教育課程部会 高等学校の地歴・公民科科目の在り方に関する特別チーム(第4回) 議事録

1.日時

平成28年5月18日(水曜日)17時00分~19時00分

2.場所

文部科学省 3階 第一講堂
東京都千代田区霞が関3-2-2

3.議題

  1. 高等学校の地理歴史科及び公民科の改善充実について
  2. その他

4.議事録

【田中主査】  それでは定刻となりましたので,ただいまから,中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会高等学校の地歴・公民科科目の在り方に関する特別チームの第4回を開催いたします。本日は大変お忙しい中,御参集いただきまして,誠にありがとうございます。
まず,会議に先立ちまして,先月14日より続く,熊本県を中心とした九州地方での一連の地震によって尊い命を落とされた方々の御冥福をお祈り申し上げますと共に,被災地の皆様に心からお見舞い申し上げます。現在,我が国では被災地において,関係機関の方々をはじめとして,国を挙げて多くの人々がそれぞれの持ち場で支援に当たっておられます。被災された方々や地域の一刻も早い復旧・復興を心からお祈り申し上げます。
本特別チームの開催は,前回,2月16日の開催から約3か月ぶりということになりますが,その間,「社会,地理・歴史,公民ワーキンググループ」において,全12回において御議論いただいておりますので,その状況を踏まえて御議論いただきたいと存じております。同ワーキンググループにおいて精力的に御議論いただき,大変感謝しておりますが,本日は,同ワーキングの主査でありまして本特別チームの主査代理でいらっしゃいます土井先生にいらしていただいております。また,同ワーキングの主査代理の原田先生にもいらしていただいております。ありがとうございます。お2人の御指摘も賜りまして,また御議論も御参加いただければと思っております。
それでは,最初に配付資料の確認をお願いいたします。大内さん,よろしくお願いいたします。

【大内学校教育官】  失礼いたします。配付資料の確認の前に,文科省におきまして人事異動がございましたので,御紹介させていただきます。伯井大臣官房審議官の後任といたしまして浅田大臣官房審議官が着任してございます。

【浅田大臣官房審議官】  浅田です。よろしくお願いいたします。

【大内学校教育官】  また,中尾視学官の後任といたしまして澤井視学官が着任しております。

【澤井視学官】  澤井と申します。よろしくお願いいたします。

【大内学校教育官】  それでは,配付資料の確認をさせていただきます。本日は,議事次第に記載しておりますとおり,資料1から資料の19まで,それから参考資料といたしまして資料1から資料6ということで御用意させていただいております。また,議事次第には掲載してございませんけれども,先日,日本学術会議さんから二つの提言を頂戴しておりまして,一つは「『歴史総合』に期待されるもの」という提言,それからもう一つが,「18歳を市民に 市民性の涵養をめざす高等学校公民科の改革」ということで, 5月16日に提言を頂戴しております。こちらも参考として机上の方に配付させていただいてございます。不足等がございましたら,事務局の方にお申し付けいただければと思います。以上でございます。

【田中主査】  大内さん,どうもありがとうございました。
それでは,これより議事に入らせていただきます。
本日は報道関係者より,会議の撮影及び録音のお申出がございまして,これを許可しておりますので御承知おきください。なお,テレビカメラによる撮影につきましては,申し訳ございませんけれども,ここまでとさせていただきますので,この後はカメラだけは御退席いただきたいと存じます。
さて,本日,先ほど申し上げましたとおり,「社会,地理・歴史,公民ワーキンググループ」におけるこれまでの議論について,ワーキンググループとしての取りまとめ,たたき台をお示しいただいております。議事の流れとしましては,事務局から資料に基づいた説明を頂いた後,議論の内容ごとに御意見を伺いたいと考えております。
これに先立ちまして,教育課程部会の下に置かれた学校段階等別部会における議論について検討が進められておりますので,これらの状況について事務局から御説明をお願いいたします。

【西川教育課程企画室専門官】  失礼いたします。それでは,学校段階等別部会,特に高等学校部会の御審議の状況について御報告できればと思います。お手元資料の,ちょっと後ろの方で恐縮ですが,19というものがございますので,御覧いただけますでしょうか。
資料19,1枚お開きいただきまして,横になっておりますが,高等学校部会におきまして,高等学校の総則部分について改善のイメージということで,お配りしました資料をたたき台に御議論いただいております。各教科,本特別チームを含めて御議論を踏まえつつ,高等学校部会という形で,特に総則部分について御議論いただいている状況でございます。開いていただきました1ページが,現在の高等学校学習指導要領の総則の構成になっておりますが,これまでの議論を踏まえて,1ページ目右端にあるような事項について,今後,総則についても改善をしていく必要があるだろうという御議論をこれまでしてきております。そういったことを踏まえまして,少し細かくて恐縮なのですけれども,2枚目,ページで言うと3ページを御覧いただければと思います。
高等学校の総則についても,大きく構造を変えていくということで,たたき台に御議論いただいているところでございます。赤字で書いている部分が,新たに総則に加えてはどうかということで御議論いただいた部分でございます。黒字・青字の部分が現在規定されている部分というふうに御覧いただければと思います。大きな特徴としましては,まず第1款のところに3として,高等学校教育を通じて育成すべき資質・能力ということを総則の中に明記していってはどうかという御議論を頂いております。これは,学校教育法,更には「生きる力」という理念というのが掲げられておりますが,今回の教育課程については資質・能力という観点で整理していくというふうにしておりますので,学校種を通じて育成する資質・能力を総則において明記するという方法でございます。
さらに,少し飛びますが,第3款とありますが,「各学校における教育課程の編成」として,まずカリキュラム・マネジメントの実現ということについて位置付けていってはどうかというふうな御議論を頂いております。特に,各学校・学科における教育目標あるいは育成すべき資質・能力の明確化ということを第1に挙げております。カリキュラム・マネジメントについては,大きく三つの側面があるという議論をこれまでしてきておるのですけれども,それを各学校で実現していくに当たっては,教育目標というものをしっかりイメージしていくということが必要であろうということを,学習指導要領の中でも規定していくということを考えております。さらに,学校段階の接続ということを意識しまして,2にありますように,中学校との接続なども規定していくという方向で御議論を頂きました。
右側にまいりまして,第4款ということで,「教育課程の実施と学習の評価」ということを書いておりますが,ここには従前から,各種指導法の工夫といったことが規定されておったわけですけれども,いわゆる「アクティブ・ラーニング」の考え方というものを,ここに示していくということを考えております。見方・考え方を働かせた「深い学び」,「対話的な学び」,「主体的な学び」といったことを,指導要領をそこに書いていくということを御議論いただいております。また,学習の評価についてですが,現在,評価については,「評価による指導の改善,学習意欲の向上」という事項がそこに規定しておりますが,それだけではなくて,2の「学習評価を通じた教育課程及び学習指導の改善」とありますように,目標に応じて評価を行うということ,更には各学校において目標を定めて観点別に評価を行うといったことについても規定していくということを御議論いただいております。さらに,第5款として,いわゆる特別な配慮を必要とする生徒への指導の在り方,第6款として,「学習活動の充実のための基盤」ということで,学級経営ですとかキャリア教育の推進,あるいは家庭・地域との連携といったことについても規定していく方向で御議論を頂いております。さらに,一番下に「別紙」とありますが,各教科等の見方・考え方ということについて,総則において一覧でお示ししていこうという方向で御議論を頂いているところでございます。今後,高等学校部会更には総則・評価特別部会におきまして,総則の在り方については更に詰めていきたいと考えております。
それから4ページにまいりまして,併せて,今の総則を少しイメージしていただきながら御覧いただければと思うのですけれども,いわゆる「アクティブ・ラーニング」の視点について,これまでの各ワーキング等での御議論を踏まえながら少し見直しをしていこうということで進めております。現在の論点整理における「アクティブ・ラーニング」の視点というのは,4ページの上段にありますような整理をさせていただいておりますが,これに加えて,「深い学び」,「対話的な学び」,「主体的な学び」,それぞれについてもう少し議論を深めてきているところでございます。特に「主体的な学び」において,自己のキャリア形成の方向性と関連付けながらといったことを追記しております。特に高等学校のことを想定した場合に,自己のキャリア形成等の方向性ということが大変重要だというふうな御議論を頂いておりまして,こういった方向性のまとめをしているところでございます。
続きまして5ページにまいりますが,更にそれを資質・能力との関係で整理していくということで,「アクティブ・ラーニング」の三つの視点と,知識・技能,思考・判断・表現,学びに向かう力・人間性というのをどのように関連付けて育成されていくのかといったことを図示しつつ,今後,具体化していきながら,まとめに向けていきたいと考えております。
以上,高等学校部会における議論を中心に御紹介させていただきました。また御指摘等頂ければ幸いでございます。ありがとうございます。

【田中主査】  西川さん,どうもありがとうございました。ただいまの説明につきまして御質問はございますでしょうか。特にないようでしたら,先へ進ませていただきます。どうもありがとうございました。
それでは,本日御議論いただく内容の方に移ってまいりたいと思います。初めに,高等学校学習指導要領における地理・歴史科目の改訂の方向性について意見交換を行います。まずは事務局から,地理歴史科に関する資料の説明をお願いします。また,これに関わって,「社会,地理・歴史,公民ワーキンググループ」における,小・中・高等学校を通じて育成すべき資質・能力等の検討状況についても併せて御説明をお願いしたいと思います。梶山主任視学官からお願いいたします。よろしくお願いします。

