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社会・地理歴史・公民ワーキンググループ取りまとめ(案)

1 現行学習指導要領の成果と課題

○ 社会科、地理歴史科、公民科においては、社会的事象に関心を持って多面的・多角的に考察し、公正に判断する能力と態度を養い、社会的な見方や考え方を成長させること等に重点を置いて、現行の学習指導要領に改訂され、その充実が図られてきているところである。

○ 一方で、主体的に社会の形成に参画しようとする態度等の育成や、資料から読み取った情報を基にして社会的事象の特色や意味などについて比較したり関連付けたり多面的・多角的に考察したりして表現する力の育成等については、更なる充実が求められるところである。

○ 特に高等学校教育においては、自分の参加により社会をよりよく変えられると考えている若者の割合が国際的に見ても低いこと、時代の変化に耐えてきた先哲の考え方を習得し、それを手掛かりとして自己の生き方や考え方等を錬磨することに課題があること、近現代に関する学習の定着状況が低い傾向にあること、課題を追究したり解決したりする活動を取り入れた授業が十分に行われていないこと等が指摘されているところである。

○ また、これからの時代に求められる資質・能力を視野に入れれば、社会との関わりを意識して課題を追究したり解決したりする活動を充実し、知識や思考力等を基盤として社会の在り方や人間としての生き方について選択・判断する力、自国の動向とグローバルな動向を横断的・相互的に捉えて現代的な諸課題を歴史的に考察する力、持続可能な社会づくりの観点から地球規模の諸課題や地域課題を解決しようとする態度など、国家及び社会の形成者として必要な資質・能力を育んでいくことが求められる。

2 育成すべき資質・能力を踏まえた教科等目標と評価の在り方について

(1)教科等の特質に応じ育まれる見方・考え方

○ 各教科等を学ぶ意義は、各教科等において身に付ける資質・能力の三つの柱で整理される。これらの資質・能力を育むに当たって用いられるものが、各教科等の本質に根ざした見方・考え方である。「見方・考え方」とは、様々な事象を捉える教科等ならではの視点と、教科等ならではの思考の枠組みである。各教科等の多様な「見方・考え方」が総合的に育成されることによって、社会や世界の様々な事象を捉えたり関わったりすることが可能になり、また、多様な「見方・考え方」を統合的に働かせるようにすることによって、一つの事象を多様な角度から捉えたり考えたりすることができるようになる。

○ 社会科、地理歴史科、公民科において育まれる見方・考え方については、これまでの学習指導要領において、社会生活に対する正しい見方、考え方の基礎(昭和33年版小学校)、社会的なものの見方や考え方(平成元年版、10年版小学校)等と、呼称を変えながらもその重要性が指摘され、平成20年の改訂では中央教育審議会答申の「社会科、地理歴史科、公民科の改善の基本方針」において、「社会的な見方や考え方を成長させることを一層重視する方向」が示された。一方で、中学校社会科においては地理的な見方や考え方の基礎、現代社会を捉える見方や考え方の基礎と、分野ごとの説明がなされてきたが、その「社会的な見方や考え方」の全体像が示されるには至っていなかった。

○  次期改訂においては、社会的な見方・考え方の性格を以下のように明確化することとした。

・ 社会的な見方・考え方は、課題を追究したり解決したりする活動において、社会的事象等の意味や意義、特色や相互の関連を考察したり、社会に見られる課題を把握して、その解決に向けて構想したりする際の「視点や方法」であり、小、中、高等学校と校種が上がるに連れて視点の質やそれを生かした問いの質は高まるものであると考えられる。
・ 社会的な見方・考え方は、社会科、地理歴史科、公民科の本質的な学びを促し、深い学びを実現するための思考力、判断力の育成はもとより、知識の構造化に不可欠であること、主体的に学習に取り組む態度や学習を通して涵養される自覚や愛情などにも作用することなどを踏まえると、資質・能力全体に関わるものであると考えられる。

○ これを受け、社会科、地理歴史科、公民科における見方・考え方を以下のように整理した。

・ 小学校社会科では、位置や空間的な広がり、時期や時間の経過、事象や人々の相互関係などに着目して社会的事象を見出し、比較・分類、総合したり、地域の人々や国民の生活と関連付けたりすること
・ 中学校社会科地理的分野では、絶対的、相対的など位置や空間的な広がりに関わる視点に着目して社会的事象を見出し、環境条件や他地域との結び付きなどを地域等の枠組みの中で人間の営みと関連付けること
・ 中学校社会科歴史的分野では、時期、推移や変化などに着目して社会的事象を見出し、共通性や相違点などを明確にしたり、因果など事象同士を関連付けたりすること
・ 中学校社会科公民的分野では、対立と合意、効率と公正などの現代社会を捉える概念的枠組みに着目して課題を見出し、それらの解決に向けて多様な概念と関連付けること
・ なお、高等学校においては、後述するように新必履修科目の設置について検討を行っており、それらの「見方・考え方」については、次のとおり整理した。
・ 高等学校地理歴史科では、共通必履修科目「歴史総合(仮称)」においては、時期、推移や変化などに着目して社会的事象を見出したり、比較して共通性や相違点などを明確にしたりして、因果など事象同士を関連付けたりすること。また、共通必履修科目「地理総合(仮称)」においては、時間距離や等質性など位置や空間的な広がりとの関わりに着目して社会的事象を見出し、環境条件や他地域との結び付きなどを地域等の枠組みの中で人間の営みと関連付けること
・ 更に、高等学校公民科では、共通必履修科目「公共(仮称)」においては、人間と社会の在り方を捉える概念的枠組みに着目して課題を見出し、それらの解決に向けて民主主義、自由・権利と責任・義務など選択・判断するための手掛かりとなる考え方と関連付けること

○ なお、公民科で扱う学習対象は、社会の在り方や人間としての在り方生き方に関わるものを含み、社会的事象のみでないことを踏まえれば、社会科、地理歴史科、公民科において総称する際の学習対象としては「社会的事象等」と表現することが適当である。なお、小・中学校社会科あるいは高等学校地理歴史科の括りで資質・能力を説明する際には、学習対象を明確化する観点から「社会的事象」という文言を使用することが適当である。

○ 以上のことを整理すれば、小学校社会科、中学校社会科地理的分野及び歴史的分野、高等学校地理歴史科においては「社会的事象の見方・考え方」、中学校社会科公民的分野においては「現代社会の見方・考え方」、高等学校公民科においては「人間と社会の在り方についての見方・考え方」と、それぞれの教科・分野及び校種の特質を踏まえた呼称が考えられる。「社会的な見方・考え方」は、これらの各「見方・考え方」を総称する呼称として位置付けることとした。

(2)小中高等学校を通じて育成すべき資質・能力の整理と、教科等の目標の在り方

○  社会科、地理歴史科、公民科で育成を目指す資質・能力は、「情報を伝え合ったり、情報に基づき思い合わせたりするようになるとともに、公共の施設を大切にしたり、国旗や国際理解への意識等が芽生えるようになる」などといった幼児教育で育まれる資質・能力と関わりがある。

○  また、小学校低学年における、例えば生活科で目指す「自分と身近な人々及び地域の様々な場所、公共物などとの関わりに関心を持ち、地域のよさに気付き、愛着を持つことができるようになるとともに、集団や社会の一員として自分の役割や行動の仕方について考え、安全で適切な行動ができるようになる」などといった資質・能力ともつながるものである。

○  次期改訂に向けては、幼児期に育まれたものや、生活科をはじめとする小学校低学年における学習を通じて身に付けた資質・能力の上に、小中高等学校を通じて育成すべき資質・能力を、三つの柱に沿って明確化することが求められる。

○ 地理歴史科、公民科において育成する資質・能力は、選挙権を有する18歳に求められる「広い視野に立ち、グローバル化する国際社会に主体的に生きる平和で民主的な国家及び社会の有為な形成者に必要なもの」であると考えられ、従前の教科目標の趣旨を勘案すると、「公民としての資質・能力」と言うことができる。また、小中学校社会科においては、その基礎を育むことが考えられる。資質・能力の具体は、「知識・技能」、「思考力、判断力、表現力等」、「学びに向かう力・人間性」の3つの柱に沿って整理することが適当である。
「公民としての資質・能力」は、現行学習指導要領公民科の目標に示されている「平和で民主的な国家・社会の有為な形成者として必要な公民としての資質を養う」ことの趣旨を一層明確にするとともに、人、商品、資本、情報、技術などが国境を越えて自由に移動したり、組織や企業など国家以外の様々な集合体の役割が増大したりしてグローバル化が一層進むことが予測されるこれからの社会において、教育基本法、学校教育法の規定を踏まえ、国家及び社会の形成者として必要な資質・能力を育むことの大切さへの意識を持つことを期待してこのような表現と整理した。
また、これまで学習指導要領解説(小学校社会科)で「公民的資質」として説明してきた、例えば「平和で民主的な国家及び社会の形成者としての自覚、自他の人格を互いに尊重し合うこと、社会的義務や責任を果たそうとすること、社会生活の様々な場面で多面的に考えたり、公正に判断したりすること」などの態度や能力は、「平和で民主的な国家・社会の有為な形成者に必要な資質・能力」であることから、今後も「公民としての資質・能力」に引き継がれるものであると考えられる。

