教育課程部会 社会・地理歴史・公民ワーキンググループ(第9回) 議事録

1.日時

平成28年4月11日(水曜日)13時00分~16時00分

2.場所

文部科学省 13階 13F1・2特別会議室
東京都千代田区霞が関3-2-2

3.議題

  1. 社会・地理歴史・公民の改善充実について
  2. その他

4.議事録

【原田主査代理】  皆さん,こんにちは。まだ,若干,予定された方でお見えになっていない方がいらっしゃいますけれども,定刻になりましたので,ただいまから中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会社会・地理歴史・公民ワーキンググループの第9回を開催いたします。
本日は,年度初めのお忙しい中,お集まりいただきまして,誠にありがとうございます。
本日は,主に高等学校の地理歴史科,公民科について御議論いただく予定としております。その関係で,その地歴科を中心とする委員にお集まりいただいております。
また,進行は前回と同様に私が務めさせていただきますので,よろしくお願いいたします。
それでは,最初に,事務局より4月の人事異動の御報告と配付資料の確認をお願いいたします。

【大内学校教育官】  失礼いたします。それでは,本年度もどうぞよろしくお願いいたします。
まず初めに,事務局側に異動がございましたので,御紹介させていただきたいと思います。
澤井教科調査官が初等中等教育局の視学官に就任されております。

【澤井視学官】  よろしくお願いいたします。

【大内学校教育官】  また,中尾視学官の後任といたしまして,日本史の担当になりますが,藤野調査官が就任しております。

【藤野調査官】  よろしくお願いいたします。

【大内学校教育官】  続きまして,配付資料の確認をさせていただきます。
議事次第に記載しておりますとおり,本日,資料が多ございますが,資料1から裏面にまたがりまして,資料15まででございます。また,参考資料として1から3,それから,追加で大変恐縮でございますけれども,ワーキンググループ追加資料ということで,近代化,大衆化,グローバル化に関する辞書の抜粋の部分を追加で配付させていただいております。こちらも参考資料でございます。また,参考資料3に,この4月に御異動がございました委員の皆様方の異動後の役職等も含めまして反映させていただいておりますので,御覧いただければと思っております。また,机上のタブレットでございますけれども,関連資料をデータで入れておりますので,詳細については次第3ページ目以降を御覧いただければと思っております。
以上でございます。

【原田主査代理】  では,これより議事に入ります。
本日は報道関係者より会議の撮影及び録音の申出があり,これを許可しておりますので御承知おきください。
さて,前回まで高校の地理につきましては,おおむね御意見を頂いておりますので,本日は主に次の3点,一つは高等学校の「歴史総合(仮称)」の在り方,二つ目は,歴史系選択科目についての検討,そして三つ目に社会科における見方・考え方や小・中・高等学校を通じて育成する資質・能力,この3点を中心に御意見を頂きたいと考えております。議事の流れとしましては,いつもどおり,まず事務局から資料に基づき御説明を頂いた後に,議論の内容ごとに皆さんの御意見を伺いたいと思いますので,よろしくお願いいたします。
本日の議事に先立ちまして,教育課程部会の下に置かれました総則・評価特別部会における議論につきまして,事務局から御紹介いただきます。
総則・評価部会におきましては,各教科等に関わる検討がなされておりますが,今般,特に「アクティブ・ラーニング」の視点と資質・能力の関係,学習評価の改善のポイントについて議論が行われ,各教科等ワーキンググループで更に議論すべき事項が整理されました。したがいまして,これらの状況について事務局から御説明をお願いいたします。

【西川専門官】  それでは,失礼します。教育課程企画室の西川と申します。
お手元資料の6の資料を御覧いただけますでしょうか。少し分厚い資料で恐縮でございますが,今,御紹介いただきましたが,3月14日に開催しました総則・評価特別部会におきまして,「アクティブ・ラーニング」の視点と資質・能力の関係,それから,学習評価について,この総則・評価特別部会において一定の方向性をまとめていただきました。これに基づきまして,各教科のワーキンググループ等におきましても御検討いただきたいと考えておりまして,その状況について御説明をさせていただきます。
初めに,「アクティブ・ラーニング」の視点と資質・能力の育成との関係についてでございます。こちらについては,昨年8月の論点整理におきまして,各教科における習得・活用・探究の学習課程全体を見渡しながら,「深い学び」,「対話的な学び」,「主体的な学び」の三つの視点というものに立って改善していくということが提言されております。これを踏まえまして,現在,各教科におきまして御検討いただいているところでございますが,一方,1ページの幾つかマルがありますが,下から二つ目の白マルを見ていただきたいと思いますが,学校現場におきましては,様々な取組が広がってきております。非常に進展してきているところでございますが,一方で「この型を取り入れなければ『アクティブ・ラーニング』ではない」ですとか,「この方法を実施しておけば見直しの必要はない」といった「型」に着目した理解がなされているという懸念の御指摘もございます。論点整理にありますが,「アクティブ・ラーニング」の視点というのは,特定の学習指導の型ですとか方法ではなくて,習得・活用・探究・学習課程全体を見渡した不断の授業改善の視点であるということについて留意していただきたいということで,改めて整理をまとめていただいております。
一方で,現場の観点からすると,理念だけではなくて,やはり具体的な実践力が求められるという御意見を頂いております。こうした実践面については,型あるいは方法の種類を紹介するということではなくて,「アクティブ・ラーニング」の視点に基づき,どのように授業が改善され,子供たちの変容があったのか,そういった実践の蓄積として普及がされるべきであろうという整理を頂いております。
続きまして,2ページにいきまして,「深い学び」の視点でございます。冒頭申し上げましたが,「アクティブ・ラーニング」の三つの視点については,「対話的な学び」,「主体的な学び」というものが注目をされ,「深い学び」の視点に基づく改善がなかなか図られていないのではないかという御指摘がございます。これは,「対話的な学び」や「主体的な学び」というのが,ある程度,教科共通に理解できる視点であるということに対して,「深い学び」というものが教科の特質に応じて示される必要があるということだと考えております。こういった観点から,各教科ワーキングにおいても御議論いただいているところではございますが,なかなか具体的なイメージがつかみにくいというのが一つの原因だろうということで考えております。この「深い学び」について,「アクティブ・ラーニング」の視点から整理してきたというのが,今回の総則・評価特別部会における議論でございます。
一つは,2ページの中段でございますが,複数の教科等ワーキングにおきます資質・能力の育成あるいは学習の深まりの鍵となるものとして,各教科の特質に応じて育まれる「見方や考え方」が重要ではないかということが検討されているところでございます。これを踏まえて,各教科でも御議論いただいているところでございますが,その資質・能力を獲得していくことが「深い学び」であるということの関係で,更に深めていく必要があろうと考えております。
それでは,各教科の特質に応じて育まれる「見方や考え方」がどういったものなのかということについて,2ページ下からでございますが,「見方や考え方」という概念についてですが,現行でも,例えば社会科におきましても,「社会的な見方や考え方」という記述がございます。そういう意味で,新しい概念ということではないと考えております。
ところで,この内容については,必ずしも具体的な説明がされていないというのが現状だろうと考えておりまして,今回,「見方や考え方」ということにつきまして,それぞれ知識・技能の習得あるいは思考力・判断力・表現力との関係,更には学びに向かう力・人間性の育成という観点から整理させていただきました。
それが3ページの一つ目のマルから始まります三つのポツでございます。まず,知識・技能の構造化して身に付けていくために不可欠なものであると考えております。また,「見方や考え方」が成長することにより,思考力・判断力・表現力が豊かになっていく。更には,学びに向かう力や人間性の育成については,どのような「見方や考え方」を通じて社会や世界にどのように関わっていくという点が大きく作用しているという考え方でございます。
これらの子供たちが習得・活用・探究を見通した学習課程の中で,「見方や考え方」を働かせて思考・判断・表現をし,「見方や考え方」を成長させながら資質・能力を獲得していけるといった学びが,正に「アクティブ・ラーニング」の視点であると考えております。
それから,3番になりますが,こういった「見方や考え方」というのは,当然各教科の特質に応じて育まれるものでございますが,併せて教科横断的な学習を通じて育まれていくものであるということもございます。そういった意味で,各教科と総合的な学習の時間等を含めた横断的な考え方が必要だろうという整理を頂いています。
なお,5ページになりますけれども,「見方や考え方」の成長イメージということで,少しイメージ図を付けさせていただいています。こういった考え方を踏まえて,現在,こちらのワーキングで議論いただいていることについても深めていっていただきたいと思っております。
続きまして,飛んで恐縮ですが,学習評価についてでございます。同じ資料の中段なんですけれども,ページ数が付いておりませんで申し訳ございません。中段に「学習評価の改善に関する今後の検討の方向性」といった文章で書いた資料がございますが,ちょうど中ほどかと思います。パワーポイントの図が並んでいる後の中段辺りになろうかと思いますが,ここでは,「目標に準拠した評価」というものを資質・能力の育成の観点から実質化していくために,各教科等のワーキングにおいて御議論いただきたいということで総則・評価特別部会におきましておまとめいただいたものでございます。大きく四つほどございます。
各教科等の目標を,資質・能力の三つの柱に基づき構造化をすること。これは,今,既に進めていただいている部分でございます。
それから,先ほどと関係しますが,各教科の特質に応じ,育まれる「見方や考え方」について明確化すること。
指導内容についても,資質・能力の三つの柱に基づき,どのような力を育成するのかが明確となるよう構造化を図ること。
資質・能力の三つの柱が相互に関係し合いながら育成されることを明確にしていくことが重要だと。これについては,総則におきまして,更に検討していくこととしております。
まず,観点別の評価についてでございますが,御覧いただいている中段の白マルのところでございます。各教科の特質に応じまして,前回の改訂時に整理されました学力の三要素の評価の観点に基づいて,現在,観点別の評価をされているところでございますが,一方では,子供たちの資質・能力の育成に向けた指導と評価の一体化といったことについては,更に改善の余地があるという御指摘を頂いております。
「目標に準拠した評価」の実質化,更にこれを教科,校種を超えた共通理解に基づく組織的な取組を促すという観点から,更にこの評価の観点を改めて整理したいと思っています。具体的には,別添のイメージということで,こちらのページでいきますと,4ページという小さいページ番号が付いております。2枚めくっていただきまして,「各教科等の評価の観点のイメージ(案)」とさせていただいておりますが,「知識・技能」,「思考・判断・表現」,「主体的に学習に取り組む態度」の三つの観点で評価を整理していきたいというところでございます。当然,それぞれの具体的な観点の文言については,各教科の特質に応じて整理していくわけでございますが,大きな観点としては,この三つの観点で整理していこうというふうにしております。
戻っていただきまして,観点別評価につきましては,当然毎回の授業で全てを見取るというわけではなくて,カリキュラム・マネジメントの考え方の下に,単元や題材を通じて,まとまりの中で評価していくということが必要だろうと考えています。
また,各教科で現在,御検討いただいております学習プロセスの在り方の中で,評価の場面との関係についても明確にできるように工夫していただきたいということでございます。
2ページにまいりまして,それぞれ三つの観点についてでございます。まず「知識・技能」につきましては,事実的な知識のみならず,構造化された概念的な知識の獲得に向かうことといったことが重要だと留意していきたいと考えています。各教科等におきまして,どのような知識・技能を獲得することが求められるのかということを,目標や指導内容の構成の中で明確にするようなことを工夫していきたいと思っております。
さらに,「思考・判断・表現」につきましては,各教科等の特質に応じまして,育まれる「見方や考え方」を用いた学習のプロセスを通じて評価をすることとしております。こちらにつきましても,思考力・判断力・表現力の成長が一定の時間を掛けて成長していくものであると考えております。また,目標や指導内容の構成の中で明確にできるようにしていただきたいと思っております。
それから,「主体的に学習に取り組む態度」についてですが,「学びに向かう力・人間性」というのが資質・能力の柱でございますが,この「学びに向かう力・人間性」については,「主体的に学習に取り組む態度」というものと,観点別評価・評定にはなじまないものがあると考えております。「主体的に取り組む態度」については,観点別評価を通じて評価をしていく。一方で,それになじまない部分については,個人内評価を通じて見取る必要があるということを留意していく必要があると整理を頂いています。
今の「主体的に学習に取り組む態度」でございますが,例えば,挙手の回数だとか,ノートの取り方といった形式的な活動で評価するということではなくて,子供たちが学習に対する自己調整を行いながら,粘り強く知識・技能を獲得したり,思考・判断・表現をしようとしているかといった意志的な側面を捉えて評価することが必要であると整理を頂いております。
以上,評価についてのまとめでございます。
なお,参考までにですけれども,指導能力の在り方につきましては,今の総則・評価特別部会における議論を踏まえまして,更に検討していきたいと思っています。その際に,学びのポートフォリオといったものについても併せて検討していって,学校主観で,そういった子供たちの学習の状況が引き継がれていくような仕組みを作成していくことが必要だということで整理を頂いております。
少し行ったり来たりしましたが,以上でございます。

【原田主査代理】  ありがとうございます。
概要を御説明いただきましたけれども,何か御質問がおありでしたら,お願いいたします。
よろしいでしょうか。また,後ほど何か思い出して,どうしてもということがありましたら,また御指摘ください。
では,引き続き,事務局から本ワーキンググループや高等学校の地理歴史・公民科科目の在り方に関する特別チームにおけるこれまでの検討状況について御紹介を頂きたいと思います。

