教育課程部会 国語ワーキンググループ(第4回) 議事録

1.日時

平成28年2月19日(金曜日) 13時00分~15時00分

2.場所

文部科学省東館3F2特別会議室

3.議題

  1. 国語教育の改善充実について
  2. その他

4.議事録

【北原主査】
 定刻になりましたので、ただいまから中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会国語ワーキンググループの第4回を開催いたします。
 本日は皆様御多忙の中、御参集いただきましてまことにありがとうございます。大変暖かくて、5月ぐらいの気候だということです。よかったと思います。よろしくお願いいたします。
 まず事務局から配付資料について、確認をお願いします。

【小林教育課程課課長補佐】
 それでは、配付資料の確認をさせていただきます。
 本日は、議事次第に記載しておりますとおり、資料1から6、そのほか机上に参考資料を配付させていただいております。不足等ございましたら、事務局にお申し付けください。
 なお、机上にタブレット端末を置いておりますが、その中には本ワーキンググループの審議に当たり、参考となる関係する審議会の答申や関係資料等をデータで入れております。詳細は、議事次第の裏面の目次を御覧ください。
 以上でございます。

【北原主査】
 ありがとうございます。
 ただいまより議事に入ります。きょうは3名の委員の方が御欠席です。初めに、本ワーキンググループの審議等について、初等中等教育分科会教育課程部会運営規則というのがありまして、その第3条に基づき、原則公開により議事を進めさせていただくこととともに、第6条に基づきまして、議事録を作成し、原則公開するものとして取り扱うこととさせていただきます。どうぞよろしく御了承をお願いいたします。
 なお、本日は報道関係の方から会議の撮影及び録音の申出がありまして、これを許可しておりますので、御承知おきください。なお、テレビカメラによる撮影につきましては、申し訳ございませんが、ここまでとさせていただきます。
 それでは、本日は、資料の1、言葉の働き(機能)と仕組みについて、それから資料の6、高等学校国語科の科目構成についての意見交換を行います。議事の流れといたしましては、前回の最後に事務局から説明していただきました資料1、言葉の働きについて意見交換を少ししていただきます。その後、前回国語科で作成すべき資質・能力について頂いた意見の内容について、事務局からの説明で確認をしていただきます。その後、資料6の高等学校の科目構成の議論に進む、という流れでまいりたいと思います。資料1、それから資料6ですね。
 それでは、最初の意見交換をお願いしたいのですが、前回事務局から説明いただいた資料1、言葉の働きと仕組みについて、について前回意見を伺えなかったので、御意見を頂きたいと思います。御意見のある方はあらかじめ、いつものように名札を立てていただきますと、私の方で順次指名させていただきます。
 また、発言が終わりましたら、元に戻していただきますようお願いいたします。
 また、御発言の際には、マイクのスイッチをオンにして、発言後はオフにお願いいたします。
 それでは、いかがでしょうか。資料1をもう御覧いただいているかと思います。いかがですか。菱形が2つあって、上の方がヤコブソンの分類ということです。
 それからひし括弧の2番目の真ん中から少し下は、これは文化審議会で答申しました国語についての捉え方であります。国語の果たす役割、個人にとっての国語丸1、丸2、丸3とございます。最後の菱形は、言葉の働きに関する現行の学習指導要領における主な記載でございます。
 それから、2枚目もございまして、これが言葉の仕組みですね。音声と書いてあり、音韻や音節がここは当たっているのではないかと思います。音節があって、それからそれがまとまると語ができて、語がまとまって文ができると。それから、文が文脈上コンテクストでいろいろな意味が生じ得るのが、言葉の仕組みだと整理されております。音節があって語の成分ができて、文ができて、その文にはいろいろな文脈上の意味があると。
 それから、言葉については文字、表記の問題もあると。
 これについて何か御意見、御質問。よろしいでしょうか。はい、中村先生。

【中村委員】
 済みません、失礼します。1枚目の下に、既に現行の学習指導要領で小学校でこうした言葉の働きに気がつくということが記載してあるわけですけれども、実際の学習指導の場では、こうした働きに気がつくというのがなかなか難しいのではないかと考えます。1つは言葉の働きの内容自体がしっかり先生方に理解が届くところが難しいのではないか。そういう点でこの2枚のように言葉の働きが整理されるというのは、非常に大切なことだと思います。
 一方で、指導の段階で、現行の指導要領ですと、3領域の学習活動を通してこういう内容に気づかせていくといった場合に、その言葉の働きに気がつくこと自体が背景化していってしまって、その領域の狙い自体が表に出ますので、その背景化されていったときにどうやって両立させていくかという点。もう一つは取り立てて、まとめて扱ってもいいことになっているわけですが、そうしますと、こうした内容の羅列といいますか、内容はそのまま教えていくという方向になってしまうかと思います。
 ですので、こうした働きに子供たちが気がついていけるようになっていくためにも、資料2や資料5にありますような資質・能力の部分に、問題探求的に言葉の働きに気がつくための方法でありますとか、あるいは追求していく態度を育てることを位置付けたりする。あるいは資料3の学習プロセスの部分にも、今は、話す・聞く・書く・読むの学習活動を支える要素的な扱いになっていますが、そういう部分とともに言葉そのものの働きに気がついていく学習プロセスというのは、どういうふうにこの話す・聞く・書く・読むと同じような形で位置付けられるかという点が明確になると、こうした働きや仕組みについての議論の実効性が生まれるのではないかと考えます。
 以上です。

【北原主査】
 ありがとうございました。本当にただ気づくのではなくて、もう少し今度は資質・能力を育成する方向へ重点を置かなければいけないという御意見ですね。
 これから資料2、5について、また小林主査から説明していただけると思います。
 そちらへ参ってよろしいですか。
 高木委員、どうぞ。

【高木(ま)委員】
 この資料に示された言葉の働きの2つのヤコブソンと文化審議会の答申、これ自体はいいと思う。別にこれに問題があるということではないのです。これをベースに国語科というものを考えていったときに、少し狭くなってしまわないか。文化審議会の方は少し広いですけれども。
 何を申し上げたいかというと、これらはそれ自体大切なことですけれども、コミュニケーションの取り方自体が、例えばヤコブソンの時代と全然変わっていて、その後電話やテレビなどいろいろなものが出てきました。今はデジタルやインターネットの時代で、言葉が発せられたりしていくわけです。そのときに、言葉自体が遠距離の中でも、誰もが双方向で、しかもいろいろな言葉を拡散していきますし、場合によっては加工されたり、変形されたりするようなコミュニケーションの時代になってきてしまっていると。
 そういうことを踏まえたときに、この機能だけではなくて、この機能が発揮される場というか、日常生活、言語生活が昔とは全然違ってきてしまっていると。そういう中で、例えば日常生活での言語生活、それから学校での言語生活、学習場面での言語生活、それから社会生活、特に18歳の選挙権の問題もあります。先ほど中村先生がおっしゃったように働きの問題に関わると思いますけれども、そういういろいろな中での言語の役割は、場とか生活場でのこの役割をベースにしていく面も必要なのではないかなと思っています。
 なので、どちらかというと、文化審議会の答申の言っていることに近いのかもしれません。単に機能だけというところで、あるいは次のページの言葉の仕組みだけで捉えていくと、大事なところを欠落させてしまう危険もないだろうかと、少し思ったので申し上げました。

【北原主査】
 ありがとうございました。
 言葉の働きという言葉そのもののことを論ずるのか、言葉を使う場面、特にコミュニケーション能力の基盤になるのは言葉ですけれども、コミュニケーション能力のあたりで、いろいろ時代が変わってきているので、今LINEなどですごく問題が起きたりしています。文字言語や音声言語と、そのような割り切り方だけでいいのかどうか。コミュニケーション能力という人間が育っていくときの、その辺はこの言葉の働きを超えたようなところがあります。この2枚で論じるところではないのかもしれませんけれども。大事なことだと思いますよね。
 いかがでしょうか。吉田先生、はい。