【梶山主任視学官】  それでは,私の方から御説明させていただきます。前回の会議以降,ワーキンググループにおいて御議論いただいたわけでございますが,先ほどございました総則・評価特別部会から,まず資料6を御覧いただければと思いますが,各ワーキンググループにおきまして,このような内容についてまとめてほしいというものが参っております。この資料6を御覧いただければと思いますが1ポツでは,現行学習指導要領の成果と課題を。それから,2については中学校部会と,その横串の部会で検討する内容ですので,今回は検討しませんが,3ポツというところで,「育成すべき資質・能力を踏まえた教科等の目標と評価の在り方について」ということで,各教科の見方・考え方,それから目標であったり学習課程,それから評価というものをどうしていくかということ。それから4ポツということで,それを踏まえた教育内容の改善・充実をどうするかというところで,「(1)科目構成の見直し」というところで,ここが高等学校の教科の見直しということで,本日御検討を特に頂く部分でございますが,それが(1)。それから,それを踏まえた構造化,学習内容の見直しなど。それから5ポツといたしまして,実際の指導の改善充実や教材の充実ということ。それから6ポツで,必要な条件整備と。こういうところをまとめてほしいということが来ております。それを踏まえてワーキンググループで御検討いただいたものが,次の資料7でございます。この資料につきまして,先ほど申し上げたような構成で文章化されているものでございまして,これを御検討いただいておりました。本日は,この文章というよりも,その前提となるような様々な資料というものを御覧いただきまして,基本的にはそれを引き写しているところがございますので,その御説明を通じて御議論いただければと思っているところでございます。
それではまず,先ほど地歴科のものに入る前ということで恐縮でございますが,資料15を御覧いただけますでしょうか。このような,縦に矢印みたいなのを示した表が15というところにありまして,その15以降のところをまず御説明させていただければと思っております。よろしゅうございますでしょうか。
15でございますが,先ほど申し上げましたような見方や考え方でございます。見方・考え方というものは,上のところを御覧いただければと思いますが,「深い学び」を実現するための思考力・判断力の育成や,獲得する知識の構造化に不可欠ということで,今回,こちらを使って,用いて,学習を進めていくということで御検討いただいているものでございます。
左のところを御覧いただければと思いますが,小・中を通じてこういう段階になっていくわけでございますが,地理歴史科の地理に関しましては左を御覧いただければと思いますが,位置や空間的な広がりとの関わりに着目して社会的事象を見出し,環境条件や他地域との結び付きなどを地域等の枠組みの中で人間の営みと関連付けて,様々な事象を考えて,考察して構想していくということ。それから地歴科では,後ほどちょっと御説明させていただきますが,公民科につきましては,真ん中でございますが,人間と社会の在り方についての見方・考え方ということで,人間と社会の在り方を捉える概念的枠組みに着目して課題を見出し,それらの課題の解決に向けて選択・判断の基準となる考え方を関連付けて考えたりしていく。こういうことを通じて考えていくということで御整理いただいております。
これにつきましては資料16を御覧いただければと思います。次のページで,A3判になっているものでございます。小・中・高等学校において,具体的にこのようなものを使ってどのような教育というのが考えられるかということを整理,御議論いただいているものでございますが,例えば2ページ目のものを御覧いただければと思います。下から二つ目に,「歴史総合(仮称)」というものがあろうかと思います。この「歴史総合(仮称)」のところにおきまして,先ほど御紹介した見方・考え方というものが,この2番目のところにあるわけでございますが,社会的事象等の歴史的な見方・考え方について,「歴史総合(仮称)」は,時期,推移や変化などに着目して社会的事象を見出し,比較して共通性や相違性などを明確にして,因果など事象相互の関係・関連性に留意して,様々なことを考察・構想していくということを考えております。その際に,考えられる追究の視点として,先ほど,比較して共通性などというところがございますが,それが,左にありますように,これを使って思考を追究していくということ。それを踏まえまして,今回,多くの「問い」というものを重視して考えていこうというところで,追究の視点を生かした,考察や構想に向かう「問い」というものを考え,それを踏まえて考えていくことによって,一番右でございますが,考察,構想した結果,獲得する知識が出てくるのではないかと。このようなところで御検討いただいているところでございます。
このような見方や考え方というものが,小・中・高等学校において整理されていると共に,資料17を御覧いただければと思います。資料17において,このような見方・考え方というものを用いて育むべき,いわゆる知識・技能,思考力・判断力・表現力,学びに向かう力・人間性という,今回の論点整理で定めました三本柱というものを整理したものでございます。小学校社会,それから中学校社会,それから高等学校においてまとめているわけでございますが,2ページ目,それから3ページ目が,今回の高等学校の地歴科において,それぞれ全体,それからそれぞれの個別のものに関してまとめたものでございます。個別のものについては後ほど御説明いたしますので,このようなまとめがあるということを御承知いただければと思っております。
その次,資料18を御覧ください。資料18が,こういうところを踏まえて,ではその社会科,地歴科,公民科において,教育のイメージ,目標的になっていくものについて御検討いただいたところでございます。幼児教育,小学校の学びに通じまして,小学校社会科,中学校社会科を経まして,高等学校の地歴科・公民科になるわけでございますが,地歴科の上のところ,左上のところを御覧いただければと思いますが,ひし形の部分がございます。こちらは,この教科の大目標と言われるような部分ということで整理しておりますが,広い視野に立って,グローバル化する国際社会に主体的に生きる,平和で民主的な国家及び社会の有為な形成者に必要な公民としての資質や能力を養うために,社会的な見方・考え方を培い育成するということ。このようなところで,こちらにつきましては,現行の目標などを勘案すると共に,現在の社会がグローバル化しているというところを非常に御議論いただいたところでございまして,グローバル化する国際社会というようなところ,様々な移動であったり,様々なプレーヤーというのがいるというところを表す言葉として,このようなものを御議論いただいております。それを踏まえまして,その大目標の下に,先ほど申し上げました三つの柱というものが,マルの三つで整理されておるところでございますが,それぞれにつきまして,知識と技能,それから2番目をちょっと御覧いただければと思いますが,地理や歴史に関わる諸事情について,概念等を活用して多面的・多角的に考察したり,課題の解決に向けて構想したりする力と。そういうことを効果的に説明したり,議論したりする力というようなもの。それから3番目でございますが,様々な課題について主体的に解決しようとする態度ということと,多面的・多角的な考察や深い理解を通じて涵養される日本国民としての自覚であったり,国土や歴史に対する愛情,それから他国の尊重の大切さ。こういうようなところが地歴科ではまとめていただいているところでございます。公民科については後ほどちょっと御説明させていただきます。
こういうことを踏まえまして,資料8を御覧いただければと思います。前に飛んでいただいて恐縮でございますが,資料8の,こういうような横のものがあろうかと思っております。よろしゅうございますでしょうか。こういうことを踏まえて,高等学校の地歴科・公民科というものがどのように行われるかというところに関して御議論いただいたわけでございますが,まずは全体構成を御覧いただいた方が分かりやすいのではないかという,土井主査からの御示唆を頂きまして,このような資料を作成しております。
それで,地歴科,公民科におきましては,新必履修科目と新選択科目が,それぞれこのようなものとしてあるのではないかというところ。それで,新必履修科目につきましては,上の四角にありますように,この三つにつきましては,現代社会の諸課題の解決を視野に入れて考察するものであるということで,空間・時間,それから現代社会の構造等に着目してそれぞれ考えていく。「地理総合(仮称)」につきましては,持続可能な社会作りを目指し,環境条件と人間の営みとの関わりに着目して,現代の地理的な諸課題を考察するようなものであろうと。「歴史総合(仮称)」につきましては,歴史の推移や変化を踏まえて,課題の解決を視野に入れて,世界とその中における日本について,現代的な諸課題の形成に関わる近現代の歴史を考察するものであろうということ。それから「公共(仮称)」につきましても,現代社会の諸課題の解決に向けて,自立すると共に他者と協働して,公共的な空間を作る主体として選択・判断の基準を身に付け考察していく。このようなところが共通的に枠組みとしてあるのではないかと。それを踏まえた上で,新選択科目というところで,それぞれの興味・関心や進路に応じて選択するという「探究科目」というものを置いてはどうかというところで,「地理探究(仮称)」,「日本史探究(仮称)」,「世界史探究(仮称)」,「倫理(仮称)」,それから「政治・経済(仮称)」ということで,下にありますように,必履修科目で育んだ理解や技能を用いて,より専門的な視野から広く深く探究するものとして位置付けて整理してはどうかと考えていただいております。
その下でございますが,名称について,後ほど,また御意見・御議論いただければと思っておりますが,中の上にありますが,地理歴史科におきましては,「地理総合(仮称)」,「歴史総合(仮称)」というものは,両者を取ることによって,地歴科の目標を達成するために必要とされる資質・能力を育む科目ということで「総合」を付すと共に,生徒の興味・関心や進路に応じて,「総合科目」を基盤に,より専門的な視野から考察を深め探究するということで,「探究」という言葉を付けてはどうかということ。
それから,下の公民科でございますが,こちらにつきましては,自立した主体として他者と協働して社会に参画し,公共的な空間を作る主体を育むということを目指す科目の内容というものを端的かつ適切に示すことが可能なものとして,「公共(仮称)」という名前にしてはどうかというところ。その際,選択科目という意味では,探究というところは変わりませんが,「倫理」という言葉が,その本質的な内容として探究というものが含まれるのではないかということで,「倫理探究」ということに違和感があるのではないかということ,「政治・経済」だけ「探究」を付けるということも混乱が生じますので,「倫理(仮称)」,「政治・経済(仮称)」ということについて名称してはどうかと思っております。
このようなことを踏まえまして,「歴史総合(仮称)」について,まず御議論の御説明をさせていただければと思います。9-1を御覧ください。横の,ちょっと色が付いた資料でございます。「歴史総合(仮称)」の改訂の方向性,マル1というふうになっているところでございます。こちらにつきましては,まず一番上の「科目の特徴」というところで,こういうことに留意しながら御検討いただいたというものを付け加えております。左から,世界とその中における日本というものを,広く総合的な視野から捉えて,近現代の歴史を理解するのだということ。それから,歴史の推移や変化を踏まえて,課題の解決を視野に入れて,現代的な諸課題の形成に関わる近現代の歴史を考察するのだということ。それから,歴史の大きな転換に着目し,単元の基軸となる問いを設けて,資料を活用しながら歴史の学び方を習得するということではないかということ。このような方向で御検討いただいてきたわけでございます。
こちらにつきましては,大きな目標として,先ほど申し上げましたように,この緑の部分でございますが,「グローバル化する国際社会に主体的に生きる平和で民主的な国家及び社会の有為な形成者を育成するために」,構成といたしまして,「歴史の扉」,それから「近代化と私たち」,「大衆化と私たち」,「グローバル化と私たち」といったような,近代化,大衆化,グローバル化といった,大きな転換というものに着目して検討するということ。それから,例えば転換というものが,近代化でございましたら,単元のところを御覧いただければと思いますが,例えば単元として,「産業社会の到来,政治の変革」と。こういうようなものに関して,右の「考察を深める問い」として,工業化であったり政治変革は何をもたらしたかということ。こういうところについて問いを立てて考えていく科目としては考えられるのではないかと。
その際,左に,時系列といいますか,大体の年代が書いてあるわけでございますが,この転換というもの,近代化・大衆化・グローバル化というのが時代を示すものではないわけでございますが,近代化というのが,世界,それからグローバルの中で見られる時代というのが,大体,18世紀から現在につながっているのではないかと。これは大衆化も一緒でございますが,そのようなものということを示すような形で,このようなものを,その左で説明させていただいております。
その際,取り上げられることが考えられる題材として,右上にありますような,このようなものというものが御検討いただいているところでございまして,これにつきましては,前回,金曜日にも御意見を頂いて,また大きな,こういうところを変えていこうという御意見もあるところでございますが,前回の資料ということで御覧ください。その際,歴史の学び方,先ほど申し上げました,比較して相違や共通性などを明確にし,因果などの事象相互間の関連に注意して見ていくというところ。こういうところで構成してはどうかと。さらに,先ほどの緑の下のところを御覧いただければと思います。現代的な諸課題ということにつなげていくというところ。それから,内容をどういうふうにして考えていくかというときに,政治・経済とか,そういうふうに分けていくという案もあったわけでございますが,ただ,ちょっと個別になり過ぎるのではないかということから,現代的な諸課題につながる歴史的な状況として,aからeにありますようなもの。こちらの状況というものを見て,学習内容の焦点化を図っていくということ。こういうことが考えられるのではないかというところを御議論いただいたところでございます。
また,その下に,「歴史の扉」というものがございます。こちらは近代化以降ということが主にあるわけでございますが,その前提として,近世,その前の状況というものも歴史の導入として必要であろうというところから,近世の日本・アジアを事例に引いて取り上げてはどうかというところから,このようなところになっております。
次のページを御覧いただければと思います。こちらが,先ほどの1というものを,ほかの資料と同じような様式に整えたものでございまして,基本的には内容は同じでございます。ただ,資質や能力というものに関して,先ほどの全体のものから引き続くところでございますが,知識・技能,それから思考力・判断力,それから主体的に学習に取り組む態度。このようなものを,このような形で整理したものでございます。
それから資料10を御覧いただければと思います。資料10に関しましては,このような「歴史総合(仮称)」というものを踏まえまして,新選択科目というものをどうしていくかという関係性でございます。緑のところに関しては,先ほども説明申し上げました内容でございますが,このような内容というものを踏まえまして,新必履修科目で習得した歴史の学び方を活用し,歴史に関わる諸事象の意味や意義,こういうことを広く深く考察して探究していく。そういう科目として考えてはどうかというところ。こういうところを御検討いただいているところでございます。
具体的には,新選択科目と,世界史に係る探究と日本史に関わる部分があるわけでございますが,いずれも,前近代と近代というところはちょっと分けて考えていくべきではないかというところ。それで,前回,日本史と世界史を融合したような科目がやはりこちらでも求められるのではないかという御意見もございましたが,やはり学問上のディシプリンでありましたり,学校の先生から見たときに,世界史・日本史ということで,このような形でやってはどうかという御意見の方が非常に強くなっているところでございます。その際,世界史につきましては,諸地域世界の歴史の大きな枠組みと展開について,地理的条件,それから日本の歴史と関連付けて指導するというところ。それから日本史に関しましては,我が国の歴史の展開について,歴史を構成する様々な要素から総合的に考えていくこと。
こういうところがあった上で,世界史につきましては,前近代ということに関しましては,学び方を生かして諸資料を効果的に活用して行うと共に,二つ目のポツにございますが,近現代につながる諸地域世界の文化の多様性,それから複合性を扱いまして,縦と横の変化に着目して理解するようなもの。それに引き続きまして,近現代におきましては,相互依存性,多元性というものを扱いまして,こちらも資料を活用して,主に横の変化に着目して,現代につながる諸課題というものを考えていくということ。これによって,様々な,更に考察を深めるために必要な歴史に関する概念等も習得できるというところで,このような構成で考えてはどうかということでございます。
それから右でございますが,日本史に関わる新「探究科目」でございますが,前近代の部分でございます。前近代につきましては,「歴史総合(仮称)」で学んだ学び方を一層高めるというところでございますが,世界史に比べて,より多様な資料というものが,日本史の場合,使うことができます。それを効果的に活用して歴史を解釈・説明する力というものを,まずこの前近代で段階的に成長させるということもあるということではないかと思います。また,近現代につながる各時代の展開に関わる理解や,伝統・文化への理解を深めるということ。それから,近現代につきましては,先ほどの概念,それから前近代で学習した様々な力を活用して,地域,日本,世界の相互関係を捉えて,現代につながる諸課題を考察していくようなものですし,様々な,深めたような,歴史に関する概念を習得するというところ。こういうところで御整理いただいております。
なお,一番下にありますように,今のいわゆるB系科目を中心に,歴史用語というのは非常に多くなっておりますが,その在り方について,研究者と教員の対話を通じて,社会的事象等の歴史的な見方や考え方を踏まえて,概念等に関する知識を明確化して,構造化を図るべきではないかというような御意見を頂いております。
それから11を御覧いただければと思います。11自体が,先ほど御説明した内容というものを,それぞれのところに触れて,資質・能力というもの,それから構成案というものを明確にしたものでございます。資質・能力はこちらでございますし,その「探究科目」の内容については,先ほど御説明しました多様性・複合性・相互依存性・多元性,このようなものというところから,それぞれを考えていくというところでございます。
それから次の12ページを御覧いただければと思います。日本史につきましても,先ほどの御説明をより敷衍したものとしまして,資質・能力というものを真ん中に書かせていただいた上で,日本史に関わる「探究科目」の構成というところで,前近代の三つの部分,歴史の展開と資料,歴史の展開と解釈,歴史の展開と説明といった,日本における資料を非常に活用して,例えば中世でありましたら,中世の分立する権力の在り方や,社会変動や文化の主体の多様化。このようなことについて考察したり,近現代につきましては,「歴史総合(仮称)」で学んだところを活用して,様々な地域と日本,世界ということの相互の関係を考えていくということ。このようなところで整理してはどうかというところでございます。
それから地理でございますが,13-1を御覧いただければと思います。「地理総合(仮称)」の検討の方向性でございますが,先ほどの「歴史総合(仮称)」と同様に,科目の特徴,検討の方向性を一番上に書いていただいております。持続可能な社会作りを目指し,環境条件と人間の営みとの関わりに着目して,現代の地理的な諸課題を考察するものではないかと。グローバルな視座から国際理解や国際協力の在り方を,それから地理的な視座から防災などの諸課題への対応を考察するのではないか。それから最後に,地図やGISなどを用いることで,汎用的で実践的な地理的技能を習得するのではないかと。こちらも,グローバル,国際社会に主体的に生きる平和で民主的な国家・社会の有為な形成者を育成するということで,一番真ん中にあります資質や能力というもの,理解,技能,それから地理に関わる諸事象の意味,意義,特色や相互の関連について,地域という枠組みの中で概念等を活用して多面的・多角的に考察したり,地域に見られる課題を把握し,その解決に向けて構想する。このような思考力・判断力・表現力など,また主体的に学習に取り組む態度などを整理していただいております。その上で,構成といたしまして,先ほどの(1)でGISの技能的なところ,(2)でグローバル化に対応しまして,世界の文化の多様性と国際理解と,それを踏まえました地球的な諸課題と国際協力,それから(3)で,防災,それからイで,ESDというものを踏まえ,日本の状況などを考えていくという科目の内容になっております。
次のページを御覧いただければと思いますが,13-2でございますが,こちらにつきましては,それぞれにおいて,特に思考力・判断力・表現力ということで,こういう資質や能力を育むということ。それを,地理的な見方や考え方を用いてどういうふうに行っていくか。問いの例をこちらの方で,もう御議論いただいておりますので,この例ということでこちらに置いておるところでございます。
それから13-3を御覧いただければと思います。こちらが,高等学校における地理科の改訂の方向性の案ということで,地理に関する「探究科目」についての内容でございます。こちらにつきましては,構成原理のところを御覧いただければと思いますが,「地理総合(仮称)」というものがこういうものであるということは御説明したとおりでございますが,新選択科目ということが,「地理総合(仮称)」で習得した地理的な技能,見方や考え方を基に,世界の諸事象の規則性や傾向性などを系統的に,それから世界の諸地域の構造や変容などを地誌的に考察した上で,現代日本に求められる国土像の在り方について構想することにより,高等教育での学びにもつながる本格的な地理的探究の場として構成してはどうかというところでございます。
資質と能力ということは,御覧いただいたとおりでございますが,右にあります,地理に関わる「探究科目」ということの構成のところで,系統地理的なところ,それから地誌的なところで,(1)でありましたらアからオのようなことを取り上げてはどうかというところ。それから,2で,地誌的に現代世界というのを考えていき,(3)で,現代日本に求められる国土像というものを総合的に考えていく。このようなところで御検討いただいているところでございます。地歴科,それから全体を中心に御説明申し上げました。以上でございます。

