教育課程部会 特別支援教育部会(第7回) 議事録

1.日時

平成28年4月13日(水曜日) 14時00分~16時30分

2.場所

中央合同庁舎第7号館東館 文部科学省3F1特別会議室

3.議題

  1. キャリア教育の改善・充実について
  2. 重複障害者等の教育課程の取扱いについて
  3. 高等学校における通級による指導に係る教育課程上の位置付けについて
  4. その他

4.議事録

中央教育審議会初等中等教育分科会 教育課程部会特別支援教育部会(第7回)

平成28年4月13日


【宍戸主査】  皆さん、おそろいでしょうか。定刻になりましたので、第7回の中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会特別支援教育部会を開催したいと思います。
本日は委員の方全員が御出席の予定です。
前回に引き続き、報道関係者より会議の撮影及び録音の申出があり、これを許可しておりますので、御承知おきください。
初めに、事務局より、事務局の人事異動の紹介、配付資料の確認をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
【太田特別支援教育課課長補佐】  事務局を担当しております特別支援教育課の、私、課長補佐の太田です。今年度も引き続きよろしくお願いいたします。
それでは、事務局の人事異動がありましたので、御紹介させていただきます。4月7日付けで初等中等教育局特別支援教育課特別支援教育企画官に着任しました森下でございます。
【森下特別支援教育企画官】  森下と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
【太田特別支援教育課課長補佐】  続きまして、配付資料の確認をさせていただきます。第7回の議事次第に記載しておりますとおり、資料1から資料11までの資料を配付させていただいております。そのうち資料7をごらんいただければと思いますが、4月より御所属が替わられた委員がいらっしゃいますので、最新の名簿を配らせていただいております。
以上、資料全体につきまして不足等ございましたら、事務局の方にお申し付けいただきたいと思います。
以上でございます。


【宍戸主査】  それでは、これより議事に入りたいと思います。
まず、総則・評価特別部会、小学校部会、幼児教育部会の検討状況につきまして、事務局より説明をお願いしたいと思います。
【大杉教育課程企画室長】  失礼いたします。それでは、お手元の資料8以降なのですけれども、資料8、それから資料2-1と付きました資料8の二つ目の固まり、それから資料9、資料10、資料11、で、資料11の後に今日の高等学校部会で使います資料3-2、3-3、3-4と、この資料を御説明させていただくのですが、10分ということでございますので、大変かいつまんだ説明になることをお許しいただければと存じます。
まず資料8から御紹介申し上げます。総則・評価特別部会におきましてアクティブ・ラーニングの視点、「主体的な学び」、「対話的な学び」、「深い学び」ということで「論点整理」で御整理いただいておりますけれども、特に「深い学び」ということについて御整理を頂いております。
おめくりいただきますと、1ページ目が特に「深い学び」を実現する観点からということでございますけれども、1.は「論点整理」の確認でございます。「深い学び」、「対話的な学び」、「主体的な学び」、これを通じて内容的な理解を深めながら資質・能力を育んでいくということ。そして、内発的な学習に対する動機付けも高めていくということ。そして、「論点整理」にありますように、型に着目して特定の学習指導の型や方法ということではなくて、学習過程全体を通じた不断の授業改善の視点であるということの再確認であります。一方で、「こうした理念は分かるけれども、具体的な実践例を」というような声もあるところでございます。こうした実践例については、様々な型や方法のカタログというようなものではなく、アクティブ・ラーニングのこの三つの視点に基づき、どのような授業改善が子供たちのどのような変容につながるのかという授業改善に関する実践例の蓄積と普及がなされるべきではないかということ。2ページ目にございますように、特定の指導や型ということは、そうしたものの手段として不断に検証され、見直されるべきものではないかということでございます。
そして、2ページ目、特に「深い学び」の視点ということでございますけれども、現場の先生方から、「対話的、主体的はよく分かるのだけど、『深い学び』というのがちょっと分かりにくい」というような声も頂いております。現在、各教科の特質に応じて「深い学び」とは何かというものを正に深めていただいておりますので、少しまだイメージが示し切れていないということも一因でございますけれども、総則・評価部会では、「深い学び」とは何かということを改めて御整理いただいております。「深い学び」の視点の三つ目の丸でございますけれども、現在、教科特別WGにおいて、資質・能力の育成や学習の深まりの鍵となるものとして、教科の特質に応じて育まれる「見方や考え方」というものを御議論いただいております。こうした「見方や考え方」を習得・活用・探究を見通した学習過程の中で働かせながら思考・判断・表現し、「見方や考え方」自体も成長させながら、資質・能力を獲得していく、それが「深い学び」ではないかということでございます。先生方がこうした「深い学び」の視点に立って、子供たちの内容的な理解に責任を持ちながら子供たちに関わっていくことができるように、現在、各WGでその具体的なありようについて御議論を頂いております。
「見方や考え方」は、御承知のとおり、一番下の丸にございますように、それ自体は新しい概念ではございません。現行指導要領においても使われている言葉でございますけれども、具体的なその内容については必ずしも説明されていないという状況でございます。3ページ目にございますように、改めて「見方や考え方」とは何かということでございますけれども、様々な事象を捉える教科ならではの視点や思考の枠組みではないかということ。そこに三つの中点がございますけれども、資質・能力の三つの柱との関係性につきましては、「見方や考え方」を働かせながら学習をしていくということにより、知識・技能がより構造化され、社会の中で使える概念的な知識として身に付いていくというようなこと。また、「見方や考え方」ということを成長させていくことにつれて、思考・判断・表現というものもより豊かになっていくということ。また、「見方や考え方」を通じて社会や世界と関わるということで、学びに向かう力や人間性が育まれていくということでございます。こうした「見方や考え方」を通じた「深い学び」ということの実現ということ、そして、その中で子供たち一人一人の「見方や考え方」の困難さということを捉えた支援ということも重要ではないかということでございます。
そして、これら教科の特質に応じて育まれる「見方や考え方」は、相互に影響し合いながら成長していくものであるということ。特に総合的な学習の時間や特別活動においては、各教科の「見方や考え方」を意図的に総合・統合させながら、より幅広い物の見方や多面的・多角的な見方ということにつなげていくものではないかということでございます。
以上がアクティブ・ラーニングについての整理でございます。
次の固まりでございます。3月14日資料2-1「学習評価の改善に関する今後の検討の方向性」ということ。これは、各WGで資質・能力の三つの柱に基づく整理が進められていることを踏まえまして、改めて教科共通の学習評価の方向性を御整理いただいたものでございます。
現在、資質・能力の三つの柱に基づく教科目標の構造化ということに取り組んでいただいておりますけれども、それ自体が目標に準拠した評価という観点からの学習評価の改善につながるものであるということでございます。一方で、この資質・能力の三つの柱、相互に関係し合いながら育成されるものでもございますので、そうした点については総則などで示すべきではないかということでございます。
それから、観点別評価でございます。観点別評価、実施状況は高い状況でございますけれども、資質・能力をしっかり育む評価の在り方といった観点からは質的な改善の余地があるのではないかということ。観点別評価の二つ目の丸でございますけれども、「目標に準拠した評価」の実質化や、教科・校種を越えた共通理解に基づく組織的な取組を促す観点から、これは4ページ目にございますような「知識・技能」、「思考・判断・表現」、「主体的に学習に取り組む態度」、「論点整理」でもこの三つに沿ってということに既になってございますけれども、この三つの観点に沿って、観点別評価の観点と趣旨を検討していくということでございます。具体的な書きぶりは、教科の特質を踏まえてということでございます。毎回の授業で全てを見取るということではなく、単元や題材を通じたまとまりの中で適切に評価の場面をデザインしていくことが重要であるということでございます。
2ページ目、「知識・技能」についてでございますけれども、これまで「理解」というような言葉で整理をされておりましたような構造化された概念的な知識の獲得ということも知識ということにしっかりと含めて考えていくということでございます。また、「思考・判断・表現」につきましては、一足飛びに成長するというよりは、時間を掛けて成長していくというようなものではないかということも踏まえて、学年等を越えた整理も必要ではないかということ。「主体的に学習に取り組む態度」につきましては、資質・能力の三つ目の柱「学びに向かう力・人間性」との関係を整理していただいております。「学びに向かう力・人間性」の中には、観点別評価を通じて見取る部分と、評定等にはなじまないので、個人内評価として見取る部分があるのではないかということ。観点別評価においては、「主体的に学習に取り組む態度」という観点別評価を通じて見取ることができる部分に着目して評価をしていくということでございます。また、現行の観点である「関心・意欲・態度」について、特に挙手の回数やノートのとり方などの形式的な活動で評価されているのではないかというようなことも踏まえて、今回、「関心・意欲・態度」を改めて、「主体的に学習に取り組む態度」というような形で観点を整理し直しているところでございます。
次のページにございますように、指導要録の在り方、子供たちが自らの学習状況やキャリア形成を見通し振り返ることができるようにするための仕組みの在り方、学びのポートフォリオや個々の学びの特性が校種を越えて共有されるような仕組みの在り方などについては、引き続き総則・評価部会において議論されるということでございます。
続きまして、資料9でございます。小学校部会でございますけれども、特に小学校部会におきましては、子供たちの言語能力、国語教育の充実、外国語教育の充実ということが喫緊の課題でございましたので、少し先んじて議論の取りまとめを仮に行っていただいているものでございます。
2ページ目にございますように、「社会に開かれた教育課程」の実現に向けて小学校教育がどのようにあるべきか。特に3ページ目の二つ目の丸からにございますように、低学年・中学年・高学年それぞれにおいて、子供たちは学習課題がそれぞれであるというようなことも踏まえながら、6年間という期間は子供たちにとって大きな幅のある期間でございますので、それぞれの段階に応じた課題を踏まえた対応が必要ではないかということでございます。
それから、4ページ目には、「カリキュラム・マネジメント」の重要性ということでございます。
5ページ目は言語能力ということで言語能力向上に関する特別チームにおいてまとめられたました創造的思考(とそれを支える論理的思考)の側面、感性・情緒の側面、他者とのコミュニケーションの側面について整理を頂いておりますけれども、こうした言語能力ということの重要性が6ページ、7ページ目、そして、それを母語で支える基盤としての国語教育の重要性。言葉が持つ力を信頼して、言葉によって困難を克服し、社会を創造していくことの重要性。8ページ目は、それに沿った国語教育の強化ということでございます。
また、9ページ目は、外国語教育、多様な他者とのコミュニケーションの力を育むということも含めてということでございます。特に子供たちの知的欲求あるいは高校卒業時に求められる生徒の英語力ということを踏まえますと、11ページ目にございますように、身近なことについて質問したり、質問に答えたりすることができるという小学校高学年の姿を描きながら、聞くこと、話すこと、書くこと、読むことの4技能を扱う教科学習ということを行っていく必要があるのではないかということ。それを踏まえて、中学年から慣れ親しむ外国語活動ということを実施していくべきではないかということ。それを踏まえまして、12ページ目上にございますように、年間35単位時間の増ということが小学校中学年・高学年で必要になってくるということでございます。
13ページ目下にありますように、小学校、既に様々な弾力的な時間割編成の工夫をしていただいているところでございますけれども、そうした柔軟な「カリキュラム・マネジメント」という中でその時間割設定ということを工夫していただく必要があるということでございます。
いずれにしましても、15ページ目にございますように、今回、時間数の減ということを特定教科について行うわけではないという中で、学校現場にとってはかなりの負担の増ということになりますので、国も含めて、「カリキュラム・マネジメント」の具体的な在り方、指導体制の確立、教材の開発といった支援をしっかりと行っていくという方向性でございます。
続きまして、資料10は、幼児教育部会におきましてもごらんのような論点に沿って、幼児期における特別支援教育の在り方について御議論を頂いておりますということの御紹介でございます。
それから、他WGの状況でございますけれども、資料11をおめくりいただきますと、次期学習指導要領改訂へ向けた検討の進捗状況ということでございます。左側が8月の「論点整理」の指摘事項、「社会に開かれた教育課程」の実現、育成すべき資質・能力の明確化と教育課程の構造化、アクティブ・ラーニングの視点、カリキュラム・マネジメントの実現、それらを踏まえた各教科・科目の見直しということでございますけれども、右側にございますような現状の成果・課題、教育課程の構造化とカリキュラム・マネジメント、育成すべき資質・能力を踏まえた教科等目標と評価の在り方、それから、教育内容の改善・充実、それを実現するための指導の改善・充実や教材の充実、必要な条件整備等について、現在、今月、来月に向けてまとめの段階に入っていただいているところでございます。
詳しくは御紹介申し上げませんが、資料3-2は、総則・評価特別部会や学校種別部会における議論の状況でございます。これについてはほとんど以前御紹介を申し上げた資料になっております。
資料3-3でございますけれども、教科等別WGの議論の状況でございます。
例えばでございますけれども、6ページ目を見ていただきますと、国語WGの検討事項がございますが、7ページ目にございますように、これが将来的には指導要領の目標構造につながってくるわけですけれども、幼・小・中・高を見通した中で資質・能力の三つの柱ということで目標の在り方を整理し直していただいているところでございます。
また、より詳細に、次のページのように、三つの柱に沿った資質・能力の中身、それらを小・中・高を通じてどのように育んでいくかということが、9ページ目、10ページ目でございます。
そして、それらを具体的に育む11ページ目のような学習活動の要素、これが指導内容の構造につながってくるわけでございますけれども、こうした学習活動の要素ということも御議論いただいております。
様々な教科におきましても、11ページ目のような学習過程の在り方ということを御議論いただいておりまして、例えば58ページ目は社会科の学習過程の例がございます。課題把握、課題追究、課題解決、新たな課題へというようなこと。あるいは、算数・数学ですと、80ページ目、81ページ目のような算数・数学の問題発見・解決のプロセスというものがどういうものであり、81ページ目にありますように、そのプロセスの中でどのような思考が働いているのかというような御整理を頂いているところでございます。
こうしたプロセスの中で、特に学習上課題がある、つまずきやすいようなところというのがどのようなところにあるのかということが、教科と特別支援教育をつなぐような議論もさせていただけるような状況でございますので、こうしたプロセスの在り方も踏まえながら、更に特別支援とのつながりということも各教科で深めていただきながら最終的な取りまとめに進んでいきたいと考えております。
なお、資料3-4は高等学校、これは新科目がかなり出来上がっておりますけれども、新科目の構造。2ページ目に高等学校の教科・科目構成について変更となる点でございます。既に「論点整理」でお示しいただいているとおりでございますけれども、こういう構造に沿って新しい科目構造が議論されておりますので、御紹介をさせていただきました。
以上でございます。


