかなと思います。
以上です。

【原田主査代理】  ありがとうございます。
いかがでしょうか。
では,仙田委員,お願いします。

【仙田委員】  先ほど申したことを踏まえてですけれども,私ども中高一貫校だと中2が新テストで大学入試を行うということで,保護者や生徒も敏感になっています。国語と数学で記述式が先に入るとなると,歴史についてはまだ導入は後になる。しかし,この授業をやっていくと,後でこういう成果がでるんだということを是非とも検証ししていただきたいと思っています。そうしないと,例えば日本史だったら論述するのではなくて,違う方向に向かってしまします。従来の単語だけを覚えさせるようなことをやめようというのがこの趣旨だと思いますので,是非ともそういうことが実現できるようなテストにしていただきたいというのが一つ目です。
それから,日本史の最後では,歴史の記録や論述といった世界史とはまたちょっと違う方向性で探究を設けています。そうすると,世界史の教員と日本史の教員は,それぞれの「探究科目」はこういう方向性でやるんだと思います。しかし,先ほどの「歴史総合(仮称)」は,多分日本史・世界史両方の教員がやらないとだめだとなったときに,「探究科目」の最後は日本史は論述だ,いや,世界史は違うとなってしまう。しかし,総合を教えるのはどちらかの教員なんです。だから,現場の立場に立ってみると,世界史や日本史の専門が「歴史総合(仮称)」をやるので,教員のスキルが非常に試されてしまいます。日本史・世界史の差が出ないようにするには,「探究科目」の終着点は,両方とも論述させるなど何らか共通点を持っていただけると有り難いです。やり方としては,最初に大きな問いがあって,それに対していろいろ小さな問いを考え,その解決のために調べ学習をするとつながるのではないかなと思っています。是非ともこの辺のところをやっていただければと思います。
以上です。

【原田主査代理】  では,小川委員,お願いします。

【小川委員】  まず,資料の10番についてですけれども,右側の「世界史探究(仮称)」の各時代の特徴を書いてあるものの一番下です。地球世界の到来が一体化と多元性というふうに,今回新たに整理していただいたわけですが,果たしてこれでいいのだろうかというのが,私の中にしっくり来ない感覚としてあります。今,世界史の授業の中で一体化ということは繰り返し言われていて,それは例えば近世グローバリゼーションの中で一体化が言われることもあれば,産業革命のところで一体化が言われることもある。現在のグローバリゼーションで一体化が言われることもある。それをここで一体化という一言で果たして伝わるだろうかという問題があります。私自身は,相互依存性及び流動性のようなものかなとイメージするのですが,また何らか,更に議論する必要がありはしないかと思います。これが1点目。
それから,併せて,資料7の差し替え版に関わることを幾つか申します。
まず,24ページの教材の在り方についてですが,改めてこれを見返すと,教科用図書,いわゆる教科書のありようについて,今まで歴史系科目の教科書に特徴的だった歴史叙述が綿々と展開されるようなものだけではなくて,そこに資料とか問いとか,そのようなものが盛り込まれていくことが「歴史総合(仮称)」及びその延長線における探究的な選択科目においても必要になってくるだろうと思います。それについての言及がなくていいのだろうかと私は思います。
次に,5番の必要な条件整備のところで,これも問いを用い,ある歴史学的な作法に基づいて歴史像を構築していくという歴史教育に転換しようとしているわけですから,そのような「歴史総合(仮称)」や「探究科目」としての歴史を教えられるような教員を,大学の教員養成課程で育てていき,その大学の教育活動が各地の教育センターや教育委員会の教員研修の在り方と連動していくということが必要になってくると思います。今,ここには各県の教育委員会や教育センターのことは書かれているけれども,その基になることが書かれていないので,それは必要ではないかと思いました。
併せて,先ほど来出ている入試についても,新しい時代の望ましい入試の在り方というのが,大学としてアドミッションオフィスの中でどのように運営されて作問されていくのかということについても,ここで全てについて提言するということは難しいと思うのですが,何らか盛り込まれる必要性はありはしないかと考えております。
以上です。

【原田主査代理】  ありがとうございました。仙田委員からも先ほど来,何度か出ている入試の在り方について,今,小川委員も御指摘のあったように,どこか適当な箇所で,最後の必要な条件整備に関わるのか,その前の4の学習・指導の改善・充実や教材の充実に関わるのか分かりませんけれども,触れておくことは必要かもしれませんね。
ほかにいかがでしょうか。
井田委員,お願いします。