○ 以上のことから、高等学校地理歴史科、公民科が目指すものは、「社会的な見方・考え方を働かせ、課題を追究したり解決したりする活動を通して、広い視野に立ち、グローバル化する国際社会に主体的に生きる平和で民主的な国家及び社会の有為な形成者に必要な公民としての資質・能力」を育成すること、中学校社会科が目指すものは、「社会的な見方・考え方を働かせ、課題を追究したり解決したりする活動を通して、広い視野に立ち、グローバル化する国際社会に主体的に生きる平和で民主的な国家及び社会の形成者に必要な公民としての資質・能力の基礎」を育成すること、小学校社会科が目指すものは、「社会的な見方・考え方を働かせ、課題を追究したり、解決したりする活動を通して、グローバル化する国際社会に主体的に生きる平和で民主的な国家及び社会の形成者に必要な公民としての資質・能力の基礎」を育成することとすることが適当である。

○ 公民としての資質・能力及びその基礎とは、以下の三つの柱に描かれる資質・能力の全てが結び付いて育まれるものである。

○ 資質・能力の柱の第一は、社会科、地理歴史科、公民科で獲得する知識・技能である。「知識」は、社会的事象等に関する知識であり、具体的には、社会生活に関する理解、我が国や世界の地理に関する理解、我が国や世界の歴史に関する理解、現代社会の政治、経済、国際関係に関する理解、人間としての在り方生き方に関する理解などを図るための知識である。それは、主として用語・語句などを含めた個別の事実等に関わる知識と、主として社会的事象等の特色や意味、理論などを含めた社会の中で汎用的に使うことのできる概念等に関わる知識とに分けて捉えることができる。「技能」は、これまで小学校社会科においては「観察・資料活用の技能」、中学校社会科、高等学校地理歴史科及び公民科においては「資料活用の技能」としてきた。これらはいずれも観察や資料活用を通して社会的事象等に関する情報を収集する・読み取る・まとめる技能であり、社会科、地理歴史科、公民科で育てる技能は「社会的事象等について調べまとめる技能」として整理した。

○ 資質・能力の柱の第二は、社会科、地理歴史科、公民科で育成する思考力、判断力、表現力等である。「思考力、判断力」は、社会的事象等の意味や意義、特色や相互の関連を考察する力、社会に見られる課題を把握して、その解決に向けて構想(選択・判断)する力である。前者は「社会的な見方・考え方を用いて社会的事象等の意味や意義、特色や相互の関連について、概念等を活用して多面的・多角的に考察すること」等、論理的思考力や批判的な思考力などの育成を目指すものであり、後者は「社会的な見方・考え方を用いて社会に見られる複雑な課題を把握して、身に付けた判断基準を根拠に解決に向けて構想すること」等、公正な判断力や社会参画により課題を解決するための創造力などの育成を目指すものである。
また、社会科、地理歴史科、公民科で育成する「表現力」は、教科の特質を踏まえて重点化すれば、考察したことや構想したことを説明する力、考察したことや構想したことを基に議論する力である。前者は「適切な資料・内容や表現方法を選び、社会的事象等についての自分の考えを効果的に説明したり論述したりすること」等、意見を表明する力や論述する力などの育成を目指すものであり、後者は「合意形成や社会参画を視野に入れながら、社会的事象等について構想したことを、妥当性や効果、実現可能性などを指標にして議論すること」等、協働的に問題解決する力や情報を吟味する力などの育成を目指すものである。
これらの思考力、判断力、表現力等は、課題を追究したり解決したりする活動において相互に関連性を持ちながら育成されるものである。

○ 資質・能力の柱の第三は、社会科、地理歴史科、公民科で養われる学びに向かう力・人間性である。それは、「主体的に学習に取り組む態度」と、「多面的・多角的な考察や深い理解を通して涵養される自覚や愛情など」である。「主体的に学習に取り組む態度」のうち、学んだことを社会生活に生かそうとする態度や、社会に見られる課題についてよりよい社会を目指して解決しようとする態度などは、よりよい社会の形成に主体的に参画しようとする態度として整理した。

○ 以上のことから、社会科、地理歴史科、公民科の目標は、それぞれ次のように整理することとした。

【小学校社会科】
◎ 社会的な見方・考え方を働かせ、課題を追究したり解決したりする活動を通して、グローバル化する国際社会に主体的に生きる平和で民主的な国家及び社会の形成者に必要な公民としての資質・能力の基礎を次のとおり養う。
1 地域や我が国の地理的環境、現代社会の仕組みや働き、地域や我が国の歴史や伝統と文化を通して、社会生活について理解するとともに、調査や諸資料から情報を適切に調べまとめる技能を身に付けるようにする。
2 社会的事象の特色や相互の関連、意味について多角的に考える力、社会に見られる課題を把握して、その解決に向けて社会への関わり方を選択・判断する力、思考・判断したことを適切に表現する力を養うようにする。
3 社会的事象について、よりよい社会を考え課題を意欲的に解決しようとする態度を養うとともに、多角的な考察や理解を通して涵養される地域社会に対する誇りと愛情、我が国の国土や歴史に対する愛情、地域社会の一員としての自覚、世界の国々の人々と共に生きていくことの大切さの自覚を養うようにする。

【中学校社会科】
◎ 社会的な見方・考え方を働かせ、課題を追究したり解決したりする活動を通して、広い視野に立ち、グローバル化する国際社会に主体的に生きる平和で民主的な国家及び社会の形成者に必要な公民としての資質・能力の基礎を次のとおり養う。
1 我が国の国土と歴史、現代の政治、経済、国際関係等に関して理解するとともに、調査や諸資料から様々な情報を効果的に調べまとめる技能を身に付けるようにする。
2 社会的事象の意味や意義、特色や相互の関連を多面的・多角的に考察したり、社会に見られる課題の解決に向けて構想したりする力、考察・構想したことを説明したり、それらを基に議論したりする力を養うようにする。
3 社会的事象について、よりよい社会の実現を視野に課題を意欲的に解決しようとする態度を養うとともに、多面的・多角的な考察や深い理解を通して涵養される我が国の国土や歴史に対する愛情、他国や他国の文化を尊重することの大切さについての自覚を深めるようにする。

【地理歴史科】
◎ 社会的な見方・考え方を働かせ、課題を追究したり解決したりする活動を通して、広い視野に立ち、グローバル化する国際社会に主体的に生きる平和で民主的な国家及び社会の有為な形成者に必要な公民としての資質・能力を次のとおり養う。
1 日本及び世界の歴史の展開と生活・文化の地域的特色に関して理解するとともに、調査や諸資料から様々な情報を効果的に調べまとめる技能を身に付けるようにする。
2 地理や歴史に関わる諸事象について、概念等を活用して多面的・多角的に考察したり、 課題の解決に向けて構想したりする力、考察・構想したことを効果的に説明したり、それらを基に議論したりする力を養うようにする。
3 地理や歴史に関わる事象について、よりよい社会の実現を視野に課題を主体的に解決しようとする態度を養うとともに、多面的・多角的な考察や深い理解を通して涵養される日本国民としての自覚、我が国の国土や歴史に対する愛情、他国や他国の文化を尊重することの大切さについての自覚を深めるようにする。

【公民科】
◎ 社会的な見方・考え方を働かせ、課題を追究したり解決したりする活動を通して、広い視野に立ち、グローバル化する国際社会に主体的に生きる平和で民主的な国家及び社会の有為な形成者に必要な公民としての資質・能力を次のとおり養う。
1 選択・判断の手掛かりとなる概念や理論、及び倫理、政治、経済等に関わる諸課題に関して理解するとともに、調査や諸資料から様々な情報を効果的に調べまとめる技能を身に付けるようにする。
2 現代の諸課題について、事実を基に概念等を活用して多面的・多角的に考察したり、解決に向けて構想したりする力、合意形成や社会参画を視野に入れながら構想したことを議論する力を養うようにする。
3 人間と社会の在り方に関わる課題について、よりよい社会の実現のために主体的に解決しようとする態度を養うとともに、多面的・多角的な考察や深い理解を通して涵養される人間としての在り方生き方についての自覚、自国を愛しその平和と繁栄を図ることや、各国が相互に主権を尊重し各国民が協力し合うことの大切さについての自覚を深めるようにする。

