資料9 特別支援教育部会(第1回)における主な意見

特別支援教育部会(第1回)における主な意見(未定稿)

1.特別支援教育の在り方
(開かれた教育課程)
○「学校は障害者である子供を卒業させて終わりだが、もっと長い将来像を抱いて教育して欲しい。」と企業から言われる。社会に開かれた教育課程が重要であり、何十年後の姿を想像して教育を行っていく必要がある。例えば、知的障害の子供たちは、卒業後、仲間関係が途切れてしまうことが多く、戻れる場所がない。キャリア教育の観点から、就労した後も仲間関係を築く力を育むことも必要。

(「アクティブ・ラーニング」の視点)
○特別支援教育において、どのようにアクティブ・ラーニングをとらえ、進めるのか検討していくことが重要。
○社会に開かれた教育課程とも関連して、特別支援学校の高等部では、職場体験として仕事を受注して納品するまでの実践を行っている例がある。失敗の連続であるが、 教員が失敗をサポートすることで、生徒の自信へつなげている。特に、事後指導の場面において、職場で失敗したことを仲間同士で話し合い、「今度はこうしたい。」と前向きにとらえている姿が見られ、大事な学び方になっていると感じる。アクティブ・ラーニングは、教師が子供たちを「教える」というだけでなく、「支える」ことも重視するといった発想の転換が必要。

(「カリキュラム・マネジメント」)
○特別支援教育におけるカリキュラム・マネジメントでは、子供のニーズや多様性に応じたカリキュラムへの対応を中心に考えることが重要。
○授業のPDCAと教育課程をPDCAでつなぐ手続きが重要。教育内容に関する自覚が希薄な印象。
○特別支援学級では、自立活動に加え、各教科等の学習に時間がかかる児童生徒もおり、どうしても教科の授業時数は少なくならざるを得ず、その際、指導内容の精選が課題となる。どのような手続きで精選すればよいかを分かりやすく示すことが必要ではないか。


2.幼稚園、小学校、中学校、高等学校等における特別支援教育
○特別支援学校だけではなく、幼稚園、小・中・高等学校の特別支援教育を発信していくことが必要。

(幼稚園における特別支援教育)
○幼稚園における特別支援教育が課題。幼稚園教育要領改訂の検討と連携することが重要。

(特別支援学級、通級による指導の教育課程)
○特別支援学級や通級による指導を受けている児童生徒数が増加している理由として、保護者の理解が得られていること、それぞれの指導について一定の成果が上がっていることが挙げられる。半面、教育課程の編成については、「特別支援学校学習指導要領を参考にする」ではわかりにくく、指導内容が明確になるとよいのではないか。
○ 特別支援学級、通級による指導の教育課程の編成は、特別支援学校学習指導要領を参考にでは現場は分からない。小・中学校の学習指導要領にもう少し記述が必要ではないか。
○特別支援学級では、自立活動に加え、各教科等の学習に時間がかかる児童生徒もおり、どうしても教科の授業時数は少なくならざるを得ず、その際、指導内容の精選が課題となる。どのような手続で精選すればよいかを分かりやすく示すことが必要ではないか。【再掲】

(障害に応じた指導)
○小・中・高等学校に在籍する、特別支援教育の対象となる子供の数は増加しており、特に通級による指導は学習障害が増加する可能性が高い。現状の通級による指導は、通常の学級でできていないところを補充する指導に追われ、自立活動の指導の視点が弱い。単なる教科の補完ではなく、「教科指導」と「自立活動の指導」が両方連携しながら教育課程を編成することが必要。小・中学校における自立活動を実質化させるために、どう示していくかが重要。特別支援学校で行われる自立活動の実践を参考にしていく必要があるが、このためには特別支援学校における自立活動の指導を更に充実させる必要がある。そして、特別支援学校のセンター的機能を活用するなど、スクールクラスターの機能を充実していく必要がある。
(合理的配慮)
○通常の学級にも障害のある児童生徒が在籍している状況を踏まえると、平成28年4月から、障害者差別解消法が施行されるが、幼稚園、小・中・高等学校こそしっかりと受け止めなければならないと考える。学校現場では、施設・設備面と異なり、教育課程の中での合理的配慮が難しい面がある。

(特別支援教育コーディネーター、校内体制等)
○小・中学校では、特別支援教育コーディネーター、個別の教育支援計画や個別の指導計画も定着してきたが、通知に示してきた内容が、学習指導要領にもう少し書き込まれるとよいのではないか。
○学校現場の指導では、校内組織に左右される。これからは、特別支援教育コーディネーターだけで十分ではなく、チーム学校の視点が必要。特に、高等学校でどのような支援体制を構築するかが課題。
○インクルーシブ教育システムを構築していくために、校内のシステムの構築が必要。教員1人では対応できず、組織として関わっていかないとインクルーシブ教育システムは実現できない。

(高等学校における特別支援教育)
○高等学校では、(障害に応じた指導を)学校設定科目として設定し指導を行っている。現在の高校進学率を考えると、高等学校の教育課程が高校生に合っているかという抜本的な問題があり、どこまで柔軟性を持たせられるか。子供にあった教育課程が組めるようにするには、など、教育課程相互の研究も必要。
○高等学校または特別支援学校高等部に進学するかは、卒業後の就労が大きなポイントとなっている。NPOとの連携が重要。キャリア教育を幅広く行っていくことが必要。