【吉田委員】
 お願いします。この資料は、非常に分かりやすく作ってくださったと非常に思います。私はこの表から、国語、日本語を教えるときにも、ほかの言語と比べることによって、そのことがかえって日本語の特徴や仕組み、あるいは働きというのを明確に理解することができるのではないかと思います。その点においても、これは一つの例示だと思いますけれども、一つの方向性を示すものとして、参考になる資料だったと思います。
 音声、音韻、北原先生も御指摘くださいましたけれども、音韻のところでももちろん私たちは50音図というのを知っていまして、それで、あいうえお、かきくけこを知れば、大体低学年、1年生でも自分の思いをつづることができる。これは多分、ほかの言語に比べて非常に特色のあるところだと思います。このようなところも一つでしょう。
 それから語順にしても、私たちの日本語は主語を初めに示さないという1つの特色があります。大体文脈で判断するところだと思います。ところが英語などはまず主語を明確にしていく。ここに主語を最初に示すもの、あるいはイエスorノーで態度を示していく言語に比べてみて、日本語が主語を示さなかったり、あるいは文末まで行かないと肯定なのか否定なのか分からないということなども考えていきますと、ほかの言語と比べることによって日本語の仕組み・働きがより明確になっていく。
 そういうことで言うならば、私たちは言葉を日常的に使っているわけですけれども、その日常生活の中で学ぶとともに、このように比べながら学んでいくことが、一つ大事なことだということを知らせてくれる資料として、作られているのではないかと考えました。

【北原主査】
 ありがとうございました。
 日本語の中だけではなくて、まさに外国語と比べるような視点が大事だと。
 ほかに。いいですかね。それでは、まとめてまた御意見を頂くので、資料2から5で、前回の議論からの修正点がありますので、それと本日意見交換を行います資料6について、まとめて説明をお願いしたいと思います。
 小林先生、お願いします。

【小林教育課程課課長補佐】
 それでは、前回の修正点等からまず話をさせていただきます。
 まず資料2でございます。資料2、国語科で育成すべき資質・能力(検討のたたき台)でございます。前回意見等を頂きました、一番左の個別の知識や技能の部分でございます。その中の真ん中あたりですが、言葉の使い方に関する理解と使い分けの部分で、前回話し方という部分しかなかったものについて「書き方」「読み方」というものも必要ではないかということもございまして、ここに「書き方」や「読み方や音読・朗読」という部分を加えさせていただいております。
 また併せて、思考力・判断力・表現力等、真ん中の部分でございます。他者とのコミュニケーションの側面の部分でございます。その中で、相手の心を想像するだけではなく、自分の考えをどう表現していくかという意見がございまして、その他者とのコミュニケーションの側面の中に、「自分の考えや思いの伝達」という部分を加えさせていただいております。
 また、学びに向かう力、人間性等の部分で、一番上の部分でございます。言葉が持つ力を信頼し、言葉によって困難を克服し、言葉を通して社会や文化を創造しようとする態度ということで、前回そういった「言葉によって困難を克服する」といった文言というのも必要ではないかという意見を受けまして、ここに加えさせていただいております。以上が資料2でございます。
 続けて資料3でございます。A3の大きな資料になります。上から話すこと、聞くこと、書くこと、読むことと並んでおります。下の部分で説明させていただきます。下の書くこと、読むことで、前回読むことの中に実際のインプットの方で、右下の方になりますが考えの形成というものがございます。書くことの中にも、そういった考えの形成という部分のうまい表記がなかったので、実際書くことのテーマの設定の後の、情報収集の下の内容の検討、考えの整理、構成・表現形式の検討の下のここに「考えの形成・深化」という部分を入れさせていただいております。
 また、真ん中の部分、黄色い部分でございます。一番左の黄色の枠になります。前回、言葉の特徴やきまりに関する理解と使い分けという部分しかなかったものの下に、その要素を書き足しております。「言葉の使い方に関する理解と使い分け」や「書写に関する知識・技能」といったこと等を書き加えております。
 また、この中に記載するレベルを、もっとたくさん要素として書かせていただいておったのですが、大きな表題の部分というか、それだけ抜き出した形にしまして、少し内容的にすっきりさせて表記しておる状況でございます。
 また、この黄色い部分、学びに向かう力・人間性等の部分もここに入れるべきではないかという意見もございましたが、この資料の性格から学習活動の要素、資料ということでございますので、ここにはなかなか示しづらい部分もございます。今回このような形で示させていただいております。
 続けて、資料4でございます。資料4につきましては、各学校種1、2、3という記載をさせていただいております。
 丸1の部分につきましては、特に高等学校、中学校の部分でございますが、言語文化ということで、高等学校は言語文化の担い手としての意識を持つと。また、中学校については、言語文化に対する関心を持つということで、言語文化の記述を入れております。
 また、前回丸2の部分でございますが、その学校段階ごとに分けるのは難しい部分もあるなという意見もございました。受けまして、もう少し抽象的に、丸2につきましては書かせていただいておる部分でございます。
 併せて資料5についてでございます。資料2の修正を受けまして、若干修正をしておるものでございます。
 これで前回の修正点ということと、併せて資料6について説明させていただきたいと思います。資料6は左上をホチキス留めした資料でございます。高等学校国語科の科目構成についてでございます。
 まず1ページ目をおめくりいただきまして、学習指導要領改訂における科目構成等の変遷についてでございます。これは過去の高等学校指導要領の目標を、35年からまとめさせていただいております。
 続いて2ページ目でございますが、過去の指導要領の実際の科目の名称ですね。あと領域構成です。領域構成と科目について、ここに記載させていただいております。
 続けて3ページ目でございますが、今の共通必履修科目等の国語の領域構成を記載させていただいております。今の現行の科目の領域、どの科目でどの領域を教えているかということを分類して書いております。
 以上が現行までの指導要領の話でございます。
 続けて4ページ目になります。国語教育に関する現状と課題についての部分でございます。今回、科目構成等を検討するに当たりまして、どういう課題があるのかということで、いろいろな調査結果等から今回の資料を作らせていただいております。4ページ目でございますが、こちらは学習指導と学習評価に関する意識調査報告書というものからの結果でございます。
 この表の一番上の部分にございます赤い部分、授業や学習指導において心がけていることという質問その中で、教科書にあることを丁寧に教える授業というのが、高等学校は中学校に比べてそういった割合が高くなっているということでございます。また1つ飛びまして、青い部分ですね。児童生徒がグループで話し合い、考えをまとめる授業、また児童生徒が自分で課題を選択し、調べたことや考えたことに基づいてレポートを書いたり発表したりする授業というものが、高等学校の方が中学校よりも低い状況ということが読み取れるかと思います。またさらに1つ飛びまして、下の赤い部分、小テストやワークシートなどにより学期末などだけでなく、日常的に児童生徒に学習状況の評価を知らせる授業、また宿題を定期的に出す授業ということで、これらも高等学校は中学校よりも高い状況でございます。
 ここから下の課題の部分になります。こういったことを受けまして、課題1、教科書教材等への依存度が高く、主体的な学習活動が軽視され、依然として講義調の伝達型授業が行われる傾向。課題2としまして、話し合いや論述など、話すこと、聞くこと、書くことにおける学習が低調ではないかという課題が出てございます。
 続いて、1枚おめくりいただきまして、5ページ目でございます。こちらは国立教育政策研究所において調査しました特定の課題に関する調査(論理的な思考)の結果でございます。特にこの結果ですね。一番上が人文科学に関する文章、これは国語辞典の記述というのがございます。それは1つは普通の通常の国語辞典の記述と、もう一つは語感の記述の辞書、辞典ということで、そういったものの違いがあるものを読んで答えるという問いでございます。それらの中で実際にそういった文章の記述を基にした辞典の特徴は、7割の生徒が捉えたということでありますが、その内容を評価して、目的に応じて適切に活用することができる生徒は4割と、低い状況であったということでございます。
 また、一番下の部分でございますが、教師質問紙等によりましても、実際には課題を設定し様々な資料を調べ、その成果をまとめて発表したり、報告書や論文にまとめたりするといったことが3割に満たなかった、低かったという状況もございます。そういったことがなかなか行えていないという現状があって、その下の課題の3と4ということにつながっていくと。課題の3が、高校生の思考力・判断力・表現力の一部に課題がある。また、課題4としまして、メディアリテラシーや課題探究に関する言語活動等が余り行われていないという現状があるのではないかということでございます。
 また、6ページ目でございますが、実際の現状の高等学校の科目につきまして、どういう形で履修されているのか、開設されているのかでございます。現状といたしましては、国語総合が共通必履修でございますが、一番左にあるように現代文A、現代文B、古典A、古典Bという科目もございます。その中で特に現代文A、古典AといったA科目につきましては、特にその右側にありますように伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項といったものを中心にやっている科目でございます。実際の履修につきましては、普通科の2年生、3年生で見ますと、A科目に比べてB科目、特に読むことを中心としたB科目が多く取られている現状があります。そういったことから課題5としまして、進学希望者の多い普通科ではA科目の開設率が低く、言語文化に関する学習が不十分であるという反省があるという課題があります。
 7ページ目になります。高校生の国語(古文)に関する意識調査からでございます。この調査からは、上の丸の文でございますが、「古文が好きか」という問いに対して、「好き」又は「どちらかといえば好き」と肯定的に回答した生徒の割合は31%になるということで、少し低い傾向ということです。また、その下の赤い部分でございますが、「古文の学習が必要だと思うか」という問いに対して、「必要」又は「どちらかといえば必要」と肯定的に回答した生徒の割合は38%ということで、低い傾向があることが読み取れるかと思います。そこから課題6といたしまして、古典に対する興味・関心とともに必要性を感じさせる指導にも課題があるのではないかということ。また、課題7としまして、学習意欲を高めるために、文法、古語の意味等に関する指導の改善の必要性があるのではないかということが読み取れるかと思います。こちらが課題の6、7でございます。
 また、次の8ページ目でございます。こちらは学校読書調査からの出典でございます。過去1か月間の平均読書冊数が上の表につきましては、5月1か月間の平均読書冊数ということで、小学生11.2冊、中学生4.0ということで、高校生は1.5冊ということです。ほかの学校種に比べて低いということと、あとは過去10年と比べたところ、横ばいであったという状況でございます。
 またその下の表につきましては、5月1か月間に読んだ本が0冊の生徒を不読者ということで、その割合を出しているということでございます。こちらも小学校は4.8%、中学校は13.4%、高校生は51.9%になっております。10年前に比べて、高校生については若干増えている、微増であるということでございます。特に課題8といたしまして、小中学生に対しまして高校生の読書活動というのは、ここ10年改善が見られていない傾向が読み取れるということでございます。
 こういった課題を受けまして、1枚おめくりいただきまして、10ページ目でございますが、こちらが教育課程企画特別部会の中で、論点整理の補足資料で1回お示しさせていただいたものでございます。これらの共通必履修選択科目といったことも受けまして、今回こういった先生の話と、今回のワーキングの議論等も受けまして、さらに1枚おめくりいただきまして、11ページ、12ページとなります。
 11ページ目でございますが、今までこの資料を最初から見ていただいて、それぞれの資料の一番下にあった課題の部分をこの11ページにまとめさせていただいております。11ページ目がまとめたものでございまして、12ページ目でございます。こちらが高等学校国語科の現行の課題と改訂の方向性ということで、あくまでこちらでのたたき台ということでお示しさせていただいております。こういった課題や、あとは今までのワーキング等の議論も受けまして、このような科目というのを考えてみたということでございます。
 上の方の2つにつきましては、共通必履修科目(案)ということで示しております。その下には選択科目が4つございます。共通必履修科目ということで、1つ目、左側につきましては、現代の国語と、あくまで仮称ということでございます。実際はどういうことかといいますと、実社会・実生活に生きて働く国語の能力を高める科目ということで、収集した情報解釈、根拠に基づいて論述したり議論したりする活動を通して、思考力・判断力・表現力等を育成する学習を重視すると。読むことにとどまらず、それを基に書くことや話すこと・聞くことに展開する指導を重視するということで、その上にあります課題の2、3に対応したものと、あとは情報活動能力の育成を重視ということで、課題4にも対応しているという科目でございます。
 またその右側でございますが、言語文化という科目でございます。こちらは我が国の言語文化への理解・関心を深める科目ということで設定しております。古典や近代以降の文章を読むことを通して、我が国の言語文化を理解して、社会や自分との関わりの中で生かす学習を重視していくと。読むことや伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項を中心とする指導ということを行っていくということでございます。こちらは課題の上にあります3と5と6、7との対応で考えております。こちら2つが共通必履修科目で考えております。
 そのさらに選択科目ということで、その下の4つを示させていただいております。1つが論理国語ということで、多様な文章を多角的な視点から理解して、自分の考えを理論的に思考して表現する能力を育成する科目といたしまして、設定させていただいております。特に前回までの資質・能力の話の中で、3つの側面の中から特に創造的・論理的思考力の側面、考えの形成、主としてそういったものとの対応も考えた科目ということになっております。
 続けて、隣の文学国語でございます。小説、随筆、詩歌、脚本等に描かれた人物の心情や情景等を読み味わい、表現の仕方等を評価するとともに、それらを創作する能力を育成する科目ということで、特に課題の3ですね。思考力・判断力・表現力の部分の対応で、特に3つの側面の中の感性・情緒の側面というところに主として関連が深い科目ということになっております。
 その隣に行きまして、国語表現という科目でございます。ここは自分の思い・考えをまとめて、適切かつ効果的に表現し、他者に伝える能力を育成する科目でございます。表現に関わる能力といったことや、情報活用能力の育成を重視するといったことで、特に課題2と3、3といたしましても、他者とのコミュニケーションの側面といった部分を特に主として見てある科目でございます。
 併せて隣に行きまして、古典探究という科目でございます。古典としての古文・漢文を課題意識を持って読み深めることとして、我が国の伝統的な古典文化への理解・関心を深める科目ということです。特に課題の3、4、5、6、7という部分での対応ということで、こういった選択科目4つを記載しております。
 今回こういった事務局案として提示させていただきまして、これらにつきまして現状の課題、また今までの議論を踏まえたものとして、実際のところ今回議論を頂けるかと思っております。
 以上でございます。