(3)資質・能力を育む学習過程の在り方

○ 三つの柱に沿った資質・能力を育成するためには、課題を追究したり解決したりする活動の一層の充実が求められる。それらはいずれも知識、概念や技能を習得・活用して思考・判断・表現しながら課題を解決する一連の学習過程において効果的に育成されるものと考えられるからである。社会科においては従前から、小学校で問題解決的な学習の充実、中学校で適切な課題を設けて行う学習の充実が求められており、課題を追究したり解決したりする活動の充実はそれらの趣旨を踏襲する方向である。

○  そうした活動の充実を図る学習過程の例としては、大きくは課題把握、課題追究、課題解決の三つが考えられる。また、それぞれ各過程における活動として、動機付けや方向付け、情報収集や考察・構想、まとめや振り返りなどが考えられる。なお、これらは一例であり、他にも様々考えられる。また、中学校社会科や高等学校地理歴史科、公民科においては、自ら問いを立てたり、仮説や追究方法を考えたりするなど、学習内容や社会に見られる課題等に応じて、学習場面を細分化せずに生徒の主体性を更に生かす学習過程も考えられる。

(4)「目標に準拠した評価」に向けた評価の観点の在り方

○ 観点別学習状況の評価の観点は、各教科等における目標と表裏一体の関係にあることから、社会科、地理歴史科、公民科においても評価の観点の在り方は、育成すべき資質・能力と一貫性を持ったものに改善することが求められる。三つの柱に沿った資質・能力と学習活動を通じて行う観点別学習状況の評価の観点との対応関係で考えると、「知識や技能」に関する評価の観点としては「社会的事象等についての知識・技能」、「思考力・判断力・表現力等」に関する評価の観点としては「社会的事象等についての思考・判断・表現」、「学びに向かう力・人間性」に関する評価の観点としては、社会科、地理歴史科、公民科においては、学習対象である社会的事象等に積極的に関わろうとすることが重要であることから、この資質・能力の趣旨を総合的に評価するため、「社会的事象等に主体的に関わろうとする態度」とすることが適当である。

○ 「社会的事象等についての知識・技能」は、学習成果として身に付けている状況を評価する趣旨の観点であり、例えば「社会的事象等についての知識」と「社会的事象等について調べまとめる技能」というように、それぞれの観点の趣旨を明確にして評価することが適当である。「社会的事象等についての知識」については、前述のように学習指導要領の内容に応じて社会生活に関するもの、我が国や世界の地理に関するもの、我が国や世界の歴史に関するもの、現代社会の政治、経済、国際関係に関するもの、人間としての在り方生き方に関するものなどについての知識であり、前述したように主として用語・語句などを含めた個別の事実等に関わる知識と、主として社会的事象等の特色や意味、理論などを含めた社会の中で汎用的に使うことのできる概念等に関わる知識とに分けて捉えることができる。それらについて学習過程に応じて「~は~である」と理解し、その知識を身に付けているかどうか、などの規準で評価することが考えられる。
また、「社会的事象等について調べまとめる技能」については、調査活動や資料活用など手段を考えて課題解決に必要な社会的事象等に関する情報を収集する技能、収集した情報をその信頼性を踏まえつつ社会的な見方・考え方に沿って読み取る技能、読み取った情報を課題解決に向けてまとめる技能の三つに分けて捉えることができる。それらを身に付けているかどうかを学習過程に応じて、例えば、必要な情報を選んでいるか、資料の特性に留意しているか、などの規準で評価することなどが考えられる。

○ 「社会的事象等についての思考・判断・表現」は、課題解決に向けて追究している状況を評価する趣旨の観点である。具体的には、社会的な見方・考え方を用いて社会的事象等の様子や仕組み、課題等を見出し、社会的事象等の意味や意義、特色や相互の関連を考察している状況、社会的な見方・考え方を生かして社会に見られる課題を把握して、その解決に向けて論拠に基づき構想している状況、考察したことや構想したことを説明している状況、考察したことや構想したことを基に議論している状況などを評価することが適当である。それらについて学習過程に応じて、多面的・多角的に考察しているかどうか、事実を基に身に付けた判断基準、複数の立場や意見などを踏まえて構想しているかどうか、適切な資料・内容や表現方法を選び、主旨が明確になるように内容構成を考え、自分の考えを論理的、効果的に説明しているかどうか、合意形成を視野に入れながら、他者の主張を踏まえたり取り入れたりして自分の考えを再構成しながら議論しているかどうか、などの規準で評価することが考えられる。

○ なお、社会的事象等を取り扱う場合には、児童生徒の考えが深まるよう様々な見解を提示することなどが重要である。特定の事柄を強調しすぎたり、一面的な見解を十分な配慮なく取り上げたりするなどの偏った取扱いにより、児童生徒が多面的・多角的に考察し、事実を客観的に捉え、公正に判断することを妨げることのないように留意したり、客観的かつ公正な資料によって指導するよう留意したりすることが求められる。そのため、諸資料を適切に活用する技能や多様な資料から考察・表現するために適切な題材等を扱った教材を確保することが期待される。

○ 「社会的事象等に主体的に関わろうとする態度」は、学習対象や学習内容に対する主体的に学習している状況を評価する趣旨の観点であり、学習対象としての社会的事象等について主体的に調べ分かろうとして、意欲的に追究している状況や、よりよい社会を考え学んだことを生かそうとしている状況を評価することが適当である。前者は、問いや追究の見通しを持っているか、振り返り学んだことの意味に気付いているか、粘り強く試行錯誤しながら解決しようとしているか、他者と協働してよりよい結果を得ようとしているか、などの規準で評価することが考えられる。後者は、学んだことを社会生活に生かそうとしているか、よりよい社会を目指して解決しようとしているか、身に付けた見方・考え方を新たな問いに生かしているか、などの規準で評価することが考えられる。

3 資質・能力の育成に向けた教育内容の改善・充実

(1)科目構成の見直し(高等学校地理歴史科、公民科)

○ 冒頭に述べたように、高等学校においては、国家及び社会の形成者として必要な知識や思考力等を基盤として選択・判断等を行い、国家及び社会の課題を解決していくために必要な力や、自国の動向とグローバルな動向を横断的・相互的に捉えて現代的な諸課題を歴史的に考察する力、持続可能な社会づくりの観点から地球規模の諸課題や地域課題を解決していく力を、全ての高校生に共通に育んでいくことが求められることから、目標や内容を含めた科目構成の見直しを行うことが求められる。

(高等学校地理歴史科において育成すべき資質・能力)
○ 高等学校地理歴史科においては、先に述べたように「社会的な見方・考え方を働かせ、課題を追究したり解決したりする活動を通して、広い視野に立ち、グローバル化する国際社会に主体的に生きる平和で民主的な国家及び社会の有為な形成者に必要な公民としての資質・能力」を次のとおり養うことが求められる。

○ 第一は、日本及び世界の歴史の展開と生活・文化の地域的特色について理解させるとともに、調査や諸資料から、社会的事象に関する様々な情報を効果的に調べまとめる技能を身に付けさせることである。

○ 第二は、地理や歴史に関わる諸事象の意味や意義、特色や相互の関連性について、概念等を活用して考察したり、課題の解決に向けて構想したりする力を養うとともに、考察・構想したことを適切な資料・内容や表現方法等を選び効果的に説明したり、議論したりする力を養うことである。

○ 第三は、地理や歴史に関わる事象について主体的に調べたり分かろうとしたりする態度や、学習上の課題、社会に見られる課題を意欲的に追究したり探究したりしようとする態度を養うとともに、多面的・多角的な考察や深い理解を通して涵養される日本国民としての自覚、我が国の国土や歴史に対する愛情、他国や他国の文化を尊重することの大切さについての自覚などを深めるようにすることである。

○ これら地理歴史科で育むべき資質・能力を勘案して、以下のように教科目標を整理することとした。

◎ 社会的な見方・考え方を働かせ、課題を追究したり解決したりする活動を通して、広い視野に立ち、グローバル化する国際社会に主体的に生きる平和で民主的な国家及び社会の有為な形成者に必要な公民としての資質・能力を次のとおり養う。
1 日本及び世界の歴史の展開と生活・文化の地域的特色に関して理解するとともに、調査や諸資料から様々な情報を効果的に調べまとめる技能を身に付けるようにする。
2 地理や歴史に関わる諸事象について、概念等を活用して多面的・多角的に考察したり、 課題の解決に向けて構想したりする力、考察・構想したことを効果的に説明したり、それらを基に議論したりする力を養うようにする。
3 地理や歴史に関わる事象について、よりよい社会の実現を視野に課題を主体的に解決しようとする態度を養うとともに、多面的・多角的な考察や深い理解を通して涵養される日本国民としての自覚、我が国の国土や歴史に対する愛情、他国や他国の文化を尊重することの大切さについての自覚等を深めるようにする。

