教育課程部会 国語ワーキンググループ(第7回) 議事要旨

1.日時

平成28年5月17日(火曜日) 15時00分~17時00分

2.場所

文部科学省 東館3F1特別会議室

3.議題

  1. 国語教育の改善充実について
  2. その他

4.議事要旨

1.国語科を通じて育成すべき資質・能力について

漢字指導の在り方について

 これまでも、学校においては、地域の地名などそこで生活する子供たちに必要な漢字は、適宜、扱ってきているという現状において、学年別漢字配当表にないからといって平仮名にするのはかえって不自然である。従って、社会的な必要性の高い漢字に限って、見直しをするという今回の方針に賛成である。
 一方、この見直しは、字数を増やすことが目的ではなく、漢字学習の改善・充実の一つとして行うべきであると考える。つまり、常用漢字表の前書き等にある漢字を手書きする意味や、文化審議会国語分科会から報告された「常用漢字表の字体・字形に関する指針」などを踏まえた指導をするなど、漢字指導全体の中の「学年別漢字配当表の見直し」という形で盛り込んだ方が実効性があると考える。

 他教科の学習との関連を図ることと、常用漢字表に都道府県名が追加された経緯などを踏まえれば、都道府県名に用いられる漢字に限って増やすことは妥当であると考える。ただし、子供たちの学習負担を考えると、それ以上は増やさない方が望ましいと思う。
 小学校の現場では、漢字の学習そのものに対する興味や関心が高い子供たちが多くいる一方で、書けなかったり使えなかったりして、漢字を苦手に思っている子供たちがいることも確かである。漢字を何度も機械的に書かせたり、家庭学習でその定着を図るように強いたりするだけでは、漢字が身に付いて楽しく使えるようにはならないので、漢字の指導の在り方を改善する必要があると感じている。

 大学生に関して、漢字の音読みの成績は良いが訓読みの成績が悪いという実態がある。訓読みは和語、大和言葉であり、訓読みができないと意味が分からないという状況になると思われるので、この点について漢字指導の中で考えていく必要があると思われる。

 漢字の成り立ちに関して、漢字が象形文字だというところで学習が終わってしまっていると、形成文字の造りが理解できていないため、漢字そのものの理解が深まらないという状況がある。音と文字の全体を具体的に考えるような指導をもっとやると、漢字の系統性が学べるのではないかと思う。

 以前に行った漢字調査では、4年生で学習した漢字が5年生で書けなくなり、また6年生、中学校1年生になると書けるようになるという傾向があった。これを解釈すると、4年生で学習した漢字は、その学年ではなかなか使わないので5年生になると忘れている。しかし、生活や学習の範囲が広がることで使ったり目にする機会が増えたりすると、自然に定着するということがあると考えている。このため、社会科で既に教えている都道府県名について、国語科で同時に扱うということは、子供の目に触れる機会を工夫するという観点からも大事なことだと考える。

 漢字の苦手な子供たちは、漢字を記号として覚えているようなところがあるので、漢字の成り立ちという観点からの指導も含めた全体の中で漢字指導の在り方を考えていく必要がある。

 字画の多い漢字ほど覚えにくい、使いにくいとは限らないという話を聞いたことがある。むしろ、字画が少なくても、抽象度が高い概念的な漢字であると習得に苦戦すると聞く。今後、漢字指導の在り方を考える上で、子供たちが習得に苦戦した漢字の傾向などの分析が付随すると良いと考える。

 漢字は形声文字の方が多く、そのメカニズムを知っていると類推でかなり読むことができる。そういった意味で、漢字は、意味と記号性に富んだ文字の中でも非常に重要な存在だということ、呉音や漢音など、歴史的経緯も含まれている文字のタイムマシーンのようなものであることなど、漢字への親しみを啓発できるような視点を取り入れながら漢字指導の改善を図っていってはどうか。

 現行の学年配当の観点をみると、1.2.とも、「必要な」という言葉が使われている。つまり、単なる字数の量的な問題ではなく、実際にその漢字が学習や生活に必要なので、そのことを学びの対象にするという観点が示されているのだと思う。このため、都道府県名は、社会の学習用語という観点からも、公共性の観点からも、量の問題ではなく質の問題として考えていくべきである。したがって、学習負担を考慮しながら、最低限のこととして、都道府県名に用いる漢字を追加するということは妥当であると考える。

 子供の認知能力は、必ずしも大人が考えるような概念と同じではなく、例えば「鳥」よりも「鳩」の方が早く覚えるということがあると聞いたことがある。「学年別漢字配当表」の中で配当学年を考える際には、子供にとっての概念化の難易度を踏まえた配当を検討してもらいたい。

 懸念としては、社会科との学習の連携を考え特定の学年にまとめて追加することになると、当該学年の学習負担が増大することになる。学習負担のことを踏まえ、調整や工夫が必要だと考える。