【梶山主任視学官】  それでは,私から御紹介させていただければと思います。資料2を御覧ください。こちらは,ワーキンググループで前回,高等学校の歴史等の御検討を頂いたのが3月4日でございますが,それ以降,4月6日の御検討がございましたので,それについて御紹介させていただければと思います。
この資料につきまして,ページ数を振るのを失念しておりまして,大変恐縮でございますが,この中ほどにこのような「『社会的な見方や考え方と思考力,判断力,表現力等」イメージ(たたき台)」というので,紫のバックグラウンドに中のオレンジ色のものがある資料。こちらに大変恐縮でございますが,附箋を付けていただければ誠に有り難いかと思います。今後の御検討に当たっても返ることもあるかもしれませんので,こちらの横長の「4月6日ワーキンググループ資料8」というもの,「『社会的な見方や考え方と思考力,判断力,表現力等』イメージ(たたき台)」が出るようにしていただければと思います。よろしゅうございますでしょうか。
大変申し訳ございませんでした。4月6日に行われました検討につきまして,御説明させていただければと思います。
まず,今御覧いただいております「『社会的な見方や考え方と思考力,判断力,表現力等』イメージ(たたき台)」でございます。こちらにつきましては,前回に小・中学校につきましてまとめられたものを高等学校に膨らませたものでございます。先ほど,総則部会の御説明を申し上げたところにもありましたが,「社会的な見方・考え方」というものを踏まえて,思考力・判断力・表現力を育んでいくということが重要だというところで,その整理をしたものでございます。左側に1,2,3,4ということで,「考察する力」,「構想する力」,「説明する力」,「議論する力」という思考力・判断力・表現力を育む際に,小・中学校におきまして,小学校においては「社会的事象の見方や考え方」,中学校においては地理歴史・公民において,それぞれ考え方を持ち寄っていくというところ。これに加えまして,高等学校の公民科におきまして,「人間と社会の在り方を捉える見方や考え方」ということを踏まえた思考力・判断力・表現力を育むこと。
横に社会・地理歴史科というものがあるわけでございますが,これについては,本日,御議論いただきたいところでございまして,全体としては,「見方や考え方」を使って,その思考力・判断力・表現力を膨らませていくというイメージをまとめているところでございます。
それから,次のページを御覧いただければと思います。こちらにつきましては,思考力・判断力・表現力を育んで,では具体的にどういう学習を行っていくかというときのイメージ図でございます。例えば,本日でありましたら,中学校の歴史などを御覧いただければと思います。真ん中,右から二つ目の「社会的事象の歴史的な見方や考え方」というものを追究の方法として活用して考察し,構想していくということ。この際に,一番左を御覧いただければと思いますが,「考えられる追究の視点」というものを置いてはどうかというところでございます。この「追究の視点」というものが,学校段階によって高まることにより,その「見方や考え方」が変わるわけではございませんが,視点が高まることによって,全体として学びが深まっていくということが考えられるのではないか。その際に,「追究の視点」を生かした考察や構想に向かうというのが左から2番目にありまして,例えば歴史でありましたら,いつ,どこで,誰によって起こったかというのが中学校の歴史的分野であり,それを踏まえて,個々の「考察,構想した結果,獲得する知識,概念の例」が一番右のような形で,今も世界に広まる幾つかの宗教というものが,数千年前に古代からの文明,地域の都市を中心に起こったというところにつながっていくと。そのような関係を整理してはどうかということでございます。こちらも小・中学校,それから次の公民科のところは,前回,御議論いただいたわけでございますが,高校の地歴科について,本日,御議論いただければと思っております。
それから,次のページを御覧いただければと思います。先ほど,思考力・判断力・表現力というものに関して御紹介したところでございますが,そちらにつきまして,思考力・判断力・表現力について学校段階といいますか,発達段階を踏まえた整理も必要だろうというところで御検討いただいている資料でございます。
これは,前回の資料におきまして,4段階ということにしていたんですが,少しかぶる部分もあるのではないかというところがありましたので,例えばマル1を御覧いただければと思います。これは思考の部分でございますが,一番下に「社会的事象の意味や意義,特色や相互の関連を多角的に考察できる」段階。2番目に,「多面的・多角的に考察できる」段階。それから,様々なことについて,「概念等を活用して多面的・多角的に考察できる」という段階で整理していくことによって,より分かりやすさというものが出てくるのではないかというところで,このようなところも御覧いただいたところでございます。
それから,次のページを御覧いただければと思いますけれども,「社会,地理歴史,公民における学習過程の例」というところでございます。先ほど,総則部会のお話もありましたが,学習過程というものに関して,主なというか,こういう例が思考力・判断力・表現力だったり,様々な能力を育む際に考えられるのではないかという例を示すと共に,その下に「主な評価場面」というのもまとめ,学校現場におきまして,どのような場面で,どういう力をというのを分かりやすくしたいというものでございます。
これは,前回におきましては,上を小・中学校ということで分けていたんですが,基本的に小・中・高を含めて,概念的には同じような過程ができるのではないかというところで,課題把握で「動機付け」,「方向付け」を行い,「課題追究」ということで,「情報収集」,「考察・構想」を行い,「課題解決」の「まとめ」,「新たな課題」ということで「振り返り」を行っていくと。こういうときに,それぞれ「知識・技術」,「思考力・判断力・表現力」,それから「主体的に学習に取り組む態度」というものが,それぞれのより濃いところで見取っていくということが資質・能力の評価においてよいのではないかということ。こういうことについてまとめてものでございます。
また,この表の一番下を御覧いただければと思うんですが,これは高等学校についても当てはまるところでございます。様々な内容について話す際に,児童生徒の考えが深まるように様々な見解を提示することが重要であることだったり,特定の事柄を強調し過ぎたり,一面的な見解を十分な配慮なく取り上げたりするなど,特定の見方や考え方に偏った取扱いにより,多面的・多角的に考察し,公正に判断することを妨げることのないようにすること。現行の指導要領にも書いてあるようなことでございますが,このようなプロセスの中でも重要なところではないかというところで,「留意すべき点」というところにこのような形で入れさせていただいております。
それから,次のページを御覧いただければと思いますが,次が技能でございます。先ほど,思考力・判断力・表現力のところを御覧いただきましたが,技能についても具体的にどういう技能を育むのかというのをある程度明確にした方がいいのではないかというところで,このような図を御提案しているところでございます。
まず,技能につきましては,「情報を収集する技能」,それから「情報を読み取る技能」,「情報をまとめる技能」,このような形で考えていくことができるのではないか。
「情報を収集する技能」については,例えば(1)でございますが,調査活動を通じてやる。それから,諸資料を通じて行うこと。右にいっていただければ,「その他」。それから,(3)ということで,「情報手段の特性や情報の正しさに留意して」ということで,技能を見ていく際に,個々の要素についてブレークダウンしていくというとき,こういうものが参考になっていくのではないかというもので,このような資料を御提案させていただいているところでございます。
それから,その次のページを御覧いただければと思います。「社会,地理歴史,公民で育成すべき資質・能力の整理(たたき台)」でございます。これは,高等学校におきまして,前回,御覧いただいたところでございますが,それを小・中・高で整理すればどうなるのかというところを一覧性のあるもののたたき台として御覧いただいたものでございます。高等学校の地歴につきましても,前回と合わせるような形で変えているところがございますので,これについては後ほど御議論いただければと思っております。
また,小・中学校のところで赤字のところがございますが,この赤字のところに関しましては,8月にまとめた論点整理におきまして,どのようなところに関して学習活動を充実するとか,そういうところを行っていく必要があるのではないかというところでございます。このところについて,例えば小学校の社会の「学びに向かう力・人間性」でありましたら,我が国の政治の働き,それから左のところにございますが,歴史分野に関して,本日は御議論を行うわけでございますが,今まで直接的な関わりというところで,我が国の歴史に影響を及ぼすようなことを含めて世界史でやっていたわけでございますが,直接的な関わりや間接的な影響を及ぼす世界の歴史というもので,中学校における世界史的なところというのも授受していくということではどうかということ。それから,公民的なところの一番右のところですが,「学びに向かう力・人間性」ということで,他者と協働して考え,社会に参画しようとするものというところ。このようなところが赤字にさせていただいたところでございます。
こちらにつきましては,4月6日のワーキンググループにおきましては,先ほど申し上げましたところでございますが,社会への参画や関与といったことにつきまして,評価を学校でどう行うかということにも留意しつつ,どのようにまとめていくかということについて,特に御意見を頂いたところでございます。このようなところについても,また小・中学校の方でも御議論いただくことになるのではないかと思っております。
それから,その次のところを御覧いただければと思います。能力の構造化のイメージでございますが,こちらは,先ほど3本柱というところで,「知識・理解,技能」,「思考力・判断力・表現力」,「学びに向かう力・人間性」につきまして,相互の関係というものを明確にしていった方がいいのではないかというところで,それをまとめたものでございます。真ん中が「思考力・判断力・表現力等」,左のところが「知識・技能」と呼ばれるもの,右のところが「学びに向かう力・人間性」のところでございます。こちらにつきまして,例えば「技能」と「思考力・判断力・表現力」の関係としては,マル1でございますが,「収集し,読み取った情報を組み合わせて考察・構想し,説明・議論する」といった関係になっていくのではないかというところ。それから,「思考力・判断力・表現力」から「学びに向かう態度」ということになると,「社会に見られる課題を意欲的に解決しようとすることで『社会に参画しようとする態度』」というところ。1から9まで,別に番号に順番があるわけではございませんが,そのような関係があるのではないかというところを整理させていただいたものでございます。
それから,その次のページを御覧いただければと思います。4月6日の資料の14でございますが,先ほどの三つの柱というものに関して,評価の観点を検討したものがこちらでございます。それぞれ,「知識・理解,技能」,「思考・判断・表現」,「主体的に学習に取り組む態度」というところでございますが,社会科における「知識・理解,技能」というものが社会的事象について理解し,その知識を身に付けているという点。それから,社会的事象を調べる技能,先ほどのところで整理したものでございますが,それを身に付けているかどうかという点。それから,「思考力・判断力・表現力」でございますが,先ほどの4本の柱というものに関して,一番上がマル1,2番目がマル2,マル3が3番目と4番目を併せたような形で,そのようなことができているということ。それが思考力・判断力・表現力を評価において考える趣旨ではないかということ。それから,一番右でございますが,学習対象について,主体的に調べたり,分かろうとしている態度。それから,課題を意欲的に解決しようということ。また,学習状況に関して,先ほどもございましたが,個人内評価が適当であることについては,そういうもので行っていくのではないかということ。それを整理したものでございます。
最終的に次のページは,全体像が分からないというところもあって,今までの資料の多くのところを統合したようなものでございます。社会科等において育成すべき資質や能力と評価の関連イメージでございますが,一番上にありますように,社会科全体として国際社会に主体的に生きる平和で民主的な国家・社会の形成者を目指す公民的な資質・能力を育成するというわけでございますが,その際に真ん中にあります社会的事象の見方や考え方というものを,それぞれの力を育むに当たって,それを活用して育んでいくんだと。それぞれに対応して,観点別評価を行っていくんだということ。こういうところを示したものがこちらの図でございます。
それから,資料16を御覧いただければと思いますが,資料16が「社会,地理歴史,公民における教育のイメージ」ということで,どのような教育を行っていくかという3本柱のところを,もう一度系統的にそれぞれの幼児教育や小学校の生活科も含めて整理したものでございます。幼児教育,生活科の土台において,小学校社会科において,中学校社会科において,それから地歴・公民において育んでいくわけでございますが,小学校のところを御覧いただければと思います。ひし形のところ,先ほど申し上げたところでございますが,「グローバル化する国際社会に生きる平和で民主的な国家・社会の形成者を目指す公民的な資質・能力を養うために,社会的事象の見方や考え方を用いて以下の三つの資質・能力を育成する」という大きな目標的なものをこちらに置いた上で,三つのマルということで,その資質や能力というものをまとめております。
黒マルのところに関して,学習活動というところで,「アクティブ・ラーニング」と先ほどの御説明もありましたが,そのようなところであったり,先ほどの過程のところも含めた,御説明したようなところの充実を図ると共に,二重マルのところで内容的なところに関して充実していくようなことをまとめております。高等学校の地理歴史科につきましても,本日御覧いただければと思っております。
最後に,小・中学校のところでございますが,内容につきまして,まず内容の整理をしてはどうかというところで,地理,真ん中がいわゆる公民的なところ,一番右が歴史的なところで,小学校から中学校までに,現行の学習指導要領でどういうことに関して,どういう内容をやっているかというのをまとめたものでございます。もちろん,メーンになるところを中心に書いておりますので,その他のところに出てくるものもあると思いますが,例えば小学校3年であれば,地理的な地域の話を指導したり,その際に政治的な地域の災害及び事故の防止というところを指導しているところでございます。
赤で書いてあるところが,基本的には論点整理などにおいて書かれている,今回充実すべきではないかと言われているところでございまして,それを書いたら,こうなるのではないかというところになっております。特に本日の歴史の話でございますと,小学校6年生のところで,右を御覧いただければと思いますが,世界の歴史地図を活用したことによって,歴史的,世界史的な内容についての取扱いに関して,学習活動の充実が図られるのではないかというところと,歴史的分野の小学校のところ,右のところでございます。一番赤のところになっておりますように,先ほど申し上げました直接日本の歴史に影響を与えるものだけではなくて,間接的に与えるようなものに関しても,触れることによって,世界の歴史の充実も図られていくのではないかというところが,こちらで提出させていただきまして,御議論いただいているところでございます。
以上でございます。

【原田主査代理】  ありがとうございます。
一遍にたくさん言われても,なかなか頭に入り切らないかと思いますけれども,社会科と地歴の資質・能力については,後ほどまた御議論いただく時間がありますので,そのときにまたよろしくお願いいたします。本ワーキンググループにおける検討状況につきましては,引き続き情報を共有していきたいと思いますので,よろしくお願いいたします。
それでは,本日御議論いただく内容に移りたいと思います。先ほど申し上げました三つの議論の課題のうち,まず1点目です。「歴史総合(仮称)」の改訂の方向性として考えられる構成について意見交換を行いたいと思います。
まず,事務局から,前回会議における御意見なども踏まえまして,資料の御説明をお願いいたします。