【宍戸主査】  ありがとうございました。
それでは、きょうの議題に入りたいと思います。議事次第にありますように、本日は三つの議題を予定しております。一つはキャリア教育の改善・充実、二つが重複障害者等の教育課程の取扱い、三つ目が高等学校における通級による指導に係る教育課程と。三つを用意しておりますが、議題の順序を少し変更させていただきまして、初めに高等学校における通級による指導に係る教育課程の位置付けについて30分ほど、続いてキャリア教育について30分ほど、最後に重複障害者等の教育課程の取扱いについて1時間という予定で御議論いただきたいと思っております。
2時間半と限られた時間ですので、それぞれの議題につきまして可能な限り多くの方に御発言いただきますよう、要点を絞って簡潔にお話しいただくなど、会議の進行に御協力をお願いしたいと思います。
それでは、最初の議題に入りたいと思います。高等学校における通級による指導につきましては、これまでも協力者会議の検討状況を報告してもらうなど、本部会としても議論してまいりました。
最初に、配付資料につきまして事務局から御説明をお願いします。
【田井特別支援教育課専門官】  特別支援教育課専門官の田井と申します。
資料6-1をごらんいただければと思います。本年3月末に「高等学校における通級による指導の制度化及びその充実方策について」の報告が取りまとまりました。本資料はその概要でございます。
報告書の内容につきましては、前回の部会において御報告させていただきましたが、インクルーシブ教育の理念を踏まえた高等学校における特別支援教育の充実の必要性、また、中学校において通級による指導が年々増加している状況を踏まえまして、高等学校においても、通常の教育課程に障害の状態に応じた特別の指導、通級による指導を加えることができるようにすることが必要であるとされております。
指導の対象は、下の四角で囲んでいるところにございますけれども、小・中学校等における通級指導の対象と同一とすることが適当であり、また、指導内容は、特別支援学校の自立活動に相当する指導とすることとされております。
また、四角囲みの一番上のところですが、教育課程上の位置付けについては、本部会を初めとする中央教育審議会の次期学習指導要領の改訂の議論の中で検討することとされております。
これを受けまして、本日、限られた時間ではございますが、御議論をお願いしたいと考えております。
次に、資料6-3をごらんいただければと思います。こちらに御議論いただきたい論点をまとめました。
一つ目の論点は、学習指導要領等における位置付けの在り方についてでございます。
現状といたしまして、小・中学校における通級による指導は、学校教育法施行規則に「障害に応じた特別の指導」と規定されており、また、文部科学省告示において「障害の状態の改善又は克服を目的とする指導」と規定されております。そして、学習指導要領の解説におきまして、指導に当たっては、特別支援学校における指導領域「自立活動」を参考として、個々の児童生徒の障害の状況等に応じて目標・内容を定め、学習活動を実施することが記述されてございます。
この点、下の論点に記載しておりますけれども、本部会の過去の議論におきまして、通級による指導と各教科の指導との関連が明らかになるよう、学習指導要領の総則において、通級による指導の目標・内容や、教育課程の構造、配慮事項等を示すことが必要ではないかという御意見を頂いております。高等学校における通級による指導を含め、検討が必要と考えられますので、この点について御意見を頂ければと思います。
次に、1ページおめくりいただければと思います。二つ目の論点は、学習評価・単位認定の在り方についてでございます。
現状といたしまして、各教科・科目の単位認定は、生徒が学校の定める指導計画に従って履修し、その成果が教科及び科目の目標から見て満足できると認められる場合に行うこととされております。また、総合的な学習の時間の単位認定は、生徒が学校の定める指導計画に沿って履修し、その成果が高等学校学習指導要領に定める目標から見て満足できると認められる場合に行われることとされております。
これらを踏まえまして、通級による指導の単位認定は、生徒が学校の定める個別の指導計画に従って履修し、その成果が個別に設定された目標から見て満足できると認められる場合には、当該高等学校の単位として認定し得ることとしてはどうかと考えております。
なお、障害による学習上又は生活上の困難を改善・克服するための指導という性質上、目標の達成状況を評価する場合には、数値による評価はなじまないのではないかと考えております。
このような考え方について御意見を頂ければと思います。
三つ目の論点につきましては、高等学校教育における共通性と多様性のバランスを踏まえた単位数の在り方についてでございます。
こちらは三つ論点がございまして、一つ目は、通級による指導の単位を必履修教科・科目の単位に替えられるのかどうかという点。二つ目は、卒業要件単位数に加えられるのかという点でございます。この点、必履修教科・科目との関係につきましては、全ての生徒に最低限必要な知識・技能と教養の幅を確保するという共通性を確保するため、学校の創意工夫を生かすための裁量や生徒の選択の幅を拡大するという多様性とのバランスに配慮しつつ、必履修教科・科目が38単位という単位数で設けられた趣旨に鑑みると、通級による指導を行う場合において、必履修教科・科目の単位数を学習指導要領の規定を超えて減らすことを認めることは適当ではないのではないかと考えております。一方で、卒業要件単位数との関係についてでございます。1ページおめくりいただければと思いますけれども、こちらにつきましては、単位認定がなされるのであれば、学校の判断により通級による指導により修得した単位数を、卒業のための単位数に含めることを可能とすることが適当ではないかと考えております。これらの考え方につきまして御意見を頂ければと考えております。
最後に、通級による指導の標準となる単位数についてでございます。現状といたしまして、小・中学校においては、授業時数は年間35単位時間から280単位時間までを標準として定められております。これを高等学校における単位の計算方法に当てはめまして、35単位時間の授業を1単位として計算しますと、年間の単位数は1単位から8単位までとなります。また、中学校における卒業までの総指導時間を高等学校の計算方法に基づき単位に換算しますと、卒業までに87単位を修得するという計算になります。高等学校では卒業までの修得単位数が74単位以上ですので、中学校と同じ比率で通級による指導を行うこととした場合、年間7単位までということになります。これらを踏まえまして、高等学校における指導時間の標準をどのように設定するか、御意見を頂ければと思います。
以上、簡単な御説明になってしまいますが、どうぞ御意見をよろしくお願いいたします。
【宍戸主査】  ありがとうございます。
今、説明がありましたように、論点が五つ用意されております。資料6-3にまとめてあります。それぞれの論点につきまして御意見を頂きたいということです。ここで頂いた御意見あるいは議論を高等学校部会、更に総則・評価部会等へ報告して、今回の学習指導要領の議論の中で生かしたいと考えております。
それでは、いつもと同じように名札を立てて、御意見のある方、お知らせいただければ有り難いと思います。一応、2時45分をめどに議論をしたいと思っています。
まず1番目の論点につきまして何かありましたらお願いします。通級による指導の目標・内容、それから教育課程の構造、配慮事項等を総則において示すということですが、その辺について何か御意見ございますか。
大谷委員、お願いします。
【大谷委員】  大谷です。私は中学校の代表としてきているわけですが、中学校の通級の指導による特別支援学級においては非常に大きな制度の改革だと思っています。今、中学校に在籍する子供たちが高等学校でも更に継続してできるということは、非常にいいことであったと思います。その中で通級の指導と各教科の指導の関連を明らかにというようなことで、目標の一つは障害の状態の改善又は克服を目的とする指導という、それが中心だと思うのですが、今の中学校の通常の通級による指導の大きな課題としては、自立活動よりも各教科の内容の補充の指導に重点が非常に置かれているという。そういうことで、通級による指導の目標の明確化を更に総則の中で明確にしていただければと。各教科の補充だけでなく、さらに、自立活動の目標を更に充実させていただければと思っています。
その他として、小学校から中学校への引継ぎが非常に十分でないと考えています。そういう面では、中学校から高等学校への個別の指導計画であり、中学校と高校の継続を確実にしていく内容を盛り込んでいただければと思っています。
以上です。
【宍戸主査】  ありがとうございます。自立活動に関わる指導ということ、通級による指導の本来の趣旨を明確にするということと、小・中の連携、それから中・高の連携がうまくいくような引継ぎを行うということを、配慮事項として書き込んでほしいということかと思います。
山中委員、お願いします。
【山中委員】  私も大谷委員と同じような意見になりますが、私は小学校の立場からということですけれども、一応、小学校としては、次、中学校があるので、とりあえず安心なのですけれども、やはり親御さんにとっても、更にその先、中学校は3年しかないので、その先、高校だとかどうなるのかというのがとても心配されているところであります。ですので、高校もいろいろなタイプの高校が今できていて、高校改革なども行われているところだと思いますが、一つ、通級による指導というのが手段として新たに制度としてできるというのはとても有り難いことだと思います。その際、高校の方にとっては、特別支援学級や通級による指導も今ないわけですので、高校の方の学習指導要領の総則で通級による指導の目標だとか教育課程の構造等と書いてありますけれども、これらをやはり明確に示していただくことで、高校の先生方全体にも広がっていくのではないかなと思います。是非お願いしたいと思います。
【宍戸主査】  高校の方に書き込んでほしいということかと思います。
それでは、最初の論点につきましてはこのような形で書き込んでいくということをお願いしたいと思います。
2番目の論点ですが、こちらは2ページになりますが、学校の作成する個別の指導計画に従って履修し、その成果が個別に設定された目標から見て満足できると認められる場合には、当該高等学校の単位として認定し得るという形でまとめていってはどうかという考え方ですが、いかがでしょうか。野口委員、お願いします。
【野口委員】  対案があるわけではないので、何とも申し訳ないところですけれども、この個別の指導計画に従ってというところで、この場合、単位認定されるのは何なのだろうというのがちょっと気になってしまいます。生徒の力なのか、それとも指導に当たった教員の力なのかといったところが、特に「個別の」というようになっている時点でとても気になるというところがございます。そういった少し感想に近いものなのですが。
【宍戸主査】  ほかにはいかかでしょうか。大内委員、お願いします。
【大内委員】  基本的にこの論点2で示される考え方でよろしいかと思いますけれども、この個別の指導計画に従うというときに、個別の指導計画そのものをきちんと評価するシステムがないと、これは非常に幅の広い捉え方をしてしまうので、個別の指導計画が妥当であるかどうかということをきちんと判断するといいますか、評価する仕組みというのをもう一方で考えていただきたいと思います。
【宍戸主査】  ありがとうございました。
尾崎委員、お願いします。
【尾崎委員】  大内委員とほぼ同じ意見になりますけれども、個別の指導計画というのはあくまでも履修する上での手段であろうと思います。ですから、履修をする方法を明確にすることは重要だと思うのですが、それをもって、手段があるから認定をするというのは、科目が履修できたかどうかということを踏まえて認定するという考え方をとらないと、ちょっと言語矛盾するのではないかなと思います。ですから、趣旨は大いに賛成ですが、認定ということの考え方については、手段を入れ込むのはあってもいいのですが、やはり必要な科目を評価した上で認定するというような表現が必要ではないかなと思います。
【宍戸主査】  別にこれは個別の指導計画を認定するわけではなくて、それに基づいて行われた指導の成果を認定した上で、その後の方にもありますけれども、様々な高校としての単位認定の中で生かせるようにしたいということの前提だと思います。
品川委員、お願いします。
【品川委員】  ありがとうございます。先ほどの先生方と少し似ているのですが、先ほど言えなかったので。1点目のところですが、私もこれは是非入れていただきたいと思っています。ただ、気を付けなければいけないのは、小・中では通級に通うチャンスがなかった子供たちが、高校に入ってから気付くケースです。あるいは、本人は気付いていたのに学ぶ場がなかった、若しくは教えてくれる先生に出会えなかったというケースがまだまだ全国的にはありますので、それを踏まえてこの総則の中で書いていく。その上で高校でやるときにどうするかという視点がすごく大事だと実感しています。これは、通級に行くということなので当然入ってくるとは思うのですが、やはりしっかりアセスメントをしてから通級に行くというように、アセスメントなのか行動観察なのか分からないのですが、ただ勉強ができないからとか落ち着きがないから通級に行くというふうにならないような方法にしていく必要があると思っています。
二つ目の論点のところなのですが、先生方がおっしゃったのと全く同感なのですけれども、もう一つ是非入れていただきたいと思うのは、高校における通級なわけですから、やはり本人の自己理解というか、本人が自分がなぜここに行くのかということ、やはり小学校の低学年と大きく違うところというのは、自己理解とか気付きがあってから学ぶケースでないとなかなか定着がしづらい。それから、障害者権利条約も本人の自己決定をいかに育てていくかということを言っているわけですから、やはり本人が自分の課題に気付き、本人が納得というか、本人が気付きながら指導計画ができた上でやっていくというように書いていただければよいと思いました。
あと、評価の話は、今、先生方がおっしゃったことなので、割愛します。
以上です。
【宍戸主査】  ありがとうございます。
中田委員、お願いします。
【中田委員】  今の論点ですけれども、品川委員と同じ方向性の話ですが、高校生になりますと、本人がほかの人から言われて「はい、やります」ということはほとんど考えられないと思いますので、本人の参加ということで、この内容が本人もこれを是非やってみたいというような文脈で出てくるということを強調していただければ有り難いと思っています。
【宍戸主査】  ありがとうございます。特に単位を認定するということについては異論はないということで、それにまつわる様々な高校としての配慮をお願いしたいということだと思います。
小枝委員、お願いします。
【小枝委員】  単位認定ということに異論がないという結論になりそうなので、少し申し上げたいと思います。小・中では通級による指導は年度の途中での参加と年度の途中での離脱というか、「もう要らなくなりましたのでよいのではないですか」と、こう辞めるということもできるわけですが、単位化するとそういった自由度が随分と減るということがあるのではないかと思うのです。それから、単位を出すということは、大学で言えば、課程認定を受け持つ、授業を受け持つ教員が課程認定を受けるわけですけれども、こういった高校で通級による指導で単位を出す、それを担当する教員の資格、こういったものを明確にしていかないと、特に高校というのは中学までと違ってそれぞれの子供に合った学校を選んで入ってきますので、通級による指導もその子の学校の通級、また別の子はきっと別な学校の、その子の行っている学校の通級の特徴があるでしょうから、こういった通級による指導を担当できる教員の資格をきちんと明記するということが大事で、そういったことを前提としてこういった単位化というものがあるべきだろうと思います。
以上です。
【宍戸主査】  高校という特色を生かした単位認定、つまり、そこにおける配慮も必要だということで意見を頂きました。
ほかにまだ三つありますので、先に進みたいと思います。三つ目ですが、必履修教科・科目の単位数を学習指導要領の規定を超えて減らすことを認めることは適当でないと。共通性を担保したいということだと思いますが、これについてはいかがでしょうか。それと併せて、卒業の単位にも含めることを可能とするというのが四つ目にありますので、それも含めて御意見を頂ければと思います。
川合委員、お願いします。
【川合委員】  二つ目の方、学校の判断によりうんぬんというところですけれども、その単位数を卒業のための必要単位に含めることについて、基本的には適当だと考えますが、その下に、標準となる単位数等の中に高校における通級による指導を行うには年間7単位までとするというふうなものがありますけれども、年間7単位で3年ずっと通級を受けたとして21単位となりますが、そうなると結構な単位数を通級が取ってしまうのかなという気がします。ですから、その辺り、学校の判断でということでぼかしているのですけれども、何かのガイドラインがあった方がよいという感じがいたしました。
以上です。
【宍戸主査】  ありがとうございます。
そのほかにはいかがですか。中田委員、お願いします。
【中田委員】  今の3番目の論点についてですけれども、論点に入る前の共通性と多様性ということで、高等学校部会の議論では、共通性は全ての生徒に最低必要な知識ということで、具体的には人間関係形成力や主体的行動力など、例えばそういった項目が例として挙げられていて、そこで、先ほどの教科補充と自立活動そのもののようなお話がありましたけれども、自立活動に相当するという議論はどちらに一番関連するのかというと、共通性の方に関連しているのではないかということで、議論の中で、こういう位置付けで通級はあるのだということを共通性と多様性の論理とうまく組み合わせて説明しないと、ちょっとずれてしまうことがあると思っています。
付随して、以前から思っているのですけれども、高等学校で核となるものというのは共通性で決まっているわけですけれども、それでは足りないところを補う形のものを選択科目等でやっている例があって、実はコアとなる部分を一番支えるものが周辺に配置されているという大変奇妙な構造になっていると思うのです。その辺について一定の整理を、今ここでこうしたらということは言えませんけれども、必要ではないかと思っています。自立活動的な部分が周辺部分で多様性のようなところで扱われていて、本体部分の誰しも持っていることが必要なものというところを支えるような形とどう結び付くのかというところです。多様性と共通性のつながりのようなことが、自立活動というところとちょっと論理が違うのではないかという気が前からしていますので、論理的な整理をお願いしたいと思います。
【宍戸主査】  高校の場合、単位制ということを考えなければならないし、多様性と共通性という問題もあるし、選択科目とか学校設定教科・科目とか、様々な特色がありますので、その中で自立活動というものをどのようにコアとして生かしていけるかということを改めて考えていく必要はあると思います。
田中委員、お願いします。
【田中委員】  この(2)の方の「学校の判断により」というところなのですけれども、先ほどの個別の指導計画を評価するシステムが必要という御意見もありましたけれども、この学校の判断が妥当かどうかというのを判断するシステムをやはりきちんと考えておかないと、これは非常に難しいと思います。ですので、これを学習指導要領の中で位置付け、そのお子さんの特性に合った評価をどこで行うのかという、そういう道筋の議論が非常に大切だと考えます。
以上です。
【宍戸主査】  高校の場合は学校の特色づくりというのも一つ大きな特徴というか、課題でもあると思いますけれども、それの中で通級による指導が効果的に行われるためには、学校の判断が妥当かどうかということをチェックという言葉は悪いですけれども、検討するような仕組みも必要ではないかという意見だと思います。
5番目にもう一つありますので、それを含めて御意見を頂ければと思います。高等学校における指導時間の標準というものをどのように考えるか。7単位、それから3年でもし全部やると21単位という、かなり多くの時間を掛けることになるという意見も先ほどありました。
村上委員、お願いします。
【村上委員】  学校による判断の部分ですごく懸念があるのですが、何かというと、前も発言したと思いますが、特別支援教育のコーディネーターはそれなりに配置していて、その部会も委員会もきちんとできています。形としてはできているのですが、昨年度、私どもの大学院の院生が調査しますと、1回程度しか開かれないような状況が現実なのですね。そうなると、どこのところで評価するかというのはいろいろあると思うのですけれども、今、動くとすれば、一番現実的な部分は各学校の中の特別支援教育に関わる部会が、個別の指導計画にせよ、それに関わる単位等にせよ、何らかの形で認定するといいますか、オーソライズする形になると思うのですが、そこの在り方についてのコーディネート及び部会等についての書き方といいますか、それは指導要領の中に書き込めるかどうかは分かりませんけれども、そこについての情報といいますか、注意を喚起するような何らかの手立てがなければ、やりました、終わりました、単位を認定しましたという形になりかねないという危険性があることを感じております。
以上です。
【宍戸主査】  形骸化した運用にならないように、何らかの手立てが必要ではないかという意見だと思います。
野口委員、お願いします。
【野口委員】  直接通級とは関わらない部分なのですけれども、通級による指導が行われるようになったとして、これまでの議論の中でも、全教員が特別支援教育に携わっていくということを考える、それが多分いろいろな議論の中に入っているのだろうと思います。ただ、やはり高校というのは、これまで特殊教育の基盤もなかった中では、通級による指導ができると、むしろその先生方にお任せという雰囲気になってしまいがちになる部分というのは多分にあるという気もします。そうした場合に、例えばですけれども、特別活動などの在り方というのも少し内容的にも見直してみるというのはどうかという考えがあります。内容的には、特に発達障害の子供たちに関しては特別活動で行う内容といいますか、目標といいますか、その辺り、かなり大事な部分になっているのではないかと思いますので、その辺りの視点も必要なのではないかと思っています。
以上です。
【宍戸主査】  ありがとうございます。
中田委員、お願いします。
【中田委員】  最初の論点に関係する話なのですけれども、今の御発言にありましたように、通級の担当の先生にお任せという形が非常に出やすいだろうと私も危惧しています。この審議のまとめの中にも、充実方策という中にもありますけれども、一部の教員が携わるのではなくて、全体の教員が携わるというときに一番大事なのは、通級による指導、その中でどういう支援が行われるかということと、それから、通常学級における各教科で展開される支援、これがどのような結び付きになっているかというのをワンセットにして明快にするという意味で、第1の論点について、特にそこを丁寧に展開する必要があると思っています。何かあったらこちらにという形ではなくて、両方がどのように相互規定的にうまく循環して高校における特別支援教育を展開させていくのかというような図式が分かるような形で運転が明確にされることを願っています。
【宍戸主査】  ありがとうございます。
何人か挙がっておりますので、時間も過ぎておりますので、簡潔にお願いできればと思います。安藤委員からお願いします。
【安藤委員】  個々の論点というよりも、全体を通して一言申し上げたいと思っております。基本的な考え方、提示の仕方というのは、私が、前にもお話ししたとおり、このことについては賛成するものです。しかし先ほどから出ているように、これを実質化するためにはいろんなクリアしなければならない課題があると私は思っておりまして、例えば論点の幾つかの中に、学校が作成する個別の指導計画であるとか、学校の判断により単位を認定するとかという、「学校」という言葉が出てきているのですけれども、では、学校の誰が個別の指導計画を作成するのかということになると、いま一つ明確でない。かなり学校間に差がある。判断というのも誰が主体となって判断するのか、何を基準に判断するのかというのは、やはり難しいところだろうと思うのです。その意味で、これからこのことを具体的に進めていくなら、やはりなかなか理解しにくい自立活動についても、あるいは個別の指導計画についても、分かりやすく理解していただくために必要なことではないかと思っています。
翻って、では小学校・中学校での通級の指導が実質的に行われているのかという話になると、これはまた別で、高等学校の通級の議論がせっかく起きてきましたので、今後、通級全体を通した位置付けなど、もう少し整合するような考え方などもこれから必要になるのではないかとは思っております。
以上です。
【宍戸主査】  ありがとうございます。
横倉委員、お願いします。
【横倉委員】  全体でこのような方向で是非推進していっていただきたいと本当に思います。高校の中で通級指導が議論されて実際に制度化されていくというのは本当に大事なことで、是非この方向で推進をしていただきたいということと、もう一つ、中田委員もおっしゃっていましたけれども、高校の中の授業改善の視点でこれが語られないとやはり通級だけがゴールになってしまって、そうではないと思うのですよね。やはり本丸は授業改善だと思いますので、そこの部分を是非総則の中に位置付けていただくという、そういうこともお願いをしたいと思います。
以上です。
【宍戸主査】  それでは、大谷委員と大内委員が挙がっていますので、簡潔にお願いします。
【大谷委員】  今話されている内容は中学校の課題でもあると思うのです。中学校はなぜうまくいってないのかと。校内支援体制もきっちりできているけれども、確実に運営されてない。やはり中学校での課題を明確にして、これを参考に高校でもというような視点が必要ではないかなと。これは、授業時数もそうだと思います。小・中学校でのこの1から8という単位数が本当にどういう現状があるのか、課題があるのか、これを参考にして高校でも考えるべきだと思います。
以上です。
【宍戸主査】  現状を踏まえて、参考にして単位数等も検討していただきたいということかと思います。
大内委員、お願いします。
【大内委員】  高等学校における指導時間の標準をどのように設定するかというところが最後の論点で示されていますけれども、卒業までの修得単位数ということを考えると、本人が希望したり認められたりして通級による指導を受けることによってある量の単位数が認められた子供の場合と、そういう配慮を受けないまま、通常の中で学習してきて単位が認められないために卒業認定数に足りないというような子供が出てくる可能性があるわけですけれども、そういう逆転現象みたいなものが生じないような妥当な設定をしていくということが非常に重要なことではないかなと考えております。
【宍戸主査】  対象とするかしないか、それから、単位を幾つにするかとか、学校としての判断をどうするかとか、様々な点で条件整備をしなきゃいけないところが出てくるのではないかということかと思います。
それでは、今、いろいろ意見を頂きました高校における通級による指導につきましては、事務局の方で頂いた意見をまとめていただいて、今度、高等学校教育部会の方で更にまた検討していただくようにしたいと思います。