(教育的ニーズに応じた指導)
○発達障害の可能性がある子供は、特定の教科に1~2年の遅れが生じることがあり、当該学年で指導することが難しい場合もある。学習指導要領との整合性をどう捉えて行くか検討する必要。
○現在、特別支援学校や特別支援学級には、自閉症の子供が多く在籍しており、指導上の困難さを有しているが、自閉症の子供の教育的配慮について、学習指導要領などの中で十分に触れられていない。また、指導上の手立てや配慮事項を明記することが必要。
○『教育支援資料』に記された教育的対応の内容は小・中学校でも参考となる。かつての特別支援教室構想に対する現場の期待もあったが、個別対応など通級による指導も利用できない子供への支援も検討する必要がある。
○これまでの社会の認識では、病気の子供は病院で学ぶと考えられてきたが、近年、医療の進歩等により、病弱の子供は、通常の学級に在籍することが多くなってきた。そうした子供は、外来通院していたり、入院はしていないものの十分に健康ではなかったり、様々な制約があり、自分の症状を伝えることができないなど、教育的ニーズが存在している。
○長期入院等から復学する際の学習上の空白や、入院中の勉強の遅れの補完など学習上の課題が大きい。

(個別の教育支援計画、個別の指導計画の作成、活用)
○特別支援学級、通級による指導においては、個別の教育支援計画や個別の指導計画は全ての子供に作成させることにしてもよいのではないか。発達障害の可能性がある子供までは難しいかもしれない。

(障害者理解)
○共生社会の実現を目指すために、学習指導要領総則の一般方針に盛り込むことが必要ではないか。
○これまで学校現場では、地域から肢体不自由者や視覚障害者を招くことは多かったが、知的障害者については多くなく、理解が遅れている。学校、学級が共生社会の基盤となることが大切。

3.特別支援学校
○特別支援学校において、どのような力を付けさせたいのかを考えていく必要がある。特に、知的障害特別支援学校の各教科では、目標や内容がやや抽象的で、中学部では1段階しかない。具体的な示し方をしていかないと、学校現場で児童生徒の実態に応じた目標設定がしにくく、あいまいになってしまう。
○求められる資質・能力を踏まえた、知的障害の各教科の充実が必要。
○各教科等を合わせた指導の際、個別の指導計画において、個々の教科、道徳などの目標が分かり、評価の段階で身に付けさせたい力が見えるような、作成の仕方を示す必要がある。

(自立活動の改善・充実)
○特別支援教育における自立活動は、視覚障害・聴覚障害・肢体不自由については、教員もイメージしやすいが、知的障害における自立活動は教員も十分に理解できていない面があり、専門性についても議論する必要がある。

(キャリア教育、就労支援)
○近年、障害者雇用の環境が激変し、雇用側の求める人材像はレベルが高くなり、就職の門が狭くなっている。知的障害、発達障害は売り手市場になっているが、重複障害者、障害の程度が重い方の就職が困難な状況。
○障害者雇用制度を活用して就職させたいという保護者の希望が、高等部の生徒の増加、精神保健手帳取得の背景になっていると思う。
○就労している現場をみると、(一人一人)様々な教育を受けてきたことを感じる。自己理解し、得意不得意を伝えることができる人もできない人もいる。
○特別支援学校(高等部)では、就職の斡旋に努めているが、職業リハビリテーションの意識が十分ではない。(学校現場で職業リハビリテーションに関する)人材を補完していくことや、専門性の向上が必要。
○「学校は障害者である子供を卒業させて終わりだが、もっと長い将来像を抱いて教育して欲しい。」と企業から言われる。社会に開かれた教育課程が重要であり、何十年後の姿を想像して教育を行っていく必要がある。例えば、知的障害の子供たちは、卒業後、仲間関係が途切れてしまうことが多く、戻れる場所がない。キャリア教育の観点から、就労した後も仲間関係を築く力を育むことも必要。【再掲】

4.子供たち一人一人の学びの連続性を実現するための教育課程の円滑な接続の実現
○子供たちの学びの連続性を実現していくために、小・中学校、特別支援学校それぞれからのアプローチも必要。
○中学校と高等部への接続が課題。従前のように、中学校特別支援学級卒業後の就職がなくなり、高校への進学率が上がったため、教科中心の指導で、自立活動も教科の補完に力点が置かれている傾向がみられる。
○高等学校への接続も課題であり、肢体不自由の中学生が、高校へ進学希望する場合、高等学校で必要な支援を受けられるかが重要。卒業後の支援も必要。
○中学校から入学する特別支援学校高等部に入学する生徒数が増えているが、中学校の学びが高等部の学びに通じていない、見えないという保護者からの声があり、学びの連続性を図っていくかが課題。
○知的障害の子供の学びの連続性を実現していくためには、知的障害についての理解を図ることが課題。
○義務教育段階の多様な学びの連続性について考えることは非常に大切。連続性をどのように教育課程において実現させるかが課題。

(交流及び共同学習)
○交流及び共同学習では、共同学習の内容が大切であり、特別支援学校の子供にとっても教科等の学習が重要。また、お互いがリスペクトし合うことを支える教育課程にしていくことが重要。
○交流及び共同学習のうち、特に、共同学習のグッドプラクティスを広められるとよい。通常学級の実践も参考にしたい。

5.特別支援教育の改善・充実のための環境整備等
○大学の教職課程で学ぶ学生は、子供たちの困難さをどれだけ理解できているか。学習指導要領の運用も含めて検討したい。

6.その他関連事項
○重複障害の指導は、国際的に共通の喫緊の課題であり、日本の特別支援教育における指導方法で、世界への貢献していく必要がある。

 

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