資料1 特別支援教育部会(第7回)における主な意見(未定稿)

特別支援教育部会(第7回)における主な意見(未定稿)


1.高等学校における通級による指導の教育課程上の位置付けについて
○ 中学校に在籍し通級による指導を受けている子供たちが高等学校でも継続して指導を受けられるようになることは非常によい。
○ 現在の中学校の通級による指導の課題として、各教科の内容の補充指導に重点が置かれている例もみられることや、小学校から中学校への引継ぎが非常に十分でない現状もみられることから、学習指導要領総則の中で、通級による指導の目標を明確にしたり、中学校から高等学校への個別の教育支援計画の引継ぎを確実にしたりしていくことなどを配慮事項に記述する必要がある。
○ 高等学校の教員全体に広めていくために、高等学校学習指導要領の総則に、通級による指導の目標や教育課程の構造等を明確に示していく必要がある。
○ 個別の指導計画そのものをきちんと評価するシステムも考えていく必要がある。
○ 小・中では通級に通うチャンスがなかった子供たちが、高等学校に入ってから気付くケースなどがあり、高等学校から通級による指導を受ける場合も、アセスメントや行動観察をしっかり行うことが重要である。決して、ただ勉強ができないからとか落ち着きがないから通級に行くということにしてはならない。
○ 障害者権利条約も本人の自己決定をいかに育てていくかということを掲げているが、高等学校における通級による指導では、本人の自己理解や気付きがあってから学ぶケースでないとなかなか定着がしづらい。
○ 小・中では通級による指導は年度の途中での参加と年度の途中での離脱が可能であるが、高等学校で単位化すると、自由度が随分と減ることも考えられる。
○ 高等学校で通級による指導で単位を与えることを踏まえ、担当する教員の資格、専門性が必要である。
○ 卒業のための必要単位に含めることは、基本的には適当である。標準となる単位数年間7単位は3年で21単位となり、結構な単位数を通級による指導が占めるため、ガイドラインがあるとよい。
○ 高校の場合、単位制ということや、多様性と共通性という問題、選択科目や学校設定教科・科目など、様々な特色があり、その中で自立活動というものをどのように生かしていくのかということを論理的に整理して考えていく必要。
○ 高等学校の場合は学校の特色づくりというのも一つ大きな特徴であるが、それの中で通級による指導が効果的に行われるためには、学校の判断が妥当かどうかということを評価する仕組みも検討されるとよい。
○ 各学校の特別支援教育に関わる校内委員会が、個別の指導計画、それに関わる単位等を認定するか何らかの手立てが必要。
○ 通級による指導が行われることを契機に、全教員が特別支援教育に携わっていくということを考える必要。通級による指導の中でどういう支援が行われるかということと、各教科で展開される支援がどういうふうな結び付きになっているかというのをうまく循環して高校における特別支援教育を展開させていくのかを分かるような形で示すことが必要。内容的には、特に発達障害の子供たちに関しては特別活動との関係の視点も必要。
○ 基本的な考え方、提示の仕方については賛成。これを実質化するための課題として、学校の誰が個別の指導計画を作成するのか明確でなく、学校間に差がある。誰が主体となって判断するのか、何を基準に判断するのかも難しい点がある。なかなか理解しにくい自立活動や個別の指導計画についても、分かりやすく理解してもらう工夫が必要。
○ 今後、小学校・中学校での通級の指導が実質的に行われているのか、通級による指導の全体を通した位置付けを整合するような考え方が必要になる。
○ 高等学校の中で通級による指導が議論されて実際に制度化されていくというのは本当に大事なことで、是非この方向で推進をしていただきたい。高等学校の授業改善の視点が重要。その視点を示していく必要。
○ 中学校での課題を明確にして、これを参考に高等学校で考える必要。
○ 通級による指導を受けることによって単位を取得する場合と、通級による指導を受けないまま、各教科の単位を取得できない場合も起こりうる。