【田中主査】  どうもありがとうございました。梶山主任視学官,どうもありがとうございました。
それでは,まず少し分けて,地理歴史科の中の歴史科目の必修科目であります「歴史総合(仮称)」について御議論いただきたいと思います。資料では7,資料8,9-1,9-2についてでございます。これは15分程度で意見交換を行いたいと思います。それで,できるだけ委員の方々の御意見を伺いたいと思いますので,少し積極的に御意見を頂ければと思います。発言のある方はあらかじめ名札を立てていただきますと,順次,私の方から指名させていただきますので。どの資料についてでも結構ですけれども,資料7,8,9-1,9-2というところから御意見を頂ければと思います。よろしくお願いいたします。
資料が相当多いのですけれども,特に御関心のあるところから。どうぞ。

【白石委員】  資料9-1と9-2について,4点ほど申し上げます。一つは,「近代化と私たち」,「大衆化と私たち」,「グローバル化と私たち」。三つの大きいプロセスをつかまえるという,これで過去200年余りの世界と日本を理解する。これは非常によく考えられた,いい整理の仕方だろうと思いますが,2番目の「大衆化」という言葉には,私は少々,違和感がございます。恐らくここで最も言いたいことは,参加が拡大するということだろうと思いまして,ヨーロッパの場合には,もちろん政治参加が19世紀の後半から拡大し,それから植民地支配の下に置かれたアジアだとかアフリカでは,それがナショナリズムという形で登場するわけで,それを一言で「大衆化」と言うのは少し無理があるだろうと。やはり「参加」という言葉で理解させた方がいいのではないでしょうかと。しかも,それの方が,公民という考え方ですね,これは英語のパブリックだと思いますけれども,そちら,公民ではパブリックで,こっちの方はマスと言うのも,どうも妙な感じなので,この「大衆化」という言葉は,是非もう一度考え直していただければよろしいかと。これが第1点です。
それから第2点目は,世界と日本でいいのですけれども,日本はあくまでアジアの中にある日本でございまして,ヨーロッパとアジアの近代の歴史というのが,やっぱり随分違うものだと。その中で,実は例外的に日本はアジアの中ではヨーロッパに近いような国の作り方,あるいは経済の発展の仕方をしたということを,やっぱり分かってもらうためには,ヨーロッパとアジアという比較が要るだろうと。それで私は,「アジア・アフリカ」というのは,余りに1950年代,60年代の,もうほとんど死語になっていますけれども第三世界みたいな,そういう考え方に引っ張られた言葉で,今どきこの言葉でもってアジア・アフリカを教えて,余り役には立たないだろうと。それよりは,むしろヨーロッパとアジアで,世界の中の日本,アジアの中の日本ということを教えた方がよろしいのではないでしょうかというのが2点目でございます。
それから3点目は,資料9-2の方の,現代的な諸課題につながる歴史的な状況。これはあくまで例でございますが,ここは幾つかちょっと違和感がございました。一つは,「自由」という言葉に対立させるのであれば,普通は「平等」ですね。特に民主主義を考えるときには,「自由」と「平等」というのが二つのキーワードだと私は思いますし,それから「富裕と貧困」というのも,どうも何か聞きなれない言葉で,私はやはり,今の日本の,あるいは多くの国での議論を考えますと,「成長と分配」の方が問題をよくつかまえているのではないだろうかと。それから,「対立と協調」はこれで結構ですけれども,「統合と分化」というのも何のことかよく分からない。仮に,グローバル化で世界が一つになっていくということを統合ということで言うのであれば,それにも関わらずいろんな形で危機が起こっているので。それで,「危機」という言葉を,「統合と危機」だとか,あるいは「統合と抵抗」だとか。何かちょっと,ここは私もいい言葉を思い付かないのですけれども,ちょっと「分化」というのは,少し考えた方がいいのではないか。これが第3点目です。
それから第4番目に,これはまた両方,これは9-1にも9-2にもございますが,取り上げられることが考えられる題材。これはある意味ではこういう概念をきちっと分かってもらう,教えるというのが,この「歴史総合(仮称)」の非常に重要な課題だと思っておりますけれども,「民族主義」という言葉は余りに狭い。「ナショナリズム」という言葉は,現在では日本でももう民族主義とは訳さずに,「ナショナリズム」と片仮名で,そのまま使うことが多くなっていると思います。と申しますのは,民族主義も国民主義も国家主義も全部ナショナリズムなので,「民族主義」と言った途端に,ある特定のタイプのナショナリズムを教えてしまうことになるので,それは知的に余り賢明ではないのではないかと。それから,あとは,ここから先はちょっと私の判断が入りますけれど,ジャポニズムとかポップカルチャーというのは,それほど教えるほど重要な概念なのでしょうかと。それよりはむしろ,今度の「世界史探究(仮称)」だとか「日本史探究(仮称)」の方で,例えば金本位制だとか,あるいは金ドル本位制だとかブレトンウッズだとか,そういうことを少しでも教えるのであれば,金本位制のような,それこそグローバル化に直接つながってくるような概念を教えておいた方がいいのではないだろうか。これが4点目でございます。

【田中主査】  白石委員,どうもありがとうございました。非常に含蓄のあるお話で。今のところも是非ワーキングの方に反映させていただきたいというところですが。今の点だけに限りませんけれども少し御意見を賜ったところで,また原田先生の御意見も伺えると思いますが,大衆化というところ,表現のこともありますし,概念化のこともありますので,それぞれ非常に重要な4点を頂いておりますけれども,これらのことにもちろん関連しても結構ですが,そのほかの意見でもいいですが,「歴史総合(仮称)」の教え方の,いわゆるくくり方ですね。つまり概念化のところについて少し御意見を頂ければと思います。

【川上委員】  よろしいですか。

【田中主査】  どうぞ,川上委員。

【川上委員】  私は,「公共(仮称)」とのところで申し上げようと思ったのですけれど,もちろん大衆化という概念は,「歴史総合(仮称)」の中で非常に重要な概念だと思います。ただ「公共(仮称)」の中でも基本概念になると思うんです。大衆化によって,民主主義の中での世論というものが,いわゆる絶対的なものではなく,非常に危うい存在になったということも含めて,「公共(仮称)」の中で,世論というものの民主主義社会において,それぞれが非常にリテラシーを持たなければ危ないということは,「公共(仮称)」の中の骨組みでもある。そうすると,逆に言うと,こういう大衆化社会ということについて「歴史総合(仮称)」の中で教えるとすると,下手をすると「公共(仮称)」とのダブり感というか,同じようなことを教えなければいけないという部分が生ずるのではないかと思うものですから,そこが私は1点,「公共(仮称)」の中で教える民主主義あるいは大衆社会の在り方というものと,「歴史総合(仮称)」の中で教える大衆化の在り方ですね。そこが重なって教えるようなことにならないように,科目間調整というか,そこをきちんとしていかないと,生徒が同じようなことを両方の科目で習うことにならないような調整が必要なのかなということを1点感じました。私からは以上です。

【田中主査】  ありがとうございます。それについては様々な意見はあるとは思うのですけれども,重複の必要な部分もあろうかと思いますけれども,その教え方は,歴史的に見た場合と「公共(仮称)」で見た場合とで異なるということもあろうかと思いますが。大衆だけにこだわりませんけれども,少し大きな視点で,「歴史総合(仮称)」でこそできること。世界史・日本史を超えて,物の見方,歴史の見方というものを教えるという,「歴史総合(仮称)」の中でどういうふうに捉えていくかというところも,少し意見交換させていただければと思います。いかがでしょうか。お願いいたします。

【磯谷委員】  磯谷です。現代的な諸課題につながる歴史的な状況で,aからeの観点が挙がっているのですけれども,これは結構,政治的な観点あるいは経済的な観点から,対立状況というか,そういったものを捉える。それでもって,近代化あるいは大衆化,グローバル化を説明していくという感じがありまして,社会・文化の観点から,以前からこの会議で出ているのですけれども,マジョリティとマイノリティという観点で捉えますと,意外に生徒に取っ付きやすいテーマが転がっていて,いろんなレベルの生徒に授業ができるのかなという感じです。大石委員などもアイヌの問題を言っておられましたし,別のワーキングの方では,羽場委員ですね,ジェンダーの,近現代においてグローバル化の中でそういうものが出てくるというようなことを言っておられましたので,このaからeの観点に,そういった社会・文化の観点からの切り口というかを入れたらどうなのかなと思っております。以上です。

【田中主査】  磯谷委員,ありがとうございました。これについて……。白石委員。

【白石委員】  済みません。何か,何度も何度も私,これでやめますけれど,今のジェンダーの話は私はすごく大事だと思います。ですから,ちょっとまた大衆化の話に戻りますけれど,実は「参加」という言葉で使いますと,女性が政治に参加する,社会に参加すると。これは非常に重要なことです。「大衆化」だと,それをつかまえられないのですけれども,「参加の拡大」だったらつかまえられるんです。それで,キーワードの中に是非,女性のいろんな分野での進出ということが入ってくるようにするというのが,私は一つ,今のポイントで言いますと,非常に重要なことではないかと思います。