【北原主査】
 ありがとうございました。非常に長い、内容の多い説明をしてもらいました。
 資料2から、それからこの大きなA3の、資料3ですね。それから資料4は、国語教育のイメージ。これは本日2月19日版です。それから、資料5が、小学校、中学校、高等学校に配当した、これも御議論いただいたということなので、ここをまた時間をかけてやっていると大変です。何かここで御質問や、おかしいなというのが特にありましたら、お一人かお二人ぐらいにいたしていただいて、きょうはかなり具体的な案が、資料6ですね、高等学校の国語科の科目構成というのは、前から予言はされていたのですが出てまいりまして。これも大変なもので、きょう1回で決めることでもないと思いますけれども、出ておりますので、できるだけこの資料6の方に参りたいと思います。
 その前に、2から5でどうしてもここはというのは。はい、どうぞ。

【児玉委員】
 細かいことで恐縮ですが、一つ質問の形でお願いいたします。
 資料2にございます3つに分けたうちの1つ目の、個別の知識や技能の欄がございますけれども、ここに新設されたものとして3つ目の丸で、言葉の使い方に関する理解や使い分けで、ここに書き方や読み方を新たに入れてくださったということで、これは大変学力調査との整合性もうまく取れてよいかなと思いました。
 一方で、もう一つ下から2番目に、文章の種類に関する理解という項目が新設されてございます。これはどういう内容かなと思って、例えば2つ目の丸の下位項目の中にも文章の構造というのがあります。これに関係するのかしらというふうにも思ったのです。
 また今度はこの資料5の個別の知識や技能をさらに細かく分けたところの、文章の構造の中に、多様な文章の種類と典型的な構成や展開というのは、中学校の内容としてここにも入っているんですね。ですから、こういうふうに文章の構造の中に文章の種類を入れたということと、こうやって外に一つ大きく出しておられることのその辺の関係について、何か意図がきっとあるのかなと思いました。その辺について、もし御意見や考えがありましたら、教えていただきたいと思います。

【北原主査】
 いいですか。では、お願いします。

【平野教育改革調査官】
 失礼いたします。
 今回こちらの資料2の方の個別の知識・技能のところで、追加させていただいた文章の種類に関する理解というのは、それは文章のジャンルについての知識・理解が必要だろうということで、特出しさせていただきました。ただ、済みません、御指摘のとおりこの資料5の方との整合性が十分取れていないという点については、御指摘のとおりございますので、修正させていただきたいと思います。