2.キャリア教育の改善・充実について
○ キャリア教育という言葉を、遠い将来のことや就職のための支援というところで着目されがちであるが、社会で生きるというところをもう少し視点としてはっきりしていくことが必要。
○ 障害のある人に成人期から関わっていると、障害の重度・軽度に関わらず、就職支援に向けては一生懸命取り組んできているが、自分で意思を決定していくということの積み重ねが非常に少ない人たちが多いと感じる。意思を疎通させる方法が確立されず、仕事ができない人あるいは社会で生きることができない人という評価を受けてしまっている方が多い。キャリア教育の前提として、意思疎通を確立することを前提になければならない。
○ 本年4月1日から障害者差別解消法とともに、障害者雇用促進法の方でも、合理的配慮は自ら求めるというところから始まるが、自分から自分の大変さ、困難さを事業主に伝える、職場の方に伝えることがとても難しい。就労支援の段階でできることではなくて、学校教育の中で蓄積していくことが必要。
○ 特別支援教育におけるキャリア教育は、私は、特別支援教育の今後の教育課程を考える上で核になる考え方になる。今後、インクルーシブ教育システムの構築を目指していく際に、これまでも必ずしも十分に社会参加できるような環境になかった障害者の人たちが積極的に参加・貢献していくことができる社会を作るためのキャリア教育が重要である。障害の重い方も社会の中で何らかの役割を果たしていることが実感できるような教育を積み上げていくということが重要である。
○ 育成すべき資質・能力を踏まえた学習の在り方として、何を知っているのか、何ができるのか、あるいは知っていることをどうやって使うのか、そして、これからどういう生き方をしていくのか、という視点で学習評価をしていくことになるが、それはキャリア教育の評価であり、特別支援教育においても重要視して積み上げていくことが重要である。
○ 実際に学校現場では、キャリア教育と職業教育というか、職業的な様々作業を含めた活動と、そして自立活動が整理されない形で展開されている例もあり、学校現場に、キャリア教育の視点を提供することが必要だと思う。
○ 職業あるいは社会的自立ということを考えると、それは確かに、この先どのように育っていくかということを、教師として親と子供たちが一緒に活動する中で展開するということは重要なことであるが、子供たちにとっては、なかなか自分の将来を予見できない子供が多く、予見する枠組みとして、学校にいる時点で幾つか、将来、自分の先輩はこのように育っていったとか、あるいは、その背中を見ると将来はこういうふうに自分も社会に出ていくことが現実のものになるのだというようなことを理解できるような指導が必要だと思う。
○ 小学部段階からも、「ちゃんと挨拶しましょう」から始まって、保護者の仕事の内容を理解し、自分がどんな将来の夢や希望を持っているかということも、実際の小学校段階のいろんな要素が、将来につながるものが多い。指導する教員が意識して、あるいは学校で全体を体系付けた計画が立てられているかが大きい。
○ キャリア教育の定義を鑑みれば、実施したカリキュラムの評価の材料として、日々の学習評価ですとか進路先の状況だけをもって評価することはできない。卒業後の生活を送る本人や関わる方の評価を踏まえてカリキュラム・マネジメントの評価材料としていくということが大事である。
○ 最終的に社会に参加していく、社会の一員として生きていくということのために必要な様々なスキルは、学校段階だけではなく、その前からある意味では芽生えて、育ってきている。そういう意味でも、幼稚部の段階から子供たちの自己決定、主体性、意思の表明といった力を育むことが必要である。こうした様々なソーシャルスキルは、多分ほかの方たちに比べるととても長い時間あるいは多くの経験・場が必要である。空間的に広がるだけではなくて、時間的にも上下に延ばし、一定の早期段階からカリキュラムとして組み立てていくことにはとても大きな意味がある。
○ 小・中学校の特別支援学級は、特別支援学校の学習指導要領を参考にするため、特別支援学校学習指導要領にキャリア教育の視点が記述されるとよい。