それでは、本日二つ目の議題に移りたいと思います。キャリア教育の改善・充実についてということです。
配付資料につきまして事務局から説明をお願いいたします。
【太田特別支援教育課課長補佐】  それでは、配付資料の3-1及び3-2を使って御説明させていただきます。時間が限られておりますので、簡潔に御説明させていただきます。
まず3-1でございますが、「キャリア教育の改善・充実について」ということで、1.に現在の学習指導要領において――これは平成21年に告示したものでございますが、その中でキャリア教育・職業教育の充実を図っているところでございます。特に高等部学習指導要領におきまして、就業体験の機会の充実ですとか関係機関との連携、個別の教育支援計画の作成ですとか、あるいは知的障害者を教育する特別支援学校高等部の専門教科としての「福祉」を新設するなどの改善を図ったところでございます。具体的には、枠囲みの中に特別支援学校高等部学習指導要領の抜粋を付けておりますが、下線を引いたところが充実したところでございまして、4の(3)を見ていただきますと、「キャリア教育を推進するために」ということで、「キャリア教育」という用語も使用しているところでございます。
1ページおめくりいただきまして、裏面には、特別支援学校の小学部・中学部の学習指導要領及び解説におけるキャリア発達についての関連する部分を掲載してございます。ごらんいただきますと、現在の小学部・中学部の学習指導要領におきましては、キャリア教育ということは明記はしてございません。キャリア教育に関連する内容ということでこのような形で書いておりますが、ちょうど中段より下ぐらいの枠囲みにありますが、解説の中で「キャリア教育の一環として」というような形で表現をしているところでございます。御案内の先生も多いかと思いますが、平成23年に、ちょうどこのページの一番下の段に掲げさせていただいておりますが、中央教育審議会で「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について」という答申をまとめてございます。その中で、キャリア教育とは、「一人一人の社会的・職業的自立に向け、必要な基盤となる能力や態度を育てることを通して、キャリア発達を促す教育」として、さらに、キャリア発達とは、「社会の中で自分の役割を果たしながら、自分らしい生き方を実現していく過程」ということを示しているところでございます。
次のページ以降は、ページ番号が振ってなくて恐縮でございますが、特別支援学校高等部の卒業者の状況の資料を掲載しております。詳しい紹介は省略させていただきます。
この3-1の資料の、ページがなくて本当に恐縮でございますが、後ろから4枚をめくっていただきますと、ここから、具体的に特別支援学校ではどのようなキャリア教育・就労支援の取組を行っているかということで、実践事例を紹介させていただいております。これは、現在、私ども文部科学省の方でキャリア教育・就労支援等の充実事業というものを実施しておりますが、その指定地域の一つでございます山形県での取組でございます。山形県では山形県立鶴岡高等養護学校を中心に取り組んでいただいておりますが、ここでは、就労支援コーディネーターというものを配置しまして、地域の企業ですとかハローワークや障害者就業・生活支援センターなどと連携しながら、子供たちへの職業のための現場実習などに取り組んでいただいているところでございます。
同様に、裏面に富山県の事例を紹介させていただいております。
更に少し進んでいただきまして、最後の2枚でございますが、今度は小学部・中学部の事例を紹介させていただいております。これは東京都の指導資料から紹介させていただいているものでございますが、例えば小学部の授業実践の事例として、小学部でも、ここの事例ではキャリア教育において育てたい力というものを学校としてまず設定をしまして、その中で意思決定能力ですとか情報活用能力、人間関係形成能力、将来設計能力といった四つの柱で学校としての育てたい力を明確にした上で、具体的にどの教科で育成していくかというような指導計画をきちんと立てて取り組んでいただいている事例を、小学部・中学部の事例として紹介させていただいております。
続きまして、資料3-2をごらんいただければと思います。この1枚の資料では、こういったキャリア教育の現実を踏まえて、このような改善・充実の方向性で考えていってはどうかということを事務局の方でまとめさせていただいた資料でございます。
左側に成果ということで紹介させていただいておりますが、成果といたしまして、各校で地域等と連携した実際的な指導が充実してきたですとか、児童生徒が目的意識を持って学習意欲を高めているというような取組といったものが成果として挙がっている一方、課題のところに掲げておりますが、ライフキャリアの充実にも力点を置いて一貫したキャリア教育を実施する必要があるといったようなことですとか、小学部段階ではまだキャリア教育に対する意識が少し弱いといったような指摘がございます。さらに、重度の児童生徒への取組をどうしていくのかといったことが課題として掲げられているところでございます。
こういったことを踏まえまして、右側の下の段にありますが、改善・充実の方向性ということで4点ほど、事務局の方でこういったことが必要なのではないかということを掲げさせていただいております。1点目が、幼稚部、小学部段階から自分らしい生き方を実現していく過程であるキャリア発達を促す「キャリア教育の推進」を明確にしていく必要があるのではないかということを掲げさせていただいております。2点目が、障害の程度が重度の児童生徒のキャリア教育の考え方を示していくこと。それから3点目としまして、キャリア発達の視点を踏まえた学習状況評価の充実といった点。それから4点目としまして、キャリア発達を支援するためのカリキュラム・マネジメント(教育活動全体への働き掛ける仕組み)を考える必要があるのではないかといったような4点を改善・充実の方向性として掲げさせていただいております。
こういった方向性につきまして、委員の皆様より、具体的にこういったような取組が考えられるのではないかといったことを是非御意見を頂ければと思っております。どうかよろしくお願いいたします。
以上でございます。
【宍戸主査】  ありがとうございます。
それでは、これからキャリア教育の改善・充実について議論したいと思います。3-1で現状、取組状況も含めて資料が用意されております。それを受けまして、3-2で今後の方向性ということで四つの視点がまとめられております。その四つの改善・充実の方向性を中心に御意見を頂ければと思いますが、時間としては一応3時25分ぐらいをめどに進めたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
では、御意見のある方、名札をお立てください。堀江委員、お願いします。
【堀江委員】  それでは、就労支援の立場から少しお話をさせていただきたいと思います。
キャリア教育という言葉を小さなお子さんを対象に教育されている方からすると、遠い将来のお話というふうに聞こえるということで、どちらかというと就職のための支援というところで着目されがちなのだと思うのですけど、社会で生きるというところをもう少し視点としてはっきりしていただいた方がよいと思うのです。
もう一つ、私たちが成人期から関わってきますと、障害の重度・軽度に関わらず、その方が自分で意思を決定していくということの積み重ねが非常に少ない人たちが多いと。就職支援に向けては一生懸命やっていらっしゃるのですけれども、意思決定をしてきた経験が生活の中で余りないということと、重度の方に関しても、軽度でも認知的にちょっと偏りがある方ですと、やはり意思を疎通させる方法というのを確立されてない方が非常に多くて、お仕事ができない人あるいは社会で生きることができない人という、そういうような評価を受けている方がたくさんいらっしゃると思いますので、キャリア教育の前提として、その方が意思疎通をその方なりのレベルでどういう方法でできるかということをきちんと確立することというのが前提になければいけないなと思っています。
また、この4月1日から障害者差別解消法の中で、障害者雇用促進法の方では合理的配慮ということでスタートしました。合理的配慮は自ら求めるというところからスタートなのですが、やはり皆さん、自分から自分の大変さ、困難さを事業主に伝える、職場の方に伝える、ここはとても難しい。周りの方もまとめ切らないというところがありまして、これも就労支援の段階に来られてからできることではなくて、やはり育ちの中で蓄積をされていった方がより生きやすいというようになると思いますので、そういった点を考慮していただければと思います。
以上です。
【宍戸主査】  改善・充実の方向性、1番目、2番目辺りに関しまして、意思の表明あるいは意思の疎通、そして選択、そういう機会を小さいうちから作っていくようなことが必要ではないかという意見かと思います。
尾崎委員、お願いします。
【尾崎委員】  特別支援教育におけるキャリア教育というのは、私は、特別支援教育の今後の教育課程を考える上で核になる考え方になるのではないかと思っています。理由は、今後、特別支援教育も含め、共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システムを構築しなければいけないというのがこの教育課程部会の大きな課題になっていくわけです。その際に、そういう特別支援教育を推進するためにも、共生社会の実現に向けた取組を一歩一歩充実しなければいけない。そのときにキャリア教育というのが関連するのではないかと思います。特に共生社会というのは、これまでも必ずしも十分に社会参加できるような環境になかった障害者の人たちが積極的に参加・貢献していくという、そういうことができる社会を作るということです。そのためのキャリア教育が重要ではないかと思います。
一方、中教審では、キャリア教育については、「一人一人の社会的・職業的自立に向け、必要な基盤となる能力や態度を育てることを通して、キャリア発達を促す教育」だと言っているのです。社会的・職業的自立だけではなくて、そこには力点はあるのですが、一方で、基本的にはやはりキャリア発達を促す教育だと言っていまして、そうすると、障害のある人たちも自分が社会参加・貢献していくのだと、そういうキャリア発達を促す教育というのは非常に重要になるのではないかと思っているわけです。そういうことをまず思っているということです。
それから、改善・充実の方向の中に幾つか書いてあるのですが、最初の中点ですけれども、私は、キャリア教育の定義の中にもありますように、まずは、障害が重くても、あるいは軽くてもなのですが、どんな障害のある方も社会の中で自分の役割を果たしながら自分らしい生き方を実現するということが、これから共生社会を作っていく上で重要だろうと思っています。ですから、自分らしい生き方も重要なのですが、さらに、社会の中で自分の役割を果たすと、そういう視点もきちっと入れてキャリア教育を充実していくことが重要ではないかと思います。それから、障害の重い方に対するキャリア教育も同じで、障害の重い方も社会の中で何らかの役割を果たしているのだと、そういうことが実感できるような教育を積み上げていくということが重要ではないかと思います。
それから、最後のカリキュラム・マネジメントのことと、学習状況の評価ですけれども、これも、今議論されている育成すべき資質・能力にのっとった学習評価の在り方という、例えば何を知っているのか、何ができるのか、あるいは知っていることをどうやって使うのか、そして、これからどういう生き方をしていくのか、そういう観点で学習評価をしていくわけですけれども、正にそれはキャリア教育の評価でもあると私は思います。そこを特別支援教育においても重要視して積み上げていくことが重要ではないかと考えます。
以上です。
【宍戸主査】  ありがとうございます。キャリア教育の必要性を障害のあるお子さんにとっての考えとしてどのように理念的にまとめておくかということも必要だという意見かと思います。
村上委員、お願いします。
【村上委員】  3点ほどです。
キャリア教育について、特別支援教育あるいは特殊教育においては、本来的に私ども関わっている者にとってはやり続けてきたことではないだろうかということで、尾崎先生がおっしゃったことがより明確な形でこれから先展開するのだろうということに、期待します。
それに関わって2点目なのですが、では、実際に教育・学校現場の中でどうしているのかということを見ると、キャリア教育と職業教育というか、職業的な様々な作業を含めた活動と、そして自立活動が混然一体と言ったらいいのでしょうか、何か失礼な言い方なのですけれども、ある側面から見ると確かにキャリア教育的な側面があるけれども、実質的には就職指導あるいは作業学習をやっているではないかという、そういう側面を否定できません。では、それはどこに関わるかというと、自立活動の幾つかの項目と連動する。それも当然のことですけれども、それらがなかなか整理されない形で展開されていることに危惧があります。学校の現場では恐らくその切り分けというか、あるいはそれをいかに整理するかということが非常に難しい状況が続いていると思いますので、その視点を提供することは必要だろうと思います。
そんな中で、では、職業あるいは社会的自立ということを考えると、それは確かに、この先どのように育っていくかということを教師として親と子供たちが一緒に活動する中で展開するということはものすごく重要なことなのですが、子供たちにとっては、先ほど堀江先生がおっしゃったように、なかなか自分の将来を予見できない子供たち、特に知的障害の子供たちはそうです。そうなると、予見する枠組みというか、そういうものを学校にいる時点で幾つか、将来、自分の先輩はこのように育っていったとか、あるいは、その背中を見ると将来はこういうふうに自分も社会に出ていくことが現実のものになるのだというようなことが理解できるような、そういう仕組みと言ったらいいのでしょうか、単に見学に行くとかそういうところだけではなくて、身近な先輩が社会に出ていく、その姿を高等部の最初の段階辺りから見続けるという、そのようなカリキュラムというか、そういう指導が必要なのではないかと思います。
一つの例ですけれども、そちらにいる野口委員の院生で、その後、私が引き継いだ院生が、附属の教員ですけれども、やった実践があります。学校の中で活動するのですけれども、授業ではない形で先輩・後輩が集まる機会を年間5回ほど活用して、高等部を卒業した先輩に出会うと。在学生は将来の姿を、そして卒業した先輩たちは将来来るであろう自分の後輩と交流すると。そういう場面が、これから出ていく高等部の子供たちにとっても、出ていった卒業生にとっても、非常に心のよりどころ、社会で活動する上での心のよりどころになるというような意見が出てきて、論文にまとめた経緯があります。そういう多面的な活動がカリキュラムの中に盛り込まれる必要があるのではないかと考えています。
以上です。
【宍戸主査】  ありがとうございます。カリキュラム・マネジメントに関わる一つの視点も御提示いただきましたが、あとは、やはりキャリア教育の理念と現実、教科あるいは私ども自立活動、そういう中での指導が整理されていない部分もあるということで、そういうものが今後の理念を生かすためにどのように整理できるかというところで、学習指導要領あるいは解説の示し方で工夫を頂けるといいという意見かと思いました。
砥抦委員、お願いします。