【井田委員】  ちょっと細かいことで恐縮ですけれども,世界史の探究のところで,諸地域世界の歴史的特質,諸地域世界の接触と交流,諸地域世界の結合と変容というものがあるんでけれども,1番目の諸地域世界の歴史的特質は歴史の内容が出てきているんですが,次の諸地域世界の接触と交流という2行を見ると,世界史というか地理というか,その辺が歴史の特性が出ていないのではないかと読めてしまうので,主に空間的なつながりに着目してという前に,例えばその時代の空間的なつながりに着目してというような一文を入れた方がいいのかな。探究例には,各地域の地図を作成し時代像を発表したりする活動というのが入っているんですけれども,上の2行には入っていなくて,ここを見ると歴史なのか何なのかという歴史の特徴が余り出ていないんじゃないかという感じがします。その次の結合と変容,変容自体に時間的な概念が入っているので,そこは問題ないと思うんですけれども,そこだけちょっと気になったということです。

【原田主査代理】  ありがとうございます。
大石委員,お願いします。

【大石委員】  資料11です。左側のアの部分ですけれども,歴史と資料,歴史の解釈,説明。勉強していくにつれて,資料を基に発展していく段階ができて,最後に論述まで,とてもいい流れかなと思うのですが,最後のウは,もうちょっとこの部分をイ,ウと,それぞれ違う書き方,書きようがあるかな。アとしてしまわないで,最後のウと連続させるような形で構成できないか,表現できないかということが一つです。
それから,先ほどの総合の方と考えると,右側の表も,近世を今までのありようで真ん中で収めて,近代と出るのではなくて,中2階じゃないけれども,少し微妙な位置付けをしてもいいかなと思います。
それから,三つ目で,また戻ってしまうのですが,先ほどの資料から始まって,資料に戻ったときに,勉強していく最後で,今の高校生あるいは私たちが学ぶべきところで,資料とか文化財の保存というところへ話がうまく流れていくと展開できるかなと思います。
以上です。

【原田主査代理】  ありがとうございます。
梶山さん。

【梶山主任視学官】  一番左のところは現行日本史のものでございますので,また新たにここは考えていきたいと思っております。

【大石委員】  資料については,今回は余りこういう形では出てこない。

【原田主査代理】  お願いします。

【梶山主任視学官】  基本的に一番右側のところですね。

【大石委員】  資料が書いてありますね。ごめんなさい。

【梶山主任視学官】  資料を重視して指導するということをより考えていくということだと思っております。

【大石委員】  はい。最後,保存を付けていくんですね。

【原田主査代理】  「日本史探究(仮称)」の場合は,従来,時代区分的な概念が先にあって,中項目の中に資料に関する解釈とか説明があったのが表出しになって,資料読解を中心としたものになっていく。ただ,最後の文化財等を含めた資料の保存の大切さみたいなことを,またどこか指導上の留意点なり,あるいは指導計画の作成辺りで入れていただく必要があるかもしれませんね。今後の学習指導要領の作成のプロセスで,これは出てくるかと思います。御意見として伺っておきたいと思います。
ほかにいかがでしょうか。
久保委員,お願いします。

【久保委員】  地理学分野なので,ちょっと見当外れなことを言うかもしれないんですが,資料11の右側の歴史の展開と資料-原始・古代の日本と言うんだけれども,原始の日本という言い方はあるんですか。日本列島じゃないですか。

【原田主査代理】  通説的に書いているとは思うんですけれども,いかがですか。

【藤野教科調査官】  お答えいたします。おっしゃる意図として,日本という名前自体がそもそもこの時期に存在していないものでありますし,基本的にはそういうお考えが正確かなと思っております。ただ,学習指導要領上,例えば左側,現行がございますけれども,基本的には原始・古代というのを一つの括りにしていく中で,原始・古代の日本という言い方を通例,ずっとこれまでしておりましたので,ここはそれと同じような形で現行を継承して,新しいところでもその形を使っております。おっしゃるとおり,御意見のところはよく分かりました。

【原田主査代理】  ほかにいかがでしょうか。
それでは,また御意見,後ほどでも追加でありましたらお願いすることとして,高等学校学習指導要領における地理科目の改訂の方向性及び小・中・高等学校における資質・能力等についての議論に移りたいと思います。
まず,事務局から資料についての御説明をお願いします。