2.本ワーキンググループにおける取りまとめについて

 2ページの4つ目の○の3行目には、「言葉と対象をつなぐことと、そのつないだ関係性」とあるが、「言葉と言葉の関係性」ということもあるのではないか。

 別紙1について、小学校では「人と人との関わり」、中学校では「社会との関わり」、高等学校では「社会や他者との関わり」とあるが、「社会」が「他者」よりも下の学校種にあることには違和感がある。

 2ページの2つ目の○には、「自然科学や社会科学等の視点から理解することを目的とするのではなく」とあるが、国語科の題材としては、社会科学や自然科学の題材が使われるので、「理解は目的としない」としない方がいいのではないか。

 学校図書館の条件整備をすることが一番望ましいが、困難な状況もあるので、公共図書館についても言及し、図書館の利用の拡大をした方が現実的であると思う。また、高等学校の必履修科目において、学習指導要領のどこかで図書館の活用について触れることができれば、実現可能性が高まるのではないか。

 4.(3)の最後の○に「韻文や散文」とあるが、学習指導要領では、「文学的文章」と「説明的文章」とされているので、今までのジャンルの分け方を念頭に置いた系統性を検討した方がよい。

 学校図書館の整備について、「蔵書」とすると紙の本だけを思い浮かべることが多いと思われるので、「学校図書館メディア」という言葉を使ってはどうか。また、専門職である司書教諭及び学校司書の配置の促進が条件整備として最も重要である。

 蔵書面、人材面、利用面などにおいて、学校図書館の格差が存在するのが現状であるが、学習指導要領はあまり充実していないところを引き上げるためのものでもあるので、公共図書館の活用については「学校図書館と連携して」と表現するのが良いと考える。

 高等学校必履修科目については、日々の生活に生きて働く実践的な「現代の国語(仮称)」と、高校生として最低限求められる教養としての「言語文化(仮称)」の2つが掛け合いになって成長させていく科目であると考えている。その「言語文化(仮称)」については、古典からの連続性だけでなく、現行のA科目にあるような外国の文化との関わりの視点や新しいカルチャーとしての言語文化なども視野に入れるべきだと考える。

 国語は、教科書に授業が依存する傾向が大きい教科である。このため、主たる教材である教科書において、授業の中で言語活動が一層充実するような教材提示や、育成すべき資質・能力や様々な言語活動を教師が指導に応じて選べるような在り方が求められるのではないか。

 今回の改訂は、小中学校においても大きな変更になるため、高等学校の科目編成の見直しに関して必要とされている様々な条件整備が、小中学校においても必要であると考える。

 短歌や俳句など多様な解釈をも許すような教材というものが、「深い学び」「対話的な学び」「主体的な学び」に関して重要なのではないか。こうした学びは、質問する力や判断する力が生徒以上に教師に求められており非常に難しいが、多様な解釈があるような教材はこれらの学びにとって有益なものになるのではないか。

 語彙量を増やしたり語彙力を伸ばしたりする指導の改善・充実は非常に重要である。小学校入学時における語彙の違いが、その後の学校生活に影響していることを実感している。このため、小学校低学年ではどのような指導が必要なのか、そのために教材はどのようにあるべきか、ということを考える必要がある。

 学校には、特別な配慮が必要な児童生徒が通常の学級の中で学んでいるという実態を考えた時に、その児童生徒も含めた充実した指導が行われるために、教員が記載されているような配慮の例をきちんと学んでいくという意味でも、このような記載は非常に重要である。

 この取りまとめ自体が非常に難しいものになっているので、児童生徒に対して「君たちはこういう方針の下に教育を受けているんだよ」と説明できるような、かみ砕いた資料が必要ではないか。

 実態として、高校生が限られた時間の中で何を学んでいくかを考える時に、大学受験で何が評価されるのかが一つの大きな動機付けになっていることは確かである。高校生の学びの意欲を引き出す上でも、大学受験というものを条件整備として考えることができるのではないか。

 「深い学び」というものを意識すると、13ページの1)の「自分の思考の過程をたどり」をもう少し強調した方がいいのではないか。また、2)について、国語科における「対話的な学び」というものはどういうものなのか、ということをもう少し書き込む必要があると思う。3)についても、「実社会や実生活との関わりを重視した学習過程を設定する」というだけでは、十分に学校現場に伝わりにくいので、もう少し書き込んでほしい。

 文字、音声、映像の順に情報量の段階がある。言葉は色々な表現が可能であるが、どう使うかが大切。多様なメディア表現を与えて楽しむというわけではなく、想像力を豊かにするためにその使用法を考える必要がある。情報が多ければいいのではなく、むしろ情報が限られているからこそ、文字や音声のメディアが意味を持つので、そのような観点から教材の在り方を提示することが大切だと思う。

以上。

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