教育課程部会 高等学校の地歴・公民科科目の在り方に関する特別チーム(第2回) 議事録

1.日時

平成27年12月21日(月曜日) 10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省3階3F1特別会議室
東京都千代田区霞が関3-2-2

3.議題

  1. 高等学校の地理歴史科及び公民科に置く新科目の内容構成の考え方について
  2. その他

4.議事録

【田中主査】  定刻前ではございますが,皆様おそろいでいらっしゃいますので,時間ももったいないので始めさせていただければと思います。
それでは,ただいまから中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会高等学校の地歴・公民科科目の在り方に関する特別チームを開催いたします。第2回目となります。本日は,お忙しい中御参集いただき,誠にありがとうございます。最初に事務局から,前回御欠席された委員の先生の御紹介を頂き,また配付資料についての御説明を頂ければと思います。よろしくお願いいたします。

【大内学校教育官】  おはようございます。失礼をいたします。それでは,委員の先生の御紹介をさせていただきます。前回御欠席でございました3名の先生,本日出席を頂いております。
初めに,井上寿一委員でございます。

【井上委員】  どうぞよろしくお願いいたします。

【大内学校教育官】  大竹文雄委員でございます。

【大竹委員】  どうぞよろしくお願いします。

【大内学校教育官】  古城佳子委員でございます。

【古城委員】  よろしくお願いいたします。

【大内学校教育官】  続きまして,配付資料の確認をさせていただきます。本日は,議事次第に記載しておりますとおり,資料1から資料6,その他,机上に参考資料を配付させていただいております。不足等がございましたら,事務局にお申し付けください。なお,机上にタブレット端末を置いておりますが,その中には本ワーキンググループの審議に当たり,参考となる関係する審議会の答申や関連資料等,データで入れております。どうぞよろしくお願いいたします。

【田中主査】  どうもありがとうございました。
それでは,議事に入らせていただきます。本日は,報道関係者から会議の撮影及び録音の申出がございまして,これを許可してございます。御承知おきいただければと存じます。
さて,本日は,高等学校の地理,歴史及び公民科に置く新科目の内容構成の考え方について。いわゆる「歴史総合(仮称)」,「地理総合(仮称)」,「公共(仮称)」ということになるかと思いますが,これらの科目についてですが,歴史科目,地理科目,公民科目の順に意見交換を行わせていただきたいと思っております。議事の流れといたしましては,議論の内容ごとに事務局から資料に基づき御説明いただき,先生方の御意見を頂きたいと思っております。
また,今回のこの第2回目の会議に先立ちまして,12月7日に社会・地理・歴史・公民ワーキンググループが開設されました。社会・地理・歴史・公民ワーキングにおいては,社会・地理・歴史・公民科において育成すべき資質・能力及び内容の系統性や,高等学校における新科目等の具体的な内容について,本特別チームの議論の状況を踏まえつつ検討を行うこととしています。こちらの会議からインプットさせていただきながら,ワーキングの方にかなり具体的に突っ込んだ御議論を頂くということでございますけれども。
つきましては,第1回のワーキンググループの意見の概要について事務局より御説明を頂ければと思います。よろしくお願いします。

【梶山主任視学官】  それでは,私の方から資料の2に基づきまして簡単に御説明させていただければと思います。先ほど御紹介いただきましたように,12月7日にワーキンググループが開催されたところでございます。そのうち高等学校の地歴科・公民科に関する主な意見ということで資料2をまとめております。
まず1ページ目から3ページ目までを御覧いただければと思いますが,こちら,地理歴史・公民全体についての御意見でございます。基本的に全部は紹介いたしませんが,2番目,3番目のぽつ,それから2ページ目の一番上のぽつ,3ページ目の一番上,二つ目のぽつなどに「アクティブ・ラーニング」という言葉が載っております。基本的に「アクティブ・ラーニング」というものを新しい科目においてどのように考えていくのかというところ,そのようなところで大きな御意見があったと思っております。
次に,こちらが本題でございますが,歴史・地理・公民について,それぞれの科目についての御議論でございますが,3目ページの中ほど,歴史というところから御覧いただければと思います。1番目を御覧いただければと思いますけれども,歴史科目において,資料を使って説明していくということが重要なんではないかというようなお話。
それから,4ページ目に移っていただいて恐縮でございますが,4ページ目の一番上,小・中・高の連携という意味で,特に歴史では同じことを繰り返すのではなく,学習スタイルを大きく変えていくことは可能なのかどうなのかと,そういうことについて議論していくことが必要ではないかという話。
それから,二つ目のマルでございますけれども,学校現場の整合性というのを考えた際に,世界史の用語というのが2倍になっているということ,こういうことについてもきちんと考えていかなくてはいけないという話。そのようなお話があったところでございます。
また,地理でございますが,一番下を御覧いただければと思いますけれども,情報化,GISというのがどんどん進化していくんだと。様々な情報をリンクさせるということが必要で,より現実的なものにしていくことが大事なのではないかという御意見がございました。
それから,次のページを御覧いただければと思いますが,地理ということで一番上のマルでございます。グローバルの課題と日常生活が結びついていることが感じ取れるようなことにした方がいいのではないかと,このような御意見があったと思っております。
それから,公民でございますが,公民につきましては一番御議論を頂いたところでございますが,例えば2番目,二つ目のマルというところで,理論的なことや原理原則的なこと,そのようなことを考えていかないと公民教育自体が非常に底の浅いものになってしまうのではないかというような御意見。それから,金融であったり,経済に関して,18歳選挙権というものに関して取り上げるべきではないかという話。
それから,次のページを御覧いただければと思いますが,3番目のマルにありますが,キャリア教育という視点というところ,こういうところに関しても重要なんではないかと。これは論点整理にもありますが,そちらをどう考えていくのかという話。また,法教育の話,それから6ページの一番下でございますが,視点という言葉をお使いいただいています。現代社会において幸福,正義,公正というような枠組み,視点というものを使っているが,これをどういうふうに考えていくかという話。
それから,7ページ,御覧いただければと思います。二つ目のマル,公民科の在り方について考えていく際には,各自が自己の在り方や生き方について考えるということ。それから,第2に,自己が存在する社会の在り方について考えること。それから,第3に,自己の社会に関する関わり方について考えることと,こういうようなことが重要なんではないかという話。
その次のマルにございますが,その上で,協働,協力といったものを考えていくことが重要なんではないかという話。
それから,一番下でございますが,家族,地域,国家,国際社会,こういう協働関係の単位があって,それぞれどういうふうに考えていくかというのが重要なんではないかという話。
最後のページに行きまして,二つ目のマルでございますけれども,他教科との関係,それから,総合的な学習の時間などとの連携,こういう観点も非常に重要なのではないかと,このような御議論を頂いたところでございます。詳細に関しましては,こちらの資料というものを御覧いただきつつ御議論いただければと思っております。以上でございます。

【田中主査】  ありがとうございました。こちらのワーキングには,土井主査代理がこのワーキンググループの主査を務めておられますので,この第1回の議論の状況などを補足していただければと思います。よろしくお願いします。

【土井主査代理】  当日は,ただいま事務局から御紹介いただきましたように,全ての委員から有益な御意見を賜りました。この特別チームとも十分に連携を図って議論を進めていきたいと思いますので,よろしくお願いいたします。

【田中主査】  ありがとうございました。特別チームと土井先生が座長を務めておられますワーキングとは,かなり連携をとらせていただきながら,我々の考えをワーキンググループにお伝えし,ワーキンググループでかなり具体的に踏み込んでいただくという形で進めております。非常にインタラクション,インタラクティブな相互作用が必要だと思っております。よろしくお願いいたします。
それでは,教育課程部会「総則・評価ワーキンググループ」もまた同時に開催されておりますので,共有すべきこともございますので,事務局より御説明を頂ければと思います。よろしくお願いします。

【大杉教育課程企画室長】  失礼いたします。先日開催されました第2回総則・評価特別部会,これは教科横断的な全体の議論の取りまとめを行っていく場所でございますけれども,そちらにおきまして教科別ワーキング,それから特別チームの議論の状況を報告させていただいたところです。特別部会におきまして論点整理に沿った御議論を頂いているということに感謝の意を表しますと共に,以下の5点を各チームにお伝えいただきたいということでしたので,羽入主査にかわりましてお伝えをさせていただきます。
1点目でございますけれども,各チームの検討事項のうち,他教科の検討にも関わるような重要な事項に関しましては,可能な限り早い段階で議論を行うというようなスケジュールをお願いしたいということでございます。本特別チームにつきましては,既に社会科・地歴・公民ワーキングとの連携がとられておりますので問題ないかと思いますけれども,1点目はそういうことでございます。
2点目でございますけれども,社会に開かれた教育課程という観点から,学習指導要領の法的な性格は踏まえつつも,教員,学校のみならず,教職課程で教員を目指す学生さんでありますとか,学校に関わる地域の方々,こういった方々が読んで,その趣旨が十分に伝わるような構成や文章ということを心がけていただきたいということが,2点目でございます。
3点目でございます。発達に応じた目標や内容の系統性という縦の軸と,それから,現代的な課題に教科横断的に対応していくという横の軸,この双方を意識しながら各教科が持つ意義ということを明確にするという観点から,育成すべき資質・能力の検討を進めていただきたいということでございます。
それから,4点目でございます。卒業後,特定の学問分野や職業に進む場合だけではなく,どのような職業に就くとしても生かすことができるような,特に高校の必履修科目につきましては,そういった観点から教科の本質的な学びということを重視した資質・能力を御検討いただきたいということでございます。
それから,最後でございます。特別チーム,ワーキング等におきまして教科の特性や独自性を踏まえた御検討を進めていただく一方で,総則・評価特別部会,それから年明け以降は校種別の部会もスタートいたします。そちらにおける全体的な構成に関わる議論の状況も踏まえながら御議論を進めていただきたいということでございます。以上でございます。

【田中主査】  大杉室長,ありがとうございました。全体の流れの中でよく考えさせていただきながら進めさせていただければと思います。
それでは,本日の議題のうちの一つ目でございますが,高等学校学習指導要領における歴史科目の改訂の方向性について,まず初めに,事務局より資料について御説明を頂きたいと思います。よろしくお願いします。