【砥抦委員】  私は小学校の方が長かったものですから、この改善・充実の方向性の左下の、例えば、小学部ではキャリア教育と聞いただけで、小学部には関係ないと、そういう意見もあるという、それがあって、実はキャリア教育のいろんな要素を拾い出してマトリックスにしたことがあったのですが、小学校段階からやはりそれは、「ちゃんと挨拶しましょう」から始まって、お父さんやお母さんの仕事の中身を理解しながら、自分がどんな将来の夢や希望を持っているかというようなことも、ふだんの指導の中でそんなに意図的にキャリア教育と言っているわけではないのですが、実際の要素とすると小学校段階でもいろんな要素が、将来につながるものがいろいろあるのです。だから、問題は、子供自身というよりは、指導する先生自体がそういうことをどこまで意識して、あるいは全体を体系付けて、どこの時期にこういうことを指導するということがどこまで計画が立てられているかというところが一つ決め手ではないかと思って、これは今、小学校の話なのですが、これは特別支援学校の中でもやはり小学部と高等部ではまた少し温度差があるということは聞いていますけれども、やはりそれは指導者の意識の問題というのは大きいのではないかということ、そのことだけ言いたかったものですから。
以上です。
【宍戸主査】  ありがとうございます。
一木委員、お願いします。
【一木委員】  カリキュラム・マネジメントについて1点です。先ほど堀江委員から御指摘を頂いたところですけれども、キャリア教育の定義を鑑みれば、我々が実施したカリキュラムの評価の材料として、日々の学習評価ですとか進路先の状況だけをもって評価することはできないだろうと。卒業後の生活を送る本人ですとか関わる方の評価を踏まえてカリキュラム・マネジメントの評価材料としていくということが大事かと思います。
以上です。
【宍戸主査】  ありがとうございます。
加藤委員、お願いします。
【加藤委員】  今までの委員の先生方の発言と少し重なるかもしれませんが、特に私自身は就学前の子供たちの支援を中心にやっている者として、この問題について一言申し述べさせていただきたいと思うのですが、彼らは、最終的に社会に参加していく、社会の一員として生きていくということのために必要な様々なスキルというのは、別に学校段階だけではなくて、その前からある意味では芽生えて、育ってきていると思うのです。そういう意味では、ここにも幼稚部という言葉がありますが、その段階から子供たちの自己決定だとか主体性だとか意思の表明だとか、そういうようなことの力を育むということは是非やるべきだと思います。なぜならば、彼らのそうした様々なソーシャルスキルというのは、多分ほかの方たちに比べるととても長い時間あるいは多くの経験・場が必要だと思うのです。そういう意味では、空間的に広がるだけではなくて、時間的にも上下に延ばしていくという意味では、一定の早期段階からそういうことをしっかりと経験としてカリキュラムとして組み立てていくということにはとても大きな意味があると考えます。
【宍戸主査】  ありがとうございます。
山中委員、お願いします。
【山中委員】  私も小学校の立場からということなのですが、私、特別支援学級の方としましては、特別支援学校の学習指導要領を参考にするので、是非、小学部・中学部の学習指導要領、解説ではなくて学習指導要領にもキャリア教育の用語というものを入れていただければと思います。キャリア教育、先ほどから小学校段階でも大事という話が出ていますけれども、ただの職業教育とは違って、これから先、将来生き抜く力を付けていくため、それから、今の子供たちが大人になったときには今の職業種が大分なくなっているという状況が言われているわけですけれども、その先のことを考えたときにも、単なる職業教育ということではなくて、将来、社会に参加するというような形で自分の生き方を考えられるような子供を育てていく。それは障害のある子も同じだと思うので、是非、小学部段階・中学部段階にもキャリア教育について、学習指導要領の中に入れていただければと思います。
【宍戸主査】  ありがとうございます。
野口委員、お願いします。
【野口委員】  先ほど村上委員からお話があったことと同じようなことを最初は言おうと思っていたのですけれども、将来、違った世界にいる自分の姿を思い描くと言ったらよいのか、そこで自分がどのように生活しているのかということを思い描いていくというのが非常に大事なことと思っています。それは高等部修了後だけではなく、例えば小学部のときの中学部、中学部のときの高等部、そういったところで思い描いていけるということが必要になってくるのではないかという気がしています。そういった意味では、各学部段階でどうするというだけではなくて、学部間のつながりをどう意識していくかということも必要になってくるのかという気がしています。現在、各学部あるいは小・中でもよいのですけれども、スムーズな接続ということがかなり言われているわけですけれども、場合によってはある程度ギャップがあるということも必要なのではないか。ギャップというのは、例えば小学部ではやはり中学部とは違った世界があってといったことを少し見やすくすると言ったらよいのか、そういったことも必要になってくるのではないかと思っています。先ほど村上委員から紹介のあった例で言いますと、高等部に入ればあの会に参加できるということを例えば中学部の子供たちが口にしているということなどがあります。そういったことが例えば必要になってくるのではないかということです。
以上です。
【宍戸主査】  接続に関しては、メリハリのある接続というか、それも一つ大事ではないかという視点かと思います。
古川先生、お願いします。
【古川主査代理】  方向性で書いてあるのですけれども、障害の程度が非常に重度の子供の場合のキャリア教育ということなのですが、やはり障害が重い子供の場合に将来的に職業的自立がうんぬんというのはなかなか難しい話なのですけれども、ただ、現実、重度の子供たちが卒業した後にどういった生き方をしていくのかということは、キャリア発達の視点からすごく大切なことだと思うのです。自分らしく、とにかく生き方を実現していくようなことを、では重度だから必要ないのかということではなくて、実は重度の子供たちの教育の根底というのはやはりそこにあるのではないかという気がします。だから、卒業後の生活、卒業後の姿というのを見据えながら、それを小学部の段階から、段階的にどのようなキャリア発達の視点で、内容的にも、例えば教科指導の中でも、あるいは自立活動の指導の中でも、そういった観点を見ながら段階的に学校教育活動全体の中で付けていくということはすごく大切だと思いますので、是非こういった形での重度の子供たちへのキャリア発達の視点を促すこと、あるいはそれをカリキュラム・マネジメントとして教育活動全体の中での働き掛ける仕組みというのを学校の中で考えていくことが大切だと思っておりますので、そういったことを是非示していただければと思ったところです。
【宍戸主査】  ありがとうございます。
中田委員、お願いします。
【中田委員】  特別支援学校高等部と並んで高等学校の方でこのテーマを扱いますと、特別支援学校でも同じことが出てくると思うのですが、障害のみに対応する個体モデル型の発想ではなくて、かなり環境モデルで考えないとやっていけない状態があります。障害があって、しかもかなり貧困であり、生活保護を受けているという子、そういう子が一番困難な障壁があるわけなので、そういう子に対しては、キャリア発達を支援する際にどこに障壁があるのかというところも含めて、学校から社会に移行支援ということがあります。トランジションですね。移行支援を学校だけではなくて機関、NPOやサポートステーションなどが連携してやっていくようなプログラムを作成して、それを実施していくというような記述が含まれませんと、学校が何か教え込めば、将来の思いがしっかりすれば実現するかというのは、そういうことは残念ながら余りないようですので、そういう環境をつくっていくためにどのような移行支援計画が必要なのかという観点が不可欠であると思っています。
以上です。
【宍戸主査】  ありがとうございます。
田中委員、お願いします。
【田中委員】  二つお話ししたいと思います。
一つは、小・中学校の特別支援学級なのですけれども、このキャリア教育という点で考えても、例えば小学校の生活単元学習から今度は中学校の作業学習に継続していく中で、教員たちが、その辺りの継続性、それから学部の中の小学校・中学校の系統性、これが分からない中で進んでいる現在の市区町村立の特別支援学級の状況があると思います。ですので、その点について先ほどから意見が出ておりますが、系統性を持って精選していくということが非常に大事だと思います。
二つ目なのですが、市区町村の教育委員会の立場からなのですけれども、私がおります三鷹市は、通常の学級のレベルでコミュニティスクールを基盤とした小・中一貫教育をしておりまして、その中で地域の方のお助けを頂きながら子供たちのキャリア教育を実践しています。そういう点で見ますと、都道府県立が多い特別支援学校のキャリア教育も、やはりそのお子さんたちの地域との連携の中でのキャリア教育が必要になると思います。そうしたときに、例えば東京都でやっている復籍事業のようなものになると思うのですが、居住する地域の教育委員会や小・中学校との連携の中で、また、今の中田委員のお話にもありましたように、そのお子さんの家庭背景等も考えたキャリア教育という視点であれば、その地域の福祉や医療との連携も必要になってくると思いますので、その辺りの地域連携の視点、都道府県とか市区町村を越えたそのお子さんに対する支援という観点でのこれからの整理も必要かと考えます。
以上です。
【宍戸主査】  ありがとうございます。
品川委員、お願いします。
【品川委員】  幾つか先生方がもう既におっしゃったことと重なるのですが、2点ほど申し上げたいと思います。
特に今、重度の人だけではなくて、キャリア教育については、私は、反社会的行動とか非社会的行動をとる障害のある人たち、それも言ってみればボーダー、あるいはそれよりもちょっと低いぐらいの人たちのことを踏まえて少しお話ししたいと思います。
まず、その前提としてなんですが、先ほどから、キャリア教育とはキャリア発達を支援する教育のことであると出ているのですけれど、やはりこれが分かりづらい大前提かと。これ、皆さんうなずいていらっしゃるから。いろんな資料を読むと、これは中教審の前の企画特別部会のところにもしっかり「一人一人の社会的自立を踏まえて」と書いてあるのですけど、誰もそこは読まないのですね、現場の人は。ということは、やはり横文字ではなくて和語で説明する必要が非常にあると思っています。ここの議論は、今、皆さん、キャリア教育イコール就労教育ではないとおっしゃっているのですが、実際にそう思っているから、事務局から出ている資料の左側に「職業教育は小学部に関係ない」という矛盾した表現がやはり出てくるのだろうと思うのです。だから、ここを、キャリア教育とはこういうことであるということをいま一度しっかりとみんなが読むものに書いておく必要があると思っています。その中にはもちろん就労も入ってくるでしょうけれども、やはりいかに人生行路を豊かに生きていくのかということなのです。
そうすると、次に出てくる課題は、先ほどどなたかおっしゃっていましたが、やはり自立活動との境が非常に不明瞭というか、正に混然一体としてくることかと考えています。だからこそ、しかも機能不全のある子供たちはやはり指導の定着にどうしても時間が掛かるからこそ、本当は幼稚部の段階から将来の自立・社会参加、私の言う自立というのは、前回もお話ししましたが、生活自立も入るし、経済的自立、社会的自立、そして精神的自立です、それらをターゲティングしながら指導していくということが改めて必要なのだろうと思っています。
というのは、こういった事例をいろんな自治体の事例を拝見して、私自身も随分取材するのですが、よくあるケースは、例えば知的ボーダーのお子さん、でも、自閉症スペクトラムは持っていらっしゃると、学校でやった、あるいはどこかの体験で学んだやり方と実際に自分が入ったところのやり方が違うと、もうそこで不適応を起こしてしまうというケースが割とよく見られたりします。それから、やはり社会に出ていくということは就労だけでは当然ないわけで、地域で生きていくということも踏まえると、実は今頂いた資料にはどこにも書いてないのですが、一番大事なのはやはりきちんと規範意識があるとか、ルールを守れるとか、共同できるということなのです。それは従来、自立活動でやっていらっしゃると思うのですけれど、やはりそれを改めてキャリアというか、人生行路の中でも考えていくような書きぶりにする必要があると考えます。
三つ目なのですが、それは先ほど山中先生もおっしゃっていましたが、前回も言いましたけれども、本当に、今ここにある資料の特別支援教育の現状の丸3というところに書いてあるお仕事が10年後あるのかという前提でやはり考えていかないと、今、一生懸命我々が議論していても、社会はものすごい勢いで変わっていくということを改めて踏まえると、では何が核になるのかということ、就労体験が本当にそれで生きていく力になるのかということは、念頭に置く必要があると思っています。
以上です。
【宍戸主査】  ありがとうございます。改善・充実の方向性、こちらは恐らく解説あるいは指導書とか、そういうレベルで具体的にキャリア教育の内容を伝えていく作業になるかと思います。その際には、やはり品川委員がおっしゃったように、キャリア発達を支援するということをある意味砕いた分かりやすい表現とか、そういうことにチャレンジしていただけると有り難いと思います。
それでは、時間も迫っていますので、川合委員、大谷委員ということで、とりあえずキャリアの方は打ち切りたいと思います。
【川合委員】  キャリア教育についてなのですけれども、やはりキャリア発達を促すにはキャリアの意識というところが大事かと思います。それは当たり前だろうと皆さん思われるとは思うのですけれども、その辺を明確に書いていないと、キャリア発達というものをハード面だけの発達と捉えてしまって、何かスキルを付けなければというように現場が捉えてしまう可能性があると思っております。
キャリア意識となってきますと、社会の中でということを目指すときに、例えば小学校段階では学校も社会ですし、家庭も社会ですし、そう考えると、例えば何かお手伝いしてお駄賃をもらってというのも一つのキャリア形成というか、キャリア意識を芽生えさせる何かのきっかけの事柄になると思うのです。そういった形で所属する集団に所属していてうれしいと思えるであるとか、自分自身が自己有用感を得られるであるとか、そういったところの育成もキャリア発達の中で目指していかないといけないというところも何か見える形にすると、よりソフト面というところも両方バランスよく現場で取り組んでいただけるのではないかと思いました。
以上です。
【宍戸主査】  ありがとうございます。
大谷委員、お願いします。
【大谷委員】  改善・充実の方向性の1番上の中点の「改善の各教科等の改善・充実の方向性を踏まえた検討」という点において、アクティブ・ラーニングの中の三つの視点の中で対話的な学びであるとか主体的な学び、これを、特別支援学校なりの対話的な学びとは、主体的な学びはと、そういうキャリア教育の視点の中で具体的に特別支援教育の中でこういう対話的な学びができるのではないかと。主体的な学びをこのようなキャリア教育の中で特別支援教育の幼稚部として、小学部として、系統的にそうした具体的な内容が説明されるとよいと思います。
以上です。
【宍戸主査】  具体的に説明をお願いしたいという意見かと思います。
それでは、キャリア教育の改善・充実についての議論はここで終了とさせていただきたいと思います。


