教育課程部会 国語ワーキンググループ(第4回) 議事要旨

1.日時

平成28年2月19日(金曜日) 13時00分~15時00分

2.場所

文部科学省東館3F2特別会議室

3.議題

  1. 国語教育の改善充実について
  2. その他

4.議事要旨

1.国語科を通じて育成すべき資質・能力について

高等学校における科目構成(たたき台)全体について

 共通必履修科目を2つ置くことになるが、専門高校などで、国語に配当する時間を多くは取れない場合、履修に無理がないようにする必要がある。

 今回のたたき台は画期的な案だと思う。現行の学習指導要領のA科目とB科目については、性格そのものが違うにも関わらず、単位数の差から、A科目は易しいもの、B科目は難しいものという誤解を与えたまま今に至ってしまったと理解している。

 言葉の働き、仕組みに関して、高等学校段階では何を位置付けて指導していくのかが重要である。すべての生徒が学べるよう、必履修科目に含める必要があると考える。

 読むことイコール講義だというような誤解があるのではないか。教科内容として、「話す・聞く、書く、読む」のどの力を身に付けていくとしても、言語活動として実現していく時には、「話す、聞く、書く、読む」が総合的に行われるものである。言語活動としての「話す、聞く、書く、読む」と、教科内容としての「話す・聞く、読む、書く」の関係性を整理する必要がある。

 高等学校の必履修科目で、言語運用と言語文化の2つの柱が立つのであれば、小中学校もこの2つの柱で整理できていくと思う。また、課題を考えると、今回の改訂は、高等学校において、どうやって生徒をアクティブに動かすかがポイントになってくると感じた。

 読書活動はすべての科目に関わるが、科目の性格が随分異なるので、どのように科目に付随した形で色づけしていくのか、明確にしてほしい。

 「文学国語(仮称)」だけが読書活動と関係があると誤解されないようにしていただきたい。

 必履修科目を2つに分けたのは画期的で効果的であるが、この趣旨が実行されるよう、教員養成や教員研修などをしっかりとやっていくことが重要である。

 非常に画期的な案だと思う。過去にも言語運用に関する科目が作られたことがあるが、教師の関心がなかったり、大学入試が対応していなかったりして、有名無実なものとなっていた。今回は高大接続改革と連動しており、大学入試が変われば高校の授業も変わるので、大学入試に新しい科目の内容が反映されれば、高校の授業の中でも教えられていくと思う。

 私たちが実際の社会生活で経験する言葉というのは、映像音声と文字とが混在しているものが圧倒的に多い。映像を含む多様なメディア表現を扱うことは非常に重要である。また、海外では、国語の教科内容に「みること、みせること」が入っているので、今後の課題としていただきたい。

「現代の国語(仮称)」について

 高校を出た段階で国を支えていくような人材を育成するためには、その根幹となる国語教育を充実していく必要がある。その意味では、「現代の国語(仮称)」は昭和35年、45年改訂の「現代国語」と名称が似ているので、「言語生活」としてはどうか。

 小中学校で書写が行われているが、基礎の段階で終わってしまっているのが実情である。実社会・実生活に生きて働く国語の力ということで、社会に出て困らない程度の日常生活の書式などについても含めてほしい。

「言語文化(仮称)」について

 古典と近現代の文章の両方の教材を活用しながら、伝統的な言語文化の理解を図っていくという印象である。

 ただ“読む”という科目なのではなく、例えば、文語調の言葉を現代の言語生活(若者対象のコミックやゲームなど)に持ってくると一定の効果があるというのが言語文化の一面であり、そのことを、社会や自分との関わりの中で生かす、捉えるという科目であることが分かるような形で記載してほしい。

 文法嫌いが生む古典嫌いの問題を解決するためには、新しい科目においても、文語のきまりや訓読のきまりなどに歯止めをかけ、文法中心の科目にならないよう、示し方に注意が必要である。

 言葉をもつ力を信頼して伝え合う、喜びを味わうためには、言語体験が必要だが、不読率が高くなり、なかなか言語体験が行われていないのが現状である。特に、いまの日常では使われない文語調の言い回しについて、言語体験が少なければ、誤った使い方をしていても違和感を覚えないだろう。私たちがいま使っている言葉の下支えとなっている、漢文の書き下し文の語調なども学んでほしい。