(地理歴史科の科目構成)
○ 「論点整理」を踏まえ、地理歴史科の科目構成を見直すこととした。具体的には、共通必履修科目としての「歴史総合(仮称)」と「地理総合(仮称)」を設置し、生徒の興味・関心や進路の希望に応じて選択履修科目として「日本史探究(仮称)」、「世界史探究(仮称)」及び「地理探究(仮称)」を設置することが適当である。

○ 今回設置する「歴史総合(仮称)」については、これまで、次のような三つの視点で検討を重ねてきた。
・世界と日本の相互作用を捉えて近現代の歴史を理解する科目にしてはどうか。
・現代的な諸課題の形成に関わる近現代の歴史を考察する科目にしてはどうか。
・単元の基軸となる問いを設け資料を活用しながら歴史の学び方を習得する科目とし  てはどうか、ということである。

○ そこで、新必履修科目「歴史総合(仮称)」では、この科目で育む資質・能力として、社会的事象の歴史的な見方・考え方を働かせて、
1 世界とその中における日本を広く相互的な視野から捉え、現代的な諸課題の形成に関わる近現代の歴史についての理解とともに、諸資料から歴史に関する情報を効果的に収集する・読み取る・まとめる技能を身に付けさせること
2 現代的な諸課題の形成に関わる近現代の歴史についての諸事象等の意味や意義、特色や相互の関連について、概念等を活用して多面的・多角的に考察したり、歴史に見られる諸課題を把握し、その解決に向けて構想したりする力や、考察・構想したことを適切な資料・内容や表現方法を選び効果的に説明したり、それらを基に議論したりする力を育成すること
3 現代的な諸課題の形成に関わる近現代の歴史について主体的に調べ分かろうとして課題を意欲的に追究する態度を育成すること、よりよい社会の実現を視野に世界とその中における日本の在り方について歴史的な観点から意欲的に追究しようとする態度を育成すること、多面的・多角的な考察や深い理解を通して涵養される日本国民としての自覚や我が国の歴史に対する愛情、他国や他国の文化を尊重することの大切さについての自覚などを育成すること
と整理した。

○ そのために、科目を四つの大項目で構成することが考えられる。科目の導入にあたる「歴史の扉(案)」では、中学校社会科の学習を振り返りながら、例えば、現代的な諸課題の形成に関わる近現代の歴史を題材に、歴史を学ぶ意義や歴史の学び方を考察させ、これに続く三つの大項目は、近現代の歴史の大きな転換に着目させるという構成が適当である。そこで、「近代化と私たち(案)」では、まず「結びつく日本と世界」の中で、近代化の前の各地域の状況について、例えばアジアを舞台として日本と世界の商業や交易などに触れ導入とし、それに続き産業社会と国民国家の形成を背景として人々の生活や社会の在り方が変化したことを扱い、「大衆化と私たち(案)」では、大衆の社会参加の拡大を背景として人々の生活や社会、国際関係の在り方が変化したことを扱い、「グローバル化と私たち(案)」では、グローバル化する国際社会を背景として人々の生活や社会、国際関係の在り方が変化したことを扱い、世界とその中における日本を広く相互的な視野から捉えて、現代的な諸課題の形成に関わる近現代の歴史を考察させるという構成が適当である。その際、「自由と制限」、「富裕と貧困」、「対立と協調」、「統合と分化」、「開発と保全」などの現代的な諸課題につながる歴史的な状況を取り上げ、近現代の歴史の学習内容の焦点化を図ることが考えられる。

○ 今回設置する「地理総合(仮称)」については、これまで、次のような三つの視点で検討を重ねてきた。
・持続可能な社会づくりを目指し、環境条件と人間の営みとの関わりに着目して現代の地理的な諸課題を考察し、構想する科目にしてはどうか。
・グローバルな視座から国際理解や国際協力の在り方を、地域的な視座から防災などの諸課題への対応を考察する科目にしてはどうか。
・地図や地理情報システム(GIS)などを用いることで、汎用的で実践的な地理的技能を習得する科目としてはどうか、ということである。

○ そこで、新必履修科目「地理総合(仮称)」では、この科目で育む資質・能力として、社会的事象の地理的な見方・考え方を働かせて、
1 地球規模の自然システムや社会・経済システムの理解とともに、地図やGISなどの活用に関わる地理的技能を身に付けさせること
2 地理に関わる諸事象を地域等の枠組みの中で考察したり、そこで生起する課題を解決に向けて構想したりして、適切な資料・内容や表現方法等を選び効果的に説明したり、それらを基に議論したりする力を育成すること
3 持続可能な社会づくりに向けて、地球的、地域的課題を意欲的に追究しようとする態度を育成すること、その上で、多面的・多角的な考察や深い理解を通して涵養される日本国民としての自覚、我が国の国土に対する愛情、他国や他国の文化を尊重することの大切さについての自覚などを育成すること
と整理した。

○ そのために、科目を三つの大項目で構成することが考えられる。第一の「地図と地理情報システムの活用(案)」では、以降の地理学習等の基盤となるよう、地理を学ぶ意義を確認するとともに、現代世界の地理的認識を深め、地図やGISなどに関わる汎用的な地理的技能を身に付けさせる。第二の「国際理解と国際協力(案)」では、自然と社会・経済システムの調和を図った、世界の多様性のある生活・文化について理解させるとともに、地球規模の諸課題とその解決に向けた国際協力の在り方について考察させる。第三の「防災と持続可能な社会の構築(案)」では、日本国内や地域の自然環境と自然災害との関わりや、そこでの防災対策について考察させるとともに、生活圏の課題を、観察や調査・見学等を取り入れた授業を通じて捉え、持続可能な社会づくりのための改善、解決策を探究させるという構成が適当である。

○ 新選択科目「日本史探究(仮称)」では、この科目で育む資質・能力として、社会的事象の歴史的な見方・考え方を働かせて、
1 我が国の歴史の展開について地理的条件や世界の歴史、歴史を構成する諸要素・諸領域に着目して総合的に理解させるとともに、多様な資料から情報を効果的に収集する・読み取る・まとめる技能を身に付けさせること
2 我が国の歴史に関わる諸事象の意味や意義、特色や相互の関連について、各時代の展開に関わる概念等を活用して多面的・多角的に考察したり、歴史に見られる課題を把握し、その解決に向けて構想したりする力や、考察・構想したことを適切な資料・内容や表現方法を選び効果的に説明したり、それらを基に議論したりする力を育成すること
3 我が国の歴史の展開について、主体的に調べ分かろうとして課題を意欲的に追究する態度を育成すること、また、よりよい社会の実現を視野に、歴史の展開について、総合的な理解を踏まえて、地域や日本、世界の在り方を意欲的に探究しようとする態度を育成すること、その上で、多面的・多角的な考察や深い理解を通して涵養される日本国民としての自覚や我が国の歴史に対する愛情、他国や他国の文化を尊重することの大切さについての自覚などを育成すること
と整理した。

○ そのために日本史選択科目では、我が国の歴史の展開について、新必履修科目「歴史総合(仮称)」で習得した歴史の学び方を活用し、そこで獲得した概念等に加え、更に考察を深めるために必要な歴史的な概念等を習得しそれらを活用し、日本史に関わる豊富な資料や、地理的条件や世界の歴史、歴史を構成する様々な要素に着目して、総合的に広く深く探究する科目として構成することが適当である。例えば前近代では、多様な資料を効果的に活用して歴史を解釈、説明する力を段階的に成長させて、「歴史総合(仮称)」で習得した歴史の学び方や、歴史を考察し表現する力を一層高めたり、継承や変化に着目して、近現代につながる各時代の展開や、我が国の伝統や文化の理解を深めたりすることが適当である。近現代では、「歴史総合(仮称)」で獲得した概念等、前近代の学習で成長させた歴史を解釈、説明する力を活用して、地域の資料など多様な資料を用いて、地域と日本、世界の歴史の相互の関係を捉え、日本の近代社会の変化と多様な展開、現代につながる諸課題を多面的・多角的に考察させることが適当である。