【北原主査】
 ありがとう。
 実はここは、私との話で少し混乱があったところなので、御指摘、さすがは鋭いなと思ったくらいです。文章の構造というのは、文が文章を構成することを文章の構造。逆に言うと、文章の構造はどうなっているかと、文の成分と成分で出来上がっているんだとか、接続詞がどうだとか、それが文章の構造ですよね。出来上がった文章が、どんな種類があるかなどが、文章の種類だろうと思うんですよね。その辺が種類と構造と、原案が私の目からすると少し変で、そこを直してくださいときのう言ったので、少しその辺混乱しているかもしれません。これから整理していただこうと思っております。
 よろしいでしょうか。ほかに。よろしいですか。また戻っても結構だと思いますので。
 ここで高等学校国語科の科目構成を、何で高等学校に限定するのかということですけれども、義務教育は中学校ですが、もう高校全入時代となっています。国語科教育の最終ゴールは高等学校だから、高等学校について考えれば指導事項も決まってくるのだろうということが基本にあります。どうでしょうか。
 はい。

【高木(展)主査代理】
 今の主査の御発言について、私の考えるところを少し述べたいと思います。
 今回の場合、高大接続ということが大きくありまして、その中で高校終了時に必要な学力というのを、これは国語だけではなくてすべての教科において定義していかなければいけないという状況がございます。ですから、例えば今までは小学校から順次積み上げていったものが、現行の国語の指導要領も御覧いただくと分かりますが、例えば小学校の内容もかなり高度なものもございます。中学校もかなり高度なものがございます。そうしますと、現行の評価で考えていくと、B規準に本当にこれが相応するのかという内容のものもございますので、まずは高校の出口といいますか、そこをきちんと定めた上で、これから順次例えば中学校なり、小学校なりの教科の科目構成の内容を考えていく。今回の学習指導要領は論点整理を含めて、そういう構造で行うということですので、是非ここのところも、きょうの討論のことを御理解いただきたいと思います。
 以上です。

【北原主査】
 ありがとうございました。
 私個人は、国語は高等学校で終わるのではないかと思うんですね。専門にやるところもあります。最終ゴールは高校だということで、高校が大事だと思います。高等学校までは九十九%以上の人がいくので、そこできちんと国語をやる。工学部や医学部の人は、大学で国文学などはやってくれませんからね。

【高木(展)主査代理】
 今、主査が言われたとおりのこともございまして、高校終了時にどういう学力が付いているかということです。ですから、高大接続の方は大学が高校終了時にどの程度学力が付いているかを見るということですので、今の主査の御発言と同じだと思います。

【北原主査】
 ありがとうございました。
 そういうことで、高等学校を最初にやる、それがゴールだということで、これをまず皆さんで議論するということでございます。
 それはそれとして、もう一度見ていただきますと、1ページが、これは過去の指導要領の科目構成等についてですね。それからこれは事実ですので。
 2ページ目もこれは御意見の余地はないと思います。こういう科目構成で変わっていきます。私などはこれよりもっと前ですけれども、皆さんには懐かしいところもあるかもしれませんね。古典乙1や2など言いますね。
 それから3ページ目も現行ですから、これは御質問があるかもしれませんけれども、このとおりですね。共通必修科目は国語総合で、あとは選択科目になっていると。
 それから資料の4は、これは意識調査の報告でありまして、まとめると課題1、2になる。これも後で課題1、2が整理されますけれども、高等学校は講義調が多いとか、話し合いなどが低調であるとかいうのが課題1、2になっておりますね。
 それから、5ページに参りまして、これも調査ですね。これは国立教育政策研究所がやった調査の結果でありまして、課題3、4が導かれるということでございます。
 それから6は、文科省が実施した状況調査でありまして、どの種類の教科が使われて授業をされているかということで、普通科と専門学科と、あるいは総合学科で挙がっていまして、課題の5がA科目の開設率が低くて、言語文化に関する学習が不十分である可能性があるというのが課題ですね。
 それから、7ページが国語教育に関する現状と課題についてであります。国語(古文)の勉強学習が好きか嫌いかという調査です。古文が好きかというのは高くない。国語が必要かというのも、必要だというのは高いんですかね。肯定的なものは90%。でも、好きだというのが31%ですね。そのようなことを踏まえて、課題6、7が導かれております。
 8ページも調査でありますが、本を読む児童生徒がだんだん低くなっているという調査結果ですね。高等学校が特に少ないと。こういう経年的な調査が入っておりますが、10年前に比べて小学校は大きく増加したが、中学校は微増、高校は横ばい。横ばいといってももともと低いですから、低いものの横ばいは低いわけです。そのようなことから、小中学生に比べて高校生の読書活動はここ10年ほど改善が見られないと。
 というので、ここまでで何かないですか。御質問ありますか。
 はい、先生。どうぞ。

【佐藤委員】
 済みません、よろしくお願いします。
 感想を中心に少し幾つかお話ししたいと思います。まず1点目、高校の今の指導に課題があるということで、その課題解決ということでかなり斬新な案になっていまして、正直驚いています。ただ、そう言いつつもこれくらい形から変えていかないと、指導の改善は難しいなというのも同時に感じています。
この今までのデータについて、あるいは課題、よろしいですかね。それもまた含めて、11ページに課題を再掲して、ページも書いてあります。課題1が4ページと。4ページを御覧いただくと一番下にこれと同じことが書いてあります。これを踏まえて、12ページの、本当にたたき台と書いてありますし、教科名は仮称となっておりますが、これはこれから我々の案を練っていくのかどうかです。
 こういう分け方は、私なりに整理させていただきますと、まず共通必履修があって、現代の国語と言語文化というこの2つの教科を必修にして、現代の国語というのは実社会・実生活に生きて働く国語の能力を高めるような科目と。その下にいろいろ収集した情報を解釈し、根拠に基づいて論述したり議論したりする活動を通して、思考力・判断力・表現力等を育成する学習を重視と書いてございます。これは特に課題2、3、あるいは情報活用能力の育成というのは特に課題4に対応すると。
 それから、言語文化という科目があって、これは言語文化への理解・関心を深める科目。古典から現代の文章まで全部を通して、我が国の言語文化を理解し、社会や自分との関わりの中で生かす学習重視と。読むこと、伝統的な言語文化と、国語の特質に関する事項を中心とする指導と。
 それで選択科目として論理国語、これは多様な文章などを多角的な視点から理解し、自分の考えを論理的に形成して表現する能力を育成する科目です。
 それに対して文学国語は小説や随筆、詩歌、脚本等に描かれた人物の心情や情景等を読み味わう。
 それから国語表現は、現在もありますのでイメージしやすいかもしれませんが、国語表現。
 それから、古典探求。この4つを選択科目として設定してはどうかというのが、このたたき台の案だと思います。
 それでは、この11ページ、12ページのあたりについて、御意見を伺いたいと思います。
 どうぞ。

【佐藤委員】
 済みません。続きをお願いいたします。
 具体の話に入っていくのですが、単位数は未定ということだったのですが、恐らくは現代の国語2単位、言語文化2単位ぐらいがベースになるかと思っています。その場合、1つ気になる点は、専門高校の場合、国語に配当する時間が実際なかなか4時間、4単位も取れないケースがあると思います。現行では恐らくそういう場合は、どこかの資料にもあったのですが、国語総合を分割履修して履修しています。仮にこのように共通必履修科目が2つあった場合には、そういった専門高校等で配当時数が少ない場合は、どう実際履修していくのか。その辺に少し工夫が必要かなと思いました。これが1点目です。
 2点目は、課題の6と7です。文法指導中心が生む古典嫌い、この課題解決のために言語文化(仮称)、あるいは古典探求(仮称)という科目を置いているのですが、ここでも実際に文語のきまりや訓読のきまりにある程度歯止めをかけていかないと、実際にはまた当初の目的とは違って、文法中心の科目になってしまって、まるで意味がなくなってしまうかなということがあります。その辺は示し方が注意かなと思っております。
 3点目が文学国語(仮称)、これはこれで非常にすばらしいと思うのですが、能力のところで、最後に小説等の文学的文章を創作する能力とあります。実際に高校現場の感覚としては、創作する活動としては成り立つのですが、これを能力というところに位置付けるのはどうかなと。感性・情緒の能力を育成するためには、活動としてあってもいいのかもしれませんが、能力は少し踏み込み過ぎているかなという感じがいたしました。
 あと、最後ですが、実際にこれ資料の5の方になっていくと思うのですが、その中の個別の知識や技能の下から1、2、3、4つ目の丸、書写に関する知識のところ。ここに高校で実用的な文章のというのが入っているのですが、多分私の勘違いかもしれないですけれども、現行の指導要領では書写に関しては中学校までとなっていると思うのです。これがだから、中学校までの既習事項を基にしたものを表記しているのか、それとも新しいこの科目の中、例えば言語文化の中であるとか、そこに書写的なものを入れていくのかどうかが疑問に思いましたので、今質問として挙げました。
 以上です。