【大内学校教育官】  それでは,資料12-1,高等学校学習指導要領における地理科目の改訂の方向性をお手元の方に御用意いただければと思います。資料12-1から資料12-3までが地理のセットになってございまして,12-1が「地理総合(仮称)」,12-3が「地理探究(仮称)」でございます。
前回までの本ワーキンググループにおける御意見,それから特別チームにおける御意見等を踏まえましての修正ということでございますが,一つは,資料12-1の新必履修科目「地理総合(仮称)」の中の(3)防災と持続可能な社会の構築という項目を検討してございました。こちらについて,ESDがそもそも(3)のイ 生活圏の調査と持続可能な社会づくりの中で取り扱う形での示し方にタグを付けておったんですけれども,これを(2),(3),特に(3)防災と持続可能な社会の構築全体に引っ掛けたという形での修正を図ってございます。
それから,ちょっと前後して恐縮ですけれども,資質・能力につきまして,一つ目のマルの中で,地理的技能に関わる部分,地理に関する情報を効果的に調べまとめる技能に関わる部分についての記載を加筆してございます。こちらは漏れがありましたので,加筆ということでございます。
それから,飛びまして資料12-3,「地理探究(仮称)」の方でございます。「地理探究(仮称)」につきましても,中央部分に記載のございます資質・能力に関わりまして,先ほどと同じように,地理に関する情報を効果的に調べまとめる技能というのを明記させていただきましたのと。
「地理探究(仮称)」の中で,(3)現代日本に求められる国土像というところに関わりまして,特に(1)や(2)で学んだ世界の諸課題に対する系統地理的あるいは地誌的な考察を踏まえた上で,この(3)において,在るべき国土像あるいは地域像を学習していくという形での,この科目における大項目の関わりということを少し明確にするという観点からの御指摘,頂戴しておりましたので,御意見を踏まえ,修正を図ったという形でございます。
地理につきましては,おおむねそういった形での修正を図ったところでございます。
次に,このまま資質・能力の資料の方の御説明をさせていただきたいと思います。資料13をお手元に御用意いただければと思います。社会,地理歴史,公民における教育イメージ(案)ということで,社会,地歴科,公民科における目指すもの,目標に規定する部分の要素として,どういうものが考えられるかという形での整理をしたペーパーでございます。
こちらにつきましては,例えば高等学校の地歴科のところでございますけれども,前回の本地歴を中心とするワーキンググループ,それから高等学校の「地理歴史科」の在り方に関する特別チーム,加えて5月末に開催されました小・中・高等学校の資質・能力を中心に御議論いただくグループの御意見を踏まえた形で,まず二重マルのところがございます。これは,全体に係る部分として,マル1,マル2,マル3とセットで目標をなすものでございますけれども,二重マルのところの要素としては従来とほぼ変わっておらないのですけれども,順序性が若干変わってございます。
一つは,社会的な見方・考え方を働かせて,課題を追究したり,解決したりする学習を通してという形で,社会的な見方・考え方というのが,培っていくものでもあるんですけれども,この目標全体で見ていく場合には,ツールとしての色合い,働かせていくという色合いを大きくさせました。これは,全教科共通で見方・考え方をそのような形で取り扱っていくという御意見を踏まえての所要の修正でございます。
また,課題を追究したり,解決したりする活動を通してということで,こちらについては,学習活動,学習課程として本ワーキンググループにおきましても御議論,頂戴してまいりましたけれども,何々の活動を通してという形で,これも横串の観点から修正・加筆をさせていただいてございます。その上で,二重マルのところで,広い視野に立ち,グローバル化する国際社会に主体的に生きる平和で民主的な国家及び社会の有為な形成者に必要な公民としての資質・能力を次のとおり養うという形で,マル1として,従来から御確認いただいておりました知識あるいは技能に関わること。マル2としては,思考・判断・表現に関わるものとして。マル3として,学びに向かう力,人間性に関わるものとして,それぞれ整理させていただいたというところでございます。
なお,マル3の地理や歴史に関わる事象について,よりよい社会の実現を視野に課題を主体的に解決しようとする態度を養うと共にということで,こちらにつきましては,先ほど各資料の御説明の際に少し申し上げましたが,よりよい社会の実現を視野にという形で,今回,学びに向かう力,人間性につきまして,小・中あるいは高等学校公民科も同様に加筆させていただいてございます。
それから,地歴科ではございませんけれども,公民科におきまして,例えば社会参画を視野に入れながら構想したことを議論するという形で,社会参画に関わる要素を明示的に入れることでありますとか,中学校段階あるいは小学校段階におきましても,表現の所要の修正を図ってございます。