○ 将来、違った世界にいる自分の姿や、そこで自分がどういうふうに生活しているのかということを思い描いていくということが大事であり、高等部修了後だけではなく、例えば小学部のときの中学部、中学部のときの高等部、といったように、各学部段階でどうするというだけではなくて、学部間のつながりをどう意識していくことが重要である。各学部のスムーズな接続も重要であるが、場合によってはある程度ギャップがあるということも必要だと思う。
○ 障害の程度が非常に重度の子供のキャリア教育について、やはり将来的に職業的自立が云々というのはなかなか難しい面があるが、卒業した後にどういった生き方をしていくのかということは、キャリア発達の視点から非常に大切なことであり、自分らしく生き方を実現していくようなことを、教育の根底に据えていく必要がある。卒業後の生活、卒業後の姿というのを見据えながら、それを小学部の段階から、段階的にどういうふうなキャリア発達の視点で、内容的にも、例えば教科指導の中でも、あるいは自立活動の指導の中でも、そういった観点をもちながら段階的に、カリキュラム・マネジメントとして教育活動全体の中での働き掛ける仕組みというのを学校の中で考えていくことが大切であることを示していく必要がある。
○ 特別支援学校高等部でも、高等学校においても、障害のみに対応する個体モデル型の発想ではなく、環境モデルで考えないと対応できないことがあり、キャリア発達を支援する際にどこに障壁があるのかというところも含めて、学校だけではなくて機関、NPOとかサポートステーションとかが連携して、学校から社会への移行支援が大切である。
○ 小・中学校の特別支援学級におけるキャリア教育を考えると、例えば小学校の生活単元学習から中学校の作業学習に継続の系統性を十分に分からない中で進んでいる状況がある。
○ 子供たちの地域との連携の中でのキャリア教育が必要であり、子供の家庭背景等も考えたキャリア教育という視点であれば、その地域の福祉や医療との連携も必要であり、地域連携の視点、都道府県や市区町村を超えたその子供に対する支援という観点が必要。
○ キャリア教育とはキャリア発達を支援する教育のことという定義が分かりづらい。その中にはもちろん就労も、いかに人生行路を豊かに生きていくのかということも、キャリア教育の視点をわかりやすく、教員全員が読むもものに記述する必要がある。
○ 機能不全のある子供たちには指導の定着に時間が掛かることから、幼稚部の段階から将来の自立・社会参加に向けて、生活自立、経済的自立、社会的自立、そして精神的自立をターゲティングしながら指導していくことが必要である。
○ 例えば「知的ボーダー」と言われる子供たち、自閉症スペクトラムを持ち、学校あるいはどこかの体験で学んだやり方と実際のやり方が違うと、不適応を起こしてしまうケースがある。社会に出ていくということは就労だけではなく、地域で生きていくということも踏まえると、規範意識や、ルールを守れるとか、協働できるということが重要であり、従来、自立活動で取り組まれてきているが、それをキャリアや、人生の中でも考えていくような記述が必要であると思う。
○ 社会の急激な変化で、現在の職業が10年後あるのかという前提で、就労体験が本当に生きていく力になるのか、何が核になるのかということを念頭に置いて考えていく必要がある。
○ 小学校・小学部段階から、学校、家庭においても、例えば何かお手伝いをすることも一つのキャリア形成やキャリア意識を芽生えさせるきっかけになり、集団に所属していてうれしいと思えることや、自分自身が自己有用感を得られるであることをキャリア発達の中で目指していくことが大切である。
○ キャリア教育の視点から、アクティブ・ラーニングの中で、特別支援学校での対話的な学び、主体的な学びができることを、幼稚部、小学部から、具体的な内容を系統的に説明できるようになることが大切である。


3.重複障害者等に関する教育課程の取扱い