○ 選択科目「世界史探究(仮称)」では、この科目で育む資質・能力として、社会的事象の歴史的な見方・考え方を働かせて、
1 世界の歴史の大きな枠組みと展開について、地理的条件や日本の歴史と関連付けて理解させるとともに、諸資料から世界の歴史に関する情報を収集する・読み取る・まとめる技能を身に付けさせること
2 世界の歴史に関わる諸事象の意味や意義、特色や相互の関連について、歴史の大きな枠組みに関する概念等を活用して多面的・多角的に考察したり、歴史に見られる課題を把握し、その解決に向けて構想したりする力や、考察・構想したことを適切な資料・内容や表現方法を選び効果的に説明したり、それらを基に議論したりする力を育成すること
3 世界の歴史の大きな枠組みと展開について、主体的に調べ分かろうとして課題を意欲的に追究する態度を育成すること、よりよい社会の実現を視野に入れて、歴史の大きな枠組みと展開についての理解を踏まえ、世界や日本の在り方を意欲的に探究しようとする態度を育成すること、多面的・多角的な考察や深い理解を通して涵養される日本国民としての自覚や我が国の歴史に対する愛情、他国や他国の文化を尊重することの大切さについての自覚などを育成すること
と整理した。

○ そのために世界史選択科目では、世界の歴史の大きな枠組みと展開について扱い、新必履修科目「歴史総合(仮称)」で習得した歴史の学び方や獲得した概念等に加え、更に考察を深めるために必要な歴史的な概念等を習得しそれらを活用して、地理的条件や日本の歴史とも関連付けて、世界の歴史に関わる諸事象の意味や意義等を広く深く考察し探究させる科目として構成することが適当である。例えば前近代では、諸地域世界の社会や生活、文化などの多様性や複合性を扱い、諸資料を効果的に活用し歴史を考察し表現する活動を重視して、主に時間軸(タテ)と空間軸(ヨコ)の変化に着目して考察させることが適当である。近現代では、関係性を深める諸地域世界の特質や、多元的な相互依存関係を深めつつ地球規模で一体化が進む現代世界の構造的特質を扱い、近現代に関わる豊富な資料を効果的に活用し広い視野から歴史を考察し表現する活動を重視して、空間軸(ヨコ)の変化に着目して、現代につながる諸課題を多面的・多角的に考察させることが適当である。

○ 新選択科目「地理探究(仮称)」では、この科目で育む資質・能力として、社会的事象の地理的な見方・考え方を働かせて、
1 世界の空間的な諸事象の規則性、傾向性や、世界の諸地域の構造や変容についての理解とともに、地図やGISなどの活用に関わる地理的技能を実践的に身に付けさせること
2 地理に関わる諸事象を系統地理的あるいは地誌的に考察したり、地域に見られる課題を把握し、その解決に向けて構想したりして、適切な資料・内容や表現方法等を選び効果的に説明したり、それらを基に議論したりする力を育成すること
3 持続可能な社会づくりに向けて、地球的、地域的課題を意欲的に追究しようとする態度を育成すること、その上で、多面的・多角的な考察や深い理解を通して涵養される日本国民としての自覚、我が国の国土に対する愛情、他国や他国の文化を尊重することの大切さについての自覚などを育成すること
と整理した。

○ そのために、地理選択科目では、系統地理的に事象の規則性や傾向性などを考察させるとともに、それぞれに環境問題、食料問題などの関連諸課題を追究させることが考えられる。また、地域の概念、地域区分の意義を考察し、実際に地域を区分した上で、地誌的に地域の構造や変容などを考察させるとともに、地域ならではの諸課題と地球的課題の関連性を追究させることが考えられる。更に、現代世界における日本の国土の特色について多面的・多角的に考察し、我が国が抱える地理的な諸課題を探究する活動を通して、その解決の方向性や将来の国土の在り方などについて展望させるという構成が考えられる。

(高等学校公民科において育成すべき資質・能力)
○ 高等学校公民科においては、先に述べたように「社会的な見方・考え方を働かせ、課題を追究したり解決したりする活動を通して、広い視野に立ち、グローバル化する国際社会に主体的に生きる平和で民主的な国家及び社会の有為な形成者に必要な公民としての資質・能力」を次のとおり養うことが求められる。

○ 第一は、国家及び社会の形成者として必要な選択・判断の手掛かりとなる概念や理論、及び倫理、政治、経済等に関する理解、調査や諸資料から社会的事象や人間としての在り方生き方に関する様々な情報を効果的に調べまとめる技能を身に付けさせることである。

○ 第二は、現代の諸課題について事実を基に概念等を活用して多面的・多角的に考察したり、解決に向けて構想したりする力を養うとともに、合意形成や社会参画を視野に入れながら、社会的事象や課題について構想したことを、妥当性や効果、実現可能性などを指標にして論拠を基に議論する力を養うことである。

○ 第三は、人間と社会の在り方に関わる課題について、よりよい社会の実現のために主体的に解決しようとする態度を養うとともに、多面的・多角的な考察や深い理解を通して涵養される人間としての在り方生き方についての自覚、自国を愛しその平和と繁栄を図ることや、各国が相互に主権を尊重し各国民が協力し合うことの大切さについての自覚などを深めるようにすることである。

○ これら公民科で育むべき資質・能力を勘案して、以下のように教科目標を整理することとした。

◎ 社会的な見方・考え方を働かせ、課題を追究したり解決したりする活動を通して、広い視野に立ち、グローバル化する国際社会に主体的に生きる平和で民主的な国家及び社会の有為な形成者に必要な公民としての資質・能力を次のとおり養う。
1 選択・判断の手掛かりとなる概念や理論、及び倫理、政治、経済等に関わる諸課題に関して理解するとともに、調査や諸資料から様々な情報を効果的に調べまとめる技能を身に付けるようにする。
2 現代の諸課題について、事実を基に概念等を活用して多面的・多角的に考察したり、解決に向けて構想したりする力、合意形成や社会参画を視野に入れながら構想したことを議論する力を養うようにする。
3 人間と社会の在り方に関わる課題について、よりよい社会の実現のために主体的に解決しようとする態度を養うとともに、多面的・多角的な考察や深い理解を通して涵養される人間としての在り方生き方についての自覚、自国を愛しその平和と繁栄を図ることや、各国が相互に主権を尊重し各国民が協力し合うことの大切さについての自覚等を深めるようにする。

(公民科の科目構成)
○ 公民科の科目構成を見直し、共通必履修科目としての「公共(仮称)」を設置し、その上に選択履修科目「倫理(仮称)」及び「政治・経済(仮称)」を設置することが適当である。その際、「公共(仮称)」と同様に1科目でもって公民科の教科目標を達成することのできる現行の選択必履修科目「現代社会」については、「公共(仮称)」における三つの大項目相互の関係や学習内容において共通する点が多く、その発展と捉えることもできることから、科目を設置しないことが適当である。

○ 新必履修科目「公共(仮称)」では、この科目で育む資質・能力として、人間と社会の在り方についての見方・考え方を働かせて、
1 現代社会の諸課題を捉え考察し、国家及び社会の形成者として必要な選択・判断の手掛かりとなる概念的な枠組みや倫理的、法的、政治的、経済的主体等に関する理解とともに、諸資料から、倫理的、法的、政治的、経済的主体等となるために必要な情報を効果的に収集する・読み取る・まとめる技能を身に付けさせること
2 選択・判断の手掛かりとなる考え方や公共的な空間における基本的原理を活用して、現代の社会的事象や現実社会の諸課題の解決に向けて事実を基に多面的・多角的に考察したり、構想したりする力や、合意形成や社会参画を視野に入れながら、社会的事象や課題について構想したことを、妥当性や効果、実現可能性などを指標にして論拠を基に議論する力を育成すること
3 社会の在り方や人間としての在り方生き方に関わる事象や課題について主体的に調べ分かろうとして課題を意欲的に追究する態度を育成すること、また、よりよい社会の実現のために現実社会の諸課題を見出し、その解決に向けて他者と協働して意欲的に考察・構想し、論拠を基に説明・議論することを通して社会に参画し、よりよい社会を形成しようとする態度を育成すること、その上で、多面的・多角的な考察や深い理解を通して涵養される、現代社会に生きる人間としての在り方生き方についての自覚、自国を愛しその平和と繁栄を図ることや、各国が相互に主権を尊重し各国民が協力し合うことの大切さについての自覚などを育成すること
と整理した。

○ そのために新必履修科目「公共(仮称)」では、第一に現代社会の諸課題を捉え考察し、選択・判断するための手掛かりとなる概念や理論を、古今東西の知的蓄積を踏まえて習得し、第二に選択・判断するための手掛かりとなる考え方や公共的な空間における基本的原理を活用して、現代の社会的事象や現実社会の諸課題について、事実を基に協働的に考察し、合意形成や社会参画を視野に入れながら解決に向けて構想したことの妥当性や効果、実現可能性などを指標にして論拠を基に議論する力を養うとともに、第三に持続可能な社会づくりの主体となるために、様々な課題の発見・解決に向けた探究を行い、「グローバル化する国際社会に主体的に生きる平和で民主的な国家及び社会の有為な形成者」として必要な資質・能力を養う科目とし、三つの大項目で構成することが考えられる。