【大内学校教育官】  失礼いたします。それでは,「歴史総合(仮称)」に関する資料として,本日御議論いただきますのは資料9でございます。
それに先立ちまして,今ほど御覧になっていただきました資料2の中に,前回3月4日の資料が入っておりまして,先ほど附箋を付けていただいた箇所から4枚ほど戻っていただきますと,前回3月4日の際のワーキンググループ資料7という資料が出てくるかと思います。すみません,先ほどの附箋の付いた箇所から4枚ほどめくっていただいて,前の方に戻っていただきますと,3月4日の資料7というものがお手元に開けるかと思います。すみません。不手際により付箋が分かりにくく,御迷惑をお掛けして申し訳ございません。次回以降,注意したいと思います。
お手元の3月4日の資料7でございますけれども,前回,こちらにつきまして,本ワーキンググループにおきまして御意見を頂戴したところでございます。この資料といいますのは,基軸となる問いと獲得する概念に着目した「歴史総合」の構成イメージということで,縦軸に歴史の転換を捉える視点,この視点に着目をし,横軸に現代的な諸課題の背景となる興りや推移に関わる事柄,具体的には経済あるいは政治,国際関係,社会・文化といった視点から,近現代の歴史の大きな転換を捉えるという構造で,この表の中に基軸となる問いでありますとか,それに基づく具体的な問いを設定する,更には獲得する概念の例ということで,整理を試みたところでございます。
こちらにつきましては,たくさんの委員の皆様方から,資料についての御提案を頂きました。本当にありがとうございました。それらの中の幾つか御意見として,やはり横軸のところなんですけれども,経済,政治,国際関係,社会・文化というのが截然と分け難いという御意見を多く頂戴いたしておりました。
また,併せて横軸につきましても,現代の諸課題の捉え方によって横軸自体が変化するので,そういった諸課題の捉え方をきちんとした方がいいのではないかという御意見を頂戴しておりましたので,こうしたことを踏まえまして,今回,資料9のような形で再構成させていただいたということでございます。
本日の配付資料ですが,資料9をお手元に御用意いただければと思います。「高等学校学習指導要領における『歴史総合(仮称)』の改訂の方向性として考えられる構成(たたき台)」でございます。これまでの御意見を踏まえまして,「歴史総合(仮称)」の学習内容を焦点化するために現行の指導要領や解説を参考にしながら,上の方に示しておりますけれども,現代的な諸課題の考察につながる歴史的な推移や状況を捉えるものとして,aからeということで,今回示すことといたしました。aとして,「自由と制限」,bとして「富裕と貧困」,cとして「対立と協調」,dとして「統合と分化」,eとして「開発と保全」という五つの観点と申し上げましょうか,視点と申し上げましょうか,そういったものをまず設定するということを試みた次第です。
これら,aからeにつきましては,政治経済,国際関係,社会・文化と,前回の資料でも出てまいりましたが,こういったものが複雑に絡み合う現代的な諸課題の考察につながる歴史的な状況を捉えやすくするという観点が一つ。また,調整や解決が必要な事柄ではないかということが一つございまして,近代化,大衆化,グローバル化に代表されるような社会の大きな転換を契機として,歴史的に課題とされてきた事柄ではないかということで,ここにaからeの形で再整理を試みたということでございます。
また,「歴史総合(仮称)」におきましては,取り上げる学習課題によって,時間軸や空間軸について,これについては参考の下の方にも書いております経済,学習課題によって取り上げる時期を広げて設定したり,多様な地域を取り上げたりするという形で,一定程度柔軟に取り上げるということは考えられるにせよ,いつ頃,何を取り上げるのかということについて明確にしておくことが必要ではないかという御意見を頂戴いたしましたので,今回,その縦軸に主な時期区分ということで,それを示すことといたしました。
また,その中で,近代化,大衆化,グローバル化のような歴史の大きな転換に着目した変化を扱うということにつきましては,従来までの議論を受け継いだ形でこちらに整理させていただいているということでございます。
具体的な学習課程なんですが,こちらにつきましては,歴史の大きな転換の中でどんな課題が生まれ,時期に即してaからeの調整あるいは解決が必要な事項がどのように当時考えられていたかということを,前回も出ておりましたが基軸となる問い,今回は考察を深める問いという形で示しております。この考察を深める問いというものが真ん中の方にありますが,これを立てまして,「比較」,「因果」,「相互作用」などの歴史的な見方や考え方を用いて考察していくという整理してございます。これは,従来の考え方を踏襲しているところでございます。
例えば,近代化のところでありますと,近代化とはどのような動きか。これは,かなり大きな問いなんですけれども,これを学習課題を設定いたしまして,現代的な諸課題に引き寄せて捉えさせるというためには,例えば工業化と政治変革の当時の動向を確認するというような作業をしながら,主に先ほどの「a自由と制限」あるいは「b富裕と貧困」という問題がどのように捉えられていたのかということについて考察をしていくという学習活動が考えられるのではないかということでございます。その際に,考察を深める問い,基軸となる問いでございますけれども,こちらについては「工業化と政治変革は何をもたらしたか」,「日本,アジア・アフリカはどのように変化をしたか」,まとめとして,「社会の近代化は何をもたらしたか」。こういった形で問いを立てると共に,この資料9の右側の下に方にございます歴史的な見方や考え方,「歴史の学び方」と書いておりますけれども,こちらを用いて,考察する学習を通して,その上の方に示しております,「取り上げることが考えられる題材」といった題材などについて,理解を深めていくという学習スタイルを基本として,この科目を構成していってはどうかということの整理をしたところでございます。
なお,この科目の導入部分,上の方に青帯で書いてございますけれども,「歴史学習の扉」ということで,歴史をなぜ学ぶか,あるいはどう学ぶかという事柄を設定いたしまして,中学校社会科の歴史的分野の学習との接続に配慮したり,近世の日本やアジアを事例として取り上げたりしながら,それ以降の学習とのつながりといったものに配慮して,導入部分を設定するということ。このことについても,従来の御議論を受け継いだ形で整理させていただいたということでございます。
「歴史総合(仮称)」に関する前回の御議論につきましては,資料1になりますけれども,資料1のページ番号で申し上げると28ページから30ページまでに「歴史総合(仮称)」に関わっての御意見を頂戴しておりますので,そちらは後ほど御参考にしていただければと思います。
「歴史総合(仮称)」の構成につきましては,以上でございます。

【原田主査代理】  ありがとうございました。
それでは,資料9で今御説明いただきました「歴史総合(仮称)」の方向性と構成につきまして,20分程度で御議論いただきたいと思いますので,いつもどおり,もし御発言をされる方は名札を立ててくだされば,順次,御指名させていただきたいと思います。
では,よろしくお願いいたします。
特に,どこでも構わないんですけれども,一番上のaからeに掲げられた現代的な諸課題につながる歴史的な状況を捉える事項として,これで妥当かどうかを中心に御意見を頂きたいなと思っております。
では,小川委員,お願いします。

【小川委員】  小川でございます。この新しいたたき台に,私は基本的に賛成であります。非常によく整理されてきたのではないか。その場合,二つのことを更に検討すべき課題として御提案申し上げるわけです。
まず一つは,18世紀後半から取るということになると,ヨーロッパ発の産業革命が世界に与えた影響を出発点とするわけであって,それはかなりヨーロッパ中心主観になってしまうところがあって,これまで歴史研究が積み上げてきた近世のアジアなどを中心とする豊かな世界思想が,時計の針が戻ったように旧態依然たるヨーロッパが世界を動かしたという歴史像になってしまうおそれが多分にある。したがって,歴史学習の扉というものがどのように正に歴史学習の出発点になるかということが問題であって,そこの工夫がより一層必要なのであろうということが第1点です。
それから二つ目は,この近代化,大衆化,グローバル化というのが視点だということは,このワーキンググループでも強調されているんだけれども,ともすると,やはり時代区分として受け取られる可能性が大きい。そうであると,これは歴史の近現代のところの概説というだけになってしまって,この程度のことは選択科目のところをしっかり勉強すれば,おのずと学習できるであろうと高校現場が捉えて,また未履修になりかねないおそれが多分にあるわけです。そこのところが18世紀後半から現在,19世紀後半から現在とあえて強調されて,これが輪切りではないような図になっておられる。その意義がしっかり強調されることで,「歴史総合(仮称)」というものが新しい歴史教育の正に幕開けになるであろうと期待しています。
以上です。

【原田主査代理】  ありがとうございます。
では,磯谷委員,お願いします。

【磯谷委員】  はい。よろしくお願いします。
前回までのところで,「歴史総合(仮称)」というのが近代化,大衆化,グローバル化と,これが時期区分ではないとずっと強調されてきました。とすると,これは一体何だということで,現場の教員からすると,どうやって教えるんだということで非常に不安ではありました。今回見せていただいたものを見ますと,意外に時期区分になっているということで,現場としては非常に安心ではあります。
ただ,だからといって,これがまた通史になってしまうと,昔と同じで細かいことに走ってしまいますので,それぞれの単元を教える際に,やはり上にあるaからeの観点をきちんと持って,更に資料を使いながら概念をつかんでいくといった授業形態にしていくことが非常に大切ではないかなということを思っております。全体としては賛成だということでございます。
以上です。

【原田主査代理】  ありがとうございます。
では,仙田委員,お願いします。

【仙田委員】  資料を見せていただきまして,ありがとうございます。
ただ,今,学校現場で実際に教育課程を考えて見ていると,どう見ても2単位でしか「歴史総合(仮称)」は入らないだろうと思います。それも,今回の意義と,多分高校1年生レベルでやらないと,これから話をする選択科目のことについてはつながっていかないだろうと考えています。
単位でやるとして,例えば近代化,大衆化,グローバル化とあったら,それぞれどのぐらいの割合で時間を取れるのか。三つに均等にやったとしても,学習について「深い学び」を考えるのが,やはり一番大きなところだと思いますね。そうすると,少なくとも各項目最低2時間は欲しいとなると,各歴史学習の扉を2時間加えたとして,それぞれに五つぐらいずつしか項目は挙げられないんですね。たった15の項目の中で,日本史も世界史もいろいろと入れていったならば,非常に少ない内容のものになるということを前提に考えていただきたいと思っています。
余り難しいことにいってしまったら,学校現場はもたないと思っています。変な話ですけれども,私は,受験校から定時制から全部いましたけれども,どういうところにも通じるようなもので,この科目の考え方を知らせるためには非常にコンパクトにしないと無理だと思います。ですから,私も前回も言ったんですけれども,切り口は彼らにとっては身近なものかなと思っています。
先ほどお話にあったとおり,小・中のところでは,地域・日本・世界と分けていることを考えると,この三つがつながるようなものを題材にしてもらいたいなと思っています。地域や身近にあることが世界の歴史とつながっているんだという題材のみ,私は取り上げたっていいのではないかなと思っています。
そうすると,現代までという,今お二人からの意見がありましたが,確かにこれはとてもいいと思います。そうすると,2単位時間ではできないと思います。自分たちがこれからどうやっていこうかという点まで評価につなげるということが先ほどもお話にあったんですけれども,どういう発想があるんだということを生徒それぞれに言わせたら,「アクティブ・ラーニング」ではできます。でも,必ず3時間ぐらい必要になってしまうと思います。そうすると,なおさらのこと,項目数を減らせなければいけない。ですから,私は18世紀後半からでは厳しいかなと思っています。もっと後ろでも良いかと考えます……。そうでないと,結局,昔のように最後は終わらないということが出てきてしまうのではないかなと思っています。
それから,一番心配しているのは,これを違う科目に変えてしまうことです。ですから,日本史と世界史が融合した世界の中の日本という形で捉えていただけるのが一番いいかなと思います。それで項目を作って,そして現代までを調べられるような形の「アクティブ・ラーニング」ができる科目を構成していただけると有り難いと思っております。
以上です。

【原田主査代理】  ありがとうございます。
ほか,いかがでしょうか。
池野委員,お願いします。

【池野委員】  二つ意見があります。一つは,「歴史総合(仮称)」自体が資質・能力を生かすといいますか,作り上げるときに,どういう役割を果たすかという点についてもう少し明確にしてほしいということです。「歴史総合(仮称)」が歴史的な見方・考え方と共に国家・社会の形成者としての公民的資質・能力にどこまで生かすような科目になるのかということです。
私から見ると,現代的な諸課題につながるというところの現代的な諸課題そのものがもう少し前面に出てこないと,結果的に「歴史総合(仮称)」が歴史を教える。先ほどから出ていますけれども,18世紀後半から現在の近代化を教える,19世紀から現在の大衆化を教えることになってしまうのではないか。これだったら,歴史を教える形にしかならないのではないか。現代的な諸課題そのものを学ぶものにならないのではないかなと思います。
例えば,これはどういう意図で色が付けられているか分かりませんけれども,近代化という一番初めの大きな単元になるであろうと思われる,「歴史学習の扉」が第1単元だとすると,2段目の「近代化はどのような動きか」というのがあります。これは18世紀後半から現代まで見通して,全体で現代の社会の中で近代化はどんな働きをしているか。例えば,「産業社会の到来」というのは,日本の現代の社会の中で産業化なり産業社会というものがどういう働きをして今に至っているのかということの方が大事だという意味だと思うんですよね。
だけど,これを見ると,出発してきたことが,実際に近代化がどのように産業社会を作ってきたかという方に従来の世界史なり日本史の産業革命を教えるものにとどまってしまうのではないか。現代の諸課題の意識化が薄くなってしまって,先ほどから出ていました18世紀から19世紀の産業社会なり国民国家形成の部分を教えてしまう可能性が高くなってしまって,歴史の教える通史学習的な部分になってしまうのではないかなと思います。これが一つです。
二つ目は,今回新しく現代諸課題につながる歴史的状況のために学習内容の焦点化がaからeまで例示されていますが,この「自由と制限」とか「富裕と貧困」というのは,多分現代の中にいろいろな働きとして,あるいはいろいろな問題として抱え込んでいる視点だと思うんですよね。それが考察の視点の中に出てくるのはとてもいいことだと思います。しかし,それが部分,部分に入り込むのか,エッセンシャルクエスチョンと言われているような本質的な問いを作るために,例えば近代化が私たちの「自由と制限」とか「富裕と貧困」と言われるものにどう働いて,歴史を作ってくるときに,今現在の我々の自由や格差と言われるものをもたらすものを作ってきたのかという核になる問いにはならないのかなということです。そうしないと,現代的な諸課題につながるような歴史学習にはならないのではないかなと思っています。
そういう意味で,ここはたまたま赤から黄色,紫になっていますが,その時代,時代,18世紀から19世紀,19世紀から20世紀の部分だけを教えるのではなくて,現代の21世紀の今を核にしながら,近代化あるいは大衆化がどうa,b,c,d,eの観点から見たら出てくるかという単元の作り方にしないと,「歴史総合(仮称)」が学習指導要領全体の資質・能力論に貢献することはできないのではないかなというのが私の意見です。
以上です。