【北原主査】
 ありがとうございました。
 さすがは高等学校の専門家の先生の、佐藤先生の御意見です。
 今のことでお答えいただけますか。

【大杉教育課程企画室長】
 失礼いたします。単位数については、御指摘のとおりこれからということではあるのですけれども、基本的に今後、高校部会の方でも全体を見通した議論になってくると思います。現在の共通必履修単位の割合といいますか、74単位中の割合というのを、恐らく大きく変えるという議論にはなかなかなりにくいであろうと。そういうことですと、少し現行をベースにいろいろ考えていくことになろうかと思います。
 専門高校につきましては、現在その担当の室ともいろいろ相談をしているところなのですけれども、今の分割履修の在り方と実際に似た2科目に分けたときの影響については、しっかりと分析をして、また御報告をしたいと思います。

【大滝教科調査官】
 失礼いたします。書写につきましては、御指摘のとおり現行の高等学校の学習指導要領の指導事項には、明確に書写に関する記述はないわけでございます。御意見のとおり言語文化を重視するという方向性、さらに文字文化等、そういったことで今回、国語科の高等学校で育成すべき資質・能力の中に位置付けております。1つの提案ということでお受け止めいただければと思います。
 以上でございます。

【北原主査】
 言葉のきまりとか、訓点とか、そういうのはどちらの教科でやるのですか。
 どうですか。

【大杉教育課程企画室長】
 そういったあたりも含めて御意見を頂ければありがたく存じます。

【北原主査】
 それから文学国語の中に、創作する能力というのはきつ過ぎるのではないかという御疑問もあったのですけどね。それはどうですか。
 ほかにいかがでしょうか。はい、どうぞ。

【北村委員】
 言葉がもつ力を信頼して伝え合う、喜びを味わうためには言語体験がなければいけないわけで、現状は不読率が高くなって、なかなか言語体験が行われないとすると、それを教科書等で補わないといけないということにもなるのでしょうか。
 具体的なことといたしまして、非常に気になったことというのがかなり昔にありまして。それはコミックで「龍が如く」という作品が出まして、見た瞬間にとても嫌だなと。誰か言わないのだろうかと思いました。どうして嫌なのかというと、まず理屈を超えまして、我々の世代でありますと、例えば「淡雪と風のごとく」であるとか、「動かざること山のごとく」である名詞プラス「のごとく」というのは、自然に耳についているわけですね。どうしてこんなことが行われるのだろうなと思って、ああなるほど、これは大河ドラマで「翔ぶが如く」が出たからだと。そういえば、テレビドラマだと、昔向田邦子さんの「阿修羅のごとく」というのもありました。しかし、「翔ぶが如く」しか見ていない世代であれば、「ごとく」の上に何でも「がごとく」を付けてしまうということが行われる。非常に言語体験が少なければ、それしか思わないから何の違和感も持たないであろうということなのですね。
 このことを現役の高等学校の国語の先生に話しましたら、立ちどころにそれは漢文の教科書に出ているということで、体言から続く場合は「のごとし」と、用言から続く場合は「がごとし」であると。なるほど、そう言われれば我々、普通に「咲く花のにほふがごとく今盛りなり」とか、そういうのが耳についているから非常に違和感があったのだと思いました。
 先週、短歌の方たちとお会いしまして、言語感覚が非常にすばらしい方たちで、その中のお一人が、その問題を言挙げしようと思ったのだけれども、用例が出てきたのでやめたということです。用例というのは余り意味がない。例えば、万葉まで持っていっても、これはしょうががない。例えば、「きれる」「みれる」も用例はたくさんありますので。どんな形にも探し出せば用例があるんですね。規範が何かという問題になってくるかと思うのです。
 まことに悩ましい問題なのですが、漢文というのは、実質としては試験問題になかなか扱われないところもあって、漢文の配分が非常に少なくなっているのが現状かと思うわけです。そういう中にあって、漢文の書き下し文の口調、漢文ももちろん外国語としてやっているわけではなくて、書き下し文としての、古文としての漢文を我々やっているわけです。そういうものであれば、森鴎外の舞姫なども入るのだから、例えば現代文の中のあの明治期の書き下し文が、読んで心地よい語調のものなどが教科書に入ってもいいのではないかと思います。何かそういう我々が大切にしてきた言葉の力の大きな下支えとなった漢文書き下し文の語調を、確かに支えるようなものというのが何らかの形であれば、非常にありがたいなと感じました。

【北原主査】
 ありがとうございました。
 一様にいろいろな慣用句も大事ですし、国語による基礎的な教養がないといけないというようなこともお話しいただきました。

【北村委員】
 1つ、いやフォローさせていただければ、その「龍が如く」という作品自体がもうだめよというのではなくて、それはその人が、その人の言い分として言うのだったら、著作者としてはそれはやむを得ないというところはありますので、それをどうかしろということではないんですが、ということです。

【北原主査】
 ありがとうございます。
 では、ほかに。どなたが先ですかね。では、宮澤委員。どうぞ、お願いします。

【宮澤委員】
 今のお話から少しずれるかもしれませんが、先ほど佐藤先生からお話がありました高校の現代の国語、言語文化の中で書写の内容があるのかどうかという御質問がありました。私はきょう資料を拝見して、資料5の下の方にある書写に関する知識・技能のところに、小学校、中学校、そして青字で高等学校の内容の中に、「実用的な文章の目的に応じた効果的な文字の書体や配置」というような記述がございました。これが高等学校の国語の中に入るということで、非常に大きな期待をさせてもらっております。
 くしくも今、このようなお話がありまして、私の方から1つの希望を申し上げたいと思います。まず、先ほど来、高等学校まで義務教育的な内容が延びて、そこが終結であるというお話がありました。それを賜りますと、小中学校で国語の中で書写が行われておりますが、基礎の段階で終わってしまっているというのが実情です。
 従いまして、それをいかに応用発展し、そしてまた日常に生かすかという内容のところまで行き着いていないのが実態だと思います。
 前から私は思ったのですが、「伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項」の中に、小学校、中学校は書写が入っていて、高校にないというのは、これはどうもまずいのではないかということで、先ほど来話を聞いていて、高等学校に書写が入り込むというのは非常に大きな変革ではないか。私どもにとっては、非常にありがたい変革だと思います。
 そこで、現代の国語の中に、実社会・実生活に生きて働く国語の能力、これがあります。その中の一つに書写力というのが存在するということであれば、この中に書写の文言も入れていただければありがたい。
 特に具体的に言えば、日常書式、特に手紙やはがきなど、社会に出て困らない程度の日常生活の書式などにスポットを当てた指導が望ましいかと思います。
 それから、言語文化の方ですけれども、小中学校ではなかなか文字の文化、特に伝統的な文化の内容の記述が非常に少ないという気がいたします。特に書き文字文化に対する歴史的な背景というものが、ほとんど語られていないのが実状だと思います。高等学校の芸術科書道ではそういうものを扱うわけですが、そこまで選択する生徒は3分の1以下になりますので、日本の書き文字文化にスポットを当てて、そしてこの言語文化の中に我が国の言語文化への理解・関心、これはもちろんその内容というものが問われるのだろうと思いますが、を記述された、表記された書き文字文化の背景などを入れていただけると、非常にありがたいと思います。
 以上です。

【北原主査】
 ありがとうございました。
 大きな問題ですけれども、これはまた検討していただきましょう。御意見ありがとうございます。
 それでは、藤森委員、お願いします。