○ その第一の「公共の扉」では、始めに、自立した主体とは、孤立して生きるのではなく、他者との協働により国家や社会など公共的な空間を作る主体であるということを学ぶ。次に、今まで受け継がれてきた我が国の文化的蓄積を含む古今東西の先人の取組、知恵などを踏まえて、社会に参画し、他者と協働する倫理的主体として、行為の善さを個人が判断するための手掛かりとなる、「その行為の結果である、個人や社会全体の幸福を重視する考え方」と「その行為の動機となる人間的責務としての公正などを重視する考え方」を理解させる。最後に、個人と社会との関わりにおいて、公共的な空間における基本的原理について考えさせることを通して、人間としての在り方生き方や公共的な空間の在り方を考える上での基盤となる、人間と社会の在り方についての見方・考え方を育み、以下の大項目の学習につなげることが適当である。

○ また、この大項目で指導したことが、以後の学習に活用されていくことができるよう十分に留意して指導計画を作成し、それに基づいた学習を展開することが求められる。
なお、この大項目では指導のねらいを明確にした上で、例えば、囚人のジレンマ、共有地の悲劇、最後通牒ゲーム等の思考実験や、環境保護、生命倫理等について概念的に考える学習活動を取り入れたり、民主主義、法の支配、自由・権利と責任・義務、相互承認などを取り上げ、個人の尊重を前提に、人間の尊厳と平等、協働の利益と社会の安定性の確保をともに図ることなどの公共的な空間における基本的原理に関わる事象を取り上げたりすることが考えられる。

○ 第二の「自立した主体として国家・社会の形成に参画し、他者と協働するために」では、小・中学校社会科で習得した知識等を基盤に、人間と社会の在り方についての見方・考え方を働かせながら、公共的な空間を形作る政治、経済、法などのシステムの基本を理解させるとともに、そうしたシステムを通じてどのように社会に参画し他者と協働していくかということについて、現実社会の諸課題を自ら見出し、事実を基に考察、構想させることが求められる。併せて、自立した主体として生きるために必要な知識・技能、思考力・判断力・表現力及び態度を養い、第三の「持続可能な社会づくりの主体となるために」における課題を探究する学習が効果的に行われるよう課題意識の醸成に努めるようにすることが求められる。

○ また、この大項目では指導のねらいを明確にした上で、例えば、以下に示す題材を取り扱うことが考えられる。なお、その際、個別的・網羅的に題材を取り扱うことなく、政治的主体、経済的主体、法的主体、様々な情報の発信・受信主体の相互の有機的な関連を図り、これらのうち二つ、あるいは三つが複合的に関連し合う題材については複数の観点から取り扱うことが求められる。

・ 議論により、意見や信念、利害の対立状況を調整し、合意形成することを通して、よりよい社会を築くことを協働して目指す政治的主体としては、政治参加、世論の形成、地方自治、国家主権(領土を含む)、国際貢献などの題材を取り扱うことが考えられる。
・ 公正なルールを作ってその下で経済活動を行うことを通して、個人の尊重とより活発な経済活動をともに成り立たせることを協働して目指す経済的主体としては、職業選択、金融の働き、経済のグローバル化と相互依存関係の深まりなどの題材を取り扱うことが考えられる。
・ 公正な手続きに則り各人の意見や利害を公平に調整して、個人や社会の紛争を調停・解決することを協働して目指す法的主体としては、裁判制度と司法参加などの題材を取り扱うことが考えられる。
・ 情報に関する責任や、利便性と安全性を多面的・多角的に考えていくことを通して、望ましい情報社会を築くことを協働して目指す様々な情報の発信・受信主体としては、情報モラルなどの題材を取り扱うことが考えられる。
・ また、複数の主体が複合的に関連し合う題材としては、財政と税、社会保障、市場経済の機能と限界、雇用、労働問題(労働関係法制を含む)、契約、消費者の権利や責任、多様な契約、メディア、情報リテラシー、男女共同参画などの題材を取り扱うことが考えられる。

○ これらの題材を取り扱う場合には、選挙管理委員会、消費者センター、弁護士などの関係する専門家・機関と連携・協働したり、討論、模擬裁判などの学習活動を効果的に取り入れたりすることによって学習効果を高めることが期待できる。

○ また、これら様々な主体となる個人を支える家族・家庭や地域等にあるコミュニティを基盤に、自立した主体として社会に参画し、他者と協働することの意義について考えさせることが必要である。

○ 第三の「持続可能な社会づくりの主体となるために」では、前二つの大項目における学習を踏まえて、個人を起点として、自立、協働の観点から、持続可能な地域、国家・社会、国際社会づくりに向けて現実社会の諸課題の解決に向けて構想する力、合意形成や社会参画を視野に入れながら、構想したことの妥当性や効果、実現可能性などを指標にして議論する力などを育むことをねらいとして、現実社会の諸課題、例えば、公共的な場づくりや安全を目指した地域の活性化、受益と負担の均衡や世代間の調和がとれた社会保障、文化と宗教の多様性、国際平和、国際経済格差の是正と国際協力などを探究する学習を行い、その解決に向けて、各人がどのように主体的に関わっていくかを考えるという構成が考えられる。その際、現代社会の構造等に着目して考察するこの科目の特質を踏まえるとともに、地理歴史科における必履修科目である「地理総合(仮称)」では、持続可能な社会づくりを目指し、環境条件と人間の営みとの関わりに着目して現代の地理的な諸課題を考察したり、「歴史総合(仮称)」では、世界の人々が協調し共存できる持続可能な社会の実現について、歴史的経緯を基に考察したりすることなどを勘案し、教科間の学習の有機的な関連が図られるようにすることが求められる。

○ なお、「公共(仮称)」においては、教科目標の実現を見通した上で、キャリア教育の観点から、特別活動のホームルーム活動などと連携し、インターンシップの事前・事後の学習との関連を図ることなどを通して、経済、法、情報発信などの主体として社会に参画する力を育む中核的機能を担うことが求められる。また、家族・家庭、生涯の生活の設計や消費生活等に関する個人を起点とした自立した主体となる力を育む家庭科、情報リテラシーを扱う情報科、個人の安全指導を行う保健体育科及び、横断的・総合的な学習や探究的な学習を行う総合的な探究の時間(仮称)などと連携を図り、効果的な学習が行われるよう留意することが求められる。

○ 新選択科目「倫理(仮称)」では、この科目で育む資質・能力として、人間としての在り方生き方についての見方・考え方を働かせて、
1 古今東西の幅広い知的蓄積を通して、現代の諸課題を捉え、より深く思索するために必要な概念や理論の理解とともに、諸資料から、人間としての在り方生き方に関わる情報を効果的に収集する・読み取る・まとめる技能を身に付けさせること
2 他者と共によりよく生きる自己の生き方についてより深く思索する力や、現代の倫理的諸課題を解決するために概念や理論を活用し、論理的に思考し、思索を深め、説明したり対話したりする力を育成すること
3 人間としての在り方生き方に関わる事象や課題について主体的に調べ分かろうとして課題を意欲的に追究したりする態度を育成すること、また、よりよい社会の実現を視野に現代の倫理的諸課題を見出し、その解決に向けて他者と協働して意欲的に考察・構想し、説明・対話することを通して、他者や社会と積極的に関わりながらよりよく生きる自己を形成しようとする態度を育成すること、その上で、多面的・多角的な考察や深い理解を通して涵養される、現代社会に生きる人間としての在り方生き方についてのより深い自覚などを育成すること
と整理した。

○ そのために、新選択科目「倫理(仮称)」では、共通必履修科目「公共(仮称)」で習得した個人が判断するための手掛かりとなる考え方を基盤とし、古今東西の幅広い知的蓄積を通してより深く思索するための概念や理論を理解し、それらを活用して現代の倫理的課題を探究するとともに、人間としての在り方生き方についてより深く自覚し、人格の完成に向けて自己の生き方の確立を図り、他者と共に生きる主体を育む「倫理」に発展させる。そのために、先哲の思想を個別に取り上げ学ぶのではなく、原典を読み倫理的諸価値について時代を超えた様々な先哲による考え方を手掛かりにして哲学に関わる対話的手法も活用して「考える倫理」が行われるようにすることが適当である。