【梶山主任視学官】  それでは,私の方から御説明させていただければと思います。資料の3と資料の6,こちら,恐縮でございますが両方御覧になってお話をお聞きいただければと思います。まず資料の6を御覧ください。ページ数を振っていないので恐縮でございますが,3ページ目ということで,こちら資料の6は,前回,本会議において御説明させていただいた内容,こういう点について御検討を頂きたいというものを繰り返し簡単に申し上げたいと思っております。
資料の3ページ目,9-2のところで,1から7までというものに関しまして,こういうことに関して御検討をという話がございましたが,本日におきまして,こちらの中から,次のページをはぐっていただければと思いますけれども,前回御説明申し上げたように,8月にまとめられました論点整理におきまして,世界史・日本史を融合した新しい科目というところの「歴史総合(仮称)」の全体のイメージにつきまして,検討素案というものが示されているところでございます。
こちらの新科目のイメージというところ,右のところを御覧いただければと思います。前回御議論いただいたように,上から二つ目のマル,近現代における歴史の転換等を捉えた学習を中心とするというところ。それから,三つ目のマルにございますが,歴史の転換の様子を捉える様々な継続と変化,原因と結果,こういうことなどの歴史の考察を促す概念というものを重視すると。このようなところにつきまして御検討をという話があったところでございます。
そちらにつきまして,前回の御議論,ワーキングの御議論,様々な方の今までの検討の素案というものを勘案しまして,たたき台案ということを資料3で作成させていただきましたので,こちらにつきまして御説明させていただきたいと思います。先ほど申し上げましたように,「歴史総合(仮称)」につきましては,この本科目の本質とも言うべき歴史の転換の軸というものは何なのかというところ,それから,歴史を見ていく際に見方や考え方についてどのように考えていくかというところ,こちらが重要なわけでございます。
一番上にございますように,前回,近代化,大衆化,グローバル化,こういった要素というものが現在の学習指導要領においても重視しているということを御紹介させていただいたところでございます。前回の御議論,それから,先ほど御紹介しました社会科のワーキンググループにおいても,この点について大きな御意見等,なかったところでございますので,まずはその3点について,転換の軸というところでこのたたき台案ということで示させていただいております。
さらに,歴史を見ていただく際の見方や考え方ということでございますが,前回にも比較,因果,相互作用というようなところ,こういうところに関してお示しさせていただいたところでございます。類似と差異を見ていくような,この比較というところ。これは特に近代化という転換の軸を考える際に,地域間,それから前時代との比較といった意味で特に重要な概念になるのではないかと思っております。
それから,真ん中でございますが,原因と結果を見ていく因果でございます。これは,大衆化というものを考える際に,科学技術と社会,それから政治というような様々な,一見関係しそうにないようなことに関して様々な社会的事象についてその関係性を考える上で重要な概念になっていくということも考えられるんだと思っております。
さらに,関係性やつながりなどを見ていくということの相互作用でございますが,特にグローバル化が進む中で歴史的な事象同士のつながりが複雑になっていくということと共に,研究において因果とまでは言い切れないような社会的な事象を取り扱う場合,こういうところも多く出てくると思います。そのようなところも踏まえて,この相互作用というのも重要ではないかと思っております。
それぞれの,例えば近代化,大衆化,グローバル化に対して比較,因果,相互作用というのが1対1の連携をしているというわけではございませんが,このような軸というものを,この三者の手だてにおいて考えていくということ,こういうことが本質として考えられるのではないかというところから,このような記述にさせていだたいております。
それから,次の枠のところ,黒マルのところを御覧いただければと思います。前回の御議論においても,本科目の指導の在り方というのが非常に重要だというところがございました。論点整理にもありましたように,教育課程全体が「アクティブ・ラーニング」の視点から学習,それから指導方法の改善を行う必要があることでございますので,この「歴史総合(仮称)」におきましても学習課題を設定するということ,それから,資料を活用して考察していくということ,それから歴史を捉える概念というもの,概念を理解していくということ,こういうところが学習活動が重要であるということを,このところに書かせていただいております。
さらに,そのような学習課程を前提に各転換の軸について改良する内容のまとまりを設定し,その中から具体的な学習について検討していくことが必要であると考えているところでございます。
現在,考えられる例として記述される内容については,現行の学習指導要領を踏まえ記述しているところでございまして,あくまでも例ということでございます。今後,ワーキンググループにおいて御検討いただくことが必要なのではないかと考えているところでございます。
それから,一番下の米印といいますか,そちらの方を御覧いただければと思います。前回の御議論におきまして,またワーキングにおいても若干ございましたが,どの時期やどの地域の歴史的事象について取り上げるとかという議論,そのような話がございましたが,本科目については数字的にある時代から現代までを網羅的に取り上げるといったものではなく,先ほど申し上げました転換の軸に沿った内容のまとまりに必要な歴史的事象を取り上げるということが考えられるのではないかと思っております。
その際,学習内容によっては取り上げる時期を広げて設定したり,多様な地域を取り上げることによって理解を深めることも考えられるのではないかということを,こちらの方に考え方として置いてはどうかということで記述させていただいております。
最後に,本科目につきましては,内容のまとまりごとに指導を行うことが中心となると思いますが,近代化,大衆化,グローバル化の左のところを御覧いただければと思います。ほかの科目,一般の科目と同様に,導入部分において歴史学習の目的,意義,あとこの「歴史総合(仮称)」のどういうことを学ぶんだということを理解させると共に,前史となるような大交易の時代等についても取り上げるような構成ということが考えられるのではないかと,このような観点でたたき台案という形でこのようにまとめてみたところでございます。
御説明は以上でございます。御審議いただければと思います。

【田中主査】  ありがとうございました。それでは,およそ30分程度のお時間を頂きまして,この学習指導要領における歴史科目の改訂の方向性について御議論いただければと思います。かなり自由なフリーディスカッションで結構だと思いますが,御意見のある方はあらかじめ名札を立てていただきますと,私どもで順次指名させていただきます。また,発言が終わりましたら,もとに戻していただければと思います。また,特に前回御欠席だった委員の先生方を,なるべく先に御意見を頂ければと思っておりますので,積極的に御意見を頂ければと思います。
やはり,特にフリーで結構ですけれども,順番から言えば歴史の転換点についての御議論。近代をどこから始めるかというようなことも前回少し議論がございましたので,その辺りも踏まえた上で,まずは転換点のところ。そして,次が,考察の手だての議論でございますね。概念的な視覚,すなわち類似と差異を見る。実感を超えて,また空間を超えての比較,それから因果的,因果関係の推定,原因と結果の推定,そして相互作用,インタラクションが起こるということ,また,場合によっては因果のどちらが原因で,どちらが結果か特定できないような現実の状況というものが今日の複雑な社会の中で起きていますから,相互作用の理解というものもあろうかと思います。
考察は2番目の議題だと思いますので,できれば歴史の転換点について少し御意見を頂ければと思います。よろしくお願いいたします。
中家先生,お願いいたします。

【中家委員】  済みません,前回,発言する機会が持てなかったものですので,今回の議論の前に少し意見を述べさせていただいてよろしいでしょうか。今回の委員名簿を見ますと,高校現場からお招きいただいているのが4名という形になっています。高校現場の立場,それから,二つ目としましては,私は日本史を担当しておりますけれども,平成17年度の学習指導要領の作問委員及び分析委員,それから,それを基にしました現行の指導要領の改善委員をさせていただいていますし,今回も作問・分析をさせていただく予定になっております。これが2点目。
三つ目が,東京都が平成22年度から日本史を必修化するということで,独自教科書,「江戸から東京へ」というものを作成いたしました。それの編集と執筆に当たったという観点,この三つから少し,前回の流れにつながるかもしれませんけれども発言させていただきたいと思います。
前回の会議の中で,カタリバの今村委員から高校生は多様であるというお話が出ました。また,前回の磯谷委員からも,学校も多様であるという御意見を頂きました。その中で,果たして一つの方向性でいいのかというところが,前回申し上げたかったところなのですけれども,時間がないということで申し上げられませんでした。と申しますのは,東京都では独自に,日本史必修を決めたのですが,東京都は「江戸から東京へ」という独自教科書を作成したのです。その段階で「日本史B」をとっている学校はB教科書を使いなさい,それから,Aを採っているA教科書を使いなさい。それらを使っていないような学校で導入する場合に,「江戸から東京へ」を使いなさいということで始まりました。
そういうことを観点に置いて,今回の「歴史総合(仮称)」,出てきた意義というのは非常に分かるわけなのですが,大学入試との関係,あるいは高校のカリキュラムの関係も含めまして,選択的な対応はできるのかどうなのか。この委員会で話す内容なのかどうかは別としまして,そのことを御勘案いただけるのかというところをちょっと意見として申し上げたいなというふうに思っております。
もちろん,Aがこれに統合されて,Bも科目がございますけれども,Bの中で今回出たような問題点について指導上の留意点として改善すべき点もあると思いますけれども,最初から「世界史B」,あるいは「日本史B」の中にこういう観点を入れて今回の問題点を対応できるならば,これを全校に一律に入れていくということと違う対応というのが果たしてあり得るのかどうかということについて,実は前回申し上げたかったなと思っております。この会でそれを議論するところでは,もちろんないかもしれませんけれども,全体の会議に上げていただければと思っています。
済みません,お時間頂きました。

【田中主査】  大杉室長,お願いします。

【大杉教育課程企画室長】  失礼いたします。本特別チームも含めまして,今回,企画特別部会,教育課程部会の下に22の専門部会を設置いただいております。設置に当たりましては,教育課程企画特別部会が取りまとめました論点整理,これを踏まえまして,更に議論を深めていただくということで御設置を頂いた本特別チームであるというふうに理解をいたしております。
初回に御説明申し上げました論点整理,もう一度振り返らせていただきますと,高校教育につきましては共通性と多様性,この二つをしっかりどう深めていくかということでございます。今御議論いただいております「歴史総合(仮称)」につきましては,「歴史総合(仮称)」という形でこの論点整理ではおまとめを頂いておりますけれども,共通必履修科目としてということで論点整理でおまとめを頂いているところでございます。したがいまして,これにつきましては共通必履修科目としての在り方ということを御議論いただきたいということが一つでございます。
その中で,共通必履修科目といえども多様な高校でいろいろな学ばれ方をされる可能性がございますので,そういったことの在り方ということを併せて御議論いただきたいということ。それから,多様性の中でもちろん選択科目をどうしいくかということもございますので,そういった姿の中での御議論ということを是非お願いしたいというふうに存じます。

【田中主査】  ありがとうございます。大杉室長,整理をどうもありがとうございます。大事な問題を中家委員から御提案いただきました。現在,まず我々のアジェンダとして,課題としてございますのは「歴史総合(仮称)」について議論すること。「歴史総合(仮称)」は2単位科目でございまして,世界史,「日本史B」のような4単位科目とは異なるということがありますし,今大杉室長のお話にありましたように共通必履科目である。つまり,これだけは各高校生はみんな身に付けてもらいたい。それは,知識というか偏差値型の教育というよりも,根本的な人間として生きていく上で必要な考え方というのが大前提だと思いますので,そこをまず押さえさせていただく。
ただ,中家委員の御意見というのは重要だと思いますので,今後の議論の中でまた振り返ることができればと思いますので,少し先へ進めさせていただければと思います。ありがとうございます。
それでは,恐縮ながらこちらから指名させていただきます。井上委員,御専門,非常に造詣深いと思いますし,前回は欠席されたことがありますので,是非貴重な御意見を伺えればと思いますが,よろしくお願いいたします。

【井上委員】  前回欠席してしまいました。大変申し訳ありませんでした。「歴史総合(仮称)」というのは,私は世界史の中の日本史というように位置付けております。そういう観点からしますと,近代というのは,やはりペリー来航前後から始まるというふうに考えております。近代から現代への転換点というのは,第一次世界大戦というのは非常に重要な意味を持っていて,それまで各国が個別に近代化をタイムラグを伴いながら進めていく中で,第一次世界大戦によって初めて世界が一つになったと。そこから本格的な現代化が始まるというように理解しております。その点で,資料9-2の参考のところとある部分は同じなんですけれども,ある部分は違うような,そういう理解をしております。
当たり前のことですけれども,日本での学校教育ですので,日本というのに視点を置く方がいいと思っていますし,視点が一つに定まっている中で,そこから日本を機軸にして世界の歴史を振り返る,世界の歴史を見る,考えるということが「歴史総合(仮称)」にはふさわしいのではないかというふうに思っております。
あと一つ付け加えさせていただきますと,方向性については結構かと思いますし,近代化,大衆化,グローバル化というのも,あるところで突然近代化が終わり,大衆化が終わりということではなくて,重なりながらこういうふうに進んでいるという理解でいいかと思うんですけれども,方向性について,それを更に具体的に検討していく上で,何かもうちょっとサンプル的なもので議論したいなというふうに思います。
この学習課題を設定するにしても,資料を活用して考察するにしても,歴史を捉える概念を理解するにしても,何か一つ,学習課題を設定するというのは,例えばどんなふうにしてやって,それがどういう狙いを持っているのか,どういうふうにすれば学習の成果が上がったと評価できるのかというようなことを,何か具体的な検討を通じて改めて抽象的な議論に戻ってくるという方が議論がより生産的になるのかなと少し思った次第です。差し当たり以上です。

【田中主査】  ありがとうございます。
それでは,古城委員,少し国際的な視点から,この議論について,どんな視点でも結構です,何か御意見を頂ければと思います。

【古城委員】  済みません,前回欠席いたしまして失礼いたしました。私,国際関係論を大学で教えておりますので,いつも国際的なものと日本的な視点というのは大学の授業の中では教えているということです。ですので,こういう形で「歴史総合(仮称)」がまとめられるというのは非常にいいことだと思っています。この時期の問題なんですけれども,この資料9-2で世界史と日本史の時期区分が分かれているというふうになっておりまして,前回の議事録を拝見すると,これ,どうしましょうということだったと思うんです。
私は,こういう見方があるということを学生に教えるということも,一つ,意味があるのではないかと思っています。つまり,世界史はこういう形で動いていて,その中に日本がどういうふうに関与していったのかということですね。現代も,実は19世紀の後半から帝国主義の時代になってくるわけですが,そのときに日本がどういうふうに組み込まれていったのかと。ただし,日本の場合は第二次世界大戦後ということで,非常に新しい視点で考えようとしていたということで,正にここの始まりがずれているということ自体が学生に考えさせるようなことを示すのではないかというふうに思っています。
始まりは,やっぱりもちろん非常に必要だと思うんですけれども,この「歴史総合(仮称)」の科目の意義というのは,一つは,要するに今の世界史とか日本史では最後の方に置かれていて,時間がなくて,特に重要な近現代が疎かになってしまうという,そういう危機意識ということから生まれたことも一つの要因と思いますので,なるべく前よりも,やはり近現代の方に視点を置いて,それを説明する上で何が必要かということで考えていくというのがいいのではないかと思っております。以上でございます。