もう1点,小・中・高等学校全体を通じて,「地理歴史科」「公民科」における目標に関わる要素というものを検討してまいりましたことから,二重マルの部分というのは,小学校,中学校,高等学校,ほぼ同様の形で示させていただいております。こちらにつきましては,前回も種々御意見,頂戴しておりましたけれども,先ほど御覧になっていただいたような形での二重マルの整理をしてございます。
ただ,小・中学校と異なる点といたしまして,一つは,高等学校地歴科・公民科の二重マルの記載は同じでございますけれども,中学校段階においては,二重マルの目標のところで,一つは,平和で民主的な国家社会の有為な形成者。これは,高等学校段階においては有為なという言葉を設けておりましたが,こちらについては小・中学校では外れてございます。
また,中学校段階あるいは小学校段階においては,高等学校で示す公民としての資質・能力を次のとおり養うという表現につきまして,必要な公民としての資質・能力の基礎を次のとおり養うという形で,小・中学校段階はそれぞれ入ってございます。
また,小学校と中学校の社会科における違いといたしまして,二重マルの部分だけで御覧になっていただきますと,中学校段階においては,高校地歴科にも入ってございますけれども,中学校社会科において分野ごとに専門性が高まるなどの観点も踏まえまして「広い視野に立ち」という文言が入ってございますけれども,こちらにつきましては小学校段階では外れており,それぞれの発達を踏まえた整理としているところでございます。
資料13の補足資料は少し割愛させていただきまして,資料14,育成すべき資質・能力の整理でございます。こちらにつきましては,大きな変更はございません。
資料の14の2枚目が高等学校の「地理歴史科」に関わるところでございまして,先ほど少し御説明申し上げましたけれども,学びに向かう力・人間性の枠の中の二つ目の中点,よりよい社会の実現を視野に社会に見られる諸課題の解決に関わろうとする態度。こちらについて再整理をさせていただきましたので,その関係の記述が「地理総合(仮称)」から「世界史探究(仮称)」まで,同様に修正が図られているということでございます。それが大きな変更点でございます。
それから,最後に資料15でございますけれども,社会的な見方・考え方(追究の視点や方法)の例(案)でございます。
こちらにつきましては,前回,本ワーキンググループにおきまして,中学校の歴史的分野,それから高等学校の「歴史総合(仮称)」あるいは選択科目である「世界史探究(仮称)」や「日本史探究(仮称)」との関わりで見ていった場合に,特に中央右側に示しております視点を生かした,考察や構想に向かう「問い」の例というのを,前回,ほぼ同じ状態で御提案させていただいておりました。こちらにつきまして,それぞれの発達,校種ごとの違い,あるいは必履修科目と選択科目の違いといったことから,問いの部分に修正を加えております。
具体的には,中学校の歴史的分野における問いは基本的にはそのままでございまして,高等学校の「歴史総合(仮称)」において,3枚目でございますけれども,例えば何を契機に,相互の関係はどのように変化したか。あるいは,どのように転換し,後にどのような変化をもたらしたかという枠組みで問いを構成しております。全部でここに五つ,問いの立場を示しておるんですけれども,この問いの束は,それぞれ一番左側に示しております視点の例に関わる部分と,同様に一番右側に示す,考察,構想した結果,獲得する知識の例というものと1対1で対応するような形で再整理を行ったところでございます。
「世界史探究(仮称)」「日本史探究(仮称)」につきましても,「歴史総合(仮称)」を踏まえた形で問いの方の修正を行っておりますので,後ほど御覧いただければと思います。
また,該当する本文,取りまとめ文といたしましては,資料7の1ページ目から9ページ目までが見方・考え方,育成すべき資質・能力,それから目標に準拠した評価の在り方,更には学習課程の在り方,こういったものを取りまとめまして再整理をさせていただいているところでございます。
10ページ以降,14ページ目までにつきましては,地歴科の整理。また,14ページ以降20ページまでは公民科の整理となってございます。
また,先ほど少し御意見,頂戴しておりましたけれども,20ページ以降で教育内容の構造化,それから21ページが教育内容の見直しということで,主に小・中学校を中心に整理させていただいておりますけれども,こちらについても,歴史あるいは地理に関わる事柄として,グローバル化への対応でありますとか,防災・安全教育への対応といった形での整理をさせていただいております。
23ページ以降につきましては,御意見頂戴いたしましたけれども,教材あるいは必要な条件整備ということで,こちらの取りまとめを整理したところでございます。
全体にわたりまして御意見,頂戴できればと思います。以上でございます。