○ 新選択科目「政治・経済(仮称)」では、この科目で育む資質・能力として、社会の在り方についての見方・考え方を働かせて、
1 正解が一つに定まらない、現実社会の複雑な諸課題の解決に向けて探究するために必要な概念や理論の理解とともに、政治や経済などに関わる諸資料から、現実社会の諸課題の解決に必要な情報を効果的に収集する・読み取る・まとめる技能を身に付けさせること、
2 国家及び社会の形成者として必要な選択・判断の基準となる概念等を活用して、社会に見られる複雑な課題を把握し、説明するとともに、身に付けた判断基準を根拠に解決の在り方を構想する力や、構想したことの妥当性や効果、実現可能性などを踏まえて議論し、合意形成や社会形成に向かう力を育成すること
3 社会の在り方に関わる事象や課題について主体的に調べ分かろうとしたりする態度を育成すること、また、よりよい社会の実現のために現実社会の諸課題を見出し、その解決に向けて他者と協働して意欲的に考察・構想し、説明・議論することを通して社会に参画し、よりよい社会を形成していく態度を育成すること、その上で、多面的・多角的な考察や深い理解を通して涵養される、自国を愛しその平和と繁栄を図ることや、各国が相互に主権を尊重し各国民が協力し合うことの大切さについてのより深い自覚などを育成すること
と整理した。

○ そのために、新選択科目「政治・経済(仮称)」では、小・中学校社会科で身に付けた現代社会の見方・考え方や共通必履修科目「公共(仮称)」で身に付けた人間と社会の在り方についての見方・考え方を基盤に、「公共(仮称)」で習得した選択・判断するための手掛かりとなる概念等を活用し、政治と経済の特質を総合的・一体的に捉えるとともに、グローバルな視点をより重視して現代日本の政治や経済の諸課題や国際社会における日本の役割など、正解が一つに定まらない現実社会の諸課題を協働して探究し、国家及び社会の形成に、より積極的な役割を果たす主体を育む「政治・経済」に発展させることが適当である。

○ なお、これらの高等学校の地理歴史科や公民科の各科目において、特に、人間としての在り方生き方や、社会の在り方に関わって取り上げる事象については、多様な見方や考え方ができることから、生徒の考えが深まるよう様々な見解を提示することなどが求められる。その際、特定の事柄を強調しすぎたり、一面的な見解を十分な配慮なく取り上げたりするなど、偏った取扱いにより、生徒が多面的・多角的に考察し、事実を客観的に捉え、公正に判断することを妨げることのないよう留意するとともに、客観的かつ公正な資料に基づいて指導するよう留意することが必要である。このことについては、小・中学校においても同様に留意することが必要である。

(2)資質・能力の整理と学習過程の在り方を踏まえた教育内容の構造化

○  社会科、地理歴史科、公民科の内容については、三つの柱に沿った資質・能力や学習過程の在り方を踏まえて、それらの趣旨を実現すべく、次の二点から教育内容を改めて構造化することが求められる。

○ 視点の第一は、社会科における内容の枠組みや対象に基づいた構造化である。小学校社会科では、中学校社会科の分野別構造とは異なり、社会的事象を総合的に捉える内容として構成されている。そのため教員は、指導している内容が社会科全体においてどのような位置付けにあるか、中学校社会科とどのようにつながるかといったことを意識しづらいという点が課題として指摘されている。小学校社会科の特質を生かしつつも、時間的(歴史的)にも空間的(地理的)にも、あるいは相互関係的にも捉える中学校社会科の分野別の内容との接続が見えるようにするためには、1地理的環境と人々の生活、2歴史と人々の生活、3現代社会の仕組みや働きと人々の生活という三つの枠組みに位置付ける整理が考えられる。また、1、2は空間的な広がりを念頭に地域、日本、世界と、3は社会的事象について経済・産業、政治及び国際関係と、対象を区分する整理も考えられる。

○ 視点の第二は、社会的な見方・考え方に基づいた構造化である。社会的な見方・考え方は社会的事象等を見たり考えたりする際の視点や方法であり、時間、空間、相互関係などの視点に着目して事実等に関する知識を習得し、それらを比較、関連付けなどして考察・構想し、特色や意味、理論などの概念等に関する知識を身に付けるために必要となるものである。このことを踏まえて、学習指導要領の内容について、例えば、社会的な見方・考え方と概念等に関する知識との関係などを整理することが考えられる。

(3)現代的な諸課題を踏まえた教育内容の見直し

○ 社会に見られる課題を把握して、その解決に向けて構想する力を養うためには、現行学習指導要領において充実された伝統・文化等に関する様々な理解を引き続き深め、児童生徒が生きる現在及び将来の社会の変化を見据え、その課題について指導することが必要である。将来の予測が困難な時代であるが、グローバル化、持続可能な社会の構築、情報化等による産業構造の変化、少子高齢化等による地域社会の変化など将来につながる現代的な諸課題を踏まえた教育内容の見直しを図ることが必要である。

(グローバル化への対応)
○ グローバル化する国際社会を主体的に生きるための資質・能力の育成の視点から、日本と世界の生活・文化の多様性の理解や、地球規模の諸課題や地域的な諸課題の解決について、例えば、日本固有の領土について地理的な側面や国際的な関係に着目して考えるなど、時間的・空間的など多様な視点から考察する力を身に付けていくことが求められる。

○ 小学校社会科においては、地方公共団体などが行うグローバル化への対応を取り上げることや、世界との関係に目を向けて我が国の歴史的事象の理解を図ることなど、世界の国々との関わりへの関心を高めるよう教育内容を見直すことなどが考えられる。

○ 中学校社会科歴史的分野では、高等学校地理歴史科に新必履修科目「歴史総合(仮称)」が設置されることを受け、我が国の歴史的事象に直接関わる世界の歴史に加え、間接的な影響を与えた世界の歴史の学習を充実させ、より広い視野を持って、我が国の歴史の理解を促すことが考えられる。そのために、例えば、世界で行われていた異なる文化との接触や交流が日本に影響を及ぼしていることに着目して、ムスリム商人の活動をはじめとした交流などを取り上げることなどが考えられる。

(持続可能な社会の形成への対応)
○ グローバル化への対応の観点も含め、持続可能な社会づくりの視点が一層大切になっている。そのため、例えば、小学校社会科においては、人口減少や少子高齢化など地域社会の変化を取り上げることや、中学校社会科地理的分野においては、引き続き「世界の諸地域」の学習においてその地理的な認識を深めることを重視し、その際、国境を越えた地球規模の課題等を主題として取り上げ、持続可能な社会づくりの視点を生かした学習を充実させることなどが考えられる。

(情報化の進展等による産業構造の変化への対応)
○ 前回の学習指導要領の改訂においては、知識基盤社会の時代に対応した改訂が行われた。前回の改訂以降、この知識基盤社会の流れはますます加速しており、社会が変化し、それに伴い産業構造の変化が生じている。例えば情報化の進展は、地理的・空間的な制約を軽減させている。また、ネットワークの発達は世界的な情報量の増大を起こしており、そこに、IoT、ビッグデータ、人工知能などと結び付き、付加価値を生み出す新しい産業や社会が創出されつつある。
このため、情報化など知識基盤社会化による産業や社会の構造的な変化やその中での起業に関する扱いについて、例えばそれらを支える個人の投資、貯蓄と企業の資金調達の関係を含めた金融の働きについての扱いを充実させることが考えられる。

(防災・安全への対応)
○  未曾有の大災害となった東日本大震災を含め多くの自然災害が発生する我が国では、災害に備え、災害を乗り越えるために、防災教育を含む安全教育の充実が求められている。例えば、小学校社会科においては、自然災害時における地方公共団体の働きや、地域の人々の工夫・努力、地理的・歴史的観点を踏まえた自然災害の状況、防災情報に基づく適切な行動の在り方等に関する指導の充実が考えられる。また、中学校社会科では、地理的分野において地域社会における安全、防災上の災害要因や事故防止の理解、空間情報に基づく危険の予測に関する指導の充実が、公民的分野において安全・安心な社会づくりや、防災情報の発信・活用に関する指導の充実が、また、高等学校地理歴史科や公民科においては、防災や災害復旧、それらに関連する制度も含め安全・安心な地域づくりへの参画など現代的課題等の理解に関する指導を行うことが考えられる。これらの教育内容は、我が国の国土において発生する自然災害を対象とすることから、日本の地形や気候の特色、海に囲まれ多くの島々から構成される我が国の国土の様子を理解する学習の充実も求められる。

(選挙権年齢の18歳への引き下げに伴う政治参加等への対応)
○ 選挙権年齢が18歳に引き下げられたことも踏まえ、高等学校公民科の学びにつながるよう、小学校や中学校における政治や社会に積極的に参画する資質・能力の一層の育成が求められている。例えば、小学校社会科において、引き続き我が国の政治の仕組みや日本国憲法に関する学習を重視するとともに、地方公共団体の働きや選挙の意味などについての充実を図るなど政治に関する教育内容を見直すことなどが考えられる。中学校社会科では、歴史的分野の学習においては、例えば、民主政治の来歴や人権思想の広がりなどに着目して、古代ギリシャ・ローマの社会やアメリカ合衆国建国における自由や平等への動きなどを取り上げ参政権の扱いを充実させること、公民的分野の学習において政治参加の扱いを充実させることなどが考えられる。

