教育課程部会 国語ワーキンググループ(第3回) 議事要旨

1.日時

平成28年1月19日(火曜日) 10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省3階3F2特別会議室
東京都千代田区霞が関3-2-2

3.議題

  1. 国語教育の改善充実について
  2. その他

4.議事要旨

1.国語科を通じて育成すべき資質・能力について

個別の知識や技能について

 「言葉の位相」がまずあり、その例として書き言葉や話し言葉、敬語、若者言葉があるのではないか。

 「文と文の関係」と「段落と文章の関係」の間に「段落」が抜けているのではないか。国語における段落はどういうものなのかが、これまで明確でなかったのではないか。

 「読み方」に関することが書かれていない。例えば、子供たちは、主人公の気持ちを読む時に何を根拠にするのかということを知識として積み上げていって、その心情を読み取ることができるようになっていく。つまり、子供たちは、文章に直面した時にそういう知識を活性化させて読んでいる。そのような一定の基本となる知識的な読み方みたいなものがあると想定されるならば、「読み方」に関わって何かあった方がよい。

 「読み方」や「書き方」などもあるのかどうか、考えていかなくてはいけない。

 「話合いや話し方・発表」だけでなく、小学校では、音読や朗読、想像して読むことなど、読むということ、聞くということも大切な学習活動である。

 情報に関わる資質・能力の育成に国語科も深く関わっていると思う。高等学校においては、社会に出た時に必要な資質・能力という観点から、インターネットやメール等のスキルや知識を身に付けなければならないが、国語科としてどこまで踏み込むのかを考える必要がある。また、ハードウェアの環境整備という点では、市町村等によって普及状況が大きく違うという問題もある。

 中学校が義務教育の最終段階であることを考えると、メディアの使い分けなどがあってもいいと思う。

 これまで国語教育においては、基礎については、言語事項、言語要素、言語理解などの知識とし、基本については、話したり聞いたり書いたり読んだりといった言語活動、言語行為の技能と捉えるなど、知識と技能を分けて考えてきたと思う。今回、知識や技能を一つの枠として考えていく時に、特に技能については、思考力・判断力・表現力を含んでいるところがあるので、その点をどのように整理にするか、考えていく必要がある。

思考力・判断力・表現力等について

 小学校では、PISA型読解力で指摘されていることなどを意識して授業改善に取り組んでいるが、自分の経験や知識と関連付けてテクストを解釈したり、評価したりすることが大切だと考えている。そういう視点で資料2をみると、これからの時代に求められるものとして、「吟味と解釈」のあたりで、創造的思考といったことをもう少し強く表に出してもいいのではないかと思う。

 【感性・情緒の側面】において、母国語を学ぶ日本人としてどのような感性や情緒を育てたいのか、ということも議論する必要があると思う。

 言葉を頭の中でどのように操作しているのか、どのような操作する力を育成していくのか、を発達段階別に明らかにする必要がある。その点を考えると、【他者とのコミュニケーションの側面】においては、相手の心を想像するだけでなく、想像した上で、自分の考えをどう表現していくのかというところをもう少し加える必要があると思う。

学びに向かう力、人間性等について

 「学びに向かう力、人間性等」については、態度だけではなく、「力」的に捉える観点も必要だと思う。話す・聞く、書く、読む活動を通して、学びに向かう力を育てていかなくてはならないと言った時に、「力」的な観点で細分化できれば、小中高の発達段階に分けたり、学習活動の要素のイメージに表したりすることができるのではないか。

 困難に出会ったときも、言葉によって思索して克服し、たくましく生きていくということが何より大事なので、入れてほしい。

 「国語を通じて、自分のものの見方、考え方を深めようとする」とあるが、「国語を通じて」なのか、「言葉を駆使して」なのか、「国語」「言語」「言葉」などの使い方を整理した方がいいと思う。

 我が国の言語文化に対する関心だけでなく、異なる言語文化に対する関心や共感という要素も重要。

 読書というのは、今後、本に書かれていることをそのまま全部受け入れるのではなく、批判的に読むということが大事になってくるので、その趣旨を入れてほしい。また、人がまとめた知識をそのまま受け入れるだけでなく、クリエイティブに読むことが必要になってくるので、創造的な読みということも入れてほしい。

資質・能力の三つの柱全体について

 「想像する」は、現在、「思考力・判断力・表現力等」のところにのみあるが、本の世界を想像して困難を乗り越えていくということもある。「学びに向かう力、人間性等」にある読書においても「想像する力」は必要である。三つの柱に分類するだけではなく相互に関連することも取りあげていただきたい。

 タイトル行について、「個別の知識や技能」は「言葉の知識や技能」とし、「学びに向かう力、人間性等」には、言語文化という表現を入れてはどうか。また、それぞれ左から階層を示すような番号を入れてはどうか。そうすると、その三層の上位概念として、“国語科で育成すべき”という整理ができるようになる。