【藤森委員】
 よろしくお願いいたします。3点ほど申し上げたいと思います。
 まず、前提ですけれども、今回のこのたたき台を私は画期的な御案だと、少し感激して受け止めました。前の学習指導要領の選択必履修で、「国語表現1」、「国語総合」がありました。実態は、「国語表現1」が専門高校や学力水準の特に低い高校向け、「国語総合」が一般の普通科高校向けという受け止められ方をしていたようです。その状況に鑑みると、もしこれ(たたき台の2科目)が選択必履修になったとすると、恐らく「現在の国語」は学力水準が低い学校用、そして「言語文化」は高い学校用という形で差別化が生まれてしまう危惧を感じます。現行学習指導要領でも、いわゆるA科目、B科目は本来科目の性格そのものが違うにもかかわらず、教育現場では単位数の差異性から、A科目は易しいもの、B科目は難しいものという誤解を与える結果になっていると理解しています。
 その意味で、できるだけ国語の時数は確保し、二つの必履修科目が同等の扱いを受けるようにする方向で御努力いただきたい。18歳選挙権はもとより、裁判員制度ももしかすると低年齢化するかもしれません。そうなると、北原先生がおっしゃったように、高校を出た段階で国を支えていく、そんな人材を育てなければ困るわけです。その場合、ベースになる、最も根幹になるものは国語力であると考えます。名称についてですけれども、「現代の国語」というと私は自分の高校時代の「現代国語」を連想してしまいますので、これはむしろ「言語生活」という名称にして、「言語生活」、「言語文化」と対の言葉で表した方がいいのではないかという気がいたしました。
 さて、各論ですけれども3つだけ申させてください。まず1つです。先ほど話題になっています「国語の特質に関する事項」でございます。特に左側の実生活・実社会に働く国語の能力を考える場合、言葉の構成ですとか、あるいは働き・組み立てですとか、それも大変重要なのですが、むしろ実際の対人コミュニケーションで言葉がどういうふうに交わされて、どういうふうにそこで意味が生まれていくのかに対する知見が重要と考えます。これに係る学問研究は言語学の中ではプラグマティクス、つまり語用論の世界で研究が進んでおりますし、例えばイギリスでは、ご呈示いただいたたたき台と似た形で、イングリッシュとリテラチャーという2つの教科構成で中等教育が進んでおります。そこのベースになっている学問的背景が、マイケル・ハリデーの機能文法になっております。
 そういう意味で、先ほどの資料1に戻りますが、語用論、コミュニケーションモデルも含めた背景知識が必要かと思いました。
 2点目です。この2つの科目構成を敷衍した場合に、私が懸念しますのは、「読むこと」イコール講義だという誤解があるのではないかと思っております。もとより言語活動例が示すように、読むこと・書くこと・話すこと・聞くことというのは、基本的にそこで学習者が習得し、自分の身につけていくべき教育内容であって、どういう言語活動で実現していくかというと、それはすべて総合的に行われます。その際に「現代の国語」、私は「言語生活」と言いますけれども、「言語生活」の方は話したり、書いたりするんだな、「言語文化」の方は先生の話を聞くんだなという誤解が生まれてしまうと、これは本末転倒だと心配をしております。もとよりその辺は既に御承知の上でだと思いますけれども、より一層活動としての話す、聞く、読む、書くと、それから教科内容としての話す、聞く、読む、書く、ここの部分のしっかりとした関係性を見極めていく必要があるように思います。
 ちなみにイギリスのリテラチャーは、基本的に時代別、ジャンル別に選ばれた作品が、シェークスピアをはじめとして載っています。けれどもそこで行われる言語活動は何かというと、登場人物の絵を描いたり、あるいは長いレポートを書いたり、お互い議論をしたり、演劇をしてみせたりしていきます。
 是非そういう形でこれが展開していかないと、結局100年たっても変わらないことが懸念されます。
 最後にもう1点、ページが戻りますけれども、今回画期的なもう一つの要素で、映像も含む多様なメディア表現が出てきました。NIEも含めて、実際に社会生活の中で触れるメディアを教材対象とすることになると思うのですが、実は社会生活で我々が経験する言葉というのは、映像音声と文字とミックスされているものが圧倒的に多いのですね。その際、私が気になるのは教科書です。例えばアメリカの実際の事例などを見ていますと、オンライン化して、紙の教科書が消えつつあります。また、カナダやイギリス、オーストラリアでは国語の教科内容として、「みること、みせること」というのがあります。これらの課題については、今後、課題にしていただきたいなと思っております。私は映像に対するリテラシーを国語科に取り入れることは必要だろうなと思っています。
 以上です。

【北原主査】
 ありがとうございました。いろいろな話がありましたので、復唱はしませんけれども、非常にいろいろな具体的な御提案があったと思います。確かに言語の運用面というのも教えていく必要があるでしょうし、映像もきちんと捉えないといけないだろうし、ということがありますね。
 それでは、西委員、お願いします。

【西委員】
 よろしくお願いします。3点申し上げます。
 まず、1点目ですけれども、必履修科目の言語文化のところでは、古典や近代以降の文章を読むことを通して我が国の言語文化を理解すると。これは古典と近現代の両方から教材を活用しながら、伝統的な言語文化の理解を図っていくのかなという印象を、まず私は持ちました。基本的な今の国語総合のイメージとは、少し違うのかなと思っております。それに対して、選択科目の古典探求の方は、古典としての古文・漢文を読み深めることを通してということになると、今の古典A・B、古典のA系列の方に近いのかなというイメージを私自身持つのです。けれども、少しひっかかるのは、古典としての古文・漢文ということになると、では言語文化でやってきたことはどう深められるのだろうかなというところは危惧します。別の言い方をすれば、国語としての古文・漢文を学んでいくのだという意識付けを、もう少しメッセージとして明確にしていただけるといいのかなというのが1点目でございます。
 2点目。選択科目の国語表現、これは従来の科目にもある部分でありますけれども、比較的きょうの資料から見ると、アウトプットすることの部分が主になっているように理解をいたしました。しかし、表現ということであれば、その文章はどんな特徴があるのか、なぜそういった特徴がこの文章で使われているのか、そういったようなインプットして、それを今度アウトプットしていくような形のイメージをこの科目の中には設けていただけないかなというのが、科目名の性格からして言えることでございます。
 3点目、特に今回触れられていなくて、一番下に課題の8、読書に関わることでございます。学校読書調査の結果を一つベースにしながら、課題設定をされていますけれども、ではこれ国語科全体の中で読書活動をやっていきましょうという意味で、一番下にまとめられているのかと思いますが、これらの科目に付随する読書活動というのは、随分性格がみんな違っている。そのあたりをどういうふうに科目に付随した形で色付けしていくのかは、明確にしていただきたいなと思います。
 以上でございます。

【北原主査】
 ありがとうございました。確かにそうですね。特に課題8の、これはもう現状はしっかりと把握しているので、いかに指導要領に生かしていくか。これ大事だと思うんですよね。
 では、中村委員、お願いします。

【中村委員】
 誰もが発信者になっていける、その出口のところの力として、きょうの資料1にあった言葉の働き・仕組みというのが、高等学校段階でどのように位置付けていくのかが、資料5の知識・議論のところの一番上にもあるわけです。ここ今、青が入っていないので、ここに何かをどのように位置付けていくかというのが大事な議論になろうかと思います。
 そのときに現行の指導要領でも、現代文Aやそれから古典のAにそうした意味・用法とか現代語とのつながり、あるいは外国文化との比較ということが位置付けられているわけです。けれども、残念ながらそれの履修率が低いということになってしまうと、この位置付けが実際の教室で行われないことを考えますと、必履修科目の中にきちんとそれを位置付けていくか、あるいは選択科目に満遍なく位置付けていくことが必要だろうと思います。
 以上です。

【北原主査】
 ありがとうございます。そうですよね。ここの資料5のところの言葉の働きの高校がないですよね。そこは少し考えていただいた方がいいですかね。
 それでは高木まさき委員、お願いします。

【高木(ま)委員】
 済みません、時間がオーバーしているので、簡単に言います。
 藤森先生がおっしゃるように、この特に必修科目を2つに分けたのは画期的で効果的だと思います。歴史的なことになりますけれども、現代国語がかつてできたときに、それまでは「読んでおけよ」で済んでいた国語の授業が、そこから研究が始まったと当時のことを知っている先生がおっしゃっていましたので、是非これはこういう形で進めていただければと思いました。名称については、いろいろ御意見あるかと思います。
 それから実社会・実生活とありますけれども、現行の学習指導要領では社会生活という言葉を国語では使っているようですが、これは意図的にされたのかなと。意図があってされているのならいいと思いますが。そのあたりは確認したいなと思いました。
 それから、僕も元高校の教師ですので申し上げますけれども、こういうふうに学習指導要領が変わっても、何と言いますか、なし崩しにするのが結構得意なのが高校の現場でした。そうしないためにも、ここのWGの範囲を超えますが、教員養成の問題として、そちらにきちっとした養成の内容を位置付けていく、あるいは研修等も含めて大事かなと思いました。
 以上です。