【田中主査】  ありがとうございます。ここについて,一つちょっと振り返ってみたいと思いますのは,資料9-1を御覧いただくと,白石委員がお話しになっていた,三つの,「歴史の扉」の後ですね。18世紀後半から現在までを近代化とし,19世紀後半からを大衆化,20世紀後半からをグローバル化と区切っているわけですが,これが近代社会の到来,大衆社会の到来,グローバル社会の到来を意味しているのだと思いますが,大衆化というところと,「近代化」とか「グローバル化」という言葉が何を意味しているかという。「大衆化」という言葉がどうも誤解を招くということなのでしょうか。

【白石委員】  そうです。

【白石委員】  ちょっと狭いのではないかと。

【田中主査】  狭いのではないかと。

【白石委員】  はい。

【田中主査】  つまり,大衆社会というものの特徴を考えると,今おっしゃったように,参加の拡大ということが最も……。

【白石委員】  重要な。

【田中主査】  顕著な,重要な現象であるというお考えですね。

【白石委員】  はい。

【田中主査】  近代化,大衆化,グローバル化と,言葉としては三つ並んできれいではあるのですが。

【白石委員】  きれいなのですけれどね。そうなんです。おっしゃるとおりです。

【田中主査】  ただ,例えば,そこに何か,例えば副題の方が,近代化は何をもたらしたかとか,大衆化は何をもたらしたかということよりも,例えばもう,参加の拡大とか,それから近代化は何をもたらしたかというと,主権の確立ということでしょうか。何か,主権の確立とか参加の拡大とか。それで,グローバル化というのは,要するにボーダーレスの到来というような。何かそういうテーマが入ってくる方が,恐らく「歴史総合(仮称)」を学ぶ生徒たちに概念としてつかまえやすいかなと思うんです。白石委員もそういう意味でいらっしゃいますね。

【白石委員】  ちょっと済みません。

【田中主査】  どうぞ。お願いします。

【白石委員】  大体そういう意味ですが,ただ,近代化のところは,主権国家,国民国家の話だけではなくて,やっぱり資本主義社会の成立という,もう一つ非常に重要な問題があるので。

【田中主査】  経済ですね。

【白石委員】  はい。経済の問題がございますので,その両方をつかまえるには,私は「近代化」という言葉でもいいのかなと考えておるところです。

【田中主査】  表題の方は……,済みません。失礼しました。私はまとめ切ることはないのですけれども,この辺りについて,またワーキングの方も御議論いただきたいと思うのですが。

【白石委員】  是非。

【田中主査】  少しあれですが,原田委員,原田先生から,このワーキングの何かをされていて,少し御意見があれば伺えればと思いますけれども。

【原田主査代理】  今,白石委員を中心に,特に大衆化の概念について,近代化,グローバル化と,やや高レベルというか,包含というか,概念の広さが違うのではないかという御指摘があったのですけれど,これについてはワーキンググループの方でも,もともとは,これは昨年の8月に出た教育課程企画特別部会の論点整理の中に,「歴史総合(仮称)」は,近代化と大衆化とグローバル化を一つの視点として構成するというのがあったものですから,それを基盤というか基軸に据えるのは重要な前提としてあったわけです。ただ,それを,例えば近代化も18世紀後半から現在まで続く,大衆化も19世紀後半から現在まで続くというような形で,社会を捉える視点であって時代概念ではないと説明してきていたのですけれども,やっぱりそうすると,現実に学校で日本史や世界史を教えている歴史の先生方が,先ほどもちょっと御意見があったのですけれど,いわゆる公民科の「現代社会」等の科目と違う形で,日本史や世界史,「歴史総合(仮称)」を,歴史的な視野で教え切れるだろうかということもありましたので,一応ここで,時代とつながるような題材とか,考察を深める問いみたいなものも出すことで,ある程度,時代をイメージしながら,しかしクロノロジカルに数字的に教える科目ではないのだということを示すために,こういう単元例だとか問いの例が出されてきたわけです。ただ,今,いろんな御意見を伺って,どれだけ時間があるか分かりませんけれど,例えば近代化と私たちの後の問いの立て方,近代化は何をもたらしたかとか,大衆化は何をもたらしたかは,主査の田中委員の御指摘のように,少し検討の余地があるのかなと思って,今,感じました。ありがとうございました。

【田中主査】  ありがとうございます。それでは,こちらもワーキングでも御議論いただきたいと思います。確かに表題は,近代化とか大衆化,グローバル化ということでもいいと思うのですが,恐らく副題で,白石先生のおっしゃっているようなところ,また原田先生の御指摘をうまく体現していただければと思います。
私の方から一つだけちょっと申し上げておきたいと思ったのは,今回,非常に新しい試みを出していただいていて,政治史とか経済史とか文化史というふうな形で単元を切らないで,もっと統合的にということで,「自由と制限」ではなくて「平等」だろうという御指摘もありましたし,対比する概念の立て方は工夫はあるかと思うのですが,「自由と平等」とか「富裕と貧困」とか,様々な新しい切り口を見ていただいているということが大事だと思うのですが,政治と経済,政治史,経済史などと切らないということで,恐らく今後のグローバルな視野を持った子供たちを育てるのに大事なのは,現代社会においては,政治の問題を考えるときに経済の視点がないと解けないことがある。例えば,歴史的に領土問題でもめているときに,そこに経済資源が関わっているようなことがあるのだと思うんです。そういう視点というものは,もちろん選択科目の,この後に出てきます世界史総合や日本史総合でも出るのですが,やはり入ってしまいますと,なかなか難しくなるので,「歴史総合(仮称)」で世界史と日本史を学ぶところで,そういうことが。それから,今日よく言われているTPPのように,国際問題は国内問題と必ずつながっていて,国内問題を理解できないと国際問題が分からない。例えば,日本の農協のことが分からなければ,アメリカの外交担当者はTPPについて日本との交渉はできないし,日本もまた同じなわけです。アメリカのCFSやIFL,CIOなどの動きが分からなければ,自動車などの輸入貿易についてアメリカの立場というものは理解できない。お互いに国内問題と国際問題は必ず結び付いているというのは,グローバル社会の特徴だと思うのですけれども,そのことが,つまり政治も経済も必ずつながる,国際問題と国内問題も必ずつながるというような視点が具体例の中で出てくると,恐らくあの学び。それで,もちろん公民の問題ではあるのですが,歴史の中でもそういう視点というものが必要ではないかということは感じております。済みません。座長ながら,ちょっとそれは気になっていたところがございましたので申し上げました。時間も大分過ぎましたので……。済みません。辻中委員,失礼しました。

【辻中委員】  先ほど白石先生の方から4点,指摘されたやつ,非常に私は納得しながら聞いておりまして,そのとおりだと思いながら聞いていたのですが,大衆化のところも,確かに参加の拡大というのは非常に重要なポイントなのですが,我々は今まで教えてくる中で,大体,マスプロダクションといいますか,大量生産,フォード主義といいますか,ああいうものが出てきたり,当然,資本主義の在り方が変わってきて,これがいいかどうかはともかくとして,ステレオタイプの教え方として,社会がマスコミュニケーションであるとかマスメディアが出てきました。そして,世論が重要になって,その中で政治参加も,制限的な選挙から普通選挙に,20世紀に変わってくるというふうな教え方を大体してくるわけですけれど,そういう中で言うと,政治学者ですので,当然,参加の拡大,大いにここは重要なポイントなのですが,ここの単元の中に,生産の問題とか生産方式の問題とか,それから社会の変化,マス社会かどうかはともかくとして大衆的なものが,今でもSNSなどを含めて,ツイッターなども含めて,非常に重要な大衆的な動きといいますか,出てきているという意味で言うと,大衆化もやっぱり捨て難いところもあるかなと。ここだけちょっと申し上げておきたいと思いました。

【田中主査】  ありがとうございました。それでは,「歴史総合(仮称)」については一応,このぐらいのところで意見交換を閉じさせていただきまして,先に続けたいと思います。
続いて歴史の選択科目でございます。資料10から12になりますけれども,選択科目であります世界史に関わる探究と日本史に関わる探究でございます。これは余り切り分けずに,世界史の探究,日本史の探究についても少し御議論いただければと思いますが,いかがでしょうか。磯谷委員,どうぞお願いします。

【磯谷委員】  済みません。先週,ワーキングに出ていて十分言えなかったことなのですけれども,資料7ですね。とじられている,たたき台というやつの12ページのところなのですけれども,新しい「世界史探究(仮称)」の目標に関わるところで,上から6行目ぐらいですか。この「世界史探究(仮称)」を勉強した結果,どうなるのだというところで,日本国民としての自覚や我が国の歴史に対する愛情,他国や他国の文化を尊重することの大切さについての自覚を促す。これが「世界史探究(仮称)」の目標だということで,これは実は「日本史探究(仮称)」と同じです。
それで,ふと,世界史を私は教えているのですけれども,日本を愛するために世界史を教えているのかなということを非常に感じまして,やはり日ごろ,世界史の授業の中では世界史のことを9割ぐらい教えていて,1割ぐらいは日本史と絡めたことを教えていると。だから,やっぱり我々,日本人なのだけど世界市民として,要するに日本は小さいのだというか,世界はもっと広くて,いろんな考えがあって,そういう中でいろいろ勉強になることがあるよということを教えているように思うんです。ですから,世界史の一番最後の目標のところで,日本国民としての……,最終的にはそういうことにはなるのかもしれないのですけれども,直接的には世界にいろんなことがあって,我々や地球,人類の歴史はこうなっている。地球が今こういうふうに動いてきたということを教えているような感じがしますので,ちょっとここは違和感があるということを申し上げておきたいと思います。

【田中主査】  ありがとうございます。ほかに,世界史についてでも結構ですし,日本史でも結構ですが。
前回も,こちらの特別チームの中での御議論が,先ほど,澤井視学官,大内さんからも御指摘がありましたけれども,かつての「世界史B」,「日本史B」というものを分けずに,「世界史A」,「日本史A」というものをやめて,全く新しい「歴史総合(仮称)」という考え方をする。それで,このことは,「世界史B」と「日本史B」の後継だと思われては困るということが,選択科目の探究にはあると思うんです。それで,世界史の探究と日本史の探究は,やはりそれなりに見方が異なる。世界の中の日本,若しくはアジアの中の日本という視点,それから日本史の場合でも,日本から見た世界というものを常に意識しないと,せっかく「歴史総合(仮称)」で学んだことが生きてこないという。それで,それからもちろん高大接続の御議論もありまして,このまま各都道府県の県下一番の進学校なのに,その教育になった場合に,「歴史総合(仮称)」が昔の「世界史A」,「日本史A」のようなものだから,本当に受験で必要なのは探究なのだと思われて,「日本史探究(仮称)」か「世界史探究(仮称)」さえ頑張れば,受験は通るのだというふうになってしまうと,せっかく総合的な視点を教えるという「歴史総合(仮称)」の意義が損なわれてしまいますから,大学の方にも,高大接続部会の方にもお願いしたいわけですけれども,大学の方にもそこのところはよく御理解いただきたい。それで,「歴史総合(仮称)」も入試には必ず出題していただく必要もあると思いますし,それで「世界史探究(仮称)」と「日本史探究(仮称)」の在り方をどう捉えてどう教えていくかということが,大学教育の在り方も変えるのだと思うのですけれども,その辺りについても少し忌たんない御意見を伺えればと思います。井上委員。

【井上委員】  よろしいでしょうか。

【田中主査】  お願いします。

【井上委員】  日本史の関係のことで少し意見を言わせていただければと思います。従来の「日本史A」,「日本史B」というのに対して,「歴史総合(仮称)」と「探究科目」というふうに変えたというのは,非常に画期的なことだと思うのですけれども,それでまた「歴史総合(仮称)」については非常に作り込みがされていて,どういうイメージで学ぶのかというのが非常によく分かるのですけれども,「探究科目」の方が非常に分かりづらいというところがありまして,ちょっと誤解を招く表現かもしれませんけれども,私は日本史の「探究科目」に関しては,大学入試で「日本史探究(仮称)」科目からの出題が非常に難しくなるような内容を「探究科目」でやってもらいたいというところがあります。端的に言いますと,何か正解が一つであると。それで,そこにたどり着くためのトレーニングを,「探究科目」でするのではないというような科目の中身にして,大学側にとっては,選抜試験の科目として,「探究科目」というのが,そんなに簡単に使えないような,あるいは「探究科目」を試験科目として出すと,非常に採点する側が能力も労力も使えるようなものになってほしいとも思っております。
それはちょっと余りにも極端な言い方なので,もう少し現実的な言い方にしますと,「探究科目」で使う材料というのは,何か例えば資料を読むといった場合にも,あらかじめポイントが分かるようになっている副教材的な資料集をもってやって,その中の,ここがこう読めれば正解というのではなくて,何か生の資料全体をあらかじめ読んできておいて,それで授業に臨まないと分からない。あるいは,その資料の解釈の仕方が多様であることが分かるような,そういう生の資料に取り組んで,歴史の多様な解釈があるのだというようなことも学ぶような,何かそういう,授業のスタイルについて,もっと様々な議論をしていただいた上で,「歴史総合(仮称)」が基礎科目で,「探究科目」がより高度な科目というような単純な分け方ではないような,そういう「探究科目」の非常に新しいアイデアを,もっと全面的な展開をしてもらうように,更に御検討いただければなと思います。