三つ目の議題であります。重複障害者等の教育課程の取扱いについてということで、こちらについて議論を行いたいと思います。
本日は、一木委員から重複障害者等の教育課程の取扱いについてという御発表をお願いしております。それでは、一木委員、御発表をお願いします。10分程度、短い時間ですが、よろしくお願いいたします。
【一木委員】  はい、よろしくお願いいたします。お話を頂いてから準備する時間を十分に確保できずに、データ等、もっとよりよいものを収集できればよかった部分もあるかと思いますが、御了承ください。
では、大きくは3点、プラス1点という形でお話ししていきたいと思います。
「重複障害者等に関する教育課程の取扱い」、これを適用できるというのは特別支援学校ならではということになりますが、結果、実施されている教育内容の現状と課題ということでお話ししたいと思います。
まず1点目です。知的障害者である児童又は生徒に対する教育を行う特別支援学校の各教科、いわゆる知的障害の各教科です。こちらを学ぶ子供たちの実態がどうかということについてまず述べます。
そちらに幾つかデータをお示ししていますけれども、知的障害の各教科を学ぶ子供たちの実態が非常に多様化し、できた当初に比べれば重度化しているという現状があると。
では、それに対して学習指導要領の改訂ではどのような検討がなされてきたかということが中点の3点目ですけれども、昭和45年告示の学習指導要領以降、障害の重度・重複化に対応した改訂というものはなされてきましたが、その改訂の中心というのは、知的障害への各教科の目標、つまり各教科でどのような力を子供たちに付けさせたいのかということについてではなくて、何を扱うかという内容に関するものであったという経緯がございます。ですので、現在も、小学部・中学部・高等部で各教科の目標一つずつしかないというのが現状になっています。結果として、知的障害の各教科を指導する現場においては、個々の子供の実態把握ですとか、指導目標設定の際に知的障害の各教科の目標に照らすという作業はしはするのですけれども、十分な指標にはなり得ないというような中で悩む現状があるということです。
たとえを一つ挙げますと、小学部の目標に迫る段階のお子さんです。悩む段階に照らすと1段階相当かと思うのだけれども、今年も1段階、来年も1段階。ただ、この子の中では確かに成長しているという手応えを教師は感じているのだけれども、指導要領に照らすとなかなか次の段階というような形で捉えられないという、そういった現状があると。
枠の中ですけれども、発達の初期段階に関する研究というのも多々出ておりますので、そういった知見も生かしながら、現場の先生方が実態把握や目標設定に活用できる教科の目標の系統性をより細かく具体的に示していくということは重要ではないかということがまず1点です。
それから、その下です。下でお伝えしたいことは、子供たちが就学先で、ずっと特別支援学校ということではなくて、特別支援学級から特別支援学校、通常学級から特別支援学校というケースも少なからずあると。高等部においては、全知長の調査ですけれども、療育手帳程度別の状況は軽度判定が小学部・中学部に対して非常に多いという現状もあります。実際は、少数ながら中学校の通常学級から、つまり通常学級を学んでいた子供が入ってくるというケースもあるという現状がございます。そうすると、子供が学びの場を一つのところではなくて幾つか転々とするという現状を踏まえますと、それでも、その子にとって連続性のあるカリキュラムということを我々は追求していくということになれば、多様な教育の場で指導を担うそれぞれの教師が、つまり、通常学級の先生ですとか特別支援学級の先生、さらには特別支援学校の先生です。それぞれの先生方が教科を学ぶ子供の今持てる力、実態把握ですとか、次にどの水準を目指したらよいのかと目標設定の際によりどころとする指標、つまり各教科の目標の系統性ということになりますが、これを連続性のあるものとして示すことが必要な状況にあるのではないかと。現行ですと、通常の教科を学んでいて知的の教科にということになると、一体どの段階に照らしたらいいのかというようなことが学校の現場の先生方は悩まれるというような現状がございます。ですので、あらゆる教科の一本化ということが時代として求められる現状にあるのではないかと思います。
また、1点添えますと、知的障害以外の特別支援学校で下学年適用・下学部適用ということが可能になります。通常の教科は学んでいるのだけれども、学年層では難しいと。そういったときに、学年進行に合わせて下学年適用の子供が下学部適用になり、高等部段階になるときには下学部適用というよりは知的代替の方がいいのではないかということが生じます。そうした中で、では、教科の学びの連続性といったときに、先ほどと同様のことが起こります。通常の教科と知的の教科の連続性をどのように捉えたらいいのだろうかというようなところが現場の悩みとしてあると。そういった意味からも教科の一本化ということを模索していくということは必要ではないかという、それがまず1点目です。
続いて、裏面に移ります。2点目です。今度は、小・中・高等学校の各教科を学んでいる子供たちに目を向けたいと思います。以下三つのレベルを意識してお話ししたいと思っています。まずは各教師の授業レベル、二つ目は各学校が取り組むカリキュラム編成のレベル、3点目は、では国は何を示すかというレベルです。
まず1点目、授業レベル、各教師が取り組むことですけれども、小さい図で申し訳ありません。一番左側の図、これは小・中学校等の通常学級における授業の目標はどのように設定するかということをイメージ図として示したものです。まず、縦軸として教科の目標の系統性を踏まえて授業の目標――緑の部分ですけれども、設定するということになります。通常の教科というものも子供の生活年齢を加味して目標の系統性というのは整理されているという説明になっています。それを踏まえながら、実際の授業においては個々の子供の特性を踏まえて指導していくということになります。
続いて、真ん中の図です。特別支援学校における小・中学校等の各教科の指導です。こちらについても、通常の各教科の系統性を踏まえて指導はするのですけれども、特別支援学校においては下学年・下学部適用が可能ですので、場合によっては高等部段階の生徒で小学校の目標水準で学ぶということも出てきます。そうすると、例えば小学校の5年生相当で学ぶ。その5年生の各教科の目標は5年生の生活年齢を加味して作られているのだけれども、学ぶ子供は高等部の1年生というような、想定されている生活年齢と実際の子供の生活年齢にずれが生じるということは多々あるわけです。ですので、そういったことも考慮しながら、実際の授業というのは教材選定等工夫がなされるということになります。
下の文の方に行きます。実際、特別支援学校においては、様々な学びにくさのある子供たちに対して、自立活動はありますから、各教科の授業時数が標準時数を下回るケースも少なくないという中で各教科の指導をすると。担当する先生というのは卒業時の達成水準を余り見通せないまま、日々、今の子供はどこまでの力を付けているかということで次の目標水準を目指して指導を重ねておられると。結果として当該学年の目標を十分に達成させることが困難なまま卒業を迎えるというようなことが現状として起こっていると。
こうした課題をどう解決していくかといったときに、個々の授業担当者で解決というのは非常に難しいということになります。12年間担当する教員というのはおりませんので、そうすると、各学校として解決に向かわなくてはいけないということになります。
続いて、各学校が取り組むこと、取り組むべきことの話に移ります。各学校は、自校の子供たちが達成したカリキュラム、達成状況を鑑みながら実際に実施したカリキュラムが、果たして十分だったかどうかということを評価し、次の実施するカリキュラムを立案するということになります。実施するカリキュラムを立案する際には、当然、意図したカリキュラム、つまり国が示す学習指導要領の目標内容を踏まえて立案をしていく。さらには、自校の子供たちの達成状況ですとか障害特性あるいは生活年齢や卒業後の進路等も踏まえながら、いつ、何を、どこまで、どのように指導していくとよいかということを学校として考えるということになります。
このように考えますと、知的障害の各教科というのは、一番上の図の一番右ですけれども、もともとの各教科の目標・内容そのものに知的障害の障害特性というのを加味して作られたものということになります。昭和37年に設けられたときの背景を考えますと、知的障害の各教科というのは子供たちの達成状況ですとか知的障害の特性等々を踏まえて検討された結果と捉えることができます。
その次の中点に移りますけれども、実際、例えば肢体不自由の学校で、筑波大学の附属の桐が丘という学校がありますけれども、肢体不自由の子供たちが通常の教科を学んでいると。ただ、肢体不自由ですので、上肢操作に困難があっていろんなことに時間が掛かったり、あるいは視覚認知に困難があって、例えばグラフ等の読み取りがなかなか難しかったり等々あります。そうした中で、じゃあ在学期間に何をどこまでどのように指導するとよいかという検討はしているわけです。ですから、先ほどの知的障害が各教科を作るときに取り組んできたことというのは、障害種ですとか扱う教科に関わらず、いずれの学校においても必要な作業と捉えることができるかと思います。
そうすると、では国としては何を示すということになりますが、最後の枠囲みに移りたいと思います。子供たちの実態や学びの場の多様性を踏まえますと、国が示す意図したカリキュラム、つまり学習指導要領には、各教科の目標の系統性を共通の指標として示していくということが必要になるのではないかと。その上で、各学校は、自校の子供たちの達成状況や障害特性、生活年齢、卒業後の進路等を踏まえて実施するカリキュラムを検討する際の道筋を示すということが重要になるのではないか。例えば、知的障害の各教科が昭和37年にどのようなプロセスを経て作られたのかと。先ほど申し上げたように、達成状況ですとか障害特性等々を加味して作られているわけです。そういったプロセスを提示するということが大事になってくるのではないかと思うところです。
次の資料に移ります。障害の状態が重度と言われる子供を中心にですけれども、自立活動を中心に学ぶ子供たちがいます。最初の枠囲みのところですけれども、特別支援学校学習指導要領解説(自立活動編)の中で自立活動の意義についてこのように示されています。ゴシック体を拾っていきたいと思いますが、通常の教科の内容というものも発達の段階等に即して選定されたものが配列されていると。障害のない子供たちは、それらを順に教育していくことにより、人間として調和のとれた育成が期待されると。しかし、障害のある子供たちに目を転ずると、同じように心身の発達の段階等を考慮する教育だけでは十分とは言えないと。個々の障害による学習上又は生活上の困難を改善・克服するための指導が必要と。
そこで自立活動が大事だという話になるわけですけれども、ここで一つ、教科と自立活動の実態把握から指導目標設定の手続の違いを簡単に押さえておきたいと思います。左側の図です。教科というのは、特定のスコープ、シークエンスの中で、今ここの水準できているから、次はここを目指そうという発想になります。しかし、自立活動は、特定の発達の領域だけをまた丁寧に下から順に追っ掛けるという発想はとりません。例えば、右側の図は、知的障害のあるお子さんに対する自立活動の実践例ですけれども、自立活動で示されています6区分があります。6区分から子供の実態を捉えながらいろんな課題が見えてきます。それら課題がこの子の中でどのように影響し合っているだろうかと。そうすると、今、この子に一体どこの力を付けてあげると、よりよい学習・生活が実現するだろうかと。こういう手続で自立活動で何に焦点を当てて指導目標を設定するかということを考えていくわけです。
左側に斜線の入った表を掲載していますけれども、これはある県の教育センターのホームページに示されている個別の指導計画の書式例です。ですが、本来、自立活動というのはこういった考え方で指導目標・内容を設定していくというものではないわけです。
こういった教科と自立活動の実態把握から目標設定の違いというのがあることを、では実際、学校がどのように踏まえて各教科を自立活動に置き換えるという判断をしているかというところですが、下の文に移ります。「学校として、ではどうして自立活動に置き換えているのですか」ということを、私も学校を訪問させていただいたとき伺いますが、なかなかこれに答えられる学校はありません。返ってくる言葉として多いのは、「障害の状態が重度だから」あるいは「子供の実態が多様だから」というお話が出てくるところです。実際に拝見する授業は、「音楽的自立活動です」なんていうお話を伺うこともあります。音楽的自立活動というのは、音楽なのか、自立活動なのか、よく分からない。しかし、指導を拝見しますと、これは音楽の目標、授業展開として十分行けるのではないかというようなものが行われていると。つまり、教科にするか、自立活動にするかというようなところを十分に吟味しないまま、昨年度も自立活動に置き換えているから今年も自立活動のままで行くと。「やはりこの子たち重度だし、個別に対応するには」ということになるわけです。
次に、自立活動の指導を担っている先生方を対象とした調査から一つ申し添えたいと思います。自立活動というのは、教科のように教科書があるわけではありません。そうすると、先ほど話題になっておりました個別の指導計画を作成して指導に向かうということになりますが、自らが作成した個別の指導計画に、あるいは日々の授業に、十分に自信を持てているかというと、なかなかそうはいかないというような状況が明らかになってきます。また、熱心に取り組まれる先生の成長につきましては、通常の教科の授業において先生方が手応えを感じられるに至る期間に比べて、自立活動の授業で先生方が一定の手応えを感じられる、つまり成長を遂げられるに要する期間というのは、長い時間を要するというような現状がございます。そのことを考えたときに、本当に自立活動に替えることによって個々に即した指導が行えているのかという側面もあろうかと思います。
また、卒業後の社会生活を送る視点から、当時の学校教育に対する評価について、これ、重度重複の方でしたので、保護者の方に伺った学校評価というものについて触れたいと思いますが、卒業後の生活をよりよく生きていくために、実用性のある力を身に付けてほしい、身に付けてもらってよかったという声が上がる一方で、もう一つ、やはり生きていく中で学校教育期間でないと学ぶことができない世界というものがあると。その教育内容をしっかり保障してほしいという思いも一方である、こういった声が聞かれるわけです。
また、話は少し変わりますけれども、知的障害の特別支援学校では、自立活動の時間を「設定している」という学校が45%と半分以下で、「特に設定していない」という学校が25%と、他の障害校種に比べて高かったという調査の結果も出ています。そうした中で先ほど申し上げました教科と自立活動の手続の違いを踏まえて、自立活動の時間は要らないという判断を本当にできているかどうかという辺りも考える必要があるかと思います。