【田中主査】  ありがとうございます。大変貴重な御意見をありがとうございます。世界史と日本史,近代,現代の歴史が異なるということ自体を高校生に理解させることも重要だという御指摘。
また,よくあることですけれども,これを理解するには,その前のこれが必要で,その前にこれが必要ということになればどんどん遡ってしまいますから,そうすると「歴史総合(仮称)」の趣旨が損なわれかねないという御指摘だと思います。ありがとうございます。
それでは,続きまして,大竹委員,経済学の御専門の立場から御意見を頂ければと思います。

【大竹委員】  私は,歴史については余り専門ではないのですが,前回の議事録にもありましたけれども,歴史的事実の因果関係を明らかにするのはそんなに簡単ではないので,やはり複数の視点というのを考えさせるようなところが必要ではないかと思いました。教育するのと,しやすさというのと,それから限界というか,注意事項というか,限定事項を同時に教えないといけないというのはかなり難しいことではあると思いますが,その点を注意すべきだと思います。先ほどの井上先生のお話でも,どこが現代の始まりかとかいうのもいろいろな考え方があるという視点がどこかにないと,単一の歴史観や単純な因果論を教えるのではなく複数の考え方を教えないと難しいかなというのを聞いていて思いました。以上です。

【田中主査】  ありがとうございます。御専門の点からだと思いますけれども,因果関係の推定というのは一つではないと。一方的に決定的でもなく,複数の視点が必要だと。すなわち仮説ですね,複数の仮説が成り立ち得るという。ものの見方を決定的なものだとして教えないという御意見だと思います。それが歴史の区分にも適用されるという,貴重な御指摘ありがとうございます。
それでは,一通り先生方の御意見を伺えたと思いますので,各委員から少し自由にこの「歴史総合(仮称)」について御意見を頂ければと存じますので,どうぞ,どなたからでもよろしくお願いいたします。失礼しました。
磯谷委員。

【磯谷委員】  岡崎高校の磯谷です。先ほど古城委員もおっしゃったように,日本史と世界史で区分が違うということを生徒に示すということはやっぱり価値があると思うんですけれども,その前提といたしまして,この「歴史総合(仮称)」において,小・中と違う時代区分を示さないとそれはできないものですから,やはり「歴史総合(仮称)」においては今まで習ってきた歴史と枠組みが違うんだと。今まで習ってきた歴史は,鎌倉時代があり,江戸時代があり,明治がありと,こういうのではなくて,やはり大きな世界の枠組みの中で日本が動いているということを言うためには,やはりこういう枠組みが必要なのかなと思いました。
それから,大きく時代を三つに区切るんですけれども,この三つ目は,第3次産業革命というようなニュアンスがあるのかなと。一番左側が第1次で,真ん中が第2次だと。やはり,1970年ぐらいからトランジスターであったり,ICであったり,この辺は日本が結構主導するところがあるんですけれども,やはり経済をベースに政治や社会が影響していくという見方で通しますと,何か分かりがいいんじゃないかなと思います。
それから,世界と日本を二項対立でやるのではなくて,ヨーロッパと,日本と,その真ん中にやっぱりアジア,アフリカといいますか,そういうものがあるのかなと思ったりします。世界システム論を取り入れていくと,やはり日本はちょうどそのぎりぎりのところで先進国に加わるわけですけれども,中国は半植民地になりますし,また,アジア,アフリカは植民地になってしまうと,ちょうど一定世界を見てきたようなふうに世界は動いていくと。しかし,植民地にされた側も,国民意識,民族意識を高めて,1960年ぐらいまでの間に独立を遂げていくと。世界のメンバーになっていくという,そういう区切り方があるのではないかと思います。
それから,考察の手だてがその三つの時代と何となく1対1対応になっている感じがするんですけれども,これはこの比重の置き方があるのかなと思います。やはり,そういうのもいいんですけれども,当然のことながらそれぞれの時代にこの考察の手だては有効なのかなということを思いました。以上であります。

【田中主査】  ありがとうございます。
続きまして,池野委員,よろしくお願いします。

【池野委員】  三つお話しさせていただきたいと思います。一つは,歴史の学び方といいますか,この「歴史総合(仮称)」でめざすべき基本的な資質・能力みたいなものをどういう形で設定するか,あるいはどういうことを子供たちに付けるかという問題が一つ。二つ目は,従来の日本史や世界史というのとこの「歴史総合(仮称)」はどういうように違うのかというのが二つ目の問題です。三つ目は,一応仮称なんですけれども,「歴史総合(仮称)」という「総合」という言葉が付くんですけれども,この総合というのは一体どういうことを指すのか。「地理総合(仮称)」も,あるいはちょうど議論される「公共(仮称)」も,ある面そういう総合というものが問題であると思いますので,この総合というのは一体どういうことを意味するのかという問題をちょっと御検討をお願いしたいと思います。
一つ目の歴史の学び方なんですけれども,これ,今現在のたたき台(案)見ていると,やっぱり歴史を教えることに中心を置いているように私には見えるんですね。やっぱり歴史の内容をどう構成するか,日本史や世界史を全体として近現代史をどういうように構成するかという時期区分と,基本的な概念と,それから下の方に考えられる例とか書いてあるんですけれども,これはやっぱり内容なんですね。
もう一つ,やっぱり資質・能力をしようと思うと,歴史の学び方というか,実際学ぶことによって子供たちにどんな力を付けるか。歴史を学ぶことによって,子供はどういう力を付けていくか。歴史の場合,いろいろな考え方があると思うんですけれども,少なくとも三つぐらい必要ではないかなと思うんです。現在と過去との結びつきみたいなものを分かることが一つだと思いますし,二つ目は,問の立て方はいろいろあるということ。あるいは,問題の立て方みたいなもの,この一番初めに学習課題を設定するとあるんですけど,これは人によって違うし,いろいろなことを考えることができますということ。三つ目は,それによって答えの出し方,つまり,いろいろ複数の歴史性みたいなものもありますよということです。
つまり,日本史,世界史は観点によって,先ほど言いました歴史の複数性といいますか,いろいろな歴史の書き方や,見方や,解釈や,あるいは利用の仕方や,いろいろなものがあるということを,子供たちが分かることによって,歴史を通していろいろなことを考えたり,学んだりすることができるということが必要ではないかなと思います。これが1番目です。
二つ目なんですが,従来のAとの違いなんですけれども,従来はやっぱりここに書いてありますように,近代化や,大衆化や,グローバル化と,ちょっと言葉は違いますけれども,やっぱり内容を中心にやってきたと思うんです。本来は,「歴史総合(仮称)」ということによって,一番に申し上げたように,歴史を広く理解すると共に,歴史を通して考えたり,歴史について自分たちが議論したり,現在の問題との関係の中でいろいろなことを考えることができることが,歴史総合的なところであり,これがAと違う部分だと思うんですね。
検討素案と9-2の図式的なもので言えば,真ん中に赤字で資質・能力があるんですけれども,世界史必修からは,国の伝統と向かい合い,今を知るための歴史科目という,この部分の後半部分ですね。今を知るための歴史科目の新設で,新科目のイメージとしては,転換点だとか,概念を使って分かることだとか,黒ぽちの1番目の一番最後の4番目に出てくるように,歴史の中に「問い」を見いだして,資料に基づいて考察して,互いの考えを交流するなど,歴史の学び方を身に付けると書いてあります。この部分が一応たたき台案では,手だての中の黄色のような,あるいは土色的な学習課題を設定して,資料を活用してというように書いています。こういう一種のサンプルを出したり,事例的にやったりするような,歴史を分かる,近代化から,大衆化から,グローバル化を分かると共に,子供たち自体が,生徒がある一定の問題設定をして,自分たちなりに歴史の学習ができるような,そういう広く作るようなものが必要ではないかなと思うんですね。
これは中学校の公民の学習の最後のところに,現代的な課題をするようなのがあったりするんですけれども,そういうものを地理や,歴史や,「公共(仮称)」のそれぞれのものが引き受けてきて,自分たちが自主的に学べるような一つの重要な単元なり,先生が教えるのではなくて,子供たちが学ぶような単元を作っていかないと,なかなかうまくいかない。
例えば,現在の「日本史B」で学び方を設定したような部分があります。資料を設定したり,解釈をしたり,そういうのがあるんですけれども,多くの教科書を見ると,それは付け足しなんですよね。実際その一つの単元なり,一つの学習の中できちっと資料を使って,解釈をして,説明して,更にそれをいろいろな形で議論するということまではすることなく,それぞれをぶつぶつに切って「日本史B」ではやるような形になっています。教科書ではところどころに出てくるだけで,一つの一貫したものとしては出てこない。学習としては有効に機能していないように思います。「歴史総合(仮称)」というのは,そういうことができるような部分が必要ではないかなというのが,二つ目です。
それから,三つ目なんですけれども,総合という部分です。やっぱり内容の総合と共に,方法の総合も要るし,子供たちがこの歴史を通して,人間としてこんなことが考えられるようになるよというアピールというか,イメージが湧くような総合という概念が必要ではないか。どうしても総合という言葉は我々が,今見たように,内容の総合のように,見えてしまうので,そういう方法の総合や,到達させたい力の総合みたいなところができるようなイメージがやっぱり必要ではないかなと思っています。そういう3点が必要ではないかなということです。以上です。

【田中主査】  ありがとうございます。それぞれ貴重な御意見を磯谷委員,池野委員から頂きました。このような視点というものも盛り込ませていただきながら,ワーキンググループにも少しそれを御検討いただければと思います。実際に「歴史総合(仮称)」の意味というもの,今までの学び方とどこが異なるのか,学習内容,また,その教育方法についてもということでございますね。お二人からはそれぞれ非常に貴重な御意見を頂きました。
もうあと少し御意見を。一ノ瀬委員,お願いいたします。一ノ瀬委員,辻中委員というふうにいたしますので。
【一ノ瀬委員】  よろしいですか。私,歴史が専門ではないので,簡単に。ただ,伺っていて,先ほど古城委員からあった,余り「歴史総合(仮称)」の科目を始める時代を遡らせ過ぎてしまうと趣旨に反してしまうのではないかというお話と連関するんですけれども,逆に,じゃ,近現代というときの現代のエンドですね。どこまでを現代とみなすのかということも,ある程度こういう委員会でガイドラインといいますか,示しておいて方がいいのかなというふうに,ちょっと部外者ながら感じましたので。
つまり,20世紀の最後までをやるのか,それとも21世紀,あるいは東日本大震災とか,あるいは今日の2015年のようなところまで言及すべきなのか,その始まりと同時にエンドをどこにするのかというような大きな目安みたいなものも,一度話し合っておいた方がいいような気がいたしました。以上です。

【田中主査】  ありがとうございます。今の点も重要な点だと思います。始まりだけではなくて,終わりも考えるべきだというところですね。ありがとうございます。
辻中委員,お願いします。

【辻中委員】  ありがとうございます。今の話ともつながるんでが,「歴史総合(仮称)」はあくまで現代から遡りではないですけれども,現代の問題提起というのを受けて遡っていくというような発想の枠組みが必要なのではないかと。前回もいろいろ出たところですが,今の高校生だけではないと思いますが,大学生も含めてクエスチョンを出すという動機付けがすごく衰えているところがあると思うんです。
日本の中でだけ物事を見ているので,すごく若者がいろいろな意味で満足しているところもあるし,不満なところもあるし,見えないところがあると。だから,歴史的な想像力とか動機付けを与えるというのは非常に重要な時期に来ているので,ちょっと前回言ったことと若干矛盾しているのかもしれません。あくまで,この科目の導入の中,特にここに大交易時代と書いてあったので,ちょっと僕,若干違和感を感じたんです。歴史的にはそうかもしれないけれども,やはりもっと現代の,特に21世紀に入って,世界の中の中国,インド,アフリカなんかも含めて,そしてイスラムなんかも含めて,非常に不均衡に歴史は進んでいると。
先ほど世界史と日本史と言われましたけれども,ああいう世界史と日本史という場合の世界史は,あくまで今まではヨーロッパ中心でしたので,いろいろなものが入っているんですけれどもね。今,本当に21世紀に入ってくると多様な歴史を背負っている。ここにある近代化,大衆化,グローバル化というような順番で来ている国は一部であって,まだまだ近代化というか,国家がばりばり国家利益が直接であるとか,もっと封建的なと言ってもいいような,恐いような物理的暴力を剥き出しにしている国も今もまだまだあってですね。
そういうのがやっぱり,先ほどエンドの問題を言われて,僕,20世紀の終わりでは見えなかった,日本もまだまだ比較的高かったところもありますけれども,21世紀の2010年以降,そういうのがはっきり見えてきたところはあると思うんです。世界の不均衡な,歴史的な切り口,そこら辺からできれば問題設定をして,なぜこうなんでしょうねというふうに説いていかないと,やはり今の世界の多様な,不均衡で非常に摩擦の多い現実を理解するための「歴史総合(仮称)」ということにならない。現代から出発しないと,学生たち,高校生たちの想像力,動機付けというのはやっぱり弱くなるのではないかという意見でございます。