【田中主査】  井上委員,ありがとうございます。教え方,内容についても深い御見識を頂いておりますけれど,授業の教え方という方法論についても新しい御提言で,いわゆる,今,大学の教育工学で言われている反転授業ですよね。資料をあらかじめ学生なり生徒が読んできて,教室に来る。そこで,資料の理解の下に議論して学ぶという。教室で先生がレクチャーをして資料を一方的に説明するような,そういう一方的なレクチャーではない。もう,学んできてから議論になるという,頭を使っています。そういう授業形態というものが,例えば「探究科目」では必要ではないかと。そういうことが学生等を深く学ばせると同時に,大学の方としても安易な入試問題を出すことができなくなるということでございます。非常に深い御見識を頂きました。白石委員。

【白石委員】  よろしいでしょうか。資料11と12の一番左のところの目次というか構成のところですが,少し気になりますのは,例えば現行世界史の方で,(4),(5),基本的にこれは時代で説明しているわけですけれど,「歴史総合(仮称)」の方で,近代化,大衆化,グローバル化という三つのプロセスでつかまえるということになると,非常に違うつかまえ方になります。それで,同じことが日本史についても言えて,(4),(5),(6)のところ,やっぱり時代区分でやっているわけですけれども,これでよろしいのでしょうかという質問でございます。

【田中主査】  これについては,では梶山視学官,お願いします。

【梶山主任視学官】  左の現行の部分は,現行のところでございますので,それを右のような形でさせるということでございます。

【白石委員】  そういうことですか。分かりました。では誤解です。

【田中主査】  古いのが左ということです。

【白石委員】  そういうことですね。分かりました。結構です。

【田中主査】  羽田委員。

【羽田委員】  今の点に関連してですけれども,「歴史総合(仮称)」に比べると,この「探究科目」については,まだワーキンググループの方でもそんなにしっかり議論していないのではないかなと,私はワーキンググループに全部出ているわけではありませんので,誤解があるといけないのですけれども,感じています。特に,今,白石先生がおっしゃったこともそうですけれども,世界史について見てみますと,現行から右の方の「探究科目」になっても,ほとんど何も変わっていないように見えます。日本史の方は一応,現行に比べると,右の方は「展開と解釈」とか,「展開と説明」とか,若干,タイトルは変わっていますけれども,基本的な構造は変わっていないと思います。こういうふうな,現状と余り変わらないような日本史と世界史を学ぶのであれば,「歴史総合(仮称)」をその前に持ってくる意味がよくわからなくなります。さっきの梶山さんのお話だと,やっぱり日本史と世界史に分けて教える方が,意見としては強くなっているということだったのですけれど,私はいまだにこの意見には賛成はしていないつもりです。常々ワーキンググループの方でお話をしているのは,新しい科目として「探究科目」を作る場合,二つにするのであっても,「世界の歴史と日本」,「日本の歴史と世界」というふうなタイトルで考えるべきではないか。それによって当然,時代区分の仕方,テキストの書き方,更には,もっとディスカッションをさせるようなことを工夫する余地が出てくるのではないかと思っています。

【田中主査】  これについて原田先生,いかがでしょうか。御意見があれば少し伺えればと。

【原田主査代理】  今,原田先生が御指摘のように,主に「歴史総合(仮称)」に関して議論する時間が多かったものですから,「探究科目」について十分時間をとっているとは言い難いところがありますけれども,あくまでここに示したのは大きな内容項目ですので,これをどういうふうに今後,具体化していくというのでしょうか,学習指導要領に求められる資質・能力としてこれを具体化していくかが,今後の大きな課題。例えば,青い形で,多様性,複合性,相互依存性,多元性というのが挙げられています。これもちょっと分かったような分からないところはあるのですけれども,こういう概念をうまく生かしながら,これを生かせるような「歴史総合(仮称)」とのリンクといいますか,関連をどう図るかが,まだ残された課題はあるとは思うんです。だから,そこまではまだ十分,煮詰まってはいない。「探究科目」については煮詰まっていないのが現状です。

【田中主査】  ありがとうございます。大石先生。

【大石委員】  先週のワーキングでも話したのですが,もうちょっと深めると,「歴史総合(仮称)」と,それから「探究科目」の関係を見たときに,「歴史総合(仮称)」が近世から始まる。それで,近世の後半,田沼時代から近代化という言い方をします。その前の近世と,近世の後半の田沼時代からの近代化というところが,一つこれから内容を構成するときに,どういう説明の仕方があるかと,非常に問題だということを言ったのですが,今日はそれに加えて,今度は探究の方ですが,これも近世というのが今度は一つの章になっている。それぞれ,そうすると,明治維新というのはどういう意味を持つのかな,近代との境というのはどこに求められるのかなというのは,近世という言葉だけをめぐっても,日本史の中でちょっとやっぱり不整合だと思うんです。ですから,ここのところはまだ整理しないと,非常に新しい感覚で「歴史総合(仮称)」をやって,旧態依然たるところでまた「探究科目」をやるようなことになったら,元も子もないだろうということで,この整合性はやっぱり問われるだろうと思います。

【田中主査】  大事な御意見をありがとうございます。その意味では,「探究科目」を「歴史総合(仮称)」と同じような視点で捉えるというところで,もう一工夫,二工夫は必要かと思いますけれども。ワーキングに御参加の委員の方もいらっしゃいますので,そういう御意見も踏まえて少し伺えればと思いますが。

【池野委員】  お願いできますか。

【田中主査】  お願いします。

【池野委員】  いいでしょうか。一つは「総合科目」と「探究科目」の関係をやっぱり整理しないといけないのだと思うんです。それで,歴史そのものをやっぱり教えるのか,歴史を通して現代的な課題をどこまで理解できるようにするのかという役割みたいなものを,「歴史総合(仮称)」の方は現代的な課題の方に重点化して,探究の方は,課題もあるけれども,課題を見通すために,歴史の中にどういうことの課題の萌芽的な形なり,もともと種みたいなものがあるのかというのを見付け出すことの方が大事だと思うんです。それと,もう一つは,探究はやっぱり子供たち自体が自分の中で,先生が教えるのではなくて,やっぱり総合もそうだったのですけれども,探究はもっと子供たちが見付けることができるように,それこそ子供たち自体が探し求める,究めるということの方を強調すベきではないかなと思うんです。そのときに,例えば世界史の探究だったら,右側に書いてある概念をどういうふうに使ってくるかとか,日本史の場合だったら,左側に書いてある歴史と資料とか,歴史と解釈とかいうのがありますけれど,日本史は僕は,今の学習指導要領もそうなのですけれど,ある時代に歴史と資料だけというタイトルが出てきてしまうのです。けれど,これは本来はどの時代でも使うべきもので,資料と解釈と説明だとか,そんなものを一貫してサイクル的に使っていって,古代の場合にこんなことが出てくる,中世の場合にこんなことが出てくるという,一つの単元として作ってくるべきもので,それだけタイトルに出てきてしまうと,もうそれだけやればいいのかということだと思うんです。だから,ある資料を使って,どういうように解釈をして説明をして,その中でどんな,現代につながるような問題なり,その時代の中の課題みたいなものが見えてくるかというのは,子供たち自体の中で理解できるようなものをすることによって,それぞれの時代の特性と共に,現在の日本史なり世界史なりの特徴が明らかになるような形にする方がいいのではないかなと思っています。以上です。

【田中主査】  池野委員,ありがとうございました。探究についても……。時間も少し過ぎておりますけれども,ほかに特に御意見はないでしょうか。辻中委員,お願いします。

【辻中委員】  済みません。やっぱり探究という科目と総合という科目の関係は,総合という科目で近代化なり大衆化なりグローバル化の,例えば日本なら日本がなぜこういう近代化になったか,大衆社会でどういうありさまを示しているか,そして国際関係は今どういう関係があるかということの根源が歴史に探究があるわけですから,「探究科目」はやはりもっと,何だそれではないですけれど,クエスチョンではないですけれど,そういうものを提示した上で,それの謎解きをしていくというタイプの章構成でないと探究にならないのではないかと。わざわざ「総合科目」で一応やっているわけですから,大きな三つの流れで,日本と世界のありさまを一応示しているわけなので。それで,メリットもデメリットも含めて,日本はどうしてこうなってしまったのか,なっているのか。それで,世界はすごく多様ですから,幾つかのタイプに分けて,どうしてこういう多様性があるのかという大きなクエスチョンがあって,それを「日本史探究(仮称)」では,日本について事例研究的に解き明かしていくというスタイルの章構成にならないと,今の形はやっぱり,今の講義の仕方をそのままいく可能性がありますよね。だから,ちょっとその辺が,最初に総合を受けた形の問題提起的な大きなパートが入り口にないと,その後の展開が変わってこないのではないかと思います。

【田中主査】  ありがとうございます。貴重な御意見をありがとうございました。大分,御意見も頂きましたので,大分,時間も過ぎましたので,もしよろしければ,「探究科目」についての御意見の交換はここまでとさせていただきまして,少しまた後で御意見を頂けるかと思いますけれども,次の単元の方に進めさせていただきます。
続きまして,地理歴史科の「地理総合(仮称)」と「地理探究(仮称)」。これを,地理の場合には「地理総合(仮称)」と「地理探究(仮称)」を併せて御意見を伺えればと思います。資料13-1から13-3について,10分程度,少し短くなりますけれども,御意見を頂ければと思います。よろしくお願い申し上げます。どうも失礼しました。どうぞお願いいたします。

【井田委員】  地理については,かなり議論されてきて,まとまってきていると思うのですけれども,総合の方でGISというのが最初に出てきますけれど,章の立て方としてはこういう立て方になりますけれど,考え方としては,ここで学んだことが全て2,3にいくという形なので,歴史の方で示されているような図解と同じような形になると思います。それから最後にESDとありますけれど,ESDも当然,(2)の国際理解・国際協力とか,その辺にも関わってきますので,そういう意味では,ここもESDがずっと関わっているという図解になって,ここで強調されているのだというような理解かと思います。ですから,そういう意味では,地図あるいはESDというのは同じように,全てと関わり合いながらやっていく。強調している部分がそこの部分だということで,資料13-2で,例えば「生活・文化の多様性と国際理解」というところで,「考察したことを,資料を踏まえて説明する力」というものとか,あるいはその次の「地球的な諸課題と国際協力」で,「考察したことを,根拠を明確にして議論する力」とありますけれど,その基になっているのが,こういう地図であったり,あるいは自分たちで作った地図などを活用しながら,それを根拠として議論する力ということになりますので,全てにこれは係っていると解釈できると思います。
それから探究の方なのですが,今までの歴史の話を聞いていまして,そうなってくると地理の方も,系統地理と地誌と,今までの見方を非常に重視した見方なのですが,ただ,ここは問いの立て方によって,かなりアクティブ的になるのではないかと思います。例えば系統地理の,項目別に書いてしまうと多分ちょっとなかなか厳しいところがあるかもしれませんが,系統地理的にこういう探究をする問いが出てくると,それに関してのどういう知識が必要で,どういう資料が必要で,どういうふうな見方をするとこういうふうになってくるのだという,問いの立て方で工夫すると,この辺が新しい概念として持ってこられるのではないかと思いますので,概念というか,こういう項目自体はこれで僕は十分だと思うのですけれども,そこの問いの立て方をちょっと工夫すると,より「地理総合(仮称)」との兼ね合い,あるいは「地理総合(仮称)」を基礎にした見方というのが含まれてくるのだと思います。そういう意味では,地理に関しては,こういう項目でいけるのではないか。ただ,ちょっと見方だけ工夫すればいいと思っています。

【田中主査】  見方だけ。井田委員,ありがとうございます。御専門の分野から,非常に深い御指摘をありがとうございます。体系,構造としては,総合と探究が比較的シームレスにうまくつながっていると考えてよろしいでしょうか。

【井田委員】  はい。総合の考え方はいわゆる主題的に考えていて,どういう現代的な課題があるか。その課題に対して,今度は探究の方で,より深い知識がないと解けない。その見方として,地理としては,系統的な見方と地誌的な見方があって,それで更に総合で出た課題を深めていくのだということになってきますので,そういう意味ではシステマチックにつながっていると考えています。