最後、枠囲みのところです。改めて学習指導要領の中では教科の教育内容を保障することが前提なのだということをしっかり押さえていただければと。また、必要に応じて替えるという場合ですね、替えるというのは指導の方向性を変更するということです。つまり、音楽の目標や国語の目標というのがあります。それを自立活動の目標に向かう指導に替えるということになりますので、そこをしっかり自覚した上で、また、先ほどの目標設定の手続の違いを踏まえた上でしっかり検討してほしいというメッセージを是非提唱していただければと思います。
改めまして、自立活動の指導は重要不可欠と考えるわけですけれども、以前の検討会でも意見が出ていたかと思いますが、自立活動の授業づくりの手続というものも分かりやすく示していく、あるいは教師の理解促進の学びの場を確保していくということも大事だろうと思います。現行の学習指導要領の解説(自立活動編)におきましては、指導内容の設定手続というのは示されていますが、指導目標をどのように導き出すかというところについては記述がなされていないところですので、この辺りをしっかり示していく、あるいは実態把握のツールとなる指標、こういったものは手引等も含めて示していくということは大事かと思うところです。指導要領そのものには関連しないかと思いますが、以前、教員養成段階で自立活動に関する科目を大学でも是非というお話もあったところですが、科目名を是非「自立活動」としていくことは大事かと思います。といいますのは、特別支援教育概論とか基礎論となりますと、授業者によって自立活動に触れないまま授業を展開されるということもございます。各学校において自立活動専任の配置等々、教員の学びの場の体制づくりも大事かと思います。
最後に、この取扱いを適用し、カリキュラム・マネジメントを行っていくための前提として必要な視点について簡単に述べたいと思います。
各授業あるいは個別の指導計画のPDCAと教育課程のPDCAはなかなかつながらないと。一つは、個別の指導計画は、4月・3月で動きがちなのに対して、教育課程というのは、都道府県によって異なるかと思いますが、県への提出が12月頃ということになりますと、子供の学習評価の総括の時期と少しずれるという関係で、「どのように連動させたらよいものか」ということが現場で聞こえてくる声になっています。また、そもそも教育内容について子供たちがどれだけ力を付けたかという議論をしようにも、例えば併せた指導で何を扱っているかという自覚が教師にないために、国語として、算数として、どれだけ時間を配当していくことが大事かというような議論がなかなか起こらないことがあります。自立活動につきましては、先ほど述べたように、教師の成長に時間を要するというような現状もございます。
枠囲みのところですが、個々の教師、やはり教師は自分の動きとどう関係しているかということで学校の動きを捉えますので、個々の教師の日々の教育活動や各分掌での取組と教育課程のPDCAがどのようにつながるかということを視覚化する、そして共有することが大事だろうと思います。以前、古川先生から長崎の取組を発表していただいたところですけれども、お示ししたような書式で幾つかの学校にお願いをしているところです。
また、教育委員会に提出する教育課程関連文書の形式、こちらは指導内容、例えば正担5時間とかというような形で教育課程の提出をするということになりますと、教育内容の議論、なかなか校内で深まりにくいということがございますので、やはり教育委員会に教育課程を出すということは、教育内容と時数でうちの学校はこのような計画で行きますと、こういったものを示す書式にしていくということも大事かと思うところです。
最後は先ほど申し上げたところと重複しますので、割愛します。
以上です。
【宍戸主査】  ありがとうございます。
続きまして、事務局からお願いします。
【太田特別支援教育課課長補佐】  はい。それでは、重複障害者等に関する教育課程に関連して、関連資料の説明をさせていただきます。お手元の資料4-1から4-3までをごらんいただきたいと思います。
4-1は、重複障害者等に関する教育課程について、現在の特別支援学校学習指導要領におきまして、ここに示してありますとおり、1から3まで、1の方は(1)から(3)までありますが、実態に応じた弾力的な教育課程が編成できるよう規定が設けられております。
1ページめくっていただくと、2ページ目以降は、これは参考で、御紹介しませんが、実際の学習指導要領の記述がこういったような形になっております。
それを少し分かりやすく図にしたものを用意しております。資料4-2をごらんいただきたいと思います。
4-2の1ページ目の上段が特別支援学校の教育課程の基本となる形でございます。左側にあるオレンジが多い図の方が、中学部の視覚障害と聴覚障害、肢体不自由、病弱の教育課程の基本な形になります。右側の方が、知的障害の中学部の教育課程の基本的な形になっております。
これを、この真ん中の辺りにありますとおり、児童生徒の障害の状態により、特に必要がある場合には、教育課程の取扱いに関する各種の規定を設けております。
一つ目の取扱いとしまして、各教科及び外国語活動――これは小学部になりますが、の目標及び内容に関する事項を一部取り扱わないというような規定が設けられております。これは、ちょっと表を見ていただきますと少し濃いオレンジで表現しておりますが、例えば、視覚障害の児童生徒で本当に学習の内容が不可能だったり困難だったりするような場合は、保健体育の内容のうち、バスケットボールの学習を履修させなくてもいいといったような規定を示しているところでございます。
それから、2ページ目を見ていただきまして、今度は、各教科の各学年の目標及び内容の全部又は一部を、当該学年の前各学年の目標及び内容の全部又は一部によって替えるというような取扱いでございます。図に示しておりますとおり、例えば中学部の数学で3年生の生徒の学習について、第2学年の数学の目標・内容に替えて指導することができるといった規定でございます。
(3)、(4)、(5)は同様の規定でございまして、中学部の学習において小学部の各教科の目標・内容に替えることができること、(4)は外国語活動の扱いです。それから、1-(5)は、小学部において幼稚部教育要領に示す各内容を一部取り入れることができるといった規定を設けております。
3ページ目でございますが、知的障害を併せ有する児童生徒の場合の取扱いでございます。これは、最初に御紹介した視覚障害、聴覚障害、肢体不自由、病弱の教育課程、薄いオレンジで示した教育課程を基本としつつ、必要がある場合、黄色の部分になりますが、知的障害の教科に替えて指導するということができるような規定になっております。四つほど例を示しておりますが、基本的にはそういった考え方でできるというような規定を設けております。
さらに、4ページに行っていただきまして、重複障害者のうち、障害の状態により特に必要がある児童生徒の場合ということで、今度は、自立活動を主として指導を行うことができるというような規定を設けております。三つほど図を示しておりますが、上が各教科、道徳科、総合的な学習の時間、特別活動、自立活動で構成しているものですが、重い子供に対して、一番下の段になりますが、道徳科、特別活動のほかは自立活動を主として指導を行うというような例を示しておりますが、こういった取扱いができるというようなことになっております。
それ以外に、訪問教育の場合は同様にできることですとか、重複障害者等に関する授業時数については実情に応じた授業時数を適切に定めるといったような規定を設けてございます。
最後のページに重複障害者の児童生徒の在籍者数を掲げておりますが、平成26年度の直近のデータでも、重複障害者の人数が増えているというような傾向が見られております。
こういった教育課程の仕組みと、それから、先ほど一木委員の方からの御発表を踏まえて、重複障害者等の教育課程の取扱いの改善・充実の方向性として、また事務局の方で少し考え方を整理したものを御紹介させていただきたいと思います。資料4-3でございますが、まず、上の段の方に掲げさせていただいておりますが、学習指導要領及び学習指導要領解説において、重複障害者等に関する教育課程の取扱いを適用する必要がある場合についての基本的な考え方、それから、適用する場合の留意点について、更に具体的に示すことが必要ではないかということを掲げさせていただいております。
少し表の中のことを紹介させていただきますが、左側の真ん中の枠でございますが、「解説」に示されている適用する際の留意点としまして、現在の学習指導要領解説の中でも少し留意点を示しておりまして、例えば最初の中点でございますが、取り扱わなかった事項や替えた事項を、学年進行とともに、どのように事後措置するかを十分考慮した指導計画を作成することが必要ですとか、教材の精選・指導の一貫性に留意することですとか、一番下の重複障害者に対して心身の調和的な発達の基盤を培うことを狙いとした指導が特に必要といったようなことを現在の解説の中でも示しているところでございます。
現状と課題としまして、主に課題でございますが、私どもが教育委員会等から聴取した範囲でも、こういった規定を適用した教育課程の編成について課題として捉えて研究をしているというような教育委員会や政令市が27ということで、4割ぐらいの教育委員会で取組が行われていると。特に課題として捉えていることとして、これは共通でございますが、やはり替える際の根拠の判断が非常に難しいといったことですとか、指導内容の精選の在り方が課題だといったようなことが挙げられております。
そうしたことを踏まえまして、一番右側にありますとおり、改善・充実の方向性ということで、最初に示させていただいたものの例でございますが、こういった規定を適用する際の基本的な考え方を分かりやすく示すことですとか、指導内容の精選の基本的な考え方を整理して解説するといったようなことですとか、それから、先ほど一木先生の発表の中でも、小学部・中学部・高等部と進んでいくにつれて様々な教育課程の下で学んでいく子供がいるといったようなことですとか、あるいは、中学校の特別支援学級で学んだ子供が特別支援学校の高等部で学ぶというような子供もいますので、そういった段階間というような形で書かせていただいておりますが、における子供の各教科の学びの連続性の考え方を整理して解説する必要があるのではないかということを三つ目として掲げております。最後に、自立活動を主とした教育課程を行う際に、特に系統性ということの在り方の考え方とともに、教科と自立活動の指導目標の設定の関係性ということを具体的に整理して解説することが必要ではないかということを四つ目に掲げさせていただいております。
こういった方向性で改善が必要ではないかと考えておりますが、またこの点についても委員の皆様から御意見を頂きたいと思います。
説明は以上でございます。
【宍戸主査】  ありがとうございます。
資料4-3にまとめてありますように、改善・充実の方向性というところで、まず、表現を分かりやすく解説してはどうかとか、整理して解説してはどうか、そういう表現になっております。つまり、解説の部分で様々な特例といいますか、教育課程の取扱いの仕方を子供に合わせてできるように現場に伝えたいという発想かと思いますが、そういう解説をするということで、委員の先生方、御意見を賜ればと思います。一応、4時25分、30分前ということで、25分ぐらいの予定でお願いしたいと思います。
横倉委員、お願いします。
【横倉委員】  一木委員のプリント2ページ目と、それから資料4-3の四角囲みの箱の中の現状と課題の下から二つ、知的障害教育の各教科の代替の部分でお話をしたいと思います。
一木委員が示した2.「小・中・高等学校の各教科を学ぶ子どもに対する指導」の下の図のところです。これは本当に現場を預かる校長とすれば、例えば小学部の低学年は準ずる教育、つまり、各教科で来るのですけれども、1年遅れ、2年遅れ、で、担任が「この子はやっぱり知的障害の教育課程でした方がよいのではないのか」というのが、小学校の4年生・5年生辺りで出てくるのです。そうすると、当然、教育課程を替えるわけですから、保護者の同意、今までずっと通常学級で上がってきて、3年生・4年生で教科書ではなくて違うもので、「そのお子さんに合った狙い・目標で授業をしていく、そういうものに学校は考えているのですけど」というところから、だんだん議論が深みにはまっていくようなことがあるのです。そうすると、やはりそこの部分を拾ってもらうためには、一木委員の四角囲みの最後の括弧書きのところなのですけれども、知的障害の各教科の設定プロセス、これをやはり示してもらうという部分は一つ解決策としてあるのかなと。
それからもう一つは、資料4-3、先ほど申し上げた知的障害教育の各教科の代替のところなのですけれども、知的障害の高等部の校長をやっていますと、中学校から上がってくるお子さんの保護者に学校説明をするのです。「本校の教育課程は」と話したときに、「今までずっとやってきた外国語はどこに行ったのだろう」。例えば作業教育もそうですが、いろいろものが出てくるのです。そこの中学校までと高等部の連続性というのは相当保護者に説明しないと、「なるほど」というようにはならないのです。そうすると、そこの部分の透明性を上げていくというか、分かっていただくためには、先ほど申し上げたように、知的障害の各教科の設定プロセス、ここのところをしっかりどこかで分かる形で位置付けていくことがとても大事なのではないかと思います。是非検討をよろしくお願いいたします。
【宍戸主査】  障害種別に議論していたときは余り話題にならなかったことだと思うのですけれども、特別支援学校となって、そういう中で知的の教育課程と準ずる教育課程が一緒に議論しなければいけない状況になっているということを考えた場合に、知的の教科の設定の説明というのは確かに必要になってくるだろうと思いました。
尾崎委員、お願いします。
【尾崎委員】  三つ言いたいことがあるのですが、その前に一つだけ一木委員にお聞きしたいことがあって、先にそれを質問して、答えていただいてかうらでよろしいでしょうか。
【宍戸主査】  はい。
【尾崎委員】  一つは、実は私、学習評価の研究を研究所にいるときにさせていただいたのですが、一番思ったのは、通常の教育であれば、教科の目標に準拠して学習状況を評価するということが当たり前に行われているのですが、どうもそれがぱっと入らないのです。理由は、個別の目標は検討するが、授業の在り方は関係なしというところで評価をしようとしている。子供の状態がよい表情で授業を受けていたからとか、そういう形で評価をしてしまいますので、学習状況の評価ではないのです。そのときの状況だという。そこの区別がなかなかつかないようなところから入りました。そのようなことがあって、それで、よく調べてみますと、教育課程の考え方も個別の目標の固まりが教育課程だと。となると、個別の教育課程みたいな言い方までは言語矛盾しますので、そういう言い方はしませんが、そういう言い方に近いような印象を持つような学校もありました。そのときに、一木委員の問題意識として、カリキュラムというのは、個別に課されたカリキュラムのことじゃなくて、学校としてカリキュラムを作ることであるというように私は考えたいと思うのですが、それを個に応じてどのように指導していくのかが課題であるというような考え方で私はいたいと思うのですが、同じ考え方でよろしいかどうか、その点について発言してよろしいかどうか。
【宍戸主査】  一木委員、まずお答えをお願いします。
【一木委員】  はい。カリキュラムの編成主体は学校だというように考えます。