○ 更に、18歳での選挙権の行使の前提として、政治的主体のみならず、消費者としての性格を含め経済的主体を育む高等学校公民科「公共(仮称)」につながるよう、財政や税、社会保障、雇用、労働や金融といった経済的な側面を持つ課題に対する理解、そのよりよい姿や対応を求める思考力・判断力・表現力等やそれらの課題の解決に積極的に関わろうとする態度等について、関係機関等と連携するなどして教育活動の一層の充実を図ることが求められる。

4 学習・指導の改善・充実や教材の充実

(1)特別支援教育の充実、個に応じた学習の充実

○ 児童生徒の資質・能力の育成を目指し、教科等の目標を達成するために、十分な学びが実現できるよう、学習課程で考えられる「困難さの状態」に対する「配慮の意図」と「手立て」を示していくことが大切である。

○  例えば、地図等の資料から必要な情報を見付け出したり、読み取ったりすることが困難な場合には、読み取りやすくするために、地図等の情報を拡大したり、見る範囲を限定したり、掲載されている情報を精選して、視点を明確にするなどの配慮が考えられる。

○ また、社会的事象等に興味・関心が持てない場合には、その社会的事象等の意味を理解しやすくするため、社会の動きと身近な生活がつながっていることを実感できるよう、特別活動などとの関連付けなどを通じて、実際的な体験を取り入れ、学習の順序を分かりやすく説明し、安心して学習できるよう配慮が考えられる。

○ 学習過程における動機付けの場面において学習問題に気付くことが難しい場合には、社会的事象等を読み取りやすくするために、写真などの資料や発問を工夫すること、また、方向付けの場面において、予想を立てることが困難な場合には、見通しが持てるよう事実を短冊に示し、学習順序を考えられるようにすること、そして、情報収集や考察、まとめの場面において、どの観点で考えるのか難しい場合には、ヒントが記入されているワークシートを作成することなどの配慮が考えられる。

(2)「深い学び」、「対話的な学び」、「主体的な学び」に向けた学習・指導の改善・充実

○ アクティブ・ラーニングでは、「深い学び」、「対話的な学び」、「主体的な学び」の実現が大切であり、「~法」、「~型」といった特定の学習活動や学習スタイルの固定化や普及を求めているものではなく、指導方法の不断の見直し、改善を求めていることを踏まえることが大切である。

○ 主体的な学びの実現については、児童生徒が学習課題を把握しその解決への見通しを持つことが求められる。そのためには、動機付けとして学習対象に対する関心や課題意識を持つようにすることが、方向付けとして仮説や学習計画を立てたり調査方法や追究方法の吟味をしたりすることがそれぞれ考えられる。また、学習したことを振り返って、学んだことの意味や意義に気付いたり新たな課題(問い)を持ったり、学んだことを社会生活に生かそうとしたりすることも主体的な学びにつながると考えられる。そのためには、単元等を通した学習過程の中で、学習内容・活動に応じた振り返りの場面を設定し、児童生徒の表現を促すようにすることなどが大切である。

○ 対話的な学びの実現については、特に小学校社会科においては「学び合い」、「関わり合い」等の言葉で実践的に研究され、学習過程を通した様々な学習場面で充実が図られてきており、そのよさを踏襲していくことが求められる。また、実社会で働く人々が連携・協働して社会に見られる課題を解決している姿を調べたり、実社会の人々の話を聞いたりする活動も一定の広がりを見せており、中学校社会科、高等学校地理歴史科、公民科においてもその特質に応じてそれぞれ今後の一層の充実が求められる。その一方で、話合いの指導が十分に行われずグループによる活動が優先し内容が深まらないといった課題が指摘されるところであり、深い学びとの関わりに留意し、その改善を図ることが大切である。

○ また、主体的な学びや対話的な学びの過程で、ICTを活用することも効果的である。例えば、児童生徒の興味・関心に基づきインターネット等を用いて情報を収集する活動や、大型ディスプレイなどを用いて調べたり考えたりしたことを発表したり、互いの情報を交流したりする活動等が考えられる。

○  主体的・対話的な学びを通した深い学びの実現のためには、これらのことを踏まえるとともに、社会的な見方・考え方を用いた考察、構想や、説明、議論等の学習活動が組み込まれた課題解決的な学習の充実が不可欠である。具体的には、教科・科目及び分野の特質に根ざした追究の視点と、それを生かした学習課題(問い)の設定、諸資料等の信頼性を踏まえ、これを基にした多面的・多角的な考察、社会に見られる課題の解決に向けた広い視野からの論拠に基づく構想(選択・判断)、論理的な説明、合意形成や社会参画を視野に入れながらの議論などを通し、主として用語・語句などを含めた個別の事実等に関する知識のみならず、主として社会的事象等の特色や意味、理論などを含めた社会の中で汎用的に使うことのできる概念等に関わる知識を獲得するように学習を設計することが求められる。

(3)教材の在り方

○ 3.で述べた資質・能力の育成に向けた教育内容の改善・充実のためには、教材の在り方を見直すことが必要である。

○ 小学校社会科においては、資質・能力を段階的に育成していく観点から、これまで第4学年から配布されていた「教科用図書 地図」を第3学年から配布するようにし、位置や空間的な広がりに着目した社会的事象の見方・考え方の育成やグローバル化への対応を図っていくことなどが求められる。

○ また、高等学校地理歴史科の歴史系科目では、教材で扱われる用語が膨大になっていることが指摘されていることから、歴史用語について、研究者と教員との対話を通じ、社会的事象の歴史的な見方・考え方を踏まえて、概念等に関する知識を明確化するなどして構造化することが求められる。

○ なお、新必履修科目では諸資料を適切に活用する技能の育成、選択科目で技能を一層高め多様な資料から考察・表現する学習などが求められていることから、歴史を多面的・多角的に考察するための適切な題材を学校で活用できるよう、大学等の研究成果の提供などが期待される。

○ 地理系科目においては、GISの指導に関わり、コンピュータ等の機器やそれを用いる環境、教材ソフト等の導入の遅れが、教員の経験不足とともに、実践上の大きな障壁となりうると考えられる。そこで、教育現場におけるGIS活用を普及するための環境整備、広報等が必要であり、活用可能なデータ情報の一元的整理・活用などが求められる。

5 必要な条件整備等について

○ 社会科、地理歴史科、公民科において、2.で述べた資質・能力の育成を図るためには、外部人材や関係諸機関、博物館や資料館、図書館などとの連携、教員研修などの条件整備が求められる。

○ 教科の内容に関係する専門家や関係諸機関等と円滑な連携・協働を図ることも、社会との関わりを意識した課題解決的な学習活動を充実させるために重要である。例えば小学校社会科においては、地域の生産や販売の仕事に関わる人々、地域の暮らしの変化を伝えてくれる人、地域の安全や健康な生活、良好な生活環境を守るための諸活動に関わる人々、伝統と文化や自然などの地域の資源を保護・活用している人々、産業に従事する人々、政治の働きに関わる関係諸機関など、実社会で働く人々と連携した学習が大切である。中学校社会科、高等学校地理歴史科、公民科においても同様であり、教科・科目及び分野の特質や学習内容等に応じた専門家や関係諸機関と円滑な連携・協働を図り、教育課程の目指すところを社会と共有していくことが大切である。その際、学校支援地域本部の活動と連携・協働を図ることも有効であると考えられる。また、博物館や資料館、図書館などの公共施設を活用することも引き続き重要である。

○ また、教員を対象にした研修の充実も求められる。「論点整理」で示されたアクティブ・ラーニングについては、特定の学習活動や学習スタイルの固定化や普及を求めているものではなく、指導方法の不断の見直し、改善を求めていることから、小中高等学校の各段階において研修を深めていく必要がある。その際、社会との関わりを意識した課題解決的な学習活動を重視する観点からは、専門家等を活用した研修を工夫していくことが考えられる。
特に、新たに科目の構成が見直される高等学校の地理歴史科、公民科においては、教育委員会、教育センター等はもとより、各学校においても、社会科、地理歴史科、公民科を通して育成すべき資質・能力を踏まえて養われる社会的な見方・考え方の捉え方についての周知、地理歴史科、公民科の共通必履修科目及び選択科目で育成すべき資質・能力及びそれぞれの教科・科目の目標や内容の周知とともに、それを実現するための授業設計の在り方等についての研修を深めることが考えられる。
また、大学における教員養成においても上記の趣旨を踏まえた取組が求められる。

○ 地理歴史科、公民科の学習内容と大学入学者選抜との関係については、高大接続システム改革会議における、「学力の3要素」を多面的・総合的に評価する入学者選抜への改善等に係る具体的方策の進捗状況を勘案するとともに、高等学校においても指導の在り方と一体となって、評価の在り方を見直すことが一層求められる。

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