【田中主査】  辻中委員,ありがとうございました。非常に重要な御指摘であります。現在,言われているグローバルヒストリーの考え方ですね。世界の歴史の発展が不均衡であったという視点も含めて見ると。一通りの見方でないと,先ほど大竹委員の御意見と通ずるものがあると思います。
ほぼ30分のお時間を頂きましてので,非常に事務局には簡潔に御説明いただいたので,若干時間がございますが,余りここで長くせずに次に行きたいと思っております。と申しますのは,もう既に御意見が出ておりますけれども,教え方について少し御議論が必要だということで,最後のところで,地理・歴史・「公共(仮称)」について共通であろうと思われる「アクティブ・ラーニング」の在り方について少し意見交換できる時間を5分,10分頂ければと思っておりますので,主査として少しこれも重要だと思っておりますので,今非常に順調に進んでおりますから,よろしければ次のテーマに行かせていただきたいと存じます。どうもありがとうございました。
それでは,まだまだ御意見あると思いますけれども,様々貴重な御意見を頂きましたので,本日の御意見を踏まえて,ワーキンググループにおきましても更に御議論を進めていただければと思いますので,土井先生,よろしくお願いします。
それでは,二つ目の軸になりますが,高等学校学習指導要領における地理科目の改訂の方向性について,御意見を頂ければと思います。最初に,事務局より配付資料の御説明を頂ければと思います。よろしくお願いします。

【梶山主任視学官】  私の方から,「地理総合(仮称)」に関しまして御説明します。先ほどの資料6の「歴史総合(仮称)」の次の次のページ,検討素案に挙げられておりました新科目のイメージというものと,資料4,「地理総合(仮称)」における(たたき台案)というもの,こちらを併せて御覧いただければと思います。
この「地理総合(仮称)」につきましても,前回の本チーム,それからワーキンググループにおいて御議論いただいたところでございますが,基本的にはこちらの資料6の検討素案を踏まえたたたき台案というのを作成しておりますので,御説明申し上げます。まず,地理につきましては,この資料の4の3ページを御覧いただければと思います。先ほど,歴史の方でいろいろ概念的なものに関して御説明させていただいたところでございますが,資料4の3ページにあります,地理教育国際憲章で示されている地理学の中心的な概念ということであります,この位置と分布,場所,それから人間と自然環境との相互依存関係,空間的相互依存作用,それから地域というもの。この在り方というものに関しまして,この文章というのはなかなか難しいところではございますが,この概念そのものについて前回でも御議論を頂いてございますが,特段大きな意見はなかったのではないかと思っております。
また,これを踏まえまして,その前のページを御覧いただければと思いますけれども,現在の学習指導要領におきまして,このような概念を理解するに当たって,地理的な見方や考え方があるのを紹介しているというのを御説明申し上げたところでございます。例えばaにありますと,どこに,どのようなものが,どのように広がっているのかと,このようなところが書かれているわけでございますが,このaからfのことにつきましても,この内容で学校現場を含めておおむね理解が図られているのではないかと,このようなところがあるわけでございます。
この二つのことを前提にして,一番上の資料4のところを御覧いただければと思いますが,どのような構成とするかということにつきまして,このたたき台案というのを中心にこちらの方でまとめさせていただいております。
まず(1)のところでございますが,この(1)のところにおいて,今回育むべきGIS活用の能力ということ,こういうところを大きくやり方というものを学んでいくと共に,導入部分ということで,先ほどございましたけれども,歴史と同様に地理を学ぶ意義について確認する内容というものを冒頭で取り上げると,このような構成というものが考えられるのではないかということ。
それから,その次でございますけれども,論点整理とか御意見にもありましたが,地球規模の課題について見ていくということ,こういう観点で,(2)というところで国際理解と国際協力というものを取り扱ってはどうかということをしております。この(2)についてでございますが,アというところで多様な生活・文化と国際理解として,自然と社会・経済システムの調和を図った世界の多様性のある生活・文化について理解するような点。それから,イというところでございますが,地球規模の諸課題とその解決に向けた国際協力の在り方について考察するというところ,このような二つの内容というものがグローバル化の中で生徒たちが考えていく課題として取り上げてはどうかというところでございます。
その後,(3)でございますが,今申し上げましたような国際的な課題だけではなく,日本であったり,地域の状況についても取り上げるということ,こちらについても非常に重要だというところでございます。その関わりというところで,(3)として,防災と持続可能な社会の構築というような中身を取り上げてはどうかというふうにしております。その内容につきましては,特にアでございますが,日本の課題といたしまして,非常に大きな課題となっております自然環境と災害対応というところで,日本国内や地域の自然環境と自然災害の関わり,また,そこでの防災対策について考察するような部分というものが必要なのではないかというところ。
それから,イというところで,身近な生活圏というところというものについて,持続可能な社会というような観点から考えていくと。このようなところで,生活圏の調査と持続可能な社会づくりというような題を付けまして,生活圏の課題というものを観察や,調査,見学等を取り入れた授業を通じて捉え,持続可能な社会づくりのための改善,解決策を探究していくということ,このようなところというものが先ほどの論点整理,それから,全体のグローバル化ということの視点,地理ということに関してはこのようなことではないかという御意見があったと思いますが,このようなところからたたき台案として作成させていただいたところでございます。
私の方からは以上でございます。御審議いただければと思います。

【田中主査】  ありがとうございます。非常に簡潔におまとめいただきまして,ありがとうございました。地歴として後でまた少し総合的に見直す必要があるかと思いますけれども,まず「地理総合(仮称)」についての考え方ということでございます。
今のお話がありましたように,資料4の(1)がGISを用いたという新しい方法論の考え方,それから,(2)の方ではグローバル化をどう捉えるかという問題,そして(3)では,防災と持続可能な社会というふうになっておりますが,これは今日的な課題,コンテンポラリーなイシューとの関わりから地理的な理解を深めると。
ワーキンググループの中の御意見にもございますように,地理というのは余り人気がなく,教え方も難しいという御意見もあるかと思うんです。これが我々が生きている中で非常に重要で,密接に関係があるということをどう高校生に理解してもらうかということが,大きな課題だと思います。「地理総合(仮称)」という,総合という新しい教科の考え方というのは,多分そういうところにその神髄があろうかと思いますので,その辺りの視点からも少し御意見を頂ければと思います。
これについては,いかがでしょうか。20分程度ですけれども,御意見を頂ければと思います。よろしくお願いいたします。

【井田委員】  筑波大の井田と申します。よろしくお願いします。幾つか論点はあると思うんですけれども,まず資料4の方から行きます。最初に,地図と地理情報システムの活用ということがありまして,この間のこのグループの会合でも地図のおもしろさを伝えられるようにしたいということが出ました。ここで取り上げるのは,当然それを含めているということで,ここで一つ重要なのは,以降の地理学習の基盤となるようということですから,地図の学習はここだけではなくて,グローバル化,防災,ESD,全てに関わっていて,それにふさわしい地図を活用すると。その中には主題図もあるでしょうし,普通の地形図もあるでしょうし,それを含めたものをここの1番で最初に学習するという位置付けだと思いますので,そういう意味ではこれは活用できるのではないかと思います。
それから,先ほどのほかのグループのところで,地理が人気がないという言葉なんですけれども,それに関しましては,ここで見ると(3)番のところで,身近な地域から取り上げながら自分たちのものを考えていく,いろいろなものをつくっていくと。ここが結構大きなところで,先ほど「アクティブ・ラーニング」がありましたけれども,「アクティブ・ラーニング」が主体的に,それから自主的に学習する能力とすれば,ここで自然環境と災害対応を例にしながら考えていくと,自分たちの身の回りにある自然災害をどういうふうに見ているのか,それをどういうふうにまた防御するのかということを生かしながら,実際の次の持続可能な社会づくりとして進んでいくということになってくると,その「アクティブ・ラーニング」もここに十分入ってきているのではないかと。それで,子供が学習できるというような観点もできているのではないかと考えます。
それから,先ほどの総合という考え方で,先ほど主査からもありましたけれども,地理で総合をどう考えるかということだと思うんです。これは,小・中・高,それから今後の選択科目の連携を考えた場合に,小学校では社会科として一応総合でされると。中学校では,地理的分野ということで,地史的内容とか,系統地理的内容というものがある程度ディシプリンにされると。じゃ,そこでは,次に高校の必修科では,ディシプリンにされたものを今度は総合的に見ながら,ある意味主題的に考えていくと。
そこでは,もちろん地史と系統という基本的な考え方はありますけれども,内容を見ていただきますと,国際理解と国際協力ということも,地理だけではなくて,当然政治にも絡んできますし,歴史も絡んできます。そういう意味では,この追究の仕方は地理の枠組みの中の総合ということを見ますけれども,地理を超えた総合も当然そこには入ってくるだろうということで,総合ではないかと。
これがまた選択の地理に行けば,また系統や地理,これを踏まえた上で更にディシプリンを深めていくことができるという意味で,「地理総合(仮称)」という名称はここではうまく使えているのではないかというふうに考えています。
それから,もう一点,見方や考え方ということで,国際地理憲章の話が出てきました。五つの観点があって,実は一番難しいのは5番目の地域という概念なんです。ここでは,地域という概念は,地域という言葉それ自体は,地理では意味ある空間的な範囲という使われ方をするんですが,その内在するものに関しては,変容があったり,持続可能なものがあったりと,非常に多様なものであると。それは,上の4番目は国際的に共通できるんですけれども,5番目がいかに日本的に考えていくべきなのか。その日本的に考えていく中で,地理的な見方や考え方がそこには出てきている。
もちろん,上の4点も地理的見方や考え方に含まれていますけれども,この5番目がかなり日本的に解釈できて,日本的に料理できるところなのではないかと。それが地理的見方や考え方というところに具現化されているというふうに考えられると。これはちょっと変えなければいけないかもしれませんけれども,そういう意味では,今回のこのたたき台はかなりまとまったものではないかというふうには考えています。

【田中主査】  御意見ありがとうございました。今回出していただいたたたき台,かなり詰まってきているというふうにお見受けしておりますけれども,井田委員からもそのような御意見で,それぞれの重要性というものを御指摘いただきました。
この「地理総合(仮称)」について,もう少し御意見。今の御意見にもございましたけれども,グローバルなものの見方というものは歴史,また「公共(仮称)」,政治や経済とも関係があるということで,非常に相互の関連があるという認識が高校生にも必要だろうということだと思うんですけれども。この辺りについて,全体,どのような視点からでも結構ですので,御意見を頂ければと思います。
池野委員。

【池野委員】  ありがとうございます。二つほど,先ほどと続きにもなるかもしれません。このたたき台の中の資質・能力のところで,持続可能な社会づくりに求められる地理科目というように書いてありますように,「地理総合(仮称)」自体が持続可能な社会づくりにするようにするためには,どうしても,例えばこの(1)(2)(3)もそうですし,(2)のア,イとか,(3)のア,イもそうなんですけれども,これは一種の積み上げ方式で,コンテンツベースなり,ナレッジベースの基本的なカリキュラム作りが基本形になっているように思われます。
先ほど主査の田中先生が御紹介されたように,イシューズベースにすると,当然持続可能な社会づくりを地理で考えるというのが先にあって,その諸問題みたいなものがどんなのであって,どういうふうに考えていくかと。その中で国際協力や,国際理解とか,自然環境とか,災害だとか,生活圏だとか,そういうものが問題になってきて,ある面,(2)とか(3)のア,イが多分ひっくり返ると思うんです。本来だったら,イシューズベースにすると,イが先に出てきて,アが後から出てくるというように,子供たちなり,カリキュラムのつくり方自体が,持続可能な社会づくりが我々というか,子供自体,生徒が考えなければいけないことだというアピールが出てきて,それをどういう観点やどういう概念でそれぞれ考えていけばいいのかという,ひっくり返さないと,ついつい従来の「地理A」やBの考え方を踏襲して先生方が教えてしまう,コンテンツベースの基本型から抜け出ないという問題があるのではないかというのが,一つです。
それから,二つ目は,先ほども申し上げたんですけれども,総合性をどこに担保するかという問題です。やっぱりこれは資質・能力の持続可能な社会づくりというのが,多分地理の総合の重要なキーコンセプトだと思うんです。そのために,先ほど井田先生が言われたように,地図の活用をしながら,この課題解決を子供たちなりにする。そのときに,政治や経済の観点とは違った,やっぱり地理の基本的な概念を使いながら,では,どういうようなことをすれば地理的に問題解決なり課題解決ができるかというのが見えて,現代の社会が持続可能な社会づくりに一歩進むことができて,高校生がどういうように考えると,そういうことに貢献できたり,私たちの学習がそういうように関係づけるようになるのか。
地理を分かることと共に,地理を使って現代社会に子供たちが貢献できるような学習にしないといけないのではないかなと思っています。そういう2点が私の意見です。