【尾崎委員】  ありがとうございます。
そういうことで、幾つかお話をしたいと思います。
まず、カリキュラム・マネジメントとしての必要な視点ということで、一木委員から4番目のところに頂きました。学習評価の研究をしている中で、一木委員が御指摘いただいている、個別の指導計画のPDCAサイクルと教育課程のPDCAサイクル、これが一致しないと難しいというのは分かりました。ただ、これを一致させて研究開発をしてくれた特別支援学校があります。そこはカリキュラム・マネジメントとしては、その学校がやっているのは指導略案に個別の評価規準も観点別に立てていて、それを積み上げている。そして、その成果を個別の計画レベルでまとめている。と同時に、授業においては、どの教科や、教科を合わせた指導においても、知的の教科の関連性をどの関連性があるのかということを明確にしているということです。それを積み上げて単元ごとに評価をして授業改善を考えているということです。単元の評価が積み上がっていきますので、それを基に教育課程の評価ができるという仕組みを作っているのです。一方で、個別の指導計画レベルでは個別の評価規準を積み上げて単元ごとに個別の指導の評価を積み上げているというサイクルをしているという学校がありました。そういう工夫によっては不可能ではないと私は思います。それが1点目です。
それから2点目ですけれども、重複障害者の取扱いの改善・充実の方向ということで資料4-3に出された中で、特に障害の重い方の教育課程の実施・評価をどのように考えるのかというところでの課題です。校長をやっているときに、保護者の方から「毎年同じような目標を立てられていて」と、そういうことを聞くことがあるのです。その原因は何なのかというと、去年これでうまくいったからということで、実際に本当に子供にとって必要な内容を選択して教えているのかどうかというところが少し疑問に思うようなことがありました。その原因は何なのかということなのですが、その一つに、ここに書いてあります「解説」に示されている適用する際の留意点の中に、「取り扱わなかった事項や替えた事項を、学年進行とともに、どのように事後措置するかを十分考慮した指導計画を作成することが必要」だと。何を取り扱って、何を取り扱わなかった、では、取り扱わなかったことはどのように考えていくのか、そういうことをカリキュラム上きちんと考えていないと、やはりそういうことが起きると思います。ですから、改善・充実の方向性の中に、カリキュラムの取扱い、カリキュラム・マネジメントについても、内容の取扱い等についても是非入れていただければ大変有り難いと思います。
それから最後に、知的障害の各教科の成立の過程ですけれども、一木委員の方からは、昭和38年、最初に知識障害教育の教育課程ができたときの成立の基盤というようなお話があったと思うのですが、それ以降、昭和50年代以降もどんどん変わってきています。これは、昭和38年の時代はまだ養護学校がほとんどない時代で、初めて創ったということで、当時の経験的な内容を、生活経験を中心とした内容を主に組織したという経緯があります。それ以降は、重度重複化に対応する内容も入れていくとか、そんなことでいろいろ変わってきている経緯があります。私が言いたいのは、今回、育成すべき資質・能力という観点で、三つの柱で通常の小・中・高等学校は各教科の目標の内容も含めて検討されるだろうということであれば、同じ視点で知的障害教育の成り立ちというのを、捉え直して作っていくことによって、共通理解が深まるのではないかと私は考えます。
以上3点です。
【宍戸主査】  ありがとうございます。育成すべき資質・能力の三つの視点で知的の教科も見直すということは、これは当然なされるべきことかと思っています。時間的な余裕がどれぐらいあるかということもありますから、それに合わせてどういう作業をするかということを考えないといけないかと思います。
ともかく、知的の教科と準ずる教科との連続性・関連性につきましては、次回、最後になるかもしれませんけれども、事務局から考え方を整理して資料を出していただいて、それを基に議論を頂くということは考えております。
ほかに、重複障害者等の教育課程の取扱いの改善・充実の方向性につきまして御意見等ありましたら、お願いします。大内委員、お願いします。
【大内委員】  これまで一木委員の取りまとめていただいた内容等を伺っておりまして感じたことですが、重複障害のお子さんの指導に当たって、総合的な活動というようなことで、教科に切り分けた系統的な指導というのは難しいということで総合的な指導が行われている、そういう状況は私も十分理解できるのですが、指導に関する分析というところが非常に弱い。総合的な評価をする中で、その要素を切り出して、その要素ごとに、今、その子はどのレベルのことをやっているのかというようなことがきちんと整理されていないまま、総合的な活動を行って、その授業が楽しかったとか、子供が喜んだとかというところでの評価に終わっているのが現状ではないかというような印象を、話を伺って受けたわけですけれども、当然、障害の重いお子さんですから、今、特別支援学校でやっているような教育形態というのは経験的に望ましいものとして出てきたと思うのですけれども、その活動内容をもう少し精査して、きちんと分析的に評価をしていくような仕組みというのを考えていく必要がある。それが知的障害教育あるいは重複障害教育の専門性ではないかというようなことを強く思いましたので、そういうような観点を改善の方向の中に盛り込んでいただけると有り難いと思いました。
以上でございます。
【宍戸主査】  先生、1点だけお聞きしたいのですが、総合的な活動というのは教育課程を併せてやるということですか、それとも活動のレベルで総合的なということですか。
【大内】  例えば、自立活動と称してお料理をやったりとか買物の活動をしたりすることもあるかと思うのですけれども、そういう中で、それを漠然と一つの活動という枠組みの中でまとめてしまうのではなくて、例えばそれをもう少し教科ごとに落としていくとどういう要素がその中に盛り込まれているのかとか、教科に至らないまでも、どういう領域について扱っているのかというようなことをきちんと分析的に入れていくというようなことでございます。
【宍戸主査】  ありがとうございました。
安藤委員、お願いします。
【安藤委員】  最初に、一木委員からの今回の話題について、私の理解したところでお話しさせていただきたいと思いますけれども、要するに、カリキュラム・マネジメントの考え方を、これまでの教科という考え方の中と、自立活動を含めた弾力的に編成できるという考え方をとった特別支援教育の考え方の差異とか共通性についてまとめたというのは一つ大きいと思うのです。自立活動に代表されるように、いわゆるボトムアップ型のカリキュラム編成を導入したというところに実は我々の教育の、あるいはカリキュラムの大きな特徴がある。しかし、一方でその限界もあるというのも今出たところだと思うのです。これについては、いわゆるトップダウン型の考え方を導入するというようなところで日本でも幾つか取り組まれているところはあると思うのですけど、そういう視点を今回提示していただいたというのは極めて重要だろうということと、もう一つは、いわゆる公教育を確実に実現していくための教育課程の基準をどうあるかとかどう示すかという考え方と、それを今度、実施する学校という組織体や、教員という授業を実現する教師が、この基準をどう理解し、どう一人一人の子供の教育を実現するかという、その考え方、捉え方で、理解する教師、理解しやすいような状況にしていくためにどう書き込んでいくかという、そういう捉え方を提示いただいたという意味で、これもすごく重要な視点ではないかと思いました。これは感想になります。
それで、当該、つまり重複障害者等の教育課程の取扱いについては、従前は特例と呼んでいたものです。それを、要は圧倒的な多数になったこういう対象となる子供たちがいるわけで、これは特例と呼ぶには余りふさわしくないだろうというので、こういう改善を行ったのがこの規定だと思います。では、この規定が先ほどのようにこれまでの基準として示すこと、これは多分間違いないし、私も大学で教育課程論の授業をやっていますので、これも取り上げて、すごく論理的に分かりやすく示されているのだけど、しかし、一方、これを理解しようとする教師のがわから見るとどういうことが起きるかというと、先ほど来からあるように、学校間、個人間にかなり大きな違いをもたらすという現実があるということです。つまり、ある子供を捉えるときに、例えば下学年、前学年の目標・内容を全部又は一部替えられるという規定をそのまま用いれば、例えば中学校3年生の子供に小学校3年生の算数を実施した場合、これをどう考えるのだとなれば、これは前学年の目標・内容を全部適用しましたと。ですから、これはいわば準じた指導をしていますという解釈をとる学校あるいは個人で解釈する人が出てくる一方で、よく考えてみれば、生活年齢15歳で、学んでいる内容は全て9歳のものを全部適用するとなれば、単純に考えれば、これは知的障害のある子供とみなすべきではないかという、そういう判断もあるわけです。同じような状態があることは想定できないけれども、しかし、そういう子供にとって、ある学校では準じて指導していますと。ある学校では、これはいや、知的代替で指導すべき子供ではないかと、まさにAかBか類型論の話の中で語られるということが現実あるわけです。いわんや、先ほどから話題に出ているように、小学校や中学校から移行してくる子供たちが通常学級で、何か突然これが知的障害の代替でやるべきではないかという話なら、先ほどから出ているような混乱があるというのが、これが現実です。
しかし、以前は、例えば特例と言われる時代は、暗黙のうちに、大体準ずるという場合は2学年くらいを下げて指導するのが常識的に押さえるべきではないかとあったのが、最近はそれすらない。だから、そういう非常に分かりやすくなってシームレスになったのだけど、しかし、実際にそれを実施する、つまり先ほどの話だとカリキュラムの実施の段階になると、多くの学校、多くの個人に混乱があるという現実は、これは間違いないことだと思うのです。そのことを踏まえてどう改善していくかという議論がやはりここでなされるべきですし、私自身も、今の状況については何らかの形で書き込んでいかないと、指導要領解説とか何らかで書き込んでいかないと、今の特別支援学校や先生方の状況ではこのことは解決できないのではないか、そういった視点も重要ではないかと思っております。
【宍戸主査】  具体的な課題といいますか、現状どういう状況があるかということをお話しいただきましたので、書き込むに当たっての書き込み方あるいは知恵をどういうふうに絞るかということの方向性が少しは見えたのではないかと思います。
名札が2人挙がっていますので、山中委員、村上委員の順でお話をお願いしたいと思います。
【山中委員】  2点あります。
1点は、障害の重い子供を教育するために、準ずる教育課程、それから知的障害の各教科代替、自立活動を主とした教育というのがあるわけなのですけれども、今後、インクルーシブというようなことを教育システムで、これを全部小・中学校でやりなさいということではないと思うのですけれども、せっかくこれが用意されていても、小・中学校からしてみるとやはり全然分からない。このようなことがあるということすらやはり分からない状況があるのです。これは、特別支援学校の先生でもここまできちんと理解している先生というのはどれぐらいいるかと思うのですけれども、ここのところがせっかくこれだけ用意されているというものを、やはり分かりやすくどこかでもう少し書き込んでいただくようなことができればというのが一つです。それと、小・中学校の方からしてみても、こういうことができるということが分かるということが一つ大事なことかと思います。
それから二つ目は、知的障害の各教科のことなのですけれども、先ほどからも尾崎委員の方からも出たと思うのですが、知的障害の各教科の方が、小学部では3段階、中学部では2段階、高等部で1段階ということで分かれているのですけれども、やはりその段階というのが分かりにくいのです。これぐらいの障害のお子さんだったらここの段階にいるというものが、もう少しはっきりしたものが分かってくるようなものがあれば、これは例えば特別支援学級など、小・中学校でも、知的障害の程度が詳しく分からなくても、このぐらいの段階にあるのかということが分かるような、もう少し可視化というのですか、はっきりされたものが出てくると、特別支援学校でももう少し、この段階にあるから、次はこの段階に行きましょうというようなものが出てくるのかと思います。少し難しいかもしれませんけれども、そういった知的障害の教科の段階のようなものがもう少し明確なものが出てくればよいかと思います。
以上2点です。
【宍戸主査】  小枝委員も挙がっていますので、村上委員、小枝委員で本日は終えたいと思います。
村上委員、お願いします。
【村上委員】  重い障害のある子供についてのことを考えると、この議論の前に行われたキャリア教育的な視点がどうしても忘れられがちと言ったらいいのですか、いつも目の前の状態を何とか改善しようと先生方は頑張るわけですけれども、では、20年後、学校を離れた時点でその子供はどういう生活を送るのか。そのときに必要な視点と言ったらいいのですか、自立ということを想定するとすれば、そういうカリキュラムをきちんと考えた上での指導が、たとえ障害が重くてもなされなくてはいけないと考えます。
以上です。
【宍戸主査】  小枝委員、お願いします。
【小枝委員】  資料4-3について意見を1点言わせていただきたいと思います。ずっと読んで考え込んでいたのですけれども、重度重複のお子さんの自立活動ということについてだけ申し上げますと、最後の改善・充実の方向性というところは非常によいことが書いてあって、これを丁寧に書いていただくとよいのかなと思うのですが、最後の「自立活動を主とした」といったところに「自立活動の指導目標設定の関係性」とあるのですけれども、これを読んで実際に教育をされる現場の先生方が、先ほど分析的なという視点がなかなか持てないのではないかという御指摘があったと思うのですけれども、やはり自立活動そのものが、活動が主であって、そこの中の学びは何なのかといったものがなかなか見えてこない。それが分析的に見えてこないというお言葉になったのではないかと思うのです。私も全く同感でございまして、「きょうのこの活動、楽しかったね」とか「盛り上がったね」でもう終わってしまっているのです。それを更に一歩進めて、こういった教育を実施される教員が分かって教育をするためにどうしたらよいのかとずっと考えていたのですが、それはやはりきちんと評価をするということを教員がされるとよいかと思うのです。そうすると、きょう行った自立活動の授業は、こんな点でこんなふうに評価して終わる。その振り返りを教員がすることが、分析的に見えて次の目標設定につながるので、この最後の文言のところに、評価を設定する、丁寧に評価ができる、そういった指針を書き込む、これを是非入れていただきたいなと思っております。
以上です。
【宍戸主査】  大切な視点を御指摘いただきまして、ありがとうございます。
本日は少し時間が過ぎてしまいましたが、以上で本日の第7回の特別支援教育部会を閉じたいと思いますが、その前に、次回の予定等につきまして事務局から報告をお願いします。