【原田主査代理】  ありがとうございました。
それでは,まず資料7及び資料12の1,2,3。「地理総合(仮称)」を含め,地理系科目についての御意見をお願いできればと思います。これまで歴史に関する議論がずっと続いてきましたので,地理に関わる先生方も多数御出席いただいておりますので,よろしくお願いします。
では,永田委員,お願いします。

【永田委員】  失礼いたします。資料12-1と資料12-3について。
資料12-1の「地理総合(仮称)」におきましては,ESDが,(2)国際理解と国際協力,(3)防災と持続可能な社会の構築,両方とも掛かっているということで,非常に分かりやすくなっていると思います。資料12-3の「地理探究(仮称)」におきましても,事象からのアプローチが系統地理,地域からのアプローチが地誌的学習で,それを3番目,ESD的な内容で総合的なアプローチということで,非常に分かりやすくなっていると思いました。
そこで,資料12-1のESDというのが(2)(3),両方とも掛かっているということで,非常に分かりやすくなっているんですけれども,資料12-1の文言のところに,科目の特徴の真ん中のところです。一つ目がグローバルな視座からというのと,2行目に地域的な視座からというものがあります。このESDというのは両方に関わりますので,キーワード的にはGIS,グローバル,ESD,防災でいいんですけれども,できれば(3)の一番下のところでいいので,地域的な視座とかを入れていただきたいです。(2)のところをグローバルな視座ということでやっていただいたら,ESDでも(2)はグローバルな視座なんだな,(3)は地域的な視座なんだなということが分かりますので,できれば御検討ください。
それと,ちょっと飛ぶんですけれども,ここに関わるところで,資料14,「地理総合(仮称)」の知識や技能のところをお願いできませんでしょうか。関わりがあるので。「地理総合(仮称)」の知識や技能のところで,まず「地理総合(仮称)」の知識が資料12-1と関わるところであると思っております。一つは,私が趣旨を取りにくいなと思ったのが,自然システムや社会・経済システムに関する理解という文言です。資料12-1を見ますと,現代の地理的な諸課題ということなので,システムというのを,つまり構造を理解するというのは非常に難しいようなイメージを受けたので,現代の地理的な課題の理解とか,もうちょっと分かりやすい形だったらもっとよろしいかなということです。
先ほど申しましたように,グローバルな視座というのと,地域的な視座というものがありますので,最初に出てきている文言,「地理総合(仮称)」の地球規模のというところがあります。地球規模と地域的な規模というものがありますので,例えば様々な地域の規模のとか,そういった表現に。ごめんなさい,今,気付いたので言っているんですけれども,ならないかなということでございます。
それと,資料14の1点目のシステムの次の2個目の技能のところで,地理情報システムが示されています。理解と同じシステムという言葉になっております。ここがちょっと分からないので,もしよろしければ地理情報システムのところは,「(GIS)」ということを付けていただいたら,上のシステムと下のシステムの違いがより分かりやすくなるかなと思います。上のところは,自然や社会経済に関する現代の地理的な課題とか,もうちょっと課題を入れていただいたら分かりやすいかなと思いました。
以上でございます。

【原田主査代理】  ありがとうございました。
そのほか,いかがでしょうか。
では,小川委員,お願いします。

【小川委員】  「地理探究(仮称)」についてです。「世界史探究(仮称)」や「日本史探究(仮称)」の資料10,資料11を見ると,一番右側のところに,諸資料に基づき,地理的条件や日本の歴史,世界の歴史と関連付けて展開するということで,ほかの「探究科目」で学ぶような内容をその中に関連付けながら学んでいくんだということがうたわれていて,当然「地理探究(仮称)」もそういうことがあると思うんですけれども,ここに一切書かれていないものですから,「地理探究(仮称)」だけちょっと異質な印象を受けるんですよね。そういう内容ではないと思います。単なる書き方だと思いますので,また御一考いただければと思います。
以上です。

【原田主査代理】  ありがとうございます。
そのほかいかがでしょうか。
では,井田委員,お願いします。

【井田委員】  地理については随分発言させていただいていますので,資料13の方であれなんですけれども。今,高等学校の「地理歴史科」のところで,二重マルがあって,マル1,マル2,マル3とありますけれども,そこのマル3でどういう人間を育てたいかということで,多面的・多角的な考察や深い理解を通して涵養される日本国民としての自覚というのがあります。一方の公民科の方を見ると,同じようなところで,人間としての在り方生き方についての自覚というのがあるんですけれども,公民の定義にも関わるんですけれども,日本国民としての自覚だけでいいのかなという感じがします。日本国民としての自覚と,上の二重マルと照らし合わせれば,国際社会に生きる者としての自覚というのがここには本来入るのではないか。市民という言葉は使えないと思いますので,そういうものかなと思いますけれども,日本国民としての自覚だけではなくて,国際社会の一員としての自覚というのがここに入ると,地理の内容も世界史の内容も求める人間像がもっとはっきりしてくるんじゃないかなと思います。

【原田主査代理】  ありがとうございます。
既に先ほど永田委員からも一部出てきましたので,資料13,14,15の社会科の資質,能力,それから目標の文言等も含めて,もちろん地理に関しましても一緒に御議論ができたらと思いますので,地理だけに関わらず,社会科,地歴,公民の目標の構造,文言,資質,能力の在り方につきましても引き続き御意見を頂ければと思います。
今の井田委員の御意見,参考資料1に現行の小・中・高等学校の社会科,地歴,公民科の目標がありますが,現行の高等学校地歴科には,国際社会に主体的に生きるうんぬんという文言があって,井田先生はその辺りを御指摘になったと思うんですけれども,日本国民だけでいいのかという意見もありました。その辺を含めて,また御意見があればお願いします。
永田委員,お願いします。