【原田主査代理】  池野先生,今2点御意見を頂いたんですけれども,2点目は1点目の質問への池野先生なりの一つの回答というか,案と捉えてよろしいですか。

【池野委員】  はい。

【原田主査代理】  はい。ありがとうございました。
ほかにいかがでしょうか。
では,永田委員,お願いします。

【永田委員】  失礼いたします。私も素朴な疑問で,地理なものですから,井田先生と同じように持続可能な社会づくりに向けてというところで,基本的に持続可能な社会というのは,未来志向で考えるということです。この用語に関連してそれぞれ世界史だったら大きく四つ,日本だったら大きく五つに区切っています。それぞれの時代で持続可能な社会づくりに向けて考えるのか,未来について考えるのか,つまりそれぞれの時代の次の時期についての持続可能な社会づくり,例えば原始・古代であれば,次の中世に向けての持続可能な社会づくりなのか,それとも額面どおり,現代からみた未来に向けての持続可能な社会づくりなのか。後者の場合だったら,現代とのつながりで原始・古代であっても,中世であっても,近世であっても,近代であっても,どのようなつながりがあって,現代の社会をどのように持続可能にしていくのかという視点は必要なのではないかなと思っております。
それと,世界史と日本史で新しい「探究科目」が出てきておりまして,私は地理が専門ですから,ぱっと見た感じ,世界史の方は「多様性」,「複合性」,「相互依存性」,「多元性」のキーワードがわかりやすい。日本史の方が広がりがあって分かりやすいということなんですけれども,紫のところで4行とか5行とかで書いてあるもので,その広がりが分かるようなキーワードがほしいです。例えば原始・古代であれば,「社会や文化の特色」という言葉が入っています。中世の日本だったら「社会変動や文化の主体の多様化」,次の近世だったら「安定と動揺,変化への胎動」,近代だったら「変化と多様な展開」,最後のところだったら「日本を歴史的な視点」とかありますので,できれば世界史と日本史で表記を合わせるようなキーワードみたいなものを示していただけたら,私のように地理専門でも分かりやすくなると思いますので,よろしくお願いいたします。

【原田主査代理】  ありがとうございます。
もう少し考察の視点といいますか,方法に即した問いの考察の事例をもう一回きちんと見直すべきかという御提案,御指摘だったと思いますが,ほかにいかがでしょうか。
大石委員,お願いします。

【大石委員】  すごく整理されてきたなという印象を持ちました。その上での意見なのですが,最初に「扉」のところで「近世の日本・アジア」といったこの「近世」が,18世紀後半の近世の日本との関わりがやはり気になります。江戸時代とくくられているものが,この科目でそれ以前と以後とどういう形で分けるつもりかなというのが,私はアーリーモダンとして,日本の近世を一つにして,もう少し大枠で捉えていいような気がしますが,これは近代化を狭く取っているような印象を持ちました。
あと,課題aからeの現代的な問題も生徒にとっては切実な問題だし,日々ニュースになってくるので,こういう立て方というのはすごく興味を持つだろうと思うし,これを歴史的形成の中でつかまえるのはとても大事だと思います。そうしたときに,さらに,eに加えてマイノリティの問題ですね。それは,やはり今の社会としては,当然捨て置けない課題で,ここで止めてしまっていいかなと思います。
それから3点目ですけれども,課題群のところの例で「a~bなど」,「aからcなど」,「a~eなど」と課題にだんだん発展させようという気持ちは分かるんですが,例えば「開発と保全」なんていうのは,江戸時代の段階で熊沢蕃山をはじめ,開発をしていいか,悪いかという自然の問題,共生の問題が議論されていて,これももう少し緩やかに取って,いろいろな時代でいろいろなa,b,c,d,eがあるということで,かえってここで縛りを掛けない方がいいかなと思いました。
以上です。

【原田主査代理】  一つ,大石先生,マイノリティの問題,例えばここに挙げられているaからeは,「富裕と貧困」とか「対立と協調」というような,お互いにそれを何とか調整しつつ,解決に向けて努力しなければいけない対立軸のように書かれているんですが,マイノリティの場合,何とかと何とかみたいな言い方はありますかね。

【大石委員】  今あえて言えば,「多数と少数」みたいな言い方になって,それがどう共存していくか,共生していくかという課題は大きいと思います。

【原田主査代理】  分かりました。ありがとうございました。
では,羽場委員,お願いします。

【羽場委員】  ありがとうございます。非常によくまとまっていると思います。全体として賛成でございますが,少し小さい点で二,三点指摘させていただきます。1点目は,皆様がおっしゃられていることと関連しますが,左に18世紀,19世紀,20世紀と入れるのは良いと思いますが,分析視点としてはむしろ,「歴史総合(仮称)」は現代的な諸課題から近代以降を見直すという視点がより斬新であると考えており,それを評価しております。ゆえに時系列のの3点は,時代認識ということであれば良いと思いますが基本は,これまで学んできた近代化や大衆化やグローバル化という時代的概念を,今の世界からどのように捉え直すかということで見た方がよいと思います。それによって,未履修とか,これまでと変わらないのではないかという批判と差異化することができるのではないでしょうか。それが一つ目です。
もう一つは,近代化の中に「比較」を中心に「因果」,「相互作用」を考えるのは大変いいと思います。合わせて最初のお話の中にありました,「比較」と「構造化」というのを入れてはどうかと思いました。近代の場合には,一つは「比較」としてのヨーロッパとアジア,日本,あるいはアフリカということは極めて重要であって,それによってこれまで学んできたことをいかに相対化するかということがあると思います。他方で近代世界における中心と周辺という構造化と広がりということがあり,ヨーロッパを中心に近代化が拡大していく過程で,どのように中心と周辺の構造化がなされてきたかということも大変重要だと思いますので,それをどこかに入れていただければ有り難いと思いました。
第三は,グローバル化の「相互作用」です。グローバル化の場合には,バイではなくマルチのネットワーク化というのが非常に重要なタームであると思っています。単なる「相互作用」だけではなくて,幾重にも広がっていくネットワークが旧来の世界史という横並びから,相互に関連したグローバルという世界を作っていっているので,「ネットワーク」という言葉を併せて入れていただけないかということがもう一つです。
第4に,小さなこと,あるいは極めて重要な点を付け加えさせてください。この分かりやすく素晴らしい赤,黄色,紫の図は,ヴィジュアルな概念図として非常に重要で,是非入れていただきたいと思います。ただ近代は,ヨーロッパを中心として世界に広がっていくという中心周辺の構造のコアがあり,それが大衆化し,グローバル化していく。即ち,世界史が個別から地球的な規模で広がり,それが場合によっては宇宙,あるいは更にグローバルヒストリーと言われるような人間史だけではなく,生物史や宇宙史などにも広がっていくイメージを包括するような図であると思います。ですので,この図は,(工夫していただきたいのですが)近代のところをコアとして,大衆化になり,グローバル化で全体を包み込むようにした方が分かりやすいのではないか。現代を起点とするというのは賛成ですので,それを踏まえて工夫していただければと存じます。
最後にあと1点,少し細かいことですけれども,bの「富裕と貧困」は,例えばピケティの言うような「格差と貧困」,あるいは「豊かさと貧困」という形にしてはどうか。「格差」というと「富裕と貧困」そのものも入ってきますけれども,格差が広がることによって貧困が拡大するということで考えると,格差社会というのは近代から現在につながる非常に大きなモーメントではないかと思っています。
以上でございます。長くなって申し訳ありません。ありがとうございました。

【原田主査代理】  ありがとうございます。
羽場先生の3色の関係は,原案は時間的なイメージで包含関係を示していますけれども,先生がおっしゃるように空間的に見ると,確かに逆転させた方がいいかもしれませんね。その辺も一つの課題と言えるかと思います。
それでは,羽田委員,お願いします。

【羽田委員】  全体としてはとてもよいと思いますが,1点,少し具体的なことを考えたときに,世界の中の日本をどうこの中で位置付けていくのかということについて,もう少し整理が必要ではないかなと思います。この期間の中だけでも日本自体が随分変わってゆきます。また,世界自体も変わっていく中で,両方が動き,変化し,相互に影響を与えながら,現代の日本ができてくるわけで,それをどのようにこの中で書いていくのかは,相当しっかりと検討しないと難しいのではないかなと思います。そのような視点からの研究さえもがまだ十分には行われていないからです。実際にテキストを記す段になると,この点が大きな問題になると考えます。つまり,この後の選択科目では,日本と世界が分かれることになるようですが,ここはそれを一緒にして考えるわけです。具体的にどう記すかということをしっかり話し合わねばなりません。それと関連することですけれども,「グローバル化は私たちに何をもたらしているか」という,この「私たち」とは誰のことでしょうか。日本人なのか,それとも地球の住民なのか,テキストを作る人たちの立場によって,説明の仕方,書き方が変わります。私たちがどういう生徒を作っていくのか,あるいは生徒にどういうふうになってもらいたいのかということす。「日本人」ということだけを強調するのか,「地球の住民」と意識を持たせるのかということです。でここで言う「私たち」というのは,やはりよく吟味しておく必要があるのではないかと思います。

【原田主査代理】  ありがとうございます。
2点とも貴重な提言かと思いますので,今後,みんなで知恵を出し合わないと,日本と世界をどう「歴史総合(仮称)」で位置付けるかというのはとても重要なことかと思います。
では,田中委員,お願いします。

【田中委員】  ありがとうございます。特にグローバル化の観点で二つコメントさせていただきたいと思います。
一つは,前回出ていた経済,政治,国際関係等で切るのではなくて,こういう形に整理していただいたのは非常にいいことだと思います。何回も私は申し上げていますけれども,現代の課題で言えば,例えば中東沖の難民,地域紛争をどう見るのかというのは,経済も政治も全て関わってくることであると思っています。その過程で,現代の難民,紛争を19世紀,18世紀までさかのぼって中東の歴史等まで,そこに大国の影響を及ぼしているというのを見ていくというのは非常にいいかなと思っています。
その上で2点ですが,グローバル化の観点が単元で並んでいるのを見ると,今お話が出ていましたけれども,ネットワークという御指摘もありました。国を前提にした従来の地域統合,国際地図というのは,全部国を前提にしたようなトーンが多いと思います。グローバル化は,どちらかというと国の役割も大切ですが,それ以外の企業,NGO,市民等の関わりが大きく出てきているのがグローバル化だと思います。ここら辺のほかの様々なアクター,ステークホルダーというのがグローバル化の特徴で,そこに着目させるようにさせてはどうかと思っています。
それから2点目は,今,羽田先生からも出ていましたけれども,特に20世紀現代まで,日本がこのグローバル化社会にどう貢献してきたか,関わりを持ってきたかという観点を,是非ここで取り扱う必要があるのではないかなと思っています。安全保障だけではなくて,開発援助等で世界のグローバル化に対して,日本がどう貢献してきたかというのは,子供たちに是非教えてほしいなと思っております。それが,歴史的に急に始まったわけではございませんので,歴史をさかのぼっていく,日本自身の発展の歴史も振り返っていただきたいと思っております。ありがとうございます。

【原田主査代理】  ありがとうございました。
それでは,この「歴史総合(仮称)」の在り方は,当然,その後に続く日本史選択,世界史とも大きく関わると思いますので,引き続き,資料10から12につきまして,事務局から御説明をお願いいたします。