【田中主査】  貴重な意見,ありがとうございました。
高木委員,続けてお願いいたします。

【高木委員】  地歴と歴史との研究開発を担当しています,神戸大学附属の高木です。よろしくお願いします。「地理総合(仮称)」についてなんですけれども,要素としては,高校地理教育に求められるグローバル,防災,ESD,そして,それらを主題的に,探究的に学習するのに必要不可欠なGISなどの地理的技能が網羅されていて,構成上もいいと思います。
構成なんですけれども,最初にGISなどの地理的技能を,例えば地球的課題とか,身近な視点などのような具体的なもので地理を学ぶ意義ということで扱い,グローバルなスケール,ローカルなスケールということでESD的にまとめるということなので,生徒の思考的なものも上手に運ぶのではないかなと思うんですけれども。
二つ,お願いがあるとしたら,最後にESDがあるんですけれども,ESDを考えていくと,スケール的には3番に入っているんですが,(2)のグローバルな視点でのESDというのが生徒から出てくる場合もあると思うので,その辺を構成としてどのように入れ込んでいくかということが,一つ大事かなと思います。
それと,本校内で地理基礎,歴史基礎ということで,我々はその名前で最初始まっているんですけれども,取り組んでいく中で,学力などの知識との相関関係と,それから,それと崩れたところで出てくる新しい思考力,判断力,表現力のようなものを読み取るような調査というのを少しやっています。知識を基盤とした思考力,判断力,表現力という知識の枠の中にはまる思考力,判断力,表現力なのか,それとまた違った方向性で思考力,判断力,表現力が出てくるのか,どちらかは分かりませんけれども,分かりやすいのは,済みません,先ほどの「歴史総合(仮称)」のところなんですけれども。
オレンジ色の矢印なんですが,学習課題を設定して,資料を活用して考察する。そして歴史を捉える-地理でもいいんですけれども,「公共(仮称)」でもいいですが,捉える概念を理解する。この辺までは,校内でずっとやっていても非常に学力との相関関係が強いんですけれども,ここで捉えた概念を新しい素材とか,要素とかに類推したり,当てはめたり,活用したりという場面において,初めて-本校に多様な生徒がいるんですが,いろいろな多様な生徒が活躍する場が出てくるので,先ほどの池野先生が言われたようなところも関係すると思いますけれども,構成としてはこの形で,それをどう学習活動に当てはめるかというときに,どの辺までの思考力,判断力,表現力を意識するかということは大事ではないかなと思います。以上です。

【田中主査】  ありがとうございました。今の池野委員に続いて高木委員さんにも御意見を頂きました。実際にお二人とも御指摘しているのがイシューベースといいますか,身近な視点からの教育。池野委員からは,(3)については,ア,イではなく,イ,アの順ではないかという御指摘も頂いております。それから,高木委員からは身近な視点というものを取り入れた教育テーマで,効果的であろうと思われるが,お願いということで二つおっしゃっていただいた。
私も余りよく存じ上げていないんですが,ESDということについてちょっと高木委員から御説明いただけますか。これはどういう,観察や,調査,見学を取り入れた授業というところですけれども,この辺りは今どういう御議論が一番中心的になっていらっしゃるんですか。

【高木委員】  例えば(3)のイで,身近な地域の調査で,ESD的な視点で調査を始めているけれども,身近な地域だけで自分たちが課題として設定したテーマが留まらない場合もあり得るとしたら,それが今度(2)の方に戻ってきて,グローバルな視点で広がるという場合もあり得るのではないかと。

【田中主査】  的確な御指摘,ありがとうございました。そのような形で,地理についてはかなり形が整いつつあると思うんですけれども,様々な視点がおありになると思います。
橋本委員,お願いいたします。橋本委員に続いて,磯谷委員ということで,橋本委員,お願いいたします。

【橋本委員】  ありがとうございます。資質・能力のところで,地理的な見方や考え方や空間概念を捉える力というのがありますが,私はこれは非常に大きい,大事にしなければならないことであると思います。そういうことから見ますと,前回の会議でも御意見が出たところでありますけれども,地図,GISというふうに,この(1)のところで書いていますけれども,地図の見方というところが,例えば中国の方から日本,アジアの方から日本を見たらこう見えているということをずっと学んでいるとか,あるいは,南半球では日本が逆転した感じでありますけれども,中国,韓国の方から見ると,日本を挟んで北米とか,ロシアとかの関係がこうなっていると,そういう地図というのは余り見てこなかったわけです。そういう地図を見ることによって,様々な複眼的な世界の見方があるということも学べることだと思いますし,GISの活用というのも大事なことではありますけれども,地図そのものを使って,そういう見方や考え方の根底にあるものをしっかり押さえていただければ有り難いなと思っております。

【田中主査】  ありがとうございます。非常に重要な御指摘を頂いておりますが,日本からだけで見ない地図の見方という,非常に重要な御指摘だと思います。
磯谷委員,お願いいたします。

【磯谷委員】  地理の話をしている中に歴史の話を混ぜてしまって申し訳ないところもあるんですが,地理の方では,具体的事象を通して地理的見方・考え方を教える。地理的な技能を身に付けさせると,こういうのが結構20年ぐらい学習指導要領の中に入っているわけですけれども,歴史の方は,歴史的思考力という言葉はあるんですけれども,それは一体何なのかとか,あるいは歴史的見方・考え方,あるいは歴史の技能ということについて余り学習指導要領には書いていないんです。
どうしてもコンテンツベースにしようとしますと,事象ばかり教えちゃうと。一体何だというところが,その授業を通してどういう技能が身についたんだということがチェックできないということがあると思うんです。ですから,今度の指導要領には歴史的見方・考え方は何かと,あるいは歴史の技能はこういう幾つかあるんだぞということを書き込んでいくことが大事ではないかなと思って思いました。以上です。

【田中主査】  磯部委員,ありがとうございます。地理ではかなり明確にされてきている地理的な考え方というものが歴史にも必要だということで,このあと,地理,歴史について,もう少し総合しておさらいしたいと思いますけれども,地歴についてはまとめたいと思いますが,重要な御指摘だと思います。
もう一方ぐらい。では,一ノ瀬委員,お願いいたします。

【一ノ瀬委員】  せっかくこういう場にいますので,気づいた点をコメントさせていただきたいと思います。この地理,ジオグラフィーですけれども,地球的課題の地理的考察とか,自然環境と防災ということがうたわれているわけで,どうしても地理というとイメージとして地面が中心になる傾向があると思うんです。やはり,今日のグローバル社会ということを考えると,海洋というのも非常に重要な要素で,海洋と国境の話,あるいは北極海の海底には自然資源が豊富に含まれておりますので,そこは今後,国際的な紛争の種にもなり得るので,海洋ということを是非一定程度力点を置いていただくのが今後重要なことなのではないかと思います。
それから,もう一点,これは多分,今回の中教審には関わりないかもしれませんが,その後になるかもしれませんが,今宇宙空間というのも大きな問題を呼び起こす素地になっていると思います。今人工衛星が過密になっていますので,そういう点で,将来的には地理の科目の中で宇宙空間に対する言及,あるいは理解というのを含めるという,そういう視点も必要になってくるのではないかと考えております。以上です。

【田中主査】  ありがとうございます。地理の考え方,また地面の続いた国境だけでなく,海洋,それから,そこに関係する国境,公海との関係,また更に大きく宇宙空間ということで,かなり空間的には大きな広がりを捉える必要があるという御指摘,ありがとうございます。かなり貴重な御意見を頂いておりますので,いかがでしょうか。
地理について,何かもう一言おありになれば。辻中委員。

【辻中委員】  済みません,いつも前回のあれが気になっていて,動機付けと想像力というところでいつも気になっていて,地理のテクノロジー,GISのことを書いてありますけれども,これほど進んだ分野はないんじゃないかと。今,高校生も,中学生も,自分の位置情報をして,ぱっと大きくしたり,小さくしたりしているわけで,そういう意味でいえば,一番近隣のところからわっとやっていくと地球になってしまうわけです。そういう意味で,これほどテクノロジーをうまく使うと,おもしろく現代を見せられることはないんじゃないかというのが一つ,そういう視点をイントロダクションに是非してほしいと。今の海のこともそうですけれども。
それから,地図情報に,ほかの学問でいうと,例えば地球から見た夜の光を見るだけで貧困の問題とか,そういうのが地図的に見えちゃうわけですね。幾ら北朝鮮がいろいろ言ったり,いろいろな地域が言っていても,真っ黒であったりすると,やっぱり,ああ,こうかということが分かってしまうわけです。そういう意味で,地図ほどいろいろな情報を組み込めて,視覚的に訴えて,学生に気づきを与える科目はないのではないかと僕は思っています。
ですので,是非そういう意味で,多様な地図というのは先ほど御指摘を頂いて,逆さまから見たり,下から見るというのも重要なんだけれども,今のテクノロジーにはいろいろなことを盛り込めますので,そういう視点をこの最初のところで入れていただくといいかなと思います。ありがとうございました。

【田中主査】  ありがとうございます。非常に貴重な視点を頂きました。ありがとうございます。
ここで,今地歴ということですので,地理と歴史,それぞれについて本日の御議論を少し振り返って御確認させていただきたいんですけれども。歴史につきましては,その転換点の御議論と,考察の手だてというところで御議論いただいておりまして,近代化,大衆化,グローバル化,これをどこで切るかという問題。それが,井上委員,古城委員からもここの御指摘がございまして,日本史と世界史は異なるという見方もあり得るということも御指摘いただいております。
ここについて,おおむねこの転換点,どこでどう切るかというのは,もう少しワーキンググループの方にも御議論をお任せする点もあろうかと思うんですけれども,本日のところでは,大体近代化,大衆化,グローバル化という転換点の枠組みについてはよろしいかどうか。大体の御議論を頂ければと思います。
そして,考察の手だてとしての比較,類似と差異,それから因果,原因と結果,相互作用,関係性など,これについても少し御議論いただいております。大体この辺りは,考え方としてはおおむね枠組みとしてはよろしいのかというところについて伺いたいと思っています。そして,また,かなり学習課題の設定,資料の活用,歴史を捉えるなど,この後,まだできれば「アクティブ・ラーニング」の話の中で少しそちらについても意見交換させていただけると思いますので,最初の二つの軸についてはよろしいかなと思うんですけれども。
井上先生,ここで何か付け加えていただくことがあれば,御意見を伺えればと思いますが。

【井上委員】  近代化,大衆化,グローバル化というのも,これもこの図のように重なりを持って続いているところがあって,見方によっては近代化もまだ終わっているわけではなくて,つながっていて,近代化の終わりとは何なんだというところがはっきりしない限り,なかなか図としては……。
時間軸で言うと,近代化がまず少し早目にスタートをして,その後,大衆化,グローバル化なんだけれども,それぞれは必ずしも終わっていなくて,重なり合いながら現代まで,21世紀まで続いているというふうに理解すれば分かりやすく終わるんですけれども。他方で,先ほどの御議論にもありましたように,現代というのがどこまでをもって現代なのか。今この2015年というのは現代じゃないのか,ポスト現代という言い方なのか,じゃ,現代というのは何なのかというところもあって,その辺の議論の整理をしないといけないのかなと思ったような次第です。