【永田委員】  引き続き申し訳ございません。
井田先生と直接関連するかどうか分からないんですけれども,「地理歴史科」でずっと私が思っていたことなんですけれども,「地理歴史科」と言った場合に,その示される順序です。現行学習指導要領では,世界史から始まって,日本史に行って,地理という順番になっております。今回は地理も日本史も世界史も必修になったということで,その順番をどうするかということです。多分オーダーで決まっているんだと思いますけれども,「地理歴史科」の資料13のマル1のところ。この出だしは現行と変わりません。「日本及び世界の歴史の展開と」,これが歴史だと思っています。「生活・文化の地域的特色に関して理解すると共に」,これが主に地理だと思っています。大体は歴史が最初で,次に地理が来ているということですね。その次に,2番目のマルを見たときに地理や歴史という表現で,3番目も地理や歴史となっています。地理屋ですので,希望としては地理が一番前に来るのが有り難いんですけれども,このオーダーをきちんとそろえないといけないかなと思っています。
それが資料7のところでも出てきておりまして,メール便で私,見ているので,多分ずれていないと思いますけれども,メール便では5ページ目の1行目だったんですけれども,例えば「社会科」と「地理歴史科」。社会科の中だったら,地理的分野,歴史的分野,公民的分野,地理が一番に来るんですけれども,社会科と地歴科が一緒に表現される場合は,最初に我が国や世界の地理に関する理解,その次に我が国や世界の歴史に関する理解みたいな順番で来ているんですね。
7ページ目に移りましたら,公民科の一個前,「地理歴史科」の一番最後のマル3ですけれども,「我が国の国土や歴史に対する愛情」ということで,「地理歴史科」の部分でも地理の方が先に来ている部分がありますので,文言の統一というのはどうかということです。地理が前に来るのは全然構いません。
それで,参考資料10を見ていただきたいのです。済みません,資料が飛びまして。こういった場合に補足資料で出てくるときには,「地理歴史科」で,やはり「地理総合(仮称)」が先に来て,「歴史総合(仮称)」が次に来て,「公共(仮称)」が来るという順番になっております。全然異存はありませんけれども,資料7とかで基本的に「歴史総合(仮称)」「地理総合(仮称)」「公共(仮称)」の順で説明されているので,その辺のところ,順番というのは決まりがあるのかとか,このオーダーというのは考えなくていいのかということで,気付きでございます。
以上です。

【原田主査代理】  ありがとうございました。最終的な文案をまとめるときに,その辺りを精査していただけると思います。御意見,頂いたと思います。
そのほか,いかがでしょうか。
小川委員,どうぞ。

【小川委員】  質問をお願いします。
今まで「歴史総合(仮称)」「地理総合(仮称)」「公共(仮称)」と三つの新設科目について検討してきたわけですが,この三つの科目について,特に学ぶ順序といいますか,そこについては大きな議論はしてこなかったように覚えているんですけれども,どうでしょうか。

【原田主査代理】  履修の問題ですか。もし検討状況とかがありましたら,お願いします。

【梶山主任視学官】  社会科におきましては,御承知のように,中学校につきましてはいわゆるπ型のような形で,「公民」を一番最後に指導するというところになっております。ただ,高校においては,そこで「公民」までいったん行ったものを踏まえて,地理それから歴史,それから公民的なところを触れていただくというのが現行ではないかと思っております。また,高校における様々な学校がございますので,履修の順番を付けるとなると,これはなかなか難しいというところはあろうかと思いますので,現行ではそこは想定していないのではないかと思っております。

【小川委員】  分かりました。ありがとうございます。

【原田主査代理】  そのほか,いかがでしょうか。
あるいは,最初からの議論にさかのぼって,本日の資料の中で新たにお気付きになった点,あるいは言い残した点がございましたら,それも構いませんので,御意見を頂ければと思います。
では,久保委員,お願いします。

【久保委員】  小さいことですけれども,資料7の幾つかです。
12ページの真ん中辺ですが,二つ目のマルで,3行目ですけれども,途中から「地図や地理情報システムなどの地理的技能を」というものですけれども,もしこの紙が公表されるんだったら,地図や地理情報システムは地理的技能ではありませんので,「地図や地図情報システムの活用など」とした方がいいと思いますというのが一つと。小さいことばかりで済みません。
後ろの方ですが,22ページですが,防災・安全教育への対応の最後の方で,下から2行目ですが,「日本の地形や気候の特色,海に囲まれ多くの島々から構成される我が国の国土の様子」という書き方ですけれども,日本の地形や気候の特色ともう言っているので,海に囲まれ多くの島々から構成されるというのは要らないと思います。もしこれを生かすんだったら,島の話だけじゃなくて,山がちであるとか,たくさんのことを書かなくちゃならないと思います。
また,後で見つかったら申します。