【田中主査】  なるほど。ありがとうございます。川上委員。

【川上委員】  それでは一つ御質問ということでよろしゅうございましょうか。GISの活用はとても大事だと思うのですけれども,例えばいろいろ省庁でGISを活用した,例えば統計局では統計情報についてGISを活用していろいろやろうとしていて,子供たちが学習するに当たっても,各省庁のいろんな統計局の統計情報だとか,そういったものを活用してやっていくということで非常に効果が上がっていくと思うのですけれども,そういう連携というか,例えばそういう,統計局で試みているような,GISだとか,そういったところの連携というのをどういうふうに図って,あるいは地理というのは一番デジタル教科書のようなものは非常に効果があると思うのですけれども,そこへの見通しがどうなっているのか。これは御質問なのですが,ちょっと伺いたいと思います。

【田中主査】  では梶山主任視学官,お願いします。

【梶山主任視学官】  ありがとうございます。地理に関しましては,おっしゃっていただいたように,GIS等を活用していくというのが非常に重要でございますが,他省庁,国土地理院であったり国土交通省本体,様々なところで作っていただいております。1か月ほど前にも,その関係者の会議がありまして,私も参加させていただきまして,いかにそれを学校教育で使っていくかというような検討もさせていただいているところでございます。また,この内容としましても,後ほどちょっと御説明しようと思っていたのですが,資料7の方の一番最後の22ページのところの教材の部分におきまして,GISというものを活用する際に,環境整備,広報とか一元的整理とか,そういうことを是非やっていく必要があるのではないかというところが入っているところでございます。以上でございます。

【田中主査】  梶山さん,ありがとうございました。よろしいでしょうか。それ以外に御意見はいかがでしょうか。
地理についてはかなり御議論を頂いて,工夫もまだ必要という井田委員の御意見も頂いておりますけれども,かなり練り込まれていて,深部につながってきているという感じだと思います。これについては原田主査代理,何か。

【原田主査代理】  特に。

【田中主査】  特にございませんか。

【原田主査代理】  はい。

【田中主査】  そういうことで,よろしければ,地理については比較的,当初からかなり練り込まれてかっちりとしておりましたので,本日,井田委員に頂いた御意見をまたワーキングの方に反映させていただいて進めていただければと思います。また,審議のまとめについても,そのような形で反映させていただければと思います。
それでは,そんなところで,地歴については一応ここまで御議論を頂きましたので,先へ進みますが,先ほどから何回か出ております,ワーキング取りまとめのたたき台でございます。これは資料7でございますけれど,これが,かなり分厚い資料ですけれども,総合的に議論いただいておりますので,これについてもまた残りの時間の中で頭の中に入れていただきながら御議論いただければと思います。
それでは,高等学校の公民科についての議論ということになりますので,まずここで資料について事務局からの御説明をお願いしたいと思います。梶山さん,お願いいたします。

【梶山主任視学官】  それでは,私の方から公民科について御説明させていただきます。まず資料18のところで,先ほど御覧いただいたイメージのところ,幼稚園から高校までのものを踏まえて資料がございますが,こちらを御覧いただければと思っております。公民科におきましては,先ほどの地歴科と同様に,ひし形のところの部分,広い視野に立って,グローバル化する国際社会に主体的に生きる平和で民主的な国家及び社会の有為な形成者というものを育んでいくという際に,以下の三つの点というものが考えられるのではないかというところで,選択・判断の手掛かりとなる概念や理論,それから倫理,政治,経済等に関わる諸課題に関して理解すると共に,様々な資料を効果的に調べ,まとめる技能。それから現代の諸課題について,概念等を活用して多面的・多角的に考察したり,解決に向けて構想したりする力,合意形成を視野に入れながら構想したことを議論する力。それから,人間と社会の在り方に関わる課題を主体的に解決しようとする態度を養うと共に,多面的・多角的に考察や深い理解を通して涵養される人間としての在り方生き方についての自覚や,自国を愛し,その平和と繁栄を図ること。また,各国が相互に主権を尊重して協力し合うことの大切さについての自覚と,このようなところで整理いただいております。
このようなことを踏まえまして,14-1,先ほどの歴史関係のところ,地理・歴史のところの後のページに載っております資料にあるところを御覧いただければと思います。高等学校学習指導要領における「公共(仮称)」の改訂の方向性と呼ばれるところでございますが,こちらにつきましては,「公共(仮称)」というものに関しまして,先ほどの全体の公民科における資質や能力というものを踏まえまして,こちらの資質・能力との整理をしております。1番目が知識関係,それから2番目が技能関係,それから3番目でございますが,思考力等ということで,選択・判断するための手掛かりとなる考え方や,公共的な空間における基本的な原理を活用して,現代の社会的事象や現実社会の諸課題について,協働的に考察し,合意形成や社会参画を視野に入れながら,構想したことの妥当性や効果,実現可能性などを指標にして議論する力と,このような合意形成というところが重視されているところでございます。それから4番目というところに関して,主体的な態度。こういうところがございます。
このようなことを育むために,構成案として,三つの,右にございますようなことが考えられるのではないかという御議論を頂いているところでございますが,まず(1)というところで,「公共の扉」でございます。こちら,矢印のところを御覧いただければと思いますが,自立した主体となるということが,孤立して生きることではなく,他者との協働により公共的な空間を作る主体となるということ。これはアに対応するようなところ。それから,選択・判断するための手掛かりとなる概念やその理論というもの。これは前回も御紹介したイの部分のところ。それから,公共的な空間における基本的な原理というところで,全体のルールと言われるような民主主義,自由・権利と責任。そのようなところというところ。こういうところを前提として取り上げてはどうかと。
それで(2)でございますが,それを前提といたしまして,また小・中学校で習得した知識等を基盤に,現実社会の諸課題について考察,追究していくということ。その際,協働の必要な理由であったり,協働を可能とする条件,協働を阻害する要因などについて考察を深める。また,自立した主体として生きるために必要な知識・技能であったり,思考力・判断力・表現力・態度などを養って,(3)につなげていくようなことを行っていくということでございます。
具体的な中身といたしましては,「主体」というところで,政治的な主体,経済的な主体,法的主体,情報発信などをする知的主体ということで,この四つの点が考えられるのではないかというところ。それで,その際,課題の例として,政治的主体であれば,政治参加であったり世論の育成であったり,地方自治,国家主権,国際貢献などのこと。それから経済的主体ということで,職業選択や金融などが考えられるわけでございますが,政治と経済というものが,二つの視点から考えていかなくてはいけないような課題というものに関しても,財政と税や社会保障のようなところであったり,雇用,労働などがあるのではないかというところ。これは,法的主体とか,様々な情報発信主体ということも同様でございますが,複合的な課題というものを含めて,主体となるということに関しての題材を取り上げていこうではないかということ。こういうところを議論いただいております。
それから,様々な主体となる個人を支える家族と,それから家庭や地域等にあるコミュニティというところ。こういうところというものも併せて取り上げるということではどうかというところでございます。
最後に,3の部分。1や2というものを踏まえまして,その自立・協働の観点から,今まで受け継がれた蓄積や先人の取組,知恵などを踏まえつつ,多様性を尊重し,合意形成・社会参画を視野に入れながら,持続可能な地域,それから国家,国際社会作りに向けた役割を担う主体となることについて探究を行うというところで,ア,イ,ウという形にしてはどうかと。それで,題材の例として,こちらにありますようなものというものが挙げられております。
その際,こちら,科目の目標の実現を見通した上で,キャリア教育の視点からその機能を果たすということ。それから,取り上げる事象については,生徒の考えが深まるように様々な見解を提示するということで,特定の事柄を強調し過ぎたり,一面的な見解を十分な配慮なく取り上げたりするということは問題ではないかというようなところ。こういうところがこちらにあるところでございます。
それで,引き続きでございますけれども,その次の14-2は,より詳しい議論というものをまとめたものがございますが,ちょっと飛ばさせていただきまして,14-3を御覧ください。公民科目の改訂の方向性でございますが,新必履修科目の構成といたしまして,先ほど申し上げたとおりでございますが,それを踏まえて,真ん中のピンクのところを御覧いただければと思いますが,公共的な事柄に自ら参画しようとする意欲や態度を育み,現代社会に生きる人間としての在り方生き方についての自覚を一層深める学習を充実していくということで,新選択科目を置いてはどうかと。その際,倫理につきましては,自立して思索を行うと共に,他者と共に生きる主体を育んでいくということ。それで,現行におきまして,教科としましての目標とは必ずしも相入れないのですが,思想史的な知識の習得というものが行われている場合が多うございますので,そうならないように考えていく倫理というもの。こういうことを重視していく必要があるのではないかということ。それから,右を御覧いただければと思いますが,「政治・経済(仮称)」についても,国家・社会の形成に,より積極的な役割を果たす主体を育むものとして,こちらも制度・仕組みの知識の習得に終始しないというようなもの。このようなものということで,そういう整理ができるのではないかということ。
それから14-4を御覧ください。14-4,14-5が,「倫理(仮称)」とか「政治・経済(仮称)」のそれぞれの考え方でございます。先ほど,簡単に御説明申し上げたことでございますが,考え方のところで,個人が判断する手掛かりみたいな考え方を「公共(仮称)」のところで扱っている部分がございますので,古今東西の幅広い知的蓄積を通して,より深く思索するための概念や理念を理解する。それを活用して,現代の倫理的諸課題を探究すると共に,人間としての在り方生き方についてより深く自覚していって,人格完成に向けて自己の生き方の確立を図るのだというところ。こういう「倫理」に発展させること。そのため,手段としましては,先哲の思想を個別に取り上げて学ぶというよりも,倫理的諸活動について,時代を超えた多数の先哲による考え方を手掛かりとして「考える倫理」に転換するというところ。こういうところが考えられるのではないかと。
その際,資質・能力としては,こちらにありますような整理を頂き,(1),(2)ということで,(1)におきましては,人間としての生き方在り方ということの課題例を御覧いただければと思いますが,人間としての在り方生き方に関して,人間観であったり,倫理観の善・共感・義務とか,そういうところ,併せて世界観,それから国際社会に生きる日本人としての考え方という自覚というようなところもやってはどうかと。併せて,(2)で,それを「現代の諸課題と倫理」を深く考えていくということ。それを,学習活動がございますが,右のようなところで考えて実際やっていくというところ。こういうところでございます。
それから,「政治・経済(仮称)」でございます。「政治・経済(仮称)」についても,科目構成の考え方のところを御覧いただければと思いますが,新必履修科目などで身に付けました見方・考え方ということを基盤にしまして,選択・判断するための手掛かりとなる概念を活用して,現代日本の政治,それから経済の諸課題,それから国際社会の日本の役割。こちら,特に正解が一つに定まらない現実社会の諸課題を協働して探究し,より積極的な役割を果たす主体を育んでいってはどうかと。
その上で,資質・能力等,整理いただいておりますが,(1)で,「民主政治の基本原理と現代の経済」というところでございます。こちらは,「公共(仮称)」で取り扱った法や民主政治,経済につきまして,それらを構成する様々な専門領域を深く追究して,複雑な状況・特色に関して説明し,それの解決に向けて探究していくというようなこと。それから(2)で,特にグローバル化,我が国と国際社会への主体的な参画を踏まえたことを特に考えていってはどうかというところ。これを,学習活動の例として,右のところを御覧いただければと思いますが,合意形成を視野に入れた探究活動,討論・ディベートなどの手法を活用してやっていくということ。このようなことが考えられるのではないかというところでございます。
併せまして,簡単に,先ほど関連のところを資料7で御紹介させていただければと思います。資料7につきましては,全体で申し上げますと,最初から,成果と課題,それから育成すべき資質や能力ということが書いてありまして,3ページ目のところに,高等学校における地歴科・公民科の見方・考え方を書かせていただいております。それから4ページ,5ページにおきまして,資質・能力を育む学習課程の在り方,評価の在り方などがあった後に,8ページを御覧いただければと思いますが,3のところで,「科目構成の見直し」というところで,先ほど説明を資料でさせていただいたものが,ずらずらと並んでいくというところになっております。そこで,17ページの二つ目のパラグラフのマルまで,今,御説明した内容があるわけでございます。それに加えまして18ページを御覧いただければと思いますが,特に小・中学校を中心に,現代的な諸課題を踏まえた教育内容の見直しについても御検討いただいているところでございます。グローバル化への対応ということで,これは歴史になりますが,三つ目のマルのところで,中学校におきまして,地理歴史科に「歴史総合(仮称)」が設置されることを受けまして,今,中学校における歴史において,我が国の歴史事象に直接関わる世界の歴史に加えてやっているわけでございますが,間接的な影響を与えた世界の歴史の学習を充実させて,より広い視野に立って,我が国の歴史の理解を促すということが考えられるのではないかという点。それから,19ページの選挙権の拡大のところにおきましても,同じようなことが考えられるのではないかというところ。それから19ページ以降に関しまして,特別支援の対応,「深い学び」などと共に,(3)の「教材の在り方」というのが21ページにございます。この21ページに,先ほど御説明申し上げました,一番下のマルでございますが,歴史系科目というところにおいて用語が膨大になっているようなところ。それから,様々な新必履修科目で資料を活用するわけでございますので,そちらに関しましての対応というものが求められているのではないかということ。それから,その次でございますが,地歴系科目につきまして,先ほどのお話がありましたGISというもの。これを含めた活用というものをどのように考えていくかというところ。このようなところが,小・中・高を通じたところでも御検討いただいているところでございます。
  私からは以上でございます。