 我が国の言語文化への理解・関心ということで、小中学校ではなかなか行われていない、我が国の書き文字の文化やその歴史的背景についても含めてほしい。

 今の高校生が小学校の高学年の頃に、現行の学習指導要領となったが、当時は、まだ、古典などの伝統的な言語文化に関する学習が、十分に取り組まれていなかったと思う。今回、高等学校で改善の方向性が示されたように、今の小学校では、色々な取組が行われていると思う。
 また、高校生であっても、小学校で行われているように、自分の住んでいる地域の文化財を探すなどの学習によって、自分や社会との関わりの中で、伝統的な言語文化を生かす学習が、具体的に展開されていくのではないか。

「論理国語(仮称)」について

 「国語表現(仮称)」との違いが分かりにくいので、例えば、創造的思考や批判的思考といった言葉があるとよい。

 論理的思考を養うのは、論説文などだけではない。例えば、漢文などから論理の思考が養われることもある。古典的な文章も論理的な思考に生かしていけるのではないか。

「文学国語(仮称)」について

 小説等の文学的文章を創作する力については、高校現場の感覚として、創作する活動としては成り立つが、能力とするのは、少し踏み込みすぎのように感じる。

 幼稚園や保育園の子供たちは、言葉遊びやお話作りが好きで、言葉を使って表現するという点で非常に豊かである。立派な文学作品を創作するということではなく、自分を表現する一つの手段として、創作というものを、学校教育の最終段階に位置付け、生活を豊かにするという観点で展開していくと、幼児教育からつながっていくのではないか。

「国語表現(仮称)」について

 その文章にどのような表現の特徴があるのか、なぜそういった表現の特徴がこの文章では使われているのか、といったインプットをした上で、アウトプットとして表現するというイメージを出してほしい。

「古典探究(仮称)」について

 “古典としての古文・漢文”となると、「言語文化」で学習してきたことはどのように深められるのか。“国語としての古文・漢文”を学んでいくという意識付けを、もう少し明確に打ち出してほしい。

 文法嫌いが生む古典嫌いの問題を解決するためには、新しい科目においても、文語のきまりや訓読のきまりなどに歯止めをかけ、文法中心の科目にならないよう、示し方に注意が必要である。

言葉の働きと仕組みについて

 実際の学習指導の場面では、“言葉の働きに気付く”ということが難しい。また、3領域の学習活動を通して、言葉の働きに気付かせていく場合、その領域のねらい自体が表に出て、言葉の働きに気付くこと自体が背景化してしまう問題がある。
 このため、子供たちが言葉の働きに気付いていけるよう、言葉の働きを言語能力を支える要素として扱うだけでなく、言葉そのものの働きに気がついていく学習プロセスを位置付けることはできないか。

 ヤコブソンの時代からコミュニケーションの取り方自体が変わっていることに留意する必要がある。今は、言葉自体が遠距離の中で双方向に拡散していき、場合によっては加工されたり変形されたりするコミュニケーションの時代であり、言葉の機能だけでなく、機能が発揮される場(日常生活での言語生活、学習場面での言語生活など)が変わってきてしまっている。こうした場での言葉の役割という観点からも検討が必要と考える。

 国語(日本語)を教える時に、他の言語と比べることによって、かえって日本語の特徴や仕組みを明確に理解することができようになるのではないかと思う。私たちは、言葉を日常的に使っているが、言葉は日常生活の中で学ぶとともに、このように他の言語と比べながら学んでいくことも一つ大事なことだと考える。

 実生活・実社会に生きて働く国語の力を考える場合、言葉の構成や働き、組み立ても重要だが、むしろ、実際の対人コミュニケーションでどのように言葉が交わされて、そこからどのように意味が生まれていくのかという観点も重要。この点については、語用論の世界で研究されているが、言語運用の知見からのコミュニケーションモデルも含めた背景知識が必要と思う。

読書活動について

 高等学校でも先生たちが工夫して本を読ませようとしているにも関わらず、なぜ、読書の傾向に改善が見られないのか。非常に重要なことだと考えている。

 高校生の読書活動に改善が見られないのは、読書習慣がないことも大きな原因の一つである。読書調査の実施団体としては、小学校や中学校で、きちんとした読書指導が行われていないのではないかと考えている。

 中学校では、各学校で朝の読書活動が行われるようになり、10年前から不読者が一気に減っている。高校にもそういった時間を設けている学校はあるので、高校生が、その時間での活動を“読書”と捉えていないのではないかと思う。

 読むということは、自分自身や社会とどうつながっていくのか、自分をどう変容させるのかということを、高校生が実感を伴ったものとして認識できていないのではないか。その点を認識できるようになれば、読書に価値を認めることができ、結果、読書量も増えていくのではないかと思う。

以上。

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