【原田主査代理】  お願いします。
そのほか,いかがでしょうか。
梶山さん。

【梶山主任視学官】  済みません,活用のところはおっしゃるとおりじゃないかと思います。申し訳ございません。
22ページの防災・安全教育への対応でございますが,ここは当然,日本の地形や気候の特色というのもあるんですが,海洋ということが重要だというお話をワーキング,井田先生なんかもおっしゃっていただいたところがありまして,こういう文章になっておりますので,ちょっと文章を変えた方がいいのかもしれませんが,この要素というのは入った方がと考えておりますが。

【久保委員】  はい。

【原田主査代理】  そのほかお気付きの点,御意見,お願いします。
土屋委員,お願いします。

【土屋委員】  これまでの御意見を聞きながら,ほとんど同意することが多かったものですから意見を申し述べなかったという部分があるんですけれども,最後にあえて,私としても考えを述べたいと思うので,幾つか申し上げたいと思います。
先ほど久保委員が歴史のところで日本か日本列島かとおっしゃった部分ですけれども,あえて回答では,これまでの指導要領に沿ってということでありましたけれども,今回,内容的な部分も少しずつ変化させていくということを考えてみると,東アジアに対応する呼称としては日本列島ということもあり得るのかなと思います。なぜかというと,現行の指導要領のままですと,現行の指導要領のままでいいんだみたいな形で,内容がそのまま変わらないという授業スタイルになるという心配があるとすれば,アジアという中での,要するに地理と歴史をできるだけ,「歴史総合(仮称)」はそれを目指したわけですので,その後にある「探究科目」についても,これまでとちょっと違うニュアンスが生かされるという意味では,日本列島という表現も検討の余地があるのかなと思いました。
それから,もちろん大石先生が言われた文化財の件も,今後,是非検討する余地があるなと思いましたし,この議論がどういう形で指導要領等の中に持っていかれるのかということで,質問ですけれども,ここにある今日の資料というのは,この文言が確実に指導要領の中に反映される資料としてかなり強い強制力を持つものなのか,どうなんでしょうか。この辺をちょっとお伺いしたいなと思います。

【梶山主任視学官】  ありがとうございます。頂いた今までの御議論というものを当然踏まえて,文部科学省として指導要領を考えていきたいと思います。
ただ,例えば指導要領自体も告示という性格があって,法令的な用語がございます。それは,法令の用語に従わなくてはいけない部分であったり,これはほかの法令用語とダブるので使わないよという考え方もあろうかと思います。また,今までおっしゃっていただいたところを踏まえて,取りあえずここでピン止めをという言い方で恐縮でございますが,皆様方に御議論いただき,それから,企画特別部会なりで様々な御議論,それからパブリックコメントを含めて,その総体として私ども,受け止めさせていただきまして指導要領を作っていくのかなと考えているところでございます。
ただ,一番根本となる思想というのは,ここに頂いたものというのは,文言が絶対変わらないとか,そういうことではないと思いますが,思想的なものということは,そこを生かして,私どもが作成していくものと考えているところでございます。

【土屋委員】  ありがとうございました。
そういう御意見の中で,資料7はかなり重要だと思われるんですけれども,その中で,先ほど小川委員が教員養成についても是非言及してもらえればという話がありましたけれども,私も賛成です。ここが初中局さんが中心になってやられていて,教員養成は高等局ということもあるのかもしれませんけれども,教員養成段階から研修と一体化して動いていくというのも,高等局の今,検討されていることだと思いますので,学習指導要領等が現場で本当に生きていくためには,教員になる前にそういうことに十分な理解とか能力がある教員を送り出すべきだと思いますので,条件整備の辺りかどこか,必ず勉強する余地があればお願いしたいなと思いました。

【原田主査代理】  ありがとうございました。
浅川委員,お願いします。

【浅川委員】  多分,会議もそろそろこれで取りまとめかなという感じなので,ちょっと申し上げたいと思うんですけれども,この会議が始まるときに最初にも申し上げたんですけれども,今,教員養成の話が出ましたけれども,現職の教員の再教育といいますか,研修は,特に地理が総合という形で必修化されたときに非常に重要になってくるんじゃないかと思います。今,例えば地理の教員がどんどん少なくなっていますし,残念なことに,日本史や世界史の先生方は地理をやりたがらないというのが正直なところです。そういう意味で,現職の研修を教育センターとか教育委員会だけではなくて,私が入っております日本地理学会とか,そういったところでも積極的に現職の教員の研修を支援していこうという動きもありますので,資料7の26ページのところに最後,ありますけれども,是非実のあるものにしていっていただけたらなと思います。
以上です。