【太田特別支援教育課課長補佐】  本日も長時間にわたり御議論ありがとうございました。
次回(第8回)は、先ほど来御紹介がありましたとおり、幼稚園・小学校・中学校・高等学校と特別支援学校の教育課程の連続性などについて御議論いただきたいと思います。また、これまで、次回も含めますと8回にわたって御議論いただきましたが、本特別支援教育部会としてもこれまでの意見の取りまとめを行っていきたいと思っておりますので、次回、これまでの意見をまとめたものを御用意して御議論いただきたいと思っております。
また、他の部会の審議と並行してまた議論していく必要があります高校通級についても、今後、高等学校教育部会に報告して議論していただくというようなことを行っていく予定にしておりますので、第8回は5月下旬ぐらいに開催したいと思っております。また先生方の日程を調整いたしまして、決定次第、御案内したいと思っております。
また、ペーパーによる御意見も頂戴したいと思っております。ファックス又はメールで、郵送でも結構でございます。御意見等がございます場合は、4月21日(木曜日)頃まで特別支援教育課まで御提出いただきたいと思います。
以上でございます。
【宍戸主査】  次回の日程については、再度、皆さんの予定を調整して決定したいということです。御協力をお願いしたいと思います。
本日は、以上で第7回の特別支援教育部会を終了させていただきます。ありがとうございました。


―― 了 ――

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