【大内学校教育官】  ありがとうございました。
それでは,資料の10から12をお手元に御用意いただければと思います。
資料10につきましては,前回,3月4日の会議の際にも少し御覧いただいていたところでございますけれども,そこから若干の修正を加えておりますので,その修正箇所を中心に御説明させていただければと思っております。まず,資料10でございますけれども,「歴史科目の改訂の方向性として考えられる構成」ということで,上の方に新必履修科目,今,御議論を頂戴しました「歴史総合(仮称)」を位置付けまして,特にここの箇所は変更はございませんが,この科目については,現代的な諸課題の背景にある歴史をグローバル化につながる近現代の歴史の転換に着目して追究するということと,単元の基軸となる本質的で大きな問いを設け,諸資料を適切に活用しながら,比較や因果関係を追究するなど,歴史的な見方や考え方を用いて考察する「歴史の学び方」を身に付けるという大きく二つの要素を持つものでございました。この新必履修科目で習得した「歴史の学び方」を活用しながら,新選択科目案ということで,その下に示してございます「世界史に関わる探究科目」あるいは「日本史に関わる探究科目」ということで,前回,科目構成の考え方について御説明をさせていただき,御意見を頂戴したところでございました。
特に,今回変更を加えている箇所ということでございます。「新選択科目(案)」の「日本史に関わる探究科目」のところ,右下でございますけれども,こちらの近現代の扱いについて,少し書きぶりを充実するような修正をしております。具体的には,「歴史総合(仮称)」で日本史の三つ目のマルのところですが,「近現代では,『歴史総合(仮称)』で獲得した概念や,前近代の学習で高めた歴史を解釈,説明し考察する力を用い,地域等の多様な資料を活用し,現代につながる諸課題を多面的・多角的,歴史的に追究,探究する」ということで,特に日本史につきましては,前回の資料の際にも少し書き添えてはおりましたが,歴史を解釈,説明,考察していくという「歴史の学び方」を基軸にしながら,この科目を構成していくというところがございましたので,それを少し明確にする形で,ここに加筆をしました。
具体的にどういう構造になっているかということなんですけれども,まず資料11を御覧いただければと思います。資料11は世界史に関わる部分で,資料10につきまして大きな変更はございませんでしたけれども,それを基にして,今回,世界史については,資料11に示すような形で整理したということでございます。
まず,真ん中の方でございますけれども,育成すべき資質・能力といたしまして,大きく四つ示させていただいております。一つ目がいわゆる知識理解に関わるところといたしまして,諸地域世界の歴史に関わる諸事情についての知識,また諸地域世界の歴史の大きな枠組みと展開の考察に関わる概念の理解ということを,まず一つ目のマルとして,育成すべき資質・能力として設定しております。
また,2点目といたしましては,諸資料を収集する,読み取る,まとめるといった技能。
3点目といたしまして,諸地域世界の歴史の多様性や複合性,相互依存性や多元性,これは図の右側の青色の枠囲いで出てくるんですが,こういった多様性,複合性,相互依存性,多元性というものに着目して考察し,選択や判断について構想していく力。
最後に,持続可能な社会づくりに向けて,広い視野に立って,世界や日本の在り方を意欲的に探究しようとする態度という資質・能力,知識・理解,思考・判断・表現,それから学びに向かう力というものについて,ここに示すような形で整理してはどうかということでございます。
具体的な「世界史に関わる探究科目(仮称)」と右側に示してございますけれども,こちらの中で大きく四つの柱で構成してはどうかということでございます。まずは,「諸地域世界の歴史的特質」,次に「諸地域世界の接触と交流」,三つ目として「諸地域世界の結合と変容」,四つ目に「地球世界の到来」という大きく四つに項目を分けまして,点線の中で示しておりますような取り上げられることが考えられる題材ですけれども,例えば,「地球環境」,「文明」,「都市」,「信仰」,「港市」,「奴隷制」,「カースト制度」,「華夷秩序」といった事柄を題材として取り上げながら,右側にございますけれども,この項目については「地域性豊かな諸文明の形成」というような多様性に着目して,矢印のところになりますけれども,諸地域世界の歴史の多様性を把握していくと。
同様に「諸地域世界の接触と交流」につきましては,点線で示すような題材を取り上げつつ,複合性ということに着目して,複合性を強める諸地域世界の特質を理解していくという構造で作ってはどうかと整理したところです。
下段の方ですけれども,「参考」というところで,枠で囲われておりますが,「歴史総合(仮称)」で習得した「歴史の学び方」,先ほど,「比較」,「因果」,「相互作用」という部分がありましたが,歴史的な見方や考え方を踏まえまして,これらを活用して,広い視野に立って深く考察する科目として,この科目を置くということ。
また,「前近現代」になっていますが,「現」は取ってください。誤植でございます。失礼いたしました。前近代では,近現代につながる諸地域世界の文化の多様性,複合性を時間軸(タテ)と空間軸(ヨコ)の変化に着目して理解させると。
また,三つ目の中点ですけれども,近現代では,諸地域世界の歴史の相互依存性や多元性,これらに着目して,諸資料を活用し,「歴史総合(仮称)」で扱わなかった概念を習得すると共に,考察し表現する学習を通して,現代世界の特質を多面的・多角的に広く深く追究,探究していくという科目として構成してはどうかということでございます。
また,資料12でございますけれども,資料12は日本史科目の改訂の方向性として考えられる構成,たたき台でございます。先ほどと同様,真ん中に育成すべき資質・能力ということで,我が国の歴史の展開について,歴史を構成する様々な要素から総合的に捉えた幅広い諸事象の理解。まずは,知識理解に関してのこと。
それから,多様な資料を効果的に収集する,読み取る,まとめるといった技能。日本に関するたくさんの資料がございますので,そういった点に着目した技能の育成。
さらに,3点目といたしまして,我が国の歴史に関わる様々な分野に着目し,自ら課題を設定して考察したり,選択,判断について構想していく力という思考・判断・表現に関わること。
最後に,持続可能な社会づくりに向けて,歴史の展開の総合的な理解を踏まえて,地域や日本,世界の在り方を意欲的に探究しようとする態度ということで,「日本史に関わる探究科目」の育成すべき資質・能力を整理してはどうかということでございます。
また,右側でございますけれども,日本史に関しましては,大きく五つの項目に分けまして整理したところでございます。項目の見出しなんですけれども,見てまいりますと「歴史の展開と資料」,「歴史の展開と解釈」,「歴史の展開と説明」,「歴史の構造と地域・日本・世界」,「歴史の記録と論述」という形で,大きく資料を解釈,説明,あるいは論述というような,この科目の学習を進める際の手掛かりになるような項目を項目名として用いました。
それぞれ「歴史の展開と資料」に関わりましては,「原始・古代の日本と東アジア」という部分を取り扱う際に,先ほどの世界史と同様,点線で示されているような「アニミズム」,「神仏習合」,「令外官」といったものを題材として取り上げながら,青枠のところで考古資料や文献資料といったものを踏まえて歴史が叙述されていること等の理解を基にしまして,原始・古代の社会や文化の特色を国際環境と関連付けながら考察していくという項目としてはどうかということでございます。
これは,同じような構造で,「歴史の展開と解釈」につきましては,例えば,その枠で示されているようなものを題材として取り上げながら,諸資料を活用して諸事象の意味や意義を解釈する。資料の活用や解釈をするという活動を通しまして,中世の分立する権力の在り方あるいは社会変動や文化の主体の多様化といったものなどにつきまして,国際環境と関連付けて考察していくという構造を取っているところでございます。
特に参考の一番下のところにまいりますけれども,「歴史総合(仮称)」で習得した学び方を活用して,歴史を構成する様々な要素から総合的に幅広く考察する科目として,まずこの科目は整理するということ。また,前近代につきましては,近現代につながる各時代の転換に関わる重要な概念を習得するということと併せまして,我が国の伝統や文化への理解を深め,解釈・説明し,多様な資料を活用して歴史を考察し表現する力を育成していく。あるいは「歴史総合(仮称)」で培った技能を一層高めていくということで,必履修科目「歴史総合(仮称)」での学習を踏まえた形で,前近代において歴史を解釈・説明,あるいは考察し表現するという学習活動を中心として展開していく。
一方で,近現代につきましては,「歴史総合(仮称)」で獲得した概念や前近代の学習で高めた資料に基づいて歴史を解釈・説明し考察する力を活用いたしまして,地域と日本,世界を取り巻く諸課題について,地域等の多様な資料を活用しながら,現代につながる諸課題を多面的・多角的に深く追究,探究するという科目として構成してはどうかと考えております。
実際にこれらの科目につきましては,先ほど申し上げました資料10のところで,今申し上げました概要を,先ほどの「世界史探究」,「日本史探究」の中で示しております。前回も申し上げましたけれども,これらの歴史用語の在り方については,資料10の下段にも記載しておりますけれども,研究者と教育の対話を通じて歴史を考察する手立てに着目するなどして構造化を図っていければと考えております。
資料につきましては,以上でございます。
前回の御意見といたしましては,資料1の22ページから23ページが関連する御意見として,前回頂戴しました御意見をまとめたものでございますので,後ほど御覧いただければと思います。
以上でございます。

【原田主査代理】  ありがとうございました。
それでは,今,前回までの御意見につきましては逐次お読みいただくこととして,資料10から12,どこでも構いませんので,是非,忌たんのない御意見を頂きたいと思います。
井田委員,お願いします。

【井田委員】  よくまとまっていると思うんですけれども,資料11でも12でも共通しているんですが,資質・能力の4番目のところで,持続可能な社会づくりに向けて,世界の在り方を意欲的にしようとする態度というのがあるんです。具体的に右側にいくと,それがどういうふうに反映されているのかというのが不明確かなと。余りここを強調すると,夢物語を語るだけで終わってしまうんですけれども,歴史を学習することによって,どう探究して,将来の持続可能な社会づくりということにつなげていくのかというところが少し欲しいかなという気がします。
例えば日本史のところ,資料12ですと,最後に「歴史の記録と論述」というのがあって,「自らの考えを論述する」というのがありますけれども,その手前に「将来の日本,世界の在り方について自らの考えを論述する」という文言が入ると,その辺が反映されるかなと感じました。
世界史のところをどういうふうにするのかというのは,また探究がどこまで深められればいいのかというのが少しはっきりしないところがあるんですけれども,探究を深めた先に持続可能な将来の社会づくり,将来を見据えるというものが入るとすると,探究を深めたその先にそれがあるというつながりもできるかなと感じました。
以上です。

【原田主査代理】  ありがとうございます。
では,羽田委員,お願いします。

【羽田委員】  せっかく「歴史総合(仮称)」で日本史と世界史,日本と世界を混ぜるような形で,これが我々の歴史だというものを作ろうとしているのに対して,この「世界史に関わる探究科目」は,全体として見たときに他人事のような感じがします。ここに日本はどんなふうに関わっているのか。「地域世界」と書いてありますけれども,日本はそこにどういうふうに含まれているのか,含まれていないのかといった問題がとても重要ではないか。それこそ,正に「歴史総合(仮称)」で学んでいることのはずで,世界史に関して言うと,このままだと,従来型の世界史と余り変わらないような気がします。もっと世界の中の日本という視点で考えていくべきだと思います。
日本史の方は,副題が「原始・古代の日本と東アジア」とか「中世の日本と東アジア」となっています。また,その後は「世界」となって,扱う空間がだんだん膨らんでゆきます。従って,まだそういうことを意識されているかなとは思いますが,世界史の方は改善の余地があると思いました。
以上です。

【原田主査代理】  羽田先生,何かいいアイデアはありますか。世界史の場合,時間の幅が,随分日本は中国やローマに比べると短いんだけれども,何かいいアイデアがあれば。

【羽田委員】  今すぐにここでは,そう簡単には出てこないですけれども,考えないといけないことではないかなと思います。

【原田主査代理】  そうですね。ありがとうございます。そのとおりだと思います。
では,磯谷委員,お願いします。

【磯谷委員】  世界史も日本史も資質・能力の三つ目のポチのところに「選択や判断について構想する力」というのがありまして,これは大変新しい感じがします。まだ説明はされていないんですが,例えば資料13の補足資料を見ましても,他にどんな選択が可能だったかとか,なぜそのような判断をしたと考えられるかということを新しい世界史や日本史の科目で学んでいくということは,大変新しい発想です。やはり歴史というと,順番にこういうふうになってきたというのを教えがちなんですけれども,それぞれの地点においての選択の連続だという観点で言うと,世界史だと近世から近代のところで学ぶ感じになっているんですけれども,古代でもあっただろうし,あるいは現代は正にそれが進んでいるわけですので,現代史のところでも学んでもいいのではないかなという感想を持ちました。
以上です。

【原田主査代理】  ありがとうございます。
この点線は直接余り・・・。

【磯谷委員】  関係ない。

【原田主査代理】  関係ないことはないでしょうけれども,ここはここに関わるというだけではない。でも,そういうところも一部あるので,少しこの点線についてはもう一回検討が必要かなと思いますね。ありがとうございます。
いかがでしょうか。
では,仙田委員,お願いします。

【仙田委員】  今,見させていただいて,私は日本史ですけれども,このような区切り方でいいのではないかなと思っています。
ただ,先ほどの「歴史総合(仮称)」もそうだったのですけれども,取り上げられることが,「考えられる題材」というのはどうやって選ばれたのかが分からないんです。どうしてかというと,大枠で非常にその時代を象徴するものもあるし,割と細かいものも載っているし,随分差があるなと思っています。実を言うと,この言葉が独り歩きをすることが気になります。全国の歴史の先生と会うとき,その題材がこれに載っているからと彼らがいうことになってしまうので,例として載せる場合には何か根拠を持たせてもらうなどって,工夫していただけると有り難いです。「歴史総合(仮称)」のところもそうだと思うんですね。同じようにキーワードがあるならば,こういう使い方ができるという例を示さないと,それだけが先に走ってしまって,偏ってしまうということがあるので,そこのところを少しお考えいただけると有り難いと思っております。

【原田主査代理】  ありがとうございます。
小川委員,お願いします。

【小川委員】  「歴史総合(仮称)」と世界史,日本史の関係が大事だと思うんですけれども,「歴史総合(仮称)」で学んだ学び方をもってここに臨むというだけでは,最終的に世界史,日本史の従来的な学び方の再生産の悪循環の中にからめ捕られてしまうのではないかという気がするわけです。
「歴史総合(仮称)」で学ばなかった近現代史のことを学ぶということがどこかであったんですけれども,それも,では,そもそも「歴史総合(仮称)」で扱うようなことを旧来型の学習スタイルで学べばいいではないかという話になってしまって,どうにも「歴史総合(仮称)」で学んだことが生きてくるということがつかみにくいと私は感ずるんですね。「歴史総合(仮称)」で学んだこと,それは学び方だけではなくて,学んだ内容が,日本史,世界史のところで更にそれを深めたときに,より深まる知識であり,技能であり,思考力になるという発展型の学習の組立てが,ここでどのように実現できるかということがもう少し出てきてもいいのではないかと思います。これが第1点。
それから2点目は,世界史,日本史共に,とにかく歴史用語がインフレーションのように膨らんで,それを学び切れない現状があるわけですから,先ほどの資料10の下にある歴史用語の在り方について構造化を図るということを,どのようにこれを実現していくのかということが,やはり大事なのではないかと思います。
これまで歴史研究者と高校の歴史教育者との間の対話で,この問題について十分考えることが余りなかったというのが現実なので,例えば,今,私自身が関わっているある研究会では,このことを正面から取り上げて,いかに歴史用語を精選するかという観点で歴史研究者と教育者との間の共同作業をしていこうと着手したところなんです。そのような試みが,もっと日本のいろいろなところでできてくればいいのではないかと考えています。
以上です。