【田中主査】  梶山さん,どうもありがとうございました。
それでは,公民につきまして,まずは必修科目の「公共(仮称)」でございます。まずそちらの方ですけれども,資料で申し上げれば,資料14-1から14-2になるかと存じますけれども,これについて15分程度の御意見を頂ければと思います。どの資料についてでも,どちらでも結構ですが,御意見を伺えればと思います。辻中委員。

【辻中委員】  済みません。全体,新しい科目で非常に緻密に構成されていて,なかなか御努力があったなと感じたのですが,全体を読んでいて,やっぱりちょっと抽象性が高いのではないかと。一つのあれです。それで,14-1に,「公共の扉」に,「公共的な空間を作る私たち」。次は「空間における人間」。その横にいくと「倫理的主体」,「私たち」,その下,2の方にいくと,「自立した主体」,その後,「私たち」,「主体」。「主体」とか「私たち」という言葉が非常によく使われているんです。それで私は,どちらかというと,「市民」という言葉をもっと使ってほしい。学術会議の出されたやつを見ますと,「18歳を市民に」とか,「市民性の涵養を目指す」という言葉になっていて,市民という言葉を割と全面に出しているのに対して,今回の「公共(仮称)」の方は,「私たち」とか「人間」とか「主体」という言葉で使われている。ここにやっぱり意味があるのだろうなと思うのですが,一つの質問としては,公民というのは公共的市民ということで理解されているのかなというのが一つあって,そこをちょっと聞きたい。市民という言葉は意図的に避けられているようにも思うのですが,それがそうなのかというのが一つ。
それから二つ目の質問は,この科目,「公共(仮称)」というのは,英語に訳すとどうなるのだろうかと。先ほど,白石先生からthe public。これはそのまま日本語にすると民衆ですよね。そういうことなのか,public affairs and citizenshipみたいなことになるのか。英語にできないと,これは世界の人に説明できないので,英語に「公共(仮称)」をどう訳すつもりなのだろうかと。それで,公民のときも,それはpublic citizenだったのか。public citizenと言いませんけれども,citizenでいいのですけれど,そういうことだったのかというようなことが2番目の質問です。
3番目は,ではそれをどういうふうに変えたらいいのかというので,私はもっと具体的に,「市民」とか「市民社会」という言葉が使えるところは使わないと,一般の用語としては,なかなか子供たちの頭に入りにくいのではないか。確かに,「市民社会」とか「市民」という言葉もまだまだ日本にはなじんでいないというのはよく分かるのですが,「私たち」とか「主体」とかだけだったら,何の勉強をしているのかがちょっと分からないのではないかと私は心配します。
それで,2番目のところに「自立した主体」,「自立した市民」ということなのですけれども。それで,「国家・社会に参画し」ということも,「国家・市民社会に参画し」ということだと私は思うのだけど,できればそういう言葉に変えていただきたいし,「私たち」も,「市民」でいけるところは「市民」でいった方がいいのではないか。そして,このア,イ,ウ,エの一番下に,様々な主体となる個人を支える家族・家庭,地域にあるコミュニティで止まっているのですが,やっぱりここには市民社会というのを付け加えるべきではないかと私は思うのですけれども。全体をずっと読ませていただくと,「市民」,「市民社会」という言葉は意図的に避けられている。恐らくこれは,公民が公的市民であるという理解に基づくからそうなのだろうなと,好意的に考えると理解しているのですが,先ほどの英訳も含めて,変えられるところは変えた方がいいのではないか。その方が一般の人の頭に入るのではないかということを御提案したい。

【田中主査】  若江委員,どうぞ。

【若江委員】  産業界の立場からちょっと意見を申し上げます。今お聞きしたとおりで,私も,「私たち」だとかというよりも,一般的には「企業市民」とか,やっぱり「社会市民」だとかというふうなことが日常的に使われておりますので,今の御意見に合意いたします。
それと,もう一つ加えて申し上げますと,経済団体ですとか産業界は今の教育課程の改訂の中で,公民関係,地歴・公民の改訂に非常に関心を向けております。なぜならば,今,実社会でいろんなことを解決していくのに,こういう歴史的な要素ですとか地誌的な要素をうまく組み合わせない限り,いろんな課題が解決できないのが実情です。ですので,問いを立てながら本質的な課題に立ち向かっていくというような今回の改訂は,非常に期待を持っておりますし,何よりもこの学校で学んだことを生かして,自身で問いを立てられる,つまり課題を見付けて解決していける人材を育成していくということが非常に求められているのです。だからこそ,ちょっと戻るようですが,歴史も地理もそうですけれど,総合という必修科目のところでの物の見方や考え方だとか,資質・能力の育成というのが非常に重要だと思います。,ただ一方では,すごく懸念されているのが,こうなればなるほど,今の先生方でこのような内容がと実現していただけるのだろうかということが,もう既に私たち産業界の人間の中では非常に話題となっているところでございます。是非,この改革を,きちんと現場の先生に伝えていただいて,実践していただけるようにするためにも,これまでのお話にありますように,できるだけ社会で使われている用語を組み込んでいただけたらと思いました。

【田中主査】  ありがとうございます。辻中委員のコメントと若江委員のコメント,それから辻中委員の質問については,ちょっとまた後で,土井主査代理,ワーキングの座長にも伺いたいと思うのですが,羽田委員からも手が挙がっておりますので,まず羽田委員の御意見を伺い……。

【羽田委員】  関連することです。「私たち」という語は,これは前にワーキンググループのときにも質問したことがあるのですが,歴史の方にもありまして,「近代化と私たち」,「大衆化と私たち」,「グローバル化と私たち」と,全部「私たち」という言葉で作られています。その「私たち」とは一体誰のことを言っているのかというのがあいまいだと思います。同時に,「他者と協働するために」という文が2番目のところにありまして,「私たち」と「他者」をはっきり分けて,私たちとは別の人たちがいて,その人たちは「私たち」とは全く異なっていると受け取られかねないような概念の使い方になっているのではないかと思います。したがって,「私たち」という言葉を使うのであれば,「私たち」とは誰かということをしっかりと定義するべきではないかと考えます。

【田中主査】  今,お三方から御意見がありました。それで,質問の部分がございますので,もしよろしければ土井委員から少しお話を,ワーキングの御様子を伺えればと思います。

【土井主査代理】  最後の御質問,最初の方にもありましたが,「私たち」というのを使っている,「私たち」がどの範囲なのだということが問題ですけれど,これはやっぱり「私」とか「私たち」というのを使っているのは,学ぶ子供たちが自分たちの問題として考える。私たちが主体になっていくのだということを強調するために,主体,正に誰かのことを言っているわけではなくて,自分たちがそうならないといけないし,また自分たちのことを言っているのだと。そういうニュアンスを強めるために用いられているという理解であって,決して,私と他者を区別して他者を排除するという趣旨で言っているわけではありませんし,例えば「私と他者と私たち」という言い方をするのであれば,協働関係というのは,「私」と「他者」が,「私たち」と呼べる関係になるためには,何が必要で,何を守らないといけないのか。そういう話でもあるわけなので,決してここで何かを排除してと使っているというよりは,学ぶ本人たちが自分に引き付けて考えさせるということを,重点を置いて使われている語であると御理解いただければと思います。
それから,市民の問題については,ワーキンググループでも,市民という言葉を明確に使うべきではないか。ただ,公共というのも,パブリックという意味もあれば,正にcivil,civil societyという意味もありますし,いろんな意味があるので,そこを考えるべきだというような意見もございました。ただ,少し辻中先生もおっしゃっておられたように,市民概念をどう定義するのかというのは,詰めると結構,難しい問題がございます。「政治・経済(仮称)」とも関係はするのですが,ここのところ,(2)を見ていただいても,やはり政治システム,経済システム,法的システム,少し情報は情報になるのですけれど,こういうものによって公共空間が築かれているわけです。その際に,市民社会とか,あるいは市民的な団体とかといったようなときに,どこを指すのか。あるいは,これは本当にきちっと全部を包摂するのか。あるいは,正に統治システムというものからは少し距離を置いたところにできる,パブリックな空間に参加するところだけを市民と呼ぶのかとか,詰めるとなかなか難しい問題があるものですから,そこを考えると,少し抽象的という御指摘はありますけれど,現在の表現をさせていただいている。それで,イメージとしては,おっしゃっていただいているように,civil societyだとか,外国でいけばcitizenshipなどで取り扱われているような内容を取り扱っているのではないですかと言われれば,それはそのとおりだとは思いますけれど,概念としては,そこまではまだ踏み込めていないということでございます。以上です。

【田中主査】  土井委員,ありがとうございました。そういうことでありますけれども,これについて,ほかの……,済みません。川上委員は,札は上がっているのは御意見がおありになる。

【川上委員】  では簡単に。構成,マル2のところで,様々な主体となる個人を支える家族・家庭や地域等にあるコミュニティということで,北欧におけるcitizenship教育もそうなのですけれども,地域における主体としての活動ということを,これからやはり強化していく必要があると思うので,何か政治的主体であるということは事実なわけですけれども,コミュニティにおける主体ということで,もう少しそれを強調してもいいのではないか。もちろん世代間協力とか,自助・共助・公助。こういうことは非常に重要なのですけれども,コミュニティにおける主体というものの位置付け,それから授業の中でどういうふうに展開していくかということについて,少し単元的に組み込んでいくわけですから,ここのところ,何か米印になっていて,私も詳しく,もう少し読み込めばいいのですけれども,そこをやはりcitizenship教育の一つの核として強化していく必要があるのではないかということで,1点だけ指摘させていただきます。

【田中主査】  ありがとうございました。今の御意見はまたワーキングで御議論いただければと思います。司会の不手際で少し時間が押しておりますので,必修科目としての「公共(仮称)」については……,済みません。御意見が。済みません。失礼しました。黒崎委員,お願いします。

【黒崎委員】  済みません。簡単に。本筋からちょっとずれてしまうかもしれませんが,「公共(仮称)」の視点から二つだけということで,一つは,論点整理の言葉を使わせていただくと,何ができるようになるのか,そのために何を学ぶのかという点に関しては非常によく整理されていると思うのですけれども,もう少し,どのように学ぶのかといった点を前面に出した方がいいのかなと考えております。というのも,「歴史総合(仮称)」ですとか「地理総合(仮称)」においては,単元の基軸となる問いですとか問いの例が示されているという点に対して,「公共(仮称)」ではそういったものが見られない,前面に出てこないというのが,一つ気掛かりな点になってしまいます。すると,せっかく「公共の扉」といった場面で,基盤となる概念ですとか理論を学んだ上で,(2)番の「自立した主体として国家・社会に参画し,他者と協働するために」といったところで,その概念や理論を活用する際に,そういった問いといったものが示されていないと,制度・仕組みの知識の習得に終始してしまうような気がしているということであります。
最終的なこの科目の目的の一つとして,探究と,今日,会議で出ておりますけれども,そういったものがあるとするならば,教員が探究的に学ぶモデルを示さないといけないと考えております。というのも,授業でいかに探究的に習得し活用させる,そういった授業作りができるかという部分が大事になってくるかと考えております。探究学習に関しては,私も生徒を日々見ておりますけれども,なかなか難しい。それで,大学4年生が卒論を書く段階に当たってもなかなか難しいものを高校生がやっていくといった点で,何でこんなに難しく感じてしまうのかなとなったときに,やはり教員自身が探究的に問いを掲げて,それに対して情報収集して整理分析してまとめていくといったような授業作りをできていないところにあると考えておりますので,是非とも(2)番の「自立した主体として」のところに,そのような,どのように学ぶのか,とりわけて教員が探究的に問題を解決していくような授業作りができるような授業モデルというか問いが示せるといいのかなと考えております。知識の習得に終わらないようなものになったらいいなと考えております。
2点目ですけれども,簡単に。14-1の下の方ですね。家庭科,情報科,保健体育科と連携ということがありますけれども,内容という部分では非常にリンクしてくるものかと思います。それに加えて,もしかしたら,これは自明のこと過ぎて書かれていないのかもしれませんけれども,やはり総合的な学習の時間というようなものが探究学習の中核として学校には存在しておりますので,そういったものとの連携をどうしていくのか。「公共(仮称)」の探究ですと,かなり関わってくる部分があると思いますので,この点をいかにやっていくかという部分は議論があってもいいのかなと考えております。以上です。