【田中主査】  ありがとうございます。そこのところ,もう少し詰める必要があろうかと思いますが,また御意見を頂いていければと思います。大体このような形で進めさせていただければと思いますが,終わりについて,現代をいつまでとるかというのはもう少し御議論も必要かと思います。また,ワーキンググループの御議論もいただければと思いますので。
それで,先ほどからの御議論でも地理と歴史が非常に重なっている。そしてまた,地理のような考え方のものも,歴史的な思考力とか,考え方,見方についてもしっかりと議論すべきだという御意見を頂いています。地歴としてまとめるときに,地理の方は,かなりたたき台は詳細な形で御提案頂いておりますけれども,大体このような形でよろしいかなと思いますが,特にこれについて御異論があるかどうか,少し伺って。
それでは,時間も大体ちょうど来ておりますので,大体このような形で進めさせていただければと存じます。また,これ以上のところについては,本日の御意見を踏まえて,ワーキングにおいて更に御議論を進めていただければと思います。まだまだ議論は続けられると思いますので。
それでは,三つ目のテーマになりますけれども,高等学校学習指導要領における公民科目新設の方向性についてということであります。これについても,事務局から資料の御説明を頂ければと思います。よろしくお願いします。

【梶山主任視学官】  私の方から御説明させていただきます。資料6の一番最後の花びらの絵と,それから,資料5のたたき台案ということ,こちらを御覧いただきつつお話を聞いていただければと思います。よろしゅうございましょうか。
まず,資料6の方を御覧いただければと思います。「公共(仮称)」につきましては前回も御議論いただいたところでございますが,この資質や能力というところも御覧いただければと思います。大きく分けまして,様々な課題というものについて,その背景にある考え方を踏まえて,より良い課題解決の在り方を協働的に考察し,公正に判断,合意するための力というところが必要になっていくわけでございます。
その際に,この花びらの真ん中のところを御覧いただければと思いますけれども,国家・社会の形成者として必要な知識を基盤として選択・判断の基準を形成し,それを使って主体的な選択・判断を行い,他者と協働しながら様々な課題を解決していくために必要な力と,こういうところが求められるわけでございます。この際,考察するための基準というものをどういうふうにして考えていけばいいのかと。また,花びらとして示させていただいている具体的な社会的事象について,どのような考え方で,どのように考えていくかということについて御検討いただく必要があるんだと考えております。
そういう意味で,資料の5に移っていただいて恐縮でございますが,資料5として,先ほどの検討素案の下にあります「公共の扉」,それから,様々な主体としての私たちの生き方,持続可能な社会づくりの主体としての私たちということで,3本の柱が検討素案であったところでございます。そのそれぞれについて,このような考え方があるのではないかというところを,こちら,たたき台案としております。
まず,1番目の「公共の扉」でございますが,こちらに関しまして,先ほど来申し上げている基準となるようなものということに関して考えていくというところでございます。こちらの具体的な内容につきまして,ここの中に入り切れませんので,次のページを御覧いただければと思います。
次のページにありますように,「公共の扉」といたしましては,ア,イという二つの構成が考えられるのでないかと。アが公共の空間,それから個人としての成長というところというものの全体の中の導入となるようなものを,まず考えてはどうかというところで,矢印にありますように,今まで受け継がれてきた蓄積や先人の取組の知恵などを踏まえ,様々な立場や文化等を背景にして社会が成立しているということ。
それから,自分らしい生き方を問いながら自らを成長させること,それから,人間は社会的な存在であることを認識し,対話を通じてお互いを高め合うこと。この両者によってより良い集団社会を作り出していくこと,こういうことについて職業観,勤労観の育成を含めて導入的に学んではどうかと。社会の成立と,それに対する個人という,大きな考え方をこちらでやってはどうかと考えております。
その次にイでございます。先ほど来申し上げているような考え方というところでございますが,公共の空間における人間としての在り方,生き方というところで,社会に参画し,他者と協働する倫理的主体として判断するための基準として,二つ。一つ目が,行為の結果としての社会的効用を重視する考え方。いわゆる功利主義的な考え方というのが当然あるんであろうと。その次にマル2として,結果よりも,行為の動機となる人間的責務などを重視する考え方。いわゆる義務論的なところというもの,この二つというものを考えていく必要があるのではないかということ。
その際,一番上のぽつにありますが,人が追求するというものに関しては,経済的利益に限られるものでなく,多義的であるということ。それから,1,2に関して,両者とも大切であって,そのバランスを考えていくことが重要であること。それから,社会的効用の方につきまして,多面的・多角的に考えていくことが重要であること。それから,マル2の方について,個々の動機にとどまらず,それを継続的に考えていくことにより,人間としての生き方,在り方について考えることが重要であること。
こういうようなことを取り上げてはどうかというところを,こちらに書かせていただいております。こちらにつきましては,一番下の括弧にありますように,アのところで,対話を通じてお互いを高めていくということが重要ではないかというところをこちらに書いているところでございますが,いずれも対話というところが非常に重要な囚人のジレンマであったり,公共地の悲劇等の思考実験のような形を子供たちに紹介して,またそれを考えさせていくようなことで,子供たちの理解を深めていってはどうかということ。
それから,イにつきましては,前回御議論もありましたが,環境保護や生命倫理などについて取り上げて,イというものに関しての生き方,在り方というものを考えさせるような学習活動を取り入れてはどうかというところで,このたたき台案というものをお示しさせていただいております。
1枚目に戻っていただいて恐縮でございますが,この(1),先ほどの「公共の扉」というものを踏まえまして,それぞれ具体的な内容というものに関して考えていくということを行っていく必要があると思っております。その際,(2)といたしまして,タイトル的には,例えば自立した主体として社会に参画し,他者と協働するためにというところで,自立した個人として社会に参画し,他者と協働していくと,こういうことに関して学習していくということが求められているのではないかと考えております。
先ほど論点整理の花びらのところで,政治的主体となること,経済的主体となること,法的主体となることと,様々な情報を発信する知的主体となるというようなこと,こちらの方が取り上げているわけでございます。このようなことに関して,社会に対して自立した個人として参画し,対象と協働していくという観点から,その協働の必要な理由でありましたり,協働を可能にするような条件,また協働を阻害する要因などについて考察を深めていくと,このようなことが考えられるのではないかと思っております。
さらに,このような自立した個人というものと,(3)におきまして,地域や個人,国家,社会,それから国際社会というものを扱ってはどうかと考えているところでございますが,そちらの間をつなぎ,支えるような家庭でありましたり,地域における様々なコミュニティ,こちらの重要性についても取り上げてはどうかというところから,一応この枠囲みの中という形で入れさせていただいております。
その際の学習活動といたしましては,右にありますように,討論,ディベートや様々な模擬選挙,それから模擬裁判,外部の専門家の講演など,こういうことを活用して関係する専門家,それから機関と連携しつつ,子供たちが社会に参画するための様々な概念的な理解,それから具体的に知らなくてはいけないようなこと,こういうことに関して学習していくということが考えられるのではないかと思っております。
それから,(3)でございますが,このところに関しましては,一番下にありますけれども,家庭科とか情報科,そのようなところにおきまして,個人を起点として自立と主体となるための力を育む学習が行われているところでございます。このような学習と連携して,先ほどの政治的主体であったり,経済的主体,法的主体,様々な主体というものということを併せた形で,総合的に今まで受け継がれてきた蓄積や,先人の取組や知恵などを踏まえつつ,多様性を尊重し,持続可能な地域,国家,国際社会づくりに向けた役割を担う主体となることについての探究を行うというところで,地域の創造,持続可能な社会,我が国と国際社会というような三つのレベルにおいて,子供たちの探究ということを促すような活動をしてはどうかというふうに考えているところでございます。
例えば,イの持続可能な社会というところでは,社会保障のような課題について取り上げていくというようなこと,こういうところが考えられるのではないかと思っております。今のたたき台としてこのようなところを示させていただいたところでございますが,私の方からの説明は以上でございます。よろしくお願いいたします。

【田中主査】  ありがとうございます。今まで公民と言われ,若しくは「政治・経済・社会」というような科目で,比較的高校生には暗記科目であり,無味乾燥だと思われてきたところでございますが,この新しい「公共(仮称)」という仮称でございますけれども,非常に新しい考え方というものを進めていきたいということであります。
おおむね20分か25分ぐらいの御議論を頂ければと思うんですが,この中で「公共の扉」のところは,資料5の2ページ目のところにかなり詳しい,詳細なたたき台がございますので,少し,まずこの「公共の扉」のところ,これは倫理学,政治学,経済学,法学それぞれに深く関わるところだと思うんですけれども,この辺りについて少し意見交換をさせていただければと思いますので,どなたからでも御意見を頂ければと思います。
大竹委員,お願いします。

【大竹委員】  「公共の扉」のところですけれども,協力することが大事だということを教えるというのはすごく大切だと思うのですが,ここの囚人のジレンマとか,共有地の悲劇の思考実験というのは,うまく設計しないと,逆のことを生徒に伝えてしまう可能性があります。合理的というか,狭い意味の,自分だけのことしか考えない人だと,協力しないことを選択することが賢い考え方だというように受け取られてしまう可能性があります。そのような考え方をすることが必ずしも賢い考え方ではなく,協力を促進することが大切だということを,例を使ってうまく教えないと,目的が全く逆になってしまう可能性があるかと思います。
  人は必ずしも自分だけのことを考えているのではないというのをゲームを使って実感させるのでしたら,例えば最後通牒ゲームを体験させるのも一つの方法です。普通は自分だけのことを考えた選択をしているのではなくて,他人のためにたることも考えて選択しているということ,そして,そのような行動は愚かものではないというのをうまく伝えていくということが大事かと思います。こういうゲーム的なものを入れるのはすごく大事だと思いますが,少し工夫が必要だと思います。

【田中主査】  ゲームも,教える側がかなり正確な理解をして,丁寧な設定をしないと,形だけ入れると,教育効果が逆になってしまう,半減してしまう,若しくはマイナスになるということでございますね。
辻中委員,お願いいたします。

【辻中委員】  今の方とも関係してくるんですが,「公共(仮称)」という科目を作るに当たって,やはりお上だけでない公共というのがしっかり伝わらないと,まだまだ公共という概念に対するいろいろなニュアンスが誤解されたりしているところが僕はあるような気がするんです。そういう意味で言うと,二つ言いたくて,あくまで世界――グローバル,国というレベルもあるし,地域もあるし,もっと小さい地域もある,の中で多重になっている日本の中の公共なんだという,あくまでそれを忘れてほしくないというか,その辺がなかなか難しい。
レベルによって,公共の意味するものとか,活動も関わってくるので難しいんですが,あくまでこの「公共の扉」の中では,世界の中での日本の公共であり,地域の公共であるというふうに言っていただきたいなというのが一つ。
もう一つは,そういうニュアンスを出すためには,単なる協働の押し付けとか協力の押し付けじゃなくて,自然にそういうのは出てくるというのは,やはりこれは欧米を見る必要はないんだけれども,欧米だけではなくて,世界的には,やはり市民社会という言葉で大体そういうのを表していて,今回も残念ながら,まだここの言葉の中にはコミュニティとか地域という言葉はあるんだけれども,市民社会というのが出てきていない。やはり,それはお互いが平等な市民であり,尊重し合うべき市民が協力し合うという論理が出てくるという意味でも,やっぱり僕はまだまだ日本の社会の中に市民社会という言葉は根づいていないんですが,もうちょっと市民社会という言葉を入れるべきではないかと思います。

【田中主査】  ありがとうございます。「公共の扉」に関して,今お二つの御意見を頂いております。囚人のジレンマ,共有地の悲劇など,非常に経済学的な概念で,教え方についてはそれなりの工夫が必要だということ。また,更に政治学的に言えば,公共というのは世界の中の公共であるということ,また,市民社会という概念をもう少し若い人に理解してもらう必要があるということでございます。新しい視点。
一ノ瀬委員。