【北原主査】
 本当に教員養成、教員研修は大事ですけれども、この委員会の領分を超えるかもしれませんので、意見だけ。
 では、島田委員、お願いします。

【島田委員】
 何人もの先生方がお話しくださったので、だんだん私の言うことがなくなってしまったんですけれども、一番申し上げたかったことは、共通必履修科目の中の言語文化の、この科目の説明で、藤森先生が最初におっしゃってくださったように、読むことを中心とする指導というふうに記述されていたことに、少し危惧を覚えたということであります。
 最初に北村先生がおっしゃったように、「龍が如く」の例があったんですけれども、主として若い人や子供たちをターゲットとするようなコミックであるとか、あるいはゲームのタイトルに「龍が如く」のような技巧調といいますか、文語調をわざわざ持ってくるというのは、そのような一定の効果というのを狙っていると考えられます。そういうものを現代の言語生活の中にわざわざ持ってくるというのが、その言語文化の一面でもありまして、そういうことを社会や自分との関わりの中で生かす、あるいは捉えていくという学習をするのがこの科目だとすると、ただ読むことだけではないのだということがより分かるような形で記述されていると、よりよいと思った次第です。
 それから、選択科目の方でありますけれども、私は論理国語と国語表現の科目の違いというのが、もう一つ書きぶりからはよく分からなかったところがありました。下矢印の青い文字の課題2、3、4、こういう課題との対応を見るとよく分かるのですけれども、もう少しその上の説明のところで、例えば論理国語のところであれば、創造的思考であるとか、あるいは批判的思考というような言葉が入っていると、もう少し明確になるかなと思った次第です。
 以上です。

【北原主査】
 ありがとうございました。
 それでは、氏原委員、お願いします。

【氏原委員】
 時間がないので、私も短く申し上げます。3点あります。
 1点目は、何人かの先生からお話が出ていましたけれども、たたき台がよくできているなと思いました。資料1に国語力答申のことも引いてありますけれども、国語力答申の中にも科目の内容を言語と文学という形で整理したらどうかという提案があります。そういう意味でいうと、現代の国語の方は言語生活における言語運用の問題が中心になると思うんですね。言語文化の方は、どちらかといえば文学。さらに共通必履修科目と選択科目との関係が、現代の国語の方は論理国語と国語表現がさらに深めていく科目に当たっていて、言語文化の方は文学国語と古典探求がさらに深めた形になっている。そういう意味で、細かい点は別として、よく整理されているなと思ったことが1点です。
、ある面で言うと、二つの柱が立つわけですね。言語運用を中心とした現代の国語、それから文学だとかそういうものを中心とした言語文化。この二つの柱が立つことによって、先ほど高校というのが一つの出口になっているというお話がありましたけれども、中学校や小学校もこの二つの柱で大きく整理できていくのかなと。そうすると、小学校段階では言語運用のところに重きが置かれるでしょうし、中学校は高校との間の過渡期となっていると思うのですけれども、その二つの柱で、国語の小中高の科目構成というか、そこでの力点の置き方とかが非常に整理しやすくなったのかなと感じました。
 そういう面では、高等学校で課題の1から8まで出ていまして、1から8まで見てみると、今回はアクティブ・ラーニングというところがキーワードになるのかなと思いました。どうやって生徒をアクティブに動かすのかによって、課題1から8までのところがかなり関わってきますので、改めてアクティブ・ラーニングというのが今回のポイントなのだなということを感じました。
 それから3点目ですけれども、読書のことについては、国語力答申の中でも小学校、中学校、高等学校と行くにしたがって、本を読む冊数が少なくなるということを言っているわけですね。その頃からというよりも、きょう出していただいた資料で見ても、ずっとそうですね。高等学校でも先生方がいろいろ工夫なさって、なるべく本を読ませようといった指導は随分行われていると思うんですけれども、現実にはほとんど変わらないわけですね。文化審議会の中でもいろいろ議論があって、高校生は忙し過ぎるのではないかとか、受験があるからではないかとか、いろいろな指摘が出ていました。そのあたりのところをもう一度捉え直して、本当にどうやって本を読んでもらうのか。読むことの意味といったところも整理できて。あるいはなぜこんなふうに高校がずっと低いままなのかということで、何かこういうことが考えられるのではないかなということがあれば、教えていただきたいということが3点目です。ここが重要なところだと思っておりますので、ここにも力を入れていければいいなということで、以上3点でございます。

【北原主査】
 どうもありがとうございました。今のお話の2点目にありましたように、当時の文化審議会の議論では、高等学校の先生は文学しかやらない先生が多いので、国語の教科を言語と文学に分けてやった方がいいのではないかという意見がありました。国語の教科の内容は言葉とそれによってできる文学、その両方です。例えば今でも出ていますけれども、東京大学の昔の国文科の機関誌は国語と国文学ですね。筑波大学でも言語と文芸です。そういうふうに国語科の内容は言葉と文学ではないかなという気がします。ただ、文学の中にも論理性はあるので、ここをもう少し整理するといいかもしれませんね。言葉の働きを勉強しながら、言葉による論理性の教育もできれば、いろいろなことができるわけですから。選択科目では、論理国語と文学国語というふうに分けて、それから表現のところでは語用論的なことももう少ししっかりとおっしゃると。それから古典も、これは非常に大事な伝統文化ですからやるというふうな選択科目。用意としてはこの4本立てがいいというのが、氏原委員の御意見でもあるのではないかと思います。
 横山委員、お願いします。

【横山委員】
 専門が幼児教育ですので、的外れなことを申し上げたら申し訳ないです。1つ今、この国文学と国語というあたりで思っていたところは、文章のジャンルで活動形態が決まっているような気がして、論理的な思考を養うのは論理的な文章、論説文でということなのですけれども、例えば古典的なものとか、漢文などから論理の思考というのは養われないのだろうか。震災等があったときに、この地域の昔の古文書を見てみると、どういう対策を取ってきたかということも出てきていたりもしているので、そういった古典的な文章も、実は論理的な思考に生かしていくことができるのではないかというのが、門外漢ながら思ったところです。
 あともう一つ、幼児教育の立場から文学国語のところにある創作のところでお話を聞きながら思ったところは、確かに皆さん村上春樹にはなれないとは思うんですけれども、日常、幼稚園や保育園の子供たちを見ていると、とても言葉遊びが大好きで、お話作りも大好きで、言葉を使って表現するところではとても豊かな毎日を送っていると思うのです。それを一気に立派な文学作品とまで飛んでいってしまうとつらいのだとは思うのですけれども、自分を表現する一つの手段として、創作というものを学校教育の最後の部分に位置付けていただいて、生活を豊かにするというところで展開していくというのを置いていただけると、幼児教育のところからつながるのではないのかなと思った次第です。
 以上です。

【北原主査】
 ありがとうございます。確かに論理は現代文だけでではなくて、漢文の方がもっと論理的であるというような御意見もありますしね。ありがとうございました。
 それでは、吉田委員、お願いします。

【吉田委員】
 先ほど来、この科目については画期的だというお話が幾つか続いております。私もそう思います。私の方は歴史的な観点からお話しししますと、戦後の高等学校の国語の科目の中でも、例えば昭和20年代の後半には言語編、文学編という教科書が作られたことがあります。言語編と文学編、総合編も作ってもよかったのですけれども、その当時としても画期的だったようです。けれども、結果的にはこれが余り迎えられなかった。その背景は、多分教師の側にも大きな理由があったというふうに言われています。つまり、教師の側に、当時国語教師は文学教師というような形で、言語に対する関心がいま一つだった。結果的には数年後に総合編に移っていくわけです。
 けれども、もう一回言語に関わってその科目が設定されたことがありました。昭和57年、国語1の時代ですけれども、このときに表の中にもありますが現代語、それから国語表現という形で言語に関わる科目が設定されています。これも残念なことながら、そのときもこの科目設定には一つの注目がいったのですけれども、これも展開しなかった。有名無実になってしまって今日を迎えているということになっています。
 そういう意味では、今回はひょっとしたら第3の一つの時期になるかも分からない。これを何とか実現していくためにはどうしたらいいのかということと、なぜこれがうまくいかなかったのかということ、その一つの背景は教師にもあった。私どもの教員養成の反省すべきところが一つですけれども、高等学校の場合は私は大学の入学試験が一つの大きなバリアになった、ハードルになっていたのではないかと思います。今回大学の入学試験の少し方向が変わってくるみたいだから、そのときに今のようなアクティブ・ラーニングなどの学習を経たことが問われるようなことになれば、入試が変われば授業が変わるというふうに高等学校の場合私は思うのです。言語編を大学入学試験の中でも反映されるような形になっていけば、きっとこれは高等学校の授業の中にもやれていくことになるのではないかと思います。そういう意味では実行へ向けてどのようにしていけばいいかという対策が、非常に大きい課題となると思っています。