【原田主査代理】  ありがとうございます。
では,池野委員,お願いします。

【池野委員】  また二つ意見を述べさせていただきたいなと思います。
一つは,従来の日本史と世界史の概念を,先ほど何人かの先生方から,どう新たなものにするのか。日本史や世界史を探究という新たな科目的なものにした場合に,従来の日本の歴史や世界の歴史を教えるというタイプから脱却できるようなもの,改善するものを入れ込まないと,先生方は従来の世界史や日本史を従来のとおりにやっていてもいいのではないかなと受け止めてしまうのではないかなと思います。
例えば,世界史で多様性や複合性が青の方で書いてありますけれども,こういう概念を使って,それぞれの古代的なもの,中世的なもの,近代的なものを貫いて主題史的にしたり,問題史的に捉えたりするようなものがないと,やはり従来の通史的なものから脱却できないし,世界史を通して,先ほど持続可能な社会づくりという問題もどこまで行くんですかという井田先生の御質問がありましたけれども,そういうところにもつながってこないのではないかなと思います。これが一つです。ですので,日本史や世界史に主題史や問題史を入れてほしい。そういう形にしないと,従来の日本史や世界史から脱却できないのではないかなと思います。これが一つ目の意見です。
それから二つ目は,資質・能力論を先ほどもお話しさせてもらったんですけれども,「歴史の学び方」を活用して,結局,追究や探究を深めてくるようにしたくて,先ほど選択や判断の問題とか,持続可能な社会づくりというものにした場合に,結果的にはその時代やその事象が,例えば人物だったら人物がAという行為もできたし,Bという行為もできた。普通,一般的にはBという行為をしたのはなぜかとか,その結果,どんなことが起こったかということを取り上げるんですけれども,もしもAが行ったら,またどういう別の歴史の展開になるのか。それはもしもの歴史だから教えなくてもいいということなのか,どういう可能性がその時々にあって,その時代がどのように変化する可能性があったか。その時代,時代,過去の社会のその時代にどのような選択可能性や判断可能性があったのかということをやっていかないと,事実だけを教えていっては,歴史のまとめ方を追究したり探究することにならないのではないかなと思います。
確かに歴史学では資料や解釈や説明が事実に基づいて行われるんですけれども,実際に我々が社会を,あるいは過去の社会を見ていくときには,その時々の社会の可能性,チャンスというものを捉えていかないと,子供たちに歴史を学ぶ意義,世界史や日本史を学ぶ意義が出てこないのではないかなと思います。やはりそういう側面は必要ではないかなというのが二つ目の意見です。
以上です。

【原田主査代理】  ありがとうございます。
いかがでしょうか。
浅川委員,お願いします。

【浅川委員】  大変素朴な疑問なんですけれども,「歴史総合(仮称)」という形で近現代というのを,日本と世界を融合させて捉えようというのが新科目として出てくるわけです。それ以前の前近代については,それぞれ日本の歴史,世界の歴史があるだろうけれども,世界史と日本史で前近代を日本史で取り上げる,世界史で取り上げるのであれば,もう少しこれが世界史的な前近代の見方なんだとか,これが日本史的な前近代の見方なんだというのをはっきりと打ち出さないと,もう一回近現代史をここで焼き直すようなことにとどまってしまうのではないかなと思うんです。
ただ,示された案については,日本史の方は記録と論述という形で近現代を捉えようと。それから,世界史の方は「多元性」というキーワードで近現代を捉えようという方向性は分かるんですけれども,もう少し世界史として近現代をどう捉えるのか,日本史として近現代をどう捉えるのかというのをしっかりと打ち出さないと,何でまた総合したのに分けてやるんだという素朴な疑問を私は持ったんです。
以上です。

【原田主査代理】  ありがとうございます。
いかがでしょうか。
永田委員,お願いします。

【永田委員】  失礼いたします。私も素朴な疑問で,地理なものですから,井田先生と同じように持続可能な社会づくりに向けてというところで,基本的に持続可能な社会というのは,未来志向で考えるということで,この用語をそれぞれ世界史だったら大きく四つ,日本だったら大きく五つに区切っていますけれども,それぞれの時代で持続可能な社会づくりに向けて考えるのか,未来について考えるのか,それぞれの時代の次の時期についての持続可能な社会づくり,例えば原始・古代であれば,次の中世に向けての持続可能な社会づくりなのか,それとも額面どおり,未来に向けての持続可能な社会づくりに向けてなのか。後者の場合だったら,現代とのつながりで原始・古代であっても,中世であっても,近世であっても,近代であっても,どのようなつながりがあって,現代の社会をどのように持続可能にしていくのかという視点は必要なのではないかなと思っております。
それと,世界史と日本史で新しい「探究科目」が出てきておりまして,私は素人ですから,ぱっと見た感じ,世界史の方は「多様性」,「複合性」,「相互依存性」,「多元性」ということで,日本史の方が広がりがあって分かりやすいということなんですけれども,紫のところで4行とか5行とかで書いてあるもので,その広がりが分かるようなキーワード。例えば原始・古代であれば,「社会や文化の特色」という言葉が入っています。中世の日本だったら「社会変動や文化の主体の多様化」,次の近世だったら「安定と動揺,変化への胎動」,近代だったら「変化と多様な展開」,最後のところだったら「日本の歴史的な視点」とかありますので,できれば合わせたようなキーワードみたいなものを示していただけたら,私のように地理専門でも分かりやすくなると思いますので,以上,よろしくお願いいたします。

【原田主査代理】  ありがとうございました。
若干,委員によってニュアンスは違いますけれども,共通しているのは,「歴史総合(仮称)」を本当に生かそうとするのであれば,選択科目の「世界史探究」,「日本史探究」をもう少しドラスティックにというか,きちんと変えていかないと,小川先生が何回も言われるように,なし崩しになりかねないおそれは多分にあるなと確かに思いますね。
でも,一方で仙田委員がおっしゃるように,どこまで学校現場の現実に対応する形で,しかも変えていくかというのが現実には難しい面もあるんですけれども,やはりそれをしないと,「歴史総合(仮称)」も選択科目も共倒れになりかねない不安はあるので,是非みんなで知恵を出し合ってやっていかなければいけないと思うんです。
ほぼ,この問題に関しての御意見はよろしいでしょうか。
もちろん,これで先生方の御意見がなくなったわけではないとは思いますけれども,時間の関係もありますので,引き続き,社会科・地理歴史科・公民科等における見方と育成すべき資質・能力について意見交換を行いたいと思いますので,事務局から資料13から15の御説明をお願いいたします。

【大内学校教育官】  では,続きまして,資料13からでございます。お手元に御用意いただければと思います。
資料13につきましては,冒頭,主任視学官の梶山からも先週行われました資質・能力系の会議の報告の際の資料の中でも御紹介させていただいたとおりでございまして,この資料13におきましては,「社会科における見方や考え方」の育成という観点から,地理歴史科についての見方・考え方を整理した資料ということでございます。
資料13の後ろに資料13補足資料というものがございます。こちらの補足資料を見ながら説明をお聞きいただければと思います。「社会的な見方や考え方」は,資料13の補足資料の一番上のところ,欄外に米が付されておりまして,そこに定義が書いてございます。「社会的な見方や考え方は,小・中・高等学校の各『見方や考え方』を総称する呼称」ですと。これは,先ほどの資料13でざっと御覧いただけると,実は小学校が「社会的事象の見方や考え方」,中学校の地理的分野が「社会的事象の地理的な見方や考え方」。これが地理歴史科の地理系科目につながっていくんですけれども,それと中学校の歴史的分野が「社会的事象の歴史的な見方や考え方」ということで,これが地歴科の歴史系の科目に同じようにつながっていきます。中学校の社会科,公民的分野で「現代社会を捉える見方や考え方」ということで,これが高等学校の公民科で「人間と社会の在り方を捉える見方や考え方」という形で,それぞれの学校種において,見方や考え方の表現が若干異なってございます。これら見方・考え方を総称する呼称として,今回,「社会的な見方や考え方」という言い方でまとめて表現させていただいているということでございます。
資料13の補足資料の方ですが,「社会的な見方や考え方」は,社会の在り方や社会的事象の意味や意義,特色や相互の関連等を考察する際の追究の視点,あるいは追究の方法であるということで,具体的には資料13の補足資料の1ページをおめくりいただきまして2枚目に,今回,高等学校の地理歴史科に関する各関係科目を整理させていただいております。
一番上に「地理総合(仮称)」が載っておりますので,「地理総合(仮称)」を中心に見方をもう一度確認いただければと思います。「地理総合(仮称)」の右から二つ目のボックスのところ,上に紫色で帯が付されているんですが,「社会,地理歴史,公民における思考力,判断力」というところで,「社会的事象の地理的な見方や考え方」。これは,先ほど申し上げたとおり,中学校の地理的分野と同じ考え方に立っているんですけれども,具体的には,位置や空間的な広がりとの関わりに着目して社会的事象を見出し,地域等の枠組みの中で環境条件や他地域との結び付き,人間の営みなどと関連付けて見る「見方や考え方」ということでございます。これらの「見方や考え方」を通じて育成される能力として,下に「考察」,「構想」とございますけれども,一つは「地理に関わる諸事象を地域という枠組みの中で考察していく力」。また,構想する力として,「そこで生起する課題の解決に向けて構想する力」。「構想する力」というのは,社会科の中では選択・判断する力をまとめて「構想する力」と今回整理しているわけですが,そういった選択・判断をしていく力というものの育成につなげていこうというものでございます。
これも冒頭,梶山から御説明申し上げておりましたけれども,左側のところに「考えられる追究の視点例」ということで,「地理総合(仮称)」でございますと,「位置や分布に関わる視点」,「場所に関わる視点」,「人間と自然の相互依存関係に関わる視点」,「空間的相互依存作用に関わる視点」,「地域に関わる視点」という視点を設けまして,この視点の部分が科目をまたいでいくにしたがって成長していくという位置付けで整理してございます。
例えば,「地理総合(仮称)」で今のような視点があるわけですけれども,同じ視点の観点で見ていっても,「地理に関わる探究科目」として,その下の方にございます,例えば「位置や分布に関わる視点」の「地理総合(仮称)」でありますと「時間距離」,「時差」,あるいは「等質」,「類似」といったものなんですが,これに加えて,「地理に関わる探究科目」においては,「経済距離」,「中心性」,「単一指標」,「複数指標」,「総合(指標)」という形で,この視点に当たる部分が科目によって変わっていくとお考えいただければと思います。
また,そうした追究の視点を生かして,考察や構想に向かう問いを今回は重視しておりますので,それが左から2番目のところに示してあるとおりでございます。小豆色の枠で示されているものが,考察に向かう問いの例として,また青色で背景が塗られておりますのは,構想に向かう問いの例として立てたものでございまして,こうしたものを先ほど申し上げた「社会的な見方や考え方」,「社会的事象の地理的な見方や考え方」に着目し,これらの問いを通じて,一番右側にある「考察,構想した結果,獲得する知識,概念」を獲得していこうという構造になってございます。
中段から下に「歴史総合(仮称)」,それからページをまたいでおりますけれども,「世界史に関わる探究科目」あるいは「日本史に関わる探究科目」ということで,世界史,日本史につきましてもこちらに示しておりまして,基本的な見方は地理と同様でございます。
例えば,今ほど「世界史に関わる探究科目」ということで御議論を頂戴したわけですけれども,一番下の欄にある「世界史に関わる探究科目」でございますと,視点のところを御覧いただければと思うんですが,一つ上の「歴史総合(仮称)」の視点では,上から三つ目のマルに「諸事象の特性に関わる視点」ということで「相違」あるいは「共通性」という視点があるわけです。これらに加えて「世界史に関わる探究科目」ですと,先ほど御覧になっていただいた「多様性」,「複合性」,「相互依存性」,「多元性」といった視点がここに加わることによって,より世界史について探究していく視点として設定されているという構造になってございます。
それから,資料14を次に御覧いただければと思います。資料14につきましては,社会科,地理歴史科,公民科で育成すべき資質・能力を整理したものでございまして,こちらについても前回のワーキンググループにおきまして,高等学校の地理歴史科について,一度,御議論を頂戴しております。そういった御議論を踏まえまして,今回,小・中・高等学校,あるいは高等学校の公民科との関わり,それらの観点も含めて,再度整理をし直して,今御覧いただいている資料14のような形で取りまとめたところでございます。
具体的には,2枚目でございますけれども,地理歴史科について育成すべき資質として,大きく横軸に3本示されております。先ほど来,申し上げているとおりですけれども,左から「個別の知識や技能」(何を知っているか,何ができるか)という視点,それから「思考力・判断力・表現力等」(知っていること,できることをどう使うか)という視点,「学びに向かう力・人間性」(どのように社会,世界と関わりよりよい人生を送るか)という大きく三つの柱で,それぞれの教科ごとに育成すべき資質・能力を整理してはどうかというのが,このワーキンググループの大きな検討事項の一つでございました。
これを,今回,小・中学校,あるいは高等学校公民科との関わりなども含めまして,再度整理したものがこちらの資料でございます。左側から,一番上が高等学校地理歴史科の教科に関して育成すべき資質・能力ということですので,こちらを中心に御説明させていただきます。
まず,一番左側で「個別の知識や技能」については,「日本及び世界の歴史の展開と生活・文化の地域的特色に関する知識・理解」,それから「社会的事象等について調べまとめる技能」ということで,ここの枠は大きく学習指導要領で示している知識・理解を大くくりで示すと,日本及び世界の歴史の展開,地理も含めて生活・文化の地域的特色に関する知識・理解という部分で整理してございます。これを「地理総合(仮称)」あるいは「歴史総合(仮称)」それぞれの探究に関する科目で,ここの部分が若干科目によって相違があるという形で整理してございます。
また,真ん中のところでございますけれども,「思考力・判断力・表現力等」につきましては,大きく2軸で整理されております。いずれも先ほど申し上げました社会的事象の見方や考え方,ここで言えば「社会的事象の地理的な見方や考え方」あるいは「歴史的な見方や考え方」を用いるというのをベースといたしまして,これを用いて「地理や歴史に関わる諸事象の意味や意義,特色や相互の関連性について,概念等を活用して多面的・多角的に考察したり,問題の解決に向けて構想したりする力」という形で整理しております。この1点目の点は,いわゆる思考し判断していくという部分を受けているものでございます。
2点目のところですけれども,「考察・構想したことを適切な資料・内容や表現方法等を選び効果的に説明したり,それらを基に議論したりする力」ということで,表現する力を受けている部分でございます。これは,先ほどと同様に下の各関係科目において,それぞれ科目の特質に応じた形で整理しているというところでございます。
最後,一番右側ですけれども「学びに向かう力・人間性」につきましては,一つ目の中点で「地理や歴史に関わる事象について主体的に調べたり分かろうとしたりする態度」,2点目としては,「課題(学習上の課題,社会に見られる課題)を意欲的に追究したり探究したりしようとする態度」,3点目が,先ほど見ていただきました「個別の知識や技能」あるいは思考・判断・表現していくような力を受けてですけれども,「多面的・多角的な考察や深い理解を通して涵養される自覚や愛情など」ということで,括弧の中で(日本国民としての自覚,我が国の国土や歴史に対する愛情,他国や他国の文化を尊重することの大切さの自覚)といったものを示させていただいているというところでございます。
この資質・能力と大きく関わりまして,先ほど,冒頭でも総則評価部会での審議の状況も御紹介ありましたが,評価の観点について,少し確認をしておいていただければと思います。こちらの資料が資料2でございまして,資料2の後ろから御覧になっていただいた方がいいと思います。資料2の一番最後のページが資料17になっていまして,そこから17,16,15,14とさかのぼっていただくんですが,資料14というところが,社会科,地理歴史科,公民科における評価の観点のところでございます。資料2の後ろから2枚おめくりいただいた3枚目のところが資料14になります。
この資料14につきましては,冒頭の企画室からの説明がありましたとおり,評価の観点について,総則評価部会において整理しているところでございます。その総則評価部会における整理の案というのが,資料14の下側にありますけれども,各教科の評価の観点のイメージということで,先ほどの資質・能力の育成を評価する際の観点ということです。下に示しておりますとおり,「知識・技能」,「思考・判断・表現」,「主体的に学習に取り組む態度」という三つの枠組みで整理しております。これをベースとしながらということなんですが,資料14の上の方で,社会科,地理歴史科,公民科における評価の観点ということで,例えば,「知識・理解,技能」に関しては,今ほど見ていただいた資質・能力と対の関係にあるんです。例えば,一番左側ですけれども,社会的事象について○○である,あるいは○○を理解し,その知識を身に付けているということ。この身に付けている知識には,これも冒頭,審議の状況で御紹介がありましたけれども,主として事実等に関わる知識と,主として概念等に関わる知識ということで,先ほどの資料13でも少し御紹介いたしましたが,社会的な見方や考え方を通して獲得する概念という部分も含めまして,こちらの「知識・理解,技能」のところで評価を行っていくということでございます。
また,二つ目のマルのところでは,調べる技能ということで,収集する・読み取る・まとめる技能に関わりまして,それぞれ学習活動の内容によって,この観点を作り上げていく,変えていくという形になっております。
また,「思考・判断・表現」の真ん中のところにつきましては,先ほどの資質・能力のところでは2本立てで示しておりました。これらは「思考・判断・表現」ということですので,一つ目のマルでは考察に関わること,二つ目のマルでは構想,判断に関わること,三つ目のマルにつきましては,説明したり議論したりするということで表現に関わることの観点,あるいは観点の趣旨として整理しております。
一番右側が「主体的に学習に取り組む態度」ということで,ここでは「学習対象(社会や社会的事象)について主体的に調べたり分かろうとしたりしている」ということで,問いや追究の見通しを持って調べている,あるいは振り返り,学んだことの意味に気付いて調べたり分かろうとしたりしている,身に付けた追究の視点を新たな問いに生かして,あるいは学んだことを社会生活に生かそうとしているという形で,主体的に学習に取り組む態度を評価してはどうかということでございます。同様に,課題を意欲的に解決しようとしていることについても,学習上の課題,社会に見られる課題と様々あるわけでございますけれども,粘り強く試行錯誤して,あるいは他者と協働してといった観点で課題を意欲的に解決しようとしている,あるいはよりよい社会を目指してという形で課題を解決しようとしているという「主体的に学習に取り組む態度」を評価する際の観点として設けてはどうかということでございます。
評価の観点と,今申し上げましたような資料14に関わって育成する資質・能力と基本的な構造が非常に似ているところでございます。こういった育成する資質・能力と併せながら,評価の観点につきましても併せて御確認,御意見を頂戴できればと思います。
最後,長くなりまして恐縮ですけれども,資料15でございます。資料15につきましては,「社会,地理歴史,公民における教育のイメージ(たたき台)」ということで,本日の配付資料15でございます。これまで御議論を頂戴しました御意見,あるいは資料を基に再度考えられる,求められる教育の要素,科目で育成される要素ということで整理したものでございます。下から幼児教育,上まで高等学校,地歴科あるいは公民科という構造になっております。
高等学校の地理歴史科ということですので,一番上の左側を中心に御覧いただければと思います。ひし形のところで示しておりますのが,「広い視野に立って,グローバル化する国際社会に主体的に生きる平和で民主的な国家・社会の有為な形成者として必要な公民としての資質・能力を養うために,社会的な見方や考え方を用いて以下の三つの資質・能力を育成する」という形で,まず全体を置きます。
一つ目のマルのところで,「日本及び世界の歴史の展開と生活・文化の地域的特色について理解させると共に,調査や諸資料から,社会的事象に関する様々な情報を効果的に調べまとめる技能を身に付けさせる」ということで,「知識・理解,技能」に関わることを一つ目のマルに置いております。
また,二つ目のマルとして,「地理や歴史に関わる諸事象の意味や意義,特色や相互の関連性について,概念等を活用して考察したり,構想したりする力を養うと共に,考察・構想したことを適切な資料・内容や表現方法を選び効果的に説明したり,議論したりする力を養う」ということで,「思考・判断・表現」に関わることが二つ目のマルに記載されております。
また,三つ目についてですが,「地理や歴史に関わる事象について主体的に調べたり分かろうとしたりする態度や,学習上の課題,社会に見られる課題を意欲的に追究したり探究したりしようとする態度を養うと共に,多面的・多角的な考察や深い理解を通して涵養される日本国民としての自覚,我が国の国土や歴史に対する愛情,他国や他国の文化を尊重することの大切さといったことについての自覚を深めるようにする」ということとしては,「学びに向かう力」という形で整理してはどうかということでございます。
また,高等学校の地理歴史科,あるいは公民科につきましては,中学校までの黒マルや二重マル,すなわち黒マルで言うところの学び方の視点,課題解決的な学習に係る例でありますとか,二重マルのところで,昨年8月の論点整理で示させていただいておりました視点を踏まえての内容の充実の方向性というものが,それぞれ黒マルや二重マルということで示されております。こちらの地理歴史科,公民科については,今現在,内容も検討しているところでございますので,また再度整理をさせていただいて,形を示させていただければと考えております。
以上で資料13から15でございますけれども,見方・考え方,育成すべき資質・能力,そしてそれに関わっての評価,あるいは最後に教育のイメージということで御説明させていただきました。御意見等,よろしくお願いしたいと思います。