○ 例えば、小学部の低学年は準ずる教育、各教科の指導を行い、学年が上がるに従って、当該学年の目標及び内容の学習が困難になり、さらに、保護者の同意を得ながら、知的障害の教育課程で指導する事例がみられる。知的障害の各教科に替える際の設定プロセスを示していくことが必要である。保護者から見たとき、中学校と知的障害特別支援学校の教科の連続性がわかりにくく、知的障害教育の各教科について、相当保護者に説明する必要がある。
○ 小学校等に準じた教育課程では、教科の目標に準拠して学習状況を評価すること行われているが、知的障害の教育課程では、子供がいい表情で授業を受けていたとう形で評価を行っている例もあり、子供の状況であり、学習状況の評価ではない現実がある。
○ 個別の指導計画のPDCAサイクルと教育課程のPDCAサイクルを一致させようと実践研究した特別支援学校もあり、カリキュラム・マネジメントとしては、指導略案に個別の評価規準を観点別に立て、個別の指導計画レベルでまとめ、同時に、授業においては、どの教科、併せた指導においても、知的の教科の関連性を明確にしている。それを積み上げて単元ごとに評価をして授業改善を考え、単元の評価が積み上がったものを基に教育課程の評価ができるという仕組みを作っている。
○ 特に障害の重い方の教育課程の実施・評価を考える際に、保護者の方から「毎年同じような目標を立てられていて」と指摘されることがあり、教育課程を適用する際の留意点のとして、何を取り扱って、何を取り扱わなかった、取り扱わなかったことはどのように考えていくのか、改善・充実の方向性の中に、教育課程の取扱い、カリキュラム・マネジメントについても、内容の取扱い等についても是非示すことが必要である。
○ 今回、育成すべき資質・能力という観点で、三つの柱で通常の小・中・高等学校は各教科の目標の内容も含めて検討されるのであれば、同じ視点でもう一度、知的障害教育の成り立ちというのか、捉え直して作っていくことによって、共通理解が深まると考えられる。
○ 例えば、料理や買物の活動をしたりすることがあるが、それを漠然と一つの活動という枠組みの中でまとめてしまうのではなく、教科ごとにどういう要素がその中に盛り込まれているのかを分析的に評価することが、知的障害教育あるいは重複障害教育の専門性であり、分析的に評価を行うことを改善の方向の中に盛り込んでいく必要がある。
○ 特別支援教育におけるカリキュラム・マネジメントは、教科という考え方と、自立活動を含めた弾力的に編成できるという考え方の差異と共通性がある。公教育を確実に実現していくための教育課程の基準である学習指導要領を、どう一人一人の子供の教育を実現するかという捉え方で、学校、教員が理解しやすいように提示していく必要がある。
○ 重複障害者等の教育課程の取扱いについては、学校間、個人間にかなり大きな違いが生じる場合がある。ある子供に、例えば前学年の目標・内容を全部又は一部替えられるという規定を適用して、中3の子供に小学校3年生の算数を指導した場合、生活年齢15歳で、学んでいる内容は全て9歳のものを全部適用するとなれば、準ずると見なすこともできる半面、知的障害のある子供とみなすべきではないかという判断もあり得る。以前は、準ずるという場合は2学年くらいを下げて指導することが、ある程度共通理解されていたが、最近は目安となる範囲はない。実際にカリキュラムの実施段階において、多くの学校、教員に混乱があることから、学習指導要領解説などでわかりやすく示すことが必要である。
○ 小・中学校の特別支援学級からみても、知的障害のある児童生徒のための各教科は、各段階の目標・内容が分かりにくく、これぐらいの障害の程度の児童生徒であれば、この段階にいるということが明確になるとよい。
○ 自立活動そのものが、活動が主になって、そこの中の学びは何なのかといったものが見えずに、「きょうのこの活動、楽しかったね」とか「盛り上がったね」で終わっている例もある。教員がその日の自立活動の授業を振り返り、分析的に見て、次の目標設定につながるよう、丁寧に評価を行うということを示す必要がある。

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