学習プロセス(イメージ案)について

 資料1の「個別の知識や技能」の「言葉の特徴やきまり」以外のところを、資料2にもうまく位置付ける必要がある。

 単に情報を集めるだけでなく、集めた情報を加工したり、評価したりする要素が入っているので、「編集」という文言を加えるなど、検討してほしい。

 資料1の「学びに向かう力、人間性等」の内容が、資料2には記載されていないが、どのように書き表していくかが課題だと思う。

 例えば、文学作品を読むことを考えた時には、論理性よりも、文学作品としての表現を読んだり味わったりといった、【感性・情緒の側面】にある想像する力などが必要になる。そのあたりと結び付けることで、「学びに向かう力、人間性等」にある読書や言語文化に関することを、資料2に生かすことができるのではないか。
 また、「個別の知識や技能」にある「伝統的な言語文化に関する知識・技能」は、「思考力・判断力・表現力等」の【感性・情緒の側面】や【他者とのコミュニケーションの側面】に関わってくるので、そこにうまく「学びに向かう力、人間性等」の内容を活用して、資料2に位置付けることができないか。

発達段階について

 「国語」「日本語」「言葉」「言語文化」などの概念がうまく整理されていないと感じる。“日本語または言葉”―“思考と表現”―“言語文化”という三層を考え、その三つに対する上位概念を「国語」と整理してはどうか。例えば、小中学校では、日本語や表現に対する関心や認識を深め、高等学校では、言語文化に対する関心を深め…とすれば、発達段階が整理できるのではないか。また、「国語を尊重する」という言い方に違和感がある。

 「国語を尊重する」というのは、豊かな歴史を持った言葉を大切にしていこうという趣旨で、これまでずっと学習指導要領で謳い続けている文言だと思う。また、「言語文化」には、文化としての言語、言語生活、文学と言語芸術の3つの定義があり、非常に幅広い意味を持っているため、「国語」と「言語文化」との概念の上位・下位関係については、再度考える必要がある。

 小学校では、日本語とはどういう言語であり、どんな規則や特徴を持っているかというところが中心になるので、「国語に対する関心・認識を深め」とし、中学校では、活動にウェートを置いた「言語生活に対する関心・認識を深め」とし、高等学校では「言語文化に対する関心・認識を深め」として、それぞれ「関心・認識を深め」は同じにして、対象を変えていくように書き分けると、小中高で何を学ぶのかというイメージが分かりやすくなるのではないか。

 現行の学習指導要領では、小学校では日常生活を基盤とし、中学校では社会生活へと視野が広がっている。これを踏まえると、「言語文化に対する関心を深める」は、もはや中学校の段階であり、高等学校では遅いと考える。高校生はある意味で言語文化の担い手であり、言語文化に対する認識を深める段階だと思う。小学校では、例えば、母語としての豊かな文化を持っている「日本語に対する関心を持つ」としてはどうか。

 選挙権年齢が18歳以上になったことも踏まえると、18歳になる高校生には、自分たちが住んでいる国や社会、世界とどのように向き合って、どういったものを作り上げていくのかを意識させることも重要である。国語科としては、言葉を通して、自分が考えたことを相手に説得力を持って伝えていくことが中心になると思う。単に言語文化に関心を深めるというところに留まるのではなく、もっと積極的に、言葉を通して、これからの社会や文化をどう形成していくのかといった、創造的な姿勢を求めていくことも必要だと思う。

 「思考力・判断力・表現力等」は教科等の本質に根ざしていることが大事なので、国語科でやらなくてはいけない、譲れないところということを、明確に出していく必要がある。国語科では、やはり「言葉を」「言葉で」という要素が中心となるので、この要素を幼小中高の中に一本通して、国語科としての背骨を作ることが重要である。

 幼児教育には、「楽しい」「面白い」「味わう」という言葉が出てくるが、小中高になるとなくなってしまう。楽しんだり、味わったり、面白がったりすることの結果として、国語に興味を持ったり、認識が深まったりすると思う。高校でも、もっと深く広く楽しむことができる人たちが育ってくれればと思うので、そのようなニュアンスを取り入れてほしい。

 今の国語科において、何を引き上げなければならないのかという問題意識について、特に高等学校において、言語文化に対する関心以外に何を伸ばしていかなければならないのか、委員のみなさんの御意見を伺いたい。

 高等学校における国語教育のイメージを考える時には、小中学校の積み重ねの上の高校という発想からのイメージとともに、高大接続の観点からの社会人基礎力や学士力の育成に、高校の国語教育がどのように関わるのかという観点から考えることもあると思う。

 中学校は、義務教育の最終段階として、ここから子供たちが社会へ出て行くところでもある。特に、高等学校で表現に関する指導が行われないまま、大学へ入る子供も多くいることも考えると、中学校で義務教育として責任を持てる範囲はどこなのかを吟味することが非常に重要である。

 小学校6学年を一括しようとすると難しいので、例えば、第1~4学年までの前期と第5~6学年の後期に分けて書いてもいいのではないか。

 中学校の2.の「内容や展開を根拠に基づいて解釈したり」と高等学校の2.の「論理や既有知識に基づいて解釈したり」は、結局、同じことに思える。中学と高校の記述の仕方をどのようなレベルで整理していくのかがポイントになるが、非常に難しいと思う。

 小学校の2.の「更に確かめたいこと、調べたいことを意識する」は、主体的に学習を進めるに当たり、どの学校種でも必要な要素だと思うので、中学や高校にも同様の趣旨のものを位置付けてほしい。

以上。

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