【原田主査代理】  ありがとうございました。
それでは,内容が若干多い感じがしますので,まず資料13と14ですね。13の社会的な見方や考え方から,14の資質・能力の整理,先にこれについて御意見を伺って,その後,資料15について議論したいと思います。まず資料13,14につきまして,御意見をよろしくお願いいたします。
井田委員,お願いします。

【井田委員】  資料13の補足資料の3ページ目ですが,地理的な見方や考え方,追究の視点の例と挙げられていますけれども,追究の視点自体は「地理総合(仮称)」や「探究科目」がだんだんバージョンアップしているというのは分かるんです。次に「構想」というところがあって,「構想」が「地理総合(仮称)」と「探究科目」で同じなんですけれども,やはり「構想」もグレードアップしていいのではないかという気がします。確かに見方や考え方というのは同じ観点,視点なんですけれども,考え方の深まりや,どのように考えるかというのはバージョンアップしていくべきだろうと思っています。
そのときに,「地理総合(仮称)」と「地理に関わる探究科目」という例でそこを見てみますと,「地理に関わる探究科目」では,ピンク色のところで見てくると,意味があるのだろうか。意味というのを非常に重要視していますけれども,「構想」のところではそれが反映していなくて,「総合」も「探究科目」も同じになっているんです。そういう意味では,「地理に関わる探究科目」の「構想」のところでも,今ある文章にそれがどのように意味付けられるのか,あるいは,それがどのように人間生活に意味付けられるのかとか,それはどのように人と自然との関係において意味,意義を持つのかというものも入れてくると,右側の「構想」のところも,そこで生起する課題の解決に向けて,地域の意味を踏まえて構想することというふうに少しバージョンアップしてくるのではないかなと思います。そういう意味では,「構想」もバージョンアップするような形で,「地理総合(仮称)」から「探究科目」に行く間にバージョンアップしていけばいいのかなと思います。これは歴史とも関連します。
以上です。

【原田主査代理】  ありがとうございました。
今のは一部,井田委員の御提案も含めての意見でしたけれども,よろしいですか。
では,小川委員,お願いします。

【小川委員】  2点あります。まず第1点,資料13についてなんですけれども,これは中学校では公民的分野が中学校3年生で勉強するから,このような構造になっているんですけれども,多分これをそのまま高校に当てはめようとして,地理があって,歴史があって,その上に公民があるとされたのではないかと想像するのですが,必ずしも高校はそうではないのではないかと思うのです。学校によっては,多分1年生のときに必履修の公民科のことを勉強して,あとは公民科についてはそれほど勉強しない学校も多いだろうと。むしろ,横並びなのではないかと思うのです。
しかも,地理歴史科であれば,「社会的事象の地理的な見方や考え方」,あるいは「歴史的な見方や考え方」,かつ「歴史総合(仮称)」の例でもあるように,「人間と社会の在り方を捉える見方や考え方」というのを,地理でも,「歴史総合(仮称)」でも,歴史でもやるわけなのです。取り立てて,そこを公民科だけが「人間と社会の在り方を捉える見方や考え方」が強調され過ぎているのではないかと思いました。これが第1点。
それから2点目は,資料13の補足資料についてなんですけれども,一番右側の「考察,構想した結果」のところが各科目ごとに書かれているわけです。そのまとめ的な水色の部分が,少し科目によって書かれている次元がやや違うのではないかと思うのです。それは,特に「歴史総合(仮称)」,世界史,日本史について言えて,ここでは学びに向かう態度のようなものが書かれていて,そのほかのところでは,地理であれば「よりよい環境を想像しようとすること」とか,公民で言っても,「自分らしい生き方を問い」とかあるわけです。歴史になると,歴史を分析するときの態度のような次元になってしまっているのです。多分,これは「歴史総合(仮称)」,世界史,日本史はもう少し違う書き方ができるだろうと思うのです。多分,そちらの方が本来の「考察,構想した結果」でなければいけないと思うのですね。少しここら辺のところを御一考ください。
以上です。

【原田主査代理】  ありがとうございます。
ほかにいかがでしょうか。
では,仙田委員,お願いします。

【仙田委員】  今,小川委員が言われたことはもっともだと思って,特に私はまず1点目,資料13の補足資料の右側の薄いピンクのところです。この箱のところで,例えば「歴史総合(仮称)」を見ると,先ほどの資料9では,全部現代まで持ってくるように書いていただいたのに,ここではそういうふうになっていなくて,時代の途中で切れてしまっているということなので,せっかくあそこを現代までにしたならば,ここの「獲得する知識,概念の例」は,現代までのものを書いてもらった方がいいのではないかなと思っています。今言ったように,それが多分世界史や日本史の探究のところにもあるんだろうと思いますけれども,特に「総合」についてはそうしておかないと,せっかく現代に変えた意味がないかなと思います。
それを踏まえて2点目なんですけれども,少し戻ってしまうのですが,先ほど言った,例えば「歴史総合(仮称)」なんかは,私は現場の立場から,これを2単位時間でやったらあれかなと思ったんですけれども,先ほど言った「自由と制限」や「富裕と貧困」と,五つぐらい例を出していただきましたよね。この五つについての単元を二つぐらい作って,それについて近代化,大衆化,グローバル化とやると,例えば立憲政治としたらば,ヨーロッパのことから日本がどういうふうにそれを取り入れて,今現在どうなっているのかということを授業でやるとしたらば,変な話ですけれども,世界史も日本史もきちんと融合できるし,私も言わせていただいた世界の中の日本という立場もできるかなと。学校の現場では,そちらの方が教えやすいかなと思っています。
特に日本史の先生と世界史の先生がいて,この「歴史総合(仮称)」をどう教えるのかといったときに,先ほどのどういうものが獲得する概念なのかといったときも,トータルの概念を獲得するんだと。そうすれば,世界史と日本史の融合が見えてくるのではないか。例えば,今の日本の諸課題を,どういうふうに歴史的経緯からなっているのかということを理解できるのではないかな。それは,すごく大きく変わることはなかなかできないかとは思うんですけれども,そういうことをやると,現場は確かに有り難いかなと私は思いました。
以上です。

【原田主査代理】  ありがとうございます。
池野委員,お願いします。

【池野委員】  二つあるんですけれども,一つは資料13の補足資料の部分です。これは小学校・中学校でも同じことなんですけれども,考察と構想の部分と,右側に出てくる「考察,構想した結果,獲得する知識,概念の例」のことです。先ほど仙田委員も言われたんですけれども,少し細かくなり過ぎていて,「歴史総合(仮称)」あるいは「世界史の探究科目」,「日本史の探究科目」の中で出てくるような,例えば世界史では「多様性」,「複合性」,「相互依存性」と言われるのが「世界史の探究科目」にも出てきたんですが,本来そういう部分の要素が全く欠落して,歴史の中の説明的な知識をしていて,従来,教科書の中に出てくるようなものが書かれているように思います。これでは,従来やっていたものとさほど変わらないように思いますので,少し変えていただきたいなと思います。
先ほども言いましたように,問題史や主題史に変えると,やはり違ったものになるのではないかなと思いますし,概念そのものを分析する概念,あるいは考察するときに用いる「多様性」や「複合性」という概念が,どのように歴史の考察や構想をするときに生きてくるのか,それが実際に歴史や地理を見るときにどういうことを見ることができるかに変わってくるのではないかなと思います。そこの部分が一つです。
それから,もう一つは,小学校や中学校との連携の問題です。先ほど,13の図があったんですけれども,13の図は,多分これ以外にはないと思うんです。前,4月6日のときに,私は別のワーキングのときに言ったんですけれども,僕は社会科に戻してほしいと。ここまでやるんだったら,社会科に戻してほしいと思っていますが,その話はここではもう繰り返しません。中学校と高等学校の地理的な分野と地理歴史科の地理というのが,一応「総合」の中で「地理総合(仮称)」や「歴史総合(仮称)」の中に発展的に位置付いています。それが見えにくい図になっていること。矢印的には発展するようになっているんですけれども,地理的な部分が総合化する,あるいは総合探究化するというのが,地理的分野や歴史的分野がどのように発展化するのかというのが,13の図や補足資料の中で個別化されてしまっていて,なかなか全体のイメージ図としては分かりにくくなっているので,少し改善してもらえると有り難いなと思います。
そのときに,多分それぞれの箱の中の黒字で書いてある部分の何がどう発展すれば,地理的部分,あるいは歴史的部分の発展になるかというのが,中学校と高等学校の差がはっきりしない説明のように読めるので,その説明をはっきりしていただければ有り難いというのが二つ目の意見です。
以上です。