【一ノ瀬委員】  哲学倫理を専攻する者として,この新しい公共概念のグラウンドデザインというのは非常にわくわくするもので,バランスのとれたものだと思います。2点ほどコメントいたします。
一つは,公共というのは,当然パブリックということだと思うんですけれども,パブリックとか,パブリシティーというのは当然ながら,プライベートとか,プライバシーというのとの対比概念なわけです。だとすると,今日いろいろな形でプライバシーというのは問題になるところでありますので,公共ということを言うときに,同時にマイナンバーによる個人情報の問題とか,あるいは死者にプライバシーがあるのかどうかと,プライバシーという問題も同時に意識の中に入れていかないといけないというのが,まず1点ですね。それは是非ガイドラインの中にうたってほしいと思います。
それから,もう一つは,「公共の扉」のイの方で,先ほど梶山主任の方からお話がありました。公共的な空間における人間としての在り方,生き方で,マル1,マル2で,結果を重視する立場と,動機を重視する立場ということで,功利主義と義務論という倫理学の基本的な図式ですけれども,その場合,どうしても1の方の行為の結果としての社会的効用を重視する考え方というのは,功利主義という名前が余りよろしくなくて,自分の利益だけを追求する考え方のように思われが最初ちなんですけれども,これはthe greatest happiness of the greatest numberという言葉があるように,社会全体の幸福を増進させる行為を推奨するということ。
ですので,例えば電車の中で若い人が座っていて,老人が立っているという場合に,若い人も座りたいけれども,社会全体として苦痛がより少ないのは老人が座っている方だということで,席を譲るべきだというふうになるわけですから,功利主義的に考えてもですね。利己主義とは異なるわけです。
だから,功利主義というのを誤解させないように,行為の結果として社会の全体の効用を重視するということを,是非誤解のないように。利己主義と功利主義は全然違うことなので。功利主義の場合は,やっぱり今申し上げたように幸福という概念がキーワードですので,幸福という言葉,だから社会的な効用・幸福とか,そんな形で幸福という概念を是非入れてほしいと思います。
それから,義務論と功利主義というのは対立しているかどうかというのも専門的な議論の的なので,バランスを考えていくことが重要であるというのは,簡単にうまくできるのかなと,疑問に思うところもあるんですけれども,例えば対立しているという面でいうと,今はほとんど問題になりませんが,がん告知問題なんていうのがあります。今は医療の診察内容を見ると,本人ががんか,がんでないかがすぐ一発で分かってしまうのでほとんど問題になりませんけれども,昔はそういう問題があった。
その場合,本人の幸福を考えると,うそも方便ということで,がんじゃないよ,胃潰瘍だよ,みたいに言うというのもあって,それは功利主義的に正当化できるんですけれども,しかし,うそをつくのはよくないんだというふうに,義務,道徳的責務ということを重視すると,本人がどう苦しもうが何しようが,うそついちゃいかんという考え方もあって,そういうときに鋭利な対立をしますので,バランスをとってというふうに簡単にはいかないんじゃないかなと。その両者の様々な利点,あるいは欠点みたいなものを検討していくという程度しか言えないんじゃないかなとちょっと思いました。以上です。

【田中主査】  ありがとうございました。
古城委員,先に挙がっていましたので。では,権丈委員。

【権丈委員】  今の「公共的な空間における人間としての在り方生き方」の,「人が追求するものは経済的利益に限られるものではなく,多義的であること」という辺りです。人が経済的利益だけを追求するわけではないというのは確かにそうで,多方面を見るというのは重要だと思います。
その際,少し気になりましたのは,経済的利益とほかの概念が単純に対立するもののように捉えられるのは,どうかなと思います。個々の主体がそれぞれに経済的利益を求めて,様々な生産活動や消費活動を行うことが,豊かさにつながっていくという面もありますので。ただ,例えば負の外部性のある公害問題や正の外部性のある教育など,個々の利益の追求だけでは全体としてうまく機能しないこともありますので,社会全体の豊かさの追求といった,経済的側面から見ても,公共の役割があると考えています。
そして,もちろん経済的利益以外の様々な価値基準,公平公正といったところもありますので,併せてそういったところも考慮していただければと思います。ありがとうございます。

【田中主査】  ありがとうございます。貴重な御指摘をありがとうございます。
古城委員,池野委員と伺います。

【古城委員】  「公共(仮称)」の科目において課題が,若い人たちが積極的に社会参加しようとする意欲が非常に低いということがあって,それをもうちょっと高めるにはどうしたらいいかというのは非常に大きな課題だと思うんですね。それで,今すごく二極分化していて,非常に関心の高い層と,全然関心のない層があって,多分関心のない層が増えてるような感じもするんですね。
ですので,やっぱりこの「公共(仮称)」は,それこそ本当に動機付けが非常に重要な科目ではないかと思いますので,教え方に非常に工夫が必要かなと思います。ですので,やっぱり今の課題が若者にとって重要な課題というものを何らかの形で取り上げるということが必要ではないかなというふうに思っています。
それから,もう一つは,持続可能な社会づくりのところで,最後に国際社会のことが入っています。先ほど辻中委員の方からもありましたけれども,やっぱり社会は国内社会だけではなくて,国際社会という社会も形成しているという認識をやっぱり個人として持っていかなければいけないというのがこれからだと思うんですね。国内社会にも国際的な要素は非常に入ってきますし,特に人的な交流,特に外国人の受け入れとか,そういうのが今後進んでいく可能性,非常に高いと思いますので,そうなりますと,国内の中にも既に国際的要素が入っていますので,そういった本当に価値観の多様な人たちの間でどういうふうに多様性を踏まえた上で調整していくかということが非常に重要な課題になってくると思います。
やっぱり価値観の多様性というのを教えるようなところも,この日本人だけではなくて,いろいろな価値観が入ってくるところで,そこのところに多様性があって,それをどう調整するかという,そこも重視していただければ,国際社会ということも考えるということにつながるのではないかと思います。以上です。

【田中主査】  ありがとうございます。もう一つございますけれども,池野委員が挙がっていますので,池野委員にお話を頂き,そこで「公共の扉」を閉じることにいたします。

【池野委員】  度々済みません。二つあるんですけど,一つは,公共のコンセプトだと思うんです。先ほどから出ているように,一人一人の私的な部分と個人という部分ですね。それと,社会に全体に関わるような,日本的に言うと,公的と言われるオフィシャルな部分です。多分パブリックというのは,その間にあるような部分だと思うんです。それが多分市民社会という言葉に使われたりするんですけれども,そういう部分をどのようにして子供たちに理解できるようにするかということだと思うんです。教えるんじゃなくて,子供たちがそういうことをいろいろな場面の中で理解できるようにするにはどうするかということだと思うんです。
ここに出てくるように,下の方に,囚人のジレンマとかいろいろあるんですけれども,多分これを例示に出したり,先ほど最後通牒ゲームとかいうのを,大竹先生から言われたんですけれども,それもやっぱり教科書の中に多分出てくると思うんです。しかし,それを教えてしまうと,子供たちにはなかなか分からないと思うんです。それで,例えば子供たち自体が学校の中の生徒会なり,学校の中で部活の中の予算のぶん取り合戦みたいなものの中で,どこでどうするのか。
サッカー部は全国優勝しそうだから50万円上げるよ,音楽部なんかは全然うまくいかないので2万円しか出んよと。そこにどんな正当性があるのかというようなことを,子供たちの興味,関心の中で,じゃ,それが学校全体のときどうするのか。校長先生はどういうように考えるのかとかいう,子供たちだけではなくて,外のいろいろな考え方を持ち込んで考えるようなことをしないと,なかなかやっぱり子供たちの中で本当に考えるという場面が出てこないし,公共というものが分からないと思うんです。やっぱりそういう工夫が必要ではないかというのが一つです。
それから,二つ目は,倫理学的な側面のお話がマル1とマル2のところで出ていて,功利主義的と義務論的な話が出てきたんですけど,もう一つは,やっぱり政治学的な概念で,自由主義的なリバタリアンの問題と,コミュタリアンである問題も必要な要素としてはあると思うんです。やっぱり社会の中を作っているものは,そういう倫理的な側面プラス,政治やいろいろな法的な部分の個人を中心とした考え方と,公共社会全体を中心とした考え方のどちらにおいての決定や判断をするのか。
やっぱりそれはアメリカ的な発想と,それから西ヨーロッパなりの福祉国家型の考え方とは違うと思うんです。そういうところの理解も必要で,そのときに先ほど古城委員からも出ていましたけれども,子供たちの社会離れを阻止して,子供たちが社会の中の関係を作る,個人と社会の間の関係を作ることが,やっぱりここの扉のところでは大事なことだと思うんです。それを,今度,次の(2)の自立した主体がいろいろありますよというところに入るための,個人と社会の関係みたいなものを作ること自体が,あるいはそれが理解できるような側面がここの役割だと思いますから,そういう観点も必要ではないかなと思いました。この二つです。

【田中主査】  ありがとうございました。
黒崎委員,お待たせしました。

【黒崎委員】  湘南台高校の黒崎です。まず,全体の構成,1枚目に関してなんですけれども,前回,私,私的領域への参加保障がキャリア教育であって,公共的な領域への社会参画を保障するのが主権者教育であるということをお話しさせていただきましたが,そういったことが軸になって,高校生にコアとして育成されていくというところは非常に評価できるものかなと考えております。
そうしたキャリア教育ですとか,主権者教育,シチズンシップ教育の根底にあると思っているのが,いわゆる道徳教育,高校でいえば倫理科目ですとか,今回でいえば「公共の扉」という部分になってくると考えています。こうしたしっかりとした思いを持って社会に参画していく,そういうような原動力となるのがこの「公共の扉」の役割なのかなと考えているところであります。
(3)番の持続可能な社会づくりの主体となるためにというところ,非常に重要なところだと思います。その上で1点,お話しするならば,やはり今回の論点整理でもありますが,18歳で何ができるようになるのかですとか,社会に開かれた教育課程というところが一つございます。やはり,現在高校生,社会に参加する意欲というものが非常に低いというところで,高校生自身,非常に自己肯定感が低く,社会に対して何かできるという思いが低くございます。ですので,「公共(仮称)」をしっかりと学び終えたときに,自分が国家社会の形成者であるというところを,社会の主体であるところを実感できるような科目になってほしいなと思っています。
例えば,最後終わったときに模擬投票をやってみる。自分で1年間掛けて勉強してきたことが生きて,しっかりと投票できるんだということが実感できたら,すばらしいかなと考えています。こうして考えますと,活用課題ベースというところで,各単元ごとにしっかりと実社会の課題に対して自分が勉強したこと生かして考えていく,そういった活用課題がしっかりと明記されるような,教科書に明記されて,指導要領に明記されるような作り方が重要になっていくのかなと考えています。
そうした上で,2枚目の「公共の扉」に関してですけれども,やはり「公共の扉」で学んだことが実社会に生きなければ,高校生が何のために学ぶのかというところが実感しにくくなってしまうと。教科書の知識が単なる教科書の太字レベルで終わってしまうというのがもったいないのかなと考えておりますので,その辺を御配慮いただきたいというところであります。
さらに,そうしたことを踏まえまして,価値というものを強く実感できるような形になったらいいなと考えています。日本の高校生を見ていて,民主主義ですとか,国民主権という部分の価値というものが,なかなか実感が国際社会的にも見て低いような実感がしております。先ほどもありましたが,幸福といったものが一体どういった意味があるのかということを考えながら,対話を通して学べるようなところであってほしいなと考えています。以上です。

【田中主査】  ありがとうございます。司会の不手際がございまして,「公共の扉」と実社会としての他者の協働のところ,(1)と(2)を分けるように申し上げたんですけれども,実際には非常に関連が深い御議論で,各委員からはかなり関連して――黒崎委員からもそうですけれども,御議論を頂いていたのでかえってよかったと思うんですが。
時間も押してまいりましたので,少しこの辺りで御意見を伺いながらまとめていきたいと思います。
法学的な視点から,少し土井委員から御意見を伺えればと思います。