【北原主査】
 ありがとうございました。貴重な御意見。この案は画期的であると。昔もやったのに、しかしどういうふうに実行できるかが非常に大事だというお話で、案を作ると同時にそこを考えなければいけませんよね。先生方が余りやらないというのもあるけれども、大学入試でそういう方向になればやらざるを得なくなりますかね。それはまた別の会議で決めてもらいましょう。
 森田委員から。それから野秋委員にお願いします。

【森田委員】
 失礼します。先ほど氏原先生からの御質問は、私に対して言っているのではないかとひしひしと感じまして、申し上げます。
 国語教育に関する現状と課題の丸5の平均読書冊数の推移、それから不読者の推移等々で、どうして高等学校がこんなに少ないのであろうかということですけれども、これは実はこの調査をしている本体の者ですので、お答えしたいと思います。
 まず、高校生が少ないのは受験とかクラブ活動など様々な活動で忙しいのではないかと言われていますが、実態調査をしますと、なかなかそれだけではない。極めて単純な理由も大きな原因になっています。それは何かといいますと、読書習慣がない。だから何となく読まないというところも、大変多くあります。では、どうして読書習慣が付かないかといいますと、それは小学校、中学校できちんとした読書指導が行われていないのではないかというのが、当会といいますか、私どもの長年の調査活動をしていての一つの結論にはなっております。
 ですから、この高校が最終目標であるということになりますと、ごめんなさい12ページに戻りますが、この中で課題8として、この高校のところで、各科目において読書活動の充実を図る、全部の科目でやりましょうということになっています。が、少し懸念されるのが、これまでの高校の読書の指導の様子を見てみますと、もしかしたらこの文学国語のところで読書をするということにいってしまうのではないか、と懸念されるところがございます。ここを何とか歯止めをかけておかないと、従来の読書と余り変わらないのではないかなという感じを受けました。
 それから、あとは国語表現のところに情報活用能力の育成を重視ということが書いてあります。これは恐らくアウトプットのところで書かれていると思うのですが、情報活用能力というのはアウトプットも大事ですけれども、インプットも大事ですので、論理国語のところにこの情報活用能力の育成が入っていないのが少し違和感を覚えました。
 以上です。

【北原主査】
 ありがとうございました。高校生が本を読まないのは小中学校の指導から続く課題ではないかということですが。
 では、野秋委員、お願いします。

【野秋委員】
 中学校の教師としてということで発言させていただきます。
 今、ちょうどその読書の話題になったので、8ページにあるこのグラフですが不読者の推移のグラフを見ると、中学校の方は10年少し前ぐらいから一気に不読者が減っているような形になっています。これは多くの学校が朝の読書として、朝10分とか15分ぐらいの読書の時間を設けていることによるのではないかと思います。今、隣の西先生とお話をしたところ、高校にもそういった時間を設けている学校は多いそうですので、高校生もそういった時間は持っているはずなのに、それをこの質問で言う読書というふうな捉えをしていないのかもしれないなと思いました。
 いずれにしても、小中学生にとって朝の読書の時間というのは非常に有効な時間になっていて、放課後中学生にしても部活動で忙しい中で、時間としては短いわけですが、ここで好きな本を誰にも邪魔されず読める。これが一つ中学校生活のリズムを作る大事な場面になっている、ということを申し上げておきます。
 次に、高校の実際の授業を全く経験をしたことがない中学校の教員の立場での発言ということで、お許しいただきたいですけれども、改訂の方向性が出たところ、非常に画期的なものであると各先生方がおっしゃっています。知り合いの高校の教員と話をしたとき、最近新聞などに出ている高大接続改革の大学入試の新テストを見ると、実際の授業と全く関連のないような形で問題が想定されている。そういう中で5年後なのか、あの問題を実際にやるというのはどういうことになるのだろうということを言っていました。
 そうすると、今の授業というのは、高大接続改革が目指している方向とは違う部分があるということでしょうから、そういう意味ではこのたたき台というのがそちらにも対応できるような授業改善につながっていくものだということを、理解をしたところです。
 言語文化というところで、古典や近代以降の文章を読むことを通して我が国の言語文化を理解し、その後に社会や自分との関わりの中で生かす学習を重視するということが書いてあります。現状では、読むということが自分自身や社会とどう関わっていくのか、つながっていくのか、自分をどう変容させるのかということを、高校生が実感を伴ったものとして認識できていないのかなと思います。そこのところがきちんと認識できると、読書によっていろいろな価値をインプットし、自分なりのものに消化をしたり自分が今持っているものと関連付けてアウトプットしていく。あるいは、相手に対して何かを説得する言葉を得るとか、そのような価値あるものとして読むことを捉えられれば、読書に対する認識も変わり、読書量も結果増えていく。そんなふうになっていくのではないかと感じました。

【北原主査】
 ありがとうございました。
 大野委員、お願いしたいと思います。

【大野委員】
 小学校の立場なので、先生方のお話を感心しながら伺わせていただきました。現行の学習指導要領が始まって、古典の大切さということが言われて、ちょうど今の高校生が恐らく小学校の高学年の頃に、現行の指導要領になっているのかなと思います。その当時、恐らくまだ十分に古典の大切さや伝統的な言語文化が取り組まれているところは少なかったのかもしれないですけれども、今、高等学校でも、こういった方向性が示されているということで、小学校でもいろいろな取組をしているところかなと思っています。
 この言語文化のところに、読むことを通してということで、国語なので読むことを通してということにはなると思うのです。私はある学校の研究発表会に参加させていただいたときに、その学校では1年生から6年生まで竹取物語を題材とした学習を展開していらっしゃいました。その地域に竹取物語につながるそういった文化遺産が残っているということで、その子供たちが地域の中でいろいろ調べ、活動していったことを1年生なりに、あるいは6年生なりに発表しておりました。高校生といえど読むだけではなくて、これは国語ではないかもしれないですけれども、何か自分の住んでいる地域の中にそういった文化財を探してみたりだとか、自分の地域とのつながりということを通して、伝統的な言語文化を見直していくということがあると、社会や自分との関わりの中に生かす学習がより具体的なものに展開されていくのかなと、そんなふうにも感じたところです。
 感想ですけれども、以上です。

【北原主査】
 ありがとうございました。
 大変いろいろ貴重な御意見を頂いて。もう時間が過ぎようとしておりますが、ここまでと本日はしたいと思います。
 お出しいただいた御意見は録音してありますので、きちんとまた趣旨を事務局の方で整理していただきたいと思います。それからきょうの御発言の中で、時間もなくて、あるいは思いつかないで御発言できなかったところがあるかと思いますが、どうかペーパーで結構ですので、事務局にお送りいただければありがたいと思います。
 きょう予定した議題はここまででございます。
 最後に次回以降の日程などについて、事務局から説明をお願いします。

【小林教育課程課課長補佐】
 それでは、次回につきましては、3月14日月曜日16時から18時の開催を予定しております。場所は3F2特別会議室です。
 なお、4月以降の日程については、後日調整させていただきます。また主査からもお話がありましたように、ペーパーによる御意見等も頂戴したいと考えております。ファックス、メール、又は郵送でも結構です。
 なお、本日の配布資料は机上に置いていただければ、後ほど郵送いたします。
 以上でございます。

【北原主査】
 次回は3月14日、16時から18時と。本日のワーキンググループは以上で終了いたします。ありがとうございました。

―了―

お問合せ先

初等中等教育局教育課程課第三係

電話番号:0305253-4111(代表)(内線2073)