【田中主査】  黒崎委員,どうもありがとうございました。現場の立場からかなり具体的な問題点を御指摘いただきました。ありがとうございます。
それでは,今のお話も少しもう先の方に入りかかっておりますので,ちょうどここで「公共(仮称)」については閉じさせていただきまして,このまま,あと十分程度でございますが,「公共(仮称)」の選択科目について御議論いただきたいと思います。資料14-3から14-5となります。「倫理」と「政治・経済」という仮の科目名で今,御議論いただいておりますけれども,どちらからでも結構ですので,これについて御議論いただければと思います。御意見を伺いたいと存じます。

【辻中委員】  小さいことですけれど,よろしいでしょうか。

【田中主査】  はい。

【辻中委員】  先ほど,「倫理」と「政治・経済」は「探究」を名前に外したと。それは,どういう理由だったのでしょうか。ちょっと,付けた方がいいのではないかと僕は思うのですけれど,いかがでしょうか。探究してもいいのではないかと。

【田中主査】  梶山主任視学官。

【梶山主任視学官】  済みません。資料8を御覧いただければと思います。簡単に御説明したところでございますが,その一番下の枠囲みのポツのところで,公民科についてはうんぬんと書いており,「倫理」,「政治・経済」ということでございますが,そこに,真ん中の2行目でございますが,学習対象である「倫理」については「探究」が本質的な内容の一部であることから,「倫理探究」といった科目名というのがちょっとなじまないのではないかというところ。そのときに,「政治・経済」のみに「探究」を使うということは,同一教科に置かれる,同一の性格を持つ科目の名称がちょっと混乱するおそれもあるので,こうしてはどうかというところでございますが,これは御議論いただければと思います。

【田中主査】  ありがとうございました。科目名についてもですが,「倫理の探究」と言わずに「倫理(仮称)」。倫理というものは,もともと探究が中心であるから,本質であるからということですが,「政治・経済(仮称)」について……。ただ,名称が変わらないと,変わったというイメージが余りないということがございますので。今まで経済・社会というのが科目名だと。それで,確かに今回の改訂の方向性は非常に斬新なもので,かつての「現代社会」が易しい科目で,政治・経済・社会がその上の科目,いわゆる「世界史A」と「世界史B」のような形で,「現代社会」に対して,政治・経済・社会だったという,それを全く打ち破る概念を出していただいていて,「公共(仮称)」ということで,非常に新しい概念を出していただいている。それで,それを深めるときにはどうしても,「倫理(仮称)」と「政治・経済(仮称)」というふうに分かれるだろうということだと思うのですが,御専門の先生方も違うのだと思うのですけれども。名称についても,また在り方についても,どの点からでも結構ですが,少し御意見を頂ければと思いますが,いかがでしょうか。済みません。白石委員。

【白石委員】  参考資料14-5の「政治・経済(仮称)」の方でよろしいですか。

【田中主査】  はい。

【白石委員】  ここの新選択科目,「政治・経済(仮称)」の方の(1),(2)というところを見ますと,ちょっとこれは誤解かもしれませんけれども,どうも何か,国際社会というのがあっちの方にあって,日本はそれにどう関与するのかみたいな。特に,「グローバル化する国際社会の諸課題」というところを受け止められて。実は一番重要なことは,国際政治,国際経済の中で日本という国はどうやって生きていくのですかということが,どうも,こういう立て方ですと落ちてくるのではないのだろうかということで,そのためにはやっぱり,国際社会が変化していく中で,日本の経済政策というのは,単に国内経済だけ見ているわけではなくて国際経済全体を見ているわけですし,日本の安全保障政策というのは安全保障環境の変化に対応しているわけですので,そこをやっぱりきちっと一つの柱として建てていないと,何か,日本がこっちで世界はあっちで,それでグローバル化と言われてもよく分からないということになりかねないのではないのかという懸念をちょっと持ちました。

【田中主査】  ありがとうございます。実は,その分野は私も専門に近いものですから少し意見がございますので,ちょっと私の意見も御紹介申し上げたいと思うのですが,今の点について私も全く同感でございました。それと,辻中委員が最初におっしゃっていた,少しやっぱり抽象的な概念で,非常に大事な深いところですけれども,抽象的なところにとどまっている。深いだけに,抽象的にとどまると,高校の生徒さんには分かりにくい。やっぱり具体例も必要だと思うんです。
それで,例えば資料で言えば,今の14-3とその前,14-4,「政治・経済(仮称)」のところで言いたいのですが,ちょっと資料がどこか。この辺りのところですけれども,特に「政治・経済(仮称)」の方で「公共(仮称)」のところから新選択科目の「政治・経済(仮称)」,14-3,14-5の辺りです。それで,例えば「持続可能な社会作りの主体となるため」,それからその前,「自立した主体として国家・社会に参画し,他者と協働するため」とか。それから今の白石委員がおっしゃっている,「グローバル化する国際社会」の問題として,我が国と国際社会というような対比のところが今おっしゃったところですが,具体的に申し上げれば,地域社会と世界とのつながりというものをズームインとズームアウトできる人がある。例えば地方自治体の職員であっても,国際社会の中の自分たちの在り方というのも大事である。それで,私がアメリカに留学した頃ですから,もう大昔で,23歳ぐらいで,1975年とかいう時代なのですけれども,日本人の友人が長野県の出身で,親が高野豆腐を作っている。それで,その当時,インターネットなどないのですけれども,どこで大豆が豊作で,どこから輸入すれば安いかということをおやじは見ているということを言っていたんです。それで,つい最近のテレビのNHKなどの番組では,今は最先端の若者は,豆腐を作る人は大豆をインターネットで,世界の気象を見て,もう,どこの大豆が安くなるかということを予測しながら,オーストラリアか中国かということを見ていくというようなことをやっている。今はインターネットがありますから,当然そういうことになるのですが,40年前でもそういう議論がありました。ということは,本当にローカルなというと,地域社会にいる方たちが世界の中の自分というものを意識しているということがある。それが経済活動であり,政治でも当然あると思うんです。それで,インターナショナルだけではなく,いわゆるトランスナショナル・リレーションという,脱国家の,国民国家の枠を超えたような市民団体,企業,自治体などの国際的な関係というものがあるのだというようなことがあると思いました。
それで,そんなに難しい言葉を使う必要はないと思う。それは大学で学べばいいと思うのですが,高校生にも,地方自治体というものは世界には関係なくて,国家レベルのものは国家公務員などが。例えば地方公務員がいて,国家公務員がいて,国際公務員がいるんだと。そこには,間に国家がなければつながりがないんだという印象を子供たちは持つと思うのですが,そうではないという。気仙沼にいても世界とつながることが震災復興につながるというようなことがあると思うんです。そういうような具体的なこと。
それで,「政治・経済(仮称)」のところでは,もう先ほど申し上げたことなのですけれども,TPPであれば,政治と経済は必ずつながる。若しくは領土問題もそうであります。それから,国際問題というのは国内問題を理解しないと解けないし,一つは国内問題は国際的なバックグラウンドが理解できないと解けないというのが現実に起こっているということを,「公共(仮称)」にしても「政治・経済(仮称)」にしても,やっぱり教えていただきたいという気はしています。それで,そこについては余り,大学で使うような難しい言葉を使わずに,やはり何か具体例ではないかと思うのですけれども,そういうものを少し練り込んでいただきたいというのが。私の専門の分野はこちらに近いものですから,辻中委員,白石委員とも似たような感想なのですけれども,そういうふうに,少し具体性ということで思っております。

【土井主査代理】  よろしいですか。

【田中主査】  土井委員。

【土井主査代理】  ペーパーは科目の基本構造を書かないといけないということになりますし,特に「公共(仮称)」は新しい科目ですので,基本構造をしっかり理解していただかないといけないということなものですから,歴史などに比べますと……。歴史は大体,歴史としてどういうものを取り扱うのかというのがはっきりした上で,どういう質問をという形になるのですけれど,「公共(仮称)」の方はまず最初のイメージを作らないといけないので,これでも御覧いただいたら分かるように,かなり書き込んでこのレベルということですので,更に問い等を付け加えるということは,何らかの方法でやらせていただきたいとは思います。
それから「政治・経済(仮称)」の構造の方法なのですけれど,実はやっぱり統合させていく上で二つ考えなければいけなくて,国内と国際関係,グローバルな関係も統合させないといけないのですけれど,政治と経済の方も統合させないといけないということになるんです。それを全部,総合ということになると,章立てがもうできない状態になってしまって,みんな考えましょうという話になり,あとは出てくるのは具体的に課題だけが出てくるという形になるのですが,しかし,やはり「公共(仮称)」でやり尽くせないのは,「公共(仮称)」の部分でシステムの問題を詳しくやり過ぎますと,本当に知識中心になるんです。しかしながら,実際に「政治・経済(仮称)」を考えようとすると,政治システム,法的システム,経済的システムということをある程度理解させないと,少し高度なことができないという事態になります。それで,現在の新選択科目の考え方は,従来は政治の中で国内と国際をまとめて,経済で国内と国際をまとめて,そして全体の課題を3でするというやり方をとっていたのですが,時間の関係でなかなか3にいけないという問題が逆にあって,それを,1と2の探究の形で中に放り込んでいるんです。つまり,最後にまとめてできないのではなくて,ちゃんとやりなさいという形にしている。それで,1の方で,国内が基軸になる可能性はあるのですけれど,やっぱり政治と経済を連携させて考えさせて,2の方で国内的な問題と国際的な問題を更に関係させてという構造をとっているんです。ただ,御指摘のように,どこをやるについても,やっぱり国際と国内の関係に着眼させる必要はあるし,経済と法と政治の関係について連携させる必要はあるのだけど,章立てとしては,こういう章立てをという案でございます。

【田中主査】  よく分かりました。ですから,多分,高校の先生方,教員の先生方の御努力がかなり必要で,教材もうまく作れると思うのですが,何かいいテーマを見て,政治から見てもこの問題は,ああ,経済が必要だなと思って,同じテーマが,また経済の章立てから入ったときも,ああ,やっぱり政治も必要なんだなと思う。それで,国際のときに,ああ,日本の問題も,よその国の国内の問題もやっぱり必要なんだなというのは,今,土井委員がおっしゃったように,どこから見ても,この問題を取り上げると,みんながつながるんだなということが,それぞれ違う章立てなのに最後には見えてくるというのは,そういうテーマを高校の先生方がうまくつかんでくださると,生徒には非常に効果的なのだろうと思います。結構,宿題は大きいのかもしれませんけれども。しかし,非常に,もう12回のワーキングを経ていただいて,前回からの,この3か月の間に12回もワーキングをしていただいて,非常な御努力を頂いておりますが,かなり議論が進んでいると思います。ありがとうございます。
それで,当初は,私の淡い期待と事務局の期待も,本日でまとめられるかと思っておりましたのですが,本日,委員の先生方は非常に熱心な御議論,非常に本質的な御指摘も頂いておりますので,本日の御議論を踏まえまして,更に「総合科目」と選択科目の在り方。いわゆる総合と言われるものと探究,若しくは「公共(仮称)」に対して「倫理(仮称)」や「政治・経済(仮称)」ですけれども。それから科目名称についてまだ御議論が要ると思いますが,さらなる検討が必要かと存じますので,もう一度,次回というものを考えさせていただきたいと思います。
本日は,浅井審議官にもお忙しい中ずっと御参加いただきまして,誠にありがとうございます。しかしながら,もう一回やらせていただく必要があることになったので,この先は事務局の方からまた日程などについての御提案を頂けると思うのですけれども,そちらを,では事務局の方に。このお話,よろしくお願いいたします。

【大内学校教育官】  長時間にわたりまして,どうもありがとうございました。次回の日程でございますけれども,追って調整の上,御案内をさせていただきたいと思ってございます。また通常どおり,いつもどおり,ペーパーによる御意見を頂戴いたしたいと思ってございます。締め切りにつきましては5月20日,金曜日までに,大変恐縮でございますけれども,教育課程課の教育課程総括係,ふだん開催案内を出しておりますけれども,こちらの方に御意見をお寄せいただければと思っております。以上でございます。

【田中主査】  ありがとうございます。今,大内さんからも御指摘がございましたように,本日も非常に深い御議論を頂きましたし,まだまだ言い足りないという委員の方も多いと思いますので,ペーパーでも御意見を出していただけるということで,5月20日までということでございます。
それでは,本日の第4回の議論,特別チームの審議を終わらせていただきたいと思います。またもう一回,よろしくお願い申し上げます。どうもありがとうございました。

―― 了 ――

お問合せ先

初等中等教育局教育課程課教育課程総括係

電話番号:03-5253-4111(代表)(内線2073)