【土井主査代理】  私から3点ほど申し上げます。最初に,(1),(2),(3)という3本柱でこの科目を構成されるということ,これはこれでよろしいんじゃないかと思います。その上で,まず第1点目,「公共の扉」の部分でございますが,これは,とても重要な部分だと思います。この扉の部分で生徒の皆さんのこの科目に対する興味,関心を高めて,学び方の基本を理解してもらう必要があるだろうと思います。
ワーキンググループでも申し上げたんですけれども,私というものと社会の在り方を考える際に,私から入るか,社会から入るかという問題がございます。いずれの方法も,私は理論的にあり得るだろうと思います。とかくまとまった知識を教えるということを前提にしますと,社会から入る方がやりやすいということになりますが,ただ,自我の高まりを見せて,アイデンティティーの確立が重要な課題である高校生に,社会や制度に関する知識から入るのがいいのかどうかは,やはり考えるべきでしょう。
下手をしますと,社会や制度に関する知識から入って,その枠組みの中で何ができるのかという問題限定をしてしまうことになり,それ自体が,よくない面を含んでいるのではないかと思います。主体となることという言葉が多く使われていますけれども,主体という言葉にはかなり重要な意義があります。主体となることを重視するということは,個人は単なる社会の道具,歯車ではないということをしっかり考えさせるということ。つまり,各人が社会を築き,維持・発展させるという構成をとるという意味を持っていると,私は思います。
ですから,社会の方が主体で,各人が客体なのではなく,各人が主体で,その主体が協働しているのが社会だということをしっかり理解させることが,やはり扉の部分では重要なんじゃないかと思います。そうでないと,(2)のところで幾ら主体という言葉を使いましても,それは結局主体を育成することにならないでしょう。この点,これまでも青年期と自己形成の問題等を現代社会等で取り扱ってきていますので,そういうことを生かしながら,まずは自分を見つめ直して,生きることとか,自分が大切であるということを出発点にして,その延長に協働の在り方,社会を考えていくという視点をしっかり持っていただくのがよいのではないかと思います。
その際の鍵となる概念や価値があるわけで,それをイの方で学んでもらうということになると思います。具体的にどういう概念を取り扱うのが良いのかということは今後十分検討していただく必要があろい,一ノ瀬委員から出ていたように幸福が大事だとか,幸福と幸福が対立したときに調整する原理として正義をどう位置付けるのか,幸福から正義が導かれるのか,正義は義務から導かれるのか,これらが重要な争点になってくると思いますので,その辺りを議論していく必要があるでしょう。
それから,2の箇所につきましては,こういう枠組みでいいと思います。ただ,例えばとりわけア,イ,ウなんですけれども,政治と経済と法をどう考えるのかというのはちょっと考えなければなりません。これ自体は生活領域の違いという面もあるんですけれども,やはり協働の在り方,仕組みの違いという部分があります。どういうシステム,在り方を使って協働していくかという部分です。
これについてどう教えるかなんですけれども,基本的な仕組みの部分,基本的な考え方の部分と,具体的な制度の部分がございます。例えば法的,あるいは裁判を考えますと,コアになる部分はシンプルで,公正な第三者が当事者の意見を十分に聞いて,ルールに基づいて合理的に判断をするということ,これが核心部分になります。
経済であれば,市場を中心にすれば,当事者同士の交渉等を通じて合意を形成していくということですし,民主主義は全員が参加して多数決で決めていくということが,そのコアの部分があります。そのコアの部分の周辺に,例えば裁判であれば,じゃ,その裁判所ってどんな制度があるのとか,その訴訟の手続等はどうなるのといったようなことが出てくるわけです。この教科を考える際には,そうした周辺部分をどの程度教えるのかということが重要な論点になってくるだろうと思います。
私自身は,少なくとも基本的な仕組み,あるいは基本的な考え方の部分はしっかり教えていただいて,その仕組み,例えば政治なら政治,市場なら市場,裁判や法なら法というものを使うことの意義と限界を,分かってもらわないといけないと思います。そうしませんと,結局人々が生きていく上において,協働していく上において,こういうシステムを使うということになりますが,どのシステムをどういう形で使っていくのかということを考えようとしますと,基本的な部分が分かっていないと使えないんです。
そこをしっかりしませんと,花びらがばらばらになってしまって,法的主体,政治的主体,経済的主体ですけれども,この主体はばらばらになるという問題が起こってしまうんです。ですsから,基本的な考え方を理解していただかないといけませんし,それを恐らく統合するのが扉で示される概念だとか,基本的な考え方になるはずですので,そこをしっかり結び付けいく必要があるだろうと思っています。
最後の3の持続可能な社会,これはこれでやっていくことになると思うんですけれども,この点について,私自身が少しお考えいただきたいなと思っているのは,先ほど来出ているように「歴史総合(仮称)」と「地理総合(仮称)」と「公共(仮称)」の関係です。持続可能な社会の在り方とか,いろいろな問題があるんですけれども,歴史も現代から見る,地理も現代の課題を中心にしながら地理的なものを見るとしますと,実は重なっているんですね。
その現代の課題をどうやって解決していくか,協働していくかということがこの科目の目的だということになりますと,この三つの科目を,どの順序で,どういう関係で教えていくのかということを,少し考えていただいた方がいいんだろうと思います。その組合せは,いろいろあって,「公共(仮称)」を最初にやって,問題を理解させる。例えば協働の在り方の一つ,重要なポイントは紛争の解決です。協働を妨げるものとして紛争がありますので,それをどうやって解決していくかというのは最も重要な問題です。
では,なぜこの紛争が起きているのかということを考える際に,歴史的経緯があり,地理的背景がありという問題が出てくるわけです。だから,こういうことを学んでいくんだよというふうに,順序で進めていくやり方もありますし,歴史や地理の方からそういうものを学んで,じゃ,これを実際どう解決するんだというので,最後に「公共(仮称)」で押さえていくというやり方もあるでしょうし,3本同時に走らすというやり方もあると思います。
最終的には,恐らく各学校のカリキュラムマネジメントの問題なのかもしれませんけれども,どういうモデルがあり得るのか,どういう組合せで,どういう教え方,学ばせ方があるのかということを何か示しておいた方がいいんじゃないかと思います。以上です。長くなりまして,済みません。

【田中主査】  ありがとうございました。非常に重要な御指摘をありがとうございました。司会の不手際で少し時間が押してまいりますが,じゃ,橋本委員の御意見を聞いて,それから私の方から申し上げます。
橋本委員,お願いいたします。

【橋本委員】  ありがとうございます。一言で申し上げます。確かに今土井先生がおっしゃった,社会科の考え方だと思います。そのためには,やはり中学校の公民的分野をはじめ,中学校での履修にできるだけ具体性のある,そういう題材を取り上げる。あるいは,他教科の,今日点線で書いていますが,家庭科等で個人を起点とした自立した主体となるような力を育む,様々な他教科がある。そういうところとのすり合わせということも,「公共(仮称)」そのものがうまくいくということにつながってくるというふうに考えます。以上です。

【田中主査】  ありがとうございました。お時間が参っておりますが,最後に一言だけちょっと御意見を頂きたいと思っておりますのは,「アクティブ・ラーニング」なんです。というのは,もう各委員からは御意見が出ておりますが,「地理総合(仮称)」,「歴史総合(仮称)」,「公共(仮称)」に関しても,どのように動機付けするかということを盛んに御指摘になっています。「アクティブ・ラーニング」というものは何のためなのか。「アクティブ・ラーニング」というのは方法論ですから手段でございますけれども,何の目的なのかということを全く議論せずに,ただ「アクティブ・ラーニング」をやってくださいとなれば,高校の先生方は「アクティブ・ラーニング」をやれば,それで責務を果たしたと思ってしまう。それでは,恐らく何もならない。
恐らく私の考えるところの「アクティブ・ラーニング」の目的というのは三つあろうと思います。一つには,先生方もおっしゃったとおり動機付けである。やっぱり歴史であり,地理であり,「公共(仮称)」という学問領域というものが,自分の生活している地球社会と非常に密接に関わっている。そこで生きていく中で必要だということの動機付けが必要だろうと。それがアクティブな中から学び得るのではないかということがある。
2番目には,その具体的な他者とのインタラクションを通して,考え方が一つではないと。これは大竹委員をはじめ,一ノ瀬委員からも,辻中委員,古城委員からも頂いておりますが,ものの見方というのは一つではない。ある意味では仮説なのかもしれないですけれども,様々な視点,パースペクティブがあるんだと。自分の考えだけが正しいのではないということも学ぶというのは,「アクティブ・ラーニング」の一つの非常に大きな効果だろうと思います。その結果として,知識偏重ではなく,考え方の重視というものが学ばれるのではないかという気がしております。
ですので,最初から,偏差値教育をやめるために「アクティブ・ラーニング」をやりましょう,はい,「アクティブ・ラーニング」をやりました,だから偏差値教育から抜け出せますという,そういう簡単,単純な構造ではないんだと思うんですね。その「アクティブ・ラーニング」というものについて,やはり考え方が大事で,論理的主張が鍛えられるんだというのは3番目にあると思うんですけれども,やはり方法論としての「アクティブ・ラーニング」というのは,もちろん知識がなければできない部分もあるわけですが,基礎的な知識を得るための動機付けにもなる。
そして,また他者の考えを受け入れるという,いわゆる熟議型のデモクラシーと言われている,熟議というものの重要性を知ることになる。そして,その結果として,考え方というものを重視するようになるということかなと思っているんですけれども。
黒崎委員や高木委員,具体的な御経験から,もし御意見があれば,少し伺って。余り時間がございませんけれども,少し御意見を頂ければと。高木委員。

【高木委員】  「アクティブ・ラーニング」は,先ほどお話が出ているように,学習活動の一つということで本校もやっています。「アクティブ・ラーニング」をすると,例えば知識,技能が身に付く場面もあるだろうし,「アクティブ・ラーニング」を通して,思考力,判断力,表現力が身に付く場面もあるのかなというふうに思うので,思考力,判断力と,知識,技能というカテゴリーと,「アクティブ・ラーニング」のカテゴリーはまた別の問題で,知識,技能が身に付く「アクティブ・ラーニング」もあるのかなと思います。
考え方が一つではないというところが一つあるということだったんですけれども,例えば知識,技能と思考力,判断力,表現力が別と捉えて,知識,技能によらなくても思考力,判断力,表現力が大事だということを考えたときに,「アクティブ・ラーニング」なら他者が読み取った知識,概念を活用したり,類推したりすることで,また違う人の思考力,判断力,表現力が高まる場面もあるので,それで身に付いた思考力,判断力,表現力が初めてここで言う思考力,判断力,表現力というのなら,学習活動としての「アクティブ・ラーニング」の意義はあるのかなと思います。

【田中主査】  ありがとうございます。
黒崎委員,お願いいたします。

【黒崎委員】  現場の先生方,「アクティブ・ラーニング」に対しては非常に御熱心に取り組まれていますので,「アクティブ・ラーニング」というものを無駄にしないような位置付けが必要かなと考えています。知識を習得するための「アクティブ・ラーニング」もあるということを,今高木委員もおっしゃったんですけれども,やはりプラス,それもあると思うんですが,それ以上に活用する際の「アクティブ・ラーニング」というのをしっかりと位置付けていかないといけないかなと,私は考えています。
やはり資質・能力を育てるための「アクティブ・ラーニング」というのが今回の論点整理の一つの柱でもあると思いますので,そういったものをどういうふうに学校の教員がやっていけるのか。知識を習得させるための「アクティブ・ラーニング」というのは,比較的,言ってはなんですが,やりやすいという部分もありますけれども,活用させるとき,どういう学習課題を与えて活用するのかというのが非常に難しくなってくる。
今回の政治参加に関わる副教材に関しては,そういった部分の教材が明記されたということが一つ重要なところだと思いますので,そういったところも活用していただきたいなと思っています。

【田中主査】  ありがとうございます。御議論は尽きないと思うんですけれども,もうお時間も参りましたので。最後に貴重な御意見を頂きまして,ありがとうございました。
それでは,「公共の扉」についてはかなり踏み込んだ御議論を頂いております。それから,経済的利益でありますとか,功利主義というものを単なる利己主義の増進というふうに捉えるのではないという,非常に根本的な概念としての重要性。それから,他者との関係,また,世界の中での日本の社会というような,大きな視野というものも各委員から御指摘いただいておりますので,これらをかなり踏まえて進めていく必要があろうかと存じております。
このような議論を踏まえて,また土井委員にお願い申し上げますけれども,ワーキンググループにおいても更に踏み込んだ御議論を頂ければと思います。
時間が参りましたので,大変恐縮ながら議論をここまでとさせていただきまして,事務局で論点ごとに整理をしていただければと思います。
もちろん,本日言い足りなかったこと,踏み込み足りなかった点もあろうかと思いますので,御意見やお気づきの点があれば,ペーパー,ファックス,メールなどで事務局の方にお送りいただければと思います。
本日予定された議論はここまででございますけれども,次回の日程など,今後のことについて事務局より御説明いただければと思います。よろしくお願いします。

【大内学校教育官】  御意見,ありがとうございました。
次回の日程でございますけれども,調整の上,追って御連絡を差し上げたいと考えてございます。また,今ほど田中主査からもお話がございましたように,ペーパーによる御意見というのを頂戴したいと思いますので,ファックス,またメール,郵送でも結構でございます。担当の教育課程総括係宛てにお送りいただければ幸いでございます。以上です。

【田中主査】  どうもありがとうございました。司会の不手際で7分ほど超過してしまいました。これにて,第2回高等学校の地歴・公民科科目の在り方に関する特別チームを終了させていただきます。本日はどうもありがとうございました。

―― 了 ――

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