【原田主査代理】  ありがとうございます。
いかがでしょうか。今の池野先生の御意見は,先ほどの仙田先生の御意見もそうですけれども,「考察,構想した結果,獲得する知識,概念の例」が,ぱっと見てランダムで,しかも細かくて,既存の科目と余り変わらないのではないかというイメージを持たれるので,ここをきちんと構造化して,中・高の接続として,また「歴史総合(仮称)」が従来とは違うし,「探究科目」も違うんだという,ここで多くの先生方が判断される可能性があるので,少し検討する必要があるような気が私自身もしました。対案をもう少し検討しないと,どうしたらいいと言いにくいんですけれども,今の池野先生の意見,仙田先生の意見,それから井田先生の御意見にもあったように,「考察,構想」というのが,「総合科目」と「探究科目」が同じことにも意味があるとは思うんですけれども,やはりここに少し発展性というか,深まりがあると「総合科目」と「探究科目」の違いも見えるかもしれないということを,これは地理も歴史もそうですけれども,思いました。
ほかにいかがでしょうか。
では,高木委員,お願いします。

【高木委員】  すみません。初歩的な疑問になるかもしれないんですけれども,三つの観点も確かに大切で,非常によくまとめられていて,社会的な見方や考え方も大切で,非常によくまとめられているんですけれども,現場で,もしこの二つの資料が出てきたときに,「社会的な見方や考え方」と,例えば三つの観点の「思考力・判断力・表現力」と同じものですかと聞かれるような気がして,「社会的な見方や考え方」と三つの観点との関係というか,関連性がもう少し明確に説明していただけると,私が理解できなかっただけで申し訳なかったかもしれないんですけれども,助かるかなと思いました。
現状では,恐らく「思考力・判断力・表現力」とニアリーイコールなもので「社会的な見方や考え方」と捉える教員は多くて,ただし,評価の観点として三つの観点が意識されるので,現場としては「社会的な見方や考え方」が非常に重要な考え方なんですけれども,意識されることがだんだん薄れてくるということがもしかしたら起こるのかなと思っています。
この辺のバランスは,本校の研究開発でもよく聞かれていて,今のところは三つの観点をつなげる存在として,「社会的な見方や考え方」が必要ですよねぐらいで,少し逃げのような形で答えてはいたんですけれども,せっかく二つの資料が出てきたので,資料13の補足資料と資料14の関連性というか,つながりとか,どういうそれぞれの立ち位置かというのを,また勉強させていただけると助かるかなと思います。
それはさておき,現場としては,教科書何ページまでを今日やって,あしたは何ページまでやって,気付けばテストで,急にテストを作って評価をするという授業をしている人はなかなかいないと思うんですけれども,ふだんの授業でも思考・判断を生徒にさせるような授業をしてでも,評価をする場面は,やはり高3のときということになりがちなのが現場かなと思うので,現場の教員はよほど覚悟を決めて,授業のプロセスに定期的に評価の場面を設けるような努力をしないといけないかなと感じました。
以上です。

【原田主査代理】  ありがとうございました。
梶山先生。

【梶山主任視学官】  評価のところでございますが,「見方・考え方」と三つの柱の関係です。最初に私から簡単に御説明して,それが余りにも簡単であったということで大変恐縮でございますが,前回の資料をまとめた資料2というものが,附箋を付けていただいたものでございます。その後ろから2枚目のところに,評価の観点の下に「関連イメージ図」というものがあると思います。「関連イメージ図」というのが,資料15です。4月6日に出されたものの資料15と右上にあるものでございます。これが関係性を示したものであるというように考えているところでございます。
具体的に申し上げますと,先ほどおっしゃっていただいたように,「社会的事象の見方や考え方」,小学校の例でありましたら,こういうことについて着目して,社会的事象を見出し,比較,分類して総合したり,関連付けたりしてということを使って,この三つの柱にそれぞれ生きていくものなんだというところで,これを用いて,それぞれの資質・能力を育んでいくという,各教科特有の概念であろうかということ。それぞれのところで資質を高めていくというところ。そういうものが,この「見方・考え方」であるのではないかと思っております。
また,先ほど,「見方・考え方」というものは当然でございますが,「思考力・判断力・表現力」というものがどのように広がっていくか,段階を付けていくかというものに関してなんですが,それにつきましても,先ほど附箋を付けていただいたところがあろうかと思います。附箋を付けていただいた4月6日のイメージたたき台の次の次のところでございます。たたき台のところに「思考力・判断力・表現力」の育成というところで,小・中・高の発達段階でどういうふうにして「思考力・判断力・表現力」というものの見方が出てくるのかというところがあろうかと思います。一応,それぞれの「思考力・判断力・表現力」というのはこういう整理で発達段階が付けていけるのではないかというところ。そこが,どれぐらい「知識や概念の例」であったり,先ほどの補足資料のところに入れ込んでいけるかとか,おっしゃっていただいたように全体の見せ方を前回も御議論いただいて,説明の仕方も考え,分かりやすい資料も作らなければいけないと思っております。そのようなところは,御意見を踏まえて,また考えてまいりたいと思っております。
以上でございます。

【原田主査代理】  ありがとうございました。
ほかにいかがでしょうか。
それでは,資料15も含めて御意見を頂きたいと思います。もちろん,また資料13,14を思い出して,新たな御意見を頂ければ,それも構わないと思いますけれども,恐らく資料15は,学習指導要領の目標の文言にも当然生かされてくる。そういう意味では,教科,科目の基本的性格を規定する文章だと思いますので,是非よく見ていただければと思います。
浅川委員。

【浅川委員】  今,座長もおっしゃったように,この文言が,多分科目の目標になると思うんです。そうして考えたときに,地理歴史科のダイヤモンドですかね。公民科のダイヤモンド,これがそれぞれの科目の究極の目標になると思うんですが,現行の学習指導要領だと,地理歴史科と公民科と違うんですね。当然科目が違いますから,目標が違うはずなんです。この新しいものでいくと,地理歴史科と公民科が,究極の目標が同じなんですよね。ということは,何で二つ科目があるんだという素朴な疑問が出てくるのではないかな。単純に,白マルの方法だけが違うから教科が違うのかというところにつながってしまうので,地理歴史科の目標というのを,もう一回見直して,地理歴史科なりの目標を作るべきではないかなと,私は思うんです。
以上です。

【原田主査代理】  ありがとうございます。
特に浅川先生,具体的にここをというのはまだ。

【浅川委員】  ええ。

【原田主査代理】  はい,分かりました。
ほかにいかがでしょうか。
その辺り,現行の目標との比較表がどこかにあったような気がしますけれども,どこにあったか,すぐ思い出せますか。

【大内学校教育官】  失礼いたしました。参考資料1でございまして。

【原田主査代理】  申し訳ありません,これを御覧ください。裏面の上が地歴科で,下が公民科で,書き出しからかなり違っていることが分かりますね。
はい。羽田委員,お願いします。

【羽田委員】  先ほど「歴史総合(仮称)」のところで「私たち」とは誰のことかということを申し上げました。この資料15ですけれども,地理歴史科のマルの三つ目のところを見ると,下から2行目辺りに「日本国民としての自覚」ということがきちんと書いてあります。その後,「他国や他国の文化を尊重する」と続きます。これは当然日本国民としてやるべきことですけれども,話はそこで終わっていて,先ほど,これを含むかどうかと言った地球の住民という意識への言及はありません。この帰属読意識をも教えるのかどうかという点について,考えるべきだと思います。今のままだとこの意識には触れないことになりますが,それでいいかどうかについて,鋭意御検討いただきたいと思います。

【原田主査代理】  この日本国民としての自覚及び他国や他国の文化の尊重にとどまらないで,更に地球市民としてとか,住民としてとか。

【羽田委員】  そうですね。そこまで書くかを検討すべきではないかと思います。先ほどの「私たち」は誰かという問題と関わりますが,私はやはり地球上の人々が全体として「地球の住民」としてまとまらねばならないと思います。日本国民だけで満足し,「私たち」とは日本国民のことであり,これらのテキストは日本国民が学ぶべき「歴史総合(仮称)」であり,世界史,日本史なのか,それとも,日本国民に加えて,更に地球の住民という意識をも生徒が抱けるような歴史教育をするのかという問題です。

【原田主査代理】  今の羽田委員の御意見,半分提案を込められていると思いますけれども,これに関連しても何か御意見があれば,みんなで議論して,ある程度方向性を示さないと,きっと事務局も困ると思いますので,何か関連して御意見があれば頂ければと思います。もちろん,資料15全体でも構いません。
では,小川委員。

【小川委員】  私は羽田先生の御提言に賛成なんですけれども,前の資料14に,「学びに向かう力・人間性」のところで,高等学校の地理歴史科のところには,繰り返し「持続可能な社会づくりに向けて,世界や国土の在り方を意欲的に探究しようとする」というのが出てきた。この持続可能な社会,持続可能な地球,それが繰り返し出てきたのに,最後の教育のイメージのところで,それがすっぽり抜けてしまうような気がして,あえて言えば,グローバル化する国際社会に主体的に含意されているのかなとも思ったんですけれども,やはりグローバル化する国際社会というだけではまとめ切れていないのではないのかなと思います。
以上です。

【原田主査代理】  ありがとうございます。
関連して,羽場委員,お願いします。

【羽場委員】  今の羽田先生と小川先生の意見に原則賛成で,そこからの意見なんですけれども,日本国民としての自覚と他国というと,非常に区分けして狭い形がするので,一つは地域という枠組みとグローバルな市民ということをここに入れられればいいのではないかと思います。以前に大衆化ということと,市民化ということを少し触れたことがあるんですけれども,やはり国民を超えたグローバルな社会における市民意識の醸成というのは,この「歴史総合(仮称)」を考える際に非常に重要になってくるのではないかと思っています。
以上です。

【原田主査代理】  ありがとうございます。
ほかにいかがでしょうか。
まだまだ検討すべき課題はあるとは思うんですけれども,限られた時間の中でいつまでも議論が続くことはないと思うので,是非言い残したことがないように,ここで御意見を頂ければいいかなと思いますが,いかがでしょうか。よろしいですか。
はい。では,大石委員。

【大石委員】  私も先生方の意見に賛成です。その上でなんですが,先ほどの意見とかぶりますが,せっかく今回,世界市民,グローバルな視点,あるいは一歩先へ新しいものを出そうとしたときに,戻ってはいけないんですけれども,示されている「知識,概念の例」が余りにも古典的過ぎていて,例えば先生たちはいろいろ言っても,これで落ち着くならば安心だというので,ショックの度合いが小さいと思うんですね。近世なんかを見ても,もう鎖国の問題もドロップしているし,それ以前の元の襲来も含めて,やはりグローバルな視点からも,もう一回こういう日本史を組み立てたときにどうなるかという問題,そこをもう少し積極的に打って出ないと,一国主観で終わってしまうと思います。もう少し東アジア史,それから世界史の中での日本史,あるいは逆に世界史というのを見ていく必要を感じます。
以上です。

【原田主査代理】  ありがとうございました。
では,仙田委員,お願いします。

【仙田委員】  私も皆さんの意見に賛成です。その際,先ほど言った資料2の一番最後のページのところに,「小・中社会科における内容の枠組みと対象(たたき台)」がありますよね。私,この前も小・中のところに出させていただいていたんですけれども,この一番右側のところの「歴史と人々の生活」というところが,小学校から地域,そして日本,世界と,それで中学でやっているわけですから,もちろん高校段階では,この三つを全部凌駕するようなものを考えて,いろいろな視点に立てる,地域にも,日本にも,世界にも立てるということが重要かなと思っています。
そういうことを踏まえたものが,最後の15のところに出てくると,小・中・高の連携が生きて,そしていろいろな立場に立てるということが,我々は小学校から高校までの社会教育を通じて,身に付けさせることができるかなと思っていますので,そのような内容にしていただけると有り難いと思っております。
以上です。

【原田主査代理】  ありがとうございました。
よろしいでしょうか。ほぼ,本日のところは御意見も出尽くしたようですので,本日はここまでにしたいと思います。
本日,皆さんから頂きました貴重な御意見につきましては,事務局で論点ごとにその趣旨を整理していただくようお願いいたします。
また,本ワーキンググループにおきましては,引き続き,取りまとめに向けて検討を進めてまいりたいと思います。
なお,先ほども申しましたが,たくさんの資料がございますので,またお帰りになったりして,よく内容を御覧いただいてお気付きの点,あるいは新たに発見したことなどがございましたら,是非ペーパーで事務局にお送りいただければと考えております。併せてよろしくお願いいたします。
では,本日予定されていた議題はここまでです。最後に,次回以降の日程につきまして,事務局から御説明をお願いいたします。

【大内学校教育官】  長時間にわたりまして,ありがとうございました。
次回以降の日程につきましては,追って調整の上,御連絡をさせていただきたいと思います。
また,原田主査代理から御紹介がありましたとおり,御意見につきまして,引き続きよろしくお願いしたいと思っております。
以上でございます。

【原田主査代理】  それでは,第9回の社会・地理歴史・公民ワーキンググループをこれで終了します。長時間ありがとうございました。

―― 了 ――

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