【原田主査代理】  ありがとうございます。
そのほか,いかがでしょうか。
では,仙田委員。

【仙田委員】  先ほど小川委員が言われた「歴史総合(仮称)」「地理総合(仮称)」,それから「公共(仮称)」に順番があるのかという話についてです。私の学校では現在の中2の将来を想定しながら教務主任がカリキュラムを考えているんですが,カリキュラムに入りきらない状態も生まれてきています。他教科も含めて,この3科目を1年生に全部入れなければならないときに,同時にやることはできないですね。例えば「地理総合(仮称)」と「地理探究(仮称)」,「歴史総合(仮称)」と「日本史探究(仮称)」を同じ学年でやることは,今のシステムだと厳しいと思います。そうするとどうしても3科目が1年生に固まってしまう。順番ではなくて,全部やらないと成り立たなくなってしまうのが現状です。
それを打破するのが,はっきり言って7時間目を作るしかないかと,思っているような状況です。そこのところについて,文部科学省の御意見,例えばこういう形だったら並行してできるなど,何かありますでしょうか。

【梶山主任視学官】  今おっしゃっていただきましたように,基本的というか,この御議論の本質というのが,まず総合をやってから探究をやるというのは,これは多分譲れない点だと皆様御聞き解りところだと思います。ただ,それを1年生でどこまでやっていくか,2年生でどこまでやっていくかというところは,全体の単位数との議論になっていくと思います。ただ,例えば2年生前半に終わらせてしまって,後半からは探究に入っていくとか,それぞれの工夫も考えられると思いますし。私どもとしては,全体の中をどう考えていくかというところと,社会科の中でそこはどのようにできるかという全体の単位のところも,先ほど大杉の方も言いましたが,全体の検討の中で行っていきたいと考えております。そこで,より実のあるものができると思っておるところです。検討課題だと思っております。

【原田主査代理】  そのほか,いかがでしょうか。よろしいでしょうか。ありがとうございました。
取りまとめ資料のうち,小・中・高等学校を通じた資質・能力の育成及び高等学校「地理歴史科」の議論につきましては,おおよその合意が得られたと考えおります。議論も尽くされたと思いますので,本日はここまでにしたいと思います。
なお,本日,お出しいただいた御意見につきましては,事務局でその趣旨を整理し,まとめていただきますようお願いいたします。また,最終的な表現につきましては,各教科の議論,また学校段階別の部会の議論もありますので,それらを踏まえまして,当方で土井主査と相談しながら主査一任でまとめさせていただいて,6月下旬に開催が予定されております高等学校の地歴・公民特別チームというものがございますので,それに御報告させていただきます。その上でまとめになるかと思いますので,その点,よろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【原田主査代理】  ありがとうございます。皆さんに御了解いただけたと考えております。
本日,限られた時間ですので,言い尽くせなかったこと,あるいはお気付きの点がございましたら,後ほど期限,タイムリミットが指示されると思いますので,是非事務局までお送りいただければと思います。
では,本日の審議はこれまでといたします。これまで議論いただきまして,本当にありがとうございました。小・中・高等学校を通じて育成すべき資質・能力及び高等学校地歴・公民科に係るワーキンググループとしての取りまとめにつきましては,今回で一応目途を付けさせていただきます。今後については,事務局より説明をお願いしたいと思います。

【大内学校教育官】  失礼いたします。
これまで本当に貴重な御審議を頂戴いたしまして,ありがとうございました。
今ほど原田主査代理から御説明もございましたけれども,今回をもちまして,本ワーキンググループとして会議の開催というのはいったんここまでとさせていただきたいと考えてございます。なお,本ワーキンググループの取りまとめ,それ自体につきまして,原田主査代理から御説明ありましたとおり,横串の観点,それから各学校段階別の部会の状況といったものもございますので,全体をまとめる部会,それから今ほど御説明ございました高等学校の地歴・公民科の在り方に関する特別チームの方に報告させていただくという段取りを取ってまいりたいと思ってございます。その状況に応じまして,本ワーキンググループでの調整が必要になった場合,御参集いただくということもあると思っておりますので,その際,また別途御連絡をさせていただきたいと考えてございます。
また,今ほど主査代理の方からもお話ございましたけれども,御意見,お気付きの点,細部をもう一度お目通しを頂きたいと考えております。つきましては,非常にタイトで恐縮でございますけれども,今週水曜日,あさってでございますが,6月15日水曜を目途に事務局の方に御意見,頂戴できれば大変有り難いなと考えてございます。頂きました御意見につきましては,原田主査代理,それから土井主査と御相談させていただきまして,先ほど申し上げました特別チームの方への御報告という形でさせていただければと思っております。
事務局からは以上でございます。

【原田主査代理】  それでは,第14回の社会・地理歴史・公民ワーキンググループをこれで終了します。ありがとうございました。

── 了 ──

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